- 1 -主文原判決を取り消す。 中央労働委員会が中央労働委員会平成18年(不再)第47号事件につき平成19年10月3日付けでした命令を取り消す。 訴訟費用の総費用は,補助参加によって生じた費用は各被控訴人補助参加人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴の趣旨主文同旨 2 控訴の趣旨に対する答弁本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨控訴人は,住宅設備機器の修理補修等を業とする会社であるが,その業務に関し基本的業務委託契約を締結した者をカスタマーエンジニア(以下「CE」という。)と呼称し,控訴人の個別業務につきCEと個別的業務委託契約を締結してその業務を遂行させている。 補助参加人らは,平成16年9月6日,控訴人に対し,CEが補助参加人らに加入して分会を結成したことを通知するとともに,労働条件の変更等を議題とする団体交渉を申し入れた。控訴人は,CEは控訴人と雇用契約を締結した労働者ではないとして,この申入れを拒絶した。補助参加人らは,控訴人が団体交渉に応じないことは不当労働行為に該当するとして平成17年1月27日に大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」という。)に救済を申し立てた(大阪府労委平成17年(不)第2号事件)。大阪府労委は,平成18年7月24- 2 -日,CEは労働組合法上の労働者と認めるのが相当であり,控訴人が上記のように団体交渉に応じないことは同法7条2号の不当労働行為に該当するとして,控訴人に対し,上記の団体交渉に応じることを命じるとともに,団体交渉に応じなかったことが大阪府労委において不当労働行為と認められたこと及び以後このようなことを繰り返さないことを明記する文書を補助参加人らに 対し,上記の団体交渉に応じることを命じるとともに,団体交渉に応じなかったことが大阪府労委において不当労働行為と認められたこと及び以後このようなことを繰り返さないことを明記する文書を補助参加人らに手交することを命じた(以下「初審命令」という。)。控訴人は,これを不服として平成18年8月2日中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対し,初審命令の取消しと補助参加人らの救済命令申立ての棄却を求めて再審査を申し立てた(中労委平成18年(不再)第47号事件)が,中労委は平成19年10月3日,初審命令は相当であるとして,再審査申立てを棄却した(以下「本件救済命令」という。)。 本件は,控訴人が,補助参加人らが申し入れた団体交渉に応じることなどを命じる本件救済命令はCEが労働組合法上の労働者に該当することを前提としており不当であるとして,その取消しを求める事案である。 2 前提となる事実,争点及び当事者の主張標記の点は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし3(原判決2ページ21行目から12ページ25行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲3,5の1及び2,同6の1ないし5,同7の1ないし5,同8,14ないし17,26,29,31の1及び2,同37の1ないし9,乙A9ないし25,64,67ないし70,75ないし80,83,84,87ないし95,101,102,110,乙B1,7,8の1ないし4,同9,18,44の1ないし3,同50,51,82ないし88,丙1の1ないし19,2の1ないし9,同5ないし8,10ないし13,同14の1ないし4,乙C1ないし7,証人P1,同P2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認定す- 3 -ることができる。 (1) 控訴人がCE制度を ないし9,同5ないし8,10ないし13,同14の1ないし4,乙C1ないし7,証人P1,同P2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認定す- 3 -ることができる。 (1) 控訴人がCE制度を導入した経緯等株式会社INAXは,大正13年にタイル,陶管,テラコッタの製造等を業として設立された伊奈製陶株式会社が,その後住宅設備機器製造販売や建材販売へと事業を拡大し,昭和60年に現在の社名に変更したという来歴を有する株式会社(以下時期を問わず「INAX」という。)であり,現在日本の衛生陶器,住宅設備機器,建材の大手メーカーとして認知されるに至っている。 控訴人は,INAXブランドの住宅設備機器のアフターメンテナンス(トイレ,浴室,洗面台,キッチンなどの水回りに係る商品の修理補修等)を主力事業として昭和55年4月に設立された株式会社であり,INAXが資本金を全額出資するINAXの子会社である。 企業が上記のような修理補修等の業務を行う場合,自社の従業員が直接業務を遂行する方法,修理補修業者に委託(外注)して業務を遂行する方法などがあり得るところ,控訴人も当初は従業員が直接行う方法と,業者(控訴人では「件数契約者」と呼んでいた。)に委託する方法とを併用していた。ところで,控訴人の業務は水回りの住宅機器の故障等に対応するものであるから,その性質上顧客から修理補修等を求める連絡が入るや速やかに業務に着手し確実に完遂することが求められるところ,取り分け業者へ委託する場合には,控訴人が迅速に業者へ発注し,受注した業者が迅速に修理等の業務へ着手し,かつ業務が完了したことを控訴人へ速やかに連絡することなどが重要となる。また,控訴人はINAXの傘下の会社が修理補修等を行うことを社名などにおいて明示していることや,全国規模で事業を展開していること つ業務が完了したことを控訴人へ速やかに連絡することなどが重要となる。また,控訴人はINAXの傘下の会社が修理補修等を行うことを社名などにおいて明示していることや,全国規模で事業を展開していることなどから,INAXのブランド・イメージを低下させないよう全国一律一定水準以上の技術で確実な修理補修等を行うことが求められているため,委託業者にも業務遂行に当たりINAXのブランドイメージを低下させないよう- 4 -一定水準以上の技術で確実に修理補修等を行うことを求めることになる。そのため控訴人は,昭和60年以降委託業者への業務委託の方法を整備し,控訴人と委託業者との連絡の効率化・確実化・迅速化を図り,併せて遂行される業務が全国一律一定水準以上の技術をもって確実に行われるよう,認定制度やランキング制度を導入したり,業務内容や接客態度に関するマニュアルを作成配布したりしながら,次に詳述するような現在のCE制度を導入確立していった。そして,控訴人の従業員は約200名いるものの,そのうち控訴人の修理補修業務を行う可能性がある者を,サービス長(通常は後記のサービスセンターのマネージメントを行う。平成19年現在11名)やFG(難易度の高い修理やCEの研修等を担当する技術担当者。平成19年現在16名)らに限定していった。 (2) 控訴人とCEとの基本的業務委託契約等ア控訴人は,CEになろうとする業者(個人,法人を問わない。)との間で,「業務委託に関する覚書」と題する文書(乙B1。以下「本件覚書」という。),「業務委託に関する覚書の付帯契約書」と題する書面(乙B2。平成17年以降作成されるようになる。以下「付帯契約書」という。)に記載した内容で,基本的業務委託契約を締結する。 本件覚書では,第1条において,控訴人とCEがそれぞれ独立した事業者で (乙B2。平成17年以降作成されるようになる。以下「付帯契約書」という。)に記載した内容で,基本的業務委託契約を締結する。 本件覚書では,第1条において,控訴人とCEがそれぞれ独立した事業者であることを認識した上で契約を遂行する旨,第3条において,委託業務内容を,INAX製品全般のアフターサービス(修理,点検),INAX製品全般のリフレッシュサービス,INAX製品全般の販売・取付け,i-mate(24時間・365日水回りサポート等を受けられるなどの特典を有する会員)となる会員契約の仲介その他関連業務とする旨明記した。 そして,あくまでINAXの子会社による修理補修業務等を委託するとの委託業務の性質上,INAXのブランド・イメージを損ねないために,CEに対し一定水準以上の業務遂行能力を保有し続けることを求めて,毎年- 5 -能力,実績,経験等を基準に級を定めるライセンス制度(乙A23)を導入し(第2条),確実に業務が完了したことを確認するために業務内容の報告を求め(第5条,第11条),発注連絡の取れる時間帯や日にち(休日等の事前通知)を予め明らかにし(第11条,第12条),制服等を定めた(第8条。なお乙A21参照)。他方で,前記のとおりCE制度は委託業者との関係やその業務を効率化・迅速化・確実化させ,またINAXの傘下の会社が修理補修等を行うとの信頼を裏切らないようにするためのものにすぎないため,発注のための連絡を取る時間を定めたものの,受注を義務付けることはせず(第4条),また受注後の業務遂行の時期や方法等については特段定めを置かずにCEに一任し,業務の完了報告を義務付けたものの修理等の依頼に対する結果以上の報告は求めず,事務所や事務所内の各種機器,使用車両,工具等は原則としてCE側で用意する(第7条,第9条。 ただし,部材に CEに一任し,業務の完了報告を義務付けたものの修理等の依頼に対する結果以上の報告は求めず,事務所や事務所内の各種機器,使用車両,工具等は原則としてCE側で用意する(第7条,第9条。 ただし,部材に関してはINAX製品を控訴人が用意してCEに預託する(第10条)。)こととした。 また付帯契約書においても,INAXの子会社による修理補修業務等を委託するとの性質上,控訴人の業務委託者であることを明らかにする身分証明書や名刺等の携行や制服の着用を求め(第5条),業務終了後は控訴人所定の検査確認用紙に顧客の署名押印を求めることを定め(第6条),委託業務遂行中控訴人と利益相反する営業活動を禁止し(第7条),毎月開催するエリア会議(委託業務の遂行に関する連絡事項,技術情報等の伝達を行うもの)への出席を求める(第13条)などの規定があり,違反した場合には厳重注意や契約解除などによって対処する旨定める一方で,個別の業務委託契約は所定の方法による発注をCEが承諾することにより成立することとし(第4条。ただし,上記の効率化迅速化の観点から,発注後直ちに承諾拒否の通知を発しないときは,発注内容を連絡した時点で委託を承諾したものとみなすこととした。),発注後の委託業務の遂行の時期や方法- 6 -等はすべてCEに一任した(第6条)。 さらに控訴人は,INAXの子会社により修理補修業務等を委託するとの性質上,INAXのブランド・イメージを損なわないよう,全国で一定水準以上の技術をもって確実に修理補修等をする必要があるため,業務マニュアル,安全マニュアル,修理マニュアル,新人研修マニュアルなど,修理補修等の作業手順や控訴人への報告方法,CEの心構えや役割,接客態度などを記載した各種マニュアルを配布しているが,現場での実際の修理補修等はCE各人の能力にゆだ アル,新人研修マニュアルなど,修理補修等の作業手順や控訴人への報告方法,CEの心構えや役割,接客態度などを記載した各種マニュアルを配布しているが,現場での実際の修理補修等はCE各人の能力にゆだねており,マニュアルが確実に実施されているかを検証する制度はない。 イ業務委託手数料については,顧客(修理等が有償の場合)や製造元のINAX(修理等が無償の場合)に直接請求する金額に,ランキング制度において当該CEの属するランクに定められている一定率を乗じる方法で支払うこととした(乙A19)。顧客等に対する請求金額が基準となるため全国一律の金額とする必要があることから,商品や修理内容に従ってその額は予め控訴人において決定したが,他方で修理補修等の難易度等によってCEがこれをある程度割増しして請求することや,別のCEを補助者として使用した上割増しして請求することを認めていた。 ウ控訴人は,CEの募集広告を出す際には,一日数件受注することができるので経済的安定性が確保される,取扱商品がINAX製品に定まっており控訴人によるサポート体制もある,傷病の場合のための互助会制度があるなど独立事業を行う場合には期待できない利点がある一方で,基本的には独立事業者であり,受注した仕事に応じて手数料を受け取ることができるなどの会社勤務にはない独立性,報酬出来高制があることなどを謳い(乙13,14),CEになろうとする者と面接する際にも,CEは事業者であるため所得税は事業税として申告することになるなどの説明を行っている。 CEに応募する者も,独立性がありながら経済的安定性も一定程度確保さ- 7 -れていることを応募理由とする者が多い。 エ控訴人は,CEを独立事業者と認めていることから,次に述べる個別的業務委託契約を締結した修理補修業以外について,CE 安定性も一定程度確保さ- 7 -れていることを応募理由とする者が多い。 エ控訴人は,CEを独立事業者と認めていることから,次に述べる個別的業務委託契約を締結した修理補修業以外について,CEとなった者が自ら当事者となって各種の修理補修等の営業活動を行い,契約を締結し,修理補修等の業務を行い,収益を上げることを認めており,CEが自ら当事者となって締結した契約に基づいて行う業務については,当然上記の条件の履行を求めていない。このようにCEは,控訴人から受注するほか,別途自ら営業主体となって,営業活動を行い,顧客から修理補修等の業務を契約を締結して受注し,修理補修等の業務を行い,収益を上げることができるし,そのような実例もみられる。 オなお,控訴人は,傷病に対する休業補償や技術向上のための教育受講補助等を目的として全国のCEを対象としたCE協力会を平成8年に発足させ(事務局は控訴人事務所内にあり,事務処理は控訴人が代行する。),平成16年末ころからはCEの意見及び要望等を聴取する場としても使用するようになっている。 (3) 控訴人とCEとの個別的業務委託契約締結の実情と受託業務の遂行の実際ア控訴人は,全国を7区分(東日本,首都圏,関東,中部,近畿,中国・四国,九州)して各地域ごとに営業所を置き,その下に複数のサービスセンターを配置した。そして,現在約590名いるCEの居住場所や過去の業務発生状況等に従って各サービスセンターの管轄区域を細分化し,CEの担当地域を決定した。なお,CEが単独で対処できない場合があることも考慮して,一つの地域に複数のCEを順位を付けて担当させることもある。 控訴人は,顧客からの修理等の依頼を全国に4箇所ある修理受付センターで受け付けた後,顧客の所在場所を担当地域とするCEにこれを割り振り委託業 地域に複数のCEを順位を付けて担当させることもある。 控訴人は,顧客からの修理等の依頼を全国に4箇所ある修理受付センターで受け付けた後,顧客の所在場所を担当地域とするCEにこれを割り振り委託業務として発注する。その発注は,原則として本件覚書で定められ- 8 -た,休日ではない日の午前8時30分から午後7時までの間に行われる。 発注方法は,修理日を当日とする場合や緊急を要する場合には修理受付センターからCEに直接電話をする方法で,それ以外の場合にはCEに対して予め所持することが指示されている情報端末に修理依頼データ(訪問日時,顧客の氏名・電話番号・住所,対象となる商品の商品番号及びそれが取り付けられた年月日,修理依頼内容等)を送信する方法で行う。電話を受けたCEが応諾した場合には個別の業務委託契約が成立するが,電話を受けたCEが対応できないと断ったり,そもそも電話連絡が取れない場合には,順位が下位のCEあるいは別の担当地域にいるCEに連絡を取って依頼したり,サービスセンターにいる控訴人の従業員が業務の遂行に赴いたりすることになる。また,修理依頼データを送信した場合,直ちに承諾拒否の連絡がない場合はその送信時に個別の業務委託契約が成立する。修理依頼データを送信する場合にも,CEが承諾拒否通知をする場合が1パーセント弱ある。電話を受けたCEが断った場合,あるいは修理依頼データを送信したところCEが承諾拒否通知をした場合,その理由が控訴人との基本的業務委託契約の遂行とは無関係の事情(自らが営業主体となって締結した契約に基づく修理補修等の業務の遂行など)によるものであることが判明したとして(そもそも拒否の詳細な理由付けは求められていない。),控訴人がそのことをもって基本的業務委託契約の債務不履行と判断することはない。また電話連絡が取れ 遂行など)によるものであることが判明したとして(そもそも拒否の詳細な理由付けは求められていない。),控訴人がそのことをもって基本的業務委託契約の債務不履行と判断することはない。また電話連絡が取れなかった場合,それが当該CEの休日ではない日の発注時間帯であっても,控訴人がそのことをもって同契約の債務不履行と判断することもない。 イ CEは,修理依頼データ受信後,同データに基づき直ちに顧客と連絡を取って修理等の日時を調整し,調整された時間に顧客先等を訪問して修理等の作業を行う。受信しかつ承諾拒否通知をしなかったものの業務に対応できない場合は他のCEにこれをゆだねることが認められており(その場- 9 -合はその旨控訴人に報告する。),発注件数の約6パーセントはこの方法によりCEの変更手続がとられている。 ウ CEは,制服を着用し,名刺を携行して顧客先に赴き,INAXの子会社による修理補修等であることを明示しながら,所定の修理等の業務を行い,場合によっては業務内容でもあるINAX製品のリフォーム等の営業活動も行う。 エ CEは,修理等の業務が終了したときには,顧客に,控訴人所定用紙の検査確認用紙に署名押印を求めるとともに,修理補修等顧客の名前,住所,業務日,業務内容,技術料等所定の料金(部品代,技術料,取付料,出張料,処分料など),その他を記載したサービス報告書を控訴人に送付する。 その内容は,顧客の修理補修等の依頼内容が結果として完遂されたかどうかを判断できるのみであって,それ以上の報告が求められているわけではない。CEは修理を行うほか顧客から料金を回収し,これを週1回程度控訴人に振り込む。その他CEは業務日ごとに行動の予定,経過,結果等を控訴人に報告することになっている。 オ平成16年7月現在の実績データによれば,作業時間は 客から料金を回収し,これを週1回程度控訴人に振り込む。その他CEは業務日ごとに行動の予定,経過,結果等を控訴人に報告することになっている。 オ平成16年7月現在の実績データによれば,作業時間は1件につき平均70分,一日作業時間計は平均3.7時間,控訴人の平均依頼件数は月113件,CEの平均取得日数は月平均5.8日である(乙B53)。なお上記作業時間以外の時間におけるCEの行動ないし業務実態については控訴人は関知しない。 (4) 控訴人は,平成14年10月にある顧客から修理依頼を受けてこれをCEであるP3に業務委託したが,平成15年3月同じ顧客から修理が不完全であるとの苦情が申し入れられたため調査したところ,P3が他社製品をINAX製品と偽って修理したこと,その際控訴人とは無関係に自らの営業活動を行って代金を全額自分の収入としていたことなどが判明した。控訴人が平成15年5月にP3を呼び出して注意したところ,その後上記顧客から,P- 10 -3が上記の点での口裏合わせや自らの営業活動を行った際の領収書の破棄などを求めていたこと,同顧客は畏怖しながらもこれを拒絶したことなどの連絡が入った。控訴人は,P3が控訴人やサービスセンター長の私宅に電話をかけて脅迫的な発言を行うなどしたため,平成15年5月19日付けでP3との基本的委託業務契約を解除する旨の意思表示をし,P3への対応について警察にも相談した。 控訴人は,平成15年6月6日,予告なく補助参加人である全日本建設交運一般労働組合大阪府本部の書記長の訪問を受け,P3との契約解除の件での話合いの機会を設定するよう求められた。同組合との話合いは,同年末に上記書記長から一方的に終了する旨の連絡があるまで,何度か行われた。 補助参加人らは上記の件を本件で問題とはしていないが,業務委託者と 合いの機会を設定するよう求められた。同組合との話合いは,同年末に上記書記長から一方的に終了する旨の連絡があるまで,何度か行われた。 補助参加人らは上記の件を本件で問題とはしていないが,業務委託者との関係を整備し始めた昭和60年以降上記の書記長の訪問までの間に,また一方的な終了連絡後本件の紛争が発生するまでの間に,控訴人がCEから労働者として認めるよう求められたりしたことを示す証拠はない。また,平成8年に発足したCE協力会を労働組合とするようCEが求めたことを示す証拠もない。 2 以上の事実に基づき検討する。 (1) 労働組合法は,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する労働者(同法3条)が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進し労働者の地位を向上させること,その交渉のために労働者が労働組合を組織して団結することを擁護すること,使用者と労働者との関係を規律する労働協約締結のための団体交渉をすることなどを目的とする(同法1条)。したがって同法上の労働者は,使用者との賃金等を含む労働条件等の交渉を団体行動によって対等に行わせるのが適切な者,すなわち,他人(使用者)との間において,法的な使用従属の関係に立って,その指揮監督の下に労務に服し,その提供する労働の対価としての報酬を受ける者をいうと解するのを相当と- 11 -いうことができる。そして,同法における労働者に該当するか否かは,法的な使用従属関係を基礎付ける諸要素,すなわち労務提供者に業務の依頼に対する諾否の自由があるか,労務提供者が時間的・場所的拘束を受けているか,労務提供者が業務遂行について具体的指揮監督を受けているか,報酬が業務の対価として支払われているかなどの有無・程度を総合考慮して判断するのが相当というべきである。 なお,業務委託契約が締結された場合 務提供者が業務遂行について具体的指揮監督を受けているか,報酬が業務の対価として支払われているかなどの有無・程度を総合考慮して判断するのが相当というべきである。 なお,業務委託契約が締結された場合,契約関係の成立により契約当事者は互いに契約目的の実現に向ってそれぞれの負担義務を遂行すべき制約ないし拘束を受けることになるところ,委託者と受託者の間には法的な使用従属関係はないが,何らかの業務を受託する以上委託内容によって拘束あるいは指揮監督関係と評価できる面が認められることがあるのが通常である。したがって,上記の法的な使用従属関係を基礎付ける諸要素の存否の評価に当たっては,契約関係の一部にでもそのように評価できる面があるかどうかなどの局部的視点で判断するのは事柄の性質上適当ではなく,両者の関係を全体的に俯瞰して労働組合法が予定する使用従属関係が認められるかの観点に立って判断すべきである。 (2) 前記認定事実のとおり,CEは控訴人との間で基本的業務委託契約を締結しているものであるが,個別の業務は控訴人からの発注を承諾するという個別的業務委託契約の締結によって行っていること,CEはサービスセンターから電話で連絡を受けたり,修理依頼データを送信されたりする方法で個別的業務委託契約の申込みを受けた際,これを控訴人との基本的業務委託契約とは無関係の理由,取り分け自らが事業者として行う修理補修等の業務を行うとの事情の存在を理由に拒絶することが認められていること,CEが上記申込みを拒絶した場合,それがいかなる理由による拒絶であっても控訴人は基本的業務委託契約の債務不履行に該当するとは解しておらず,CEをその拒絶によって不利益に扱うことはないこと,CEは休日以外の日の午前8時- 12 -半から午後7時までサービスセンターから発注連絡を受けること 契約の債務不履行に該当するとは解しておらず,CEをその拒絶によって不利益に扱うことはないこと,CEは休日以外の日の午前8時- 12 -半から午後7時までサービスセンターから発注連絡を受けることとなっているが,この連絡が取れなかったとしても控訴人は基本的業務委託契約の債務不履行に該当するものとはしていないこと,CEは決められた時間帯に発注連絡を受け,当該業務遂行中は,INAXの子会社である控訴人による委託業務であることの性質上,制服の着用や名刺の携行,各種マニュアルに基づく業務の遂行が求められてはいるものの,発注連絡を受けて受注することになった修理補修等の業務を実際にいついかなる方法で行うかについては全面的にCEの裁量にゆだねられていること,控訴人は終了後の報告や業務内容報告等により,顧客からの修理依頼等が確実に履行されたか否かを確認する以外に,CEの業務内容や業務遂行時間以外の行動等について関知せず,CEが独自に営業活動を行い,それにより収益を上げることを認めていること,控訴人は,CEが行った修理等の内容について,全国一律の標準額を基本としているものの,CEの裁量による増額を認めた上で,出来高制で報酬を支払っていること,したがってCEは自らが事業者となって業務を遂行する方がCEとして活動するよりも収益率が高いと判断した場合には自らが事業者となる業務の営業活動を重視し,CEとして活動する方が収益率が高いと判断した場合には控訴人からの発注を積極的に受注するという選択が可能であること,以上の事実を指摘することができる。 そうすると,CEは,業務の依頼に対して諾否の自由を有しており,業務の遂行に当たり時間的場所的拘束を受けず,業務遂行について控訴人から具体的な指揮監督を受けることはなく,報酬は行った業務の内容に応じた出来高として支払 業務の依頼に対して諾否の自由を有しており,業務の遂行に当たり時間的場所的拘束を受けず,業務遂行について控訴人から具体的な指揮監督を受けることはなく,報酬は行った業務の内容に応じた出来高として支払われているというべきであり,その基本的性格は控訴人の業務受託者でありいわゆる外注先とみるのが実体に合致して相当というべきである。 なお,修理依頼データを受信後直ちに承諾拒否を連絡しなければ受諾したものとみなされる,休日を予め届け出ておかなければならず,発注連絡時間- 13 -が定められている,制服の着用や名刺の携行,各種マニュアルに基づく業務遂行が求められ,業務終了後は各種の報告をしなければならず,その他研修やエリア会議の出席が求められる,控訴人の定める認定制度やランキング制度によって報酬額が左右される,規定に反した場合には厳重注意や契約解除などがされることがあるなどの点については,これだけを取り上げれば拘束性があるとか指揮監督関係にあると評価することはできなくはない。しかし,これらはいずれも,控訴人の委託する修理補修業務が,水回りに関するINAXの住宅設備機器の修理補修等という連絡効率性,迅速性,確実性が求められかつ全国一律一定以上の技術水準を求められるという本件における基本的業務委託契約の委託内容による制約にすぎないというべきであり,これらの事情をもってCEがその業務を受諾しなければならない義務が発生しているとか,受諾後の業務遂行においてCEの裁量が否定され控訴人が指揮監督を行っているとかいうことはできない。そうすると,上記の事情の存在をもって,控訴人とCEとの関係がその基本的部分において法的に使用従属関係にあると評価することは困難であり,相当ではないというべきである。 3 被控訴人及び補助参加人らは,① その者が当該企業の事業遂 って,控訴人とCEとの関係がその基本的部分において法的に使用従属関係にあると評価することは困難であり,相当ではないというべきである。 3 被控訴人及び補助参加人らは,① その者が当該企業の事業遂行に不可欠な労働力として企業組織に組み込まれていること,② 契約内容が一方的に決定されていること,③ 業務の遂行の日時・場所・方法などにつき指揮命令を受けていること,④ 業務の発注に対し,諾否の自由がないことなどの事情が認められる場合には,労働組合法上の労働者性が認められるのであり,CEはこれらの要件を充たすから労働組合法上の労働者ということができると主張する。 しかしながら,①については,控訴人の正社員が200名であり,CEが590名であることや,控訴人の主力業務である修理補修等の業務はCEが遂行していることなど被控訴人及び補助参加人らが指摘する事情が認められる一方で,CEが控訴人の発注に対し理由なく拒絶しても基本的業務委託契約上の- 14 -債務不履行とならない,CEは控訴人から受注するほか,自ら営業主体となって修理補修等の業務を行うことができるなどの事情も認められる本件においては,CEが控訴人の労働力として企業組織に組み込まれていると評価することは困難である。②や③については,前記認定によれば,顧客と調整をした結果CEの行う業務の日時・場所が定まること,INAX製品の修理等であることからその修理等の方法を控訴人がCEに指定していることなどの事実が認められ,これを控訴人がCEに一方的に指揮命令していると評価することは可能であるが,いずれの事実も控訴人とCEとの業務委託の性質上そのように定めざるを得ないものにすぎず,法的関係において使用従属関係の存在を是認させるものではないから,やはりCEが控訴人の労働者であるとの結論を導くことは 事実も控訴人とCEとの業務委託の性質上そのように定めざるを得ないものにすぎず,法的関係において使用従属関係の存在を是認させるものではないから,やはりCEが控訴人の労働者であるとの結論を導くことは困難である。④については前記のとおりであって,CEには諾否の自由が認められるというべきである。 CEは労働組合法における労働者に該当するとの被控訴人らの主張は,控訴人との間に締結された業務委託契約に基づく法律関係の実体に対する全体的あるいは合理的考察を欠き,部分的あるいは表面的であっても指揮監督関係や拘束性について肯定的に評価できるものがあれば,契約内容のその余について考察を遮断し,これをもって控訴人とCEとの間に使用従属関係を基礎付ける指揮監督関係や拘束性の存在を認め,労働者性を肯定しようというものであって,社会の実情ないし経験則に照らしても合理的とは言い難い見解というほかなく,採用の限りではない。 4 以上の次第であるから,CEは控訴人との関係において労働組合法上の労働者に当たるということができず,したがってCEが労働者であることを前提とする団体交渉に控訴人が応じなかったとしても,これをもって労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するということはできない。 そうすると,控訴人の団体交渉拒絶行為を不当労働行為に該当するとして,控訴人に対し,補助参加人らが申し入れた団体交渉に応じること,補助参加人- 15 -らに対して,団体交渉を拒否したことが大阪府労委から労働組合法7条2号に該当する不当労働行為であると認められたため今後このような行為を繰り返さないようにすることを記載した文書を手交することを命じた本件救済命令は,不当であって取り消されるべきである。 5 よって,以上と異なる原判決は相当ではないからこれを取り消すこととし,主文のとお 主文 さないようにすることを記載した文書を手交することを命じた本件救済命令は,不当であって取り消されるべきである。 よって,以上と異なる原判決は相当ではないからこれを取り消すこととし,主文のとおり判決する。 理由 東京高等裁判所第15民事部 裁判長裁判官藤村啓 裁判官坂本宗 裁判官大濱寿
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