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昭和41(う)1093 破産法違反業務上横領被告事件

裁判所

昭和42年12月28日 東京高等裁判所

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18,271 文字

主文 原判決中被告人Aおよび同Bに関する部分を破棄する。被告人Aを懲役一年二月に、同Bを懲役一年六月に各処する。ただし、この裁判の確定した日から、被告人Aに対しては五年間、被告人Bに対しては三年間、それぞれ右刑の執行を猶予する。原審における訴訟費用のうち、証人Cおよび同Dに支給した分は、被告人Aおよび同Bと相被告人Eとの連帯負担とし、証人Fに支給した分は、被告人Aおよび同Bの連帯負担とする。被告人Eの本件控訴を棄却する。理由 本件各控訴の趣意は、被告人Eについては、その弁護人稲本錠之助、同上野久徳および同海法幸平連名提出の控訴趣意書に、被告人Aについては、その弁護人中村登音夫提出の控訴趣意書に、被告人青柳健一二については、その弁護人中村登音夫および同遠藤利一郎各提出の控訴趣意書にそれぞれ記載されているとおりであるから、これを引用する。一、 被告人Eの控訴趣意第一点について。所論は、原判示第一の各事実につき、被告人Eには、破産財団に対する加害の目的も、自己利得の意思・目的もなかつたし、破産財団を害してもいない、などと主張するものである。しかしながら、原判示の冒頭および第一の事実に関する原判決挙示の証拠を総合すると、被告人Aは、自ら代表取締役をしていたG株式会社が昭和三四年一二月上旬不渡手形を出し、同月中旬銀行取引を停止され、破産原因の存する状態(以下破産状態と略称する)におちいつたことから、実弟である弁護士の被告人Bに同会社の右実情を訴え、その善後策を相談した結果、Gの機械器具等の財産をもつて同会社の第二会社を設立することを企て、そのためには、Gの右財産が一般債権者の手中に帰することを防ぐため、特定の人を債権者にしたてて、同会社の機械器具等 策を相談した結果、Gの機械器具等の財産をもつて同会社の第二会社を設立することを企て、そのためには、Gの右財産が一般債権者の手中に帰することを防ぐため、特定の人を債権者にしたてて、同会社の機械器具等を差押・競売の方法によつて競落取得させ、かつ、債権の取立等を行なわせて、これら全部を第二会社に吸収し、もつてGの一般債権者の追及をのがれようとはかり、そのころ、右被告人両名は、同会社の債権者の一人であつた被告人Eに対し、同会社の右実情を説明して右方策についての協力を求めたところ、同被告人も、同会社の他の債権者を排除して自己の債権の回収等その利得をはかるためには右に同調する必要があるとして、これを承諾し、その方法等について被告人三名相談のうえ、原判示第一の各所為に出たものであることが肯認されるのであつて、被告人三名、ことに、被告人Eは、Gが破産状態におちいつたことから、同会社の他の一般債権者を除外して、被告人三名の利益獲得のために、その意思・目的をもつて、原判示第一の各所為に出たものであることは、まことに明らかであり、それらの各所為は、破産財団に属すべきGの財産の隠匿や不利益処分であり、それは、同時に、その破産財団を共同担保とする他の一般債権者を害するという結果の発生に向かつてなされたものであること右の諸事実に照らし明らかであるから、それが唯一または終局的のものでなかつたにしても、被告人三名、ことに被告人Eに、破産財団に対する加害の目的がなかつたとはいえない。 各所為に出たものであることは、まことに明らかであり、それらの各所為は、破産財団に属すべきGの財産の隠匿や不利益処分であり、それは、同時に、その破産財団を共同担保とする他の一般債権者を害するという結果の発生に向かつてなされたものであること右の諸事実に照らし明らかであるから、それが唯一または終局的のものでなかつたにしても、被告人三名、ことに被告人Eに、破産財団に対する加害の目的がなかつたとはいえない。しかも、原判示第一の各事実に照らすと、被告人三名がGの財産を隠匿ないしは不利益処分したその総計額は、四六三万三、〇〇〇円相当に達し、これから後記のように破産財団に属した原判示第一の一の競落代金四九万五、〇〇〇円を差し引いた残四一三万八、〇〇〇円相当は、それだけ破産財団より減少したことが明 額は、四六三万三、〇〇〇円相当に達し、これから後記のように破産財団に属した原判示第一の一の競落代金四九万五、〇〇〇円を差し引いた残四一三万八、〇〇〇円相当は、それだけ破産財団より減少したことが明らかであつて、これが破産財団を害していないといえないことは、もちろんである。所論は、被告人Eの本件利得は、これを自己のGに対する債権の弁済に充当したとしても、破産財団の債権者に対する試算配当率をはるかにしたまわる弁済率にすぎないから、破産財団を害していない、と主張するけれども、被告人Eらが、前記の意思・目的で原判示第一の各所為に出た以上、それによつて得た利得の結果がいかほどであつたかは、本件犯罪の成立になんら消長をきたすことがらではないし、しかも、証人Hの原審および当審における各供述によれば、厚相電機の破産手続において、最初の債権調査期日までに届け出された債権は、債権者三二名、債権総額三、九三一万六、八七九円であつて、そのうち、Iの届出債権四八九万八、二〇〇円は否認され、所論指摘の被告人Eの届出債権はなく、また、その後債務の免除をする者もあつて、昭和四二年三月一日裁判所の配当許可を受けたときには、結局、債権者二七名、債権総額一、九七六万九、八三七円、配当準備金七八〇万九、〇八六円で三割九分五厘の配当率になつたが、その配当準備金は、前記競落代金から執行手続費用を除いた残金四八万五、七八一円、売掛回収金等二一一万一、八〇九円、被告人Aらと破産管財人Hとの間に成立した同被告人らの別件詐欺被告事件の示談金二八〇万円、被告人健三と右破産管財人との間に成立した債務弁済契約等の名義に基づく本件の一部示談金二五〇万円と、これらを預金した銀行利息金一〇五万九、八二〇円合計八九五万七、四一〇円のなかから準備されたものであることが認められ、被告人A、同健三らの右示 続費用を除いた残金四八万五、七八一円、売掛回収金等二一一万一、八〇九円、被告人Aらと破産管財人Hとの間に成立した同被告人らの別件詐欺被告事件の示談金二八〇万円、被告人健三と右破産管財人との間に成立した債務弁済契約等の名義に基づく本件の一部示談金二五〇万円と、これらを預金した銀行利息金一〇五万九、八二〇円合計八九五万七、四一〇円のなかから準備されたものであることが認められ、被告人A、同健三らの右示 務弁済契約等の名義に基づく本件の一部示談金二五〇万円と、これらを預金した銀行利息金一〇五万九、八二〇円合計八九五万七、四一〇円のなかから準備されたものであることが認められ、被告人A、同健三らの右示談金が配当準備金の大半を占めるものであることなどにかんがみれば、被告人Eの原判示第一の各所為が破産財団を害していないという主張は、単に計数上の一点をとらえてその全部を非難するものであつて、とうてい採用の限りでない。その他、原審記録を調査し、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案しても、原判決には、所論の非違は存しない。論旨は理由がない。二、 同第二号について。所論は、被告人Eが、原判示第一の一の物件を搬出するにあたり、競落物件以外の物件の搬出については、その認識がなく、責を負うべきいわれはない、などと主張するものである。しかしながら、原判決がその判示第一の一の事実につき挙示した証拠を総合すると、被告人Eは、原判示第一の一の各物件をGから搬出するにあたり、自らその場に出かけて、搬出に従事していた者に対し、他の債権者が差し押えた物件以外は全部持ち出すように指示し、原判示第一の一の各物件全部を搬出させたものであることが認められるのみならず、その際、所論指摘のように被告人Eに競落物件とそうでない物件との区別が判明しないのであれば、なおさら、その照合区分を厳重に実施して競落物件だけを搬出すればたりるのに、かかる所為に出た形跡は、全く認められない。これらの諸事実に照らすと、被告人Eは、当初から、競落物件であるか否かを問わず、すなわち、競落物件以外の物件まで搬出する認識のもとにその搬出行為にあたつたものと解されるから、それについての責を負うべきは、理の当然である。所論は、事実を正視せず、いたずらに原判決が適法に認定した事実を非難するものであつ 件まで搬出する認識のもとにその搬出行為にあたつたものと解されるから、それについての責を負うべきは、理の当然である。 に照らすと、被告人Eは、当初から、競落物件であるか否かを問わず、すなわち、競落物件以外の物件まで搬出する認識のもとにその搬出行為にあたつたものと解されるから、それについての責を負うべきは、理の当然である。所論は、事実を正視せず、いたずらに原判決が適法に認定した事実を非難するものであつ 件まで搬出する認識のもとにその搬出行為にあたつたものと解されるから、それについての責を負うべきは、理の当然である。所論は、事実を正視せず、いたずらに原判決が適法に認定した事実を非難するものであつて、とうてい採用の限りでない。論旨は、理由がない。三、 同第三点以降の分について。所論は、被告人Eにおいて、Gが破産宣告を受けるにいたることを予知していなかつたし、原判示第一の各所為は、すべて適法なものと信じて行なつたものであつて、破産財団に属すべき財産を隠匿ないしは不利益に処分する犯意はなかつたものである、原判示第一の二の収得分も、債権者平等に反しない、などと主張し、原判決には、判決に影響を及ぼす事実の誤認や法令の解釈・適用の誤りがあるとするものである。しかしながら、被告人三名、ことに被告人Eが、Gがすでに破産状態におちいつているものであることを十分承知していて、しかもなお、被告人らの利得のために、債権者を害する目的をもつて、新たに第二会社を設立してこれにGの財産を帰属せしめようと画策実行したものであること前記一において認定したとおりであつて、かかる破産状態にある会社の財産を原判示第一のように隠匿ないし不利益処分すれば、なおさら、その会社が窮状におちいり、必然的に破産宣告を受けるにいたるであろうことは火を見るよりも明らかであつて、この事実だけからみても、計理士・税理士・司法書士等の肩書を有し会社経理等の事務に精通していた被告人Eが、Gの破産宣告を予知できなかつたとする主張は、とうてい容認しうるところではなく、かかることを予知し認識していたからこそ、原判示のように、被告人らは、短期間内に、債権譲渡の仮装・差押・競売・物件の搬出・売掛金の取立等の各所為に出たものであつて、それらの行為自体からみても、被告人三名、ことに被告人Eに、破産財 らこそ、原判示のように、被告人らは、短期間内に、債権譲渡の仮装・差押・競売・物件の搬出・売掛金の取立等の各所為に出たものであつて、それらの行為自体からみても、被告人三名、ことに被告人Eに、破産財団に属すべき財産の隠匿・不利益処分の犯意の存したことが十分うかがわれるのみならず、原判示の冒頭および第一の事実に関する原判決挙示の証拠によれば、その犯意も十分肯認することができる。 ことに被告人Eに、破産財 らこそ、原判示のように、被告人らは、短期間内に、債権譲渡の仮装・差押・競売・物件の搬出・売掛金の取立等の各所為に出たものであつて、それらの行為自体からみても、被告人三名、ことに被告人Eに、破産財団に属すべき財産の隠匿・不利益処分の犯意の存したことが十分うかがわれるのみならず、原判示の冒頭および第一の事実に関する原判決挙示の証拠によれば、その犯意も十分肯認することができる。そして、かかる犯意のもとに、原判示第一の各所為に出ることの違法であることはいうまでもない。なるほど、被告人三名の原判示第一の各所為を外形的にのみ観察すれば、一見合法であるかのごとく見られないわけではないが、これらの各所為は、いずれも、被告人らが、Gの他の債権者からの追及を免れるためと、法網をくぐるための手段としてとられたものであつて、その実体は、あくまでも、第二会社のためにする、破産財団に属すべきGの財産の確保にあつたことは、前記一において認定した諸事実に照らし明らかである。所論は、被告人Eが、被告人健三の指示に従つて競落代金を出したことや、G従業員の退職金を支弁したことなどから、破産宣告を予知せず、かつ、財産隠匿等の犯意のなかつたことをるる主張するけれども、そのしからざること前記のとおりであるのみならず、前記証拠によれば、被告人Eが被告人健三の指示に従つたのは、Gの他の一般債権者を除外して、自己の利益獲得のためには原判示第一の便法をとるにしかずとして、その指示に従つたまでであつて、退職金のごときも、Gの従業員をつなぎとめて、第二会社設立後の転用、社会的信用などを考慮したうえでのものであつたことなどがうかがわれ、その他所論指摘の諸事実を勘案しても、被告人Eに、右の予見ないしは犯意がなかつたとは、とうてい解されない。同被告人の収得が債権者平等に反していないとの主張の当 えでのものであつたことなどがうかがわれ、その他所論指摘の諸事実を勘案しても、被告人Eに、右の予見ないしは犯意がなかつたとは、とうてい解されない。同被告人の収得が債権者平等に反していないとの主張の当たらないことは、さきに一において説明したところによつても明らかである。原判決には、なんら所論のような事実の誤認や法令の解釈・適用の誤りはない。論旨は、理由がない。四、 被告人Aの控訴趣意第一点について。論旨は、左記(一)ないし(三)の所論によつて、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認または法令の適用の誤りがあるとするものであるが、その理由のないことは、左記に判断するところにより、明らかである。 、さきに一において説明したところによつても明らかである。原判決には、なんら所論のような事実の誤認や法令の解釈・適用の誤りはない。論旨は、理由がない。四、 被告人Aの控訴趣意第一点について。論旨は、左記(一)ないし(三)の所論によつて、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認または法令の適用の誤りがあるとするものであるが、その理由のないことは、左記に判断するところにより、明らかである。(一) 所論は、原判示第一の各事実につき、Iは、真実被告人Eから債権譲渡を受けて、その債権の回収に出たものであり、その取立委任を受けた被告人健三において、原判示第一の債権回収の手段を講じたものであつて、被告人Aは、その債務者として、債権者の理由ある請求に対し義務の履行行為を行なつたまでであり、破産宣告のあるまでは、債務者のかかる行為はなんら禁止されていない、また、原判示第一の一の競落物件以外の物件を搬出したのは、Gの工場移転のためである、などと主張し、原判決が原判示第一の各事実を認定し、破産法第三七六条前段、第三七四条第一号を適用して、被告人Aを処罰したことは、甚だしい事実の誤認をおかしたか、右法令の解釈・適用を誤つたものであるというのである。しかしながら、原判示第一の事実に関する原判決挙示の証拠を総合すると、原判示第一の各事実を優に肯認することができ、原審記録に現われたその余の証拠に照らし、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案しても、原判決の右認定には、事実誤認の疑いは、ごうも存しない。しかも、被告人三名、ことに被告人A 肯認することができ、原審記録に現われたその余の証拠に照らし、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案しても、原判決の右認定には、事実誤認の疑いは、ごうも存しない。しかも、被告人三名、ことに被告人Aがそれらの各所為を行なうにいたつたのは、破産状態におちいつたGを見捨てて、被告人らの利得のために、他の一般債権者を害する目的をもつて、新たに第二会社を設立しこれにGの財産を帰属せしめようと画策実行するために、原判示第一の各所為に出たものであること前記一において認定したとおりであつて、被告人Aのこれら所為が、特定債権者に対する適法な義務の履行行為として行なわれたものでないことは、明らかである。したがつて、これが適法な義務の履行行為であることを前提とするその余の主張は、すでにその前提において失当である。 般債権者を害する目的をもつて、新たに第二会社を設立しこれにGの財産を帰属せしめようと画策実行するために、原判示第一の各所為に出たものであること前記一において認定したとおりであつて、被告人Aのこれら所為が、特定債権者に対する適法な義務の履行行為として行なわれたものでないことは、明らかである。したがつて、これが適法な義務の履行行為であることを前提とするその余の主張は、すでにその前提において失当である。また、原判示第一の事実に関する前記証拠によれば、被告人らの原判示第一の一の競落物件以外の物件の搬出は、これら物件が、他の債権者の手中に帰することをおそれたことと、これを第二会社に帰属せしめようとしたための搬出であつて、Gの工場移転のためではないことが認められる。なお、これらの点については、原判決が「当裁判所の判断」の一において詳細説示しているところであつて、その説示は、まことに相当であつて間然するところはない。所論は、事実を正視せず、原判決が適法に認定した事実をいたずらに非難するものであつて、とうてい採用の限りでない。論旨は、理由がない。(二) 所論は、被告人Aが、原判示第一の各事実を行なうにあたり、弁護士たる被告人健三の指導のもとにすべて適法行為と信じて関与したものであるから、違法性の認識がなく、その認識を欠いたことについて相当の理由があつたと認められるので、犯意が阻却される、などと主張するものである。しかしながら、被告人Aが原判示第一の じて関与したものであるから、違法性の認識がなく、その認識を欠いたことについて相当の理由があつたと認められるので、犯意が阻却される、などと主張するものである。しかしながら、被告人Aが原判示第一の各事実を行なうにあたり、その犯意を有していたことは前記一・三・四の(一)において認定したとおりであるのみならず、原判示の冒頭および第一の事実に関する原判決挙示の証拠によると、被告人Aは、Gが破産状態におちいつたことから、特定の人を債権者にしたてて、Gの財産の差押・競売をさせ、終局的にはこれら財産を第二会社に取得させて、Gの債権者の債権を実効のないようにしようと画策し、前記一に認定した被告人Eとそのことを謀議する直前に、信頼していたJにこのことをうち明け、その協力方を要請したところ、同人から「そのようなことをすると、業界からまつ殺され、刑事事件にもなるし、大変なことになる。 人Aは、Gが破産状態におちいつたことから、特定の人を債権者にしたてて、Gの財産の差押・競売をさせ、終局的にはこれら財産を第二会社に取得させて、Gの債権者の債権を実効のないようにしようと画策し、前記一に認定した被告人Eとそのことを謀議する直前に、信頼していたJにこのことをうち明け、その協力方を要請したところ、同人から「そのようなことをすると、業界からまつ殺され、刑事事件にもなるし、大変なことになる。」などといさめられたうえに、実弟であるCからもその非をいさめられていたことが認められる。この事実からみても、被告人Aが、原判示第一の各事実を行なうにあたり、実弟の弁護士である被告人健三の指示に従つて行動した面が多々うかがわれるにしても、なお、その行為の違法性を十分認識し、しかもあえて、原判示第一の各所為に出たものであることが優に肯認されるわら、所論は、とるに由ない。論旨は、理由がない。(三) 所論は、原判示第二の事実につき、被告人Aは、Gの従業員に対する給料の支払にあてるため、同判示の物件を他に売却したものであつて、破産宣告のあるまでは、理由のある債権者の請求に対しその義務を履行することは刑罰法規の禁止するところではない、などと主張するものである。しかしながら、原判示第二の事実に関する原判決挙示の証拠によれば、原判示第二の事実、ことに、被告人Aは、Gが破産宣告を受けるに ることは刑罰法規の禁止するところではない、などと主張するものである。しかしながら、原判示第二の事実に関する原判決挙示の証拠によれば、原判示第二の事実、ことに、被告人Aは、Gが破産宣告を受けるにいたるべきことを予知するや、自己の利益をはかり、同会社の一般債権者を害する目的をもつて、同会社の製品であるインバーター一台を同判示のように他に売却し、もつて、将来同会社の破産財団に属すべき右財産を隠匿した事実を優に肯認することができ、しかも、右証拠によれば、被告人Aの右売却処分は、Gの一般債権者からする財産の差押等を免れるためのものであつて、その売却代金として受け取つた約束手形は、被告人健三に届けられ、Gの従業員に対する給料の支払にあてられたものでないことが認められる。所論は、事実を曲解して、それを前提に、正当な債権者の支払請求を拒みえないとか、あるいは、法令の解釈・適用の誤りがあるなどと主張して、原判決が適法に認定した事実をいたずらに非難するけれども、そのしからざること右のとおりであるから、とうてい採用しがたい。 ためのものであつて、その売却代金として受け取つた約束手形は、被告人健三に届けられ、Gの従業員に対する給料の支払にあてられたものでないことが認められる。所論は、事実を曲解して、それを前提に、正当な債権者の支払請求を拒みえないとか、あるいは、法令の解釈・適用の誤りがあるなどと主張して、原判決が適法に認定した事実をいたずらに非難するけれども、そのしからざること右のとおりであるから、とうてい採用しがたい。論旨は、理由がない。五、 同第二点について。所論は、被告人Aに対する原判決の量刑は、重きに過ぎ、失当である、と主張するものである。 そこで、原審記録を調査し、かつ、当審における事実の取調の結果を総合して考量すると、被告人Aの本件犯行におちいつた経緯・その動機・態様・結果ことにGの他の一般債権者に及ぼした影響等に、同被告人の経歴・性行等諸般の事情を考慮すると、同被告人に対する原判決の量刑は、必ずしも所論のように重きに過ぎるものではない。しかしながら、被告人Aが、窮状におちいつた厚相電機の代表取締役として、その営業目的である電気機械器具の製造・販売をいかなる形においても継続発展させたいと熱望し、かつ、従業員の将来の処遇等に思いを しかしながら、被告人Aが、窮状におちいつた厚相電機の代表取締役として、その営業目的である電気機械器具の製造・販売をいかなる形においても継続発展させたいと熱望し、かつ、従業員の将来の処遇等に思いをめぐらすの余り、ついに本件犯行に出たことは、それがその犯意ないしは期待可能性を欠くものであるとはとうてい認められないにしても、その心情に同情すべき点がないわけではなく、その後その非を反省悔悟し、自ら招いた結果であるとはいえ、細々とその余生を送つている現状を見、かつ、その生活態度・年齢・家庭環境等を考慮すると、同被告人が、本件犯罪と刑法第四五条後段の併合罪の関係にあたるところの、倒産状態にあるGの救済資金を作るため、昭和三四年五月から同年一二月にかけて、電線販売業者から電線を騙取した事件につき、別件詐欺被告事件として起訴され、原判示の確定裁判を受けていることを参酌し、これと本件との情状を併せて考量しても、なお、この際、本件についても刑の執行を猶予し、同被告人を社会に復帰させて、自力更生の機会を与えることこそ、刑政の本義に合するゆえんであると思料されるので、原判決の量刑は、現時点においては、重きに過ぎるきらいがあり、原判決は、この点において破棄を免れない。 業者から電線を騙取した事件につき、別件詐欺被告事件として起訴され、原判示の確定裁判を受けていることを参酌し、これと本件との情状を併せて考量しても、なお、この際、本件についても刑の執行を猶予し、同被告人を社会に復帰させて、自力更生の機会を与えることこそ、刑政の本義に合するゆえんであると思料されるので、原判決の量刑は、現時点においては、重きに過ぎるきらいがあり、原判決は、この点において破棄を免れない。論旨は、理由がある。六、 被告人Bの控訴趣意中弁護人遠藤利一郎の論旨第一点について。所論は、破産法第三七四条第一号所定の行為が破産宣告前に行なわれたときは、その行為と、破産宣告との間に因果関係を必要とするところ、被告人健三らの本件各所為と、厚和電気の破産宣告との間には、このような関係がない旨を主張するものである。<要旨第一>しかしながら、破産法第三七四条第一号の法意は、債務者が、自己もしくは他人の利益をはかり、または、</要旨第一>債権者を害する目的をもつて、破産財団に属すべき、または、 ものである。<要旨第一>しかしながら、破産法第三七四条第一号の法意は、債務者が、自己もしくは他人の利益をはかり、または、</要旨第一>債権者を害する目的をもつて、破産財団に属すべき、または、属した財産を隠匿、毀棄または債権者の不利益に処分することを禁じ、もつて、破産財団を共同担保とする一般債権者の利益を保護することにあり、右に違反した債務者を処罰するためには、破産宣告の確定したことを条件とするけれども、それ以上に、債務者の右違反行為と破産宣告との間に、その行為がなければ通常破産宣告がなされるにいたらなかつたであろうという因果関係を必要とするものではない。このことは、同条違反の罪が、同条に該当する行為を犯罪の成立要件として、その行為の結果現実にいかなる財産上の損害を生じたか、その損害の大小等を全くその要件としていないのに、他方、破産宣告は、その裁判のときを基準にして、債務者の支払不能(同法第一二六条第一項)、支払停止(同条第二項)、あるいは債務超過(同法第一二七条第一項)を原因としてなされるものであつて、それ以上に、それがいわゆる破産犯罪によつて生じたものであるかどうかなどの破産原因のよつてきたるもろもろの事実を逐一調査確認して、その要件としなければならないものではないことに照らせば明らかである。 としていないのに、他方、破産宣告は、その裁判のときを基準にして、債務者の支払不能(同法第一二六条第一項)、支払停止(同条第二項)、あるいは債務超過(同法第一二七条第一項)を原因としてなされるものであつて、それ以上に、それがいわゆる破産犯罪によつて生じたものであるかどうかなどの破産原因のよつてきたるもろもろの事実を逐一調査確認して、その要件としなければならないものではないことに照らせば明らかである。しかも、他面、本件においては、原判決挙示の証拠により明らかな、被告人三名が、Gがすでに破産状態におちいり、破産宣告を受けるにいたるであろうことを十分承知しながら、自己の利益をはかり、他の一般債権者を害する目的をもつて、あえて原判示の各所為に出たものであることの原判示の事実ならびに前記一において認定した事実、ことに、被告人らの所為が破産財団を害している事実等を考慮すると、被告人らの本件所為は、Gの破産宣告をより早く確実ならしめたものであつて のであることの原判示の事実ならびに前記一において認定した事実、ことに、被告人らの所為が破産財団を害している事実等を考慮すると、被告人らの本件所為は、Gの破産宣告をより早く確実ならしめたものであつて、管轄裁判所がこの事実をとらえてそれを破産宣告の原因となるものとみたかどうかは別としても、被告人らの本件所為とGの破産との間に優にその因果関係のあることを肯認することができる。論旨は、いずれの点からみても理由がない。七、 同被告人の控訴趣意中その余の量刑関係以外の論旨について。論旨は、左記(一)ないし(三)の所論のとおりであるが、その理由のないことも、左記に判断するとおりである。(一) 所論は、原判示第一の各事実につき、同判示の各債権譲渡は、いずれも真正になされたものであつて、被告人健三は、その譲受人Iの委任に基づき、同判示の差押・競売・競落物件の譲渡、売掛金の回収等に関与したものであり、また、債務者は、破産宣告のあるまでは自由にその財産を処分することができるところ、被告人Aは、債務者として、債権者の理由ある請求に対し義務の履行行為をしたまでであつて、原判示第一の一の競落物件以外の物件の搬出も、Gの工場移転のためであつたにすぎず、したがつて、被告人健三は、これら各所為に関与するにあたり、債権者を害する目的もなく、また、Gの破産財団に属すべき財産の隠匿ないしは不利益処分をしたものでもなく、すべて適法に行なつたものであるから、原判決は、採証法則に違背し、ひいては事実誤認の違法をおかしたのみならず、法令の解釈・適用を誤つたものである、などと主張するものである。 の一の競落物件以外の物件の搬出も、Gの工場移転のためであつたにすぎず、したがつて、被告人健三は、これら各所為に関与するにあたり、債権者を害する目的もなく、また、Gの破産財団に属すべき財産の隠匿ないしは不利益処分をしたものでもなく、すべて適法に行なつたものであるから、原判決は、採証法則に違背し、ひいては事実誤認の違法をおかしたのみならず、法令の解釈・適用を誤つたものである、などと主張するものである。しかしながら、原判示第一の事実に関する原判決挙示の証拠を総合すると、原判示第一の各事実を優に肯認することができるのであつて、原審記録に現われたその余の証拠を検討し、かつ、当審におけ ものである。しかしながら、原判示第一の事実に関する原判決挙示の証拠を総合すると、原判示第一の各事実を優に肯認することができるのであつて、原審記録に現われたその余の証拠を検討し、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案しても、原判決の右認定には、採証・認定を誤るとか、事実誤認の疑いはなく、また、原判決をつぶさに検討しても、所論指摘の法令の解釈・適用の誤りは見当たらない。そして、被告人健三らの原判示第一の各所為が原判示の各法条にあたる犯罪行為であることは、原判決が「当裁判所の判断」の一において詳細説示しているところであつて、さらに当裁判所も前記一・三・四の(一)において若干説明したとおりであり、また、債務者が破産宣告を受けるまでは、自由にその財産を処分しうるとしても、被告人Aの原判示第一の各所為が、債務者としての義務の履行行為にあたらないことは、前記四の(一)において説明したとおりである。<要旨第二>しかして、破産法第三七四条第一号にいわゆる「隠匿」とは、債権者からする債務者の財産の発見を不能または</要旨第二>困難にする行為を指称し、所論指摘の財産の所有権関係を不明にするとか、あるいは、財産を場所的に移動させてその所在を不明にする行為などをも包含する概念であるものと解されるところ、被告人三名は、自らの利得のために、他の一般債権者を害する目的をもつて、Gの財産を新たに設立する第二会社に帰属せしめようと画策実行するため、原判示第一の一の各所為に出たものであること前記一において認定したとおりであつて、同判示の差押物件の競落、物件の搬出等は、いずれも債権者からするそれら物件の発見を不能または困難ならしめる行為にほかならず、しかも、それらは、被告人らの利得のために、他の債権者を害する目的のもとになされた隠匿の発展していく行為であつて、原判 的をもつて、Gの財産を新たに設立する第二会社に帰属せしめようと画策実行するため、原判示第一の一の各所為に出たものであること前記一において認定したとおりであつて、同判示の差押物件の競落、物件の搬出等は、いずれも債権者からするそれら物件の発見を不能または困難ならしめる行為にほかならず、しかも、それらは、被告人らの利得のために、他の債権者を害する目的のもとになされた隠匿の発展していく行為であつて、原判 れも債権者からするそれら物件の発見を不能または困難ならしめる行為にほかならず、しかも、それらは、被告人らの利得のために、他の債権者を害する目的のもとになされた隠匿の発展していく行為であつて、原判決は、これらの事実を具体的に摘示し、かつ、それら所為を包括して一つの隠匿行為にたるものとして処断したものであることは、その判文上明白であるから、原判決には、理由不備の違法はない。所論は、Gの第二会社は、一般債権者に秘して設立されたものではない、と主張するけれども、原審記録によれば、Gの第二会社であるK株式会社は、昭和三五年一月二一日設立登記されたものであることが認められ、かつ、その設立についてのあいさつ状などが準備されていたことがうかがわれないわけではないけれども、それらは、いずれも、被告人らが原判示第一の各仮装債権譲渡・物件の差押および競売などを行なつたのちのことであつて、少なくともそれまでは、Gの他の一般債権者に対し、右第二会社の設立を秘していたものであることは、原判示の冒頭および第一の事実に関する原判決挙示の証拠に照らし明らかであるから、右の主張は、とうてい採用しがたい。また、所論は、原判示第一の一の各物件の時価を適正に評価していない、と主張するけれども、それら物件の時価をどう評価するかについては、その買入価格・使用および耐用年数・経済的需要供給の関係・その他もろもろの要因によつて異なるものであるうえに、証人Lの原審公判廷における供述によれば、一般の取引価格に比し、動産の競売価格が極端に低廉に見られる場合のあることが認められることなどを考慮すると、原判決が、原判示第一の事実について挙示した証拠により、これら物件の時価を同判示のように認定したのも、相当であつて、あながち不当な評価であるとはいえない。その他、所論は、原判示の一言半句をとらえ と、原判決が、原判示第一の事実について挙示した証拠により、これら物件の時価を同判示のように認定したのも、相当であつて、あながち不当な評価であるとはいえない。 る場合のあることが認められることなどを考慮すると、原判決が、原判示第一の事実について挙示した証拠により、これら物件の時価を同判示のように認定したのも、相当であつて、あながち不当な評価であるとはいえない。その他、所論は、原判示の一言半句をとらえ と、原判決が、原判示第一の事実について挙示した証拠により、これら物件の時価を同判示のように認定したのも、相当であつて、あながち不当な評価であるとはいえない。その他、所論は、原判示の一言半句をとらえて、そのしからざることをるる主張し、あるいは、独自の見解に基づき、被告人健三らの原判示第一の各所為が適法であることを様々に主張するけれども、原判決をしさいに検討すれば、所論の非違の存しないことは、まことに明白であつて、それら主張の採用しがたいことは、いうまでもない。論旨は、理由がない。(二) 所論は、原判示第三の事実につき、同判示の約束手形および小切手は、被告人健三が、Gの債権者であるIの代理人として、同会社の代表取締役である被告人Aから任意弁済を受け、これを右佐渡のために保管していたものであつて、もちろんGの債権者を害する目的もなく、破産財団に属すべき財産を隠匿したものでもなく、また、横領の犯意もなかつたものである。しからずとしても、右手形等は、被告人A個人のために保管していたものであるところ、同被告人は被告人健三の実兄であるから、これを横領罪として問責するためには被告人Aの告訴を必要とするのに、その告訴がない、などと主張するものである。しかしながら、原判示第三の事実に関する原判決挙示の各証拠を総合すると、原判示第三の事実(ただし、別表三の番号2の手形金額欄の数字「二三〇、〇〇〇」は、「二三〇、二〇〇」の誤記であることが明らかである。)、ことに、被告人健三は、Gのために同判示の手形等を預かり、これを業務上保管中、同判示のように、自己の利益をはかり、同会社の一般債権者を害する目的をもつて、これら手形等をいずれも銀行の預金に入金して着服横領し、もつて、将来破産財団に属すべき財産を隠匿した事実を優に肯認することができる。(論旨中、同被告人が かり、同会社の一般債権者を害する目的をもつて、これら手形等をいずれも銀行の預金に入金して着服横領し、もつて、将来破産財団に属すべき財産を隠匿した事実を優に肯認することができる。(論旨中、同被告人がM銀行N支店やO信用金庫P支店から手形を受け取るにあたり、精算尻不足金を支払つているのに、原判示には、横領手形の金額からこれが差し引かれていないことを攻撃しているけれども、この横領の客体は、手形自体であるから、原判決がその手形の金額をそのまま表示したことは、正当であつて、所論の点は、情状として考慮されるものである。 破産財団に属すべき財産を隠匿した事実を優に肯認することができる。(論旨中、同被告人がM銀行N支店やO信用金庫P支店から手形を受け取るにあたり、精算尻不足金を支払つているのに、原判示には、横領手形の金額からこれが差し引かれていないことを攻撃しているけれども、この横領の客体は、手形自体であるから、原判決がその手形の金額をそのまま表示したことは、正当であつて、所論の点は、情状として考慮されるものである。)原審記録を調査し、かつ、当審における事実の取調の結果を勘案しても、原判決の右認定には、採証の誤りや、事実の誤認ないしは所論指摘の非違は存しない。しかも、その理由については、原判決が「当裁判所の判断」としてその一および三に詳細説示し、当裁判所も、共謀の経緯について前記一において説明したとおりであつて、被告人健三が、債権者を害する目的をもつて、かつ、隠匿・横領の犯意をもつてその所為に出たことは、右の諸事実に照らし十分肯認しうるところである。所論は、事実を曲解し、原判示第三の手形等は、被告人A個人のために保管していたものであるとして、同被告人の告訴を欠く旨を主張するけれども、右手形等は、Gの所有であつて、被告人健三が同会社のために保管していたものであることは、原判示第三のとおりであるから、その主張は、すでにその前提において失当であり、とうてい採用の限りでない。また、所論は、右手形等をIないしは被告人Eに渡さなかつたのは、弁護士報酬金・損害賠償金等に充当するためである、などと主張するけれども、右手形等は、いずれもGの所有であつて、同会社のために保管していたものであること右のとおりである以上、これを佐渡ないしは被告人Eに渡す必要のないこと 等に充当するためである、などと主張するけれども、右手形等は、いずれもGの所有であつて、同会社のために保管していたものであること右のとおりである以上、これを佐渡ないしは被告人Eに渡す必要のないことは、理の当然であつて、同人らに渡すべきことを前提にしてその渡さなかつた事由を種々弁疏するその余の主張は、すでにその前提において失当であり、また、横領した金員の使途についてもるる弁明するけれども、それらの事実は、量刑の一事情としてはともかく、右犯罪の成立に消長をきたすものではないから、それらの主張は、いずれの点からみても採用しがたい。論旨は、理由がない。(三) 所論は、以上のほか、原判示の各事実およびそれを認定した原裁判所の判断説示の一言半句をとらえて、独自の見解をもつて、原判決には、採証法則に反するとか、事実誤認・理由不備・法令の解釈・適用の誤り等がある旨の主張をるる開陳しているけれども、原判決をつぶさに検討すれば、所論指摘の非違は存しないから、それらの主張は、とうてい採用の限りでない。 は、いずれの点からみても採用しがたい。論旨は、理由がない。(三) 所論は、以上のほか、原判示の各事実およびそれを認定した原裁判所の判断説示の一言半句をとらえて、独自の見解をもつて、原判決には、採証法則に反するとか、事実誤認・理由不備・法令の解釈・適用の誤り等がある旨の主張をるる開陳しているけれども、原判決をつぶさに検討すれば、所論指摘の非違は存しないから、それらの主張は、とうてい採用の限りでない。論旨は、理由がない。八、 同被告人の控訴趣意中量刑不当の論旨について。所論は、被告人健三に対する原判決の量刑は、重きに過ぎ失当である、と主張するものである。そこで、原審記録を調査し、かつ、当審における事実の取調の結果を総合して考量すると、被告人健三は、弁護士として、元来、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、社会の師表に立つべき倫理性が強く要請される地位にありながら、あえて、法律的知識を悪用し、被告人三名のなかでもその中心的立場に立つて、本件犯行に出たものであつて、その動機・態様・結果ことにGの他の一般債権者に及ぼした影響等諸般の事情を考慮すると、被告人健三に対する原判決の量刑は、やむをえないものというべきである。しかしながら、 件犯行に出たものであつて、その動機・態様・結果ことにGの他の一般債権者に及ぼした影響等諸般の事情を考慮すると、被告人健三に対する原判決の量刑は、やむをえないものというべきである。しかしながら、被告人健三のことここにいたつたゆえんは、実兄である被告人Aの窮状を助けようとする余りの犯行であつたこともうかがわれ、その心情に同情すべき点がないわけではなく、また、本件犯行後その非を反省悔悟し、被害弁償等に努力していること、その他被告人健三の年齢・経歴・犯行後の生活態度等諸般の事情を考慮すると、同被告人は、自力をもつてしても十分更生しうるものと認められるので、この際相当期間刑の執行を猶予するのが相当であると思料されるから、原判決の量刑は、結局現時点からみれば、重きに過ぎるものがある。論旨は、理由がある。九、 結び。よつて、被告人Eの本件控訴は、理由がないから、刑事訴訟法第三九六条により、これを棄却することとし、被告人Aおよび同健三の本件各控訴は、いずれも理由があるから、同法第三九七条第一項、第三八一条により、原判決中被告人Aおよび同健三に関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い、当審において直ちに自判することとし、原判決が証拠(ただし、原判決の一八ページ六行目に「同月四日」と記載されているのは、「同年五月四日」の誤記と認められる。 、理由がないから、刑事訴訟法第三九六条により、これを棄却することとし、被告人Aおよび同健三の本件各控訴は、いずれも理由があるから、同法第三九七条第一項、第三八一条により、原判決中被告人Aおよび同健三に関する部分を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い、当審において直ちに自判することとし、原判決が証拠(ただし、原判決の一八ページ六行目に「同月四日」と記載されているのは、「同年五月四日」の誤記と認められる。)により確定した右被告人両名の各犯罪事実(ただし、別表三のうちの前記誤記を訂正したもの)に、そのかかげる相当法条を適用し(ただし、被告人Aの原判示第一および第二の各破産法違反の罪、被告人健三の原判示第一および第三の各破産法違反の罪は、それぞれ、同一の破産宣告を予知してその犯行に出たものであるから、破産宣告確定という処罰条件のもとに包括して一罪として処断すべきである。)、さらに、被告人Aに関しては、刑法第四 各破産法違反の罪は、それぞれ、同一の破産宣告を予知してその犯行に出たものであるから、破産宣告確定という処罰条件のもとに包括して一罪として処断すべきである。)、さらに、被告人Aに関しては、刑法第四五条後段、第五〇条を適用し、被告人健三に関しては、同法第五四条第一項前段、第一〇条を適用して、犯情の重いと認める原判示第三の業務上横領罪の刑に従い、それぞれ所定刑期の範囲内において、被告人Aを懲役一年二月に、被告人健三を懲役一年六月におのおの処し、その各刑の執行猶予につき同法第二五条第一項を、原審における訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を各適用して、主文のとおり判決する。(裁判長判事堀義次判事内田武文判事金子仙太郎)

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