平成29年8月30日判決言渡平成24年(行ウ)第185号所得税更正処分取消等請求事件主文 1 本件訴えのうち,A税務署長が原告らに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の各更正処分(ただし,いずれも同年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)のうち各原告が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 A税務署長が原告Cに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同原告が納付すべき税額1190万4100円を超える部分並びに同所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも同年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 2 A税務署長が原告Dに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同原告が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びに同所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも同年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 3 A税務署長が原告Eに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600 円及び同原告が 21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600 円及び同原告が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びに同所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも同年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 4 A税務署長が原告Fに対し平成22年4月21日付けでしたBの平成19年分の所得税の更正処分のうち総所得金額3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額1812万5000円,申告納税額5048万5600円及び同原告が納付すべき税額238万0800円を超える部分並びに同所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれも同年9月8日付けの異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,G株式会社(以下「G」という。)の代表取締役であった被相続人Bが,自身の有していたGの株式のうち72万5000株を,平成19年8月1日,有限会社H(以下「H」という。)に対して譲渡したこと(以下,これを「本件株式譲渡」といい,本件株式譲渡に係るGの株式を「本件株式」という。)につき,Bの相続人であり相続によりBの平成19年分の所得税の納付義務を承継した原告らが,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額を譲渡対価と同じ金額(別紙1の配当還元方式により算定した価額に相当する金額)として,Bの上記所得税の申告をしたところ,所轄のA税務署長が,本件株式譲渡の譲渡対価はその時における本件株式の価額(別紙1の類似業種比準方式により算定した価額)の2分の1に満たないから,本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるとして,各原告に対し,更正 渡の譲渡対価はその時における本件株式の価額(別紙1の類似業種比準方式により算定した価額)の2分の1に満たないから,本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるとして,各原告に対し,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたことから,原告らが,これらの処分(更正処分については修正申告又は先行する更正処分の金額を超える部分)の各取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙1「関係法令等の定め」に記載のとおりである(同別紙における略称は, 以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(当事者間において争いがないか,掲記の証拠等により認められる。)(1) 関係者についてア GについてGは,昭和25年9月に設立された,金属製品及び消防器材の製造及び販売等を業とする資本金4億6000万円の株式会社である。Gの販売主力商品は,ハンドル・取手,錠前・ファスナー,蝶番・ステー等であり,本件株式譲渡の直前の事業年度である平成19年1月期の売上金額は約236億5000万円,平成19年1月現在の従業員数は449人である。 本件株式譲渡の時点(平成19年8月1日)において,Gの発行済株式総数は920万株であり,Gの株主は,1株につき1個の議決権を有する。 また,Gにおいては,定款においてその株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めている。 本件株式譲渡の時点において,Gは,評価通達178に規定する「大会社」に,Gの株式は,所得税基本通達23~35共-9の(4)ニの株式及び評価通達における「取引相場のない株式」に,それぞれ該当する(甲6,弁論の全趣旨)。 なお,本件株式譲渡前後のGの株主構成は後記(3)のとおりである。 イ HについてHは,平成16年2月に金銭の貸付業,株式投資業等を目的 」に,それぞれ該当する(甲6,弁論の全趣旨)。 なお,本件株式譲渡前後のGの株主構成は後記(3)のとおりである。 イ HについてHは,平成16年2月に金銭の貸付業,株式投資業等を目的として設立された会社である。(なお,H及び後記のIは,いずれも会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律施行前の有限会社であるが,以下では,その社員を「株主」,その出資を「株式」と表記する。)ウ BについてBは,本件株式譲渡の当時(平成19年8月1日),Gの代表取締役社長の地位にあった者であり,平成19年▲月▲日死亡した(以下,Bを被 相続人とする相続を「本件相続」という。)。 エ Bの相続人についてBの相続人は,配偶者である原告C,子である原告D,原告E,原告F(本件相続開始当時の姓は○○。以下「原告F」といい,原告D,原告Eと併せて「原告Dら」という。)及びJ並びに孫(代襲相続人)であるKの6名である。 (2) 事実経過等ア本件株式譲渡についてBは,平成19年8月1日,Hに対し,自己が有するGの株式のうち72万5000株(本件株式)を,代金1株当たり75円,合計5437万5000円,代金の支払期限を同月10日までなどとして譲渡した(本件株式譲渡)。本件株式譲渡における1株当たり75円という代金額は,本件株式を配当還元方式により評価して得た金額と同額である(甲5の1,甲7,弁論の全趣旨)。 イ原告らに対する課税処分の経緯等(ア) 本件相続に伴い,原告らは,平成20年3月13日,品川税務署長に対して,Bの平成19年分の所得税につき所得税法125条1項による確定申告書(準確定申告書)を提出し,同申告書は所轄のA税務署長に移送された。この申告は,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額 署長に対して,Bの平成19年分の所得税につき所得税法125条1項による確定申告書(準確定申告書)を提出し,同申告書は所轄のA税務署長に移送された。この申告は,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額を,その代金額と同額の1株当たり75円とするものであった。 (イ) 原告Cは,平成22年3月25日,A税務署長に対して,上記(ア)の申告について,不動産所得等の計算に誤りがあったとして,修正申告書を提出した。 A税務署長は,同年4月20日付けで,上記修正申告を踏まえて,原告Cに対しては,過少申告加算税の賦課決定処分を,原告Dらに対しては,上記修正申告と同旨の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分 をした。 上記修正申告及び各更正処分は,Bの平成19年分の所得税につき,総所得金額を3億0418万7219円,株式等に係る譲渡所得等の金額を1812万5000円,申告納税額(算出所得税額から配当控除額及び源泉徴収税額を控除した金額)を5048万5600円,納付すべき税額(申告納税額から予定納税額を控除した金額)を2380万8200円とするものであり,上記各賦課決定処分は,過少申告加算税の額を8万9000円とするものであった。 (ウ) A税務署長は,平成22年4月21日付けで,原告らに対し,本件株式譲渡の時における本件株式の価額は類似業種比準方式により算定した1株当たり2990円であり,本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるから,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額は1株当たり2990円であるとして,Bの平成19年分の所得税の更正処分(原告Dらとの関係では再更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。 これらの処分は,Bの平成19年分の所得税につき,上記(イ)の修正申告及び各処分の金額から,株式等 所得税の更正処分(原告Dらとの関係では再更正処分)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。 これらの処分は,Bの平成19年分の所得税につき,上記(イ)の修正申告及び各処分の金額から,株式等に係る譲渡所得等の金額を20億5936万2500円に,申告納税額を3億5667万1100円に,納付すべき税額を3億2999万3700円に,過少申告加算税の額を3999万5000円にそれぞれ増額するものであり,原告らに対する各処分通知書には,「本税の額」(差引納付すべき税額)を3億0618万5500円,「加算税の額」を3999万5000円とした上で,「あなたは,『本税の額』を民法第900条から第902条までに規定するあなたの相続分に応じてあん分して計算した税額と,その税額に基づいて計算した加算税の額を併せて納付してください。」と記載されていた(甲4の1~3,乙1)。 A税務署長は,これらの処分と同時に,原告らに対し,原告Cの相続分を2分の1,原告Dら及びJの相続分を各8分の1(Kの相続分は0)として上記本税の額及び加算税の額をあん分して計算した金額に基づく納付書を送付した(甲16の1~3,弁論の全趣旨)。 (エ) 上記(ウ)の更正処分等に対し,原告C,原告D及び原告Eは,平成22年6月16日付けで,原告Fは同月21日付けで,東京国税局長に対し,それぞれ異議申立てをした。 この異議申立てに対し,東京国税局長は,同年9月8日付けで,原告らに対し,上記(ウ)の更正処分における本件株式の価額算定に当たり類似業種の選定に誤りがあり,その価額は1株当たり2505円であるとして,その処分及び過少申告加算税賦課決定処分の一部を取り消す旨の異議決定をした(以下,この異議決定により一部が取り消された後の原告らに対する各更正処分及び過少申告加算 1株当たり2505円であるとして,その処分及び過少申告加算税賦課決定処分の一部を取り消す旨の異議決定をした(以下,この異議決定により一部が取り消された後の原告らに対する各更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をそれぞれ「本件各更正処分」及び「本件各賦課決定処分」といい,これらを併せて「本件各更正処分等」という。)。 上記異議決定は,Bの平成19年分の所得税につき,上記(ウ)の更正処分等の金額から,株式等に係る譲渡所得等の金額を17億2531万8750円に,申告納税額を3億0656万4500円に,納付すべき税額を2億7988万7100円に,過少申告加算税の額を3247万8500円にそれぞれ減額するものであり,その決定書には,「異議申立人の納付すべき税額及び過少申告加算税の額は,上記金額のうち,国税通則法第5条に基づき承継する金額となります。」と記載されている(甲6,乙2)。 A税務署長は,上記異議決定に基づき,原告Dらに対し,原告Dら,J及びKの相続分を各10分の1としてあん分して計算した税額と納付済みの金額との差額を還付するなどした(甲17の1・2,乙72,弁 論の全趣旨)。 (オ) 本件各更正処分等に対し,原告C,原告D及び原告Eは,平成22年10月5日付けで,原告Fは,同月7日付けで,国税不服審判所長に対し,それぞれ審査請求をした。 これに対し,国税不服審判所長は,平成23年9月28日付けで,原告らの審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。 原告らは,平成24年3月28日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 ウ Kに対する課税処分の経緯等(乙68)(ア) A税務署長は,平成22年11月9日付けで,Kに対し,Kが本件相続によりBの平成19年分の所得税の納付義務を承継したとして,同所得税の決定処分及 ウ Kに対する課税処分の経緯等(乙68)(ア) A税務署長は,平成22年11月9日付けで,Kに対し,Kが本件相続によりBの平成19年分の所得税の納付義務を承継したとして,同所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をした。 (イ) これに対し,Kは,Bが遺言によりKの相続分を0と定めたことから,Kが納付義務を承継するBの所得税の額も0円であるとして,上記各処分の取消しを求める訴えを東京地方裁判所に提起した。 同裁判所は,平成25年10月18日,上記Kの主張を容れて,上記各処分を取り消す旨の判決(以下「別件判決」という。)を言い渡し,同判決は確定した。 (3) Gの株主構成(甲5の1,甲6,7。括弧内は発行済株式総数に対して占める割合(%))ア本件株式譲渡前(平成19年7月31日以前)(ア) B 146万0700株(15.88)(イ) Bの親族(以下「B親族ら」という。)合計63万5820株(6.91)以上合計 209万6520株(22.79)(ウ) 有限会社I(以下「I」という。)222万4400株(24.18) (エ) G経営研究会持株会(以下「研究会持株会」という。)221万0730株(24.03)(オ) G従業員持株会(以下「従業員持株会」という。)231万5150株(25.16)(カ) その他の個人株主合計35万3200株(3.84)イ本件株式譲渡後(平成19年8月1日以後)(ア) B 73万5700株(8.00)(イ) B親族ら合計63万5820株(6.91)以上合計 137万1520株(14.91)(ウ) H 72万5000株(7.88)(エ) I 222万 株(8.00)(イ) B親族ら合計63万5820株(6.91)以上合計 137万1520株(14.91)(ウ) H 72万5000株(7.88)(エ) I 222万4400株(24.18)(オ) 研究会持株会 221万0730株(24.03)(カ) 従業員持株会 231万5150株(25.16)(キ) その他の個人株主合計35万3200株(3.84)ウなお,B及びB親族らは,評価通達188の適用において,相互に「同族関係者」に当たる。 3 本件各更正処分等の根拠被告が本件訴訟において主張する本件各更正処分等の根拠は,別紙2別表1及び2に記載のとおりであり,総所得金額,株式等に係る譲渡所得等の金額,申告納税額,納付すべき税額及び過少申告加算税の額はいずれも本件各更正処分等と同額である。このうち,株式等に係る譲渡所得等の金額17億2531万8750円は,本件株式譲渡に係る譲渡所得の収入金額18億1612万5000円(1株当たり2505円×72万5000株)から取得費の額9080万6250円(租税特別措置法通達37の10-14の取扱い(乙10)による収入金額の5%相当額)を控除した後の金額である。 4 争点 (1) 本件株式譲渡が所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるか低額譲渡の判定の基礎となる本件株式譲渡の時における本件株式の価額について,被告は評価通達に定める類似業種比準方式により評価すべきであると主張するのに対し,原告らはこれを争っており,具体的な争点は,①所得税基本通達59-6の(1)の条件下における評価通達188の議決権割合の判定方法(争点①),②本件株式譲渡における譲渡代金額をもって時価といえるか(争点②)である。 (2) 本件各更正処分等により原告 本通達59-6の(1)の条件下における評価通達188の議決権割合の判定方法(争点①),②本件株式譲渡における譲渡代金額をもって時価といえるか(争点②)である。 (2) 本件各更正処分等により原告Dらがそれぞれ納付すべき税額についての被告の主張変更の当否原告らは,被告が本件訴訟において原告Dらの相続分は各10分の1ではなく各8分の1であるとし,本件各更正処分等により原告Dらがそれぞれ納付すべき税額についての主張を変更したことに関し,このような主張変更による追加課税は再更正処分の除斥期間の経過及び信義則違反により違法であり,訴訟上の主張としても,別件判決の効力は原告らに及ばないから失当であり,時機に後れた攻撃防御方法でもあると主張するのに対し,被告はこれらを争っている。 5 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点(1)(本件株式譲渡が所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるか)についてア所得税基本通達59-6の(1)の条件下における評価通達188の議決権割合の判定方法(争点①)について(被告の主張)(ア) 所得税基本通達59-6の(1)は,取引相場のない株式について,株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権割合により,評価通達188の定めに基づき,当該株式が「同族株主以外の株主等が取得した株式」に当たるか否かを判断すべきことを定めたものである。 これは,譲渡所得課税制度の趣旨が,譲渡人に帰属する資産の保有期間中の増加益を所得として課税する点にあることからすれば,その増加益は株式の譲渡人の譲渡直前の議決権割合により判定することが最も合理的といえるためである。 (イ) 本件株式譲渡の直前において,自己及びその同族関係者の有するGの議決権の合計数が同社の議決権総数の30%以上 譲渡直前の議決権割合により判定することが最も合理的といえるためである。 (イ) 本件株式譲渡の直前において,自己及びその同族関係者の有するGの議決権の合計数が同社の議決権総数の30%以上である株主(同族株主)はいないから,本件株式は,評価通達188の(1)及び(2)の株式に該当しない。また,本件株式譲渡の直前において,B及びその同族関係者(B親族ら)は,Gの議決権総数の15%以上(22.79%)の議決権を有し,かつ,B個人も,Gの議決権総数の5%以上(15.88%)の議決権を有していたから,本件株式は,評価通達188の(3)及び(4)の株式にも該当しない。 したがって,本件株式は,「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当しないから,評価通達178本文,179の(1)により,原則的評価方法である類似業種比準方式により評価すべきことになる。 (ウ) よって,本件株式譲渡の時における本件株式の価額は,1株当たり2505円であり,本件株式譲渡は,この価額の2分の1に満たない金額によるものであるから,所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たる。 (原告らの主張)(ア) 所得税基本通達59-6は,取引相場のない株式の価額につき,一定の条件の下で評価通達の例により算定すべきものと規定し,その条件としての(1)は,評価通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうかは,株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権の数により判定すると規定している。他方で,同様の条件は評価通達188の(2)~(4)については規定されていない。 そうすると,評価通達188の(3)のうち,「同族株主のいない会社」 であるかどうかの判定(会社区分の判定)は,所得税基本通達59-6の(1)により株 ては規定されていない。 そうすると,評価通達188の(3)のうち,「同族株主のいない会社」 であるかどうかの判定(会社区分の判定)は,所得税基本通達59-6の(1)により株式譲渡直前の議決権の数により行うことになるとしても,「課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式」に該当するかどうかの判定(株主区分の判定)は,その文言どおり,株式の取得者の取得後の議決権割合により行うのが相当である。このような評価通達の文言に忠実な解釈は,実務上,通達も法律に準じ広く一般に周知され,納税者の指針となっていることに鑑みれば,租税法律主義の下で課税に関する予測可能性を保障するという要請に適うものといえる。 また,所得税法59条1項の趣旨は,譲渡人に帰属するキャピタル・ゲインの清算課税を行うというものであるが,このことから直ちに株式の価額の評価を譲渡人の議決権割合に基づいてすべきということにはならず,清算すべき「その時における価額」,すなわち客観的交換価値の評価の在り方が問題となる。取引相場のない株式の売買を行う場合には,譲受人が取得株式に期待するものが何かという譲受人側の事情が,取引価額の決定要素となり,譲受人が少数株主となる場合には配当を期待して売買価額を決定することになるため,配当還元方式により評価することが合理的である。 以上によれば,評価通達188の(3)における株主区分の判定は,株式の取得者の取得後の議決権割合により行うべきである。 (イ) 本件株式譲渡の直前において,Gには,自己及びその同族関係者が30%以上の議決権を有する株主がいないから,Gは「同族株主のいない会社」である。そ の議決権割合により行うべきである。 (イ) 本件株式譲渡の直前において,Gには,自己及びその同族関係者が30%以上の議決権を有する株主がいないから,Gは「同族株主のいない会社」である。そして,Hの本件株式取得後の議決権割合は,7.88%であり,Hには同族関係者がおらず,その議決権割合は15%未満にとどまる。 したがって,本件株式は,評価通達188の(3)の株式に該当するから,評価通達188-2に従い,配当還元方式により評価すべきことになる。 (ウ) よって,本件株式譲渡の時における本件株式の価額は,1株当たり75円と評価され,本件株式譲渡の対価はこれと同額であるから,本件株式譲渡は,所得税法59条1項2号の低額譲渡には当たらない。 イ本件株式譲渡における譲渡代金額をもって時価といえるか(争点②)について(原告らの主張)(ア) 所得税法上の低額譲渡の場合における適正価額の認定は,動態的評価の場面である。資産を売買する場合のような動態的評価の場面では,同じ資産であっても,売買に至る経緯や事情等の主観的要因により成立する取引価額は異なるから,当該取引の売買価額が適正であるかどうかの判断は,相当な幅をもって弾力的に行うべきである。 そして,市場が形成されていない非上場株式等の動態的評価の場合には,客観的な市場価額が存在しないことに加え,当該株式の議決権の程度等の経営参画の法的度合いが異なるなど売買価額の形成に影響を及ぼす個別的要因を考慮する必要がある点で,適正価額の認定には極めて困難を伴う。そのため,利害相反する第三者間で成立した売買価額は,税務上,原則として正常な取引条件で成立した適正価額(時価)と取り扱われることになる。 (イ) 本件の場合, 認定には極めて困難を伴う。そのため,利害相反する第三者間で成立した売買価額は,税務上,原則として正常な取引条件で成立した適正価額(時価)と取り扱われることになる。 (イ) 本件の場合,Hは,既存のGの持株会を補完するものとしてGの役員や従業員の福利厚生を目的に設立され,現に株主の負担においてHへの出資がされており,Hから株主への配当もされている等,Hは,Bとは独立した第三者であり,本件株式譲渡は,利害相反する第三者間で行われたものである。 そして,Gの少数株主となるにすぎないHにとって,本件株式の実質 的な経済的価値は配当への期待のみであり,このような買主の主観的事情を考慮すれば,本件株式を配当還元方式により評価することは当然であるから,本件株式譲渡は「時価」によりなされたものである。 (ウ) よって,本件株式譲渡は,時価による譲渡であるため,評価通達の解釈を論ずるまでもなく,所得税法59条1項2号の低額譲渡には当たらない。 (被告の主張)(ア) Bは,Gの株主でもあるI及びGの役員らがBの実効支配下にあったことなどから,Gのみならず,Gの役員らが株主であるHにおいても極めて強い権限を有しており,これらの会社では,本件株式譲渡の前後を通じて株主総会や取締役会が開催されたことはなく,株式の移動や人事,報酬などの株主総会や取締役会で決定される事項は,全てBが意思決定をするというBによる実効支配体制が確立していた。 そして,本件株式譲渡の譲渡価額を決定するに当たり,BやHにおいて合理的な検討はされておらず,本件株式譲渡は,B一族が有するGの議決権割合を15%未満にして相続税負担を軽減させることを目的に行われたものである。 以上によれば,本件株式譲渡に おいて合理的な検討はされておらず,本件株式譲渡は,B一族が有するGの議決権割合を15%未満にして相続税負担を軽減させることを目的に行われたものである。 以上によれば,本件株式譲渡における譲渡価額は,純然たる第三者間で種々の経済性を考慮して算定されたものではなく,時価であるとはいえない。 (イ) よって,本件株式譲渡は,時価による取引であるとはいえず,前記のとおり,譲渡の時の価額の2分の1に満たない金額によるものであるから,所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たる。 (2) 争点(2)(本件各更正処分等により原告Dらがそれぞれ納付すべき税額についての被告の主張変更の当否)について(原告らの主張) ア被告による主張変更被告は,本件訴訟の当初は,原告Dらの相続分が各10分の1であることを前提に,本件各更正処分によりBに課されるべき平成19年分の所得税の額について原告Dらが納付すべき本税の額はそれぞれ2798万8700円(新たに納付すべき税額はそれぞれ2560万7800円),本件各更正処分に基づいて原告Dらに対して課されるべき過少申告加算税の額はそれぞれ324万7000円と主張していた。 ところが,別件判決が出た後,被告は,原告Dらの相続分は各8分の1であるとして,本件各更正処分によりBに課されるべき平成19年分の所得税の額について原告Dらが納付すべき本税の額はそれぞれ3498万5800円(新たに納付すべき税額はそれぞれ3200万9800円),本件各更正処分に基づいて原告Dらに対して課されるべき過少申告加算税の額はそれぞれ405万8500円と主張を変更した。 イ除斥期間の経過原告Dらの相続分は各10分の1ではなく各8分の1であるとして,そ 告Dらに対して課されるべき過少申告加算税の額はそれぞれ405万8500円と主張を変更した。 イ除斥期間の経過原告Dらの相続分は各10分の1ではなく各8分の1であるとして,それぞれが承継する税額を当該割合に従い計算した金額に変更することは,本件各更正処分によって確定したそれぞれが「納付すべき税額」(国税通則法2条6号ニ)を変更することになるから,これを行うには,原告Dらに対し,再更正処分を行うことが必要である。 しかしながら,本件では既にBの平成19年分の所得税の法定申告期限(平成20年4月26日)から3年の除斥期間を経過しているから,課税庁が原告Dらの相続分を各10分の1から各8分の1に変更して,当該割合に従い計算した税額を課税することはできず,違法である。 ウ信義則違反A税務署長は,平成22年4月21日付けの更正処分等の段階では,納付書の送付により,原告Dらの相続分が各8分の1であるとの見解を示し ていたところ,その後の異議決定を受けてあえてこれを変更し,国税還付金振込及び充当等通知書の交付により,最終的な公的見解として原告Dらの相続分が各10分の1であることを示した。 原告Dらは,この見解を信頼して行動していたところ,別件判決後の突然の見解の変更により多額の不利益を被ることになる上,原告Dらによる上記の信頼には何らの帰責性もなく,別件判決において被告が敗訴したことは課税庁側の責任であって,これを原告らに転嫁することは許されないから,課税庁が,相続分である各10分の1の割合を超えて原告Dらに課税することは,信義則に反し違法である。 エ別件判決の効力別件判決では,その理由中の判断において,Kの相続分が0であるとされた。 しかしながら,取消判決の第三者効 税することは,信義則に反し違法である。 エ別件判決の効力別件判決では,その理由中の判断において,Kの相続分が0であるとされた。 しかしながら,取消判決の第三者効(行政事件訴訟法32条1項)によっても第三者が当該取消判決の理由中の判断に拘束されることはなく,別件判決中の上記判断は,第三者である原告らに及ばないから,原告Dらの相続分が各8分の1であるとする被告の主張は失当である。 オ時機に後れた攻撃防御方法原告Dらの相続分が各10分の1ではなく各8分の1であるという被告の主張は,本件訴えの提起から2年以上が経過した後に提出されたものである。 しかしながら,被告は,遅くとも別件判決に先立つ平成23年12月8日に裁決がされたKによる審査請求の手続において,Kが決定処分を争う理由とした遺言の存在とその遺言によりKの相続分が0と指定されている事実を認識し,被告が本件訴訟において平成24年7月31日付けで答弁書を提出した時点でも,上記事実を認識していたのであり,また,被告が別件判決で敗訴したのは,最高裁判決に照らしても明らかに不合理な自 身の法令解釈の誤りによるものであるから,被告には重大な過失がある。 そして,上記の追加主張によって新たな争点が生じ訴訟の完結が遅延することとなるから,被告の当該主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 (被告の主張)ア除斥期間の経過について年の中途において死亡した者に係るその年分の所得税は,その死亡の時に納税義務が成立し,その相続人が死亡した者の申告書を提出することによって,その死亡した者の納付すべき税額が確定することとなる。そのため,当該申告に係る所得税の更正処分の対象となるのは,死亡した者の所得税の額であり,各相 相続人が死亡した者の申告書を提出することによって,その死亡した者の納付すべき税額が確定することとなる。そのため,当該申告に係る所得税の更正処分の対象となるのは,死亡した者の所得税の額であり,各相続人の相続分によりあん分して計算した各相続人の承継する税額ではない。本件各更正処分も,Bの平成19年分の所得税の課税標準等及び税額等を更正したものであり,原告ら各人の納付すべき税額を確定させる処分ではない。 また,各税法の規定上,相続による国税の納付義務の承継について,何らかの申告や更正等の処分が必要とされているものでもない。 したがって,承継する税額を変更するには再更正処分を行う必要があるとの原告らの主張は理由がない。 イ信義則違反について本件各更正処分等に係る通知書や異議決定書には,Bが納付すべき税額が記載されているにとどまり,原告ら各人の納付すべき税額は個別具体的に記載されていない。原告らに送付された納付書等には個別的な金額の記載がされているものの,これらは単に原告らが納付すべきこととされた金額等の計算が記載されていたにすぎず,事実上納税者を拘束する課税庁としての責任ある者からされた通知等と同等のものではないから,これをもって税務官庁が公的見解を表示したということはできない。 また,納税額の計算は,前提事実の変化や法令解釈等によって変動し得るものであり,ある時点で一定の納税額の計算結果が示されたとしても,以後変動がないことを確定するものではないから,上記の納付書等を前提に行動したことをもって原告らの行動が保護されることにはならない。 さらに,A税務署長が別件判決の結果により新たな課税処分を行ったことはなく,原告Dらの被ったとする不利益も,本来納付すべきであった税額を納付すべきことになったというだけのことに ことにはならない。 さらに,A税務署長が別件判決の結果により新たな課税処分を行ったことはなく,原告Dらの被ったとする不利益も,本来納付すべきであった税額を納付すべきことになったというだけのことにすぎない。 したがって,本件において信義則の法理の適用はない。 ウ別件判決の効力について別件判決は,Kに対してされた決定処分のうちKが納めるべき額につき0円を超える部分及び無申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消すというものであり,KにはBに課されるべき平成19年分の所得税について納付すべき額がないとするものである。 取消判決の第三者効(行政事件訴訟法32条1項)により,別件判決の上記判断は原告らにも及ぶから,これを前提として,原告らが承継する税額を計算しなければならないことになる。 そうすると,原告Dらの相続分が各8分の1であるとする被告の主張は正当であり,これを前提として承継税額を計算することになるのは,別件判決においてKに納付すべき額がないとされたことによるものであって,別件判決の理由中においてKの相続分が0であると判断されたことによるものではないから,原告らの主張は失当である。 エ時機に後れた攻撃防御方法との主張について別件判決における争点(遺言の解釈)は,審査請求裁決と判決とでも判断が分かれるなど困難な判断を伴うものであり,同判決に基づき被告が原告Dらの相続分についての主張を変更したことに重大な過失はない。 また,被告が当該主張をした時点で,その主張がなければ本件訴訟の弁 論を直ちに終結できる段階にもなかったから,本件訴訟の完結を遅延させることにもならない。 したがって,被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法には当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件株式譲渡が所得税法59条1 たから,本件訴訟の完結を遅延させることにもならない。 したがって,被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法には当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件株式譲渡が所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるか)について(1) 本件株式の所得税基本通達及び評価通達に定める方法による評価等についてア所得税基本通達及び評価通達に定める評価方法の合理性について(ア) 所得税法59条1項は,同項2号の低額譲渡,すなわち,譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額(所得税法施行令169条)による法人に対する資産の譲渡があった場合には,その譲渡した者の譲渡所得等の金額の計算については,その譲渡があった時に,その時における価額に相当する金額により,当該資産の譲渡があったものとみなす旨を定めており,ここにいう「その時における価額」とは,当該譲渡の時における当該資産の客観的交換価値をいうものと解される。 そして,所得税基本通達59-6は,所得税法59条1項の適用に当たって,譲渡所得の基因となる資産が評価通達における取引相場のない株式に相当する株式であって売買実例のある株式等に該当しないもの(所得税基本通達23~35共-9の(4)ニの株式)である場合の「その時における価額」とは,原則として,一定の条件の下に,評価通達の178から189-7までの例により算定した価額とする旨を定めており,これらの通達はいずれも公開されている。 所得税基本通達59-6がこのような取扱いを定めている趣旨は,取引相場のない株式は通常売買実例等に乏しく,その客観的交換価値を的確に把握することが容易ではないため,その評価方法についての国税当 局の内部的な取扱いを相続税等の課税対象となる財産の評価について定めた評価 通常売買実例等に乏しく,その客観的交換価値を的確に把握することが容易ではないため,その評価方法についての国税当 局の内部的な取扱いを相続税等の課税対象となる財産の評価について定めた評価通達の例に原則として統一することで,回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理に資するとともに,公開された画一的な評価によることで,納税者間の公平を期し,また納税者の申告・納税の便宜を図るという点にあると解される。 このような上記通達の趣旨に鑑みれば,取引相場のない株式について,所得税基本通達59-6が定める条件の下に適用される評価通達に定められた評価方法が,取引相場のない株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額の計算において当該株式のその譲渡の時における客観的交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有するものであれば,その評価方法によってはその客観的交換価値を適正に算定することができない特別な事情がある場合でない限り,その評価方法によって算定された価額は,当該譲渡に係る取引相場のない株式についての所得税法59条1項にいう「その時における価額」として適正なものであると認めるのが相当である。 (イ) そこでまず,評価通達に定められた取引相場のない株式の評価方法の合理性について検討すると,評価通達178以下では,取引相場のない株式の評価について,評価会社の規模に応じて場合分けし,大会社については,類似業種比準方式を原則的評価方法とすることを定める(同179,180)一方,「同族株主以外の株主等が取得した株式」については,例外的に配当還元方式によることを定める(同188,188-2)。 類似業種比準方式は,評価会社と事業の種類が類似する上場会社の株価に比準して株式の価額を求めるものであり,具体的には,株価構成要素のうち 配当還元方式によることを定める(同188,188-2)。 類似業種比準方式は,評価会社と事業の種類が類似する上場会社の株価に比準して株式の価額を求めるものであり,具体的には,株価構成要素のうち基本的かつ直接的なもので計数化が可能な1株当たりの配当金額,年利益金額及び純資産価額の3要素につき,評価会社のそれらと, 当該会社と事業内容が類似する業種目に属する上場会社のそれらの平均値とを比較の上,上場会社の株価の平均値に比準して評価会社の1株当たりの価額を算定するというものである(乙9,15)。この方式を大会社の取引相場のない株式の原則的評価方法とした趣旨は,大会社が上場株式や気配相場等のある株式の発行会社に匹敵するような規模の会社であって,その株式が通常取引されるとすれば上場株式や気配相場等のある株式の取引価格に準じた価額が付されることが想定されることから,現実に流通市場において価格形成が行われている株式の価額に比準して評価することが合理的であることによるものと解される。 他方で,配当還元方式は,株式の価額をその株式に係る年配当金額を還元率10%で除して計算した元本に相当する配当還元価額によって評価するものである。この方式を「同族株主以外の株主等が取得した株式」の評価方法とした趣旨は,事業経営への影響の少ない同族株主の一部や従業員株主等の少数株主においては,会社支配力が小さく,単に配当を期待するにとどまるという実情があることから,評価手続の簡便性をも考慮して,この評価方法を相当としたものと解される。そして,評価通達188は,別紙1のとおり,株主の会社支配力を測る基準として,株主及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数に占める割合に着目し,これを基として配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等 1のとおり,株主の会社支配力を測る基準として,株主及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数に占める割合に着目し,これを基として配当還元方式が適用される「同族株主以外の株主等が取得した株式」の範囲を具体的に定めている。 以上の諸点に鑑みれば,評価通達178以下に定めるこれらの評価方法は,取引相場のない株式につき実情等を踏まえたものとして一般的な合理性を有すると認められる。 (ウ) 次に,所得税基本通達59-6が上記の評価通達に定められた取引相場のない株式の評価方法を適用する際の一定の条件として規定した内容の合理性について検討すると,そもそもそのような一定の条件を設け たのは,評価通達が本来的には相続税や贈与税の課税価格の計算の基礎となる財産の評価に関する基本的な取扱いを定めたものであって,譲渡所得の収入金額の計算とは適用場面が異なることから,評価通達を譲渡所得の収入金額の計算の趣旨に則して用いることを可能にするためであると解される。 すなわち,相続税や贈与税が,相続や贈与による財産の移転があった場合にその財産の価額を課税価格としてその財産を取得した者に課される税であるのに対し,譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益(キャピタル・ゲイン)を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算してその譲渡人である元の所有者に課税する趣旨のものと解されるのであって(最高裁昭和41年(行ツ)第102号同47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁,最高裁昭和47年(行ツ)第4号同50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照),そのような課税の趣旨からすれば,譲渡所得の基因となる資産についての低額譲渡の 26巻10号2083頁,最高裁昭和47年(行ツ)第4号同50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照),そのような課税の趣旨からすれば,譲渡所得の基因となる資産についての低額譲渡の判定をする場合の計算の基礎となる当該資産の価額は,当該資産を譲渡した後の譲受人にとっての価値ではなく,その譲渡直前において元の所有者が所有している状態における当該所有者(譲渡人)にとっての価値により評価するのが相当であるから,評価通達188の(1)~(4)の定めを取引相場のない株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額の計算上当該株式のその譲渡の時における価額の算定に適用する場合には,各定め中「(株主の)取得した株式」とあるのを「(株主の)有していた株式で譲渡に供されたもの」と読み替えるのが相当であり,また,各定め中のそれぞれの議決権の数も当該株式の譲渡直前の議決権の数によることが相当であると解される。 所得税基本通達59-6の(1)が,評価通達188の(1)に定める「同 族株主」に該当するかどうかは,株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権の数により判定する旨を定めているのは,上記の趣旨を「同族株主」の判定について確認的に規定したものであり,上記の読替え等をした上で評価通達188の(1)~(4)の定めを適用すべきであることを当然の前提とするものと解されるから,この規定もまた一般的な合理性を有すると認められる。 イ所得税基本通達59-6の(1)の条件下における評価通達188の議決権割合の判定方法(争点①)について(ア) 上記ア(ウ)で説示したとおり,評価通達188の(1)~(4)の定めを取引相場のない株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額の計算上当該株式のその譲渡の時における価額の算定に適用する場合には,原告らのいう会社区分の で説示したとおり,評価通達188の(1)~(4)の定めを取引相場のない株式の譲渡に係る譲渡所得の収入金額の計算上当該株式のその譲渡の時における価額の算定に適用する場合には,原告らのいう会社区分の判定においても,株主区分の判定においても,譲渡直前の譲渡人の議決権割合によるのが相当である。 (イ) 原告らの主張についてa 原告らは,前記摘示の主張のほか,L教授の鑑定意見書(甲15)に依拠し,売買取引の価格決定に際しては,譲渡人が同族株主であるとしても,譲受人が少数株主であれば,その取得株式の経済的価値を前提として価額が決定されるものであり,非上場株式の譲渡が低額譲渡により行われたか否かに関わる時価の認定は,譲受人の議決権割合によって評価通達の定める評価方法で判断されるべきであること,所得税法59条1項2号のみなし譲渡課税は,取引社会で現実に行われる取引と比較して時価の2分の1未満の低額な取引に規制を加えるものであり,一般的な第三者間でも行われることのないような取引を擬制して行うというものではないこと,譲受人の議決権割合により判定しなければ,同一の価格で売買が成立したとしても,個人への譲渡については適正価額とされるのに,法人への譲渡の場合には低額譲渡と なるという矛盾が生じること等を主張する。 確かに,譲渡所得に対する課税は当事者間において資産の譲渡が成立することが前提であり,譲渡価額の決定に際しては,譲受人側の事情も重要な要素であるということはできる。 しかしながら,譲渡人が所有している状態における株式が,一定の議決権割合を占め事業経営への影響力のあるもの(支配力を有するもの)であったのであれば,譲渡人としてはその支配力をも加味した価値のある株式を有していたというべきであり,現に成立した る株式が,一定の議決権割合を占め事業経営への影響力のあるもの(支配力を有するもの)であったのであれば,譲渡人としてはその支配力をも加味した価値のある株式を有していたというべきであり,現に成立した取引において,譲渡人がその有する株式のうちの少数のみを分割して譲受人に譲渡し,譲受人が取得する株式が事業経営への影響力のない株式(少数株式)になったとしても,それは,譲渡人があえて経営への影響力を廃する形で分割譲渡した結果にほかならない。そのため,譲受人が取得した株式が少数株式にとどまるからといって,譲渡人が所有していた状態における資産としての株式の価値を,当該譲渡により分割された後の少数株式の状態で評価することは,前記ア(ウ)で述べた譲渡所得に対する課税の趣旨に反することになるというべきである。 また,取引相場のない株式は,通常売買実例等に乏しく,仮に売買実例があるとしても,その売買価額が当事者間の主観的事情に左右されることが避け難く,一般に当該株式の客観的価値を反映したものと考えることはできないために,所得税基本通達59-6においては,その評価を原則として一定の条件の下に評価通達の例によることとして,実際の売買実例における価額に依拠しない,評価会社の規模や株主の会社支配力に応じた同通達所定の評価方法によることとしているのであり,このような定め(前記ア(ウ)の解釈によるもの)には,前記ア(イ)及び(ウ)で述べたとおり,取引相場のない株式の実情という観点からも,譲渡所得に対する課税の趣旨への適合性という観点から も,一般的な合理性が認められるのであるから,現に成立する売買においては譲受人側の事情の影響が大きいとしても,そのような売買実例における価額に依拠しない上記の評価方法によることが,所得税法59条1項2号の趣旨に反すると められるのであるから,現に成立する売買においては譲受人側の事情の影響が大きいとしても,そのような売買実例における価額に依拠しない上記の評価方法によることが,所得税法59条1項2号の趣旨に反するということにはならない。 なお,個人への譲渡と法人への譲渡とで矛盾が生じるとの指摘は,そもそもそのような矛盾は所得税法59条1項2号が低額譲渡として法人に対するもののみを規定していることに起因するものであるから,同号の規定を前提とした上で議決権割合の判定を譲渡人又は譲受人のいずれを基準として行うべきかという判断に直接影響はしないというべきである。 b また,原告らは,所得税基本通達59-6の(1)が評価通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかの判定に限り,譲渡直前の議決権の数による旨定めていることの文理解釈によれば,評価通達188の(3)の株主区分の判定においては,所得税基本通達59-6の(1)は適用されず,譲渡後の譲受人の議決権割合により判定すべきであるとも主張する。 しかしながら,評価通達188の(3)が一文で定める株式の要件に関して原告が主張するような異なる判断基準を混在させることに合理的な理由は見出し難く,譲渡所得に対する課税の趣旨に鑑みれば,前記ア(ウ)のとおりに解釈するのが相当である。譲渡所得に対する課税の趣旨から前記ア(ウ)のような解釈を導き出すことはさほど困難なことではないから,このように解しても課税に関する予測可能性を損なうとはいえない。 ウ所得税基本通達及び評価通達に定める方法による本件株式の評価(ア) 以上によれば,前記前提事実(3)アのとおり,本件株式譲渡直前の時点において,Gには合計して30%以上の議決権を有する株主及びそ の同族関係者がおらず,Gは による本件株式の評価(ア) 以上によれば,前記前提事実(3)アのとおり,本件株式譲渡直前の時点において,Gには合計して30%以上の議決権を有する株主及びそ の同族関係者がおらず,Gは「同族株主のいない会社」に当たるから,本件株式は,評価通達188の(1)及び(2)の株式には該当しない。また,本件株式譲渡直前の時点において,譲渡人であるB及びその同族関係者であるB親族らは,合計して15%以上(22.79%)の議決権を有し,B個人も5%以上(15.88%)の議決権を有していたから,本件株式は,評価通達188の(3)及び(4)の株式にも該当しない。 よって,本件株式は,評価通達188の株式のいずれにも該当しないから,評価通達178本文,179の(1)により類似業種比準方式により評価すべきこととなる。そして,証拠(甲6,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,その評価額は1株当たり2505円となることが認められる。 (イ) もっとも,前記ア(ア)で述べたとおり,類似業種比準方式によっては本件株式の客観的交換価値を適正に算定することができない特別な事情がある場合には,この限りでなく,この点は争点②と関連するため,後記(2)において検討する。 (2) 本件株式譲渡における譲渡代金額をもって時価といえるか(争点②)についてア認定事実(掲記の証拠等により認められる。)(ア) Hについてa 株主の移動状況等について(全体につき乙48)Hの設立(平成16年2月)時の株主は,M,N,Oの3名であり,それぞれが,Bから100万円ずつ借り入れてこれを出資金の原資とし,各1000株(1株当たり1000円)を取得した。なお,この借入金は後にBに返還されている。(甲30)その後,Hの株式は譲渡され,平成19年5月7日時点で,Oを含む合計 これを出資金の原資とし,各1000株(1株当たり1000円)を取得した。なお,この借入金は後にBに返還されている。(甲30)その後,Hの株式は譲渡され,平成19年5月7日時点で,Oを含む合計10名の者が各300株(30万円分相当)ずつを有することとなった。この株式譲渡に当たっては,譲受人はいずれも自己の資金 を出捐して株式を取得した(甲23~28,乙39)。 なお,Hの設立時以降の株主は,全てGの役員又は従業員である(甲30,31,乙97)。 bHの活動Hは,平成16年11月26日,Gの100%子会社であるP株式会社から借り入れた金員を原資として,Iの株式を,Qから2600株,研究会持株会から1400株,合計4000株,代金合計400万円で購入した(甲36,乙35,90)。 Hでは,設立以降,本件株式譲渡(平成19年8月1日)を受けた第5期(平成19年3月1日から平成20年2月29日までの事業年度)までは配当を行っていなかったものの,第6期(平成20年3月1日から平成21年2月28日までの事業年度)においては1株当たり100円の配当を決定し,平成21年6月にその配当金が支払われており,以後も配当を行っている(乙95)。 (イ) 本件株式譲渡に関する事情についてP株式会社は,本件株式譲渡において代金の支払期限とされた平成19年8月10日,Hに対し,本件株式譲渡の代金と同額である5437万5000円を,利息年2.2%の割合,返済期限平成29年8月末日までなどとして貸し付け,Hは,この借入金を本件株式譲渡の代金支払の原資とした(甲36,乙58の1,2)。 本件株式譲渡について,Bは,自身の相続に係る相続税対策という目的を有していた(甲36,乙82の1)。 イ判断上記認定事実(ア)aのとおり, 金支払の原資とした(甲36,乙58の1,2)。 本件株式譲渡について,Bは,自身の相続に係る相続税対策という目的を有していた(甲36,乙82の1)。 イ判断上記認定事実(ア)aのとおり,Hの株主は自己の資金を出捐してHの株式を取得しており,その株式の譲渡も行われていたことや,Hでは,本件株式譲渡によりGの株式を取得するのみならず,設立後間もなくIの株式 も取得していること,本件株式譲渡が行われた事業年度の翌事業年度から配当が行われていたこと等からすれば,Hには,その関連会社の株式の取得及び保有を通じて利益を上げ,株主であるGの役員や従業員にこれを還元するという活動実態があるということができる。そして,本件株式譲渡について,Hの側から見れば,Hが取得した本件株式に係るGでの議決権割合は7.88%にすぎず,評価通達188を適用すれば同項の(3)の株式に該当し,「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当するから,配当還元方式による評価額を譲渡対価とした本件株式譲渡が,Hにとって不合理な取引であったとはいえない。 しかしながら,本件株式の譲渡人であるBの側から見れば,Bは,本件株式譲渡前には,単独でも15.88%の議決権割合となる株式を有していたものであり,これを一括して他に譲渡するか,又はその一部に限って譲渡するとしても,その譲渡する議決権を合わせたGでの議決権割合が15%以上となるような株主に対してこれを譲渡していれば,本件株式譲渡の譲渡対価(1株当たり75円)よりも高額の類似業種比準方式による評価額(1株当たり2505円)に相当する金額程度の対価を得られる可能性があり,また,Bが株主としての会社支配力の低下等を懸念してそのような譲渡を望まず,あるいはそのような譲渡に応じる者がいないというのであれば,譲渡しない 円)に相当する金額程度の対価を得られる可能性があり,また,Bが株主としての会社支配力の低下等を懸念してそのような譲渡を望まず,あるいはそのような譲渡に応じる者がいないというのであれば,譲渡しないこともできたのに,あえてその有する株式のうちの一部のみをHに対して譲渡したことによって,本件株式が事業経営への影響力が著しく減退した少数株式となり,配当還元方式による評価額相当の低額な対価を得るにとどまったものである。このような譲渡をしたことの目的としては,Bの側では,自己が代表取締役社長を務めるGの役員及び従業員が株主になっていて,平時においては敵対的な議決権行使等をしないことが一般的に期待できるHに本件株式のみを譲渡することによって,Gにおける経営の安定を一定程度保持しつつ,本件株式の譲渡による対価 収入を減らしてでも,自身の相続人の相続税の負担を軽減する(上記認定事実(イ))ということ以外には考え難く,譲渡対価による収益を目的とする通常の取引としての合理性には乏しいものといわざるを得ない。また,本件株式譲渡において,Bの有する資産としての価値が真摯に検討されて,Hとの交渉を経るなどして本件株式の譲渡価額が決定されたといった事情も認められない。 以上のような本件株式譲渡の経緯や実態等に鑑みると,本件株式譲渡を原告らのいう利害相反する第三者間の取引(正常な株式の売買)とみることはできず,その対価をもって本件株式の時価(客観的交換価値)ということはできない。 その他,本件の全証拠によっても,類似業種比準方式によっては本件株式の客観的交換価値を適正に算定することができない特別な事情があるとは認められない。 (3) 結論以上によれば,所得税法59条1項2号の適用に当たって,本件株式譲渡の時における本件株式の価額は1株当たり 交換価値を適正に算定することができない特別な事情があるとは認められない。 (3) 結論以上によれば,所得税法59条1項2号の適用に当たって,本件株式譲渡の時における本件株式の価額は1株当たり2505円であると認められ,本件株式譲渡の対価である1株当たり75円はその2分の1に満たないから,本件株式譲渡は,同号の低額譲渡に当たる。 2 争点(2)(本件各更正処分等により原告Dらがそれぞれ納付すべき税額についての被告の主張変更の当否)について(1) 本件各更正処分等が確定した税額の範囲について所得税法は,所得税についての納付すべき税額の確定の方式につき申告納税方式を採用しており(同法120条以下),所得税の納税義務者である居住者が年の中途において死亡した場合には,その相続人が,当該死亡した者のその年分の所得税について同法120条1項各号に掲げる事項等を記載した申告書を提出し(同法125条1項),その申告書に記載した所得税の額 (同法120条1項3号に掲げる金額。ただし,源泉徴収税額や予納税額がある場合には,これらを控除した後の同項5号又は7号に掲げる金額)に相当する所得税を,国税通則法5条に定めるところにより,納付しなければならない旨を定めている(所得税法129条)。この相続人の納付義務は,被相続人に課されるべき上記申告に係る所得税の納付義務を被相続人から承継したものであり(国税通則法5条1項前段),相続人が2人以上ある場合に各相続人が承継する納付義務に係る所得税の額は,上記の被相続人に課されるべき所得税の額を民法900条から902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする旨が定められている(国税通則法5条2項)。 そして,上記申告書やその後に提出される修正申告書に,所得税法等の国税に関する から902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする旨が定められている(国税通則法5条2項)。 そして,上記申告書やその後に提出される修正申告書に,所得税法等の国税に関する法律に従っていない金額その他税務署長の調査したところと異なる金額の記載があるときは,税務署長による更正処分がされることになるが,その更正処分によって更正される金額は,当該申告書に記載された「課税標準等」及び「税額等」であり(国税通則法24条),所得税法125条1項による申告書及びその修正申告書における上記の「税額等」(国税通則法19条1項,2条6号ニ~ヘ)とは,被相続人に課されるべき所得税に係る所得税法120条1項3号に掲げる金額(源泉徴収税額や予納税額がある場合には,更にこれらの金額及び同項5号又は7号に掲げる金額)を指すものと解される。 以上のような法の仕組みを踏まえると,所得税法125条1項による申告及びその修正申告並びにこれらに対する更正処分が確定する税額は,被相続人に課されるべき所得税の額であり,相続人が2人以上ある場合に各相続人が承継する納付義務に係る所得税の額については,上記の申告及び更正処分によっても個別に確定されるものではないと解するのが相当である。また,上記の修正申告や更正処分がされた場合に行われることとなる過少申告加算 税の賦課決定処分についても,過少申告加算税の額がこれらの修正申告や更正処分によって確定される本税の額に基づいて計算されるものであることから(国税通則法65条1項,2項),その賦課決定処分が確定する税額は,被相続人に課されるべき過少申告加算税の額であり,相続人が2人以上ある場合に各相続人が承継する納付義務に係る過少申告加算税の額については,上記の賦課決定処分によっても個別に確定されるものではな は,被相続人に課されるべき過少申告加算税の額であり,相続人が2人以上ある場合に各相続人が承継する納付義務に係る過少申告加算税の額については,上記の賦課決定処分によっても個別に確定されるものではないと解するのが相当である。 なお,所得税法施行規則(平成20年財務省令第24号による改正前のもの)49条において,所得税法125条1項による申告書には,民法900条から902条までの規定による各相続人の相続分及び納付すべき所得税の額をその相続分によりあん分して計算した額に相当する所得税の額を記載すべきこととされているが,これらの記載事項は,各相続人への納付書の送付や各相続人からの徴収等のための資料という意味合いを持つものと解され,このような所得税法施行規則の定めが,所得税法や国税通則法の定めにおいて申告及び更正処分等の確定対象であるとされている税額の範囲を左右するものとは解されない。 以上に述べたことは,本件各更正処分等にも当てはまるから,本件各更正処分等が確定した税額の範囲は,Bに課されるべき平成19年分の所得税の額及びこれに係る過少申告加算税の額にとどまり,原告らがBから承継した納付義務に係る所得税及び過少申告加算税の額については,本件各更正処分等によって個別に確定されるものではないというべきである。 (2) 本件各更正処分のうち各原告が納付すべき税額に係る部分の取消しを求める訴えの適法性について上記(1)に説示したところによれば,本件訴えのうち,本件各更正処分のうち各原告が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分は,本件各更正処分が確定していない事項の取消しを求めるものであり,取消しの対象と なる処分を欠くものといわざるを得ないから,不適法な訴えというべきである。 (3) 争点(2)についての判断 正処分が確定していない事項の取消しを求めるものであり,取消しの対象と なる処分を欠くものといわざるを得ないから,不適法な訴えというべきである。 (3) 争点(2)についての判断上記(2)によれば,争点(2)のうち本件各更正処分の適法性に関する部分は,本件訴訟における判断の対象とはならない。 また,上記(1)に説示したところによれば,争点(2)に関する原告らの主張のうち本件各賦課決定処分の適法性に関する部分は,本件各賦課決定処分が確定していない事項についての違法をいうものであり,失当である。 なお,以上によれば,原告Dらの相続分が各10分の1ではなく各8分の1であるという被告の主張は,判決に影響を及ぼすものではなく,その提出により訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。したがって,上記被告の主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきである旨の原告らの申立ては,理由がないものとして,これを却下する。 3 本件各更正処分等の適法性について以上に説示したところによれば,本件株式譲渡の時における本件株式の価額が1株当たり2505円であり,本件株式譲渡が所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たるとする被告の主張は理由があり,これを前提とすると,Bに課されるべき平成19年分の所得税の額及びこれに係る過少申告加算税の額は,別紙2別表1及び2に記載のとおりに計算されることが認められる(弁論の全趣旨)。 そして,本件各更正処分等における税額は,いずれも別紙2別表1及び2に記載の金額と同額であるから,本件各更正処分等はいずれも適法であると認められる。 4 まとめ以上によれば,本件訴えのうち,本件各更正処分のうち各原告が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分は不適法であるからこれを却下するこ 等はいずれも適法であると認められる。 4 まとめ以上によれば,本件訴えのうち,本件各更正処分のうち各原告が納付すべき税額に係る部分の各取消しを求める部分は不適法であるからこれを却下するこ ととし,原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官古屋勇児 別紙1関係法令等の定め第1 低額譲渡に関する定め 1 所得税法所得税法59条1項は,同項各号に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には,その者の山林所得の金額,譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については,その事由が生じた時に,その時における価額に相当する金額により,これらの資産の譲渡があったものとみなす旨を定め,同項2号において,著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)を掲げる。 2 所得税法施行令所得税法施行令169条は,所得税法59条1項2号に規定する政令で定める額は,同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする旨を定める。 3 所得税基本通達(昭和45年7月1日付け直審(所)30による国税庁長官通達。ただし,平成19年6月22日付け課個2-21ほかによる改正前のもの。乙8)(1) 所得税基本通達23~35共-9は,株式を取得する権利の価額の算定の基礎となる株式の価額に関し,同項の(4)ニにおいて,同項の(4)の場合に該当する株式( かによる改正前のもの。乙8)(1) 所得税基本通達23~35共-9は,株式を取得する権利の価額の算定の基礎となる株式の価額に関し,同項の(4)ニにおいて,同項の(4)の場合に該当する株式(後記評価通達における取引相場のない株式に相当するもの)のうち同項の(4)ニの株式(売買実例のある株式等に該当しないもの)については,権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日におけるその株式の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とする旨を定める。 (2) 所得税基本通達59-6は,所得税法59条1項の規定の適用に当たって, 譲渡所得の基因となる資産が株式である場合の同項に規定する「その時における価額」とは,所得税基本通達23~35共-9に準じて算定した価額による旨とともに,この場合,同項の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは,原則として,所得税基本通達59-6の(1)~(4)によることを条件に,後記評価通達の178から189-7まで(取引相場のない株式の評価)の例により算定した価額とする旨を定め,その条件としての(1)において,後記評価通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうかは,株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権の数により判定する旨を定める。 4 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56ほか国税庁長官通達。 ただし,平成20年3月14日付け課評2-5による改正前のもの。以下「評価通達」という。乙9)(1) 評価通達178は,本文において,取引相場のない株式(上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式をいう。)の価額は,評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)が大会社(従業 1) 評価通達178は,本文において,取引相場のない株式(上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式をいう。)の価額は,評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)が大会社(従業員数が100人以上の会社などをいう。),中会社又は小会社のいずれに該当するかに応じて,それぞれ評価通達179の定めによって評価する旨を定め,ただし書において,同族株主以外の株主等が取得した株式の価額は,評価通達188の定めによって評価する旨を定める。 (2) 評価通達179の(1)は,本文において,大会社の株式の価額は,類似業種比準価額によって評価する旨を定め(この評価方式を「類似業種比準方式」という。),ただし書において,納税義務者の選択により,1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価することができる旨を定める。 (3) 評価通達180は,評価通達179の類似業種比準価額は,類似業種の株価並びに1株当たりの配当金額,年利益金額及び純資産価額(帳簿価額によ って計算した金額)を基とし,評価通達180所定の算式によって計算した金額とする旨を定める。 (4) 評価通達188は,評価通達178の「同族株主以外の株主等が取得した株式」は,以下のア~エのいずれかに該当する株式をいい,その株式の価額は,評価通達188-2の定めによる旨を定める。 ア同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主の取得した株式(評価通達188の(1))この場合における「同族株主」とは,課税時期における評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち,株主の1人及びその の1人及びその同族関係者(法人税法施行令4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の30%以上(その評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が最も多いグループの有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては,50%超)である場合におけるその株主及びその同族関係者をいう。 イ中心的な同族株主のいる会社の株主のうち,中心的な同族株主以外の同族株主で,その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(課税時期において評価会社の役員(社長,理事長,代表取締役などをいう。以下評価通達188において同じ。)である者及び課税時期の翌日から法定申告期限までの間に役員となる者を除く。)の取得した株式(評価通達188の(2))この場合における「中心的な同族株主」とは,課税時期において同族株主の1人並びにその株主の配偶者,直系血族,兄弟姉妹及び1親等の姻族(これらの者の同族関係者である会社のうち,これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含む。)の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主をいう。 ウ同族株主のいない会社の株主のうち,課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が,その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式(評価通達188の(3))エ中心的な株主がおり,かつ,同族株主のいない会社の株主のうち,課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で,その者の株式取得後の議決権の数 同族株主のいない会社の株主のうち,課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で,その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの(前記イの役員である者及び役員となる者を除く。)の取得した株式(評価通達188の(4))この場合における「中心的な株主」とは,課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の15%以上である株主グループのうち,いずれかのグループに単独でその会社の議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいる場合におけるその株主をいう。 (5) 評価通達188-2は,評価通達188の株式の価額は,その株式に係る年配当金額(1株当たりの配当金額をいう。)を10%で除して計算した金額によって評価する旨を定める(この評価方式を「配当還元方式」という。)。 第2 所得税の申告及び更正等に関する定め 1 所得税法(1) 所得税法120条1項は,居住者が提出する所得税の確定申告書に記載すべき事項を,以下のとおり定める(一部省略)。 アその年分の総所得金額,退職所得金額及び山林所得金額並びに所得控除の額並びに課税総所得金額,課税退職所得金額及び課税山林所得金額又は純損失の金額(同項1号)イ同項1号に掲げる課税総所得金額,課税退職所得金額及び課税山林所得 金額につき同法第3章(税額の計算)の規定を適用して計算した所得税の額(同項3号)ウ同項3号に掲げる所得税の額から源泉徴収税額を控除した金額(同項5号)エ同項3号に掲げる所得税の額(源泉徴収税額がある場合には,同項5号に掲げる金額)から予納税額を控除した金額(同項7号)(2) 所得税法 税の額から源泉徴収税額を控除した金額(同項5号)エ同項3号に掲げる所得税の額(源泉徴収税額がある場合には,同項5号に掲げる金額)から予納税額を控除した金額(同項7号)(2) 所得税法128条は,同法120条1項の規定による申告書を提出した居住者は,当該申告書に記載した同項3号に掲げる金額(源泉徴収税額があり,かつ,予納税額がない場合には,同項5号に掲げる金額とし,予納税額がある場合には,同項7号に掲げる金額とする。)があるときは,当該金額に相当する所得税を国に納付しなければならない旨を定める。 2 国税通則法(1) 国税通則法24条は,税務署長は,納税申告書の提出があった場合において,その納税申告書に記載された課税標準等(課税標準,課税標準から控除する金額及び純損失等の金額をいう。同法19条1項,2条6号イ~ハ)又は税額等(納付すべき税額,還付金の額に相当する税額及び納付すべき税額の計算上控除する金額又は還付金の額の計算の基礎となる税額をいう。同法19条1項,2条6号ニ~ヘ)の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する旨を定める。 (2) 国税通則法65条1項は,期限内申告書が提出された場合において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨を定め,同条2項は,同条1項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該国税について修正 申告書の提出又は更正があったときは,その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国 め,同条2項は,同条1項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該国税について修正 申告書の提出又は更正があったときは,その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と50万円とのいずれか多い金額を超えるときは,過少申告加算税の額は,同項により計算した金額に,その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは,当該納付すべき税額)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする旨を定める。 第3 相続人が承継する所得税の納付義務に関する定め 1 国税通則法(1) 国税通則法5条1項前段は,相続があった場合には,相続人は,その被相続人に課されるべき,又はその被相続人が納付し,若しくは徴収されるべき国税を納める義務を承継する旨を定める。 (2) 国税通則法5条2項は,同条1項前段の場合において,相続人が2人以上あるときは,各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は,同項の国税の額を民法900条から902条まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする旨を定める。 2 所得税法(1) 所得税法125条1項は,居住者が年の中途において死亡した場合において,その者のその年分の所得税について同法120条1項(確定所得申告)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは,その相続人は,政令で定めるところにより,その相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日までに,税務署長に対し,当該所得税について同項各号に掲げる事項その他の事項を記載した申告書を提出しなければならない旨を定める。 続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日までに,税務署長に対し,当該所得税について同項各号に掲げる事項その他の事項を記載した申告書を提出しなければならない旨を定める。 (2) 所得税法129条は,同法125条1項の規定に該当して同項に規定する 申告書を提出した者は,当該申告書に記載した同法120条1項3号に掲げる金額(源泉徴収税額があり,かつ,予納税額がない場合には,同項5号に掲げる金額とし,予納税額がある場合には,同項7号に掲げる金額とする。)があるときは,当該金額に相当する所得税を国税通則法5条に定めるところにより国に納付しなければならない旨を定める。 3 所得税法施行令所得税法施行令263条1項は,所得税法125条1項の規定による申告書には,同法120条1項各号(確定申告書の記載事項)に掲げる事項のほか,財務省令で定める事項を併せて記載しなければならない旨を定める。 4 所得税法施行規則所得税法施行規則(平成20年財務省令第24号による改正前のもの)49条は,所得税法施行令263条1項に規定する財務省令で定める事項として,以下の事項を掲げる(一部省略)。 (1) 民法900条から902条まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)による各相続人の相続分(同規則49条1号)(2) 所得税法120条1項3号に掲げる所得税の額(源泉徴収税額があり,かつ,予納税額がない場合には,同項5号に掲げる金額とし,予納税額がある場合には,同項7号に掲げる金額とする。)を上記(1)の各相続人の相続分によりあん分して計算した額に相当する所得税の額(同規則49条3号)以上 (1)の各相続人の相続分によりあん分して計算した額に相当する所得税の額(同規則49条3号)以上
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