主文 1 原判決をいずれも取り消す。 2 本件をいずれも佐賀地方裁判所に差し戻す。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要本件は,佐賀県(以下「県」という。)の住民である控訴人らが,平成5年度から平成9年度までの県の複写機使用料について架空の水増しが行われており,複写機使用料関係の支出の一部(以下「本件支出」という。)は違法であるとして,当時の県知事であった被控訴人Aに対して,本件支出に見合う損害賠償の支払いを求めるとともに,被控訴人県知事(訴訟提起時はA,その後Bに交替)に対して,複写機リース会社及び違法支出に関与した県職員らに対する損害賠償請求権の行使を怠っている事実の違法確認を求めている住民訴訟である(このうち,平成7年度分を対象にしたのが原審平成10年(行ウ)第4号事件であり,平成5,6,8,9年度分を対象にしたのが原審平成11年(行ウ)第1号事件である。以下においては,前者を「第1事件」,後者を「第2事件」ということとする。)。原審は,控訴人らの本件各訴えは,その前提となる住民監査請求が請求の対象の特定を欠いているし,地方自治法(以下「法」という。)242条2項の期間徒過について正当な事由がないから不適法であるとして,いずれも却下したのに対して,控訴人らが控訴したが,控訴審も,住民監査請求は請求の対象の特定を欠いているとして,いずれも控訴を棄却した(当庁平成11年(行コ)第42,43号)。控訴人らが,さらに上告したところ,最高裁判所は,住民監査請求はその対象の特定に欠けるところはないとして,控訴審判決をいずれも破棄し,本件両事件を当庁に差し戻した(平成12年(行ヒ)第292号,平成13年(行ヒ)第66号)ため,期間徒過につき正当な理由があるか の対象の特定に欠けるところはないとして,控訴審判決をいずれも破棄し,本件両事件を当庁に差し戻した(平成12年(行ヒ)第292号,平成13年(行ヒ)第66号)ため,期間徒過につき正当な理由があるかについて改めて控訴審としての判断をすることになったものである。 1 前提となる事実(1) 控訴人らは,県の住民であり,被控訴人Aは,平成3年4月から平成15年4月まで,県知事の職にあった。なお,控訴人らの一部は,地方公共団体の公正な公金支出の確保等を目的として結成された団体である市民オンブズマン連絡会議・佐賀(以下「市民オンブズマン」という。)に所属している。 (2) 県は,かねてから,複写機リース会社二社との間で複数の複写機リース契約を締結し,リースを受けた複写機を各部各課に設置して使用していた。上記各契約では,県は,複写機リース会社に対し,一枚当たりの単価に使用枚数を乗じた複写機使用料を支払うことになっていた。 (3) 県庁全体の平成5年度から平成9年度までの複写機使用料の支出合計額は,19億5176万円3000円であったところ,県は,平成10年6月16日,県議会に対して,県庁全体の平成7年度分の複写機使用料のうち,2億2412万4000円は正規の複写機使用料の支出ではない旨を報告し,さらに,同年9月4日,平成5年度から平成9年度分までの複写機使用料のうち,6億4433万6000円は,上記と同様に正規の支出ではない旨を公表した。 (4) 控訴人らは,県監査委員に対し,平成10年7月27日,「1995年度の県の複写機使用料に係る支出の監査を求め,違法,不当に支出された2億2412万4000円の返還及びその他の措置を請求する。」旨の,同年10月15日,「1995年度を除く1993年度から1997年度の県庁全庁の複写機使用料のうち架空 を求め,違法,不当に支出された2億2412万4000円の返還及びその他の措置を請求する。」旨の,同年10月15日,「1995年度を除く1993年度から1997年度の県庁全庁の複写機使用料のうち架空使用であるにもかかわらず違法に支出した4億2021万2000円をA県知事に損害賠償をさせる等,右違法支出による県の損害の填補に必要な措置,及びその他の措置を直ちに講ぜよ。」等とする,住民監査請求(以下,両者を一括して「本件監査請求」といい,個別には,前者を「1次請求」,後者を「2次請求」という。)をした。 (5) 県監査委員は,1次請求を,法242条2項に定める期間を経過しており,また同項ただし書きにいう正当な理由があるとは認められず不適法であるとして,平成10年8月14日付けで却下し,2次請求については,請求の特定を欠き,また,請求の対象とされているものの大部分は,242条2項に定める期間を経過し,かつ同項ただし書きにいう正当な理由があるとは認められないから不適法であるとして,同年12月14日付けで却下した。 2 争点及びこれをめぐる当事者の主張本件監査請求(1次請求は全部,2次請求は,平成9年度分につき同年10月15日以後の分を除くその余の分)は,法242条2項に定める期間を経過しているところ,そのことにつき,同項ただし書きにいう正当な理由があるか。 (控訴人ら)(1) 本件両事件に共通する総論的主張ア第1事件の原判決9頁13行目から11頁11行目まで(第2事件の原判決11頁1行目から12頁12行目までも同じ)のとおりであるから,これを引用する。 イ本件支出の違法性・不当性,すなわち,県庁が全庁で実際に使用しているより多数の枚数の複写機を使用したと虚偽の請求書を複写機リース会社に書かせ,それに基づき架空使用 るから,これを引用する。 イ本件支出の違法性・不当性,すなわち,県庁が全庁で実際に使用しているより多数の枚数の複写機を使用したと虚偽の請求書を複写機リース会社に書かせ,それに基づき架空使用分も含めて複写機使用料を水増しして支払っていたなどという事実は,住民には到底知り得ないことであった。 被控訴人らは,県の情報公開条例を活用すれば,本件支出がなされた時点で当該行為を知ることができたこと,控訴人らが現に農林部林政課,土木部都市計画課の複写機使用料の関係文書の開示請求などをしていることを指摘するが,事実が隠蔽されている以上,開示を受けた文書から分かる事実は限られている(開示された文書では,県庁の当該各部各課の複写機の使用枚数,それに応じた使用料請求と支払の事実だけしか分からない。)。 よって,本件支出は秘密裡になされたものということができる。 (2)ア控訴人らが,相当の注意力をもって調査したときに,客観的にみて,本件支出及びその違法性・不当性を知ることができたのは,平成7年度分については,平成10年6月17日に,県が,前日,本件支出のうち平成7年度分の約2億2000万円が水増し分であることなどを認めたとの新聞報道がなされた時点であり,平成5,6,8,9年度分(以下「その余年度分」という。)については,同年9月5日に,前日,県の調査結果が公表されたとの新聞報道がなされた時点である。 イまた,平成7年度分については,当初,県は,積極的に実態を解明する意向を公表したから,県民としては県の調査結果を待つのが当然であり,したがって,この時点では未だ住民監査請求の必要性はなかった。これが生じたのは,平成10年7月2日,県が,各課別の複写機使用料の流用額を明らかにすることを拒否したまま,本件支出の責任者として県知事で たがって,この時点では未だ住民監査請求の必要性はなかった。これが生じたのは,平成10年7月2日,県が,各課別の複写機使用料の流用額を明らかにすることを拒否したまま,本件支出の責任者として県知事であった被控訴人Aを含めた一部幹部職を減給処分等にすることを発表して,本件支出問題の幕引きを図った時点である。 そうすると,上記7月2日をもって「相当な期間」の起算点と解すべきである。 (3) 控訴人らは,本件支出を知ることができた時から,遅くとも40日で本件監査請求をしており(1次請求については,7月2日から起算すれば25日後,6月17日から起算しても40日後,2次請求については9月5日から40日後),これは相当な期間内にしたことになるから,監査請求期間を経過したことについて「正当な理由」があるものというべきである。 (4) 当審における追加主張本件最高裁判決を基にすれば,住民監査請求の対象を特定できるだけの事実を知らなければ,住民監査請求自体ができないのであるから,住民監査請求をするために遵守を求められる相当な期間の起算点は,特定できるだけの事実を知った時である。また,その時点でも,普通地方公共団体の対応によっては住民監査請求をする必要がないので,その必要性が生じた時が期間の起算点となる。 (被控訴人ら)(1) 本件両事件につき,第1事件の原判決15頁1行目から19頁4行目までのとおりの被控訴人らの主張を引用する。 (2) これによれば,本件監査請求は,前記第1の時点からすれば,1次請求は8か月以上,2次請求は10か月以上,第2の時点からは,1次請求は5か月以上,2次請求は約8か月,第3の時点からでも,1次請求は4か月以上,2次請求は6か月半以上が経過してからなされており,相当な期間内になされたものとはいえない 以上,第2の時点からは,1次請求は5か月以上,2次請求は約8か月,第3の時点からでも,1次請求は4か月以上,2次請求は6か月半以上が経過してからなされており,相当な期間内になされたものとはいえない。 (3) 当審における追加主張ア住民監査請求は,本来個々の支出を特定して行うのが原則であり,必ず県の調査結果の発表をまって,全体を対象に請求しなければならないものではなく,控訴人らはそれ以前に住民監査請求をすることができた。 イまた,控訴人らは,第3の時点以後,平成10年5月から6月にかけて3回にわたり,複写機使用料関係の文書の開示請求をしており,同年6月26日には,県知事への緊急要請をしたり,同年7月3日には,県知事及び県職員についての刑事告発をしているから,その頃,住民監査請求をすることは可能であったはずであるから,本件監査請求は遅きに失する。 第3 当裁判所の判断 1 本件支出のうち,平成9年度のそれについては同年10月15日以降の分は,当該行為のあった日から1年内に2次請求がなされていることが明らかであるから,これについても監査請求を却下した県監査委員の判断は誤っているものといわなければならない。 そうすると,請求の対象である全部が不適法であるとして訴えを却下した第2事件の原判決は,少なくともこの部分については取り消されることになる。 2 以下においては,上記部分を除くその余の本件支出にかかる請求につき,前記第2の2記載の争点について検討するものである。 (1) 本件支出は,県が,契約を締結した複写機リース会社と通謀して,複写機使用料を架空水増し請求させ,その架空水増し分を含んだ複写機使用料を不正に支払ったものであるから,それが秘密裡になされた行為であることは明らかである。 問題は,最高裁昭和63年判 して,複写機使用料を架空水増し請求させ,その架空水増し分を含んだ複写機使用料を不正に支払ったものであるから,それが秘密裡になされた行為であることは明らかである。 問題は,最高裁昭和63年判決に従った場合,①控訴人らが相当な注意力をもって調査したときに,客観的にみて当該行為を知ることができたといえるのはいつか,②控訴人らは,その時点から相当な期間内に本件監査請求をしたといえるか,である。以下順次検討する。 3 ①について(1) 被控訴人らは,いわゆる支出自体対象説を前提にした上で,県には公開条例があるので,本件支出の直後から,開示請求ができ,開示されれば,当該事実を知ることができた筈であると主張する。 しかしながら,開示請求により,その対象となった文書が開示されても,複写機の使用枚数,それに基づく複写機リース会社からの支払請求,県の債務負担行為と支出命令といった外形的な事実が明らかになるだけで,秘密裡になされた架空水増し請求の事実が明らかになる訳ではないから,開示された時点で,控訴人らが直ちに当該事実を知ることができたというのは無理がある(もっとも,開示の結果,調査対象課の複写機の使用枚数料が異常に多かったことが判明したことから,控訴人らがこれに疑問を持ち,更なる開示請求や開示された資料の分析,それを踏まえた県知事や議会等への真相解明に向けた要請活動などに発展し,ついには本件支出の実態が解明されることに結びついたということが認められるから,開示請求が真相解明の端緒となった面があることは確かである。)。 (2) 控訴人らにおいて,開示された文書を分析して,県が複写機リース会社に支払う複写機使用料が異常に高額であることを認識し,かつ,そのことについて,県側から合理的な説明がなされないなどの理由により,不正支出の疑いがあ いて,開示された文書を分析して,県が複写機リース会社に支払う複写機使用料が異常に高額であることを認識し,かつ,そのことについて,県側から合理的な説明がなされないなどの理由により,不正支出の疑いがあると判断できた時点(なお,控訴人らは,県庁全体の複写機使用料の不正支出を疑い,そのための資料収集を図っていたのであるから,その全体が把握できた時点となる。この点につき,被控訴人らは,一部でも住民監査請求は可能であると主張するが,どの事実を対象とするかは住民側が決めることである。)が,控訴人らが当該事実を知ることができたときであるとするのが相当である。なお,この点の判断に当たっては,県が,複写機使用枚数が多い原因について,どのような説明をしていたか(それが事実の解明に資するものであったのか,反対に,それを妨げるものであったのか)ということも,重要な判断要素をなすものと考える。 (3) 上記のような見地から,本件監査請求に至る経過を見れば,次のとおりの事実が認められる(認定に供した証拠は各項の末尾に掲記する。)。 ア控訴人らの開示請求に対して,平成9年11月25日に,土木部監理課(平成4,7,8年度),農林部3課(林政課,農政企画課,農村計画課の平成7年度)の複写機使用料関係文書の部分開示がなされ(第1事件乙11の1から4まで),控訴人らは,平成10年2月3日に,その分析結果として,農林部林政課の複写機使用枚数が異常に多いこと,架空の疑いがあることを公表したが,佐賀県は,資料作成が多く,時間外や休日出勤での使用もあるなどと弁明していた(同事件乙13の1から6まで)。 イ控訴人らは,同年2月12日に,農林部9課の平成7年度分の複写機使用料について,住民監査請求をするとともに,同月20日に,県知事であった被控訴人Aに対して,佐賀県庁全体 の1から6まで)。 イ控訴人らは,同年2月12日に,農林部9課の平成7年度分の複写機使用料について,住民監査請求をするとともに,同月20日に,県知事であった被控訴人Aに対して,佐賀県庁全体に対する複写機使用料の調査を要請したが(同事件乙15,16),同被控訴人は,佐賀県議会で,林政課の複写機使用料は,庁内他課に比べて多いようなので原因を調査するが,全庁調査は行わないと答弁した(同事件乙17の1から4まで)。 ウ控訴人らは,同年3月18日,上記開示を受けた文書の分析結果として,土木部都市計画課の平成7年11月分の複写機使用枚数が異常であると公表したが,同課や複写機を一括管理する同部監理課は,時期的に使用量が多くなる,正当に支出されたと思う,と弁明した(同事件乙19の1,2)。 エ控訴人らは,平成10年3月23日,県知事である被控訴人Aに対し,県庁全体についての複写機使用料の実態調査を求める中で,農林部に続き土木部でも大量の複写機使用があり,常習的な公金不正支出の疑いがあると指摘した(同事件乙21の1)。 オ控訴人らは,平成10年3月25,26日に,全庁(平成7年度),及び農林部林政課,土木部都市計画課(平成5,6,8年度)の複写機使用料に関する文書の開示請求をし(同事件乙21の2,22の4),被控訴人Aは,同年5月22日に,上記文書の部分開示をした。その結果,佐賀県庁の32課で複写機リース契約がなされておらず,使用料の支払もどこが行っているか不明であったり,監査委員事務局でも支出命令書がないことが分かったが,その理由について各課や事務局は,明言を避けた(同事件乙23の1,3)。 カ控訴人らは,同年5月29日,佐賀県庁の33の部署に,その余年度分の複写機使用料の文書の,同年6月4日,14課の上記同様の文書の各 いて各課や事務局は,明言を避けた(同事件乙23の1,3)。 カ控訴人らは,同年5月29日,佐賀県庁の33の部署に,その余年度分の複写機使用料の文書の,同年6月4日,14課の上記同様の文書の各開示請求をした(同事件乙24の2,5)。 キ控訴人らは,同年6月26日,被控訴人Aに対し,県庁全体について,平成5年度から平成9年度分までの複写機使用料の調査を緊急要請した(同事件乙27)。 ク控訴人らは,同年7月17日,開示を受けた県庁36課の複写機使用料関係の調査結果を公表し,平成5年度から不正流用が続いており,少なくとも同年に遡って第3者を含めた調査を実施すべきであると要求した(同事件乙41の1から3まで)(4) 上記認定の諸事実と前記第2の1(3)及び(4)の前提事実とを併せ考えると,県の対応は,本件支出に架空水増し請求分があることを隠すための虚偽説明ないしは事実の解明に消極的な弁明に終始するものといわれても仕方のないものであり,そのために,控訴人らが全容を把握するためには,さらに資料の収集や分析検討(なお,文書開示から控訴人らが分析結果を発表するまでには,約3か月以上の期間がかかっている。)が必要であったと考えられ,結局,控訴人らが,県庁全体の複写機使用料の不正支出の事実を知ることができたのは,県が,県庁全体で不正支出がなされた事実を認めたと新聞に報道された,平成7年度分については平成10年6月17日,その余年度分については同年9月5日の時点までずれ込むことになったものと考えるのが相当である。 4 ②について(1) 本件支出のうち平成7年度分については,県は,当初,架空水増し請求を受けて支払われた公金の行方について,解明を進める意向を示していたのであるから(第1事件乙25の8),控訴人らとしても,住民監査請求を 件支出のうち平成7年度分については,県は,当初,架空水増し請求を受けて支払われた公金の行方について,解明を進める意向を示していたのであるから(第1事件乙25の8),控訴人らとしても,住民監査請求をするかどうかの決断をするについては,まずは上記のような県の努力を見守ろうということになるのは当然である。控訴人らは,この点について,県が県知事と県の一部幹部職員の減給処分等によりこの件の幕引きをしようとしていることが明らかになった平成10年7月2日が「相当な期間内」の起算点とされるべきである旨主張するが,1次請求が「相当な期間内」になされたといえるかどうかの判断において,上記のような事情に十分配慮すれば足り,敢えて起算点を遅らせるまでの必要はないものと考える。そして,控訴人らにおいて,県が,上記のような処分をすることで事態を収拾しようとしていると受け止めたことにより,平成10年7月27日に1次請求をするに至ったことが認められるのであるから,同監査請求は相当な期間内になされたというべきである。 (2) また,2次請求については,前記1のとおり,うち平成9年10月15日からの分は,当該行為のあった日から1年を経過していないことは明らかであるし,それ以外の分についても,当該対象となる本件支出の期間も長期であり,資料の収集や分析検討に時間を要するであろうことや,1次請求が同年8月14日付けで却下された後,同年9月10日に第1事件の訴えを提起しているところ,そのことに一定の労力と時間を要しているであろうことなどを考えると,同年10月15日になされた2次請求も,その全部が相当な期間内になされたものということができる。 (3) 被控訴人らは,控訴人ら及び市民オンブズマンは,本件支出の実態解明に向けて,開示請求を重ね,開示された文書の分析を踏まえて問題提起 の全部が相当な期間内になされたものということができる。 (3) 被控訴人らは,控訴人ら及び市民オンブズマンは,本件支出の実態解明に向けて,開示請求を重ね,開示された文書の分析を踏まえて問題提起を公にするなど,活発な活動を展開しているのであるから,もっと早い時期に監査請求をすることができた筈であるとか,市民オンブズマンは平成10年7月3日に県知事及び県職員を告発しているのであるから,遅くともその時点では監査請求をすることができた筈であるなどと主張する。 確かに,上記主張の前提とされている事実は証拠(第2事件乙39の1から5まで)により認められるけれども,控訴人らは,これらの活動を通じて,県知事らに真相解明の要請をするなどして,県側の主体的な努力を求めることに主眼を置いたものと解されるのである。また,刑事告発は,司直の手による真相解明を期待してするものであり,告発者が自らの力量の限界を感じたが故にすることもあるものといわなければならない。 そうであれば,上記のような活動がなされ,或いは,上記告発がなされているからといって,控訴人らが既に監査請求をするに足りる準備を整えていた筈であるということには必ずしもならないものというほかない。 5 以上の次第で,本件監査請求は,いずれも相当な期間内になされたものとして,期間経過の点について正当な理由があるから適法であり,それに対する監査請求の結果(却下)から30日以内にした本件各住民訴訟もまた適法であるというべきである。これと結論を異にする原判決はいずれも取消しを免れない。 よって,原判決をいずれも取り消し,本件両事件をいずれも原審に差し戻すこととする。 福岡高等裁判所第3民事部裁判長裁判官西理裁判 をいずれも取り消し,本件両事件をいずれも原審に差し戻すこととする。 福岡高等裁判所第3民事部裁判長裁判官西理裁判官有吉一郎裁判官吉岡茂之
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