- 1 -平成21年4月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成18年(ワ)第16119号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成21年2月16日判決ドイツ連邦共和国《以下省略》原告エルンスト・ミュールバウエル・ゲーエムべーハー・ウント・コー・カーゲー同訴訟代理人弁護士鈴木秀彦同鈴木淳子同井門慶介同訴訟復代理人弁護士阿部裕介東京都板橋区《以下省略》被告株式会社ジーシー同訴訟代理人弁護士彌重仁也同補佐人弁理士野間忠之主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対して,金2億2200万円及び内金1億200万円に対する平成18年10月6日から,内金1億2000万円に対する平成20年5月10日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 -第2事案の概要本件は,重合可能なセメント混合物に関する特許権を有する原告が,被告に対して,被告の製造,販売する製品が上記特許権に係る発明の技術的範囲に属し,被告は,原告に無断で上記の製造販売行為を行ったとして,民法703条に基づき,不当利得金2億2200万円の返還(遅延損害金については,内金1億200万円に対しては平成18年10月2日付けの訴え変更申立書の送達の日の翌日である平成18年10月6日から,内金1億2000万円に対しては平成20年5月8日付け訴えの変更申立書の送達の日の翌日である同月10日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員を請求している。)を求めている事案である。 争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠を末尾に記載する。)(1)原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許 法所定の年5分の割合による金員を請求している。)を求めている事案である。 争いのない事実等(争いのない事実以外は,証拠を末尾に記載する。)(1)原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」という。また,本件特許権に係る発明を「本件発明」という。また,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有している。 特許番号第2132069号発明の名称重合可能なセメント混合物出願年月日昭和61年10月9日登録年月日平成9年9月12日特許請求の範囲請求項1「次の成分:(a)酸基及び/またはその酸から誘導された反応性酸誘導体基を含み,次の(b)の成分と混合された場合において,重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる,不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと,(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO),Ca(OH) セメント, シリケートセメントまたはアイオノマーセメントから選ばれる,該酸- 3 -基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる微粉状の反応性充填剤と,(c)硬化剤とを含有する重合可能なセメント混合物であって,該成分(a)及び(b)は,該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し,セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物。」(2)構成要件の分説本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりとなる。 A次の成分:(a)酸基及び/またはその酸から誘導された反応性酸誘導体基を含み,次の(b)の成分と混合された場合において,重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる,不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと,B(b)ホスフェートセメント(ZnO )の成分と混合された場合において,重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる,不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと,B(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO),Ca(OH) セメン ト,シリケートセメントまたはアイオノマーセメントから選ばれる,該酸基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる微粉状の反応性充填剤と,C(c)硬化剤とDを含有する重合可能なセメント混合物であって,E該成分(a)及び(b)は,該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し,セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物(3)被告の行為被告は,業として,別紙物件目録記載1ないし3の各製品(以下「被告製品1」ないし「被告製品3」といい,被告製品1,被告製品2及び被告製品3を併せて「被告製品」という。)を販売している。なお,本件発明との対- 4 -比の関係では,被告製品1ないし3の構成は異ならない。 (4)被告製品1及び被告製品3には,次の成分が含まれている。 ア液成分(ア)ポリカルボン酸(イ)酒石酸(ウ)ヒドロキシエチルメタクリラト(HEMA)(エ)グリセリンジメタクリラト(GDMA)(オ)ウレタンジメタクリラト(UDMA)(カ)ショウノウキノン:硬化剤である。 (キ)水イ粉成分フルオロアルミノシリケートガラス粉末(4)本件発明と被告方法との対比被告製品は,本件発明の構成要件B,Cを充足する。 (5)本件特許の出願の経緯ア原告は,昭和61年10月9日,本件特許の出願(以下「本件出願」という。)をし,本件出願は,平成6年9月7日,出願公告がされた。その後,本件出願についての特許異議の申立てがされたため 出願の経緯ア原告は,昭和61年10月9日,本件特許の出願(以下「本件出願」という。)をし,本件出願は,平成6年9月7日,出願公告がされた。その後,本件出願についての特許異議の申立てがされたため,原告から,平成7年12月27日,平成6年法律第116号による改正前の特許法64条(以下「旧特許法64条」という。)による補正に係る手続補正書が提出され(以下,この補正を「本件補正」という。),その後,平成9年9月12日,特許権の設定登録がされた(甲1,弁論の全趣旨)。 平成18年9月6日,本件特許について,被告から無効審判請求がされ(同無効審判請求に係る無効審判を「本件無効審判」という。),原告は,平成19年1月29日,訂正請求をした(以下,この訂正を「本件訂正」という。)ところ,特許庁は,同年6月5日,「訂正を認める。本件審判- 5 -の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。甲18)をした。その後,被告は,本件審決について,審決取消訴訟を提起したが,知財高等裁判所は,平成20年8月26日,被告の請求を棄却した(甲25)。 イ本件特許の本件補正前の特許請求の範囲請求項1は,次のとおりである(本件補正前の本件明細書を「本件当初明細書」という。)。 「次の成分:(a)酸基及び/またはその反応性酸誘導体基を含む,重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと,(b)微粉状の金属化合物及び/または金属化合物を含有するガラス及び/または金属化合物を含有するセラミック及び/またはゼオライト及び/または酸化可能な金属及び/または窒化ホウ素,及び/またはこれらの充填剤及び/またはガラスまたはセラミックの混合物の焼結生成物及び/またはこれらの成分と貴金属との焼結生成物と,(c)硬化剤を含有する重合可能なセメ 金属及び/または窒化ホウ素,及び/またはこれらの充填剤及び/またはガラスまたはセラミックの混合物の焼結生成物及び/またはこれらの成分と貴金属との焼結生成物と,(c)硬化剤を含有する重合可能なセメント混合物。」 争点 (1)侵害論ア被告製品の液成分には,酸基を含む重合可能なプレポリマーが存在するか-構成要件A,Dの充足性イ構成要件Eの充足性(2)本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(3)不当利得の額 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)ア(被告製品の液成分には,酸基を含む,重合可能なプレポリマーが存在するか-構成要件A,Dの充足性)について(原告)アP博士(以下「P博士」という。)が平成20年8月26日付けで作成- 6 -した「特許権侵害訴訟に関する第5意見書」と題する書面(甲24。以下「甲24意見書」といい,甲24意見書における図を,当該図の番号を末尾に付して,「本件図1」などという。なお,本件図1、本件図2、本件図4,本件図5、本件図6は、それぞれ、別紙図1、別紙図2、別紙図4、別紙図5、別紙図6のとおりである。)で報告している実験(以下「甲24実験」という。)の内容及び結果並びに同結果から導き出されること(ア)実験手順甲24実験は,以下の手順で実施された。 a成分の概要を把握するために,また,分取的GPC実施のための適切なカラム材料を選択するために,被告製品の全液体成分に対する分析的GPCを実施した。 b次に,NMR試験用の十分な量のポリマー成分を得るために,分取的GPCにより対象製品のポリマー成分を分取した。 c分取されたポリマー成分を2部に分けた。 (a)ポリマー成分の第1部については,溶離液(NaNO)の塩分 をポリマー溶液から除去すべく,濾過を実施した。続いて,分取し, リマー成分を分取した。 c分取されたポリマー成分を2部に分けた。 (a)ポリマー成分の第1部については,溶離液(NaNO)の塩分 をポリマー溶液から除去すべく,濾過を実施した。続いて,分取し,かつ,濾過したポリマー成分の第1部について,H-NMRと C-NMRスペクトルを記録した。 (b)ポリマー成分の第2部については,第2回分析的GPCを実施した。 dなお,第2回分析的GPCの実施に先立ち,ポリマーの分子量を測定するために,較正曲線を記録した。ポリマー成分の第1部と第2部について実施された上記の実験は,並行して実施されたものであって,一方を先に実施したというわけではない。すなわち,ポリマー成分の第2部は,第2回分析的GPCの実施前に濾過されたということはな- 7 -い。 (イ)GPCによるポリマー成分の分離について分取的GPCの直後に実施された第2回分析的GPCのクロマトグラム(本件図4)において,溶出容積19ml以降にRI曲線とUV曲線が観測されなかった。このことから,当該ポリマー成分には不純物が含まれないこと,すなわち,分取的GPCによるポリマー成分の分離は成功したことが証明された。 (ウ)核磁気共鳴分光法(以下「NMR法」という。)による分析の結果についてaNMR法は,有機化合物の構造決定において広く利用されている方法であり,水素原子Hと同位体炭素原子Cの原子核のスピン状態 を測定する。すなわち,核磁気共鳴は,磁気モ-メントを持つ原子核を含む物質を磁場の中におき,これに共鳴条件を満足する周波数の電磁波を加えたときに起こる共鳴現象である。この吸収スペクトルを利用すると,水素原子( H),同位体炭素原子(C),その他の磁気核 を含む種々の化合物の分子構造,組成分析その他化学的性質の分析を 加えたときに起こる共鳴現象である。この吸収スペクトルを利用すると,水素原子( H),同位体炭素原子(C),その他の磁気核 を含む種々の化合物の分子構造,組成分析その他化学的性質の分析を行うことができる。シグナルの化学シフト(NMR周波数の変化量)は,水素原子( H)・同位体炭素原子(C)の置かれた環境(隣にあ る原子は何か等)によって異なるため,得られたスペクトルと,公知の化合物のスペクトルとを対比することによって,原子の結合状態を知ることができる。 bC-NMRにおいては,110ppmないし150ppmあたり の領域において,「芳香族」の同位体炭素原子(C)又は「アルケ ン」の同位体炭素原子(C)のシグナルが観測される。いずれである かは,H-NMRの結果等とも照らし合わせて決定すべきである。 - 8 -「芳香族」は,重合可能な不飽和化合物ではないが,「アルケン」は,分子内に二重結合C=Cを1個有する脂肪族不飽和炭化水素の総称であり,分子式はCHで表わされる。したがって,重合可能なn2n不飽和化合物である「アルケン」のCシグナルと同じシグナルが観 測されれば,対象製品のポリマー成分に重合可能な二重結合が存在するということになる。 そして,本件図6のとおり,C-NMRスペクトルにおいては, 136ppmと127ppmのシグナルが観測されており,「芳香族」と「アルケン」のCシグナルと同じ範囲である。 cH-NMRにおいては,5ppmないし6ppmあたりの領域に おいて,二重結合に隣接する水素原子のシグナルが観測される。したがって,このようなシグナルが観測されれば,C-NMRで観測さ れた136ppmと127ppmのシグナルは,「芳香族」ではなく,二重結合C 重結合に隣接する水素原子のシグナルが観測される。したがって,このようなシグナルが観測されれば,C-NMRで観測さ れた136ppmと127ppmのシグナルは,「芳香族」ではなく,二重結合C=Cを1個有する「アルケン」のシグナルであるということになる。 そして,本件図5のとおり,H-NMRスペクトルにおいては, 6.2ppm及び5.8ppmのシグナルが観測されている。これは二重結合に隣接する水素原子のシグナルであるから,C-NMRで 観測された136ppmと127ppmのシグナルは,二重結合C=Cを1個有する「アルケン」の炭素原子のシグナルである。 (エ)被告製品の成分を前提とした考察被告製品の液成分中のポリマー成分は,不飽和カルボン酸の重合体であって,重合しないから,二重結合を含まない。すなわち,被告製品の液体成分には,ポリカルボン酸を含むが,これはアクリル酸とマレイン酸の共重合体であるところ,アクリル酸の化学式はCH=CHCOO - 9 -Hであり,「カルボキシル基」(-COOH)と二重結合を含み,重合可能な酸であるが,マレイン酸と共重合しているため,既に二重結合を失っているのである。 ところが,甲24実験においては,上記のとおり,分取的GPCによって分離されたポリマー成分は,NMRの計測の結果,二重結合を有していることが判明した。したがって,被告製品のポリマー成分には,二重結合が含まれていることになる。これを,被告製品における成分を前提に説明すると,被告製品の液体成分には,メタクリル酸から派生した化合物であり,二重結合を有するHEMAが含まれているので,HEMAが,甲24実験の対象製品のポリマー成分の主成分であるアクリル酸の誘導体と共有結合しているということになる。 すなわち,被告の開示した被告製品の成分を前 合を有するHEMAが含まれているので,HEMAが,甲24実験の対象製品のポリマー成分の主成分であるアクリル酸の誘導体と共有結合しているということになる。 すなわち,被告の開示した被告製品の成分を前提とすれば,液成分中のポリマー成分は,「不飽和カルボン酸の重合体」であって更に重合しないはずであるから,「二重結合」を含まないはずである。ところが,分取的GPCによって分離されたポリマー成分は,NMRの計測の結果,「二重結合」を有していることが判明した。このことが意味するのは,重合反応を引き起こす「二重結合」を有するHEMAは,ポリマー成分の主成分であるアクリル酸の共重合体と共有結合しているということである。 イ甲24実験に対する被告の指摘について(ア)被告は,甲24実験の濃度だと,被告製品は均一に溶解せずに沈殿物を生じた状態となり,このような高濃度の実験では,正確な分析ができない旨主張する。 しかしながら,甲24実験のGPCを担当したフリートヘルム・ゴレスは,溶液に沈殿物が生じていないことを確認した上で分取的GPCを実施しており,かつ,同人は,通常のGPCに要求される手順に従って,- 10 -GPC実施前に溶液をフィルターにかけているのであるから,何らかの沈殿物が発生して,沈殿物によるカラムの目詰まり等でGPCが正常に作動しなかったという可能性は排除できる。 (イ)本件図1と本件図2の相違について本件図1と本件図2のクロマトグラムの相違は,以下のとおり,分取的GPCにおける「小孔カラムの使用」と「オーバーロード効果」による想定の範囲内のものであって,何ら分取的GPCによる分取の成否に関係がないことが明らかである。 a小孔カラムの使用分取的GPCにおいては,30という非常に小さな孔を有するÅカラムが使用されており,高分子量ポリ であって,何ら分取的GPCによる分取の成否に関係がないことが明らかである。 a小孔カラムの使用分取的GPCにおいては,30という非常に小さな孔を有するÅカラムが使用されており,高分子量ポリマー成分は,孔中には拡散せずに(カラムに留まらずに),流速のみに応じて極めて短時間でカラムから溶出し,非対称のピーク(左側が急で右側が緩やか)を示す。 これが本件図2における第1のピークが意味するところである。これに対して,比較的低分子量のポリマー成分は,いったん孔中に留まってから,分子量に応じてカラムから溶出してくるので,ベル型の溶出曲線を描くことになる。ポリマーのピークが2つあるのは,別紙1(本件図2の分取的GPCと同じものに手書きで色付けしたもの)に示すとおり,高分子量ポリマー成分の溶出曲線Aと低分子量ポリマー成分の溶出曲線Bとの2つの溶出曲線が重なっているからである。なお,第1回分析的GPCにおいては,2つのカラムが使用されており,第1カラムは30という同じ小孔を有するが,第2カラムが10Å という比較的大きい孔を有するため,第1カラムを通過したÅ高分子量ポリマーも,第2カラムで滞留するので,最終的には高分子量ポリマーと低分子量ポリマーが連続して溶出してくるため,結果と- 11 -してベル型の溶出曲線を描くことになる。 bオーバーロード効果高分子量ポリマー成分がカラムから短時間で溶出したもう1つの理由は,カラムを「オーバーロード」したため,すなわち,大量の試料をカラムに入れたためである。分取的GPCを有効に行い,限られた時間内で一定量の試料を収集するためには,カラムを「オーバーロード」することが必要になる。分取的GPCにおいて,「オーバーロード」は通常行われている手法である。株式会社東京化学同人発行の書籍である「化 内で一定量の試料を収集するためには,カラムを「オーバーロード」することが必要になる。分取的GPCにおいて,「オーバーロード」は通常行われている手法である。株式会社東京化学同人発行の書籍である「化学辞典」の「分取クロマトグラフ」の項においても,「調製の目的には,さらに口径の大きなカラムを用い,過負荷()の状態で操作されることが多い」と明記されているoverloading(甲33)。「オーバーロード」により「分離度」(隣り合うピークの分離の程度)は悪くなり,溶出曲線が,ピークの後にX軸まで下がることなく再び上昇することになるので,本件図2の分取的GPCのクロマトグラムにおいて,ピークAないしDがいずれもピークの後にX軸まで下がることなく再び上昇しているのは,「オーバーロード」した結果である。 cなお,分取的GPCでは,溶出時間5.5分から6分までの間の成分を分取したのであり,孔中に留まってから分子量に応じてカラムから溶出してくる低分子量ポリマー成分の溶出(別紙1の低分子量ポリマー成分の溶出曲線B)が始まる前に,カラムに留まらずに排出された高分子量のポリマー成分のみ(別紙1の高分子量ポリマー成分の溶出曲線A)を分取したものである。 (ウ)第2回分析的GPCについて- 12 -第2回分析的GPCを行った時点は,分取的GPCの実施直後であり,その時点では,濃縮・濾過等の後処理は行われていない。すなわち,分取的GPCの実施によって得られた成分のうち,一部はそのまま第2回分析的GPCにかけられ,残部はNMR計測のために濃縮・濾過等の後処理をされたのである。 したがって,分取的GPCによって分取された成分を濃縮・濾過した後に第2回分析的GPCにかけたことを前提とする被告の主張は理由がなく,第2回分析的GPCにおいて,溶出容積19ml以降 れたのである。 したがって,分取的GPCによって分取された成分を濃縮・濾過した後に第2回分析的GPCにかけたことを前提とする被告の主張は理由がなく,第2回分析的GPCにおいて,溶出容積19ml以降にRI曲線とUV曲線が観測されなくなったという事実から,分取的GPCが成功し,分取後の成分には,ポリマー以外の成分が含まれていないことが証明されている。 (エ)本件図1と本件図4との相違被告は,本件図4の溶出曲線は,高分子側にショルダを持っているのに対して,本件図1の溶出曲線にはそれがない旨主張している。 しかしながら,上記ショルダは,巨大分子のポリマー成分の存在を示しているところ,分取的GPCにおいては,30という非常に小さÅな孔を有するカラムが使用されており,高分子量ポリマー成分は,孔中には拡散せずに(カラムに留まらずに),流速のみに応じて極めて短時間でカラムから溶出し,非対称のピーク(左側が急で右側が緩やか)を示す。これが本件図2における第1のピークが意味するところである。 これに対して,比較的低分子量のポリマー成分は,いったん孔中に留まってから,分子量に応じてカラムから溶出してくるので,ベル型の溶出曲線を描くことになる。 これに対して,第1回分析的GPCにおいては,2つのカラムが使用されており,第1カラムは30という同じ小孔を有するが,第2カÅ- 13 -ラムが1000という比較的大きい孔を有するため,第1カラムをÅ通過した高分子量ポリマーも,第2カラムで滞留するので,最終的には高分子量ポリマーと低分子量ポリマーが連続して溶出してくるため,結果としてベル型の溶出曲線を描くことになる。 分取的GPCでは,溶出時間5.5分から6分までの間の成分を分取したのであり,カラムに留まらずに排出された高分子量のポリマー成分のみを分取 てくるため,結果としてベル型の溶出曲線を描くことになる。 分取的GPCでは,溶出時間5.5分から6分までの間の成分を分取したのであり,カラムに留まらずに排出された高分子量のポリマー成分のみを分取したものである。このように,カラムの孔よりも大きな高分子量ポリマー成分「のみ」が分取されたのであるが,30という非Å常に小さな孔を有するカラムが使用されたため,その孔よりも大きな高分子量ポリマー成分とはいっても,単一の分子量というわけではなく,巨大な分子,比較的大きな分子,孔よりもわずかに大きい分子が混在している。すなわち,巨大分子のポリマー成分の割合が,第1回分析GPC(全成分が対象)と第2回分析的GPC(カラムに留まらずに排出された高分子量のポリマー成分のみが対象)とでは異なっているのであるから,本件図4の第2回分析的GPCの溶出曲線が,高分子側にショルダを持っているのに対して,本件図1の第1回分析GPCの溶出曲線にはそれがないのは,想定の範囲内ということができる。 (オ)NMRについて被告は,C-NMRスペクトルでは,B,C,Eのピークでの裾野 の広がりは認められない旨主張する。 しかしながら,本件図6の拡大図(甲29)を見れば明らかなように,本件図6のB,C,Eのピークは,裾野の広がったシグナルである。 ウ以上より,被告製品には,酸基を有するポリマー成分に重合可能な二重結合が存在し,本件発明の構成要件A及びDを充足する。 (被告)- 14 -ア甲24実験の問題点甲24実験には,以下のとおりの問題点がある。 (ア)試料が溶液に溶けていないという問題点甲24意見書の「サンプル1gを移動相10mlで希釈しました。」との記載に基づき,被告製品10gを,甲24実験と同濃度となるよう,0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液100mlで けていないという問題点甲24意見書の「サンプル1gを移動相10mlで希釈しました。」との記載に基づき,被告製品10gを,甲24実験と同濃度となるよう,0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液100mlで希釈した。その結果,乙第27号証の写真撮影報告書(以下「乙27報告書」という。)から明らかなように,被告製品は均一に溶解せずに,沈殿物を生じた状態が確認された。 また,T教授(以下「T教授」という。)の平成21年1月23日付け意見書(乙30。以下「乙30意見書」という。)には,「また,試料の沈殿が発生するような濃度で分析を行っていたとすれば,分析評価の基本的前提を欠いています。特に,今回の試料のように溶媒に対する溶解度が不明な物質が数種類含まれているような場合,何がどれだけ溶媒に溶けているかが重要ですので,分析評価が成り立つためには試料が溶解していることが不可欠です。」と記載されているとおり,分析の基本的な前提として,対象となる成分がすべて溶液に溶けていることが必要であることは技術常識である。 また,甲24意見書の分析的GPCのため「サンプル60mgをバイアルから取り出し,溶離液(0.1モル硝酸ナトリウムNaNO水溶 液)で10mlに希釈した」との記載に基づき,同様にして被告製品を0.1モル硝酸ナトリウム水溶液に希釈した場合も,程度の差はあるが,沈殿物の発生が確認された。 したがって,上記のような高濃度で行った甲24実験では,正確な分析ができていなかったものと判断される。 (イ)会合- 15 -乙30意見書にあるように,不適切な濃度でGPC分析を行うことから生じる問題の1つとして,「会合」という現象がある。これは,共有結合がないのに,分子間に働く力によって,結合と似た状況が生じることをいう。T教授は,甲24実験のように明らかに不適切な を行うことから生じる問題の1つとして,「会合」という現象がある。これは,共有結合がないのに,分子間に働く力によって,結合と似た状況が生じることをいう。T教授は,甲24実験のように明らかに不適切な高濃度の下での実験では,会合によって低分子も他の分子と結合したような状態になってカラムの孔を通過し,高分子と同じように振る舞う可能性があることを指摘している。 (ウ)本件図1と本件図2のパターンの違いa甲24実験における分取的GPCの溶出パターンを示した本件図2と分析的GPCの溶出パターンを示した本件図1とが全く一致しておらず,このことから,甲24実験のGPCがその原理に従って正しく分離作業を果たさなかったこと,すなわち,その結果に依拠することができないことが示される。 bこの点,P博士は「図1のGPCのクラマトグラム(分析的カラム)と対比すると,ポリマーのピークが異なるように見えますが,分取的GPCは,ポリマー成分中でも,高分子量のものと低分子量のものを分離するからであると説明できます。」と説明している。 しかし,この説明は,以下のように被告側の両専門家によって否定されている。 すなわち,T教授が平成20年10月2日付けで作成した「意見書」と題する書面(乙25)には,「観測された溶出パターン(図2)が1.の分析的GPCの溶出パターン(図1)とまったく一致していません。第五意見書には『高分子量のものと低分子量のものを分離するからである』との説明がありますが,この不一致を根拠付けることはできません。」との指摘がある。また,I教授(以下「I教授」という。)も,「分取的GPC曲線が上記のような複数のピーク- 16 -パターンを有していること,並びにFujiⅡLCLiquid組成物中のポリマー成分の溶出と他のUV吸収成分の溶出とが有意 という。)も,「分取的GPC曲線が上記のような複数のピーク- 16 -パターンを有していること,並びにFujiⅡLCLiquid組成物中のポリマー成分の溶出と他のUV吸収成分の溶出とが有意に重なりあっていることは,分取的GPCで使用されたGPCシステムがFujiⅡLCLiquid試料の分画に全く不適であることを明示するものである。むしろ,奇妙な溶出ピークパターンは,GPC実験の間に不明確なプロセス(反応?)が生じていると云うことを推測させるものである。」(乙26)と指摘している。 cまた,原告は,原告代理人が平成20年12月17日付けで作成した「報告書(3)」と題する書面(甲39。以下「甲39報告書」という。)により,本件図1と本件図2の違いはカラムの違いに由来するものと説明しようとしている。 しかし,分析的GPCと分取的GPCのカラムの違いは,分析的GPCのカラムが2本で,1000Åの大きなサイズの孔のカラムを含んでいるという点にあり,いずれのGPCも,30Åの小さなサイズの孔のカラムの方は共通しているので,少なくとも,溶出量の大きい側(低分子が溶出してくる側,図の横軸の右方向)についてまで違ったパターンになるはずはない。I教授も,同様の意見である(乙31)。 (エ)第2回分析的GPCについてa甲24意見書には,「5.5-6分の溶離時間で溶出したポリマー成分を採取し,かかる溶液をロータリ式エバポレーター(10mbar,50℃)を用いて液量を減少させました。さらに,限外濾過膜(Millipore,材料:ポリエーテルスルホン,直径:76mm,NMWL(公称文画分子量):5000)を用いて,ポリマー成分を濾過しました。濾過後に,ポリマー溶液を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させました。」と ン,直径:76mm,NMWL(公称文画分子量):5000)を用いて,ポリマー成分を濾過しました。濾過後に,ポリマー溶液を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させました。」との記載が- 17 -あり,分取的GPCにより分取された成分を加熱,濃縮しているが,前記のとおり,分取的GPCによる分取が正しく行われなかったことから,第2回分析的GPCを行った成分には,ポリマー成分だけでなく,他の成分も混在していたのであり,これらの成分が上記の加熱,濃縮操作によって何らかの反応をし,それによって,被告製品中に存在しなかった物質が形成される可能性も十分にある。 bこの点,原告代理人が平成20年12月15日付けで作成した「報告書(2)」という書面(甲29。以下「甲29報告書」という。)には,「分析的GPC実施によって得られた成分のうち,一部はそのまま第2回分析的GPCにかけられ,残部はNMR測定のために濃縮,濾過等の後処理をされています。」との記載がある。 (a)しかしながら,上記のような実験方法は,技術常識からは考えにくく,分取的GPC後の溶液中の試料濃度が不明であるという以上,どのようにして第2回分析的GPCの移動層である硝酸ナトリウムに濃度を合わせたのかという重大な疑問が生じることになる。 また,わざわざ分取的GPCによって分取したものを2つに分けて,NMR測定用のサンプルだけを濃縮したという点も理解し難いところである。 (b)また,P博士が,平成20年12月15日付けで作成した「追加実験報告書」と題する書面(甲34。以下「甲34報告書」といい,甲34報告書の実験を「甲34実験」という。)には,「当該追加実験実施の目的は,私の2008年8月26日付けの報告書記載の実験条件の下で,・・・ということを確認することです。」 34報告書」といい,甲34報告書の実験を「甲34実験」という。)には,「当該追加実験実施の目的は,私の2008年8月26日付けの報告書記載の実験条件の下で,・・・ということを確認することです。」,「我々は,・・・を混合し,かかる混合物を私の2008年8月26日付けの報告書に記載された分取手続にかけました。」との記載があるから,甲34実験は,甲24実験と同じ分取手続によってい- 18 -るはずである。 ところで,甲34報告書には,「私の2008年8月26日付け報告書記載の条件の下で分析的GPCを実施した。すなわち,・・・分取されたポリマー成分のうち10mlを,続いて真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させた。ポリマー濃度はおよそ1g/lであった。」との記載があることから,甲34実験においては,分取された成分のポリマー濃度を1g/lとするために加熱濃縮していることは明らかである。したがって,甲34実験と同じ手順によって行われた甲24実験においても,分取され,第2回分析的GPCにかけられた成分を加熱濃縮していたものと推認される。 したがって,この点からも,甲29報告書の上記記載には,重大な疑問があるといわざるを得ない。 (c)また,P博士が平成20年12月5日付けで作成した「補足説明書」と題する書面(甲30。以下「甲30説明書」という。)には,「第一部については,濾過を実施した。・・・ポリマー成分第二部については,第二回分析的GPCを実施した。」と記載されており,甲24実験の実験方法について問題となっている加熱濃縮の点については言及されておらず,NMRに使用した第一部について「濾過」のみが言及されている。 前記(b)のとおり,甲24実験と同じ分取手順によった甲34実験では,GPCの実施前に加熱濃縮をして濃度を 点については言及されておらず,NMRに使用した第一部について「濾過」のみが言及されている。 前記(b)のとおり,甲24実験と同じ分取手順によった甲34実験では,GPCの実施前に加熱濃縮をして濃度を調整しており,このように加熱濃縮をしなければ濃度の調整はできない。したがって,甲30意見書に,「濾過」のみが言及され,問題となっている加熱濃縮の点について言及されていないことは,極めて不自然である。 - 19 -(d)また,甲29報告書に記載された内容は,本来,甲24実験について責任を負っているP博士自身によって確認されるべき内容を多く含んでおり,P博士が署名をして確認すべきものである。 (オ)本件図4の矛盾a甲29意見書には,本件図4について,「溶出容積19mlの箇所に引いてある縦線は,この時点以降はRI曲線とUV曲線が観測されなくなったということを意味しており,ここまでしか計測していないという意味ではありません。計測自体は30mlの時点まで行っています。」との記載がある。 しかしながら,上記の記載のとおりの実験がされたとすると,本件図4に,甲39報告書の図に出ている硝酸ナトリウムのピークが現れていないという重大な矛盾が生じる。このことに,GPCの結果に一般的に見られるベースラインもないことを考慮すると,本件図4を正確なものとして受け入れることはできない。 b原告は,被告製品中でポリカルボン酸とHEMAが共有結合しており,共有結合の原因はエステル化であると主張している。 しかしながら,エステル化によってHEMAがポリマーに共有結合する場合の反応は平衡反応なので,もしエステル化しているのであれば,本件図4での終点以降がゼロとはならないはずである。 したがって,本件図4は,原告が立証すべきエステル化が生じているということとは逆のことを示 反応は平衡反応なので,もしエステル化しているのであれば,本件図4での終点以降がゼロとはならないはずである。 したがって,本件図4は,原告が立証すべきエステル化が生じているということとは逆のことを示し,矛盾が生じている。 cまた,本件図1と本件図4のピークがともに16ml付近に出ているが,これは矛盾する。 すなわち,原告は,分取的GPCのクロマトの高分子部分をAとBに分け,分取的GPCでは,溶出時間5.5分から6分までの間の成分を分取したので,溶出曲線Aの部分だけが分取されたと主張してお- 20 -り,そうだとすれば,高分子のうちでも最初に溶出されたA部分の高分子だけを採ったはずで,それは,本件図1の青色の曲線でいえば,最初のピークの前半部分に該当するはずである。その前半部分だけを第2回分析的GPCにかけたのに,第1回分析的GPCの最初のピークと同じ16mlのところでピークが生じており,矛盾しているといわざるを得ない。 したがって,このような重大な矛盾を持っている本件図4を根拠として,分取が完全にされ,被告製品のポリマー成分が単離されたことが証明されたとする原告の主張は,受け入れられない。 (カ)本件図1と本件図4との比較本件図4の16.2mlにUVのピークを持つ高分子量成分は,本件図1のそれと比較して,明らかに高分子側にショルダを有しており,また,本件図1ではその高分子量成分の開始時期が13.5mlだったのに対して,本件図4では13.2mlから始まっていることが確認され,このことは,高分子量成分中での何らかの化学反応が生じたことを示すものである。 (キ)NMRについて甲24意見書には,「さらに,図5における,6.2ppmおよび5. 8ppmにおける二重結合中の水素原子のシグナルを含めて,そのH -NMRスペクトルの全てのシグナ のである。 (キ)NMRについて甲24意見書には,「さらに,図5における,6.2ppmおよび5. 8ppmにおける二重結合中の水素原子のシグナルを含めて,そのH -NMRスペクトルの全てのシグナルは,裾野の広がったピークを示しています。・・・よって,2ppmおよび5.8ppmにおける二重結合中の水素原子の裾野が広がったシグナルは,二重結合がポリマーに共有結合している証拠となります。」との記載がある。 しかしながら,C-NMRスペクトルでは,特にB,C,Eのピー クでの裾野の広がりは認められないから,それらが二重結合であったとしても,高分子内ではなく,モノマーとして存在していることになる。 - 21 -したがって,上記の記載は誤りである。 (2)争点(1)イ(構成要件Eの充足性)について(原告)ア被告製品中のグラスアイオノマーセメントは,被告製品中のポリカルボン酸の酸基(カルボキシル基)とイオン的に反応し,セメント反応を起こす。また,前記(1)で主張したように,被告製品には,二重結合を有し重合可能な酸基が存在する。したがって,被告製品は構成要件Eを充足する。 イ被告の主張アについて被告の主張アは,時機に後れたものであり,却下されるべきである。 ウ被告の主張イについて争う。 (被告)ア被告製品が構成要件Eを充足するというためには,被告製品の液成分中のポリカルボン酸とHEMAが共有結合した物質が,構成要件Bの物質とイオン反応的に反応し,セメント反応を生じたということが立証されなければならないが,本件において,この点は何ら立証されていない。 イ仮に,被告製品中のポリカルボン酸がHEMAと共有結合していたとしても,それは,意図したものではないから,構成要件Eの「選ばれた」ということはできない。 (3)争点(2)(無効理由の ていない。 イ仮に,被告製品中のポリカルボン酸がHEMAと共有結合していたとしても,それは,意図したものではないから,構成要件Eの「選ばれた」ということはできない。 (3)争点(2)(無効理由の有無)について(被告)ア本件補正により構成要件Eが新たに加えられたが,この構成要件Eは,本件当初明細書中の記載に基づいたものではなく,旧特許法64条2項で引用する平成5年法律第26号による改正前の特許法126条2項(以下「旧特許法126条2項」という。)の規定「前項の明細書又は図面の訂- 22 -正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない。」を満たしていない。その理由は以下のとおりである。 (ア)本件当初明細書には,成分(a)と成分(b)が「セメント反応を受け得るように選ばれること」という記載がない。すなわち,本件当初明細書には,「セメント反応」という語句は19欄の27行の1箇所だけしか存在しないところ,この19欄27ないし29行の記載は,成分(a)が重合した後のセメント混合物のイオン反応についての記述であって,成分(a)と成分(b)とがイオン的に反応してセメント反応,すなわち,凝固するものでなければならないことを示すものではない。 そして,本件当初明細書のすべての実施例においても,成分(a)と成分(b)とがイオン的に反応してセメント反応,すなわち,凝固するものであるという記載もない。 したがって,本件補正により加入された構成要件Eは,全くの新規事項であり,特許請求の範囲を変更するものである。 (イ)本件発明は,原告が「⑦本件発明は,一方では,歯及び骨基質に対する良好な接着力及び組織適合性というセメントの本質的に有利な特徴を有し,他方では低い溶解性と大きな機械的強度というコンポジットの有利な特徴を有するセメ 「⑦本件発明は,一方では,歯及び骨基質に対する良好な接着力及び組織適合性というセメントの本質的に有利な特徴を有し,他方では低い溶解性と大きな機械的強度というコンポジットの有利な特徴を有するセメント混合物を提供するものである。」と主張するように,セメントとコンポジットとの両方の特徴を有しているもののはずである。 しかしながら,本件当初明細書には,その実施例6,7,10のように「水」を含まない混合物が含まれているところ,このように「水」が存在しない混合物では,成分(a)が成分(c)の作用で重合した後に,口腔内の水分としての「唾液」によりイオン的な反応が生じると考えられるが,このイオン的な反応は,成分(a)が成分(c)の作用で重合した後のポリマーと成分(b)との反応であり,重合前の成分(a)と成- 23 -分(b)とがイオン的に反応してセメント反応,すなわち,凝固するものでなければならない必然性は全くないのである。 さらに,混合物中に「水」が存在している場合について考慮しても,原告が「重合反応はラジカル反応とも言うように,極めて早く進行する硬化反応であるのに対して,セメント反応はそれよりも遅れて硬化反応が進行するので,セメント反応が生じているのならば,時間の経過と共に強度が増していくはずである。」と主張しているように,重合反応は,極めて早く進行する硬化反応であるから,成分(a)は成分(c)の作用で極めて早く重合してポリマーとなり,このポリマーと成分(b)とが遅れて反応するはずであるので,重合前の成分(a)と成分(b)とがイオン的に反応してセメント反応,すなわち,凝固するものでなければならない必然性は全くないのである。 したがって,本件補正により加えられた構成要件Eは,本件発明の構成に欠くことができない事項ではなく,特許請求の範囲を変 メント反応,すなわち,凝固するものでなければならない必然性は全くないのである。 したがって,本件補正により加えられた構成要件Eは,本件発明の構成に欠くことができない事項ではなく,特許請求の範囲を変更するものである。 (ウ)本件無効審判において原告が提出した答弁書(乙28)には,「なお,甲第2号証に記載されている『メタクリル酸()』は,methacrylicacid一般的概念としては本件特許発明における『酸基・・・を含む,重合可能な不飽和モノマー』に属する物質であるが,本件特許発明の成分(a)は,重合可能であるばかりでなく,構成要件Eに定められているように,成分(b)と『イオン的に反応し,セメント反応を受け得る』物質でなければならないところ,メタクリル酸は,成分(b)とのイオン反応を介してセメント反応を行うことができない物質である。したがって,メタクリル酸は,本件特許発明の成分(a)に該当するものではない。」との記載がある。これは取りも直さず,構成要件Eが成分(a)に該当するものの中から除外されるものが存在することを規定す- 24 -る要件であることを示している。 しかしながら,本件当初明細書には,成分(a)に該当するものの中から除外されるものが存在するというような記載は全く存在しないのである。 したがって,本件補正により加えられた構成要件Eは,全くの新規事項であり,特許請求の範囲を変更するものである。 イ前記アのとおり,本件補正は,本件当初明細書内に根拠が示されていない構成要件Eを新たに加えた補正であるから,実質上特許請求の範囲を変更するものといえる。したがって,本件特許は,平成5年法律第26号による改正前の特許法42条(以下「旧特許法42条」という。)により,出願公告時の発明によって特許がされたものとみなされるのである。 更するものといえる。したがって,本件特許は,平成5年法律第26号による改正前の特許法42条(以下「旧特許法42条」という。)により,出願公告時の発明によって特許がされたものとみなされるのである。 本件出願の出願公告時の発明(以下「本件補正前発明」という。)と,特開昭60-197609号公報(乙1。以下「乙1公報」といい,乙1公報記載の発明を「乙1発明」という。)とを比較し,乙1公報のうち,本件補正前発明に対応する部分を示すと,別紙対比表のとおりである。以下,本件補正前発明と乙1発明とを対比する(本件補正前発明の構成要件は,別紙比較表のとおり分説した。)。 まず,本件補正前発明の構成要件aには,成分(a)として,酸基を含む重合可能な不飽和モノマー,オリゴマー,プレポリマーが記載されているのに対して,乙1公報には,このうち酸基を含む重合可能な不飽和(ビニル基)モノマーが示されており,乙1公報には本件補正前発明の構成要件aが開示されている。 次に,本件補正前発明の構成要件bには,成分(b)として,微粉状の金属化合物,ガラス,セラミック,ゼオライト又はこれらの充填剤が示されているのに対して,乙1公報には各種の充填剤が加えられていてもよい旨が示されていて,充填剤の具体例として,粉末状のアルミナ(金属化合- 25 -物)や各種ガラスやセラミックス類や合成ゼオライト等が示されており,乙1公報に本件補正前発明の構成要件bが開示されていることも明らかである。 次に,本件補正前発明の構成要件cでは,成分(c)として,硬化剤が記載されており,この硬化剤には,出願公告時の従属項30により,光反応性重合触媒が含まれ,乙1公報の「光重合しうる開始剤」がこれに該当する。 さらに,本件補正前発明の構成要件dには成分(a),成分(b)及び成分(c)を含有する旨が 願公告時の従属項30により,光反応性重合触媒が含まれ,乙1公報の「光重合しうる開始剤」がこれに該当する。 さらに,本件補正前発明の構成要件dには成分(a),成分(b)及び成分(c)を含有する旨が記載されているのに対して,乙1公報にも成分(a)ないし(c)を含有させることが示されている。 以上より,乙1公報には,本件補正前発明のすべての構成要件が示されており,本件補正前発明が新規性を有していないことは明白である。 (原告)本件発明は,「発明の名称」が「重合可能なセメント混合物」であり,また,本件明細書の発明の詳細な説明の冒頭に記載されているように,「歯科治療と医療に用いるための重合可能なセメント混合物」に関する発明である。 本件明細書の従来技術及び問題点解決手段についての説明においても,様々な従来技術の歯科用セメント混合物とその難点が指摘され,その難点を,「セメント」としての特徴と「複合材料」(すなわち「コンポジット」)としての特徴とを兼ね備えることによって克服し得る「歯科用セメント混合物」を提供することが本件発明の目的である旨が詳述されている。 このように,そもそも本件発明は,歯科治療のための使用の際に,セメント状に硬化する状態となることが当然に予定されている「セメント混合物」に関する発明なのであるから,その混合物が「セメント反応」,すなわち「水の存在下においてセメント状に硬化する反応」として一般に理解されている- 26 -反応を行うべきものであることを特許請求の範囲に記載するのは,極めて自然なことである。「歯科用セメント混合物」として当然に予定されている反応を特許請求の範囲に記載することが特許請求の範囲を「変更」するものであるなどという被告の主張は,当業者の技術常識からかけ離れた,理解し難い主張であるといわざるを得ない。 また,本 予定されている反応を特許請求の範囲に記載することが特許請求の範囲を「変更」するものであるなどという被告の主張は,当業者の技術常識からかけ離れた,理解し難い主張であるといわざるを得ない。 また,本件発明の歯科用セメント混合物における(a)成分と(b)成分が,相互のイオン反応を介してセメント状に硬化する作用を行うことが予定されているものであることは,本件当初明細書中の記載によっても明らかであるから,(a)成分と(b)成分が,「イオン的に反応し,セメント反応を受けうるように選ばれる」べきことも当然のことである。 このように,本件補正によって特許請求の範囲に付加して記載された構成要件Eの記載事項は,本件発明に係る「セメント混合物」の本来的な性状や本件当初明細書の記載からして,当然の事理に基づく事項であり,このような事項の付加によって,発明の実体が何ら変更されるものではないから,本件補正が,「実質上特許請求の範囲を変更するもの」に該当しないことは,明らかである。 なお,被告は,構成要件E中の(a)成分は重合前の(a)成分と解すべきところ,本件当初明細書には,重合前の(a)成分が(b)成分とイオン的に反応してセメント反応を受け得るように選ばれるべきことは記載されていないなどと主張しているが,全く理由がない。(a)成分が「酸基及び/またはその反応性酸誘導体基を含む,重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマー」であること(本件当初明細書の7欄41ないし43行),このような「重合可能な樹脂混合物と,通常セメント中に凝固に重要な成分として含まれるような反応性充填剤との組合せによ- 27 -って,硬化可能な混合物が得られ,この混合物はラジカル反応によってもイオン反応によっても硬化しうること」(本件当初明細書の8欄6ないし10 として含まれるような反応性充填剤との組合せによ- 27 -って,硬化可能な混合物が得られ,この混合物はラジカル反応によってもイオン反応によっても硬化しうること」(本件当初明細書の8欄6ないし10行)は本件当初明細書に明記されており,混合物の硬化のために上記(a)成分中から特にモノマーのみを選択すべきであるなどとは,明細書のどこにも記載されていない。被告の上記主張は,全く不可解な独断に基づくものである。 (3)争点(3)(不当利得の額)について(原告)被告による被告製品の平成4年ころから現在までの間の売上げは,約220億円であり,本件特許権の実施料率は6パーセントを下回ることはないので,被告は,原告の許諾を得ずに本件発明を実施することにより,少なくとも,13億円を利益を得て,それにより,原告は同額の損失を被った。 原告は,上記不当利得金のうち,平成8年5月15日から平成12年5月14日までの間の実施についての不当利得金2億2200万円の支払を求める。 (被告)争う。 第3当裁判所の判断 争点(1)ア(被告製品の液成分には,酸基を含む重合可能なプレポリマーが存在するか-構成要件A,Dの充足性)について(1)甲24実験の内容ア証拠(甲24)及び弁論の全趣旨によれば,甲24実験の内容について,以下の各事実が認められる。 (ア)甲24実験の流れ甲24実験においては,まず,被告製品の液成分全体について,分析- 28 -的GPC(第1回分析的GPC)を行い,次に,被告製品の液成分からポリマー成分を分取するための分取的GPCを行い,さらに,これを二分し,その一方の上記分取的GPCで分離されたポリマー成分について,分析的GPC(第2回分析的GPC)を行い,また,他方の上記分取的GPCで分離されたポリマー成分について,NMRスペクト ,これを二分し,その一方の上記分取的GPCで分離されたポリマー成分について,分析的GPC(第2回分析的GPC)を行い,また,他方の上記分取的GPCで分離されたポリマー成分について,NMRスペクトルの観測を行った。 (イ)第1回分析的GPCの内容及びその結果aGPC装置には,①30Å,ID8.0mm×50mmのガードカラム,②30Å,ID8.0mm×300mmのカラム,③1000Å,ID8.0mm×300mmのカラムを組み合わせて使用した。 溶離液には,0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液を使用し,被告の販売している「FujiⅡLCリキッド」(以下「本件サンプル」という。)60mgを10mlに希釈し,この溶液の20μlを上記GPC装置に注入し,UV検出器(波長265nm)及びRI検出器によって,UV曲線及びRI曲線を記録した。 b第1回分析的GPCのクロマトグラムは,別紙図1(本件図1)のとおりである(青色がUV曲線,赤色がRI曲線)。 (ウ)分取的GPCの内容及びその結果aGPC装置には,30Å,ID20.0mm×300mmのカラムを使用した。 溶離液には,0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液を使用し,本件サンプル1gを10mlに希釈し,この溶液100μlを上記GPC装置に注入し,UV検出器(波長265nm)によって,UV曲線を記録した。 b分取的GPCのクロマトグラムは,別紙図2(本件図2)のとおりである。 - 29 -c前記aのGPCから,5.5分から6分までの溶離時間で溶出した成分を採取し,これをロータリ式エバポレーター(10mbar,50℃)を用いて液量を減少させて,限外濾過膜(直径:76mm,NMWL(公称分画分子量):5000)を用いてポリマー成分を濾過し,さらに,真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)によ ar,50℃)を用いて液量を減少させて,限外濾過膜(直径:76mm,NMWL(公称分画分子量):5000)を用いてポリマー成分を濾過し,さらに,真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)によって乾燥させた。 (エ)第2回分析的GPCの内容及びその結果aGPC装置には,①30Å,ID8.0mm×50mmのガードカラム,②30Å,ID8.0mm×300mmのカラム,③1000Å,ID8.0mm×300mmのカラムを組み合わせて使用した。 前記(ウ)で分取し,濃縮,加熱等の処理をした成分を,0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液の溶離液で希釈し(ポリマー濃度は約1g/lであった。),この溶液の20μlを上記GPC装置に注入し,UV検出器(波長265nm)及びRI検出器によって,UV曲線及びRI曲線を記録した。 b第2回分析的GPCのクロマトグラムは,別紙図4(本件図4)のとおりである。 (オ)H-NMRスペクトル及びC-NMRスペクトルの測定 前記(ウ)で分取し,液量の減少,濾過,乾燥させた成分について,H-NMRスペクトル及びC-NMRスペクトルの測定を行った。 上記のH-NMRスペクトルは別紙図5(本件図5)のとおりであ り,C-NMRスペクトルは別紙図6(本件図6)のとおりである。 イ前記アの認定に対して,原告は,分取的GPCによって分離したポリマー成分を二分した一方については,前記ア(ウ)cの濃縮,濾過,乾燥をして,これをNMR測定したが,他方については,濃縮,濾過等をせず,そのまま第2回分析的GPCにかけた旨主張し,甲29報告書,甲30説- 30 -明書には,同主張に沿う記載がある。 そこで,この点について,以下検討する。 (ア)甲24意見書の記載からの検討aP博士の作成した甲24報告書には けた旨主張し,甲29報告書,甲30説- 30 -明書には,同主張に沿う記載がある。 そこで,この点について,以下検討する。 (ア)甲24意見書の記載からの検討aP博士の作成した甲24報告書には,第2回分析的GPCの手順に関する記載として,以下のとおりの記載がある(甲24)。 (a)「2.分取的GPCによる「FujiⅡLC」ポリマー成分の分離分析的GPCの試験結果に基づき,分取的GPCの適切なカラム材料を選択しました。大型カラムおよび高濃度サンプルを用いた分取的GPCの実施目的は,NMR試験用に十分な量のポリマー成分を分離して採取することです。次に,有効なNMRスペクトルが記録できるように,ポリマー溶液を濾過して溶離液(NaNO)の 塩分を除去しました。」(b)「2.1GPCシステム,サンプル調製および手順(GPC分取)成分の分離は,TPSGPC装置においてPSSSupremaカラム,10μm,30Å,ID20.0mm×300mmを用いて実施しました。 「FujiⅡLCリキッド」サンプルをバイアル(暗色フード及びアルミ被覆したバイアルにより遮光)から取り出し,GPC用バイアルへ移しました。再び0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液を移動相として使用しました。サンプル1gを移動相10mlで希釈しました。この溶液100μlをGPC装置に注入しました。カラムからの成分の溶離が,UV検出器(TPSUV3000UV,波長265nm)により検出されました。 5.5-6分の溶離時間で溶出したポリマー成分を採取し,かか- 31 -る溶液をロータリ式エバポレーター(10mbar,50℃)を用いて液量を減少させました。さらに,限外濾過膜(Millipore,材料:ポリエーテルスルホン,直径:76mm,NMWL(公称分画分子量):5000 タリ式エバポレーター(10mbar,50℃)を用いて液量を減少させました。さらに,限外濾過膜(Millipore,材料:ポリエーテルスルホン,直径:76mm,NMWL(公称分画分子量):5000)を用いて,ポリマー成分を濾過しました。濾過後に,ポリマー溶液を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させました。」(c)「2.2結果および判定分取的GPCおよびUV検出の結果を,下図2のクロマトグラムに示します。 青色のUV曲線は,ポリマー成分が溶離時間5.5~7.5分でカラムから溶出したことを示しています。また,クロマトグラムは,ポリマー成分の後にカラムから低分子量成分が溶出したことも示しています。これらの低分子量成分の一つ(溶離時間9分)は,最大量の紫外線吸収を示しています。図1のGPCクロマトグラム(分析的カラム)と対比すると,ポリマーのピークが異なるように見えますが,分取的GPCは,ポリマー成分中でも,高分子量のものと低分子量のものを分離するからであると説明できます。ポリマー成分全体から,溶離時間5.5分~6分で溶出したものを採取しました。」(d)「3.「FujiⅡLC」の分離されたポリマー成分の較正曲線および分析的GPC「FujiⅡLC」ポリマー成分の分子量を算定するために,較正曲線を記録し,分離されたポリマー成分について2回目の分析的GPCを実施しました。この2回目の分析的GPCによって,分取的GPCによるポリマー成分の分離が成功したことが確認できました。」- 32 -(e)「3.1較正,サンプル調製および手順(2回目のGPC分析)分析的GPC装置をPSSPoly5標準品(ポリアクリル酸ナトリウム標準品,1,250-1.1mio.g/mol)で較正しました。その成分については,TSP 製および手順(2回目のGPC分析)分析的GPC装置をPSSPoly5標準品(ポリアクリル酸ナトリウム標準品,1,250-1.1mio.g/mol)で較正しました。その成分については,TSPGPC装置を用いて,以下のカラム組合せで試験を行いました。PSSSuprema,10μm30Å,ID8.0mm×50mm(ガードカラム);PSSSuprema,10μm30Å,ID8.0mm×300mm;PSSSuprema,10μm1000Å,ID8.0mm×300mm。0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液を溶離液として用いました。ポリマー濃度はおよそ1g/lでした。この溶液の20μlをGPC装置に注入しました。サンプルを遮光するために,バイアルはすべて褐色ガラス製あるいはアルミ箔で被覆したものを使用しました。一連のカラムからの成分の溶離が,UV検出器(TPSUV3000,波長265nm)およびRI検出器(ShodexRI71)により検出されました。」(f)「3.2結果および判定下図3は,「FujiⅡLC」ポリマーの分子量算定に用いた較正曲線を示しています。 「FujiⅡLC」の分離されたポリマー成分の分析的GPC結果を,図4のクロマトグラムに示します。 赤色のRI曲線(図4)によれば,ポリマーは13.2-19mlの溶離体積でカラムから溶出しています。同様に,図4の青色のUV曲線は,13.2-19mlの溶離体積において1つのピークを示しています。かかるRI曲線およびUV曲線並びに当該ピークから,「FujiⅡLC」の分離されたポリマー成分が高いUV活- 33 -性を有することが証明されたと言えます。何よりも,両曲線にはその他のピークがありません。したがって,図4のクロマトグラムにより,当該ポリマー成分には不純物が含まれないこ 分が高いUV活- 33 -性を有することが証明されたと言えます。何よりも,両曲線にはその他のピークがありません。したがって,図4のクロマトグラムにより,当該ポリマー成分には不純物が含まれないことが証明されました。すなわち,分取的GPCによるポリマー成分の分離は成功しました。 図3の較正曲線に基づき,クロマトグラフィー・ソフトウェア(PSS-WinGPCUnityバージョン7.2)により,「FujiⅡLC」の分離されたポリマー成分の分子量を自動的に算出しました。その結果,ポリマー成分の平均分子量は,数平均分子量(Mn)=14,600g/mol,重量平均分子量(Mw)=19,500g/molでした。」(g)「4.「FujiⅡLC」の分離ポリマーのH-NMRおよ びC-NMRスペクトル かかるポリマーが重合可能な二重結合と酸基を含むことを証明するために,分離および濾過した「FujiⅡLC」のポリマー成分(2.1節参照)のH-NMRおよびC-NMRスペクトルを 記録しました。」b以上を前提に検討する。 原告が主張するように,分取的GPCによって分離したポリマー成分を,わざわざ二分し,その一方についてのみ,濃縮,濾過,乾燥をさせた上でNMR測定をし,他方については,加熱,濃縮等をせずに,そのまま分析的GPCにかけたというのであれば,その旨,甲24意見書に記載されているのが自然であるところ,甲24意見書には,そのような記載は一切なく,また,そのことを窺わせる記載もない(甲24)。 - 34 -また,前記aのとおり,甲24意見書には,第2回分析的GPCの対象となったポリマー成分の濃度は約1g/lであるとの記載があるところ,分取的GPCによって分取されたポリマー成分を,濃縮,乾燥させずに,そのまま,第2回分析的 24意見書には,第2回分析的GPCの対象となったポリマー成分の濃度は約1g/lであるとの記載があるところ,分取的GPCによって分取されたポリマー成分を,濃縮,乾燥させずに,そのまま,第2回分析的GPCにかけたのであれば,どのようにして,上記の濃度を測定したのか不明であり,上記の記載の根拠を説明できない。しかも,前記aのとおり,上記記載がある項目の表題は,「較正,サンプル調製および手順(2回目のGPC分析)」となっており,第2回分析的GPCの対象となったサンプルは,濃度の調整がなされたことが窺える。 したがって,甲24意見書の記載からは,甲24実験においては,分取的GPCによって分取された成分は,エバポレーターによる液量減少,乾燥機による乾燥等の処理を経た上で,第2回分析的GPCにかけられたものと考えるのが合理的である。 (イ)甲34報告書の記載からの検討aP博士の作成した甲34報告書には,以下のとおりの記載がある(甲34)。 (a)緒言ⅰ「当該追加試験実施の目的は,私の2008年8月26日付けの報告書記載の実験条件の下で,ポリアクリル酸を分取しても,重合可能な二重結合を有するポリマーが組成されるような化学反応は生じないということを確認することです。この目的のため,我々は,市販されているポリアクリル酸(Acros社,LotA0263429)とHEMA(Acros社,LotA0259088)を混合し,かかる混合物を私の2008年8月26日付けの報告書に記載された分取手続にかけました。」ⅱ「実施した実験の概要は下記の通りです。 - 35 -1.HEMAとポリアクリル酸の混合。 2.当該混合物からポリアクリル酸成分を分取するため,分取的GPCの実施3.較正曲線の記録と,それに続く,分取されたポリアクリル酸成分のうちの一部に対 -1.HEMAとポリアクリル酸の混合。 2.当該混合物からポリアクリル酸成分を分取するため,分取的GPCの実施3.較正曲線の記録と,それに続く,分取されたポリアクリル酸成分のうちの一部に対する分析的GPCの実施4.溶離液(NaNO)の塩分を除去するため,分取された ポリアクリル酸成分のうちの残部の濾過5.分取されて濾過されたポリアクリル酸成分のH-NMR スペクトルの計測」ⅲ「(3)第3に,分取されたポリアクリル酸成分のうちの一部に対して分析的GPCを実施した。このGPCは,分取的GPCによる,ポリアクリル酸・HEMA混合物からのポリアクリル酸成分の分取が成功したことを確認するためのものである。GPC装置が適切なものであることを確保するため,実験の実施前に装置を較正した。」ⅳ「(4)第4に,NMR試験を適正に行うため,溶離液(NaNO)の塩分を除去すべく,分取されたポリアクリル酸成分の うちの残部の濾過を行った。」(b)分析試験ⅰ「3.分取されたポリアクリル酸に対する分析的GPC分取的GPCによる分取が成功したことを確認するため,分取されたポリアクリル酸成分について2回目の分析的GPCを実施した。」ⅱ「3.1較正,サンプル調製および手順(分析的GPC)分析的GPCが適正であることを確保するため,PSSPoly5標準品(ポリアクリル酸ナトリウム標準品,1,250-- 36 -1.1mio.g/mol)で較正した。 分取したポリアクリル酸成分について,私の2008年8月26日付け報告書記載の条件の下で分析的GPCを実施した。すなわち,TSPGPC装置(TSPP1000HPLCPump,TSPAS3000Autosampler)を用いて,以下のカラム組合せで試験を行った。PSSSu 的GPCを実施した。すなわち,TSPGPC装置(TSPP1000HPLCPump,TSPAS3000Autosampler)を用いて,以下のカラム組合せで試験を行った。PSSSuprema,10μm30Å,ID8.0mm×50mm(ガードカラム);PSSSuprema,10μm30Å,ID8. 0mm×300mm;PSSSuprema,10μm1000Å,ID8.0mm×300mm。0.1モルの硝酸ナトリウム水溶液を溶離液として用いた。流速は1ml/minであった。 分取されたポリマー成分のうち10mlを,続いて真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させた。 ポリマー濃度はおよそ1g/lであった。この溶液の20μlをGPC装置に注入した。サンプルを遮光するために,バイアルはすべて褐色ガラス製のもの,あるいはアルミ箔で被覆したものを使用した。一連のカラムからの成分の溶離が,UV検出器(Agilent1100,波長265nm)およびRI検出器(AgilentRIDifferentialrefraktometer)により検出された。」ⅲ「4.濾過NMRスペクトルを計測するため,分取されたポリマー成分を濾過して溶離液(NaNO)の塩分を除去した。念のため,濾 過も私の2008年8月26日付け報告書記載の条件の下で実施されている。すなわち,かかる濾過は,限外濾過膜(Millipore,材料:ポリエーテルスルホン,直径:76mm,NM- 37 -WL(公称分画分子量):5000)を用いて行った。濾過後に,減量のため,ポリマー溶液を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させた。」b前記aで認定した甲34報告書の記載を前提に,以下検討する。 まず,前記a(a)ⅰで認定し 過後に,減量のため,ポリマー溶液を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)において乾燥させた。」b前記aで認定した甲34報告書の記載を前提に,以下検討する。 まず,前記a(a)ⅰで認定した甲34報告書の記載から,甲34実験は,P博士の行った2008年8月26日付けの実験と同じ実験方法により実験を行ったことが認められるところ,P博士の行った2008年8月26日付けの実験とは,甲24実験を意味するから,甲34実験は,甲24実験と同じ方法により行われたことが認められる。 次に,甲34報告書の緒言においては,甲34実験の方法について,前記a(a)のとおり,分取的GPCによって分取されたポリアクリル酸成分のうち,一部はそのまま分析的GPCにかけ,残部は濾過した上でH-NMRスペクトルの計測がされたと理解できる記載があ る。しかしながら,甲34報告書には,一方で,前記a(b)ⅱのとおり,分取的GPCによって分取されたポリアクリル酸成分を真空キャビネット乾燥機によって乾燥したと明記されており,同記載部分からは,上記の処理をした後の成分を第2回分析的GPCにかけたものとしか解することができないから,甲34実験においては,第2回分析的GPCのサンプルは,分取的GPCによって分取されたポリアクリル酸成分を真空キャビネット乾燥機によって乾燥させたものであることが認められる。 したがって,甲24実験においても,第2回分析的GPCのサンプルは,分取的GPCによって分取したポリマー成分を,少なくとも,真空キャビネット乾燥機によって乾燥させたものであると推測される。 (ウ)甲30説明書についてa甲30説明書には,以下のとおりの記載がある(甲30)。 - 38 -(a)「本書は,私の2008年8月26日付け特許侵害訴訟に関する第五意見書に対応するも される。 (ウ)甲30説明書についてa甲30説明書には,以下のとおりの記載がある(甲30)。 - 38 -(a)「本書は,私の2008年8月26日付け特許侵害訴訟に関する第五意見書に対応するものです。同意見書においては,私の見解を詳細に説明することに注力したため,「フジⅡLC」のポリマー成分を分取して分析するために行った実験の手順については,明記はしておりませんでした。私は,実験は以下の手順で行われたものであることを証明致します。」(b)「分取されたポリマー成分を二部に分けた。」(c)「ポリマー成分の第一部第一部については,溶離液(NaNO)の塩分をポリマー溶液 から除去すべく,濾過を実施した。続いて,分取し,かつ濾過したポリマー成分第一部について,H-NMRとC-NMRスペク トルを記録した。」(d)「ポリマー成分の第二部ポリマー成分第一部をNMR実施のために濾過する一方で,ポリマー成分第二部については,第二回分析的GPCを実施した。」(e)「なお,第二回分析的GPCの実施に先立ち,ポリマーの分子量を測定するために,較正曲線を記録した。」(f)「ポリマー成分の第一部と第二部について実施された上記の実験は,並行して実施された物であって,一方を先に実施したという訳ではない。すなわち,ポリマー成分第二部は,第二回分析的GPCの実施前に濾過されたということはない。」b前記aで認定した甲30説明書の記載を前提に,以下検討する。 (a)甲30説明書は,本件訴訟の弁論準備手続期日において,第2回分析的GPCでは,溶出容積19ml以降も計測を続けたのかの点,分取的GPCによって分取されたポリマー成分に濃縮,濾過等の処理をした後に第2回分析的GPCを実施したのかの点など,甲- 39 -24実験の方法について疑義が生じた l以降も計測を続けたのかの点,分取的GPCによって分取されたポリマー成分に濃縮,濾過等の処理をした後に第2回分析的GPCを実施したのかの点など,甲- 39 -24実験の方法について疑義が生じたことから,甲24実験の責任者であるP博士が,上記疑問に答えるべく作成したものである(甲29,30,弁論の全趣旨)。 そして,甲30説明書には,前記aのとおり,甲24実験においては,分取的GPCによって分取したポリマー成分を二分し,その一方については,濾過をした後にNMRを実施し,これと並行して,他方について,第2回分析的GPCを実施したが,その実施前に,対象となるサンプルを濾過したことはない旨記載されている。 (b)ところで,前記(ア)aのとおり,甲24意見書には,分取的GPCによって分取したポリマー成分を,限外濾過のほか,エバポレーターによる液量の減少及び真空キャビネット乾燥機による乾燥をさせた旨の記載があり,本件訴訟の弁論準備手続期日においても,エバポレーターや乾燥機による濃縮の際の加熱の処理が第2回分析的GPCの前に行われたか否かが問題となったところ,上記のとおり,この問題点を説明すべく作成された甲30説明書には,前記aのとおり,第2回分析的GPCのサンプルとした成分について,濾過をしなかった旨の記載はあるが,濃縮しなかった旨の記載はない。 甲30説明書作成の上記経緯からすれば,甲24実験において,第2回分析的GPCの実施前に,サンプルに濃縮,加熱の処理を施していないのであれば,甲30説明書に,その旨を記載するのが通常のことと解され,この点の記載がないということは,単に記載するのを失念したからではなく,甲24実験においては,第2回分析的GPCの実施前に,サンプルに濃縮,加熱の処理を施したからであると推測することも可能である。 また, 記載がないということは,単に記載するのを失念したからではなく,甲24実験においては,第2回分析的GPCの実施前に,サンプルに濃縮,加熱の処理を施したからであると推測することも可能である。 また,甲30説明書には,前記aのとおり,分取的GPCによって分取したポリマー成分のうち,NMRスペクトルの測定をする部- 40 -分(第1部)については,濾過を実施した旨の記載があるが,エバポレーターや乾燥機による濃縮をした旨の記載がないところ,甲30説明書の作成者であるP博士が,甲24実験と同じ実験方法で行った甲34実験について説明した甲34報告書においては,前記(イ)a(b)ⅲのとおり,甲34実験において,NMRスペクトルの計測前に,サンプルを濾過し,真空キャビネット乾燥機によって乾燥した旨明記していることからすると,甲30説明書において,第1部について濃縮をしたことの記載がないことは不自然というほかない。 (c)なお,甲30説明書には,上記のとおり,分取的GPCによって分取した成分を第2回分析的GPCにかける前に,濃縮,加熱をしたのか否かの点については明確に記載されておらず,また,同説明書には,上記のとおり不自然な点が認められ,これらについて,被告からも指摘されているのであるから,原告としても,P博士の証人尋問を申請するなどして,上記の点を明らかにする立証活動を行うことも考えられるところ,原告は,このような立証活動を行っていない。 (d)これらの諸事情を総合考慮すると,甲30説明書の記載に基づいて,直ちに,第2回分析的GPCのサンプルについて,濃縮,加熱の前処理を施さなかったものと認めることはできないというべきである。 (エ)甲29報告書について甲29報告書には,「第2回分析的GPCを行った時点は,分取的GPC実施直後であり,その時 濃縮,加熱の前処理を施さなかったものと認めることはできないというべきである。 (エ)甲29報告書について甲29報告書には,「第2回分析的GPCを行った時点は,分取的GPC実施直後であり,その時点では,濃縮・濾過等の後処理は行われておりません。すなわち,分取的GPC実施によって得られた成分のうち,一部はそのまま第2回分析的GPCにかけられ,残部はNMR計測のた- 41 -めに濃縮・濾過等の後処理をされています。言い換えれば,第2回分析的GPCの実施と,NMR計測のための濃縮・濾過等の後処理とは,同時並行でおこなわれています。」との記載がある(甲29)。 しかしながら,甲29報告書は,甲24実験の責任者であるP博士が作成したものではなく,原告の分析部長であるS博士が原告代理人に報告した内容を,原告代理人が記載したものである(甲29)。そして,甲24意見書には,甲24実験に関与した者として,数名の者の名前が挙がっているが,その中にS博士の名前はなく(甲24),また,甲29報告書にも,S博士が甲24実験に立ち会った旨の記載はない(甲29)ことから,S博士は,甲24実験には立ち会っていないものと認められる。したがって,S博士は,甲24実験の内容の詳細は,甲24実験の責任者であるP博士からの報告によって把握したものと推測されるから,甲29報告書も,このようにしてS博士が把握した甲24実験の内容を原告代理人に報告し,この情報に基づいて原告代理人が作成したものであり,そこに記載された内容は,P博士の報告に由来するということになる。したがって,甲29報告書は,甲30説明書の作成者であるP博士の報告に基づくものであるから,客観的な立場から甲30説明書の証明力を補強する証拠ということはできない。しかも,甲29報告書は,上記のとおり,P博士からS博 告書は,甲30説明書の作成者であるP博士の報告に基づくものであるから,客観的な立場から甲30説明書の証明力を補強する証拠ということはできない。しかも,甲29報告書は,上記のとおり,P博士からS博士,同博士から原告代理人という二重の伝聞過程を経て作成されたものであり,上記各伝聞の過程において,S博士や原告代理人の誤解や推測が介入するおそれがあり,その結果,その内容がP博士がS博士に対して報告したものとは異なっている可能性も否定できず,この点からも,甲29報告書の証拠価値には疑問がある。 また,前記(ウ)で判示したとおり,甲30説明書において,第2回分析的GPCのサンプルを,その実施前に濾過しなかった旨の記載はある- 42 -が,濃縮しなかった旨の記載はなく,これは,P博士が,単に記載を失念したからではなく,第2回分析的GPCのサンプルを実際は濃縮していたからであると解することも可能である。 したがって,甲29報告書に,上記のとおり,第2回分析的GPCのサンプルをその実施前に濃縮しなかった旨の記載があるからといって,同記載のとおりの事実を認めることはできないというべきである。 (オ)小括以上のとおり,甲24実験においては,上記ア認定のとおり,分取的GPCにより分取された成分について,いったん濃縮処理をした後に,第2回分析的GPCを実施したものと認められる。 ウ甲24実験の第2回分析的GPCにおける溶出容積19ml以降の計測について(ア)別紙図4のとおり,本件図4においては,UV曲線及びRI曲線は,溶出容積13.2ml付近から開始し,19ml付近で終了し,19ml付近以降,UV曲線及びRI曲線は記録されていない。また,本件図4の13.2ml付近及び19ml付近には縦線が描かれている。 本件図4について,原告は,第2回分析的GPCでは l付近で終了し,19ml付近以降,UV曲線及びRI曲線は記録されていない。また,本件図4の13.2ml付近及び19ml付近には縦線が描かれている。 本件図4について,原告は,第2回分析的GPCでは,溶出容積19ml以降も観測したが,UV及びRIは一切検出されなかった旨主張し,甲29報告書には,同主張に沿う記載があるが,以下の点を考慮すると,原告の上記主張は,直ちに信用することはできないというべきである。 すなわち,前記アで判示したとおり,第2回分析的GPCのサンプルは,分取的GPCによって分取された成分と分取的GPCにおいて使用された溶離液(硝酸ナトリウム水溶液)であるが,仮に,原告の主張するように,上記のサンプルを濃縮,濾過せずに,そのまま第2回分析的GPCにかけたのであれば,当該サンプル中の溶離液である硝酸ナトリウム水溶液の濃度が,何らの調整もせずに,第2回分析的GPCにおい- 43 -て溶離液として使用される硝酸ナトリウム水溶液の濃度と同じになるとは,通常考えられない。そして,甲24意見書中には,濃縮処理のほかに,分取的GPCによって分取した上記サンプルのうちの溶離液の濃度を調整したことを窺わせる記載はない。したがって,原告の上記主張(第2回分析的GPCのサンプルについて濃縮処理をしていないこと)を前提とすると,通常であれば,硝酸ナトリウム水溶液の濃度が異なるのであるから,第2回分析的GPCにおいては,上記サンプル中の溶離液の硝酸ナトリウムについてのUV及びRI曲線が記録されるはずである(なお,甲第29号証及び第39号証によれば,原告の分析部長であるS博士は,硝酸ナトリウムのUV曲線のピークは,ポリマー成分のUV曲線の後に記録されるとの認識を有していることが認められる。)が,本件図4では,硝酸ナトリウムのUV及びRI曲線が 告の分析部長であるS博士は,硝酸ナトリウムのUV曲線のピークは,ポリマー成分のUV曲線の後に記録されるとの認識を有していることが認められる。)が,本件図4では,硝酸ナトリウムのUV及びRI曲線が記録されるものと推測される溶出容積19ml以降において,上記各曲線が全く記録されておらず,不自然というほかない。 また,第2回分析的GPCにおいては,そのサンプルを事前に濃縮しなかったということを前提とすれば,甲24実験を行ったP博士としても,溶出容積19ml以降も測定をしたにもかかわらず,それ以降UV曲線及びRI曲線のいずれも全く記録されなかったことについて,何らかの疑問を抱くのではないかと推測されるところ,P博士作成の甲24意見書には,この点について触れるところがない。 以上の諸点を総合考慮すると,原告の主張する,第2回分析的GPCのサンプルについて濃縮処理をしていないとの前提が誤りであるといわざるを得ない。 (イ)なお,甲29報告書には,第2回分析的GPCにおいて,溶出容積19ml以降も計測を続けた旨記載されているが,前記イ(エ)で判示したとおり,甲29報告書は,S博士が,甲24実験の内容について,P- 44 -博士から報告を受け,その内容を原告代理人に説明し,原告代理人が,その説明を基に作成したものにすぎない。しかも,P博士が甲24実験の内容の説明ために作成した甲30説明書には,第2回分析的GPCにおいて,溶出容積19ml以降も計測を続けた旨の記載は一切ないところ,甲30説明書は,前記イ(ウ)で判示したとおり,本件訴訟の弁論準備手続において,甲24実験の第2回分析的GPCでは溶出容積19ml以降も計測をしていたかの点等が問題となり,これらに答えるために作成されたものである。それにもかかわらず,甲30説明書には,溶出容積19ml以 て,甲24実験の第2回分析的GPCでは溶出容積19ml以降も計測をしていたかの点等が問題となり,これらに答えるために作成されたものである。それにもかかわらず,甲30説明書には,溶出容積19ml以降も計測を続けた旨の記載がなく,P博士が単に記載し忘れたとは考え難いところである。 そうすると,甲29報告書の上記記載から,直ちに,第2回分析的GPCにおいて,溶出容積19ml以降も計測を続けたものと認めることはできず,むしろ,第2回分析的GPCにおいては,溶出容積19mlまでしか観測せず,そのために,本件図4の溶出容積19ml付近以降はUV曲線及びRI曲線が一切記録されなかった可能性も否定できないというべきである。 (2)被告製品の液成分には,酸基を含む重合可能なプレポリマーが存在するか。 ア前記争いのない事実等で判示したとおり,被告製品1及び被告製品3には,次の成分が含まれている。なお,被告製品2については,被告から成分の開示がされておらず,その成分は正確には判明しないが,被告は,本件発明との対比の関係では,被告製品2の構成は被告製品1及び3の各構成と異ならないことを認めている。 (ア)液成分には,①ポリカルボン酸,②酒石酸,③HEMA,④グリセリンジメタクリラト,⑤ウレタンジメタクリラト,⑥ショウノウキノン,⑦水が含まれている。このうち,ポリカルボン酸は,アクリル酸とマレ- 45 -イン酸の共重合体で,酸基を含むポリマーであるが,重合可能ではない。 また,HEMA,グリセリンジメタクリラト,ウレタンジメタクリラトは,いずれも重合可能な不飽和モノマーであるが,酸基を含まない。 (イ)粉成分には,フルオロアルミノシリケートガラス粉末が含まれている。 イ前記アの成分のうち,酸基を有する成分としては,ポリカルボン酸が存在するが,ポリカルボン ノマーであるが,酸基を含まない。 (イ)粉成分には,フルオロアルミノシリケートガラス粉末が含まれている。 イ前記アの成分のうち,酸基を有する成分としては,ポリカルボン酸が存在するが,ポリカルボン酸は前記アのとおり,二重結合を有さない。 この点,原告は,被告製品の成分中のポリカルボン酸は,被告製品の成分中のHEMAの一部と共有結合しており,このHEMAと共有結合したポリカルボン酸は,重合可能な二重結合を有するから,被告製品には,酸基を含む重合可能なプレポリマーが存在する旨主張する。 そこで,前記(1)で判示した甲24実験の内容から,被告製品中のHEMAがポリカルボン酸と共有結合をしていることが立証できたか否かを,以下で検討する。 (ア)前記(1)アで判示したとおり,甲24実験においては,分取的GPCによって,5.5分から6分までの溶離時間で溶出した成分を分取し,これを濃縮処理等して,第2回分析的GPCを行い,その結果,本件図4のとおりのクロマトグラムが得られた。そして,本件図4においては,RI曲線及びUV曲線とも,溶出容積16ml付近におけるピークが1つ認められるだけで,その他のピークは認められない(ただし,UV曲線では,上記曲線のポリマー側にショルダが認められる。)ことから,被告製品の液成分からポリマー成分のみを正確に分取する分取的GPCは成功したようにも考えられる。 しかしながら,前記(1)ア,イで判示したとおり,第2回分析的GPCを行う前に,そのサンプルについて,ロータリ式エバポレーター(10mbar,50℃)を用いて液量を減少させ,さらに,上記成分- 46 -を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)によって乾燥させるなどの処理を施したと認められ,したがって,たとえ,分取的GPCによって分取された成分中に,ポリカルボン に,上記成分- 46 -を真空キャビネット乾燥機(10mbar,50℃)によって乾燥させるなどの処理を施したと認められ,したがって,たとえ,分取的GPCによって分取された成分中に,ポリカルボン酸のほかに,ポリカルボン酸と共有結合していないHEMAが含まれていたとしても,上記の加熱処理等により,このHEMAがポリカルボン酸と反応して共有結合をした可能性もあり,そのために,本件図4のように,RI曲線及びUV曲線のピークが1つしか認められなかった可能性もある。 したがって,本件図4から,甲24実験における分取的GPCが成功し,被告製品の液成分からポリマー成分のみが正確に分取されたと断定することはできず,その他,これを認めるに足る証拠はない。 (イ)このように,分取的GPCによって分取した直後の成分には,ポリカルボン酸と共有結合していないHEMAが含まれている可能性もあり,また,その後のNMRスペクトルの測定の前に,上記の成分は加熱処理をされ,エステル化反応が生じた可能性もあるのであるから,NMRスペクトルの測定の結果,重合可能な二重結合に含まれる水素原子のシグナル,重合可能な二重結合の炭素原子のシグナルが観測されたとしても,甲24実験の分取的GPCによって分取された成分自体に,ポリカルボン酸と共有結合したHEMAが含まれていることを立証できたということはできない。 (ウ)なお,仮に,甲24実験において,分取的GPCにより分取された成分について,濃縮や濾過等をせずに,そのまま,第2回分析的GPCを実施したとの前提に立ったとしても,以下のとおり,甲24実験におけるNMR測定によって,甲24実験の分取的GPCによって分取された成分に,ポリカルボン酸と共有結合したHEMAが含まれていることは,必ずしも立証されているものとは認められない。 すな 24実験におけるNMR測定によって,甲24実験の分取的GPCによって分取された成分に,ポリカルボン酸と共有結合したHEMAが含まれていることは,必ずしも立証されているものとは認められない。 すなわち,前記(1)ウ(イ)で判示したとおり,上記の前提に立っ- 47 -た場合であっても,第2回分析的GPCにおいては,溶出容積19ml付近までしか観測していない可能性も否定できないところである。そうすると,本件図4の溶出容積19ml付近以降にはUV曲線及びRI曲線が記録されていないとしても,実際には,ポリカルボン酸と共有結合していないHEMAが存在した可能性も認められるのであるから,このHEMAが,NMRスペクトルの測定前の加熱によりエステル化反応をしたことも考えられるのである。 ウ以上のとおり,甲24実験の結果から,被告製品中のHEMAがポリカルボン酸と共有結合していることが立証できたということはできない。 そして,原告は,上記の事項を立証するために,種々の実験を行い,その実験の内容及び結果を説明した書面を証拠として提出しているが(甲4,5,19,20),それらの実験の実験方法に対しては被告から様々な問題点が指摘され,また,専門委員を交えた争点整理手続において,最適な実験方法についての協議がされ,上記の被告の指摘及び争点整理手続における協議の内容を踏まえて,原告が最終的に行った実験が甲24実験であって(弁論の全趣旨),原告も,上記の事項を立証するための実験としては,甲24実験のみを主張する旨の陳述をしている。このような経緯からすると,上記のとおり,甲24実験の結果から,上記の事項を立証できたということができない以上,本件において,上記事項の立証はされていないといわざるを得ない。 また,ポリカルボン酸と,被告製品中のその他の二重結合を有す り,甲24実験の結果から,上記の事項を立証できたということができない以上,本件において,上記事項の立証はされていないといわざるを得ない。 また,ポリカルボン酸と,被告製品中のその他の二重結合を有する不飽和モノマーとが結合しているという事実も立証されていない。 したがって,被告製品には,酸基を含む重合可能なプレポリマーが存在するということはできない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。 - 48 -第4 結論 以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官清水節裁判官坂本三郎裁判官佐野信- 49 -物件目録 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