-1-主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して9263万8053円及びこれに対する平成21年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,屋外駐車場に放置されていた,被告会社において 昭和63年12月頃に製造された平成元年式の自動車用の加圧式消火器を作動させたところ,腐食が進んでいた同消火器が破裂し,その破片が原告の顔面及び頭部に命中し(以下「本件事故」という。),これによって,原告は,加療6か月を要する外傷性脳内血腫,頭蓋骨開放骨折等の傷害を負い,後遺障害が残存したとして,被告国に対しては 国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償として,被告社団法人及び被告会社に対しては不法行為に基づく損害賠償として,治療費,後遺障害逸失利益及び慰謝料等並びに弁護士費用相当額として,合計9263万8053円及びこれに対する本件事故日である平成21年9月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 法令の定め(1) 消防法(平成5年法律第89号による改正前のもの。以下同じ。)ア目的(第1条)消防法は,火災を予防し,警戒し及び鎮圧し,国民の生命,身体 及び財産を火災から保護するとともに,火災又は地震等の災害に-2-因る被害を軽減し,もって安寧秩序を保持し,社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。 イ防火対象物における消防用設備等の設置・維持等(ア) 防火対象物における消防用設備等の設置・維持義務消防法上の「防火対象物」(以下,単に「防火対象物」という。) 資することを目的とする。 イ防火対象物における消防用設備等の設置・維持等(ア) 防火対象物における消防用設備等の設置・維持義務消防法上の「防火対象物」(以下,単に「防火対象物」という。) とは,山林又は舟車,船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶,建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう(同法2条2項)。そして,学校,病院,工場,事業場,興行場,百貨店,旅館,飲食店,地下街,複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者(防火対象物の所有者,管理者又は 占有者(同法2条4項))は,政令で定める技術上の基準に従って,政令で定める消防の用に供する設備,消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)を設置し,及び維持しなければならない(同法17条1項)。 これを受けて,消防法施行令(平成元年政令第83号による改 正前のもの。以下同じ。)は,消防法17条1項の政令で定める消防用設備等は,消火設備,警報設備及び避難設備とする旨規定する(消防法施行令7条1項)。このうち,消火設備とは,水その他消火剤を使用して消火を行う機械器具又は設備であって,消防法施行令7条2項各号に掲げるものをいい,消火器はこれに含 まれる(同項1号)。 そして,消防法施行令10条1項は,消火器具を設置すべき防火対象物又はその部分として,同項1号から5号までの防火対象物を列挙している。 (イ) 消防用設備等の点検及び報告 消防法17条1項により消防用設備等の設置・維持が義務付け-3-られる防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は,当該防火対象物における消防用設備等について,自治省令で定めるところにより,定期に,当該防火対象物のうち政令で定めるものにあっては消防設備士免状の 防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は,当該防火対象物における消防用設備等について,自治省令で定めるところにより,定期に,当該防火対象物のうち政令で定めるものにあっては消防設備士免状の交付を受けている者又は自治大臣が認める資格を有する者に点検させ,その他のものにあっては自 ら点検し,その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない(同法17条の3の3。以下,この制度を「点検報告制度」という。)。 (ウ) 検定対象機械器具等の検定a 概要 消防の用に供する機械器具若しくは設備,消火薬剤又は防火塗料,防火液その他の防火薬品のうち,一定の形状,構造,材質,成分及び性能(以下「形状等」という。)を有しないときは火災の予防若しくは警戒,消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであり,かつ,その使用状 況からみて当該形状等を有することについてあらかじめ検査を受ける必要があると認められるものであって,政令で定めるもの(以下「検定対象機械器具等」という。)については,消防法第4章の2第1節に定めるところにより検定をするものとされている(同法21条の2第1項)。消火器も,検定対象 機械器具等に当たる(消防法施行令37条1号)。 この検定は,型式承認(消防法21条の2第2項)及び個別検定(同条の2第3項)の2段階から成るところ,日本消防検定協会又は指定検定機関は,個別検定に合格した検定対象機械器具等に,当該検定対象機械器具等の型式が型式承認を受けた ものであり,かつ,当該検定対象機械器具等が個別検定に合格-4-したものである旨の表示を付さなければならない(同法21条の9第1項)。そして,検定対象機械器具等は,上記の表示が付されているものでなければ,販売し,又は販売の目 械器具等が個別検定に合格-4-したものである旨の表示を付さなければならない(同法21条の9第1項)。そして,検定対象機械器具等は,上記の表示が付されているものでなければ,販売し,又は販売の目的で陳列してはならない(同条の2第4項)。 b 検定の方法 型式承認とは,検定対象機械器具等の型式に係る形状等が自治省令で定める検定対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の承認をいう(消防法21条の2第2項)。そして,消火器に関する上記「自治省令で定める検定対象機械器具等に係る技術上の規格」に当たるのが,「消火器の技術上の規 格を定める省令」(昭和39年自治省令第27号。以下「規格省令」という。)である。 個別検定とは,個々の検定対象機械器具等の形状等が型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等と同一であるかどうかについて行う検定をいう(消防法21条の2第3 項)。 (乙58,59)(2) 規格省令ア規格省令は,消防法21条の2第2項の規定に基づき,消火器の技術上の規格を定めたものである(以下,平成元年当時のもの を「本件規格省令」という。)。 (ア) 消火器の定義本件規格省令上,消火器とは,水その他消火剤を圧力により放射して消火を行う器具で人が操作するもの(固定した状態で使用するもの及び消防庁長官が定めるエアゾール式簡易消火具を除 く。)をいう(1条の2第1号)。 -5-(イ) 消火器の有すべき技術上の規格に関する規制本件規格省令は,消火器について,消火性能(2条~4条),操作機構(5条),耐食及び防錆性能(6条),充てんすべき消火剤(7条~9条),放射性能(10条),使用温度範囲(10条の2),本体容器の板厚及び耐圧(11条,12条),キャップ等の 条),操作機構(5条),耐食及び防錆性能(6条),充てんすべき消火剤(7条~9条),放射性能(10条),使用温度範囲(10条の2),本体容器の板厚及び耐圧(11条,12条),キャップ等の 部品の性能(13条~17条),液面表示(18条),不時の落下等に対する衝撃強度等(19条),消火剤漏出防止装置(20条),安全栓(21条)等の技術基準を定めている。 (ウ) 表示に係る規制本件規格省令38条1項では,消火器の本体容器には,消火器 の種別(1号),使用方法(2号),使用温度範囲(3号),適応火災(4号),能力単位(5号),放射時間(6号),放射距離(7号),製造番号(8号),製造年(9号),製造者名(10号),型式番号(自動車用消火器を除く。11号),試験圧力値(12号),安全弁の作動圧力値(13号),充てんされた消火剤の容量又は重 量(14号),総重量(15号)及び取扱い上の注意事項(16号)の各事項を記載した簡明な表示をしなければならないものと定められていた。 (エ) 自動車用消火器に関する規定自動車に設置する消火器(自動車用消火器)は,強化液消火器 (霧状の強化液を放射するものに限る。),機械泡消火器(化学泡消火器以外の泡消火器),ハロゲン化物消火器,二酸化炭素消火器又は粉末消火器でなければならないとされていた(8条)。 (乙34)イ本件規格省令の改正 (ア) 平成5年改正-6-a 自治大臣は,「消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」(平成5年自治省令第7号)により本件規格省令を一部改正した(以下,平成5年の改正に係るものを「平成5年改正省令」という。)。平成5年改正省令は,規格省令に新たに「住宅用消火器」に関する規定を新設するなどした上,全 部で り本件規格省令を一部改正した(以下,平成5年の改正に係るものを「平成5年改正省令」という。)。平成5年改正省令は,規格省令に新たに「住宅用消火器」に関する規定を新設するなどした上,全 部で5つの章(総則,住宅用消火器以外の消火器,住宅用消火器,交換式消火器,雑則)を設けて,各条文を整理した。 b 平成5年改正省令1条の2では,消火器に関する用語の意義に関する次のような規定が設けられた。 住宅用消火器とは,消火器のうち,住宅における使用に限り 適した構造及び性能を有するものをいう(2号)。 交換式消火器とは,本体容器及びこれに附属するキャップ,バルブ,指示圧力計等を一体として交換できる消火器であって,収納容器に結合させることにより人が操作して消火を行うものをいう(3号)。 加圧式の消火器とは,加圧用ガス容器の作動,化学反応又は手動ポンプの操作により生ずる圧力により消火剤を放射するものをいう(11号)。 蓄圧式の消火器とは,消火器の本体容器内の圧縮された空気,窒素ガス等の圧力又は消火器に充てんされた消火剤の圧力に より消火剤を放射するものをいう(12号)。 c 平成5年改正省令39条では,住宅用消火器(交換式消火器以外の住宅用消火器)は,蓄圧式の消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造でなければならない旨が定められた。 平成5年改正省令44条では,住宅用消火器については,そ-7-の見やすい位置に,消火器の種別(1号),使用方法(2号),使用温度範囲(3号),適応火災の絵表示(4号),放射時間(5号),放射距離(6号),製造番号(7号),製造年(8号),製造者名(9号),型式番号(10号),充てんされた消火剤の容量又は重量(11号),ホースの有効長(据置式の消火器に限 る 射時間(5号),放射距離(6号),製造番号(7号),製造年(8号),製造者名(9号),型式番号(10号),充てんされた消火剤の容量又は重量(11号),ホースの有効長(据置式の消火器に限 る。12号)及び取扱い上の注意事項(使用期間又は使用期限に関する事項,指示圧力計に関する事項,天ぷら油火災に関する事項,消火剤の再充てんができない旨,その他取扱い上注意すべき事項。13号)を記載した簡明な表示をしなければならないと定められた。 なお,平成5年改正省令38条1項では,住宅用消火器以外の消火器の表示に関しても,表示の位置について,消火器の見やすい位置に行うものとされるなどの改正がされたほか,表示すべき事項として,ホースの有効長(16号)が付け加えられるとともに,取扱い上の注意事項(17号)として,加圧用ガ ス容器に関する事項(加圧式の消火器に限る。同号イ),指示圧力計に関する事項(蓄圧式の消火器に限る。同号ロ),その他取扱い上注意すべき事項(同号ハ)が明記された。 (乙35)(イ) 平成22年改正 a 総務大臣は,「消防法(昭和23年法律第186号)第21条の2第2項の規定に基づき,消火器の技術上の規格を定める省令の一部を改正する省令」(平成22年総務省令第111号)により,規格省令を改正した(以下,平成22年の改正に係るものを「平成22年改正省令」という。)。 b 平成22年改正省令38条1項では,住宅用消火器以外の消-8-火器の見やすい位置に表示すべき事項として,「住宅用消火器でない旨」(2号),「加圧式の消火器又は蓄圧式の消火器の区別」(3号)が追加されるとともに,取扱い上の注意事項(19号)に,「標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的 (2号),「加圧式の消火器又は蓄圧式の消火器の区別」(3号)が追加されるとともに,取扱い上の注意事項(19号)に,「標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間又は期限として 設計上設定される期間又は期限」(同号ハ),「使用時の安全な取扱いに関する事項」(同号ニ),「維持管理上の適切な設置場所に関する事項」(同号ホ),「点検に関する事項」(同号ヘ)及び「廃棄時の連絡先及び安全な取扱いに関する事項」(同号ト)が加えられた。 c 平成22年改正省令44条1項では,住宅用消火器の見やすい位置に表示すべき事項として,「住宅用消火器である旨」(2号)が追加されるとともに,取扱い上の注意事項(14号)に,「使用時の安全な取扱いに関する事項」(同号ニ),「維持管理上の適切な設置場所に関する事項」(同号ホ),「点検に関する 事項」(同号ヘ),「廃棄時の連絡先及び安全な取扱いに関する事項」(同号チ)が加えられた。 (甲11の1,甲14) 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって認定できる事実) (1) 当事者等ア原告は,平成11年6月2日,A及びBの子として出生した者であり,本件事故当時,満10歳3か月であった。 (弁論の全趣旨)イ被告社団法人は,昭和31年に発足した日本国検消火器組合連 合会を母体として,国内で唯一の消火器メーカーを構成員とする-9-団体として,昭和36年1月1日に自治大臣から設立認可を受けて設立された社団法人であり,火災予防制度の強化促進及び消火器類の開発普及を推進し,火災損害の防止軽減に寄与することを目的とし,火災予防制度及び消防技術に関する調査研究,関係官庁及び関係団体との連絡・協力,消火 団法人であり,火災予防制度の強化促進及び消火器類の開発普及を推進し,火災損害の防止軽減に寄与することを目的とし,火災予防制度及び消防技術に関する調査研究,関係官庁及び関係団体との連絡・協力,消火器類及びその使用維持の方 法の宣伝・普及,消火器類及び消火技術の調査・研究,研究会や講演会等の開催等を事業内容としている。なお,被告社団法人は,平成25年4月1日に,社団法人から一般社団法人に移行し,現在の名称となった。 被告社団法人の正会員は,日本国内において自社の製造設備に よる消火器類の製造を業とし,かつ,その製品が国家検定に合格した実績を有する者であって,被告社団法人の理事会において承認された者である。準会員は,正会員以外の者で,消火器類の製造を業とする者のうち,理事会において承認された者である。被告社団法人が設立された当初から,消火器を製造・販売するメーカーは, 正会員か準会員であり,正会員である消火器メーカーが,被告社団法人の理事を務めている。 被告社団法人の予算(その大半は会員からの会費である。)は,昭和60年度から平成26年度までの間,おおむね7000~8000万円程度で推移しており,そのうち固定費は4000万円 程度である。 (甲17,丁46,弁論の全趣旨)ウ被告会社は,大正12年1月17日に設立された,消火器具機械,消火剤の製造及び販売等を目的とする株式会社である。なお,被告会社の旧商号は,ヤマト消火器株式会社であったが,昭和6 4年1月1日に現在の商号に変更された。被告会社は,国内の消-10-火器販売では第1位のシェアを保っている。 被告会社は,被告社団法人の正会員である。また,被告会社において現在代表取締役専務を務めるCは,昭和62年4月から平成8年までの間,被告社 -10-火器販売では第1位のシェアを保っている。 被告会社は,被告社団法人の正会員である。また,被告会社において現在代表取締役専務を務めるCは,昭和62年4月から平成8年までの間,被告社団法人のPR委員会の副会長を,平成15年,同16年,同21年及び同22年には,被告社団法人の企業委 員を務めていた。 (甲9,44,丙17,25,弁論の全趣旨)(2) 消火器の種類及び圧力発生のメカニズムア消火器は,本体容器内に圧力が発生する過程によって,構造上,二つに大別される。一つは,レバー操作時に本体容器内に圧力が 発生する加圧式消火器である。もう一つは,あらかじめ本体容器内に圧力源が封入されている蓄圧式消火器である。 イ加圧式消火器は,本体容器内に二酸化炭素(二酸化炭素と少量の窒素ガスとの混合気体のものも存在する。)を充てんした加圧用ガス容器が装着されており,消火器のレバー操作をしないときに は,本体容器内は大気圧(0Mpa)の状態となっているが,安全栓を引き抜いてレバーを握ると,レバーに取り付けられた破壊軸(カッター)が本体容器内の加圧用ガス容器の封板に穴を空け,加圧用ガス容器内のガスが本体容器内に放出され,本体容器内部の消火剤粉末と合流することにより,本体容器内が強い混合圧縮状態 となり,その圧力は,瞬時に1.0~1.5Mpa 程度にまで上昇する。その結果,サイホン管の先に設けられている封板(本体容器内の消火剤が外気にさらされることを防止するもので,0.2~0. 4Mpa 程度の圧力で作動するもの)が破れ,ホースを通ってノズルの先端から本体容器内の消火剤が消火器外部へと放出される。 ウ蓄圧式消火器は,製造時に本体容器内に消火剤を充てんした後,-11-圧縮空気が封入されることから, れ,ホースを通ってノズルの先端から本体容器内の消火剤が消火器外部へと放出される。 ウ蓄圧式消火器は,製造時に本体容器内に消火剤を充てんした後,-11-圧縮空気が封入されることから,本体容器内の封入圧力は,0.7~0.98Mpa 程度に保たれている。蓄圧式消火器は,安全栓を引き抜いて消火器のレバーを握ると,バルブが開放され,ホースを通ってノズルの先端から本体容器内に充てんされていた消火剤が消火器外部へと放出される。なお,蓄圧式消火器には,容器の外部 に指示圧力計が取り付けられている。 (甲6の2,甲7,8)(3) 昭和43年度から平成21年度までの消火器の破裂事故の発生状況昭和43年度から平成21年度までの間に,少なくとも合計16 1件(1年間に平均4件程度)の消火器の破裂事故が発生し,多数の死傷者が出ており,平成12年度から平成21年度の間では,破裂事故が26件発生し,死者3名(事故3件),負傷者22名(事故21件)の人的被害が発生していた。 事故の類型として最も多いのは,腐食による本体容器の強度低下 を主要因とすると考えられるものが74件(内容不明の案件を除く135件のうちの約55%)であり,このうち,加圧式消火器によるものが70件(95%),蓄圧式消火器によるものが1件(1%),不明が3件(4%)であった。また,これらの事故は,消火器の操作時に発生したものが大半であり,訓練中や消火中に発生することが多 かったが,いたずらによるものもあった。 加圧式消火器においては,主に,腐食が進みやすい場所(屋外,軒下及び水回り等)において,保守管理が不十分な状況下で存置され,経年に伴い,本体容器(特に底部)が腐食して強度が低下し,通常は圧力のかかっていない本体容器において,放射操作に伴い圧力 場所(屋外,軒下及び水回り等)において,保守管理が不十分な状況下で存置され,経年に伴い,本体容器(特に底部)が腐食して強度が低下し,通常は圧力のかかっていない本体容器において,放射操作に伴い圧力が急 激に上昇して破裂し,消火器の操作者が負傷するという経過により-12-事故が発生しており,蓄圧式消火器においては,腐食による強度低下等があるところに,廃棄処理施設において無理な力が加えられた際に破裂する事例が見られた。 (甲16)(4) 本件事故に係る消火器が放置された経緯 ア被告会社が昭和63年12月頃に製造した平成元年式の自動車用の加圧式消火器(YAM-20R 粉末(ABC)消火器。製造番号00332。以下「本件消火器」という。)は,平成2年5月までは,Dが経営するE株式会社が所有していた。同社は,この当時,大阪市a区bc丁目d番所在の屋外駐車場(以下「本件駐車 場」という。)の所有者から,同駐車場の管理を任されていたところ,同月19日付けで同社が営業を止めることになったことから,Dの弟で,同社の従業員であったFが,同社に代わって本件駐車場を管理することとなった。 イ本件駐車場とその東側にある南北に通じる歩車道の区別のある 道路との間には金網製のフェンス柵が設置されていたところ,本件駐車場の出入口には扉はなく,道路から本件駐車場内には自由に出入りできる状態になっており,また,道路から本件駐車場内を見通すことが可能であった。 ウ本件駐車場の南東角の歩道に面した部分には,Fが本件駐車場 を管理するようになる以前から,Dが本件消火器を含む4本の消火器を置いていたところ,Fは,本件駐車場内で火事が発生した際に使用することができると考えて,これらの消火器をそのまま放置していた。Fは,これら するようになる以前から,Dが本件消火器を含む4本の消火器を置いていたところ,Fは,本件駐車場内で火事が発生した際に使用することができると考えて,これらの消火器をそのまま放置していた。Fは,これらの消火器の耐用年数や,老朽化した消火器が破裂したりする危険性があることを知らなかった。 なお,本件駐車場のような屋外駐車場は,消防用設備等の設置が-13-義務付けられている防火対象物ではないから,その管理者は,消火器の点検及び報告を義務付けられてはいない。 (甲3,4,甲6の1,甲22,戊3)(5) 本件消火器のラベルの記載内容本件消火器の前面及び背面下部には,次のような記載のあるラベ ルがそれぞれ貼付されていた。なお,本件消火器の前面に貼付されているラベルの方が,本件消火器の背面下部に貼付されているラベルよりも大きい。 ア本件消火器の前面に貼付されている大きい方のラベルの記載内容は,次のとおりである。 注意事項 1 薬剤の詰替えは当社製粉末(ABC)消火薬剤を6.0㎏充てんして下さい。 2 加圧用ガス容器は定期的に重量を計り,もし加圧用ガス容器記載の総重量より10㎏以上減量しているときは新 しい加圧用ガス容器に取替えて下さい。 3 キャップを開ける時は,排圧栓をゆるめ内圧を排圧してからキャップを開けて下さい。排圧が終わればかならず排圧栓のネジを元通りに締め表示マークを貼り直して下さい。 4 再充てんの際は新しい封板と取替えて下さい。 (本品には自動車専用保持装置は付けておりません。)イ本件消火器の背面下部に貼付されている小さい方のラベル(以下「注意喚起ラベル」という。)の記載内容は,次のとおりである。 取替えて下さい。 (本品には自動車専用保持装置は付けておりません。)イ本件消火器の背面下部に貼付されている小さい方のラベル(以下「注意喚起ラベル」という。)の記載内容は,次のとおりである。 なお,注意喚起ラベルの記載のうち,「5年を目安に点検」と「耐 用8年」の記載部分は,黒のラインに白抜きの文字で記載されて-14-おり,「使用上のご注意」の記載部分は,その全体が枠で囲われており,また,他の記載部分よりも大きく太い文字が使用されている。なお,注意喚起ラベルの寸法は,おおむね横6.5㎝,縦5. 5㎝である。 維持管理についてのご注意 1.高温,多湿のところは,避けて設置してください。 屋外,ちゅう房や腐食性ガスが,発生するところでは,格納箱に収納するなど保護処置をしてください。 2.定期的に点検してください。おおむね5年を経過すると性能,機能が低下することがありますので,家庭など点検 義務のないところでも5年を目安に点検してください。 3.点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問いあわせください。 使用上のご注意この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかり ます。さび,腐食,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。 容器の耐用年数容器の耐用年数は,設置場所や管理の仕方によって異なります。正しい維持管理が行われた場合に,おおむね耐用8 年です。 (甲3,23,丙1)(6) 本件事故の発生原告は,平成21年9月15日,Fが管理する本件駐車場内に侵入し,同所に放置されていた本件消火器で遊ぼうとしてこれを作動 年です。 (甲3,23,丙1)(6) 本件事故の発生原告は,平成21年9月15日,Fが管理する本件駐車場内に侵入し,同所に放置されていた本件消火器で遊ぼうとしてこれを作動 させたところ,老朽化して底部の腐食が進んでいた本件消火器が内-15-圧上昇により破裂して胴体部分と底面部に別れて飛散し,その破片が原告の顔面及び頭部に命中した。 原告は,本件事故によって,加療約6か月を要する外傷性脳内血腫,頭蓋骨開放骨折等の傷害を負った。 なお,本件事故の当時,本件消火器の本体容器の底部は腐食して おり,そのため,本体容器の背面下部に貼付されている注意喚起ラベルの一部は,読み取れない状態になっていた。 (甲1,3,甲6の2,戊12)(7) Fに対する刑事事件ア大阪地方検察庁は,平成22年12月24日,Fが,本件駐車 場の管理者として同駐車場内の安全管理等の業務に従事し,同駐車場内に備品として本件消火器を含む4本の消火器が設置されていたことを認識していたところ,消火器の表面にさびが生じるなど老朽化した状態で作動させれば,内圧上昇により破裂する危険性があったのであるから,上記消火器について,さび,腐食等 の有無,設置後未点検のまま経過した期間,上記消火器に貼付された「さび,腐食,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」などと記載された注意書き等を確認して,上記消火器を本件駐車場から撤去し,あるいは本件駐車場が住宅密集地にある上,隣接道路が付近の小 学校の通学路になっていたため,近隣の児童が常時開放状態の本件駐車場出入口から立ち入って上記消火器を戯れに作動させる可能性が予見できたのであるから,児童などが上記消火器設置場所付近 近の小 学校の通学路になっていたため,近隣の児童が常時開放状態の本件駐車場出入口から立ち入って上記消火器を戯れに作動させる可能性が予見できたのであるから,児童などが上記消火器設置場所付近に立ち入って上記消火器に触れることを防止するための遮蔽などの措置をとり,上記消火器の破裂による死傷事故を防止 すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,上記消火器が老-16-朽化していることを認識しつつもその点検期限後の経過期間や上記注意書き等を一切確認せず,近隣児童などが上記消火器設置場所付近へ立ち入って上記消火器に触れることを防止するための何らの措置もとることなく上記消火器を放置していた過失により,本件事故を発生させたとして,Fの上記行為は,業務上過 失傷害(刑法211条1項前段)に該当するとして,大阪地方裁判所に対し,公訴を提起した(同裁判所平成22年(わ)第7097号)。 (甲1)イ大阪地方裁判所は,平成23年12月2日,本件駐車場の保守 業務等を委託されていたFは,本件駐車場に4本の消火器が置いてあり,上記消火器には注意書きが貼付されていたこと等から,これを読めば,誰かが上記消火器を操作すれば破裂するおそれがあることを認識できたはずであり,また,本件駐車場の管理人としての職務を行っていた以上,認識すべきであったとした上で, Fは,本件駐車場が住宅密集地にあり,自由に出入りできる状態であったこと等を認識していたのであるから,Fには,上記消火器を本件駐車場から撤去したり,遮蔽の措置を講じたりして,その破裂による死傷事故を防止すべき注意義務があったとして,Fに対し,有罪の判決を言い渡し,同判決は,その後確定した。 (弁論の全趣旨)(8) 国内における消火器の生 して,その破裂による死傷事故を防止すべき注意義務があったとして,Fに対し,有罪の判決を言い渡し,同判決は,その後確定した。 (弁論の全趣旨)(8) 国内における消火器の生産本数等昭和52年度から平成24年度までにかけての,我が国における消火器の生産本数並びに蓄圧式消火器及び加圧式消火器の比率は,別紙のとおりである。蓄圧式消火器の比率は,昭和52年度には約 15.2%であったものの,その後,平成10年度までの間は,年-17-によって若干の変動はあるもののおおむね10%程度で推移し,平成11年度から平成19年度までは13~16%程度で推移し,平成20年度及び平成21年度は17%程度,平成22年度は約23. 7%と若干上昇していたところ,平成23年度は約50.7%,平成24年度は60.9%と,急激にその比率が上昇している。 (弁論の全趣旨) 4 争点(1) 被告国の不作為に関する国賠法上の違法性ア被告国は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見するこ とが可能であったか否か(争点①)イ自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めな かったこと,及び加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法か否か(争点②)(2) 被告社団法人の過失 ア被告社団法人は,昭和60年5月 ない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法か否か(争点②)(2) 被告社団法人の過失 ア被告社団法人は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か(争点③)イ被告社団法人に,(ア) 本件消火器の製造時点において,消火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表 記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をす-18-べき義務,(イ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点において,耐用年数が経過した消火器を確実に回収する制度を構築すべき義務があったか否か,また,被告社団法 人がこれらの義務を怠ったか否か(争点④)(3) 被告会社の過失ア被告会社は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か(争点⑤) イ被告会社に,(ア) 本件消火器の製造時において,製造する消火器を,加圧式消火器からより安全性の高い蓄圧式消火器に切り替えるべき義務,(イ) 本件消火器の製造時点において,消火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をすべき 義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(エ) 本件事故が発生するまでの時点で, 義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(エ) 本件事故が発生するまでの時点で,耐用年数が経過した消火器を回収すべき義務があったか否か,また,被告会社がこれらの義務を怠ったか否か(争 点⑥)(4) 因果関係ア被告国の行為と原告の被った損害との間の因果関係の有無(争点⑦)イ被告社団法人の行為と原告の被った損害との間の因果関係の 有無(争点⑧)-19-ウ被告会社の行為と原告の被った損害との間の因果関係の有無(争点⑨)(5) 原告の被った損害及びその額(争点⑩)(6) 過失相殺(争点⑪) 5 争点に対する当事者の主張 (1) 争点①(被告国は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か)について(原告の主張)ア加圧式消火器の破裂事故の多発 被告社団法人及び消防庁等が取りまとめた資料によると,昭和43年から昭和63年までの間に,93件の消火器による破裂事故等が発生している。消火器の破裂等によって,死亡を含む重大な人的被害が出たものは,全て加圧式消火器によるものである。 イ加圧式消火器の危険性 加圧式消火器は,消火器の本体容器の耐圧に問題がない場合は,正常に消火剤が放出されるが,本体容器の底部等が錆により腐食している場合は,加圧用ガス容器の封板が破封され,同容器内のガスが本体容器内に放出された際に,本体容器がその圧力に耐えられずに破裂し,使用者の生命又は身体に重大な被害を及ぼす危 険性がある。 ウ危険の予見可能性消防庁は,昭和53年3月23日に富山市内で 容器内に放出された際に,本体容器がその圧力に耐えられずに破裂し,使用者の生命又は身体に重大な被害を及ぼす危 険性がある。 ウ危険の予見可能性消防庁は,昭和53年3月23日に富山市内で発生した昭和44年に製造された加圧式消火器が破裂して発生した死亡事故を受けて,昭和54年1月24日,各都道府県消防主管部長宛てに 「消火器の廃棄処理の指導について」(乙1)と題する通知を発し-20-たにもかかわらず,昭和60年4月12日には,北海道稚内市内において,工場に設置された加圧式消火器を操作した際に,消火器が破裂して男性1名が死亡する事故が発生し,また,同年5月30日には,新潟県新発田市内において,廃棄されていた加圧式消火器を操作した際に,消火器が破裂して1名が死亡する事故が 発生した。 以上のとおり,昭和53年の上記死亡事故に対して,消防庁が,各都道府県消防主管部長宛てに注意喚起のための通知をしたにもかかわらず,なおも加圧式消火器による同様の死亡事故が繰り返し発生していたのであるから,被告国は,遅くとも昭和60年 5月30日頃の時点で,加圧式消火器が点検報告制度の対象とならない一般住宅等に設置されれば,十分な保管や点検がされずに放置され,使用時に破裂して重大な人身事故が発生する危険性があることを予見することができたというべきである。 (被告国の主張) 争う。加圧式消火器のうち,破裂事故を起こしたものは,老朽化や腐食等の悪条件が重なった結果,当該事故を起こすに至ったものと推測されるところ,平成元年頃までは,加圧式消火器が破裂事故を起こすのは,上記のような悪条件が重なったごくまれな場合に限られており,加圧式消火器一般について,広く破裂事故が発生して いたわけではない。 (2) 争点②(自治 ,加圧式消火器が破裂事故を起こすのは,上記のような悪条件が重なったごくまれな場合に限られており,加圧式消火器一般について,広く破裂事故が発生して いたわけではない。 (2) 争点②(自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めなか ったこと,及び加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる-21-防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法か否か)について(原告の主張)ア防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防 火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めるべき義務に違反したことについて(ア) 消火器メーカーは,自治省(当時)が定める規格省令に定められた技術上の規格に適合し(型式承認),検定に合格した消火 器しか製造・販売することができない(消防法21条の2第2項)から,自治大臣(当時)は,消火器の機能及び安全性の確保に関して,絶大な権限を有しているものである。 (イ) 昭和60年当時,消火器の破裂による死亡事故は,加圧式消火器についてのみ発生していた。消火器は,耐用年数が比較的 長いことから,長期間にわたって設置され続けるという特徴があり,また,風雨又は湿気にさらされやすい場所に設置される可能性も高い。そして,加圧式消火器は,その安全性を確保するためには,おおむね5年を目安に点検をしなければならないところ,防火対象物以 徴があり,また,風雨又は湿気にさらされやすい場所に設置される可能性も高い。そして,加圧式消火器は,その安全性を確保するためには,おおむね5年を目安に点検をしなければならないところ,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象となら ない防火対象物に設置された加圧式消火器については,購入後5年経過後の自主的な点検を期待することはほぼ不可能である。そうすると,加圧式消火器による重大な人身事故の発生を防止するためには,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器を,加圧式消火器 から蓄圧式消火器に切り替えることが有効であったというこ-22-とができる。 (ウ) 蓄圧式消火器は,昭和60年時点では,既に製造することが可能であり,開発費用をかければ,大量生産することも可能であったのであるから,自治大臣は,遅くとも本件消火器の製造時である平成元年頃までに,本件規格省令を改正し,防火対象 物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めるべきであった。しかるに,自治大臣は,平成元年頃までに本件規格省令を上記のとおりに改正することはなかった。 イ加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことについて消火器の本体容器に記載される安全性に係る表示は,本件規格 省令38条1項16号の「取扱い上の注意事項」に該当するから,被告国は,本件規格省令を改正することにより,消火器メーカーに一定の警告表示を行うよう義務付けることが可能であった。そ ,本件規格 省令38条1項16号の「取扱い上の注意事項」に該当するから,被告国は,本件規格省令を改正することにより,消火器メーカーに一定の警告表示を行うよう義務付けることが可能であった。そして,加圧式消火器の危険性や使用方法の特徴等に照らすと,自治大臣は,遅くとも本件消火器の製造時である平成元年頃までに 本件規格省令を改正して,加圧式消火器の本体容器に,加圧式消火器の安全性に係る次の(ア)~(オ)の各表示(以下,これらを総称して「本件原告主張表示」といい,個別の表示については,「本件原告主張表示(ア)」などという。)をするよう義務付けるべきであった。しかるに,自治大臣は,平成元年頃までに本件規格省令を 改正することはなかった。 -23-(ア) 使用時の安全な取扱いに関する事項として,「耐用年数経過前であっても,本体容器の底部その他に腐食が生じ又は腐食が生じている可能性がある消火器は,使用者の生命に危険を及ぼす可能性のある破裂事故の危険があるため絶対に使用しないこと」 (イ) 点検に関する事項として,「加圧式粉末消火器については,耐用年数経過前にも,製造から一定期間経過後(例えば3年経過後)は,関係者は点検をしなければならず,耐用年数経過後は,水圧試験などによる点検を実施し,これら点検を完了していない消火器は破裂の危険性があるから使用してはならない こと」(ウ) 廃棄時の安全な取扱いに関する事項として,「耐用年数を明示し,耐用年数経過後,水圧試験などによる点検を実施していない消火器は,破裂事故の危険性があるため,関係者が直ちにリサイクルのための連絡先へ連絡して専門の廃棄業者に処分 を依頼すること及びその連絡先」(エ) 住宅用消火器ではない旨(オ) 点検報告制度の対象となる防 危険性があるため,関係者が直ちにリサイクルのための連絡先へ連絡して専門の廃棄業者に処分 を依頼すること及びその連絡先」(エ) 住宅用消火器ではない旨(オ) 点検報告制度の対象となる防火対象物にしか設置してはならない旨(被告国の主張) ア自治大臣は,原告の主張するような本件規格省令の改正を行う権限を有していないこと(ア) 原告は,自治大臣において,消火器の製造業者に対し,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する用途として製造する消火器を,蓄圧式消火器で あって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限定す-24-ること,及び加圧式消火器に「点検報告制度の対象となる防火対象物にしか設置してはならない」旨の表示を義務付けるべきである旨主張する。しかしながら,この主張は,実質的には,当該表示の名宛人である消火器の設置者に対して,防火対象物以外の施設等への加圧式消火器を設置させないという効果を もたらすことを目的とするものである。すなわち,原告の主張は,自治大臣は,「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置すべき消火器」を「蓄圧式であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造」のものに限定する義務を負っており,防火対象物以外の施設等の管理者に対し, 加圧式消火器の設置を規制しなければならなかった旨をいうに等しいものというべきである。 (イ) しかしながら,規格省令は,消防法21条の2第2項による委任を受け,製造段階において消火器が有すべき技術上の規格を定めることにより,消火器の製造業者に対して一定の規制を 課すものであり,また,同項の趣旨は,消火器の製造段階においてこれが十分な消火性能を有することを担保すること 器が有すべき技術上の規格を定めることにより,消火器の製造業者に対して一定の規制を 課すものであり,また,同項の趣旨は,消火器の製造段階においてこれが十分な消火性能を有することを担保することにより,実際の火災等において十分な消火性能を発揮することを期することにある。このように,同項からは,消火器の設置者に対する規制及び性能以外の点に着目した消火器の設置場所に 関する規制を設ける趣旨を読み取ることは困難である。 また,消防法の他の規定を見ても,同法は,一定の防火対象物の関係者に対し消防用設備等の設置及び維持を義務付けているものの(同法17条1項),消防用設備等の設置又は維持に関し,上記防火対象物以外の管理者に対し何らかの義務を課す 旨の規定や,性能以外の点に着目して消火器の設置場所を制限-25-する旨の規定は見当たらない。 (ウ) そうすると,原告が主張する本件規格省令の改正内容は,製造段階における消火器の規格を定める消防法21条の2第2項の委任の範囲を超える規制であり,そもそも自治大臣はかかる改正を行う権限を有していなかったというべきである。そし て,そのような規制が許されない以上,消火器の製造業者に対してであっても,委任の範囲を超える規制内容を表示すべきことを義務付けることができないのは明らかであって,自治大臣においては,消火器本体に「加圧式消火器は,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない」旨の 表示を義務付ける権限もまた有していなかったことは明らかである。 イ自治大臣が本件規格省令を改正しなかったことが,著しく合理性を欠くとはいえないこと(ア) 規格省令の改正権限は,火災時に消火器を使用する者等の 生命又は身体の保護を目的として行使され イ自治大臣が本件規格省令を改正しなかったことが,著しく合理性を欠くとはいえないこと(ア) 規格省令の改正権限は,火災時に消火器を使用する者等の 生命又は身体の保護を目的として行使されることを予定又は期待されているものではない。 a 消防法は,火災を予防し,警戒及び鎮圧し,国民の生命,身体及び財産を火災から保護するとともに,火災又は地震等の災害による被害を軽減し,もって安寧秩序を保持し,社会 公共の福祉の増進に資することを目的とする法律である(同法1条)。 また,同法21条の2が検定対象機械器具等について検定をすることとしているのは,これらの機械機具等が,火災の予防若しくは警戒,消火又は人命の救助等のために重要な役 割を果たすものであり,一定の性能を有さなければ,実際の-26-火災等において必要な機能を発揮することができないことから,これらの機械器具等について一定の性能を担保するためである。そして,規格省令は,消防法21条の2第2項の委任に基づき,検定対象機械器具である消火器に係る技術上の規格を定めるものであり,その趣旨・目的は,消火器が, 一定の性能等を有して,実際の火災時に有効にその機能を発揮することにある。 b このような消防法及び規格省令の趣旨及び目的に照らすと,本件規格省令の改正に関する自治大臣の権限についても,火災を予防及び鎮圧することにより,国民の生命,身体及び 財産を火災から保護することを目的として行使されるべきものであって,火災時に消火器を使用する者や消火器を廃棄する者等の生命及び身体等を保護することを直接の目的として行使されることが予定又は期待されていたわけではない。 (イ) また,消火器の破裂事故は,悪条件が重なった場合に発生しており,加圧式 生命及び身体等を保護することを直接の目的として行使されることが予定又は期待されていたわけではない。 (イ) また,消火器の破裂事故は,悪条件が重なった場合に発生しており,加圧式消火器一般について,広く破裂事故が発生していたわけではない。 (ウ) さらに,被告国(消防庁)は,加圧式消火器の破裂事故の発生を防止するための必要な措置を講じていた。 消防庁は,消火器の破裂事故が発生していることを受け,累次にわたって通知を発出し,消火器の維持管理の徹底を指導していた。取り分け,昭和63年に発出された通知においては,消火器に係る人身事故が主として加圧式消火器によって生じていることや,加圧式消火器について容器の腐食等の構造上の 弱点がある場合,その部分から破壊することがあること等が明-27-記された上で,a 消火器の設置場所について,できるだけ通風がよく,目につきやすい場所とすることや,直射日光を受ける場所,湿気の多い場所又は雨水のかかる場所は避けることとされ,また,b 購入又は設置から5年以上が経過した消火器については,その間の点検整備の状況等に留意し,時々,外観 を点検し,適正に維持管理することとされていた。このような通知の内容は,加圧式消火器について老朽化や腐食という悪条件が重なった場合に破裂事故が生じているという当時の具体的事情に照らしてみた場合,そのような事故の発生を防止するために必要な措置を指導する合理的なものということができ る。 このように,消防庁は,昭和50年代から昭和64年(平成元年)にかけて,消防組織法4条及び37条に基づき,老朽化消火器の破裂事故を消防に関する広域的な安全対策課題であると位置付け,事故が発生する都度,各都道府県消防主管部長 宛ての通知 年(平成元年)にかけて,消防組織法4条及び37条に基づき,老朽化消火器の破裂事故を消防に関する広域的な安全対策課題であると位置付け,事故が発生する都度,各都道府県消防主管部長 宛ての通知や事務連絡を発出し,助言を与え,勧告し,指導を行うことにより,全国的に老朽化した消火器の危険性及びその適切な維持管理について周知徹底を行っていた。 (エ) 以上によると,自治大臣において,平成元年頃までに本件規格省令を改正して,原告の主張に係る規制を行わなかったこと が,消防法の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,当時の具体的事情の下において,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたということはできない。 ウしたがって,自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正しなかったことが国賠法1条1項の適用上違法であるとい うことはできない。 -28-(3) 争点③(被告社団法人は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か)について(原告の主張)被告社団法人は,主な国内消火器メーカーが全て加入し,消防庁 とも連携,情報交換をしてきた団体である。したがって,本件事故の発生までの間にも,消火器の破裂事故の実態を把握しており又は容易に把握できる状態にあった。 少なくとも,昭和43年以降は消火器の破裂事故が継続的に発生していることが確認されていることからすると,昭和60年5月3 0日頃の時点では,消火器の破裂によって死亡事故を含む人身事故が継続的に発生していた事実を認識していたことは明白である。 したがって,被告社団法人には,遅くとも同日の時点では,被告社団法人の会員であるメーカーが製造した消火器の破裂 って死亡事故を含む人身事故が継続的に発生していた事実を認識していたことは明白である。 したがって,被告社団法人には,遅くとも同日の時点では,被告社団法人の会員であるメーカーが製造した消火器の破裂によって人身事故が発生する危険性を予見することが可能性であった。 (被告社団法人の主張)屋外に放置された加圧式消火器によって,死傷者が発生した事故数は,昭和53年から本件事故が発生した平成21年9月までの約30年間で13件(平成元年時点では4件)であり,さらに,本件事故のように,「いたずら」によって発生した事故は,約30年間で 5件であり,消火器の破裂事故が継続的に発生していたとはいえない。 また,被告社団法人は,全ての事故の存在や具体的な内容等を知ることができる立場にはなかったのであるから,被告社団法人には,結果発生の具体的な予見可能性があったということはできない。 (4) 争点④(被告社団法人に,(ア) 本件消火器の製造時点において,-29-消火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をすべき義務,(イ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(ウ) 本件事故が発生する までの時点において,耐用年数が経過した消火器を確実に回収する制度を構築すべき義務があったか否か,また,被告社団法人がこれらの義務を怠ったか否か)について(原告の主張)ア被告社団法人は,我が国唯一の消火器メーカーの団体であり, 被告社団法人には,被告会社を含む国内の主な消火器メーカーの全てが加入しており,その事業内容には,「消火器類及びその使 の主張)ア被告社団法人は,我が国唯一の消火器メーカーの団体であり, 被告社団法人には,被告会社を含む国内の主な消火器メーカーの全てが加入しており,その事業内容には,「消火器類及びその使用維持の方法の宣伝普及」が含まれている。また,被告社団法人は,会員である各メーカーを代表する者が理事,監事として名を連ねており,事実上,会員である各メーカーが,被告社団法人の決定 に従わないことは想定し難く,消火器の破裂事故に対する安全対策も,被告社団法人が決定した対策を各メーカーが実行するといった構図が常態化していた。各メーカーは,消火器の事故防止策について,被告社団法人の判断に依存しており,現に,本件消火器が製造された当時,被告社団法人の会員である各メーカーの製 造する消火器には,被告社団法人が作成した統一的な警告表示ラベル(甲18)が貼付されていた。 イ被告社団法人の負うべき結果回避義務の内容(ア) ラベル表記義務消火器の破裂事故防止における被告社団法人の役割の重要 性に鑑みると,被告社団法人には,各消火器メーカーに対し,-30-消火器の使用者等が容易に認識できる場所に,本件原告主張表示と同様の事項が記載された相当の大きさのラベルを貼付させることによって,消火器の使用者等に対し,その取扱いにつき十分な注意喚起をするべき義務があった(以下,この義務を「ラベル表記義務」という。)。 (イ) 周知徹底義務老朽化した消火器は,人の生命又は身体に甚大な損傷を与える危険性を有しているにもかかわらず,消火器の使用者は,火災が発生した際にしか,消火器本体に貼付してある警告表示ラベルを目にする機会はない。 したがって,消火器の破裂による人身事故の発生を未然に防ぐためには,消火器に警 ず,消火器の使用者は,火災が発生した際にしか,消火器本体に貼付してある警告表示ラベルを目にする機会はない。 したがって,消火器の破裂による人身事故の発生を未然に防ぐためには,消火器に警告表示ラベルを貼付するだけでは不十分であり,被告社団法人には,本件事故が発生するまでの時点で,消火器の維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務があった(以下, この義務を「周知徹底義務」という。)。被告社団法人は,消火器類及びその使用維持の方法の宣伝及び普及を事業内容としているところ,消火器一般について,「使用維持方法」を広く「宣伝普及」させるためには,一メーカーが行うよりも,被告社団法人として行った方が効果的である。 (ウ) 回収システム構築義務消火器(特に加圧式消火器)の高い危険性に鑑みると,消火器の管理者や使用者(以下「使用者等」という。)に対して自主的な注意を促すだけでなく,耐用年数が到来した老朽化した消火器を回収するシステムが存在しなければ,根本的な破裂事故 の防止にはならない。消火器には耐用年数が定められており,-31-本件消火器に貼付されたラベルにも,極めて小さいながらも耐用年数が記載されていた。しかしながら,このような記載のみでは,使用者等が消火器の耐用年数を意識し,耐用年数が過ぎたものについては自主的に処分するということを期待することはできない。 そして,このような老朽化した消火器の回収は,多大な費用を要する上,業界全体として行わなければその実効性に乏しいから,被告社団法人が取り組むべき事柄である。 したがって,被告社団法人には,本件事故発生時点において,耐用年数が到来した消火器については確実に回収するシステ ムを構築する義務があ に乏しいから,被告社団法人が取り組むべき事柄である。 したがって,被告社団法人には,本件事故発生時点において,耐用年数が到来した消火器については確実に回収するシステ ムを構築する義務があったということができる(以下,この義務を「回収システム構築義務」という。)。 ウ被告社団法人の結果回避義務違反(ア) ラベル表記義務違反被告社団法人は,本件消火器が製造された当時,各メーカー に対し,被告社団法人が定めた「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」との記載があるラベルを消火器に貼付させていた。しかしながら,このような記載内容では,消火器を使用 する者が,具体的にどのような危険が発生するのかを想起することはできない。 したがって,被告社団法人は,ラベルの表記によって,消火器の使用者に十分な注意喚起をすべき義務を怠っていたということができる。 (イ) 周知徹底義務違反-32-本件消火器の製造時においても,本件事故発生当時においても,本件原告主張表示の内容が消火器の使用者等に浸透していたとは到底いえない状況であった。本件事故発生時点においては,インターネットサイト上である程度の注意喚起は行われていたものの,インターネットサイトは,閲覧しようと思った者 の目にしか触れないのであるから,注意喚起の程度としては極めて不十分である。また,被告社団法人は,少なくとも本件事故が発生するまでの間,販売店等に対する注意書きは作成していたものの,一般消費者に対し,各種のメディアを通じた広報活動等によって,老朽化した消火器の危険性を周知徹底するこ とを怠っていた。 故が発生するまでの間,販売店等に対する注意書きは作成していたものの,一般消費者に対し,各種のメディアを通じた広報活動等によって,老朽化した消火器の危険性を周知徹底するこ とを怠っていた。 (ウ) 回収システム構築義務違反本件事故が発生した当時,耐用年数が到来した消火器を確実に回収する制度は存在しなかった。本件事故の発生後になって,被告社団法人は,消火器のリサイクルシステムを構築し,老朽 化消火器は確実に回収されるようになったが,本件事故発生前にこのようなシステムを構築できなかった合理的な根拠はなく,被告社団法人は,上記システムの構築を怠っていたといわざるを得ない。 (被告社団法人の主張) ア被告社団法人は,原告が主張するような作為義務を負っていない。仮に,そのような義務を負っていたとしても,消火器の取扱いや管理方法等を周知していたのであるから,結果回避義務違反はない。 被告社団法人は,消火器メーカーのほとんどが加盟している社 団法人であるが,その役割は,消防庁からの通達等に基づいて,-33-会員である消火器メーカーが行うべき最低限度の統一的基準を設定することや,消火器に関する研究会を設置し,研究を行うことにある。また,被告社団法人は,会員の総意をもって活動方法を決めていることから,各消火器メーカーに対し,消火器の製造や営業方針等を直接的に指導する立場にはない。例えば,警告表 示ラベルについては,消防庁等の指示を受けて,消火器メーカーの取りまとめ役として対応し,各消火器メーカーに対する最低限度の指針を示したにすぎない。 企業に対する不法行為責任は,報償責任の観点から課されるものであるが,被告社団法人は一般社団法人であり,利益を追求す るものではなく,消防庁や各メ 対する最低限度の指針を示したにすぎない。 企業に対する不法行為責任は,報償責任の観点から課されるものであるが,被告社団法人は一般社団法人であり,利益を追求す るものではなく,消防庁や各メーカーの取りまとめ役をしているにすぎないのであるから,法的責任を負う主体とはならない。 イラベル表記義務違反について(ア) 「使用時の安全な取扱に関する記載」について原告は,「使用時の安全な取扱に関する事項」として,「耐用 年数経過前であっても,本体容器の底部その他に腐食が生じ又は腐食が生じている可能性がある消火器は,使用者の生命に危険を及ぼす可能性のある破裂事故の危険があるため絶対に使用しないこと」との表示(本件原告主張表示(ア))をすべき旨主張するが,このような原告の主張は,「消火器が風雨に晒されや すい場所に長期間設置されるものである」ことを前提としたものである。しかしながら,このような場所は,通常想定される消火器の設置場所ではないのであるから,そのような不適切な場所に設置されることを前提とした内容を一般的な注意事項として記載するのは不適当である。 また,本件消火器に貼付されたラベルにおいても,「維持管-34-理についてのご注意」の中で,「高温多湿のところは避けて設置してください。屋外,ちゅう房や腐食性ガスが,発生するところでは,格納箱に収納するなど保護処置をしてください。」との記載がされており,設置場所や保管方法について注意喚起をしている。さらに,被告社団法人が定めた「使用上のご注意」の ラベルには,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください」という記載が ラベルには,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください」という記載があり,その内容は,原告が指摘する内容と同趣旨のものである。 (イ) 「点検に関する記載」について原告は,「点検に関する事項」として,「加圧式粉末消火器については,耐用年数経過前にも,製造から一定期間経過後(例えば3年経過後)は,関係者は点検をしなければならず,耐用年数経過後は,水圧試験などによる点検を実施し,これら点検 を完了していない消火器は破裂の危険性があるから使用してはならないこと」との表示(本件原告主張表示(イ))をすべきであった旨主張する。 しかし,本件消火器に貼付されたラベルにも,「維持管理についてのご注意」において,「定期的に点検をしてください。お おむね5年を経過すると性能,機能が低下することがありますので,家庭など点検義務のないところでも5年を目安に点検してください。」との記載があり,耐用年数経過前であっても点検を行うよう促している(なお,点検を義務とするのは法令の問題であることから,被告社団法人が対応できることではない)。 また,そもそも,耐用年数を経過した消火器一般に破裂の危-35-険性があるわけではないから,誤った事実を記載することはできない。 さらに,本件消火器のラベル表示においても,5年を目安に点検をすることを促していることから,通常の感覚を持つ一般人であれば,耐用年数を経過した消火器があれば,点検したり 廃棄したりしなければならないと考えて,「点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問いあわせください。」との記載に従って,販売店又はメーカーに連 を経過した消火器があれば,点検したり 廃棄したりしなければならないと考えて,「点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問いあわせください。」との記載に従って,販売店又はメーカーに連絡するのが通常である。 したがって,本件消火器のラベルの記載に不備があるとはい えない。 (ウ) 「廃棄時の安全な取扱いに関する記載」について原告は,「廃棄時の安全な取扱に関する事項」として,「耐用年数を明示し,耐用年数経過後,水圧試験などによる点検を実施していない消火器は,破裂事故の危険性があるため,関係者 が直ちにリサイクルのための連絡先へ連絡して専門の廃棄業者に処分を依頼すること及びその連絡先」との表示(本件原告主張表示(ウ))をすべきである旨主張する。 しかし,本件消火器のラベルにも,「容器の耐用年数は,設置場所や管理の仕方によって異なります。正しい維持管理が行 われた場合に,おおむね耐用8年です。」との記載があり,耐用年数の記載がある。また,耐用年数経過後の措置については,「点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問いあわせください。」という記載があるところ,当時は消火器のリサイクルの制度がなかったことから,その連絡先を記載するこ とはできないものの,一般人の通常の感覚があれば,当該表記-36-を見て,販売店やメーカーへ連絡するのが通常であり,廃棄に関する記載にも不備はない。 (エ) そもそも,消火器には,規格省令38条において,消火器上に相当な量の表示が求められている中,さらに,原告が主張するような記載をした場合には,文字数が多すぎて,消火器本体 にラベルを貼り付けることができないか,あるいは文字が小さくなり,ラベルを読むことが困難になり,かえって問題がある さらに,原告が主張するような記載をした場合には,文字数が多すぎて,消火器本体 にラベルを貼り付けることができないか,あるいは文字が小さくなり,ラベルを読むことが困難になり,かえって問題がある。 そして,ラベルの内容,形及び大きさなどについては,各消火器メーカーが独自に決めることであり,被告社団法人が責任を負うべき事項ではない。 (オ) 以上のとおりであるから,被告社団法人が各消火器メーカーに対して推奨していたラベル表記の内容は,消火器のユーザーに対し,その取扱い等につき十分な注意喚起をするものであったということができる。 ウ周知徹底義務違反について 被告社団法人は,各消火器メーカーを通じて,消火器販売先に,消防設備協会を通じて,全国の保守・点検業者に,それぞれパンフレット等を配布していた。また,被告社団法人は,消防本部を通じて,全国の消防署にパンフレット等を配布していた。このような方法によって,相当数の消火器の使用者等に,消火器の危険 性及びその取扱い・管理方法を周知させることが可能である。特に,消防署や,販売代理店は,自治会に回覧版という形で,消火器の取扱い方法等を周知していた。 さらに,消防庁等によって執り行われる年2回の全国火災予防運動の際には,被告社団法人がパンフレットを配るなどして,一 般市民に対し,消火器の取扱い等について啓蒙活動をしていた。 -37-加えて,平成13年には,秋の全国火災予防運動において,廃消火器の一斉回収をする取組みを行い,相当数の消火器を回収している。 他方,原告は,テレビや新聞などによる広報をするべきであった旨主張するが,テレビや新聞などで広報をするには多額の費用 がかかる一方で,それほど効果があるわけではないし,そもそも,被告社 る。 他方,原告は,テレビや新聞などによる広報をするべきであった旨主張するが,テレビや新聞などで広報をするには多額の費用 がかかる一方で,それほど効果があるわけではないし,そもそも,被告社団法人の予算では対応できない。 以上のとおり,被告社団法人が,消火器による事故が起こらないよう周知徹底していたことは明らかである。 エ回収システム構築義務違反について 耐用年数が到来した消火器であっても点検を受ければ安全に使用することが可能であり,消火器を回収しなければならないということはない。また,消火器の回収自体は,使用者等が消火器の回収を依頼しさえすれば可能であった。 被告社団法人には,老朽化消火器を確実に回収するシステムを 構築するべき義務があるわけではないし,当該義務に違反したわけでもない。 (5) 争点⑤(被告会社は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か)について (原告の主張)ア加圧式消火器は,その構造上,本体容器の底部等が錆により腐食している場合等には,レバーの操作に伴って急激に本体容器内の圧力が上昇した際に破裂して,これを使用する者の生命又は身体に重大な被害を及ぼす危険性がある。 消火器の本体容器はスチール製であるから,表面に塗装が施さ-38-れているとはいえ,経年劣化や腐食が進むことは避け難い。また,消火器は屋外に設置されることもあり,その場合には,消火器は風雨にさらされることになるから,スチール製の本体容器が腐食又は損傷する可能性は,より高まる。 被告会社は,我が国内で相当程度のシェアを誇る消火器メーカ ーであるから,上記のような消火器の潜在的危険性,ひいては,自社 から,スチール製の本体容器が腐食又は損傷する可能性は,より高まる。 被告会社は,我が国内で相当程度のシェアを誇る消火器メーカ ーであるから,上記のような消火器の潜在的危険性,ひいては,自社の製造する消火器によって人身損害事故が発生しうることについては,明確に認識していた。 イまた,少なくとも昭和43年以降,消火器の破裂事故が継続的に発生しており,被告会社が本件消火器を製造した平成元年まで の時点においてさえも,消火器の破裂による死亡事故は11件,負傷事故は49件にのぼっていた。 被告会社は,消火器メーカーとして,消火器の破裂事故等について把握し,その調査検討をしていたことは明らかであるし,消火器の破裂による人身事故が発生した場合は,消防庁から事故防 止に努めるよう指導がされてきたものと考えられる。 したがって,被告会社は,遅くとも昭和60年5月30日の時点では,自社の製造した消火器の破裂による人身事故が発生することを予見することが可能であった。 (被告会社の主張) ア過失の要件として,予見可能性があったといえるためには,行為者が結果発生の具体的な危険を予見することが可能であったことが必要である。しかしながら,原告が主張する予見可能性の対象となる結果発生は,「自社が製造した消火器の破裂によって人身事故が発生すること」という抽象的なものにすぎず,そのよ うに抽象的な結果発生を予見できたからといって,過失の要件と-39-しての予見可能性があったということはできない。 本件において問われるべきは,本件消火器の製造時及び本件事故の発生時において,被告会社において,自動車用消火器が屋外に,耐用年数を超えて放置され,有事の際以外の場合に使用されて破裂し,これによって人身事故が生じるという きは,本件消火器の製造時及び本件事故の発生時において,被告会社において,自動車用消火器が屋外に,耐用年数を超えて放置され,有事の際以外の場合に使用されて破裂し,これによって人身事故が生じるという危険性について 予見可能であったか否かである。 イしかしながら,次のとおり,被告会社にそのような予見可能性はなかった。 (ア) 道路運送車両の保安基準第47条によれば,消火器の設置義務のある車両は限定されており,自動車用消火器は,かかる車 両に設置することを念頭において製造,販売されるものである。 したがって,自動車用消火器の流通先はほとんどが車両のメーカーであり,一般的には,量販店やホームセンターでは,自動車用消火器は販売されていない。また,自動車用消火器の回収についても,設置された車両が廃車となる場合に,廃車業者に おいて回収されることが通常である。自動車用消火器は,いわば設置義務のある車両に従たる物として,その流通や処分は車両の処分に付随するのが通常であるから,自動車用消火器が屋外に放置されることはほとんどあり得ず,そのようなことを被告会社が予見することはできない。 (イ) 本件消火器の耐用年数は8年であったところ,本件消火器は,本件事故当時,製造から約20年が経過していた。少なくとも,耐用年数の経過した消火器は危険であるとの認識は,通常の一般人であれば了解可能な事実であるところ,耐用年数を10年以上経過して消火器を放置するということ自体,極めて 特異な事象であるし,車両の耐用年数を超えて消火器のみが長-40-期間放置されるというのも極めて特異な事象であるから,消火器メーカーとしてはそのような事象についての予見可能性はない。 (ウ) 消火器は,火事等,有事の際に使用されるものであると が長-40-期間放置されるというのも極めて特異な事象であるから,消火器メーカーとしてはそのような事象についての予見可能性はない。 (ウ) 消火器は,火事等,有事の際に使用されるものであるところ,被告会社は,それ以外の場面で使用されることを予見すること はできない。 ウ上記(ア)~(ウ)の各事象は,それぞれが特異な事象であり,これらの事情が単独で生じること自体,そもそも予見不可能である上,これらの事象が複合することは,なおさら予見不可能である。 (6) 争点⑥(被告会社に,(ア) 本件消火器の製造時において,製造 する消火器を,加圧式消火器からより安全性の高い蓄圧式消火器に切り替えるべき義務,(イ) 本件消火器の製造時点において,消火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をすべき義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及び その維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(エ) 本件事故が発生するまでの時点で,耐用年数が経過した消火器を回収すべき義務があったか否か,また,被告会社がこれらの義務を怠ったか否か)について(原告の主張) ア蓄圧式消火器に切り替える義務の違反被告会社は,本件消火器の製造時において,加圧式消火器に比べてより安全な蓄圧式消火器を生産することが技術的に可能であったのであるから,加圧式消火器から蓄圧式消火器に切り替えて生産するべき義務(以下「蓄圧式消火器に切り替える義務」と いう。)があったにもかかわらず,製造コストの負担を重視して,-41-これを怠った。 イラベル表記義務違反加圧式消火器の危険性や使 務(以下「蓄圧式消火器に切り替える義務」と いう。)があったにもかかわらず,製造コストの負担を重視して,-41-これを怠った。 イラベル表記義務違反加圧式消火器の危険性や使用方法の特徴に鑑みると,被告会社には,本件消火器の製造時において,本件原告主張表示について,消火器の使用者等が容易に認識できる場所に,相当な大きさで表 記することによって,消火器の使用者等に対し,その取扱いにつき十分な注意喚起をすべき義務(ラベル表記義務)があったにもかかわらず,これを怠った。被告会社は,本件消火器に注意喚起ラベルを貼付していたものの,同ラベルには,消火器の破裂事故の危険性については一切言及されておらず,その内容は不十分な ものであった。また,注意喚起ラベルは消火器の裏面に貼られており,注意事項ラベルと比較しても極端に小さく,レイアウトも工夫されておらず,印象が薄いものであった。 ウ周知徹底義務違反老朽化した消火器が,人の生命又は身体に甚大な損傷を与える 危険性を有しているにもかかわらず,消火器の使用者等は,火災が発生した際にしか使用しないため,消火器本体に貼付してある注意喚起ラベルを目にする機会はほとんどない。 したがって,消火器の破裂による人身事故の発生を未然に防ぐためには,消火器の本体容器に注意喚起ラベルを貼付するだけで は不十分であり,被告会社においては,本件事故が発生するまでの時点で,消火器の維持・管理・取扱方法につき,消火器の使用者等に対する直接の通知や各種メディアを通じた広報により周知徹底すべき義務(周知徹底義務)があった。 しかるに,被告会社は,自社の製造する消火器に注意喚起ラベ ルを貼付する以外には,消火器の維持・管理・取扱方法を消火器-42-の使用者等に 周知徹底すべき義務(周知徹底義務)があった。 しかるに,被告会社は,自社の製造する消火器に注意喚起ラベ ルを貼付する以外には,消火器の維持・管理・取扱方法を消火器-42-の使用者等に対して周知徹底することを怠っていた。 エ回収義務違反被告会社には,本件事故が発生する時点までの間に,老朽化した消火器による事故を未然に防止するために,耐用年数を経過した破裂する危険性のある消火器を回収するべき義務(以下「回収 義務」という。)があったにもかかわらず,そのための努力を怠っていた。被告会社は,平成13年以前は,老朽化した消火器の無償回収を行っていたものの,同年以降は無償回収を行っていない。 (被告会社の主張)ア自社製品から人身事故が発生するという結果を回避するにあた り,消火器メーカーである被告会社が行うことが可能であったのは,適切に使用・管理される限りにおいて事故を引き起こすことのない安全な製品を製造すること,及び使用者等が適切に製品を使用・管理できるように適切な情報を伝達することに尽きる。 イ安全な製品を製造する義務について 消火器メーカーは,規格省令に適合し,検定に合格した消火器しか製造・販売することができないところ,同省令に適合する消火器は,一定の安全性を有しているということができる。 本件消火器が,本件規格省令に適合した消火器であったこと自体は争いがなく,被告会社は,安全な製品を製造する義務を果た していたといえる。 ウ適切な情報を伝達する義務について(ア) 製品について,適切な使用や管理を行うのは,現に製品を管理又は使用する者(販売店及び使用者等)の責任であるのが基本であるが,メーカーとしても,一般的には,使用者等が適切 に使用・管理できる 製品について,適切な使用や管理を行うのは,現に製品を管理又は使用する者(販売店及び使用者等)の責任であるのが基本であるが,メーカーとしても,一般的には,使用者等が適切 に使用・管理できるよう適切な情報を伝達する義務がある。そ-43-して,合理的・平均的な判断能力を有する一般的な使用者等であれば,メーカーの伝達した内容にしたがって適切な使用・管理を行うことができるという場合には,メーカーに情報伝達義務違反はないというべきである。 (イ) ラベルによる注意喚起等 本件消火器には,注意喚起ラベルが貼付されていた。注意喚起ラベルの記載内容は,極めて端的かつ平易な表現によるものであり,重要な部分を強調するなどして,使用者等に見やすいような工夫がされており,合理的・平均的な判断能力を有する一般的な使用者等であれば,即座に内容を理解できるものであ った。 また,被告会社の製品には,消火器の本体容器に注意喚起ラベルが貼付されているほか,取扱説明書も添付されている。本件消火器についても,取扱説明書において,消火器の使用・管理に当たって注意すべき事項が記載されていた。 (ウ) 使用者等に対する間接的な情報伝達a 消火器の使用者等は,メーカーから消火器を直接購入することはなく,販売店から購入したり,自治体・地域の斡旋により取得したりすることが多い。そこで,被告会社は,使用者等と直接接触する販売店や消防団に情報提供を行い,これ らを介して,使用者等が適切な情報に触れる機会を拡充してきた。 b 消防設備士には,法定の講習受講義務が課されているところ,被告会社の従業員は同講習に被告社団法人から派遣されて講師として参加するなどしていた。なお,一般家庭には, 消防設備 b 消防設備士には,法定の講習受講義務が課されているところ,被告会社の従業員は同講習に被告社団法人から派遣されて講師として参加するなどしていた。なお,一般家庭には, 消防設備士による消火器の点検を受けなければならない法-44-定の義務はないが,町内会等の要請により,消防設備士が一般家庭の消火器の点検を行う機会はある。 (エ) 以上のとおり,被告会社は,消火器の使用者等に対し,適切な情報伝達を行っていたということができる。 エ消火器を回収すべき義務について 被告会社は,平成12年7月頃には,全国の防災販売店を対象に,廃棄消火器を「不用消火器」として回収に取り組んでおり,また,平成18年9月には,環境省が定める廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)の「広域認定制度」の認可を得て,消火器の不法投棄をなくすために,消火器の リサイクルシステムを構築し,全国的に廃消火器の回収作業に取り組んでおり,メーカーとしての責務を果たしている。 オ以上によると,被告会社は,結果回避のためにメーカーとしての責任を果たしており,被告会社には結果回避義務違反はない。 (7) 争点⑦(被告国の行為と原告の被った損害との間の因果関係の 有無)について(原告の主張)ア自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して,点検義務のある防火対象物以外の施設に設置する消火器を,加圧式消火器から蓄圧式消火器に切り替えていれば,本件事故は発生し なかった。 イ自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正し,加圧式消火器について,本件原告主張表示のうち,住宅用消火器ではない旨及び点検報告制度の対象となる防火対象物にしか設置してはならないこと イ自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正し,加圧式消火器について,本件原告主張表示のうち,住宅用消火器ではない旨及び点検報告制度の対象となる防火対象物にしか設置してはならないことを表示することを義務付けていれば,本件消火 器が,点検報告制度の対象とならない防火対象物である本件駐車-45-場の隅に放置されることはなかった。 さらに,自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正し,本件原告主張表示のうち,使用時の安全な取扱いに関する事項,点検に関する事項及び廃棄時の安全な取扱いに関する事項を表示させていれば,本件消火器の管理者であったFや本件駐車場 の所有者等が,加圧式消火器に破裂する危険性があることを認識することができ,本件消火器が適正に廃棄処理されることになったと考えられるので,本件事故を回避することが可能であった。 ウ以上によると,自治大臣が本件規格省令を改正しなかったことと本件事故の発生との間には,相当因果関係がある。 (被告国の主張)ア規格省令は,防火対象物以外の施設等の管理者に対して,加圧式消火器の設置を禁止するものではないから,加圧式消火器を設置するか否かは,あくまでも当該管理者の判断に委ねられるものであり,被告国が原告の主張する規制権限を行使したからといっ て,必ずしも,防火対象物以外の施設等の管理者が加圧式消火器を設置しなくなるという効果が確実性をもってもたらされるわけではない。 また,本件消火器は,当初,本来の用途である自動車用消火器として使用する目的で購入されたものであったものの,その後, 本来の用途から外れて本件駐車場に置かれるようになり,Fが本件駐車場の管理を引き継いだ後も,そのまま放置されていたのであるから,仮に原告の主張する規制権 入されたものであったものの,その後, 本来の用途から外れて本件駐車場に置かれるようになり,Fが本件駐車場の管理を引き継いだ後も,そのまま放置されていたのであるから,仮に原告の主張する規制権限が行使されたとしても,このような事態を未然に防ぐことは困難であった。 さらに,本件消火器には,「維持管理についてのご注意」として, 高温,多湿の所は避けて設置し,屋外では格納箱に収納するなど-46-保護処置をすること等が記載されていたにもかかわらず,本件消火器の管理者は,上記記載に従わず,漫然と本件消火器を本件駐車場に放置したものと認められるから,仮に,本件消火器に原告の主張するとおりの表示がされていたとしても,本件消火器が本件駐車場に放置される事態になることを防ぐことはできなかった というべきである。 イまた,仮に,消火器の製造・販売段階における規制権限が行使されたとしても,消防法上の義務を何ら負わないFにおいて,本件駐車場に放置された本件消火器を適切に廃棄することを期待することはできない。 Fは,本件駐車場の管理を開始した当時,同所に本件消火器が放置されていることを認識していたものの,本件消火器に貼付されたラベルを確認することはなかったのであるから,仮に,本件消火器に本件原告主張表示がされていたとしても,Fにおいて,本件消火器を適切に廃棄することを期待することもできない。 ウ本件消火器は,自動車用消火器として製造,販売されたものであり,駐車場において保管されることは通常予定されていなかった上,本件消火器には,高温,多湿の所は避けて設置し,屋外では格納箱に収納するなど保護処置をすること等が記載されていたにもかかわらず,本件消火器の管理者(D及びF)は,本件消 火器を処分する た上,本件消火器には,高温,多湿の所は避けて設置し,屋外では格納箱に収納するなど保護処置をすること等が記載されていたにもかかわらず,本件消火器の管理者(D及びF)は,本件消 火器を処分することなく,漫然と本件駐車場に放置したものであり,このような特殊な経緯が本件事故発生の素地になったものである。 そして,本件消火器には,上記のほか,点検義務がないところでも5年を目安に点検すべきことや,その耐用年数がおおむね8 年であることも記載されていたにもかかわらず,Fは,本件消火-47-器を,約19年間にわたって漫然と本件駐車場に放置していたのであるから,本件事故の発生は,Fの過失によって発生したものである。 さらに,原告においても,殊更,本件駐車場に立ち入り,本件消火器のレバーを握るなどしてこれを破裂させたのであり,本件 事故発生の直接の原因を与えたのは原告である。 エ以上によると,仮に原告の主張する規制権限が行使されていたとしても,本件事故の発生を未然に防ぐことができたということはできず,本件事故は,F及び原告の過失によって発生したものである。 したがって,原告の主張する自治大臣の規制権限の不行使と,原告の被った損害との間に,相当因果関係がないことは明らかである。 (8) 争点⑧(被告社団法人の行為と原告の被った損害との間の因果関係の有無)について (原告の主張)被告社団法人が,ラベル表記義務,周知徹底義務及び回収制度構築義務を履践していれば,本件消火器は適切に管理又は廃棄処分され,原告が本件消火器の破裂事故に巻き込まれることはなかった。 したがって,被告社団法人の上記義務違反と原告の被った損害と の間には,相当因果関係がある。 (被告社団法人の主張)本件事故は, 原告が本件消火器の破裂事故に巻き込まれることはなかった。 したがって,被告社団法人の上記義務違反と原告の被った損害と の間には,相当因果関係がある。 (被告社団法人の主張)本件事故は,平成元年にFの兄であるDが経営していた会社が,自動車用消火器である本件消火器を,平成2年に本件駐車場の隅に置き,その後,本件駐車場を管理することになったFが,これをそ のまま約19年間に渡って放置していたところ,原告が無断で本件-48-駐車場に立入り,消火の必要性がないにもかかわらず,本件消火器のレバーを握って操作したという経過で発生したものである。 このように,本件事故の発生経過には,一般人が全く想定できないような事情が介在している上,本件消火器は,処分方法が分からないために放置されていたわけではないから,たとえ回収制度が構 築されていたとしても,これによって回収されたとはいえない。したがって,仮に,被告社団法人に結果回避義務違反があったとしても,当該義務違反と原告の被った損害との間には相当因果関係がない。 (9) 争点⑨(被告会社の行為と原告の被った損害との間の因果関係 の有無)について(原告の主張)被告会社が,製造する消火器を加圧式消火器から蓄圧式消火器に切り替える義務,ラベル表記義務,周知徹底義務,老朽化した消火器の回収義務を履践していれば,本件消火器が適切に管理又は廃棄 処理され,原告が本件事故に巻き込まれることはなかった。 したがって,被告会社の上記各義務違反と原告の被った損害との間には,相当因果関係がある。 (被告会社の主張)本件事故の発生については,自動車用消火器である本件消火器が, 本来予定されている設置場所とは異なる場所に設置された点,通常の耐用年数をはるかに超える長 果関係がある。 (被告会社の主張)本件事故の発生については,自動車用消火器である本件消火器が, 本来予定されている設置場所とは異なる場所に設置された点,通常の耐用年数をはるかに超える長期間にわたって放置された点,通常使用されることが予定されている場面とは異なる場面で使用された点において,被告会社には予見不可能な事情が介在している。 したがって,仮に,被告会社に結果回避義務違反があったとして も,当該義務違反と原告の被った損害との間には相当因果関係がな-49-い。 (10) 争点⑩(原告の被った損害及びその額)について(原告の主張)ア積極損害(485万7433円)(ア) 治療費(合計81万4035円) a 入院治療費(78万0625円)(a) 原告は,本件事故により,下記の期間,下記の医療機関において入院・治療した。下記①及び③に係る治療費は合計53万9135円であり,下記②に係る治療費は17万4763円である。 ① 平成21年9月15日から平成22年1月12日まで(合計120日間)独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(以下「国立大阪医療センター」という。)② 平成22年1月12日から平成22年2月11日まで (合計30日間)大阪府立急性期・総合医療センター(以下「府立総合医療センター」という。)③ 平成22年3月1日から同月21日まで(合計21日間) 国立大阪医療センター(b) 原告は,国立大阪医療センターにおいて入院中,患部を保護するため,医師の指示により頭部保護帽を発注した。 その料金は3万7852円である。 (c) カルテの開示請求等の文書料金 2万8875円-50-b 通院治療費(3万3410円) の指示により頭部保護帽を発注した。 その料金は3万7852円である。 (c) カルテの開示請求等の文書料金 2万8875円-50-b 通院治療費(3万3410円)(a) 国立大阪医療センターへの通院治療費原告は,国立大阪医療センターを退院した後も,平成22年2月25日から平成24年4月26日までの間,国立大阪医療センターに通院した(実通院日数14日)。これ に係る治療費は合計1万0450円である。 (b) 原告は,本件事故によって頭部を骨折し,その後,NTT西日本大阪病院で顎関節症と診断され,顎調整治療のために,平成22年7月28日から平成23年3月1日までの間,通院した(実通院日数10日)。これに係る治療費は 合計2万2960円である。 (イ) 将来の治療費(250万円)原告は,本件事故によって頭蓋骨が大きく陥没する傷害を負い,現在,右側頭部は手術痕が残り,右目が左目と比較して,一見して明らかなほど凹んだ状態になっている。上記頭蓋骨の 陥没に対する治療は,原告の成長が止まった頃(脳の発達や頭蓋骨の成長が終わった頃)以降に行う必要があるところ,そのための費用としては,自費であれば約250万円程度が必要となる。 仮に,将来の治療費として損害が認められない場合であって も,この点については,後遺障害慰謝料の算定の際に考慮されるべきである。 (ウ) 付添看護料(合計111万円)a 入院付添費(102万6000円)原告が本件事故によって入院治療した日数は合計171 日であるところ,この間,原告が児童であったこと及び原告-51-の受傷箇所が脳の広範囲にわたるものであり,その容体は極めて危険な状態であり,一命をとりと って入院治療した日数は合計171 日であるところ,この間,原告が児童であったこと及び原告-51-の受傷箇所が脳の広範囲にわたるものであり,その容体は極めて危険な状態であり,一命をとりとめた後も意識障害が続き,完全に意識を取り戻した後も,原告には,危険行動のおそれや高次脳機能障害などの症状があったことから,原告の父母は,ほぼ毎日のように交替で付添いをしていた。 以上のような原告の年齢,症状の内容・程度からすると,原告の父母による付添いは必要であり,入院付添費用としては,1日当たり6000円として,102万6000円とするのが相当である。 (計算式) 6000円 × 171日 = 102万6000円b 通院付添費(8万4000円)原告は,平成24年6月7日の症状固定時までに,国立大阪医療センターに合計14日間,NTT西日本大阪病院に合計10日間,府立総合医療センターに合計4日間,それぞれ 通院した。 原告の父は,これらの通院に毎回付き添っているところ,通院付添費は1日当たり3000円として,8万4000円とするのが相当である。 (計算式) 3000円 × 28日 = 8万4000円(エ) 通院交通費(合計17万6898円)本件では,原告の年齢,症状の内容・程度からして,原告の父母の付添いの必要性があるから,原告自身の通院に要した交通費に加えて,原告の父母の付添い又は見舞いに要した交通費 相当額も原告が被った損害となる。 -52-a 国立大阪医療センターへの入通院交通費(13万7020円)(a) 入院付添交通費原告の父母は,合計141日間,国立大阪医療センターに自家用車で通院し,往復交通費を支払っている。原告の 自宅と同病院との間に への入通院交通費(13万7020円)(a) 入院付添交通費原告の父母は,合計141日間,国立大阪医療センターに自家用車で通院し,往復交通費を支払っている。原告の 自宅と同病院との間に要するガソリン代は,往復約84円(15円×5.6㎞)であるから,上記通院に要したガソリン代は1万1844円(84円×141日)となる。 また,上記通院に際しては,駐車場代として1日800円を支払っていることから,駐車場代は11万2800円 となる。 (b) 通院交通費原告は,同病院に合計14日間通院した。したがって,上記通院に要したガソリン代は1176円(84円×14日)となる。また,上記通院に際しては,駐車場代として 1日800円を支払っていることから,駐車場代は1万1200円となる。 c 府立総合医療センターへの入院交通費(3万5768円)(a) 入院付添交通費原告の父母は,合計30日間,府立総合医療センターに 自家用車で通院し,往復交通費を支払っている。原告の自宅と同病院との間に要するガソリン代は,往復約252円(15円×16.8㎞)であるから,上記通院に要したガソリン代は7560円(252円×30日)となる。 また,上記通院に際しては,駐車場代として1日800 円を支払っていることから,駐車場代は2万4000円と-53-なる。 (b) 通院交通費原告は,同病院に合計4日間通院した。したがって,上記通院に要したガソリン代は1008円(252円×4日)となる。また,上記通院に際しては,駐車場代として1日 800円を支払っていることから,駐車場代は3200円となる。 dNTT西日本大阪病院への通院交通費(4110円)原告は,NTT西日本大阪病院に10日間通 ,駐車場代として1日 800円を支払っていることから,駐車場代は3200円となる。 dNTT西日本大阪病院への通院交通費(4110円)原告は,NTT西日本大阪病院に10日間通院した。原告の自宅と同病院との間に要するガソリン代は,往復約111 円(15円×7.4㎞)であるから,上記通院に要したガソリン代は1110円(111円×10日)となる。また,上記通院に際しては,駐車場代として1日300円を支払っていることから,駐車場代は3000円となる。 (オ) 入院雑費(25万6500円) 原告の入院期間は171日間に及ぶところ,入院雑費は,1日当たり1500円が相当であるから,入院雑費は25万6500円が相当である。 (計算式)1500円×171日=25万6500円となる。 イ消極損害(後遺障害逸失利益 6238万6252円)(ア) 高次脳機能障害についてa 原告は,本件事故によって高次脳機能障害を負った。 原告には,本件事故により,およそ21日間,意識障害が生じていた。また,原告の脳の画像には,高次脳機能障害の 典型的な症状とされる,脳の局所の出血や脳浮腫が見られる-54-ほか,原告は,本件事故によって,脳挫傷,びまん性軸索損傷の傷害を負ったものと診断されている。さらに,原告は,高次脳機能障害の有無・程度を診断するため,WISC-Ⅲ,かなひろいテスト,WMS-R,PASAT,TMT,SDMT,田中ビネー知能検査Ⅴの各種検査を受けているところ, 原告には,注意力障害,記憶障害,言語性記憶障害,記銘力障害など様々な高次脳機能障害の所見が見られた。なお,原告は,平成28年12月に受けた最新の神経心理学的検査においても,高次脳機能障害であると診断さ は,注意力障害,記憶障害,言語性記憶障害,記銘力障害など様々な高次脳機能障害の所見が見られた。なお,原告は,平成28年12月に受けた最新の神経心理学的検査においても,高次脳機能障害であると診断されている。 b 原告の上記検査結果や,日常生活の状況等に鑑みると,原 告の意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続力,持久力,社会行動能力には様々な問題が生じており,特に,作業負荷に対する持続力,持久力や社会行動能力の障害は重篤である。原告の障害の程度に鑑みると,自賠責保険の後遺障害等級5級相当の後遺障害が生じているとみるのが相当 である。 (イ) 醜状障害について原告は,本件事故により,外傷性脳内血腫,頭蓋骨開放骨折等の傷害を負い,右目の眼球がずれ,目の位置が変形しており,右側頭部には手術痕が残り内側に陥没していて,右目も左目と 比較すると凹んでいる状態にある。したがって,原告は,「外貌に著しい醜状を残すもの」といえ,これは自賠責保険の後遺障害第7級に該当する。 (ウ) 原告の後遺障害による逸失利益の額原告は,本件事故当時10歳であった。そこで,基礎年収を 男性学歴計全年齢平均賃金相当額である554万7200円-55-として,逸失利益を算定すべきである。 したがって,原告の後遺障害逸失利益は,6238万6252円となる。 (計算式)554万7200円×14.236(ライプニッツ係数) ×0.79(5級の労働能力喪失率)=6238万6252円ウ慰謝料(1970万円)(ア) 入通院慰謝料(396万円)原告は,本件事故によって,加療約6か月を要する外傷性脳 内出血,頭蓋骨開放骨折等の傷害を負い,171日間入院し,28日間通院している。 原告の傷害 (ア) 入通院慰謝料(396万円)原告は,本件事故によって,加療約6か月を要する外傷性脳 内出血,頭蓋骨開放骨折等の傷害を負い,171日間入院し,28日間通院している。 原告の傷害の部位,程度等を考慮すると,入通院慰謝料としては,396万円とするのが相当である。 (イ) 後遺障害慰謝料(1574万円) 原告の後遺障害の程度に鑑みると,後遺障害慰謝料の額は1574万円が相当である。 エ弁護士費用弁護士費用は,上記ア~ウの合計額の約1割に当たる869万4368円とするのが相当である。 オ損害の填補原告は,平成27年6月10日,Fから,解決金として300万円を受領した。 カ損害の填補の後の合計額9263万8053円 (被告国の主張)-56-ア治療費原告主張の入院期間,入院した各医療機関,治療費等の支払額や,原告主張の通院期間,通院した各医療機関,治療費等の支払額については積極的には争わない。ただし,顎調整治療については,本件事故との関連については争う。 イ将来の治療費争う。 ウ付添看護料原告主張の入院期間,入院した各医療機関,その間,近親者が付き添う必要があったこと,入院付添費が日額6000円である こと,及び原告主張の通院期間,通院した各医療機関,その間,近親者が付き添う必要があったこと,通院付添費が日額3000円であることは積極的には争わない。ただし,NTT西日本大阪病院における顎調整治療については,本件事故との関連性を争う。 エ通院交通費 NTT西日本大阪病院における顎調整治療のために要する交通費及び駐車場代については,本件事故との関連性を争う。 オ入院雑費原告主張の入院期間及び入院雑費 性を争う。 エ通院交通費 NTT西日本大阪病院における顎調整治療のために要する交通費及び駐車場代については,本件事故との関連性を争う。 オ入院雑費原告主張の入院期間及び入院雑費が日額1500円であることは積極的には争わない。 カ後遺障害逸失利益(ア) 高次脳機能障害について原告には,意思疎通能力,問題解決能力,作業負荷に対する持続力・持久力,及び社会行動能力の低下はうかがわれない。 したがって,原告の症状は,「通常の労務に服することができる が,高次脳機能障害のため,軽微な障害を残すもの」(障害等級-57-14級の9)にすら該当しないというべきである。 (イ) 醜状障害について本件事故により原告の頭部に残った傷痕は,頭髪に隠れる部分であるため,そもそも外貌の醜状には該当しない。また,原告が主張するような,右目の眼球がずれ,目の位置が変形し, 右目が左目と比較すると凹んでいる状態であるとの事実も認められない。 (ウ) 以上によると,原告には後遺障害逸失利益は生じていない。 キ慰謝料争う。 ク弁護士費用争う。 (被告社団法人の主張)ア治療費争う。 イ将来の治療費否認する。原告本人及び家族の希望があれば治療をすることができるというだけであり,必ずしも治療をすることが必要なわけではない。 ウ付添看護料 否認する。原告の入院中,原告の父母が毎日付き添っていたという証拠はない。また,入院当初はともかく,症状が落ち着いてからは付添いの必要はない。また,通院については,原告は当時11~12歳であり,一人で通院することができるから,付添いの必要はない。 エ通院交通費-58-否認 ,症状が落ち着いてからは付添いの必要はない。また,通院については,原告は当時11~12歳であり,一人で通院することができるから,付添いの必要はない。 エ通院交通費-58-否認する。交通費に関する具体的な証拠も提出されていないし,全ての日に原告の両親の付添いがあったとの証拠もない。仮に,付添いの必要があったとしても,公共交通機関利用額の限度で認めるべきである。 オ入院雑費 否認する。171日間の入院の必要性を示す証拠がない。 カ後遺障害逸失利益争う。 (ア) 高次脳機能障害について原告の主張する症状の多くのものは,いずれも父親の愁訴で あり,客観的な事実が不明である。また,平成28年に実施された臨床心理・神経心理学的検査の結果は,原告の本来の能力を的確に表すものではなく,その内容に信用性がない。 (イ) 醜状障害について原告には特段の醜状障害はなく,原告の主張は愁訴にすぎな い。 キ慰謝料争う。 ク弁護士費用争う。 (被告会社の主張)ア治療費争う。 イ将来の治療費争う。将来の治療の必要性,相当性及び額等について,立証が 不十分である。 -59-ウ付添看護料争う。 エ通院交通費争う。近親者の付添看護費は,原則として,付添人に生じた交通費,雑費,その他付添看護に必要な諸経費を含むものであり, 特別の事情がない限り,これらの費用を別途損害として認めるべきでない。しかるに,原告は,上記特別の事情を具体的に主張・立証していないから,付添看護費とは別に通院交通費を認めることはできない。 オ入院雑費 争う。 カ後遺障害逸失利益争う。 (ア) 高次脳機能障害について原告の主張す ・立証していないから,付添看護費とは別に通院交通費を認めることはできない。 オ入院雑費 争う。 カ後遺障害逸失利益争う。 (ア) 高次脳機能障害について原告の主張する症状については,客観的な根拠が乏しい。ま た,臨床心理・神経心理学的検査は,受検者が真摯に取り組まなければ正確な結果が出ないところ,原告には,平成24年の検査よりも前に行われた検査について,真摯に取り組んでいなかった様子がうかがわれる。 また,仮に,原告が高次脳機能障害を負ったとしても,障害 等級が自賠責保険の後遺障害等級5級相当であるとは評価できない。 (イ) 醜状障害について原告の提出する写真(甲52)によっても,醜状障害は明らかでない。 キ慰謝料-60-争う。 ク弁護士費用争う。 (11) 争点⑪(過失相殺)について(被告社団法人の主張) 原告は,当時,事理を弁識するに足りる知能が備わっている小学4年生であるが,同級生の友人が本件消火器で遊ぶのを止めたにもかかわらず,私有地である本件駐車場に入り込み,外観上,底面が腐食していることが明らかな本件消火器を,消火の必要性もないにもかかわらず作動させたのであるから,原告に過失があることは明らかであり, 相当な過失相殺がされるべきである。 (被告会社の主張)本件事故の発生については,原告に過失があることは明らかであるから,過失相殺がされるべきである。 (原告の主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 前提事実と,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる(なお,書証番号は特に明記しない限り枝番号を含む。)。 (1) 消火器に関する法制度の整備及びこれに対する被告社団 提事実と,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる(なお,書証番号は特に明記しない限り枝番号を含む。)。 (1) 消火器に関する法制度の整備及びこれに対する被告社団法人の対応等ア消防庁は,昭和36年12月28日,「消火器の規格」及び「消火器用消火薬剤の規格」を告示した。これによって,消火器の本体容器の耐圧について,本体容器の構造,機構,材料等の区分に 応じた試験圧力値が定められ,また,各種消火器用消火剤の成分,-61-容器性状,標示等についても,詳細にわたって規定されることとなった。もっとも,この当時,消火器の設置義務がある防火対象物には,相当数の非適合消火器が設置されていたことから,その救済措置として,「消火器の設置及び維持基準についての消防庁予防課長通達」が発出され,この通達の基準に照らして検査を受 けて合格した消火器については,規格に適合するとみなされることとなった。 (当事者間に争いがない。)イ被告社団法人は,昭和39年3月,消防庁と連携し,上記の検査を積極的に促進するため,検査促進委員会を設置し,全国の消 防本部,都道府県消防主務課,消火器販売業者団体等に対し,検査促進についての広報活動を行い,検査テキストを作成するなどしたほか,消防庁からの指導に基づいて,上記の検査に合格した消火器に貼付する検査済証や表示,標識等の内容について検討するなどした。 (弁論の全趣旨)ウ昭和39年には,規格省令及び「消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令」が施行されたが,被告社団法人は,これらの制定を前提とした調査研究を行い,消防庁に意見を具申したほか,消火器の呼称,容量,消火能力単位について各部会で再検討し, その結果を要望書として消防庁と 施行されたが,被告社団法人は,これらの制定を前提とした調査研究を行い,消防庁に意見を具申したほか,消火器の呼称,容量,消火能力単位について各部会で再検討し, その結果を要望書として消防庁と日本消防検定協会に提出した。 (当事者間に争いがない。)エ被告社団法人は,昭和48年10月1日以降,消火器には耐用年数があり,定期的に点検検査を実施する必要あることを周知させるために,消火器に下記の表示のあるラベル(縦4cm,横8 cmのサイズ。以下,この表示を「昭和48年表示」という。)を-62-貼付することとし,併せて,その旨が記載されたパンフレット20万部を作成し,消火器メーカー,消防本部及び消防設備協会(以下,これら三者を併せて「消火器メーカー等」という。)を通じて一般に配布した。これを受けて,各消火器メーカーは,同年10月1日以降,消火器に昭和48年表示を貼付していた。 有効5年1.3か月に1回以上外観点検,1年に1回以上機能点検を実施して下さい。 2.5年経過したら精密検査を実施して下さい。異状がなければなお有効です。 社団法人日本消火器工業会(丙14,丁3,弁論の全趣旨)オ昭和49年,消防法が改正されて,複雑多様化する防火対象物の防火管理に対して適確に対処するため,点検報告制度が創設され(同法17条の3の3),消防法施行規則31条の4第1項及び 第4項の規定に基づき,消防用設備等の点検の期間と点検方法が告示され,さらに,点検要領を示した消防庁の通達が発出された。 (当事者間に争いがない。)カ被告社団法人は,昭和50年頃,昭和48年表示を改訂し,各消火器メーカーは,昭和50年4月から昭和59年頃までの間, 下記の記載のあるラベル(以下「昭和50年 者間に争いがない。)カ被告社団法人は,昭和50年頃,昭和48年表示を改訂し,各消火器メーカーは,昭和50年4月から昭和59年頃までの間, 下記の記載のあるラベル(以下「昭和50年表示」という。)を消火器に貼付していた。 有効5年1.消防法で定められた外観点検,機能点検を実施して下さい。 2.5年経過したら精密な検査を実施して下さい。異状がなけれ ばなお有効です。 -63-社団法人日本消火器工業会(丙9,14,丁10,弁論の全趣旨)キ消防庁は,昭和51年頃,昭和52年3月1日をもって,この当時の規格省令による規格に適合しない全ての消火器に対する型式承認の失効を告示した(以下,型式承認が失効した消火器を 「失効消火器」という。)。そのため,消火器の設置及び維持が義務付けられている防火対象物等に設置される消火器は規格省令に適合するものに交換しなければならなくなったが,同日の時点で,既存の防火対象物等に設置されている失効消火器については,一定の基準に適合していることを条件に,3~12年の特例期間 が認められた。 (当事者間に争いがない。)ク被告社団法人は,昭和52年頃から昭和53年頃にかけて,失効消火器の取扱いに関する事項が記載された「安全をバトンタッチ」と題するポスター1万3000枚及びパンフレット30万部 を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁4,5,弁論の全趣旨)(2) 昭和53年の消火器破裂事故の発生と被告国及び被告社団法人のその後の対応等ア昭和53年3月23日,富山市内で,廃棄されて野積みされて いた昭和44年製造に係る加圧式消火器で遊んでいた者が,消火器の操作レバーを握った際,底部の腐食により破裂し,同人が死亡 応等ア昭和53年3月23日,富山市内で,廃棄されて野積みされて いた昭和44年製造に係る加圧式消火器で遊んでいた者が,消火器の操作レバーを握った際,底部の腐食により破裂し,同人が死亡するという事故(以下「昭和53年事故」という。)が発生した。 なお,同年中には,その他に少なくとも3件の老朽化した消火器による事故が発生している。 (甲16)-64-イ消防庁は,昭和53年事故の発生を受けて,昭和54年1月24日,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器の廃棄処理の指導について」(昭和54年1月24日消防予第17号。以下「昭和54年通知」という。)を発出した。昭和54年通知は,昭和53年事故の原因について,廃棄された消火器の腐食が激しく加圧用ガ ス容器が取り除かれていないまま屋外に放置されたことによるものであるとした上で,失効消火器や点検の結果,腐食,損傷その他異常が認められ廃棄すべき消火器と判定されたものを屋外等へ放置することがないよう消火器の販売,点検,整備等を行う業者に特段の指導を行うことを要請した。 (乙1)ウ被告社団法人は,昭和54年から昭和56年にかけて,「消火器にも寿命があります」と題するポスター1万3000枚とパンフレットを毎年30万部作成し,消火器メーカー等に配布した。 また,被告社団法人は,昭和55年,失効消火器の交換の必要 性と,消火器についての定期的な点検の必要性を周知するために,「身近にある消火器には,日頃のチェックが必要です。」と題するパンフレット12万部及びポスター2万枚を作成し,消火器メーカー等に配布した。 (丁6,弁論の全趣旨) エ被告社団法人においては,昭和56年3月から同年6月までの間に,主に事故対策の関係で,次のような 万部及びポスター2万枚を作成し,消火器メーカー等に配布した。 (丁6,弁論の全趣旨) エ被告社団法人においては,昭和56年3月から同年6月までの間に,主に事故対策の関係で,次のような対応が行われた。 (ア) 同年3月25日に開催された技術委員会の会議では,「有効5年」との表記がある昭和50年表示を,耐用5年又は8年と改めるとともに,表示する内容の案(放置状況により耐用年数 に差異があること,消防法で定められた外観点検・機械点検を-65-実施すべきこと,5年を経過したものについては消防設備士による精密検査を受けるべきこと)が提案されるとともに,事故対策整備部会において,消火器の設置,取扱い,廃棄処理についての小冊子を作成することや,事故対策設計部会において事故例の分析・分類を実施することなどが決定された。 (丁34の1)(イ) 同年4月7日に開催された事故対策設計部会においては,昭和43年から昭和55年までに発生した消火器事故の事例を基に協議が行われたが,同会議では,事故件数30件中,人的被害があったもののうち,材質に問題があるものが5件,廃 棄処理に問題があるものが4件,点検整備に問題があるものが5件であり,設計上の問題は特になかったことから,消火器事故については各メーカーの問題であり,各メーカーが対策を立てているのであるから,被告社団法人において取り上げることは非常に困難であるとの認識が示された。 (丁34の3)(ウ) 昭和56年4月17日に開催された事故対策委員会においては,耐用年数ラベル及び注意事項等についての協議が行われ,消火器に貼付するラベルの案(上記(ア)の案に,圧力容器の廃棄処理については,被告社団法人で定めた要領に必ず従うことが 付け加えら ては,耐用年数ラベル及び注意事項等についての協議が行われ,消火器に貼付するラベルの案(上記(ア)の案に,圧力容器の廃棄処理については,被告社団法人で定めた要領に必ず従うことが 付け加えられたもの)を作成した。また,同年6月1日に開催された事故対策委員会では,消火器の廃棄マニュアルの作成を急ぐことや,新品消火器に同封する小冊子の検討が行われた。 (丁34の3・5)(エ) その他,事故対策整備部会においては,消火器の設置上の注 意,点検整備上の注意及び廃棄消火器処理上の注意についてま-66-とめたPRパンフレットの案を作成した。 (丁34の3)(オ) 被告社団法人の担当者は,同月15日,消火器事故対策をまとめた文書,消火器に貼付する予定である「耐用5年」と表記したラベル,耐用年数を徒過した消火器の使用を禁止する旨表 記したラベル,パンフレットの原稿,消火器廃棄マニュアルの原稿,加圧ガス排圧用器具の取扱説明書の原稿を持参して,消防庁の担当者に説明して意見を求めた。これに対して同担当者からは,消火器の耐用年数が5年というのは短すぎるのではないか,消費者への周知徹底の具体的方法を明らかにするべきで ある,消火器に起因する事故の原因を究明するべきであるなどとの意見が出された。 (丁28,丁34の5)(カ) 同月23日に開催された技術委員会の会議では,同月15日に行われた消防庁との打合せの結果が報告されるとともに, 消火器事故対策のための当面の実施事項として,既に市場に出回っている消火器については,耐用年数が5年であることを周知するパンフレットを作成すること,消火器廃棄マニュアルを発行すること,廃棄すべきと判定された消火器に貼付する「使用禁止ラベル」を作成すること,加圧用 消火器については,耐用年数が5年であることを周知するパンフレットを作成すること,消火器廃棄マニュアルを発行すること,廃棄すべきと判定された消火器に貼付する「使用禁止ラベル」を作成すること,加圧用ガス容器排圧器具の斡 旋を行うことが,今後製造される消火器については,耐用年数が5年であることを表示したラベルを貼付するとともに,耐用年数が5年であることを周知するパンフレットを併せて梱包することが確認された。また,事故対策については,今後とも消防庁との協議を重ねていくことも確認された。 (丁34の5)-67-(キ) 同月30日に開催された事故対策委員会においては,被告社団法人としては,当面,消火器に貼付するラベルには,引き続き「有効5年」の表記を継続するとともに,消費者への周知徹底方法として,被告社団法人がパンフレット,使用禁止ラベル,ポスター及びマニュアル等を作成することなどが検討され た。また,消火器事故の発生原因の究明については,今後,技術委員会が作成した記録を検討して,資料を作成することが確認された。 (丁28)オ被告社団法人は,昭和57年,消火器も経年劣化により品質・ 機能が低下すること,消火器の耐用年数は5年であること,消火器は圧力容器であり,経年劣化により錆や腐食が発生するなどして容器が破損して事故につながる危険性もあること,消火器を備え付ける際には,水や油に濡れるところは避け,風雨にさらされる屋外では格納箱に入れるべきであること,破損事故を回避する ためには定期的な点検が有効であり,点検が義務付けられている防火対象物以外の店舗や家庭においても,点検を実施すべきこと,失効消火器については廃棄する必要があることなどを記載した,「消火器は有効5年です」と題するパン 検が有効であり,点検が義務付けられている防火対象物以外の店舗や家庭においても,点検を実施すべきこと,失効消火器については廃棄する必要があることなどを記載した,「消火器は有効5年です」と題するパンフレット20万部を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁7,弁論の全趣旨)カ被告社団法人は,昭和57年11月10日,消防設備士や点検資格者を対象として,廃棄消火器の処理方法,設置に当たっての安全対策及び点検整備に当たっての安全対策等を記載した「専門業者のための消火器廃棄マニュアル」と題する小冊子1万部を作 成し,全国都道府県の消防設備保守協会や消防設備同業協会等に-68-配布した。 (丁8,丁34の6,弁論の全趣旨)キ被告社団法人は,昭和58年10月,消火器を長期間放置したままにしておくと錆や腐食等によって破損事故を招く危険性があること,破裂事故を回避するためには定期的な点検を励行すべ きことなどが記載された「消火器で築こう火災のない町自主防災」と題するパンフレット30万部を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁9,弁論の全趣旨)ク被告社団法人は,昭和59年12月13日,「消火器の耐用年数 についてのお願い」と題するPR文書(以下「昭和59年文書」という。)10万部を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 昭和59年文書には,① 消火器は工業製品である以上,経年劣化による寿命があり,また,消火器は圧力容器であるため,設 置状況や維持管理の悪い消火器あるいは平均寿命を超えて設置されている消火器は破裂事故を起こす危険があること,② 消火器は,火急の場合に完全に機能が発揮されなければならないため,厳格な国家検定に合格したものでな 管理の悪い消火器あるいは平均寿命を超えて設置されている消火器は破裂事故を起こす危険があること,② 消火器は,火急の場合に完全に機能が発揮されなければならないため,厳格な国家検定に合格したものでなければ販売できないこと,③消火器の容器の耐用年数はおおむね8年であるが,5年を経過し た場合には,性能・機能が低下することがあるので,専門業者に依頼して入念な点検等を実施すべきこと,④ 消火器の耐用年数を使用者等に周知徹底することは被告社団法人の責任であること,⑤ 消火器は錆,腐食,変形などが発生したら速やかに新しい消火器に更新する必要があり,少なくとも10年以内に新しい 消火器に更新するべきであること等が記載されている。 -69-(丁10,弁論の全趣旨)(3) 昭和60年の消火器破裂事故の発生と,これに対する被告らの対応等ア昭和60年に発生した消火器破裂事故の概要(ア) 昭和60年4月12日,北海道稚内市内の工場において,た き火を消すために昭和53年製造の加圧式消火器を操作した際,底部の腐食により消火器が破裂し,男性1名が死亡する事故(以下「昭和60年稚内事故」という。)が発生した。 (甲16,乙2)(イ) 昭和60年5月30日,新潟県新発田市内において,屋外に 廃棄されていた昭和49年製造の加圧式消火器を操作した際,底部の腐食により消火器が破裂し,1名が死亡する事故(以下,これと昭和60年稚内事故を併せて「昭和60年事故」という。)が発生した。なお,同年中には,上記以外にも少なくとも11件の老朽化した消火器による事故が発生している。 (甲16,乙2)イ被告国の対応(ア) 消防庁は,昭和60年事故の発生を受けて,同年5月31日,各都 も少なくとも11件の老朽化した消火器による事故が発生している。 (甲16,乙2)イ被告国の対応(ア) 消防庁は,昭和60年事故の発生を受けて,同年5月31日,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器による人身事故の防止について(通知)」(昭和60年5月31日消防予第72号。 以下「昭和60年通知」という。)を発出し,義務設置に係る消火器については,その点検等維持管理の徹底を図るとともに,一般家庭等にある消火器にあっても,適切な維持管理に努め,特に腐食が発生しているものについては,製造業者,販売業者等に相談することを指導するなどして,消火器の安全な使用に ついて,広報等を通じて周知徹底すること,及び消火器の廃棄-70-処理についての指導の徹底を図ることを要請した。 (乙2)(イ) 消防庁は,昭和61年2月27日,消火器に起因する人身事故の発生が散見されている現状に鑑み,事故の一層の防止を図るため,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器の点検等の推 進について(通知)」(昭和61年2月27日消防予第14号。 以下「昭和61年通知」という。)を発出し,次の点について留意した上,消火器の適切な設置,維持管理,点検及び適切な廃棄処分等がされるよう周知徹底を図ることを要請した。 a 設置上の留意点 (a) 消火器は,できるだけ通風がよく,目につきやすい場所に設置すること。 (b) 消火器は,ガスコンロや暖房器具等の熱や直射日光の当たる場所,風呂場,洗濯場,その他頻繁に水を使用する場所等湿気の多い場所又は雨水のかかる場所を避けて設 置すること。 b 点検等の維持管理上の留意点(a) 消火器は,時々外観を点検し,各部にさび,塗装の剥離,変形,損傷等が 水を使用する場所等湿気の多い場所又は雨水のかかる場所を避けて設 置すること。 b 点検等の維持管理上の留意点(a) 消火器は,時々外観を点検し,各部にさび,塗装の剥離,変形,損傷等があるものについては,消火器に係る消防設備士又は専門業者(以下「専門業者等」という。)に整備等 を依頼すること。 (b) 購入又は設置してから,5年以上経過している消火器で,その間に一度も専門業者等の点検,整備等を受けたことのないものにあっては,専門業者等の点検,整備等を受けることが望ましいこと。 c 廃棄上の留意点-71-消火器を廃棄する場合には,みだりに放置等をせず,当該消火器を購入した業者等の専門業者に依頼すること。 d その他消火訓練等で消火器を用いる場合,外観を点検し,異常のあるもの又は老朽化しているものは使用しないこと。 (乙3)ウ被告社団法人の対応(ア) 被告社団法人は,昭和60年10月,「消火器は,粉末消火器と水系消火器をバランスよく備えましょう。」と題するパンフレット30万枚を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に 配布した。同パンフレットには,消火器の容器には寿命があること,消火器の容器の耐用年数はおおむね8年であること,消火器は10年以内に更新すべきであることに加え,維持管理についての注意点や,廃棄の方法等が記載されている。 なお,被告社団法人は,昭和61年10月にも,同様の内容 が記載されたパンフレットを作成し,これを消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁11,12,弁論の全趣旨)(イ) 被告社団法人は,昭和61年通知が発出されたことを受けて,同年11月,「消火器に『維持管理についてのご注意と容器 の耐用年数』を表示します。」 た。 (丁11,12,弁論の全趣旨)(イ) 被告社団法人は,昭和61年通知が発出されたことを受けて,同年11月,「消火器に『維持管理についてのご注意と容器 の耐用年数』を表示します。」と題するパンフレットを作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。同パンフレットには,消火器は,平素の点検整備が重要であり,また,圧力容器であるため,腐食や老朽化により破裂の危険性があるとして,同年10月以降に製造された消火器には,製造者の責任として 次のような表示(以下「昭和61年表示」という。)を行うこと-72-になったことが記載されている。なお,各消火器メーカーは,これに従って,消火器の本体容器に,昭和61年表示が記載されたラベルを貼付するようになった。 維持管理についてのご注意1.高温,多湿のところは,避けて設置してください。 屋外,ちゅう房や腐食性ガスが,発生するところでは,格納箱に収納するなど保護処置をしてください。 2.腐食,変形などのある場合は使用しないでください。 3.定期的に点検してください。おおむね5年を経過すると性能,機能が低下することがありますので家庭など点検義務 のないところでも5年を目安に点検してください。 4.点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問い合わせください。 容器の耐用年数容器の耐用年数は,設置場所や管理の仕方によって異なりま す。正しい維持管理が行われた場合に,おおむね耐用8年です。 社名(丙10,14,丁13,弁論の全趣旨)(ウ) 被告社団法人は,昭和62年9月には「失効消火器は早めにお取替えください」と題するパンフレット30万部を作成し, 消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (弁論の全趣旨)エ被告会社 社団法人は,昭和62年9月には「失効消火器は早めにお取替えください」と題するパンフレット30万部を作成し, 消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (弁論の全趣旨)エ被告会社の対応(ア) 被告会社は,昭和60年稚内事故を受けて,昭和60年4月頃,被告会社の各販売店に対し,「消火器の取扱いについてのご 注意!」と題する文書を配布した。同文書には,消火器の設置-73-に当たっての安全対策,点検整備に当たっての安全対策,消火器の耐用年数,廃棄消火器の取扱いについての注意が記載されていた。 また,被告会社は,同年6月22日には,各販売店及び各消防団に対し,「消火器事故未然防止対策」と題する書面を配付 し,消火器の点検を厳しく実施し,古い消火器や不良製品の廃棄処分を推進するよう注意喚起を行った。 (丙2~4)(イ) 被告会社は,昭和60年頃,「消火器の安全な取扱い設置と点検整備にあたっての安全対策資料」と題するパンフレット (以下「安全対策資料」という。)を作成し,各販売店に配布した。安全対策資料は,被告会社作成に係る「消火器の取扱いについてのご注意!」と題する文書及び失効消火器図鑑,昭和60年事故に係る新聞記事,被告社団法人作成に係る消火器廃棄マニュアル及び消火器の耐用年数についてお願い等から構成 されていた。 (甲5,丙7の1)(ウ) 被告会社は,昭和61年4月頃,各販売店に対し,「消火器の事故防止についてのお願い」と題する文書を配布した。同文書は,各販売店に対し,廃棄消火器については,購入先に引取 りを依頼するなどして速やかに廃棄処理をするよう,一般家庭を含む購入者に指導すること,消火器の容器の耐用年数はおおむね8年であるこ 書は,各販売店に対し,廃棄消火器については,購入先に引取 りを依頼するなどして速やかに廃棄処理をするよう,一般家庭を含む購入者に指導すること,消火器の容器の耐用年数はおおむね8年であることの周知徹底を図り,耐用期間の過ぎた消火器の更新を推進すること,消火器の本体容器に貼付されている「維持管理についてのご注意」(昭和61年表示)の周知徹底を 図ること等についての協力を求めるものであった。 -74-(丙5)(エ) 被告会社は,昭和62年頃にも安全対策資料を作成し,これを各販売店に配布した。同資料は,「消火器の取扱いについてのご注意!」や,主な消火器事故の概要が記載された一覧表,外観点検で異常と認められる消火器の例及び失効消火器につい て説明する漫画等から構成されていた。なお,安全対策資料は,その後も改訂を重ね,逐次発行されている。 (丙7の2~8)(4) 昭和63年の消火器破裂事故の発生と,これに対する被告国及び被告社団法人の対応等 ア昭和63年に発生した消火器破裂事故の概要等(ア) 昭和63年3月24日,宮城県塩釜市内の水産加工工場で,火災が発生した際に,昭和43年製造の加圧式消火器(失効消火器)を使用したところ,底部が破裂し,1名が死亡した。 (甲16) (イ) 昭和63年5月14日,大阪市環境事業局のごみ集積処理屋外作業場において,収集したごみの選別作業中に,ごみとして廃棄された加圧式消火器が破裂し,作業者が重傷を負う事故(以下「昭和63年事故」という。)が発生した。なお,同年中には,上記以外に7件の老朽化した消火器による事故が発生し ている。 (甲16,丁35の1)(ウ) 昭和63年事故の発生を受けて,大阪市消防局長は,同 )が発生した。なお,同年中には,上記以外に7件の老朽化した消火器による事故が発生し ている。 (甲16,丁35の1)(ウ) 昭和63年事故の発生を受けて,大阪市消防局長は,同年6月20日,「消火器の適正な廃棄について」と題する文書(昭和63年6月20日大消(査)第230号)を発出し,被告社団 法人に対し,大阪市においては,廃棄消火器を原則としてごみ-75-収集の対象外とする方針を決定したことから,今後は被告社団法人において,一般家庭にある消火器も対象とした廃棄消火器の処理体制を早急に確立するよう要請した。 (丁35の1)イ消防庁から被告社団法人に対する要請とこれに対する被告社 団法人の対応等(ア) 被告社団法人の担当者は,昭和63年6月21日,消防庁の担当者であるG専門官との間で,消火器の安全対策についての協議(以下「昭和63年協議」という。)を行い,G専門官から,おおむね次のような要請を受けた。 a 消火器に係る事故の発生により,毎年1名程度が死亡し,負傷者を加えると,毎年約2~3名の者に被害が生じている。 消防庁からは,昭和54年通知,昭和60年通知及び昭和61年通知を発出して,消火器の廃棄・処理について適切な措置を講ずるよう要望してきたにもかかわらず,以前と同様に 死傷者が生じている。消防庁としては,安全対策を根本的に見直す必要があるものと認識している。 b 過去の消火器に係る事故のうち,死者が発生した事例は,いずれも加圧式消火器の本体容器の破裂事故によるものである。また,このような事故が発生する原因は,使用者が消 火器の作動原理を知らずに,遊び心で操作してしまうことにある。このような事故は,点検制度等によって防止することは不可能 故によるものである。また,このような事故が発生する原因は,使用者が消 火器の作動原理を知らずに,遊び心で操作してしまうことにある。このような事故は,点検制度等によって防止することは不可能であり,消火器メーカーの方で対策を立てる必要がある。 c 消火器に係る事故の防止策としては,長期的なものと短期 的なものがあるが,特に長期的な対策が重要であり,消防庁-76-としては,今後も死傷者の発生する事故が続けば,消火器の製造中止といったことも考えなければならなくなる可能性がある。そのような事態を回避するためには,各消火器メーカーが早急に対策を取る必要がある。 d 現時点までの統計を分析したところでは,蓄圧式消火器自 体の数が非常に少ないので,蓄圧式消火器による事故も当然少ないと考えられるため,蓄圧式が安全といえるかどうかは問題である。加圧式消火器の製造を止めるべきであるということではないが,死亡事故が加圧式消火器のみによって発生しているとすると問題である。 e 消火器の廃棄対策によって対応することができればよいが,それだけでは安全とはいえず,材質の改良も検討項目の一つである。また,危険性についての表示を行うことも一つの案ではあるが,その場合でも,「サビが発生したときは使わないでください。」と表記するのか,「サビが発生したもの を操作すると爆発するおそれがある。」と表記するのかによって,消費者の感じ方が異なるため,絶対に老朽化した消火器を使わせないようにするための表現方法も十分に検討する必要がある。 (丁35の1) (イ) 被告社団法人において,昭和63年7月21日に開催された理事会においては,G専門官との間の昭和63年協議の結果報告を受けて,a に検討する必要がある。 (丁35の1) (イ) 被告社団法人において,昭和63年7月21日に開催された理事会においては,G専門官との間の昭和63年協議の結果報告を受けて,a 品質保証責任制度の導入を検討すること,b 消火器は製造から8年を経過したら更新する必要があり,8年を経過する前に発生した事故は製造者の責任であること, また,老朽化した消火器は危険であり,処理のためには費用を-77-要することを明記するなどして消費者に訴える必要があること,c 取扱説明書に消火器の使用者が行ってはならないことを列挙するなどして,その責任を明確にすること,の3点を,同年における被告社団法人の課題とすることが確認された。 (丁35の1) ウ昭和61年表示の改訂の経緯等(ア) 消防庁は,昭和63年7月26日,被告社団法人に対し,消防庁としては,事故防止のために加圧式消火器の機構と事故発生のメカニズムの啓もうを目的とした消火器の本体容器への表示を検討中であるとして,その素案を早急に作成するよう要 請した。なお,消防庁は,同表示について,新たに製造された消火器のみならず,既設の消火器にも点検時に貼付するものとして,その趣旨の通知を発出することを予定していた。 これを受けて,被告社団法人は,同年8月3日の企業委員会において,「この消火器は操作すると急に加圧されます。容器に 錆,腐食,変形のあるもの,また廃棄したものは危険ですから使用しないでください。」との表示の素案を作成し,同月4日,消防庁にその旨報告した。また,企業委員会は,同年8月27日,昭和61年表示のうち,「2.腐食,変形などのある場合は,使用しないでください。」の部分を削除した上で,「維持管理に ついてのご注意 庁にその旨報告した。また,企業委員会は,同年8月27日,昭和61年表示のうち,「2.腐食,変形などのある場合は,使用しないでください。」の部分を削除した上で,「維持管理に ついてのご注意」と「容器の耐用年数」の間に枠を設けて,上記の文言を挿入し,各消火器メーカーの社名を削除すること,昭和64年製の消火器から新しい表示を行うこと,既設の消火器については,表題を「ご注意」として,上記の新しい表示文言のみを記載した,横6㎝,縦3㎝のラベルを作成し,定期点 検時に貼付することを決定し,同月31日,消防庁にその旨報-78-告した。なお,この時点では,上記の新たな表示については,新規製造の消火器については,各消火器メーカーが実施し,既設の消火器に表示するラベルは,被告社団法人が有償で作成するものとされていた。 (丁35の2) (イ) その後,消防庁と被告社団法人との間で,上記の新たな表示の文言や,既設の消火器へのラベルの貼付方法等についての折衝が行われていたところ,昭和63年11月初旬頃,G専門官から被告社団法人に対し,既設の消火器に対するラベルの貼付費用は無償とすべきであり,貼付作業についても,消火器の使 用上の問題であるとして被告社団法人の責任で貼付すべきであるとの意向が示された。そこで,昭和63年11月17日に開催された被告社団法人の理事会において,既設の消火器に貼付されるラベル(10万枚)の予算として30万円を計上することが承認された。 その後も,消防庁と被告社団法人との間では,上記ラベルの貼付に関する折衝が行われた結果,最終的に被告社団法人の責任において,これに取り組むとの基本方針が確認され,被告社団法人の予算でラベルが制作された。 (丁35の4・5) (ウ) 貼付に関する折衝が行われた結果,最終的に被告社団法人の責任において,これに取り組むとの基本方針が確認され,被告社団法人の予算でラベルが制作された。 (丁35の4・5) (ウ) 以上のような経緯を踏まえて,消防庁は,昭和63年12月9日,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器に係る人身事故防止の徹底について(通知)」(昭和63年12月9日消防予第172号。以下「昭和63年172号通知」という。)を発出した。 昭和63年172号通知においては,昭和60年通知及び昭-79-和61年通知の発出後も,消火器に係る人身事故が繰り返し発生していることについて,これまでに発生している消火器に係る人身事故は,主として加圧式消火器によって生じており,これは,使用する際に圧力が容器全体にかかるという加圧式消火器の構造上の特性に係る理解が不十分であることによるもの であり,設置者,使用者等に加圧式消火器の構造特性等を十分理解してもらうとともに,維持管理及び使用に当たっての注意を促すことが必要であるとした上で,次のような加圧式消火器に係る留意事項を参考として,今後,事故が発生しないように指導を徹底するよう要請した。 a 加圧式消火器は,消火器の容器の内部又は外部に加圧源として加圧用ガス容器を有し,起動レバーを操作することにより加圧用ガス容器の封板が破られ,気化した二酸化炭素又は窒素の圧力により消火薬剤を放出する構造となっている。通常,消火器の容器内部は常圧(大気圧)であるが,使用時に 二酸化炭素又は窒素の圧力により急激に容器内部の圧力が高まるため,容器の腐食,容器キャップのゆるみ,締め忘れ等構造上の弱点があればその部分から破壊することがある。 したがって,設置場所に留意するとともに,日常の は窒素の圧力により急激に容器内部の圧力が高まるため,容器の腐食,容器キャップのゆるみ,締め忘れ等構造上の弱点があればその部分から破壊することがある。 したがって,設置場所に留意するとともに,日常の点検,維持管理を十分実施しておくことが必要であること。 b 消火器は,できるだけ通風が良く,目につきやすい場所に設置し,直射日光を受ける場所,頻繁に水を使用する場所等湿気の多い場所又は雨水のかかる場所への設置を避けること。 c 消火器は,消防法令で定められた点検を実施するとともに, (a) さび,塗装のはく離,変形,損傷等の有無,(b) キャ-80-ップのゆるみの有無,(c) 亜鉛ダイキャスト製のキャップを使用しているものにあっては,キャップ表面の光沢及び錆等の状況,(d) 安全装置又は安全栓の変形,損傷,紛失等の有無,(e) 使用済みである表示の状況,(f) 購入又は設置してから,5年以上経過している消火器については,その間 の点検整備の状況,(g) 法令に基づき設置されているものにあっては,型式承認の失効に伴う設置可能期間の確認といった事項に留意し,時々外観点検を実施し適正に維持管理すること。なお,異常のある消火器については,早急に消防設備点検資格者又は消防設備士に点検,整備等を依頼すること。 d 消火器の点検,整備等に当たっては,組立て等の際には,各部の取付け状況及びボルト等の締め付け状況を十分確認すること,消火器を廃棄する場合には,みだりに放置等をせず,当該消火器を購入した業者等の専門業者に依頼すること。 e 消防訓練等で加圧式消火器を用いる場合は,上記cに掲げ た事項に留意して外観を点検し,異常のあるもの又は老朽化しているものは使用しないこと。 また,昭和63年172号通知には,別紙 。 e 消防訓練等で加圧式消火器を用いる場合は,上記cに掲げ た事項に留意して外観を点検し,異常のあるもの又は老朽化しているものは使用しないこと。 また,昭和63年172号通知には,別紙として「加圧式消火器の使用上の注意事項の表示について」と題する文書が添付されており,同文書には,被告社団法人が同通知の趣旨に沿っ て,① 消火器の容器本体に,「使用上のご注意」として,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」との使用上の注意事項(表示のサイズは横6㎝,縦3㎝)を表示すること としていること,② 同表示は,昭和64年1月末以降に製造-81-される加圧式消火器に表示することとしていること(従来から表示されている維持管理等の項目に追加表示される場合もある。),③ 既設の消火器にあっては,点検等の機会をとらえて上記表示を記載したラベル等を貼付することとしていること,が記載されていた。 (乙4,丁17)(エ) 消防庁は,昭和63年12月9日,被告社団法人に対し,「消火器に係る人身事故防止の徹底について」(昭和63年12月9日消防予第173号。以下「昭和63年173号通知」という。)を発出し,被告社団法人においては,昭和63年172号 通知の趣旨を理解した上,消火器による人身事故の防止に対する協力を依頼するとともに,消火器の本体容器に貼付し表示する「使用上の注意事項」については,既設の消火器についても,販売業者,点検業者等と連携して表示の徹底を図り,特に一般家庭に設置されている消火器については,その貼付方法等を具 体的に検討し,周知徹底に努めるよう要請した。 上記通知 消火器についても,販売業者,点検業者等と連携して表示の徹底を図り,特に一般家庭に設置されている消火器については,その貼付方法等を具 体的に検討し,周知徹底に努めるよう要請した。 上記通知を受けて,被告社団法人においては,昭和64年1月以降に製造される加圧式消火器に貼付するラベルには,昭和61年表示に加えて(ただし,昭和61年表示のうち,「2.腐食,変形などのある場合は,使用しないでください。」の部分は 削除された。),次の表示(横6㎝,縦3㎝の寸法のもの。以下,この表示を「使用上のご注意表示」という。)を掲示することとした。もっとも,この時点で,各消火器メーカーは,新たに製造する加圧式消火器に貼付するラベルを,昭和61年表示を一部改訂して製作途上にあったことから,被告社団法人において は,上記の寸法どおりにならないことも許容することとした。 -82-使用上のご注意この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。 さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。 社団法人日本消火器工業会 (丙14,丁29,丁35の5,弁論の全趣旨)(オ) 被告社団法人は,昭和63年12月22日,「消火器に『使用上のご注意』表示について」と題する文書(昭和63年12月22日第145号,第146号)を配付し,被告社団法人の会員である各消火器メーカー及び各消防機器販売団体に対し, 昭和63年173号通知の指導に従って,消火器による人身事故防止の一層の徹底を図るために,製造者の責任として,加圧式消火器の構造機能の特性につき周知徹底を図るべく,昭和64年1月末以降に製造された加圧式消火器には,従来使用されていた昭和61年表示を改訂して,使用上のご注 を図るために,製造者の責任として,加圧式消火器の構造機能の特性につき周知徹底を図るべく,昭和64年1月末以降に製造された加圧式消火器には,従来使用されていた昭和61年表示を改訂して,使用上のご注意表示を新た に挿入した上で,各消火器メーカーにおいてこれを作成貼付すること(以下,昭和61年表示を上記のとおり改訂した表示を「平成元年表示」という。),既設の加圧式消火器については,被告社団法人作成に係る使用上のご注意表示が記載されたラベル(無償)を,消火器の点検等の際に貼付すること,特に一 般家庭に設置されている消火器への貼付を徹底することについての協力を求めた。 そして,被告社団法人は,既設の加圧式消火器に貼付するための使用上のご注意表示が記載されたラベルを100万枚作成し,各消火器メーカーを介して販売店等に配布し,これらは 消火器の点検等の際に,本体容器に貼付された。 -83-(丁1,2,丁35の6,弁論の全趣旨)エ被告会社の対応被告会社は,昭和63年12月から平成7年7月までの間,加圧式,蓄圧式の区別なく,被告会社の製造した消火器の本体容器に,使用上のご注意表示を含む平成元年表示が記載されたラベル を貼付していた。なお,昭和63年12月頃に被告会社において製造された本件消火器にも平成元年表示とほぼ同様の文言が記載された注意喚起ラベルが貼付されていたが,平成元年表示中の使用上のご注意表示に当たる部分の寸法は,被告社団法人において定められた寸法よりも若干小さかった。もっとも,当該部分は その全体が枠で囲われており,また,他の記載部分よりも大きく太い文字が使用されている。 (甲3,23,18,丙1,14)オ被告社団法人における廃棄消火器の回収制度構築に向けた動き の全体が枠で囲われており,また,他の記載部分よりも大きく太い文字が使用されている。 (甲3,23,18,丙1,14)オ被告社団法人における廃棄消火器の回収制度構築に向けた動き (ア) 被告社団法人は,昭和63年6月24日,大阪市環境事業局と協議を行い,被告社団法人では,廃棄消火器を回収するための受け皿づくりのために目下調査中であること,廃棄消火器の回収には消火器販売業界の全面的な協力が必要であること,廃棄消火器の処理費用を誰が負担するべきかという問題点があ ることなどを説明した。 これに対し,大阪市環境事業局は,廃棄消火器の処理は廃棄物処理法3条の精神からして製造者の責任である,大阪市では廃棄消火器をごみ収集の対象外にするとの広報を既に始めており,同年7月中旬までに各家庭に周知されるから,販売店や 消火器メーカーの方で廃棄消火器を回収するべきである,現在,-84-大阪市が保管している廃棄消火器を早急に引き取ってほしい,処分費用の一部を大阪市が負担することはできない等と回答した。 また,被告社団法人は,昭和63年7月6日,大阪市環境事業局と協議を行い,当面,大阪市環境事業局で回収した廃棄消 火器を,従前のとおり,消火器メーカーに持ち込んでもらうよう依頼した上で,在阪の消火器メーカー7社と会議を行い,同会議において,当面,大阪市環境事業局が回収した廃棄消火器については,在阪の各消火器メーカーが応分の協力をすることにより引き取ることが決定されるとともに,廃棄消火器の回収 のための受け皿づくりを目的として,各社が引き取った廃棄消火器の数量を報告することとなった。 (丁35の1)(イ) 被告社団法人では,昭和63年7月12日,廃棄消火器対策検討委員会が開催され,受け皿づく りを目的として,各社が引き取った廃棄消火器の数量を報告することとなった。 (丁35の1)(イ) 被告社団法人では,昭和63年7月12日,廃棄消火器対策検討委員会が開催され,受け皿づくりは被告社団法人の事業と して実施すること,ただし,現在,既に各消火器メーカーで実施されている個々の廃棄ルートを被告社団法人に切り替えるわけではないこと,東京,大阪,名古屋において受け皿づくりのための調査を行うこと,廃棄消火器の引取りを有料化することについての周知を行うことなどが確認された。 (丁30)(ウ) 被告社団法人は,昭和63年7月26日,在阪の消火器メーカー7社との会議や大阪消防機具同業組合との懇談会を開催し,廃棄消火器の引取りを有料化する(利用者負担)ことや受け皿づくりに関する議論を行ったが,大阪消防機具同業組合か らは協力を得られなかったため,昭和54年通知の写しを配付-85-するなどして,重ねて協力を依頼した。 また,被告社団法人は,昭和63年8月9日,廃棄消火器対策検討委員会を開催し,廃棄消火器の回収体制の構築(受け皿づくり)に向けた調査を,東京,大阪,名古屋において同年8月末を目途に行うこと,廃棄消火器の引取りの広報の素案を作 成することなどを確認した。 (丁35の2)(エ) 被告社団法人は,昭和63年8月12日,大阪市消防局長に対し,「消火器の適正な廃棄について(ご報告)」と題する文書を交付し,被告社団法人内に消火器の適正な廃棄のための特別 委員会(廃棄消火器対策検討委員会)を設置して対応することを決定し,a 一般家庭から廃棄消火器が販売店に持ち込まれた場合には,消火器普及の一環としてこれを快く引き取ること,b 不法投棄等排出者が不明の消火器 棄消火器対策検討委員会)を設置して対応することを決定し,a 一般家庭から廃棄消火器が販売店に持ち込まれた場合には,消火器普及の一環としてこれを快く引き取ること,b 不法投棄等排出者が不明の消火器であって,大阪市環境事業局が収集,保管したものについては,被告社団法人の責任で, 在阪のメーカーがそれぞれ分担して引き取ること,c 従来,廃棄消火器の引取りは,各メーカーが行っていたところ,これに加えて,当面,東京,大阪及び名古屋地区において受け皿づくりを行うべく調査中であること,d 被告社団法人においては,販売業界の全面的な協力を得るために協議を行っているこ と等についての報告を行った。 (丁35の2)カ被告社団法人が実施したその他の広報及び啓もう活動等(ア) 被告社団法人は,昭和63年9月,「暮らしを守るあなたの消火器」と題するパンフレット40万部を作成し,消火器メー カー等を通じて,消火器の設置場所と維持管理方法,定期的に-86-点検する必要があること,古いものは廃棄して新しいものと取り替えるべきこと,点検や廃棄等については販売店に相談すること等を一般に周知した。また,被告社団法人は,同年10月,消火器の本体容器の耐用年数はおおむね8年であり,ほとんどの消火器は操作すると急に加圧されるため容器に錆や腐食・変 形のあるものは危険なので使用せずに速やかに廃棄すること,点検や廃棄については,販売店又はメーカーに問い合わせるべきこと等が記載された「防災ひとくちメモ」と題するパンフレットを5000部作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。さらに,被告社団法人は,「失効消火器ってなに?」及 び「暮らしを守るあなたの消火器」をテーマとして,消防庁予防課監修によるビデオを各210本 作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。さらに,被告社団法人は,「失効消火器ってなに?」及 び「暮らしを守るあなたの消火器」をテーマとして,消防庁予防課監修によるビデオを各210本作成し,消火器メーカーや,主要都市の消防本部に配付して,錆や変形のある消火器を使用しないよう周知を図った。 (丁14,15,30,丁35の2,弁論の全趣旨) (イ) 被告社団法人は,昭和63年10月,「御得意様へ消火器による事故防止についてのお願い」と題するパンフレットを作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。同パンフレットには,消火器による死亡事故が発生していること,消火器は圧力容器であること,消火器の本体容器はおおむね耐用8年 であること,失効消火器は新しい消火器に取り替える必要があること,不要になって廃棄する消火器は専門業者が引き取るが,処理費用を負担してもらう場合があること等が記載されていた。 (丁16) (5) 平成元年頃までの時点における被告会社を始めとする消火器メ-87-ーカーにおける蓄圧式消火器の生産技術等ア被告会社においては,昭和40年1月に,ABC粉末消火器(加圧式)の国産第1号の発売を始め,昭和45年12月には蓄圧式消火器も販売するようになり,昭和50年代後半頃以降,蓄圧式消火器の開発にも力を入れていた。被告会社における消火器の生 産数は,平成元年頃までの時点では,蓄圧式のものは全体の約10%程度であり,その余は加圧式であったが,蓄圧式の消火器のほとんどは,液体系の消火剤を用いた強化液消火器であった。なお,ABC粉末消火器は,抑制効果によって制炎性に優れており,強化液消火器は,冷却効果と浸透性に優れているため,再燃を防 止する効果を有している。 消火剤を用いた強化液消火器であった。なお,ABC粉末消火器は,抑制効果によって制炎性に優れており,強化液消火器は,冷却効果と浸透性に優れているため,再燃を防 止する効果を有している。 (甲9,丁14,証人C)イ蓄圧式消火器は,本体容器の内圧が一定に保たれていることから,放射の開始から終了まで,均一の量の消火剤を放出することができ,また,外気温が-30℃から+40℃までの範囲で使用 できるという点で,加圧式消火器と比較すると優れた特性を有している。もっとも,蓄圧式消火器は,常時,消火器の本体容器内の圧力を保つ必要があるところ,ABC粉末消火剤を使用する場合には,パッキンの性能が悪いと,10年間以上にわたって気密性を保つことができず,圧漏れが生じるという問題があり(なお, 強化液消火剤を使用する場合には,圧漏れの問題はそれほど生じない。),大量生産が技術的に困難であったこと,そのため製造原価が加圧式と比較して高額になり,販売価格には大きな差が生じないようにしていたものの,卸価格が高額に設定されていたことから,販売業者が取扱いを敬遠するという問題があった。 他方,加圧式消火器は,蓄圧式消火器と比較して交換(内容物-88-の詰替え)が容易であるという利点があった。 もっとも,この当時から,欧米諸国においては蓄圧式消火器が主流であったが(なお,ベルギー及びフランスでは加圧式消火器が主流),欧米諸国と我が国とでは,消火の対象となる建築物の構造や材質が異なることから,消火器の内圧や消火剤の質が異なっ ており,平成元年頃までの時点で,我が国において,直ちに蓄圧式消火器を主流にすることが可能であったわけではなかった。 なお,被告会社は,平成23年5月に至って,10年以上の機密性を実現するための耐 ており,平成元年頃までの時点で,我が国において,直ちに蓄圧式消火器を主流にすることが可能であったわけではなかった。 なお,被告会社は,平成23年5月に至って,10年以上の機密性を実現するための耐腐食性の高い指示圧力計及び高性能パッキンの採用,並びに消火器の本体容器内の蓄圧ガス漏れについ ての精度の高い検査手法の確立によって,蓄圧式消火器の大量生産が可能になったとして,新型の蓄圧式消火器「YA-10X」の発売を開始した。 (甲8,10,丙7の1,丁38の2・6,証人C)(6) 平成元年から平成12年頃までの間の,被告社団法人及び被告 会社における対応等ア被告社団法人の対応(ア) 被告社団法人は,平成元年8月以降,毎年,消費者を対象とした「消火器のしおり」と題するパンフレットを毎年10万部から35万部作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配付し た。同パンフレットは,消防本部から消防署に配布され,火災予防のイベントや消防訓練の際に住民に配布されたり,地域の回覧板に掲載されたりした。 同パンフレットには,消火器の点検の必要性,消火器の耐用年数,失効消火器は速やかに取り替えるべきこと,不要になっ た消火器を廃棄する際の注意事項等が記載されていたが(なお,-89-改訂によってその記載内容には若干の変化がある。),平成3年以降に作成されたものには,腐食や変形等が生じた消火器の写真が掲載されており,そのような消火器は危険であるため,廃棄するよう促す記載や,不要になった消火器は,事故防止のため,購入先の販売店か専門業者に引き渡すよう求める記載があ る。 また,被告社団法人は,平成7年7月1日に製造物責任法が施行されたことを受けて,上記パンフレットを全面的に改訂し,消火器の使用上の注 入先の販売店か専門業者に引き渡すよう求める記載があ る。 また,被告社団法人は,平成7年7月1日に製造物責任法が施行されたことを受けて,上記パンフレットを全面的に改訂し,消火器の使用上の注意事項の詳細な説明(同法の施行に伴って各消火器メーカーが消火器の本体容器に貼付するようになっ たラベル(後記イ(ア)参照)の説明)を追加した。 (丁18の1~19,証人C,弁論の全趣旨)(イ) 被告社団法人は,平成元年に,消火器の耐用年数はおおむね8年であること,消火器は圧力容器であり,老朽化により錆や腐食などが発生すると,加圧力によって容器が破損し事故につ ながる危険があること,不要になった消火器は,事故防止のために必ず購入先の販売店か専門業者に引き渡すべきことなどが記載された,「ご家庭の皆様へ・・・」と題する消費者向けのパンフレット5万部を作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁19,弁論の全趣旨)(ウ) 被告社団法人は,平成2年7月頃には,「お得意様へ廃棄消火器の引取処理についてのご理解とご協力のお願い」と題するパンフレットを作成して,消火器メーカー等を通じて一般に配布し,廃棄消火器の処理費用の負担についての協力を促した。 (丁20,弁論の全趣旨)-90-(エ) 被告社団法人は,平成4年7月,消火器は圧力容器であり,錆による腐食等があるものは圧力に耐えられず破裂する危険があること,容器の耐用年数がおおむね8年であること,不用となった消火器は事故防止のために必ず購入先の販売店か専門業者に引き渡すべきこと等が記載された,「お済みでしょう か?失効消火器のお取り換え」と題する消費者向けのパンフレットを作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 ず購入先の販売店か専門業者に引き渡すべきこと等が記載された,「お済みでしょう か?失効消火器のお取り換え」と題する消費者向けのパンフレットを作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。 (丁21,弁論の全趣旨)(オ) 被告社団法人は,平成8年7月,消防本部に対し,「事故防止のための消火器の耐用年数表示について」と題する文書を配 布した。同文書には,製造物責任法が平成7年7月に施行されたことに伴う,各消火器メーカーの取扱説明書や,本体容器に貼付している警告表示に関する説明を行った。 (丁22)イ被告会社及び消火器メーカーの対応等 (ア) 平成7年7月に製造物責任法が施行されたことを受けて,各消火器メーカーは,同月以降,「使用上のご注意消火器は圧力容器です。「取扱説明書」をよく読んでご使用ください。」との記載のあるラベル(縦6.5cm,横10.5cmのサイズのもの。以下「平成7年表示」という。)を消火器に貼付するこ ととした。 平成7年表示には,「危険」「警告」「注意」という3つの欄が設けられており,「危険」欄には,消火器が爆発する図案とともに,「サビ・キズ・変形・キャップのゆるみのあるものは絶対に使用しないでください。容器の破裂等により重大な人身事故発 生の恐れがあります。」と記載されている。「警告」欄には,「法-91-で定められた点検を定期的に行ってください。ご家庭でも5年を目安に点検してください。製造から8年の耐用年数を過ぎたものは使用しないでください。」等と記載されている。「注意」欄には,「設置場所は高温多湿のところは避けてください。」「消火器を廃棄する場合は必ず販売店か製造元にご相談ください。」 等と記載されている。 (丙11の1・2 と記載されている。「注意」欄には,「設置場所は高温多湿のところは避けてください。」「消火器を廃棄する場合は必ず販売店か製造元にご相談ください。」 等と記載されている。 (丙11の1・2,丙14,弁論の全趣旨)(イ) 被告会社は,平成12年9月1日以降,被告会社製の老朽化した消火器の無料回収(送料は実費)を行うようになった。もっとも,平成22年頃以降は,有償での回収が行われるように なった。 (丙20の2・4~7,証人C)(7) 平成13年の消火器破裂事故の発生と,これに対する被告らの対応等ア平成13年に発生した消火器破裂事故の概要等 (ア) 平成13年3月4日,名古屋市内において,屋外に放置され腐食の進んだ消火器を廃棄するために粉末薬剤を放射しようとした際に,消火器が破裂して,本体容器が顔面を直撃し,男性1名が死亡する事故(以下「平成13年名古屋事故」という。)が発生した。 (甲16,乙5,丙20の3)(イ) 平成13年4月22日,北海道帯広市内において,野焼きの火を消そうとして消火器を操作したところ,消火器が破裂して,本体容器が顔面を直撃し,男性1名が死亡するという事故(以下,これと平成13年名古屋事故を併せて「平成13年事故」 という。)が発生した。なお,同年中には,上記以外に4件の老-92-朽化した消火器による事故が発生している。 (甲16,丙20の5)イ平成13年名古屋事故の発生を受けた被告国の対応(ア) 消防庁は,平成13年名古屋事故の発生を受けて,平成13年3月9日,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器の廃棄に 際しての事故防止について」(平成13年3月9日消防予第77号。以下「平成13年通知」という。 3年名古屋事故の発生を受けて,平成13年3月9日,各都道府県消防主管部長に対し,「消火器の廃棄に 際しての事故防止について」(平成13年3月9日消防予第77号。以下「平成13年通知」という。)を発出し,消火器の事故の発生を防止するため,次の事項に留意の上,種々の機会をとらえて関係者に周知徹底を図るよう要請した。 a 消火器の廃棄について (a) 不用になった消火器については,放射,解体等の廃棄処理を自ら行うことなく,引き取りを行っている事業者に速やかに廃棄処理を依頼すること。また,やむを得ない事情により不用になった消火器を保管する場合には,風雨にさらされる場所及び湿潤な場所を避けること。 (b) さびの発生が見られる加圧式の消火器は,容器破裂の危険が大きいので,決して薬剤を放射しないよう特に注意すること。 b 消火器の維持管理について(a) 消火器の設置場所は,できるだけ風通しが良く,目につ きやすい場所とし,風雨にさらされる場所,湿潤な場所等を避けること。 (b) 消防法上の点検義務のない消火器についても,その状態に注意を払い,老朽化等異常が発見されたものは,消火訓練等も含めて使用しないこと。 c 消防機関における情報提供等について-93-消防機関においては,消火器を設置している防火対象物の関係者及び一般家庭に対して,前記a及びbの内容について周知を図るとともに,消火器の引き取りを行っている事業者を把握し,一覧表を作成しておく等消火器の廃棄処理に関する問合せに回答できる体制を整えるべきこと。 (乙5,42)(イ) また,消防庁は,平成13年3月9日,「消火器の廃棄に際しての事故防止について」(平成13年3月9日消防予第78号)を発出し,被告社団法人に対し べきこと。 (乙5,42)(イ) また,消防庁は,平成13年3月9日,「消火器の廃棄に際しての事故防止について」(平成13年3月9日消防予第78号)を発出し,被告社団法人に対し,平成13年通知の趣旨を理解した上で,相談窓口の一層の周知,消火器の回収への協力 等,消火器による人身事故防止のために協力するよう要請した。 (乙26)ウ消防庁による消火器事故対策検討会の設置と消火器事故防止緊急対策案の取りまとめ(ア) 消防庁は,平成13年事故等の発生を受けて,同年6月,消 火器事故対策検討会を設置し,一般家庭にある古い消火器を回収するなどの緊急対策や抜本的な事故再発防止対策等について検討を行うこととした。なお,被告社団法人の会長(当時)も,上記消火器事故対策検討会の構成員となった。 (乙27,29,32) (イ) 平成13年6月12日に開催された消防庁の第1回消火器事故対策検討会では,まず,消火器の種類,消火器の構造,生産量,流通及び回収の実態等が説明された。なお,平成11年度の時点では,消火器の生産本数は,年間約345万本で,このうちの約82%が消火器保守・販売業者を通じて販売されて おり,国内の消火器の総本数は合計約4000万本で,このう-94-ち消防法で設置が義務付けられている建物に約3160万本,一般住宅に約640万本,その他(車両,船舶及び街頭等)に200万本がそれぞれ設置されていて,保守・販売業者が回収した廃棄消火器は,年間約96万本であった。 そして,同日の検討会では,消火器破裂事故の発生要因とし て,a 消火器の特質(加圧式消火器は,原理上破裂する性質を有すること),b 製造段階の問題(加圧式消火器が多く製造されていること),c 流通 ,同日の検討会では,消火器破裂事故の発生要因とし て,a 消火器の特質(加圧式消火器は,原理上破裂する性質を有すること),b 製造段階の問題(加圧式消火器が多く製造されていること),c 流通段階の問題(消火器が一般家庭にも販売されているものの,消火器の種類等があまり知られていないこと,消火器が防火対象物から一般家庭に流用されているこ と),d 維持管理段階の問題(点検等適切な維持管理がされていないこと),e 使用段階の問題(古い消火器の危険性が認識されていない。),f 廃棄段階の問題(廃棄の方法があまり知られておらず,廃棄の仕組みが不十分であること)が指摘された上,緊急対策としては,維持管理段階では老朽化した消火器 をふるい分けることが,使用段階では老朽化した消火器の危険性をアピールし,使用を防ぐことが,廃棄段階では廃棄方法の周知を図り,火災予防運動における一斉回収の実施をすることが必要であるとの提案がされた。そして,緊急対策に係る具体的な問題点については,広報対策として,一般家庭にどのよう な手段で広報を行えばよいか,維持管理対策として,老朽化した消火器を確実にふるい分けるにはどうしたらよいか,廃棄・回収対策としては,老朽化した消火器をどのように一斉回収するか,役割分担や費用負担はどうなるのか等についての問題点の指摘が行われた。 また,抜本的対策としては,消火器の製造段階,流通・販売-95-段階から事故防止対策を講じる必要性があるとして,事故防止対策を講じた消火器の製造・販売と,これを前提にした維持管理・使用・廃棄対策が必要であるとの提案がされた。 同日の検討会では,上記の説明や提案を受けて,出席者からは,古い消火器には人命を侵害する危険があることを周知すべ きではないか,消火器の 持管理・使用・廃棄対策が必要であるとの提案がされた。 同日の検討会では,上記の説明や提案を受けて,出席者からは,古い消火器には人命を侵害する危険があることを周知すべ きではないか,消火器の底部と側面部の厚さが異なるのは,構造的に問題があるのではないか,消火器の回収方法についての周知が大切なのではないか,リサイクルも踏まえた製造・流通・回収ルートの確立が必要なのではないか,などといった意見が出された。 (乙27,丁36の1~3,丁37の1)(ウ) 平成13年7月3日に開催された消防庁の第2回消火器事故対策検討会では,消防機関が把握している消火器破裂事故の発生状況について,年間平均5件程度の破裂事故が発生しており,その約5%が死亡事故で,約60%が負傷事故であること, ほとんどが加圧式消火器による事故であること等の説明が行われた上で,消火器事故の緊急防止対策に関して,主に消火器の回収方法等に関する意見交換が行われた。 (丁36の2・3)(エ) 平成13年7月31日に開催された消防庁の第3回消火器 事故対策検討会では,老朽化消火器等の破裂による人身事故の発生を防止するため,秋の全国火災予防運動の一環として,老朽化消火器等の一斉回収を実施し,併せて,住宅に適した消火器等の普及促進を図るとともに,消火器の回収及び普及について,関係者が連携して広報活動を展開することを内容とする消 火器事故防止緊急対策案(以下「平成13年緊急対策案」とい-96-う。)が取りまとめられた。消防庁は,同年8月7日,各消防本部に対し,平成13年緊急対策案の実施を周知した。 平成13年緊急対策案の具体的な内容は,a 老朽化消火器等の一斉回収として,秋の全国火災予防運動期間中に,各地方公共団 7日,各消防本部に対し,平成13年緊急対策案の実施を周知した。 平成13年緊急対策案の具体的な内容は,a 老朽化消火器等の一斉回収として,秋の全国火災予防運動期間中に,各地方公共団体において,消防機関が中心となって,住民が販売・点 検業者に消火器を持ち込む方法や,一定期間,消防機関が回収場所を指定し,住民から持ち込まれた消火器を,販売・点検業者が回収する方法で回収し,これら回収された消火器は,原則としてメーカーが引き取って処理を行う(原則として費用は住民負担),b 住宅に適した消火器等の普及として,住宅におい ては,同年4月に策定された「住宅防火基本方針」に基づいて策定される「消火器等推奨基準」に適合する住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具等の普及促進を図る,c 広報活動として,老朽化消火器等の一斉回収や,住宅に設置することが適している消火器の種類について,消防庁は政府広報,消防庁機関 誌,関係各誌への掲載によって,消防機関はポスター,パンフレットの作成,新聞広告,市町村の広報誌への掲載によって,被告社団法人はパンフレット及びポスターの作成によって,消火器メーカーは代理店への文書発送によって,販売・点検業者はポスターの掲示によって,それぞれ周知を行うというもので あった。 (乙28,29,31,32,丁36の3)エ平成13年通知を受けた被告社団法人の対応(ア) 被告社団法人は,平成13年5月16日,被告社団法人の企業委員会に事故防止対策委員会を併設した。 (丁36の1,丁37の1)-97-(イ) 被告社団法人は,消防庁の第2回消火器事故対策検討会の開催に向けて,平成13年6月21日頃,事故防止対策として,消防庁に対し,次のような提案をした(なお ,丁37の1)-97-(イ) 被告社団法人は,消防庁の第2回消火器事故対策検討会の開催に向けて,平成13年6月21日頃,事故防止対策として,消防庁に対し,次のような提案をした(なお,下記の提案の表現については,その後,被告社団法人の企業委員会における議論の中で,後記(ウ)のとおり,若干の修正が行われ,その後も更 に修正が加えられた上,同年8月30日付けで,全国の消防本部並びに各地の販売団体及び消防設備保守協会に発送されている。)。 a 緊急対策として,自治体消防本部や地方公共団体の広報を通じて,錆の発生した老朽化した消火器(失効消火器)等の 回収を行い,住宅には危険の少ない蓄圧式住宅用消火器の普及の呼びかけを実施するとして,(a) 全国の約1000か所の指定する場所に,1か月を目途とした期間を定め,住宅等に設置されている15年以上経過した消火器と,錆の発生した消火器を消費者から持ち込んでもらう,(b) 指定収集 場所に集められた消火器は,地元の販売業者団体及び販売業者の協力を得て,被告社団法人の指定する会員(消火器メーカー)の工場に輸送する,(c) 同会員は,全国各地から輸送された不用消火器を解体し,産業廃棄物業者を通じ処分する,(d) 回収費用は1本1000円程度とし,これを販売業者 の手間代及び運搬費並びに会員による解体処分費用に充てる,(e) 地方公共団体,全国消防機器販売協会,全国各地の販売業者団体及び保守協会等に対しては,被告社団法人から協力を要請するとともに,各会員から取引関係のある系列販売店に対して協力を要請する,(f) 様式を定めて,地区ご とに回収された消火器の本数,回収元(事業所か一般家庭か),-98-回収された消火器のうち錆や変形のある危険な消火器の本 系列販売店に対して協力を要請する,(f) 様式を定めて,地区ご とに回収された消火器の本数,回収元(事業所か一般家庭か),-98-回収された消火器のうち錆や変形のある危険な消火器の本数を集計して消防庁に報告する。 b 今後の対策として,(a) 住民に対する消火器の効能と構造機構の啓発による危険な消火器の回収の実施(啓発パンフレットの作成及び販売業者団体,保守業者団体への協力要 請),(b) 点検報告制度の対象外である一般住宅等に対する蓄圧式消火器の販売指導,(c) 取扱説明書及び消火器の本体容器に貼付する警告表示のうち,使用に耐えない消火器は絶対に操作を行わないよう求める部分の文字を大きくする,(d) 危険な消火器による事故を防止するための技術面から の研究を行う。 (丁36の2・3,丁37の3・4)(ウ) 平成13年7月5日に開催された被告社団法人の企業委員会内の事故防止対策特別委員会においては,消防庁の消火器事故対策検討会への対応として,政府公報をもって全国の住宅に 設置されている期限切れの消火器を調査してもらうことが重要であるが,併せて,消火器は必要なものであるということも大きく主張していくべきである,全国の地方公共団体の清掃事務所に対し,粗大ごみと同様に引取切符等を用いて,有料で廃棄消火器を回収する仕組みを構築するよう要請すべきである, 廃棄消火器の有料での回収が定着してきている現在の実情を踏まえると,無料での引取りは絶対に行うべきでなく,被告会社には,無償引取りの実施を再考してもらう必要がある等の意見が出された。 また,被告社団法人が,消防庁に対して行った上記(イ)の提案 の文言については,「危険の少ない蓄圧式消火器」とあるところ-99-は,現在主流となって 要がある等の意見が出された。 また,被告社団法人が,消防庁に対して行った上記(イ)の提案 の文言については,「危険の少ない蓄圧式消火器」とあるところ-99-は,現在主流となっている加圧式消火器を否定するものと解されるおそれがあるので表現を改めるべきである,消火器が危険とのイメージは業界にとって好ましくないので危険の文字を除くべきである,「15年以上経過した消火器」を警告表示に記載されている年数に併せて「8年以上経過した消火器」とすべ きであるなどの意見が出されて,その点についての修正が行われた。 その他,同委員会では,全国消防本部及び各地区の販売業者団体並びに保守協会に対する,廃棄消火器の回収強化月間に関する協力要請文書の案が検討されたほか,今後の対策として, 消火器の梱包に同封している取扱説明書と,消火器に貼付している警告表示の文字を大きくすることを引き続き検討していくことが確認された。 (丁36の2・3,丁37の3)オ平成13年秋季全国火災予防運動の実施 (ア) 消防庁は,平成13年8月21日,各都道府県消防主管部長に対し,「平成13年秋季全国火災予防運動実施要綱の取扱いについて」(平成13年8月21日消防予第291号。以下「平成13年要綱通知」という。)を発出した。同通知に添付された資料には,「消火器事故防止対策の推進」という項目が設けられ ており,平成13年緊急対策案において提案されていた老朽化消火器等の一斉回収を実施することや,住宅に適した消火器等の普及促進を図るために積極的に広報活動を行うことが求められていた。 (乙13) (イ) 消防庁は,平成13年9月11日,「消火器破裂事故防止対-100-策の推進への協力について(依頼)」( 進を図るために積極的に広報活動を行うことが求められていた。 (乙13) (イ) 消防庁は,平成13年9月11日,「消火器破裂事故防止対-100-策の推進への協力について(依頼)」(平成13年9月11日消防予第316号)を発出し,被告社団法人に対し,同年11月9日から同月15日までの間実施される秋季全国火災予防運動において,老朽化消火器等の一斉回収の実施と住宅に適した消火器等の普及促進を図ることから,回収した消火器の適切な 処理と,消火器の回収を行う販売・点検業者に対する周知を依頼した。 これを受けて被告社団法人は,会員各社から系列の販売店に対し,上記消火器の一斉回収に積極的に参加すること等を要請する文書を発出し,これを受けて被告会社を始めとする各社は, 上記消火器の一斉回収の実施を販売店等に指示した。 (丙20の6,丁36の4,丁37の4)(ウ) 消防庁は,平成13年9月25日,「消火器事故防止対策の推進に係る留意事項について」と題する事務連絡を発出し,各都道府県消防主管課に対し,秋季全国火災予防運動の重点目標 の一つである老朽化消火器等の一斉回収における留意点として,容器外面に腐食の発生や変形が確認される消火器については,その程度にかかわらず回収の対象とすること,消火器の回収に当たっては,安全栓を抜かず,かつ,レバーを握らない等,その取扱いについて周知徹底を図ること,回収に係る費用は, 原則として消火器を廃棄しようとする者の負担とすること等を周知した。 (乙30)(エ) 大阪府においては,平成13年8月30日,府内の各市町村防災担当部(局)長及び各消防本部消防長に対し,平成13年 要綱通知の内容を周知した。 -101-これを受けて大阪市においては,平成13年秋季全国 は,平成13年8月30日,府内の各市町村防災担当部(局)長及び各消防本部消防長に対し,平成13年 要綱通知の内容を周知した。 -101-これを受けて大阪市においては,平成13年秋季全国火災予防運動において,消火器の定期的な点検の励行や,老朽化消火器に関する問合せ等の内容を盛り込んだ火災予防運動趣意書を各家庭に回覧するとともに,チラシを作成して,住宅防火訪問時や各種イベントにおいて配布し,消火器の取扱いに係る啓 発を図ることとした。 また,大阪市消防局は,同年10月,消火器の維持管理及び使用方法に関する注意事項を記載したパンフレットを作成して,平成13年秋季全国火災予防運動において,一般家庭や事務所に回覧・配布するなどした。 (乙45,46,弁論の全趣旨)カその他の平成13年緊急対策案の実施(ア) 消防庁は,平成13年緊急対策案に基づいて,老朽化消火器等の一斉回収や,住宅に設置することが適している消火器等の種類に関して,政府広報(TVスポット,新聞),消防庁機関誌 (消防庁が毎月発行する「消防の動き」),関係各誌(財団法人日本消防設備安全センターが毎月発行する情報誌「月刊フェスク」)への掲載を実施した。 (乙36~40,弁論の全趣旨)(イ) 消防庁は,平成13年11月6日,住宅に住宅用消火器等を 設置する場合の住民に対する助言として広報等に活用するために,「消火器等推奨基準」を策定し,その旨を各都道府県消防主管部長に対して通知した。 同基準においては,防火対象物や住宅に広く設置されている通常の消火器(赤色で塗色されているもの)は,定期的な点検 や整備などの日頃から適切な維持管理が必要なものであり,ま-102-た,適切に維持管理されていな 対象物や住宅に広く設置されている通常の消火器(赤色で塗色されているもの)は,定期的な点検 や整備などの日頃から適切な維持管理が必要なものであり,ま-102-た,適切に維持管理されていない場合には,消火器の能力を発揮できないことがあるだけでなく,加圧式の消火器が著しく腐食した場合には,消火器を使用した際,破裂することもあるとして,住宅に消火器等を設置するに当たっては,維持管理が比較的容易な住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具とするこ とが望ましいとされている。 (乙31)(ウ) 被告社団法人は,平成13年頃,「古い消火器はちょっと待って!!」と題するA4版のカラーのパンフレットを作成し,消火器メーカー等を通じて一般に配布した。同パンフレットに は,A3サイズのページの見開きに「消火器は圧力容器。古い消火器には危険が伴います。」とのタイトルが付されており,「サビの発生・変形や塗装の剥離のある耐用年数の過ぎた消火器は,決して使用しないで新しいものと取り替えてください。」との太字の記載のほか,消火器には使用期限が明記してあり, 未使用のものでも経年劣化が生じうること,古い消火器の疲労した本体容器は,圧力で破裂することがあること,加圧式消火器はレバーを握った瞬間に高い圧力がかかること等が記載されている。また,同パンフレットの裏表紙には,「錆や変形のある消火器は絶対に使用しないで!」とのタイトルの下に,本体 容器や蓋が腐食した消火器の写真を複数掲載するとともに,不用消火器の廃棄は,最寄りの消火器販売業者か製造者に連絡すべきことが記載されている。 (丁23,丁36の4)(8) 平成14年から本件事故が発生した平成21年頃までの被告ら の取組み-103-ア被告国の取 者か製造者に連絡すべきことが記載されている。 (丁23,丁36の4)(8) 平成14年から本件事故が発生した平成21年頃までの被告ら の取組み-103-ア被告国の取組み等(ア) 平成14年以降も,全国火災予防運動において,消火器事故防止対策として,老朽化した消火器の破裂事故を防止するため,住宅防火指導時や各種イベント等において,消火器の適正な維持管理や日常点検の励行,老朽化消火器等の廃棄方法について の啓発活動等が継続的に行われた。 (乙14,15,弁論の全趣旨)(イ) 大阪市においても,消防庁からの指導及び助言を受けて上記啓発活動が行われ,少なくとも平成18年までの間,毎年春と秋に行われる火災予防運動の際に,老朽化した消火器の破裂 事故を防止するために,各家庭用回覧チラシ等が作成され,住宅防火訪問時に,消火器の適正な維持管理や日常点検の励行,老朽化消火器等の廃棄方法についての啓発活動が行われた。 (乙47~55(各枝番を含む),弁論の全趣旨)イ被告会社を始めとする消火器メーカーの取り組み (ア) 被告会社は,老朽化消火器の破裂事故防止と循環型社会の形成に取り組むため,平成14年2月に,リサイクルセンターを建設し,消火器の回収及び処分を行ってきたところ,同年9月には,被告会社のリサイクルシステム(粉末消火薬剤のリサイクル原料化)が,消火器業界において初めて,日本消防検定 協会の型式承認を受け,同年10月には個別検定にも合格した。 (丙20の7)(イ) 被告会社は,平成17年頃,リサイクル率向上と不法投棄防止を目標として,年間約140万本の消火器を生産しつつ,年間約60万本の消火器を回収していた。 した。 (丙20の7)(イ) 被告会社は,平成17年頃,リサイクル率向上と不法投棄防止を目標として,年間約140万本の消火器を生産しつつ,年間約60万本の消火器を回収していた。 (丙20の9)-104-(ウ) 廃消火器については,危険性を有していることから,その処理が困難であり,また,これをリサイクルする手法が確立されていなかったことから,消防庁においては,廃消火器の適正かつ効率的なリサイクル技術やメーカーによる制度づくりに関する検討が行われてきた。また,環境省においても,これを踏 まえて,関係省庁・団体と協働し,メーカーによる全国的なリサイクルシステムづくりを具体化する検討を行ってきたところ,メーカーによる広域的なリサイクルシステムが整備されることになったことから,環境省は,平成17年9月8日,廃棄物処理法に基づく一般廃棄物の広域的処理に係る特例制度(製 造事業者等が自ら処理を行うことにより,適正な処理が確保される者について環境大臣が認定し,この者について廃棄物処理業に関する地方公共団体ごとの許可を不用とする特例制度。以下「広域認定制度」という。)の対象品目として,廃消火器を加えることになった。 これによって,被告社団法人に加盟している消火器メーカーが,広域認定制度に基づく環境大臣の認定を受け,広域的なリサイクルを開始していくこととなった。 (乙24)(エ) 環境大臣は,平成18年9月1日,申請があった消火器メー カー3社(株式会社初田製作所,被告会社,株式会社モリタ)に対し,広域認定制度に係る認定を行った。上記3社の国内シェアの合計は,消火器全体の約7割であり,被告社団法人に加盟する他の消火器メーカーも,広域認定制度に係る認定の申請を 会社,株式会社モリタ)に対し,広域認定制度に係る認定を行った。上記3社の国内シェアの合計は,消火器全体の約7割であり,被告社団法人に加盟する他の消火器メーカーも,広域認定制度に係る認定の申請を予定していた。 もっとも,各消火器メーカーが広域認定制度に係る認定を受-105-けて処理できるのは,登録した自社製品のみであったことから,収集効率が悪いという問題があった。 (乙25,丙17,18,弁論の全趣旨)(9) 廃棄消火器の回収本数被告社団法人の会員各メーカーによる,平成4年度から平成21 年度までの間の廃棄消火器の回収本数は,次のとおりである。 平成4年度 163万0060本平成5年度 107万1057本平成6年度 63万5154本平成7年度 52万7451本 平成8年度 53万7715本平成9年度 52万6502本平成10年度 65万1757本平成11年度 67万6884本平成12年度 80万4108本 平成13年度 145万6430本平成14年度 124万9245本平成15年度 134万3354本平成16年度 133万1864本平成17年度 133万8415本 平成18年度 169万5000本平成19年度 195万2179本平成20年度 200万4083本平成21年度 295万5054本(丁37の5) (10) 本件事故後の被告らの対応等-106-ア廃棄消火器に関する相談窓口の設置等(ア) 平成21年9月15日に本件事故が発生し,また,同月16日にも福岡県行橋市において,腐食が進んだ消火器の廃棄処理中に消火器が破裂して,操作していた男性が負傷する事故が発生したことを受けて,消 ア) 平成21年9月15日に本件事故が発生し,また,同月16日にも福岡県行橋市において,腐食が進んだ消火器の廃棄処理中に消火器が破裂して,操作していた男性が負傷する事故が発生したことを受けて,消防庁は,同月17日,「老朽化消火器の 適切な取扱いに係る周知の徹底について」(平成21年9月17日消防予第394号)を発出し,各都道府県消防防災主管部長及び東京消防庁・指定都市消防長に対し,a 消火器が風雨にさらされる場所や湿潤な場所等に設置されていないかを確認するとともに,消火器の状態を点検し,腐食が進んでいるも のは,絶対に使用しないこと,b 不用になった消火器については,放射,解体等の廃棄処理を自ら行うことなく,回収を行っている事業者に廃棄処理を依頼すること,特に,腐食が進んでいる加圧式の消火器は,容器破裂の危険性が大きいので,速やかに廃棄処理を依頼することが望ましいことについて,各都 道府県及び消防機関において,住民及び事業者に対して周知徹底するよう依頼するとともに,併せて,各地域における廃消火器リサイクルの回収窓口及びその連絡先の一覧表を作成し,配布・広報する等,消火器の回収先の周知も併せて行うよう要請した。 (乙6)(イ) 被告社団法人は,平成21年10月7日,老朽化消火器の取扱いに係る相談窓口として,各消火器メーカーの支店及び営業所等の電話番号及び住所を取りまとめた一覧表を作成し,被告社団法人のホームページに公表するとともに,消防庁に対して も報告した。 -107-(乙7,10)(ウ) 消防庁は,平成21年10月8日,「老朽化消火器の連絡・相談窓口について(情報提供)」と題する事務連絡を発出し,各都道府県消防防災主管課及び東京消防庁・各指定都市消防本部に対し, (ウ) 消防庁は,平成21年10月8日,「老朽化消火器の連絡・相談窓口について(情報提供)」と題する事務連絡を発出し,各都道府県消防防災主管課及び東京消防庁・各指定都市消防本部に対し,被告社団法人から報告された老朽化消火器の連絡・相 談窓口について,都道府県内の各市町村に周知するよう依頼した。 (乙10)(エ) 消費者庁は,平成21年10月16日,「老朽化消火器の取扱い等に関する注意喚起のお願い」と題する事務連絡を発出し, 各都道府県・政令指定都市消費者行政担当課及び独立行政法人国民生活センター・各消費者生活センターに対し,老朽化消火器の回収・廃棄処理についての連絡・相談窓口と,老朽化消火器の取扱いに係る注意事項について,消費者への周知及び注意喚起を行うよう指示した。 また,消防庁は,同日,消費者庁による上記事務連絡の発出を受けて,各都道府県消防防災主管課及び東京消防庁・各指定都市消防本部に対し,各都道府県及び消防機関においても,消費者担当部局等との情報の共有化を図るよう指示した。 (乙7) イ予防行政のあり方に関する検討会及び老朽化消火器の安全対策に関する連絡会の設置等(ア) 本件事故及びその後に発生した老朽化した消火器の破裂事故を踏まえて,平成21年10月から,消防庁の主催する「予防行政のあり方に関する検討会」(以下「予防行政検討会」とい う。)において,老朽化消火器による危害防止のあり方につい-108-て,消火器のライフサイクル(製造~流通~使用~廃棄)に沿って再点検を行うとともに,過去の事故情報の収集・分析を始めとする調査・検討が開始された。 また,同月から,日本消防検定協会,社団法人全国消防機器販売業協会,財団法人日本消防設備安全 ~廃棄)に沿って再点検を行うとともに,過去の事故情報の収集・分析を始めとする調査・検討が開始された。 また,同月から,日本消防検定協会,社団法人全国消防機器販売業協会,財団法人日本消防設備安全センター,東京消防庁, 千葉市消防局,消防庁,消防庁消防大学校消防研究センターから各委員が参加し,被告社団法人が事務局となって,「老朽化消火器の安全対策に関する連絡会」(以下「安全対策連絡会」という。)が設置された。なお,被告社団法人においては,予防行政検討会及び安全対策連絡会については,技術委員会が対応する ことになった。 (丁38の1,弁論の全趣旨)(イ) 平成21年11月12日に開催された被告社団法人の技術委員会では,予防行政検討会及び安全対策連絡会における検討のために必要となる情報についての調査等を会員が分担して 行うことが決定された(なお,一部の調査については消防庁等の安全対策連絡会のメンバーが担当)。 また,同委員会では,被告社団法人としての今後の対応として,法的有効期限の設置(有効期限に法的拘束力を持たせ,リサイクル推進システムと併せて,消火器の破裂事故を予防す る),長期設置消火器の点検の厳格化(水圧試験の義務化。法的有効期限の設定が困難な場合には,実質的な買換えを促進する手法がとれないかを検討する),蓄圧式消火器の点検基準の改正(外観点検のみとし,現行どおりの点検を要する加圧式消火器よりも有効期限を短くする),防火対象物,規模別による消火 器要求仕様を区別する(推定される点検実施率ごとに加圧式消-109-火器と蓄圧式消火器の棲み分けを図り,点検報告制度の対象外の防火対象物及び一般家庭においてはメンテナンスフリー化を推し進める),一般家庭への義務設置化を推進す 点検実施率ごとに加圧式消-109-火器と蓄圧式消火器の棲み分けを図り,点検報告制度の対象外の防火対象物及び一般家庭においてはメンテナンスフリー化を推し進める),一般家庭への義務設置化を推進するとの方向性を確認した。 被告社団法人の技術委員会においては,その後も,消防庁を 始めとする安全対策連絡会のメンバーも出席するなどして,老朽化消火器の安全対策に関する議論が続けられ,意見の集約が図られた。 (丁38の2~9)(ウ) 被告社団法人は,平成22年5月24日,「老朽化消火器の 安全対策に関する日本消火器工業会の方針」(以下「平成22年工業会方針」という。)を取りまとめ,a 老朽化消火器の安全確実な回収(市場に放置されてる老朽化消火器の安全確実な回収とリサイクルの推進を,消防機関等の協力の下実施する),b一般家庭への住宅用消火器の普及推進(消防庁の「消火器等推 奨基準」による住宅用消火器の推奨に基づき,一般家庭には「住宅用消火器」(蓄圧式・詰替なし・有効期限付)を販売・設置するよう,積極的な広報啓発を実施する),c 業務用消火器の安全性向上(防火対象物等に設置される業務用消火器の安全性を更に向上させ,水圧検査の導入に関し,安全な作業方法等を提 案する)を,老朽化消火器の安全対策として実施することを公表した。 (甲8)ウ被告社団法人による広域認定制度に係る認定の取得等(ア) 被告社団法人は,平成21年12月28日,団体として広域 認定制度に係る認定を取得し,廃消火器の安全で効率的な回収-110-とリサイクルの推進を目的として,平成22年1月から新たな廃消火器リサイクルシステム(以下「本件リサイクルシステム」という。)の運用を開始した 定を取得し,廃消火器の安全で効率的な回収-110-とリサイクルの推進を目的として,平成22年1月から新たな廃消火器リサイクルシステム(以下「本件リサイクルシステム」という。)の運用を開始した。これによって,被告社団法人の会員である各メーカーは,どのメーカーが販売した消火器でも回収することが可能になり,全国の消火器販売業者をも広域認定 制度の枠組みに取り入れることで,回収窓口が広がり,効率的な回収システムが構築されることとなった。 (甲8,20,丁33の1・2)(イ) 消防庁は,平成22年1月15日,「廃消火器リサイクルシステム(団体申請)の運用開始について(情報提供)」と題する 事務連絡を発出し,各都道府県消防防災主管課及び東京消防庁・各指定都市消防本部に対し,被告社団法人による本件リサイクルシステムの運用開始を周知した。 また,消防庁は,同年3月19日,「廃消火器リサイクルシステム回収窓口について(情報提供)」と題する事務連絡を発出 し,各都道府県消防防災主管課及び東京消防庁・各指定都市消防本部に対し,被告社団法人から同日時点で2713社の回収窓口のリストが取りまとめられた旨の連絡があったことを,都道府県内の各市町村に周知するよう要請した。 (乙11,12) エ 「老朽化消火器の破裂事故を踏まえた安全対策」の取りまとめ(ア) 消防庁は,平成22年7月16日,予防行政検討会における議論の結果等を踏まえて,「『老朽化消火器の破裂事故を踏まえた安全対策』のとりまとめ」と題する資料(以下「平成22年安全対策」という。)を作成した。 (イ) 平成22年安全対策においては,消火器の製造から廃棄に-111-至るまでの現況,老朽化消火器の破裂事故の発生状況等,消 以下「平成22年安全対策」という。)を作成した。 (イ) 平成22年安全対策においては,消火器の製造から廃棄に-111-至るまでの現況,老朽化消火器の破裂事故の発生状況等,消火器に関する海外事情の調査結果が取りまとめられた。なお,平成20年度の時点では,消火器製造本数は年間約400万本であり,そのうちの約76.9%が消火器保守・販売業者を通じて,約9.3%がホームセンター等の量販店を通じて販売され ており,点検報告制度の対象となる防火対象物に約160万本,同制度の対象外である防火対象物に約125万本,一般家庭に約85万本,街頭や建設現場に約13万本,自動車・鉄道・船舶に約17万本がそれぞれ設置され(国内の消火器のストック本数は推計で約4000万本),年間約245万本が廃棄され ている。 (ウ) また,平成22年安全対策では,老朽化消火器による危害を防止する上での課題として,老朽化消火器の破裂事故による人的被害は,保守管理が不十分で腐食が進んだものを操作,廃棄処理等しようとする際に発生しており,このような事態に至る 主な要因として,a 消火器は日常的に用いられる製品ではないこと等から,設置後は長年存置されたまま,ユーザーによる基本的な保守管理がされないことが多いこと,b 近年,メーカーによる廃消火器のリサイクルが行われるようになったものの,それ以前は,ほとんどの地域において廃棄処理困難物と して扱われており,古くなったものが処分されずにストックされる状態が長年続いてきたこと,c 消火器は高圧のガスが用いられており,腐食が進んで強度が低下したものが破裂の潜在的危険性を有するということが,ユーザーや廃棄処理を行う作業者において十分認識されておらず,無造作に老朽化消火器の 器は高圧のガスが用いられており,腐食が進んで強度が低下したものが破裂の潜在的危険性を有するということが,ユーザーや廃棄処理を行う作業者において十分認識されておらず,無造作に老朽化消火器の 操作,処理が行われてしまうことが指摘されている。 -112-(エ) さらに,老朽化消火器による危害を防止するための対応策として,a 製造段階においては,老朽化に伴う危害防止に関する内容を充実させるとともに,より見やすい表示方法を採用し,消防庁において,規格上の表示事項として規定すること,より危害を生じにくい構造等の消火器を普及していくため,平 成22年工業会方針に基づき,住宅用消火器の十分な供給を早急に確保するとともに,蓄圧式への切替等を進める,b 流通段階においては,メーカー及び販売事業者を中心として,消火器購入者に対し,老朽化に伴う危害防止に関する情報提供を行うとともに,設置先に応じた消火器が適切に選択されるよう周 知徹底をはかるとともに,住宅用消火器を含め,蓄圧式のもの等についてコスト低減を図ること等により,円滑な普及を図る,c 使用段階においては,関係事業者及び消防機関において,消火器の適切な維持管理,点検,更新等を推進し,老朽化消火器の取扱いについて継続的に注意喚起をするとともに,消防庁 が定める消火器の点検基準について,海外の例等を踏まえて,内容の充実等を図る,d 廃棄段階においては,老朽化消火器の回収を推進するため,被告社団法人を中心として,各地域での受け皿を十分確保し,住宅や事業所への定着を図るとともに,老朽化消火器の廃棄処理に伴う危害防止を徹底するために,被 告社団法人を中心として,広報啓発を行うなどの方針が示された。 (甲8)オ平成22年安全対策を踏まえた もに,老朽化消火器の廃棄処理に伴う危害防止を徹底するために,被 告社団法人を中心として,広報啓発を行うなどの方針が示された。 (甲8)オ平成22年安全対策を踏まえた規格省令の改正総務大臣は,平成22年安全対策を踏まえて,規格省令の改正 を行った(平成22年改正省令。平成22年改正省令による改正-113-の内容は,法令の定め(2)イ(イ)のとおりである。)。 2 争点①(被告国は,昭和60年5月30日頃の時点で,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生する危険性を予見することが可能であったか否か)について(1) 前提事実(4)及び(6)で認定したとおり,平成21年9月に発生 した本件事故の原因となった本件消火器は,被告会社の製造に係る平成元年式の自動車用の加圧式消火器であったというのであるが,前提事実(3)並びに前記1(2)及び(3)で認定したところによると,① 遅くとも昭和43年以降,老朽化した加圧式消火器の破裂事故が,毎年,複数回にわたって繰り返し発生しており,多数 の死傷者が出ていたこと,② 上記加圧式消火器の破裂事故は消火器の操作時に発生しており,腐食による本体容器の強度低下を主要因とするものが過半数を占めていたこと,③ 消防庁は,廃棄されて野積みされていた老朽化した加圧式消火器で遊んでいた者が消火器を操作したところ,底部の腐食によって消火器が破裂 し,同人が死亡した事故(昭和53年事故)の発生を受けて,昭和54年1月に,消火器の廃棄処理の指導に関する昭和54年通知を発出し,老朽化した消火器を屋外等に放置することがないよう,消火器の販売,点検,整備等を行う業者に指導を行うよう要請したこと,④ 消防庁は,老朽化した消火器を操作したとこ る昭和54年通知を発出し,老朽化した消火器を屋外等に放置することがないよう,消火器の販売,点検,整備等を行う業者に指導を行うよう要請したこと,④ 消防庁は,老朽化した消火器を操作したとこ ろ,底部の腐食により消火器が破裂し,死亡者が出た2件の事故(昭和60年事故)の発生を受けて,昭和60年5月に,消火器による人身事故の防止のために,消火器の安全な使用についての周知徹底や,廃棄処理についての指導の徹底を図ることを目的とした昭和60年通知を発出したことの各事実を指摘することがで きる。 -114-(2) 以上のような諸事情に鑑みると,被告国においては,遅くとも昭和60年5月頃の時点においては,老朽化した加圧式消火器の破裂による人身事故が発生することについての抽象的な危険性を予見することが可能であったというべきである。 3 争点②(自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して, 防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めなかったこと,及び加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の 安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法か否か)について(1) 公権力の行使に当たる公務員の行為が,国賠法1条1項の適用上違法となるのは,当該公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を与えた場合であるところ(最 高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照),公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目 違背して当該国民に損害を与えた場合であるところ(最 高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照),公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関 係において,同項の適用上違法となると解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁等参照)。 (2) 原告は,被告国(自治大臣)においては,平成元年頃までに,本件規格省令(平成元年当時の規格省令)を改正して,防火対象物以 外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置す-115-る消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めるべきであり,また,加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めるべきであったにもか かわらず,これを怠ったとして,これらの被告国の不作為(規制権限の不行使)が国賠法上違法である旨主張する。 そこで,まず,被告国の公務員による規制権限の不行使の違法性を検討する前提として,自治大臣が,原告の主張するような本件規格省令の改正を行う権限を有しているといえるか否かについて検 討する。 (3)ア消防法21条の2第1項は,検定対象機械器具類等(消火器もこれに当たる)については,消防法の定めに従って検定をするものと定めており,この検定は,型式承認(同条の2第2項)及び個別検定(同条の2第3項)の2段階から成る 項は,検定対象機械器具類等(消火器もこれに当たる)については,消防法の定めに従って検定をするものと定めており,この検定は,型式承認(同条の2第2項)及び個別検定(同条の2第3項)の2段階から成るところ,型式承認 とは,検定対象機械器具等の型式に係る形状等が自治省令で定める検定対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の承認をいうものとされている。そして,消火器に関する自治省令で定める検定対象機械機具等に係る技術上の規格を定めているのが規格省令である。 消防法が,検定対象機械器具等について検定を行うこととしているのは,これらの機械器具等が,火災の予防若しくは警戒,消火又は人命の救助等のために重要な役割を果たすものであり,一定の性能を有しないことにより実際の火災等において必要な機能を発揮することができないものがあった場合には,重大な問題 が生じることから,これらの機械器具等について,検定により一-116-定の性能等を有することを担保するためであると解するのが相当であり,このような消防法の趣旨に鑑みると,規格省令は,同法21条の2第2項による委任を受け,製造段階において消火器が有すべき技術上の規格を定めることにより,消火器の製造業者に対して一定の規制を課すものとみるのが相当である。 イそこで,まず,原告の主張する本件規格省令の改正内容のうち,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定めること(以下,これに係る主張を「原告の主張1」という。)につ いて検討するに,原告の主張1は,その形式上は,「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物 火器の規格を定めること(以下,これに係る主張を「原告の主張1」という。)につ いて検討するに,原告の主張1は,その形式上は,「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器」という,新たな消火器の類型を設けて,この類型の消火器について,「蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る」とする旨の制限を設けるというも のであり,一見すると,製造段階において消火器が有すべき技術上の規格を定めることにより,消火器の製造業者に対して一定の規制を課すものであるようにみえる。 しかしながら,原告の主張1の内容は,実質的には,「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物」を 管理する者に対して,「蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造」の消火器以外の消火器を設置することを禁止することを目的とするものにほかならないというべきであり,消火器の製造業者に対する規制という規格省令の目的の範囲を逸脱するものであるといわざるを得ない。 なお,平成5年改正省令では,消火器のうち,住宅における使-117-用に限り適した構造及び性能を有する「住宅用消火器」という新たな類型の消火器を設けた上で(同省令1条の2第2号),住宅用消火器は,蓄圧式の消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造でなければならない旨が定められている。しかしながら,同省令において設けられた「住宅用消火器」は,前記のとお り住宅における使用に限り適した「構造及び性能」を有するものとして定義付けられており,あくまでも消火器が有すべき技術上の規格を前提とするものであるのに対し,原告の主張1にいう「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防 造及び性能」を有するものとして定義付けられており,あくまでも消火器が有すべき技術上の規格を前提とするものであるのに対し,原告の主張1にいう「防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器」は,消火器の設置場所に着目するも のであって,その「構造及び性能」に着目するものであるとは考え難い。 したがって,平成5年改正省令において,上記のような規定が設けられたからといって,原告の主張1のような内容の規定は,製造段階において消火器が有すべき技術上の規格を定めるもの であるということはできないので,原告の主張1のような内容に本件規格省令の改正をすることは,自治大臣が消防法による委任に基づいて有する職務上の権限の範囲外であるということになる。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,自治大 臣が上記のような本件規格省令の改正を行う職務上の法的義務を負っていたということはできない。 ウ次に,原告の主張する本件規格省令の改正内容のうち,加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安 全性に係る十分な表示をする規格を定めること(以下,これに係-118-る主張を「原告の主張2」という。)について検討する。 原告は,加圧式消火器について,(ア) 使用時の安全な取扱いに関する事項(その内容は,「耐用年数経過前であっても,本体容器の底部その他に腐食が生じ又は腐食が生じている可能性がある消火器は,使用者の生命に危険を及ぼす可能性のある破裂事故の 危険があるため絶対に使用しないこと」(本件原告主張表示(ア))),(イ) 点検に関する事項(その内容は,「加圧式粉末消火器については,耐用年数経 者の生命に危険を及ぼす可能性のある破裂事故の 危険があるため絶対に使用しないこと」(本件原告主張表示(ア))),(イ) 点検に関する事項(その内容は,「加圧式粉末消火器については,耐用年数経過前にも,製造から一定期間経過後(例えば3年経過後)は,関係者は点検をしなければならず,耐用年数経過後は,水圧試験などによる点検を実施し,これら点検を完了して いない消火器は破裂の危険性があるから使用してはならないこと」(本件原告主張表示(イ))),(ウ) 廃棄時の安全な取扱いに関する事項(その内容は,「耐用年数を明示し,耐用年数経過後,水圧試験などによる点検を実施していない消火器は,破裂事故の危険性があるため,関係者が直ちにリサイクルのための連絡先へ連絡 して専門の廃棄業者に処分を依頼すること及びその連絡先」(本件原告主張表示(ウ))),(エ) 住宅用消火器ではない旨(本件原告主張表示(エ)),(オ) 点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示(本件原告主張表示(オ))をすることを義務付けるべきであった旨主張する。 本件原告主張表示(ア)~(エ)の各表示に関する本件規格省令の改正(ただし,その内容に関しては,別途考慮を要する。)に関しては,同省令38条所定の消火器の「表示」に関するものとして,消火器の製造業者に対して一定の規制を課すものであるということができるから,少なくとも自治大臣が有する権限の範囲内の 事柄に該当するということができる(なお,実際にも,平成22-119-年改正省令において,使用時の安全な取扱いに関する事項,点検に関する事項,廃棄時の連絡先及び安全な取扱いに関する事項,住宅用消火器でない旨の各表示が,同省令38条1項において,消火器の見やすい位置に表 正省令において,使用時の安全な取扱いに関する事項,点検に関する事項,廃棄時の連絡先及び安全な取扱いに関する事項,住宅用消火器でない旨の各表示が,同省令38条1項において,消火器の見やすい位置に表示すべき事項として付け加えられている。)。 しかしながら,本件原告主張表示(オ)の「点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨」の表示については,一見すると,消火器の「表示」に該当するように見えるものの,実質的には,「点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設」の管理者に対し,加圧式消火器を設置することを禁止す ることを目的とするものにほかならないというべきであり,消火器の製造業者に対する規制という,消防法の委任に基づく規格省令の目的の範囲を逸脱するものであるといわざるを得ない。 したがって,原告の主張2のうち,本件原告主張表示(オ)のような内容の表示は,製造段階において消火器が有すべき技術上の規 格に関するものであるということはできないから,このような内容の本件規格省令の改正を行うことは,自治大臣が消防法による委任に基づいて有する職務上の権限の範囲外であるということになる。 そうすると,その余の点について判断するまでもなく,自治大 臣が,原告の主張2のうち本件原告主張表示(オ)のような本件規格省令の改正を行う職務上の法的義務を負っていたということはできない。 (4) そこで,次に,本件原告主張表示(ア)~(エ)の各表示に関する本件規格省令の改正を行わなかったことについて,自治大臣が,原告と の関係で上記改正を行うべき法的義務を負い,その義務の違反があ-120-ったと認められるか否かについて検討する。 ア前記(3)アで説示したとおり,消防法が,同法21条の 大臣が,原告と の関係で上記改正を行うべき法的義務を負い,その義務の違反があ-120-ったと認められるか否かについて検討する。 ア前記(3)アで説示したとおり,消防法が,同法21条の2第1項において,消火器を含む検定対象機械器具等について検定を行うこととしているのは,火災の際に重要な役割を果たすことになるこれらの機械器具等が,一定の性能等を有することを担保するた めであると解されるところ,規格省令は,同条の2第2項による委任を受けて,上記のような観点から,製造段階において消火器が有すべき技術上の規格を定めている。 前記のような消防法の趣旨に鑑みると,消防法及びその委任を受けた規格省令は,火災を予防,警戒及び鎮圧することにより, 国民の生命,身体及び財産を火災から保護することを直接の目的とするものではあるものの,消火器を含む検定対象機械器具等の中には,火災の際,使用者によって操作されることが当然に想定されるものが含まれていることに照らすと,火災時等に,これを使用・操作する者等の生命及び身体等の安全も,消防法により法 律上保護されたものであって,単なる反射的利益に止まるものではないというべきである。 もっとも,消防法が検定対象機械器具等の具体的な規格を省令に包括的に委任した趣旨は,その具体的な規格が技術的事項であり,その内容を,一定の政策的な判断を踏まえた上で,技術の進 歩等に適合したものに改訂していくためには,これを主務大臣に委ねるのが適当であると考えられたことによるものと解されることからすると,規格省令の改正に係る権限を行使するか否かの判断は,自治大臣の裁量事項に属するものであるというべきである。 イそこで,消防法等の法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に-121- 格省令の改正に係る権限を行使するか否かの判断は,自治大臣の裁量事項に属するものであるというべきである。 イそこで,消防法等の法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に-121-照らし,自治大臣が,本件原告主張表示(ア)~(エ)の各表示に関する本件規格省令の改正を行わなかったことが,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたといえるか否かについて検討する。 (ア) 前提事実(8)並びに前記1(3)~(5)で認定したところによ ると,① 我が国において,昭和60年から平成元年頃までにかけて生産された消火器は,その約90%が加圧式消火器であり,かつ,昭和63年当時,被告会社を始めとする消火器メーカーにおいては,蓄圧式消火器を大量に生産する技術が確立されてはいなかったこと,② 消防庁は,老朽化した加圧式消火 器を操作した際,底部の腐食により消火器が破裂し,死者が出た昭和60年事故を受けて,一般家庭等にある消火器においても,適切な維持管理に努め,腐食が発生しているものについては製造業者や販売業者等に相談することを指導するなどして,消火器の安全な使用についての周知徹底を図るとともに,消火 器の廃棄処理についての指導の徹底を図ることを要請する,各都道府県消防主管部長宛ての昭和60年通知,及び消火器の適切な設置,維持管理,点検及び適切な廃棄処分等がされるよう周知徹底を図ることを要請する,各都道府県消防主管部長宛ての昭和61年通知を発出し,また,被告社団法人は,昭和61 年通知が発出されたことを受けて,同年10月以降に製造された消火器には,製造者の責任として昭和61年表示を行うことを決定し,各消火器メーカーは,これに従って,消火器の本体容器に,昭和61年表示が記載されたラベルを貼付す を受けて,同年10月以降に製造された消火器には,製造者の責任として昭和61年表示を行うことを決定し,各消火器メーカーは,これに従って,消火器の本体容器に,昭和61年表示が記載されたラベルを貼付するようになったこと,③ 昭和61年表示には,「維持管理についての注 意事項」として,「1.高温,多湿のところは,避けて設置して-122-ください。屋外,ちゅう房や腐食性ガスが,発生するところでは,格納箱に収納するなど保護処置をしてください。2.腐食,変形などのある場合は,使用しないでください。3.定期的に点検してください。おおむね5年を経過すると性能,機能が低下することがありますので家庭など点検義務のないところで も5年を目安に点検してください。4.点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問い合せください。」との記載があり,また,「容器の耐用年数」として,「容器の耐用年数は,設置場所や管理の仕方によって異なります。正しい維持管理が行われた場合に,おおむね耐用8年です。」との記載があるこ と,④ 消防庁は,大阪市において収集したごみの選別作業中に,廃棄された老朽化した加圧式消火器が破裂し,負傷者が出た昭和63年事故等の発生を受けて,被告社団法人との間で,消火器の安全対策についての昭和63年協議を行い,その結果,被告社団法人は,昭和61年表示を一部改訂して,昭和61年 表示中の腐食,変形等がある場合には使用しないこととの表記を削除し,これに代えて,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」との使用上のご注意表示(横6㎝,縦3㎝の寸 法のもの)を掲示することとし,遅くとも昭和64 腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」との使用上のご注意表示(横6㎝,縦3㎝の寸 法のもの)を掲示することとし,遅くとも昭和64年1月末以降に製造された加圧式消火器には,上記の改訂を加えた,各消火器メーカー作成に係る平成元年表示が貼付されるようになったこと(なお,昭和63年12月頃に製造された本件消火器にも平成元年表示とほぼ同様の文言が記載されたラベルが貼 付されている。),⑤ この際,既設の加圧式消火器についても,-123-消火器の点検等の際に,被告社団法人作成に係る使用上のご注意表示が記載されたラベル(無償)が貼付されるようになったことの各事実を指摘することができる。 (イ) 以上指摘したところによると,被告国は,昭和60年事故及び昭和63年事故の各発生を受けて,昭和60年通知及び昭和 61年通知を各都道府県消防主管部長宛てに発出し,また,被告社団法人においても,このような被告国の対応を踏まえて,被告国との間で協議を行うなどした上で,消火器の本体容器に貼付すべき表示の内容を決定し,各消火器メーカーにおいても,被告社団法人において決定した内容の表示ラベルを作成して, これを本体容器に貼付するなどしているのであるから,被告国からの要請に応じた対応が被告社団法人及び各消火器メーカーによって行われているということができる。 そして,前記(ア)で指摘したとおり,平成元年表示には,消火器の「使用時の安全な取扱いに関する事項」(本件原告主張表示 (ア)に対応)として,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでくだ 主張表示 (ア)に対応)として,「この消火器は,操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび,腐食,変形,キャップのゆるみがあるもの,また,廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。」との文言が,同「点検に関する事項」(本件原告主張表示(イ)に対応)として,「定期的に点検してください。おお むね5年を経過すると性能,機能が低下することがありますので家庭など点検義務のないところでも5年を目安に点検してください。」との文言が,同「廃棄時の安全な取扱に関する事項」(本件原告主張表示(ウ)に対応)として,「点検または廃棄については,販売店またはメーカーにお問い合せください。」との文 言がそれぞれ記載されている。 -124-このような諸事情に鑑みると,被告国が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正することはなかったものの,その時点までに発生していた消火器の破裂事故の発生状況及びその原因等の分析・検討の結果,並びに消火器の特性等を踏まえた上で,消火器の本体容器には耐用年数があること,消火器については 5年を目安に点検することが必要であること,消火器は操作すると容器全体に圧力がかかるため,腐食,変形等のあるものや廃棄されたものは危険なので使用してはいけないこと,廃棄の際には販売店又はメーカーに問合せを行うべきことなどの,加圧式消火器の破裂事故の発生を予防するために必要であると 考えられる表示を消火器の本体容器に掲示すること自体は,被告社団法人との協議等を通じて,平成元年頃までの時点において,各消火器メーカーの協力の下で実現されていたということができる。 なお,原告は,自治大臣には,平成元年頃までに,加圧式消 火器について,単に,使用時の安全な取扱いに関する事項,点 各消火器メーカーの協力の下で実現されていたということができる。 なお,原告は,自治大臣には,平成元年頃までに,加圧式消 火器について,単に,使用時の安全な取扱いに関する事項,点検に関する事項,廃棄時の安全な取扱いに関する事項を表示するに止まらず,本件原告主張表示(ア)~(ウ)のような表示をするよう,本件規格省令を改正すべき義務があった旨主張する。しかしながら,消火器の本体容器に,具体的にどのような表現を 用いて表示を行うかについては,被告社団法人あるいは各消火器メーカーが決定すべき事柄であり,自治大臣に,その具体的な文言等その表現を決定する法的な職務上の権限があったということはできない。 (ウ) また,本件原告主張表示(エ)に関しては,平成元年表示にお いても実現されてはいないところ,原告の主張は,本件規格省-125-令を改正して,「住宅用消火器」という,住宅における使用に限り適した構造及び性能を有する新たな消火器の類型を設けた上で(なお,原告は,当該類型の消火器は蓄圧式のものであることを前提としているものと解される。),消火器に,その旨の表示を行うことを定めるべきであったとの主張であると解さ れる。しかしながら,前記(ア)で指摘したとおり,平成元年当時は,我が国で生産される消火器の約90%は加圧式消火器であり,蓄圧式消火器を大量に生産する技術は確立されてはいなかったというのであるから,そもそも,平成元年頃までの時点で,我が国において,加圧式消火器に替えて,蓄圧式消火器を広く 普及させることは,極めて困難であったといわざるを得ない。 また,前提事実(3)及び前記1(2)ア,同(3)ア及び同(4)アで認定したところによると,昭和43年頃以降,加圧式消火器の破裂事故が繰返し発 及させることは,極めて困難であったといわざるを得ない。 また,前提事実(3)及び前記1(2)ア,同(3)ア及び同(4)アで認定したところによると,昭和43年頃以降,加圧式消火器の破裂事故が繰返し発生していたものの,少なくとも被告国が平成元年頃の時点において把握していた事故(昭和53年事故,昭 和60年事故及び昭和63年事故等)は,廃棄された消火器や老朽化した消火器を操作することによって発生したものである。このような我が国における消火器生産の実情や,消火器による事故の発生状況等に鑑みると,自治大臣において,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して,住宅における使用に限 り適した構造及び性能を有する「住宅用消火器」という新たな類型の消火器を設けた上で,消火器に,その旨の表示を行うことを定めるべき義務が発生していたとみることはできない。 (エ) そうすると,自治大臣が,平成元年頃までに,本件原告主張表示(ア)~(エ)の各表示に関する本件規格省令の改正を行わな かったことが,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を-126-欠いていたということはできない。 (5) 以上によると,自治大臣が,平成元年頃までに,本件規格省令を改正して,防火対象物以外の施設及び点検報告制度の対象とならない防火対象物に設置する消火器は蓄圧式消火器であって,かつ,消火剤を再充てんできない構造のものに限る旨の消火器の規格を定 めなかったこと,及び加圧式消火器について,点検報告制度の対象となる防火対象物以外の施設に設置してはならない旨の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法であるということはできない。 4 争点④(被告社団法人に,(ア) 本件消火器の製造時点において, の表示をするなど,加圧式消火器の安全性に係る十分な表示をする規格を定めなかったことが,国賠法上違法であるということはできない。 4 争点④(被告社団法人に,(ア) 本件消火器の製造時点において,消 火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をすべき義務,(イ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底すべき義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点にお いて,耐用年数が経過した消火器を確実に回収する制度を構築すべき義務があったか否か,また,被告社団法人がこれらの義務を怠ったか否か)について(1) 原告は,本件事故に関して,被告社団法人が原告に対し不法行為に基づく損害賠償義務を負うとした上で,被告社団法人は,原告に 対する関係で,不作為による不法行為における違法性又は過失の存否の判断の前提となる結果回避義務(作為義務)として,ラベル表記義務,周知徹底義務及び回収システム構築義務を負っていた旨主張する。 しかしながら,前提事実(4)及び(6)で認定したとおり,本件事故 は,平成2年5月19日頃以降,屋外駐車場である本件駐車場を管-127-理していたFが,道路からその内部を見通すことが可能であり,かつ,道路から自由に出入りできる状態になっている本件駐車場内に,本件消火器を含む4本の消火器が置かれていることを知りながら,これらの消火器を約19年にわたって放置し続けていたところ,本件駐車場に侵入した原告が,本件消火器で遊ぼうとしてこれを作動 させた際,老朽化して底部の腐食が進んでいた本件消火器が内圧上昇により破裂して,原告が傷害を負 にわたって放置し続けていたところ,本件駐車場に侵入した原告が,本件消火器で遊ぼうとしてこれを作動 させた際,老朽化して底部の腐食が進んでいた本件消火器が内圧上昇により破裂して,原告が傷害を負ったというものである。このような本件事故が発生した経緯や本件事故の発生状況に鑑みると,本件消火器の破裂による原告の受傷という結果の発生を回避することが可能であり,かつ,上記結果の発生を回避すべき義務を負って いたのは,本件駐車場を管理することによって本件消火器を管理していたFであり,Fには,本件駐車場に立ち入った者が本件消火器を操作し,その結果,同消火器が破裂することによって死傷事故が発生することを防止するために,これを本件駐車場から撤去するなどの措置を取るべき注意義務(作為義務)があったというべきであ る。 他方,被告社団法人は,国内で唯一の消火器メーカーを構成員とする団体であり,消火器類等の使用維持の方法の宣伝・普及,消火器類等の調査・研究等を事業の内容としているものの(前提事実(1)イ),その立場上,本件事故の発生原因となった本件消火器そのもの を管理する立場にないことは明らかである。そうすると,被告社団法人においては,本件消火器が具体的にどのような状態にあったのかを知り得る立場にはなく,そうである以上,本件事故が発生することを具体的に予見することもできないのであるから,本件事故の発生を回避すべき具体的措置を講じることもできなかったといわ ざるを得ない。 -128-以上によると,被告社団法人が,原告に対する関係で,本件事故の発生という結果の発生を回避するための注意義務として,何らかの作為義務を負っていたということはできない。 (2) なお,前記1(1)~(4)及び(6)~(8)で認定したとおり,被 係で,本件事故の発生という結果の発生を回避するための注意義務として,何らかの作為義務を負っていたということはできない。 (2) なお,前記1(1)~(4)及び(6)~(8)で認定したとおり,被告社団法人は,その設立以降,一貫して消防庁と連携し,消防庁からの指 導に基づいて消火器の規格等に関する調査研究や意見具申を行うなどしていたほか,遅くとも昭和54年頃以降は,消火器の破裂事故が発生した際に,消防庁と連携しながら事故対策を検討するなどしていたことからすると,被告国との関係では,その指導や要請に従って,消火器の破裂事故の発生を防止するための方策を講じるべ き立場にあったということはできる。しかしながら,そのことから直ちに,被告社団法人が,原告を始めとする消火器を実際に使用(操作)する者との関係で,私法上の注意義務を負うことになるわけではない。 そして,仮にこの点については措くとしても,前記1(2)~(4)及 び同(6)~(8)で認定したとおり,被告社団法人は,老朽化した消火器の破裂事故が繰り返されるようになった後,同様の事故の発生を抑止するために,消火器の耐用年数や,消火器の取扱いについての注意事項等を明示するラベルの表記内容等についての検討を行って,その内容を決定した上で,その会員である各消火器メーカーに 対し,これに準拠したラベルを消火器の本体容器に貼付するよう求めたり,消火器の処理方法等に関する専門業者向けのマニュアルを作成したり,一般向けに消火器の破裂事故を回避するために必要な知識を周知するためのパンフレット等を作成したり,老朽化した消火器を回収するための制度の構築に向けた取組みを行うなどして きたというのである。 -129-以上のような被告社団法人が行った各取組みの具体的な内 パンフレット等を作成したり,老朽化した消火器を回収するための制度の構築に向けた取組みを行うなどして きたというのである。 -129-以上のような被告社団法人が行った各取組みの具体的な内容等に鑑みると,被告社団法人は,被告国からの指導や要請に従って,十分な対応をしてきたというべきである。 (3) 以上によると,被告社団法人が,原告に対する関係で,本件事故の発生に関して,不法行為における違法性又は過失の存否の判断の 前提となる結果回避義務(作為義務)を負っていたということはできないので,この点に関する原告の主張は,採用することができない。 5 争点⑥(被告会社に,(ア) 本件消火器の製造時において,製造する消火器を,加圧式消火器からより安全性の高い蓄圧式消火器に切り替 えるべき義務,(イ) 本件消火器の製造時点において,消火器の使用者が容易に認識できる場所に,相当の大きさのラベルで表記することによって,消火器の取扱いにつき十分な注意喚起をすべき義務,(ウ) 本件事故が発生するまでの時点で,消火器の危険性及びその維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対し,広報活動等を通じて周知徹底 すべき義務,(エ) 本件事故が発生するまでの時点で,耐用年数が経過した消火器を回収すべき義務があったか否か,また,被告会社がこれらの義務を怠ったか否か)について(1) 原告は,本件事故に関して,被告会社が原告に対し不法行為に基づく損害賠償義務を負うとした上で,被告会社は,原告に対する関 係で,不作為による不法行為における違法性又は過失の存否の判断の前提となる結果回避義務(作為義務)として,蓄圧式消火器に切り替える義務,ラベル表記義務,周知徹底義務及び回収義務を負っていた旨主張する。 しかしながら,被告会社は る違法性又は過失の存否の判断の前提となる結果回避義務(作為義務)として,蓄圧式消火器に切り替える義務,ラベル表記義務,周知徹底義務及び回収義務を負っていた旨主張する。 しかしながら,被告会社は,本件消火器を製造したメーカーでは あるものの,本件事故は,本件消火器それ自体に何らかの瑕疵があ-130-ったことによって発生したものではなく,前記4(1)で説示したとおり,本件消火器を管理していたFが,老朽化した本件消火器の適切な管理を怠ったことによって発生したものである。 そして,被告会社が本件消火器を管理する立場にないことは明らかであるから,被告会社においては,本件消火器が具体的にどのよ うな状態にあったのかを知り得る立場にはなく,そうである以上,本件事故が発生することを具体的に予見することもできないから,本件事故の発生を回避すべき具体的措置を講じることもできなかったといわざるを得ない。 以上によると,被告会社が,原告に対する関係で,本件事故の発 生という結果の発生を回避するための注意義務として,何らかの作為義務を負っていたということはできない。 (2) なお,被告会社においては,消火器のメーカーとして,消火器の本体容器に適切な注意喚起のための表示を行ったり,消火器の維持・管理・取扱方法について,一般消費者に対して情報提供を行っ たり,耐用年数を経過した消火器を回収するための方策を講じるべき立場にあったということはできるものの,それは,あくまでも道義的なものであるに止まり,消火器を実際に使用(操作)する者に対する私法上の注意義務となるものではない(なお,前記3イ(ウ)で説示したとおり,平成元年頃までの時点で,我が国において,加圧 式消火器に替えて,蓄圧式消火器を広く普及させることは,極めて困 対する私法上の注意義務となるものではない(なお,前記3イ(ウ)で説示したとおり,平成元年頃までの時点で,我が国において,加圧 式消火器に替えて,蓄圧式消火器を広く普及させることは,極めて困難であったというのであるから,被告会社において,蓄圧式消火器に切り替える義務を負っていたということはできない。)。 そして,前記1(3),(4)及び同(6)~(8)で認定したとおり,被告会社においては,本件消火器に平成元年表示とほぼ同様の内容の注 意喚起ラベルを貼付して,消火器の使用者等に対し,その取扱いに-131-ついての注意喚起を行ったり,消火器の取扱いについての注意事項等を記載した資料等を作成し,各販売店に対して配付することによって,一般消費者に対する情報提供を行ったり,積極的に老朽化した消火器の回収に努めるなどしてきたというのである。 以上のような被告会社が行った各取組みの具体的な内容等に鑑 みると,被告会社は,その立場に応じた十分な対応をしてきたというべきである。 (3) 以上によると,被告会社が,原告に対する関係で,本件事故の発生に関して,不法行為における違法性又は過失の存否の判断の前提となる結果回避義務(作為義務)を負っていたということはできな いので,この点に関する原告の主張は,採用することができない。 第4 結論以上のとおりであるから,原告の被告らに対する各請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないから,これらをいずれも棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第25民事部 裁判長裁判官金地香枝 裁判官林田敏幸 裁判官水野健太 大阪地方裁判所第25民事部 裁判長裁判官金地香枝 裁判官林田敏幸 裁判官水野健太
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