平成15(行コ)113 建築確認処分取消等請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成11年(行ウ)第15号)

裁判年月日・裁判所
平成15年11月25日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文7,470 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら 1 原判決主文第2項中,被控訴人に対する請求に関する部分を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人らそれぞれに対し,各60万円を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 との判決及び仮執行宣言を求める。 二被控訴人主文と同旨の判決を求める。 第二事案の概要本件は,神和建物株式会社が第一種低層住居専用地域にある土地上に共同住宅(以下「本件建築物」という。)の建築工事を計画して横浜市建築主事に本件建築物の建築確認申請をしたのに対し,横浜市建築主事が建築確認処分(以下「本件確認処分」という。)をしたことについて,上記土地の周囲に居住する住民らである控訴人らが,本件確認処分には,建築物本体に含まれないからぼりの周壁の外側の部分をも基準にして地盤面を設定し,また,地階とされる層に住戸を配置する共同住宅(いわゆる「地下室マンション」)には住宅の地階に係る容積率の不算入措置(平成10年法律第100号による改正前の建築基準法52条2項に基づく措置をいう。以下同じ。)は適用されないにもかかわらずこれを適用した結果,法の定める高さ制限及び容積率に違反する本件建築物の建築を確認した違法があり,この違法な本件確認処分に基づき建築された本件建築物により,重大な圧迫感,プライバシー侵害,交通渋滞,所有不動産の資産価値の下落等の損害を受けたとして,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案である。 事案の概要は,次のとおり,当審における控訴人らの主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」,「第3 基礎となる事実」,「第4 主な争点」,「第5 主な争点に対す る。 事案の概要は,次のとおり,当審における控訴人らの主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」,「第3 基礎となる事実」,「第4 主な争点」,「第5 主な争点に対する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,1審被告横浜市建築主事aに関する部分を除き,原判決3頁6行目の「(」の次に「平成10年法律第100号による改正前のもの。」を加え,10頁18行目の「2項」を「2号」に改める。)。 (当審における控訴人らの主張) 1 地下室マンションと住宅の地階に係る容積率の不算入措置法52条1項が容積率を制限しているのは,建築物の床面積に上限を設定することにより,一定地域の戸数,世帯数,居住者数を制限し,もって建築物と道路,下水道等の公共施設との均衡を保ち,建築物の周辺の採光,通風等の市街地環境の悪化を防止することを目的とするものであり,また,同条2項が住宅の地階に係る容積率の不算入措置を設けたのは,容積率の制限により維持される良好な市街地環境を確保しつつ,ゆとりのある住宅の供給を図り,もって居住水準の向上を図ることを目的としたものである。ところが,地下室マンションに容積率の不算入措置が適用されるとすると,地階に多数の住戸が存在するにもかかわらず,これを容積率制限の対象から外すことになり,本来あり得ない戸数,世帯数,人口数を出現させ,周辺の住環境を保つことができなくなって,同条1項及び2項の目的に反することになる。その影響は,容積率や建築物の高さを厳しく制限している第一種低層住居専用地域において特に大きい。したがって,地下室マンションには,上記の住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されないものと解すべきである。現に,同条2項の立法作業に当たった政府委員や国会議員も,地階に多数の住戸が存在す きい。したがって,地下室マンションには,上記の住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されないものと解すべきである。現に,同条2項の立法作業に当たった政府委員や国会議員も,地階に多数の住戸が存在する共同住宅の建築を想定せず,このような共同住宅についてまで住宅の地階に係る容積率の不算入措置が適用されるとは考えていなかったのであり,行政上も同様の考えが採られていた。 2 本件建築物の地盤面建築基準法施行令(以下「令」という。)2条2項は,地盤面について,「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3メートルをこえる場合においては,その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。」と定めている。また,「横浜市建築基準法取扱基準集」(乙5。以下「取扱基準」という。)は,令2条2項の解釈運用について,「建築物本体と一体的な周壁を有するからぼり等がある場合には,建築物本体及び周壁の外側の部分を「周囲の地面と接する位置」とします。」,「ただし,傾斜地等において,建築物本体と一体的で大規模な周壁を有するからぼり等の場合には,建築物本体が実際に接する地表面の位置を「周囲の地面と接する位置」とします。」としている。 傾斜地に建築された本件建築物には,原判決別紙3のB部分(以下「B部分」という。)に原判決別紙2の①ないし⑤の空間(以下「本件地下空間」という。)が存するところ,法30条ただし書の要件の解釈についての平成元年10月27日付け建設省住指発第408号建設省住宅局建築指導課長の特定行政庁建築主務部長宛の通達「住宅の居室を地階に設ける場合の指導指針について」(以下「408号通達」という。)によれば,からぼりとは,「住宅の地階に設ける居室に必要な採光,換気等を確保するために当該居室が面する 部長宛の通達「住宅の居室を地階に設ける場合の指導指針について」(以下「408号通達」という。)によれば,からぼりとは,「住宅の地階に設ける居室に必要な採光,換気等を確保するために当該居室が面する土地の部分を掘り下げて設ける空間」と定義されており,本件地下空間はからぼりに該当する。そして,本件地下空間は,高さが5m,奥行きが2mをそれぞれ超える。したがって,本件地下空間は,取扱基準にいう「大規模な周壁を有するからぼり等」に当たる。 そうすると,本件建築物は,建築物本体である原判決別紙3のA部分(以下「A部分」という。)が接する外側の地面(からぼりの部分にあってはからぼりの低盤の上端)において周囲の地面と接するものとすべきであった。そうすると,本件地下空間の部分は,その低盤の上端,すなわち,横浜市建築主事が設定した地盤面から10.1mないし12.1mも低い位置で周囲の地面と接するものとして地盤面を設定しなければならない。そのように地盤面を設定すると,本件建築物の地盤面の位置は,第1層の階の床面であり,本件建築物は地上7階建てとなる。 3 本件建築物及び本件確認処分の違法性本件建築物の地盤面は,上記2のとおり,建築物本体であるA部分が地面と接する位置を基準として設定されるが,そうすると,本件建築物の高さは上限10mの建築物の高さ制限に違反し,また,本件建築物の第1層ないし第4層は地階とならないため,本件建築物に住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されない。また,第1層ないし第4層が地階に当たるとしても,この部分は,地下室マンションであるから,上記1のとおり,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されない。そうすると,本件建物は,法及びこれに基づく都市計画の定める上限80%の容積率制限及び上限10mの建築物の高さ制限に違反するもので ,上記1のとおり,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されない。そうすると,本件建物は,法及びこれに基づく都市計画の定める上限80%の容積率制限及び上限10mの建築物の高さ制限に違反するものであり,この違法な本件建築物の建築を確認した本件確認処分も違法である。 第三当裁判所の判断一当裁判所も,控訴人らの被控訴人に対する請求は,横浜市建築主事がした本件確認処分の違法を前提とするところ,本件確認処分が違法であったということはできず,棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり,当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第6争点に対する判断」の2項ないし6項に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決27頁14行目及び24行目の「B部分」の次に「の本件地下空間」をそれぞれ加え,同29頁16行目の「立てられている」を「建てられている」に改め,同30頁3行目の「その外側に」,同頁11行目の「周りに」,同頁末行の「の周壁」,同31頁1行目の「回廊・周壁を含んだ」,同頁1行目から2行目にかけての「単なる周壁ではなく,」をいずれも削り,同頁3行目の「周壁を作るのが」を「廊下を作るのが同部分を本件建築物の建築物本体とするための」に,同頁5行目の「周壁側」を「C部分側」に,同頁17行目から18行目にかけての「A側か周壁側」を「A部分側かC部分側」に,同頁20行目及び21行目の「周壁側」を「C部分側」に,同33頁25行目の「よって」を「よった」に,同39頁16行目及び21行目の「2項」をいずれも「2号」にそれぞれ改める。)。 (当審における控訴人らの主張に対する判断) 1 地下室マンションと住宅の地階に係る容積率の不算入措置について控訴人らは,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は,容積 「2号」にそれぞれ改める。)。 (当審における控訴人らの主張に対する判断) 1 地下室マンションと住宅の地階に係る容積率の不算入措置について控訴人らは,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は,容積率の制限により維持される良好な市街地環境を確保しつつ,ゆとりのある住宅の供給を図り,もって居住水準の向上を図ることを目的とするものであるが,地下室マンションにこれを適用すると,容積率の制限により維持されるべき良好な市街地環境の確保ができなくなるから,地下室マンションには,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は適用されないと主張する。 確かに,容積率制限の目的は,建築物の延べ面積に上限を設定することによってその地域の戸数,世帯数,人口などの増加を防ぎ,その結果,建築物と道路,下水道の公共施設の整備状況との均衡を図り,また,建築物の周辺の採光,通風等の市街地環境の悪化を防止することにあると解され,また,住宅の地階に係る容積率の不算入措置は,良好な市街地環境を確保しつつ,ゆとりある住宅の供給を図ることを目的として制定されたものである。 しかし,法52条2項は,建築物の地階で住宅の用に供する部分の床面積について,一定の限度で延べ面積に算入しない措置を執ることにより容積率の制限を緩和し,ゆとりのある住宅の供給を図って居住水準の向上を図ろうとするものであるから,居住水準の向上のため,容積率制限により守られていた市街地環境がある程度制約されることを容認するものであり,居住水準の向上と市街地環境の制約との調和は,容積率制限の緩和の対象を住宅に限定したり,対象となる地下室の床面積の比率を一定の範囲に限定したりすることによって守ろうとしているものと解される。また,法52条2項が定める住宅の地階に係る容積率制限の不算入措置の要件は,建築物の地階であること,その天 下室の床面積の比率を一定の範囲に限定したりすることによって守ろうとしているものと解される。また,法52条2項が定める住宅の地階に係る容積率制限の不算入措置の要件は,建築物の地階であること,その天井が地盤面からの高さ1m以下にあること,住宅の用途に供する部分であることに限られ,その適用を,戸建ての住宅の一部を居室等の地下室として活用する場合に限定したり,共同住宅の1戸の住宅全部を地階に配置する場合を除外したりする規定は存しない。そうすると,地下室マンションに法52条2項が適用されてその地域の戸数や人口が増加することとなっても,そのことはそもそも法が想定し,かつ容認するところであるというべきであるから,住宅の地階に係る容積率の不算入措置が地下室マンションには適用されないという解釈をする余地はない。 したがって,控訴人らの上記主張は,採用できない。 2 本件建築物の地盤面について(一) 本件建築物は,南下がりの傾斜地となっていた敷地(2959.37㎡)を南側の低い地盤の水平面まで掘削して建築された共同住宅であり,全体として7層の構造を有し,最下層に6戸,2層目に8戸,3層目に8戸,4層目に9戸,5層目に7戸,6層目に7戸,7層目に6戸の住宅が配置されている。本件建築物は,A,B各部分及び原判決別紙3のCの部分(以下「C部分」という。)から成り,A部分が各入居者の居室となり,C部分がエントランスホール,エレベーター及び管理人室となっている。このA部分とC部分をつなぐ各階の廊下がB部分に設けられている。 そして,本件建築物においては,入居者がA部分の居室からB部分の廊下を通り,C部分のエレベーターに乗り,エントランスホールから外に出るのが通常の利用の仕方であり,A部分にも外部に出る通路はあるが,避難通路としての扱いとなっており,しかも本件 の居室からB部分の廊下を通り,C部分のエレベーターに乗り,エントランスホールから外に出るのが通常の利用の仕方であり,A部分にも外部に出る通路はあるが,避難通路としての扱いとなっており,しかも本件建築物の入居者用の駐車場及びゴミ置き場にはC部分から出入りすることが前提とされている。 (二) ところで,地盤面について,令2条2項は,「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい,その接する位置の高低差が3メートルをこえる場合においては,その高低差3メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。」と定め,また,「建築物」について,法2条1号は,「土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。),これに附属する門若しくは塀,観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行場,倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋,プラットホームの上家,貯蔵庫その他これらに類する施設を除く。)をいい,建築設備を含むものとする。」と定めている。 したがって,本件建築物の地盤面も上記の法令に従って設定されることとなる。 (三) 前記認定のとおり,取扱基準は,令2条2項の解釈運用について,「建築物本体と一体的な周壁を有するからぼり等がある場合には,建築物本体及び周壁の外側の部分を「周囲の地面と接する位置」とします。」,「ただし,傾斜地等において,建築物本体と一体的で大規模な周壁を有するからぼり等の場合には,建築物本体が実際に接する地表面の位置を「周囲の地面と接する位置」とします。」としているところ,控訴人らは,本件地下空間は,地下部分の住戸の居室に必要な採光,換気等を確保するために地下部分に設置された空間であり,10.1mな 表面の位置を「周囲の地面と接する位置」とします。」としているところ,控訴人らは,本件地下空間は,地下部分の住戸の居室に必要な採光,換気等を確保するために地下部分に設置された空間であり,10.1mないし12.1mもの深さや,4.01mないし7.02mもの奥行きを有することから,これらが取扱基準にいう「大規模な周壁を有するからぼり等」に該当するとして,建築物本体であるA部分が接する外側の地面(からぼりの部分にあってはからぼりの低盤の上端)において周囲の地面と接するものとして,地盤面を設定すべきであったと主張する。 (四) しかし,本件建築物の構造及び機能は,前記のとおりであり,B部分は,本件建築物の不可欠の要素である外部への通路を形成するための廊下を備えるものであるから,A,B及びCの各部分は,社会通念上一体として本件建築物の本体を構成していると見るのが相当である。そして,令2条2項に関する取扱基準の上記の解釈運用は,建築物本体と周壁との間に存在するからぼり等についてのものであることが明らかである。したがって,本件地下空間が居室の採光及び換気を確保するというからぼりの機能を有するとしても,B部分が本件建築物本体に含まれ,本件地下空間がその内側に存在する以上,本件地下空間は,法30条又は408号通達にいうからぼりに当たるかどうかはともかく,令2条2項に関する取扱基準にいうからぼり等に当たるものでないというべきである。 (五) そうすると,本件建築物が周囲の地面と接する位置とは,A,B及びCの各部分から成る一体的な建築物が周囲の地面と接する位置ということとなる。 3 上記2のとおり,本件建築物の地盤面は,A,B及びCの各部分の外側の部分を基準として設定すべきことになるから,本件建築物は,地盤面からの高さが最高地点で9.95mとなり,法55条1項 ととなる。 3 上記2のとおり,本件建築物の地盤面は,A,B及びCの各部分の外側の部分を基準として設定すべきことになるから,本件建築物は,地盤面からの高さが最高地点で9.95mとなり,法55条1項及びこれに基づく都市計画による建築物の高さ制限(10m)には違反しない。また,本件建築物の第1層ないし4層は地階となり,上記1のとおり,法52条2項の住宅の地階に係る容積率の不算入措置が適用されるから,本件建築物は,法52条1項及びこれに基づく都市計画による容積率制限(上限80%)に違反しない。したがって,このような建築物を適法なものと確認した本件確認処分にも違法は存しない。 4 以上によれば,本件確認処分が違法であることを理由とする控訴人らの本件損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 二よって,控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部裁判長裁判官村上敬一裁判官矢尾渉裁判官岡崎克彦

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