主文 被告人を懲役6月に処する。 この裁判確定の日から2年間その刑の執行を猶予する。 本件公訴事実中暴力行為等処罰に関する法律違反及び詐欺の点については、被告人は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、別紙(省略)記載の当時の被告人方において、実子である別紙記載のA(当時8歳)と共に居住し、Aを継続して養育していたものであるが、令和5年2月5日頃から同月6日朝頃までの間、前記被告人方等において、別紙(省略)記載の病院に入院中のAに対し、被告人が使用する携帯電話機のアプリケーションソフト「LINE」及びショートメッセージ機能を使用して、「今日ごはんぜんぶたべなくていいよ。」「しんどいってゆってねとき。」「しんどくてたべれないってちゃんとゆいや」「お昼もおやつも夜もやで。」「ごはんたべてるんやろ?」「またうそついてる?」「もういいよ。」「ずっと病院でくらし。」「かえってこなくていいよ。うそつきやから。」「あさもたべたんやろ?ひるもたべたんやろ?」「ほんで、ままにうそついてるやん。」「そんな子どもいらんから。ウソつきといっしょにくらしたくないわ。」「ままがゆったじゃなくてしんどいってゆって、ねとけ」「かんごしさんにぴんぽんおしてあたまいたくてきもちわるいってゆい。」「食べずにゴロンしときや。」「しんどいってゆってねてて。」「あさごはんたべれないしんどいってゆぅとき。」「あさごはんやめときね。」等と記載したメッセージを送信し、いずれもその頃、Aにこれらを読ませるとともに、被告人が使用する携帯電話機を使用してAに電話を掛け、「あんたが今せなあかんことなに?食うなよ、寝とけ。」「夜も食べんと、しんどいって言って寝とき。」などと荒い口調で言って脅迫し を読ませるとともに、被告人が使用する携帯電話機を使用してAに電話を掛け、「あんたが今せなあかんことなに?食うなよ、寝とけ。」「夜も食べんと、しんどいって言って寝とき。」などと荒い口調で言って脅迫し、いずれもAに食事を摂取しないことを要求し、その要求に応じなければAの養育を放棄することを示してその生命、身体等に対して危害を加えかねない気勢を示してAを怖がらせ、もって他人に 義務のないことを行わせようとしたが、Aが前記病院の看護師に相談するなどしたことから、その目的を遂げなかった。 (証拠の標目)(省略)(補足説明) 1 被告人が、Aに対し、判示のメッセージの送信及び発言(以下「本件発言等」という。)をしたことは、被告人及び弁護人もこれを争わず、前掲証拠から明らかに認められる。 その上で、弁護人は、被告人の行為は、客観的に見てAに恐怖心を生じさせて食事を摂らないという選択をさせる現実的危険性があるとまではいえないから、強要罪の実行行為に該当せず、これに該当するとしても、あくまで親の子に対する叱責であることからすると、可罰的違法性を欠く旨主張するが、当裁判所は、被告人の行為は、強要罪の実行行為に該当し、可罰的違法性も認められると判断したので、その理由を補足して説明する。 2 関係証拠(被告人の公判供述、弁12等)によると、次の事実が認められる。 ⑴ 被告人は、Aの母親であり、本件当時は、両親等の助けを借りながらも、基本的には一人でAを養育していた。Aは、ケトン性低血糖症及び糖原病疑いとの診断を受け、入退院を繰り返しており、本件当時も、令和5年(以下、年については、特に断らない限り同年である。)2月1日から、ケトン性低血糖症等により入院中であった(以下、この入院を「2月の入院」という。)。 ⑵ 被告人は、2月4日 本件当時も、令和5年(以下、年については、特に断らない限り同年である。)2月1日から、ケトン性低血糖症等により入院中であった(以下、この入院を「2月の入院」という。)。 ⑵ 被告人は、2月4日午後8時過ぎから午後10時前までの間、Aがうそを言って宿題をしないでスマートフォンを長時間使用するなどしたことに怒りを覚え、Aに対し、「まま、もう月曜日も行かない。」「ひとりで、たいいんしなさい。」「(Aの名)は、なんかいゆってもいつもうそつく。」「なんで、まだYouTube見ようとしてるん? ママには、わからんわ。もうずっと病院おり。」「ままに連絡してこんといて。」「まえに、次はないよ!ってゆったから。」「だから、もうないです。」 などとのメッセージを送信した。この間、Aは、被告人に対し、「これからやくそく守るからたいいんしたいからきて欲しいお願いします(Aの名)もやくそく守るからゆるしてほしいですお願いします」「もう嘘はついたりしないからべんきょうもちゃんとするからお願いします月曜日来てくださいお願いします」などと、謝る内容のメッセージを繰り返し送信していたが、最終的には、被告人が、「しごとのじゃまやから連絡してこないで。」と送ったのに対して、Aが、「わかった」と送り、この日のやり取りは終わった。 ⑶ Aは、2月5日午前8時過ぎから、被告人に対し、「おはよう」「ままだいじょうぶ?」「おはよう」「だいじょうぶ?」「おはようございますだいじょうぶ?」「ままごめんなさいまま(Aの名)に怒ってメールしてないの?」「寝てる?」「ごめんなさいもう嘘はついたりしないから本当にだから月曜日来てください」「起きてる?」などとのメッセージを送信した。これに対して、被告人は、「あさごはんきたの?」と尋ね、Aがまだである旨答えると、その頃か なさいもう嘘はついたりしないから本当にだから月曜日来てください」「起きてる?」などとのメッセージを送信した。これに対して、被告人は、「あさごはんきたの?」と尋ね、Aがまだである旨答えると、その頃から2月6日朝にかけて、Aに対し、本件発言等をしたほか、Aが飲食してもよいか確認してきた際には、「ぜんぶたべなくていい。」「それなら、けいたいしてあげる。」「ケイタイおかねはらうのやめるよ」などとのメッセージを送信したり、Aの食事後には、食事の摂取量を記載した食事箋の写真を送るよう求めたりした。 ⑷ Aは、被告人から本件発言等をされたことで、2月5日昼頃、看護師に対し、病院から被告人への電話連絡の内容等について尋ね、被告人には自分が食事をしたことや相談したことを言わないでほしい旨伝えた。その後も、Aは、病室で、被告人にうそつきと言われたなどと言って泣いたり、看護師に、被告人に写真を送るためのものとして未記載の食事箋を求めたりした。病院側は、Aから相談を受けた看護師が、Aに対しては、食事をすることは悪いことではないと伝えるなどしつつ、直ちに責任者らに対して情報を共有し、その対応を協議した結果、Aから聞いたことが被告人に伝わらないようにすること、Aが一人で泣くことがないようにフォローすることなどが決められ、情報は夜勤の看護師にも引き継がれた(以上につき、 甲51ないし53)。 3 本件発言等は、その文言上、Aの唯一の親権者である被告人が、Aに食事を摂取しないことを要求し、要求に応じなければAの養育を放棄することを内容とするものである。しかも、その要求内容は、スマートフォンの使用と食事を摂取しないことをいわば交換条件にするなど相当に具体的なものである上、Aが繰り返し謝ってもなお食事を摂取しないことや食事箋の画像を送らせることを要求するな その要求内容は、スマートフォンの使用と食事を摂取しないことをいわば交換条件にするなど相当に具体的なものである上、Aが繰り返し謝ってもなお食事を摂取しないことや食事箋の画像を送らせることを要求するなど執拗なものでもあり、現に、Aは、本件発言等により、激しく動揺・困惑し、泣いたり、被告人の要求に従っているかのように装おうとしたりしているし、病院側も、このようなAの様子を受けて対応を協議するに至っている。また、Aにとって、被告人は母親として自身を保護・養育してくれる唯一の存在であるところ、本件当時、Aは、入院中であり、身体の不調を抱えている上に被告人と離れているという心細い状況にあった上、前記2⑵のとおりの前夜のメッセージのやり取りを通じて、被告人が腹を立てている様子を理解し、被告人の機嫌を普段にも増して気にしていたと考えられるから、本件発言等を受けたAが、被告人の要求は被告人の真意でないとか、要求に応じなくても問題は起こらないなどとは考えずに、要求に応じなければ養育を放棄されると考えるのは無理からぬところである。このように、本件発言等には、Aの立場にある通常人であれば、要求に応じなければ養育を放棄されるとの恐怖心を抱き、食事を摂取しないという行動を選択する現実的危険性が十分に認められるから、強要罪の実行行為性が認められるし、親子である被告人とAの関係性を考慮しても、親の子に対する叱責としての行き過ぎは甚だしく、可罰的違法性が認められることにも疑いはないというべきである。 なお、検察官は、被告人には、Aに食事を摂取させないことでその入院期間を延長させる意図があったなどと主張するが、被告人は、Aがうそを言うなどしたことに怒りを覚えたためである旨供述しており、実際にも、被告人が看護師に対してAの入院期間の延長を求めたことはないことや(甲53 長させる意図があったなどと主張するが、被告人は、Aがうそを言うなどしたことに怒りを覚えたためである旨供述しており、実際にも、被告人が看護師に対してAの入院期間の延長を求めたことはないことや(甲53)、入院中のAが食事を摂取せずに入院期間が延びるという事態に陥る危険性も高くなかったことからすると、被 告人が本件発言等をしたこと自体からそのような意図を推認することはできず、他に上記の意図を認めるに足りる証拠もないから、この点に関する検察官の主張は採用できない。 (一部無罪の理由)第1 暴力行為等処罰に関する法律違反について 1 公訴事実の内容本件公訴事実中、暴力行為等処罰に関する法律違反の点は、「被告人は、別紙(省略)記載の当時の被告人方において、A(当時8歳)と共に居住し、Aを継続して養育していたものであるが、Aの健康状態を悪化させてAを病院に入院させ、あるいは入院中のAの入院期間を延長させようと考え、常習として、①かねてより、Aがケトン性低血糖症及び糖原病の疑いで病院への入退院を繰り返していたことで、医師から、低血糖状態に陥らないようにするためAに1日3食適量の食事を摂らせるなどして必要な栄養を継続して摂らせるよう指示を受けていたのであるから、Aが低血糖状態に陥らないよう、Aに1日3食適量の食事を摂らせるなどして必要な栄養を継続して摂らせるべきであったにもかかわらず、1月19日、低血糖状態により倦怠感を訴え、通学先の保健室において、一時療養するなどしたAに対し、その頃から、前記の当時の被告人方等において、Aに対し、1日3食適量の食事を与えず、かつ、飲食しないよう複数回指示するなどして、Aに必要な栄養を継続して摂らせず、1月21日には、経口摂取が困難な程度の低血糖状態となったのであるから、Aに必要な栄養を与え、適切な医 の食事を与えず、かつ、飲食しないよう複数回指示するなどして、Aに必要な栄養を継続して摂らせず、1月21日には、経口摂取が困難な程度の低血糖状態となったのであるから、Aに必要な栄養を与え、適切な医療措置を受けさせるべきであったにもかかわらず、その頃から1月22日午後0時55分頃までの間、必要な栄養を与えず、適切な医療措置を受けさせることなくその低血糖状態を悪化させ、よって、Aを持続的な低血糖状態に陥らせて、Aに入院加療約6日間を要するケトン性低血糖症等の傷害を負わせ(以下「①の事実」といい、この入院を「1月の入院」という。)、②1月22日午後0時28分頃から同日午後0時55分頃までの間に、別紙(省略)記載の駐車場に停車中の自動車内において、Aに対し、口を開けるよう指示して口 を開けさせた上、医療用医薬品である緩下剤センノシドの粉末をその口腔内に入れてAにこれを飲み込ませ、さらに、同日午後1時9分頃から同日午後3時20分頃までの間に、別紙(省略)記載の病院において、Aに対し、口を開けるよう指示して口を開けさせた上、センノシドの粉末をその口腔内に入れてAにこれを飲み込ませ、よって、Aに加療約3日間を要する下痢症の傷害を負わせ(以下「②の事実」という。)、③1月25日午後2時40分頃から同日午後3時頃までの間に、前記病院において、Aに対し、口を開けるよう指示して口を開けさせた上、センノシドの粉末及び同錠剤1錠をそれぞれその口腔内に入れてAにこれらを飲み込ませ、よって、Aに加療約3日間を要する下痢症の傷害を負わせた(以下「③の事実」という。)」というものである。 2 ①の事実(必要な栄養を継続して摂らせなかったり、適切な医療措置を受けさせなかったりして、Aを持続的な低血糖状態に陥らせ、ケトン性低血糖症等の傷害を負わせたという事実) というものである。 2 ①の事実(必要な栄養を継続して摂らせなかったり、適切な医療措置を受けさせなかったりして、Aを持続的な低血糖状態に陥らせ、ケトン性低血糖症等の傷害を負わせたという事実)について⑴ ①の事実は、被告人が、㋐1月19日夜にAが帰宅した以降(公訴事実の記載は、Aが1月19日に通学先の保健室において一時療養するなどした頃からというものであるが、検察官もAが被告人の下に帰ってきて以降の事柄を問題にしているものと解される。)、1月21日にAが経口摂取が困難な程度の低血糖状態になるまでの間、Aに必要な栄養を継続して摂らせなかった行為と、㋑Aが上記の低血糖状態になって以降、1月22日午後0時55分頃までの間、Aに必要な栄養を与えず、適切な医療措置を受けさせなかった行為から構成されており、これらによりAに入院を要するケトン性低血糖症等の傷害を負わせたことが、不作為による傷害行為だとするものである。 当裁判所は、㋐㋑に係るAの食事等の摂取状況については、Aは、1月21日の夕食までは食事を摂取していた可能性があり、被告人が、Aに対し、必要な栄養を継続して摂らせなかったとは認められないし、㋑に係る医療措置については、被告人がAに適切な医療措置を受けさせなかったとはいえず、①の事実は認められない と判断したので、以下、その理由を説明する。 ⑵ 関係証拠(被告人の公判供述のほか、括弧内掲記の各証拠)によれば、Aの病歴、本件当時の生活状況等について、次の事実が認められる。 ア Aは、ケトン性低血糖症及び糖原病疑いと診断されており、4歳頃から1月の入院に至るまでに、ケトン性低血糖症や感染性胃腸炎等により、1週間前後の入院を合計37回繰り返していた。ケトン性低血糖症とは、様々な原因で低血糖になるのと同時に、脂肪からエネルギー 4歳頃から1月の入院に至るまでに、ケトン性低血糖症や感染性胃腸炎等により、1週間前後の入院を合計37回繰り返していた。ケトン性低血糖症とは、様々な原因で低血糖になるのと同時に、脂肪からエネルギーを産生することでケトン体が増加した状態を指し、嘔吐や倦怠感等の症状がある。糖原病とは、グリコーゲンの分解が適切に行われないことにより、グリコーゲンの異常蓄積が起こる疾患であり、低血糖の原因にもなる。なお、Aの糖原病疑いについては、確定診断には至っていなかったが、仮に糖原病であるとしても、重度のものである可能性は低いと考えられていた(以上につき、C医師の証言、甲29、31)。Aが1月の入院の前に最後に入院したのは、令和4年6月であり、それ以降は、体調不良を理由に学校を休むことは度々あったが、嘔吐を繰り返す等、緊急で受診が必要な事態に陥ったことはなかった(甲29)。 イ Aは、1月19日木曜日の登校後に体調不良になったが、保健室でしばらく休むと体調は回復し、給食を食べ、放課後は、児童クラブに行った後、スイミングスクールにも行った。1月20日金曜日は、体調不良により学校を欠席し、被告人と二人で自宅で過ごした。1月21日土曜日は、前日に引き続き体調不良であり、基本的には自宅で被告人と過ごしていたものの、被告人の用事のために午後3時頃から午後6時頃までの間は、祖父母方に預けられ、祖父に梅のお菓子を買ってもらって食べたが、祖父母方からの帰宅後の午後8時頃、トイレで嘔吐した。1月22日日曜日も、体調不良であり、被告人が昼頃に簡易血糖測定器で血糖値を測定すると、32㎎/dℓであったことから、午後1時頃に別紙(省略)記載の病院を受診して診察を受けた。血液検査を実施した結果、血糖値49㎎/dℓ、ケトン値6400μ㏖であったため、ケトン性低血糖症等と診断され、点滴 ㎎/dℓであったことから、午後1時頃に別紙(省略)記載の病院を受診して診察を受けた。血液検査を実施した結果、血糖値49㎎/dℓ、ケトン値6400μ㏖であったため、ケトン性低血糖症等と診断され、点滴の投与を受けた上で、入院となった。なお、この日は、Aの叔父が、午前10時頃から被告人方に来て、食 器棚を組み立てていた(以上につき、甲22、24、28)。 ⑶ 以上の事実を踏まえ、1月19日夜の帰宅後から1月22日の受診時までのAの食事等の摂取状況について検討するが、検察官は、この間Aは全く食事を摂取していないと主張する。後記のとおり、1月22日の受診時のAの症状や診断内容から直ちにこの間Aが全く食事を摂取していないと認定することはできず、検察官の主張も、この間Aが全く食事を摂取していないことは、5月26日に実施された4回目の司法面接におけるAの供述(甲20)を根拠とするものである。 ⑷ そこで、その供述の信用性について検討する。 ア Aは、4回目の司法面接(甲20)において、当時の食事の摂取状況について、要旨、1月19日夜の帰宅時から1月22日の受診時までの間、被告人から食事を全く与えられなかったし、1月21日にお腹がすいたことから祖父に頼んで梅のお菓子を買ってもらって食べたほかは、自分で食べることもなかった、自分は食べたかったが、被告人から「ゲー吐くからやめとき」と言われたから食べなかったなどと供述する。 イ Aが被告人に対して悪感情を抱いている様子は見られず、Aがあえて虚偽の供述をしていることを積極的に疑わせる事情はない。そこで、記憶の誤り等の可能性について検討すると、Aは、食事の摂取状況のほかに、1月19日から1月22日までの具体的な出来事として、1月19日に学校で体調不良になったことやスイミングスクールに行ったこと、1 憶の誤り等の可能性について検討すると、Aは、食事の摂取状況のほかに、1月19日から1月22日までの具体的な出来事として、1月19日に学校で体調不良になったことやスイミングスクールに行ったこと、1月21日に祖父母方に行き、祖父に梅のお菓子を買ってもらって食べたこと、帰宅後にトイレで嘔吐したこと、1月22日に血糖値を測ってから病院に行き、入院になったことなどを供述しており、これらはいずれも客観的事実と一致していることから、Aは、印象的な事柄については、正確に記憶を保持していると認められる。 ウしかし、Aの上記供述のうち、前記の期間、ほぼ3日間にわたり食事を与えられていないという点については、次のとおり、正確な記憶に基づく供述であることに疑問を抱かせる事情がみられる。 まず、Aがその供述のとおりほぼ3日間にわたり全く食事を与えられなかったというのであれば、多少偏食気味で、時に不規則になることがあったとしても、基本的には1日3食の食事をしていたAにとって、相当に異常で危機的な状況であったはずであり、そうであれば、食べなかった理由やそのときの感情については、相応の具体性、迫真性をもって語られるのが自然であるが、この点についてのAの供述は、被告人から、「ゲー吐くからやめときと言われた」とか、「そう言われたと思う」などという単調でやや曖昧なものに終始している。また、そのような状況において、普段から朝食も自分で用意していたAが、自宅にはパンやお菓子等が常備してあり、体調的にも食べることが出来たのに、自分でも全く食べなかったというのも自然とはいい難い(Aは、後で被告人に怒られると認識していたにも関わらず、被告人に無断でお菓子等を食べることも度々あったというのであるから〔被告人の公判供述、Aの期日外尋問調書、甲20〕、被告人からの叱責を恐 い難い(Aは、後で被告人に怒られると認識していたにも関わらず、被告人に無断でお菓子等を食べることも度々あったというのであるから〔被告人の公判供述、Aの期日外尋問調書、甲20〕、被告人からの叱責を恐れたことが自ら食事をしなかった十分な理由になるとはいえない。)。 また、Aは、その供述によれば既に1日半以上絶食状態にある1月21日午後には祖父と、既に丸2日以上絶食状態にある1月22日午前中には叔父とそれぞれ会っているが、その際、Aは、体調不良で動きが鈍かったものの、祖父や叔父に対して空腹等を訴えたこともなければ、祖父や叔父においてAの様子に特段の異常を感じたという事情もない。中でも、Aは、祖父母方に預けられていた際には、実際に、被告人に内緒で祖父に梅のお菓子をねだって食べているのであって、Aが食事を与えられていないことを祖父に相談することに特段の支障はなかったはずであるのに、それをしていないことは(以上につき甲22ないし24)、Aが絶食状態であったことに整合的でないというべきである。 加えて、Aの供述経過をみると、Aは、4月14日に実施された3回目の司法面接では、入院の前日(1月21日)の朝から食べていないと述べていたのが(甲19)、4回目の司法面接では1月19日の夕食から食べていないという内容になり、令和6年3月25日に実施された期日外尋問では覚えていない(Aの期日外尋問調 書)と供述が変遷しているが、ほぼ3日間にわたる絶食という、相当異常で記憶にも残りやすいと考えられる事柄について、このような変遷があることは不自然というほかなく、1月の入院から3回目の司法面接まで2か月半以上、4回目の司法面接までは約4か月、期日外尋問までは1年以上が経過していることにより、記憶が減退、混同等していることが疑われる。 エこのように、Aの 1月の入院から3回目の司法面接まで2か月半以上、4回目の司法面接までは約4か月、期日外尋問までは1年以上が経過していることにより、記憶が減退、混同等していることが疑われる。 エこのように、Aの上記供述には、その信用性に疑問を抱かせる数々の事情が認められるのであり、他にこれを裏付ける積極的事情のない限り、その供述どおりの事実を認めることはできないというべきである。 オこれに対し、検察官は、Aの上記供述は、Aが1月22日に病院を受診した時点における客観的症状と整合すると指摘する。確かに、同時点における血液検査の結果によれば、Aは、血糖値が49㎎/dℓ、ケトン値が6400μ㏖でケトン性低血糖症と診断されており、上記血糖値の数値は、Aが必要な栄養を摂取できていないことを示唆するものであるし、一般的には、Aの年齢で、2食程度を抜いただけで出ることは考え難いことも認められ、Aの上記供述と矛盾しないといえる。もっとも、糖原病等の低血糖状態に陥りやすい疾患を有している場合には、1、2食を抜いただけでも上記数値が出る可能性があることが認められるし、実際にも、Aは、令和3年5月の検査ではあるが、前日の夕食を抜いて朝に実施された血液検査で、血糖値が35㎎/dℓであったことが認められるから、上記49㎎/dℓの数値のみから、Aが1月19日夜の帰宅時から1月22日の受診時までの間食事を全く摂取していなかったことを推認することはできず、Aの上記供述の信用性が積極的に裏付けられているとはいえない。 また、検察官は、被告人が、Aに対し、1月19日や1月21日に、複数回にわたり飲食しないように指示する旨のメッセージを送信していること(甲35、弁11)を指摘する。しかし、1月19日のメッセージについては、午後9時頃に送信されたもので、その内容をみても、Aが食べたが わたり飲食しないように指示する旨のメッセージを送信していること(甲35、弁11)を指摘する。しかし、1月19日のメッセージについては、午後9時頃に送信されたもので、その内容をみても、Aが食べたがっているのがお菓子やトマトであることからすると、夕食を食べた後のおやつについてのものとみる余地が多分にあ り、必ずしも食事を摂取しないよう指示するものとは解されない。また、1月21日のメッセージについても、被告人がAを祖父母方に預けている間に送信されたものであり、祖父母がAに飲食させること自体は妨げられていなかった(現に祖父がAに対して梅の菓子を買い与えている。)のであるから、被告人が意図的にAの飲食を妨げようとして送信したものとは考え難く、Aにそのようなメッセージを送信したのは、その日に病院に行く際に車内で嘔吐されると困ると考えたからであるという被告人の供述が不合理であるとはいえない。これらのメッセージがAの上記供述を積極的に裏付けるともいえない。 カそうすると、Aの上記供述の信用性には疑問が残り、Aの上記供述から、Aが1月19日夜の帰宅時から1月22日の受診時までの間必要な栄養を継続して摂らなかったという事実を認定することはできないというべきである。 キそして、被告人は、Aは、1月22日の朝食と昼食は食べていないが、1月21日の夕食まではふだんどおりの食事をしていた旨述べるところ、この供述は、既に説示したとおり、1月22日の受診時のAの血糖値等の数値と矛盾しない上、1月20日から1月22日にかけて、Aが体調不良であるほかは、被告人とAが、祖父や叔父に会うなど普段どおりの生活を送っており、周囲が異常を感じることもなかったことも考慮すると、被告人の上記供述を排斥することはできない。なお、1月21日の夕食については、Aはその 人とAが、祖父や叔父に会うなど普段どおりの生活を送っており、周囲が異常を感じることもなかったことも考慮すると、被告人の上記供述を排斥することはできない。なお、1月21日の夕食については、Aはその頃は嘔吐するような状態にあり、被告人もこの日の夕食について具体的な記憶があるわけではないことからすると、Aが摂取できていなかった可能性はあるものの、摂取していた可能性もなお否定されないし、少なくともこの日の昼食までは摂取していた可能性は十分にあるというべきである。 ク結局、Aが食事を摂取していないと認定することができるのは、1月21日午後8時頃に嘔吐した後、1月22日の受診時までである。 ⑸ そこで、以上を前提として、被告人がAに必要な栄養を継続して摂らせなかったといえるかについて検討する。 前記のとおり、Aは、1月21日夜の嘔吐後は食事を摂取していないし、体調不 良であったことも認められる。そして、Aは、かねてより低血糖状態による入院を繰り返しており、糖原病の疑いと診断されていたため、被告人は、Aが低血糖状態に陥らないようにするために、Aの食事につき、かかりつけ医である別紙(省略)記載の病院のB医師からは、毎日3食摂り、食事が摂れなくなったときは、好きなもの、何でもいいから糖分の入ったものを摂るようにと指導され(B医師の証言)、糖原病の検査等のために定期的に通院していた大学病院のC医師やD医師からは、コーンスターチや糖原病用のミルクを使いながら、しっかりご飯を食べ、栄養を摂るようにとそれぞれ指導されていた(C医師の証言、甲31)ことが認められる。 もっとも、その指導内容は、いずれも、食事の摂取量や間隔等について具体的に指示するものではなく、補食を取り入れながら毎日3食摂取させるといったごく一般的なものにとどまっている上、低血糖 められる。 もっとも、その指導内容は、いずれも、食事の摂取量や間隔等について具体的に指示するものではなく、補食を取り入れながら毎日3食摂取させるといったごく一般的なものにとどまっている上、低血糖が原因で食欲がないことがうかがわれる場合に無理にでも食べさせる必要があるというものでもない(B医師、E医師、C医師の各証言、甲31)。そして、1月22日の昼食については、自身で食べないという意思を示しており(被告人の公判供述、甲24)、1月21日夜の嘔吐後は、Aが食欲を示していないこともうかがわれる。 そうすると、Aが1月21日夜の嘔吐後から1月22日午後1時頃の受診時までの1日足らずの間食事を摂取していないからといって、いまだ被告人がAに継続して必要な栄養を摂らせなかったということはできず、被告人が、Aに継続して必要な栄養を摂らせるべき義務に違反したとは認められない。 なお、Aは、1月21日夜の嘔吐後は、食事の経口摂取が困難になっていた可能性があると考えられるところ、被告人は、このような場合について、B医師から、少量の濃い糖分の入ったものを摂取するのが良いとの指導を受けていたことが認められ(B医師の証言)、被告人がAに対してそのような対応をしたかは検討対象になり得る。しかし、後記のとおり、B医師は、被告人に対し、併せて、2食(半日)以上食べられなかった場合には、早めに受診するようにとも指導しており、実際に、被告人は、1月22日午後1時頃にAを受診させているのであるから、被告人が1 月21日夜の嘔吐後上記受診時までの間に特にAに糖分を摂取させなかったとしても、Aに継続して必要な栄養を摂らせる義務に違反したとは到底いえない。 ⑹ 次に、被告人が、Aに適切な医療措置を受けさせなかったといえるかについて検討する。 1月22日午後1 させなかったとしても、Aに継続して必要な栄養を摂らせる義務に違反したとは到底いえない。 ⑹ 次に、被告人が、Aに適切な医療措置を受けさせなかったといえるかについて検討する。 1月22日午後1時頃の受診時のAの状態は、血糖値が49㎎/dℓ、ケトン値が6400μ㏖であり、ケトン性低血糖症と診断され、点滴が投与されたものの、重度の低血糖状態と判断されたわけではなく、脱水症状や他の重い症状があったこともうかがわれない(甲28。叔父の供述〔甲24〕によっても、この日の午前中のAの様子は、ぐったりして動きは鈍かったものの、およそ体を動かせこせないとか意識がもうろうとするなどの状態ではなかった。)。Aが入院となったのも、今後の経口摂取が可能かどうかを見極めるため、すなわちケトン性低血糖症の悪化を防ぐためというのであって(B医師の証言)、Aのケトン性低血糖症の症状は、そもそも客観的にみて特に重いものとはいえず、被告人に、より早い時点でAを受診させ、適切な医療措置を受けさせる必要性が高かったとはいえない。 もちろん、Aは、1月21日夜の嘔吐後は、食事の経口摂取が困難になっていたものと考えられ、このことは、ケトン性低血糖症の発症を疑い、点滴等のために受診を検討すべき状況の一つであったとはいえる。しかし、被告人は、医師からAの経口摂取の不良や嘔吐があれば直ちに受診する必要があるという指導まではされておらず、むしろ、B医師は、吐いてしまった場合には、1、2時間ほど時間を空けて、少量の濃い糖分が入ったものを摂るのが良いが、2食(半日)以上食べられなかった場合には、早めに点滴等の処置の要否を判断するために受診するよう指導しており(B医師の証言)、C医師は、受診の具体的な基準は指導しておらず、経過からしても重度の低血糖は頻回でないこともあり、1食摂れなかっ は、早めに点滴等の処置の要否を判断するために受診するよう指導しており(B医師の証言)、C医師は、受診の具体的な基準は指導しておらず、経過からしても重度の低血糖は頻回でないこともあり、1食摂れなかったら直ちに受診するようにという言い方はしていなかった(C医師の証言)というのである。そうすると、Aの実際の受診の時点は、1月22日の朝食及び昼食の2食を摂取することができなかった直後の時点なのであるから、医師の上記各指導に反するものではな い。仮に、1月21日夜の嘔吐によって、その日の夕食を摂取できなかったものと扱うべきであるとしても、3食を摂取することができなかった直後に受診していることになるから、なお上記各指導に反するものとはいえない。 そうすると、被告人が、Aに適切な医療措置を受けさせるべき義務に違反したとは認められない。 ⑺ したがって、①の事実は、これを認めることができない。 3 ②の事実(1月22日にAにセンノシドを服用させて、下痢症の傷害を負わせたという事実)について⑴ ②の事実については、後記のとおり、3回目の司法面接(4月14日実施)におけるAの供述(甲19)のほかに、Aの体内にセンノシドが摂取されたことを直接示す客観的、医学的証拠はなく、検察官の主張も、上記Aの供述を根拠とするものである。 ⑵ そこで、その供述の信用性について検討する。 ア Aは、3回目の司法面接において、要旨、1月21日、自宅で2回、粉末状に砕かれたピンクの薬(センノシドと認められる。以下同じ。)を飲まされて吐いた、1月22日、病院に行く途中、コンビニの駐車場に停車中の車の中で粉末状に砕かれたピンクの薬を飲まされて吐いた、その後、病室でも粉末状に砕かれたピンクの薬を飲まされて吐いたなどと供述する。 イ Aがあえて虚偽の供述を 行く途中、コンビニの駐車場に停車中の車の中で粉末状に砕かれたピンクの薬を飲まされて吐いた、その後、病室でも粉末状に砕かれたピンクの薬を飲まされて吐いたなどと供述する。 イ Aがあえて虚偽の供述をしていることを積極的に疑わせる事情はうかがわれない。また、Aは、2月15日に実施された1回目の司法面接から、入院の前やしんどいときにピンクの薬を飲まされることを供述しており、この点については強く記憶していると認められるし(1月の入院から1年以上が経過した期日外尋問においても、同趣旨の供述をしている〔Aの期日外尋問調書〕。)、Aが、2月の入院中に、被告人に対して、「ピンクの粉みたいなのもってこんといて欲しいゲロはくから」とメッセージを送っていることからしても(弁12)、この点についてのAの供述は信用できるものである(被告人も、2月の入院の直前の1回、それ以前に2回の合計 3回、便秘を解消する目的でAにセンノシドを飲ませたことがある旨供述している。)。また、センノシドを飲まされた状況についての供述内容は、いずれも相当具体的なものであり、全く事実に基づかないものとは考えにくいものである。 ウしかし、Aの上記供述のうち、1月21日に自宅で2回センノシドを飲まされたという点は、Aはこの日の午後は祖父母方に預けられていたのであるから、自宅で飲まされたというのは、それ自体が客観的な事実経過と整合しにくいものである(そもそも、1月21日は、Aにとっては、午後祖父母方に預けられ、祖父に梅のお菓子を買ってもらって食べ、帰宅後に嘔吐したという、印象的な日であったはずであるのに、この日センノシドを飲まされた状況についてのAの供述には、祖父母方に行ったことが出てこないのであり、このこともやや不自然というべきである。)。また、その供述によれば、Aは、1月の入 はずであるのに、この日センノシドを飲まされた状況についてのAの供述には、祖父母方に行ったことが出てこないのであり、このこともやや不自然というべきである。)。また、その供述によれば、Aは、1月の入院の前日から2日間のあいだに4回もセンノシドを飲まされ、しかもいずれも嘔吐したことになり、被告人は、嘔吐を続けるAにセンノシドを飲ませ続けたことになるが、これは被告人の行動としてみても相当不合理であるといわざるを得ない。そして、1月22日に病室でセンノシドを飲まされて嘔吐したという点についても、Aが嘔吐していれば看護記録にその旨が記録されるのが通常であるが、この日のAの看護記録には、その旨の記載はなく(B医師の証言、甲28)、この日にAが嘔吐したことはなかった可能性が高いから、やはり不自然というべきである。 さらに、Aの供述の経過を具体的にみると、Aは、1回目の司法面接(2月15日実施)では、2月1日の入院当日のこととして、自宅で2回、病院の駐車場で1回、合計3回、ピンクの薬を飲まされて吐いた旨供述したが(甲50)、4月12日に実施された2回目の司法面接では、1月の入院の前に、病院の診察室でピンクの薬を飲まされて吐いた旨供述し(甲17)、3回目の司法面接(4月14日実施)では、1月21日、自宅で2回、ピンクの薬を飲まされて吐いた、1月22日、病院に行く途中、コンビニの駐車場に停車中の車の中でピンクの薬を飲まされて吐いた、その後、病室でもピンクの薬を飲まされて吐いた旨供述している(甲19)。 ここでは、入院前(直前ないし前夜)に自宅で2回センノシドを飲まされて嘔吐したという点は、2月の入院に関する供述と1月の入院に関する供述とで共通しているところ、Aは、1月の入院の経緯を聞かれた際に、叔父が自宅に来て棚を作っていたことに続けて、被 ンノシドを飲まされて嘔吐したという点は、2月の入院に関する供述と1月の入院に関する供述とで共通しているところ、Aは、1月の入院の経緯を聞かれた際に、叔父が自宅に来て棚を作っていたことに続けて、被告人から食事をしないように言われたという2月の入院のことを話すなど、現に2回の入院に関する事柄を混同して供述していると考えられる部分がみられる。これに、1回目の司法面接では、2月の入院に関する事柄について供述していたが、2回目の司法面接では、2月の入院に関する事柄について供述を始めながら、供述する流れのまま1月の入院に関する事柄に供述対象が移っていることや、1回目の司法面接から2回目の司法面接までは約2か月間もあいていることも考慮すると、Aが、2月の入院に関する事柄と1月の入院に関する事柄とを混同している可能性が相当に疑われる。しかし、司法面接における検察官の質問方法は、Aにそのような混同がないかに留意し、これを慎重に見極めるものにはなっておらず、上記混同のおそれが解消されていないといわざるを得ない。このほか、1月22日のコンビニの場面についても、Aは、ピンクの薬を飲まされた後の嘔吐の有無について、当初は、吐いていないと明確に供述していたのに、突然、袋の中に吐いたとしてその時の状況を具体的に語り出していることが認められ、この変遷も、記憶の喚起として説明することは困難であるから、嘔吐した旨の供述、ひいては、Aにとっては嘔吐と強く結び付いていると考えられる、センノシドを飲まされた旨の供述についても、その記憶の正確性を疑わせるものである。 エこのようにみると、Aの上記供述の信用性には疑問が残るといわざるを得ず、他にこれを裏付ける積極的事情のない限り、その供述どおりの事実を認定することはできないというべきである。 オこれに対し、検察官は、Aの上 ると、Aの上記供述の信用性には疑問が残るといわざるを得ず、他にこれを裏付ける積極的事情のない限り、その供述どおりの事実を認定することはできないというべきである。 オこれに対し、検察官は、Aの上記供述は、現にAが1月22日及び1月23日に下痢や水様便をしていたことと整合していると主張する。しかしながら、センノシドがAの体内に入ったことを示す客観的証拠(体内からの成分の検出、Aの体調の変化〔腹痛や蠕動運動の促進等〕等)は見当たらない(甲10、11、28)。 また、Aは、その供述によれば、いずれのセンノシドも飲まされた直後に吐いたというのであるし、Aの下痢症の原因はストレス等にあると考えても矛盾はないことが認められるから(E医師の証言)、そもそもセンノシドを服用したために下痢症になったというには疑問の余地がある。そして、Aは、1月の入院以前の入院の際にも、その主訴に下痢症が含まれることが多々あったし(甲29)、1月19日夜や1月22日にはオムツを履いていた(甲9、10、28、35、弁11)ことからすると、センノシドの服用とは無関係に下痢症を発症していた可能性も十分うかがわれる。そうすると、Aが下痢等をしていたことは、Aの上記供述と矛盾しないにとどまり、これを積極的に裏付けるものとはいえない。 また、検察官は、1月22日以降、被告人がAの下痢症を気に掛けていることは、被告人がAにセンノシドを服用させたことと整合的であるなどとも主張するが、前記のとおり、Aが入院時点でオムツを履いていたことや、入院中にも被告人は病院からAの下痢症について何らかの報告を受けていたと考えられることからすると、被告人がAにセンノシドを飲ませていなくてもAの下痢症を気に掛けることは十分あり得ることというべきであり、やはり、Aの上記供述を積極的に裏付けるもの らかの報告を受けていたと考えられることからすると、被告人がAにセンノシドを飲ませていなくてもAの下痢症を気に掛けることは十分あり得ることというべきであり、やはり、Aの上記供述を積極的に裏付けるものではない。 なお、検察官は、被告人がAにセンノシドを飲ませる動機として、Aを入院させ、あるいは、入院期間を延長させる意図があったと主張するが、既に述べたとおり、同様の意図に基づくとされる①の事実が認められない上、他にそのような意図を認定するに足りる証拠もないから、その主張は採用できない。 ⑶ そうすると、Aの上記供述の信用性には疑問があり、被告人が1月22日に、Aに対し、駐車場及び病院において、それぞれセンノシドを飲ませたという②の事実は、これを認めることができない。 4 ③の事実(1月25日にAにセンノシドを服用させて、下痢症の傷害を負わせたという事実)について⑴ ③の事実についても、②の事実と同様、検察官の主張は、2回目の司法面接 及び期日外尋問におけるAの各供述を根拠とするものである。 ⑵ そこで、Aの供述の信用性について検討する。 ア Aは、2回目の司法面接及び期日外尋問において、入院中に被告人が面会に来た際、被告人から、ピンクの薬(センノシド)を、粉末状に砕かれたものと錠剤のもの1錠とを飲まされた旨供述する。 イ Aがあえて虚偽の供述をしていることを積極的にうかがわせる事情のないことは既に述べたとおりである上、上記供述は、センノシドを飲まされた状況を具体的に述べるものであるし、2回目の司法面接と期日外尋問とで一貫したものでもある。 ウしかし、Aの上記供述は、約15分間という限られた面会時間において、センノシドの粉末に加えて、Aが飲み慣れていない錠剤まで服用させたという点で、それ自体相当に不自然で 貫したものでもある。 ウしかし、Aの上記供述は、約15分間という限られた面会時間において、センノシドの粉末に加えて、Aが飲み慣れていない錠剤まで服用させたという点で、それ自体相当に不自然であるし、被告人が、カーテンで仕切られただけで、医師や看護師がいつ入室してくるか分からない病室(弁15)でそのような行為をしたというのも不自然といわざるを得ない。また、Aはこの時嘔吐していないと述べるところ、仮にAがその供述するように粉末に加えて錠剤1錠まで服用したとすれば、Aにとっては明らかに過剰摂取であるのに、Aは、下痢症にはなっているものの、強い腹痛等は訴えていないのであり、Aの上記供述は、このようなAの容体とも整合的とはいえないものである。 エそうすると、Aの上記供述の信用性には疑問が残るといわざるを得ず、これを裏付ける他の積極的事情のない限り、その供述どおりの事実を認定することはできないというべきである。 オこれに対し、検察官は、Aが、2月2日に、被告人に対し、「何時に病院つく?」「何時かなーって思ったからいいよピンクの粉みたいなのもってこんといて欲しいゲロはくから」とのメッセージを送信しているのは、それ以前に、被告人との面会時にピンクの薬を服用させられたという経験があるからと考えるのが自然であり、上記のAの供述と整合すると主張する。しかし、上記メッセージは、必ずしも被告 人との面会時にセンノシドを服用させられた経験があることを前提とするものとは解されないし、仮に、Aが過去に病院内で被告人からセンノシドを飲まされたことがあったとしても、それが1月の入院時のことであったとは限らないのであるから、Aの上記供述を積極的に裏付けるものとはいえない。他に検察官が主張する事情が積極的な裏付けにならないことは、②の事実について述 ったとしても、それが1月の入院時のことであったとは限らないのであるから、Aの上記供述を積極的に裏付けるものとはいえない。他に検察官が主張する事情が積極的な裏付けにならないことは、②の事実について述べたところと同様である。 ⑶ そうすると、Aの上記供述の信用性には疑問があり、被告人が1月25日にAに対しセンノシドを飲ませたという③の事実は、これを認めることができない。 5 以上のとおり、本件公訴事実中、暴力行為等処罰に関する法律違反の点については、犯罪の証明がない。 第2 詐欺について本件公訴事実中、詐欺の点は、要旨、「被告人は、真実は、被共済者であるAが、1月22日から同月27日までの間に別紙(省略)記載の病院に入院したのは、被告人がAを故意に継続的な低血糖状態等に陥らせるなどしたことによるものであり、同入院により被告人が共済金の支払を受けることができないのに、これを秘し、あたかも同入院が正当に共済金の支払を受けることができる病気入院であるかのように装い、⑴同月28日頃、別紙(省略)記載の共済組合①宛てに共済金請求書等を郵送し、同月31日頃、これを同共済組合に送達させて、⑵同日、別紙(省略)記載の共済組合②の支店において共済金請求書等を提出して、それぞれ共済金の支払を請求し、いずれも、2月1日頃、各共済組合決裁担当者に、各請求が共済契約に基づく正当な共済金の支払請求である旨誤信させて各共済金の支払を決定させ、よって、同月2日、各共済組合支払担当者に、被告人名義の普通預金口座等に現金合計14万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。」というものである。 しかし、第1で説示したとおり、被告人がAを故意に継続的な低血糖状態等に陥らせるなどしたという事実は認められないから、被告人の各共済金の請求は、詐欺罪にいう欺罔行為に当 た。」というものである。 しかし、第1で説示したとおり、被告人がAを故意に継続的な低血糖状態等に陥らせるなどしたという事実は認められないから、被告人の各共済金の請求は、詐欺罪にいう欺罔行為に当たらない。 したがって、本件公訴事実中、詐欺の点については、犯罪の証明がない。 第3 以上のとおりであるから、本件公訴事実中、暴力行為等処罰に関する法律違反及び詐欺の点については、刑訴法336条により被告人に無罪の言渡しをする。 (法令の適用)(省略)(量刑の理由)被告人は、親としてA(当時8歳)を養育すべき立場にありながら、入院中のAに対し、その体調を心配するどころか、執拗に判示の強要行為をしてAを怖がらせたのであり、厳しい非難に値するが、Aは看護師らによって注意深く観察され、食事を管理されていたことからすると、実際にAが被告人の要求に従って食事をせず、より健康を損なう事態に至るおそれが高かったとはいえないし、動機・経緯をみても、Aがうそを言うことに対する怒りからの突発的な犯行であり、検察官が主張するような、Aの入院期間を延長させる意図までは認められないことは量刑上考慮すべきである。 このほか、被告人が、本件発言等をしたこと自体は認め、Aに対する謝罪の言葉を述べ、今後はAとの向き合い方を見直し、感情のコントロールに努めたい旨述べるなど、自身の問題点について考えを深めていること、前科前歴がないこと、被告人の父親と友人が証人として出廷し、父親は、今後も家族と共に被告人とAを支えていく旨述べ、友人も、被告人の家族とも協力して二人を支える旨述べていることなどの酌むべき事情も認められるので、これらを考慮し、被告人に対しては、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予することとした。 なお、未決勾留日数については、被告人には強 人を支える旨述べていることなどの酌むべき事情も認められるので、これらを考慮し、被告人に対しては、主文の刑を科した上、その刑の執行を猶予することとした。 なお、未決勾留日数については、被告人には強要未遂の事実による起訴後勾留のないことや被告人に対する刑の内容等の諸事情を考慮し、これを本刑には算入しないこととした。 (求刑―懲役3年6月)令和7年4月21日 大阪地方裁判所第13刑事部 裁判長裁判官岩 﨑 邦生 裁判官佐々木淑江及び裁判官後藤麻里は差支えのため、いずれも署名押印することができない。 裁判長裁判官岩 﨑 邦生
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