平成1(わ)465 業務上横領被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月23日 神戸地方裁判所
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判決文本文24,019 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 押収してあるステンドグラス製電気スタンド1台(平成元年押第162号の2)を没収する。 押収してあるギフトカード427枚(同号の1)を被害者社会福祉法人A会に還付する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,精神薄弱者施設B園,同C園及び精神薄弱児施設D学園(以下併せて「3施設」ともいう。)を設置経営する社会福祉法人A会の理事長兼D学園及びB園園長として,被告人の妻でA会の理事兼C園園長をしていた死亡前の相被告人EとともにA会及び3施設の会計事務を統括掌理し,入所者預り金を含む財産の管理等の業務に従事していたものであるが,第1 E及びFの両名と共謀の上,日常諸費等の架空費目を計上して,自己がEとともに管理する3施設の入所者が国民年金法に基づき受給していた障害福祉年金(昭和61年4月から障害基礎年金,以下「障害年金」という。)の預金口座から現金を引き出して,これを着服横領しようと企て, 1 別表1(省略)記載のとおり,昭和59年6月ころから昭和62年5月ころまでの間,前後41回にわたり,神戸市a区bcのd番地のB園兼D学園事務室において,前記架空費目を計上し,B園及びD学園の入所者受給年金の預金口座から現金合計3986万9845円を引き出し,これを両園の入所者のため業務上預かり保管中,いずれもそのころ,同所において,ほしいままに自己の用途に充てるため,着服して横領し, 2 別表2(省略)記載のとおり,昭和59年7月ころから昭和62年12月ころまでの間,前後30回にわたり,兵庫県 れもそのころ,同所において,ほしいままに自己の用途に充てるため,着服して横領し, 2 別表2(省略)記載のとおり,昭和59年7月ころから昭和62年12月ころまでの間,前後30回にわたり,兵庫県佐用郡e町fg番地のC園園長室ほか1か所において,前記架空費目を計上し,C園の入所者受給年金の預金口座から移し替えたA会C園理事長被告人(各種雑件)名義の口座から現金合計5872万5878円を引き出し,これを同園の入所者のため業務上預かり保管中,いずれもそのころ,同所ほか1か所において,ほしいままに自己の用途に充てるため,着服して横領し,第2 昭和62年4月29日ころから同年10月15日ころまでの間,A会及び3施設が,株式会社Gから購入したギフトカード合計457枚(合計456万円相当)をA会及び3施設のため,前記D学園園長室において,業務上預かり保管中, 1 同年5月29日ころ,前同所において,前記ギフトカードのうちの18枚(合計18万円相当)を,ほしいままに自己が購入した電気スタンド(時価18万円相当,以下「本件スタンド」という。)(平成元年押第162号の2)の代金支払に充て費消し,もって横領し, 2 昭和63年6月ころ,前同所付近において,前記ギフトカードのうち427枚(合計426万円相当)(同号の1)を,ほしいままに自己の用途に充てるため着服し,もって横領したものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)以下の説明においては,これまでに記載した略称表記等を用いるほか,①判示第1の事実に関する事件を「年金横領事件」といい,同第2の事実に関する事件を「ギフトカード横領事件」といい,②被告人とEを併せて「被告人ら」といい,③B園とC園を併せて「両施設」ともいい,なお,本件でD学園の障害年金受給者の障害年金の取扱い い,同第2の事実に関する事件を「ギフトカード横領事件」といい,②被告人とEを併せて「被告人ら」といい,③B園とC園を併せて「両施設」ともいい,なお,本件でD学園の障害年金受給者の障害年金の取扱いについては,B園の入所者のそれと異ならないため,その記載を省略し,④証言を挙示する場合は,公判手続の更新前のものであっても,単に「○○証言」とする。 第1部年金横領事件について第1 弁護人は,①被告人らは,入所者に対する委託信任関係の趣旨に沿って,本件で引き出した障害年金を保管していたもので,障害年金を横領した事実はなく,被告人らに不法領得の意思もない,また,②被告人は,障害年金を横領することを共謀した事実もないから,被告人は無罪であると主張するので,以下,説明する。 第2 まず,関係証拠によれば,以下の事実が認められ,弁護人も特にこれを争わない。 1 被告人は,B園,C園及びD学園を設置経営するA会の理事長兼D学園及びB園園長であり,被告人の妻でA会の理事兼C園園長をしていたE及びその妹でD学園副園長のFと共同して3施設の管理・運営をしていた。 2 本件入所者は,いずれも精神薄弱者であって,障害年金の受給権者であり,この障害年金の所有権は精神薄弱者である入所者本人に属するところ,両施設では,入所者の保護者から年金証書等を預かったり,保護者から委任を受けて障害年金の受給手続をとることにより,入所者本人に代わって障害年金を受領し,これを管理していた。 3 ところで,障害年金は,入所者の生活保障のために支給されるものであるから,両施設において,障害年金を当該入所者の生活に有用な目的に使うことは可能であるが,他方,入所者の日常の生活費用については,国及び県・市から措置費が支給されることにより賄われるため,実際には受給した障害年金を入所者の 障害年金を当該入所者の生活に有用な目的に使うことは可能であるが,他方,入所者の日常の生活費用については,国及び県・市から措置費が支給されることにより賄われるため,実際には受給した障害年金を入所者の日常の生活費用に使う必要はほとんどなかった。 4 障害年金を施設においてどのように運用するかについては,C園においては,昭和55年4月1日付けの「障害福祉年金に関する了解事項」(以下「了解事項」という。)が保護者会で了承されており,この了解事項によると,障害年金受給額を2分し,半分を園生運用費(注,のちに共済掛金と名称が変わるが実質は異ならないので,以下もこの呼称を用いる。)として積み立て,その余の半分を日常諸費とするものとされており,園生運用費は,将来の準備金及び老人ホーム建設基金として積み立てるとされ,日常諸費は実情に応じて支出するとされている。また,保護者の意見は,保護者会等で聞き,会の議決によるものとされている。 B園においては,C園における了解事項のような明文の規定は存しないが,口頭で障害年金受領額を2分し,半分を共済掛金として積み立て,その余の半分を日常諸費とする説明がされていた。 なお,障害年金を施設においてどのように運用するかについては,入所者本人には,財産を管理する能力がなく,その意見を述べることができないため,事実上その保護者の意見をもって,これに代える扱いになっていた。 5 ところが,両施設とも,障害年金についての使途等が明確でなかったところ,昭和58年の兵庫県の監査において,施設は受領した障害年金の全額をまず入所者ごとの口座を設けて,その口座に一旦入金するようにすること,日常諸費に使用した場合はその使途を明確にすべきであるとの指導を受け,これに従わない場合には,更に今後の監査で,障害年金の管 額をまず入所者ごとの口座を設けて,その口座に一旦入金するようにすること,日常諸費に使用した場合はその使途を明確にすべきであるとの指導を受け,これに従わない場合には,更に今後の監査で,障害年金の管理方法等について問題とされることが必然となった。 6 上記監査の後,両施設において,真実は障害年金が日常の生活費用等で費消された事実がないのにもかかわらず,日常諸費等の架空費目を計上してこれらが実際に費消されたように装うこととされた。 7 被告人らは,両施設の施設職員が,6に基づいて日常諸費等の架空費目を計上することによって,B園及びD学園の入所者受給年金の預金口座から,あるいはC園の入所者受給年金の預金口座から移し替えたA会C園理事長被告人(各種雑件)名義の口座から,それぞれ引き出した障害年金を,B園及びD学園の関係については別表1(省略),C園の関係については同2(省略)に記載のとおり受け取った。 第3 被告人らの着服横領行為について(いわゆる積極証拠等の説明)(なお,共謀の点については,後記第5で別途検討する。) 1 報告書,捜査関係事項照会書,預金通帳等の関係証拠によると,被告人らが前記第2,7により両施設の施設職員から受け取った障害年金は,その後多数のA会関係の法人名義及び被告人らの個人名義の口座に出し入れされたとみられるのであって,これにより当該障害年金は,A会の簿外資産あるいは被告人らの個人資産(以下,併せて「簿外資産等」という。)の中に組み入れられていることが認められる。 しかも,被告人らは,障害年金をこうして簿外資産等の中に組み入れることによって,障害年金の流れを被告人ら以外のA会関係者から把握できなくするにとどまらず,この障害年金が,その後,どのように保管され,あるいは費消されたかについて明らかにする 資産等の中に組み入れることによって,障害年金の流れを被告人ら以外のA会関係者から把握できなくするにとどまらず,この障害年金が,その後,どのように保管され,あるいは費消されたかについて明らかにする帳簿等を一切作成しておらず,いわゆる裏帳簿すらない状態にしているのであって,被告人ら自身によっても,自分らが受け取った障害年金の流れを正しく説明するすべを有していないことが認められる。 要するに,被告人らが受け取った障害年金がどうなったかは,全く闇の中になったいうほかない状況になったものといえる。 なお,検察官は,判示第1の2の事実に関し,C園の入所者受給年金の預金口座から移し替えたA会C園理事長被告人(各種雑件)名義の口座から合計30回にわたり引き出された現金のうち5回分については,預金通帳等の関係証拠によって現金の流れを検討することにより,それらが被告人名義のマンション購入資金又は同資金に充てるため銀行から融資を受けた借入金の返済資金の一部として支出されたものと認められると主張するところ,確かに日付の近接性及び金額等から現金の流れを推認することは,ある程度は可能であり,かつそれなりに合理性があるとはいえ,現金についてその同一性を確認することは困難である上,被告人ら自身が現金の流れについてこれに沿う供述をしていないことからすると,このような主張に限界があることは否定しえない。しかしながら,検察官の主張する現金の流れが十分解明されなくても,被告人らが受け取った障害年金がどうなったかは,全く闇の中であることに変わりはないから,この点は,本件の判断を左右しない。 2 前記第2で認定した各事実に,上記1の事実を総合すると,被告人らは,両施設が管理していた入所者の個人財産である障害年金を,真実は障害年金が日常の生活費用等に費消 は,本件の判断を左右しない。 2 前記第2で認定した各事実に,上記1の事実を総合すると,被告人らは,両施設が管理していた入所者の個人財産である障害年金を,真実は障害年金が日常の生活費用等に費消された事実がないのにもかかわらず,これらが正当に費消されたかのように装うといった不正な会計処理をし,これにより捻出された障害年金を施設職員から受け取った上,これらを保管中,簿外資産等の中に組み入れるなどして,その後の障害年金の行方を不明ならしめていることが認められる。 このように,被告人らが,入所者の個人資産である障害年金を簿外資産等に組み入れ,その後の行方を不明ならしめる行為は,それが障害年金の委託の趣旨の範囲内にあるか,あるいは,委託者である入所者本人のために行われたものであるといった特段の事情が認められない限り,いわゆる不法領得の意思をもってしたものと推認することができ,これを着服横領したものと認めることができる。 3 なお,弁護人は,検察官が,被告人らが施設職員から受け取った障害年金を,具体的に何に費消したかを立証していないことを論難し,費消先が立証されない以上,業務上横領の立証としては不十分であるかのように主張するが,本件は着服横領の事案であって,関係証拠により着服の事実が認定しうるのであれば,必ずしもその使途が逐一立証されることは必要ではなく,実際,着服横領において,その金員の使途が裏付けられないことは珍しくないし,自白がない場合にはそれは一層困難になることは明らかであるから,この主張は採用しえない。 第4 弁護人の主張に対する判断(前記第3の2の「特段の事情」が本件では認められないことについて) 1 これに対し,弁護人は,① 被告人らは,受け取った障害年金については,将来,両施設の入所者が高齢になった際に 判断(前記第3の2の「特段の事情」が本件では認められないことについて) 1 これに対し,弁護人は,① 被告人らは,受け取った障害年金については,将来,両施設の入所者が高齢になった際に入所するための生涯施設(以下「生涯施設」という。)を作る際に,入所者の保護者の同意ないし承認(以下「同意等」という。)を得た上で,これに使用する目的で保管していたものである。 すなわち,障害年金は,入所者の個人資産であるとはいえ,入所者の保護者の同意等がある場合には,生涯施設の建設のために使用できると解すべきであるから,このような場合に,生涯施設の建設のために障害年金を保管することは,年金の委託の趣旨の範囲内にあり,かつ,こうした生涯施設を建設することは委託者である入所者の共通の利益になることであるから,そこには不法領得の意思も存しない(以下,弁護人の主張①という。)。 ② 日常諸費等の架空費目を計上し,障害年金の費消を仮装したことについても,保護者の多くは障害年金のうち両施設において日常諸費分とされているものについては,実際には日常の生活費用は措置費で賄われているために,費消されることはほとんどなく,費消されなかった日常諸費分は両施設においてそのまま保管されていることを知っていたから,前記の仮装は,横領の事実や不法領得の意思を推認させるものではない(以下,弁護人の主張②という。)。 ③ そして,障害年金の費消を仮装した目的は,保護者の同意等を得て生涯施設を建設するために障害年金をためていることが兵庫県の監査で明らかになることを逃れるため(いわゆる監査逃れ)である(以下,弁護人の主張③という。)。 ④ なお,障害年金の費消を仮装した目的には,ほかに,入所者の障害年金を自己のために使おうとする悪質な保護者から入 とを逃れるため(いわゆる監査逃れ)である(以下,弁護人の主張③という。)。 ④ なお,障害年金の費消を仮装した目的には,ほかに,入所者の障害年金を自己のために使おうとする悪質な保護者から入所者の障害年金を守るためでもある(以下,弁護人の主張④という。)と主張する。 しかしながら,これらの主張は,以下のとおり,いずれも採用することができない。 2 弁護人の主張①ないし④を検討する前に,まず,本件では,そもそも被告人らが,施設職員から受け取った障害年金を費消することなくそのまま保管していたといえるか自体が判然としない。 (1) すなわち,前記第3の1に記載のとおり,被告人らが受け取った障害年金は簿外資産等の中に組み入れられたにとどまらず,いわゆる裏帳簿等の類もないため,被告人らが受け取った障害年金がどうなったかは,全く闇の中になったいうほかない状況になっているのであり,これでは,被告人らが受け取った障害年金が費消されることなくそのまま保管されているかの確認もしえない。 (2) 弁護人は,本件発覚後,A会の簿外資産等が,被害額を超えていたことをもって,被告人らが受け取った障害年金がそのまま保管されていたことの根拠とするが,障害年金が簿外資産等に組み入れられて,その後,他の簿外資産等との区別がつかず,その費消の有無・程度を把握しえなくなっている以上,この点をもって,障害年金がそのまま保管されていたことの根拠とすることはできない。 また,弁護人は,保管を委託された現金を受託者の名義で銀行等に預け入れる行為は,世間でよく行われている通常の保管行為であり,本件も同様のものであると主張するが,本件では,被告人らが受け取った障害年金は,日常諸費等として費消されたかのように装われて簿外資産等にさ 入れる行為は,世間でよく行われている通常の保管行為であり,本件も同様のものであると主張するが,本件では,被告人らが受け取った障害年金は,日常諸費等として費消されたかのように装われて簿外資産等にされているのであって,このように不正な会計処理を経ているばかりか,簿外資産等に組み入れられた後の障害年金の流れが明らかでないのであるから,これが世間でよく行われている通常の保管行為などといえないことは明らかである。 さらに,弁護人は,被告人らが受け取った障害年金を預け入れたとみられる預金通帳等が,A会の施設内にあることをもって,障害年金が保管されていたかのように主張するが,これも前記のとおり,障害年金が簿外資産等に組み入れられて,その後,他の簿外資産等との区別がつかず,その費消の有無・程度を把握しえなくなっている以上,物理的に預金通帳等がA会の施設内にあるからといって,被告人らが受け取った障害年金が,そのまま保管されているといえるものではない。 (3) しかしながら,被告人らが受け取った障害年金が費消されることなくそのまま保管されているかを確認しえない反面,そのすべてが既に費消されたこともまた確認しえない。そこで,弁護人の主張にかんがみ,被告人らが障害年金を簿外資産等として保管していることを前提として,さらに,前記①ないし④の主張について検討することとする。 3 弁護人の主張①について(1) まず,本件において,被告人らが受け取った障害年金に関して,これを被告人らがいう生涯施設を建設する際に使うことを認める保護者会の明示的な決議等は存在しないのであって,この点は弁護人も認めるところである。 (2) 弁護人は,被告人らが将来入所者のための生涯施設を作ることを目的に障害年金を保管することについては,実質上保 示的な決議等は存在しないのであって,この点は弁護人も認めるところである。 (2) 弁護人は,被告人らが将来入所者のための生涯施設を作ることを目的に障害年金を保管することについては,実質上保護者会の了解又は納得を得られていたのであり,したがって,障害年金を実際に生涯施設の建設のために支出する際にも,保護者会の同意等は得られるはずであったと主張する。 そして,弁護人は,その根拠として,これまでも保護者会の席上において,生涯施設の建設のための話合いがなされ,そのために障害年金をためていこうという話も出ていたこと,とりわけ,C園においては,遅くとも了解事項が保護者会で了承された時点で,保護者会として,生涯施設建設のために障害年金を積み立てるという共通認識が形成されていたものであること,そして,それ以降,C園においては,実際に,昭和五四,五年ころ深井戸の設置等に障害年金を使う旨の決議が保護者会でなされたり,昭和56年に保護者役員会において,園生運用費として積み立てた金員を施設の土地購入資金に充てる旨の決議がなされたり,昭和62年の家族ホームHの建設費用が障害年金から出されたことがあるのであって,このように入所者個人のためではなく,入所者全体の共通の利益のために障害年金が支出された例があったことなどを指摘する。 (3)アしかしながら,まず,関係証拠によると,確かに,多くの保護者が生涯施設の建設を希望し,あるいは,保護者会でそうした話が出たこともあることはうかがわれるものの,保護者が生涯施設の建設を希望することと,それに入所者個人の財産である障害年金を使うことに同意することはおよそ次元が違う話であることはいうまでもないのであって,しかも,この点は後記(4)の各事情に照らすと,一層明らかであるといえる。 イ 個人の財産である障害年金を使うことに同意することはおよそ次元が違う話であることはいうまでもないのであって,しかも,この点は後記(4)の各事情に照らすと,一層明らかであるといえる。 イ次に,弁護人が,その主張の根拠とする了解事項についてみるに,了解事項には,以下のとおり記載されている。 すなわち,「1 年金運用に関する基本的な考え方(省略) 2 年金の運用区分は次の通りである。(月額に対する区分)(1) 日常諸費  50%(2) 園生運用費 50% 3 使用目的及び運用方法(1) 日常諸費イ C園が園生の日常生活の実情に応じて使用する。 ロ保護者会取扱分ー保護者会総会において,使途を議決のうえ,使用する。 (2) 園生運用費イ入院費用(付添看護費等)ロ老人ホーム入所中の介助費ハ園生個人が必要とした場合の設備,建物などの費用上記の使用目的のため将来の準備金として積立てる。積立て期間は会計年度とし,3月末日をもって更新する。(一年更新)当該年度の積立金は,将来の準備金及び老人ホーム建設基金として積立てる。 ニ (省略)ホ (省略) 4 この了解事項のほか,必要な事項は,保護者会の意見を聞いてC園長が別に定める。」というものである。 もとより,本件では,被告人らが横領したとされているのは, 4 この了解事項のほか,必要な事項は,保護者会の意見を聞いてC園長が別に定める。」というものである。 もとより,本件では,被告人らが横領したとされているのは,入所者の受け取る障害年金のうち,年金の運用区分として,日常諸費に充てるとされる部分であるところ,この了解事項の記載内容は,年金の運用区分として,日常諸費50パーセント,園生運用費50パーセントと2分した上で,園生運用費を積み立てるというものであって,園生運用費が将来の施設建設に使われる余地がある記載になっているのに対し,日常諸費を将来の施設建設に使う旨の記載になっていないことはその規定上明確であるから,この了解事項は,弁護人の主張を裏付けるものではなく,この了解事項をもって,保護者会として,生涯施設建設のために障害年金を積み立てるという共通認識が形成されたものであるとはいえない。 なお,この点について,弁護人は,この了解事項では,運用区分として,日常諸費と園生運用費とが50パーセントずつとされているものの,これは一応のものにすぎないのであって,その区分割合には深い意味はないから,運用区分として日常諸費とされているものについても,入所者全体の共通の利益のために支出できると主張する。しかしながら,こうした運用区分が一応のものにすぎないのであれば,何故わざわざこのような了解事項を定めなければならないのかおよそ合理的な説明ができないのであって,この主張は採用しえない。前記の区分を一応のものと供述するC園保護者会会長のIの証言は,不合理で信用することができない。 ウさらに,弁護人が,C園で,保護者会の了承等があり,実際に,入所者個人のためではなく,入所者全体の共通の利益のために障害年金が支出された例として挙げる,昭和五 することができない。 ウさらに,弁護人が,C園で,保護者会の了承等があり,実際に,入所者個人のためではなく,入所者全体の共通の利益のために障害年金が支出された例として挙げる,昭和五四,五年ころ深井戸の設置等に障害年金を使う旨の決議が保護者会でなされているということ,昭和56年に保護者役員会において,園生運用費の金を施設の土地購入資金に充てる旨の決議がなされているということ,昭和62年の家族ホームHの建設費用が障害年金から出されたことについては,いずれも本件で問題とされている日常諸費が積み立てられた上で,使われたものではないから,これらの例は日常諸費を生涯施設の建設のために積み立てることを,保護者会において了解又は納得していたことの証左となるものとはいえない(なお,家族ホームHの建設費用については,日常諸費からも500万円が出されているが,これについては,保護者会の決議がないまま出されたものであって,保護者会の了解を得たものとはいえない。)。 エ加えて,B園では,そもそもC園におけるような了解事項はなく,また,入所者全体の共通の利益のために障害年金が支出された具体的事例もなく,前記の家族ホームHの建設費用についても,B園の保護者会はその費用を出さなかったことが認められる。 (4) さらに,保護者会は,被告人らが将来入所者のための生涯施設を作ることを目的に障害年金を保管することに,了解するかどうかを判断するために当然必要となる説明を受けたり,情報を得ていない。 すなわち,アまず,被告人らは,これまで保護者会において,障害年金の会計報告をしたこともなければ,措置費について説明をしたこともないのであって,そもそも保護者会には,障害年金が現実にどのように使用されているかを知る機 被告人らは,これまで保護者会において,障害年金の会計報告をしたこともなければ,措置費について説明をしたこともないのであって,そもそも保護者会には,障害年金が現実にどのように使用されているかを知る機会はなかった。 イ次に,保護者会は,被告人らが考えている生涯施設の建設が,いつ,どの程度の規模でなされ,それについて障害年金を幾らぐらい充てるつもりであるのかといった説明等も受けたことがない。 特に,被告人らが,了解事項によって施設において積み立てていくことが予定されていた園生運用費だけではなく,積立てを予定する規定がない日常諸費についてまで生涯施設の建設に充てるつもりであるなら,その旨の明示的な説明がなされるはずであるのに,こうした説明がなされたこともない。 (5) 加えて,両施設における保護者会は,通常月1度程度開かれるが,出席者はいつも保護者の過半数にも満たないもので,保護者会においては,施設側の説明などを聞くことが多く,また,保護者会の役員なるものも施設側の依頼によって就任していることが認められるのであって,そもそも保護者会が,その実態において,入所者の個人資産である障害年金を生涯施設の建設に使えるかという問題について,保護者全体の意思を代表しているといえるかも疑問であるといえる。 (6) このほか,弁護人の主張④によれば,被告人らは,入所者の障害年金を自己のために使おうとする悪質な保護者に対しては,障害年金を保管していることが分からないように,障害年金を費消したように装う必要があると考えていたというのであるから,被告人らが,こうした悪質な保護者までもが,生涯施設を建設する際には,一転して当該入所者の分の障害年金を使用することに同意すると考えていたとするなら,そのこと自体も矛盾しているとい うのであるから,被告人らが,こうした悪質な保護者までもが,生涯施設を建設する際には,一転して当該入所者の分の障害年金を使用することに同意すると考えていたとするなら,そのこと自体も矛盾しているといわざるを得ない。 (7) 以上の(1)ないし(6)に照らすと,被告人らが,受け取った障害年金について,将来,生涯施設を作る際に,入所者の保護者の同意等を得た上で,これに使用する目的で保管していたものとはいえないのであって,弁護人の主張①は採用することができない。 4 弁護人は,前記の主張①に関連して,以下のようにも主張する。 すなわち,障害年金の管理権限は施設にあるから,すべての保護者の同意がなければ,障害年金を入所者共通の利益のために支出できないというものではなく,障害年金の支出・処分の適否は,その具体的使途目的の適合性,入所者の受ける利益の内容や程度,支出する障害年金の額,その支出手続の相当性など具体的な支出・処分行為時において客観的に判断されるべきものであり,その際に保護者もしくは保護者会の意向もその処分行為の適合性の判断の重要な要素となるものではあるが,すべての保護者の同意がなければ,支出できないというものではない,というのである。 その趣旨は必ずしも判然としないが,要するに,保護者会の決議や全保護者の同意がなくても,施設は独自の判断で障害年金を生涯施設の建設に使いうるとするものと解される。 ところで,障害年金は,精神薄弱者本人の生活保障のために支給されるものであるから,精神薄弱者が施設で生活している場合には,当該施設が,障害年金を入所者個人の生活に必要な範囲で費消することは,障害年金の受給の趣旨に沿うものとして,格別問題が生じることがないと考えられる。 これに対し,それ以上に障害 場合には,当該施設が,障害年金を入所者個人の生活に必要な範囲で費消することは,障害年金の受給の趣旨に沿うものとして,格別問題が生じることがないと考えられる。 これに対し,それ以上に障害年金を入所者の共通の利益のために使用することが果たして障害年金の受給の趣旨との関係でどこまで許されるかについては,一概には決し難い困難な問題であるといわなければならない。しかし,障害年金が入所者の個人財産である上,保護者がいる場合には施設における障害年金の管理は現実には当該保護者からの依頼によりなされているところ,本件では,後記のとおり保護者に対しては障害年金が日常諸費等として実際に費消されたかのように装っていることが認められるのであるが,施設が,本来入所者の個人財産である障害年金について,このように,不正な会計処理をして,保護者に対しあえてその費消を仮装してまで,独自の判断で自由に使用しうる権限まで有しているなどとは,到底認めることができない。 そうすると,被告人らが,本件の事実関係の下で,障害年金を自分たちが新しく作る生涯施設の建設に充てる意思を有していたというのであれば,被告人らには,受け取った障害年金を自己のものとして処分する意思,すなわち,不法領得の意思があったものということができる。 5 弁護人の主張②について(1) まず,被告人らが,日常諸費等の架空費目を計上して,障害年金の費消を仮装した上,その分の障害年金を被告人らにおいて受け取ったことについて,被告人らは,保護者会において,事前にも事後にも明示的な説明をしていないのであって,この点は弁護人も認めるところである。 (2) さらに,被告人らは,これまで保護者会において,障害年金の会計報告や措置費の説明等をしたこともないのであって,保護者会には,障害 ないのであって,この点は弁護人も認めるところである。 (2) さらに,被告人らは,これまで保護者会において,障害年金の会計報告や措置費の説明等をしたこともないのであって,保護者会には,障害年金が現実にどのように使用されているかを知る機会がなかったことや,了解事項を根拠に,日常諸費が実際はほとんど費消されることなく積み立てられていることを保護者が知っていたとはいえないことについても,前記3(4)のとおりである。付言すると,被告人らは,個々の保護者に対して,当該入所者の障害年金の会計報告をしたこともない。 (3) 弁護人は,I,J,K及びLの証言等によると,C園やB園の保護者会の役員らは,措置費があるため日常諸費が実際にはほとんど使われることがないことを知っていたことが認められるから,保護者会の役員らの認識がこのようなものである以上,一般の保護者も同様の認識を有していたと推認できる旨主張する。 しかしながら,一般の保護者より施設の実情等に詳しい保護者会の役員らが措置費があるため日常諸費に残額が出ることを知っているからといって,前記のとおり保護者会に来ない保護者が過半数であることなどにかんがみると,一般の保護者がこうした事情を知っていたと推認することはできない。 (4) 以上の(1)ないし(3)に照らすと,保護者の多くが,障害年金のうち日常諸費分とされている部分については,実際には措置費で賄われているために,費消されることはほとんどなく,費消されなかった日常諸費分は両施設においてそのまま保管されていることを知っていたとはいえないのであって,本件で,日常諸費等の架空費目を計上したことは,保護者に対し,その費消を仮装したものといえる。 弁護人の主張②も採用することができない。 (5) ていたとはいえないのであって,本件で,日常諸費等の架空費目を計上したことは,保護者に対し,その費消を仮装したものといえる。 弁護人の主張②も採用することができない。 (5) なお,弁護人は,保護者は,施設における障害年金の管理・保管方法については,施設に一任していたのであり,金銭が不特定物であることからすると,それに見合う財産が施設に存する以上,管理・保管方法は問題にならない旨主張し,I,J及びKの各証言も,障害年金の管理・保管については施設に任せていたとする。 しかしながら,保護者が,施設内における障害年金の具体的運用方法等について施設に一任することはあるとしても,少なくとも,障害年金の使用額や保管額が分かるように,施設内において適正な会計処理がなされることが必要であることは当然であって,そうすると,これらの各証言があるからといって,およそ障害年金を簿外資産等に取り入れて,その存在が把握することすらできなくなることまで保護者が容認していたとまでは到底いえない。 6 弁護人の主張③について(1) 前記3で詳述したとおり,被告人らは,受け取った障害年金について,将来,生涯施設を作る際に,入所者の保護者の同意等を得た上で,これに使用する目的で保管していたものとはいえないのであるから,弁護人の主張③は,そもそも前提を欠いたものといえる。 (2) また,兵庫県の監査を逃れるためだけなら,単に帳簿上日常諸費等の架空費目を計上してその分が費消されたかのように装ったり,あるいは障害年金の管理を保護者会において行っているように装えば足りるのであって,それ以上に,被告人らがわざわざ施設職員から実際に障害年金を受け取って自ら保管を始める必要はないし,それを行うにしても,受け取った障害年金を実際に生涯 において行っているように装えば足りるのであって,それ以上に,被告人らがわざわざ施設職員から実際に障害年金を受け取って自ら保管を始める必要はないし,それを行うにしても,受け取った障害年金を実際に生涯施設の建設に使用するためには,その保管の有無・態様等は明らかにしておくべきであって,その行方が闇の中に消えることは許されるべきではないから,被告人らが行った行為は,単に兵庫県の監査を逃れるためという目的を明らかに超えたものといえる。 (3) 以上の(1)及び(2)に照らすと,被告人らが,障害年金の費消を仮装した目的は,保護者の同意等を得て生涯施設を建設するために障害年金をためていることが兵庫県の監査で明らかになることを逃れるためではなく,被告人らが施設で管理していた入所者の個人財産である障害年金を自ら受け取り,簿外資産等に取り入れて,その後の金銭の流れを不明ならしめていることが兵庫県の監査で発覚すれば,自らの年金横領が露見するため,それを防ぐためであることは明らかである。 弁護人の主張③も採用することができない。 7 弁護人の主張④について(1) そもそも,弁護人が主張する,保護者会に出席する保護者すなわち入所者のことを真剣に考える保護者,保護者会に来ない保護者すなわち入所者のことを考えない保護者というような区別自体が,曖昧かつ不明確なものであることはいうまでもない上,本件では,被告人らが,保護者がどのような保護者であるかによって,障害年金の保管方法を区別しようとしていたことをうかがわせる証拠もないのであるから,障害年金の費消を仮装したのは,悪質な保護者から入所者の障害年金を守る目的があったという弁護人の主張は,いかにも不自然,不合理である。 (2) また,前記第2の2及び4のとおり,両施設では,入所者 年金の費消を仮装したのは,悪質な保護者から入所者の障害年金を守る目的があったという弁護人の主張は,いかにも不自然,不合理である。 (2) また,前記第2の2及び4のとおり,両施設では,入所者の保護者から年金証書等を預かったり,保護者から委任を受けて障害年金の受給手続をとることにより,入所者本人に代わって障害年金を受領し,これを管理していたことや,障害年金を施設においてどのように運用するかについては,入所者本人には,財産を管理する能力がなく,その意見を述べることができないため,事実上その保護者の意見をもって,これに代える扱いになっていたことからすると,施設が,保護者に対し,当該保護者に関係する入所者の障害年金について,その費消を仮装するようなことは,到底許されないものといわざるを得ない。 (3) さらに,付言すると,この主張は,障害年金を生涯施設の建設のために使用する場合には,保護者の同意等を得ることを考えていたとする被告人の供述やこれに依拠する弁護人の主張①とも矛盾するものである。 (4) 以上の(1)ないし(3)に照らすと,日常諸費等の架空費目によって,その費消を仮装したのは,障害年金を自己のために使用しようとする悪質な保護者から入所者を保護するためであったとはいえない。 弁護人の主張④も採用することができない。 8 そうすると,弁護人の主張①ないし④はいずれも採用することができない。 第5 被告人の共謀について 1 関係証拠によれば,施設職員らが,被告人らに本件の障害年金を渡すようになったのは,昭和58年10月上旬ころ,D学園2階会議室で職員を集めた席上,直接的にはFから,日常諸費等の架空費目を計上して入所者の年金預金口座から一律に年金を引き出すなどして,被告人らに渡すようにという指示(以 和58年10月上旬ころ,D学園2階会議室で職員を集めた席上,直接的にはFから,日常諸費等の架空費目を計上して入所者の年金預金口座から一律に年金を引き出すなどして,被告人らに渡すようにという指示(以下「本件指示」という。)を受けたからであることが認められ,弁護人も特にこれを争わないところ,弁護人は,本件指示については,施設職員が保護者会の役員と相談し,最終的にはFが決めたものであって,被告人らは,こうした指示の現場等には,そもそも出席していなかったり,出席しても特段積極的な言動をしたことはなく,本件指示については関係していないとして,共謀を否認し,無罪を主張する。 2 しかしながら,前記第2の1のとおり,被告人ら及びFが,A会の3施設を管理・運営しているものであること,当時,兵庫県の監査により,被告人らに対し,障害年金の使途を明確にするよう求められており,被告人らにおいてもこれに対応する必要があったこと,弁護人の主張するとおり,架空費目の細目についてはFが決め,被告人らがその細かい内容を知らないとしても,本件指示内容自体が,不正な会計処理を行った上,費消を仮装した現金を被告人らに渡すようにというものであって,被告人らの関与を強くうかがわせるものであること,被告人らは,現に本件指示内容に沿って施設職員から現金を受け取り,その現金が日常諸費等の架空費目で計上されたものであることも知っていること,他方,施設職員らは,被告人らに渡した現金がその後どうなったかについては一切関与していないことなど,被告人らの地位,本件指示の内容,本件指示による結果及びその後の状況等を総合すると,本件指示について,被告人らが実質的に関与しており,被告人らと直接本件指示を行ったFとの間に本件の共謀が存したことは優に推認することができる。 これに対し,被告 の後の状況等を総合すると,本件指示について,被告人らが実質的に関与しており,被告人らと直接本件指示を行ったFとの間に本件の共謀が存したことは優に推認することができる。 これに対し,被告人らとFが,A会の3施設を管理・運営しているものであるにもかかわらず,施設が預かっている障害年金の管理業務については,被告人らが全く無関係であるというのは,主張自体およそ不自然なものである上,本件で取り調べた多くの施設職員や保護者らの各証言ともそぐわないことも明らかであり,また,被告人らが障害年金の管理業務に全く無関係で,かつ,本件指示に関与していないというのであれば,これまで障害年金の管理業務を行ってきたFや施設職員らは,被告人らの意思とは関係なく,勝手に障害年金を被告人らに受け取らせることを決めて,被告人らの了解もないまま,本件指示を出しあるいはこれを実行させ,他方,被告人らはただ言われるままこれに従ったことになるのであって,こうした主張が,およそ採用の余地のないほど不合理なものであることは多言を要しない。 3 そうすると,被告人らとFとの間に,本件年金横領の共謀があることも明らかであって,弁護人のこの主張も採用することができない。 第6 以上によれば,被告人の本件年金横領の事実は優に認められるのであって,弁護人の無罪主張は採用することができない。 第2部ギフトカード横領事件について第1 弁護人は,A会が,株式会社Gからギフトカード457枚を購入したことはなく,被告人が,A会のため,これらのギフトカードを保管中,うち18枚を自己が購入した本件スタンドの代金支払に充て費消したり,うち427枚を着服したこともないから,被告人は無罪であると主張する。 そこで,以下,検討する。 第2 A会が,株式会社Gからギフトカード457枚を購 スタンドの代金支払に充て費消したり,うち427枚を着服したこともないから,被告人は無罪であると主張する。 そこで,以下,検討する。 第2 A会が,株式会社Gからギフトカード457枚を購入したことについて 1 関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらの事実は,弁護人も特に争わない。 (1) 株式会社Gにおいて,①昭和62年4月29日にギフトカード172枚(172万円相当)が,②同年8月2日にギフトカード29枚(29万円相当)が,③同年9月27日,28日,29日,10月13日,15日にギフトカード計256枚(255万円相当)が,それぞれ発券されている。 (2) そして,株式会社Gにおいては,①及び③については,A会振出しの小切手により,②については,神戸市からA会への寄附やA会からのいわゆる戻り商品の分等がその支払に充てられることにより,それぞれそのころ,入金が済んでいる。 なお,A会の小切手振出しは,被告人が自ら行っている。 (3) 被告人は,昭和63年6月末にA会の役職から退任する際,A会の施設から自宅マンションに持ち帰った荷物の中に,①ないし③の計457枚のギフトカードのうち,①で発券されたうちの152枚と,②で発券されたうちの19枚と,③で発券されたカードの256枚の計427枚を所持していた。 以上の事実を総合すると,A会が,株式会社Gから①ないし③の計457枚のギフトカードを購入し,被告人が,これらのギフトカードを所持していたものと認められる。 2 これに対し,弁護人は,被告人は,株式会社Gとの間に,ギフトカードの販売契約を結んだことはないのであって,①ないし③のギフトカードの発行は,株式会社G外商部でA会との売買を担当していたMにおいて,A会が実際に衣類 護人は,被告人は,株式会社Gとの間に,ギフトカードの販売契約を結んだことはないのであって,①ないし③のギフトカードの発行は,株式会社G外商部でA会との売買を担当していたMにおいて,A会が実際に衣類や寝具の商品を発注したのにもかかわらずこれに代えて,あるいは,A会からの発注等に関係なく,自己の売上げ実績を伸ばすために,A会に無断でギフトカードを発行したものであり,これらに対する入金がなされていることについては,①と③の入金は,Mが,A会において実際に商品が納入されたかの確認が十分でないことから,商品を納入しないまま,虚偽の請求書を作成してあたかも実際に商品が納入されたかのように装い,A会から小切手を受け取ったもので,②の入金は,Mが被告人に無断で処理したものである,さらに,被告人が427枚のギフトカードを所持していたのは,Mが,自分でギフトカードを持っていたが,不正に発行したギフトカードをいつまでも手元に置いておけないため,昭和62年の年末か昭和63年の始めころに,被告人に押しつけるように置いていったものであり,被告人は,その趣旨も分からず,どうしていいかも分からないまま,その後これを所持していたにすぎない旨主張し,A会が株式会社Gからギフトカードを購入したというM証言は信用できないなどとする。 しかしながら,Mが,A会から実際に商品の納入依頼を受けたのであれば,それをそのまま納入すればいいのであって,あえて発注された商品に変えてギフトカードを発行しても,Mの実績にはつながるものでないばかりか,むしろ,A会から苦情等が寄せられることは明らかであること,また,A会から商品の納入依頼すらないのであれば,商品の納入を装ってA会から小切手の振出しを受けることができるとは到底思われないこと,さらに,Mが,このようにA会の計算で無断でギ は明らかであること,また,A会から商品の納入依頼すらないのであれば,商品の納入を装ってA会から小切手の振出しを受けることができるとは到底思われないこと,さらに,Mが,このようにA会の計算で無断でギフトカードを発行したのであれば,こうした不正の発覚を免れようとするのが当然であり,しかも本件の場合,勝手に発行したギフトカードに対する入金処理が済んでいるのであるから,このような場合に,わざわざギフトカードを被告人のところに持っていく必要は全くなく,むしろ,自己の不正を明らかにするものであることなどからすると,弁護人の主張は,不自然,不合理であって,採用することができない。 第3 被告人が,A会のためギフトカードを保管中,うち18枚を本件スタンドの代金支払に充て費消したことについて 1 関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらの事実は,弁護人も特に争わない。 (1) 本件スタンドは,昭和62年4月9日に株式会社Gの美術品売り場でステンドグラスの催しが行われた際出品されていたもので,被告人はこの催しを見に来ていた。 (2) 本件スタンドの代金18万円が,同年5月29日に前記①で発券したギフトカードの中の18枚によって支払われている。 (3) 本件スタンドは,昭和63年6月16日,被告人の自宅マンションが捜索された際,リビングのテレビの隣にある整理台の上に置かれていた。 以上の事実に前記第2の認定事実を総合すると,被告人が,A会のため,ギフトカードを保管中,うち18枚を本件スタンドの代金支払に充て費消したものと認めることができる。 2 これに対し,弁護人は,被告人は,前記の催しに行ったことはあるが,本件スタンドを購入したことはなく,株式会社Gにおいて,前記①のギフトカードの中の18枚で支払われた処理 めることができる。 2 これに対し,弁護人は,被告人は,前記の催しに行ったことはあるが,本件スタンドを購入したことはなく,株式会社Gにおいて,前記①のギフトカードの中の18枚で支払われた処理がされているなら,これはMが不正に発行して自己が持っていたギフトカードを利用して勝手に支払をしたものである上,被告人には,そもそも本件スタンドを受け取った認識もなければ,それが自宅にあったことの認識すらもないと主張し,被告人が本件スタンドを購入し,ギフトカードで支払をした旨述べるM証言は信用できないなどとする。 しかしながら,この主張は,前記第2記載のとおり,A会が前記①のギフトカードを購入していることに照らすと,MはA会からギフトカード18枚を受け取らなければ,そもそも代金が支払われた処理ができないこと,また,仮に,Mが,被告人が購入もしていない本件スタンドを,自己が不正に発行してそのまま持っていたギフトカードを利用して決済し,本件スタンドを売り上げたことにしたのであれば,その不正が発覚しないようにするのが当然であるのに,わざわざこれを被告人の下に持ってきているのも極めて不自然であること,加えて,前記のとおり本件スタンドが被告人の自宅マンションのリビングのテレビの隣にある整理台という極めて目立つ場所に置かれているにもかかわらず,被告人は,捜査官から本件スタンドがそこにあることを知らされるまでそのことを知らなかったなどとおよそ荒唐無稽としかいいようのない供述すらしていること(ちなみに,被告人は,捜査段階では本件スタンドをMから受け取ったことや,これを自宅マンションに持ち帰ったことを認識していたこと自体は認めていた。)などからすると,この弁護人の主張も,不自然,不合理であって,採用することができない。 第4 被告人が,A会のため,ギフ や,これを自宅マンションに持ち帰ったことを認識していたこと自体は認めていた。)などからすると,この弁護人の主張も,不自然,不合理であって,採用することができない。 第4 被告人が,A会のため,ギフトカードを保管中,うち427枚を着服横領したことについて 1 関係証拠によれば,被告人は,昭和63年6月末にA会の役職から退任する際,A会の施設にあった前記①で発券されたギフトカードのうち152枚と,前記②で発券されたギフトカードのうち19枚と,前記③で発券されたギフトカード256枚の計427枚を,A会関係者に渡すことなく,自宅マンションに持ち帰ったことが認められる。 そうすると,被告人は,A会のため,これら427枚のギフトカードを保管中,自己の用途に充てるため,着服横領したものと推認するのが相当である。 2 これに対し,弁護人は,被告人は,ギフトカードがA会のものであると知っていたが,A会の役職を退任して施設内にある自己の荷物を自宅マンションに持ち帰る際,その荷物の中にうっかりギフトカードを紛れさせてしまって,そのまま自宅に持ち帰ってしまったものであり,被告人にはギフトカードを自己の所有とする意思はなかった旨主張する。 しかしながら,押収してある手帳1冊や被告人の検察官に対する供述調書等の関係証拠によると,被告人は,被告人らに対し税務署から財産調査がなされる可能性を考えて,これを心配し,昭和63年11月3日ころ,N社に相談に行く際,自己が持っているギフトカードも持参していること,そして,被告人は,同日以降ころ,自分の手帳にも「個人」と記載し,そこに自己の資産である,土地,ゴルフ会員権,定期預金等に続けて,「④ギフト券427万円」と書き入れていることが認められるのであって,こうした事実からしても,被告人が自宅に持ち にも「個人」と記載し,そこに自己の資産である,土地,ゴルフ会員権,定期預金等に続けて,「④ギフト券427万円」と書き入れていることが認められるのであって,こうした事実からしても,被告人が自宅に持ち帰っていたギフトカード427枚を自己のものと認識していたことは明らかであるから,この主張は採用することができない。 第5 以上によれば,被告人の本件ギフトカード横領の事実は優に認められるのであって,弁護人の無罪主張は採用することができない。 (法令の適用) 1 罰条判示第1の1及び2の各所為についてそれぞれ包括して平成7年法律第91号による改正前の刑法(以下「改正前の刑法」という。)60条,253条判示第2の1及び2の各所為についてそれぞれ改正前の刑法253条 2 併合罪加重改正前の刑法45条前段,47条本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重 3 執行猶予改正前の刑法25条1項 4 没収(判示第2の1の関係)改正前の刑法19条1項4号,2項本文 5 被害者還付(判示第2の2の関係)刑訴法347条1項 6 訴訟費用の負担刑訴法181条1項本文(量刑の理由) 1 事案の概要本件は,精神薄弱者施設等3施設を設置経営するA会の理事長兼D学園及びB園園長として,A会の理事兼C園園長をしていた妻Eとともに,A会及び3施設の会計事務を統括掌理するなどしていた被告人が,(1)E外1名と共謀の上,3施設の入所者が国民年金法に基づき受給していた障害年金の預金口座から現金を引き出して,これを着服横領しようと企て,昭和59年から昭和62年までの間,前後71回にわたり,日常諸費等の架空費目を計上し,3施設の入所者受給年金の預金口座あるいは同 障害年金の預金口座から現金を引き出して,これを着服横領しようと企て,昭和59年から昭和62年までの間,前後71回にわたり,日常諸費等の架空費目を計上し,3施設の入所者受給年金の預金口座あるいは同口座から移し替えた別口座から現金合計約9860万円を引き出し,これを入所者のため業務上預かり保管中,着服して横領し,(2)昭和62年4月ころから同年10月ころまでの間にA会及び3施設が,株式会社Gから購入したギフトカード合計457枚(合計456万円相当)をA会及び3施設のため,業務上預かり保管中,前記ギフトカードのうちの18枚(合計18万円相当)を,ほしいままに自己が購入した電気スタンドの代金支払に充て費消して横領し,前記ギフトカードのうち427枚(合計426万円相当)を着服して横領した,という業務上横領の事案である。 2 量刑上考慮した事情(1) 不利な事情年金横領事件については,被告人は,自らが経営する社会福祉法人の理事長等として,入所者の個人資産である障害年金等の管理等の業務に従事していたところ,入所者は障害年金を自ら管理することができず,また,入所者は実際に障害年金を使う必要はないとの考えから,入所者の障害年金を着服横領したものであって,この動機・経緯に何ら酌むべき事情が認められない。なお,前記のとおり,弁護人は,障害年金は将来入所者が高齢化した際,同人らが入れる生涯施設を建設するための資金にするつもりであったと主張するところ,仮に被告人の内心においてそのような意図があったとしても,それは,結局自らの事業を入所者の個人資産を利用して拡大するものであり,勝手に人の資産をそのように利用することが許されるものでないことはいうまでもないから,この点は量刑上特に有利なものとして考慮することはできない。また,その態様は,日常諸費 利用して拡大するものであり,勝手に人の資産をそのように利用することが許されるものでないことはいうまでもないから,この点は量刑上特に有利なものとして考慮することはできない。また,その態様は,日常諸費等の架空費目を計上して,入所者受給年金の預金口座等から現金を引き出して受け取り,これを着服するというものであって,実際には使用していないにもかかわらず,障害年金が適正に使用されたかのように仮装する本件の犯行態様は,非常に巧妙で悪質である。 そして,何よりも被害金の総額は,合計約9860万円もの多額に上っている。さらに,被告人は,障害者福祉の向上をいいながら,その陰で,精神薄弱者の生活保障のために支給されている障害年金を私物化した点は,強く非難されるべきものといえる。 また,ギフトカード横領事件については,被告人は,自らが経営する社会福祉法人の財産であるギフトカードを,自己の私的な買い物に使い,あるいは,社会福祉法人から退任する際に自宅に持ち帰るなどしたものであって,犯行の動機に酌むべき点はなく,被害額も444万円相当に上っており多額である。 加えて,いずれの犯行も,社会福祉法人の理事長である被告人が,その立場を利用し,自己の財産と,法人あるいは入所者の財産との区別を無視して行った,全く独善的・専横的な犯行であるといわざるを得ない。しかるに,被告人は,長期にわたった本件の審理期間中,不自然,不合理な弁解に終始したものであって,こうした点も量刑を考える上で無視することはできない。 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ず,実刑も考えられるところである。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,本件は被害総額が1億円を超える大規模な業務上横領事件とはいえ,年金横領事件については,被告 といわざるを得ず,実刑も考えられるところである。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,本件は被害総額が1億円を超える大規模な業務上横領事件とはいえ,年金横領事件については,被告人がA会の役職を退任した後,A会が新体制のもとで入所者に対し被害相当額を支払ったことにより,入所者の損害はてん補され,ギフトカード横領事件についても,ギフトカード427枚(426万円相当)は,A会に還付されることにより被害の大部分が回復されるとみられること,被告人にはこれまで前科前歴がないこと,被告人は,いまだ精神薄弱者に対する福祉が必ずしも十分とはいえなかった時代から,自ら精神薄弱者に対する福祉の道を志し,その後本件の発覚に至るまで長年にわたってA会の理事長等として福祉活動に従事し,その間,兵庫県愛護協会会長,兵庫県社会福祉協議会副会長等も務めたものであって,被告人には社会に対する相応の功績が認められること,被告人は現在83歳と高齢であり,その健康状態も芳しくないこと,被告人は,約9か月間にわたって未決勾留されたことなど被告人にとって有利な事情も少なからず認められる。 3 結論そこで,以上諸般の事情を総合して考慮し,被告人に対し,その刑事責任を明確にして主文の懲役刑に処した上,5年間その刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役4年)平成15年10月23日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸別表1(省略)別表2(省略) 裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸別表1(省略)別表2(省略)

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