令和3年5月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第32404号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年1月21日判決 主文 1 被告は,原告カストディに対し,1億3117万4668円及びうち別紙9表4の控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ同表の約定日欄記載の年月日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告マスタートラストに対し,86万3910円及びうち別紙9表4の控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ同表の約定日欄記載の年月日 から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の主位的請求をいずれも棄却する。 4 被告は,原告カストディに対し,973万5715円及びこれに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告マスタートラストに対し,2067万9922円及びこれに対す 平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告らのその余の予備的請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は,原告カストディに生じた費用につきこれを10分し,その7を原告カストディの,その余を被告の負担とし,原告マスタートラストに生じた費用につきこれを5分し,その3を原告マスタートラストの,その余を被告の負担と し,被告に生じた費用につきこれを10分し,その6を原告カストディの,その1を原告マスタートラストの,その余を被告の負担とする。 8 この判決は,第1項,第2項,第4項及び第5項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 (主位的請求) 1 被告は,原告カストディに対し,5億1370万 この判決は,第1項,第2項,第4項及び第5項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 (主位的請求) 1 被告は,原告カストディに対し,5億1370万4070円及び別紙1-1遅延損害金目録損害額①欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 2 被告は,原告マスタートラストに対し,5871万8880円及び別紙1-2 遅延損害金目録損害額①欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 (予備的請求1) 1 被告は,原告カストディに対し,4億3952万2000円及び別紙1-1遅延損害金目録損害額②欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済み まで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 2 被告は,原告マスタートラストに対し,5540万4000円及び別紙1-2遅延損害金目録損害額②欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 (予備的請求2) 1 被告は,原告カストディに対し,1億8567万9770円及び別紙1-1遅延損害金目録損害額③欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 2 被告は,原告マスタートラストに対し,3377万3230円及び別紙1-2遅延損害金目録損害額③欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済 みまで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の発行する株式(以下「被告株式」ということがある。)を取引所市場において取得した原告らが,被告が提出し公衆の縦覧に供された有価証券報告書及び四半期報 を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の発行する株式(以下「被告株式」ということがある。)を取引所市場において取得した原告らが,被告が提出し公衆の縦覧に供された有価証券報告書及び四半期報告書に,被告の不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載 があったことにより損害を被ったと主張して,被告に対し,①主位的に,不法行為(民 法709条)に基づき,原告カストディにつき5億1370万4070円,原告マスタートラストにつき6094万4400円の一部である5871万8880円の損害賠償金及びこれらのうち原告カストディにつき別紙1-1遅延損害金目録損害額①欄記載の各金員(合計4億6700万3700円。弁護士費用相当額の損害を含まない金額。),原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録損害額①欄記 載の各金員(合計5540万4000円。弁護士費用相当額の損害を含まない金額。)に対する被告株式の各取得日(原告カストディにつき別紙1-1遅延損害金目録起算日欄記載の各日,原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録起算日欄記載の各日)からそれぞれ支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を(以 下「主位的請求」という。),②予備的に,平成26年法律第44号による改正前の金融商品取引法21条の2第1項に基づき(以下,21条の2に言及する場合に限り「改正前金商法」といい,その他の条文に言及する場合は,改正の有無にかかわらず,単に「金商法」という。),原告カストディにつき金商法19条1項による限度額内である4億3952万2000円,原告マスタートラストにつき同項による限度額内 である5540万4000円の損害賠償金及び 金商法」という。),原告カストディにつき金商法19条1項による限度額内である4億3952万2000円,原告マスタートラストにつき同項による限度額内 である5540万4000円の損害賠償金及びこれらのうち原告カストディにつき別紙1-1遅延損害金目録損害額②欄記載の各金員(合計4億3952万2000円。 なお,弁護士費用相当額の損害は請求されていない。),原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録損害額②欄記載の各金員(合計5540万4000円。 弁護士費用相当額の損害は請求されていない。)に対する被告株式の各取得日(原告 カストディにつき別紙1-1遅延損害金目録起算日欄記載の各日,原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録起算日欄記載の各日)からそれぞれ支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を(以下「予備的請求①」という。),③さらに予備的に,改正前金商法21条の2第1項に基づき,同条2項の推定損害額であり,かつ,金商法19条1項による限度額内である,原告カストデ ィにつき1億8567万9770円,原告マスタートラストにつき3377万323 0円の損害賠償金及びこれらのうち原告カストディにつき別紙1-1遅延損害金目録損害額③欄記載の各金員(合計1億8567万9770円。なお,弁護士費用相当額の損害は請求されていない。),原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録損害額③欄記載の各金員(合計3377万3230円。弁護士費用相当額の損害は請求されていない。)に対する被告株式の各取得日(原告カストディにつき別紙 1-1遅延損害金目録起算日欄記載の各日,原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録起算日欄記載の各日)からそれぞれ支払済みまで改正前民法所定の年5分の割 日(原告カストディにつき別紙 1-1遅延損害金目録起算日欄記載の各日,原告マスタートラストにつき別紙1-2遅延損害金目録起算日欄記載の各日)からそれぞれ支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を(以下「予備的請求②」という。)求める事案である。 1 前提事実(認定に用いた証拠は括弧内に示した。) ⑴ 当事者ア原告カストディは,信託業務等を目的とする信託銀行であり,農林中金全共連アセットマネジメント株式会社(以下「NZAM」という。)を原委託者とし,農中信託銀行株式会社(以下「農中信託銀行」という。)を原受託者とする信託契約に基づいて農中信託銀行が信託を受けた,別紙2-1記載の各ファンドに属する各信託財産に つき,再委託者である農中信託銀行から信託を受けたものである。原委託者の運用指図に基づき,その信託財産の一部を被告株式に投資しており,被告株式を取引所市場において取得し,これを処分していた。(弁論の全趣旨)イ原告マスタートラストは,NZAMを原委託者とし,三菱UFJ信託銀行株式会社(以下「三菱UFJ信託銀行」という。)を原受託者とする信託契約に基づいて三 菱UFJ信託銀行が信託を受けた別紙2-2記載の各ファンドに属する各信託財産につき,再委託者である三菱UFJ信託銀行から信託を受けたものである。原委託者の運用指図に基づき,その信託財産の一部を被告株式に投資しており,被告株式を取引所市場において取得し,これを処分していた。(弁論の全趣旨)ウ被告は,電気機械器具製造業等を目的とする株式会社である(甲1)。被告株式 は,原告らがこれを取得した当時,東京証券取引所市場第一部に上場されていた(弁 論の全趣旨)。 ⑵ 被告による有価証券報告書等の提出被告は, る株式会社である(甲1)。被告株式 は,原告らがこれを取得した当時,東京証券取引所市場第一部に上場されていた(弁 論の全趣旨)。 ⑵ 被告による有価証券報告書等の提出被告は,関東財務局長に対し,別紙3有価証券報告書等目録記載のとおり,平成22年6月から平成27年2月までの間,第171期から第175期までの有価証券報告書や第172期第1四半期から第176期第3四半期までの四半期報告書(以下, 有価証券報告書と四半期報告書とを併せて「有価証券報告書等」といい,別紙3有価証券報告書等目録記載の有価証券報告書については,「第171期有価証券報告書」などということがあるほか,同目録記載の有価証券報告書全体を「本件有価証券報告書」,同目録記載の四半期報告書全体を「本件四半期報告書」,同目録記載の有価証券報告書等全体を「本件有価証券報告書等」ということがある。)を提出した。本件有価 証券報告書等は,同目録提出日欄記載の各提出日の頃,公衆の縦覧に供された。(甲12から31までの各枝番の1,弁論の全趣旨)⑶ 原告らによる被告株式の取得及び処分原告らによる被告株式の取得及び処分状況は原告カストディにつき別紙4-1,原告マスタートラストにつき別紙4-2記載のとおりである。原告らは,第171期有 価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日以前から被告株式の取得や処分を繰り返していたが,平成29年7月31日に一旦,その保有する全ての被告株式を処分(売却)し,同日時点で(原告らが)保有している被告株式はなくなった。(弁論の全趣旨)⑷ 過年度決算の訂正に至る経緯等 ア被告は,平成27年2月12日,証券取引等監視委員会から,金商法26条1項に基づく報告命令を受けた(甲6・14頁)。 イ被告 弁論の全趣旨)⑷ 過年度決算の訂正に至る経緯等 ア被告は,平成27年2月12日,証券取引等監視委員会から,金商法26条1項に基づく報告命令を受けた(甲6・14頁)。 イ被告は,平成27年4月3日,「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には,平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準適用案件に係る会計処理について,調査を必要とする事項が判明し,被告に おいて,社外の専門家を含む特別調査委員会を設置し,事実関係の調査を行うことと した旨が記載されていた。(甲3)ウ被告は,平成27年5月8日,「第三者委員会設置のお知らせ」と題する書面,「剰余金の配当(期末)に関するお知らせ」と題する書面,「業績予想の修正に関するお知らせ」と題する書面を公表した(以下,これらの書面による公表を「平成27年5月8日開示」という。)。上記の各書面には,特別調査委員会による調査の過程で, 一部インフラ関連の工事進行基準適用案件において,工事原価総額が過少に見積もられ,工事損失(工事損失引当金を含む。)が適時に計上されていないなどの事象が判明したこと,これ以外にもさらなる調査を必要とする事項が判明したことから,現状の特別調査委員会の枠組みから,日本弁護士連合会の定めるガイドラインに準拠した第三者委員会による調査の枠組みに移行する旨を決定したこと,特別調査委員会による これまでの調査結果によれば,平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じており,これと併せて平成26年度決算への影響額を見極めていることから,決算発表については平成27年6月以降となる見込みであること,被告の取締役会で平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を0円とする旨を決議したこと,平成26年度 の影響額を見極めていることから,決算発表については平成27年6月以降となる見込みであること,被告の取締役会で平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を0円とする旨を決議したこと,平成26年度通期の業績予想について同年9月18日に公表した前回予想を修正して未定 とすることなどが記載されていた。(甲4,乙1,2)エ被告は,平成27年5月13日,「現時点で判明している過年度修正額見込み及び第三者委員会設置に関する補足説明」と題する書面を公表した。当該書面には,「現時点で判明している過年度修正額見込み」につき,工事原価総額の過少見積りとそれに伴う工事損失(引当金)計上時期に関する過年度の要修正額として,平成23 年度から平成25年度までの累計の営業損益ベースでマイナス500億円強を見込んでいるが,この見込みは現時点(すなわち平成27年5月13日時点)におけるものであり,新たに設置される第三者委員会において判断が異なる可能性があること,特別調査委員会の調査の過程で,工事進行基準適用案件以外でも更なる調査が必要な事項が判明していること,その具体的内容は,損失引当計上の時期及び金額の妥当性, 経費計上時期の妥当性並びに在庫の評価の妥当性等であり,被告として,全社的,網 羅的に調査する必要があると判断したこと,上記事項により更なる過年度決算の修正が必要となるか否かや,必要となった場合の要修正額の規模は現時点(すなわち平成27年5月13日時点)では不明であることなどが記載されていた。(乙16)オ被告は,平成27年5月22日,「第三者委員会の調査対象に関するお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には,第三者委員会の調査対象が,工事進行基準 適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上に係る会計処理, 2日,「第三者委員会の調査対象に関するお知らせ」と題する書面を公表した。当該書面には,第三者委員会の調査対象が,工事進行基準 適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上に係る会計処理,半導体事業における在庫の評価に係る会計処理,パソコン事業(以下「PC事業」という。)における部品取引等に係る会計処理であることが記載されていた。(乙17)カ第三者委員会は,平成27年7月20日付けで,工事進行基準適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上に係る会計処理,半導体事業における在庫評価 に係る会計処理,PC事業における部品取引等に係る会計処理等に関する調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)を取りまとめ,継続事業からの税金等調整前当期純損益について,工事進行基準に関する要修正額,部品取引に関する要修正額,経費計上に関する要修正額,半導体在庫に関する要修正額(以下「第三者委員会要修正額」という。)の合計は,第170期についてマイナス282億円,第171期についてマ イナス400億円,第172期について84億円,第173期についてマイナス312億円,第174期についてマイナス858億円,第175期についてマイナス54億円,第176期第1四半期から第3四半期までについて304億円であるとした。 (甲6。要修正額については甲6添付の別紙2-1参照。)キ被告は,平成27年7月20日,「第三者委員会調査報告書の受領及び判明し た過年度決算の修正における今後の当社の対応についてのお知らせ」と題する書面を公表した(以下,この書面(これに添付された本件調査報告書の要約版を含む。)による公表を「平成27年7月20日開示」という。)。当該書面には,本件調査報告書に基づく,第三者委員会への嘱託事項に関する過年度決算の要 ,この書面(これに添付された本件調査報告書の要約版を含む。)による公表を「平成27年7月20日開示」という。)。当該書面には,本件調査報告書に基づく,第三者委員会への嘱託事項に関する過年度決算の要修正額(第三者委員会要修正額)は,第170期についてマイナス282億円,第171期についてマイナス 400億円,第172期について84億円,第173期についてマイナス312億円, 第174期についてマイナス858億円,第175期についてマイナス54億円,第176期第1四半期から第3四半期までについて304億円で,それらの累計がマイナス1518億円となること,被告の自主チェックによる要修正額が上記の期間の累計でマイナス44億円となることなどが記載されており,本件調査報告書の要約版が添付されていた。(乙15) ク被告は,平成27年7月21日,「第三者委員会の調査報告書全文の公表及び当社の今後の対応並びに経営責任の明確化についてのお知らせ」と題する書面とともに,これに添付する形で本件調査報告書の全文を公表した(甲5,6)。 ケ被告は,平成27年9月7日,「過年度決算の修正,2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」 と題する書面を公表した(以下,この書面による公表を「平成27年9月7日開示」という。)。当該書面には,過年度決算の修正作業及び平成26年度の決算作業が監査手続も含めて終了したこと,過年度決算の修正内容の概要として,継続事業からの税金等調整前当期純損益について,第三者委員会要修正額に加えて,自主チェック,固定資産の減損,派生影響等を含む修正額の合計が,第170期についてマイナス76 4億円,第171期についてマイナス415億円,第172期につ いて,第三者委員会要修正額に加えて,自主チェック,固定資産の減損,派生影響等を含む修正額の合計が,第170期についてマイナス76 4億円,第171期についてマイナス415億円,第172期について71億円,第173期についてマイナス840億円,第174期についてマイナス847億円,第175期について14億円,第176期第1四半期から第3四半期までについて533億円である旨などが記載されていた。(甲7)また,被告は,平成27年9月7日,関東財務局長に対し,本件有価証券報告書等 の訂正報告書を提出した(甲12から31までの各枝番の2。以下,これらの訂正報告書全体を指すときは,「本件訂正報告書」ということがある。)。 ⑸ 被告による役員等に対する責任追及訴訟被告は,平成27年11月7日,被告の取締役又は執行役の地位にあった者らに対し,その者らが被告における公正な会計慣行に違反する不適切な会計処理に長期間に わたって関与したとして,これにより被告が被った損害について,会社法423条1 項に基づき損害賠償を請求する訴訟を東京地方裁判所に提起した(甲11)。 ⑹ 金融庁の課徴金納付命令金融庁長官は,被告において,一部の工事進行基準適用案件において,工事損失引当金の過少計上及び売上げの過大計上を行ったほか,映像事業,PC事業及び半導体事業等の一部において,売上原価の過少計上,費用の過少計上などを行い,その結果, 第173期有価証券報告書及び第174期有価証券報告書の連結損益計算書の連結当期純損益を相当額水増しするという重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書を関東財務局長に提出したこと,第171期,第173期及び第174期についてのそれぞれの期の有価証券報告書を参照書類とする発行登録追補書類を提出し, いう重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書を関東財務局長に提出したこと,第171期,第173期及び第174期についてのそれぞれの期の有価証券報告書を参照書類とする発行登録追補書類を提出し,社債券を取得させ,もって重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく 募集により有価証券を取得させたことを理由として,平成27年12月24日,被告に対し,平成28年2月25日を納付期限として課徴金73億7350万円を納付することを命ずる決定をした(以下「本件課徴金納付命令」という。)。本件課徴金納付命令は,具体的には,第171期有価証券報告書に,同期における連結当期純損益が539億4300万円(百万円未満切り捨て)の損失であるところを197億430 0万円(百万円未満切り捨て)の損失と記載したこと,第173期有価証券報告書に,同期における連結当期純損益が31億9400万円(百万円未満切り捨て)の利益であるところを700億5400万円(百万円未満切り捨て)の利益であると記載したこと,第174期有価証券報告書に,同期における連結当期純損益が134億2500万円(百万円未満切り捨て)の利益であるところを773億6600万円(百万円 未満切り捨て)の利益であると記載したことについて,重要な事項についての虚偽記載があるとした。(甲2)⑺ 本件有価証券報告書等の訂正の概要本件訂正報告書は,「売上高」,「継続事業からの税金等調整前当期純利益(損失)」(以下「継続事業税引前当期純損益」という。),「当社株主に帰属する当期純利益(損 失)」(以下「当期純損益」という。なお,本件課徴金命令の決定要旨にいう「連結当 期純損益」と同義であるため,以下では本件課徴金命令の決定要旨の連結当期純損益に言及する場合も含めて単に 失)」(以下「当期純損益」という。なお,本件課徴金命令の決定要旨にいう「連結当 期純損益」と同義であるため,以下では本件課徴金命令の決定要旨の連結当期純損益に言及する場合も含めて単に「当期純損益」という。),「株主資本」等の項目についての,過年度決算の修正を含むものであった。このうち,第171期から第175期までの有価証券報告書の継続事業税引前当期純損益及び当期純損益の訂正の概要は以下のとおりである(なお,同じ期でも,後述する組替え等の影響により,後の期の有 価証券報告書において,金額が変わるものがあるが,以下では,証拠引用したものに記載されている数値を記載した。)。 ア継続事業税引前当期純損益第171期(会計期間:平成21年4月1日から平成22年3月31日)【提出時の額】 249 億6200 万円(甲12の1) 【訂正後の額】 ▲143 億4200 万円(甲12の2)【差額】 393 億0400 万円第172期(会計期間:平成22年4月1日から平成23年3月31日)【提出時の額】 1955 億4900 万円(甲13の1)【訂正後の額】 2017 億8500 万円(甲13の2) 【差額】 ▲62 億3600 万円第173期(会計期間:平成23年4月1日から平成24年3月31日)【提出時の額】 1524 億0500 万円(甲14の1)【訂正後の額】 614 億2700 万円(甲14の2)【差額】 909 億7800 万円 第174期(会計期間:平成24年4月1日から平成25年3月31日)【提出時の額】 1555 億5300 万円(甲15の1)【訂正後の額】 909 億7800 万円 第174期(会計期間:平成24年4月1日から平成25年3月31日)【提出時の額】 1555 億5300 万円(甲15の1)【訂正後の額】 749 億2600 万円(甲15の2)【差額】 806 億2700 万円第175期(会計期間:平成25年4月1日から平成26年3月31日) 【提出時の額】 1809 億3800 万円(甲16の1) 【訂正後の額】 1823 億3600 万円(甲16の2)【差額】 ▲13 億9800 万円イ当期純損益第171期(会計期間:平成21年4月1日から平成22年3月31日)【提出時の額】 ▲197 億4300 万円(甲12の1) 【訂正後の額】 ▲539 億4300 万円(甲12の2)【差額】 342 億円第172期(会計期間:平成22年4月1日から平成23年3月31日)【提出時の額】 1378 億4500 万円(甲13の1)【訂正後の額】 1583 億2600 万円(甲13の2) 【差額】 ▲204 億8100 万円第173期(会計期間:平成23年4月1日から平成24年3月31日)【提出時の額】 737 億0500 万円(甲14の1)【訂正後の額】 31 億9400 万円(甲14の2)【差額】 705 億1100 万円 第174期(会計期間:平成24年4月1日から平成25年3月31日)【提出時の額】 775 億3300 万円(甲15の1)【訂正後の額】 134 億2500 万円(甲15の2)【差額】 641 年4月1日から平成25年3月31日)【提出時の額】 775 億3300 万円(甲15の1)【訂正後の額】 134 億2500 万円(甲15の2)【差額】 641 億0800 万円第175期(会計期間:平成25年4月1日から平成26年3月31日) 【提出時の額】 508 億2600 万円(甲16の1)【訂正後の額】 602 億4000 万円(甲16の2)【差額】 ▲ 94 億1400 万円⑻ 被告株式の株価の推移平成27年3月26日から平成28年12月29日までの間の被告株式の市場価 額の推移は,別紙6記載のとおりである(甲41,乙36,41,なお,Yahoo!ファ イナンスのデータを参照した部分もある。)。 2 争点⑴ 虚偽記載の有無及び範囲(争点⑴,全請求に共通)⑵ 虚偽記載が重要な事項についてのものであるか(争点⑵,全請求に共通)⑶ 不法行為の成否(虚偽記載についての故意又は過失の有無)(争点⑶,主位的請 求の関係)⑷ 不法行為に基づく請求についての損害論(争点⑷,主位的請求の関係)ア損害の内容イ損害の算定方法ウ他事情による株価下落への影響 エ株式取得後の虚偽記載の影響オ損害賠償請求の対象となる被告株式カ具体的な損害額の算定キ弁護士費用相当額の損害ク遅延損害金の起算日 ⑸ 改正前金商法21条の2第1項に基づき,かつ,同条2項の推定損害額の規定を用いない場合の損害額(争点⑸,予備的請求①の関係)ア損害の内容等イ金商法21条の3による除斥期間の適用ウ金商法19条1項による限度額 エ具体的な損害額オ遅 定を用いない場合の損害額(争点⑸,予備的請求①の関係)ア損害の内容等イ金商法21条の3による除斥期間の適用ウ金商法19条1項による限度額 エ具体的な損害額オ遅延損害金の起算日⑹ 改正前金商法21条の2第2項による推定損害額(争点⑹,予備的請求②の関係)ア虚偽記載の事実の公表時期 イ改正前金商法21条の2第2項による推定損害額 ウ改正前金商法21条の2第4項による減額の抗弁エ金商法19条1項による限度額オ具体的な損害額カ遅延損害金の起算日 3 争点に関する当事者の主張 ⑴ 虚偽記載の有無及び範囲(原告らの主張)ア虚偽記載の有無被告が公衆の縦覧に供した第171期から第175期までの有価証券報告書及び第172期第1四半期から第176期第3四半期までの四半期報告書(本件有価証券 報告書等)において虚偽記載が存在した。 本件調査報告書によれば,被告において,①インフラ関連の工事進行基準適用案件における工事原価総額を過少に見積もることにより,売上げを過大に計上し,又は,ロスコン工事(累計で2億円以上の工事損失が発生している工事案件のこと)において,工事損失引当金を過少に計上したか,当該引当金を計上しなかったこと,②PC 事業や映像事業における部品取引について,実質的には買戻条件付取引であるから,部品取引時に利益の計上を行うことは取引実態を適切に反映していないにもかかわらず,そのような利益を計上したこと,③PC事業や映像事業における経費計上について,当期で引き当てるべき引当金を計上しなかったことや支払先に依頼して請求書の発行を遅らせるなどして当期で計上すべき経費を計上しなかったことなど,④半導 体在庫について,販 ける経費計上について,当期で引き当てるべき引当金を計上しなかったことや支払先に依頼して請求書の発行を遅らせるなどして当期で計上すべき経費を計上しなかったことなど,④半導 体在庫について,販売可能性が見込まれないにもかかわらず評価損を計上しなかったことといった不適正な会計処理がされていた。 そして,第三者委員会は,継続事業税引前当期純損益について,第三者委員会要修正額の合計として,第170期についてマイナス282億円,第171期についてマイナス400億円,第172期について84億円,第173期についてマイナス31 2億円,第174期についてマイナス858億円,第175期についてマイナス54 億円,第176期第1四半期から第3四半期について304億円の修正を要すると認定した。 被告は,第三者委員会の指摘事項も踏まえて,自身でも検証手続を実施し,平成27年9月7日,第三者委員会要修正額を含む継続事業税引前当期純損益についての修正額が,第170期についてマイナス764億円,第171期についてマイナス41 5億円,第172期について71億円,第173期についてマイナス840億円,第174期についてマイナス847億円,第175期について14億円,第176期第1四半期から第3四半期までについて533億円である旨公表し,その額を修正した本件訂正報告書を関東財務局長に提出した。 また,本件課徴金納付命令に係る決定要旨(甲2)によれば,金融庁は,①第17 1期有価証券報告書の当期純損益について,真実は539億4300万円の損失であるのに,197億4300万円の損失である,②第173期有価証券報告書の当期純損益について,真実は31億9400万円であるところ,700億5400万円である,③第174期有価証券報告書の当 損失であるのに,197億4300万円の損失である,②第173期有価証券報告書の当期純損益について,真実は31億9400万円であるところ,700億5400万円である,③第174期有価証券報告書の当期純損益について,真実は134億2500万円であるところ,773億6600万円であるとそれぞれ記載されていたことについ て,重要な事項についての虚偽記載があると認定した。そうすると,少なくとも第171期有価証券報告書の当期純損益に虚偽記載があることは明らかであるところ,複数の決算期にまたがって虚偽記載が継続した場合,最初の年度の虚偽記載に係る瑕疵は,次年度以降に当然に承継され,以後も瑕疵が積み重なるものである。 以上によれば,本件有価証券報告書等のうち,少なくとも継続事業税引前当期純損 益及び当期純損益について,虚偽記載があることは明らかである。 虚偽記載を理由とする損害賠償請求の請求原因として,投資者が虚偽記載の外縁の全てを特定しない限り請求原因の特定として不十分であるとはいえず,少なくとも本件課徴金納付命令の対象となった当期純損益の虚偽記載,又は本件調査報告書で修正が必要である旨指摘された継続事業税引前当期純損益の各記載があることをもって, 被告の損害賠償責任を基礎づける重要な事項の虚偽記載があることの立証としては 十分である。これ以外にも,例えば,本件有価証券報告書等における「主要な経営指標等の推移」に記載されている項目のうち,売上高や株主資本における不適切な会計処理に基づく記載についても当然に虚偽記載を構成するものであり,本件有価証券報告書の訂正前後の数値及び本件四半期報告書の通期の訂正前後の数値は虚偽記載に該当する。 イ虚偽記載の範囲減損損失の追加計上による訂正,非継続事業に関する組替 のであり,本件有価証券報告書の訂正前後の数値及び本件四半期報告書の通期の訂正前後の数値は虚偽記載に該当する。 イ虚偽記載の範囲減損損失の追加計上による訂正,非継続事業に関する組替えによる訂正,事業買収に関する組替えによる訂正が,虚偽記載に該当しない数値の訂正である旨の被告の主張は争う。なお,減損損失の追加計上については,本件調査報告書において不適切な会計処理と認定された事項に派生して行われたとされており(甲40の1・3頁参照), 被告の指摘する減損損失の追加計上は,被告の不適切会計に起因するものであるから,虚偽記載に該当する。 (被告の主張)ア虚偽記載の有無原告らは,請求原因事実である加害行為の内容として,本件有価証券報告書等につ いて,原告らが虚偽であると主張する財務情報ごとに,会計処理の基礎となる個別具体的な事実関係,被告が違反したとする会計基準の内容及び理由,会計基準違反の結果として生じた虚偽記載の内容を主張する必要がある。しかしながら,原告らは,継続事業税引前当期純損益について本件調査報告書記載の訂正金額を指摘するほか,当期純損益,売上高及び株主資本についても本件有価証券報告書等における訂正前後の 数値を主張するのみであるから,請求原因の特定として不十分であり,失当である。 イ虚偽記載の範囲被告は,本件有価証券報告書等の訂正に当たり,第三者委員会による認定の内容を検証した結果,第三者委員会に委嘱した案件のうち,映像事業及びPC事業の経費処理等については,一部修正を不要と判断し,訂正を行わなかったのであるから, その訂正を行わなかった金額については,虚偽記載とはならない。 本件有価証券報告書等の訂正前後の金額の差額の全てが,不適正な会計処理に基づくもので を行わなかったのであるから, その訂正を行わなかった金額については,虚偽記載とはならない。 本件有価証券報告書等の訂正前後の金額の差額の全てが,不適正な会計処理に基づくものではない。本件有価証券報告書等の訂正前後の金額の差額には,以下のaからc までのとおり,過年度決算の訂正に際して行った,減損損失の追加計上を理由とする数値の訂正,非継続事業に関する組替えによる数値の訂正,事業買収に関する組替えによる数値の訂正も含まれるところ,これらはいずれも虚偽記載には該当しな い数値の訂正である。 a 被告が連結財務諸表の作成基準としている米国において一般に公正妥当と認められた会計基準による用語,様式及び作成方法(乙35・2頁参照。以下「米国会計基準」という。)によれば,減損損失は,長期性資産の帳簿価額が,①回収不能であって(当該長期性資産が生み出す割引前の将来キャッシュフローがその帳簿価額を下回 る場合にそのように判断される。),かつ,②その公正価値を超過している場合(当該長期性資産の帳簿価額が当該長期性資産の割引後将来キャッシュフローを上回る場合にそのように判断される。)にのみ,認識するものとされている。被告による減損損失の追加計上は,各決算時点における将来キャッシュフローの見積りの妥当性を再検討し,当該時点における見積りが不合理であるとして行ったわけではなく,米国会計 基準で認められる範囲内で可能な限り簡便かつ保守的な方法である,訂正時点で明らかになっている実績値を各決算時点における将来キャッシュフローの見積りとみなす(また,実績がない部分については,米国会計基準で認められる範囲内で可能な限り保守的に見積もる)という方法で行ったものであるから,訂正前の各決算時点において米国会計基準に基づき減損損失を認識 みなす(また,実績がない部分については,米国会計基準で認められる範囲内で可能な限り保守的に見積もる)という方法で行ったものであるから,訂正前の各決算時点において米国会計基準に基づき減損損失を認識すべきであったことを理由に追加計上し たものではない。したがって,本件有価証券報告書の訂正部分のうち,減損損失の追加計上に伴う訂正部分は虚偽記載に該当しない。 仮に,訂正前の決算当時における将来キャッシュフローの見積りに,平成27年9月における過年度決算の数値を反映しても,割引前の将来キャッシュフローの見積額は帳簿価額を大幅に上回るものであるから,訂正前の各決算時点において減損損失を 認識すべきであったともいえない。 b 被告の第171期における携帯電話事業及び光学ドライブ事業は,第171期有価証券報告書の提出時点においては非継続事業(既に処分されたか又は処分予定の事業のこと)ではなかったが,第171期の訂正報告書の提出日(平成27年9月7日)においては,いずれも被告のグループ外に売却されることが決定していたことから非継続事業となっていた。そのため,第171期の訂正報告書の提出に際し,(訂正 前である)第171期有価証券報告書に記載されていた第170期(平成21年3月期)及び第171期の「売上高及びその他の収益」等の項目に含まれていた携帯電話事業及び光学ドライブ事業に係る金額を,それらの項目から控除するという組替えを行うとともに,第172期以降分の訂正報告書においても同様の組替えを行った。米国会計基準上,ある財務報告の時点における非継続事業について,時点の異なる財務 情報の比較可能性の確保のために,当該財務報告において比較対象として記載される過去の財務諸表においても非継続事業であったものとして遡及修正を行う 点における非継続事業について,時点の異なる財務 情報の比較可能性の確保のために,当該財務報告において比較対象として記載される過去の財務諸表においても非継続事業であったものとして遡及修正を行うことが要求されるところ,被告が本件訂正報告書の提出に際し訂正を行ったのも,このような理由によるものであるから,当該数値の変更は虚偽記載には該当しない。 c 米国会計基準上,事業買収を行った場合,買収企業は,当該買収によって取得し た買収対象企業の資産及び負債の全てを時価で評価し,買収企業の財務諸表に取り込む手続(PPA)が必要となるが,買収対象企業に存在すると考えられる償却無形資産の識別・評価に時間を要することから,買収が行われた年度末時点の財務諸表にはPPAの手続を反映させず,その後,PPAの手続が完了した買収の翌期の財務諸表で,PPAの手続を財務諸表に反映するとともに,前期の財務諸表について,遡及的 にPPAの手続を反映させて組み替えた数値を表示することが認められている。 被告は,第173期中にランディス・ギア社を買収したが,第174期にPPAの手続が完了したため,第174期有価証券報告書において,第173期の数値を遡及的に組み替えて表示した。また,被告は,第174期中に行われた米国法人IBM社のリテール・ストア・ソリューション事業の買収に関しても,第175期有価証券報 告書において,第174期の数値を遡及的に組み替えて表示した。 上記2件の事業買収に関する組替えは,買収の翌期の有価証券報告書提出時点ですでに行われており,平成27年9月7日に提出された本件訂正報告書において組み替えられたものではない。したがって,これらの組替えに伴う訂正部分は,いずれも虚偽記載に該当しない。 ⑵ 虚偽記載が重要な事項について おり,平成27年9月7日に提出された本件訂正報告書において組み替えられたものではない。したがって,これらの組替えに伴う訂正部分は,いずれも虚偽記載に該当しない。 ⑵ 虚偽記載が重要な事項についてのものであるか否か (原告らの主張)ア継続事業税引前当期純損益は,当期における企業活動の最終成果を示す数字であって,有価証券報告書等において極めて重要な指標であり,第三者委員会要修正額の総計は1518億円と多額である。また,平成20年以降,約50億円から約900億円もの虚偽記載が毎年行われていたものであるから,その重要性は多言を要しな い。 当期純損益についても,第171期有価証券報告書についてみても,342億円もの多額の損失を隠ぺいするものである。 売上高や株主資本といった指標は,投資者への法定開示資料である有価証券報告書等において主要な経営指標として位置付けられているものであり,その重要性は自明 である。 したがって,本件有価証券報告書等には,重要な事項についての虚偽記載があるといえる。 イ第172期及び第175期の有価証券報告書の継続事業税引前当期純損益については,利益を過少に見せるいわゆる逆粉飾となっているが,虚偽記載の違法性の 本質はプラスマイナスにかかわらず真実を偽ることによって投資者の投資判断を誤らせることにあるのだから,逆粉飾も投資者の投資判断を誤らせ得るという意味において重要な事項についての虚偽記載に該当する。また,複数の決算期にまたがって虚偽記載が継続した場合,最初の年度の虚偽記載にかかる瑕疵は,次年度以降に当然に承継され,以後も瑕疵が積み重なることになるから,重要な事項についての虚偽記載 があるといえる。 (被告の主張)ア有価証券報告書の一部に虚偽記 る瑕疵は,次年度以降に当然に承継され,以後も瑕疵が積み重なることになるから,重要な事項についての虚偽記載 があるといえる。 (被告の主張)ア有価証券報告書の一部に虚偽記載が存在した場合に,これが重要な事項に該当するか否かは,当該虚偽記載が投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであったか否かを基準とすべきである。投資判断に当たっては,投資者は通常,企業の収益力に着目するものであり,(税引後の)当期純損益が企業の現在の収益力を直接的に示 すものとして,投資判断の際に重要視される。したがって,(税引後の連結)当期純損益以外の項目については,重要な事項についての虚偽記載であるとはいえない。 また,財務諸表上の数値に訂正があったとしても,企業規模等を踏まえて,数値の差異が投資者の企業の評価自体に重要な差異をもたらすものでなければ,数値の訂正が投資判断に重大な影響を及ぼすものとは認められない。売上高の訂正額のほとんど は,虚偽記載に該当しない非継続事業に関する組替えの影響額であり,これを控除した訂正比率は最も高い期においても0.20%にすぎない。株主資本についても,虚偽記載に該当しない訂正の影響額(組替え及び減損損失の追加計上の影響額)を控除すれば,訂正比率は一層小さいものとなり,重要な事項についての虚偽記載に該当しないことは明白である。 イ虚偽記載が利益を過少に表示するものである場合には,その会社の株式を取得するという投資者が株式の取得によって損害を被ることはないから,訂正後の当期純利益(損失)が改善している場合(逆粉飾の場合)は,重要な事項についての虚偽記載があるとはいえない。現に,第172期及び第175期の有価証券報告書並びに第176期の第3四半期の四半期報告書において,訂正後の当期純損益 している場合(逆粉飾の場合)は,重要な事項についての虚偽記載があるとはいえない。現に,第172期及び第175期の有価証券報告書並びに第176期の第3四半期の四半期報告書において,訂正後の当期純損益は改善している。 また,原告らは,有価証券報告書等における瑕疵が承継される旨主張するが,虚偽記載が重要な事項についてのものであるか否かは開示書類ごとに判断すべきである。 ウ証券取引等監視委員会の金融庁に対する課徴金納付命令勧告や金融庁による課徴金納付命令の対象となるのは,重要な事項につき虚偽記載がある場合であり,金商法上,この場合には,必ず,課徴金納付が命じられることとされている。しかるに, 本件において,本件有価証券報告書等のうち,課徴金納付命令等において重要な事項 についての虚偽記載の内容とされたのは,第171期,第173期及び第174期の有価証券報告書に記載された当該事業年度の当期純損益のみであるから,それ以外の継続開示書類には,いずれも投資者の投資判断に重要な影響を与える虚偽記載は存在しなかったといえる。 ⑶ 不法行為の成否(虚偽記載についての故意又は過失の有無) (原告らの主張)本件のように組織的一体としての会社が継続的に有価証券報告書等への虚偽記載を行っていた事案においては,被告における個々の行為者の認識を問題とせずとも,被告自身のそれを問題とすることが適切である。そして,本件の虚偽記載は,歴代の被告の経営陣らによる意図的な見かけ上の当期利益の嵩上げや過大な目標を設定し その達成を強く求めるなどといった中で組織的に行われた不適切な会計処理に起因するものであるし,また,被告において,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を観念する るなどといった中で組織的に行われた不適切な会計処理に起因するものであるし,また,被告において,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を観念することも可能であるところ,被告は当該注意義務を怠り,虚偽記載のある本件有価証券報告書等を提出したものであるともいえるから,被告には,有価証券報告書等への虚偽記載につ いて,故意又は過失があるといえる。 仮に,被告における個々の行為者の認識を基にしたとしても,被告の元役員らに対する責任追及訴訟において,被告は,その経営陣らの不適切な会計処理により,虚偽記載が存在したことを自認しているから,被告には,有価証券報告書等への虚偽記載について,故意又は過失があるといえる。 (被告の主張)本件において,会計処理ごとに関与した被告の役職員は異なっているから,原告らが被告の不法行為の成立を主張するのであれば,会計処理ごとに被告のいかなる行為を加害行為とし,当該加害行為について,法人である被告の故意又は過失が誰のいかなる認識・注意義務違反により基礎づけられるとするのか明確に主張する必要がある が,原告らの抽象的な主張では請求原因事実の特定として不十分である。 原告らは,被告が,被告の元役員らに対する責任追及訴訟において,当該元役員らの不適切な会計処理により虚偽記載が存在したことを自認していることから,被告の故意,過失が認められると主張するが,当該訴訟と本件訴訟とでは,請求の根拠条文及び請求原因が異なり,当該訴訟における請求原因として主張されているのは,原告らの主張に係る虚偽記載を基礎付ける会計処理のごく一部にすぎないから,原告らの 主張は,元役員らの故意,過失に関する具体的な主張としては不十分である。 ⑷ 不法行 して主張されているのは,原告らの主張に係る虚偽記載を基礎付ける会計処理のごく一部にすぎないから,原告らの 主張は,元役員らの故意,過失に関する具体的な主張としては不十分である。 ⑷ 不法行為に基づく請求についての損害論(原告らの主張)ア損害の内容虚偽記載と相当因果関係のある原告らの損害は,①虚偽記載によって取得時点で嵩 上げされた株式の価値及び②虚偽記載がされた株式を取得したことによって被る価格下落(虚偽記載の発覚に伴う信用毀損,ろうばい売り等)である。 イ損害の算定方法大阪高裁平成28年6月29日判決・金判1499号20頁(以下「平成28年大阪高裁判決」という。)は,虚偽記載がされている株式の価値は,真実の情報が反映さ れていないことによって不当に価値が高く評価されているから,この嵩上げされた株式価値相当分が損害となることは明らかであるが,さらに加えて,虚偽記載が何らかの形で発覚することについても予見可能性があるというべきところ,虚偽記載の発覚という事実から信用毀損等が生じ,さらに投資者の過剰反応(いわゆるろうばい売り等)が生じることも予見可能であるから,これらから生ずる株価下落についての虚偽 記載という不法行為によって通常生ずべき損害というべきであるとし,この損害は虚偽記載の公表前後の市場価額の下落幅等を参考にして推計するほかない旨判示するところ,本件においてもこのような考え方が採用されるべきである。 このような考え方からすると,本件においては,虚偽記載発覚時である平成27年4月3日の株価と,虚偽記載是正時である同年9月7日の株価の差額が,虚偽記載に より投資者が被る損害となるというべきである。したがって,原告らの損害は虚偽記 載是正時である同日で確定しているもので と,虚偽記載是正時である同年9月7日の株価の差額が,虚偽記載に より投資者が被る損害となるというべきである。したがって,原告らの損害は虚偽記 載是正時である同日で確定しているものであるから,以後の事情変更は損害額に影響を及ぼさず,同日以降の被告株式の株価の上昇分は損害から控除されない。 投資者としてリスクを取って株式を購入した以上,当該リスクに対応するリターンは,虚偽記載とは本来的に無関係であり,投資者が享受して然るべきであるという観点からしても,被告株式の株価が,口頭弁論終結時点において,平成27年9月7日 の終値である352.7円を超える場合には,当該超過部分については,原告らの主張する損害額から控除されるべきである旨の被告の主張,平成28年12月15日時点で継続して保有されていた被告株式の1株当たりの損害について取得価額-475円が上限となる旨の主張には正当性がない。 ウ他事情による株価下落への影響 市場動向被告は,平成27年4月3日から同年9月7日までの日経平均株価の下落率が約8%であったことを挙げるが,日経平均株価とは,各業界の採用銘柄の株価平均値であり,銘柄ごとの多岐にわたる要因によって株価が上昇するものも下落するものも存在するから,日経平均株価の下落率を単純に被告株式の下落率に反映することはでき ない。 被告は,コングロマリット化した現在においては多種多様な事業を展開しているものであり,単純な電機メーカーとはいいがたいから,事業構造が異なるシャープ株式会社,株式会社日立製作所,三菱電機株式会社,パナソニック株式会社及び三菱重工業株式会社(以下「シャープら5社」という。)の株価の動向と被告株式の株価のそれ とを比較する手法には合理性がない。 平成27年4月3日か 三菱電機株式会社,パナソニック株式会社及び三菱重工業株式会社(以下「シャープら5社」という。)の株価の動向と被告株式の株価のそれ とを比較する手法には合理性がない。 平成27年4月3日から同年9月7日にかけて,被告の虚偽記載の全容が不透明な中,少しずつ事態が悪化していく報道が継続してなされており,この期間を通じてみれば,被告株式の株価の明確な下落傾向を見て取ることができる(甲41参照)。したがって,当該期間における株価下落の大半は,虚偽記載と相当因果関係のあるもので ある。 第三者委員会要修正額以外の訂正減損損失の追加計上に伴う訂正や,組替えに伴う訂正も虚偽記載であるから,これらに伴う株価下落は損害から控除されるべきではない。 被告は,第三者委員会要修正額以外の訂正金額が約45%であることをもって,本件有価証券報告書等の訂正による株価下落のうち45%は虚偽記載と相当因果関係 を欠く旨主張するが,訂正額割合と虚偽記載が株価下落に与える影響度が一致する根拠が不明である。 エ株式取得後の虚偽記載の影響以下の点からすれば,原告らが被告株式を取得した後の虚偽記載によっても損害が生じているというべきである。この点,被告は,各株式の取得時点の直近の有価証券 報告書とそれ以前の有価証券報告書では損害との相当因果関係が異なる旨を主張し,第170期の影響度を1とすると,以後,期ごとに2から6の影響度である旨主張するが,これは被告の意見以上のものではなく,一般的な経験則として採用することには無理がある。 (後記オのとおり)原告らが本件で損害賠償の対象としているのは,平成2 2年6月23日から平成27年4月3日までに取得した被告株式に係る損害である。 そして,少なくとも第171期有価証 (後記オのとおり)原告らが本件で損害賠償の対象としているのは,平成2 2年6月23日から平成27年4月3日までに取得した被告株式に係る損害である。 そして,少なくとも第171期有価証券報告書は,上記の期間を通じて,是正されないまま公衆の縦覧に供されており,原告らは,こうした虚偽記載を前提に被告株式を取得したものである。 ろうばい売りによる株価下落は,虚偽記載の発覚により生ずるところ,そのよ うな株価下落は,虚偽記載がされた時期や株式を取得した時期にかかわらず,虚偽記載の発覚時に株式を保有していた投資者が等しく被るものであるから,株式の取得後にされた虚偽記載の発覚によるろうばい売りの損害は生ずることになる。 オ損害賠償請求の対象となる被告株式損害賠償請求の対象となる被告株式 本件において損害賠償請求の対象となる株式は,虚偽記載の始期である第171期 有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日から,虚偽記載の発覚時である平成27年4月3日までに原告らが取得した株式である。 損害賠償請求の対象となる被告株式の特定方法虚偽記載のある第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された時点で既に被告株式を保有しており,虚偽記載の公表まで被告株式の売買を繰り返している本件に おいて,損害賠償請求の対象となる被告株式の特定方法としては,先入先出法を用いるべきである。そして,以下の点からすれば,被告が主張する総平均法と同様の考え方によることは相当でない。 a 損害は個々の取引ごとに発生しているから,株式を個々の取引ごとに区別することは損害額を算定するうえで必要不可欠である。総平均法は,一定期間の取引を全 体として見て,個々の取引における取得と処分の対応関係を捨象する点で, しているから,株式を個々の取引ごとに区別することは損害額を算定するうえで必要不可欠である。総平均法は,一定期間の取引を全 体として見て,個々の取引における取得と処分の対応関係を捨象する点で,損害賠償額の算定に根本的になじまない。 b 新たな取引の意思決定時に,従前の取引結果を織り込むか否かは所与のものではなく,被告の想定する取引実態は,これを当然の前提としている点で誤りがある。 c 被告が主張する総平均法と同様の考え方は,対象となる期間中に行われた株式 の売却において,まだ取得していない株式を処分したことにするというフィクションとしても成立しない処理を採用することになる。被告は,複数期にわたって虚偽記載が続き,その間,各期で別個の虚偽記載が行われた中で,期ごとに損害賠償の対象となる損害を異にすると主張するが,総平均法と同様の考え方によれば,フィクションの上にさらに別のフィクションを重ねるものである一方,対象株式を個別具体的に特 定できる先入先出法ではこのような問題は生じない。 カ具体的な損害額の算定前記オ本件において損害賠償請求の対象となる株式は,虚偽記載の始期である第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日から,虚偽記載の発覚時である平成27年4月3日までに原告らが取得した株式であ る。また,虚偽記載により投資者が被る損害は,虚偽記載の発覚時の株価と虚偽記載 是正時の株価の差額であると考えられるところ,虚偽記載の発覚時は被告が特別調査委員会を設置する旨を公表した平成27年4月3日,虚偽記載是正時は被告が本件訂正報告書を提出し,その旨を公表した同 原告らが現在も保有する株式,又は,平成27年9月7日よりも後に処分した 株式で,かつ,取得価額が同年4月3日の 4月3日,虚偽記載是正時は被告が本件訂正報告書を提出し,その旨を公表した同 原告らが現在も保有する株式,又は,平成27年9月7日よりも後に処分した 株式で,かつ,取得価額が同年4月3日の株価(512.4円)以下のもの:「取得価額-平成27年9月7日の株価(352.7円)」原告らが現在も保有する株式,又は,平成27年9月7日よりも後に処分した株式で,かつ,取得価額が同年4月3日の株価(512.4円)を超えるもの:「平成27年4月3日の株価(512.4円)-平成27年9月7日の株価(352.7円)」 平成27年4月3日から同年9月7日までに処分した株式で,かつ,取得価額が同年4月3日の株価(512.4円)以下のもの:「取得価額-処分価額」平成27年4月3日から同年9月7日までに処分した株式で,かつ,取得価額が同年4月3日の株価(512.4円)を超えるもの:「平成27年4月3日の株価(512.4円)-処分価額」 上記方法に従った場合のファンドごとの計算過程は原告カストディにつき別紙5-1,原告マスタートラストにつき別紙5-2記載のとおりであり,損害額は原告カストディにつき別紙2-1損害額①欄記載のとおり,ファンド番号01623-0004 につき1億8627万2000円,ファンド番号01623-0012 につき9849万5200円,ファンド番号01623-0013 につき2537万9100円,ファンド番号01623-3042 につき2677万3200円,ファンド番号01623-3049 につき1869万7300円,ファンド番号01623-3099 につき4576万5500円,ファンド番号01623-3104につき2748万6000円,ファンド番号01623-6003 につき3813万5400円の合計4 円,ファンド番号01623-3099 につき4576万5500円,ファンド番号01623-3104につき2748万6000円,ファンド番号01623-6003 につき3813万5400円の合計4億6700万3700円であり,原告マスタートラストにつき別紙2-2損害額①欄記載のとおり,ファンド番号159802 につき3691万9700円,ファ ンド番号300048 につき1848万4300円の合計5540万4000円である。 キ弁護士費用相当額の損害不法行為に基づく損害賠償請求においては,上記カの損害額の10%相当額も虚偽記載と相当因果関係がある弁護士費用相当額の損害というべきであり,その額は,原告カストディにつき4670万0370円,原告マスタートラストにつき554万0400円となる。 クしたがって,原告カストディの損害は,5億1370万4070円,原告マスタートラストの損害は6094万4400円である(ただし,原告マスタートラストについては一部請求として5871万8880円の支払を求める。)。 ケ遅延損害金の起算日改正前金商法21条の2に基づく損害賠償債務は,損害の発生と同時に,かつ,何 らの催告を要することなく,遅滞に陥るものと解するのが相当であり,株式取得日から遅延損害金の支払を請求することができるというべきであるとする裁判例(東京高裁平成29年2月23日判決)が説示するように,原告らは,被告株式を取得した時点で虚偽記載による嵩上げ分の損害を直ちに被っており,それを数字として認識できるのが虚偽記載の発覚後というだけであるから,被告株式取得時が遅延損害金の起算 日となる。 なお,主位的請求の弁護士費用部分についての遅延損害金は請求しない(一部請求の趣旨である。)。 (被告の主張 記載の発覚後というだけであるから,被告株式取得時が遅延損害金の起算 日となる。 なお,主位的請求の弁護士費用部分についての遅延損害金は請求しない(一部請求の趣旨である。)。 (被告の主張)ア損害の内容 「虚偽記載なければ取得なし」といえる事案とそうでない事案とでは,損害の範囲が異なるところ,本件は「虚偽記載なければ取得なし」と認められる事案ではないことから,①虚偽記載によって取得時点で嵩上げされた株式の価値すなわち高値取得損害(取得価額と虚偽記載がなければ形成されていたであろう想定価額との差額)の賠償義務の成否のみが問題となり,②信用毀損やろうばい売りによる株価下落は損害に 含まれない。 損害とは,加害行為の作用を受けた結果として現に存在する利益状態(現実的利益状態)と,当該加害行為がなかったと仮定したならば存在したであろう利益状態(仮定的利益状態)との差額をいうところ(差額説),虚偽記載がなければ当該株式を取得しなかったとは認められない事案における仮定的利益状態は,投資者が,仮に虚偽記載がなければ形成されていたであろう価額(想定価額)で当該株式を取得した状態を いい,現実的利益状態は,投資者が,虚偽記載によって形成された現実の取得価額で当該株式を取得した状態である。他方,高値取得損害以外の要因による株価の下落に伴う経済的損失は,虚偽記載の下で当該株式を取得した株主のみならず,虚偽記載の開始前に当該株式を取得した株主であっても等しく被る損失であり,株主が一般的にその地位に基づいて被る損失であるから,虚偽記載がなければ当該株式を取得しなか ったとは認められない投資者との関係においては,虚偽記載と相当因果関係のある損害額に当たらない。したがって,損害の内容につき,これと異なる見解に るから,虚偽記載がなければ当該株式を取得しなか ったとは認められない投資者との関係においては,虚偽記載と相当因果関係のある損害額に当たらない。したがって,損害の内容につき,これと異なる見解に立つ平成28年大阪高裁判決は誤りであり,当該判決に依拠する原告らの主張もまた誤りである。 イ損害の算定方法原告らは,平成27年9月7日以降に処分した被告株式について,一律,同日の株 価の終値(352.7円)と比較する形で損害額を計算しているが,同日以降に被告株式の株価が上昇した場合には,原告らには,その上昇分について,高値取得損害が生じていないことになる。また,差額説のもとでは,不法行為により被害者に現実に生じた損害のみが賠償されるべきであるとの実損主義に基づく差額の算定が行われている。このような差額説との整合性等からしても,高値取得損害が,取得価額と処 分価額との差額(株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の株式の市場価額の差額)よりも高額になった場合,賠償されるべき損害は,取得価額と処分価額との差額(株式を保有し続けているときはその取得価額と事実審の口頭弁論終結時の株式の市場価額の差額)が上限となる。 平成28年12月15日時点で継続して保有されていた被告株式については,少な くとも,1株当たりの損害としては,「取得価額(ただし,取得価額が512.4円を 超えるものについては,512.4円)-475円」が上限となる。本件において,被告株式の株価は,平成28年2月12日に1株当たり158円と底を打った後,同年12月15日には,1株当たり475円まで回復するに至ったが,同月27日に,被告のグループ会社であるウェスチングハウス社について,同社が平成27年12月31日に買収したCB& 円と底を打った後,同年12月15日には,1株当たり475円まで回復するに至ったが,同月27日に,被告のグループ会社であるウェスチングハウス社について,同社が平成27年12月31日に買収したCB&Iストーン&ウェブスター社の資産価値が想定額を下回り, 必要なのれんの計上額が数十億米ドル規模に上り,当該のれんの一部又は全額減損を実施することで,被告の業績に影響を及ぼす可能性があることを公表したところ,平成28年12月26日に1株当たり443.1円であった被告株式の株価が,同月29日には258.7円まで下落した。このような,同月15日以降の株価下落は,原告らの主張する虚偽記載とは無関係な要因に起因するものであるから,同月15日時 点で継続して保有されていた被告株式については,少なくとも,1株当たりの損害としては,「取得価額(ただし,取得価額が512.4円を超えるものについては,512.4円)-475円」が上限となる。実質的にみても,原告らは,同日以降,虚偽記載とは無関係な要因によって株価が下落する可能性を認識しながら,あえてその時点では売却せず,保有を継続するという新たな投資判断を下したのだから,その結果 は,原告らが投資者として自ら甘受すべきであり,虚偽記載と相当因果関係のある損害とはなり得ない。 ウ他事情による株価下落への影響 市場動向日経平均株価は,平成27年4月3日の終値が1万9435円08銭であったのに 対し,同年9月7日の終値は1万7860円47銭であり,この間に約8%下落している。したがって,当該期間の被告株式の株価の下落のうち8%(512.4円×8%=41円)は,一般的な市場要因による株価下落である。 被告の属する大手電機・重電産業のうち,被告と同様に中国向け売上比率の高いシャープら 期間の被告株式の株価の下落のうち8%(512.4円×8%=41円)は,一般的な市場要因による株価下落である。 被告の属する大手電機・重電産業のうち,被告と同様に中国向け売上比率の高いシャープら5社の株式の株価は,平成27年4月3日から同年9月7日までの間におい て,平均して23%下落していた。したがって,被告株式の株価の下落(31%)の うち,少なくとも,上記5社の株価の下落と重なる部分については,電機産業の事業環境の悪化による下落であり,具体的には,平成27年4月3日の被告株式の株価の終値512.4円の23%に相当する117.9円は,虚偽記載とは無関係な要因による下落である。 東証33業種別株価指数(電気機器)に着目しても,平成27年4月3日から同年 9月7日までの期間については,その下落率が約23.82%であったことからすれば,被告株式の株価の下落が,被告に限らない電機産業の市況要因に起因するものであることは否定し得ない。 第三者委員会要修正額以外の訂正第171期,第173期及び第174期の各期の当期純損益の訂正金額のうち,「自 主チェック等による修正」,「減損損失の追加計上及びこれに伴う減価償却費の修正」及び「事業買収に関する組替え」は,第三者委員会要修正額に含まれる訂正ではない。 第171期,第173期及び第174期の当期純損益のうち,第三者委員会要修正額以外の訂正金額の合計は752億8100万円であるところ,これが,第171期,第173期及び第174期の当期純損益の訂正額の合計である1688億1900 万円に占める割合は約45%であるから,平成27年4月3日から同年9月7日までの期間における株価下落のうち,第三者委員会要修正額以外の訂正による株価下落である約45%は,不適切な 億1900 万円に占める割合は約45%であるから,平成27年4月3日から同年9月7日までの期間における株価下落のうち,第三者委員会要修正額以外の訂正による株価下落である約45%は,不適切な会計処理を理由とする虚偽記載に起因する株価下落ではなく,虚偽記載と相当因果関係のある損害ではない。 エ株式取得後の虚偽記載の影響 有価証券報告書等の虚偽記載を理由とする損害賠償請求においては,株式の取得時点における重要な虚偽記載が違法行為を構成し得るのであり,取得後にされた虚偽記載は無関係である。したがって,原告らが損害賠償請求を行い得るのは,被告による過年度決算訂正に伴う株価下落分の全額ではなく,飽くまで,原告らが被告株式を取得した時点における重要な虚偽記載に起因する株価の下落分に限られる。そして,投 資者は,発行会社の将来の収益力に着目して投資を行うから,投資判断の時点により 近い財務情報を重視するといえ,直近の財務情報の方が株価に与える影響は大きく,年度ごとの訂正が株価下落に与える影響の比率を正確に算定することは困難であるものの,第170期の訂正が株価下落に与えた影響を1とすれば,第171期の訂正は2,第172期の訂正は3,第173期の訂正は4,第174期の訂正は5,第175期の訂正は6という比率で株価に影響を与えたと考えるのが経験則に合致する。 重要な事項についての虚偽記載がある場合には,以上をもとに,以下の算式により,第171期,第173期及び第174期の重要な事項についての虚偽記載が与えた影響の割合を算出すべきである(以下の算式において,Xは,第171期の当期純損益の第三者委員会要修正額である240億7300万円,Yは第173期の当期純損益の第三者委員会要修正額である164億4200万円,Zは 算出すべきである(以下の算式において,Xは,第171期の当期純損益の第三者委員会要修正額である240億7300万円,Yは第173期の当期純損益の第三者委員会要修正額である164億4200万円,Zは第174期の当期純損益 の第三者委員会要修正額である530億2300万円を指す)。 第171期=X×2/{(X×2)+(X×4)+(Z×5)}=13%第173期=Y×4/{(X×2)+(X×4)+(Z×5)}=17%第174期=Z×5/{(X×2)+(X×4)+(Z×5)}=70%この点を損害額の算定に反映させる場合,総平均法と同様の考え方によって算定し た各ファンドごとの損害賠償請求の対象となる株式数を各期の有価証券報告書の提出日の翌日から,翌期の有価証券報告書の提出日までの期間に割り付け,以下に記載する割合に相当する金額を控除することによって,算出すべきである。 第171期有価証券報告書の提出日翌日から第172期有価証券報告書の提出日まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は87% 第172期有価証券報告書の提出日翌日から第173期有価証券報告書の提出日まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は87%第173期有価証券報告書の提出日翌日から第174期有価証券報告書の提出日まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は70%第174期有価証券報告書の提出日翌日から第175期有価証券報告書の提出日 まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は0% 第175期有価証券報告書の提出日翌日から平成27年4月3日まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は0%オ損害賠償請求の対象となる被告株式損害賠償請求の対象となる被告株式原告らによる損害賠償請求 告書の提出日翌日から平成27年4月3日まで:取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合は0%オ損害賠償請求の対象となる被告株式損害賠償請求の対象となる被告株式原告らによる損害賠償請求の対象となる被告株式は,重要な事項に関する虚偽記載 のある有価証券報告書等の開示後に取得され,当該虚偽記載のおそれの公表時まで未処分であったものに限られる。そして,被告が第171期有価証券報告書を提出したのは,平成22年6月23日における取引終了後であるため,同日に取得された被告株式は損害賠償請求の対象になり得ず,本件において損害賠償請求の対象となる被告株式は,同月24日以降に取得され,平成27年4月3日の取引終了時において未処 分であったものである。 損害賠償請求の対象となる被告株式の特定方法虚偽記載のある有価証券報告書等が公衆の縦覧に供された時点において既に株式を保有しており,その後虚偽記載であることが公表されるまでの間に当該株式の取得と同時に処分も行われた場合には,どの時点で取得した株式を処分したものとして取 り扱うかを特定しなければならず,この方法としては総平均法と同様の考え方によるべきである。 原告らが主張する先入先出法は,先に取得したものから先に処分したとみなして棚卸資産の取得原価を算定する方法である。しかしながら,株式は,会社の構成員たる地位が細分化された割合的単位にすぎず,特に,株券が発行されず数量のみによって 把握される振替株式制度の下においては,投資者が株式の取得と処分を繰り返したとしても,特定の株券と紐付けられた特定の株式が売買されるわけではなく,投資者の会社に対する持分の残高が増減するのみである。したがって,上記制度の下における株式の取引について,どの時点で取得したものを処分に充てたかとい と紐付けられた特定の株式が売買されるわけではなく,投資者の会社に対する持分の残高が増減するのみである。したがって,上記制度の下における株式の取引について,どの時点で取得したものを処分に充てたかという対応関係を観念することはできないから,先入先出法は,損害賠償請求の対象となる株式の特定方 法として合理性がない。 これに対して,総平均法は,同一銘柄の有価証券について,一定の期間の期首の帳簿価額と期中に取得した有価証券の取得価額の合計額を,これらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し,その平均単価を有価証券の1単位当たりの帳簿価額とする方法である。そして,株式は,割合的単位にすぎず没個性的であって,保有株式の平均的な一定割合が処分されたとみるのが論理的であるから,総平均法と同様の考え方 によって,損害賠償請求の対象となる株式を特定するのが合理的である。また,投資者は,ある一定期間の取引を全体としてみて,当該株式への投資による運用利回りを評価し,投資判断を行っているのであり,個々の株式を区別し,1株1株の取得と処分の対応関係を紐づけた上で利益や損失の額を把握するものではないから,総平均法と同様の考え方は,このような投資者の投資実態とも整合する。 先入先出法を用いた場合,損害賠償請求の対象となる被告株式の株数が総平均法と同様の考え方を用いた場合と比較して過大となるから,先入先出法は恣意的で不合理な手法である。加えて,被告が原告らから開示を受けている取引履歴においては,約定日までの記載しかなく,時刻の特定ができないため,同一日に取得や処分が複数回繰り返された場合には,これらの取得や処分の先後関係を特定することはできず,先 入先出法を適用する前提に欠ける。 カ具体的な損害額の算定(被告の主張) ,同一日に取得や処分が複数回繰り返された場合には,これらの取得や処分の先後関係を特定することはできず,先 入先出法を適用する前提に欠ける。 カ具体的な損害額の算定(被告の主張)原告の主張する損害額の算定については争う。 なお,仮に,総平均法と同様の考え方を採用することや上記イ,エを踏まえること 以外は,基本的に,原告らの主張する算定方法によった場合の,第171期以降,各有価証券報告書が提出されてから次の有価証券報告書が提出されるまで(ただし,第175期有価証券報告書の提出後については,原告らの主張する虚偽記載の発覚時である平成27年4月3日まで)の期間ごとの損害額は,以下の工程によって求めることができる(ただし,前記オことから,以下でいう「公表時」は平成27 年4月3日,「期首」は平成22年6月24日,「(損害賠償請求の)対象期間」は期首 から公表時までである。また,虚偽記載に起因しない控除要因(信用毀損・ろうばい売り,電機産業の事業環境の悪化,第三者委員会要修正額以外の訂正)による株価下落に相当する部分についても控除されるべきであるが,以下の工程では触れていない。 その控除は,工程③まで完了した後の金額に対して一定の割合を掛ける方法によって行うこともできる。)。 <工程①>原告らの各ファンド別に,第171期以降,各期の有価証券報告書の提出日の翌日から,翌期の有価証券報告書の提出日まで(ただし,第175期有価証券報告書の提出後については,平成27年4月3日まで)の各期間の取得株式数を求める。 平成27年4月3日の取引終了時における未処分株式数に含まれる損害賠償請求 の対象となる株式数を原告らの各ファンド別に以下の算式により特定する。 対象株式数=公表時未処分株式数×対象期 。 平成27年4月3日の取引終了時における未処分株式数に含まれる損害賠償請求 の対象となる株式数を原告らの各ファンド別に以下の算式により特定する。 対象株式数=公表時未処分株式数×対象期間取得株式数/(期首株式数+対象期間取得株式数)原告らの各ファンド別の対象株式数を上記で求めた(各ファンド別の)各期間の取得株式数で按分して,各期間に割り付ける。 対象株式の取得単価を原告らの各ファンド別に以下の算式により算定する。 対象株式の取得単価=対象期間取得株式の取得価額の合計/対象期間取得株式数原告らの各ファンドは,いずれも平成29年7月31日までに,それまで保有していた被告株式を一旦全部処分しているので,平成27年4月3日から平成29年7月31日までに処分された対象株式(すなわち全対象株式)について,各ファンド別の 損害額を以下の算式により算定する。 各ファンド別の損害額=各ファンド別の1株当たりの損害額×各ファンド別の処分数×処分数に対する対象株式の割合各ファンド別の1株当たりの損害額は,処分価額が,上記の各ファンド別の対象株式の取得単価を上回る場合には,0となり,下回る場合には,以下の算式により算定 する。 Ⅰ 平成27年4月4日から同年9月7日までの処分株式Ⓐ取得価額<512.4円の場合:取得価額-処分価額Ⓑ取得価額≧512.4円の場合:512.4円-処分価額Ⅱ 平成27年9月8日から平成28年12月14日までの処分株式Ⓐ取得価額<512.4円,かつ,処分価額<352.7円の場合: 取得価額-352.7円Ⓑ取得価額<512.4円,かつ,処分価額≧352.7円の場合:取得価額-処分価額ⓒ取得価額≧512.4円,かつ,処分価額<3 <352.7円の場合: 取得価額-352.7円Ⓑ取得価額<512.4円,かつ,処分価額≧352.7円の場合:取得価額-処分価額ⓒ取得価額≧512.4円,かつ,処分価額<352.7円の場合512.4円-352.7円 Ⓓ取得価額≧512.4円,かつ,処分価額≧352.7円の場合512.4円-処分価額Ⅲ 平成28年12月15日以降の処分株式Ⓐ取得価額<512.4円の場合取得価額-475円 Ⓑ取得価額≧512.4円の場合512.4円-475円<工程②>工程①で算出した各ファンド別の損害額を,期間ごとの対象株式数で案分して各期間に割り付ける。 <工程③>工程②で各期間に割り付けられた損害額から,株式取得後の虚偽記載に起因する株価下落の割合(上記エ参照)に相当する金額をそれぞれ控除する。 キ弁護士費用相当額の損害争う。 ク遅延損害金の起算日 遅延損害金の起算点は,投資者が株式を,取得価額より低い価額で処分した時点又は損害賠償請求の時点のいずれか早い方と解するべきである。本件において,原告らは,平成29年7月31日までにそれまで保有していた被告株式を全て処分しているところ,同日以前に原告らが被告に対して損害賠償請求をしたことはないから(なお,平成29年3月30日に被告に到達した原告らの内容証明郵便(甲9及び10参照) は,加害行為や損害賠償額が特定されていないなど,遅延損害金の起算点となり得る損害賠償請求とはいえない。),遅延損害金の起算日は,株式の処分によって上記の損害が発生したといえる場合のその処分日となる。 ⑸ 改正前金商法21条の2第1項に基づき,かつ,同条2項の推定損害額の規定を用いない場合の損害額(予 遅延損害金の起算日は,株式の処分によって上記の損害が発生したといえる場合のその処分日となる。 ⑸ 改正前金商法21条の2第1項に基づき,かつ,同条2項の推定損害額の規定を用いない場合の損害額(予備的請求①の関係) (原告らの主張)ア損害の内容等損害の内容,損害の算定方法,他事情による株価下落への影響,株式取得後の虚偽記載の影響,損害賠償請求の対象となる被告株式の特定方法については,前記⑷の(原告らの主張)において主張したものと同様である。 イ金商法21条の3による除斥期間の適用改正前金商法21条の2に基づく損害賠償請求権は,虚偽記載等のある書類の提出時より5年間で除斥期間の経過により消滅するところ(金商法21条の3),原告らは,被告に対し,平成29年3月29日付けで,本件につき改正前金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権を行使する旨を明確にし,これが同月30日に到達し ているから,損害賠償請求の対象となる株式は,第173期有価証券報告書が提出された平成24年6月22日から,虚偽記載の発覚時である平成27年4月3日までに原告らが取得した被告株式である。 ウ金商法19条1項による限度額改正前金商法21条の2に基づく請求の場合,金商法19条1項により算出された 額が限度となるため,原告らが被告に対して損害賠償請求権を行使する旨を明確にし た平成29年3月30日時点で処分未了であった被告株式については,その取得価額から,同日の被告株式の終値の228.2円を控除した額(同項1号),同日時点で処分済みの被告株式については,その取得価額から,処分価額を控除した額(同項2号)が,損害賠償額の限度額となる。 エ具体的な損害額 虚偽記載により投資者が被る損害は,虚偽記 ,同日時点で処分済みの被告株式については,その取得価額から,処分価額を控除した額(同項2号)が,損害賠償額の限度額となる。 エ具体的な損害額 虚偽記載により投資者が被る損害は,虚偽記載発覚時の株価と虚偽記載是正時の株価との差額であると考えられるところ,虚偽記載発覚時は特別調査委員会を設置する旨を公表した平成27年4月3日,虚偽記載是正時は被告が本件訂正報告書を公表した同年9月7日である。したがって,前記⑷の(原告らの主張)カ記載での区分による方法により損害額を算定するべきである。 上記方法に従った場合のファンドごとの計算過程は原告カストディにつき別紙5-1,原告マスタートラストにつき別紙5-2記載のとおりであり,損害額は原告カストディにつき別紙2-1損害額②欄記載のとおり,ファンド番号01623-0004 につき1億7885万3800円,ファンド番号01623-0012 につき9175万0700円,ファンド番号01623-0013 につき2513万4100円,ファンド番号01623-3042 につき2303万3000円,ファンド番号01623-3049 につき1869万7300円,ファンド番号01623-3099 につき4576万5500円,ファンド番号01623-3104につき2748万6000円,ファンド番号01623-6003 につき2880万1600円の合計4億3952万2000円であり,原告マスタートラストにつき別紙2-2損害額②欄記載のとおり,ファンド番号159802 につき3691万9700円,ファ ンド番号300048 につき1848万4300円の合計5540万4000円である。 オ遅延損害金の起算日前記⑷の(原告らの主張)クのとおり,取得日が起算日というべきである。 (被告の主張 ンド番号300048 につき1848万4300円の合計5540万4000円である。 オ遅延損害金の起算日前記⑷の(原告らの主張)クのとおり,取得日が起算日というべきである。 (被告の主張)ア損害の内容等 損害の内容,損害の算定方法,他事情による株価下落への影響,株式取得後の虚偽 記載の影響,損害賠償請求の対象となる被告株式の特定方法については,前記⑷の(被告の主張)において主張したものと同様である。 イ金商法21条の3による除斥期間の適用原告らが被告に対して損害賠償請求権を行使したのは平成29年3月30日であるから,同日よりも5年以上前に提出された継続開示書類の虚偽記載を理由とする改 正前金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求権については,除斥期間の経過により既に消滅している。したがって,原告らの同項に基づく損害賠償請求に関しては,第171期有価証券報告書の虚偽記載に起因する株価下落相当分は,損害賠償の対象とならない(なお,被告は,第171期,第173期及び第174期の有価証券報告書の当期純損益の記載以外は重要な事項についての虚偽記載に該当しないとしてい るため,第172期ではなく,第171期の有価証券報告書について除斥期間の経過を主張しているものである。)。 ウ具体的な損害額争う。 エ遅延損害金の起算日 前記⑷の(被告の主張)クのとおり,投資者が有価証券を取得価額より低い価額で処分したときは処分時を,損害賠償請求時に有価証券を保有しているときは請求時を遅延損害金の起算点とすべきである。 ⑹ 改正前金商法21条の2第2項による推定損害額(予備的請求②の関係)(原告らの主張) ア虚偽記載の事実の公表時期改正前金商法21条の2第2項にいう「 算点とすべきである。 ⑹ 改正前金商法21条の2第2項による推定損害額(予備的請求②の関係)(原告らの主張) ア虚偽記載の事実の公表時期改正前金商法21条の2第2項にいう「虚偽記載等の事実の公表」があったというためには,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実について,多数の者が知り得る状態に置く措置がとられれば足りると解される。本件において,被告は, 平成27年5月8日開示により,工事進行基準適用案件において工事損失が適時に計 上されていないこと,その他の事業についても更なる調査を必要とする事項が判明していること,平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性を明らかにするとともに,前記や直前の四半期末にあった配当を無配当とし,かつ,業績予想が単なる金額の修正ではなく未定としたことを明らかにしており,上記開示により過年度決算の修正が相当規模に及ぶことが明らかにされたといえる。したがって,遅くとも同日時点 で,被告株式に対する市場の評価の誤りを明らかにするに足りる事実を被告が公表したといえ,平成27年5月8日開示が改正前金商法21条の2第2項にいう「虚偽記載等の事実の公表」に該当する。 イ改正前金商法21条の2第2項による推定損害額の計算の基礎となる対象となる被告株式及びその公表前後1箇月間の平均価格の差額 改正前金商法21条の2第2項の損害額の推定規定を用いる場合,その請求主体は,虚偽記載等の事実の公表がされた日前1年以内に当該株式を取得し,当該公表日において引き続き当該株式を所有する者であるため,損害賠償請求の対象となる株式は,平成26年5月8日から平成27年5月7日までに原告らが取得した被告 がされた日前1年以内に当該株式を取得し,当該公表日において引き続き当該株式を所有する者であるため,損害賠償請求の対象となる株式は,平成26年5月8日から平成27年5月7日までに原告らが取得した被告株式となる。 改正前金商法21条の2第2項の損害額の推定規定を用いる場合,虚偽記載公表日前1月間の株式の市場価額の平均額から当該公表日後1月間の当該株式の市場価額の平均額を控除した額を,当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができるところ,公表日前の1箇月間である平成27年4月8日から同年5月7日までの被告株式の平均価格は484.98円であり,公表日後の1箇月間である同月9日 から同年6月8日までの被告株式の平均価格は423.39円であるから,この差額は61.59円である。 ウ改正前金商法21条の2第4項による減額の抗弁争う。 エ金商法19条1項による限度額 損害の額は,金商法19条1項により算出された額が限度となるため,損害賠償請 求権を行使する旨を明確にした平成29年3月30日時点で処分未了であった被告株式については,その取得価額から,同日の被告株式の終値の228.2円を控除した額(同項1号),同日時点で処分済みの被告株式については,その取得価額から,処分価額を控除した額(同項2号)が,損害賠償の限度額となる。 オ具体的な損害額 ファンドごとの損害算定過程は,原告カストディにつき別紙5-1,原告マスタートラストにつき別紙5-2記載のとおりであり,具体的な損害額は,原告カストディにつき,別紙2-1損害額③欄記載のとおり,ファンド番号01623-0004 につき7125万9630円,ファンド番号01623-0012 につき1398万0930円,ファンド番号01623-001 につき,別紙2-1損害額③欄記載のとおり,ファンド番号01623-0004 につき7125万9630円,ファンド番号01623-0012 につき1398万0930円,ファンド番号01623-0013 につき1040万8710円,ファンド番号01623-3042 につき1 388万8400円,ファンド番号01623-3049 につき905万3730円,ファンド番号01623-3099 につき3160万6210円,ファンド番号01623-3104 につき2439万5960円,ファンド番号01623-6003 につき1108万6200円の合計1億8567万9770円であり,原告マスタートラストにつき別紙2-2損害額③欄記載のとおり,ファンド番号159802 につき2398万0420円,ファンド番号 300048 につき979万2810円の合計3377万3230円である。 カ遅延損害金の起算日前記⑷の(原告らの主張)クのとおり,取得日が遅延損害金の起算日になるというべきである。 (被告の主張) ア虚偽記載等の事実の公表時期特定の情報開示が改正前金商法21条の2第2項にいう「公表」に該当するには,開示された事実において,虚偽記載の対象となった取引の相手方や分野が特定されており,特定された当該虚偽記載について,一部であっても,金額上のインパクトが明らかにされていることを要する。本件において,最終的に訂正の対象となった会計処 理は大別して4つの事業分野に関するものであるところ,平成27年5月8日開示に おいては,工事進行基準適用案件についてしか触れられておらず,それ以外については,何らかの調査を要する事項がある旨述べられているにすぎないから,上記開示は有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにす は,工事進行基準適用案件についてしか触れられておらず,それ以外については,何らかの調査を要する事項がある旨述べられているにすぎないから,上記開示は有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実を含むものではなく,改正前金商法21条の2第2項の「公表」には該当しない。他方,本件調査報告書の要約版(乙15参照)が公表された平成27年7月20日開示にお いて,第三者委員会の調査対象が,工事進行基準,映像事業,半導体事業及びPC事業の4事業であることを前提に,第三者委員会が認定した継続事業税引前当期純損益の過年度修正額が合計約1518億円であることが明らかになったから,この時点において,「公表」があったと解するべきである。なお,被告株式の株価が下落したか否かは,「公表」の有無に何ら影響を与えるものではない。 イ改正前金商法21条の2第2項による推定損害額争う。 ウ改正前金商法21条の2第4項による減額の抗弁上記⑷の(被告の主張)ウにおいて主張した,市場要因による株価下落及び第三者委員会要修正額以外の訂正による株価下落は,虚偽記載によって生ずべき有価証券の 値下がり以外の事情によるものであるから,その部分については,賠償の対象とはならない。 エ具体的な損害額争う。 オ遅延損害金の起算日 争う。 第3 判断 1 認定事実前記前提事実に加え,証拠(認定に用いた証拠は括弧内に示した。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ⑴ 第三者委員会の報告事項 ア第三者委員会が不適切な会計処理であると認定した事項(甲6)第三者委員会は,被告の会計処理について調査を行い,工事進行基準適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上等に 項 ア第三者委員会が不適切な会計処理であると認定した事項(甲6)第三者委員会は,被告の会計処理について調査を行い,工事進行基準適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上等に係る会計処理,PC事業における部品取引等に係る会計処理,半導体事業における在庫の評価に係る会計処理について,以下のとおりの不適切な会計処理があった旨を報告した。 インフラ関連の工事進行基準適用案件について(甲6・31頁以下)工事進行基準とは,工事契約に関して,その工事の完成以前に,工事収益総額,工事原価総額及び決算日における工事進捗度を合理的に見積もり,これに応じて,当期の工事収益及び工事原価を計上する方法をいう。被告において,工事進捗度の見積りには,原価比例法(工事進捗度を,累計工事原価発生総額を見積工事原価総額で除し た割合として見積もる方法)が用いられていたところ,原価比例法を用いる場合,以下の算式により,工事収益及び工事原価を算定することができる。 当期の工事収益=見積工事収益総額×決算日における工事進捗度-当該工事に関する過年度工事収益計上額当期の工事原価=累計工事原価発生総額-当該工事に関する過年度工事原価計上 額上記のような会計処理を行う場合,工事原価総額を過少に見積もれば,工事進捗度が過大となる結果,売上も過大に計上されるところ,被告においては,意図的に工事原価総額を過少に見積もり,売上を過大計上するという不適切な会計処理を行っていた。 また,見積工事原価総額が見積工事収益総額を超過する可能性が高く,かつ,その金額を合理的に見積もることができる場合には,その超過すると見込まれる金額のうち,既に計上された損益の額を控除した残額を,工事損失が見込まれた期に工事損失引当金として計上する必 性が高く,かつ,その金額を合理的に見積もることができる場合には,その超過すると見込まれる金額のうち,既に計上された損益の額を控除した残額を,工事損失が見込まれた期に工事損失引当金として計上する必要があるが,被告においては,ロスコン工事において,工事損失引当金を計上しない又は過少に向上するなどといった,不適切な会計処理を行っ ていた。 これらの会計処理は,被告の社内カンパニーである電力システム社,社会インフラシステム社,コミュニティ・ソリューション社等においてみられ,これに伴い,過年度の売上総利益等の修正を要することとなった。 映像事業について(甲6・179頁以下)a 経費計上に関するもの 被告は,映像事業の事業部門において,損益目標値を達成するための対策として,キャリーオーバーと称する損益調整,すなわち,当期で引き当てるべき引当金を計上しなかったり,経費の計上を翌期以降に先延ばししたりすることによって,見かけ上の当期利益を嵩上げしていた。具体的には,被告の連結決算上,中国,アジア,インド及びロシアの海外販社における販促費やリベート等の経費に関して,発生主義に従 って適切な会計期間に費用処理されていないもの,日本,欧州,中東アジア等において,四半期末までに広告費や物流費等の役務提供を受けていたにもかかわらず,支払先に依頼し請求書の発行を翌四半期とさせることで経費の計上を回避しているもの,被告から海外現地法人へ販売する製品に関して,四半期末に意図的に海外現地法人に対する製品価格を一時的に増加させた価格で販売し,本来の製品価格と増加後の価格 の差額について売上高及び利益を過大に計上していたため,連結決算の際に,これから海外現地法人における過大に計上された在庫に係る未実現利益を消去すべきであったに ,本来の製品価格と増加後の価格 の差額について売上高及び利益を過大に計上していたため,連結決算の際に,これから海外現地法人における過大に計上された在庫に係る未実現利益を消去すべきであったにもかかわらず,その全部又は一部を消去していなかったものなどが存在した。 b 部品取引に関するものPC事業における部品取引に関するものと同様,部品の調達価格 にマスキング価格を上乗せして,利益を計上していたが,その後,各決算期において,マスキング値差に係る製造原価のマイナスの取消し処理を行わなかった。 PC事業について(甲6・206頁以下)a 部品取引に関するもの被告は,パソコンの製造・販売に関し,被告の100%子会社である東芝国際調達 台湾社(TTIP,甲6・13頁)が部品を購入し,部品の組み立てを行うODM(委 託者のブランドで販売される製品の設計・開発・製造を行うこと)先に対して有償支給し(部品取引),部品供給を受けたODM先が,自己調達部品と合わせてパソコンを製造し,完成したパソコンをTTIPに納入する(完成品取引)という取引を行っていた。 そして,TTIPは,部品ベンダーから購入した主要部品を購入価格に一定金額を 上乗せしたマスキング価格でODM先に供給していたところ,マスキング価格と購入価格との差額であるマスキング値差について,TTIPでは,ODM先に対する未収入金及び被告に対する債務(未払金)として処理され,被告では,マスキング値差と同額をTTIPに対する未収入金として計上するとともに製造原価を減額することで利益を計上していた。しかしながら,部品取引は,将来の完成品取引を前提とする 実質的には買戻条件付取引といえるものであって,部品取引時に利益の計上を行うことは,一連の取引実態を適切に ることで利益を計上していた。しかしながら,部品取引は,将来の完成品取引を前提とする 実質的には買戻条件付取引といえるものであって,部品取引時に利益の計上を行うことは,一連の取引実態を適切に表すものではないから,各決算期において,部品取引後,完成品取引が完了していない部品や,完成品について,部品取引時に認識した利益相当額(マスキング値差に係る製造原価のマイナス)を取り消す必要があるが,これがされていなかった。 上記のほか,被告では,被告が購入した部品を被告の子会社である東芝トレーディング株式会社(TTI)経由で東芝情報機器杭州社(TIH)に供給するルートも存在していたところ,一部の部品の供給取引について,被告は,TTIに対して調達価格の4倍から8倍のマスキング価格で供給し,当該取引におけるマスキング値差を,TTIに対する未収入金を計上するとともに製造原価をマイナスすることで利益を 計上していた。当該ルートについても,ODM先に供給され,完成品として被告に買い戻されることを予定した取引であることから,当該利益は取り消す必要があるところ,これがされていなかった。 b 経費計上に関するものPC事業においても,映像事業と同様に,被告の見かけ上の利益の嵩上げ目的でキ ャリーオーバーと称する損益調整が行われていた。具体的には,国内における物流費, 広告費の一部について,役務提供が完了しているにもかかわらず,支払先に依頼して請求書の発行を翌四半期以降とさせることで,経費計上を回避しているものなどが存在した。 半導体事業について(甲6・245頁以下)aASIC(ApplicationSpecificIC と呼ばれる特定用途・特定顧客向けLS I)在庫についてASIC製品が在庫として滞留したこ 体事業について(甲6・245頁以下)aASIC(ApplicationSpecificIC と呼ばれる特定用途・特定顧客向けLS I)在庫についてASIC製品が在庫として滞留したことから,平成25年9月17日に開催されたTOP連絡会において,約7000種を対象として在庫を廃棄することが決定され,平成25年度第2四半期にそれらのうち約45億円に相当する在庫について簿価全額について廃棄損として計上する会計処理がされたが,上記の7000種の対象品種 に属する在庫であったにもかかわらず未廃棄のままとなっていたものが約6億円存在した。 また,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によれば,営業循環過程から外れた滞留又は処分見込み等の棚卸資産について,合理的に算定された価額によることが困難な場合には,正味販売価額まで切り下げる方法に代えて,販売計画等に照らし 販売可能性が見込まれなくなった時点で,帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法にて,評価損として計上すべきであったが,被告の車内カンパニーの1つであるセミコンダクター&ストレージ社(甲6・22頁。以下「S&S社」という。)においては,ASIC製品の在庫(製造棚卸資産)に関して,評価損の計上がされていなかった。 bSRPJ在庫について被告のシステムLSI事業部RevivalProject(SRPJ)の一環として,被告の北九州工場の閉鎖がされることとなったが,北九州工場の閉鎖に伴い作りだめがなされた部品のうち,未廃棄のままとなっていた在庫(未廃棄SRPJ在庫)が存在していた。 また,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によれば,営業循環過程から外 れた滞留又は処分見込み等の棚卸資産について,販売計画 いた在庫(未廃棄SRPJ在庫)が存在していた。 また,一般に公正妥当と認められる企業会計の基準によれば,営業循環過程から外 れた滞留又は処分見込み等の棚卸資産について,販売計画等に照らし販売可能性が見込まれなくなった時点で,帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む)まで切り下げる方法にて,評価損として計上すべきであったが,S&S社においては,SRPJ在庫(製造棚卸資産)に関して,評価損の計上がされていなかった。 cTOV改定に伴う原価計算 S&S社の半導体事業においては,TOV(標準原価)を用いた原価計算を採用していた。また,半導体事業の製造工程は,前工程と後工程に分かれるところ,TOVは工程別に決定されており,原価差額も工程別に発生するものである。 平成23年度第3四半期に,四日市工場の操業度が,期首に見積もられた予算上の水準よりも大幅に低下することが見込まれたため,期中において,前工程のTOVを 改定したが,後工程のTOV改定は実施されなかった。 前工程のTOV改定を行う場合,適正な会計処理をするには,後工程のTOV改定も行うか,後工程のTOV改定を行わないのであれば,原価差額を工程別配賦法により配賦することが必要になるが,いずれもされておらず,前工程期末在庫,後工程期末在庫,売上原価の帳簿価額が適切とはいえない金額となっていた。 イ不適切な会計処理の原因(甲6・276頁以下)第三者委員会は,本件における不適切な会計処理の原因として,被告代表者社長,事業グループ担当執行役又は財務担当執行役といった被告の経営トップらが意図的な見かけ上の当期利益の嵩上げの実行や費用・損失計上の先送りの実行又はその継続を認識したのに,中止や是正の指示をしなかったこと,幹部職員等の担当者らもまた, 行役といった被告の経営トップらが意図的な見かけ上の当期利益の嵩上げの実行や費用・損失計上の先送りの実行又はその継続を認識したのに,中止や是正の指示をしなかったこと,幹部職員等の担当者らもまた, 被告の経営トップら又は社内カンパニーのトップらが有している見かけ上の当期利益の嵩上げという目的のもとで,不適切な会計処理を実行し又は継続してきたことなどを挙げた。 ⑵ 本件有価証券報告書等の訂正の概要ア被告が提出した本件有価証券報告書等には,「売上高」,「継続事業からの税金 等調整前当期純利益(損失)」(継続事業税引前当期純損益),「当社株主に帰属する当 期純利益(損失)」(当期純損益),「株主資本」の各期の通期の数値について,別紙8過年度修正額等一覧のうち①欄から⑤欄までに記載のとおりの記載が存在した(甲12から31までの各枝番の1)。 なお,被告は,その携帯電話事業について第172期に,光学ドライブ事業について第175期にそれぞれ非継続事業となったこと,第173期中にランディス・ギア 社を買収し,第174期中にIBM社のリテール・ストア・ソリューション事業部を買収したことから,本件訂正報告書の提出以前の段階において,継続事業税引前当期純損益につき,第171期から第174期までの数値についての非継続事業に関する組替えと事業買収に関する組替えに伴う訂正,当期純損益につき,第173期及び第174期の数値についての事業買収に関する組替えに伴う訂正,売上高につき,第1 71期から第174期までの数値についての非継続事業に関する組替えと事業買収に関する組替えに伴う訂正,株主資本につき,第173期及び第174期の数値についての事業買収に関する組替えに伴う訂正を行い,第175期有価証券報告書の数値のうち,少なくとも第 関する組替えと事業買収に関する組替えに伴う訂正,株主資本につき,第173期及び第174期の数値についての事業買収に関する組替えに伴う訂正を行い,第175期有価証券報告書の数値のうち,少なくとも第一部【企業情報】第1【企業の概況】1【主要な経営指標等の推移】⑴連結経営指標等記載の数値は,これらの訂正が反映されたものだった(甲1 3から31まで(枝番含む),別紙8①欄から⑤欄までの数値の推移を参照。)。 このため,第171期から第174期までに係る数値について,各期の有価証券報告書等の提出時以降,第175期有価証券報告書の提出に至るまで,上記の訂正が行われたものについては,各期の有価証券報告書等の提出時の各期の数値と第175期有価証券報告書における各期の数値とに差が生ずることとなった。 イ被告は,平成27年9月7日,本件訂正報告書を提出した。これは,「売上高」,「継続事業からの税金等調整前当期純利益(損失)」(継続事業税引前当期純損益),「当社株主に帰属する当期純利益(損失)」(当期純損益),「株主資本」の項目について,別紙8⑥欄記載のとおりの数値に修正することを含むものであった(甲12から16までの各枝番の2)。 第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑤欄)と,本件 訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑥欄)との差額は,別紙8⑦欄に記載のとおりである。 ⑶ 第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑤欄)と,本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑥欄)との差額に影響を与えた会計処理等 被告において本件訂正報告書を提出する際の修正に影響を与えたものは,工事進行基準に係る会計処理,映像事業における経費計上及び部品取引に係る会計処理,P ⑥欄)との差額に影響を与えた会計処理等 被告において本件訂正報告書を提出する際の修正に影響を与えたものは,工事進行基準に係る会計処理,映像事業における経費計上及び部品取引に係る会計処理,PC事業における部品取引等に係る会計処理,半導体事業における在庫評価に係る会計処理に係る修正のほか,被告による自主チェックに伴う修正,減損損失の追加計上に伴う修正,減損損失の追加計上に伴う減価償却費に係る修正を含むものであった(乙2 8・80頁,乙29・87頁,弁論の全趣旨)。 2 争点⑴(虚偽記載の有無及び範囲)について⑴ 虚偽記載の有無についてア金商法の規定に基づいて提出される財務計算に関する書類は,一般に公正妥当であると認められる企業会計の基準に従って作成されなければならないから(金商法 193条,連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則1条1項等参照),いわゆる財務情報に関して投資者に対する不法行為責任が成立する程度の虚偽記載がされた,又は,改正前金商法21条の2第1項にいう「虚偽の記載」に当たるというためには,いずれも有価証券報告書等への虚偽記載が一般に公正妥当であると認められない不適切な会計処理に基づくものであることが必要というべきである。 イこれを本件についてみると,以下の点を指摘することができる。 証券取引等監視委員会から金商法に基づく報告命令を受けた被告が設置した特別調査委員会による調査の過程で,インフラ関連の工事進行基準適用案件において,工事原価総額が過少に見積もられ,工事損失が適時に計上されていないなどの事象が判明し,被告は,新たに第三者委員会を設置して,これに対して,工事進行基準適用 案件に係る会計処理,映像事業における経費計上に係る会計処理,半導体事業におけ 上されていないなどの事象が判明し,被告は,新たに第三者委員会を設置して,これに対して,工事進行基準適用 案件に係る会計処理,映像事業における経費計上に係る会計処理,半導体事業におけ る在庫評価に係る会計処理,PC事業における部品取引等に係る会計処理についての調査を嘱託した(前記前提事実⑷アからオまで)。第三者委員会は,調査の結果,被告において,工事進行基準適用案件で,工事原価総額の過少見積りや工事損失引当金の不計上又は過少計上による当期利益の嵩上げ,PC事業及び映像事業における部品取引で,部品取引時に認識した利益相当額(すなわちマスキング値差に係る製造原価の マイナス)の取消し処理を行わないことや,経費の計上時期を先送りすることなどによる当期利益の嵩上げ,半導体事業における営業循環過程から外れた滞留在庫(製造棚卸資産)に関して,評価損の計上をしないことなどによる当期利益の嵩上げ等,不適切な会計処理が行われていた旨の指摘を行うとともに,それらによる税金等調整前当期純損益の要修正額等を報告し(本件調査報告書。前記認定事実⑴ア),被告は,本 件調査報告書での指摘事項等も踏まえて,本件有価証券報告書等の訂正を行った(前記前提事実⑷カ,キ及びケ)。 そして,前記認定事実⑵及び⑶に加え,証拠(甲7・2頁の表1,甲16の1・2)によれば,被告は,平成27年9月7日開示及び本件訂正報告書において,第175期有価証券報告書に記載された第171期から第175期までの継続事業税引 前当期純損益(すなわち,各期に提出された本件有価証券報告書の継続事業税引前当期純損益に,事業買収に関する組替え額や非継続事業に関する組替え額を反映させたもの。別紙8⑤欄参照)に,第三者委員会要修正額,自主チェックにより修正が必要となった額,第三 券報告書の継続事業税引前当期純損益に,事業買収に関する組替え額や非継続事業に関する組替え額を反映させたもの。別紙8⑤欄参照)に,第三者委員会要修正額,自主チェックにより修正が必要となった額,第三者委員会による指摘事項に派生して修正が必要となった減損損失の追加計上及びこれに伴う減価償却費等の合計額を反映して,本件訂正報告書のとおり の継続事業税引前当期純損益(別紙8⑥欄参照)を公表した。 第三者委員会は,日本弁護士連合会の定めるガイドラインに準拠した被告と利害関係のない弁護士及び公認会計士という第三者を構成員として設置され,その調査結果をまとめた本件調査報告書においても必要かつ十分な資料の収集及び調査の実施を踏まえて詳細な検討が加えられており,過年度の会計処理の不適正さについての 理由やその発生原因について具体的に明らかにするものであるから(甲6),本件調 査報告書の内容は十分信用できるものである。 ウ以上の事実からすると,本件有価証券報告書等の過年度訂正であって,原告らから虚偽記載である旨の主張がある旨の勘定科目のうち,第171期から第175期までの有価証券報告書及び第172期第1四半期から第176期第3四半期までの四半期報告書(すなわち本件有価証券報告書等)に記載のある,各期の通期の継続事 業税引前当期純損益について,少なくとも,第175期有価証券報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の継続事業税引前当期純損益額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の継続事業税引前当期純損益額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)のうち,組替えの影響を反映する前の額と本件訂正報告書の額との差額 (別紙8⑩欄参照)の範囲内の額 の各期の通期の継続事業税引前当期純損益額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)のうち,組替えの影響を反映する前の額と本件訂正報告書の額との差額 (別紙8⑩欄参照)の範囲内の額については,上記において指摘した工事進行基準適用案件に係る会計処理,映像事業における経費計上や部品取引に係る会計処理,PC事業における部品取引や経費計上に係る会計処理,半導体事業における在庫評価に係る会計処理に起因して修正を要したものであり,いずれも一般に公正妥当であると認められない不適正な会計処理に起因するものであるとして,虚偽記載に該当すると推 認するのが相当である。 エまた,原告らが指摘する虚偽記載の項目のうち,第171期から第175期までの各期の通期の当期純損益については,当期純損益が,継続事業税引前当期純損益から法人税等を控除し,非継続事業からの被支配持分控除前当期純損益を加減算し,被支配持分に帰属する当期純損益を控除した数値であること(乙28・80頁),売上 高については,本件調査報告書の「本調査における連結会計年度別修正額」欄(甲6・20頁)において,工事進行基準適用案件及び経費計上に係る会計処理に起因して修正が必要とされていること,株主資本については,一般に,当期純利益が変動した場合の影響は,株主資本を構成する利益剰余金にも及ぶと考えられることからすると,本件有価証券報告書等に記載のある,各期の通期の当期純損益,売上高,及び株主資 本についても,少なくとも,第175期有価証券報告書に記載された第171期から 第175期までの各期の通期の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)の差額(別紙8⑦欄記載の額)のうち,組替えの 第175期までの各期の通期の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)の差額(別紙8⑦欄記載の額)のうち,組替えの影響を反映する前の額と本件訂正報告書の額との差額(別紙8⑩欄参照)の範囲内の額については,いずれも不適正な会計処理に起因するものであるとして,虚偽記載に該当すると推認するのが相当である。 ⑵ 組替えに伴う数値の訂正についてこれに対して,組替えに伴う数値の訂正については,以下のとおり,虚偽記載に該当すると認められない。 ア非継続事業に関する組替えに伴う訂正について前記認定事実⑵アに加え,証拠(甲13から16までの各枝番の1)及び弁論の全 趣旨によれば,被告の携帯電話事業について,第171期有価証券報告書の提出日(平成22年6月23日)においては,非継続事業ではなかったが,第172期において非継続事業となったこと,被告の光学ドライブ事業について,第171期から第174期までの有価証券報告書の提出日においては,非継続事業ではなかったが,第175期において非継続事業となったことから,いずれも第175期有価証券報告書の提 出までに,遡及的に数値の組替えが行われたことが認められる。 そして,前記認定事実⑵アのとおり,これらの組替えは,平成27年9月7日に提出された本件訂正報告書においてされたものではなく,平成26年6月25日に提出された第175期有価証券報告書において既に反映されていたものである。 以上の事実を踏まえると,非継続事業に関する組替えは,第三者委員会の指摘する 不適切な会計処理を理由として行われたものではないことが明らかであるところ,原告らから,非継続事業に関する組替えが不適切な会計処理であった旨の積極的な立証 する組替えは,第三者委員会の指摘する 不適切な会計処理を理由として行われたものではないことが明らかであるところ,原告らから,非継続事業に関する組替えが不適切な会計処理であった旨の積極的な立証もされていないから,上記組替えに伴う訂正が虚偽記載に該当すると認めることはできない。 イ事業買収に関する組替えに伴う訂正について 前記認定事実⑵アに加え,証拠(甲15及び16の各枝番の1)及び弁論の全趣旨 によれば, 被告が,第173期中にランディス・ギア社を買収したが,第174期にその事業買収について米国会計基準に基づく取得金額の資産及び負債への配分が完了したため,第174期有価証券報告書において,第173期の数値を遡及的に組み替えて表示したこと,第174期中に米国法人IBM社のリテール・ストア・ソリューション事業を買収し,第175期有価証券報告書において,第174期の数値を遡 及的に組み替えて表示したことが認められる。 そして,前記認定事実⑵アのとおり,上記2件の事業買収に関する組替えは,平成27年9月7日に提出された本件訂正報告書においてされたものではなく,平成26年6月25日に提出された第175期有価証券報告書において既に反映されていたものである。 以上の事実を踏まえると,上記2件の事業買収に関する組替えは,第三者委員会の指摘する不適切な会計処理を理由として行われたものではないことが明らかであるところ,原告らから,上記2件の事業買収に関する組替えが不適切な会計処理であった旨の積極的な立証もされていないから,上記組替えに伴う訂正が虚偽記載に該当すると認めることはできない。 ⑶ 減損損失の追加計上による訂正について被告は,第175期有価証券報告書に記載された第171期から第175期までの 上記組替えに伴う訂正が虚偽記載に該当すると認めることはできない。 ⑶ 減損損失の追加計上による訂正について被告は,第175期有価証券報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)の差額(別紙8⑦欄記載の額)には,虚偽記載には該当しない減損損失の追加計上による訂正が含まれると ころ,かかる影響額を控除すれば訂正比率(訂正前の金額に占める,訂正額の割合)は一層小さいものとなり,重要な事項についての虚偽記載とはいえない旨主張するため,虚偽記載が重要な事項についてのものであるかを検討する前提として,減損損失の追加計上による訂正が,前記⑴エの推認を覆すものであるか否かを検討する。 ア証拠(乙35)によれば,減損損失の追加計上のプロセス及び本件において減 損損失を計上した経緯等について,以下の事実が認められる。 減損損失の追加計上のプロセス等(乙35)被告は,連結財務諸表を米国会計基準に準拠して作成しているところ,米国会計基準において,減損損失の追加計上は以下のプロセスに従って行われる。 a 減損(長期性資産(又はそのグループ)の帳簿価額が公正価値を超えている状況のこと)の兆候の把握 ある長期性資産について,その帳簿価額が回収不能となるおそれがあるという事象や状況変化があること,例えば,長期性資産が使用されている営業活動から生ずる当期の損益又はキャッシュフロー(その資産が生み出す資金の流れで,資金収入から資金支出を差し引いたもの)がマイナスとなった場合で,かつ,過年度から継続して生じている場合又は将来的にも継続してマイナスが生ずると予測される状況を減損の その資産が生み出す資金の流れで,資金収入から資金支出を差し引いたもの)がマイナスとなった場合で,かつ,過年度から継続して生じている場合又は将来的にも継続してマイナスが生ずると予測される状況を減損の 兆候といい,これを把握する。 b 減損損失を認識するかどうかの判定(減損テスト)減損の兆候があると認められた長期性資産について,減損テストを行う。減損損失は,長期性資産の帳簿価額が,回収不能(すなわち,当該長期性資産が生み出す割引前の将来キャッシュフローの総額が,当該長期性資産の帳簿価額を下回る場合)であ って,かつ,その公正価値を超過している場合(すなわち,当該長期性資産の帳簿価額が当該長期性資産の割引後将来キャッシュフローを上回る場合)にのみ認識するものとされる。なお,将来キャッシュフローとは,問題となる資産に直接関連し,かつ,当該資産の残存耐用年数に応じた(当該資産の)利用からの直接的な結果として生ずるものであって,当該資産の最終処分から生ずるものも含まれ,その見積りは,企業 に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定や予測に基づいて行われる。また,公正価値とは,問題となる資産について,(減損損失の)測定日において市場参加者の間の秩序ある通常の取引を行った場合に,当該資産の売却によって受け取るであろう価格のことであり,その見積りは,長期性資産の将来キャッシュフローを現在価値に割り引いた後の額を用いて行われる。 c 減損損失の測定 減損損失を認識することが必要と判定された長期性資産について,減損損失として計上する金額(当該長期性資産の帳簿価額が当該長期性資産の公正価値を超過する額)を算定する。 d 減損損失の配分減損損失が認識された長期性資産の帳簿価額を公正価値にまで減額し, 損損失として計上する金額(当該長期性資産の帳簿価額が当該長期性資産の公正価値を超過する額)を算定する。 d 減損損失の配分減損損失が認識された長期性資産の帳簿価額を公正価値にまで減額し,その減額分 を減損損失として計上する。 本件において減損損失の追加計上が行われた事業及びその経緯等a アナログ・イメージングIC事業(以下「AIジ」という。なお,半導体事業について不適切な会計処理があるとされた被告の社内カンパニーであるS&S社の事業である(甲6・248頁)。) (a) 訂正前の処理平成23年度の決算に当たり,平成24年2月頃から減損の要否の検討が開始され,減損の兆候があると判断されたため,減損テストが実施された。そして,AIジにおける主要な長期性資産の平均残存耐用年数が10年であったため,平成24年度中期経営計画の営業損益をもとに,当該長期性資産の10年分の将来キャッシュフローの 見積額を算定したところ,2031億8400万円であった一方で,帳簿価額は473億8000万円であったため,結局,減損損失の計上は不要と判断された。 (b) 訂正後の処理決算の訂正に当たり,第三者委員会指摘事項等を反映し,減損テストについても再度見直しが行われた。そして,平成24年度から平成26年度までについては本件調 査報告書に基づく修正後の実績見込値を,平成27年度以降については同年度中期経営計画の初年度の営業損益に減価償却費と新規投資額を加減算した数値を用いて平成23年度末における10年分の将来キャッシュフローを算定したところ,その額はマイナス1億円となった。このように割引前の将来キャッシュフローがマイナスであったため,割引後の将来キャッシュフローを算定するまでもなく,同年度に,長期性 ュフローを算定したところ,その額はマイナス1億円となった。このように割引前の将来キャッシュフローがマイナスであったため,割引後の将来キャッシュフローを算定するまでもなく,同年度に,長期性 資産の帳簿価額である473億8000万円を全額減損することとし,同額の減損損 失が追加計上された。また,平成24年度以降に新規に取得した長期性資産については,四半期ごとに減損損失が追加計上された。 b ロジックLSI事業(以下「Lジ」という。なお,半導体事業について不適切な会計処理があるとされた被告の社内カンパニーであるS&S社の事業である(甲6・248頁)。) (a) 訂正前の処理平成23年度の決算に当たり,平成24年2月頃から減損の要否の検討が開始され,減損の兆候があると判断されたため,減損テストが実施された。そして,Lジにおける主要な長期性資産の平均残存耐用年数が6年であったため,平成24年度中期経営計画の営業損益をもとに,当該長期性資産の10年分の将来キャッシュフローの見積 額を算定したところ,567億8000万円であった一方,帳簿価額は32億1500万円であったため,結局,減損損失の計上は不要と判断された。 (b) 訂正後の処理決算の訂正に当たり,第三者委員会指摘事項等を反映し,減損テストについても再度見直しが行われた。そして,平成24年度及び平成25年度については訂正後の営 業損益を,平成26年度については本件調査報告書に基づく修正後の実績見込値を,平成27年度以降については同年度中期経営計画の初年度の営業損益を用いて平成23年度末における10年分の将来キャッシュフローを算定したところ,その額はマイナス101億円となった。このように割引前の将来キャッシュフローがマイナスであったため,割 初年度の営業損益を用いて平成23年度末における10年分の将来キャッシュフローを算定したところ,その額はマイナス101億円となった。このように割引前の将来キャッシュフローがマイナスであったため,割引後の将来キャッシュフローを算定するまでもなく,同年度に,長期 性資産の帳簿価額である32億1500万円を全額減損することとし,同額の減損損失が追加計上された。また,平成24年度以降に新規に取得した長期性資産については,四半期ごとに減損損失が追加計上された。 cPC事業(a) 訂正前の処理 平成20年度の決算に当たり,PC事業について減損の兆候の有無が検討されたと ころ,平成19年度の営業損益はプラス411億7800万円,平成20年度の営業損益はプラス145億円となっており,さらに平成20年度に策定した平成21年度中期経営計画においては,同年度の営業損益はプラス200億円の見込みであったことなどから,減損の徴候はないと判断され,減損損失の計上は行われなかった。 (b) 訂正後の処理 決算の訂正に当たり,第三者委員会指摘事項等を反映した結果,平成20年度から平成25年度の営業損益は,平成22年度を除きマイナスとなったことから,平成20年度当時から減損の兆候が生じていたものとして訂正を行うこととされ,同年度に210億1900円の減損損失が追加計上された。また,平成21年度以降に新規に取得した長期性資産については,四半期ごとに減損損失が追加計上された。 d 映像事業(a) 訂正前の処理平成20年度の決算に当たり,平成21年2月頃から減損の要否の検討が開始されたが,映像事業が平成19年度末に,それまで2期連続で営業損益がマイナスであったことなどを理由に,監査法人から,減損の兆候があると判断さ の決算に当たり,平成21年2月頃から減損の要否の検討が開始されたが,映像事業が平成19年度末に,それまで2期連続で営業損益がマイナスであったことなどを理由に,監査法人から,減損の兆候があると判断される可能性が高い事 業部としてヒアリング対象に指定されていたため,減損の兆候の有無の判断を省略して,減損テストが実施された。そして,映像事業における主要な長期性資産の平均残存耐用年数が5年であったため,平成21年度から平成23年度については平成21年度中期経営計画の営業損益に減価償却費と新規投資額を加減算し,平成24年度以降については上記計画の3年目の営業損益,新規投資額,減価償却費をそのまま用い て当該長期性資産の5年分の将来キャッシュフローの見積額を算定したところ,448億8700万円であった一方で,帳簿価額は207億4900万円であったため,結局,減損損失の計上は不要と判断された。 (b) 訂正後の処理決算の訂正に当たり,第三者委員会指摘事項等を反映した結果,平成20年度から 平成25年度の映像事業の営業損益は継続して赤字となったため,長期性資産の帳簿 価額を全額減損することとされた。その結果,平成20年度に207億4900万円の減損損失が追加計上された。また,平成21年度以降に新規に取得した長期性資産については,四半期ごとに減損損失が追加計上された。 減損損失の追加計上の額 事業についての,第175期有価証券報告書に記載された 第171期から第175期までの各期の継続事業税引前当期純損益の通期の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の継続事業税引前当期純損益の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に含まれる,減損損 額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の継続事業税引前当期純損益の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に含まれる,減損損失の追加計上の額は以下のとおりである(乙30から34まで)。 a 第171期AIジ計上なしLジ計上なしPC事業 45億3100万円映像事業 44億2300万円 合計 89億5400万円b 第172期AIジ計上なしLジ計上なしPC事業 50億1900万円 映像事業 53億7100万円合計 103億9000万円c 第173期AIジ 473億8000万円Lジ 32億1500万円 PC事業 32億7000万円 映像事業 51億5700万円合計 590億2200万円d 第174期AIジ 161億3000万円Lジ 42億5100万円 PC事業 46億4100万円映像事業 9億3500万円合計 259億5700万円e 第175期AIジ 46億4700万円 Lジ 44億2300万円PC事業 46億1100万円映像事業 19億4000万円合計 156億2100万円イ検討 被告は,減損損失の追加計上は,訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきであったことを理由に行ったものではないから,減損損失の追加計上に伴う訂正部 156億2100万円イ検討 被告は,減損損失の追加計上は,訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきであったことを理由に行ったものではないから,減損損失の追加計上に伴う訂正部分は虚偽記載に該当しない旨主張し,被告の経理担当者は,保守的な想定として,AIジ及びLジについては,平成24年度中期経営計画,映像事業については,平成21年度中期経営計画に基づく割引前の将来キャッシュフローに,第三者委員会の指摘 を踏まえた営業損益の訂正額を反映しても,いずれも長期性資産が生み出す割引前の将来キャッシュフローの総額が,当該長期性資産の帳簿価額を上回っていた旨,PC事業については,平成21年度中期経営計画の同年度から平成23年度の営業損益の見込みに,第三者委員会の指摘を踏まえた営業損益の訂正額を反映しても,3年間の営業損益の合計が平成20年度末の長期性資産の帳簿価額を上回っていた旨を陳述 (乙35参照)する。 しかしながら,前記認定事実⑴のとおり,半導体事業,PC事業及び映像事業においては,いずれも不適正な会計処理により当期利益が嵩上げされていたものであって,当期利益が嵩上げされていた際に作成された中期経営計画に基づく将来キャッシュフロー(又は営業損益)の見積りは,企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定や予測に基づいて行われたものとはいえないし,現に,その後の実績等を踏ま えた結果,全てについて,減損損失を追加計上することになったことにも鑑みれば,上記中期経営計画の合理性にもかなり疑問があるところであり,そのような計画に基づく割引前の将来キャッシュフローという将来予測値に,営業損益の訂正額という実績値を反映させただけで,直ちに,訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきではなかったと であり,そのような計画に基づく割引前の将来キャッシュフローという将来予測値に,営業損益の訂正額という実績値を反映させただけで,直ちに,訂正前の各決算時点において減損損失を認識すべきではなかったと評価するのは困難である。 そして,当たって,第三者委員会指摘事項を踏まえて訂正した訂正後の営業損益をもとに,過去の決算時点における将来キャッシュフローの見積りの妥当性を再検討したうえで,当時における将来キャッシュフローの見積りが不合理であると判断した上で,長期性資産が生み出す割引前の将来キャッシュフローの総額が,当該長期性資産の帳簿価額を下回るか否か を再検証したわけでもない。 そうすると,減損損失の追加計上に伴う訂正について,前記⑴ウ及びエの虚偽記載の推認を覆すに足りるほど事情があるとまでは認められず,上記訂正部分が虚偽記載に該当しないとの被告の主張は採用できない。 ⑷ その他の理由による訂正について 前記認定事実⑶のとおり,第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に影響を与えるものは,上記において検討した減損損失の追加計上に係る修正以外にも存在するため,これらの修正分も含めて虚偽記載に該当するかを検討する。 ア減損損失追加計上に伴う減価償却費について 前記認定事実⑶のとおり,第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に影響を与えるものには,減損損失追加計上に伴う減価償却費が含まれるところ,減損損失に伴う減価償却費がいかなる理由 書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に影響を与えるものには,減損損失追加計上に伴う減価償却費が含まれるところ,減損損失に伴う減価償却費がいかなる理由により行われたものかをうかがわせる主張立証はなされておらず,前記⑴ウ及 びエの虚偽記載の推認は覆されていないから,減損損失追加計上に伴う減価償却費に係る訂正部分は虚偽記載に該当するものと認めるのが相当である。 イ自主チェックによる訂正について前記認定事実⑶のとおり,第175期有価証券報告書に記載された各期の各費目の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された各期の各費目の額(別紙 8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)に影響を与えるものには,第三者委員会委嘱案件以外のうち,被告独自の自主チェックによる訂正が含まれるところ,証拠(甲7)によれば,自主チェックには,新日本有限責任監査法人による監査手続及び内部通報により検証が必要であった案件のうち,海外の連結子会社における水力発電所建設に係る工事進行基準適用案件で引当金の計上時期が不適切であったもの, 及び製造委託先で発生した一部費用について引当金の計上の必要性が認識されたものを含むことが認められる。そうすると,上記自主チェックによる訂正について,前記⑴ウ及びエの虚偽記載の推認を覆すに足りるほどの事情があるとまでは認められないから,その訂正部分は虚偽記載に該当するものと認めるのが相当である。 ⑸ 第三者委員会委嘱案件のうち,被告が一部修正を不要とした映像事業及びPC 事業の経費処理について被告は,第三者委員会委嘱案件のうち,被告が一部修正を不要とした映像事業及びPC事業の経費処理が存在するため(甲7・3頁),第三者委員会が指摘した額の全てが虚 C 事業の経費処理について被告は,第三者委員会委嘱案件のうち,被告が一部修正を不要とした映像事業及びPC事業の経費処理が存在するため(甲7・3頁),第三者委員会が指摘した額の全てが虚偽記載であるとはいえない旨主張する。しかしながら,本件において,虚偽記載であると認められるのは,第171期から第175期までの有価証券報告書及び第1 72期第1四半期から第176期第3四半期までの四半期報告書(すなわち本件有価 証券報告書等)に記載のある,各期の通期の継続事業税引前当期純損益,当期純損益,売上高及び株主資本についての第175期有価証券報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑤欄記載の額)と,本件訂正報告書に記載された第171期から第175期までの各期の通期の額(別紙8⑥欄記載の額)との差額(別紙8⑦欄記載の額)のうち,原告らが指摘する範囲内の額であるところ, その額には被告が一部修正を不要とした映像事業及びPC事業の経費処理は含まれないものと考えられるから,上記の被告の主張は虚偽記載の範囲に関する判断に影響を及ぼすものではない。 3 争点⑵(虚偽記載が重要な事項についてのものであるかについて)⑴ 有価証券報告書に虚偽記載が存在した場合に,これが重要な事項についてのも のであるか否かは,当該虚偽記載が投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであったか否かを基準として判断すべきである。そこで,上記で虚偽記載があるとされたものが重要な事項についてのものに当たるといえるかについて,以下検討する。 ⑵ア継続事業税引前当期純損益について投資者は,投資判断に当たっては,企業の収益力に着目するものであるところ,継 続事業税引前当期純損益は,企業の収益力に関連する指標で 下検討する。 ⑵ア継続事業税引前当期純損益について投資者は,投資判断に当たっては,企業の収益力に着目するものであるところ,継 続事業税引前当期純損益は,企業の収益力に関連する指標であるから,重要な事項についてのものであるといい得る。 そして,第171期から第175期までの各期の訂正金額及び訂正比率(訂正前の金額(すなわち第175期有価証券報告書に記載された各期の金額)に占める訂正額の割合)は別紙8⑦及び⑧欄記載のとおりであるところ,第171期,第173期及 び第174期の継続事業税引前当期純利益の過大計上額は最低でも400億円を超え,訂正比率も,いずれも最低でも50%を超えていることからすると,これらの期に係る虚偽記載は,投資者の投資判断に重大な影響を与えるものといえる。他方,第172期及び第175期については,訂正前の数値よりも訂正後の数値の方が大きい,いわゆる逆粉飾となっている。有価証券報告書の虚偽記載が重要な事項に該当するか 否かは,前述したとおり,当該虚偽記載が投資者の投資判断に重大な影響を与えるも のであったか否かを基準とすべきであるから,逆粉飾に当たる虚偽記載であっても,その訂正額や訂正比率が相応のものであれば,投資者の投資判断に重大な影響を与えることに変わりはない。したがって,逆粉飾であることが,株式の取得に係る損害を発生させたといえるか否かを損害論(因果関係論)で考慮することはあり得ても,そのことから直ちに重要な事項についての虚偽記載には当たらないということはでき ない。もっとも,本件において,第172期及び第175期の訂正比率が最大でも約4%を下回るものであることからすると,これらの期に係る虚偽記載が投資者の投資判断に与える影響は限定的であるといわざるを得ない。 したがっ 件において,第172期及び第175期の訂正比率が最大でも約4%を下回るものであることからすると,これらの期に係る虚偽記載が投資者の投資判断に与える影響は限定的であるといわざるを得ない。 したがって,継続事業税引前当期純損益については,第171期,第173期及び第174期の通期の金額について,重要な事項についての虚偽記載があると認められ る。 イ当期純損益について当期純損益は,企業の現在の収益力を直接的に示すもので,投資者の投資判断に与える影響が大きい指標である。そして,第171期から第175期までの各期の訂正金額及び訂正比率は別紙8⑦及び⑧欄記載のとおりであるところ,第171期から第 175期までの各期に係る訂正金額は最低でも90億円を超え,訂正比率も最も低いものでも14.86%に及ぶことから,いずれの虚偽記載も投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであり,これらの期に係る虚偽記載は,重要な事項についての虚偽記載であると認められる。なお,第172期及び第175期についてはいわゆる逆粉飾であるところ,そのことから直ちに重要な事項についての虚偽記載に当たらない といえないことは,既に説示したとおりである。 ウ売上高について売上高は,企業の収益力に関連するもので,投資者の投資判断に与える影響が大きい指標である。そして,第171期から第175期までの各期の訂正金額及び訂正比率は別紙8⑦及び⑧欄記載のとおりであるところ,第171期から第175期までの 各期に係る訂正比率はいずれも1%未満であることからすると,投資者の投資判断に 与える影響は限定的であるといわざるを得ない。 したがって,売上高については,重要な事項についての虚偽記載があるとは認められない。 エ株主資本について株主 投資者の投資判断に 与える影響は限定的であるといわざるを得ない。 したがって,売上高については,重要な事項についての虚偽記載があるとは認められない。 エ株主資本について株主資本は,純資産額の一部であるところ,純資産額は,当該企業がこれまで株式 を発行して集めた資金や,当該企業がこれまで内部に留保した利益等の計算上の合計値であって,投資者の投資判断に与える影響が大きい指標である。そして,第171期から第175期までの各期の訂正金額及び訂正比率は別紙8⑦及び⑧欄記載のとおりであるところ,第171期から第175期までの各期に係る訂正金額は最も低いものでも742億円を超え,訂正比率は最も低いものでも8.5%を超えるものであ ることからすると,これらの期に係る虚偽記載は,投資者の投資判断に重大な影響を与えるものであり,これらの期に係る虚偽記載は,重要な事項についての虚偽記載であると認められる。 ⑶ 以上の検討によれば,本件有価証券報告書等には重要な事項についての虚偽記載があると認められる(以下,上記⑵において認定した範囲の虚偽記載を「本件虚偽 記載」という。)。 なお,被告は,証券取引等監視委員会の金融庁に対する課徴金納付命令勧告や金融庁による課徴金納付命令の対象となるのは,重要な事項につき虚偽記載がある場合であり,金商法上,この場合には,必ず,課徴金納付が命じられることとされているが,本件有価証券報告書等のうち,課徴金納付命令等において重要な事項についての虚偽 記載の内容とされたのは,第171期,第173期及び第174期の有価証券報告書に記載された当該事業年度の当期純損益のみであるから,それ以外の継続開示書類には,いずれも投資者の投資判断に重要な影響を与える虚偽記載は存在しなかった旨主張する 73期及び第174期の有価証券報告書に記載された当該事業年度の当期純損益のみであるから,それ以外の継続開示書類には,いずれも投資者の投資判断に重要な影響を与える虚偽記載は存在しなかった旨主張する。しかしながら,課徴金納付命令等は,行政上の判断であって,裁判所の判断を拘束するものではないから,課徴金納付命令等において重要な事項についての虚偽 記載の内容とされたのが,第171期,第173期及び第174期の有価証券報告書 に記載された当該事業年度の当期純損益のみであるからといって,裁判所において,それ以外にも重要な事項についての虚偽記載が存在したとの判断をすることが妨げられるものではない。 4 争点⑶(不法行為の成否)について⑴ 原告らは,①被告の個々の従業員の認識を問題とすることなく,法人そのもの の不法行為責任が認められることを前提に,被告自身において,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠って虚偽記載のある本件有価証券報告書等を提出したものであるとして,②仮に,被告の個々の従業員,役員の認識を基にしたとしても,被告の元役員らに対する責任追及訴訟において,被告が,その経営トップらの不適切な会計処理により,虚偽記載 が存在したことを自認していることをもって,被告の故意又は過失は認められるとして,被告が原告らに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うと主張する。 ⑵ 法人については,①法人自身が業務遂行に関わる者の行為を介することなく直接不法行為責任を負うことが明定されている場合(民法717条1項,製造物責任法3条等)を除けば,②法人の代表者(会社法350条等)又は被用者(民法715条) の加害行為により他人に損害を被らせた場合にはじめて 負うことが明定されている場合(民法717条1項,製造物責任法3条等)を除けば,②法人の代表者(会社法350条等)又は被用者(民法715条) の加害行為により他人に損害を被らせた場合にはじめて不法行為責任を負うのが原則である。もっとも,③法人の一個の組織体としての行動の結果として,他人の生命身体等の重要な法益が侵害されており,代表者又は被用者の誰かに過失があることが明らかである場合においては,業務遂行に関わる代表者や被用者個人の行為や過失を個別に問題とすることなく,法人が民法709条により不法行為責任を負うべきもの とされることもあり得るというべきである。 ⑶ これを本件についてみると,本件虚偽記載の原因となった不適切な会計処理は,被告代表者社長,事業グループ担当執行役又は財務担当執行役といった被告の経営トップらが意図的な見かけ上の当期利益の嵩上げの実行や費用・損失計上の先送りの実行又はその継続を認識したのに,中止ないし是正を指示しなかったこと,幹部職員等 の担当者もまた,被告経営トップら又は社内事業部のトップらが有している見かけ上 の当期利益の嵩上げという目的のもとで,不適切な会計処理を実行し又は継続してきたことが原因となったというべきであり(前記認定事実⑴イ),いわば,被告の一個の組織体としての行動として,不適切な会計処理が行われてきたとみることができる。 そして,その結果として,重要な事項についての虚偽記載がある本件有価証券報告書等が提出された結果,投資者の財産権という重要な法益が侵害され,かつ,少なくと も上述した者の誰かに過失があることは明らかである。 ⑷ したがって,業務遂行に関わる代表者や被用者個人の行為や故意又は過失を個別に問題とすることなく,法人としての被告は,有価証券報告書等の提出に も上述した者の誰かに過失があることは明らかである。 ⑷ したがって,業務遂行に関わる代表者や被用者個人の行為や故意又は過失を個別に問題とすることなく,法人としての被告は,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽記載がないように配慮すべき注意義務を怠ったものとして,原告らに対して直接民法709条に基づく損害賠償責任を負うというべきであ る。 5 争点⑷(不法行為に基づく請求についての損害論)について⑴ 本件虚偽記載と相当因果関係のある損害の内容有価証券報告書等に虚偽記載がされている(振替株式たる)上場株式を取引所市場において取得した投資者が,当該虚偽記載により被った損害とは, する振替株式の性格を踏まえつつ,いわゆる差額説の見地から,賠償額算定時,すなわち口頭弁論終結時から回顧して,対象となる期間中の取引を総体として評価して,上記投資者に生じたといえる上記虚偽記載と相当因果関係のあるものをいうものと解するのが相当である。 そして,虚偽記載があったとしても株式を取得していた蓋然性が高い場合,投資者 は,虚偽記載がなかった場合の株式の価値を超える余分な金銭等を支出したことによって損害を被るから,虚偽記載がされて真実の情報が反映されていないことによって不当に価値が高く評価された株式価値相当分(以下「高値分」という。)が損害となることは明らかである。さらに加えて,虚偽記載の発覚という事実から信用毀損等が生じ,さらに投資者の過剰反応が生ずること(以下,これらを「ろうばい売り等」とい う。)については予見可能性があるといえるから,ろうばい売り等から生ずる株価の 下落についても虚偽記載という不法行為によって通常生ずる損害というべきである。 したがって,本件虚偽記載と相当因果関係のあ は予見可能性があるといえるから,ろうばい売り等から生ずる株価の 下落についても虚偽記載という不法行為によって通常生ずる損害というべきである。 したがって,本件虚偽記載と相当因果関係のある損害は,基本的には,高値分及びろうばい売り等から生ずる損害として把握されることになる。 ⑵ 高値分及びろうばい売り等から生ずる損害額の算定について上記⑴のとおり,本件虚偽記載と相当因果関係のある損害は,基本的には,高値分 とろうばい売り等から生ずる損害として把握されるところ,これは,本件虚偽記載が発覚して株価が下落する過程で顕在化し,その下落分に反映されていくものと考えられる。そこで,①まず,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を認定し,②その後,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落期間内において,本件虚偽記載と無関係な要因によると認め られる下落分があると認められる場合にはそれを考慮して,上記損害を算定するのが相当である。 もっとも,高値分とろうばい売り等から生ずる損害は,本件虚偽記載と相当因果関係のある期間の株価の下落分に反映されているとはいえるものの,その反映の程度を直接把握することは難しく,加えて,本件のように,複数期にわたる虚偽記載が存在 し,期ごとにその程度も異なるような場合,被告株式の取得時期によって高値分が異なることはもとより,本件虚偽記載が発覚した後のろうばい売り等により生ずる株価の下落分に対する影響度も異なると考えられることから,高値分及びろうばい売り等から生ずる損害額を正確に認定することは極めて困難である。そこで,上記損害は,本件虚偽記載により発生したことは明らかであるが,損害の性質上その額を立証する ことが極めて困難なときに当た 売り等から生ずる損害額を正確に認定することは極めて困難である。そこで,上記損害は,本件虚偽記載により発生したことは明らかであるが,損害の性質上その額を立証する ことが極めて困難なときに当たるものであり,民訴法248条を適用して相当な損害額を認定するのが相当である。 ⑶ 本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲について(前記⑵の①関係)ア本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係の ある株価の下落の範囲は,本件虚偽記載に起因する株価下落の期間内における下落分 に近似すると考えられるので,この下落分を把握する(下記イ)。もっとも,この下落分には,損害賠償請求の対象となる被告株式の取得価額に照らして,本件虚偽記載と無関係な要因によるものが含まれ得ると考えられ(下記ウa),また,投資者が虚偽記載により被った損害は,いわゆる差額説の見地から,賠償額算定時,すなわち口頭弁論終結時から回顧して把握されるべきものであるから,損害賠償請求の対象となる被 告株式の実際の処分価額が上記の期間の終期における株価より高い場合には,上記処分価額を基準に損害を把握する必要があると考えられる(下記ウb)。したがって,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲は,下記イで把握した下落分について,下記ウの修正をしたものとして捉えられるべきである。 イ本件虚偽記載に起因する株価下落の始期及び終期並びにその期間内における下落分被告は,平成27年4月3日にインフラ関連の工事進行基準適用案件に係る会計処理について,調査を必要とする事項が判明したため,特別調査委員会を設置する旨を公表したところ,同日時点で512 る下落分被告は,平成27年4月3日にインフラ関連の工事進行基準適用案件に係る会計処理について,調査を必要とする事項が判明したため,特別調査委員会を設置する旨を公表したところ,同日時点で512.4円であった被告株式の株価は,同月6日には 487.4円に下落し,その後若干の上げ下げを伴いつつも,被告が,第三者委員会を設置して調査を委嘱することを公表した同年5月8日においても,483.3円であり,同年4月3日の水準に戻ることはなかった(前記前提事実⑷イ,ウ,⑻,別紙6)。 そして,平成27年5月8日開示によって,被告が,特別調査委員会による調査の 結果,第三者委員会を設置して調査を委嘱すること,平成26年度の決算発表を6月以降に先送りすること,平成27年3月13日を基準日とする株式配当を無配と決定したことを公表した後,株価は急落し,同年5月11日時点の被告株式の株価は403.3円となった(前記前提事実⑷ウ,⑻,別紙6)。 被告株式の株価は,一旦は450円程度にまで回復したが,平成27年7月上旬頃 に,被告の不適切会計の規模が1500億円を超える可能性がある旨の報道がされる と,急落し,同月16日には369.3円にまで達した。その後,同年8月下旬には380円台まで値を戻したが,第176期有価証券報告書の(延長後の)提出期限である同月31日の期限が再延長となったことが報道されると,株価は再び下落を始め,関東財務局に本件訂正報告書が提出された同年9月7日には352.7円となった。 (甲42,前記前提事実⑻,別紙6) 以上によれば,本件虚偽記載の原因となった不適切会計の可能性が公表された平成27年4月3日から,少なくとも,本件訂正報告書の提出により,本件虚偽記載が訂正され,原告らも本件虚偽記載と相当因果関係が 以上によれば,本件虚偽記載の原因となった不適切会計の可能性が公表された平成27年4月3日から,少なくとも,本件訂正報告書の提出により,本件虚偽記載が訂正され,原告らも本件虚偽記載と相当因果関係がある被告株式の株価下落の終期であるとする同年9月7日までは,被告自身による公表や不適切な会計処理等に関する報道に反応して,株価が形成されていたことが認められる。 したがって,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と因果関係のある期間の始期は平成27年4月3日,終期は同年9月7日と認めるのが相当であり,上記期間の下落分は,159.7円(512.4円-352.7円)となる。 ウ取得価額や処分価額に照らした修正a 取得価額に照らした修正 本件で損害賠償請求の対象となる株式は,本件虚偽記載の発覚前に取得されているところ,本件の事実関係の下で,取得価額が512.4円よりも高い場合については,取得価額と512.4円との差額は,本件虚偽記載と無関係に上昇していたにすぎないと考えるのが相当であるから,本件虚偽記載と相当因果関係のある損害ということはできず,また,取得価額が512.4円よりも低い場合についても,取得価額と5 12.4円との差額は,本件虚偽記載と無関係に下落していたにすぎないと考えるのが相当であるから,本件虚偽記載と相当因果関係のある損害ということはできない。 したがって,後者の場合には,取得価額に照らして,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を修正する必要がある。 b 処分価額に照らした修正 前記アで判示したとおり,投資者が虚偽記載により被った損害は,いわゆる差額説の見地から,賠償額算定時,すなわち口頭弁論終結時から回顧して把握 ある。 b 処分価額に照らした修正 前記アで判示したとおり,投資者が虚偽記載により被った損害は,いわゆる差額説の見地から,賠償額算定時,すなわち口頭弁論終結時から回顧して把握されるべきものであるから,損害賠償請求の対象となる被告株式が本件虚偽記載に起因する株価下落の終期である平成27年9月7日の被告株式の株価(352.7円)より高い価格で処分された場合,損害額の算定に当たっては,その処分価額が考慮されるべきであ る。 したがって,処分価額が352.7円を超える場合には,実際の処分価額に照らして,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を修正する必要がある。 c 小括 以上のa及びbの修正をまとめると,本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を求める算式は以下のとおりとなる。 Ⅰ 取得価額<512.4円,かつ,処分価額<352.7円の株式:取得価額-352.7円 Ⅱ 取得価額<512.4円,かつ,処分価額≧352.7円の株式:取得価額-処分価額Ⅲ 取得価額≧512.4円,かつ,処分価額<352.7の株式:512.4円-352.7円Ⅳ 取得価額≧512.4円,かつ,処分価額≧352.7の株式: 512.4円-処分価額(以下,上記算式によって求められる額(ただし,その額がマイナスになる場合には0とする。)を「公表後下落額」という。)⑷ (平成27年4月3日から同年9月7日までの間の)他事情(本件虚偽記載と無関係な要因)によると認められる下落分(前記⑵の②関係) ア原告らは,本件虚偽記載と無関係な要因による下落分の立証責任は,被告にあ 9月7日までの間の)他事情(本件虚偽記載と無関係な要因)によると認められる下落分(前記⑵の②関係) ア原告らは,本件虚偽記載と無関係な要因による下落分の立証責任は,被告にあ る旨主張するが,不法行為に基づく損害賠償請求の場面において,損害額の立証責任は,原告側が負うから,その一環として,虚偽記載と無関係な要因による下落分の立証責任も原告側にあるというべきである。そして,本件において,原告らから,本件虚偽記載と無関係な要因による下落分の具体的な主張,立証はないので,被告の反証としての主張,立証も踏まえつつ,本件虚偽記載と無関係な要因によると認められる 下落分の有無及び範囲を判断することとする。 イ市場要因による株価下落 被告は,被告が特別調査委員会の設置に関するお知らせと題するプレスリリースをした平成27年4月3日の被告株式の終値は512.4円であったところ,被告が本件訂正報告書を提出した旨を公表した同年9月7日の被告株式の終値は352. 7円であり,この間,被告株式の株価は下落傾向にあったものの,①日経平均株価は,平成27年4月3日の終値が1万9435円08銭であったのに対し,同年9月7日の終値は1万7860円47銭であり,この間に約8%下落しているから,当該期間の被告株式の株価の下落のうち8%(512.4円×8%=41円)は,一般的な市場要因によるものであること,②被告の属する大手電機・重電産業のうち,被告と同 様に中国向け売上比率の高いシャープら5社の株式の株価は,平成27年4月3日から同年9月7日までの間において,平均して23%下落していたから,被告株式の株価の下落(31%)のうち,少なくとも,上記5社の株価の下落と重なる部分については,電機産業の事業環境の悪化による下落であり,具体 月7日までの間において,平均して23%下落していたから,被告株式の株価の下落(31%)のうち,少なくとも,上記5社の株価の下落と重なる部分については,電機産業の事業環境の悪化による下落であり,具体的には,平成27年4月3日の被告株式の株価の終値512.4円の23%に相当する117.9円は,虚偽記 載とは無関係な要因による下落であるものであると主張し,さらに③東証33業種別株価指数(電気機器)の上記期間の下落率が23.83%であったことも指摘する。 証拠(甲41)によれば,平成27年4月3日以降の被告株式の株価の推移について,次のとおり認められる。 【平成27年4月3日終値】 512.4円 【平成27年9月7日終値】 351.7円 【下落額】 159.7円【下落率】 31%また,証拠(乙8)によれば,日経平均株価の推移について,次のとおり認められる。 【平成27年4月3日終値】 19435.08円 【平成27年9月7日終値】 17860.47円【下落額】 1574.61円【下落率】 8%さらに,証拠(乙9から13まで)によれば,シャープら5社の株式の平成27年4月3日以後株価について,次のとおり認められ,それらの株価の推移及び同日の株 価を基準(100)とした株価の比率(変動率)について,別紙7記載のとおり認められる。 a シャープ株式会社(乙9)【平成27年4月3日終値】 231円【平成27年9月7日終値】 164円 【下落額】 67円【下落率】 29%b 株式会社 終値】 231円【平成27年9月7日終値】 164円 【下落額】 67円【下落率】 29%b 株式会社日立製作所(乙10)【平成27年4月3日終値】 831.4円【平成27年9月7日終値】 632円 【下落額】 199.4円【下落率】 24%c 三菱電機株式会社(乙11)【平成27年4月3日終値】 1467.5円【平成27年9月7日終値】 1137.5円 【下落額】 330.0円 【下落率】 22%d パナソニック株式会社(乙12)【平成27年4月3日終値】 1565.5円【平成27年9月7日終値】 1248.5円【下落額】 317.0円 【下落率】 20%e 三菱重工業株式会社(乙13)【平成27年4月3日終値】 667.1円【平成27年9月7日終値】 539.7円【下落額】 127.4円 【下落率】 23%また,証拠(乙47)によれば,東証33業種別株価指数(電気機器)の推移について,次のとおり認められる。 【平成27年4月3日から同年9月7日までの最高値】 2304.77円【平成27年4月3日から同年9月7日までの最低値】 1755.51円 【下落額】 549.26円【下落率】 23.83%前記からす 低値】 1755.51円 【下落額】 549.26円【下落率】 23.83%前記からすると,確かに,日経平均株価及びシャープら5社の株式の株価並びに東証33業種別株価指数(電気機器)について,平成27年4月3日の株価又は数値と同年9月7日の株価又は数値とを比較すると,これらは下落傾向にあったこと が認められる。しかしながら,平成27年4月3日から同年9月7日までの値下がりが本件虚偽記載とは無関係の市場要因又は業界要因による値下がりであるか否かを判断するには,より進んで,上記期間の株価の変動率を検討したうえで,株価の推移状況が,被告株式の株価の動きと連動するものであるかを検討する必要があると考えられる。 そこで,証拠上,上記期間の株価が明らかであるシャープら5社の株式の株価につ いて検討すると,被告株式の株価及びシャープら5社の株式の株価の平成27年4月3日以降の推移について,同日の株価を基準(100)とした株価の比率(変動率)も加味してみると,被告株式の株価は,平成27年4月3日には512.4円であったのが,市場の翌営業日で同月6日には487.4円に下落し(変動率は95.12%),その後は,同年5月8日にかけては,小幅な上昇及び下落をみせつつも変動率は9 3%から96%の間で推移した。他方,シャープら5社の株式の株価については,平成27年4月3日から同年5月8日について,株式会社日立製作所の株式を除いては株価が上昇傾向にあり,その変動率は104%から111%台である。 また,平成27年5月8日以降についてみると,被告株式の同日の株価は483. 3円であったのに対し,同月11日の株価は403.3円にまで 価が上昇傾向にあり,その変動率は104%から111%台である。 また,平成27年5月8日以降についてみると,被告株式の同日の株価は483. 3円であったのに対し,同月11日の株価は403.3円にまで急落し,変動率は7 8.71%となった。これに対し,シャープ株式会社の株式を除いては,同月8日から同月11日にかけて株価が急落したものは見当たらない。 そして,平成27年5月11日から同年6月5日にかけての被告株式の株価の変動率は,78%から87%程度で推移し,徐々に回復の傾向も見せている。他方,シャープら5社の株式については,シャープ株式会社のそれを除き,概ね株価は上昇の傾 向となっており,変動率はいずれも100%を超えている。 さらに,平成27年6月8日以降の株価をみると,被告株式の株価は全体として下落傾向にあり,同日時点で88.37%であった変動率は同年9月7日においては68.84%にまで下落した。シャープら5社の株式については,シャープ株式会社の株式の下落幅は小さいものの,それ以外の4社の株式については,平成27年6月8 日時点で100%を超えていた変動率が,同年9月7日時点では76%から80%台にまで下落し,全体として下落傾向にあったことがうかがえる。 以上の傾向に鑑みると,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価下落の期間のうち,概ね前半の2箇月程度株価の推移状況は,被告株式の株価が下落傾向にある一方でシャープら5社の株式の大半の株価は下落傾向にはなかったこと,平成27年5月8日 に被告が第三者委員会を設置して調査を委嘱すること,平成26年度の決算発表を6 月以降に先送りすること,平成27年3月13日を基準日とする株式配当を無配と決定したこと等を公表したことを受けて,被告株式の株価が急落したと考えられ 嘱すること,平成26年度の決算発表を6 月以降に先送りすること,平成27年3月13日を基準日とする株式配当を無配と決定したこと等を公表したことを受けて,被告株式の株価が急落したと考えられる一方で,シャープら5社の株式の大半の株価は上昇傾向にあったことに照らすと,被告株式の株価の動きはシャープら5社の株式の株価の動きと連動するものではないことが明らかである。他方,後半については,その変動幅に差があるものの,シャープら 5社の株式の株価の動きと被告株式の株価の動きとの間には一定の相関関係が認められる。 そうすると,平成27年4月3日から同年9月7日までの間の被告株式の株価の下落の一定程度は,本件虚偽記載の発覚とは無関係な市場要因が被告株式の株価形成に影響を及ぼしたというべきであり,上述した事実関係からすれば,このような市 場要因による被告株式の株価の下落分はシャープら5社の株式の株価の少なくとも公表後下落額の30%は存在すると認められるから,これを公表後下落額から控除するのが相当である。 ウ第三者委員会要修正額以外の訂正による株価下落前記2⑵において検討したとおり,第三者委員会要修正以外の訂正のうち,虚偽記 載に該当しないものは,非継続事業に関する組替えと事業買収に関する組替えの影響額であり,各期の組替えの影響額は,別紙8の⑨欄記載のとおりである。また,本件における,本件有価証券報告書等の過年度決算訂正に係る訂正金額に含まれる組替えの影響額の割合は,別紙8⑪欄に記載のとおりである。 前記3⑵及び⑶で判示したところによれば,本件虚偽記載の範囲は,継続事業税引 前当期純損益については第171期,第173期及び第174期,当期純損益及び株主資本については第171期から第175期までと認められるところ,そ ろによれば,本件虚偽記載の範囲は,継続事業税引 前当期純損益については第171期,第173期及び第174期,当期純損益及び株主資本については第171期から第175期までと認められるところ,それらに対応する本件有価証券報告書等の過年度決算訂正に係る訂正金額に含まれる組替えの影響額の割合は,継続事業税引前当期純損益については-7.65%から5.58%までの範囲内,当期純損益については-5.18%から0%までの範囲内,株主資本に ついては-2.55%から0%までの範囲内であるから,いずれも投資者の投資判断 や株価形成に与える影響は極めて限定的であるといえ,虚偽記載とは認められない組替えの影響額に対応する値下がり分が生じたとまでは認めることができない。したがって,組替えの影響額を考慮した公表後下落額からの控除はしない。 エ平成28年12月15日以降の株価の下落について被告は,平成28年12月15日時点で保有が継続されていた被告株式については, 少なくとも,1株当たりの損害としては,「取得価額(ただし,取得価額が512.4円を超えるものについては,512.4円)-475円」が上限となると主張し,その理由として,同日に1株当たり475円まで回復するに至った株価は,同月27日に,被告のグループ会社であるウェスチングハウス社について,同社が平成27年12月31日に買収したCB&Iストーン&ウェブスター社の資産価値が想定額を下 回り,被告の業績に影響を及ぼす可能性があることを公表したために(乙37参照),平成28年12月26日に1株当たり443.1円であった被告株式の株価は,同月29日には258.7円まで下落したものであり,同月15日以降の株価下落は,原告らの主張する虚偽記載とは無関係な要因に起因するものであることを 日に1株当たり443.1円であった被告株式の株価は,同月29日には258.7円まで下落したものであり,同月15日以降の株価下落は,原告らの主張する虚偽記載とは無関係な要因に起因するものであることを挙げる。 しかしながら,上記⑵及び⑶で判示したとおり,高値分とろうばい売り等から生ず る損害は,①本件虚偽記載の発覚前後の株価の下落のうち,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落の範囲を認定し,②その後,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価の下落期間(平成27年4月3日から同年9月7日まで)内において,本件虚偽記載と無関係な要因によると認められる下落分があると認められる場合にはそれを考慮して,上記損害を算定するのが相当であるところ,被告の主張する要因は,上 記期間の後に生じたものであるから,高値分とろうばい売り等から生ずる損害の認定に当たって考慮されないというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 ⑸ 被告株式の取得時期や虚偽記載の程度に応じた調整ア本件において,原告らは,本件虚偽記載がある本件有価証券報告書等が公衆の 縦覧に供されている間,被告株式を継続的に取得しているところ(前記前提事実⑶), 原告らが被告株式を取得した後に公衆の縦覧に供された有価証券報告書の虚偽記載は,上記の取得時の被告株式の株価には影響していない以上,当該虚偽記載により生ずる株価の下落は,上記の被告株式に係る損害とは無関係であるといえる。他方で,有価証券報告書は5年間公衆の縦覧に供されるものであるから(金商法25条1項4号),原告らが取得した被告株式の株価の下落に影響する虚偽記載は,被告株式を取 得した際に公衆の縦覧に供されていた最新の有価証券報告書等に係るものに限られず,それ以前に公衆の縦覧に供されていた 号),原告らが取得した被告株式の株価の下落に影響する虚偽記載は,被告株式を取 得した際に公衆の縦覧に供されていた最新の有価証券報告書等に係るものに限られず,それ以前に公衆の縦覧に供されていた有価証券報告書等に係るものも含まれるが,その影響度は,取得時期からどの程度前のものかという点や,虚偽記載の内容・程度によって変わり得るものと考えられる。そうすると,被告株式の取得時期に応じて原告らに生じた損害額は異なると考えられるから,本件有価証券報告書の縦覧期間ごと に損害を算定する必要がある。 イ第175期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成26年6月25日から平成27年4月3日までの間(以下「縦覧期間E」という。)前記⑶及び⑷で判示した本件虚偽記載と相当因果関係のある被告株式の株価の下落の範囲(公表後下落額)から,本件虚偽記載とは相当因果関係のない市場要因によ る下落分として,(公表後下落額の)30%相当額を控除した額(以下「調整後下落額」という。)は,第171期から第175期までの有価証券報告書に係る本件虚偽記載の発覚による影響を反映したものであるから,原告らが縦覧期間Eの期間中に取得したと評価される被告株式については,調整後下落額をもって原告らの(1株当たりの)損害とするのが相当であるといえる。 ウ第174期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成25年6月25日から平成26年6月24日までの間(以下「縦覧期間D」という。)被告株式を取得した時期が縦覧期間Dの期間内である場合には,第175期有価証券報告書に係る本件虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになるところ,第175期の株主資本は約16%の過大計上であるものの(別紙8⑧欄), 同期の当期純損益は約18%の利益の過少 報告書に係る本件虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになるところ,第175期の株主資本は約16%の過大計上であるものの(別紙8⑧欄), 同期の当期純損益は約18%の利益の過少計上(逆粉飾)であることからすると(別 紙8⑧欄),第175期有価証券報告書に係る本件虚偽記載のみによる株価の嵩上げへの影響は極めて限定的であるとみるのが合理的である。したがって,縦覧期間Dの期間中に取得したと評価される被告株式については,縦覧期間Eで述べた調整後下落額と同額を原告らの損害とするのが相当である。 エ第173期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成24年6月22日か ら平成25年6月24日までの間(以下「縦覧期間C」という。)被告株式を取得した時期が縦覧期間Cの期間内である場合には,第174期及び第175期の有価証券報告書に係る本件虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになるところ,継続事業税引前当期純損益については,第171期が約152%の利益の過大計上,第173期が約57%の利益の過大計上であったのに対 し,第174期が約53%の利益の過大計上であり(別紙8⑧欄),当期純損益については,第171期が約173%の利益の過大計上,第172期が14%の利益の過少計上(逆粉飾),第173期が約95%の利益の過大計上であったのに対し,第174期が約82%の利益の過大計上,第175期が約18%の利益の過少計上(逆粉飾)であり(別紙8⑧欄),株主資本については,第171期が約11%の過大計上,第1 72期が8%の過大計上,第173期が約16%の過大計上であったのに対し,第174期が約20%の過大計上,第175期が約16%の過大計上であった(別紙8⑧欄)。これらの事情に加え,直近の財務情報の 72期が8%の過大計上,第173期が約16%の過大計上であったのに対し,第174期が約20%の過大計上,第175期が約16%の過大計上であった(別紙8⑧欄)。これらの事情に加え,直近の財務情報の方が株価に与える影響が大きいと考えられることも踏まえると,縦覧期間Cの期間中に取得したと評価される被告株式については,縦覧期間Eで述べた調整後下落額の60%に相当する額を原告らの損害とす るのが相当である。 オ第172期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成23年6月22日から平成24年6月21日までの間(以下「縦覧期間B」という。)被告株式を取得した時期が縦覧期間Bの期間内である場合には,第173期から第175期までの有価証券報告書に係る本件虚偽記載による株価への影響が生ずる以 前に取得したことになるところ,当期純損益については,第171期が約173%の 利益の過大計上,第172期が14%の利益の過少計上(逆粉飾)であったのに対し,第173期が約95%の利益の過大計上,第174期が約82%の利益の過大計上,第175期が約18%の利益の過少計上(逆粉飾)であり(別紙8⑧欄),株主資本については,第171期が約11%の過大計上,第172期が8%の過大計上であったのに対し,第173期が約16%の過大計上,第174期が約20%の過大計上,第 175期が約16%の過大計上であった(別紙8⑧欄)。これらの事情に加え,直近の財務情報の方が株価に与える影響が大きいと考えられることも踏まえると,縦覧期間Bの期間中に取得したと評価される被告株式については,縦覧期間Eで述べた調整後下落額の30%に相当する額を原告らの損害とするのが相当である。 カ第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日か ら平 る被告株式については,縦覧期間Eで述べた調整後下落額の30%に相当する額を原告らの損害とするのが相当である。 カ第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日か ら平成23年6月21日までの間(以下「縦覧期間A」という。)被告株式を取得した時期が縦覧期間Aの期間内である場合には,第172期から第175期までの有価証券報告書に係る本件虚偽記載による株価への影響が生ずる以前に取得したことになるところ,当期純損益については,第171期が約173%の利益の過大計上であったのに対し,第172期が14%の利益の過少計上(逆粉飾), 第173期が約95%の利益の過大計上,第174期が約82%の利益の過大計上,第175期が約18%の利益の過少計上(逆粉飾)であり(別紙8⑧欄),株主資本については,第171期が約11%の過大計上であったのに対し,第172期が8%の過大計上,第173期が約16%の過大計上,第174期が約20%の過大計上,第175期が約16%の過大計上であった(別紙8⑧欄)。これらの事情に加え,直近の 財務情報の方が株価に与える影響が大きいと考えられることも踏まえると,縦覧期間Aの期間中に取得したと評価される被告株式については,縦覧期間Eで述べた調整後下落額の30%に相当する額を原告らの損害とするのが相当である。 ⑹ 損害賠償請求の対象となる被告株式の特定ア損害賠償請求の対象となる被告株式 有価証券報告書等に虚偽記載があったことにより被る損害は,虚偽記載のある有価 証券報告書等が公衆の縦覧に供されているときに取得した株式を有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した時以降に処分した際に現実化するものであるから,原告らによる損害賠償請求の対象となる被告株式(以下「算定 等が公衆の縦覧に供されているときに取得した株式を有価証券報告書等に虚偽記載があることが発覚した時以降に処分した際に現実化するものであるから,原告らによる損害賠償請求の対象となる被告株式(以下「算定対象株式」という。)は,虚偽記載のある有価証券報告書等の縦覧後に取得され,虚偽記載があること(又はそのおそれ)が発覚した時点までに未処分であったものであると考えられる。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告が第171期有価証券報告書を提出したのは,平成22年6月23日における取引終了後であるため,同日に取得された株式は損害賠償請求の対象となり得ず,本件において損害賠償請求の対象となる被告株式は,同月24日から第三者委員会を設置することやインフラ工事関係で不適切な会計処理が行われた可能性があることが公表された平成27年4月3日までの間に取得され, 同日の取引終了時において未処分であった株式である。 イ算定対象株式の特定方法上記のとおり,算定対象株式は,虚偽記載のある有価証券報告書等の開示後に取得され,虚偽記載があること(又はそのおそれ)が発覚した時点までに未処分であったものであると考えられるため,本件における原告らのように,虚偽記載のある有 価証券報告書等が公衆の縦覧に供された時点において,既に被告株式を保有していた場合であって,その後,虚偽記載があること(又はそのおそれ)が発覚するまでの間に,被告株式の取得及び処分を行っていたときは,損害賠償請求の対象となる被告株式の特定をする必要が生ずる。 この算定対象株式の特定方法については当事者間に争いがあり,原告らは,先入先 出法によるべきと主張する一方,被告は総平均法と同様の考え方によるべきと主張する。 そこで検討すると,被告株式のように,株券が発行されず ついては当事者間に争いがあり,原告らは,先入先 出法によるべきと主張する一方,被告は総平均法と同様の考え方によるべきと主張する。 そこで検討すると,被告株式のように,株券が発行されず,数量のみによって把握される振替株式については,株式は,没個性的な株主たる地位の割合的単位にすぎず,株式の取得及び処分は,その会社の持分割合の増減として把握される。そうす ると,個々の取得と処分とを紐付けせず,一定期間内の取得と処分とを割合的に捉え て棚卸資産の取得価額を算定するという総平均法の考え方を算定対象株式の特定に援用することは,上述した振替株式の性格と整合的なものであるということができる。 他方,先に取得したものから先に処分するという流れを想定する先入先出法の考え方は,個々の取得と処分とを紐付けるものであるが,そのような紐付けの発想が振替株式の性質と適合しない上,原告らのように多数回の売買を繰り返している投資者の 場合,現実問題としても,個々の取得と処分との対応関係は把握しがたいといわざるを得ない(なお,原告らは,被告が主張する総平均法と同様の考え方に対して,対象となる期間中に行われた株式の売却において,まだ,取得していない株式を処分したことにするフィクションとしても成立しない処理を採用していると批判するが,この批判も,個々の取得と処分とを紐付けすることを前提とするものである以上,採用で きない。)。 以上によれば,算定対象株式の特定方法として,当事者双方が先入先出法の考え方を援用すべきとしている場合はともかく,一方当事者が総平均法の考え方を援用すべきと主張している場合には,それによることが相当である。そして,総平均法の考え方を援用して算定対象株式を特定するとは,具体的には,(損害賠償請求の)対象 かく,一方当事者が総平均法の考え方を援用すべきと主張している場合には,それによることが相当である。そして,総平均法の考え方を援用して算定対象株式を特定するとは,具体的には,(損害賠償請求の)対象 期間の末日(期末)時点の保有株式数について,同期間の期首時点の保有株式数と同期間中の取得株式数で案分することにより算定対象株式の数量を求めることである。 ⑺ 具体的な損害額の算定前記⑴から⑹までにおいて検討したところによれば,以下の方法により具体的な損害額を算定するのが相当である。 ア処分総数に対する算定対象株式の割合の算定算定対象株式の数量前記⑹アのとおり,本件において,算定対象株式は,第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された後である平成22年6月24日から,第三者委員会を設置すること及びインフラ工事関係で不適切な会計処理が行われた可能性があることが公表 された平成27年4月3日までの間に取得され,かつ,同日において未処分であった ものである。 そして,総平均法の考え方を援用して算定対象株式の数量を算定する場合,以下の算式で算出するのが合理的である(なお,A及び(ア)から(ウ)までの記号は,別紙9の表1のそれに対応する。)。 算定対象株式の数量(A)=虚偽記載の発覚時(平成27年4月3日)の未処分株式 数(ア)×(損害賠償請求の)対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)における取得株式数(ウ)/(期首時点(平成22年6月24日)の保有株式数(イ)+対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)における取得株式数(ウ))また,虚偽記載発覚時の未処分株式数,期首時点の保有株式数,対象期間における 取得株式数は別紙9表1記載のとおりであり,これを基 24日から平成27年4月3日まで)における取得株式数(ウ))また,虚偽記載発覚時の未処分株式数,期首時点の保有株式数,対象期間における 取得株式数は別紙9表1記載のとおりであり,これを基に計算をすると,算定対象株式の数量(A)は,別紙9表1記載のとおりとなる。 処分総数に対する算定対象株式の割合の算定本件において,損害賠償請求の対象期間(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)後,(原告らがそれまで保有していた被告株式を一旦全部処分した)平成 29年7月31日までに処分された被告株式の総数は別紙9表2のD欄記載のとおりであり,これに対する算定対象株式の割合は,以下の算式により求めることができ,その結果は別紙9表2のH欄記載のとおりである(なお,AからHまでの記号は,別紙9表2のそれに対応する。)。 処分数に対する算定対象株式の割合(H)=算定対象株式(A)/損害賠償対象期 間後平成29年7月31日までの処分総数(D)(なお,別紙9表2のH欄記載のとおり,本来,H=F/Dであるが,同表のF欄記載のとおり,F=A×D/(D+E)であるところ,同表のE欄記載のとおり,本件でE=0であるため,結局,F=Aとなる。そこで,上記算式は,H=A/Dで示した。)イ損害賠償請求の対象期間中に取得した株式の取得単価(平均値)の算出 損害賠償請求の対象期間中に取得した株式の取得単価(平均値)は,以下の算式に より求めることが可能であり,その結果は,別紙9表3のⅢファンド別単価欄記載のとおりである(なお,ⅠからⅢまでの記号は,別紙9表3のそれに対応する。)。 ファンド別単価(Ⅲ)=損害賠償請求の対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)の株式取得数に対応する約定金額の合計(Ⅱ) ⅠからⅢまでの記号は,別紙9表3のそれに対応する。)。 ファンド別単価(Ⅲ)=損害賠償請求の対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)の株式取得数に対応する約定金額の合計(Ⅱ)/損害賠償請求の対象期間中(平成22年6月24日から平成27年4月3日まで)の株式取得数 の合計(Ⅰ)ウ取引単位(別紙9表4記載の1つ1つの取引のまとまりを指す。)ごとの控除前損害額の算出以下の区分に従い,取引単位ごとに1株当たりの損害額(公表後下落額)を算出する(ただし,取得価額は,上記イで求めたファンド別単価であるところ,本件に おいて,取得価額≧512.4円となるものは存在しない。)。計算結果は別紙9表4の1株当たりの損害額欄記載のとおりである。なお,別紙9表4において,取得単価は上記イで求めたファンド別単価を,処分単価は実際の処分価額を,修正処分単価は実際の処分単価が352.7円と同じかこれを上回る場合には実際の処分単価を,下回る場合には352.7円を意味し,修正処分単価が取得単価を上回る場合には,1 株当たりの損害額(公表後下落額)は0とする。 Ⅰ 取得価額<512.4円,かつ,処分価額<352.7円の株式:取得価額-352.7円Ⅱ 取得価額<512.4円,かつ,処分価額≧352.7円の株式:取得価額-処分価額 Ⅲ 取得価額≧512.4円,かつ,処分価額<352.7の株式:512.4円-352.7円Ⅳ 取得価額≧512.4円,かつ,処分価額≧352.7の株式:512.4円-処分価額そのうえで,取引単位ごとに,本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因に よる株価下落分と取得時期に応じた影響額分の控除前の損害額(以下「控除前損害額」 という。 4円-処分価額そのうえで,取引単位ごとに,本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因に よる株価下落分と取得時期に応じた影響額分の控除前の損害額(以下「控除前損害額」 という。)を以下の算式により算定する。 取引単位ごとの控除前損害額=1株当たりの損害額(公表後下落額)(前記ウ記載の区分により求められるもの)×取引単位別の処分数×処分数に対する算定対象株式の割合(H)(前記アにおいて求めたもの)その算定結果は,別紙9表3のⅨ控除前損害額欄記載のとおりであり,その取引単 位ごとの内訳は別紙9表4の⑩控除前損害額欄記載のとおりである。 エ本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因による株価下落分の控除前記⑷で判示したとおり,本件虚偽記載と相当因果関係のない市場要因による株価下落分は公表後下落額の30%であると認められる。したがって,上記ウで求めた控除前損害額から,上記の30%を控除する。具体的な損害額は別紙9表3のⅩ他事情 の影響の控除後欄記載のとおりである。 オ取得時期に応じた影響額分の反映前記⑸で判示したとおり,被告株式の取得時期に応じて原告らに生じた損害額は異なると考えられるから,本件有価証券報告書等の縦覧期間ごとに損害を算定する必要があるが,以下の手順により求めることが相当である。 ① 各期の有価証券報告書が公衆の縦覧に供された時期別の株式取得数を算出する(別紙9表1の(ウ①)~(ウ⑤))。 ② 時期別の取得株式数(別紙9表1の(ウ①)~(ウ⑤))/対象期間取得株式数(ウ)により,取得時期別の取得割合を算出する。 ③ 上記②で求められる取得時期別の取得割合に前記⑸で検討した取得時期に応 じた虚偽記載の影響額の割合(縦覧期間A及びBにつき30%,縦覧期間Cにつき60%,縦 時期別の取得割合を算出する。 ③ 上記②で求められる取得時期別の取得割合に前記⑸で検討した取得時期に応 じた虚偽記載の影響額の割合(縦覧期間A及びBにつき30%,縦覧期間Cにつき60%,縦覧期間D及びEにつき100%)を掛けたものを取得時期別に算出し(別紙9表1の(エ①)~(エ⑤)),これを足し合わせたものを取得時期による控除率(別紙9表1の取得時期による控除率欄参照)とする。 ④ 上記エにおいて求めた別紙9表3のⅩ他事情の影響の控除後欄記載の損害額 に取得時期による控除率(別紙9表3のⅪ欄)を乗じて,被告株式取得後の虚偽記載 に起因する株価下落分に相当する金額を控除した後の損害額を算定する(算定結果は別紙9表3のⅫ控除後損害額欄記載のとおりであり,取引単位ごとの内訳は別紙9表4の⑬控除後損害額欄記載のとおりである。)。 カ小括以上の計算過程を経て得られた損害額は,次のとおりである(別紙9表3Ⅻの控除 後損害額欄及び別紙9表4⑬の控除後損害額欄記載のとおり。)。 原告カストディa ファンド番号T01623-0004 3664万3102円b ファンド番号T01623-0012 1739万3539円c ファンド番号T01623-0013 278万6623円 d ファンド番号T01623-3042 507万0616円e ファンド番号T01623-3049 38万0857円f ファンド番号T01623-3099 3430万2972円g ファンド番号T01623-3104 1829万6870円h ファンド番号T01623-6003 438万0089円 i 合計 1億1925万4668円原告マスタートラ 623-3104 1829万6870円h ファンド番号T01623-6003 438万0089円 i 合計 1億1925万4668円原告マスタートラストa ファンド番号M159802 78万5910円b ファンド番号M300048 0円c 合計 78万5910円 ⑻ 弁護士費用相当額の損害弁護士費用相当額の損害も本件虚偽記載相当因果関係のあるものというべきところ,不法行為に基づく損害賠償の認容額など本件における一切の事情を考慮して,原告カストディにつき1192万円,原告マスタートラストにつき7万8000円を相当とする。 ⑼ 損害額合計 以上によれば,本件虚偽記載に係る不法行為に基づく損害額の合計は,原告カストディにつき1億3117万4668円,原告マスタートラストにつき86万3910円となる。 ⑽ 遅延損害金の起算点不法行為による損害賠償債務は,損害発生と同時に履行遅滞となると解されるとこ ろ(最高裁昭和37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁),前記5⑴,⑶アで判示した本件虚偽記載と相当因果関係のある損害の内容に照らせば,当該損害は,(本件のように全株式が一旦全部処分されているような事案では)本件虚偽記載が発覚した後に売却して初めて現実化するものであるというべきであるから,損害の発生は処分時であると解するのが相当である。 したがって,原告らに生じた損害のうち,原告らが遅延損害金を請求しない弁護士費用部分を除いた額について,別紙9表4の⑬控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ別紙9表4の約定日欄記載の年月日から,各支払済みまで年5分の た損害のうち,原告らが遅延損害金を請求しない弁護士費用部分を除いた額について,別紙9表4の⑬控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ別紙9表4の約定日欄記載の年月日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を認める。 6 改正前金商法21条の2第1項に基づき,かつ,同条2項の推定損害額の規定 を用いない場合の損害額(争点⑸)について(予備的請求①の関係)⑴ 予備的請求①は,改正前金商法21条の2第1項に基づく請求であり,かつ,同条2項の推定損害額の規定を用いない請求である。損害の算定に当たっての考え方については,金商法21条の3による除斥期間の適用があるため損害賠償請求の対象となる被告株式の数が異なること,請求し得る損害の中に弁護士費用相当額の損害が 含まれないこと,損害賠償の額について金商法19条1項による限度額があることを除いては,不法行為に基づく損害賠償請求の場合と基本的には同様である。 もっとも,前記5⑵のとおり,本件において,不法行為に基づく損害賠償請求の場合における損害額の算定については,民訴法248条を適用したが,改正前金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求の場合における損害額の算定について,民訴法 248条を適用することができるかはなお検討を要する。 ⑵ 改正前金商法21条の2第2項は,第1項による請求の場合における因果関係及び損害額の立証責任の負担を軽減するために導入された規定であって,請求権者において,同条2項の規定する事実を主張立証しさえすれば,同項の規定する方法で算定された額をもって虚偽記載により生じた損害額と推定され,虚偽記載以外の事情による値下がり分については,同条3項により賠償義務者がこれを主張立証することに よりはじめて上記の推定された損害額から 定された額をもって虚偽記載により生じた損害額と推定され,虚偽記載以外の事情による値下がり分については,同条3項により賠償義務者がこれを主張立証することに よりはじめて上記の推定された損害額から控除されることになっている。このような同条の構造に照らすと,同条1項の損害の発生自体は認められるものの,その損害額の立証が困難な場合には,同条2項によると解するのが同条の立法趣旨にかなうというべきである。 したがって,改正前金商法21条の2第1項に基づく損害賠償請求の場合における 損害額の算定について,民訴法248条の適用があると解するのは相当ではない。 ⑶ 本件において,前記5⑵において検討したところによれば,改正前金商法21条の2第1項の損害の発生自体は認められるものの,その損害額の立証が困難な場合に該当する。 ⑷ したがって,その余の点について検討するまでもなく,改正前金商法21条の 2第1項に基づき,かつ,同条2項の推定損害額の規定を用いない場合の請求については,損害額の立証ができていないことになるから,理由がない。 7 改正前金商法21条の2第2項による推定損害額(争点⑹)について(予備的請求②の関係)⑴ 虚偽記載の事実の公表時期 ア改正前金商法21条の2第2項にいう「虚偽記載等の事実の公表」とは,有価証券報告書等の「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」について,多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたことをいうところ(同条3項),この措置がとられたというためには,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実につい て上記措置がとられれば足りると解するのが相当である(最高裁平成24年3月13 提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実につい て上記措置がとられれば足りると解するのが相当である(最高裁平成24年3月13 日第三小法廷判決・民集66巻5号1957頁)。 イ本件についてこれをみると,被告は,平成27年5月8日開示により,特別調査委員会の調査の過程で,一部インフラ関連の工事進行基準適用案件において,工事原価総額が過少に見積もられ,工事損失(工事損失引当金を含む。)が適時に計上されていないなどの事象が判明したこと,これ以外にも,更なる調査を必要とする事項が 判明したことから,第三者委員会による調査に移行する予定であること,特別調査委員会によるこれまでの調査結果によれば,平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じていること,(前期や直前の四半期末では配当があったにもかかわらず,)平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配とする旨を取締役会で決議したこと,平成26年度通期の業績予想について,同年9月18日に公表した前回予 想を修正して未定とすることなどを公表した(前記前提事実⑷ウ)。 また,被告株式の株価の推移をみると,平成27年5月8日開示のあった同日の被告株式の株価の終値は483.3円であったのに対し,同月11日の株価は403. 3円にまで急落しており(甲41,別紙6),実際にも,平成27年5月8日開示で公表された情報が株価に大きな影響を与えたことは明らかである。 そうすると,平成27年5月8日開示によって,過年度訂正額や規模までが具体的に明らかにされたわけではないものの,工事進行基準適用案件等に不適切な会計処理があり,過年度決算の訂正を行う可能性があること,平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配と や規模までが具体的に明らかにされたわけではないものの,工事進行基準適用案件等に不適切な会計処理があり,過年度決算の訂正を行う可能性があること,平成27年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配とするなど,上述した問題が一定の規模に及ぶ可能性があることをうかがわせる事実が明らかにされていること,平成27年5月8日開示を受け て,被告株式の株価が急落したことを併せ考えると,平成27年5月8日開示で公表された情報は,被告株式に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実に当たるということができ,上記開示により,虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項について,多数の者が知り得る状態に置く措置がとられたというべきである。 したがって,平成27年5月8日開示をもって改正前金商法21条の2第2項にい う「虚偽記載等の事実の公表」があったと認めるのが相当である。 ウこれに対し,被告は,「虚偽記載等の事実の公表」があったというためには,虚偽記載の対象となった取引の相手方ないし分野が特定されており,特定された当該虚偽記載について,一部とはいえ,金額上のインパクトが明らかにされている必要がある旨主張し,平成27年5月8日開示においては,最終的に訂正の対象となった4つ の事業分野に関する会計処理の1つの分野についてしか触れられておらず,金額上のインパクトには言及がないこと,これらが明らかにされたのは,被告が平成27年7月20日開示によって本件調査報告書の要約版が開示された時点であること,株価の下落を公表の有無の判断において考慮すべきではないことを指摘する。 しかしながら,取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる情報が開示され, その結果株価が大きく値下がりしたにもかかわらず,有価証券報告書等に記載す いて考慮すべきではないことを指摘する。 しかしながら,取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる情報が開示され, その結果株価が大きく値下がりしたにもかかわらず,有価証券報告書等に記載すべき真実の情報が明らかにされないことをもって公表がないものとし,改正前金商法21条の2第2項の推定規定を適用することができないのでは投資者の保護に欠け,相当でない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 改正前金商法21条の2第2項による推定損害額 ア虚偽記載等の事実の公表日前1年以内に取得し,当該公表日において引き続き所有する株式の特定改正前金商法21条の2第2項による推定損害額の算定対象となる株式(以下「対象株式」という。)は,虚偽記載等の事実が公表された日前1年以内に取得し,当該公表日において引き続き所有するものに限られるところ,本件において,原告らは,公 表日前1年の日である平成26年5月8日から公表日前日である平成27年5月7日までの間を含む期間に被告株式の取得と処分を繰り返していたから,対象株式を特定する必要がある。そして,その特定方法としては,前記5⑹において説示した理由により,総平均法の考え方を援用して,以下の算式によることが相当である(なお,A及び(ア)から(ウ)までの記号は,別紙10表1のそれに対応する。)。 対象株式の数量(A)=公表日前日(平成27年5月7日)の未処分株式数(ア) ×平成26年5月8日から平成27年5月7日までの取得株式数(ウ)/(公表日の1年前(平成26年5月8日)時点の保有株式数(イ)+平成26年5月8日から平成27年5月7日までの取得株式数(ウ))原告らによる被告株式の取引履歴は,別紙4-1及び4-2記載のとおりであり,上記算式 平成26年5月8日)時点の保有株式数(イ)+平成26年5月8日から平成27年5月7日までの取得株式数(ウ))原告らによる被告株式の取引履歴は,別紙4-1及び4-2記載のとおりであり,上記算式に基づいて算定されたファンドごとの対象株式の数量は,別紙10表1の (A)欄記載のとおりである。 イ改正前金商法21条の2第2項による推定損害額の算定上記⑴で説示したとおり,本件において,改正前金商法21条の2第2項にいう公表日は平成27年5月8日であると認められるから,1株当たりの推定損害額は,公表日前1箇月間(同年4月8日から同年5月7日)の平均株価と,公表日後1箇月間 (同月9日から同年6月8日)の平均株価との差額となる。そして,被告株式の株価の推移は,別紙6記載のとおりであることから(前記前提事実⑻),公表日前1箇月間(平成27年4月8日から同年5月7日)の平均株価は484.98円,公表日後1箇月間(平成27年5月9日から同年6月8日。なお,ただし,公表日である同年5月8日の翌営業日は同月11日であるので,実際には,同日から同年6月8日までの 期間となる。)の平均株価は424.00円であり,その差額は60.98円となる。 したがって,原告らの推定損害額は,上記アで求めた対象株式の数量(A)×60. 98円で求めることができ,具体的な損害額は,以下のとおりである(別紙10表1の推定損害額欄記載のとおり。)。 原告カストディ a ファンド番号T01623-0004 4509万9860円b ファンド番号T01623-0012 1170万3055円c ファンド番号T01623-0013 554万5911円d ファンド番号T01623-3042 710万3174円e ファンド番号T01623- -0012 1170万3055円c ファンド番号T01623-0013 554万5911円d ファンド番号T01623-3042 710万3174円e ファンド番号T01623-3049 766万5674円 f ファンド番号T01623-3099 3387万8087円(ただし,原告カストデ ィの請求額の範囲内である3160万6210円の限度で認める。)g ファンド番号T01623-3104 2591万6500円(ただし,原告カストディの請求額の範囲内である2439万5960円の限度で認める。)h ファンド番号T01623-6003 779万0539円i 合計 1億4091万0383円 原告マスタートラストa ファンド番号M159802 1473万1087円b ファンド番号M300048 681万2745円c 合計 2154万3832円⑶ 改正前金商法21条の2第4項による減額の抗弁について ア被告は,改正前金商法21条の2第4項の「虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情」として,市場要因による株価下落と第三者委員会要修正額以外の修正に伴う株価下落とを主張するから,以下検討する。 イ市場要因について改正前金商法21条の2第2項による推定損害額は,公表日前1月間の株式の市場 価額の平均額から当該公表日後1月間の当該株式の平均額を控除した額であるから,虚偽記載等によって生ずべき当該株式の値下り以外の事情は,公表前後のそれぞれ1箇月間の市場価額に影響を及ぼすような事情のみが考慮されることになるというべきである。 そこで,証拠上,公表前後1箇月(すなわち平成27年4月8日から同年 の値下り以外の事情は,公表前後のそれぞれ1箇月間の市場価額に影響を及ぼすような事情のみが考慮されることになるというべきである。 そこで,証拠上,公表前後1箇月(すなわち平成27年4月8日から同年5月7日 までと同月9日から同年6月8日まで)の株価が明らかであるシャープら5社の株式の株価について検討する。 まず,被告株式の株価及びシャープら5社の株式の株価の平成27年4月8日から同年5月7日にかけての推移について,同月3日の株価を基準(100)とした株価の比率(変動率)によってみると,別紙7記載のとおり,被告株式の株価の変動率は, 同年4月8日において94.81%であったものが,同年5月7日においては93. 99%となり,上記の期間中も概ね93%から96%台で推移しており,当該期間を通じてみると,下落傾向にあったともいえない。シャープら5社の株式の株価については,株式会社日立製作所を除いては,若干の上昇が見られるのみであった。 また,平成27年5月9日(ただし,公表日である同月8日の翌営業日は同月11日である。)から同年6月8日にかけては,被告株式の株価は,同年5月11日には同 月8日の483.3円から403.3円にまで急落し,その後は410円前後で推移し,同年6月に入ると450円をつけるなど上昇傾向もみられた。これを変動率でみると,78%台から83%台で推移していたものが,同年5月29日において85%となり,同年6月に入ると87%を超えるようになっていた。他方,シャープら5社の株式の株価については,上記の期間の株価の推移には,シャープ株式会社を除いて は,一般的な下落傾向はみられず,むしろやや上昇傾向にあった。変動率についてみても,シャープ株式会社を除いて概ね100%を超えて推移している状況にあった。 の推移には,シャープ株式会社を除いて は,一般的な下落傾向はみられず,むしろやや上昇傾向にあった。変動率についてみても,シャープ株式会社を除いて概ね100%を超えて推移している状況にあった。 そうすると,被告株式の株価やシャープら5社の株式の株価の推移からみて,公表前後のそれぞれ1箇月間について,本件虚偽記載の公表とは無関係の市場要因が,被告株式の株価形成に影響を及ぼしたとは認められない。 したがって,市場要因を改正前金商法21条の2第4項の事情として考慮することはできない。 ウ第三者委員会要修正額以外の修正について前記5⑷イにおいて検討したとおり,第三者委員会要修正額以外の修正のうち,虚偽記載に該当しないと認める組替え分の影響額は小さく,原告らに生じた損害の額の 一部が,組替え分の訂正が反映されたことによって生じたものと認めるに足りる立証があったとはいえない。 したがって,第三者委員会要修正額以外の修正を改正前金商法21条の2第4項の事情として考慮することはできない。 ⑷ 金商法19条1項による限度額の算定 改正前金商法21条の2に基づく請求は,金商法19条1項により求められる額が 上限となる。具体的には,損害賠償を請求する時より前に有価証券を処分した場合においては,当該有価証券の取得について支払った額から当該有価証券の処分価額を控除した額(同項2号),損害賠償を請求する時において当該有価証券を保有している場合には,当該有価証券の取得について支払った額から損害賠償を請求する時における市場価額を控除した額が上限となる(同項1号)。そして,同項1号にいう「損害賠 償を請求する時」とは,裁判外の請求も含まれると解するのが相当であるところ,原告らは,平成29年3月30日に被告に到 市場価額を控除した額が上限となる(同項1号)。そして,同項1号にいう「損害賠 償を請求する時」とは,裁判外の請求も含まれると解するのが相当であるところ,原告らは,平成29年3月30日に被告に到達した同月28日付けの書面により,被告に対して,損害賠償請求権を行使する旨を明示している(甲9の1・2,10の1・2)。したがって,同月30日が,上記の「損害賠償を請求する時」に当たると認めるのが相当である。 もっとも,原告らは,被告株式の取得と処分を繰り返していたから,総平均法の考え方を援用して,以下の方法によって,「被告株式の取得について支払った額」,「被告株式の処分価額」,「損害賠償を請求する時における(被告株式の)市場価額」を算出するのが相当である。 ア被告株式の取得について支払った額 公表日前1年間(平成26年5月8日から平成27年5月7日)に取得した株式の総数(別紙10表3の①欄)とこれに対応する約定金額(別紙10表3の②欄)からファンド別に平均単価(α)(別紙10表3の③欄)を算出し,これに対象株式の数量(別紙10表3の④欄)を乗じた額(別紙10表3の⑤欄)を被告の取得について支払った額と認めるのが相当である(算定結果は,別紙10表3の⑤欄記載のとおり。)。 イ控除する額(被告株式の処分価額又は損害賠償を請求するときにおける(被告株式の)市場価額)上記のとおり,(原告らが被告に対して損害賠償を請求した)平成29年3月30日が基準日となるから,同日時点で処分未了であったものとそうでないものとで区別する必要がある。 平成29年3月30日までに処分されたものについての控除する額(被告株式 の処分価額)(Ⅰ)以下の方法により算定するのが相当である。 対象株式の する必要がある。 平成29年3月30日までに処分されたものについての控除する額(被告株式 の処分価額)(Ⅰ)以下の方法により算定するのが相当である。 対象株式の数量(A)のうち平成29年3月30日までに処分された数量(F)を次の算式により求める(Fの数値の算定結果は別紙10表2記載のとおり。)。 F=対象株式の数量(A)×D(平成27年5月8日から平成29年3月30日ま でに処分した被告株式の総数)/(D+E(平成29年3月30日時点の未処分株式数))そのうえで,(F)に平成27年5月8日から平成29年3月30日までのファンド別の平均処分単価(β)を乗じたものを金商法19条1項2号の処分価額と認めるのが相当である(算定結果は別紙10表3の⑪欄記載のとおり。)。 なお,βは,平成27年5月8日から平成29年3月30日までの合計処分金額(約定金額)(別紙10表3の⑦欄)/D(平成27年5月8日から平成29年3月30日までに処分した被告株式の総数)で求められ,その算定結果は別紙10表3の⑧欄記載のとおりである。 平成29年3月30日時点で未処分のものについての控除する額(損害賠償を 請求するときにおける(被告株式の)市場価額)(Ⅱ)対象株式の数量(A)のうち平成29年3月30日時点での未処分数量(G)を次の算式により求める(Gの数値の算定結果は別紙10表2記載のとおり。)。 G=対象株式の数量(A)-対象株式の数量(A)のうち平成29年3月30日までに処分された数量(F) そのうえで,対象株式の数量(A)のうち平成29年3月30日時点での未処分数量(G)に平成29年3月30日時点の市場価額(弁論の全趣旨によれば同日の終値は228.2円である。)を乗じたものを そのうえで,対象株式の数量(A)のうち平成29年3月30日時点での未処分数量(G)に平成29年3月30日時点の市場価額(弁論の全趣旨によれば同日の終値は228.2円である。)を乗じたものを算出し,これを金商法19条1項1号の市場価額と認めるのが相当である(算定結果は別紙10表3の⑫欄記載のとおり。)。 控除する額の合計(Ⅰ+Ⅱ) 控除する額の合計は,上記ⅠとⅡの合計であり,その算定結果は,別紙10表3の ⑬欄記載のとおりである。 ウ小括以上から,金商法19条1項による限度額は,上記アで求めた金額から上記イ求めた金額を控除することにより求められる。その算定結果は,別紙10表3の⑭欄記載のとおりとなる。 ⑸ 具体的な損害額ア金商法19条1項による限度額と改正前金商法21条の2第2項の推定損害額との比較改正前金商法21条の2第2項による推定損害額(なお,同条4項による減額が認められないことは前記⑶のとおりである。)は,別紙10表1記載のとおりであり,こ れと金商法19条1項による限度額とを比較すると,いずれの推定損害額も同項による限度額の範囲内である(別紙11参照)。 なお,原告らは,複数回の取引の場合における金商法19条1項による限度額と改正前金商法21条の2第2項の推定損害額の比較方法について,個々の取引ごとに,上記推定損害額と上記限度額とを比較し,そのうち少ない方の金額を賠償額とするい わゆる個別比較法により算定するものと思われるが,振替株式制度の下では,個々の株式の個性が失われている以上,個々の取得と処分の対応関係の特定というものはあり得ず,上記方法による算定(金商法19条1項による限度額の総額と改正前金商法21条の2第2項の推定損害額の総額とを比較して小さ 個性が失われている以上,個々の取得と処分の対応関係の特定というものはあり得ず,上記方法による算定(金商法19条1項による限度額の総額と改正前金商法21条の2第2項の推定損害額の総額とを比較して小さい方を採用するいわゆる総額比較法による算定)によるのが相当である。 イ損害額以上によれば,改正前金商法21条の2第2項によった場合の損害額は次のとおりとなる(別紙11の予備的請求②の認定額欄記載のとおり。)。 原告カストディa ファンド番号T01623-0004 4509万9860円 b ファンド番号T01623-0012 1170万3055円 c ファンド番号T01623-0013 554万5911円d ファンド番号T01623-3042 710万3174円e ファンド番号T01623-3049 766万5674円f ファンド番号T01623-3099 3160万6210円g ファンド番号T01623-3104 2439万5960円 h ファンド番号T01623-6003 779万0539円i 合計 1億4091万0383円原告マスタートラストa ファンド番号M159802 1473万1087円b ファンド番号M300048 681万2745円 c 合計 2154万3832円⑹ (推定損害の場合の)遅延損害金の起算日改正前金商法21条の2は,投資者の保護の見地から,一般不法行為の規定の特則として,その立証責任を緩和した規定であると解されるから,同条所定の賠償債務は不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するというべきであり,同条に基づく損害 賠償債務は,損害の発生と同時に,かつ,何らの その立証責任を緩和した規定であると解されるから,同条所定の賠償債務は不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するというべきであり,同条に基づく損害 賠償債務は,損害の発生と同時に,かつ,何らの催告を要することなく,遅滞に陥るというべきである(最高裁平成24年3月13日第三小法廷判決・民集66巻5号1957頁)。そして,その損害は,本来,(本件のように全株式が一旦全部処分されているような事案では)本件虚偽記載が発覚した後に売却して初めて現実化するものであるというべきことは,前記5⑽において説示したとおりであるから,少なくとも, 被告株式の取得時を遅延損害金の起算日とすべきではない。 もっとも,改正前金商法21条の2第2項による推定損害額をもって虚偽記載により生じた損害の額とする場合,公表日前1年以内に株式を取得し,公表日において引き続き株式を所有する限り,公表日後に処分をせずとも,公表日前1月間の有価証券の市場価額の平均額から公表日後1月間の有価証券の市場価額の平均額を控除した 額に,公表日前1年以内に取得した株式であって,公表日において引き続き所有する ものの数量を乗じた額の損害を請求することができる。そうすると,改正前金商法21条の2第2項による推定損害額をもって虚偽記載により生じた損害の額とする場合,公表日をもって,観念的な損害が発生したとみるほかないから,公表日からの遅延損害金を求めることができると解するのが相当である。 したがって,本件における改正前金商法21条の2第1項に基づき,かつ,同条2 項の推定規定を用いる請求については,平成27年5月8日からの遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。 第4 結論以上によれば,原告カストディの主位的請求は,被告に対して1億3117万46 定を用いる請求については,平成27年5月8日からの遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。 第4 結論以上によれば,原告カストディの主位的請求は,被告に対して1億3117万4668円及びうち別紙9表4の控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ同表の 約定日欄記載の年月日から,各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,同原告の予備的請求①は理由がなく,同原告の予備的請求②は,被告に対して1億4091万0383円及びこれに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるので,まず,上記の主位的請求で理由がある部分を認容した上で,さらに,予備的請求②の元金総 額に満つるまでの金額(すなわち,予備的請求②の元金部分と主位的請求の元金部分の差額(973万5715円))及びこれに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分を追加的に認容することとする。また,原告マスタートラストの主位的請求は,被告に対して86万3910円及びうち別紙9表4の控除後損害額欄記載の各金員に対する,それぞれ同表の約定日欄記載の 年月日から,各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,同原告の予備的請求①は理由がなく,同原告の予備的請求②は,被告に対して2154万3832円及びこれに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるので,まず,上記の主位的請求で理由がある部分を認容した上で,さらに,予備的請求②の元金総額に満つるまでの金 額(すなわち,予備的請求②の元金部分と主位的請求の元金部分の差額(2067万 9922円))及びこれに対する平成 部分を認容した上で,さらに,予備的請求②の元金総額に満つるまでの金額(すなわち,予備的請求②の元金部分と主位的請求の元金部分の差額(2067万9922円))及びこれに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める部分を追加的に認容することとする。よって,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第44部 裁判長裁判官飛澤知行 裁判官三塚祐太郎 裁判官長妻彩子は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官飛澤知行
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