主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(請求の趣旨)(1) 被告が平成14年4月4日付けで原告に対してなした別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)に係る平成14年度固定資産税及び都市計画税の賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)のうち,税額6万6200円を超える部分を取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,被告から本件賦課決定を受けた原告が,本件土地は,地方税法(以下「法」という。)附則16条の2(阪神・淡路大震災に係る固定資産税及び都市計画税の特例)第1項の適用により,法349条の3の2及び法702条の3(住宅用地に対する固定資産税及び都市計画税の課税標準に関する特例)における「住宅用地」とみなされ,本件土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準は,固定資産税については課税標準となるべき価格の6分の1(法349条の3の2第2項),都市計画税については課税標準となるべき価格の3分の1(法702条の3第2項)とすべきであったにもかかわらず,本件賦課決定は法16条の2第1項の適用を排除してなされた違法があるとして,被告に対し,本件賦課決定のうち,上記特例を適用した上で算出した税額を超える部分の取消しを求めた事案である。 2 関係法令の定め(1) 住宅用地に対する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(以下「 対する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(以下「住宅用地」という。)のうち,法349条の3の2第2項各号に定める住宅用地に該当するもの(以下「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は,当該土地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の6分の1の額とされており(法349条の3の2第2項),また,小規模住宅用地に対して課する都市計画税の課税標準は,当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とされている(法702条の3第2項)。 (2) 阪神・淡路大震災に係る固定資産税及び都市計画税の特例阪神・淡路大震災により滅失し,又は損壊した家屋の敷地の用に供されていた土地で平成7年度分の固定資産税について法349条の3の2の規定の適用を受けたもの(以下「被災住宅用地」という。)のうち,平成8年度から平成17年度までの各年度に係る賦課期日において家屋又は構築物の敷地の用に供されている土地以外の土地の全部又は一部で平成7年度に係る賦課期日における当該被災住宅用地の所有者その他の政令で定める者が所有するものに対して課する平成8年度から平成17年度までの各年度分の固定資産税又は都市計画税については,当該土地を平成8年度から平成17年度までの各年度に係る賦課期日において住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合に限り,当該土地を住宅用地とみなして,法の規定を適用するとされている(法附則16条の2第1項)。 3 前提となる事実(括弧内に認定の根拠を記載したもの以外は,当事者間に争いがない。)(1) 本件土地は被災住宅 て,法の規定を適用するとされている(法附則16条の2第1項)。 3 前提となる事実(括弧内に認定の根拠を記載したもの以外は,当事者間に争いがない。)(1) 本件土地は被災住宅用地であり(弁論の全趣旨),原告は本件土地の所有者である。 (2) 被告は,平成14年4月4日付けで,原告に対し,本件土地に係る同年度固定資産税27万8611円及び都市計画税5万9702円の賦課決定(本件賦課決定)をした。 本件土地が,平成14年1月1日時点で,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」に該当しない場合は,本件土地に係る平成14年度の固定資産税は27万8611円であり,同都市計画税は5万9702円である(弁論の全趣旨)。 (3) 異議申立て及び本訴提起原告は,本件賦課決定を不服として,平成14年5月29日,被告に対し,異議申立てを行ったが,被告は,同年7月10日,本件土地が法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」に該当しないとして,同異議申立てを棄却する旨の決定をした。 そこで,原告は,上記決定を不服として,平成14年10月9日,本件訴えを提起した。 4 争点本件の争点は,本件賦課決定の適否であり,具体的には,本件土地が,平成14年1月1日時点で,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」に該当するか否かである。 5 争点に関する当事者の主張(1) 原告の主張法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができない」か否かの判断においては,租税法律主義の趣旨に照らし,市町村長の自由 に関する当事者の主張(1) 原告の主張法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができない」か否かの判断においては,租税法律主義の趣旨に照らし,市町村長の自由裁量は認められないと解すべきである。ところが,被告は,本件において「住宅用地として使用することができない」事情があったにもかかわらず,法附則16条の2第1項の適用を排除して本件賦課決定をしたものであり,同決定には違法がある。その具体的な理由は,以下のとおりである。 ア 法附則16条の2第1項の解釈「住宅用地として使用することができない」場合とは,土地所有者が当該賦課期日において当該土地を住宅用地として使用していない理由が震災の被害を理由とするやむを得ない事由による場合を意味し,また,土地所有者に住宅用地として使用する意思はあるが,上記やむを得ない事由によりその意思を実現できない場合をいうと解すべきである。 イ 本件における法附則16条の2第1項の要件該当性原告は本件土地を本籍地とし,本件土地の所在する芦屋市は原告の郷里でもあること,また,原告の母は阪神・淡路大震災発生時まで長年本件土地に居住していたことから,原告及び原告の母は,本件土地に住宅を再建して居住することを強く希望しており,本件土地を住宅用地として使用する意思を有している。しかし,原告は,現在住宅再建の資金が不足しているため,これを実現することができないのである。 したがって,原告は,本件土地を住宅用地として使用する意思を有しているが,震災の被害を背景とする資金不足というやむを得ない事由によってその意思を実現できないのであり,前記アの解釈に照らし,本件土地については,「住宅用地として使用することができない」事情が 有しているが,震災の被害を背景とする資金不足というやむを得ない事由によってその意思を実現できないのであり,前記アの解釈に照らし,本件土地については,「住宅用地として使用することができない」事情が認められるというべきである。 ウ 被告の判断の違法性ところが,被告は,原告が本件土地を貸し駐車場として使用している事実から,原告の意思その他の事情を一切確認せずに,「住宅用地として使用することができない」場合に該当しないと判断した。 しかし,住宅用地以外の用途に使用していることのみをもって法附則16条の2第1項を適用しないという被告の解釈は,被災者支援と復興に向けてインセンティブを付与するという同条の立法趣旨に反するものであるし,また,法の定めない「当該土地を他の用途に供していない場合」という要件を付加するに等しく,租税法律主義にも反する。 また,貸し駐車場としての土地使用は,容易に住宅用地に変更できる使用形態であり,将来の住宅建築に支障を生じさせるものではないから,原告が本件土地を貸し駐車場として使用しているからといって,その事実のみから,原告に本件土地を住宅用地として使用する意思がないと判断することは,合理性を欠いている。 (2) 被告の主張原告には本件土地を住宅用地として使用する意思がないため,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができない」場合に該当しないから,本件賦課決定に違法はない。その理由は,以下のとおりである。 ア 法附則16条の2第1項の解釈「住宅用地として使用することができない」場合に該当するためには,当該土地所有者において,当該土地を住宅用地として使用する意思を有していることが必要であるが,かか 条の2第1項の解釈「住宅用地として使用することができない」場合に該当するためには,当該土地所有者において,当該土地を住宅用地として使用する意思を有していることが必要であるが,かかる意思が認められるか否かは,市町村長が当該土地の現況により客観的に認定判断すべきであり,一般的には,住宅用地以外の用途で土地の使用が行われ,それが客観的に明らかな場合には,住宅用地として使用することができない特段の事情がある場合を除き,市町村長は「住宅用地として使用することができない」とは認定しないこととなる。 イ 本件における法附則16条の2第1項の要件該当性原告は,平成14年1月1日当時,本件土地を貸し駐車場として使用しており,本件土地の現況からも,貸し駐車場の看板が存在するなど貸し駐車場として使用されていることが外形的に明示されていたものであり,被告は,かかる客観的事実から,原告が本件土地を住宅用地として使用する意思を有していないと判断し,「住宅用地として使用することができない」場合に該当しないと認定したものである。 ウ 原告の主張について原告は,本件土地に居住する意思があると主張するが,仮に原告にそのような意思があるとしても,現在原告が本件土地に居住しないのは,原告が遠隔地で勤務し,今後も長期間同所で勤務する見込みであることによるものであり,震災による被害とは無関係の事情によるものというべきであるから,法附則16条の2第1項の適用を認めるべきではない。 また,原告は,現在本件土地を住宅用地として使用できないのは住宅再建の資金が不足しているためであると主張しており,これは前記アにおける特段の事情の主張と理解できる。しかし,原告が平成12年に他に居住用不動産を購入して 本件土地を住宅用地として使用できないのは住宅再建の資金が不足しているためであると主張しており,これは前記アにおける特段の事情の主張と理解できる。しかし,原告が平成12年に他に居住用不動産を購入していることなどからみて,原告に資金不足の事情がないことは明白である。 第3 当裁判所の判断 1 法附則16条の2の趣旨及び法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができない」の意義について法が阪神・淡路大震災に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準に関する特例を定めた趣旨は,阪神・淡路大震災においては,被害が甚大かつ広域であり,住宅の再建までに相当の日数を要することが予想され,その間の被災者の税負担に配慮する必要があることから,住宅が再建されるまでの間は,住宅の敷地であった土地を住宅用地とみなして,課税標準の特例措置等の法の規定を適用することとしたものと解される。その一方で,住宅用地として使用しない土地については同特例の適用を除外する必要があることから,「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」との要件を定めたものと解される。 このような法の趣旨に照らすと,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができない」場合とは,当該土地所有者が同土地を住宅用地として使用する意思を有していながら,これを実現できないことについて,やむを得ない事由が存する場合(例えば,がれき等の処理が遅れて物理的に住宅を建築できない場合,当該土地を巡る権利関係の調整に時間を要し,住宅を建築できない場合,経済的事情により住宅の建築に一定の時間を要する場合など)をいうと解するのが相当である。そして,かかる土地所有者の意思及びやむを得ない事由の有無については,市町村長が,当該土地の具体的な使用状況,当該土地に住宅を り住宅の建築に一定の時間を要する場合など)をいうと解するのが相当である。そして,かかる土地所有者の意思及びやむを得ない事由の有無については,市町村長が,当該土地の具体的な使用状況,当該土地に住宅を建築することについての物理的,経済的ないしは法律的な障害の有無,当該土地所有者が他の土地に住宅を建築しているか等の諸事情をもとに個別に判断すべきものと解される。 もっとも,当該土地所有者の意思は,客観的な諸事情から推知すべきものであり,その際重要な判断要素となるのは当該土地の使用状況であると考えられるから,市町村長は,当該土地が住宅用地以外の用途に使用されていることが客観的に明らかな場合には,特段の事情がない限り,「住宅用地として使用することができない」場合に該当しないと判断をすることができるというべきである。 2 本件における法附則16条の2第1項の要件該当性について(1) 事実の認定証拠(甲1・2,甲4~7,乙3)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア 原告(昭和16年10月生)は,昭和27年から昭和41年まで本件土地が所在する兵庫県芦屋市に居住し,昭和34年から昭和41年まで本件土地上の建物に居住していた。 原告は,昭和41年に大蔵事務官(国税庁職員)として奉職し,A国税不服審判所長を最後に退職した後,平成8年4月以降,福岡県B市内の賃貸マンションに妻及び実母の3人で居住し,C大学法学部教授(租税法専攻)の地位にある(甲5,芦屋市の平成14年11月15日付け意見書添付の資料①②)。 原告は,引き続きC大学で教鞭をとれば,平成23年にC大学を定年退職となる。 イ 本件土地上には居住用建物が建っていたが,平成7年1月17日の阪神・淡路大震災により上 ①②)。 原告は,引き続きC大学で教鞭をとれば,平成23年にC大学を定年退職となる。 イ 本件土地上には居住用建物が建っていたが,平成7年1月17日の阪神・淡路大震災により上記建物が損壊したため,同建物が取り壊され,以後本件土地は更地の状態にある。 本件土地は,平成14年1月1日(本件賦課決定の賦課期日)当時は勿論のこと,現在も,砂利で整地され,トラロープにより駐車スペースを区切られていて,その周囲がフェンスで囲まれ,同フェンスには,駐車場名,仲介業者の名称,連絡先及び駐車場部会に加盟している旨を表示した看板が設置されている(乙3)。原告は,本件土地を貸し駐車場用地として使用している。 ウ 原告は,平成5年3月,横浜市a区b町内のマンション(床面積93.21㎡)を購入し,さらに,平成12年6月,横浜市c区d町内のマンション(床面積58.56㎡,原告持分3分の2,原告妻持分3分の1)を購入し,現在も上記2つのマンションを所有している(甲6・7)。 (2) 検討ア 前記(1)イの事実によると,本件土地は,平成14年1月1日(本件賦課決定の賦課期日-地方税法359条参照)当時,典型的な貸し駐車場としての外観を有し,現に,原告は,本件土地を駐車場用地として使用していたことが認められる。 したがって,本件土地は,平成14年1月1日当時,「住宅用地以外の用途に使用されていることが客観的に明らかな場合」に当たる。 イ そして,次の各事実に照らせば,本件土地が,「住宅用地として使用することができない場合」に該当すると判断できる「特段の事情」があるものとは認められない。 (ア) 原告は,平成8年から現在まで,福岡県B市内の賃貸マンションに妻及び実母と して使用することができない場合」に該当すると判断できる「特段の事情」があるものとは認められない。 (ア) 原告は,平成8年から現在まで,福岡県B市内の賃貸マンションに妻及び実母と居住し,C大学教授の地位にあり,引き続きC大学で教鞭をとれば,平成23年に定年退職となる(前記(1)ア)。 そのため,原告は,現時点は勿論のこと,近い将来においても,福岡県B市から遠く離れた本件土地(芦屋市所在)上に自宅を建てて,本件土地を住宅用地として使用する差し迫った必要性がなく,現に,原告の主張によるも,原告が本件土地上に自宅を建てる具体的な計画があるなどの事情はうかがわれない。 (イ) 原告は,平成5年3月,横浜市a区b町内のマンション(床面積93.21㎡)を購入し,さらに,平成12年6月,横浜市c区d町内のマンション(床面積58.56㎡,原告持分3分の2,原告妻持分3分の1)を購入して,現在も上記2つのマンションを所有している(前記(1)ウ)。 以上の事実に照らせば,原告は,平成23年にC大学を定年退職した後は,妻や実母とともに故郷である芦屋市に戻り,本件土地に自宅を建てて住むのではなく,むしろ,かねてからの生活設計どおり,横浜市に戻り,妻や実母と横浜のマンションに住むのではないかとさえ想像を巡らすことができる。 (ウ) 原告は,現在本件土地を住宅用地として使用できないのは,住宅再建の資金が不足しているためであると主張する。 しかし,原告は,平成5年3月,横浜市内にマンションを購入したのに,更に平成12年6月にも,横浜市内でもう一つのマンションを購入しており(前記(1)ウ),原告が,現在,本件土地を住宅用地として使用できないのは,住宅再建資金が不足している マンションを購入したのに,更に平成12年6月にも,横浜市内でもう一つのマンションを購入しており(前記(1)ウ),原告が,現在,本件土地を住宅用地として使用できないのは,住宅再建資金が不足しているためであるとは,到底認められない。 もし,原告が本件土地を住宅用地として使用する真摯な意思があるのなら,平成12年6月,横浜市内でもう一つのマンションを購入することなどはせず,その資金で,本件土地に居住用建物を建築したものと思われる。それゆえ,原告の上記主張は採用できない。 ウ 以上の認定判断によると,原告が,本件土地を住宅用地として使用する意思を有していながら,これを実現できないことについて,やむを得ない事由が存するものとは認められず,本件土地については,平成14年1月1日時点で,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」の要件を満たさないものと認める。 エ なお,兵庫県企画管理部長の照会に対する平成15年4月7日付け総務省自治税務局固定資産税課長回答(乙2の1)によると,同課長は,法附則16条の2第1項の解釈について,「『住宅用地として使用することができない』とは,市町村長が個々の具体的な状況を総合的に判断して認定されるものである。一般的には,別の用途で利用が行われそれが客観的に明らかな場合については,住宅用地として使用することができない特段の事情がある場合を除き,市町村長は認定しないことになる。」旨の見解を示しており,同見解に照らしても,本件土地については法附則16条の2第1項の要件を満たさないことが明らかであるといえる。 第4 結論 1 以上によると,本件土地は,平成14年1月1日時点で,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができな 6条の2第1項の要件を満たさないことが明らかであるといえる。 第4 結論 1 以上によると,本件土地は,平成14年1月1日時点で,法附則16条の2第1項にいう「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合」に該当しないので,本件土地に係る平成14年度の固定資産税は27万8611円であり,同都市計画税は5万9702円である。 2 よって,本件土地に係る平成14年度の固定資産税を27万8611円,同都市計画税を5万9702円とする本件賦課決定は適法であり,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官今中秀雄裁判官五十嵐章裕
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