平成23年6月2日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第11115号商標権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成23年5月9日判決原告株式会社マタハリー同訴訟代理人弁護士椙山敬士同市川 穣同片山史英被告神友商事株式会社同訴訟代理人弁護士小原 望同古川智祥同妹尾 悟同訴訟復代理人弁護士近藤素子 主文 1 被告は,娯楽施設の役務の提供に当たって使用する看板,ポスター,広告,チラシ,案内板,店舗で使用するシール,POP,会員カード及びウェブサイトにおいて,別紙被告標章目録記載の各標章を使用してはならない。 2 被告は,別紙被告標章目録記載の各標章を付した看板,ポスター,広告,チラシ,案内板,店舗で使用するシール,POP及び会員カードを破棄し,ウェブサイト上の別紙被告標章目録記載の各標章を削除せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決の第1項及び第2項(ただし,第2項については,ウェブサイトにおける標章の削除に係る部分に限る。)は,仮に執行することができ る。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決の第1項及び第2項(ただし,第2項については,ウェブサイトにおける標章の削除に係る部分に限る。)は,仮に執行することができ る。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 主文第1ないし第3項と同旨(2) 主文第1項及び第2項につき仮執行宣言 2 被告(1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,パチンコ店,ゲームセンター,カラオケ店及びアミューズメントパーク等の経営を目的とする会社である。 被告は,土地,建物の賃貸借,ボーリング場及び遊技場の経営等を目的とする会社である。 (2) 原告の商標権原告は,次の商標登録(以下「本件商標登録」といい,その登録商標を「本件登録商標」という。)に係る商標権(以下「本件商標権」という。)を有している。 登録番号第4164651号登録日平成10年7月10日更新登録日平成20年3月18日出願日平成8年2月26日指定商品及び役務の区分第41類 指定役務娯楽施設の提供ほか登録商標別紙原告商標目録記載のとおり(3) 被告の行為ア被告は,兵庫県伊丹市〈以下略〉において「PIA」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗1」という。)を,同市〈以下略〉において「PIA-Ⅱ」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗2」という。)を,同市〈以下略〉において「PIAWORLD」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗3」という。)を,兵庫県宝塚市〈以下略〉 て「PIA-Ⅱ」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗2」という。)を,同市〈以下略〉において「PIAWORLD」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗3」という。)を,兵庫県宝塚市〈以下略〉において「PIACenterP-1」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗4」という。)を,同市〈以下略〉において「PIACenterP-2」という名称のパチンコ店(以下「被告店舗5」といい,被告店舗1ないし4と併せて「被告各店舗」という。)を,それぞれ営業している。被告各店舗では,いずれもパチンコやパチスロの遊技台が設置されており,娯楽施設が提供されている(甲3)。 イ被告は,被告各店舗における娯楽施設の提供に当たって使用する看板,ポスター,広告,チラシ,案内板,シール,POP,会員カード及びウェブサイト(被告の開設するウェブサイト〔http://www.shinyu-group.com/〕及び全国パチンコ店情報〔P-WORLD〕のウェブサイト〔http://www.p-world.co.jp/〕)において,別紙被告標章目録記載1ないし7の各標章(以下,「被告標章1」などといい,併せて「被告各標章」という。)を使用している(甲3~5,8:なお,被告による被告各標章の使用に係る証拠の詳細は,別紙対照表記載のとおりである。)。 (4) 指定役務の同一性被告の経営する被告各店舗はいずれもパチンコ店であり,本件登録商標の指定役務に属する「娯楽施設の提供」と同一である。 2 原告の請求 原告は,被告が娯楽施設の提供に当たって被告各標章を看板等に使用する行為が原告の本件商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき被告各標章の使用の差止め,及び同条2項に基づき被告各標章を付した看板等の破棄等を求 って被告各標章を看板等に使用する行為が原告の本件商標権を侵害すると主張して,被告に対し,商標法36条1項に基づき被告各標章の使用の差止め,及び同条2項に基づき被告各標章を付した看板等の破棄等を求めている。 3 争点(1) 被告各標章は本件登録商標と類似するか(争点1)(2) 本件請求が権利の濫用に当たるか(争点2)(3) 原告による黙示の承諾の有無(争点3)(4) 権利失効の原則により本件請求が信義則違反となるか(争点4)(5) 即時の差止めが許されるか(争点5)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告各標章は本件登録商標と類似するか)【原告の主張】(1) 外観の同一性又は類似性本件登録商標は,ローマ字の大文字で「P」,「I」,「A」と表記される。 これに対し,被告標章1の外観は,本件登録商標と全く同一である。 また,被告標章2ないし7は,「PIA」という表記にそれぞれ「-Ⅱ」,「WORLD」,「Center」,「CenterP-1」,「CenterP-2」及び「グループ」という文字が付加されているが,「WORLD」,「Center」,「グループ」という言葉はいずれも一般名詞であり,それ自体に識別力はなく,「-Ⅱ」や「P-1」,「P-2」も,数詞にすぎず識別力はない。 さらに,被告標章2ないし7の,「PIA」の部分はいずれも特別な書体を用いた太字で表記されており,他方で「WORLD」,「Center」,「グループ」,「-Ⅱ」や「P-1」,「P-2」の部分はいずれも通常のゴシック体により記載されているにすぎず,外観上「PIA」の部分が特に強調され ている。 したがって,被告標章2ないし7においても,「PIA」の部分が要部であり,この部分について本件登録商標との類似性を判断すべきことに るにすぎず,外観上「PIA」の部分が特に強調され ている。 したがって,被告標章2ないし7においても,「PIA」の部分が要部であり,この部分について本件登録商標との類似性を判断すべきことになる。そうすると,本件登録商標と被告標章2ないし7の要部は,いずれも「PIA」であり,外観上全く同一である。 (2) 称呼の同一性本件登録商標も被告各標章の要部も,いずれも「PIA」というローマ字3文字から成り,そこから生じる称呼は「ピア」又は「ピーアイエー」でしかありえず,称呼も同一である。 【被告の主張】被告の使用する標章は,「PIA」の字体の左右に,銘板を固定するリベットを模した丸型の記号「・」を表示し,また「A」の文字の3画目が1画目を左に突き抜けた形状の,特徴的な意匠を取り入れた独自の文字を使用している。 したがって,被告の使用する標章の要部は「・PIA・」であり,かつ,上記の如き特徴的な意匠を取り入れた文字を使用している点で本件登録商標とは外観上異なる。 2 争点2(本件請求が権利の濫用に当たるか)【被告の主張】(1) 原告の本件商標登録には,以下に述べるとおり明らかな無効事由があるから,本件請求は権利の濫用(民法1条3項)であって許されない。 アありふれた氏・名称である(商標法3条1項4号)「PIA」は,女性の「名」を表す単語であり,また,「ユートピア」の略語として用いられる一般名詞であるから,「ありふれた氏又は名称」に該当する。また,本件登録商標は,「P」,「I」,「A」の各文字をそのまま文字列として並べた上,ローマ字読みして「ピア」と呼称させるものであるから,普通に用いられる方法で表示するものである。 したがって,本件商標登録には商標法3条1項4号違反の無効事由がある。 イ周知表 上,ローマ字読みして「ピア」と呼称させるものであるから,普通に用いられる方法で表示するものである。 したがって,本件商標登録には商標法3条1項4号違反の無効事由がある。 イ周知表示の類似役務に対する表示である(商標法4条1項10号)本件商標登録の出願日は平成8年2月26日であるが,それ以前の昭和57年12月23日には,パチンコ店「パーラーぴあぱれす」(大阪府門真市〈以下略〉)が,平成2年12月にはパチンコ店「ぴあ91」(岡山県笠岡市〈以下略〉)が,平成5年6月21日にはパチンコ店「PARLORPIAA」(大阪市〈以下略〉)が,平成7年6月19日には「ピア」(広島県福山市〈以下略〉)が,それぞれ本件登録商標と同一又は類似の表示を使用して営業していた(なお,「ぴあ91」と「ピア」はともに株式会社一富士興業が経営しており,同一名称が2県以上にわたって周知になっていた。)。 これらの表示は,上記各店舗を利用する多数の需要者の間で,一般に周知になっていたのであるから,本件登録商標は,周知表示を,上記各店舗と同一の役務(パチンコ球遊機による遊技)に対する表示として使用するものであるから,本件商標登録には商標法4条1項10号違反の無効事由がある。 (2) 以下の事情に照らすと,原告が被告による被告各標章の使用について差止等を求めることは,権利の濫用(民法1条3項)として許されない。 ア被告が被告各標章を使用するに至った経緯被告は,昭和62年7月31日以降,被告店舗1の所在地において,「センター会館P-1」の屋号でパチンコ店を経営していたが,平成16年12月に同店舗を改装して店舗の全面的なリニューアルを行う際,「PIA」の屋号を自ら考案し,同年12月15日から使用を開始した。その後,被告店舗1の経営が良好であっ コ店を経営していたが,平成16年12月に同店舗を改装して店舗の全面的なリニューアルを行う際,「PIA」の屋号を自ら考案し,同年12月15日から使用を開始した。その後,被告店舗1の経営が良好であったことから,被告店舗2ないし5を順次リニューアルオープンした。 したがって,被告が被告各標章を使用するに至ったのは全くの偶然であり,原告の営業と誤認・混同を生ずるおそれなど認識しなかった。 イ本件登録商標の要保護性本件商標登録には,前記(1)のとおり,無効事由があるから商標として保護する必要性に乏しい。 ウ原告及び被告の営業地域原告は,神奈川県,東京都,千葉県及び埼玉県に店舗を設けて営業しているのに対し,被告は兵庫県伊丹市及び宝塚市でのみ店舗を設けて営業しているのであるから,両者の営業地域は遠く離れており,全く重なり合いはない。また,パチンコ店の顧客は,徒歩や自転車,自動車等で,自宅周辺のパチンコ店を利用する場合が多く,上記移動手段で移動できる範囲に商圏が限られる特性を有しており,原告の営業地域である関東圏に在住の顧客が,被告の店舗にわざわざ時間と費用をかけて出かけて行ってパチンコ等の遊技をすることは実際にはまず考えにくい。 したがって,被告が被告各標章を利用したとしても需要者(利用客)が原告の営業と被告の営業とを誤認混同することはあり得ず,原告には何ら実質的な不利益は存在しない。 エ他のパチンコ店舗の営業の状況現在,「PIA」,「ぴあ」及び「ピア」の名称又はこれを含む名称を使用するパチンコ店は,少なくとも原告及び被告の店舗以外に12店舗あり,「ユートピア」,「アピア」,「オリンピア」など,「ぴあ」や「ピア」との文言を含む名称の店舗も含めると,30店舗が現在も営業を続けている。 したがって,被 も原告及び被告の店舗以外に12店舗あり,「ユートピア」,「アピア」,「オリンピア」など,「ぴあ」や「ピア」との文言を含む名称の店舗も含めると,30店舗が現在も営業を続けている。 したがって,被告にのみ差止めを求めても,上記の多数の店舗は,「PIA」,「ぴあ」,「ピア」の名称を使用し続けるのであるから,標章の使用状況に変化はない。それにもかかわらず,上記多数の店舗の中から,被告のみを選び出して差止等の請求をする合理的理由はない。本件請求は,原 告の被告に対する営業妨害ないし嫌がらせ等の不当な目的によるものであることは明白である。 【原告の主張】(1) 無効事由についてアありふれた氏・名称であるとの主張に対して我が国において,「PIA」という語に女性の「名」を表す意味があることは一般的に知られておらず,一般的な英和辞典にもそのような説明は載っていない。また,「PIA」が「ユートピア」の略語として用いられるということもこれらの辞書には載っておらず,さらに広辞苑[第6版]にも,「ぴあ」や「ピア」という単語は載っていない。 したがって,「PIA」という語は,被告の主張するような,ありふれた氏・名称ではない。 イ周知表示の類似役務に対する表示であるとの主張に対して被告が周知表示として提示する例は,それぞれ特定の府県で本件登録商標に類似していると思われる標章が現在用いられていることを立証するものにすぎず,商標法4条1項10号の要件該当性を立証するものではない。 仮に被告の主張するとおり,大阪府,岡山県,広島県において本件登録商標と同一または類似の表示を使用したパチンコ店が存在していたとしても,直ちに商標法4条1項10号の要件を充たすということにはならない。 (2) その他の事情ア被告が被告各 おいて本件登録商標と同一または類似の表示を使用したパチンコ店が存在していたとしても,直ちに商標法4条1項10号の要件を充たすということにはならない。 (2) その他の事情ア被告が被告各標章を使用するに至った経緯について被告各標章が用いられ始めたのは,被告の主張に従ったとしても,本件商標登録後の平成16年であり,その時点で被告は,「PIA」という商標登録の有無について当然に調査し得た。したがって,被告の主張は,被 告各標章の使用を何ら正当化するものではない。 原告は,赤色の下地に白字で縦長に「PIA」と記載された標章を平成8年ころから用いているところ,被告の使用する標章は,下地と文字の色及び文字の形状が原告の上記標章と同じ又は酷似しており,被告による被告各標章の使用が全くの偶然であったとは考えにくい。 イ本件登録商標の要保護性について本件商標登録に無効事由がないことは,前記(1)のとおりである。 ウ原告及び被告の営業地域について商標権は全国的にその権利を保護するものであり,現時点での原告の営業地域が被告営業地域と異なったからといって,その権利行使が否定されるものではない。 エ他のパチンコ店舗の営業状況について「ユートピア」,「アピア」及び「オリンピア」などは,「ピア」とは全く別の語となっており,本件登録商標とは全く類似性がない。また,原告が現時点において本件登録商標と同一又は類似の標章を使用する他社に権利行使をしていないことは,被告による被告各標章の継続使用を正当化する根拠とはならない。 なお,原告が,まず被告に対して権利行使を行うこととしたのは,被告による標章の使用態様が原告の使用態様と酷似しており,最も悪質であったためである。 3 争点3(原告による黙示の承諾の有無) なお,原告が,まず被告に対して権利行使を行うこととしたのは,被告による標章の使用態様が原告の使用態様と酷似しており,最も悪質であったためである。 3 争点3(原告による黙示の承諾の有無)【被告の主張】(1) 被告は,平成16年12月中旬から順次被告各標章を使用し始め,その当初からパチンコ店を紹介するウェブサイトである「P-WORLD」に店舗情報等を掲載していた。 (2) 前記(1)のサイトには,原告も店舗情報を掲載しており,同サイトの検索機 能を使用して「PIA」を含むパチンコ店の情報を検索すれば,原告店舗とともに被告の店舗情報が表示されていた。したがって,原告は,被告が被告各標章を使用し始めた当初から,その事実を知っていた。 (3) それにもかかわらず,原告は,本件訴訟を提起した平成22年8月3日までの5年7か月以上もの長期間にわたり,被告に対して何らの抗議も苦情も申し立てなかったのであるから,被告による被告各標章の使用を黙示的に承諾していたものである。 【原告の主張】(1) 被告が主張の根拠とするウェブサイト「P-WORLD」は,パチンコ店を利用するユーザーのためのポータルサイトであり,パチンコ店経営会社が頻繁に閲覧するようなサイトではなく,原告は,同サイトでの被告各標章の使用を平成22年1月まで全く知らなかった。 原告は,平成22年1月,自社の宣伝活動を強化することを目的として,全国のパチンコ店等の広告宣伝内容を調査していたところ,被告が上記サイトにおいて,本件登録商標と同一ないし類似する標章を使用してパチンコ店を経営していることが判明した。 そこで,原告は,被告による標章の使用状況を調査したところ,本件登録商標「PIA」の文字が用いられているだけではなく,使用態様も原告が実際に店舗で用いている態 コ店を経営していることが判明した。 そこで,原告は,被告による標章の使用状況を調査したところ,本件登録商標「PIA」の文字が用いられているだけではなく,使用態様も原告が実際に店舗で用いている態様,すなわち赤色の下地に縦長の白色の文字で「PIA」を表示する態様と酷似した方法で使用されていることが判明した。 このように,被告の使用態様は,偶然の一致とは言えない悪質なものであったことから,原告は同年3月に原告訴訟代理人に相談の上,同年4月,被告に対して被告各標章の使用中止を求める通知をした。しかし,被告はその使用を中止しなかったことから,本件訴訟を提起したのである。 (2) 上記のように,原告は,被告が被告各標章を使用していることを平成22年1月まで知らなかったのであり,黙示であれ,これを承諾することなどあ り得ない。 4 争点4(権利失効の原則により本件請求が信義則違反となるか)【被告の主張】(1) 前記3【被告の主張】のとおり,原告は,「P-WORLD」というウェブサイトを通して被告が被告各標章を使用し始めた時点から,その事実を知っていたのであり,商標権に基づく差止請求をすることが可能かつ容易であったにもかかわらず,本件提訴に至るまでの5年7か月以上もの長期間にわたり,何らの合理的な理由もなく訴えの提起を遅延させた。 (2) 被告は,原告その他の第三者から,被告各標章の使用を妨げる何らの苦情等も受けなかったことから,その使用が原告の商標権等を侵害しているとは考えなかった。その結果,被告は,平成21年6月11日から同22年1月16日にかけて,被告の経営する店舗のうち3店舗に「・PIA-Ⅱ・」「・PIA・WORLD」「・PIA・ Center」と屋号を付して改装した。 これらの費用は,合計で1億0968万5399円にも上 16日にかけて,被告の経営する店舗のうち3店舗に「・PIA-Ⅱ・」「・PIA・WORLD」「・PIA・ Center」と屋号を付して改装した。 これらの費用は,合計で1億0968万5399円にも上り,仮に本件請求が認められると,すべてが無駄な投資となる上,外部サインの変更等の改装経費も必要となり,被告に重大な不利益が生じる。 (3) そうすると,本件請求は,権利失効の原則により信義則(民法1条2項)違反となるものであり,認められるべきではない。 【原告の主張】(1) 原告は,平成22年1月になって初めて被告による被告各標章の使用を知ったのであり,訴訟提起を不当又は不合理に遅延させてはいない。 (2) 被告は,原告が本件商標登録をし,パチンコ店等で使用し始めた後に,被告各店舗で被告各標章を使用し始めたのであって,少なくとも被告各標章の使用開始時点において,本件登録商標の有無を容易に確認できた。 したがって,被告は,単に調査を怠っていたにすぎず,原告が,このような被告に対し,正当な権利行使をすることは何ら信義に反するものではない。 (3) 被告が主張する改装費用についても,自ら違法状態を作出したことによるものであり,自業自得にすぎない。 5 争点5(即時の差止めが許されるか)【被告の主張】(1) 前記4【被告の主張】(2)のとおり,被告が店舗の改装費用として1億0968万5399円にも及ぶ投資をしたのは,被告各標章の使用について何らの障害もないと信用したことによるものであり,信義則上,その信頼は法的に保護されなければならない。 上記投資に係る資産を償却するには,少なくとも5年ないし7年の期間が必要である。 (2) したがって,仮に,被告による被告各標章の使用について差止めが認められるとしても,差止めの期間は少 ない。 上記投資に係る資産を償却するには,少なくとも5年ないし7年の期間が必要である。 (2) したがって,仮に,被告による被告各標章の使用について差止めが認められるとしても,差止めの期間は少なくとも判決確定後5年以降の時点に限られるべきである。 【原告の主張】争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告各標章は本件登録商標と類似するか)について(1) 本件登録商標本件登録商標は,別紙原告商標目録記載のとおりであり,その外観は,やや縦に長いローマ字の「P」,「I」,「A」で表記され,「ピア」又は「ピーアイエー」の称呼を生じるが,特段の観念を生じない。 (2) 被告各標章被告各標章は,別紙被告標章目録記載のとおりであり,その外観,称呼及び観念並びに被告各標章における要部は,以下のとおりである。 ア被告標章1(ア) 外観 被告標章1は,いずれもローマ字の「P」,「I」,「A」が横一列(被告標章1-①,②及び④)又は縦一列(被告標章1-③)に表記されたものである。 また,被告標章1のうち,被告標章1-①の文字は,いずれも一般的な文字で表記されているのに対し,被告標章1-②ないし④の各標章における「A」の文字の「∧」の部分は「∩」の形状をしており,中央の横線が「∧」の左側を突き抜けている。また,被告標章1-④は,「PIA」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA・」と表記されている。 なお,被告標章1-②ないし④は,いずれも赤地に白抜きで,やや縦に長く表記されている。 (イ) 称呼被告標章1は,いずれも「ピア」又は「ピーアイエー」の称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章1から,特段の観念を生じない。 (エ) 要部被告標章1-①ないし③は,「PIA」の部分のみか 被告標章1は,いずれも「ピア」又は「ピーアイエー」の称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章1から,特段の観念を生じない。 (エ) 要部被告標章1-①ないし③は,「PIA」の部分のみから成るので,全体が要部となる。 被告は,被告標章1-④の要部について,「・」の記号を含む「・PIA・」全体であると主張する。しかし,「・」の記号は何ら特徴のあるものではなく,付加的なものにすぎないし,何らの称呼や観念も生じない。 被告自身,必ずしも「・」を付した被告標章1-④のみを使用している訳でもなく,「PIA」の部分のみで使用する場合もある(被告標章1-①~③)のであるから,「・」の部分を出所表示として特段強調してもいない。したがって,「・」の部分に役務の出所識別機能があるとは認められない。 よって,被告標章1-④を含む被告標章1において出所識別機能を有するのは,いずれも「PIA」の部分であり,同部分をもって被告標章1の要部というべきである。 イ被告標章2(ア) 外観被告標章2は,いずれも被告標章1-①もしくは1-②に,ハイフン「-」及びローマ数字「Ⅱ」を,標準的な字体で,横一列に配したものである。 また,被告標章2-③は,「PIA-Ⅱ」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA-Ⅱ・」と表記されている。 なお,被告標章2-②,③は,赤地に白抜きで表記されている。 (イ) 称呼被告標章2は,いずれも「ピアツー」又は「ピーアイエーツー」などの称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章2のうち「PIA」の部分には特段の観念が生じないが,「PIA」の後にシリーズの2番目を想起させる「-Ⅱ」が付されたことにより,「2番目のPIA」や「PIAの2号店」などの観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部 分には特段の観念が生じないが,「PIA」の後にシリーズの2番目を想起させる「-Ⅱ」が付されたことにより,「2番目のPIA」や「PIAの2号店」などの観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章2-③には,「PIA-Ⅱ」の両側に「・」との記号が付されているものの,被告標章1-④において説示したとおり,「・」の部分に出所識別機能があるとは認められない。 また,「-Ⅱ」の部分についても,「ツー」という称呼を生じ,「2番目」との観念を生じさせるものであるとはいえ,格別特徴のある字体ではなく,「PIA」と併せても「2番目のPIA」や「PIAの2号店」との 観念しか想起させないのであるから,被告標章2において出所識別機能を有するのは,あくまで「PIA」の部分であるというべきである。 したがって,被告標章2の要部は「PIA」の部分であると認められる。 ウ被告標章3(ア) 外観被告標章3は,いずれも被告標章1-①もしくは1-②に,「WORLD」とのローマ字を,標準的な字体で,2段(被告標章3-②)又は横一列(被告標章3-①・③)に配したものである。 また,被告標章3-②及び③は,赤地に白抜きで,「PIA」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA・WORLD」と表記されている。 (イ) 称呼被告標章3は,「ピアワールド」又は「ピーアイエーワールド」などの称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章3のうち「PIA」の部分には特段の観念が生じないが,「PIA」の後に「WORLD」すなわち「世界」を意味する英単語が付されており,これにより,「PIAの世界」等の観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章3-②及び③については,「PIA」の両側に「・」との記号が付されているが,被告標章1 語が付されており,これにより,「PIAの世界」等の観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章3-②及び③については,「PIA」の両側に「・」との記号が付されているが,被告標章1-④において説示したとおり,「・」の部分に出所識別機能があるとは認められない。 また,「WORLD」の部分についても,「ワールド」という称呼を生じ,「世界」との観念を想起させるものであるが,格別特徴のある字体ではなく,「PIA」の両側に付された「・」によって,むしろ「PIA」 の部分が強調される結果となっている。加えて,「PIA」と併せても「PIAの世界」との観念しか想起させないのであるから,被告標章3において出所識別機能を有するのは,あくまで「PIA」の部分というべきである。 したがって,被告標章3の要部は「PIA」の部分と認められる。 エ被告標章4(ア) 外観被告標章4は,いずれも被告標章1-①もしくは1-②に「Center」とのローマ字を,標準的な字体で,2段(被告標章4-②)又は横一列(被告標章4-①・③)に配したものである。 また,被告標章4-②及び③は,赤地に白抜きで,「PIA」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA・Center」と表記されている。 (イ) 称呼被告標章4は,「ピアセンター」又は「ピーアイエーセンター」などの称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章4のうち「PIA」の部分には特段の観念が生じないが,「PIA」の後に「Center」すなわち「中心」や「中心となる施設」を意味する英単語が付されており,これにより,「PIAの中心」や「PIAの中心施設」などの観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章4-②及び③には,「PIA」の両側に「・」との記号が付され 英単語が付されており,これにより,「PIAの中心」や「PIAの中心施設」などの観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章4-②及び③には,「PIA」の両側に「・」との記号が付されているが,被告標章1-④において説示したとおり,「・」の部分に出所識別機能があるとは認められない。 また,「Center」の部分についても,「センター」という称呼を生じ,「中心」,「中心施設」などの観念を想起させるものであるとはいえ, 格別特徴のある字体ではなく,「PIA」の両側に付された「・」によって,むしろ「PIA」の部分が強調される結果となっている。そして,「PIA」と併せても「PIAの中心」や「PIAの中心施設」などの観念しか想起させないものであるから,被告標章4において出所識別機能を有するのは,あくまで「PIA」の部分というべきである。 したがって,被告標章4の要部は「PIA」の部分と認められる。 オ被告標章5及び6(ア) 外観被告標章5は,いずれも被告標章1-①もしくは1-②に「Center」とのローマ字並びに「P-1」とのローマ字とアラビア数字をハイフンでつないだものを,標準的な字体で,3段(被告標章5-②),横一列(被告標章5-①)に配し,又は横一列の「PIACenter」の右側に縦書きの「P-1」を配したもの(被告標章5-③)である。 被告標章6の外観は,いずれも被告標章5における「P-1」の部分を「P-2」に変えたものである。 また,被告標章5-②及び③並びに被告標章6-②及び③は,赤地に白抜きで,「PIA」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA・Center」と表記されたものに「P-1」又は「P-2」との部分を付したものである。 (イ) 称呼被告標章5は,「ピアセンターピ きで,「PIA」の両側に丸形の記号「・」を付し,「・PIA・Center」と表記されたものに「P-1」又は「P-2」との部分を付したものである。 (イ) 称呼被告標章5は,「ピアセンターピーワン」又は「ピーアイエーセンターピーワン」などの称呼を生じ,被告標章6は,「ピアセンターピーツー」又は「ピーアイエーセンターピーツー」などの称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章4において説示したとおり,被告標章5及び6のうち「PIACenter」の部分には「ピアの中心」又は「ピアの中心施設」 などの観念が生じる。また,「P-1」及び「P-2」には,通常,観念が生じないものの,被告の店舗における使用態様として,被告店舗4の正面出入口(甲3の写真4-②)には「PARTⅠ」との,被告店舗5の正面出入口(甲3の写真5-③)には「PARTⅡ」との表記があることからすれば,「P-1」及び「P-2」は「PARTⅠ」及び「PARTⅡ」の略語であると想起できる。そして,「PARTⅠ」や「PARTⅡ」は,一連のシリーズの1番目や2番目を想起させることから,被告標章5及び6は,「ピアの中心施設の1番」及び「ピアの中心施設の2番」などの観念を想起させるものと認められる。 (エ) 要部被告標章5-②及び③並びに被告標章6-②及び③には,「PIA」の両側に「・」との記号が付されているものの,被告標章1-④において説示したとおり,「・」の部分に出所識別機能があるとは認められない。 また,「Center」の部分を併せても,被告標章4において説示したとおり,「PIA」の部分が要部であるといえる。 さらに,「P-1」及び「P-2」の部分についても,一連のシリーズの「1番」又は「2番」との観念を想起し得るものであるが,格別特徴のある字体ではなく, り,「PIA」の部分が要部であるといえる。 さらに,「P-1」及び「P-2」の部分についても,一連のシリーズの「1番」又は「2番」との観念を想起し得るものであるが,格別特徴のある字体ではなく,「PIACenter」と併せても,「ピアの中心施設の1番」及び「ピアの中心施設の2番」などの観念しか想起させないのであるから,被告標章5及び6においても,出所識別機能を有するのは,「PIA」の部分というべきである。 したがって,被告標章5及び6の要部は「PIA」の部分と認められる。 カ被告標章7(ア) 外観被告標章7は,いずれも被告標章1-①もしくは1-②に,「グループ」 との片仮名を,横一列に配したものである。 なお,被告標章7-②は,赤地に白抜きで表記されている。 (イ) 称呼被告標章7は,「ピアグループ」又は「ピーアイエーグループ」などの称呼を生じる。 (ウ) 観念被告標章7のうち「PIA」の部分には特段の観念が生じないが,「PIA」の後に「グループ」すなわち「集団」を意味する単語が付されており,これにより,「PIAの集団」等の観念を想起させるものといえる。 (エ) 要部被告標章7には「PIA」に「グループ」の部分が付されており,かかる部分は「グループ」という称呼を生じ,「集団」との観念を想起させるものであるが,格別特徴のある字体ではなく,「PIA」と併せても「PIAの集団」等の観念しか想起させないのであるから,被告標章7において出所識別機能を有するのも,あくまで「PIA」の部分というべきである。 したがって,被告標章7の要部は「PIA」の部分と認められる。 (3) 類否の検討ア本件登録商標と被告各標章の要部すなわち「PIA」の部分の外観を対比すると,いずれも,ローマ字の である。 したがって,被告標章7の要部は「PIA」の部分と認められる。 (3) 類否の検討ア本件登録商標と被告各標章の要部すなわち「PIA」の部分の外観を対比すると,いずれも,ローマ字の大文字である「P」,「I」,「A」から成るという点において一致する。 また,「PIA」の部分の称呼は「ピア」又は「ピーアイエー」であり,いずれの読み方がされるにせよ同一の称呼を生じる。 被告は,被告各標章(いずれも①を除く。)における「PIA」の「A」の文字が「特徴的な意匠」を取り入れており,本件登録商標とは外観において異なると主張する。たしかに,前記認定のとおり,本件登録商標の「A」 の文字は標準的に用いられるローマ字の大文字に近いが,被告各標章(いずれも①を除く。)における「A」の文字は,「∧」の部分が「∩」の形状をしており,中央の横線が「∧」の左側を突き抜けているという差異は認められる。しかし,この程度の字体の変更は格別のものとはいい難く,「特徴的な意匠」といい得るようなものではない。 むしろ,被告各標章(いずれも①を除く。)における「PIA」は,やや縦に長い点や,ゴシック体類似の書体で記載されている点や,「P」の文字の形状の違いは僅かであることや,「I」の文字は字体も同一であることが認められる。 イ上記のとおり,本件登録商標と被告各標章の要部,すなわち「PIA」の部分については,外観において類似しており,称呼も同一であることから,両者は出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。 よって,本件登録商標と被告各標章は,類似すると認められる。 2 争点2(本件請求が権利の濫用に当たるか)について(1) 本件商標登録における無効事由の有無について被告は,本件商標登録は,商標法3条1項4号及び同法4 は,類似すると認められる。 2 争点2(本件請求が権利の濫用に当たるか)について(1) 本件商標登録における無効事由の有無について被告は,本件商標登録は,商標法3条1項4号及び同法4条1項10号違反の無効事由があると主張するので検討する。 ア商標法3条1項4号について被告は,「PIA」が女性の「名」を表す単語であると主張し,「ピア」と名の付く人物に係る人名辞典(乙1,2)を提出するものの,少なくとも,我が国において「ピア」が女性の名前を表すものとして認識されているとは認め難い。 また,被告は,「ピア」が「ユートピア」の略語として用いられるとも主張するものの,そのような用法が一般的であると認めるに足りる証拠もない。 そもそも,前述したとおり(前記1(1),(2)ア),「PIA」からは特段の 観念を生じるとは認められず,「PIA」がありふれた氏・名称であると認められることもないというべきである。 イ商標法4条1項10号について被告は,本件商標登録出願前から,「パーラーぴあぱれす」(大阪府門真市),「ぴあ91」(岡山県笠岡市),「PARLORPIAA」(大阪市北区),「ピア」(広島県福山市)といった名称のパチンコ店が存在しており,需要者に広く認識されていたと主張する。しかし,被告が主張する各店舗の経営主体は「ぴあ91」と「ピア」が同一であるほかは,いずれも異なっており,必ずしも同一の出所を表示するものではない。また,被告も自認するとおり,パチンコ店の商圏は広いものではなく,ある程度,地域的に限られているため,仮に被告の主張する店舗の名称が,当該地域の需要者に一定程度認知されていたとしても,都道府県単位に満たない限られた地域における認知にすぎないものと推認される。 商標法4条1項10 られているため,仮に被告の主張する店舗の名称が,当該地域の需要者に一定程度認知されていたとしても,都道府県単位に満たない限られた地域における認知にすぎないものと推認される。 商標法4条1項10号における周知性は全国的なものである必要はないとはいえ,同号が先願主義の例外規定であって,これにより後の商標出願が排除されるという強い効果が生じることからすれば,広域における周知性を要するというべきであり,少なくとも,被告が主張する店舗のように,都道府県単位に満たない程度の周知性では,同号の定める「他人の業務に係る…役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」には当たらないというべきである。 ウ以上のとおり,本件商標登録に無効事由が存することを理由とする権利濫用の主張については,理由がない。 (2) その他の事情ア被告が被告各標章を使用するに至った経緯について被告は,「PIA」の屋号を自ら考案し,平成16年12月から被告店舗1において使用し始めたものであり,被告各標章を使用したことは全くの 偶然であったと主張する。 しかし,本件商標登録がなされたのは,平成10年7月10日であり,被告が被告各標章を使用するに当たって,「PIA」との商標登録の有無を調査すれば,容易に本件商標登録の事実を知り得たはずである。 そうすると,仮に被告が本件商標登録を知らずに被告各標章の使用をしていたとしても,単に被告が基本的な調査を怠ったというにすぎないというべきであるから,これを被告に有利な事情として酌むことはできない。 イ営業地域について被告は,原告が神奈川県,東京都,千葉県及び埼玉県でパチンコ店を設け,営業しているのに対し,被告は兵庫県伊丹市及び宝塚市のみで営業しているにすぎないことを主張する。 たしかに 業地域について被告は,原告が神奈川県,東京都,千葉県及び埼玉県でパチンコ店を設け,営業しているのに対し,被告は兵庫県伊丹市及び宝塚市のみで営業しているにすぎないことを主張する。 たしかに,パチンコ店の商圏は,通常,それほど広いものではなく,現時点において,原告のパチンコ店と被告のパチンコ店の顧客が現実に競合していることは認められない。しかし,商標権は,全国的に効力を有するものであり,現時点において競合していないからといって,差止等の請求を否定する根拠とはならない。 ウ他のパチンコ店舗の営業状況について被告は,現在,「PIA」,「ぴあ」,「ピア」の名称又はこれを含む名称を使用するパチンコ店が他にも複数存在すること及び原告がこれらの者に対して権利行使をしていないことからすると,本件請求は被告に対する営業妨害ないし嫌がらせ等の不当な目的によるものであるなどと主張する。 しかし,仮に商標権を侵害している者が他に複数存在するとしても,原告は,その者らに対しても権利行使をすることができるというにすぎない。 そもそも,いつ誰に対して権利行使をするかは商標権者の自由にゆだねられるべき事柄であって,いまだ全員に対して権利行使をしていないとしても,そのことが一部の者に対する権利行使を制限する理由とはなり得ない。 なお,本件請求が被告に対する営業妨害を企図しているなど不当な目的に基づくものであるかについても,念のため検討すると,被告の主張する原告が他の者に権利行使をしていないという事情のみでは,これを認めるに足りない。他にこれを認めるに足りる主張立証は全くなく,この点に関する被告の主張も,具体的な根拠に基づかない不合理な主張というほかない。かえって,原告は,被告各標章の使用態様が原告の本件登録商標の使用態様と酷似しており, るに足りる主張立証は全くなく,この点に関する被告の主張も,具体的な根拠に基づかない不合理な主張というほかない。かえって,原告は,被告各標章の使用態様が原告の本件登録商標の使用態様と酷似しており,特に悪質であったことから,まず被告に対して本件請求をしたと主張しているところ,証拠(甲3~6)によれば,原告の使用態様と被告のそれとは,赤地に白抜きの表記である点において類似していることが認められる。そうすると,本件訴訟提起の動機に関する原告の上記説明は,客観的にも裏付けられており,内容においても自然かつ合理的なものであることが十分に窺える。 エ以上によれば,本件請求が権利の濫用に当たり,許されないものと認めることはできない(なお,本件商標登録に無効事由の存しないことは,前記(1)に述べたとおりである。)。 3 争点3(原告による黙示の承諾の有無)について被告は,原告が平成16年12月から被告各標章の使用を知っていたとして,その使用について原告による黙示の承諾があった旨主張する。 しかし,その主たる根拠は,「P-WORLD」なるウェブサイトにおける被告の店舗情報の掲載であるところ,原告も主張するとおり,同サイトは基本的にパチンコを利用するユーザーのためのポータルサイトであり,すべてのパチンコ店経営者がこれを逐次チェックしているとまでは認められない。 被告の店舗情報が上記サイトに掲載されたという事実のみをもって,原告が被告による被告各標章の使用を知っていたと認めることはできず,その他,原告が平成22年1月以前に,被告による被告各標章の使用を知っていたことを窺わせる事情は一切ない。 したがって,原告による黙示の承諾があったとする被告の主張は,前提となる事実を欠いており,採用することができない。 そもそも,仮に原告が被告各標章 ていたことを窺わせる事情は一切ない。 したがって,原告による黙示の承諾があったとする被告の主張は,前提となる事実を欠いており,採用することができない。 そもそも,仮に原告が被告各標章の使用を従前から認識していたとしても,そのことのみをもって,原告が黙示的に被告各標章の使用を承諾したなどと評価することはできないから,この点に関する被告の主張は失当なものである。 4 争点4(権利失効の原則により本件請求が信義則違反となるか)について被告は,原告が被告による被告各標章の使用を知りながら不当に訴えの提起を遅らせたとか,被告が店舗の改装費用として1億0968万円余りの費用を支出したなどとして,本件請求は,権利失効の原則により信義則(民法1条2項)違反となると主張する。 しかし,前記3で認定したとおり,原告が平成22年1月以前に被告による被告各標章の使用を知っていたとは認められないのであるから,被告の主張はその前提を誤っている。そもそも,被告が被告各標章を使用するに当たって商標登録を調査しさえすれば,本件商標登録を極めて容易に知り得たのであるから,仮に本件請求によって被告が不利益を被ることになるとしても,それは自らなすべき基本的な調査を怠ったことに起因するものである。そうであるにもかかわらず,原告の権利行使を不当である旨論難するのは責任転嫁にほかならない。 したがって,被告の主張は理由がない。 5 争点5(即時の差止めが許されるか)について被告は,多額の改装費用を支出したことをもって,少なくともその償却が完了するまでの間,信義則上,差止めは認められないとも主張するが,前記説示のとおり,改装費用の支出は被告の基本的な調査不足に起因するものであるから,即時の差止めが許されない理由にはならない。 了するまでの間,信義則上,差止めは認められないとも主張するが,前記説示のとおり,改装費用の支出は被告の基本的な調査不足に起因するものであるから,即時の差止めが許されない理由にはならない。したがって,被告の主張は理由がない。 第5 結論 以上によると,原告の請求はいずれも理由があるから,これを認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を,主文第1項及び第2項(ただし,第2項については,ウェブサイトにおける標章の削除に係る部分)の仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用し,主文第2項(ただし,ウェブサイトにおける標章の削除を除く部分)の仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官達野ゆき 裁判官西田昌吾 別紙被告標章目録 1 ①PIA② 2 ①PIA-Ⅱ② 3 ①PIAWORLD② 4 ①PIACenter② 5 ①PIACenterP-1② 6 ①PIACenterP-2② 7 ①PIAグループ② 別紙原告商標目録 別紙対照表被告標章1 ①甲3写真2-⑫,甲4,甲5の 7 ① PIAグループ② 別紙原告商標目録 別紙対照表被告標章1 ① 甲3写真2-⑫,甲4,甲5の1の5頁② 甲3写真1-⑧,3-③③ 甲3写真1-①,甲5の1の1頁④ 甲3写真1-②~⑧,2-⑪,甲5の1の1頁被告標章2 ① 甲4,甲5の3の6頁② 甲3写真2-①~⑤,甲4③ 甲3写真2-⑥~⑩,⑫,⑬,甲5の3の1頁被告標章3 ① 甲4,甲5の2の11頁② 甲3写真3-①,④~⑩,甲4,甲5の2の1頁③ 甲3写真3-②,甲5の2の3頁被告標章4 ① 甲5の4の10頁,甲5の5の13頁② 甲3写真4-④③ 甲3写真4-①~③,⑤~⑦,5-①~⑤,甲5の4の1頁,2頁,甲5の5の1頁,2頁被告標章5 ① 甲4,甲5の4の12頁② 甲4,甲5の4の1頁③ 甲5の4の4頁被告標章6 ① 甲4,甲5の5の15頁② 甲4,甲5の5の1頁③ 甲5の5の3頁被告標章7 ① 甲4② 甲3写真2-⑫,⑭,甲4
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