- 1 - 主文 1 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和4年2月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを5分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担 とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 ⑴ 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する令和4年2月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 ⑵ 訴訟費用は、被告の負担とする。 ⑶ 仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 ⑴ 原告の請求を棄却する。 ⑵ 訴訟費用は、原告の負担とする。 ⑶ 仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、被告がツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる短文等を投稿することができる情報ネットワーク)に投稿したツイートは原告の名誉を毀損するものであると主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、550万円及びこれに対する令和4年2月13日(不法行為の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払 を求める事案である。 - 2 - 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告は、平成27年12月に地域政党であるAの代表及び国政政党であるBの共同代表に就任した者であり、平成23年11月28日から平成31年3月24日までC知事を務め、同年4月8日にD市長に就任した(甲6)。 被告は、「E」の芸名で、お笑いタレント、コメンテーター等として芸能活動をする者である(甲4の1・2)。 ⑵ 被告 1年3月24日までC知事を務め、同年4月8日にD市長に就任した(甲6)。 被告は、「E」の芸名で、お笑いタレント、コメンテーター等として芸能活動をする者である(甲4の1・2)。 ⑵ 被告は、令和4年2月13日、Fが動画投稿サイト・ユーチューブに投稿している動画(「【Gの闇!】D市長・Hの経歴を調べたらヤバかった!」と題する動画。以下「本件動画」という。)のリンクを自身のツイートに記載す ることにより、本件動画のサムネイル(動画の内容を要約した画像であり、原告の顔写真や、「Gの闇」、「パワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑...」、「経歴ヤバすぎ」などの文言が表示されている。以下「本件サムネイル」という。)が当該ツイートに表示される状態の下で、「これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです。Gの人たち&支持者は事実でないなら今 すぐ訴えるべきだと思いますよ(笑)」とのメッセージを記載したツイートを、ツイッターに投稿した(以下、この投稿を「本件投稿」という。本件投稿の視認状況の一例は別紙のとおりである。)。(甲1、2の1、乙1、2の1) 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 本件投稿は何を摘示するものか (原告の主張)次のとおり、本件投稿は、原告が過去に強姦をしたこと又は強姦をしたことを強くうかがわせる事実が存在することを摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させる。 ア一般の閲覧者において、サムネイルのみを閲覧し、その限度で投稿等の 内容を把握する者は相当多数存在する。本件サムネイルには、原告の写真- 3 - のすぐ横に、「Gの闇パワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑・・・経歴ヤバすぎ」と記載されており、原告が過去に強姦をしたこと又は強姦をしたことを強くうかがわせる には、原告の写真- 3 - のすぐ横に、「Gの闇パワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑・・・経歴ヤバすぎ」と記載されており、原告が過去に強姦をしたこと又は強姦をしたことを強くうかがわせる事実が存在することを摘示するものと解される。 一般の閲覧者が「強姦疑惑」という表現を見て、「原告が過去に強姦をし た事実はないが、強姦の疑惑があった」と理解することはない。 イまた、本件サムネイルは、「Gの闇」、「経歴ヤバすぎ」という表現でまとめられているところ、「強姦疑惑」が根拠のない疑惑を意味するにすぎないとすれば、「Gの闇」や「経歴ヤバすぎ」といった評価に結びつかない。したがって、本件サムネイルは、原告が過去に強姦をしたこと又は強姦をし たことを強くうかがわせる事実が存在するということを一般の閲覧者に伝えるものである。 ウ被告は、本件サムネイルを引用した上、「これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです。」と記載することにより、本件サムネイルに記載された内容が、「凄い下調べ」に基づいて明かされた事実であることを一 般の閲覧者に伝えている。そして、「Gの人たち&支持者は事実でないなら今すぐ訴えるべきだと思いますよ(笑)」と記載することにより、本件サムネイルに記載された内容が事実であることを一般の閲覧者に強調している。 (被告の主張)次のとおり、本件投稿は、原告が過去に強姦をした事実を摘示するもので はないし、原告に「強姦疑惑」があるとの事実を摘示していてもそれは内容も真偽も不明な疑惑が存在することを摘示するものにすぎない。 アツイッターの仕様上、本件動画をリンクすると自動的に本件サムネイルと本件動画の説明文書が表示され、その中で「強姦疑惑」の文字が表示されることから、本件投稿が「強姦疑惑」を摘 るものにすぎない。 アツイッターの仕様上、本件動画をリンクすると自動的に本件サムネイルと本件動画の説明文書が表示され、その中で「強姦疑惑」の文字が表示されることから、本件投稿が「強姦疑惑」を摘示していることは認めるが、 本件サムネイルでは、「パワハラ」、「傷害事件」及び「裏口入学」は断定さ- 4 - れているのに対し、「強姦疑惑」だけわざわざ「疑惑」としているのであるから、「強姦疑惑」については、少なくとも、「パワハラ」、「傷害事件」及び「裏口入学」とは異なり、断定できない疑惑にとどまると理解されるのが通常である。 イ一般の読者は、サムネイルはあくまでサムネイルであって動画の中身で はないことは知っており、「これは下調べが凄いですね・・・」との記載は、本件動画の中身についての言及であると理解する。本件サムネイルのみを閲覧する者がいることは否定しないが、その者もサムネイルはサムネイルとして見るのであり、これを内容だと思って見る者はいない。「これは下調べが凄いですね・・・」との記載が、極めて簡潔な「Gの闇パワハラ、 傷害事件、裏口入学、強姦疑惑・・・経歴ヤバすぎ」という文言を指していると思う者はまずいない。 本件サムネイルは、意図的にその内容も真偽も明示することなく読者の興味を喚起して本件動画を視聴させる目的で作られており、被告記載部分と本件サムネイルを一体的に見ても、「強姦疑惑」は内容も真偽も不明であ る。 ウ 「事実でないなら今すぐ訴えるべきですよ(笑)」という記載は、「訴えないのは事実だからなんじゃないの?」という含意があることは認めるが、あくまで真偽不明であることを前提に茶化した上での含意にすぎない。なお、被告は様々なものを茶化すお笑い芸人であり、本件投稿における「(笑)」 につ ゃないの?」という含意があることは認めるが、あくまで真偽不明であることを前提に茶化した上での含意にすぎない。なお、被告は様々なものを茶化すお笑い芸人であり、本件投稿における「(笑)」 について特段の意味があるわけではない。 ⑵ 違法性が阻却されるか(被告の主張)前記⑴(被告の主張)のとおり、本件投稿は、原告に、内容も真偽も不明な強姦疑惑があるとの事実を摘示するものであるところ、そのような強姦疑 惑があることの摘示によって原告の社会的評価が低下することがあるとして- 5 - も、原告は、D市長という公職に就いており、原告についての疑惑の存否は、公共の利害に関するものである。また、被告が本件投稿をしたのは、D市長という公職にある原告に対する正当な意見・論評をする必要があると感じたからであり、もっぱら公益目的であるといえる。そして、原告に強姦疑惑があったこと自体は事実である(甲2の2、乙2の2)。 したがって、被告の本件投稿については、違法性が阻却される。 (原告の主張)前記⑴(原告の主張)のとおり、本件投稿は、原告が過去に強姦をしたこと又は強姦をしたことを強くうかがわせる事実が存在することを摘示するものであるところ、それが真実であることについて立証はない。 なお、原告が過去に強姦をした事実がないことは、他の訴訟での判決等においてもその旨認められ(甲7、8)、ニュースで広く報道されていた。したがって、インターネット上で原告について強姦疑惑の記事があったとしても、これを信ずるについて相当の理由があるとはいえない。 ⑶ 損害額 (原告の主張)ア慰謝料 500万円本件投稿は、強姦という人間の本質的部分を否定する内容で、政治家である原告に対し強烈な嫌悪感を抱かせる内容であること えない。 ⑶ 損害額 (原告の主張)ア慰謝料 500万円本件投稿は、強姦という人間の本質的部分を否定する内容で、政治家である原告に対し強烈な嫌悪感を抱かせる内容であること、原告は、D市長という公人であり、A及びBの代表で著名人であること、インターネット は高度の伝播性、影響力があること、被告は、原告が本件投稿が名誉毀損に当たる旨の指摘をした後も問題を煽る投稿を継続していること、その他懲罰的な意味も併せて評価すると、原告の慰謝料額は、500万円を下回らない。 イ弁護士費用 50万円 (被告の主張)- 6 - 否認又は争う。 本件投稿は悪質性が高いとはいえないし、被告は、原告の著名性は意識しておらず関係がない。また、懲罰的賠償の制度は日本にはない。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(本件投稿は何を摘示するものか)について ⑴ 本件投稿は、前提事実⑵のとおり、被告が、ツイートに、本件動画のリンクを記載することにより本件サムネイル(原告の顔写真や、「Gの闇」、「パワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑...」、「経歴ヤバすぎ」などの文言が表示されているもの)が表示される状態の下で、「これは下調べが凄いですね。 知らなかったことが多いです。Gの人たち&支持者は事実でないなら今すぐ 訴えるべきだと思いますよ(笑)」とのメッセージを記載して投稿したものである。 ある投稿の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものであるところ(最二小判昭和31年7月20日・民集10巻8号1059頁等参照)、 一般の読者の普通の注意と読み方によれば、本件投稿のうち被告の上記メッセージ部分は、本件動画について述べるも のであるところ(最二小判昭和31年7月20日・民集10巻8号1059頁等参照)、 一般の読者の普通の注意と読み方によれば、本件投稿のうち被告の上記メッセージ部分は、本件動画について述べるものであることは明らかといえるが、本件投稿を見た者が必ず本件動画を視聴するとは限らないこと(弁論の全趣旨)からすると、本件投稿のみを見て一定の認識を得る者は相当数存在するものといえる。 そして、①動画のサムネイルは、一般的に、動画投稿者が、動画の閲覧を誘引するために、動画の内容を要約して表示する画像であること(弁論の全趣旨)からすると、本件投稿を見る一般的な読者は、本件サムネイルの表示から、「本件動画は、A及びBの代表である原告に関する、パワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑等の話題を取り上げて述べる動画である」と認識す るものと考えられる。そして、一般的な読者は、②被告による「これは下調- 7 - べが凄いですね。知らなかったことが多いです。」との記載から、「本件動画は、その投稿者(F)による詳細な調査によって、原告に関するパワハラ、傷害事件、裏口入学、強姦疑惑等の話題について、被告を含めて多くの人が知らない事実を明らかにしている動画である旨を被告が述べている」と認識し、③「Gの人たち&支持者は事実でないなら今すぐ訴えるべきだと思いま すよ(笑)」との記載から、「本件動画で明らかにされたそれらの事実は、原告ないし原告が代表を務めるA及びBにとって不都合な事実、すなわち、原告がパワハラをしたこと、傷害事件を起こしたこと、裏口入学をしたこと、強姦疑惑があることをそれぞれ裏付ける事実であり、それらの事実は真実と考えられる旨を被告が述べている」と認識するものというべきである。 本件で原告が問題としている「強姦疑惑」 学をしたこと、強姦疑惑があることをそれぞれ裏付ける事実であり、それらの事実は真実と考えられる旨を被告が述べている」と認識するものというべきである。 本件で原告が問題としている「強姦疑惑」の部分に関しては、本件サムネイルにおいて、そこに表示されたその他の話題である「パワハラ」、「傷害事件」、「裏口入学」とは異なり、「疑惑」と付されていることからすると、一般的な読者は、本件動画において原告が強姦をしたと断定されていると認識するとはいえず、したがって、本件投稿についても、原告が強姦をしたと摘示 していると認識するとはいえない。他方で、本件サムネイルに「強姦疑惑」が「パワハラ」、「傷害事件」、「裏口入学」といった話題と並列して挙げられており、被告においてそれらの話題と「強姦疑惑」の話題とを特に区別することなく、「下調べが凄い」、「知らなかったことが多い」、「事実でないなら今すぐ訴えるべき」などというメッセージを記載していることからすると、本 件投稿を見る一般的な読者は、そこにいう「疑惑」とは、何ら根拠を伴わず多くの人が真実と受けとめないようなものや、真偽不明なものではなく、相当に具体的で確度の高いものを指していると理解するものと解される。そうすると、本件投稿を見る一般的な読者は、原告が強姦をしたことを強くうかがわせる事実が存在することを被告が述べていると認識するものといえる。 ⑵ したがって、本件投稿は、原告が強姦をしたことを強くうかがわせる事実- 8 - が存在することを摘示するものといえる。そして、これが、原告の社会的評価を低下させることは明らかというべきであり、名誉毀損に当たる。 2 争点⑵(違法性が阻却されるか)について名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図 の社会的評価を低下させることは明らかというべきであり、名誉毀損に当たる。 2 争点⑵(違法性が阻却されるか)について名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明さ れたときは、その行為は、違法性を欠いて不法行為にならないものというべきであるが(最一小判昭和41年6月23日・民集20巻5号1118頁参照)、本件において、被告は、原告が強姦したことを強くうかがわせる事実が存在することについて、それが真実であるとの主張立証をしない(真実と信ずるについて相当の理由があることについての主張立証もしない。)。 したがって、被告が、本件投稿によって、原告が強姦をしたことを強くうかがわせる事実が存在することを摘示する名誉毀損をしたことについて、違法性は阻却されない。 3 争点⑶(損害額)について⑴ 慰謝料 100万円 本件投稿には、令和4年2月15日の時点で3118件の「♡(いいね)」の反応があり(甲1)、本件投稿のリツイート数は、同月14日時点で1000件を超えていること(甲5の3)に照らすと、本件投稿は、相当に多数の人数に見られたものといえる。そして、強姦は、重大な犯罪行為であり、社会的にも厳しい非難の対象となることから、原告が強姦をしたことを強くう かがわせる事実が存在するとの摘示は、原告の社会的評価を大きく低下させるものといえる。 他方で、原告は、本件投稿がされた直後に、「Eさん、これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします。」との返信ツイートをしており(甲5の1)、被害の拡大は 一定程度防止されていると考えられる。また、本件動画(約27分)の 判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします。」との返信ツイートをしており(甲5の1)、被害の拡大は 一定程度防止されていると考えられる。また、本件動画(約27分)の中で- 9 - は、原告が強姦をしたことを強くうかがわせる事実は具体的には述べられておらず(甲2、乙2〈枝番号を含む〉)、本件投稿を見た者の中には、本件動画を注意深く視聴して、原告の強姦疑惑についてはこれを裏付ける具体的な根拠がないと認識した者もいると考えられる。 以上のほか、本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、本件投稿に係る 上記の名誉毀損によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料額は、100万円をもって相当と認める。 ⑵ 弁護士費用 10万円本件事案の性質、審理の経過及び認容額等に照らすと、賠償されるべき弁護士費用は、10万円が相当と認める。 4 結論以上によれば、原告の請求は、110万円及びこれに対する令和4年2月13日(不法行為の日)から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。仮執行免脱宣言は、相当ではないからこれを付さないこととする。よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第20民事部 裁判長裁判官冨上智子 裁判官植田裕紀久 裁判官大西康平 - 10 - (別紙は掲載省略) 申し訳ありませんが、具体的なテキストが提供されていないため、整形を行うことができません。整形したいテキストを提供していただければ、ルールに従って整形いたします。
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