令和6(行ケ)1 人口比例選挙請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年2月6日 広島高等裁判所 岡山支部 棄却
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判決文本文18,297 文字)

令和7年2月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(行ケ)第1号人口比例選挙請求事件口頭弁論終結日令和6年12月19日判決(省略) 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求令和6年10月27日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の岡山県第1区ないし第4区における選挙を無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和6年10月27日に施行された衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、岡山県第1区ないし第4区(以下「本件各選挙区」という。)の選挙人である原告らが、本件選挙における衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法13条1項、別表第1の規定(以下、これらの規定を併せて「本件区割規定」という。)及びこれに基づく選挙区割り(以下「本件選挙区割り」という。)は衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「区画審設置法」という。)3条1項及び憲法(56条2項、1条、前文第1段第1文、43条1項)に違反し無効であるから、本件区割規定に基づき施行された本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(顕著な事実、当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)⑴ 当事者 ア原告Aは岡山県第1区の選挙人、原告Bは岡山県第2区の選挙人、原告Cは岡山県第3区の選挙人及び原告Dは岡山県第4区の選挙人である。 イ被告は、本件各選挙区について、本件選挙における小選挙区選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である。 ⑵ 本件選挙について 3区の選挙人及び原告Dは岡山県第4区の選挙人である。 イ被告は、本件各選挙区について、本件選挙における小選挙区選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会である。 ⑵ 本件選挙についてア公職選挙法は、衆議院議員の選挙制度につき、小選挙区比例代表並立制を採用しており、衆議院議員の定数は465人とされ、そのうち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員とされている(同法4条1項)。 小選挙区選挙については、全国に289の選挙区を設け、各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1 項、別表第1。本件区割規定)、投票は小選挙区選挙につき1人1票とされている(同法36条)。 イ令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日、本件選挙区割りの下で本件選挙が施行された。本件選挙区割りの下では、令和2年10月1日を調査時とする大規模国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.999となり、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(北海道第3区)との間で1対2.059であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった(乙3、26の1)。 ⑶ 区画審設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号)の成立ア衆議院議員総選挙に関する選挙無効訴訟において、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決(民集65巻2号755頁。 以下「平成23年大法廷判決」という。)は、平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙につき、当時の選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとして、投票価値の平等の要請にか 。 以下「平成23年大法廷判決」という。)は、平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙につき、当時の選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとして、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置 を講ずる必要があると判示し、また、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決(民集67巻8号1503頁。以下「平成25年大法廷判決」という。)は、平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙につき、当時の選挙区割りも憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとして、国会においては選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 平成25年大法廷判決の前後を通じ、国会においては、1票の較差を是正すべく、「選挙制度に関する与野党実務者協議」により選挙制度の改革について各党間の協議が続けられていたが、各党の意見は一致せず、平成26年6月19日、衆議院に、衆議院議院運営委員会での議決に基づき、議長の諮問機関として、衆議院選挙制度に関する調査・検討等を行うための有識者による「衆議院選挙制度に関する調査会」(以下「選挙制度調査会」という。)が設置され、調査検討が行われた。 そのような中で、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決(民集69巻7号2035頁。以下「平成27年大法廷判決」という。)は、平成26年12月14日施行の衆議院議員総選挙につき、当時の選挙区割りも憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとして、平成25年大法廷判決と同様、国会においては、選挙制度調査会において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約を早急に進め選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けら 様、国会においては、選挙制度調査会において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約を早急に進め選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 選挙制度調査会は、多数回にわたって議論を重ね、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、次のような答申(以下「本件答申」という。)を提出した。 本件答申は、①衆議院議員の定数を10削減して465人とする、②投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて都道府県 に配分すること、選挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をいわゆるアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式)により行う、③各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)において、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うというものであった。(乙6、10の1~13)イ本件答申を受けて、平成28年5 て、各都道府県への議席配分の変更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うというものであった。(乙6、10の1~13)イ本件答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用することなどを内容とする区画審設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号)が成立し、即日施行された(附則1条)。 ウ上記改正後の区画審設置法(以下、改正前後を通じて「区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、①1項において、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、②2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(簡易国勢調査)の結果による 各選挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定する。そして、区画審設置法3条は、区割基準について、①1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下同じ。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、同法4条1項の規定 最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、②2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、③3項において、同法4条2項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 上記改正後の直近の大規模国勢調査は平成32年(令和2年)に行われるため、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更は令和2年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき行われることとなった。なお、上記改正法案の提出者は、国会審議において、アダムズ方式の導入を令和2年国勢調査以後とした理由について、次のとおり答弁した。 すなわち、①成立した法律をあえて遡及適用することは例外的である、②仮に、平成22年の大規模国勢調査(以下「平成22年国勢調査」という。) に基づいてアダムズ方式を導入した場合、平成27年の簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果が出ているのに、古い国勢調査の結果である平成22年国勢調査の数値を用いる合理性があるとはいえない、③平成22年国勢調査の結果が出てか 7年の簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果が出ているのに、古い国勢調査の結果である平成22年国勢調査の数値を用いる合理性があるとはいえない、③平成22年国勢調査の結果が出てから既に2回の衆議院議員総選挙を経ているにもかかわらず、同国勢調査の結果を用いて新たに議席を配分し直すとするならば、それにより従前と異なる議席を配分された都道府県の選挙人を中心に、これら2回の総選挙の正当性や選挙された議員の地位に対し疑念を抱かせることになるという問題がある、④4年後には次の大規模国勢調査が控えており、立て続けに都道府県への定数配分の見直しを行うこととなって、制度の安定性に欠けるという問題がある、というものであった。(乙6、11の1・2、14の1)エ区画審設置法は、令和2年国勢調査後にアダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年国勢調査の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、区画審設置法3条の規定にかかわらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結 の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づ く選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年(令和2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。(乙11の2、13)⑷ 公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号)の成立ア区画審設置法2条は、区画審は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものと規定し、同法4条1項は、勧告は大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとすると規定しているところ、令和2年国勢調査が実施され、その結果(速報値)が令和3年6月25日に官報で公示されたことを受け、区画審は、同年7月2日、改定案に係る審議を開始した。 令和2年国勢調査人口の確定値が令和3年11月30日に官報で公示され、アダムズ方式による都道府県別定数配分の10増10減や格差2倍以上となる選挙区が確定した。 区画審は、区画審設置法8条において、必要があると認めるときは、行政機関及び地方公共団体の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができると規定されていることに基づき、都道府県知事に対し、令和3年12月14日、区割りなどについて、地域の実情を踏まえた意見を 長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができると規定されていることに基づき、都道府県知事に対し、令和3年12月14日、区割りなどについて、地域の実情を踏まえた意見を提出するように照会を行った。これに対し、令和4年1月、各都道府県知事から意見が寄せられたが、多数の知事から、区割りについては分割市区町の創出を回避し、その解消を求める意見が述べられた。 区画審は、令和4年2月21日、改定案の作成方針を取りまとめた。この作成方針には、上記のとおりの各都道府県知事からの意見を踏まえ、一定の基準に当てはまらない限り、市(指定都市にあっては行政区)区町村の区域は分割しないことを原則とする旨の内容が含まれていたほか、行政区画に併 せ、地勢、交通、人口動向、改定に係る市区町村の数又は人口その他の自然的社会的条件を総合的に考慮するに当たり、令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)における当日有権者数において較差2倍以上となっている状況も考慮するという内容が含まれていた。 上記作成方針の下、区画審は、調査審議を経た上で改定案を取りまとめ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し、改定案(以下「本件改定案」という。)の勧告(以下「本件勧告」という。)を行った。 本件改定案は、アダムズ方式を適用して初めて選挙区の区割りの見直しを図ったもので、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県及び愛知県で定数を合計10増加させ(東京都は5増、神奈川県は2増、埼玉県、千葉県及び愛知県は各1増)、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県及び長崎県で定数を合計10減少させるとともに(各1減)、上記の都県を含む25都道府県の合計140の選挙区において区割りを改め、分割市区町を105か 滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県及び長崎県で定数を合計10減少させるとともに(各1減)、上記の都県を含む25都道府県の合計140の選挙区において区割りを改め、分割市区町を105から32に減少させ、令和2年国勢調査による日本国民の人口を基準としても、また、令和3年選挙における当日有権者数を基準としても、較差が2倍未満となるように作成された。具体的には、本件改定案の下では、令和2年国勢調査による日本国民の人口を基準とすると、各都道府県間の議員1人当たり人口の最大較差は1.697倍となり、選挙区間の最大較差(人口)は、鳥取県第2区と東京都第22区との2.096倍から、鳥取県第2区と福岡県第2区との1.999倍に縮小(較差(人口)が2倍以上の選挙区は23区から0区に縮小)された。 なお、区画審の委員は、本件改定案について、選挙区間の最大較差(人口)が1.999倍に縮小したとはいえ、1.9倍を超える選挙区は19選挙区あり、今後の人口動向の傾向からすると、早晩、較差が2倍以上となる選挙区が生じることが考えられるのではないかとの国会での質問に対し、区画審設置法においては、令和2年国勢調査人口において選挙区間の人口較差を2 倍未満とする旨が明確に規定されていること、合理性のある将来推計人口を算出することは困難であることから、令和2年国勢調査人口以外の人口基準を一律に適用すべき改定基準とすることは難しいと判断した、令和7年の簡易国勢調査(以下「令和7年国勢調査」という。)の結果によって較差が2倍以上となったときには同法4条2項によって適切に対応されるものと思うと答弁した。 (甲9、81の2、乙2、25~27の1、28の1~29の1)イ本件勧告を受け、本件改定案のとおりに小選挙区の区割改定を行うことなどを内容とする公職 適切に対応されるものと思うと答弁した。 (甲9、81の2、乙2、25~27の1、28の1~29の1)イ本件勧告を受け、本件改定案のとおりに小選挙区の区割改定を行うことなどを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律案が、令和4年11月18日、公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号)として成立した。本件改定案の内容が本件区割規定である。(乙2) 3 争点本件における主な争点は、本件選挙における本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りが区画審設置法又は憲法に違反するかである。 4 争点に関する当事者の主張(原告らの主張)⑴ 区画審は、区画審設置法3条1項、4条2項に従って、令和2年国勢調査の結果による人口での各選挙区間の最大較差が2倍未満となるよう、かつ、令和2年国勢調査以降令和7年国勢調査までの5年間、令和7年見込人口での各選挙区間の最大人口較差が2倍未満となるように、改定案を作成しかつ勧告する義務を負うと解されるところ、日本では、令和2年から令和32年までの間、一貫して人口が減少するから、区画審が令和2年国勢調査人口を基準に各選挙区間の最大人口較差を1.999倍に設定して改定案を作成すれば令和7年国勢調査時までの間に各選挙区間の最大人口較差が常に2倍以上になると統計上合理的に推察され、また、令和4年1月の住民基本台帳人口において最大人口較差が2.034倍であって、区画審は、これを認識し、又は認識し得たのに、同年6月16日、上記義務に違反して、本件改定案を作成し本件勧告を行 った。 このように、本件改定案は、区画審の上記義務違反により作成されたものであるから、本件改定案どおりの本件区割規定及び本件選挙区割りは区画審設置法3条1項、4条2項に違反し無効であり、これに基づき施行された本件選挙も 改定案は、区画審の上記義務違反により作成されたものであるから、本件改定案どおりの本件区割規定及び本件選挙区割りは区画審設置法3条1項、4条2項に違反し無効であり、これに基づき施行された本件選挙も無効である。 ⑵ア仮に、本件区割規定及び本件選挙区割りが区画審設置法3条1項、4条2項に違反しないとしても、最高裁平成30年12月19日大法廷判決(民集72巻6号1240頁。以下「平成30年大法廷判決」という。)の判断基準に照らすと、本件区割規定及び本件選挙区割りは区画審設置法3条1項、4条2項の趣旨に沿った選挙制度とはいえず、違憲状態である。すなわち、平成30年大法廷判決は、平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙について、令和2年国勢調査までの5年間を通じて各選挙区間の人口の最大較差が2倍未満となるように当該選挙区割りが定められたという立法措置の内容、これにより当該選挙日当日における選挙区間の選挙人数の最大較差が1対1.979に縮小したという較差の状況を踏まえ、上記選挙当時には区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるとした。要するに、平成30年大法廷判決は、選挙日での各選挙区間の最大有権者数較差が2倍未満であることが区画審設置法3条1項の趣旨であると判断したものである。他方、本件選挙区割りは、選挙区間の最大人口較差が令和2年国勢調査の結果によって1.999倍であるから、令和7年国勢調査までの5年間を通じて、当初の期間を除いて、一貫して2倍以上になると統計上合理的に予想され、また、実際にも本件選挙区割りは本件選挙当日で各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上であった。そうすると、本件区割規定及び本件選挙区割りは、平成30年大法廷判決の判断基準に照らすと、区画審設置法3条1項、4条2項の趣旨に 割りは本件選挙当日で各選挙区間の最大有権者数較差が2倍以上であった。そうすると、本件区割規定及び本件選挙区割りは、平成30年大法廷判決の判断基準に照らすと、区画審設置法3条1項、4条2項の趣旨に沿った選挙制度とはいえず、違憲状態であるから、本件選挙も違憲状態である。 また、最高裁令和5年1月25日大法廷判決(民集77巻1号1頁。以下「令和5年大法廷判決」という。)は、令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙について、較差の拡大は区画審設置法の定める枠組みの中で是正されることが予定されているとして違憲状態でないと判示したが、本件選挙は本件選挙当日で各選挙区間の最大有権者数較差が2.06倍であって、その枠組み、すなわちアダムズ方式導入の下でも是正が図られていないから、上記判示に照らすと、やはり、違憲状態である。 イ上記⑴のとおり、日本では、一貫して人口が減少すると統計上合理的に予測され、実際にも、令和4年1月の住民基本台帳人口において各選挙区間の最大人口較差が2.034倍に達していたことからすると、区画審が、令和4年6月16日、令和2年国勢調査人口を基準に各選挙区間の最大人口較差を1.999倍に設定した本件改定案を作成して本件勧告を行い、国会が本件改定案どおりに本件区割規定を定めた(公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号))ということでは、国会が選挙区間の最大人口較差を2倍未満にするための取組を具体的に行ったとは解されない。 しかも、公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号)には、同法施行後においても選挙制度は不断に見直し、人口減少や地域間格差が拡大している現状を踏まえて議員定数や地域の実情を反映した選挙区割りの在り方等に関し国会において抜本的な検討を行い、次回の令和7年国勢調査の結果が ても選挙制度は不断に見直し、人口減少や地域間格差が拡大している現状を踏まえて議員定数や地域の実情を反映した選挙区割りの在り方等に関し国会において抜本的な検討を行い、次回の令和7年国勢調査の結果が判明する時点を目途に具体的な結論を得るよう努力するとの附帯決議が付されたが、その後は、令和5年12月18日に「現行制度の在り方に係る論理の整理、今後本格的な議論を深めていく際に必要な視点の提示などを内容とする報告書」が衆議院選挙制度協議会により作成され、令和6年6月21日に第213回通常国会で「選挙等改革の推進に関する法律等」が閉会審査とされたにとどまることからすると、国会は、同法施行以降本件選挙日までの間、選挙区間の最大人口較差を2倍未満にするための取組を具体 的には行っていない。 したがって、合理的期間は徒過済みである。 ウよって、本件区割規定及び本件選挙区割りは違憲無効であり、これに基づき施行された本件選挙も無効である。 ⑶ 憲法56条2項は、「両議院の議事」については、各院の各議員が、全員、1票を投票する権利を有し、「出席議員の過半数でこれを決」するとするところ、各議員は、全員、「主権」(憲法1条及び前文第1段第1文後段)を有する「全国民を代表する」(憲法43条1項)「国会における代表者」(憲法前文第1段第1文前段)である。 そして、「両議院の議事」の出席議員の過半数決の議決において、各議員が投票する1票は全て等価値であるので、「全国民を代表する」「国会における代表者」でしかない各議員(国会議員の資格で主権を有しない)は、全員、各国政選挙の選挙区割り制ごとに、同じ人数(全有権者数÷定数)の主権を有する有権者から選出されることが求められるところ、これは、人口比例選挙、すなわち、1人1票等価値の選挙によっ しない)は、全員、各国政選挙の選挙区割り制ごとに、同じ人数(全有権者数÷定数)の主権を有する有権者から選出されることが求められるところ、これは、人口比例選挙、すなわち、1人1票等価値の選挙によってのみ実現可能である。このような解釈は、主権を有する国民が主権を行使して「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」すること(憲法1条、前文第1段第1文、56条2項、43条1項)に適合する。 したがって、憲法1条、前文第1段第1文、56条2項、43条1項は人口比例選挙を要求していると解される。もっとも、上記の「同じ人数」は、実際の選挙では、合理性の基準に照らし、実務上できる限りの「同じ人数」で足りると解され、憲法が要求する人口比例選挙は、できる限りの人口比例選挙、要するに、合理的に実施可能な限りでの人口比例選挙であれば足りる。 しかしながら、本件選挙においては、各選挙区間の最大有権者数較差が2. 06倍であり、できる限りの人口比例選挙を要求する憲法56条2項、1条、前文第1段第1文、43条1項に違反し、違憲無効である。 (被告の主張)⑴ 原告らの主張⑴、⑵は争う。 区画審設置法3条1項は、均衡を図るべき各選挙区の人口について、直前の大規模国勢調査の結果による日本国民の人口であることを明記する一方、その後の人口動態については何ら規定しておらず、また、同法4条2項は、同条1項にいう大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に実施された簡易国勢調査の結果を踏まえて区画審が行うべき勧告について規定したもので、同項の大規模国勢調査から同条2項の将来の簡易国勢調査までの期間の人口動態について何ら規定していない。このように、同法3条1項、4条2項は、いずれも大規模国勢調査から簡易国勢調査の人口動態について考慮しなければ 勢調査から同条2項の将来の簡易国勢調査までの期間の人口動態について何ら規定していない。このように、同法3条1項、4条2項は、いずれも大規模国勢調査から簡易国勢調査の人口動態について考慮しなければならないことを規定したものではないから、原告らの上記主張は理由がない。 なお、原告らが指摘する同法附則2条3項1号ロも、同項柱書に「区画審設置法第3条の規定にかかわらず」とあるように、アダムズ方式の導入が令和2年国勢調査後とされ、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定案の作成がアダムズ方式導入前の緊急是正措置として行われることとなることも考慮して、選挙区間の較差について特に配慮し、これを補完する趣旨で規定されたことが明らかである。 ⑵ 原告らの主張⑶は争う。 ア憲法はできる限り投票価値が平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることを求める一方で、選挙制度の決定について国会の広範な裁量に委ね、議席の配分及び選挙区割りの決定に際し、合理性を有するものであれば、投票価値の平等以外の種々の要素を考慮することを許容している。 新区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのできるものであるから、合理的なものということができる。このように合理性の認められる新区割制度により改定 された選挙区割りについては、投票価値の較差の拡大がみられるとしても、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえないというべきである。そして、本件選挙区割り というべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえないというべきである。そして、本件選挙区割りについては、上記のような事情があるということはできない。 したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 イ仮に、本件選挙区割りが違憲状態にあったと評価されるとしても、令和5年大法廷判決は令和3年選挙当時の選挙区割りについて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたとはいえないと判断したこと、本件選挙は、令和5年大法廷判決後に初めて行われた衆議院議員総選挙であり、令和3年選挙施行後に較差是正のために公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号)が成立したことも考慮すれば、国会において、本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていることを認識すべき契機が存在したとはいえず、その状態を認識し得ない状況であった。 したがって、国会が、憲法上要求される合理的期間にその是正をしなかったということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決 定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙に の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決 定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号 決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁、最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、 平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 2 前記1の見地に立って、本件選挙当時の本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りの合憲性について検討する。 ⑴ 前記前提事実⑶のとおり、平成26年6月に設置された衆議院議長の諮問機関である選挙制度調査会において、衆議院選挙制度に関する検討が重ねられ、平成28年1月に、衆議院議員の定数を削減するとともに、投票価値の較差を是正するための新たな議席配分方式として、各都道府県の人口に比例した配分方式の一つであるアダムズ方式を採用することなどを内容とする本件答申がされ、これを受けて、本件答申と同内容の規定(新区割制度)を設ける区画審設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号)が成立した。 新区割制度は、前記前提事実⑶ウのとおり、区画審による改定案の勧告につき、投票価値の平等の要求を踏まえて、各都道府県への定数配分を人口比例方式の一つであるアダムズ方式によって行い、かつ、選挙区間の人口の最大較差を2倍未満とすることを求める一方、頻繁な選挙区改定による き、投票価値の平等の要求を踏まえて、各都道府県への定数配分を人口比例方式の一つであるアダムズ方式によって行い、かつ、選挙区間の人口の最大較差を2倍未満とすることを求める一方、頻繁な選挙区改定による有権者の混乱の防止等の観点から、勧告は令和2年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うほか、その5年後に行われる簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うこととするとともに、政治や行政の実際において重要な役割を果たしている都道府県にまず定数を配分することとし、都道府県内の選挙区割りについては、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うことを求めるというものであって、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも、国会が正当に考慮することのできる他の要素をも考慮して選挙区割りを定める合理的な仕組みであるということができる。 ⑵ そして、前記前提事実⑵及び⑷のとおり、令和2年国勢調査の結果の公示以 後、区画審は、合理的な選挙制度というべき新区割制度の下、小選挙区選出議員の選挙区の改定案に係る審議を行い、各都道府県知事からの意見を踏まえ、原則として市区町村の区域は分割せず、行政区画、地勢、交通、人口動向、改定にかかる市区町村の数又は人口その他の自然的社会的条件を総合的に考慮するに当たり、令和3年選挙における当日有権者数において較差2倍以上となっている状況も考慮するという作成方針の下、令和4年6月、アダムズ方式を適用して初めて選挙区の区割りの見直しを図った本件改定案を作成し本件勧告を行った。本件改定案の下では、令和2年国勢調査の結果による選挙区間の投票価値の較差は最大較差(人口)で1対1.999と2倍未満であった 初めて選挙区の区割りの見直しを図った本件改定案を作成し本件勧告を行った。本件改定案の下では、令和2年国勢調査の結果による選挙区間の投票価値の較差は最大較差(人口)で1対1.999と2倍未満であった。そうすると、これを受けて成立した公職選挙法の一部を改正する法律(令和4年法律第89号)における、本件改定案のとおりの小選挙区の区割改定を行う規定(本件区割規定)は、投票価値の平等を基本としつつも、都道府県を細分化した市区町村を基本的な単位とし、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況といった民意の的確な反映を実現するために必要な諸要素を考慮して定められたものということができる。 もっとも、本件選挙区割りの下では、本件選挙当日の選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.059であり、較差(選挙人)が2倍以上となった選挙区が10存在することとなった。 新区割制度は、上記⑴のとおり、選挙区割りの改定案において選挙区間の人口の最大較差を2倍未満とすることを求めているが、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し最大較差が2倍以上となることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うことなどによってこれを是正することとしているのであり、新区割制度と一体的な関係にある本件選挙区割りの下で拡大した較差も、新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができる。このような仕組みは、上記⑴のとおり、 是正の時期が合理的に定められている以上、投票価値の平等の確保と頻繁な選挙区改定による有権者の混乱の防止等選挙制度の安定性との調和の観点から合理性を有するものといえる。そうすると、本件選挙区割りの下で較差が拡大し、最大較差が2倍 る以上、投票価値の平等の確保と頻繁な選挙区改定による有権者の混乱の防止等選挙制度の安定性との調和の観点から合理性を有するものといえる。そうすると、本件選挙区割りの下で較差が拡大し、最大較差が2倍以上となったとしても、当該較差が新区割制度の枠組みの中で是正される限り、国会が正当に考慮することのできる他の要素を考慮した結果として生じたものということができるから、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない。 上記のとおり、本件選挙当日の選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.059で、較差(選挙人)が2倍以上となった選挙区が10存在することとなったが、選挙区間の投票価値の較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものとはいえず、また、上記較差については、令和7年国勢調査の結果を踏まえて2倍未満となるように是正されることとなっているから、上記の較差の拡大をもって、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできない。 ⑶ したがって、本件選挙当時において、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 3 原告らの主張について⑴ 原告らは、区画審設置法3条1項及び4条2項は、本件改定案について、令和7年国勢調査までの期間を通じて、選挙区間の人口の最大較差が2倍未満となるように求 い。 3 原告らの主張について⑴ 原告らは、区画審設置法3条1項及び4条2項は、本件改定案について、令和7年国勢調査までの期間を通じて、選挙区間の人口の最大較差が2倍未満となるように求めている旨主張する。 同法3条1項は、区画審の改定案の作成は、令和2年国勢調査の結果による日本国民の人口に基づいて各選挙区の均衡を図り、選挙区間の人口較差が2倍以上とならないよう、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない旨規定しており、その後の人口動態については何ら規定していない。また、同法4条2項は、同条1項にいう大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に実施される簡易国勢調査の結果を踏まえて区画審が行うべき勧告について規定したものであって、同項の大規模国勢調査から同条2項の簡易国勢調査までの間の人口動態については何ら規定していない。原告らが指摘する同法附則2条3項1号ロについても、平成32年の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とする旨規定するが、これは、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が、国会審議の結果、次回の大規模国勢調査(令和2年国勢調査)の時期が近いこともあって、法律成立以前に遡らせることなく、令和2年国勢調査の結果に基づくものからと決められたことに伴い、それまでの投票価値の較差是正のための措置として設けられたものにすぎず(前記前提事実⑶ウ、エ)、新区割制度の下において将来の人口動態を加味して改定案を作成すべきとするものではない。 そうすると、区画審設置法3条1項及び4条2項は、いずれも令和2年国勢調査から令和7年国勢調査までの期間を通じての人口動態について考慮しなければならないことを規定したものということはできず、原告らの上記主張は採用 審設置法3条1項及び4条2項は、いずれも令和2年国勢調査から令和7年国勢調査までの期間を通じての人口動態について考慮しなければならないことを規定したものということはできず、原告らの上記主張は採用することができない。 なお、原告らは、選挙当日の各選挙区間の最大有権者数較差が2倍未満であることが同法3条1項の趣旨であるとも主張するが、上記判示の同項の内容からはそのように解することはできない。 ⑵ 原告らは、本件選挙は、できる限りの人口比例選挙を要求する憲法56条2項、1条、前文第1段第1文、43条1項に違反すると主張する。 しかしながら、前記2で説示したところに照らせば、憲法のこれらの規定か ら原告らの主張するような人口比例選挙の要請が当然に導かれるということはできず、原告らの上記主張は採用することができない。 4 結論以上のとおり、本件選挙区割りが、本件選挙当時、区画審設置法又は憲法に違反するに至っていたということはできないから、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 よって、原告らの請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民訴法65条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第2部 裁判長裁判官井上一成 裁判官木村哲彦 裁判官國屋昭子

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