平成12(行コ)42 違法公金支出金返還請求控訴事件(原審 岐阜地方裁判所平成8年(行ウ)第11号)

裁判年月日・裁判所
平成14年1月23日 名古屋高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文10,605 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 請求の趣旨の訂正に基づいて,原判決主文第一項を次のとおり変更する。 (1) 控訴人A及び控訴人Bは,連帯して,大垣市に対し,670万5410円及びこれに対する平成7年11月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 (2) 控訴人Cは,控訴人A及び控訴人Bと連帯して,大垣市に対し,335万2705円及びこれに対する平成7年11月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 (3) 控訴人D及び控訴人Eは,控訴人A及び控訴人Bと連帯して,大垣市に対し,それぞれ167万6352円及びこれに対する平成7年11月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人ら(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文と同旨(被控訴人は,承継前控訴人Fが平成13年3月3日に死亡し,同人の妻である控訴人C,子である控訴人D及び控訴人Eが相続したことにより,請求の趣旨を主文第2項の(1)ないし(3)のとおり訂正した。)第2 事実関係本件は,大垣市の住民である被控訴人が,同市内の納税貯蓄組合に対する同市の補助金の支出行為が,納税貯蓄組合法に違反して違法である旨主張して,当時の市長(当審係属中に市長在職のまま死亡し,妻と2人の子が訴訟承継した。)並びに収入役及び総務部長に対して,同補助金相当額を大垣市に返還することを求めた住民訴訟の控訴審である。 1 争いない事実並びに証拠(乙4,5,乙21の1ないし4,乙22,乙23の1,2,乙24ないし27)及び弁論の全趣旨により容 ,同補助金相当額を大垣市に返還することを求めた住民訴訟の控訴審である。 1 争いない事実並びに証拠(乙4,5,乙21の1ないし4,乙22,乙23の1,2,乙24ないし27)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実(1) 被控訴人は,大垣市の住民であり,かつ同市議会の議員である。 平成7年当時,承継前控訴人Fは大垣市長の地位にあり,控訴人Aは同市収入役の地位にあり,控訴人Bは同市総務部長の地位にあった。 承継前控訴人Fは平成13年3月3日に死亡し,同人の妻である控訴人C(相続分2分の1),子である控訴人D及び控訴人E(相続分各4分の1)が,承継前控訴人Fを相続した。 (2) 大垣市は,納税貯蓄組合法(昭和26年法律145号)の制定,施行に伴って,昭和26年4月,大垣市納税貯蓄組合補助金交付規則(以下「本件規則」という。)を定め,納税貯蓄組合に対する補助金制度を設けた。 本件規則は,昭和41年に全部改正され,その後も昭和51年,昭和62年,平成5年等に改正された。 (3) 控訴人らは,大垣市議会に対し,本件規則に基づいて,納税貯蓄組合に対する補助金を計上した平成7年度大垣市予算案を提出し,同市議会は,平成7年3月,同補助金を計上した平成7年度大垣市予算を決議した(以下,同予算を「本件予算」といい,同決議を「本件予算決議」という。)。 (4) 承継前控訴人Fは,平成7年10月31日,大垣市長として,本件規則に基づき,同市内に存在する合計412の納税貯蓄組合(以下,併せて本件組合)という。これら組合がいずれも,納税貯蓄組合に基づく組合として成立したことについては争いがないが,その後,平成7年までに同法に基づかない任意団体に変化したか否かについては,争点(1)のとおり争いがある。)に対し平成7年度前期(同年4月ないし9月)分の補助金として合計 ことについては争いがないが,その後,平成7年までに同法に基づかない任意団体に変化したか否かについては,争点(1)のとおり争いがある。)に対し平成7年度前期(同年4月ないし9月)分の補助金として合計670万5410円(以下「本件補助金」という。)を交付すること等について,主管課である総務部収納課の求めにより,本件補助金を交付することを決裁した。これにより,総務部長である控訴人Bは,大垣市事務専決規程に基づいて,本件補助金の交付決定(支出負担行為)及び支出命令を専決した。 控訴人Aは,大垣市の収入役として,上記支出命令を審査し,平成7年11月30日,本件組合(合計412組合)に対し,本件補助金の口座振込を実施して,これを支出した(以下,上記の支出負担行為,支出命令及び支出を併せて「本件支出」という。)。 (5) ところで,納税貯蓄組合法(昭和26年法律145号)の目的は「納税貯蓄組合の健全な発達を図り,もって租税の容易且つ確実な納付に資せしめること」(同法1条)であり,同法10条1項は,補助金の交付目的として事務費を補うためと規定するとともに,同条2項において,納税貯蓄組合の役員又は組合員の報酬の支払に充てるために補助金を交付することを禁止し,補助金の交付目的を組合の事務費の補助に限定している。また,納税貯蓄組合法10条3項は,補助金交付の手続については政令で定める旨規定し,これを受けて,同法施行令4条1項1号は,納税貯蓄組合が補助金の交付を受けようとするときは,費用の金額及びその費途別の内訳を記載した補助金交付申請書を提出することを義務づけている。 一方,本件規則は,1世帯又は1法人あたり100円の割合で組合事務補助金を交付する旨定め,また,納期内納税率に応じて納税奨励補助金(納期内納税率100パーセントの場合は納税額の2パーセント いる。 一方,本件規則は,1世帯又は1法人あたり100円の割合で組合事務補助金を交付する旨定め,また,納期内納税率に応じて納税奨励補助金(納期内納税率100パーセントの場合は納税額の2パーセント,同95パーセント以上100パーセント未満の場合は納税額の1パーセント)を交付する旨定めている。さらに,本件規則は,もと補助金交付申請書の提出及びその記載内容に関する規定を有したが,同規定は,昭和41年の改正により削除された。 (6) 被控訴人は,平成8年5月13日,本件支出につき,大垣市監査委員会に対し,地方自治法242条1項に基づく監査請求をしたが,同委員会は同年7月1日,被控訴人の監査請求を棄却する旨の決定をし,同日,被控訴人に通知した。 (7) 大垣市は,本件支出に関して,承継前控訴人F(又はその相続人ら)に対し,不法行為に基づく損害賠償の請求をしていない。 また,大垣市は,控訴人A及び控訴人Bに対し,地方自治法243条の2第1項に基づく損害賠償の請求をしていない。 2 争点(1) 本件組合は,本件支出当時,納税貯蓄組合法に基づかない任意団体であったか。 ア控訴人らの主張本件組合はいずれも,成立当初は納税貯蓄組合法に基づく組合であったが,本件支出当時には既に同法に基づかない任意団体たる納税組合となっていた。 (ア) 昭和26年の納税貯蓄組合法等の施行に伴い,大垣市は本件規則を定めて,納税奨励補助金や組合奨励補助金などの制度を設け,納税貯蓄組合から補助金交付申請書の提出を受けて,補助金を支出していたが,その後,奨励補助金の引上げや,補助金が機械的に計算できるようになったことから,昭和41年に本件規則を全面改正し,上記申請書についての規定を削除した。 その後も,本件規則については,昭和51年の改正で納税奨励補助金の一部が廃止され,昭和 械的に計算できるようになったことから,昭和41年に本件規則を全面改正し,上記申請書についての規定を削除した。 その後も,本件規則については,昭和51年の改正で納税奨励補助金の一部が廃止され,昭和62年の改正では,プライバシー保護の観点から納税通知書が直接納税者に郵送されるようになったことに伴い,納税通知書の配布についての組合奨励補助金が廃止された。 さらに,平成5年の改正では納税奨励額を縮小するとともに,本件規則から納税貯蓄組合が納税貯蓄組合法に根拠を置く旨の規定を削除し,同法に基づかない組合であることを明確化した。 (イ) これら改正によって,大垣市における納税貯蓄組合の実態は,納税貯蓄組合法に基づく納税貯蓄組合から,同法に基づかない任意の納税貯蓄組合に変化した。 したがって,本件規則による補助金の交付は,納税貯蓄組合法10条に基づくものではなくなり,地方自治法232条の2及び大垣市補助金等交付規則に基づき,大垣市が組合の健全な発達と市税の容易かつ確実な納付を図るという公益上の必要性を認めて交付することになったものである。 イ被控訴人の反論控訴人ら主張の本件規則の改正は,補助金の算定根拠を変更し,補助金交付申請書の提出規定を削除したにすぎず,組合の実態には何ら変更はない。 また,納税貯蓄組合法に基づく納税貯蓄組合を任意団体に変更するには,納税貯蓄組合法13条に基づく解散の届出が必要であり,さらに,納税貯蓄組合でないものが納税貯蓄組合の名称を使用することは,納税貯蓄組合法14条で罰則をもって禁止されているところ,本件組合のうち上記解散届出の手続をした納税貯蓄組合はないし,本件組合は,本訴提起後まで納税貯蓄組合の名称を使用していたのであるから,任意団体に変化したということはできない。 (2) 本件規則は違法であるか。その違法は本 届出の手続をした納税貯蓄組合はないし,本件組合は,本訴提起後まで納税貯蓄組合の名称を使用していたのであるから,任意団体に変化したということはできない。 (2) 本件規則は違法であるか。その違法は本件支出に承継されるか。 ア被控訴人の主張本件規則は,納税貯蓄組合法が定める要件を緩和して納税貯蓄組合に対する補助金交付をより広く認めているから,納税貯蓄組合法10条及び同法施行令に反して違法である。そして,本件支出は,違法な本件規則に基づいて行われたものであるから,違法である。 イ控訴人らの反論(ア) 本件支出は,本件規則に基づくものであるとともに,本件予算決議に基づくものであり,本件予算決議は,議会の多数による決議であるから,適法であるので,本件予算決議に基づく本件支出も適法である。 (イ) 仮に本件予算決議が違法であったとしても,その違法性は本件支出に承継されない。 a すなわち,先行行為の違法が後行の財務会計行為に承継されるためには,先行行為が著しく合理性を欠き,その結果,これに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵がある場合に限られるが(最高裁平成4年12月15日判決),本件予算決議に,上記のような瑕疵があるとはいえない。したがって,控訴人らは,本件予算決議の内容に従って財務会計上の措置を採るべき義務があるから,本件支出に財務会計法規上の義務に違反する違法性があるということはできない。 b 仮に,本件予算決議に上記のような瑕疵があるとしても,控訴人らが本件予算決議が違法であるか否かの判断を軽々に下すことができない上,控訴人らが本件予算の執行を拒むとなると,予算の執行が確保されないことになるから,控訴人らが本件支出をしたことに違法性はない。 ウ被控訴人の再反論(ア) 本件支出の根拠となったのは本件規則であり,これは,地方自 算の執行を拒むとなると,予算の執行が確保されないことになるから,控訴人らが本件支出をしたことに違法性はない。 ウ被控訴人の再反論(ア) 本件支出の根拠となったのは本件規則であり,これは,地方自治法15条に基づいて,執行機関である地方自治体の首長が自ら制定,改廃できるものであるから,承継前控訴人Fには,納税貯蓄組合法に反する本件規則を改廃する権限及び義務があった。 本件では,執行機関が自ら制定した違法な規則に基づいて本件支出を行ったことの違法性が問われるべきであって,本件予算決議の存在は,本件支出の違法性を検討する上で問題とされるべきではない。 (イ) 仮に本件予算決議の存在が問題になるとしても,本件規則自体が違法である以上,本件予算決議もその限りにおいて違法であるところ,本件では,納税貯蓄組合法10条に違反する本件予算決議の違法性は重大かつ明白であり,また,地方自治体の首長は予算の適法性を独自に判断すべき義務があるから(地方自治法177条),本件支出は本件予算決議の違法性を承継するものであって,同決議の存在によって控訴人らの責任が否定されるものではない。 (3)控訴人B及び同Aには,本件支出を行うについて重過失があったか。 (被控訴人の主張)納税貯蓄組合法10条1項の規定が存在し,同条項が補助金の使途,交付要件を厳格に定めていること,それゆえ,本件支出が違法であることは,控訴人B及び同Aにおいて容易に認識し得,又は認識し得べき事項であった。また,本件支出に先立つ平成3年に,他の地方公共団体でも本件と同種の住民訴訟が提起されており,同事件の被告及び当該地方公共団体が補助金支出の違法性を認め,同訴訟は取下げによって終了した経緯がある。 したがって,遅くともこの訴訟の終了した平成4年には,控訴人B及び同Aは,納税貯蓄組合法に基づかな の被告及び当該地方公共団体が補助金支出の違法性を認め,同訴訟は取下げによって終了した経緯がある。 したがって,遅くともこの訴訟の終了した平成4年には,控訴人B及び同Aは,納税貯蓄組合法に基づかない組合への補助金支出が違法であることを容易に認識し得たはずであるにもかかわらず,これを怠ったのであるから,控訴人B及び同Aには重過失があった。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について証拠(乙4,乙6(各枝番,孫枝番を含む。),乙31,乙37)及び弁論の全趣旨によれば,昭和41年の改正により本件規則から補助金交付申請書の規定が削除されたこと,昭和51年の改正により納税奨励補助金の一部が廃止されたこと,昭和62年の改正により納税通知書の配布についての組合奨励補助金が廃止されたこと,平成5年の改正により本件規則から納税貯蓄組合が納税貯蓄組合法に根拠を置く旨の規定が削除されたことが認められる。 しかし,納税貯蓄組合法12条,14条1号は,納税貯蓄組合でない者が納税貯蓄組合の名称を使用することを禁じ,その違反に対しては過料を科す旨規定しており,また,同法13条は,納税貯蓄組合が解散したときは,同組合の代表者が,設立時に規約の届出をした税務署の長及び地方公共団体の長に対し,解散を届け出なければならない旨規定しているところ,証拠(乙28,乙31,乙36,証人中野昭)によれば,本件規則が平成5年に改正された後も,平成8年10月までは本件組合が「納税貯蓄組合」という名称を用いていたこと,また,平成9年3月までは本件組合の代表者等が税務署長及び大垣市長に対して納税貯蓄組合の解散の届出をしていないことが認められる。これらの事実は,少なくとも本件支出があった当時,本件組合が組織変更されていないことを裏付けるものである上,本件規則について上記アの改正があった 税貯蓄組合の解散の届出をしていないことが認められる。これらの事実は,少なくとも本件支出があった当時,本件組合が組織変更されていないことを裏付けるものである上,本件規則について上記アの改正があったことは,本件補助金の算定根拠を変更し,本件補助金の交付申請手続を変更したにすぎないと認められるので,本件規則の上記改正により,本件組合が納税貯蓄組合法に基づかない任意団体に変化したとは認められない。 2 争点(2)について(1) 本件規則の違法性についてア納税貯蓄組合法10条1項は,「国又は地方公共団体は,納税貯蓄組合に対し,組合の事務に必要な使用人の給料,帳簿書類の購入費,事務所の使用料その他欠くことができない事務費を補うため,予算の範囲内において補助金を支出することができる。但し,国及び地方公共団体が交付する補助金の合計額は,組合が使用した当該費用の金額をこえてはならない。」と規定し,同条3項を受けた同法施行令4条1項1号は,「組合は,納税貯蓄組合法10条1項による国又は地方公共団体の補助金の交付を受けようとするときは,毎年10月から翌年9月までの分について,当該期間内に使用した同項の費用の金額及びその費途別の内訳を記載した補助金交付申請書を,その年10月末日までに当該組合の規約の届出をした税務署長を経由して当該組合の主たる事務所の所在地を管轄する国税局長に,又は当該補助金の交付を受けようとする地方公共団体の長に提出しなければならない。」と規定している。 納税貯蓄組合法及び同法施行令の上記各規定は,国又は地方公共団体が納税貯蓄組合に交付することができる補助金の対象の範囲及び限度額並びにその交付手続を明確にし,もって,国又は地方公共団体の財政の健全性を維持し,納税貯蓄組合の健全な発達を図るため,同組合に対し実際に要した事務費を超え,ま ことができる補助金の対象の範囲及び限度額並びにその交付手続を明確にし,もって,国又は地方公共団体の財政の健全性を維持し,納税貯蓄組合の健全な発達を図るため,同組合に対し実際に要した事務費を超え,また,その補填を図る以外の目的で補助金を交付することを禁止する趣旨であると解され,国又は地方公共団体がこれら各規定に違反して補助金を交付することは許されないというべきである。 イそして,証拠(乙4,乙5,乙6の6の1ないし3,乙6の7ないし14)及び弁論の全趣旨によれば,平成7年11月30日当時の本件規則は,その7条1項で,補助金の種類を,組合事務補助金及び納税奨励補助金と規定するとともに,その内容を,組合事務補助金については,1世帯又は1法人につき100円,納税奨励補助金については,納期内納税率が100パーセントの場合,納税額の2パーセント,納期内納税率95パーセント以上100パーセント未満の場合,納税額の1パーセントと定め,また,同条2項で,「納税奨励補助金の納税額は,1の納税者にかかる1納期毎の納税額が10万円を超えるときは,これを10万円として計算する」旨規定するほか,同条3項では,「市長は,第1項に定めるもののほか組合及び納税貯蓄組合連合会に必要と認める場合は,別に補助金を交付することができる。」と規定しているが,他方,本件規則が組合の事務に欠くことのできない事務費を補うことを上記各補助金の支給の要件としておらず,それらの補助金の支出額について組合の使用した上記事務費の金額を超えてはならないとの制限も設けていないこと,また,当該期間内に使用した上記事務費の金額及びその費途別の内訳を記載した補助金交付申請書の提出を求める規定が存在しないことが認められる。 ウしたがって,本件規則は,納税貯蓄組合法10条1項,3項,同法施行令4条1項1 した上記事務費の金額及びその費途別の内訳を記載した補助金交付申請書の提出を求める規定が存在しないことが認められる。 ウしたがって,本件規則は,納税貯蓄組合法10条1項,3項,同法施行令4条1項1号の要件とかかわりなく,独自の基準により,組合への補助金支給を認めるものであり,納税貯蓄組合法10条1項が定める事務費補填の目的以外の目的をもってする補助金ないし事務費の範囲を超える補助金を許容するものであるから,上記法令に反し違法というべきである。 エちなみに,納税貯蓄組合法10条は,地方公共団体が地方自治法232条の2に対する特別法にあたると考えられるところ,「公益上必要がある場合」には,広く組合に対する補助金を交付し得るとすれば,納税貯蓄組合法が,国又は地方公共団体の財政の健全化及び納税貯蓄組合の健全な発達を図る観点から,納税貯蓄組合の事務に不可欠の費用に限って補助金の交付を認め,その金額は現実に使用した金額を限度とするとして,納税貯蓄組合に対する補助金の交付に具体的な制限を設けた趣旨がそこなわれることが明らかである。したがって,地方公共団体が,この制限を超えて,地方自治法232条の2に基づいて,本件組合に対する補助金を交付することは許されない。 (2) 本件支出の違法性についてア上記(1)のとおり本件規則が違法である以上,これに基づいて行われた本件支出(支出負担行為,支出命令,支出)もまた違法であるというべきである。 本件規則は,昭和26年以来,遅くとも全面改正された昭和41年以来,継続して施行されてきたものではあるが,地方自治法15条に基づいて,大垣市長が制定した規則であるから,大垣市長は,同法同条に基づいて,本件規則を改廃する権限を有し,本件規則が法令に適合しない場合には,これを改廃する義務をも有するに至る。したがって,大垣 基づいて,大垣市長が制定した規則であるから,大垣市長は,同法同条に基づいて,本件規則を改廃する権限を有し,本件規則が法令に適合しない場合には,これを改廃する義務をも有するに至る。したがって,大垣市長であった承継前控訴人Fは,平成7年当時,既に違法となっていた本件規則を改廃する権限と義務を負っていたにもかかわらず,これを改廃せず,本件規則に基づいて本件支出を行ったものであるから,本件規則が既存の規則であったことをもって,本件支出を適法であると主張することはできない。 イ(ア) ところで,控訴人らは,本件支出は本件予算決議に基づくものであり,本件予算決議は議会の多数による決議として適法であるから,本件予算決議に基づく本件支出もまた適法であると主張する。 (イ) しかし,地方公共団体の予算は,毎会計年度,長がこれを調整し(地方自治法149条2号,211条,218条),議会に提出する(同法149条1号)ものであり,議会の議決により成立して,長にこれを執行して公金を支出する権限を与えるとともに,その支出行為を制限するものではあるが,反面,予算の執行であるからといって,支出負担行為,支出命令,支出が当然に適法になるものではない。 すなわち,支出負担行為は,その内容においても,その手続においても,法令又は予算(予算の定める目的,金額,必要性)の定めるところに従わなければならないし(地方自治法232条の3),収入役は,長の命令がなければ支出をすることができず(同法232条の4第1項),同命令を受けた場合においても,当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認した上でなければ,支出をすることができない(同第2項)。 上記のとおりであるから,本件補助金の交付決定(支出負担行為)は,本件予算に いこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認した上でなければ,支出をすることができない(同第2項)。 上記のとおりであるから,本件補助金の交付決定(支出負担行為)は,本件予算に基づくものであることのみから適法であるとはいえず,適法であるためには法令に適合するものであることを要するところ,前記のとおり,上記交付決定は本件規則に基づくものであり,本件規則が法令に反して違法なものである以上,上記交付決定もまた違法であるといわざるを得ない。したがって,同決定に基づく支出命令,支出も違法となり,本件支出は全体として違法である。 (ウ) 以上のとおりであるから,控訴人らの上記(ア)の主張は採用できない。 また,控訴人らは,本件予算決議が違法であるとしても,その違法は本件支出には承継されず,本件支出は適法であると主張するが,上記のとおりであるから,本件予算決議が適法であると違法であるとを問わず,本件支出が違法であるとの判断は左右されない。 3 争点(3)について本件支出は本件規則に基づくものであるところ,前記認定のとおり,本件規則は,補助金の使途,交付要件を厳格に規制した納税貯蓄組合法10条1項等の規定に違反して違法であり,その違法は,同法を検討すれば容易に知り得るものであったから,これを看過した控訴人B及び同Aには,重大な過失があったと認められる。 4 責任前記第2の1の事実及び前記認定事実によれば,承継前控訴人Fは,違法な本件規則に基づく本件補助金の交付決定をすべきでないにもかかわらず,市長として本件補助金の交付を決裁し,これにより実質的に本件補助金の交付決定(支出負担行為)をしたものということができるから,大垣市に対し,過失により本件補助金相当額の損害を与えたというべきである。 また,前記第2の1の事実及び前記認定事 より実質的に本件補助金の交付決定(支出負担行為)をしたものということができるから,大垣市に対し,過失により本件補助金相当額の損害を与えたというべきである。 また,前記第2の1の事実及び前記認定事実によれば,控訴人Bは,総務部長(専決権者)として,本件補助金について支出負担行為(交付決定)及び支出命令を専決し,控訴人Aは収入役として本件補助金の支出を行ったものであり,その際,控訴人B及び同Aには重過失があったから,控訴人B及び同Aは,地方自治法243条の2第1項に基づいて,大垣市に対し損害賠償責任を負う。 なお,承継前控訴人Fの責任と控訴人B及び控訴人Aの各責任は,共同不法行為に基づく責任として不真正連帯の関係に立つというべきである。 5 以上のとおりであるから,本件控訴はいずれも理由がないので,これを棄却するが,被控訴人による請求の趣旨の訂正があったので,これに基づいて原判決を変更し,控訴費用の負担について民事訴訟法67条,61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官大内捷司裁判官佐久間邦夫裁判官加藤美枝子

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