令和4(あ)680 窃盗未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年6月20日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所 令和3(う)765
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判決文本文2,442 文字)

- 1 -令和4年(あ)第680号窃盗未遂被告事件令和5年6月20日第一小法廷決定 主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人中村明宏、同田嶋明日香の上告趣意のうち、刑訴法400条ただし書に関して判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお、所論に鑑み、職権で判断する。 1 本件公訴事実の要旨は、「被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員及び金融機関職員になりすましてキャッシュカードを窃取しようと考え、令和3年3月5日、氏名不詳者らが、滋賀県長浜市内の被害者方に電話をかけ、被害者(当時76歳)に対し、市役所職員及び金融機関職員を名乗った上、過払金を還付する金融機関口座のキャッシュカードが古く、使えないようにする必要があるので、同キャッシュカードを回収しに行く旨のうそを言い、さらに、金融機関職員になりすました被告人が、被害者名義等のキャッシュカード在中の封筒をすり替えて窃取するためのトランプカード在中の封筒を携帯し、同人方付近路上まで赴いたが、氏名不詳者らと通話中の被害者が不審に思って電話を切るなどしたため、その目的を遂げなかった」というものである。 第1審公判において、被告人及び弁護人は、罪状認否で、本件公訴事実記載の事実については特段争わず、弁護人は、本件公訴事実記載の事実経過を前提としても窃盗の実行の着手はないので、法的評価は争う、被告人は無罪である旨主張した。その後、検察官及び弁護人が請求した書証(検察官が請求を撤回した部分を除く。)が全て同意書証として取り調べ 過を前提としても窃盗の実行の着手はないので、法的評価は争う、被告人は無罪である旨主張した。その後、検察官及び弁護人が請求した書証(検察官が請求を撤回した部分を除く。)が全て同意書証として取り調べられ、被告人質問の実施を経て、弁護人- 2 -は、弁論で、検察官による主張事実を前提としても、被告人の行為に実行の着手は認められず、本件で窃盗未遂罪は成立しない旨主張した。 第1審判決は、関係各証拠によって本件公訴事実と同旨の事実を含む事実経過を認定した上、これを前提に、窃盗の実行の着手の有無について検討し、本件においては、氏名不詳者らの犯行計画に従った欺罔行為が開始され、被告人は被害者方付近まで赴いて待機していたが、被告人が被害者と直接やり取りをする行動が開始できるような場所に至らない限り、同犯行計画で予定されていた窃取行為と場所的に近接する行為が行われたと認めるのは困難であり、被告人が被害者方付近で待機していた時点で、同窃取行為と時間的に近接していたと認めるのも困難であることから、窃取行為に密接であり、かつ、その時点で窃取結果を生じさせる客観的な危険性が認められる行為が行われたとは認められず、したがって、窃盗の実行の着手があったとは認められない旨説示し、結局、本件は「被告事件が罪とならないとき」に当たるとして、刑訴法336条により、被告人に対して無罪を言い渡した。 3 これに対し、検察官が控訴を申し立てた。 原判決は、第1審判決が認定した前記2の事実経過及び第1審で取り調べられた各証拠から認められる事実(前記2の審理経過に照らせば、第1審判決も判断の前提としていると解されるもの)を前提として検討し、被告人が前記犯行計画に従って被害者方付近で待機していたことなどに鑑みれば、氏名不詳者らが被害者にうそを告げた行為について、同犯行計画 判決も判断の前提としていると解されるもの)を前提として検討し、被告人が前記犯行計画に従って被害者方付近で待機していたことなどに鑑みれば、氏名不詳者らが被害者にうそを告げた行為について、同犯行計画が目的とするキャッシュカードのすり替え行為と時間的場所的近接性が認められるなどと指摘した上、本件のような態様の窃盗に密接した行為であり、かつ、その行為の開始時点で既に窃盗の既遂に至る客観的な危険性があり、本件のすり替え窃盗の実行の着手を十分認めることができる旨の判断を示し、第1審判決に事実誤認はないが、窃盗未遂罪の成立を否定した点において刑法43条本文の解釈適用を誤った違法があるとして、法令適用の誤りにより第1審判決を破棄し、自らは何ら事実の取調べをすることなく、本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役3年、4年間執行猶予に処した。 - 3 - 4 このような事情の下では、本件公訴事実記載の事実の存在については、第1審判決によって認定されており、原審において第1審の無罪判決を破棄して有罪判決をしたことは、第1審判決の法令の解釈適用の誤りを是正したにとどまるものというべきであるから、原審が事実の取調べをすることなく、訴訟記録及び第1審裁判所において取り調べた証拠のみによって、直ちに本件公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して自ら有罪の判決をしたことは、刑訴法400条ただし書に違反しないというべきである(最高裁昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁、最高裁昭和31年(あ)第3015号同35年11月18日第二小法廷判決・刑集14巻13号1713頁、最高裁昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁参照)。 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官 小法廷判決・刑集14巻13号1713頁、最高裁昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁参照)。 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官安浪亮介裁判官山口厚裁判官深山卓也裁判官岡正晶裁判官堺徹)

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