平成18年10月3日判決言渡平成15年(ワ)第228号理事長・理事・評議員の地位不存在確認等請求事件(甲事件)平成15年(ワ)第561号理事長・理事の地位不存在確認等請求事件(乙事件)平成17年(ワ)第242号理事長・理事の地位不存在確認等請求事件(丙事件)【事案の概要】社会福祉法人である被告法人の理事長及び理事の地位にあった原告X1,理事及び評議員の地位にあった原告X2が,被告法人における一連の理事長選任決議等の無効確認を求めるとともに,原告らが理事長等の権利義務を有する地位にあることの確認を求め,さらに,被告Y2ら個々の理事等が理事等の地位にないことの確認を求めるという事案。 主文 原告らの訴えのうち,請求の趣旨第1項(1),(4),(5),第2項(1)ないし(3)及び第3項(1),(2)にかかる訴え(理事会決議等の無効確認の訴え及び被告Y2らの地位不存在確認の訴え)をいずれも却下する。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求の趣旨 甲事件(1)被告法人の平成11年3月26日開催の理事会における理事長として被告Y1を選任する旨の決議,平成12年9月21日仮理事3名による理事 長として被告Y1を選任する旨の理事長選任行為及び同年12月28日開催の理事会における理事長として被告Y1を選任する旨の決議はいずれも無効であることを確認する。 (2)原告X1が被告法人の理事長及び理事の権利義務を有する地位にあることを確認する。 (3)原告X2が被告法人の理事及び評議員の権利義務を有する地位にあることを確認する。 (4)被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y9及び被告Y10は,いずれも被告法人の理事及び評議員の 告法人の理事及び評議員の権利義務を有する地位にあることを確認する。 (4)被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y9及び被告Y10は,いずれも被告法人の理事及び評議員の地位にないことを確認する。 (5)被告Y11は被告法人の評議員の地位にないことを確認する。 乙事件(1)被告法人の平成15年9月27日開催の理事会における理事長として被告Y8を選任する旨の決議は無効であることを確認する。 (2)被告Y8が被告法人の理事の地位にないことを確認する。 (3)被告法人の平成15年9月27日開催の理事会における理事長として被告Y7を選任する旨の決議は無効であることを確認する。 丙事件(1)被告法人の平成16年2月13日開催の理事会における理事長として被告Y1を選任する旨の決議は無効であることを確認する。 (2)被告Y1が被告法人の理事の地位にないことを確認する。 第2事案の概要 本件は,被告法人の理事長及び理事の地位にあった原告X1並びに理事及び評議員の地位にあった原告X2が,平成11年3月26日開催の被告Y1を理事長に選任した理事会決議以降,平成16年2月13日開催の理事会決議に至るまで,被告法人においてなされた理事長,理事及び評議員を選任する旨の一 連の決議がすべて無効であることの確認を求めるとともに,原告X1は理事長及び理事の権利義務を有する地位に,原告X2は理事及び評議員の権利義務を有する地位にあることの確認を求め,さらに,被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y9及び被告Y10が理事及び評議員の地位にないこと,被告Y11が評議員の地位にないこと,被告Y8が理事の地位にないこと,被告Y1が理事の地位にないことの確認をそれぞれ求めるという事案である。 前提と 被告Y10が理事及び評議員の地位にないこと,被告Y11が評議員の地位にないこと,被告Y8が理事の地位にないこと,被告Y1が理事の地位にないことの確認をそれぞれ求めるという事案である。 前提となる事実(各項目掲記の証拠により容易に認められる。)(1)被告法人は,軽費老人ホーム,老人デイサービスセンター及び在宅介護支援センターの設置経営等の社会福祉事業を行うことを目的として,平成8年1月16日に設立された社会福祉法人である(甲1,12)。 (2)被告法人の定款によれば,役員として理事12名,監事2名を置き,理事のうち1名は,理事の互選により理事長となり,理事長のみが法人を代表することとされていた(定款4条。以下,代表権を有する理事を「理事長」といい,その他の理事を「理事」という。)。また,予算,決算,事業計画や定款の変更その他運営に関する規則の制定及び変更等の事項を審議する評議員会を設け,評議員会は25名の評議員をもって組織することとされており,その選任は,理事会の同意を得て,理事長がこれを委嘱するものとされていた。理事会は,理事総数の3分の2以上が出席しなければ議事を開き,議決することができず(定款5条5項),決議は原則として理事総数の過半数で決定することとされ(同条6項),特別利害関係を有する理事は当該議事の議決に加わることができない(同条7項)ほか,理事の選任等に当たっては,理事総数の3分の2以上の同意を得て,理事長が委嘱する(定款7条)などとされていた(甲1,12)。 原告X1は,被告法人の設立当時の理事であり,平成9年7月22日に理事長に就任した旨の登記が同年8月29日経由された。原告X2は,被 告法人設立当時,理事であり,かつ評議員であった(甲1,2)。 (3)被告法人の法人登記簿謄本等によれば,理事長の就任及び辞 に理事長に就任した旨の登記が同年8月29日経由された。原告X2は,被 告法人設立当時,理事であり,かつ評議員であった(甲1,2)。 (3)被告法人の法人登記簿謄本等によれば,理事長の就任及び辞任等につき,下記のとおり登記が経由されていることが認められる(甲2ないし7,17)。 ア平成11年3月26日,原告X1が理事長を辞任,被告Y1が理事長に就任(いずれも同年5月31日付け登記)。 イ平成12年1月16日,被告Y1が理事長を退任,同年12月28日に再び理事長に就任(いずれも平成13年2月26日付け登記)。 ウ平成14年9月15日,被告Y1が理事長を辞任,Aが理事長に就任(いずれも同月17日付け登記)。 エ平成15年3月21日,Aが死亡により退任し,その後,同年9月27日,被告Y8が理事長に就任(いずれも同年10月20日付け登記。 なお,被告Y7は,同年9月27日,理事長に就任したが,同日辞任している。)。 オ平成16年2月13日,被告Y1が理事長に就任(同年7月23日付け登記)。 争点 (1)平成11年3月26日開催の理事会における理事長選任決議以降,平成16年2月13日開催の理事会における理事長選任決議に至るまで,被告法人において行われた理事長選任決議は無効か。 (2)原告X1が理事長及び理事の権利義務を有する地位を,原告X2が理事及び評議員の権利義務を有する地位を有しているか。 (3)被告Y2,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y9,被告Y10,被告Y11及び被告Y8が理事等の地位にないといえるか。 争点に対する当事者の申立て及び主張 原告らの主張(1)ア原告らが被告法人の理事長あるいは理事を辞任していないこと(ア)原告X1は,平成10年12月ころ,平成11年1月21日,同年 争点に対する当事者の申立て及び主張 原告らの主張(1)ア原告らが被告法人の理事長あるいは理事を辞任していないこと(ア)原告X1は,平成10年12月ころ,平成11年1月21日,同年3月26日,同年5月13日のいずれのときにも,理事長及び理事を辞任していない。また,原告X2は,上記のいずれのときにも,理事及び評議員を辞任していない。 確かに,原告X1は,平成10年12月ころ,辞任届に署名し,これを被告Y1に渡したことがある。しかし,これは,原告X2が,Bから融資を受けた約7000万円について,被告Y1と対立していたことが理由であり,原告X1には,辞任の意思はなく,辞任届に押印もしていない。 また,原告X1は,平成11年1月21日の理事会においても,辞任していない。 なお,同日付けの理事会議事録は二つ存在しており(甲9,10),その一方には,原告X2が「今日ここで,私X2とX1理事長の進退処遇の一切をY1理事に一任したいとの発言がある」「全員一致で一任の決議を承認,続いて辞任の承認」との記載がある(甲10)が,上記議事録は,被告法人らが一方的に作成したものに過ぎず,辞任の承認をしたことなどあり得ない。もう一方の議事録(甲9)には,原告らの辞任をうかがわせる記載は存在しない上に,その後開催された理事会においても,原告X1が理事長として挨拶をしていることが認められ,原告らが平成11年1月21日時点において辞任をしたことはあり得ない。 (イ)原告X1が,平成11年3月26日に理事長を辞任した旨の辞任届(甲8)が存在しているが,上記辞任届に押印された印鑑は原告らのものではなく,原告らにおいて押印した事実もない。 (ウ)原告らは,平成11年5月13日開催の理事会でも辞任していない。 同日の理事会議事録には,原告X1が,それまで 届に押印された印鑑は原告らのものではなく,原告らにおいて押印した事実もない。 (ウ)原告らは,平成11年5月13日開催の理事会でも辞任していない。 同日の理事会議事録には,原告X1が,それまでの理事会で辞任の意を表したとの点について,「私は当日辞任に同意いたしたわけでもなく,また新任の方々に理事をお願いしたりする事に同意いたしておりません」「私が現在も理事長であり,施設長であると確信いたしております」との記載があり,原告X1が同日,辞任したことはあり得ない。 (エ)よって,原告らは,現在に至るまで,原告X1は,被告法人の理事長かつ理事としての権利義務を有する者であり,原告X2は,同じく理事かつ評議員としての権利義務を有する者である。 イ平成12年9月21日の仮理事選任が無効であること(ア)山梨県知事が平成12年9月21日にした仮理事の選任は,重大かつ明白な瑕疵があり無効である。 平成12年9月21日当時,原告らは,理事を辞任していなかったから,理事全員が存在していたことに加え,仮に原告らが平成11年中に辞任をしていたとしても,1年5か月もの期間が経過しており,仮理事選任の要件(民法56条)が存在しなかった。 よって,上記仮理事選任は必要性がなかった。 (イ)また,山梨県知事に対し仮理事選任の申立てをしたCは,原告の事務局長ではなく(当時原告に事務局長という役職はなかった。),仮理事選任の申立てができる利害関係人ではなかった。 そして,理事の全員が不在であったとすれば,理事12名に相当する仮理事の選任をすべきであったにもかかわらず,3名の仮理事が選任されただけである。 (ウ)仮に,上記仮理事選任が有効であったとしても,被告Y1,被告Y7,Aの3名の理事で理事長を互選し得る根拠はない。被告法人の定 款では,理事長は,理事の 名の仮理事が選任されただけである。 (ウ)仮に,上記仮理事選任が有効であったとしても,被告Y1,被告Y7,Aの3名の理事で理事長を互選し得る根拠はない。被告法人の定 款では,理事長は,理事の互選で選任されなければならない旨規定されている(4条2項)が,他方,3名の仮理事が理事長を互選できるといった規定は存在しない。 したがって,被告Y1を理事長に互選したとしても,この措置は根拠のない無効なものである。被告Y1により行われたその後の理事の委嘱も,理事長資格のない者による委嘱であるから無効である。 (エ)平成12年12月28日開催の第21回理事会では,被告Y1が評議員を選任したとされているが,そもそも被告Y1の理事長への互選はなく,同理事会においてもこれは行われていない。 よって,平成13年2月26日付けの平成12年12月28日被告Y1の「理事就任」の登記は何ら実体がないものであり,抹消されるべきものである。 ウAが理事長に就任した事実がなく,後任の理事長選任もないこと(ア)被告法人において平成13年11月28日に開催された第27回理事会は不存在又は無効である。 上記理事会は,役員資格のない被告Y1が召集をしたものであるところ,同人は,(省略:有罪判決)によって執行猶予中であった平成13年1月25日から平成16年1月24日までの間,役員欠格者であった。 役員欠格者が欠格条項に違反して,役員として法人の組織運営等に関わったとすれば重大な手続上の瑕疵が存することとなり,当該欠格者が法人理事会の召集,議事,決議等に関わったとすれば当該事項には重大な手続上の瑕疵が存することとなる。 被告Y1は,役員資格を欠いていたのに理事会を召集し,理事会の議事を取り仕切っていたのであり,このような理事会は手続上重大な瑕疵があり,法律上不存在又は無効 は重大な手続上の瑕疵が存することとなる。 被告Y1は,役員資格を欠いていたのに理事会を召集し,理事会の議事を取り仕切っていたのであり,このような理事会は手続上重大な瑕疵があり,法律上不存在又は無効というほかない。 (イ)被告法人らは,Aは,上記理事会において理事長に互選されたと主張するが,上記理事会は不存在又は無効であるから,このような事実はあり得ない。被告法人らは,上記理事会において,出席理事が8名であり,その理事8名で選任したから,過半数の7名を超えており,実質的にはAを理事長に選任した手続が有効であるとする。 しかし,上記理事会に出席した被告Y6及び被告Y7は,原告X1から理事として委嘱されたことはないから,上記2名と被告Y1を除外すると,6名で理事長を互選したことになり,理事の過半数である7名を下回っており無効である。 (ウ)平成14年3月28日開催の第28回理事会も不存在又は無効である。 上記のとおり,第27回理事会でAが理事長に選任されたことはないのであるから,Aが理事長として召集した第28回理事会は権限のない者が召集した理事会というべきである。 なお,被告Y1は,Aをあらかじめ理事長代理として選任していた旨供述しているが,そのような事実はあり得ない。 また,被告法人らは,第28回理事会において,Aの理事長選任について,追認あるいは再度決議された旨主張する。しかしながら,上記のとおり第27回理事会は不存在又は無効であるから,同理事会で理事長に就任したことはあり得ず,したがって,その追認ということもあり得ない。そして,召集権限のないAが召集した第28回理事会も不存在又は無効であるから,同理事会における再度の適正な決議ということもあり得ない。 エ後任理事長らの就任の不存在(ア)Aが理事長に就任したことがないとすれば のないAが召集した第28回理事会も不存在又は無効であるから,同理事会における再度の適正な決議ということもあり得ない。 エ後任理事長らの就任の不存在(ア)Aが理事長に就任したことがないとすれば,第29回理事会以降の理事会は,権限のない者による理事会の召集であり,当該理事会は不 存在又は無効である。したがって,理事会における理事長の後任者の選任もあり得ない。 (イ)さらに,第29回理事会は,欠格者である被告Y1が理事として出席しており,これは重大な事由であり,出席してはならない理事の出席した理事会は不存在又は無効である。 オ定款変更が無効であること(ア)被告らは,定款を変更し,平成14年10月2日山梨県知事の認可を得たとしているが,この定款変更は,旧定款規定に基づく適正な定款変更手続を履践しておらず無効である。 (イ)被告らは,第28回理事会に出席をした理事は9名であるとするが,被告Y6及び被告Y7は,理事に委嘱されておらず,定足数の計算上除外されなければならないから,出席者は7名であり,定足数8名に達していない。 (ウ)旧定款28条では,理事総数の3分の2以上の同意をもって定款変更を行う旨規定されているが,上記の定款変更は7名の出席理事によって行われたにすぎず,上記規定に違反している。 (エ)上記のとおり定款変更は無効であるから,新しく定められた定款の規定は無効である。 カ被告Y1が,平成16年2月13日ころ,再度の理事に就任したことはないこと(ア)上記のとおり定款変更は無効であるから,被告Y1の再度の理事への就任はないし,新定款に基づく理事就任も無効であるから,理事長として選任されることもあり得ない。被告Y8及び被告Y7も,被告Y1と同様の立場にあるから,法的に理事長及び理事の地位に就いたことはなかった。ま いし,新定款に基づく理事就任も無効であるから,理事長として選任されることもあり得ない。被告Y8及び被告Y7も,被告Y1と同様の立場にあるから,法的に理事長及び理事の地位に就いたことはなかった。また,Aも,被告Y1と同様,理事や理事長に就任したことはない。 (イ)原告X1が理事長を退任したとされた後,旧定款によって被告Y1及びAが,新定款によって被告Y7,被告Y8及び被告Y1が理事長に就任したとされているが,原告X1は,被告法人の理事長及び理事の権利義務を有する者であり,その後に理事長に選任されたとしている者は,すべてその資格を欠くものである。また,原告X2も,依然として被告法人の理事及び評議員の権利義務を有する者である。 (2)被告法人らの反論ア原告X1及び原告X2が理事長あるいは理事を辞任したこと(ア)平成11年1月21日開催の第13回理事会において,原告X2は,自分と原告X1の進退処遇の一切を被告Y1に一任する旨の発言をしたため,被告Y1は,原告らの辞任要請の決議を求め,辞任決議がなされた。 (イ)しかし,原告らは,その後,辞任の効力を争い,原告X1が平成11年3月26日開催の第14回理事会に出席するなどして理事会が混乱したため,同年5月13日開催の第15回理事会には所轄庁である山梨県や当時の○○町の職員数名が理事会に出席する中,第13回,第14回理事会決議において,原告らの辞任があったことの確認が行われた。しかし,原告らがなおも辞任の効力を争ったため,山梨県からの指示により,仮理事選任の申立てを行うこととなった。 イ仮理事選任が有効であること(ア)平成10年4月13日開催の第11回理事会において,被告Y1及びAが理事に選任されたが,その後,理事の選任,辞任等について紛糾し,理事会が正常に運営できない状態 仮理事選任が有効であること(ア)平成10年4月13日開催の第11回理事会において,被告Y1及びAが理事に選任されたが,その後,理事の選任,辞任等について紛糾し,理事会が正常に運営できない状態になった。 (イ)また,被告法人は,山梨県から助成金の不正受給の指摘を受け,その是正を求められたところ,理事会が正常に機能しておらず,適正に対応することができなかったことから,被告法人の当時の事務局長C が山梨県と協議した結果,全理事を任期切れで退任させ,社会福祉法45条を読み替えて準用する民法(平成16年法律第147号による改正前のもの。以下同じ。)56条により山梨県知事が仮理事を選任するための申立てをするよう指示を受けた。 そこで,Cは,上記指示に従い,仮理事選任の申立てをしたところ,平成12年9月21日,山梨県知事によって,被告Y1,A及び被告Y7が仮理事に選任され,他の理事は理事の職を失ったことが確認された。 (ウ)仮理事の業務執行については,山梨県から各仮理事に対し,新理事を早急に選任し,新理事が就任した段階で仮理事を辞任するようにとの指示があったため,仮理事に就任した被告Y1,A及び被告Y7は,直ちに被告Y1を理事長に選任した(登記がないからといって理事長としての権限がないわけではない。)上,平成12年9月25日に第20回理事会を開催して理事を選任した。さらに,同年12月28日に第21回理事会を開催し,理事会の同意を得て,理事長であった被告Y1が評議員を選任した。 (エ)原告らが仮理事の選任無効を主張する点については,本件訴訟で審理することはできず,山梨県知事を被告として仮理事選任処分取消訴訟を提起すべきである。 ウ平成13年11月28日開催の第27回理事会以降の理事会決議が有効であること(ア)被告Y1は,平成1 審理することはできず,山梨県知事を被告として仮理事選任処分取消訴訟を提起すべきである。 ウ平成13年11月28日開催の第27回理事会以降の理事会決議が有効であること(ア)被告Y1は,平成13年1月10日に(省略:刑事裁判で執行猶予付き懲役刑の有罪)判決を受け,上記判決は同月25日に確定した。 したがって,被告Y1は同日から社会福祉法人の理事の欠格事由が生じたことになるが,被告Y1は,欠格事由に該当していることを知らなかったので,理事長としての職務を続けていた。 被告Y1は,同年11月ころ,自らが理事の欠格事由に該当していることを知り,同月28日,第27回理事会を召集し,開催した。出席理事は被告Y1を含め9名で,被告Y1はその理事会の席で,理事長,理事,評議員を辞退する旨申し出,同日の理事会でAを理事長に選任する旨の決議がなされた。 (イ)被告Y1は,第27回理事会開催当時,役員欠格者であり,その被告Y1が上記理事会を召集したことはあるが,上記理事会に出席した理事は8名であり,理事会成立の要件を満たしているし,Aを理事長に選任する決議を含む審議議案全部について出席理事全員(被告Y1を除いても8名)の賛成を得ているので,実質的には上記理事会は有効である。 (ウ)被告Y1が役員欠格者であったことから,被告Y1が召集した第27回理事会の召集手続に瑕疵があったとしても,適正に開催された平成14年3月28日の第28回理事会でAが適正に理事長に選任されている。 被告法人の定款では,本件のように理事長に事故あるときは,理事長があらかじめ指名する他の理事が,順次に理事長の職務を代理する,とされており(定款第6条。甲1),あらかじめ指名していた理事であるAが第28回理事会を召集したのであるから,この理事会の開催は適正である。また,第2 する他の理事が,順次に理事長の職務を代理する,とされており(定款第6条。甲1),あらかじめ指名していた理事であるAが第28回理事会を召集したのであるから,この理事会の開催は適正である。また,第28回理事会には,被告Y1を除き,委任状出席を含む9名の理事が出席していたから,理事会成立のための定足数(理事総数3分の2以上の出席)を満たしている。そして,決議要件のための定足数(理事総数の過半数)で,再度,Aを理事長として,互選する旨の可決を承認したことにより,第27回理事会においてなされた決議が追認あるいは,再度決議が適正になされたのである。 (エ)以上のように,Aが理事長としてなした行為はすべて有効であり, それ以降の手続も有効である。 第3当裁判所の判断 上記前提となる事実に,証拠(甲1ないし18,乙1ないし15。枝番を含む。ただし,甲13,乙13ないし15については,下記認定事実に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)仮理事選任の経緯についてア原告X1は,被告法人の設立後,平成9年7月22日,理事長に就任し(同年8月29日登記),この当時,原告X2は,被告法人の理事に就任し,かつ,評議員の地位にあった。 イ平成11年1月21日開催の第13回理事会では,当時の理事12名(原告らのほか,被告Y9,A,被告Y3,被告Y1,被告Y5,被告Y4,被告Y10,被告Y2,D理事及びE理事のうち,被告Y10,被告Y2,D理事及びE理事を除く8名が出席し,Aを議長として議事が進行した。当該理事会では,E理事とD理事の辞任の件と,新理事2名(被告Y7及び被告Y6)の就任の件が議案とされ,出席理事8名の全員一致で承認がされたほか,原告X2から,原告らの進退処遇を被告Y1に任せる旨の発言があり, ,E理事とD理事の辞任の件と,新理事2名(被告Y7及び被告Y6)の就任の件が議案とされ,出席理事8名の全員一致で承認がされたほか,原告X2から,原告らの進退処遇を被告Y1に任せる旨の発言があり,原告らを除く,出席理事6名及び新理事2名によって,原告らの辞任の議案につき承認することとされた。なお,当該理事会において,原告X1は,新理事として別の人物を推薦していたものの,就任承諾書が得られていなかったことから,継続審議扱いとされていた。そして,空席となった理事長については,被告Y1が理事長代理をつとめる旨の議案につき,残りの理事の全員一致で承認がなされた(甲10,乙10)。 ウ同年3月26日開催の第14回理事会は,被告Y1が理事長代理として開催したが,原告X1は理事として出席し,原告X2は肩書きを暫定理事とし,欠席者として扱われた。この際,原告らが前回第13回理事 会において理事長及び理事を辞任したことが確認され,出席理事7名及び委任状を提出した理事1名により承認がなされた。また,この際,原告らが被告法人の理事長印を改印し,被告法人所有不動産上に無断で抵当権を設定したとの問題が議案として取り上げられ,これにつき,原告X1が説明をするなどした。そして,原告X1を除いた出席理事らは,新理事長を被告Y1とすることを承認したとされた(甲11,乙11)。 エしかしながら,原告X1は,上記理事長及び理事の辞任の効果を争い,結局,同年5月13日の第15回理事会は,原告X1及び原告X2を含め,A,被告Y5,被告Y1,被告Y10,被告Y3,被告Y4,被告Y7,被告Y6,被告Y9及び被告Y2の12名が理事として出席したほか,監事2名に加え,山梨県から当時の課長補佐ほか2名,○○町から課長1名が立会人として出席して開催され,原告X1は,理事長挨拶 Y7,被告Y6,被告Y9及び被告Y2の12名が理事として出席したほか,監事2名に加え,山梨県から当時の課長補佐ほか2名,○○町から課長1名が立会人として出席して開催され,原告X1は,理事長挨拶を行った。上記理事会では,社会福祉事業法(平成12年法律第111号による改正・改称前の社会福祉法。以下同じ。)54条2項に基づく是正措置命令が議案とされ,第13回理事会における原告らの辞任確認決議及び第14回理事会における原告X1の辞任確認決議が議事に付され,賛成者9名によって承認された。また,上記是正措置命令に関し,被告法人の補助金不正流用疑惑が問題とされていたため,原告X1から報告がなされ,運営の正常化について活動することも承認された(乙12,甲18)。 原告X1は,上記理事会以降も辞任の意思がないとして辞任決議の効力を争うなどして理事会は混乱し,山梨県から求められていた補助金の不正利用行為をめぐる是正措置命令についても具体的方策が採られなかったため,被告法人の当時の事務局長Cは,山梨県と協議をし,現理事全員が任期満了により退任し,その後,社会福祉事業法に基づく仮理事選任の手続を採るよう指導がなされた。 オ平成12年1月16日,理事長の立場にあったとされる被告Y1をはじめ,その他の理事らは任期満了により理事を退任し,その後,同年9月21日,山梨県知事は,被告Y1,A及び被告Y7の3名を仮理事に選任し,同日その旨通知した(乙3)。 被告Y1は,ほか2名との互選により仮の理事長に就任し,同月25日,第20回理事会を開催し,同理事会において,被告Y1ら3名を含む合計12名の新理事が選任された(乙6)。 さらに,その後,同年12月28日,被告Y1が代表して第21回理事会を開催し,出席した理事9名全員の賛成により,同理事会において被告Y1 告Y1ら3名を含む合計12名の新理事が選任された(乙6)。 さらに,その後,同年12月28日,被告Y1が代表して第21回理事会を開催し,出席した理事9名全員の賛成により,同理事会において被告Y1が理事長に就任することが承認されたほか,新たに評議員を選出する旨が決議された(乙7)。 カなお,平成10年2月ころから4月ころ,被告法人は,経営が厳しかった上,原告X2自身の負債の返済等に資金が必要であるなど,その資金繰りに窮していたため,原告らは,被告Y1に依頼し,その知人であるBから5000万円以上の融資を受けるなどしていた。その後,原告らは同年8月ころにもまた,被告Y1に金策を依頼したが,原告X2の金員の使途や原告X1の保有する理事長印の不正利用を疑った被告Y1は,自ら被告法人の負債の返済に当たるとともに,原告X1から理事長印を預かるなどしたことがあった(甲14)。 被告Y1と原告X1との間では,このころから,原告らが理事長等の役職を離れる旨の話が出るようになっており,平成11年1月ころには,原告X2が被告Y1に対して進退処遇を任せる旨の発言をしたこともあった。 キまた,被告Y1は,平成12年12月28日理事長に就任していたものの,平成13年1月10日,(省略:刑事裁判において執行猶予付き懲役刑の有罪判決)を受け,上記判決は同月25日確定した。これによ り,被告Y1は同日をもって理事の資格を失った(社会福祉法36条4項3号)が,これに気づかず理事長職を継続し,その後の同年11月28日開催の第27回理事会を召集し,同理事会の議事進行を行うなどした。上記理事会において,被告Y1は,理事長,理事及び評議員を辞退し,次期理事長にAを推薦する旨発言し,出席した9名(被告Y1及びAを含む。)の理事によりAを理事長として選出する旨が承認され などした。上記理事会において,被告Y1は,理事長,理事及び評議員を辞退し,次期理事長にAを推薦する旨発言し,出席した9名(被告Y1及びAを含む。)の理事によりAを理事長として選出する旨が承認された。 また,その後の議案として,本年開催の理事会と評議会決議の成立の再確認をする旨が上記出席理事9名により承認された(甲16,乙8)。 2(1)原告らは,原告らの理事長等の辞任や辞任に関する理事会決議の効力を争い,これに引き続き行われた山梨県知事による仮理事選任の効力,その後の理事長選任決議がいずれも無効である旨主張するため,検討する。 ア被告法人における平成11年開催の第13回ないし第15回理事会では,原告らの辞任に関する決議が行われているため,まず,原告らが辞任したといえるかが問題となるところ,原告X1は,平成10年12月ころ,自ら署名した辞任届を被告Y1に渡したことがあるとしているほか,原告X1の名前の記載と「X1」名の丸印で捺印された平成11年3月26日付け(なお,月の数字である「3」の記載は「8」とも読めるが,登記との符合に照らせば,「3」と記載したものとみるのが相当であり,当事者もこの点を特には争わない。)の辞任届が存在する(甲8)。 上記辞任届には原告X1の署名はなく,原告X1自身も自ら作成したものではない旨説明しているほか,被告Y1は,何時作ったかは定かでないがおそらく被告法人をめぐる事件が発覚した平成11年5月以降のことで,文書自体は被告Y1が作成し,これに原告X1が捺印したものであると,原告X1とは異なる説明をしている(甲13,乙13ないし15)。 イ上記1のとおり,そもそも原告らの理事長等辞任に関する問題は,原告らと被告Y1との間では平成10年ころから生じていたものとみられ,理事会においても,平成11年1月2 乙13ないし15)。 イ上記1のとおり,そもそも原告らの理事長等辞任に関する問題は,原告らと被告Y1との間では平成10年ころから生じていたものとみられ,理事会においても,平成11年1月21日開催の第13回理事会においてはじめて議案として取り上げられたことが認められる。しかしながら,原告らは,その後も辞任の効力を争い,同日の理事会議事録の内容をみても,辞任をめぐる議案の記載をめぐり議事録が複数作成された(甲9,10)とみられる状況があること,その後の第14回及び第15回理事会においても,原告らがなお理事としての地位を有することを前提として議事が進行し,辞任をめぐる決議が継続して議案に挙げられていたこと,原告X1において理事長として行動,発言等していた状況(甲11,18,乙11,12)などに照らせば,平成11年当時,原告らの辞任の効力をめぐり,理事会に相当の混乱が生じていたものと認められる。 そして,原告X1の上記辞任届をめぐる説明内容や,理事会での言動等に照らせば,原告らが自ら被告法人の理事長あるいは理事を辞任する意思を有していたとは認め難く,原告らが平成11年1月21日あるいは同年3月26日開催の理事会において辞任したとの事実は認められないというほかない。 また,上記理事会において,原告らの解任決議がなされた経過も認められないから,平成11年5月31日付けでなされた,同年3月26日の原告X1理事長辞任,被告Y1理事長就任に関する登記は,実体に一致していない登記と認められる。 以上の次第で,原告X1の辞任届(甲8)は,真正に成立したものとは認められない。 (2)アそこでさらに検討するに,上記のとおり,原告らの辞任の効力が生じておらず,被告Y1の理事長就任の登記が実体に一致していないものであるとしても,被告法人においては,そ のとは認められない。 (2)アそこでさらに検討するに,上記のとおり,原告らの辞任の効力が生じておらず,被告Y1の理事長就任の登記が実体に一致していないものであるとしても,被告法人においては,その後,山梨県知事により,社会 福祉法45条が準用する民法56条に基づき,平成12年9月21日付け通知により被告Y1,A及び被告Y7の3名を仮理事として選任するものとされ(乙3),仮理事らによって開催された理事会決議に基づいて,同年12月28日には被告Y1が理事長に就任したとされている。 原告らは,理事等の地位を失っていなかったし,民法56条の要件にも該当しないから仮理事選任の必要性はなかったし,事務局長などという役職は被告法人には存在しなかったから,仮理事選任の経緯も問題であり,その後開催された理事及び理事長選任決議についてもその効力を争う旨主張している。 イこの点,被告法人の定款には事務局長との役職に係る規定は設けられておらず,Cがいかなる役割を果たし,山梨県との間でいかなる協議が持たれたかについては判然としないところもある。 しかしながら,仮理事の選任は行政庁である山梨県知事による一種の行政処分であるところ,その効力を本件訴訟をもって争うことはできないといわざるを得ない。 ウまた,原告らが仮理事選任の必要性や経緯等の手続を問題にし,これに引き続き行われた理事等選任決議の効力を問題にしているものとみても,社会福祉法あるいは社会福祉事業法に基づき設立される社会福祉法人については,行政庁からの一般的監督が及んでおり(社会福祉法56条,社会福祉事業法54条),法令や行政処分等に反し,運営に著しく適正を欠くと認めるときには,必要な措置を採るよう命じることができる(それぞれ上記同条2項)ほか,これに従わない場合には,業務の全部または一部の停 業法54条),法令や行政処分等に反し,運営に著しく適正を欠くと認めるときには,必要な措置を採るよう命じることができる(それぞれ上記同条2項)ほか,これに従わない場合には,業務の全部または一部の停止命令や,役員の解職勧告(それぞれ上記同条3項)をもなし得るとされている。 平成11年から平成12年にかけて,被告法人理事会は,原告らの理事長等辞任問題によって混乱した状況にあった上,補助金の不正流用問 題について是正措置命令を受けながら有効な方策が採られずにいたことなどに照らせば,被告法人に対し,その運営の適正化を求めるため,何らかの措置を採る必要があったことは明らかである。そして,Cの役職の有無にかかわらず,仮理事の選任請求は利害関係人あるいは職権によりなし得るものであるところ(社会福祉法45条後段,社会福祉事業法43条後段),当時任期満了となっていた理事ら全員を退任させた上,所轄庁である山梨県知事により仮理事選任を行ったという経緯に何らの問題点も認められない。また,理事長は,理事の互選により選任され,理事会を招集するとされているところ(定款4条2項,5条2項。甲1),仮理事らが互選により仮の理事長を選任し,理事会を開催した上,新しく定款所定数の理事の選任を行うことも手続上問題があるとは認められない。 エ上記認定事実に基づき,本件における手続の具体的流れをみると,被告Y1を含む当時の理事らは,平成12年1月16日をもって任期満了により退任し,その後,同年9月21日には,山梨県知事により,社会福祉法により3人以上と定められた理事の定数(同法36条1項)に即して,上記のとおり被告Y1ほか2名の合計3名が仮理事として選任された。仮理事選任の通知を受け,被告法人では,同月25日,被告Y1を仮の理事長として,上記3名が出席して第20回理事 36条1項)に即して,上記のとおり被告Y1ほか2名の合計3名が仮理事として選任された。仮理事選任の通知を受け,被告法人では,同月25日,被告Y1を仮の理事長として,上記3名が出席して第20回理事会が開催され,上記仮理事3名を含む12名の選任理事,2名の監事がそれぞれ選任され(乙6),その後の同年12月28日開催の第21回理事会では,上記12名の理事のうち9名が出席し,出席理事全員の賛成により被告Y1を理事長に選出したほか,評議員25名の選任を行うなどした(乙7)。そして,被告Y1の同年1月16日理事長退任及び同年12月28日理事長就任は,平成13年2月26日付けの登記を経ている。なお,理事長の選出に関しては,理事長選出者である被告Y1を除いても,理 事8名の承認が得られているのであり,これは定款上理事の選任等に関する必要同意数を満たすものである。 オ上記のとおり,被告Y1が平成12年12月28日に理事長に就任するまでの仮理事選任等の経緯をはじめ,理事会の開催及び理事等の選任決議の手続や内容に適正さを欠く点は見当たらない。 (3)アなお,既にみたとおり,平成11年3月26日の原告X1の理事長辞任と,同日の被告Y1の理事長就任に関する登記は実体にそぐわないものであったことが認められるものの,被告法人の理事の任期は2年とされている(甲1。さらに,社会福祉事業法34条2項にも,2年を超えることはできないとされている。)ところ,平成9年7月22日に理事長に就任した原告X1は,2年の経過をもって任期が満了していたことが認められ,原告X2の理事及び評議員の地位についても同様の時期にその任期が満了したものとみられる。 イそうであれば,原告X1及び原告X2は,平成9年7月22日から2年の経過により理事長及び理事の任期を満了していたのであり 及び評議員の地位についても同様の時期にその任期が満了したものとみられる。 イそうであれば,原告X1及び原告X2は,平成9年7月22日から2年の経過により理事長及び理事の任期を満了していたのであり,その後の手続により,遅くとも平成12年1月16日には,当時の理事ら全員とともに任期満了により退任したことが認められる。そして,その後の被告法人理事会が行った新理事や新理事長の選任手続は適正になされたことが明らかであるから,任期満了時点から平成12年1月16日までの間には理事長あるいは理事等の地位を喪失し,遅くとも平成12年12月28日に新理事が選任され,新理事長が選任された時点をもって,原告らは,理事長あるいは理事の権利義務を有する地位を確定的に失ったというべきである。 (4)ア本件訴えは,社会福祉法人における理事長や理事等役員にかかる選任決議の無効確認等を求めるもの(争点(1)),原告ら自らが理事長や理事等役員たる権利義務を有する地位にあることの確認を求めるもの(争点 (2)),他者である各役員が理事長や理事たる地位にないことの確認を求めるもの(争点(3))であり,これらはいずれも確認訴訟であるから,上記の各訴えが適法となるためには,確認の利益が認められることが必要である。 確認の利益がある場合とは,ある基本的な法律関係から生じた法律効果につき現在法律上の紛争が存在し,現在の権利又は法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的な解決をもたらさず,かえって,これらの権利又は法律関係の基本となる法律関係を確定することが,紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合をいう(最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)と解されるところ,本問では,原告らが上記確認の利益を主張し得る立場にあるか な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合をいう(最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)と解されるところ,本問では,原告らが上記確認の利益を主張し得る立場にあるか,すなわち,原告らに原告適格があるかが問題となる。 イ原告らは,上記のとおり,遅くとも平成12年12月28日には理事長あるいは理事等,被告法人の役員たる権利義務を有する地位を確定的に失ったことにより,被告法人及びその理事会との間でも第三者にすぎない立場となった。第三者の原告適格を肯定するには,組織上,理事長や理事といった役員の任免に関与するなどその地位に影響を及ぼすべき立場にあるか,又は自らが理事長によって任免される立場にあるなど,役員の地位について法律上の利害関係を有していることを要すると解される(最高裁平成7年2月21日第三小法廷判決・民集49巻2号231頁)。 ウ原告らは,平成12年12月28日に確定的に被告法人の役員たる権利義務を有する地位を失っているところ,改めて社会福祉法や被告法人定款所定の手続を経ない限り,理事長や理事に就任することはできない立場にあったのであるから,被告法人の理事長や理事等役員の選出に影響を及ぼすべき立場にあったとも,法律上の利害関係を有していたとも 認められない。 エしたがって,原告らが被告法人理事会における一連の理事長等の選任決議の無効確認を求める訴え(争点(1))及び他者である各役員が理事長や理事等役員の地位にないことの確認を求める訴え(争点(3))は,いずれも不適法であり却下すべきである。 オなお,被告Y5,被告Y9及び被告Y10が被告法人の理事及び評議員の地位にないこと,被告Y11が被告法人の評議員の地位にないことは,いずれも当事者間に争いがない。しかしながら,法人を相手とする役員の地位 被告Y5,被告Y9及び被告Y10が被告法人の理事及び評議員の地位にないこと,被告Y11が被告法人の評議員の地位にないことは,いずれも当事者間に争いがない。しかしながら,法人を相手とする役員の地位確認を請求する場合,事柄の性質上,何人にもその権利関係の存在を認めるべきものであり,請求を認容する確定判決は対世効を有すると解される(最高裁昭和44年7月10日第一小法廷判決・民集23巻8号1423頁)ところ,上記の役員たる地位の合一的確定の要請は,役員の地位不存在確認においても同様というべきである。 したがって,本件において,当事者間に争いがないことをもって自白の成立は認められないというべきである。 また,原告らは,被告法人理事会における理事長等の選任決議の無効確認の訴えの中で,被告法人のみでなく,当該選任決議によって理事長に選任されたとする被告Y1(甲事件),被告Y7(乙事件)を被告とするが,上記訴えは,決議の効力自体を争うものであるから,法人のみに被告適格があるというべきであり(最高裁昭和36年11月24日第二小法廷判決・民集15巻10号2583頁,最高裁昭和59年9月28日第二小法廷判決・民集38巻9号1121頁),この意味でも,原告らの争点(3)にかかる被告Y1及び被告Y7に対する訴えは却下すべきである。 (5)次に,原告ら自らが理事長等の権利義務を有する地位にあることの確認を求める訴え(争点(2))については,現在,法律上の紛争が存在し,その 法律関係を確定することが適切かつ必要と認められるので,確認の利益を否定することはできない。 しかしながら,既に検討したとおり,原告らは遅くとも平成12年12月28日には確定的に理事長等の権利義務を有する地位を喪失したものと認められるから,原告らの主張は理由がないというほかない。 よ しかしながら,既に検討したとおり,原告らは遅くとも平成12年12月28日には確定的に理事長等の権利義務を有する地位を喪失したものと認められるから,原告らの主張は理由がないというほかない。 よって,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官岩井一真裁判官青木美佳
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