令和2(行ウ)121 高齢者虐待防止法に基づく保護処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月16日 東京地方裁判所
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判決文本文38,229 文字)

令和5年11月16日判決言渡令和2年(行ウ)第121号高齢者虐待防止法に基づく保護処分取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和元年12月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 被告は、原告の母であるAにつき、養護者である原告による高齢者虐待に起因して生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあるとして、B高齢者緊急一時保護事業実施要綱(甲第〇〇〇〇号決定。ただし、乙第〇〇〇〇号を最終改正とするもの。以下「本件要綱」という。乙1)に基づく緊急一時保護(本件要綱に基づき、虐待を受けている高齢者等を民間施設において保護すること をいう。以下、Aに係る緊急一時保護を「本件緊急一時保護」という。)を実施することとし、①Aの退院措置、②Aの施設への移送及び入所措置、③原告とAとの面会制限措置並びに④Aに係る後見開始審判等の申立て(以下、①ないし④を併せて「本件各措置等」という。)をした。 本件は、原告が、被告が本件緊急一時保護を実施したこと及び本件各措置等 をしたことは違法であり、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、損害賠償金330万円(その内訳は慰謝料が300万円、弁護士費用が30万円)及びこれに対する令和元年12月9日(本件緊急一時保護が実施された日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 本件に関係する高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対す 29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の 割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 本件に関係する高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)及び老人福祉法(昭和38年法律第133号)の規定は、別紙1-1及び別紙1-2のとおりである。 ⑵ 本件要綱は、B高齢者緊急一時保護事業の円滑な運営を図るために被告が制定した要綱であり、その規定は、別紙2のとおりである。(乙1、32) 2 前提事実(争いがない事実、顕著な事実並びに掲記した証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)⑴ 当事者等 ア原告(昭和▲年▲月▲日生)は、Aの長男である。(甲8)イ Aは、大正▲年▲月▲生まれの女性である。Aは、本件緊急一時保護以前から認知症を患っており、遅くとも平成28年3月頃には介護保険法に基づく要介護認定(要介護5)を受けていた。(甲8、40)ウ被告は、地方自治法所定の特別地方公共団体である特別区であり、高齢 者虐待防止法及び老人福祉法上の市に関する規定が適用される(地方自治法281条、283条)。 ⑵ 本件緊急一時保護等が実施された経緯ア Aは、原告の肩書地に所在するAの自宅(以下、単に「自宅」という。)において、原告と同居して生活していたところ、平成31年3月2 7日、デイサービスを受けていた際に転倒し、左大腿骨顆上骨折の傷害を負い(以下「本件骨折事故」という。)、C病院に入院した。(甲26、41)イ Aは、令和元年7月29日、C病院を退院したが、同月30日、自宅で入浴中に右大腿部に熱傷を負い(以下「本件熱傷事故」という。)、同月 」という。)、C病院に入院した。(甲26、41)イ Aは、令和元年7月29日、C病院を退院したが、同月30日、自宅で入浴中に右大腿部に熱傷を負い(以下「本件熱傷事故」という。)、同月 31日、C病院に入院した。また、Aは、令和元年10月21日、D病院 に転院した(以下、AとD病院との間の入院契約を「本件入院契約」という。)。(甲3、27ないし31、41、44、45)ウ被告は、Aにつき、養護者である原告による介護が難しい者であり、高齢者虐待防止法により一時的に保護する必要が生じたとして、令和元年12月9日、本件要綱3条1項の対象者として本件緊急一時保護を実施し、 次のとおりの措置等をした(本件各措置等)。なお、本件緊急一時保護に係る保護期間は、令和元年12月9日から同月22日までとされた。(乙2、35) AをD病院から退院させる措置(以下「本件退院措置」という。) Aを移送用の介護タクシーに乗せてD病院から移送し、施設に入所さ せる措置(以下「本件移送・入所措置」といい、Aが入所した上記施設を「入所先施設」という。) 入所先施設において、原告がAと面会することを制限する措置(以下「本件面会制限措置」という。) Aにつき、後見開始審判及び財産管理者選任の各申立てをする措置 (以下「本件後見等申立て」という。)⑶ その後の経緯等ア東京家庭裁判所は、令和元年12月9日、Aの財産管理者として、E弁護士を選任した。(乙3)イ被告は、令和元年12月20日、本件緊急一時保護に係る保護期間を令 和2年1月8日まで延長した。(乙4)ウ被告は、令和2年1月8日、老人福祉法11条1項に基づき、介護施設(以下「本件介護施 令和元年12月20日、本件緊急一時保護に係る保護期間を令 和2年1月8日まで延長した。(乙4)ウ被告は、令和2年1月8日、老人福祉法11条1項に基づき、介護施設(以下「本件介護施設」という。)に対してAの入所を委託する措置をし(以下「本件入所委託措置」という。)、これに伴い、本件緊急一時保護は終了した。(乙5) エ東京家庭裁判所は、令和2年1月23日、Aの成年後見人として、上記 アのE弁護士を選任した(以下「本件後見人」という。)。本件後見人が選任されたことから、被告は、令和2年5月31日付けで本件入所委託措置を廃止し、これに伴い、本件入所委託措置は、本件後見人(が代理するA)と本件介護施設との間の契約関係に移行した。(乙6、7)⑷ 本件訴えの提起等 ア原告は、令和2年3月27日、本件訴えを提起した。 イ本件訴えは、当初、本件入所委託措置の取消しを求めるものであったが、その後、本件入所委託措置が廃止されるなどしたことから、原告は、令和2年10月20日付け訴えの変更申立書をもって、行政事件訴訟法21条に基づいて上記取消しの訴えを損害賠償請求の訴えに変更する旨の申 立てをし、同年11月18日、同訴えの変更を許可する旨の決定がされた(当庁令和2年(行ク)第〇〇〇号)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、被告が本件緊急一時保護を実施したこと及び本件各措置等をしたことが国賠法1条1項の適用上違法であるか否かであり、争点に関する当 事者の主張の要旨は、以下のとおりである。 (原告の主張の要旨)⑴ 本件緊急一時保護及び本件各措置等は法的根拠を欠くこと本件要綱は、高齢者虐待防止法とは別に、被告独自の緊急一時保護制度につき、一般的な行政上の行為の観点か ある。 (原告の主張の要旨)⑴ 本件緊急一時保護及び本件各措置等は法的根拠を欠くこと本件要綱は、高齢者虐待防止法とは別に、被告独自の緊急一時保護制度につき、一般的な行政上の行為の観点から定められたものであるから、緊急一 時保護は、飽くまで被告区長の一般的権限の範囲で行われるべきものである。 そして、本件緊急一時保護及び本件各措置等は、いずれも一般的行政権限をはるかに超えるものであり、本件要綱に基づいて実施することができるものとはいえないから、違法というほかない。 ⑵ 虐待の事実及び緊急性はなかったこと 以下のとおり、本件緊急一時保護が実施された時点において、原告による 虐待の事実及びAの生命又は身体に危険が生じているおそれはなく、本件緊急一時保護及び本件各措置等は、高齢者虐待防止法9条2項の要件を満たさないものであったから、違法である。 ア診療録等から虐待の事実を認定することはできないこと介護事業者が作成した報告書やD病院の診療録等の記載は、事実に反す る部分があり、信用することはできないから、これらの診療録等から原告の虐待行為があったと認定することはできない。 イ身体的虐待について高齢者虐待防止法における「虐待」とは刑法上の暴行と同義であるところ、不適切な介護はこれに当たらないし、原告がAに暴行を加えた事 実もない。 本件熱傷事故は、過失行為に該当するかはともかく、刑法上の暴行に該当しないことは明白である。また、C病院は、被告からの照会に対し、本件熱傷事故については虐待の形跡がない旨回答している。 D病院の診療録には、原告がAに対して無理やり食事を口に入れるな どの行為をしたものとは記載されていない。また、Aが吐いたといっても、食べ切れずに口に含んでいた食 跡がない旨回答している。 D病院の診療録には、原告がAに対して無理やり食事を口に入れるな どの行為をしたものとは記載されていない。また、Aが吐いたといっても、食べ切れずに口に含んでいた食物を口から吐き出したものにすぎない。さらに、原告が、D病院に入院中のAに対し、肉まんやあんまん、抹茶アイス等を持ち込んで食べさせたことは事実であるが、Aがそれまで食事を誤えんしたことは一度もなかった上、C病院においては、とろ み食ではなくきざみ食が提供され、持込み食に係る制限もなかったことからすれば、原告がAにとろみ食以外のものを食べさせたからといって、直ちにAがのどを詰まらせるというものではない。 したがって、Aの食事に係る原告の行為は、不法な有形力の行使に当たるものではないし、Aに対して外傷を生じ又は生じさせるおそれがあ る行為であるともいえない。 ウ心理的虐待についてD病院に転院した後の時期に、原告がAに対して大きな声を出したことはあるものの、認知症であるAが度々大声で話すなどしたことを注意したにすぎない上、D病院の院内における行為であるから、高齢者虐待防止法2条4項1号ハにいう「高齢者に対する著しい暴言」に当たるものではな いことは明らかである。 エ緊急性について高齢者虐待防止法9条2項は、養護者による虐待があった時点で高齢者の生命又は身体に危険が存在することを必要としている。しかるところ、本件緊急一時保護が実施された時点においては、かかる危険が現に存する か否かについて検討されておらず、退院後のAの処遇は未定の状態であった上、Aは入院中であったのであるから、被告は、Aの生命又は身体に危険が生ずるおそれがあると判断することはできなかったものである。 ⑶ 事実確認を怠ったこと 退院後のAの処遇は未定の状態であった上、Aは入院中であったのであるから、被告は、Aの生命又は身体に危険が生ずるおそれがあると判断することはできなかったものである。 ⑶ 事実確認を怠ったこと被告は、原告による虐待行為に係る事実確認として、医療機関等に対して 書面の提出を求めたのみであり、原告に対する事情聴取をしなかったほか、虐待の現場とされている医療機関の訪問調査や医師及び看護師等からの事情聴取もせず、必要な調査を全くしなかったものである。 したがって、被告は、高齢者虐待防止法9条1項に定める事実の確認のための措置を怠ったものであるから、本件緊急一時保護及び本件各措置等は、 違法である。 ⑷ Aの承諾を得ていないことア本件要綱は、法規ではなく、行政を円滑に実施するための行政機関内部の定めにすぎないものである上、本件要綱3条1項は、その対象を、高齢者虐待防止法が定める現に虐待を受けている高齢者のみならず、そのおそ れがある高齢者又は区長が緊急に保護する必要があると認めた高齢者に広 げていることなどからすれば、本件要綱に基づいて、高齢者虐待防止法が規定する権限を行使することはおよそ不可能である。したがって、緊急一時保護を、対象者の了解なく実施することはできず、少なくとも当該高齢者又は成年後見人の同意が必要である。 このように、緊急一時保護の対象者は、意思能力があり、保護につき許 諾する能力があることを前提とするところ、Aは、意思能力がなく、許諾能力を有していなかったものであり、そもそも本件緊急一時保護の対象とすることは不可能であったから、被告は、後見人を選任し、その承諾を得た上で、本件緊急一時保護を実施すべきであった。 イ Aの承諾について被告が指摘する被告の職員とAとの間のやり取りは、 護の対象とすることは不可能であったから、被告は、後見人を選任し、その承諾を得た上で、本件緊急一時保護を実施すべきであった。 イ Aの承諾について被告が指摘する被告の職員とAとの間のやり取りは、 具体的な内容ではない上、医師の立会いもない状況で行われたものにすぎないから、Aの承諾があったと評価することはできない。また、被告の職員は、Aに対し、原告と分離して保護することや、施設に入所すること、後見人が選任された後は費用を要すること、原告との面会が制限されることなどにつき、事実と異なる説明をするなどしたものであり、Aの正常な 意思表明を妨害したものといえるから、Aの承諾があったということはできない。 ⑸ 本件各措置等は違法であることア本件退院措置について被告がAを退院させる行為は、本件入院契約を第三者である被告が解約 するということであるから、法令による特別な授権がなければすることができない行為である。 イ本件移送・入所措置について 被告がAをD病院から連れ出し、他の施設に収容することは、刑法上の誘拐罪や監禁罪に該当する行為であり、その権限がなければ許されな い行為である。 Aと入所先施設との間の関係は契約関係であると思われるが、被告がAを代理して入所契約を締結する権限はなかったのであるから、かかる契約を締結することはできない。 ウ本件面会制限措置について自治体の長には面会を制限する権限は存しないのであるから、仮に、 本件において、原告とAとの面会を制限する必要性があったとしても、被告がかかる措置をすることは許されない。 厚生労働省老健局が高齢者虐待防止法の施行に当たって平成18年4月に作成した「市町村・都道府県における高齢者虐待へ 面会を制限する必要性があったとしても、被告がかかる措置をすることは許されない。 厚生労働省老健局が高齢者虐待防止法の施行に当たって平成18年4月に作成した「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について」(以下「厚労省マニュアル」という。)の令和5年3月 改訂版には、緊急一時保護においては立入調査及び面会制限ができないことに留意すべき旨の記載が新たに追加されており、このことからしても、緊急一時保護において面会制限をすることは許されないことは明らかである。 エ本件後見等申立てについて 高齢者虐待防止法に基づいて後見開始審判申立てをすることはできない上、高齢者虐待防止法9条2項所定の要件と老人福祉法32条所定の要件とは異なるから、本件緊急一時保護が入所施設に関する要件以外の高齢者虐待防止法9条2項の要件を満たすものであったとしても、被告は、本件要綱に基づいて本件後見等申立てをすることはできない。 (被告の主張の要旨)⑴ 本件緊急一時保護及び本件各措置等の法的根拠について被告は、Aにつき、養護者である原告による高齢者虐待に起因して生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると判断し、高齢者虐待防止法に基づく各措置を行おうとしたものの、高齢者虐待防止法9条2項に基づく 措置によって入所させることができる施設(以下「9条2項施設」という。) の確保ができていなかったことから、本件要綱に基づく緊急一時保護を実施したものである。このように、本件各措置等は、本件要綱に基づく緊急一時保護として行われたものであるが、入所施設に関する要件以外の高齢者虐待防止法9条2項の要件を満たしていたものである。 ⑵ 虐待の事実及び緊急性があったこと 以下のとおり、原告 く緊急一時保護として行われたものであるが、入所施設に関する要件以外の高齢者虐待防止法9条2項の要件を満たしていたものである。 ⑵ 虐待の事実及び緊急性があったこと 以下のとおり、原告のAに対する虐待行為があり、Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると被告が判断したことは合理的であったから、本件緊急一時保護及び本件各措置等は、違法ではない。 ア身体的虐待について被告は、本件熱傷事故のみを理由として虐待を認定したものではなく、 以前にAに係る虐待の通報(以下、高齢者虐待に係る通報を「虐待通報」という。)を受けてから把握した様々な事実を基に、かねてからAを原告から分離保護することを検討していたものである。そして、被告は、D病院から提供された情報に加え、被告が有していたその余の情報も踏まえた上で、原告による虐待行為があったと判断したものであり、その 判断に問題はない。 本件熱傷事故は、原告に故意がなかったとしても、極めて不適切な介護の結果であり、退院して自宅に帰った場合におけるAの生命又は身体の安全性を強く懸念させる事情であったことから、被告は、これを身体的虐待として評価したものである。 D病院の診療録によれば、原告が、Aが食べきれずに吐き出さざるを得ないほどの量又は速さで、Aの口の中に食事に詰め込んだことは明らかである。また、そもそもAについては食事介助が不要であった上、D病院においてはAのえん下機能を考慮して食事のとろみの程度を決定するなどの対応をしていたにもかかわらず、原告は、カレーを持ち込んで Aに食べさせた上、これについて病院から注意を受けた後も食べ物を持 ち込み、しかもベッドをフラットにしたまま肉まんを食べさせるなどの危険な行為をしていたものである。 持ち込んで Aに食べさせた上、これについて病院から注意を受けた後も食べ物を持 ち込み、しかもベッドをフラットにしたまま肉まんを食べさせるなどの危険な行為をしていたものである。 イ心理的虐待について原告は、Aに対し、どなる、罵る、悪口を言うなどの言動をしていたものであり、これらは心理的虐待に該当する。 ウ緊急性について従前の原告によるAの介護の状況に加え、現にC病院を退院した直後に本件熱傷事故が発生したことからすると、AがD病院を退院するに当たって、原告が自宅で適切にAを介護することを期待することはできず、かえって、Aの生命又は身体に危険が生ずる懸念があったものである。それに もかかわらず、原告が、合理的な理由もなく一方的に介護サービスを利用することを拒み、自身による介護にこだわっていたことから、被告は、従前と同様の虐待行為や不適切な介護が繰り返され、Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると判断したものである。 ⑶ 事実確認を怠ったものではないこと ア被告は、介護事業者等からAに係る虐待通報を受けた際に、通報者から詳細な経緯等を聴取し、その後も継続的にAの訪問診療を行っていた医療機関や介護事業者と密に連絡を取って情報を共有するなどの対応をしていたほか、病院職員とのカンファレンスを実施したりするなど、適切に事実確認のための措置を講じていたものである。 イ高齢者虐待防止法、本件要綱及びその他の関連規定において、虐待行為があった現場の確認や、虐待行為をしたと疑われている者に対する直接の事情聴取をしなければならないとする規定は存しない上、本件においては、原告に対する事情聴取を行った場合、自身が虐待行為者であると被告に疑われていると感じた原告がAに対 と疑われている者に対する直接の事情聴取をしなければならないとする規定は存しない上、本件においては、原告に対する事情聴取を行った場合、自身が虐待行為者であると被告に疑われていると感じた原告がAに対してどのような行動に出るか予測するこ とができず、Aの生命又は身体に危険が生ずるおそれがあったことからす れば、原告に対する事情聴取を行わなかった被告の対応は適切であったといえる。 ⑷ Aの承諾を得ていたことア本件要綱の規定上、緊急一時保護の対象者が意思能力を有する者に限られているものではないし、高齢者を虐待から保護するという本件要綱の目 的からすれば、意思能力の有無によって対象者を区別することに合理性はない。また、緊急一時保護は、本人の利益を図る目的で行われる利益的行為であるから、不利益処分である行政処分とは異なるものであり、事務管理又は緊急避難等と親和的なものである。 したがって、緊急一時保護は、対象者の承諾の有無にかかわらず、実施 することが可能である。 イもっとも、被告は、実際の運用上、可能な限り対象者の承諾を得た上で緊急一時保護を実施している。そして、意思無能力者であっても、常時意思能力を欠く状態にあるとは限らず、有効な意思表示をすることは可能であるところ、本件緊急一時保護が実施された当日、Aは、退院後に自宅に は帰らず別の施設に移動することを説明した被告の職員に対し、「安全なところがいいわ」と応じたものであり、原告としばらく会えなくなることについても、「私は平気よ」と応じていたことからすれば、事態を理解した上で被告による保護の実施を承諾していたものといえる。また、少なくともAから明確な反対の意思表示がされなかったことからすれば、黙示的 な承諾はあったものといえる。 ウ仮 態を理解した上で被告による保護の実施を承諾していたものといえる。また、少なくともAから明確な反対の意思表示がされなかったことからすれば、黙示的 な承諾はあったものといえる。 ウ仮に、上記のやり取りがあった当時、Aに意思能力がなかったとしても、そのような高齢者に対して緊急一時保護を実施することはできないと解すべきではない上、本件においては、Aを自宅に帰せば、原告による虐待行為又は不適切な介護によりAの生命又は身体の安全が害されることが具体 的に予見されていたのであるから、本件緊急一時保護は許容されるべきで ある。 ⑸ 本件各措置等は適法であることア本件退院措置について緊急一時保護の目的及び性質からすれば、退院の機を捉えて対象者を保護するためには、被告においてAの退院手続をとり、退院時に速やか に安全な場所へ移動させることは当然の措置であるから、本件退院措置には何らの違法性も認められない。 入院契約は、特段の事情が認められない限り、医師が入院治療を必要としない旨の診断をし、その診断に基づいて病院から患者に対して退院すべき旨の一方的な意思表示があったときに終了するものであり、患者 の同意や解除等の意思表示は要しないものと解される。本件においては、D病院の医師がAについて入院治療を必要としない旨の診断をし、本件入院契約の終了時期を令和元年12月9日としたものであり、被告の職員が、同日、D病院の使者として、この意思表示をAに伝達した時点で、本件入院契約は終了したものである。 仮に、本件入院契約を終了させる旨のD病院の意思表示につき、Aの受領能力があったか否かについて疑義があるとしても、その後、本件後見人は、本件入院契約に基づく診療費等の支払をしたものであり、上記意思表示の 本件入院契約を終了させる旨のD病院の意思表示につき、Aの受領能力があったか否かについて疑義があるとしても、その後、本件後見人は、本件入院契約に基づく診療費等の支払をしたものであり、上記意思表示の受領を追認したものといえる。 イ本件移送・入所措置について 本件移送・入所措置については、Aの承諾を得た上で行われたものである上、警察官の立会いの下で平穏に行われたものであるから、何ら違法ではない。 仮に、上記承諾につき、Aが意思能力を有していなかったとしても、本件後見人は、本件緊急一時保護及び本件各措置等につき、被告の対応 に何ら異を唱えておらず、これらを追認したものといえることからして も、本件移送・入所措置が違法と評価される余地はない。 ウ本件面会制限措置について本件面会制限措置は、本件要綱に基づくものである。本件要綱に基づく保護とは、単に施設に入所させるという場所の移動のみをいうものではないから、対象者の生命又は身体に対する重大な危険の発生が具体 的・現実的に予見される場合には、保護の一内容として、面会制限をすることができるものと解される。そして、被告は、原告による虐待行為や不適切な介護があったことから、原告に対してAとの面会を許すことにより、Aの生命又は身体に対する重大な危険が生ずることが具体的かつ現実的に予見されたために本件面会制限措置をしたものであり、かか る判断に違法性はない。 本件面会制限措置は、高齢者虐待防止法に基づく虐待対応の一環として行われたものであり、違法ではない。虐待対応における対象者の施設への入所は、被告と施設との間の委託契約に基づくものであるところ、第三者との面会を認めるか否かは当該施設の長が施設管理権に基づいて 判断することとなるという前 い。虐待対応における対象者の施設への入所は、被告と施設との間の委託契約に基づくものであるところ、第三者との面会を認めるか否かは当該施設の長が施設管理権に基づいて 判断することとなるという前提で、虐待対応の一環として面会制限措置をすることができるものと解される。 被告は、令和元年12月9日の時点において、原告に対してAの入所先施設を伝える義務を負っていたものではないから、本件面会制限措置が原告に対する不法行為となるものではない。 エ本件後見等申立てについて本件後見等申立ては、高齢者虐待防止法9条2項及び老人福祉法32条に基づいて行われたものであり、違法性はない。 被告は、Aが自身において財産管理をすることが不可能な状態にあり、本件緊急一時保護に基づく措置等を行った場合に、原告がAの年金を原 告の生活費として使用してしまい、Aが経済的に困窮する可能性があっ たことから、成年後見開始審判申立てのみならず、財産管理者選任申立てもしたものである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、証拠(乙41、証人Fのほか、各文末に掲記したもの (いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 従前の原告及びAの生活状況ア原告及びAは、昭和55年頃から自宅で二人暮らしをしていた。Aは、自宅に隣接するアパートを経営していたが、平成23年頃に老朽化のため にアパートの経営を止め、その後は貯蓄と原告及びAの年金で生活していた。(甲8)イ Aは、遅くとも平成25年1月から認知症を患っており、平成28年3月頃には要介護5の認定を受けていた。Aの介護については、原告による自宅介護のほか、デイサービス施設への通所、介護事 8)イ Aは、遅くとも平成25年1月から認知症を患っており、平成28年3月頃には要介護5の認定を受けていた。Aの介護については、原告による自宅介護のほか、デイサービス施設への通所、介護事業者による訪問介護、 介護保険サービスによる訪問看護を利用するなどして行っており、平成29年からは医師による訪問診療も受けていた。(前提事実⑴イ、甲8、12ないし16、18ないし24)⑵ 第1回コア会議までの経緯等(日付はいずれも平成30年)ア被告においては、福祉部高齢福祉課(以下、単に「福祉課」という。) が高齢者虐待事案を担当しているところ、福祉課は、8月3日、Aの訪問診療を行っていた医療機関(以下「本件訪問診療機関」という。)の職員から、Aの訪問介護をしていた介護事業者(以下「本件介護事業者」という。)のヘルパーが原告によるAへの虐待行為を現認した旨の連絡を受けた。上記ヘルパーから被告に提出された報告書には、ヘルパーがAの更衣 介助をしていたところ、原告がAを脱衣所まで引きずって連れて行き、下 半身着衣のまま入浴を強制した上、大声で暴言を浴びせながら頭から水をかけるなどの行為をした旨や、原告は興奮状態で手が付けられる状態ではなかった旨が記載されていた。 福祉課は、上記報告を虐待通報として取り扱い(以下「本件虐待通報1」という。)、本件介護事業者のケアマネージャーに対して事情聴取をする などした上で、短期入所療養介護(いわゆるショートステイ)を利用して上記事態に対応することとし、8月20日までAのショートステイが実施された。 (乙8ないし10)イ Aが上記ショートステイから自宅に帰った後、福祉課は、次のとおりの 報告を受けた。(乙11ないし13)8月27日、本件介護 ョートステイが実施された。 (乙8ないし10)イ Aが上記ショートステイから自宅に帰った後、福祉課は、次のとおりの 報告を受けた。(乙11ないし13)8月27日、本件介護事業者のケアマネージャーから、原告がAに対して「黙れ」、「勝手なことをするな」などと大きな声を出している旨の報告を受けた。 9月7日、本件訪問診療機関の看護師から、原告によるAの介護に関 し、食事を用意するだけでおむつ交換もせず、介護が全くできていない旨の報告を受けた。 9月10日、本件介護事業者のサービス提供責任者から、原告が愛情の裏返しでAを殴ったりしているようであり、行動がエスカレートしている旨の報告があったほか、原告がAに包丁を向けていたのをヘルパー が現認した旨の報告を受けた。 ウ上記ア及びイの各報告を受けて、福祉課は、原告によるAへの虐待行為があり、緊急対応の必要性が高い事案であると判断し、9月19日、第1回コアメンバー会議を開催した(なお、コアメンバー会議とは、高齢者に対する虐待及び緊急性の有無の判断並びに対応方針を決定することを目的 とする会議であり、福祉課の課長や係長、担当職員らで構成される。以下、 Aに関して開催されたコアメンバー会議を、開催回数に応じて「第1回コア会議」等という。)を開催した。 第1回コア会議においては、原告による身体的虐待及び心理的虐待があり、緊急性が高い事案であることから、Aがデイサービスを利用した際に保護し、そのまま緊急一時保護を実施することなどが検討されたが、本件 介護事業者の意向も聞いた上で対応を決定することとなった。 (乙14)エそこで、福祉課の職員が、9月28日、本件介護事業者の事業所を訪問したところ、平成29年9月から平成30年8月までの経過 介護事業者の意向も聞いた上で対応を決定することとなった。 (乙14)エそこで、福祉課の職員が、9月28日、本件介護事業者の事業所を訪問したところ、平成29年9月から平成30年8月までの経過をまとめたメモを交付された。同メモには、自宅が老朽化し、壁が崩壊するなどしてお り、Aを自宅で安全に介護することができない状況にあること、原告がAに対して大声でどなったりしたことが複数回あること、原告がAを縁側から蹴り出そうとしたことがあったこと、Aの内腿に内出血を認めたことがあったことなどが記載されていた。このほか、本件介護事業者の職員からは、原告はカッとなると目の前にある物を振りかざすことがよくある旨や、 原告がAのおむつ交換をしないため、家中が便まみれになったりするなど、原告による介護が不十分である旨の報告があった。これらの報告に加え、本件介護事業者の意向も踏まえて、福祉課は、今後のAの保護に係る方針として、養護者である原告に対する支援をするなどしつつ、虐待に関しては様子をみることとした。(乙15、16) ⑶ 第2回コア会議までの経緯等ア福祉課は、平成30年12月28日、本件訪問診療機関から、原告が、Aをトイレに誘導する際に、Aを足蹴にしながら大声で「早くしろ」などと命令していたこと、Aを送迎車両に乗せる際に、Aの頭部を平手で殴打したこと、上記車両で移動している間に、「声を出すな」などとAを脅迫 し続けていたなどの報告を受けた。福祉課は、この報告を虐待通報として 取り扱うこととした(以下「本件虐待通報2」という。)。(乙17、18)イまた、福祉課は、平成31年2月4日、本件訪問診療機関から、訪問診療を行った際に、原告がAに「足を伸ばせ」と大声でどなっていた旨の報告を受けた。 待通報2」という。)。(乙17、18)イまた、福祉課は、平成31年2月4日、本件訪問診療機関から、訪問診療を行った際に、原告がAに「足を伸ばせ」と大声でどなっていた旨の報告を受けた。(乙19) ウ上記ア及びイの各報告を受けて、福祉課は、平成31年2月12日、第2回コア会議を開催した。 第2回コア会議においては、依然としてAを原告から分離して保護する必要がある状況にあることが確認され、原告が自宅にいないときを見計らってAを保護することができないかを検討することとされた。 (乙20)⑷ 第3回コア会議及び第4回コア会議までの経緯等(日付はいずれも平成31年又は令和元年)ア Aは、3月27日、デイサービスを受けていた際に車椅子にAを移乗させようとした職員がバランスを崩したために同職員と共に転倒し、左大腿 骨顆上骨折の傷害を負い(本件骨折事故)、C病院に入院した。(前提事実⑵ア、甲26)イ本件骨折事故の発生を受けて、福祉課は、4月16日、第3回コア会議を開催した。 第3回コア会議においては、Aが入院したことから、緊急に保護すべき 状況にはなくなったと考えられる一方で、原告については何らの改善もみられず、Aを自宅に帰すと再び原告が暴力を振るうなどのおそれがあることから、まずはC病院の担当医にAの病状について確認することとした。 (乙22)ウその後、C病院から、入院中にAを保護するという方法についてはスタ ッフに危害が及びかねないなどとして賛意が得られず、また、Aについて 虐待の所見はない旨の意見が述べられたことを受けて、福祉課は、5月7日、第4回コア会議を開催した。 第4回コア会議においては、C病院の上記意見を踏まえて、Aの入院中には保護を実施せず、養護者 虐待の所見はない旨の意見が述べられたことを受けて、福祉課は、5月7日、第4回コア会議を開催した。 第4回コア会議においては、C病院の上記意見を踏まえて、Aの入院中には保護を実施せず、養護者である原告に対して自宅介護のための支援等をした上で、これを原告が拒否するような場合にはAを保護することを検 討するなどの方針が確認された。 (乙23)エその後、被告を除く関係者の間でAの退院日に関する話合いが行われた際に、原告が退院後2、3日は介護サービスを入れたくないとの意向を強く示したため、7月29日にAが退院した後、8月2日まではヘルパーに よる介助が行われないこととなった。これを受けて、福祉課は、本件介護事業者と協議し、原告のみでAを介護するのは危険であることから、7月30日にケアマネージャーが自宅を訪問し、同月31日からヘルパーによる介助を行うことを原告に提案することとした。(甲27、41ないし43、乙24、25) ⑸ 本件緊急一時保護の実施に至るまでの経緯(日付はいずれも令和元年)ア原告は、7月30日、前日にC病院を退院したAを自宅で入浴させていたところ(なお、自宅の風呂は貯めた水を併設の湯沸かし器で温めるタイプのもので老朽化していたため、Aはデイサービス先で入浴介助を受けることが多かった。)、風呂の湯沸かし器を本火の状態にしたまま約2時間 にわたってその場を離れたために、熱くなった湯がAの左太腿等に当たり、Aが熱傷を負う事故が発生した(本件熱傷事故)。Aは、本件熱傷事故により、7月31日、C病院に入院した。(前提事実⑵イ、甲8、22、乙25、原告本人)イ福祉課は、7月31日、本件訪問診療機関の看護師から、本件熱傷事故 は故意によるものではないが、不適切な介護である C病院に入院した。(前提事実⑵イ、甲8、22、乙25、原告本人)イ福祉課は、7月31日、本件訪問診療機関の看護師から、本件熱傷事故 は故意によるものではないが、不適切な介護であると思うので、被告とし ての早急な対応を要望する旨伝えられた。 ウ Aが10月21日にD病院に転院したことから、福祉課は、D病院のメディカルソーシャルワーカーに対し、本件熱傷事故は原告による不適切な介護の結果と認識はしているものの、現段階では虐待の認定までには至っていないこと、原告とAとの面会を実施したり、主治医から病状説明を受 けたりした上で、福祉課として対応を検討したいと考えている旨を伝えた。(前提事実⑵イ、甲3)エ D病院及び福祉課の関係者は、11月11日、Aの状況に係るカンファレンスを行った。同カンファレンスでは、主治医から病状の説明(本件熱傷事故は熱傷深度が最も重症な3度熱傷であり、C病院で皮膚移植手術が 行われた。)があったほか、見舞いに来た原告が、飲食物の持ち込みが禁止されている上、Aにはえん下障害がありとろみ食を提供されているにもかかわらず、普通食を持ち込んでAに食べさせていること、Aは食事介助が必要ないにもかかわらず、原告が無理やり食べさせてしまってAが吐いたことがあったことが報告された。また、原告が、Aに対し、「お前はし ゃべるな」とどなるなどしていたことがある旨の報告もされた。(甲3、37、乙26)オ福祉課は、11月15日、D病院のメディカルソーシャルワーカーから、原告がAを車椅子に乗せて外気浴をさせることを強く要求して激高したため、やむなく外出を許可したこと、車椅子に乗せている間、原告がA に対して「うるさい」、「しゃべるな」などと大声でどなっていたことなどが報告された。( 気浴をさせることを強く要求して激高したため、やむなく外出を許可したこと、車椅子に乗せている間、原告がA に対して「うるさい」、「しゃべるな」などと大声でどなっていたことなどが報告された。(乙27)カ福祉課は、11月20日、D病院から、原告がAの見舞いに来た際に上記オ以外にも次のような出来事があった旨の報告を書面で受けた。なお、これらの出来事は、いずれもD病院の診療録又は看護記録に記載されてい る。(甲3、乙28) 10月21日原告が、Aに対し、「何も言うなよ。黙ってろよ。絶対声出すなよ」と強い口調で言っていた。 10月22日食事を配膳すると、原告がかなり速い速度でAの口元に食事を運び、 Aが食べ切れずに吐いてしまった。看護師が、原告に対し、Aの食事介助は不要であることなどを伝えた。 10月29日原告が持ち込んだカレーをAに食べさせていた可能性がある。 11月11日 原告が、Aに対し、ベッドに横になった状態のままで、持ち込んだ肉まんを食べさせた。Aは自歯が欠損しており、肉の塊等をかみ切ることができず、丸呑みの状態であった。看護師から原告に対して、誤えんや窒息の可能性があること、毎食の食事摂取量に影響すること、差し入れはやめてほしいことなどを伝えた。 11月18日原告が持ち込んだあんまんをAに食べさせていた可能性がある。 キ上記エないしカの各報告を受けて、福祉課は、11月21日、第5回コア会議を開催した。 第5回コア会議においては、それまでの経過を確認した上で、D病院か ら情報提供された原告の言動は、Aに対する身体的虐待及び心理的虐待に当たるものと判断さ 21日、第5回コア会議を開催した。 第5回コア会議においては、それまでの経過を確認した上で、D病院か ら情報提供された原告の言動は、Aに対する身体的虐待及び心理的虐待に当たるものと判断された。そして、原告が自宅介護を強く希望しているものの、C病院からの退院直後に原告による不適切な介護によって本件熱傷事故が発生したことなども考慮すると、自宅介護とした場合には再び原告による虐待行為や不適切な介護等が行われる可能性が高く、Aの生命又は 身体に重大な危険が生ずるおそれがあると判断され、高齢者虐待防止法9 条2項に基づく保護を実施する方針が決定された。併せて、Aにつき、入所先施設において原告との面会を制限すること、老人福祉法32条に基づいて後見開始審判申立て及び財産管理者選任申立てをすることも決定された。 (乙29) クその後、福祉課は、高齢者虐待防止法9条2項に基づく保護を実施するため、Aが入所する9条2項施設を探していたが、空きが見つからなかったことから、11月26日、同項に基づく保護ではなく本件要綱に基づく緊急一時保護によってAを保護することを決定した。(乙30)ケ D病院は、11月下旬の時点で、Aにつき、入院での処置を継続するこ とは不要なレベルになっていると判断していたが、退院後に自宅に帰ることは困難であると考えられたため、福祉課による方針決定を待っていた。 そして、福祉課は、12月9日に緊急一時保護を実施することを決定し、同日にAが退院することとなった。(甲3、乙30)⑹ 本件緊急一時保護及び本件各措置等の実施(日付はいずれも令和元年12 月9日)ア福祉課の職員らは、本件緊急一時保護を実施するため、警察官と共にD病院を訪れた。福祉課の職員が、Aに対し、D病院を 保護及び本件各措置等の実施(日付はいずれも令和元年12 月9日)ア福祉課の職員らは、本件緊急一時保護を実施するため、警察官と共にD病院を訪れた。福祉課の職員が、Aに対し、D病院を退院して別の施設に移動すること、自宅には戻れないが安全で安心して生活することができる場所に移動することになる旨を説明したところ、Aは、「安全なところが いいわ」と答えるなどした。そこで、被告の職員2名は、Aと共に介護タクシーに乗車して入所先施設に移送し、Aを入所先施設に入所させた。 (前提事実⑵ウ、乙33、35)イ他方、福祉課の別の職員らは、警察官と共に自宅を訪れ、在宅していた原告に対し、令和元年12月9日付け通知書(以下「本件通知書」とい う。)を交付した。本件通知書には、被告が高齢者虐待防止法に基づいて Aを保護した旨、原告がAと面会することは制限され、Aの保護先を原告に伝えることはできない旨が記載されていた。(甲1、乙33、35)ウまた、被告は、本件後見等申立てをし、本件後見人がAの財産管理者に選任された。(前提事実⑵ウ、同⑶ア)⑺ その後の経緯等 ア本件緊急一時保護に係る保護期間は、令和元年12月22日とされていたが、同月20日の時点においても9条2項施設を確保することができていなかったことから、被告は、同日、同保護期間を令和2年1月8日まで延長した。(前提事実⑶イ)イ被告は、本件緊急一時保護に関する原告からの問合せに対し、令和元年 12月25日付けの書面(以下「本件回答書」という。)をもって、高齢者虐待防止法9条2項に基づいてAの保護を実施するとともに、老人福祉法32条に基づく本件後見等申立てをしたこと、本件熱傷事故について原告による暴行(虐待)があったと認定 書」という。)をもって、高齢者虐待防止法9条2項に基づいてAの保護を実施するとともに、老人福祉法32条に基づく本件後見等申立てをしたこと、本件熱傷事故について原告による暴行(虐待)があったと認定したこと、高齢者虐待防止法13条に基づいて原告とAとの面会を制限することなどを回答した。(甲2) ウ被告は、9条2項施設を確保することができたため、令和2年1月8日、高齢者虐待防止法9条2項及び老人福祉法11条に基づく保護として本件入所委託措置をし、これに伴い、本件緊急一時保護は終了した。(前提事実⑶ウ)エまた、令和2年1月23日に本件後見人が選任されたことから、被告は、 同年5月31日付けで本件入所委託措置を廃止し、これに伴い、本件入所委託措置は、本件後見人と本件介護施設との間の契約関係に移行した。 (前提事実⑶エ) 2 緊急一時保護の法的性格について⑴ 検討 ア高齢者虐待防止法は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者 の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務等を定めるものである(1条)。そして、高齢者虐待防止法は、虐待通報等があった場合における市町村(なお、被告には市に関する規定が適用される。)の義務として、当該通報等をした者を特定させる事項を漏らしてはならない旨 (8条)及び速やかに当該高齢者の安全の確認その他当該通報等に係る事実の確認のための措置等を講ずべき旨(9条1項)を規定しているほか、市町村又は市町村長の義務として、養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法20条の3に規定する老人短期入所施 村又は市町村長の義務として、養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法20条の3に規定する老人短期入所施 設等に入所させる等、適切に、同法10条の4第1項若しくは11条1項の規定による措置を講じ、又は、適切に、同法32条の規定により審判の請求をすべき旨(9条2項)を規定しているところ、これらの規定は、当該通報等に係る高齢者に対する高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護を図るためのものであると解される。 上記の各規定において定められている市町村又は市町村長の義務は、一般的・抽象的な内容にとどまるものといえるが、これは、高齢者虐待の防止及び高齢者保護を図るために迅速かつ臨機応変な対応が必要とされること、虐待通報等に対して適時に適切な対応をするためには、専門性を有する複数の関係機関及び市町村職員が連携する必要があること(3条、5条、 15条、16条等)などを考慮して、個別的・具体的な義務をあらかじめ定めるのではなく、当該事案の対応に当たる専門的な関係機関及びこれと連携した市町村職員による事案に即した適宜かつ適切な措置に委ねることを相当とする趣旨であると解される。 このように、高齢者虐待防止法は、虐待通報等があった場合における具 体的な対応については、専門的な関係機関との連携を踏まえた市町村職員 の判断に委ねているものといえる。このことからすれば、その目的及び趣旨に沿った措置又は対応の内容を具体的に定めた要綱を各自治体が定めることも許容されているものと解される。厚労省マニュアル(甲9、52、乙31)において、高齢者の保護及び養護者との分離の手段の一つとして自治体の独自事業による緊急一時保護が挙げられていることからも、そ ことも許容されているものと解される。厚労省マニュアル(甲9、52、乙31)において、高齢者の保護及び養護者との分離の手段の一つとして自治体の独自事業による緊急一時保護が挙げられていることからも、その 理は裏付けられているものといえる(なお、厚労省マニュアルは、平成30年3月及び令和5年3月にそれぞれ改訂されているが、この点に関する記載内容に変更はない。乙31・61頁、甲9・58頁、甲52・70頁)。 イしかるところ、本件要綱は、虐待を受けている高齢者等を民間施設にお いて保護することにより、高齢者の虐待等を防止し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的として実施される緊急一時保護事業の円滑な運営を図るために制定されたものであり(1条)、緊急一時保護につき、区長があらかじめ高齢者を受け入れる民間施設と協定等を締結すること(2条)、おおむね65歳以上の者で、現に家族等から虐待を受けており、 又はそのおそれがあり、生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると認められる者を対象とすること(3条1項)、保護期間は原則として14日以内とすること(5条)、緊急一時保護に要した費用は区の負担とすること(6条)などを規定している。 これらの規定は、その内容からすれば、高齢者虐待防止法の目的及び趣 旨に沿うものであるといえるから、これに従って緊急一時保護を実施することが許容されるものということができる。 ウもっとも、高齢者虐待防止法及びその関係法令等においては緊急一時保護に関して何らの規定も置かれていないこと、本件要綱が定める緊急一時保護の対象者が高齢者虐待防止法9条2項に基づく保護の対象者よりも広 く定められていることなどからすれば、本件要綱に基づく緊急一時保護は、 直接的な法令の根拠 、本件要綱が定める緊急一時保護の対象者が高齢者虐待防止法9条2項に基づく保護の対象者よりも広 く定められていることなどからすれば、本件要綱に基づく緊急一時保護は、 直接的な法令の根拠を有しない事実上の措置にとどまるものであり、その実施に当たって強制力等を行使することは許されず、また、その実施が対象者の意に反してその権利及び義務その他の法律上の地位に直接の影響を及ぼすものと解することはできない。 エ以上によれば、本件要綱に基づく緊急一時保護は、直接の法令上の根拠 を有しない事実上の措置にとどまるものであり、その実施に当たって強制力等を行使することが許されないといった制約はあるものの、本件要綱に定められた要件を満たすものである限り、適法に実施することができるものというべきである。 ⑵ 原告の主張について 原告は、緊急一時保護は一般的行政権限を超えるものであり、本件要綱に基づいて実施することはできない旨主張するが、上記のとおり、緊急一時保護は、法令上の根拠がないことによる上記のような一定の制約には服するものの、本件要綱に定められた要件を満たすものである限り、適法に実施することができるものというべきであるから、同主張を採用することはできない。 3 違法性の判断枠組み⑴ 公務員の行為について国賠法1条1項の適用における違法性が認められるというためには、当該行為が、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行われたと認め得るような事情があることを要するものというべきである。 ⑵ そして、前記2のとおり、高齢者虐待の防止及び高齢者保護を図るためには専門性を有する関係機関との連携の下で市町村職員による事案に即した適切な措置に委ねるのが相当といえることからすれば、高齢者虐待の防止及び高齢 2のとおり、高齢者虐待の防止及び高齢者保護を図るためには専門性を有する関係機関との連携の下で市町村職員による事案に即した適切な措置に委ねるのが相当といえることからすれば、高齢者虐待の防止及び高齢者保護のための対応又は措置の内容及びその実施時期等については、当該事案を担当する自治体の長又は職員の合理的な裁量に委ねられているもの と解するのが相当である。 ⑶ 以上によれば、被告において実施した緊急一時保護及びそれに付随する具体的な対応又は措置については、当該事案を担当するその職員による、当該緊急一時保護が本件要綱の定める要件を満たすとした判断又は当該緊急一時保護の実施に付随する具体的な対応又は措置に係る判断が、それらが行われた具体的な事情の下で社会通念上著しく不合理であり、その裁量権の範囲を 逸脱し又はこれを濫用したものと認められる場合に限り、国賠法1条1項の適用上違法と評価すべきものと解するのが相当である。 以上の観点から、被告が本件緊急一時保護及び本件各措置等を実施したことの違法性について検討する。 4 本件緊急一時保護を実施したことの違法性について ⑴ 検討ア前記1の認定事実に基づいて検討する。 本件介護事業者及び本件訪問診療機関からの本件虐待通報1及び2は、いずれも原告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待に該当する行為があったことをその内容とするものである。そして、かかる通報を受けた福祉 課は、本件介護事業者に対する事情聴取をするなどした上で、第1回コア会議及び第2回コア会議を開催し、原告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待があり、緊急性が高い事案であることから、直ちにAを保護すべき状況にあると判断したものの、本件介護事業者の意見等も踏まえて、虐待については一旦様子をみることと 告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待があり、緊急性が高い事案であることから、直ちにAを保護すべき状況にあると判断したものの、本件介護事業者の意見等も踏まえて、虐待については一旦様子をみることとしたものである。その後、福祉課は、本 件骨折事故が発生してAが入院している間に第3回コア会議及び第4回コア会議を開催し、原告によるAの自宅介護は危険であるため、養護者である原告の支援をしたり、Aを施設に入所させたりすることを検討していた。 このような状況の中で、C病院からの退院直後に原告の不適切な入浴介助によって本件熱傷事故が発生した上、Aの転院先であるD病院から複数回 にわたって、原告がAに対して禁止されていた持込み食を与えたり、ベッ ドに寝かせたまま無理やり食事をさせて吐かせたり、大きな声でどなったりするなどの問題行動を繰り返している旨の報告があった。そこで、福祉課は、第5回コア会議において、原告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待があり、退院後に自宅に帰せばAの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあるものと判断し、D病院からの退院に合わせて本件緊急一時 保護を実施することを決定したものである。 イこのように、福祉課は、本件虐待通報1及び2を契機として、本件介護事業者等に対する事情聴取を行ったり、Aの介護に関する様々な方策を比較考量したりしながら、慎重に検討を重ねた上で、原告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待があると認定し、直ちにAの保護を実施しなければ Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると判断するに至ったものということができる。そして、福祉課は、Aが入所する9条2項施設を確保することができなかったために、高齢者虐待防止法9条2項に基づく保護ではなく、本件要綱に基づく緊急一時保護を 判断するに至ったものということができる。そして、福祉課は、Aが入所する9条2項施設を確保することができなかったために、高齢者虐待防止法9条2項に基づく保護ではなく、本件要綱に基づく緊急一時保護を実施することを選択したものである。 以上の経過を考慮すると、本件緊急一時保護が実施された時点において、福祉課が、原告のAに対する身体的虐待及び心理的虐待があると認定したこと、Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると判断したこと、Aを保護する手段として本件緊急一時保護の実施を選択したことは、いずれも不合理であったとはいえない。 ウ以上によれば、被告が本件緊急一時保護を実施したことにつき、国賠法1条1項の適用上違法であったと解することはできない。 ⑵ 原告の主張についてア虐待行為について原告は、本件介護事業者が作成した報告書やD病院の診療録等の記載 には事実に反する部分があり、信用することができない旨主張する。 しかしながら、それぞれに専門性を有する第三者である介護事業者及び医療機関並びにその職員等が、原告の言動につき、被告に対して殊更に虚偽の内容を報告する動機まではうかがわれない。また、前記1の認定事実のとおり、本件介護事業者及びD病院からの報告は、いずれも原告の言動を具体的に指摘するものである上、その内容に特に不自然な点 は見当たらない。そうすると、これらの報告はいずれも信用することができるものというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、Aの食事に係る原告の行為は身体的虐待に当たらない旨主張する。 しかしながら、前記⑴で検討したとおり、原告は、AがD病院に入院している間、Aに対し、禁止されている持込み食 い。 原告は、Aの食事に係る原告の行為は身体的虐待に当たらない旨主張する。 しかしながら、前記⑴で検討したとおり、原告は、AがD病院に入院している間、Aに対し、禁止されている持込み食を食べさせる行為を繰り返し行ったり、無理やり食事をさせて吐き出させたりしたことがあるところ、これらの行為は、仮にAに対する善意からされたものであったとしても、判断能力及びえん下能力が衰えていたAの生命又は身体に危 険を生じさせる行為として、客観的には身体的虐待に該当するものといわざるを得ない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、C病院においては、とろみ食ではなくきざみ食であった上、持込み食も制限されていなかったものであり、Aのえん下能力は衰えて いなかったから、原告の食事に関する行為に危険性はなかった旨主張する。 しかしながら、D病院においてはAのえん下能力を考慮してとろみ食が提供されていたこと(甲37)からすれば、少なくともD病院に入院していた当時、Aのえん下能力は低下していたものと考えられる。また、 そもそも、患者に対してどのような食事を与えるかの判断は、医療機関 ごとに異なり得るものであるから、C病院における食事に関する事情は、上記のD病院における原告の行為を正当化するものではないというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、Aは食事を口から吐き出したにすぎず、原告が無理やり食事 をさせたことはない旨主張し、原告もこれに沿う供述をする(甲8、原告本人)。 しかしながら、D病院の診療録には、「息子様が本人にむりやり食べさせていたようで、食後に嘔吐あり。現在は嘔吐は落ち着いている。」と記載されていること(甲 これに沿う供述をする(甲8、原告本人)。 しかしながら、D病院の診療録には、「息子様が本人にむりやり食べさせていたようで、食後に嘔吐あり。現在は嘔吐は落ち着いている。」と記載されていること(甲3・11頁)からすれば、Aは、食事を口か ら吐き出しただけではなく、胃の内容物等まで吐出したものと認められ、このことからすれば、原告の行為はAに「無理やり食事をさせたこと」に当たると解するほかはない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イ心裡的虐待について 原告は、Aに対して大きな声を出したことはあるものの、Aが大声で話すなどしたことを注意したものであることなどからすれば、心理的虐待には当たらない旨主張する。 しかしながら、上記アで検討したとおり、本件介護事業者からの報告やD病院の診療録の記載はいずれも信用することができるものであるところ、 前記1の認定事実のとおりの報告内容からすれば、原告はAに対して日常的に大声でどなっていたものといわざるを得ず、その内容も暴言と評価し得るものというべきであるから、原告の意図はどうであれ、客観的にみればAに対する心理的虐待に該当するものと評価されてもやむを得ない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ緊急性について 原告は、本件緊急一時保護が実施された当時、Aの処遇が未定であったことなどから、Aの生命又は身体に危険が生じているおそれがあると被告が判断することはできなかった旨主張する。 しかしながら、前記⑴で検討したところによれば、被告は、本件介護事業者及びD病院から受けた様々な具体的報告等を慎重に検討した上で、A が退院後に自宅に帰った場合には、再び原告による虐待行為又は不適切な がら、前記⑴で検討したところによれば、被告は、本件介護事業者及びD病院から受けた様々な具体的報告等を慎重に検討した上で、A が退院後に自宅に帰った場合には、再び原告による虐待行為又は不適切な介護が行われ、Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると判断したものであり、その判断が不合理であるということはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ事実の確認のための措置について 原告は、本件緊急一時保護及び本件各措置等をするに当たって、被告は高齢者虐待防止法9条1項所定の事実の確認のための措置を怠った旨主張する。 しかしながら、高齢者虐待防止法、本件要綱及びその他の関係法令等において、虐待通報等があった場合における事実の確認のための措置につき、 その方法等に関する具体的な規定は存しないことからすれば、本件において、被告が、原告に対する直接の事情聴取をせず、また、虐待行為があったとされる現場の確認等をしなかったからといって、それによって直ちに事実の確認のための措置を怠ったと評価されるものではないというべきである。 また、前記2のとおり、高齢者虐待の防止及び高齢者保護を図るためには専門性を有する関係機関及びこれと連携した職員による事案に即した適切な措置に委ねるのが相当といえることからすれば、虐待行為の有無を確認する方法や時期等については、当該事務に従事する職員の広汎な裁量に委ねられるべきであると解される。しかるところ、被告は、それまでの経 過等を考慮して、直接に事情聴取等を行った場合に原告がどのような行動 に出るか予想することが困難であり、かえってAの生命又は身体に危険が生ずる可能性があるために、原告に対する事情聴取等をしない判断をしたものである 事情聴取等を行った場合に原告がどのような行動 に出るか予想することが困難であり、かえってAの生命又は身体に危険が生ずる可能性があるために、原告に対する事情聴取等をしない判断をしたものである旨主張している。かかる判断は、Aの年齢(本件緊急一時保護の時点で満▲歳。前提事実⑴イ)や前記1の認定事実の下では、上記の裁量の範囲内にあるものといえ、これを違法と評価されるものではないとい うべきである。 さらに、前記⑴で検討したとおり、福祉課は、本件介護事業者等から原告による虐待行為の存在を疑わせる内容の報告を受けた場合には、その都度報告者等からの事情聴取をするなどしていたものである。 以上によれば、本件緊急一時保護を実施するに当たって、被告が事実の 確認のための措置を怠ったものということはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 オ Aの承諾について原告は、本件緊急一時保護を実施するためにはAの承諾が必要であるところ、Aは意思能力を欠いていたからそもそも緊急一時保護の対象者とす ることはできなかったものである上、実際にもAの承諾が得られていなかった旨主張する。 しかしながら、前記1の認定事実⑹のとおり、本件緊急一時保護が実施された際における福祉課の職員とAとの間のやり取りの内容からすれば、Aは、本件緊急一時保護の実施により入所先施設に入所することについて 承諾していたものと評価することができる。 また、緊急一時保護が実施されるのは、対象者の生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがある場合であり、緊急の対応が求められる状況にあるといえること、意思能力を欠く者について緊急一時保護を一切実施し得ないと解することは、かえって高齢者虐待防止法の趣旨及び目的に反する 結果 れがある場合であり、緊急の対応が求められる状況にあるといえること、意思能力を欠く者について緊急一時保護を一切実施し得ないと解することは、かえって高齢者虐待防止法の趣旨及び目的に反する 結果となるといえることからすれば、対象者が意思能力を欠く者であった としても、当該対象者が緊急一時保護の実施を明示的に拒絶する言動をしているなどの事情がない限り、そのことだけで緊急一時保護を実施したことについて違法と評価されるものではないというべきである。そして、上記のやり取りの内容からすれば、Aは、本件緊急一時保護の実施を明示的に拒絶する言動をしていたものとはいえないから、仮に、上記のやり取り がされた当時、Aが意思能力を欠いていたとしても、被告が本件緊急一時保護を実施したことが違法であるということはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 5 本件各措置等の違法性について⑴ 検討 ア本件退院措置及び本件移送・入所措置について本件退院措置及び本件移送・入所措置は、いずれも直接的にAを保護するための措置であるといえるから、本件要綱に基づき、緊急一時保護として実施することができる措置である。そして、前記4で検討したとおり、被告が本件緊急一時保護を実施することとした判断が不合理であ るとはいえないことからすれば、被告が本件退院措置及び本件移送・入所措置をしたことが不合理であるということもできない。 また、本件退院措置及び本件移送・入所措置の実施態様についてみても、前記1の認定事実⑹によれば、D病院からの退院並びに入所先施設への移動及び入所については、Aの承諾を得た上で行われたものといえ る上、その実施の経過において、Aが拒否的な言動をしたり、それに対して被告の職員 ⑹によれば、D病院からの退院並びに入所先施設への移動及び入所については、Aの承諾を得た上で行われたものといえ る上、その実施の経過において、Aが拒否的な言動をしたり、それに対して被告の職員等が強制力等を行使したりしたなどの事情もうかがわれない。こうしたことからすれば、本件退院措置及び本件移送・入所措置の方法が相当でなかったというべき点は見当たらない。 以上によれば、被告が本件退院措置及び本件移送・入所措置をしたこ とにつき、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。 なお、前記4⑵オにおいて説示したところからすれば、以上の判断は、仮にAが上記承諾の時点で意思能力を欠く状態にあったとしても、左右されるものではない。 イ本件面会制限措置について高齢者虐待防止法、本件要綱及びその他の関係法令等において、養護 者に対して緊急一時保護の対象者の保護先を教示すべき旨の規定は存しない。また、そもそも、養護者は、常時介護している成年者の親族であったとしても、未成年者に対する親権者等とは異なり、当然には当該親族に対する監護権のような権利を有しているものではない。 そうすると、本件においても、被告が、原告に対し、入所先施設にお いてAと面会させたり、Aがどの施設に入所しているかを教示したりすべき義務を負うものとまでは解し得ないから、被告が本件面会制限措置をすることは、原告に対する義務違反行為となるものではないというべきである。 上記の点をおくとしても、以下のとおり、被告が本件面会制限措置 をしたことが不合理であるということはできない。 すなわち、面会制限措置は、本件要綱に定められているものではない上、直接的に対象者を保護する措置であるとはいえないから、本件要綱に基づく緊急一時保 をしたことが不合理であるということはできない。 すなわち、面会制限措置は、本件要綱に定められているものではない上、直接的に対象者を保護する措置であるとはいえないから、本件要綱に基づく緊急一時保護として実施することができる措置には当たらない。 もっとも、本件面会制限措置は、被告が原告に対して強制力等をもって Aとの面会を制限するものではなく、Aの入所先施設に対し、その施設管理権に基づいて原告とAとの面会を制限するよう要請するにとどまるものにすぎない。そして、一般に、高齢者虐待の事案においては、虐待をした養護者と当該高齢者との面会を制限する必要があるといえることからすれば、緊急一時保護に付随して行う措置として面会制限措置をす ることが許容される場合もあるというべきである。 しかるところ、これまで検討したところに照らすと、本件においては、Aが自宅で原告による介護を受ける状況になれば、Aの生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあったものである。そして、Aが高齢で認知症を患っていること、原告がAの自宅での介護を強く望んでいたことも考慮すると、原告とAとの面会を許せば、Aが入所先施設から自宅に 連れ戻されるなどのおそれがあったものといえる。そうすると、本件面会制限措置については、これをすべき必要性を認め得るものというべきである。 以上によれば、被告が本件面会制限措置をしたことにつき、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。 ウ本件後見等申立てについて本件後見等申立ては、本件要綱に基づく緊急一時保護として実施されたものではなく、前記1の認定事実⑺イのとおり、高齢者虐待防止法9条2項及び老人福祉法32条に基づく申立て(いわゆる市町村申立て)としてされたものである。 そし 緊急一時保護として実施されたものではなく、前記1の認定事実⑺イのとおり、高齢者虐待防止法9条2項及び老人福祉法32条に基づく申立て(いわゆる市町村申立て)としてされたものである。 そして、これまで検討したところに照らせば、被告が、Aにつき、高齢者虐待防止法9条2項及び老人福祉法32条各所定の要件を満たすと判断したことが不合理であるということはできず、実際にも、Aについては申立てから程なくして家庭裁判所による後見開始決定等がされたものである。 したがって、被告が本件後見等申立てをしたことにつき、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。 ⑵ 原告の主張についてア本件退院措置について原告は、本件退院措置につき、本件入院契約を第三者である被告が解約 するものであるから、法令による特別な授権がなければすることができな い旨主張する。 しかしながら、患者と医療機関との間における入院契約は、特段の事情がない限り、当該医療機関が入院の必要性がなくなったと判断し、入院契約を終了する旨を患者に告知した時点で終了するものと解される。そして、前記1の認定事実⑸ケ及び⑹アによれば、D病院は、令和元年11月下旬 の時点でAにつき入院での処置を継続する必要はないと判断していたものであり、本件緊急一時保護が実施された同年12月9日に福祉課の職員を通じてその旨がAに告知されたものということができる。そうすると、本件退院措置は、被告が本件入院契約を解約したものではなく、福祉課の職員が、D病院の本件入院契約を終了する旨の意思表示を、使者としてAに 告知することによって行われたものと評価すべきであるところ、当該職員がかかる行為をすることにつき、被告等に対する法令による特別な授権が必要であった 約を終了する旨の意思表示を、使者としてAに 告知することによって行われたものと評価すべきであるところ、当該職員がかかる行為をすることにつき、被告等に対する法令による特別な授権が必要であったと解されるものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 なお、仮に、上記の告知がされた時点において、Aが意思能力を欠く状 態にあったとしても、証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば、本件後見人が、その選任後にD病院に係るAの入院費用の支払をするなどしたことが認められることからすれば、本件後見人は、本件退院措置を事後的に追認していたものと評価するほかはなく、かかる場合であっても、被告が本件退院措置をしたことにつき、国賠法1条1項の適用上違法であるとい うことはできない。 イ本件移送・入所措置について 原告は、被告がAをD病院から移送し、他の施設に収容したことは、誘拐罪や監禁罪に該当する行為である旨主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、本件移送・入所措置をするに当た って、被告の職員等がAに対して何らかの強制力等を行使することを前 提とするものといえるところ、前記⑴アで検討したとおり、本件移送・入所措置については、Aの承諾の下で行われたものといえる上、Aに対して強制力等が行使されたなどの事情は存しない。なお、本件移送・入所措置が警察官立会いの下で行われたこと(もっとも、Aの上記承諾が警察官の立会いの下で得られたものであると認めるに足りる証拠はな い。)については、主として原告による妨害等があり得ることを考慮した予防的な措置といえるものであり、高齢者虐待事案と判断した上での対応として不合理なものとはいえないから、警察官が立ち会ったこと自体をもって強制力 は、主として原告による妨害等があり得ることを考慮した予防的な措置といえるものであり、高齢者虐待事案と判断した上での対応として不合理なものとはいえないから、警察官が立ち会ったこと自体をもって強制力等が行使されたなどと評価されるものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 原告は、被告にはAを代理して入所先施設との間で入所契約を締結する権限はない旨主張する。 しかしながら、緊急一時保護においては、あらかじめ区長が施設との間で対象者に係る入所委託契約を締結することとされており(本件要綱2条、乙34)、区長が対象者を代理して施設との間で入所契約を締結 することとはされていない。そうすると、緊急一時保護において、職員が対象者を施設に入所させる行為は、あらかじめ被告が入所委託契約を締結していた施設に当該対象者を引き渡すという行為であるにすぎず、また、当該対象者を保護し、その利益のために行われるものといえることからすれば、当該対象者との関係では事務管理に該当するものと解さ れる。 以上によれば、本件において、被告がAを代理して入所先施設との間で入所契約を締結したものではないから、原告の上記主張は、その前提を欠くものというべきである。 なお、事務管理は、本人の意思又は推定的意思に従って行われる必要 があると解されるところ、前記⑴アで検討したとおり、本件移送・入所 措置はAの承諾の下で行われたものといえる。そして、仮に、Aが意思能力を欠く状態にあったとしても、Aが拒否的な言動をしていなかったことからすれば、Aの推定的意思に反するものともいえない。よって、福祉課の職員がAを入所先施設に入所させた行為は、Aの意思又は推定的意思に反するものではなく、事務管理として適法 言動をしていなかったことからすれば、Aの推定的意思に反するものともいえない。よって、福祉課の職員がAを入所先施設に入所させた行為は、Aの意思又は推定的意思に反するものではなく、事務管理として適法な行為であったとい うことができる。 以上によれば、原告の上記主張は採用することができない。 ウ本件面会制限措置について原告は、自治体の長には面会を制限する権限は存しないこと、厚労省マニュアルには緊急一時保護においては面会制限ができない旨記載されてい ることから、被告が面会制限措置をすることは許されない旨主張する。 しかしながら、前記⑴イで検討したとおり、本件面会制限措置は、Aの入所先施設に対し、その施設管理権に基づいて原告とAとの面会を制限するよう要請するにとどまるものであり、原告に対して面会の制限を強制するものではない。また、前記⑴イで検討したとおり、本件面会制限措置は、 本件要綱に基づく緊急一時保護として実施することができる措置には当たらないとしても、本件の具体的事情の下では、その実施(施設に対するその旨の要請)自体は許容されるものといえる。したがって、緊急一時保護に関する厚労省マニュアルの記載をもって本件面会制限措置を違法であるとする原告の主張は、当を得ないものというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エ本件後見等申立てについて原告は、本件要綱に基づいて本件後見等申立てをすることはできない旨主張する。 しかしながら、前記⑴ウで説示したとおり、被告は、高齢者虐待防止法 9条2項及び老人福祉法32条に基づいて本件後見等申立てをしたもので あるから、原告の上記主張はその前提を欠くものというべきである。 で説示したとおり、被告は、高齢者虐待防止法 9条2項及び老人福祉法32条に基づいて本件後見等申立てをしたもので あるから、原告の上記主張はその前提を欠くものというべきである。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括以上によれば、被告が本件各措置等をしたことについて、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。 6 その他の原告の主張について⑴ 上記説示したほかにも、原告は、本件緊急一時保護及び本件各措置等が違法であるとして種々の主張をするが、いずれも前記の結論を左右するものではない。 また、原告は、本件訴訟の当初は本件入所委託措置の取消しを求めていた ものであり、本件入所委託措置が違法であるとして種々の主張をしていたものであるところ、仮に、かかる主張が訴えの変更後の損害賠償請求に係る請求原因を構成していると解したとしても、これまで検討したところに照らせば、被告が本件入所委託措置をしたことにつき、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。 ⑵ なお、前記1の認定事実⑹イ及び⑺イのとおり、被告は、本件通知書及び本件回答書において、本件各措置等は高齢者虐待防止法に基づくものであると記載していたものである。この点に関し、被告は、虐待通報に係る通報者の特定を避けるためにそのような記載内容としたと主張しているところ、自治体が高齢者虐待防止法8条所定の守秘義務を負うことからすれば、かかる 対応があり得ないものとはいえない。 また、仮に、本件通知書及び本件回答書における上記記載が、被告が法令等の適用を誤解したことによるものであったとしても、それのみでは本件緊急一時保護及び本件各措置等の適法性に影響する事情であるとはいえないから、前記の結論が び本件回答書における上記記載が、被告が法令等の適用を誤解したことによるものであったとしても、それのみでは本件緊急一時保護及び本件各措置等の適法性に影響する事情であるとはいえないから、前記の結論が左右されるものではない。 第4 結論 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官岡田幸人 裁判官都野道紀 裁判官曽我学 (別紙1-1) ○高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成十七年法律第百二十四号) (目的) 第一条 この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。 )のための措置等を 対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。 (定義等) 第二条 この法律において「高齢者」とは、六十五歳以上の者をいう。この法律において「養護者」とは、高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等(第五項第一号の施設の業務に従事する者及び同項第二号の事業において業務に従事する者をいう。以下同じ。)以外のものをいう。この法律において「高齢者虐待」とは、養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。 一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為 イ 高齢者の身体に外傷が する行為をいう。 一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為 イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。 ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。 ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。 ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。 二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。 以下 略 (国及び地方公共団体の責務等) 第三条 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止、高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他 者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに養護者に対する支援が専門的知(別紙1-1) 識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護に資するため、高齢者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。 (高齢者虐待の早期発見等) 第五条 養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従 期発見等) 第五条 養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等、医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢者虐待の早期発見に努めなければならない。 前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止のための啓発活動及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。 (権利変換計画の決定の基準) (養護者による高齢者虐待に係る通報等) 第七条 養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。 前項に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよ か、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならない。 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。 第八条 市町村が前条第一項若しくは第二項の規定による通報又は次条第一項に規定する届出を受けた場合においては、当該通報又は届出を受けた市町村の職員は、その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。 (通報等を受けた場合の措置) 第九条 市町村は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は高齢者からの養護者による高齢者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該高齢者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、第十六条 、当該高齢者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、第十六条の規定により当該市町村と連携協力する者(以下「高齢者虐待対応協力者」という。 )とその対応について協議を行うものとする。 市町村又は市町村長は、第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は前項に規定する届出があった場合には、当該通報又は届出に係る高齢者に対する養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護が図られるよう、養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法第二十条の三に規定する老人短期入所施設等(別紙1-1) に入所させる等、適切に、同法第十条の四第一項若しくは第十一条第一項の規定による措置を講じ、又は、適切に、同法第三十二条の規定により審判の請求をするものとする。 (立入調査) 第十一条 じ、又は、適切に、同法第三十二条の規定により審判の請求をするものとする。 (立入調査) 第十一条 市町村長は、養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、介護保険法第百十五条の四十六第二項の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該高齢者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。 前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。 第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 (面会の制限) 第十三条 養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十一条第一項第二 (面会の制限) 第十三条 養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十一条第一項第二号又は第三号の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る養介護施設の長は、養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護の観点から、当該養護者による高齢者虐待を行った養護者について当該高齢者との面会を制限することができる。 (専門的に従事する職員の確保) 第十五条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するために、これらの事務に専門的に従事する職員を確保するよう努めなければならない。 (連携協力体制) 第十六条 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するため、老人福祉法第二十条の七の二第一項に規定する老人介護支援センタ 養護者に対する支援を適切に実施するため、老人福祉法第二十条の七の二第一項に規定する老人介護支援センター、介護保険法第百十五条の四十六第三項の規定により設置された地域包括支援センターその他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなければならない。 この場合において、養護者による高齢者虐待にいつでも迅速に対応することができるよう、特に配慮しなければならない。 (成年後見制度の利用促進) 第二十八条 国及び地方公共団体は、高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに財産上の不当取引による高齢者の被害の防止及び救済を図るため、成年後見制度の周知のための措置、成年後見制度の利用に係る経済的負担の軽減のための措置等を講ずることにより、成年後見制度が広く利用されるようにしなければならない。 (別紙1-2) ○老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号) (老人ホームへの入所等) 第十一条 (別紙1-2) ○老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号) (老人ホームへの入所等) 第十一条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。 一 六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。 )により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人ホームに入所を委託すること。 二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委 の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。 三 六十五歳以上の者であつて、養護者がないか、又は養護者があつてもこれに養護させることが不適当であると認められるものの養護を養護受託者(老人を自己の下に預つて養護することを希望する者であつて、市町村長が適当と認めるものをいう。 以下同じ。 )のうち政令で定めるものに委託すること。 市町村は、前項の規定により養護老人ホーム若しくは特別養護老人ホームに入所させ、若しくは入所を委託し、又はその養護を養護受託者に委託した者が死亡した場合において、その葬祭(葬祭のために必要な処理を含む。 以下同じ。 )を行う者がないときは、その葬祭を行い、又はその者を入所させ、若しくは養護していた養護老人ホーム、特別養護老人ホーム若しくは養護受託者にその葬祭を行うことを委託する措置を採ることができる。 ( ム、特別養護老人ホーム若しくは養護受託者にその葬祭を行うことを委託する措置を採ることができる。 (審判の請求) 第三十二条 市町村長は、六十五歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。 (別紙2)B高齢者緊急一時保護事業実施要綱 (目的)第1条この要綱は、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する 法律(平成17年法律第124号)に基づき、高齢者の尊厳ある生活を守るため、虐待を受けている高齢者若しくはそのおそれがある高齢者又は緊急に保護する必要がある高齢者を、民間施設において保護すること(以下「緊急一時保護」という。)により、高齢者の虐待等を防止し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。 (民間施設との協定等の締結)第2条区長は、緊急一時保護を実施するにあたって、あらかじめ高齢者を受け入れる民間施設(以下「受入機関」という。)と協定等を締結するものとする。 (対象者)第3条緊急一時保護の対象とする者は、おおむね65歳以上の者で、現に家族等から虐待を受けており、又はそのおそれがあり、生命又は身体に重 。)と協定等を締結するものとする。 (対象者)第3条緊急一時保護の対象とする者は、おおむね65歳以上の者で、現に家族等から虐待を受けており、又はそのおそれがあり、生命又は身体に重大な危険が生ずるおそれがあると区長が認めた者とする。 2 前項の規定にかかわらず、区長は、緊急に保護する必要があると認めたとき は、同項の規定する者以外のおおむね65歳以上の者を緊急一時保護の対象とすることができる。 (決定及び実施)第4条区長は、区民等から高齢者虐待等について通報を受けたときは、速やかに 実態を把握し、緊急一時保護の要否を決定するものとする。 2 区長は、前項の規定により緊急一時保護を実施することを決定したときは、その旨を本人に伝えるとともに、高齢者緊急一時保護実施通知書により受入機関に通知するものとする。 (期間) 第5条受入機関での緊急一時保護の期間は、14日以内とする。ただし、区長が特別な事情があると認めたときは、この限りでない。 (費用)第6条第3条第1項に該当するもので緊急一時保護を受けたものに係る緊急一時 保護に要した費用は、区の負担とする。 2 略 (委任)第7条この要綱に定めるもののほか、緊急一時保護の実施について必要な事項は、 福祉部長が別に定める。

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