主文 1 被告会社は,原告ら各自に対し,次の各金員及びこれに対する平成23年5月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による各金員を支払え。 ⑴ 原告Aに対し 112万9617円⑵ 原告Bに対し 113万1738円⑶ 原告C及び原告E各自に対し 113万5337円⑷ 原告Dに対し 112万6852円⑸ 原告Fに対し 110万9961円⑹ 原告Gに対し 113万2443円 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 被告会社及び被告組合の反訴請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,原告らに生じた費用の10分の5及び被告会社に生じた費用の10分の7を被告会社の負担とし,原告らに生じた費用の10分の2及び被告組合に生じた費用の10分の7を被告組合の負担とし,その余の費用を原告らの負担とする。 5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴⑴ 被告会社は,原告ら各自に対し,167万9890円及びこれに対する平成23年5月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 ⑵ 被告会社は,原告ら各自に対し,40万7743円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 ⑶ 被告らは,原告ら各自に対し,連帯して,110万円及びこれに対する被告会社は平成23年6月19日から,被告組合及び被告機構は同月21日から,それぞれ支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 反訴⑴ 原告らは,被告会社に対し,連帯して,1260万円及びこれに対する平成24年2月2日か 被告機構は同月21日から,それぞれ支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 反訴⑴ 原告らは,被告会社に対し,連帯して,1260万円及びこれに対する平成24年2月2日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 ⑵ 原告らは,被告組合に対し,連帯して,710万円及びこれに対する平成24年2月2日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 ⑶ 原告らは,別紙1謝罪文目録記載の謝罪広告を,株式会社読売新聞北海道支社発行の読売新聞,株式会社北海道新聞発行の北海道新聞及び株式会社函館新聞発行の函館新聞の各朝刊社会面に,見出し,記名及びあて名は各14ポイント活字をもって,その余の部分は各8ポイント活字をもって,各1回掲載せよ。 第2 事案の概要本訴事件は,外国人研修・技能実習制度に基づき第1次受入れ機関を被告組合,第2次受入れ機関を被告会社として本邦に上陸,在留した原告ら各自が,①被告会社に対し,研修期間及び技能実習期間中の作業又は労務提供は雇用契約に基づくものであり,また,被告会社は技能実習期間中原告らの賃金から住居費等を控除してきたところ,その賃金控除についての労使協定は存在しないため控除は労働基準法24条1項に反し無効であるなどと主張し,研修期間及び技能実習期間のうち平成21年2月16日から平成23年5月3日までの未払賃金及び技能実習期間終了予定日の翌日である同月4日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条所定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を,②被告会社に対し,未払賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金部分につき労働基準法114条所定の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合によ の支払を,②被告会社に対し,未払賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金部分につき労働基準法114条所定の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を,③被告らに対し,被告会社が原告らの旅券,預金通帳等を違法に管理したこと,違法な労働状態を作出したこと,被告会社の部長が原告らに対し暴力及びハラスメント行為をしたこと等は不法行為に当たるところ,被告組合及び被告機構はその際被告会社を指導・監督すべき義務を怠ったなどと主張して,共同不法行為に基づく損害賠償金及びこれに対する各訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払を,それぞれ求めた事案である。 反訴事件は,被告会社及び被告組合(以下併せて「被告会社ら」という。)各自が,原告らに対し,同人らの本訴提起は事実的にも法的にも根拠を著しく欠いたものである上,原告らは事実的にも法的にも根拠を欠いた本件に関する主張を各新聞社にリークし各新聞社の記事に掲載させることで被告会社らの名誉・信用を毀損したなどと主張して,不法行為に基づき損害賠償金及びこれに対する反訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の連帯支払並びに謝罪広告の掲載を求めた事案である。 1 前提事実末尾に証拠を記載した事実は,当該証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められ,その余の事実は,当事者間に争いがないか弁論の全趣旨によって容易に認められる。 ⑴ 外国人研修制度及び技能実習制度ア出入国管理及び難民認定法(平成21年法律第79号による改正前のもの。以下「入管法」という。)をはじめとする関係法令により整備された外国人研修制度及び技能実習制度(以下まとめて「 習制度ア出入国管理及び難民認定法(平成21年法律第79号による改正前のもの。以下「入管法」という。)をはじめとする関係法令により整備された外国人研修制度及び技能実習制度(以下まとめて「本件制度」という。)は,いずれも諸外国の青壮年労働者を一定期間本邦の産業界に受け入れ,産業上の技術・技能・知識を修得させることを目的とする制度であった。外国人研修制度は,原則として1年以内の期間に,本邦の産業・職業上の技術・技能・知識の修得を支援することを内容とし,技能実習制度は,外国人研修制度による研修期間と合わせて最長3年の期間において,研修により修得した技術・技能・知識を,雇用関係の下,より実践的かつ実務的に習熟させることを内容とするものであった。 イ外国人研修制度により研修を受ける者(以下「研修生」という。)は,入管法別表第1の4の表の「研修」の在留資格をもって本邦に入国することとなっていた。研修生は,本邦の公私の機関により受け入れられて行う技術,技能又は知識の修得をする活動(同法別表第1の4の表の「留学」の項及び「就学」の項の下欄に掲げる活動を除く。)をすることができたが(同法2条の2第2項),同法19条2項に定める法務大臣の許可がない限り,原則として上記「研修」の在留資格として認められている活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行ってはならないとされていた(同条1項2号)。 研修は,後述する実務研修を円滑に実施するための日本語や実務研修についての技術・技能に関連した産業・職業の基礎知識やノウハウ,安全衛生の基本,生活環境・日本文化・研修への取組の姿勢等の座学である「非実務研修」と,生産現場で実際に商品の生産に従事する等しながら技術,技能,知識を修得する「実務研修」に大別され 識やノウハウ,安全衛生の基本,生活環境・日本文化・研修への取組の姿勢等の座学である「非実務研修」と,生産現場で実際に商品の生産に従事する等しながら技術,技能,知識を修得する「実務研修」に大別される。 そして,研修の中に実務研修が含まれている場合には,実務研修を受ける時間は原則として研修を受ける時間全体の3分の2以下でなければならないとされていた(平成21年法務省令第50号による改正前の出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)の研修の在留資格に係る基準の7号)。(甲15,乙ロ1)ウ研修には,企業単独型研修と団体監理型研修が設けられており,前者は,本邦の企業が,海外の取引先企業等の常勤職員を研修生として受け入れるものであるのに対し,後者は,中小企業団体や公益法人等が,公的援助・指導を受けて受け入れ,これらの団体等の指導・監督の下でその構成員である傘下企業等が研修生を受け入れるというものであり,このうち,研修を監理する団体を第1次受入れ機関といい,同機関を通して研修生を受け入れて研修を行う企業等を第2次受入れ機関という。 エ技能実習制度による実習を受ける者(以下「実習生」という。)が本邦に滞在し技能実習を行うためには,研修終了時に,入管法上の在留資格について「研修」から同法別表第1の5の表の「特定活動」に変更することについて許可を受けなければならなかった。「特定活動」とは,法務大臣が個々の者に対して同法別表第1の5の表の下欄イからニまでのいずれかに該当するものとして特に指定する活動をいうところ,研修生が一定の要件をクリアした場合には,在留資格変更許可を受けることができた。 技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針(平成5年法務 のとして特に指定する活動をいうところ,研修生が一定の要件をクリアした場合には,在留資格変更許可を受けることができた。 技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針(平成5年法務省告示第141号)によれば,実習生は,本邦の公私の機関と雇用契約を締結することが前提になっていた。(甲14,乙ロ1)⑵ 当事者ア原告らは,本件制度のうち団体監理型研修を利用して本邦に上陸,在留し,被告会社において,水産物の加工作業を行っていた中華人民共和国籍の女性らである。 イ被告会社は,水産物の加工等を目的とする株式会社であるとともに,被告組合の組合員であり,団体監理型研修における第2次受入れ機関に当たるものである。 ウ被告組合は,組合員のために行う研修生の共同受入れ事業等を目的とする事業協同組合であり,団体監理型研修における第1次受入れ機関に当たるものである。 エ被告機構は,法務省,外務省,厚生労働省,経済産業省及び国土交通省の共同管轄に属する財団法人であり,研修生の受入れの拡大と円滑化を図り,我が国の技術,技能又は知識を開発途上国等に積極的に移転し,もってこれらの国の人材の育成と経済社会の発展に寄与することを基本として,①研修生及び実習生の受入れを行おうとする,あるいは行っている民間団体・企業等や諸外国の送出し機関に対し,総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行うこと,②研修生及び実習生の悩みや相談に応えるとともに,入管法令・労働法令等の法的権利の確保のため助言・援助を行うこと,③制度本来の目的である研修及び技能実習の成果が上がるよう受入れ機関,研修生,実習生,送出し機関等を支援することを使命としている。 ⑶ 原告らの研修及び技能実習の内容ア原告らは,平成20 本来の目的である研修及び技能実習の成果が上がるよう受入れ機関,研修生,実習生,送出し機関等を支援することを使命としている。 ⑶ 原告らの研修及び技能実習の内容ア原告らは,平成20年5月4日,本件制度の下,第1次受入れ機関を被告組合,第2次受入れ機関を被告会社として,「研修」の在留資格により本邦に上陸した。 イ原告らは,同月8日から平成21年4月30日まで,研修生として,被告会社において主にイカの皮むきやゲソ処理などの水産加工作業を行っていた。 ウ原告らは,同年5月16日以降は,実習生として,被告会社において研修期間と同様にイカの皮むきやゲソ処理などの水産加工作業を行っていた。 原告らの技能実習期間は,平成23年5月までであった。 ⑷ 被告会社らによる研修手当の支払等ア被告組合は,平成20年5月8日から平成21年4月30日までの間,原告らに対し,毎月5万円の研修手当を支払っていた。 イ被告会社は,平成21年5月16日から後述する平成22年12月11日の精算時までは,原告らに対し,毎月5万5000円(手取り額)の基本給及び技能実習1年目は1時間当たり600円,2年目は1時間当たり700円の時間外手当を支払っていた。 ウ技能実習期間中における被告会社の原告らに対する上記支払に関連して,被告会社は平成21年5月4日以降賃金支払の際住居費2万8000円,水道光熱費1万5644円,生活用品2500円及び物品修理費・雑費500円の合計4万6144円(合計4万6644円の誤記と理解される。)を控除することができる旨記載された,被告会社と従業員代表Kとの間の同年3月1日付け「賃金控除に関する協定書」が存在する。 (乙イ28)エ原告らは,平成22年12月 の誤記と理解される。)を控除することができる旨記載された,被告会社と従業員代表Kとの間の同年3月1日付け「賃金控除に関する協定書」が存在する。 (乙イ28)エ原告らは,平成22年12月11日,原告らに対する支払を月給制から時給制に変更する内容の被告会社作成の雇用条件書に署名した。その際,被告会社は,時間外手当等についても最低賃金法に従って平成21年5月の原告らの技能実習開始時まで遡って計算し直すなどし,これらの精算金として原告ら各人に対し32万2692円を支払った。原告らが,同日,上記精算金について残業時間の計算に不足があると主張したため,被告会社は,残業時間の訂正をした上で,同月27日,原告ら各人に対しその不足金額分として4675円を支払った。(甲9,乙イ33から36の7まで)⑸ 被告会社による懲戒解雇ア原告らは,平成23年1月25日午後以降,同月分の手取り額が少ないなどと不満を述べて被告会社の工場で作業を行うことを拒否した。 被告組合の当時の代表理事であったLは,翌26日以降,原告らに対し工場で作業を行うよう勧告し,無断欠勤を続ければ懲戒解雇処分になる旨警告したが,原告らは工場における作業,さらに,被告会社から職場復帰の条件として求められた反省文の提出等を拒否し続けた。 イ被告会社は,同年2月14日,原告らに対し,原告らの同年1月25日以降の長期にわたる無断欠勤及び会社に過大なる損失を与えたことを理由として同年2月25日付けで懲戒解雇する旨を通告した。 ⑹ 被告会社の就業規則の定め被告会社の就業規則40条3項6号には,従業員が「故意または重大なる過失により,会社の名誉・信用を著しく失墜させ,または会社に重大な損害を与えたとき」には,被告会社は,当該従業員を の定め被告会社の就業規則40条3項6号には,従業員が「故意または重大なる過失により,会社の名誉・信用を著しく失墜させ,または会社に重大な損害を与えたとき」には,被告会社は,当該従業員を懲戒解雇できる旨が定められている。(乙イ43)⑺ 本件についての各新聞の掲載記事平成23年6月6日ないし7日に,株式会社読売新聞社,同北海道新聞社,同函館新聞社の3社の発行する新聞において,原告らが被告会社らを相手に,最低賃金を下回る賃金で働かされたなどとして未払賃金及び残業代を求めた本件訴訟を提起したことについての記事が掲載された。(乙イ1から3まで) 2 争点⑴ 原告らの被告会社に対する賃金支払請求権の有無⑵ 被告会社の原告らに対する不法行為の成否⑶ 被告組合の原告らに対する不法行為の成否⑷ 被告機構の原告らに対する不法行為の成否⑸ 被告らの不法行為による原告らの損害額⑹ 原告らの被告会社らに対する不法行為の成否及び損害額 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点1(原告らの被告会社に対する賃金支払請求権の有無)(原告らの主張)ア研修期間及び技能実習期間における原告らの労働者性について被告会社らは,研修生処遇概要書において原告らの研修時間を月曜日から金曜日までの1日原則8時間すなわち午前8時30分から午後5時30分までと定めていた。しかし,原告らは,研修期間中,1時間30分の休憩を除くほかは午前7時ころから午後5時ないし午後9時ころまで,被告会社の指揮監督下において被告会社の工場内で水産加工作業に従事しており,また,土曜日を中心とする休日出勤もしばしばあった。 このように,原告らは,研修期間中において,時間外の研修を含む長時間の作 被告会社の指揮監督下において被告会社の工場内で水産加工作業に従事しており,また,土曜日を中心とする休日出勤もしばしばあった。 このように,原告らは,研修期間中において,時間外の研修を含む長時間の作業を行っており,かかる時間外の研修について残業代が支払われていた。原告らは,送出し機関との契約に基づいて研修期間中にも残業代を支払ってもらえると認識しており,他方で被告会社も,原告らの研修期間中に残業代として研修手当以外の金員を原告らに支払っていたことからすれば,原告ら及び被告会社の双方とも労務の提供の対価として報酬を支払うことの認識を有していたといえる。 他方で,原告らは,本件制度が予定するところの非実務研修をほとんど受けていない。 原告らが研修期間中に実務研修として行った作業は,イカの皮むきやゲソ処理といった単純な水産加工作業であって,他の日本人従業員と同様の作業であり,この作業内容は,原告らが技能修習生となった後も変わらなかった。 以上のように,原告らは,研修期間中にも,技能実習期間と同一の作業を長時間被告会社の下で行っていたことなどからすれば,原告らの研修期間中における被告会社の下での水産加工作業への従事は,被告会社の指揮監督の下における労務の提供であると評価すべきものであり,原告らは,研修期間中においても,労働基準法9条及び最低賃金法2条1号の「労働者」に該当するものというべきである。 また,研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針(甲10)が,特に技能実習について受入れ機関に労働関係法規の遵守を求めているのは,技能実習が雇用契約に基づいて行われるものであるからであり,ここでいう雇用契約が労働契約であることは当然の前提である。 よって,原告らは,技能実習期間中 働関係法規の遵守を求めているのは,技能実習が雇用契約に基づいて行われるものであるからであり,ここでいう雇用契約が労働契約であることは当然の前提である。 よって,原告らは,技能実習期間中においても,「労働者」に該当する。 イ被告会社による懲戒解雇の有効性被告会社は,原告らの無断欠勤を理由とし懲戒解雇をしている。 しかし,原告らの不就労は,以下のとおり被告会社が招いたことであり原告らには帰責性はない。 原告らは,平成22年12月11日,被告会社作成の雇用条件が変更された雇用条件書(甲3の1)に署名したが,この際,原告らは月給制が時給制に変更されるという重大な変更について全く説明を受けておらず,本来支払われるべきであった未払賃金の支払を条件として雇用条件書に署名を求められた。そうであるとすれば,当該変更について原告らがその内容を正確に理解して署名したとはいえず,当該雇用条件の変更は無効である。 原告らは,平成23年1月25日,被告会社に対し,上記雇用条件の変更について説明を求めたにもかかわらず被告会社から十分な説明がなかったことから,抗議の意味を込めて同日午後からストライキを行った。 原告らは,翌日以降,被告会社に対し職場復帰を申し出たが,被告会社は,雇用契約の内容に対して異議を唱えたことが誤りであることから,職場復帰の条件として全従業員の前で謝罪の上再度異議を唱えない旨の誓約書を提出することを要求した。原告らは,この要求を受け入れなかったため,被告会社は原告らの職場復帰を認めなかった。 このような経緯から,原告らは平成23年1月25日以降欠勤したのであって,原告らの不就労は,被告会社の就業規則40条3項6号にいう「故意または重大なる過失」によるものでは った。 このような経緯から,原告らは平成23年1月25日以降欠勤したのであって,原告らの不就労は,被告会社の就業規則40条3項6号にいう「故意または重大なる過失」によるものではなく,また,原告らの行為は同号の「会社に重大な損害を与えたとき」にも該当しないため,懲戒解雇処分の対象となる行為はない。仮に,原告らに懲戒処分の対象行為があったとしても,原告らの行為に懲戒解雇しなければならない程度の重大性は認められず,懲戒解雇は懲戒処分の相当性を欠き,無効である。 ウ原告らの賃金からの控除の相当性原告らは,平成22年12月までは,賃金から控除される経費の内容や内訳について説明を受けることはなかった。この点,被告会社は控除についての労使協定の存在を立証する証拠として「賃金控除に関する協定書」(乙イ28)を提出するが,原告らはこの書面において従業員代表として署名押印した従業員を代表として選出した事実はなく,上記協定書はその成立過程に瑕疵があり無効である。 また,原告らは,同月11日,雇用条件について変更した雇用条件書に署名をする際に,控除の内訳について説明を受けたがそれらの算定根拠について原告らが納得できる説明はなく,月給制から時給制に移行することについても何ら説明がなかった。このような状況からすれば,原告らと被告会社の間で賃金からの住居費等の控除についての明確な合意があるとはいえず,また,雇用条件書に基づく控除額の合意は錯誤により無効であり,さらに,控除額が近隣の賃料相場や実費を超えて不当に高額であることからすれば,賃金からの住居費等の控除は労働基準法24条1項等に違反するものであり無効であって,被告会社は既控除額全額について支払義務を負う。 エ未払賃金及び付加金の額 あることからすれば,賃金からの住居費等の控除は労働基準法24条1項等に違反するものであり無効であって,被告会社は既控除額全額について支払義務を負う。 エ未払賃金及び付加金の額前記アのとおり,原告らは,労働基準法及び最低賃金法に基づき,被告会社に対し,研修期間中及び技能実習期間中の賃金を請求することができる。そして,前記イのとおり,被告会社による懲戒解雇は無効であり,原告らは,技能実習期間満了予定日である平成23年5月3日まで被告会社の従業員たる地位にあるため,原告らは,民法536条2項本文に基づき,被告会社に対し,解雇後も少なくとも2か月間の賃金請求権を有している。 原告らの平成21年2月16日から平成23年2月15日までの実労働時間数,そのうちの法定労働時間数,法定外労働時間数及び休日労働時間数は,別紙2記載の実労働時間欄,法定内労働時間欄,通常残業賃金欄のうちの時間欄及び休日労働賃金欄のうちの時間欄のとおりである。また,同期間の最低賃金,法定時間外労働についての割増賃金及び休日労働についての割増賃金は,別紙2記載の最低賃金欄,通常残業賃金欄のうちの単価欄及び休日労働賃金欄のうちの単価欄のとおりである。よって,被告会社が,原告らに対し支給すべき各月の賃金は,別紙2記載の支給すべき賃金月額欄のとおりである。そして,被告会社は,同期間,原告に対し,別紙2記載の既払合計額欄のとおり賃金を支払っていたことからすれば,未払賃金の合計は,別紙2記載の未払額累計欄のとおりである。 よって,原告らが懲戒解雇されるまでの労働法規に基づいた未払賃金の合計は,原告らと被告会社との間で平成22年12月11日及び同月27日に一部精算された額を控除した額である133万6622円である。また,被告会社に 懲戒解雇されるまでの労働法規に基づいた未払賃金の合計は,原告らと被告会社との間で平成22年12月11日及び同月27日に一部精算された額を控除した額である133万6622円である。また,被告会社による懲戒解雇は上記のとおり無効であり,原告らに対し同年11月分から平成23年1月分までの3か月間に支給すべき賃金の平均値が17万1634円であることからすれば,懲戒解雇後から技能実習期間満了日である平成23年5月3日までの2か月分の賃金は34万3268円である(合計167万9890円)。 また,被告会社による原告らに対する時間外手当の不払は,違法であることを認識した上での確信犯的なものであり極めて悪質性が高いものであるため,労働基準法114条に基づき未払の割増賃金と同額の付加金の支払義務を負う(別紙2記載の付加金欄参照)。 (被告会社の主張)ア研修期間及び技能実習期間における原告らの労働者性について本件制度に基づいて本邦に上陸する研修生は,本邦の技術,技能又は知識を習得し,その修得した技術,技能又は知識をもって本国の経済の発展に寄与すべき目的を持った活動をするものであるため,研修生及び受入れ機関は,研修生が使用者の指揮監督の下で労務を提供するといった認識はなく,研修生らの活動は,一般労働者の労働と本質的に異なるものである。また,原告らは研修の予定時間を超えて研修をすることもあったが,これは原告らの希望で自発的に研修延長を行ったのであって,研修時間外の金員の支払というものは存在しない。原告らは,研修期間中,非実務研修を受講している。 以上のことからすれば,原告らは,研修期間中,労働者に該当しない。 技能実習の「実習」は本質的に労働とその性質を異にするものであり,実習生も「 中,非実務研修を受講している。 以上のことからすれば,原告らは,研修期間中,労働者に該当しない。 技能実習の「実習」は本質的に労働とその性質を異にするものであり,実習生も「労働者」に該当するものではない。 イ被告会社による懲戒解雇の有効性原告らは,平成23年1月25日の午後以降,正当な理由なく工場で就労することを拒否し無断欠勤したのであって,被告会社は,原告らのそのような無断欠勤に至る事実経緯を踏まえて懲戒解雇手続をしており,懲戒解雇は有効である。 ウ原告らの賃金からの控除の相当性原告らは,本邦に入国する前から,原告らが受領する賃金は福利厚生費,税金,生活費その他控除すべき費用を控除した金額であるとの認識を有しており,被告会社はそのような原告らの認識の下,被告会社とその従業員代表との間で「賃金控除に関する協定書」(乙イ28)を作成し,それに基づき賃金からの控除をしていた。よって,被告会社は,労使協定手続を実施しており,また,控除の経費の項目・金額なども原告らに説明し理解を得るなどしているため,控除は違法無効なものではない。 また,原告らは,平成22年12月,被告組合側から説明を受けた上で,「賃金支払時に控除する項目」において雇用保険料717円,社会保険料1万6051円,住居費2万8000円,水道光熱費1万1000円,生活用品3000円,控除する金額の合計5万8768円と中国語併記で記載された被告会社との間の雇用条件書(甲3の1)に署名した。よって,原告らは,少なくともこの時点において,賃金からの控除項目及び額について同意しており,被告会社と原告らの間では,賃金からの控除については雇用条件書記載のとおり平成21年5月時点まで遡って和解をしている。 は,少なくともこの時点において,賃金からの控除項目及び額について同意しており,被告会社と原告らの間では,賃金からの控除については雇用条件書記載のとおり平成21年5月時点まで遡って和解をしている。 仮に控除額について合意がないとしても,社会保険料については,健康保険法167条,厚生年金保険法84条及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律32条の各規定が,労働基準法24条1項の「法令に別段の定めがある場合」に該当するため,被告会社は賃金から控除することができる。 エ未払賃金及び付加金の額以上より,被告会社が原告らに支払うべき未払賃金及び付加金は存在しない。 ⑵ 争点2(被告会社の原告らに対する不法行為の成否)(原告らの主張)ア旅券の預かり及び管理行為被告会社らは,原告らの来日直後に,原告らに対し,逃亡防止のために原告らの旅券を預けるよう求めたことから,原告らはこれを引き渡し,被告会社らは,平成23年1月25日まで,原告らの旅券を管理し続けた。 旅券は,日本に在留する外国人にとって,日本への入国・在留資格を公的に証明し,日本における移動の自由を担保するものとして重要な役割を担うものであることからすれば,被告会社らの上記行為は,原告らの日本における移動の自由を制約し被告会社における違法な労働状態の継続を助長するものとして違法な行為であり,原告らの人格権を侵害する不法行為に当たる。 イ預金通帳,印鑑等の管理行為原告らの賃金は原告ら名義の預金口座に入金されていたが,この口座は,原告らが来日時に被告会社らによって開設させられたものであり,原告らの預金通帳,印鑑及びキャッシュカードは被告会社らが管理していた。そのため,原告らは自由に 預金口座に入金されていたが,この口座は,原告らが来日時に被告会社らによって開設させられたものであり,原告らの預金通帳,印鑑及びキャッシュカードは被告会社らが管理していた。そのため,原告らは自由に出金することはできず,出金するときは,担当者に申請書を提出し出金してもらっていた。また,原告らは,被告会社らから賃金のうち2万円を保証金として積み立てることを強制され,これについては帰国時に支払うものとされ出金することができなかった。 被告会社らの上記行為は,強制貯金の禁止(労働基準法18条1項)及び賃金直接払の原則(同法24条1項本文)に反する違法な行為であり,原告らの人格権を侵害する不法行為に当たる。 ウ違法な労働状態の作出被告会社は,研修期間及び技能実習期間中,適法に締結された労使協定に基づくことなく,原告らを法定労働時間を大幅に上回る長時間の労働に従事させていた。また,被告会社は,原告らの労務の提供に対して著しく低額な対価しか支払っておらず,さらに,原告らの研修期間中,原告らに対し実施すべき研修を実施していなかった。 これらの被告会社の一連の行為は,原告らの違法な労働状態を積極的に作出し継続させたものであって,原告らの人格権を侵害する不法行為に当たる。 エ被告会社の部長による暴力及びハラスメント行為被告会社の総務部長であるMは,平成23年2月7日,原告らが拒絶したにもかかわらず原告らの住む寮に上がり込み,その際,原告Cを突き飛ばした上髪の毛をつかんで揺さぶるなどした結果,同人及びその場面にショックを受け過呼吸となった原告Gの2人は病院に搬送されるという事態に至った。 Mが原告らの承諾なく寮へ立ち入った行為は,原告らに対する重大なプライバシー侵害で 果,同人及びその場面にショックを受け過呼吸となった原告Gの2人は病院に搬送されるという事態に至った。 Mが原告らの承諾なく寮へ立ち入った行為は,原告らに対する重大なプライバシー侵害であり,また,原告Cの髪を引っ張るという行為は暴力行為であり,これらの行為は不法行為に当たる。 よって,被告会社はこれらについて使用者責任を負う。 (被告会社の主張)ア旅券の預かり及び管理行為被告会社らは,原告らから,旅券などを預かったことも管理したこともない。 イ預金通帳,印鑑等の管理行為被告会社らは,原告らの預金通帳,印鑑等を預かったことも管理したこともない。 ウ違法な労働状態の作出争う。 原告らとその家族は,送出し機関や被告会社らが日本の労働法制などについて説明をしたにもかかわらず,3年間で300万円の送金が可能となるよう主張したため,被告会社は,その要求に応じただけである。 エ被告会社の部長による暴力及びハラスメントMは,原告らの世話役かつ寮長であり,寮規則により寮生は寮長の指導に基づいて生活する義務がある。 Mは,平成23年2月7日,消灯時間を過ぎても原告らの寮の部屋の照明がついており,また,寮規則に反して寮玄関の鍵も施錠されていなかったことから,寮規則遵守を促すために入寮したにすぎない。Mが,原告らに暴力やハラスメント行為を行った事実はない。 ⑶ 争点3(被告組合の原告らに対する不法行為の成否)(原告の主張)本件制度において,団体監理型研修は,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の研修の在留資格に係る基準の5号の特例を定める件(平成2年法務省告示 (原告の主張)本件制度において,団体監理型研修は,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の研修の在留資格に係る基準の5号の特例を定める件(平成2年法務省告示第246号)の第8号ロの規定や本件制度の沿革等によれば,一定の公的性格を有する第1次受入れ機関が,研修の実施を「監理」することにより,第2次受入れ機関の研修実施能力を補完し適正な研修の実施を図るものである。「監理」とは,違法就労の排除,非実務研修の実施,不適切な方法による研修生の管理の禁止,研修手当の支払,監査・報告等を内容とするものである。 よって,第1次受入れ機関である被告組合は,第2次受入れ機関である被告会社の研修実施能力を補完するために研修を「監理」することが求められており,原告らをはじめとする研修生からの事情聴取や旅券・預金通帳等の確認等の調査により,違法就労の排除,不適切な管理の禁止,非実務研修の実施等について適正な監査を行い,その結果に基づいて被告会社を適切に指導すべき作為義務を負う。また,技能実習移行後も,被告組合は,信義則又は条理,不作為の先行行為に基づき,被告会社に違法行為があれば是正指導するという作為義務を負う。 被告組合は,被告会社の旅券や預金通帳の保管,研修期間中の時間外労働及び最低賃金以下の賃金の支払等の点について十分な監査・指導を行っていないことなどからすれば,被告組合が上記作為義務に違反したことは明らかである。また,原告らと被告会社との雇用条件の交渉については被告組合の当時の代表理事であるLが行っていたことからすれば,原告らと被告会社の雇用関係においては被告会社と被告組合は一体の関係にあるといえ,被告組合は,被告会社の不法行為に積極的に加担していたものというべきである。 が行っていたことからすれば,原告らと被告会社の雇用関係においては被告会社と被告組合は一体の関係にあるといえ,被告組合は,被告会社の不法行為に積極的に加担していたものというべきである。 よって,被告組合は,被告会社と連帯して原告らに対し共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 (被告組合の主張)原告らの引用する法務省告示の規定や本件制度の沿革等は作為義務の発生根拠となるものではなく,被告組合には作為義務はない。そもそも,被告会社による人権侵害行為はなく,被告組合は被告会社に対して監査を実施しており,作為義務違反はない。 ⑷ 争点4(被告機構の原告らに対する不法行為の成否)(原告らの主張)平成5年に労働大臣が作成した技能実習制度推進事業運営基本方針によれば,国から技能実習制度推進事業を委託された被告機構は,同事業の円滑かつ適正な実施を図るため,関係行政機関との連携を図りつつ研修及び技能実習状況を把握し,必要な指導,助言等を行うものとされている。そうであるとすれば,被告機構には,条理上,本件制度により上陸した研修生及び実習生に対する違法な取扱いを防止するために,受入れ機関及び受入れ企業に対して,注意,助言,指導,支援を行い,研修生及び実習生の法的権利を確保し,また,原告らの個々の職場を定期的に巡回調査し,原告らからの聞き取りなどによってその実態を把握し,法令遵守につき受入れ機関及び受入れ企業に対して是正指導を行い,さらに,不適切な技能実習が行われないように適切に研修成果の評価をする法的義務がある。 被告機構が巡回・指導をはじめとする具体的権限を適切に行使していれば,被告会社らによる原告らに対する人権侵害行為を是正することができたところ,被告機構は,被告会社らからの報告 義務がある。 被告機構が巡回・指導をはじめとする具体的権限を適切に行使していれば,被告会社らによる原告らに対する人権侵害行為を是正することができたところ,被告機構は,被告会社らからの報告を漫然と受けるのみであって,是正指導や評価の前提となる実態把握のための調査を何ら行わず上記法的義務に違反した。 よって,被告機構は,原告らに対し,不作為による不法行為責任を負う。 (被告機構の主張)被告機構は,被告会社らとは異なり,個々の研修や技能実習の実施においてその当事者となるものではない。被告機構は,民間の財団法人であり,それ以上の特別な法的地位を有するものではなく,その業務も強制力を持つものではない。 よって,被告機構には原告らが主張する作為義務は発生しない。 ⑸ 争点5(被告らの不法行為による原告らの損害額)(原告の主張)原告らは,約3年間,劣悪な労働条件下で就労を余儀なくされたのであり,原告らそれぞれにつき慰謝料は100万円を下らない。 また,原告らそれぞれにつき,10万円の弁護士費用が被告らの不法行為と因果関係のある損害である。 (被告らの主張)争う。 ⑹ 争点6(原告らの被告会社らに対する不法行為の成否及び損害額)(被告会社らの主張)ア原告らの本訴事件における主張は,事実的法的根拠を著しく欠いたものであるところ,原告らはそれを知っていた,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たものであるため,本訴事件の提起は違法であり不法行為を構成する。 イ原告らは,原告らの事実的法的根拠を欠く主張事実につき新聞記事情報として新聞社にリークし,株式会社読売新聞社,同北海道新聞社及び同函館新聞社の各新聞社に本件 であり不法行為を構成する。 イ原告らは,原告らの事実的法的根拠を欠く主張事実につき新聞記事情報として新聞社にリークし,株式会社読売新聞社,同北海道新聞社及び同函館新聞社の各新聞社に本件についての記事を掲載させ,それによって著しく被告会社らの名誉,信用を毀損したものであり,この行為は不法行為に該当する。 ウ原告らは,被告会社らに対し,不当な要求を繰り返しその要求を実現するために,他の研修生らを扇動し,違法な抗議・怠業をし,また,被告会社らが原告らに違法行為を行っているといった虚偽の事実を伝えるなどして,被告会社らの業務を妨害し,その名誉,信用を毀損したものであり,この行為は不法行為に該当する。 エ上記各行為による損害を慰謝するためには,少なくとも,被告会社については1000万円,被告組合については500万円の填補を要するものである。また,被告会社については260万円,被告組合については210万円の弁護士費用が,原告らの不法行為と因果関係のある損害である。さらに,上記新聞社の新聞記事によって被った名誉及び信用毀損による損害につき,金銭的賠償では十分に填補できないため,別紙1謝罪文目録記載の謝罪広告を掲載させることが必要である。 (原告らの主張)本訴事件における原告らの主張は,事実的にも法的にも十分な根拠に基づくものである。また,新聞に掲載された記事は,各新聞社が取材に基づき各社の判断において掲載されたものであって,原告らが責任を負う理由はない。さらに,原告らの行為は,労働関係法規に反する劣悪な労働条件下に置かれた原告らにとって正当な要求行為であって,何ら不法行為を構成するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らの被告会社に対する賃金支払請求権の有無)について 条件下に置かれた原告らにとって正当な要求行為であって,何ら不法行為を構成するものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らの被告会社に対する賃金支払請求権の有無)について⑴ 研修期間及び技能実習期間における原告らの労働者性についてア前提事実に加え,証拠(甲1,2,22,23,40,乙イ13の1から13の7まで,46,47,59,60,証人L,証人M,原告A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告らの研修状況等について,次の事実が認められる。 原告らは,平成20年5月4日午後に本邦に入国し,簡単なオリエンテーションを受け,翌5日,上ノ国町林業センターにおいて,消防に関する指導を受けた。原告らは,同月7日ないし8日ころには,被告会社の見学をし,被告会社の工場において作業着の支給を受け,作業内容の説明を受け,イカの皮むき,内臓の除去,ゲソの処理等の作業を開始した。原告らは,最初の数日間程度は,被告会社の日本人従業員から指導を受けながらイカの処理を行った。 原告らは,上記のほかに,被告会社の工場において,平成20年5月13日午後6時から午後8時までは衛生管理や日本語等について,同月30日午後5時から午後6時にかけてはイカソーメンのカット基準について,同年6月7日午後5時から午後7時まではHACCP社内教育について,同年7月9日午後5時から午後6時30分まではイカソーメンの整形作業について,同年8月27日午後5時から午後6時30分までは生処理で使用する機械関係の注意事項について,同年9月17日午後5時から午後6時まではイカの皮剥き作業について,それぞれ教育訓練を受けた。 被告会社ら作成の研修生処遇概要書によれば,原告らの研修時間は,午前8時30分から午後5時30分ま 17日午後5時から午後6時まではイカの皮剥き作業について,それぞれ教育訓練を受けた。 被告会社ら作成の研修生処遇概要書によれば,原告らの研修時間は,午前8時30分から午後5時30分まで(休憩1時間)の1日原則8時間とされていたが,原告らは,研修期間中,基本的には午前7時ころに工場に入り午後4時55分ころまで1時間半の休憩を除くほかはイカの生処理等の作業を行っており,午後4時55分以降も残って同じ作業を続けることが多く,残業する場合にはおおむね午後8時45分ころまで作業を行っていた。被告会社は,上記残業に対して,被告組合の支払う研修手当とは別に,1 時間当たり400円の時間外手当を原告らに対し支払っていた(証人Lの7頁,26頁)。 原告らが実習生になってからの作業内容及び作業時間は,研修期間と基本的には同じであり,残業に対して1年目は1時間当たり600円,2年目は1時間当たり700円の時間外手当が支払われていた。 原告らが行っていた作業は,以前は日本人従業員が行っていた作業であって,原告らの作業は一部を除き,その当時他の日本人従業員が行っていた作業と大きく異なるものではなかった。 イ 労働基準法9条及び最低賃金法2条1号は,保護対象である「労働者」について「職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者」と規定しており,労働基準法及び最低賃金法が適用されるか否かは,法形式のいかんにかかわらず,その実態が使用者の指揮監督の下における労務の提供と評価できるかどうかによって判断されるものである。 本件について検討すると,上記認定事実によれば,原告らは,研修期間の大部分において,被告会社の工場でイカの加工処理等の水産加工作業を行っていたのであって, って判断されるものである。 本件について検討すると,上記認定事実によれば,原告らは,研修期間の大部分において,被告会社の工場でイカの加工処理等の水産加工作業を行っていたのであって,その作業は以前は被告会社と雇用契約を締結していた日本人従業員が行っていたものであり,また,原告らと同時期に被告会社に勤務していた日本人従業員の作業と大きく異なるものではなかったことからすれば,原告らの作業は日本人従業員の労務とおおむね変わりないといえる。また,原告らは,所定の研修時間を超えて上記作業を行っていたことも多くあったのであり,それに対し被告会社は別途1時間当たり400円の時間外手当を原告らに支払っており,原告らの作業に対して対価を支払う意図,すなわち原告らを労働者として扱う意思があったといえる。 他方で,外国人研修制度においては,非実務研修を研修期間中の3分の1以上行うことが制度上予定されているところ(前提事実⑴イ参照),原告らは本邦に入国後,消防に関する研修やイカの処理に関する指導といった非実務研修を受けているが,その期間はせいぜい数日間にすぎない。また,原告らは,衛生管理や日本語教育等の研修を受けているが,その大部分は原告らの所定の研修時間外に実施されているにすぎない。 この点,被告組合が作成した「集中座学実施状況報告書」(乙イ9)には,原告らが,平成20年5月7日から9日まで,同月12日から16日まで,19日及び20日は,朝8時から午後5時までにかけて,上ノ国町林業センターにおいて,日本語や日本文化等の研修を実施した旨の記載があるが,被告組合の当時の代表理事であるL自身が証人尋問において実際に同所で非実務研修を実施したのは3,4日間程度であると上記報告書に反する証言をしていることからすれ 化等の研修を実施した旨の記載があるが,被告組合の当時の代表理事であるL自身が証人尋問において実際に同所で非実務研修を実施したのは3,4日間程度であると上記報告書に反する証言をしていることからすれば,その記載内容は採用できない。 以上のような原告らが実際に行っていた作業内容及び作業時間とそれに対する対価の支払状況や,原告らが受けた研修が外国人研修制度の予定する非実務研修の実施時間を充足していないことを踏まえると,原告らが研修期間中に行った作業は,むしろ被告会社の指揮監督下での労務の提供というにふさわしいものであり,原告らは,研修期間中において,労働基準法及び最低賃金法上の労働者に当たる。 原告らの技能実習期間における作業内容及び作業時間も研修期間とほとんど異ならないこと,また,実習生はその制度上本邦の公私の機関と雇用契約を締結することが前提になっていること(前提事実⑴エ参照)からすれば,原告らは,技能実習期間中においても,労働基準法及び最低賃金法上の労働者に当たる。 ⑵ 被告会社による懲戒解雇の有効性ア前提事実に加え,証拠(甲3の1から8の2まで,40,乙イ27の3から27の5まで,29,33,38の1から40の2まで,52,55,57から61まで,証人L,証人M,原告A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告らの解雇に至る経緯について,次の事実が認められる。 原告らは,平成22年11月12日ころから,被告会社に対し,他社の実習生と比べて賃金が安いので基本給を2万円上げてほしい,時間外手当についても最低賃金を適用した金額まで上げてほしいなどといった不満を訴え始めた。 そこで,被告会社は,平成21年5月に原告らが実習生になってからの基本給及び時間外手当について労 間外手当についても最低賃金を適用した金額まで上げてほしいなどといった不満を訴え始めた。 そこで,被告会社は,平成21年5月に原告らが実習生になってからの基本給及び時間外手当について労働基準法及び最低賃金法に従った計算をし,基本給につき月額6000円に19か月を乗じた金額を,時間外手当につき最低賃金との差額に残業時間を乗じた金額を,それぞれ支払うことによりその未払額について精算することとした。被告会社は,各原告に対し,平成22年12月11日,上記精算分として32万2692円をそれぞれ支払った。その後,被告会社は,原告らから上記計算に誤りがある旨指摘されたため,同月27日,各原告に対し,不足分である4675円をそれぞれ支払った。 この際,被告会社は,原告らに対し,通訳人を介し,上記精算の内容について説明した。このような精算をすることに伴い,被告会社は,雇用契約を新たに締結し直した方がよいと考え,雇用契約書を作成することとした。 原告らは,平成22年12月11日,雇用契約期間を同年5月4日から平成23年5月4日まで,賃金を時間給691円,労使協定に基づく賃金支払時の控除ありという内容が記載された被告会社作成の「雇用条件書」(甲3の1)に署名した。この雇用条件書には,「賃金の支払い」という題目の別紙が添付されており,そこには,賃金支払時に控除する項目として雇用保険料717円,社会保険料1万6051円,住居費2万8000円,水道光熱費1万1000円,生活用品(リース代)3000円,控除する金額の合計5万8768円,賃金支払時に実際に支給する手取り額(欠勤等がない場合)6万0813円という内容が記載されていた。この雇用条件書及びその別紙の各文言には中国語が併記されている。 被告会 万8768円,賃金支払時に実際に支給する手取り額(欠勤等がない場合)6万0813円という内容が記載されていた。この雇用条件書及びその別紙の各文言には中国語が併記されている。 被告会社は,原告らがこの書面に署名する前に,通訳人を介して原告らに対し,書面の内容,特に月給制から時給制に変わること,そして,被告会社は変形労働時間を採用しており水産業界では1年の後半は多忙期で労働時間が増えるため年末の手取り額は多くなるが,1月ないし3月は労働日数が減る関係で手取り額が少なくなることについて説明をした。 なお,上記別紙の一番下には,手書きで「注記:私は,各月の厚生年金保険の支払を5000円しか認めません」という内容が中国語で記載されている。これは,被告会社が原告らに対し保険料の控除額が増えることを説明したところ,原告らがこの点について納得がいかないとして記載したものである。Lは,数日後,この点の控除について原告らの理解を得るために,原告らの代表者を社会保険事務所まで連れて行き,保険料についての説明を受けさせた。 原告らは,平成22年12月分の給料明細書(甲8の1)を被告会社から受け取った。この明細書によれば,社会保険料が給料から5000円以上控除されていたが,原告らは,社会保険料の控除の点も含めて被告会社に対し給料について異議を述べることはなかった。 原告らは,平成23年1月25日の午後から,同月分の給料が少ない等の理由で被告会社の工場で就労することを拒否した。 Lは,同月26日以降,原告らに対し工場で就労するよう説得したが,原告らは,原告らの給料について被告会社が原告らの同意を得ずに月給制から時給制に変更した旨抗議し,基本給手取り額として毎月6万1813円を保証して 日以降,原告らに対し工場で就労するよう説得したが,原告らは,原告らの給料について被告会社が原告らの同意を得ずに月給制から時給制に変更した旨抗議し,基本給手取り額として毎月6万1813円を保証してくれれば仕事に復帰するなどと述べた。これに対して,Lは,上記変更に問題がなかった旨説明したが,原告らが納得することはなかった。 被告会社は,同年2月9日付けで,原告らに対し,「自己都合で仕事を2週間以上休んだ場合は,懲戒免職と称されます」などと記載された中国語訳を添えた文書(甲4の1,4の2)を交付し,その内容あるいは趣旨について通訳人を通じて中国語で説明し,新たに懲戒解雇に関する強い警告を行った。また,被告会社は,このころ,原告らに対し,今後原告ら1人につき1日当たり1400円の住居費等の支払を被告会社にするよう求める旨記載された書面(甲7)を交付した。 原告らは,このような経過にあって,被告会社に対し仕事に復帰したい旨を伝えたが,被告会社から反省文を書き従業員全員の前で謝罪するように言われたため,結局仕事に復帰しなかった。 なお,原告ら以外で同じように欠勤をしていた実習生らは,同年1月31日ころに,被告会社に対し,反省文を書き謝罪をした上で職場に復帰している。 この間,原告らは,同年2月8日午後には被告会社事務所を訪問して被告会社代表者との交渉を要求し,連絡を受けて臨場したLが警察官の派出を要請する事態に発展したことがあった。また,原告らは,このころ,札幌所在の中国領事館に連絡をとり,助力を求めるなどしたことがあった。他方,L及びMらは,送出し機関の代表者に来日を求め,来日した代表者と共に原告らに対応したり,同月11日には上記中国領事館を訪問して状況を説明し,そのまま来函した上記中国領事 どしたことがあった。他方,L及びMらは,送出し機関の代表者に来日を求め,来日した代表者と共に原告らに対応したり,同月11日には上記中国領事館を訪問して状況を説明し,そのまま来函した上記中国領事館の領事と共に原告らに対応したり,労働基準監督署を訪問して原告らに対する対応を相談したりするなどした。 被告会社は,同月14日,原告らに対し,原告らの同年1月25日午後1時以降の長期にわたる無断欠勤及び会社に過大なる損失を与えたことを理由として同年2月25日付けで原告らを懲戒解雇する旨を記載した書面(甲6)を交付した。原告らはこの記載内容については理解していた。 Lは,これに先立つ同月11日,原告らの訴訟代理人から,原告らは謝罪をするつもりはないが仕事に復帰させてほしいという内容の電話を受けたが,自分のみでは判断できないことであったため,被告会社代表者に伝える旨回答した。同訴訟代理人は,同月14日,被告会社に対し,原告らの職場復帰を求めるなどの内容の内容証明郵便(甲5の1)を発送し,同書面は翌15日に被告会社に届けられた。 イ上記事実を前提として,被告会社による懲戒解雇の有効性について検討する。 原告らは,雇用条件書の作成時に月給制から時給制に変更する点については説明を受けておらず,原告らの同意なしに時給制に変更されたことに対する抗議として工場で就労することを拒否したと主張する。 しかし,被告会社は,原告らに対し,雇用条件書の内容については時給制への変更も含め通訳人を介して説明している。また,雇用条件書の各文言には中国語が併記されていることからすれば,原告らはその内容について理解できたといえる。原告らが,厚生年金保険の控除の点については認めない旨を雇用条件書に記載していること 雇用条件書の各文言には中国語が併記されていることからすれば,原告らはその内容について理解できたといえる。原告らが,厚生年金保険の控除の点については認めない旨を雇用条件書に記載していることからすれば,原告らは,納得がいかない点について同様に異議を述べることができたのであって,雇用条件書の署名時点で時給制に変更した点について異議を述べていないこと,また,原告らは,雇用条件書の条件に沿って支給された平成22年12月分の給料の明細書を受け取っておりその際にも何ら異議を述べていないことからすれば,時給制への変更については特段異議がなかったものと認められる。 そうであるとすれば,原告らは,単に雇用条件書に基づく平成23年1月分の給料が少なかったことに不満を覚えるまま欠勤したにすぎず,原告らの不就労は,懲戒解雇の根拠規定である被告会社の就業規則40条3項6号にいう「故意または重大な過失による」ものと評価せざるを得ない。そして,このような理由により十数営業日連続で欠勤していること,この間被告会社らによる度重なる説得や警告に応じなかった一方,被告会社事務所を訪問して被告会社代表者との交渉を要求するなどし,被告会社らに対応を余儀なくさせていることなどを踏まえると,原告らは,一連の行動により上記就業規則40条3項6号にいう「会社に重大な損害を与えた」と評価するのが相当である。さらに,この間の経過等に照らし,被告会社による懲戒解雇は,懲戒処分として相当性を欠くものではないというべきである。 なお,被告会社は,原告らが職場復帰を申し出た際,反省文の作成等を求めて無条件の職場復帰を認めなかったが,原告らが欠勤した経緯やこの間の経過等を考慮すれば,このような被告会社の対応は,企業秩序を維持する上でやむを得ないものであったと評価 出た際,反省文の作成等を求めて無条件の職場復帰を認めなかったが,原告らが欠勤した経緯やこの間の経過等を考慮すれば,このような被告会社の対応は,企業秩序を維持する上でやむを得ないものであったと評価することができる。 よって,被告会社による懲戒解雇は有効である。 ⑶ 原告らの賃金からの控除の相当性ア前提事実に加え,証拠(甲8の1,8の2,乙イ29,59,証人L,原告A)及び弁論の全趣旨によれば,平成21年6月分から平成22年11月分までの賃金につき被告会社は原告ら各自に対し実際に支払うものとされた基本給6万円から更に社会保険料の一部5000円を控除して支払っていること,同年12月分の賃金につき被告会社は原告ら各自に対し総支給額を19万8519円と算定した上これから社会保険料(健康保険料5181円,厚生年金保険料8832円及び雇用保険料1191円)合計1万5204円を控除して支払っていること,平成23年1月分の賃金につき被告会社は原告ら各自に対し総支給額を13万1247円と算定した上これから社会保険料(健康保険料5181円,厚生年金保険料8832円及び雇用保険料787円)合計1万4800円を控除して支払っていること,同年2月分の賃金につき被告会社は原告ら各自に対し総支給額を5万6000円と算定した上これから控除すべき社会保険料を健康保険料5181円,厚生年金保険料8832円及び雇用保険料336円の合計1万4349円と算定していることが認められる。 そして,証拠(乙イ29)によれば,平成21年6月分から平成22年11月分までの賃金につき被告会社は原告ら各自に関して実際には5000円を超える社会保険料を納付していたことがうかがわれる。また,同年12月分から平成23年2月分までの賃金につき控除する 平成22年11月分までの賃金につき被告会社は原告ら各自に関して実際には5000円を超える社会保険料を納付していたことがうかがわれる。また,同年12月分から平成23年2月分までの賃金につき控除するなどした社会保険料の額の計算に誤りがあることは特段うかがわれない(なお,後述するように,平成22年12月分から平成23年2月分までの支給すべき賃金月額は,被告会社の算定した総支給額を上回る。)。 そうすると,これらの社会保険料の控除は,労働基準法24条1項ただし書所定の「法令に別段の定めがある場合」(健康保険法167条,厚生年金保険法84条及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律32条参照)に該当し,相当なものと認められる。すなわち,これらの金額は,被告会社の原告らに対する既払月額賃金に加算して取り扱われるべきものである(原告らも,平成21年6月分から平成22年11月分までの5000円の控除につき,被告会社の原告らに対する既払月額賃金に加算して取り扱っている。別紙2参照。)。 イ被告会社は,技能実習期間中における被告会社の原告らに対する毎月6万円の支払につき,控除すべき費用を控除した残額であって,被告会社と従業員代表Kとの間の「賃金控除に関する協定書」(乙イ28)に基づき住居費,水道光熱費,生活用品代等を控除していたなどと主張する。 しかし,証拠(証人Mの14頁)によれば,上記協定書上従業員代表とされているKが実際には労働者の過半数を代表する者として選出された者でないことは明らかであって,上記協定書が労働基準法24条1項ただし書所定の協定書として有効なものといえないのはもちろん,Kが上記協定書作成に先立ち原告らからこの点に関する代理権を授与されたことを認めるに足りる証拠もない。 結局,原 法24条1項ただし書所定の協定書として有効なものといえないのはもちろん,Kが上記協定書作成に先立ち原告らからこの点に関する代理権を授与されたことを認めるに足りる証拠もない。 結局,原告らが平成22年12月の雇用条件書作成前に毎月の支払の際に控除すべき費目及び金額を具体的に認識した上,被告会社との間でこれを合意したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ他方,原告らが平成22年12月に作成した雇用条件書には,原告らが被告会社に対して支払うべきものであって毎月の支払の際に控除すべき費目及び金額として住居費2万8000円,水道光熱費1万1000円及び生活用品代3000円の合計4万2000円が中国語併記で明確に記載されており,また,原告らが雇用条件書に署名する前に通訳人を介してその内容の説明を受けていることなどは,前記⑵アで認定したとおりである。 このような雇用条件書作成の経緯,経過等によれば,雇用条件書の作成は原告らの自由な意思に基づいてされたものと認められる。すなわち,原告らは,この時点で被告会社との間で毎月の支払の際に上記合計4万2000円の控除を合意したこととなる。 なお,原告らは,雇用条件書記載の控除額が不当に高額であるからこの点に関する合意は無効であるなどと主張する。証拠(乙イ69,70,74,証人M)及び弁論の全趣旨によれば,確かに,控除すべき住居費に係る住居(寮)は居住床面積260平米であったものの,原告らを含め最大26名程度が居住していたことが認められ,原告らが控除される住居費全体を家賃と考えた場合には近傍の物件と比較して比較的高額であったことがうかがわれるが,他方,上記寮には家具,什器,備品等が備え付けられていたことも認められる。これに加え,証拠(乙イ71から73まで 体を家賃と考えた場合には近傍の物件と比較して比較的高額であったことがうかがわれるが,他方,上記寮には家具,什器,備品等が備え付けられていたことも認められる。これに加え,証拠(乙イ71から73まで,証人M)及び弁論の全趣旨によって認められる上記寮の維持に要する経費等を併せ検討すれば,上記合計4万2000円の控除が合意の有効性を左右するほど不当に高額であるとはいえない。この点に関する原告らの主張は採用することができない。 以上によれば,平成22年12月分以降の上記合計4万2000円の控除は相当なものと認められる。すなわち,これらの金額は,被告会社の原告らに対する既払月額賃金に加算して取り扱われるべきものである。 エなお,被告会社は,平成22年12月に原告らが雇用条件書を作成し,被告会社が平成21年5月の技能実習開始以降の賃金を精算したことにより,雇用条件書作成以前の被告会社による社会保険料以外の費目の賃金からの控除につき,雇用条件書記載の内容に従ったものとして取り扱い,原告らはその余の請求をしないなどの内容の和解が成立したと主張する。 確かに,原告らが同日作成した雇用条件書には住居費,水道光熱費,生活用品代等の控除に関する明確な記載がされており,被告会社は精算のために同日に32万円余りを支払っている。しかし,基本給に関する精算金は結局のところ月額6000円として算定されたにすぎず(前記⑵ア),上記月額が雇用条件書記載の内容に従ったものとしてその個別具体的算定過程が被告会社から説明され,原告らから承諾されたこと,さらに,その際原告らがその余の請求をしないとか被告会社との間でほかに債権債務のないことを確認するとかいった意思を表明したことまで認めるに足りる証拠はない。この点に関する被告会社の主張は れたこと,さらに,その際原告らがその余の請求をしないとか被告会社との間でほかに債権債務のないことを確認するとかいった意思を表明したことまで認めるに足りる証拠はない。この点に関する被告会社の主張は採用することができない。 ⑷ 未払賃金及び付加金の額ア未払賃金について 前記⑴のとおり,原告らは,研修期間及び技能実習期間を通じて「労働者」に該当するのであるから,最低賃金法4条2項により最低賃金に達しない手当等に関する定めは無効となり,最低賃金と同様の定めをしたものとみなされる。 北海道における地域別最低賃金が平成20年10月19日から平成21年10月9日までは時給667円,翌10日から平成22年10月14日までは時給678円,翌15日から平成23年10月5日までは時給691円であることは当裁判所に顕著である。被告会社が原告らに対して支給すべき賃金を算定する上で基礎とすべき各月の最低賃金(時給),法定時間外労働に対する割増賃金(時給,25パーセント割増)及び法定休日労働に対する割増賃金(時給,35パーセント割増)は,それぞれ原告主張の金額(別紙2記載の最低賃金欄,通常残業賃金欄のうちの単価欄及び休日労働賃金欄のうちの単価欄参照)を採用するのが相当である。 前記⑵のとおり,原告らの欠勤は正当な理由がないものであって,被告会社による懲戒解雇は有効なものであったことからすれば,平成23年1月25日午後以降の賃金については,被告会社は支払義務を負わないというべきである。 よって,被告会社は平成21年2月16日から平成23年1月25日午前までの原告らの労働について賃金を支払う義務を負う。 これまでの認定事実に加え,証拠(甲1,2,40,乙イ46から48の2 て,被告会社は平成21年2月16日から平成23年1月25日午前までの原告らの労働について賃金を支払う義務を負う。 これまでの認定事実に加え,証拠(甲1,2,40,乙イ46から48の20まで,59,証人L,原告A)及び弁論の全趣旨によれば,原告らの研修期間中及び技能実習期間中の就業時間は基本的には全員同じであって,被告会社の工場長は原告らの始業時刻及び終業時刻につき「N」又は「O」との架空の氏名が記載されたタイムカード(甲2,乙イ46,47)に打刻した上,原告ら各自の始業時刻及び終業時刻の変更等の事情につき別途就業時間計算表及び就業変更表(乙イ48の1から48の20まで)に記載し,これを記録していたこと,原告Cは被告会社が残業時間を間違えることを危惧して,研修期間及び技能実習期間を通じて毎日の始業時刻及び終業時刻を記録したメモ(甲1)を残していたが,その記録はタイムカードの打刻とおおむね一致していること,原告らの就業時間中には拘束時間が短時間でない限り合計1時間30分(午前15分,昼食1時間及び午後15分と理解される。)の休憩時間が設けられており,残業が夜間にわたる場合には更に夕食30分の休憩時間が設けられていたこと,原告らの賃金は毎月15日締め25日払であったことが認められる。 被告会社は,原告らの研修期間中のタイムカードを提出していないが,原告Cのメモは,原告らの技能実習期間中のタイムカードとの対照上相応の信用性があるというべきであるから,原告らの拘束時間は,研修期間中は原告Cのメモにより,技能実習期間中はタイムカードを基礎としつつ就業変更表等を適宜参照して,これを認めるのが相当である。そして,原告らの休憩時間は,研修期間及び技能実習期間を通じて上記認定のとおり取り扱い(なお,平成22年12月 ムカードを基礎としつつ就業変更表等を適宜参照して,これを認めるのが相当である。そして,原告らの休憩時間は,研修期間及び技能実習期間を通じて上記認定のとおり取り扱い(なお,平成22年12月分の就業時間計算表(乙イ48の19)には,同年11月29日の休憩時間が合計2時間であった旨記載されているが,同日の終業時刻が午後5時36分であることに照らし,上記記載は誤記であって,同日の休憩時間は1時間30分であったと認めるのが相当である。),法定休日を日曜日とすれば,平成21年2月16日から平成23年2月15日までの原告らの始業時刻,終業時刻,休憩時間,実労働時間,法定労働時間,法定時間外労働時間及び法定休日労働時間は,原告C及び原告Eにつき別紙3-1記載のとおりと認められ,さらに,その余の原告につき基本的には同別紙記載と同様であるが,これとの相違は別紙3-2から3-6まで記載のとおりと認められる。 その上で先の賃金単価及びこれらの労働時間を前提とすれば,上記期間の被告会社が原告らに対して支給すべき賃金額は,別紙4-1から4-6までの支給すべき賃金月額欄記載のとおりと認められる。 平成21年3月分から同年5月分まで(月額5万円),同年6月分から平成22年11月分まで(月額5万5000円)及び同年12月分の既払月額賃金額(7万0919円),平成21年6月分の原告Eを除く原告らに対する既払割増賃金額及び同年7月分から平成22年11月分までの既払割増賃金額は,当事者間に争いがなく(平成24年5月22日付け被告会社ら準備書面参照。なお,平成21年3月分から同年5月分の既払月額賃金5万円は,被告組合による第三者弁済と理解される。),平成23年1月分の既払月額賃金額(3万2915円),平成21年3月分から5月分まで,平 参照。なお,平成21年3月分から同年5月分の既払月額賃金5万円は,被告組合による第三者弁済と理解される。),平成23年1月分の既払月額賃金額(3万2915円),平成21年3月分から5月分まで,平成22年12月分及び平成23年1月分の既払割増賃金額並びに平成21年6月分の原告Eに対する既払割増賃金額は,証拠(甲8の1,8の2,乙イ29)及び弁論の全趣旨によって認められるところ,これを整理すれば,別紙4-1から4-6までの既払月額賃金欄及び既払割増賃金額欄記載のとおりである。 また,前記⑶のとおり,相当と認められる原告らの賃金からの控除は,社会保険料につき平成21年6月分から平成22年11月分までの各5000円,同年12月分の1万5204円,平成23年1月分1万4800円,同年2月分の1万4349円,住居費等につき平成22年12月分から平成23年2月分までの各4万2000円である。これらは,被告会社の原告らに対する既払月額賃金に加算して取り扱われるべきものであるが,このほかの控除は認められない。これを整理すれば,別紙4-1から4-6までの加算すべき控除額欄記載のとおりとなる。 以上の被告会社が原告らに対して支給すべき賃金月額から既払合計額(加算すべき控除額を含む。)を,更にこれから平成22年12月に被告会社が原告ら各自に対して支払った精算金32万2692円及び4675円を,それぞれ控除すると,未払賃金合計残額は,別紙4-1から4-6までの各未払賃金合計残額欄記載のとおりと認められる。 そうすると,原告らの未払賃金請求は,それぞれ上記各金額及びこれに対する退職日の後の日である平成23年5月4日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条所定の年14.6パーセントの割合による各遅 ると,原告らの未払賃金請求は,それぞれ上記各金額及びこれに対する退職日の後の日である平成23年5月4日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条所定の年14.6パーセントの割合による各遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 イ付加金について法定時間外労働や法定休日労働の有無等は,ある程度流動的なものと考えられるから,被告会社は,原告らに対して毎月の賃金を支給するに当たり,控除すべき社会保険料等を一次的には基本給(法定内賃金)から控除して賃金を支給するとの意思を有していたものと理解するのが合理的であり,このような理解に立脚すれば,未払割増賃金額は,別紙4-1から4-6までの未払割増賃金額欄記載のとおりと認められる。 そして,原告らは,平成22年12月に原告らに対して精算金を支払うに当たり,基本給に関する精算金を月額6000円に19か月を乗じた11万4000円と算定しているから,割増賃金に関する精算金は実際に支払われた精算金合計32万7367円(=32万2692円+4675円)から上記11万4000円を控除した21万3367円であり,未払割増賃金残額は,別紙4-1から4-6までの最下欄記載のとおりと認められる。 ところで,研修期間中の原告らが最低賃金の適用を受ける「労働者」に当たるか否かの判断は,本件制度の内容に照らし,被告会社にとって必ずしも容易ではなかったと考えられるところ,研修期間中の未払割増賃金を度外視すれば,技能実習期間中の未払割増賃金の残額は11万円程度となる。そして,このような未払割増賃金残額が平成21年6月分から平成23年2月分までの21か月分で生じたとすれば,その平均月額は5300円程度,これに相当する平均法定時間外労働時間は6時間 円程度となる。そして,このような未払割増賃金残額が平成21年6月分から平成23年2月分までの21か月分で生じたとすれば,その平均月額は5300円程度,これに相当する平均法定時間外労働時間は6時間強となる。上記認定に係る原告らの法定時間外労働の大部分が四十数時間から九十数時間にわたる長時間のものである一方,平成22年12月に被告会社は技能実習期間中の原告らの基本給及び時間外手当につき最低賃金に基づく精算を試みており,原告らも時間外手当を自ら計算して最終的に被告会社の支払額を適切なものとして受け入れていることからすれば,上記未払割増賃金残額の発生は,当裁判所が厳密に労働時間を認定したことによるものと考えられ,それ自体悪質なものとはいえない。 以上からすれば,被告会社に対して付加金の支払を命ずる必要まではないというべきである。 そうすると,原告らの付加金請求はいずれも理由がない。 2 争点2(被告会社の原告らに対する不法行為の成否)について⑴ 旅券,預金通帳,印鑑等の管理行為等ア原告らは,被告会社らは原告らが逃亡することを防止するために原告らの旅券を管理し,また,預金通帳,印鑑等についても管理していた旨主張し,その証拠として原告らの通帳(甲42,43,46)と原告Aの陳述書(甲40)を提出するほか,同原告はこれに沿う供述をする。 しかし,証拠(乙イ21,49,52,57の3頁,26頁,27頁,29頁,58の1頁,2頁,原告A)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,銀行の口座から出金する等の煩雑さを避けるために被告組合に預金通帳を渡し,被告組合の担当者に原告らの口座から出金させたり,中国へ送金させたりしていたこと,また,原告らの同期の中に技能実習中の平成23年2月に行方不明になった者が1名いる るために被告組合に預金通帳を渡し,被告組合の担当者に原告らの口座から出金させたり,中国へ送金させたりしていたこと,また,原告らの同期の中に技能実習中の平成23年2月に行方不明になった者が1名いるが,この者はその際旅券等をすべて持ち去っていることが認められ,これらのことからすれば,原告らは,旅券,預金通帳,印鑑等を自由に持ち出すことができ,さらに,預金通帳については原告らの都合から被告組合が管理することがあったにすぎない。このことに照らせば,原告Aの上記供述及びその陳述書のうち原告らの主張に沿う部分は採用することができず,また,原告らの通帳(甲42,43,46)の記載のみから被告組合が預金通帳等を管理していたと認めることはできない。ほかに被告会社が原告らの逃亡を防止するために旅券,預金通帳,印鑑等を管理していたと認めるに足りる証拠はない。 イまた,原告らは,被告会社らから給料のうち2万円を保証金として積み立てるよう強制された旨主張し,その証拠として原告らの通帳(甲42,43,46)と原告Aの陳述書(甲40)を提出するほか,同原告はこれに沿う供述をする。 しかし,原告らの通帳(甲42,43,46)における金銭の動きからだけでは強制貯金の事実は認められず,また,原告Aの上記供述等も直ちに採用することはできない。ほかにこの事実について認めるに足りる証拠はない。 ウよって,被告会社による旅券等の管理というべき事実及び強制貯金の事実は認められず,この点について不法行為は成立しない。 ⑵ 違法な労働状態の作出ア原告らは,被告会社が原告らに法定労働時間を上回る長時間の労働をさせていたこと,それに対して低額な賃金しか支払っていなかったこと,研修期間中に実施すべき研修を実施していなかったことを捉 ア原告らは,被告会社が原告らに法定労働時間を上回る長時間の労働をさせていたこと,それに対して低額な賃金しか支払っていなかったこと,研修期間中に実施すべき研修を実施していなかったことを捉えて不法行為であると主張する。 イこの点,証拠(乙イ59,証人L,原告A)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,本邦に入国する前に中華人民共和国で行われたLとの面談等に際し,研修期間中は残業してはいけないという説明を聞いており,原告らの研修期間における残業が本邦の法律に違反するという意識はあったこと,これにもかかわらず原告らは研修期間及び技能実習期間を通じて,多くの金銭を稼ぐために積極的に残業したいという希望を被告会社らに伝えていたことが認められる。 このことからすれば,原告らの法定労働時間を上回る労働は原告ら自身の希望に適ったものであり,原告らは強制的に長時間の労働をさせられていたわけではない。 ウ確かに,被告会社らは,外国人研修制度が予定する非実務研修の実施時間を充足していなかった。 もっとも,前記1⑴アで認定したとおり,被告会社は原告らに対し,研修時間外に非実務研修に相当する教育訓練を行っていること,また,証拠(甲40,乙イ15から16の6まで,59,証人L)によれば,被告会社らは,原告らが実習生に移行するに当たって受けなければならない技能試験のための練習テストを実施していると認められることなどからすれば,被告会社らは,非実務研修に相当する研修を行っていなかったわけではない。そして,先に認定した原告らの希望などを踏まえると,予定された時間分の非実務研修を行っていなかったことが,直ちに原告らの人格権を侵害し,不法行為に当たるとまではいえない。 エまた,被告会社は,平成22年12 た原告らの希望などを踏まえると,予定された時間分の非実務研修を行っていなかったことが,直ちに原告らの人格権を侵害し,不法行為に当たるとまではいえない。 エまた,被告会社は,平成22年12月11日に精算するまでは,原告らに対して最低賃金に満たない賃金しか支払っていなかった。 もっとも,証拠(乙イ59,証人L,原告A)によれば,原告らが本件制度を利用して本邦に上陸する前,中華人民共和国において,Lと原告ら及びその家族との間で面談等が行われ,その際,原告らは,Lに対し,3年間で総額300万円以上稼ぎたい旨,また,可能な限り残業をしたい旨の希望を述べていたこと,このことも踏まえて原告らの研修期間及び技能実習期間における基本給(手取り額)及び時間外手当の額等が決められたことが認められる。 そして,被告会社は平成22年12月11日に原告らの要望を受け入れて技能実習期間中の賃金について精算していることからすれば,被告会社に殊更安価な賃金で原告らを働かせる意図があったわけではないといえ,上記手当額が決まった経緯も踏まえると,賃料の未払分があるとしても,被告会社の行為が直ちに原告らの人格権を侵害したとまではいえない。 オ以上のとおり,原告らに対する非実務研修は行われていなかったわけではなく,時間外労働は基本的には原告らの希望に基づくものである。 確かに,賃料の未払部分があるなど,被告会社の行為に不適切な点があったことは否めないが,それらが原告らの人格権を侵害したとまではいえず,不法行為に該当するとまではいえない。 ⑵ 被告会社の部長による暴力及びハラスメント行為ア証拠(甲40,41の1から41の4まで,乙イ25,27の1,27の2,50から51の2まで,60,70,証人M,原告A)及び弁 。 ⑵ 被告会社の部長による暴力及びハラスメント行為ア証拠(甲40,41の1から41の4まで,乙イ25,27の1,27の2,50から51の2まで,60,70,証人M,原告A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,平成23年2月7日の出来事等に関して,次の事実が認められる。 被告会社の「寮生活における会社規範」では,「寝室の消灯時間は22:30,食堂の消灯時間は23:00」と定められており(第3項6号),被告会社は,この寮規則について中国語訳を付したものを寮の壁に貼っていた。 Mは,原告らの生活を指導する寮長の役割を担っていた。 Mは,平成23年2月7日午後11時過ぎ,消灯時間であるにもかかわらず原告らの住む寮の2階の食堂と寝室に明かりがついていたことから,声を掛けつつ寮の2階の玄関から食堂,次いで寝室へ入り,原告らに注意をし,そのまま寮から退出しようとした。しかし,原告らは,この間Mの行動を警察に通報していたことから,警察官が臨場するまで寮内にMを引き留めようとして,寮の2階の食堂でMを取り囲むなどし,双方は,口論になり,その後もみ合いになった。その結果,原告C及び原告Gが過呼吸となり,救急車で病院に搬送されて診断を受けたが,特に異常な点はなかった。 同人ら及びMは,同日,警察署で事情聴取を受けた。原告らは,Mと原告らがもみあいになった際にその様子を写真で撮影し(甲41の1から41の4まではその一部である。),警察署において,撮影した写真を警察官に見せたが,本件について問題があったといった判断はされていない。 イ原告らは,Mの原告らに対する暴力及びハラスメント行為の証拠として,平成23年2月7日の原告らの寮における原告らとMのやりとりの様子を撮影した写真 といった判断はされていない。 イ原告らは,Mの原告らに対する暴力及びハラスメント行為の証拠として,平成23年2月7日の原告らの寮における原告らとMのやりとりの様子を撮影した写真(甲41の1から41の4まで)を提出するが,これらの写真によっても,Mが一方的に原告らに暴行を加えたものとは認められない。 そして,上記認定事実によれば,Mは,寮規則違反行為を注意するため原告らの住む寮の2階の食堂,次いで寝室へ入り,注意後そのまま寮から退出しようとしていたのであって,Mの寮立入りそれ自体は,一応寮長としての正当な役割の範囲内の行為といえる。また,Mは,原告らと口論,更にもみ合いとなっているが,これは,原告らが寮内にMを引き留めようとしてMを取り囲むなどしたことが契機となったものである上,Mが一方的に原告らに暴行を加えたものとは認められず,他方,過呼吸となって病院に搬送された原告C及び原告Gに特段の異常も認められなかったのであるから,この間のMの行為のみを抽出して,殊更不法行為として損害賠償責任を認めるのは相当ではない。警察官も,M及び原告らから事情聴取し,上記状況を撮影した写真を見た上で本件について問題があったと判断していない。そうすると,Mの一連の行為は,原告らに対する暴力ないしハラスメント行為として不法行為責任を生じさせるものではないというべきである。 ⑷ 小括以上より,被告会社の原告らに対する不法行為は成立しない。原告らの被告会社に対する損害賠償請求はいずれも理由がない。 3 争点3及び4(被告組合及び被告機構の原告らに対する不法行為の成否)について前記2の判断によれば,被告会社による不法行為は成立しないため,被告会社による不法行為の存在を前提とする被告組合及び被告機構の不 被告組合及び被告機構の原告らに対する不法行為の成否)について前記2の判断によれば,被告会社による不法行為は成立しないため,被告会社による不法行為の存在を前提とする被告組合及び被告機構の不法行為も成立しない。原告らの被告組合及び被告機構に対する損害賠償請求もいずれも理由がない。 4 争点6(原告らの被告会社らに対する不法行為の成否及び損害額)について⑴ 被告会社らは,原告らの主張が事実的法的根拠を欠くものであるなどと主張するが,前記1の判断のとおり,原告らは,被告会社に対して未払賃金の支払を求める権利があるのであって,原告らの主張の一部は,事実的法的根拠を欠くものではない。また,これまでの認定のとおり,被告会社らは,本件制度の受入れ機関として共に原告らの待遇の決定等に関与している。このような事情を考慮すれば,原告らによる被告会社らに対する本訴事件の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとはいえず,直ちに不法行為を構成するものではない。 ⑵ 各新聞に掲載された記事は,前提事実⑺記載のとおりであって,原告らが最低賃金を下回る賃金で就労させられたなどとして被告会社らに対し未払賃金及び残業代等の支払を求める本訴事件を提起したというものであるが,これらの記事は,各新聞社の取材,判断を経て掲載されるものであるから,原告らは,各新聞社に対して本訴事件の提起等に関する説明をしていたとしても,これらの記事の掲載につき当然には不法行為責任を負うものではない。 また,これらの記事は,本訴事件の提起(これが不法行為を構成するものでないのは上記のとおりである。)及び本訴事件における原告らの主張に関するものであって,その内容それ自体に誤りはない一方,本訴事件における原告らの主張が真実であると報道するもので 行為を構成するものでないのは上記のとおりである。)及び本訴事件における原告らの主張に関するものであって,その内容それ自体に誤りはない一方,本訴事件における原告らの主張が真実であると報道するものでもない。そして,証拠(乙イ1から3まで)によれば,これらの記事は本訴事件における原告らの主張を超えて被告会社らを殊更批判,攻撃するようなものではないことが認められる。 このような事情を考慮すれば,これらの記事の掲載は,いずれにせよ不法行為としての違法性を欠くものというべきである。 ⑶ 原告らは,平成22年11月12日ころから被告会社に対して基本給や時間外手当の増額を求めるなどし,同年12月に被告会社との間で精算金を授受するなどしているが(前記1⑵アからまで参照),この間における原告らの要求等は,これまでの検討によれば一部は正当なものであって,直ちに不法行為を構成するものではない。 次に,原告らは,平成23年1月25日午後から被告会社の工場で就労することを拒否し,同年2月14日に懲戒解雇に関する書面を受領するまでの間に被告会社代表者との交渉を要求するなどしている(前記1⑵アからまで参照)。この間における原告らの行動は,被告会社らに対する業務妨害等に当たり得るものであったとしても,被告会社らは本件制度の受入れ機関として日本の制度,習慣等に対する理解が不十分な原告らを保護し指導すべき立場にあったこと,被告会社らの原告らの行動に対する具体的対応の内容等を併せ考慮すれば,不法行為の成否を検討する上では,被告会社らが受忍すべき範囲にとどまるというべきである。すなわち,原告らは,この間の行動につき不法行為責任を負うものではない。 ⑷ 結局,被告会社らの原告らに対する損害賠償請求はいずれも理由がない。 第4 結論よ とどまるというべきである。すなわち、原告らは、この間の行動につき不法行為責任を負うものではない。 ⑷ 結局、被告会社らの原告らに対する損害賠償請求はいずれも理由がない。 第4 結論 よって、主文のとおり判決する。 函館地方裁判所民事部裁判長裁判官鈴木尚久 裁判官矢口俊哉 裁判官天田愛美
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