平成19(行コ)217 各退去強制令書発布処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第265号,第266号)

裁判年月日・裁判所
平成19年10月17日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文7,565 文字)

- 1 -主文 本件控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 裁決行政庁が控訴人らに対して平成17年12月6日付けでした在留特別許可をしないとの各決定をいずれも取り消す。 裁決行政庁が控訴人らに対して平成17年12月6日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控訴人らの異議の申出には理由がない旨の各裁決をいずれも取り消す。 裁決行政庁は,控訴人らに対し,在留資格を「定住者」及び在留期間を「3年」とする在留特別許可処分をそれぞれせよ。 処分行政庁が控訴人らに対して平成17年12月12日付けでした各退去強制令書発付処分をいずれも取り消す。 第2事案の概要 控訴人母は,韓国において出生し,韓国国籍を有する女性であり,平成6年7月18日に短期滞在の在留資格で本邦に入国後,在留期限を越えて本邦に不法に残留中,平成9年3月7日,永住者の在留資格をもって本邦に在留するAと婚姻の届出をし,平成▲年▲月▲日,控訴人子を出産した。Aは,平成9年8月22日,控訴人子の親権者をAと定めて控訴人母と離婚する旨の協議離婚の届出をし,控訴人らは,平成10年3月19日,韓国に強制送還された。 控訴人母は,平成12年11月23日,短期滞在の在留資格で本邦に入国後,在留期限を越えて本邦に不法に残留した。控訴人子は,平成13年9月7日,在留資格を定住者,在留期間を3年とする上陸許可を受けて本邦に入国した。 東京家庭裁判所は,控訴人母の申立てにより,平成15年6月30日,控訴人- 2 -子の親権者をAから控訴人母に変更する旨の審判をし,この審判は確定した。 控訴人子は,平成16年8月18日,在留期間更新許可申請をしたが,在留資格を特定活動,在留期間を4月とする許 控訴人- 2 -子の親権者をAから控訴人母に変更する旨の審判をし,この審判は確定した。 控訴人子は,平成16年8月18日,在留期間更新許可申請をしたが,在留資格を特定活動,在留期間を4月とする許可のみが認められ,それ以降の更新の許可は認められず,平成17年1月7日以降,本邦に不法に残留した。 東京入国管理局(以下「東京入管」という)横浜支局入国審査官は違反審。 査を行い,控訴人らは出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という)。 24条4号ロの不法残留者に該当すると認定した。東京入管横浜支局特別審理官は,控訴人らによる請求を受けて口頭審理をし,入国審査官の認定に誤りがないと判定して控訴人らに通知したところ,控訴人らは,法務大臣に対して異議を申し出た。法務大臣から権限の委任を受けた東京入国管理局長(裁決行政庁)は,平成17年12月6日,入管法49条1項に基づく控訴人らの異議の申出に理由がない旨の裁決(以下「本件各裁決」という)をし,その通知を。 受けた東京入管横浜支局主任審査官(処分行政庁)は,平成17年12月12日,控訴人らに対し,退去強制令書を発付した(以下「本件各退令処分」という。 。)本件は,控訴人らが,控訴人らに在留特別許可を認めなかった本件各裁決には,控訴人らに「定住者」の在留資格該当性があることを判断の基礎としなかった点において,裁量権の逸脱又は濫用があり,本件各裁決を前提としてされた本件各退令処分もまた違法である旨主張して,本件各裁決及び本件各退令処分の取消しを求めるとともに,裁決行政庁が本件各裁決に当たってした在留特別許可をしないとの各決定の取消し及び在留特別許可の義務付けを求めた事案である。 原審は,裁決行政庁がした在留特別許可をしないとの各決定の取消しを求める訴え及び在留特別許可付与の義務付けの訴え 別許可をしないとの各決定の取消し及び在留特別許可の義務付けを求めた事案である。 原審は,裁決行政庁がした在留特別許可をしないとの各決定の取消しを求める訴え及び在留特別許可付与の義務付けの訴えについて,いずれも不適法であるとして却下し,本件各裁決の取消しを求める訴え及び本件各退令処分の取消しを求める訴えについて,本件各裁決には裁量権の逸脱又は濫用はないから本- 3 -件各裁決は適法であり,これを前提として行われた本件各退令処分も適法であるとして,いずれも棄却した。そこで,控訴人らがこれを不服として本件の控訴をしたものである。 その他,前提事実,争点及び当事者の主張は,次のとおり当審における控訴人らの主張を付加するほか,原判決「事実及び理由「第2事案の概要」」,の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人らの当審における主張(1)定住者の在留資格は,日本人及び永住者と一定の身分関係に立つ外国人のうち,日本人の配偶者等及び永住者の配偶者等に該当しない者について在留資格該当性を認める,いわば補充的な性格をも有するものである。控訴人らは永住者であるAと一定の身分関係を有し,日本との地縁が認められる(控訴人子は,日本で生まれ,日本の教育を受けている)から,控訴人ら。 について定住者の在留資格を認めるべきである。 (2)在留特別許可の許否の決定は異議の申出に対する判断と一緒になされるが,だからといって,2つの決定が不可分的に一体となった処分であるということはできない。異議の申出に対する判断は,退去強制事由の有無についての判断であって裁量が認められないが,在留特別許可の許否の判断には裁量が含まれ,それぞれの判断の基礎となるべき事実は全く異なるから,この2つの判断が不可分的に一体であるということはできず,在留 いての判断であって裁量が認められないが,在留特別許可の許否の判断には裁量が含まれ,それぞれの判断の基礎となるべき事実は全く異なるから,この2つの判断が不可分的に一体であるということはできず,在留特別許可の許否の判断には処分性があり,取消訴訟の対象となるというべきである。 (3)原審は,処分の取消しによって救済が得られること,どのような処分を義務付けるべきかが明らかではないことを理由として,本件義務付けの訴えについて救済の必要性がないと判断している。しかし,裁決の取消しがされたとしても,控訴人らに直ちに在留資格が与えられるわけではないから,本件義務付けの訴えが不適法であるとはいえない。また,原判決は,どのような内容の義務付けをするべきかが明らかであることが義務付け訴訟の要件で- 4 -あるかのように判示するが,そのような要件は法の文言上認められないし,そのような解釈は,義務付け訴訟を導入した法の趣旨に反する。 (4)法務省入国管理局作成の平成18年10月付け「在留特別許可に係るガイドライン(以下「ガイドライン」という)では,積極要素として日本」。 人等との一定の身分関係に立つ場合等が定められており,これが在留資格該当性の要件を表し,消極要素として素行不良,反社会性等が規定され,これが在留不相当の要件を表している。このガイドラインは,入管実務の基準として定められているのであり,積極要素があり消極要素がないことが認められれば,在留特別許可を認めるべきである。 控訴人子については,永住者の子であるから,ガイドラインの積極要素(1)(当該外国人が日本人の子又は特別永住者の子であること)に準じる者といえる上,①小学校4年生で,韓国語は話せず,日本の学校に通うことを強く希望しており,韓国へ帰国すると学習言語が韓国語に強制的に変更されて学 が日本人の子又は特別永住者の子であること)に準じる者といえる上,①小学校4年生で,韓国語は話せず,日本の学校に通うことを強く希望しており,韓国へ帰国すると学習言語が韓国語に強制的に変更されて学習障害が生じること,②控訴人らの韓国にいる親族は病気等のため頼ることができないことからすれば,控訴人子は本邦への定着性が認められ,かつ国籍国との関係が希薄であり,国籍国において生活することが極めて困,難な場合(ガイドラインの積極要素(4)の例示)に該当する。以上に加えて控訴人子は,韓国に帰国しなければ,入管法別表第2の「永住者の配偶者等」に該当していたこと,父であるAの扶養を受けていれば定住者告示6号の被扶養者に該当する立場にあったことを考慮すれば,本件は,ガイドラインの積極要素(4)の「人道的配慮を必要とする特別な事情があるとき」に該当し,また,控訴人子は,自らの意思で入管法違反になったのではないから,素行不良等の消極要素に該当しない。 よって,控訴人子については,ガイドラインの定める要件を充足しているから,それにもかかわらずされた在留特別許可をしないとの処分及び異議の申出に理由がないとの処分には裁量権の逸脱があり,違法である。 - 5 -控訴人母については,上記のとおり,控訴人子がガイドラインの積極要素(1)の要件を満たす者であるから,その親権者であり,監護養育をしている控訴人母はガイドラインの積極要素(2)(当該外国人が日本人又は特別永住者との間に出生した実子を扶養している場合)の要件を満たす者に準じる立場にあるといえるし,控訴人子がガイドラインの積極要素(4)の要件に該当するから,控訴人母についてもガイドラインの積極要素(4)の要件に該当すると解釈すべきである。控訴人母は,過去に退去強制手続を受けたことがあるから,ガイドラインの ラインの積極要素(4)の要件に該当するから,控訴人母についてもガイドラインの積極要素(4)の要件に該当すると解釈すべきである。控訴人母は,過去に退去強制手続を受けたことがあるから,ガイドラインの消極要素(3)の要件に該当するが,前回の退去強制も今回の不許可処分も,任意に入国管理局に出向いたために受けたものであり,違反の程度は高いとはいえない。 よって,控訴人母についてもガイドラインの定める積極要素があり消極要素に問題がないことが認められるから,それにもかかわらずされた在留特別許可をしないとの処分及び異議の申出に理由がないとの処分には裁量権の逸脱があり,違法である。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,在留特別許可をしないとの各決定の取消しを求める訴えと在留特別許可付与の義務付けの訴えはいずれも不適法であり,本件各裁決の取消しを求める訴え及び本件各退令処分の取消しを求める訴えはいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第3争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決19頁19行目から20頁16行目までを次のとおり改める。 「控訴人らは,入管法49条3項の法務大臣の裁決とは別に同法50条1項の在留特別許可を与えるか否かの法務大臣の決定が存在すると主張するので検討する。 入管法の規定によれば,法務大臣は,49条1項の異議の申出があったとき- 6 -は,24条各号の退去強制事由の存否について検討し,退去強制事由が存在すると判断された場合においても,在留特別許可を与えることの当否を検討し,在留特別許可を与えないとの判断に至ったときは,異議の申出には理由がないとする49条3項の裁決をすることとされている。他方,在留特別許可を与えるのが相当であると判断された場 えることの当否を検討し,在留特別許可を与えないとの判断に至ったときは,異議の申出には理由がないとする49条3項の裁決をすることとされている。他方,在留特別許可を与えるのが相当であると判断された場合にはその旨の決定がされ,これは異議の申出には理由がある旨の裁決とみなされている(50条3項。このような規定)の趣旨に照らすと,入管法49条3項による異議の申出には理由がないとの裁決は,24条各号の退去強制事由の存否の判断と在留特別許可の当否の判断を踏まえた上でなされるものであり,その意味では,在留特別許可の当否の判断は上記裁決の理由の一部に関する判断であるということができる。したがって,法務大臣の入管法49条3項の裁決とは別に在留特別許可を与えることが不相当であるとの独立した決定があるということはできない」。 原判決27頁1行目の「平成8年7月1日」を「平成9年7月1日」に改める。 原判決33頁5行目の「乙33」の次に「。なお,控訴人らは,控訴人子,は簡単な挨拶やお母さん等の単語を知っているだけであって,韓国語を話すことはできないと主張し,控訴人母はこれに沿う供述をするが,控訴人子が本邦に入国した平成13年9月7日の時点で4歳4か月であり,その前3年6か月を韓国で親族と共に生活していたこと,証拠(乙32,33)によれば,控訴人子自身が,韓国語が話せるので韓国語を習う必要はないと具体的に述べていること,韓国から控訴人らの親戚が遊びに来ており,そのときの会話は韓国語で行われていると推認できることに照らすと,控訴人母の供述は採用できない」を加える。 。 原判決33頁17行目の次に,行を改めて次のとおり加える。 「控訴人らは,定住者の在留資格は,日本人及び永住者と一定の身分関係に立つ外国人のうち,日本人の配偶者等及び永住者の配偶者 加える。 。 原判決33頁17行目の次に,行を改めて次のとおり加える。 「控訴人らは,定住者の在留資格は,日本人及び永住者と一定の身分関係に立つ外国人のうち,日本人の配偶者等及び永住者の配偶者等に該当しない者につ- 7 -いて在留資格該当性を認めるという意味で補充的な性格をも有するものであるところ,控訴人らは永住者であるAと一定の身分関係を有し,日本との地縁が認められるから,控訴人らについて定住者の在留資格を認めるべきであると主張する。 しかし,定住者の在留資格が補充的な性格を有することと控訴人らに定住者の在留資格を認めるべきかどうかとは直接関係を有するものではなく,前記認定のとおり,控訴人母はAと離婚し,Aは控訴人子の親権者ではなくなって控訴人らに金品等の援助も全くしていないことからすると,控訴人らとAとの関係は密なものとはいえないし,控訴人子は生後10か月すぎに韓国に帰り,韓国で約3年6か月を過ごしたことからすると,控訴人子が永住者の配偶者等の身分又は地位に準ずる地縁を有するということもできないから,定住者の在留資格を認めるべきであるとの控訴人らの主張は理由がない」。 原判決35頁4行目から12行目までを次のとおり改める。 「控訴人らは,ガイドラインは入管実務の基準として定められており,積極要素があることと消極要素がないことが認められれば在留特別許可を認めるべきであると主張するが,前記説示のとおり在留特別許可の許否の判断は,法務大臣の極めて広範な裁量に委ねられていること,証拠(甲11の2)によれば,ガイドラインにおいて,在留特別許可の許否は個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断するものであり,当該許可に係る基準はないと明記されていることに照らすと,ガイドラインに掲げられた積極要素と消極要素は許可の基準という 別許可の許否は個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断するものであり,当該許可に係る基準はないと明記されていることに照らすと,ガイドラインに掲げられた積極要素と消極要素は許可の基準ということはできず,考慮要素にすぎない(とりわけ,控訴人らがその適用を主張する積極要素(4)は「人道的配慮を必要とする特別な事情があるとき」とされており,一義的にその該当性が明らかになるものではない)ので。 あるから,控訴人らの主張は理由がない。 控訴人らは,具体的には,控訴人子は小学校4年生で,韓国語は話せず,韓国へ帰国すると,学習言語が韓国語に強制的に変更されて学習障害が生じるこ- 8 -と,控訴人らの韓国にいる親族は病気等のため頼ることができないことから,ガイドラインの積極要素(4)の「本邦への定着性が認められ,かつ国籍国との関係が希薄であり,国籍国において生活することが極めて困難な場合」に該当すると主張する。しかし,前記説示のとおり,控訴人子は簡単な韓国語を話すことができると認められること,控訴人子は,韓国へ帰国することで生活環境や学習環境が変化することによる困難に直面することが予測されるものの,その年齢からみて,環境の変化に対する順応性や可塑性を相当有しており,時の経過とともに韓国における生活になじみ得ると考えられることからすると,控訴人子について,国籍国である韓国との関係が希薄であり,韓国において生活することが極めて困難な場合に該当するということはできず,控訴人らの主張は理由がない。 また,控訴人らは,控訴人子は,韓国に帰国しなければ入管法別表第2の「永住者の配偶者等」に該当していたし,父であるAの扶養を受けていれば定住者告示6号の被扶養者に該当する立場にあったことを考慮すれば,本件はガイドラインの積極要素(4)の「人道的配慮を必要と 第2の「永住者の配偶者等」に該当していたし,父であるAの扶養を受けていれば定住者告示6号の被扶養者に該当する立場にあったことを考慮すれば,本件はガイドラインの積極要素(4)の「人道的配慮を必要とする特別な事情があるとき」に該当すると主張するが,控訴人らの主張はいずれも仮定の上に立ったものであり,控訴人子が韓国に帰国し,現に父であるAの扶養を受けていないという事実がある以上は,人道的配慮を必要とする特別な事情があるということはできない。また,控訴人らは,控訴人子は自らの意思で入管法違反になったのではないから素行不良等の消極要素に該当しないと主張するが,消極要素に該当しないからといってガイドラインの定める要件をすべて充足しているということができないことは明らかである。 控訴人らは,控訴人子がガイドラインの積極要素(4)に該当するから,控訴人母についてもガイドラインの積極要素(4)に該当すると解釈すべきであると主張するが,控訴人子がガイドラインの積極要素(4)に該当しないことは上記説示のとおりであるから,控訴人らの主張は前提を欠き,失当である」。 - 9 -第4 結論 よって,原判決は相当であり,本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官安倍嘉人裁判官片山良広裁判官後藤健

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