平成12(行ウ)4 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成16年4月13日 甲府地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6471.txt

判決文本文22,441 文字)

平成16年4月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官磯野正義平成12年(行ウ)第4号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日平成16年3月2日判決当事者の表示別紙当事者目録(省略)記載のとおり 主文 1 被告は,豊富村に対し,2953万7695円及びこれに対する平成12年9月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告らの,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 請求の趣旨・被告は,豊富村に対し,2億6824万0349円及びこれに対する平成12年9月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ・訴訟費用は被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁・本案前の答弁ア本件訴えを却下する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 ・本案に関する答弁ア原告らの請求を棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 争いのない事実 1 原告らは山梨県東八代郡豊富村(以下「村」という。)の住民である。被告は,平成5年度から村長の職にあり,平成12年7月当時も同職にあった者である。 2 平成5年1月,農林水産省と自治省は,協力して,地域が緊急に対応しなければならない課題に応えて早急に行う必要がある農道の整備を推進し,もって あり,平成12年7月当時も同職にあった者である。 2 平成5年1月,農林水産省と自治省は,協力して,地域が緊急に対応しなければならない課題に応えて早急に行う必要がある農道の整備を推進し,もって農業農村の振興と定住環境の改善に資するため,「ふるさと農道緊急整備事業」を実施することとした。村は,これを受け,平成5年度から平成9年度までの5か年計画で,地方単独事業として,「ふるさと農道緊急整備事業」の一環として大鳥居線と高部線の建設事業(以下「本件事業」という。)を計画した。 3 被告は,本件事業の資金に充てるため,大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫に対し,村長として借入れを申し込み,下記のとおり借り入れた(以下「本件起債」又は「本件借入行為」という。)。 ・大蔵省資金運用部借入年月日借入金額ア平成7年3月27日  6090万円イ平成8年3月14日  6610万円ウ平成9年3月25日  1億0610万円・公営企業金融公庫借入年月日借入金額ア平成8年3月22日  1億3200万円イ平成9年3月26日  2億2100万円ウ平成10年3月25日 4億1590万円 4 被告は,用地買収費として予算に計上したものの,当該年度及び明許繰越可能な翌年度においても支出せず,再度の繰越をすることができなくなった金員を,C組合に「豊富村収入役」等の名義で平成4年5月28日から開設されていた別段貯金口座(口座番号1920010,後に4837304)に預金した(以下これらをまとめて「本件隠し口座」という。)。 同口座に預金された金額のうち,本件事業に関するものは,平成5年度から平成9年度までで合 号1920010,後に4837304)に預金した(以下これらをまとめて「本件隠し口座」という。)。 同口座に預金された金額のうち,本件事業に関するものは,平成5年度から平成9年度までで合計8億8804万5901円に上るが,そのうち6億1501万8572円は後に本件事業のために支出された。 5 村は,大蔵省資金運用部地方資金を所管する関東財務局長から,平成11年5月25日付けで,「用地買収が完了していないにもかかわらず完了したと虚偽の申請で借り入れ,その結果,長期手許留保する不正な決算処理を行っていた」という認定を受け,また,公営企業金融公庫から,同年6月8日付けで,「用地買収,道路工事等が完了するとの申請で借り入れを行ったが,支出の原因となる契約がないのに支出を行い,当該金員を別口座にプールするなど不正な決算処理を行っていた」という認定を受けて,それぞれ一括繰上償還の措置を受けた。 被告は,これらを受けて,村長として分割繰上償還の申出を行い,関東財務局長は,平成11年8月25日付けで,公営企業金融公庫は,同月27日付けで,村に対し,それぞれ分割繰上償還を承諾する旨の通知をした。 6 平成11年度地方交付税検査等の結果,村は,平成12年7月,平成12年度地方交付税の算定においてマイナス1億0328万4000円の錯誤措置を取られた。 7 原告らは,村監査委員に対し,平成12年4月28日,住民監査請求を行ったが,同年6月29日付けで同監査委員から合議に至らなかった旨の通知がされたため,住民監査請求を行った日から60日を経過し,かつ当該60日を経過した日から30日以内である同年7月25日,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「改正前法」という。)242条の2第2項3号に基づき,本訴を提起した。 し,かつ当該60日を経過した日から30日以内である同年7月25日,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「改正前法」という。)242条の2第2項3号に基づき,本訴を提起した。 第3 当事者の主張 1 請求原因(主位的請求原因)・違法な財務会計行為被告は,本件各借入行為を行った際,用地買収が進まず,各年度内に事業を完了していないにもかかわらず,事業を完了したという虚偽の申請を行った。さらに,この金員を「長期手許留保する」決算処理を行った。これらの行為は,村長として普通地方公共団体の事務を誠実に管理し,執行すべき義務に反して行われたもので,地方自治法138条の2に違反する。 この違法な行為のため,村は,関東財務局長及び公営企業金融公庫から借入金の一括繰上償還を要求され,結局分割繰上償還となったものの,繰上償還を免れることができなかった。また,これに伴い,地方交付税の錯誤措置が取られた。 ・損害(逸失利益)ア上記第2の4のとおり,本件隠し口座に預金された金額のうち6億1501万8572円は本件事業のために実際に支出された。 イ本件事業の総事業費は12億6353万3302円であり,その79. 3パーセントに当たる10億0200万円は借入金で,残りの2億6153万3302円は村の一般財源等のいわば自己資金でまかなわれたから,本件事業に実際に支出された上記6億1501万8572円についても,特段の事情のない限り,その79.3パーセントに当たる4億8770万9727円が大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫からの借入金に相当する部分に当たる。 そして,その55パーセントに当たる2億6824万0349円は,本来,地方交付税で肩代わりされる仕 27円が大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫からの借入金に相当する部分に当たる。 そして,その55パーセントに当たる2億6824万0349円は,本来,地方交付税で肩代わりされる仕組みになっていたが,被告の村長としての上記違法な行為によって取られることとなった繰上償還措置,さらには地方交付税の錯誤措置の結果,地方交付税で肩代わりされなくなってしまい,村は上記2億6824万0349円の損害を被った。 ・損害(分割返済に伴う利子)上記分割繰上償還に伴い発生する利子2953万7695円も,上記村に生じた損害に含まれる。 ・まとめよって,原告らは,被告に対し,改正前法242条の2第1項4号前段に基づき,上記損害金2億6824万0349円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成12年9月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を村に対して支払うことを求める。 (予備的請求原因・その1)・怠る事実その1主位的請求原因・・・記載のとおり,被告による違法な財務会計行為の結果,村は2億6824万0349円の損害を被った。同・の2953万7695円も村に生じた損害に含まれる。 村は,被告に対し,この損害賠償請求権の行使を怠っている。 ・まとめ主位的請求原因・と同じ(ただし,改正前法242条の2第1項4号後段に基づく。)。 (予備的請求原因・その2)・怠る事実その2被告は,村長として,本件各借入れの償還に地方交付税を充てることを前提として,本件事業を計画していたのであるから,地方交付税の交付を受けることができるように,適正に予算を執行すべき義務があったにもかかわらず,この義務を怠ったもので 償還に地方交付税を充てることを前提として,本件事業を計画していたのであるから,地方交付税の交付を受けることができるように,適正に予算を執行すべき義務があったにもかかわらず,この義務を怠ったもので,地方自治法138条の2に違反する。 この被告による違法な財務会計行為の結果,村は,主位的請求原因・及び予備的請求原因・その1・記載のとおり損害を被った。 村は,被告に対し,この損害賠償請求権の行使を怠っている。 ・まとめ主位的請求原因・と同じ(ただし,改正前法242条の2第1項4号後段に基づく。)。 (予備的請求原因・その3)・怠る事実その3被告は,村長として,しかるべき年度内に用地買収等の行為を完了させるべき義務があったにもかかわらず,本件各借入れの全額に該当する事業を行わず,さらには,本件各借入れを実行した年度において実施できなかった当該借入れにかかる事業を翌年度以降に行うとともに,村議会に予算どおり支出した旨の虚偽の決算書を提出して,支出したことにした金員を本件隠し口座に預金するなどの違法行為をした。 この被告による違法な行為の結果,村は,主位的請求原因・及び予備的請求原因その1・・記載のとおり損害を被った。 村は,被告に対し,この損害賠償請求権の行使を怠っている。 ・主位的請求原因・と同じ(ただし,改正前法242条の2第1項4号後段に基づく。)。 2 被告の主張・本案前の主張(主位的請求原因に対し)ア監査請求期間徒過・原告らが主位的請求原因において違法な財務会計上の行為である旨主張する本件各借入行為及び隠し口座への支出行為は,平成7年3月27日から平成10年3月25日まで 監査請求期間徒過・原告らが主位的請求原因において違法な財務会計上の行為である旨主張する本件各借入行為及び隠し口座への支出行為は,平成7年3月27日から平成10年3月25日までの間に行われたが,本件訴えの前提とされる住民監査請求は各行為の日から1年以上経過した日である平成12年4月28日に行われた。 このように,監査請求期間を徒過して行われた監査請求を前提として提起された本件訴えは不適法である。 ・なお,原告らは,監査請求期間を徒過したことについて「正当な理由」がある旨主張するが,本件事業にかかる決算に問題があることが村議会において最初に取り上げられたのは平成10年9月24日であり,その後,平成11年3月12日の第1回村議会定例会において,A議員が地方交付税を含めて村の損害が5億2312万5000円位になるとして,その対処方についての質問を行っていたのであるから,遅くとも同議員の質問が行われた日までに本件において原告らの主張する損害が村に発生する客観的可能性があったというべきであるし,原告らはそのころまでに損害が発生するおそれのあることを知ることができたから,「正当な理由」はない。 イ監査請求未経由(監査請求前置主義違反)原告らは,本件訴えの前提とする監査請求において,被告は「不正を承知しながら虚偽の決算書を議会へ提出したことは違法であり,その結果繰上償還を求められ,交付税算入が取り消されたことは村の大きな損害であることは明白である」から,既に繰上償還した1億5563万8630円についての損害賠償と将来の繰上償還を公金で負担しないことを求めていた。これに対し,原告らは,主位的請求原因において,財務会計上の行為は本件各借入行為であり,損害は錯誤措置が 1億5563万8630円についての損害賠償と将来の繰上償還を公金で負担しないことを求めていた。これに対し,原告らは,主位的請求原因において,財務会計上の行為は本件各借入行為であり,損害は錯誤措置が取られたことにより,地方交付税で肩代わりされるはずであった2億6824万0349円であるとしている。 したがって,主位的請求原因における原告らの主張は,監査請求の対象との同一性を欠くというべきであり,このように住民監査請求を経由していない本件訴えは不適法である。 (予備的請求原因・その1に対し)ア監査請求期間徒過特定の財務会計上の行為を違法であるとして,それに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは,当該行為の終わった日を基準として改正前法242条2項の規定が適用される(最高裁判所昭和62年2月20日第2小法廷判決)。 本件において原告らの問題とする財務会計行為は,本件各借入行為であるところ,本件各借入行為及び本件隠し口座への支出行為の行われた時点から起算して,監査請求期間が徒過した後に本件監査請求がされたこと,また,そのことについて正当な理由がないことは,主位的請求原因に対する本案前の答弁アにおいて主張したとおりであり,本件訴えは不適法である。 イ監査請求未経由(監査請求前置主義違反)原告らが監査請求において問題とした違法行為及び損害と,本件訴えで違法である旨主張する被告の財務会計行為及び損害のいずれとの間にも同一性がないことは,主位的請求に関する本案前の答弁イにおいて主張したとおりであり,このように,住民監査請求を経由していない本件訴えは不適法である。 (予備的請求原因・そ 害のいずれとの間にも同一性がないことは,主位的請求に関する本案前の答弁イにおいて主張したとおりであり,このように,住民監査請求を経由していない本件訴えは不適法である。 (予備的請求原因・その2に対し)ア監査請求未経由(監査前置主義違反)本件監査請求において原告らは,被告が不正を承知しながら虚偽の決算書を議会へ提出したことは違法であり,その結果,繰上償還を求められ,交付税算入が取り消されたことは豊富村の大きな損害であることは明白であるとして,既に繰上償還した1億5563万8630円についての損害賠償と将来の繰上償還を公金で負担しないことを求めた。これに対し,原告らは,予備的請求原因・その2において,適正に予算を執行する義務を問題としており,両者の間に同一性はないから,本件訴えは監査請求を前置していない違法がある。 イ出訴期間徒過原告らの主張する主位的請求原因における損害賠償請求権の原因となる違法行為と予備的請求原因・その2における損害賠償請求権の原因となる違法行為は,全く異なるものである上,前者は「当該職員に対する損害賠償請求」であるのに対して,後者は「怠る事実に係る相手方に対する損害賠償請求」であって,全く別個の訴訟類型にかかる請求である。 このように主位的請求原因と予備的請求原因・その2の間には,請求の基礎の同一性を欠くため,予備的請求原因・その2に変更することは訴え変更の要件を欠き,許されず,新たな訴えと見ざるを得ないところ,訴え提起の法定期間(改正前法242条の2第2項3号)を徒過した後に追加されたから,不適法である。 (予備的請求原因・その3に対し)ア財務会計上の行為性欠如原告らは,被告がしかるべ 前法242条の2第2項3号)を徒過した後に追加されたから,不適法である。 (予備的請求原因・その3に対し)ア財務会計上の行為性欠如原告らは,被告がしかるべき年度内に用地買収等の行為を完了させなかったこと,当該起債の全額に該当する事業を行わなかったこと又は当該起債にかかる事業を翌年度以降に行ったことを問題としている。 これらは,被告が農道を建設しなかったことを違法な財務会計行為とする趣旨と解されるところ,農道の建設は農業行政担当者としての行為であるから,財務会計上の行為に当たらない。 イ予備的請求原因・その2に対するア(監査請求未経由)及びイ(出訴期間徒過)と同じ・本案に関する主張(主位的請求原因に対し)ア主位的請求原因・のうち,被告が本件各借入れを行ったことは認めるが,その際,各年度内に事業を完了していないにもかかわらず,事業を完了したという虚偽の申請を行ったことは否認する。被告は,各年度内に事業完了の見込みがないにもかかわらず,事業完了予定として申請を行ったものである。 被告が普通地方公共団体の事務を誠実に管理し,執行する義務に反し,地方自治法138条の2に違反する旨の法的主張は争う。 本件各借入行為が貸主との契約に違反することは事実であるが,借主たる村において,議会の議決を経るなど法律に定める手続を遵守しているのであるから,村との関係で本件各借入行為が違法とされるべき理由はない。 イ同・のアの事実は認めるが,同イは争う。 原告らの損害の発生に関する主張は推論に過ぎず,下記のとおり,地方交付税の錯誤措置によって村に損害が生じることはない。 すなわち, アの事実は認めるが,同イは争う。 原告らの損害の発生に関する主張は推論に過ぎず,下記のとおり,地方交付税の錯誤措置によって村に損害が生じることはない。 すなわち,本件の各借入金は,当該年度において,本件事業を実施するためのものであり,事業が実施されなかった場合にはその費用に相当する借入金は不要となるのであるから,それを返還するのは当然であって,返還することにより村に損害は発生しない。また,錯誤措置が取られたのは,地方交付税の基準財政収入額の算定基礎となるべき本件事業に要する経費,すなわち現実に当該年度において本件事業のために支出された額が,地方交付税の算定の基礎とされた額(起債の許可額)を下回り,地方交付税が過大に交付されていたため,その過大交付分を錯誤として後年度において交付されるべき地方交付税において調整されたに過ぎない。 ウ同・は争う。 (予備的請求原因・その1に対し)予備的請求原因・その1の・のうち,村が被告に対し損害賠償請求権を行使していないことは認めるが,その余は争う。損害に関する主張は,主位的請求原因に対する主張と同じである。 (予備的請求原因・その2に対し)予備的請求原因・その2の・の主張は争う。 被告が村長として適正に予算を執行すべき義務を負っていたことは認めるが,予算の執行は長の権限であり(地方自治法149条2号),その義務は歳出予算に計上された経費を法令又は予算に違反しないように支出することに限られ,議会による歳出予算の議決に従って支出する義務を負うわけではなく,何らかの事情によって,予算に計上された経費の支出がされなかったからといって,それが違法になることはない。 損害に関する主張は,主位的請求原因に対する主 て支出する義務を負うわけではなく,何らかの事情によって,予算に計上された経費の支出がされなかったからといって,それが違法になることはない。 損害に関する主張は,主位的請求原因に対する主張と同じである。 (予備的請求原因・その3に対し)予備的請求原因・その2の・の主張は争う。損害に関する主張は,主位的請求原因に対する主張と同じである。 3 原告らの反論・本案前の主張ア主位的請求原因について・監査請求期間徒過について本件住民監査請求が,監査請求期間を徒過して行われたことについては,改正前法242条2項ただし書の定める「正当な理由」がある。 すなわち,同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,①地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,②当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所昭和63年4月22日第2小法廷判決)ところ,当該行為とは,財務処理をその直接の目的とする行為であって,直接かつ固有の効果として当該地方公共団体に財産的損害を与え,もしくは与えるべき客観的可能性を有する行為をいうと解するのが相当であり,当該行為を知ることができた日とは,当該行為によって,地方公共団体に財産的損害が発生すること又は発生する客観的可能性を認識するに至った日を言うものと解するのが相当である。 原告らが,本件各借入行為によって,村に財産的損害が発生することを認識するに至ったのは,平成12年3月9日の定例村議会初日に,村側が繰上償還に伴い,錯誤措置が取られたこと る。 原告らが,本件各借入行為によって,村に財産的損害が発生することを認識するに至ったのは,平成12年3月9日の定例村議会初日に,村側が繰上償還に伴い,錯誤措置が取られたことを明らかにした時点であり,それ以前には,本件各借入行為によって村に損害が発生する客観的可能性もなかった。 ・監査請求未経由について監査請求の対象と,住民訴訟の対象の同一性は,監査請求及び住民訴訟において違法と主張される財務会計上の行為あるいは怠る事実について,社会的事件としての同一性があるか否かによって判断されるべきである。 本件監査請求における請求の要旨は「豊富村長Yは不正を承知しながら虚偽の決算書を議会へ提出したことは違法であり」,「その結果繰上償還を求められ,交付税算入が取り消されたことは村の大きな損害である」,「平成12年3月に繰上償還した1億5563万8630円の支出は不当な公金の支出であるから,これに関与した行政執行最高責任者である豊富村長Yに交付税算入分を賠償させる措置を講ずるべきである。又,今後繰上償還する6億2325万4504円は全額公金で支出するべきではなく,交付税算入分は不正執行をした豊富村長Yに負担させるなり,必要な措置を講ずるべきである。」としているのであって,社会的事件としての同一性があるから,監査請求を前置している。 イ予備的請求原因・その1について(監査請求期間徒過について)本件において,村に財産的損害が発生したのは,繰上償還措置,さらには地方交付税の錯誤措置が取られた結果であり,各借入行為が行われた時点では村に何らの財産的損害も発生していない。このように,本件における財務会計上の行為である各借入行為の行 は,繰上償還措置,さらには地方交付税の錯誤措置が取られた結果であり,各借入行為が行われた時点では村に何らの財産的損害も発生していない。このように,本件における財務会計上の行為である各借入行為の行われた時点では,本件各借入行為が違法であることに基づく損害賠償請求権はいまだ発生せず,かつ損害賠償請求を行使できる状態にもなっていなかったというべきである。 このように,財務会計上の行為が違法・無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民訴訟において,同請求権が同財務会計上の行為がなされた時点においてはいまだ発生しておらず,又はこれを行使することができない場合には,同実体法上の請求権が発生し,これを行使することができることになった日を基準として,改正前法242条2項本文の規定を適用すべきである。 本件において,村の損害賠償請求権が発生し,行使することが可能となったのは,早くとも繰上償還の措置がとられた平成11年5月25日及び同年6月8日というべきであるから,監査請求期間の起算点は上記各時点である。 したがって,本件監査請求に当たり,監査請求期間は徒過していない。 ウ予備的請求原因・その2について予備的請求原因・その1についてと同じ。 エ予備的請求原因・その3について(監査請求期間徒過について)原告らが本件において違法である旨主張している行為は,被告がしかるべき年度内に用地買収等の行為を完了しなかったことであるが,これらは,公金の支出,財産の取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担のいずれにも当たらない。 したがって,本件における損害賠償 行為を完了しなかったことであるが,これらは,公金の支出,財産の取得・管理・処分,契約の締結・履行,債務その他の義務の負担のいずれにも当たらない。 したがって,本件における損害賠償請求権は,特定の財務会計上の行為の違法を理由として,それに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって,財産の管理を怠る事実とする場合には当たらない(いわゆる真正怠る事実に当たる)ので,監査請求期間の問題は生じない。 ・本案について(損害について)仮に,隠し口座に預金をした時点では,村に損害が発生していなかったとしても,同口座に預金していた資金を支出した分については,現に支出した時点で損害が発生したというべきである。 第4 被告の本案前の申立てに対する当裁判所の判断 1 主位的請求原因に関する本案前の主張について・監査請求期間徒過ア被告は,本件訴えの前提とされる監査請求は原告らが違法である旨主張する本件各借入行為の行われた日から1年以上経過した日に行われた旨主張する。 被告の村長としての違法な本件各借入行為によって取られることとなった繰上償還措置,さらには地方交付税の錯誤措置が取られたことにより,地方交付税で肩代わりされるはずであった金員に相当する損害を被った旨の原告らの主張を前提とすると,本件監査請求は,本件各借入行為を違法な「債務その他の義務の負担」行為とし,隠し口座への預金を違法な「公金の支出」として,それぞれ違法な財務会計上の行為ととらえているものと解される。 そして,改正前法242条1項所定の財務会計行為に係る監査請求については同条2項が適用されるところ,本件監査請求は,本件各借入行為ないし隠し口座への預金のあった日から1年以上経過 そして,改正前法242条1項所定の財務会計行為に係る監査請求については同条2項が適用されるところ,本件監査請求は,本件各借入行為ないし隠し口座への預金のあった日から1年以上経過した日に行われたことが明らかである。 このように,本件訴えは,監査請求期間を徒過して行われた監査請求を前提として提起されたものである。 イそこで,監査請求期間を徒過したことについて,「正当な理由」(改正前法242条2項ただし書)があるかについて検討する。 ・改正前法242条2項本文は,普通地方公共団体の執行機関・職員の財務会計上の行為はたとえそれが違法・不当なものであったとしても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るものとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとして,監査請求の期間を定めた。 他方,当該財務会計上の行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,1年を経過してから初めて明らかになった場合にもその趣旨を貫くことは相当でないから,同法242条2項ただし書は,例外として,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後であっても,普通地方公共団体の住民が監査請求をすることができるとした。そして,当該行為が秘密裡にされた場合,同項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的に見て当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものと解される(最高裁判所昭和63年4月22日第2小法廷判決・最高裁判所裁判集民事154号57頁参照)。 ・上記争いのない事実に,証拠(甲 監査請求をしたかどうかによって判断すべきものと解される(最高裁判所昭和63年4月22日第2小法廷判決・最高裁判所裁判集民事154号57頁参照)。 ・上記争いのない事実に,証拠(甲1の2,甲3の1・2,甲6,乙1,2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ・村は,本件各借入行為をする際,大蔵省資金運用部との間では,「この借入金について」「・虚構の事実に基づいて借入をしている場合」には,「同資金から繰上償還を求められても異存ないものとする。」(特約条項第4条)旨を,また,公営企業金融公庫との間では,「借入団体が貸付金を目的外の用途に使用した場合には,借入団体に対し,貸付金の全部又は一部を繰上償還させることができる。」(特約条項3条1項)旨を,それぞれ合意していた。 ・平成10年9月24日の第3回村定例議会において,B議員によって,本件事業農地高部線の用地買収が済んでいないのに,買収済みであるとして,平成9年度一般会計決算書に用地買収費の名目で1億3496万4000円を計上したことが指摘され,村の同年度の一般会計歳入歳出決算は不認定となった。このことは平成10年10月1日の朝日新聞で報道され,山梨日日新聞も同月以降これに関連する報道を続けた。朝日新聞の記事は「村が,村道工事を巡り,実際は用地買収が済んでいないのに,県に『買収済み』と虚偽の報告をしたうえ,買収費用として予算計上した約一億三千五百万円を次年度に繰り越さずに,収入役名義の定期預金に入れて,決算処理していたことが三十日,分かった」というものであった。 ・同年11月12日,村臨時議会が開催され,「ふるさと農道大鳥居線・高部線に関する事項」について地方自治法98条2項に基づき,監査請求する 十日,分かった」というものであった。 ・同年11月12日,村臨時議会が開催され,「ふるさと農道大鳥居線・高部線に関する事項」について地方自治法98条2項に基づき,監査請求することを議決し,同年12月の村定例議会において,上記監査結果(甲6)が報告された。 ・平成11年3月12日の第1回村議会定例会において,A議員が,本件事業の90パーセントが起債であると指摘した上,地方交付税を含めて村の損害が5億2312万5000円位になるとして,それに対する対応策についての質問を行い,同年12月20日の第4回村定例議会においても同趣旨の質問を行った。 ・村は,本件各借入行為について,平成11年8月25日付で,関東財務局長及び公営企業金融公庫から分割繰上償還の承認を受けた。 村は,承認された案に基づいて,村議会に補正予算案を提出し,同予算は平成12年2月24日,可決され,同年3月1日から支出が行われている。 ・以上の事実によれば,原告らが主位的請求原因において違法な財務会計上の行為である旨主張する事実のうち,本件隠し口座への預金については,朝日新聞に記事が掲載された平成10年10月1日の時点ですでに公になっていたということができる。本件各借入行為についても,遅くとも,平成11年3月12日の村議会でA議員が質問をした時までには,その存在及び問題点が明らかになっていたのであり,村民が相当の注意力をもって調査をすれば客観的に見て当該行為を知ることができたといえる。原告らが監査請求をしたのはそれから1年以上も経過した平成12年4月28日になってからであるから,原告らについて,改正前法242条2項ただし書所定の「正当な理由」を認めることはできない。 。原告らが監査請求をしたのはそれから1年以上も経過した平成12年4月28日になってからであるから,原告らについて,改正前法242条2項ただし書所定の「正当な理由」を認めることはできない。 ウしたがって,原告らの主位的請求原因が前提とする監査請求は,監査請求期間を徒過してされたもので,かつ監査請求期間を徒過して行われたことに正当な理由がないから,この請求に係る訴えは不適法である。 ・監査請求未経由(監査前置主義違反)被告は,主位的請求原因における原告らの主張は監査請求の対象との同一性を欠いているというべきであり,このように住民監査請求を経由していない本件訴えは不適法である旨主張するが,上記・の次第で,この点について判断するまでもなく,上記訴えは不適法である。 2 予備的請求原因・その1に関する本案前の主張について・監査請求期間徒過ア被告は,原告らが予備的請求原因・その1において,違法である旨主張する財務会計行為を前提として,それに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているところ,本件監査請求は当該行為の終わった日から1年以上経過した日に行われた旨主張する。 原告らは,予備的請求原因・その1において,本件各借入行為が違法な財務会計上の行為であるとして,これに基づいて発生する損害賠償請求権の不行使をもって,財産の管理を怠る事実としているところ,一般に,改正前法242条1項所定の怠る事実に係る監査請求については同条2項の適用がない(最高裁判所昭和53年6月23日第3小法廷判決・最高裁判所裁判集民事124号145頁)が,普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとしてされた改正前法242条1項の住民監査請求が,特定 裁判所昭和53年6月23日第3小法廷判決・最高裁判所裁判集民事124号145頁)が,普通地方公共団体において違法に財産の管理を怠る事実があるとしてされた改正前法242条1項の住民監査請求が,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものである場合には,当該行為が違法とされて初めて当該請求権が発生するのであるから,監査委員は,当該行為が違法であるか否かを判断しなければ当該怠る事実の監査を遂げることができないという関係にあり,これを客観的,実質的にみれば,当該行為を対象とする監査を求める趣旨を含むものとみざるを得ず,当該行為のあった日又は終わった日を基準として改正前法242条2項を適用すべきである(最高裁判所昭和62年2月20日第2小法廷判決・民集41巻1号122頁参照)。 予備的請求原因・その1は,本件各借入行為及び本件隠し口座への預金が違法であることに基づいて発生する損害賠償請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものであるところ,これらが違法であるか否かは,もっぱら,これらが財務会計法規に違反するか否かにかかっているのであるから,改正前法242条2項が適用される場合に当たり,本件各借入行為ないし本件隠し口座への預金のあった日を起算日として改正前法242条2項の規定を適用するのが本則である。 それゆえ,平成12年4月28日付けで行われた本件監査請求は,監査請求期間を徒過して行われたものであるように見える。 イしかし,一方で,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において,その請求権が ように見える。 イしかし,一方で,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において,その請求権がその財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず,又はこれを行使することができない場合には,その実体法上の請求権が発生し,これを行使することができることになった日を基準として,改正前法242条2項の規定を適用すべきものと解するのが相当である(最高裁判所平成9年1月28日第3小法廷判決・民集51巻1号287頁参照)。 原告らは,本件予備的請求原因・その1において,本件各借入行為及び本件隠し口座への預金が違法な財務会計上の行為であるとして,これに基づいて発生する損害賠償請求権の不行使をもって,財産の管理を怠る事実としているところ,上記1・イ・の各事実によれば,繰上償還をさせるか否かを決定するのは各貸主の側であるとされているから,本件各借入行為が行われた時点では各貸主に対する虚偽内容の申請が行われたに過ぎず,本件各借入行為が行われたことによって,当然に繰上償還措置を取られる関係にはない。また,地方交付税の錯誤措置についても,「自治大臣は・・・・・・することができる」と規定されているのであり(平成11年法律第160号による改正前の地方交付税法19条1項),本件隠し口座への預金が行われたからといって,当然に錯誤措置を取られる関係にはない。したがって,本件各借入行為,本件隠し口座への預金が行われた時点において,原告らの主張する損害の発生は認められない。その後,平成11年5月25日付けで,大蔵省資金運用部地方資金を所管する関東財務局長から,同年6月8日付けで,公営企業金融公庫から,それぞれ一括繰上償還の要求がされ,さらに,平 発生は認められない。その後,平成11年5月25日付けで,大蔵省資金運用部地方資金を所管する関東財務局長から,同年6月8日付けで,公営企業金融公庫から,それぞれ一括繰上償還の要求がされ,さらに,平成12年7月に地方交付税の錯誤措置を受けたことによって,原告らの主張する損害賠償請求権が発生するに至ったものと認められる。 したがって,本件予備的請求原因・その1において原告らの主張する損害賠償請求権は,早くても,平成11年5月25日までは発生していないのであるから,改正前法242条2項の定める監査請求期間の起算日は,この時点より以前にさかのぼることはない。 本件監査請求が行われたのは,平成12年4月28日であり,上記起算日から1年以内の日であるから,本件予備的請求原因・その1における原告らの請求は適法な監査請求を前置している。 ・監査請求未経由(監査請求前置主義違反)ア被告は,本件予備的請求原因・その1における原告らの主張は監査請求の対象との同一性を欠いているというべきであり,このように住民監査請求を経由していない本件訴えは不適法である旨主張する。 イ証拠(甲1の2)によれば,以下の事実が認められる。 ・原告らは,平成12年4月28日付けで豊富村監査委員に対し,要旨次のとおり,監査請求をした。 平成6年度から9年度までの間,村長は,本件事業の大鳥居線及び高部線の建設において,虚偽の決算書を村議会に提出し,平成9年度決算は不認定となった。本件事業における不正決算処理金額は,合計で8億8804万5901円に上る。そのうち,大蔵省と公営企業金融公庫から非適正に融資を受けた起債分7億7889万3134円について,平成11年6月に繰上償還がされ 業における不正決算処理金額は,合計で8億8804万5901円に上る。そのうち,大蔵省と公営企業金融公庫から非適正に融資を受けた起債分7億7889万3134円について,平成11年6月に繰上償還がされた。 この繰上償還金を平成12年3月から平成14年3月まで8回分割償還する計画で,既に平成12年3月,1億5563万8630円を償還した。 起債融資が適正に運用されていたならば,平成30年までの定期償還で償還元金に対し約4億5005万1000円の交付税が村に算入される計画であったところ,被告が,不正を承知しながら,虚偽の決算書を議会に提出したことは違法であり,その結果,繰上償還を求められ,交付税算入を取り消されたことは村の大きな損害である。 したがって,平成12年3月に繰上償還した1億5563万8630円の支出は不当な公金の支出であるから,これに関与した被告に交付税算入分を賠償させる措置を講ずるべきである。また,今後繰上償還する6億2325万4504円は全額公金で支出するべきでなく,交付税算入分は不正執行をした被告に負担させるなり,必要な措置を講ずるべきである。 ・これに対し,原告らの予備的請求原因・その1における主張は,上記のとおりである。 ウ監査請求前置(監査請求の経由)とは,監査請求の対象とした行為又は怠る事実と住民訴訟において審理の対象となる行為又は怠る事実との間に同一性があることを要求するものであるところ,当該行為又は当該怠る事実の個々の違法事由について監査委員の判断を経たことを要求するものではないし,監査請求にかかる行為又は事実から派生し,又はこれを前提として後続することが当然に予測される行為又は事実を住民訴訟の対象とすることができるという いて監査委員の判断を経たことを要求するものではないし,監査請求にかかる行為又は事実から派生し,又はこれを前提として後続することが当然に予測される行為又は事実を住民訴訟の対象とすることができるというべきであり,請求の対象としての当該行為又は怠る事実の同一性の有無については,社会経済的な行為又は事実としての同一性の有無を基礎に,住民が何を監査の対象として取り上げたのかを客観的,実質的に判断すべきである。 本件監査請求の対象とされたのは,被告が,平成6年度から9年度までの間,本件事業の大鳥居線及び高部線の建設に関して虚偽内容の決算書を村議会に提出し,その結果,大蔵省資金運用部と公営企業金融公庫から融資を受けた起債分について,平成11年5月,6月に繰上償還を求められ,さらに地方交付税の錯誤措置を取られたという事実であり,その結果生じた損害として,既に支出された平成12年3月に繰上償還した1億5563万8630円のうち,地方交付税算入分について,被告に賠償させる措置を求めるとともに,将来,繰上償還する金員のうち,地方交付税算入分を被告に負担させるなどの必要な措置を講ずることを求めたものであるのに対し,原告らは,本件訴えにおける予備的請求原因・その1の事実として,被告が本件各借入行為に際し,虚偽の申請を行うとともに,虚偽内容の決算書を村議会に提出していたところ,村は,平成11年5月25日付けで,大蔵省資金運用部地方資金を所管する関東財務局長から,同年6月8日付けで,公営企業金融公庫から,それぞれ一括繰上償還を求められ,さらに,地方交付税の錯誤措置が取られた結果,地方交付税で肩代わりされる仕組みになっていた額に相当する損害を被ったが,村が損害賠償請求権の行使を怠っているので,これを代位行使する旨主張している。 エこれ の錯誤措置が取られた結果,地方交付税で肩代わりされる仕組みになっていた額に相当する損害を被ったが,村が損害賠償請求権の行使を怠っているので,これを代位行使する旨主張している。 エこれらの事実を比較するに,本件監査請求の対象たる事実と本件予備的請求原因・その1における事実経過は,被告が本件事業にかかる建設資金の調達のために,大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫からの起債融資を受けるに当たり虚偽の申請を行い,本件隠し口座への預金をしたことにより,繰上償還及び錯誤措置を取られたという点で一致しているのであって,原告らが問題とする事実経過は全く同一であることは明らかであるし,さらには,原告らが本件監査請求及び本件訴えにより是正を求めようとしている被告の財務会計上の行為という観点においても,社会経済的な同一性を有するものと認められる。 したがって,本件予備的請求原因・その1における原告らの主張と,監査請求の対象との間に同一性を認めることができるから,監査請求を前置したものと認められる。 ・それゆえ,予備的請求原因・その1に関する被告の本案前の申立てには理由がなく,ほかに同請求原因に係る訴えを不適法とする理由もないから,同請求原因に係る訴えは適法である。 第5 予備的請求原因・その1に対する当裁判所の本案の判断そこで進んで,予備的請求原因・その1の本案について判断する。 1 原告らは,予備的請求原因・その1において,被告が,村長として,各年度内に事業を完了していないにもかかわらず,事業を完了したという虚偽の申請を行って,本件各借入れを行ったこと,及び,翌年度に繰り越せなくなった金額を本件隠し口座へ預金したことが違法な財務会計上の行為である旨主張する。 ・上記第4の1・イ・の事実及び証拠(甲3 請を行って,本件各借入れを行ったこと,及び,翌年度に繰り越せなくなった金額を本件隠し口座へ預金したことが違法な財務会計上の行為である旨主張する。 ・上記第4の1・イ・の事実及び証拠(甲3の3ないし6,甲6)並びに弁論の全趣旨によれば,被告が村長として,本件各借入行為を行った際に,本件事業に基づく用地買収が完了していないにもかかわらず完了したとの虚偽の事実を申告して借り入れ,あるいは事実に反して,本件事業によって予定している用地買収,道路工事等が完了する旨申告して借り入れを行ったこと,その結果,大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫から,特約条項に違反するとして,繰上償還措置を取られたこと,本件各借入行為による資金の流れは別表記載のとおりであったこと,その後,村に対する地方交付税上の錯誤措置が取られたことが認められる。 ・改正前法242条の2の定める住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものである。そして,予備的請求原因・その1に係る訴えは,同法242条の2第1項4号後段の規定に基づく代位請求に係る相手方に対する損害賠償請求訴訟であるが,すでに述べたとおり,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して違法であるからこそ発生する実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象とするものであるから,結局,被告の行為が,村長として財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるか否かが問題となる。 ・まず,本件各借入行為について検討するに,普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体を代表する者であり(地方自治法147条),当該普通地方公共団体の条例,予 であるか否かが問題となる。 ・まず,本件各借入行為について検討するに,普通地方公共団体の長は,当該普通地方公共団体を代表する者であり(地方自治法147条),当該普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務その他公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義務を負い(同法138条の2),予算の執行,地方税の賦課徴収,分担金,使用料,加入金又は手数料の徴収,財産の取得,管理及び処分等の広範な財務会計上の行為を行う権限を有する者であるから(同法149条),その職責にかんがみると,当該地方公共団体に対して善良な管理者としての注意義務を負うのは当然であり,債務負担行為をするにあたってこの注意義務違反が認められる場合,長は,当該普通地方公共団体に対し,住民訴訟による代位行使の対象となる民法上の損害賠償責任を負うと解される。 この点に関し,被告は,借主たる村において,議会の議決を経るなど法律に定める手続を遵守しているのであるから,村との関係で本件各借入行為が違法とされるべき理由はない旨主張するが,被告が虚偽の事実を申告して本件各借入行為をすることを議会が承認していたとの証拠はないし,事後において被告の責任を免除するとの議会の議決があったとの証拠もないから,被告の主張はその前提を欠くというべきである。 本件において,被告が,大蔵省資金運用部及び公営企業金融公庫に対する本件各借入行為に際し,虚偽の事実を申告するなどし,それらが各貸主との間の契約における特約条項に違反していたこと及びその結果,一括繰上償還を要求されたことは上記のとおりであるところ,一括繰上償還措置を取られることが村の財政に多大な影響を及ぼすものであることは,容易に予想できたところであるし,上記のように村がその後分割償 一括繰上償還を要求されたことは上記のとおりであるところ,一括繰上償還措置を取られることが村の財政に多大な影響を及ぼすものであることは,容易に予想できたところであるし,上記のように村がその後分割償還の申出をしたことに照らしても明らかである。 したがって,被告は,本件各借入行為を行うに当たって善良な管理者としての注意義務に違反し,地方自治法138条の2の定める長の事務の誠実な管理執行義務に違反したと言うことができるから,本件各借入行為は,財務会計法規に反する違法なものであると認められる。 ・次に,本件隠し口座への預金については,予算に計上しながら翌年度に繰り越すことができなくなった金額を,当該年度において支出したものとして隠し口座に預金することが,違法な公金の支出にあたることは明らかである。これが村の財政に多大な悪影響を及ぼすことも容易に予想できるところであり,被告は,上記と同様,地方自治法138条の2の定める長の事務の誠実な管理執行義務に違反したと言うことができるから,本件隠し口座への預金は,財務会計法規に反する違法なものであると認められる。 2 上記認定事実によれば,本件起債により村に貸し付けられた金員は,本件事業を実施するための予算的手当として借り入れられたものであり,そのうち,現実に用地買収契約あるいは建設工事契約のために支出されなかった金員は,支出されなかったものとして,村の会計に保留され,地方自治法213条上,明許繰越することが許されなくなった2会計年度を経過した時点でそのまま返還されるべきであった。ところが,本件において,支出されなかった金員のうち,合計6億1501万8572円が翌々会計年度以降において,別表記載のとおり支出されたため,村は,上記金員を返還することができなくなっていたところ,繰上償還措置 件において,支出されなかった金員のうち,合計6億1501万8572円が翌々会計年度以降において,別表記載のとおり支出されたため,村は,上記金員を返還することができなくなっていたところ,繰上償還措置を取られ,さらには地方交付税の錯誤措置を取られることとなった。 原告らは,本件事業のために現実に支出された金額と本件起債合計額とを比較した上,支出された金員の79.3パーセントに当たる額は本件借入金によるものであり,さらに,その55パーセントに当たる2億6824万0349円は,本来,地方交付税で肩代わりされる仕組みになっていたが,被告の村長としての上記違法な財務会計上の行為によって取られることとなった繰上償還及び地方交付税の錯誤措置により,地方交付税で肩代わりしてもらうことができなくなり,村が上記2億6824万0349円の損害を被った旨主張する。 しかしながら,地方交付税(普通交付税)とは,普通地方公共団体の基準財政需要額が基準財政収入額をこえる額などについて,地方交付税法に基づいて,普通地方公共団体に対して交付されるものであり(同法10条1項,同条2項参照),直接的には,特定の事業のための費用の何パーセントを地方交付税によって賄うという関係にない。また,証拠(甲9,10)及び弁論の全趣旨によれば,平成12年度において,地方交付税(普通交付税)の錯誤措置を取られたのは,それ以前の年度において,本件隠し口座への預金が本件事業への支出として計上されていた結果,地方交付税が過大に交付されていたことになったため,同法19条1項に基づき,過大交付分を錯誤として,後年度において交付されるべき地方交付税において調整したことによるものであることが認められる。具体的に言うと,平成12年度は,本来交付を受けるべき地方交付税から1億0328万4 交付分を錯誤として,後年度において交付されるべき地方交付税において調整したことによるものであることが認められる。具体的に言うと,平成12年度は,本来交付を受けるべき地方交付税から1億0328万4000円が差し引かれた形になっているが,それは,過去の年度に過大に交付を受けていたからにすぎず,差し引かれた額が過大に交付を受けた額を上まわるかどうかは不明であるから,損害が発生したとはいえない。したがって,地方交付税の交付を受けられなかったことが損害であるとする原告らの主張を認めることはできない。 3 次に,原告らは,分割繰上償還に伴い発生する利子も損害に含まれると主張するので,以下,本件起債に着目して検討する。 上記認定事実によれば,本件事業は平成5年度から始まったが,用地買収が進まず,予算の執行が困難であることは,平成5年度の段階ですでに明らかになっていた。これは,平成5年度に予算に計上された8120万円のうち8100万円が平成6年度へと明許繰越しになっていることから明らかである。一方,本件起債のうち最初のものは,大蔵省資金運用部からの平成7年3月27日の借入れである。そうすると,本件各借入行為をするよりも相当前の段階で,被告は,当該年度に用地買収が完了しないことを知っていたのであるから,もともと,当初から,本件起債は行うべきものではなかった。ところが,被告は,虚偽の申告をすることによって,本来すべきでない本件各借入れを行い,その後,村は繰上償還を余儀なくされたものである。 そうすると,繰上償還をした金額のうち,元金については,もともと借りてはいけなかったものを返しただけであるから損害にならないといえても,利子については,本件各借入れを行わなければ利子を支払う必要はなかったのであるから,損害に当たるというべきである は,もともと借りてはいけなかったものを返しただけであるから損害にならないといえても,利子については,本件各借入れを行わなければ利子を支払う必要はなかったのであるから,損害に当たるというべきである。したがって,村が繰上償還した金額のうち,利子総額2953万7695円(甲4)は,被告の違法な財務会計上の行為によって村に発生した損害であると認めることができる。 4 以上の次第で,被告の村長としての違法な財務会計上の行為により,村は2953万7695円の損害を被ったが,村は,被告に対する損害賠償請求権の行使を怠っている。したがって,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求は上記金額の限度において理由がある。 第6 結論よって,原告らの請求は,被告が村に対し2953万7695円の損害賠償をすることを求める限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条,65条1項本文を適用して主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官新堀亮一 裁判官倉地康弘 裁判官川畑 裁判官川畑薫 主文 (省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る