主文 一被告が、平成七年一〇月一一日付けでした、別紙物件目録記載の各土地の土地課税台帳に登録された平成六年度の価格に関する審査申出に対し、右各土地の価格を同目録記載の各変更価格とする旨の決定中、同目録記載一の土地の平成六年度の価格につき四億五六三二万円を超える部分、同目録記載二の土地の平成六年度の価格につき五億一九六一万六〇〇〇円を超える部分を取り消す。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一請求被告が、平成七年一〇月一一日付けでした、別紙物件目録記載の各土地の土地課税台帳に登録された平成六年度の価格に関する審査申出に対し、右各土地の価格を同目録記載の各変更価格とする旨の決定につき、右各変更価格のうち、同目録記載の各平成五年度登録価格を超える部分を取り消す。 (本判決における略語は、別紙略語一覧記載のとおりである。)第二事案の概要本件は、本件各土地の固定資産税の納税義務者である原告が、土地課税台帳に登録された別紙物件目録記載の各平成六年度登録価格について、被告が決定した本件各価格に不服があるとして、本件審査決定のうち別紙物件目録記載の各平成五年度登録価格を超える部分の取消しを求めている事案である。 一争いのない事実等 1 当事者及び本件審査決定の経緯は別紙「当事者及び本件審査決定の経緯」記載のとおりである。 2 被告は、評価基準、七割評価通達を取り込んだ取扱要領、時点修正通知及び基準年度に係る比準表等に基づいて、別紙「価格決定の仕組み」及び別紙「価格決定の経緯及び根拠」記載のとおり、本件各価格を算出し、本件審査決定をした。 二争点本件は本件各価格に関する不服であって、争点は、本件各価格の決定手続及びその内容が違法であるか否かにあるが、このうち、事実上の争点は、本件各価格の決定に当たり用い 、本件審査決定をした。 二争点本件は本件各価格に関する不服であって、争点は、本件各価格の決定手続及びその内容が違法であるか否かにあるが、このうち、事実上の争点は、本件各価格の決定に当たり用いられた標準宅地の価格が適正であるかどうかである。 本件における法律上、事実上の争点についての原告の主張は、別紙原告の主張(一)ないし(三)記載のとおりであり、被告の主張は、別紙被告の主張(一)、(二)-イ、(三)記載のとおりである。 第三当裁判所の判断一 「適正な時価」の意義、「適正な時価」の算定基準日、評価基準による評価と客観的時価との関係、登録価格の違法に関する判断の枠組み及び訴えの利益についての当裁判所の判断は、別紙「適正な時価と登録価格の違法判断の枠組み」記載のとおりである。 二本件標準宅地イの価格の適正さについての当裁判所の判断は、別紙「本件標準宅地イの価格について」記載のとおりである。 三本件各土地の適正な時価について右二のとおり、本件標準宅地イの路線価を八一一万点とし、前記の被告の算出方式に当てはめて、本件各土地の適正な時価を求めると、別表J1記載のとおり、本件土地一につき四億五六三二万円、本件土地二につき五億一九六一万六〇〇〇円となる。 第四結論以上の次第で、原告の本訴請求は、本件審査決定中、本件土地一の平成六年度の価格につき四億五六三二万円を超える部分及び本件土地二の平成六年度の価格につき五億一九六一万六〇〇〇円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第二部裁判長裁判官富越和厚裁判官團藤丈士裁判官水谷里枝子別紙略語一覧左に掲げる略称の意義は、それぞれ次のとおりである。 一本件各土地別紙物件目録記載 決する。 東京地方裁判所民事第二部裁判長裁判官富越和厚裁判官團藤丈士裁判官水谷里枝子別紙略語一覧左に掲げる略称の意義は、それぞれ次のとおりである。 一本件各土地別紙物件目録記載の各土地をいい、右各土地を個別に表示するときは、同目録記載の番号を付して「本件土地一」というように表示する。 二都知事東京都知事をいう。 三登録価格土地課税台帳に登録された価格をいう。 四本件各価格別紙物件目録記載の各土地の平成六年度変更価格をいう。 五本件審査決定本件において被告がした審査決定をいう。 六法地方税法をいう。 七条例東京都都税条例(昭和二五年八月二二日東京都条例第五六号)をいう。 八評価基準固定資産評価基準(昭和三八年一二月二五日自治省告示第一五八号)をいう。 九取扱通達自治事務次官依命通達「固定資産評価基準の取扱いについて」(昭和三八年一二月二五日自治乙固発第三〇号)をいう。 一○ 取扱要領東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領(昭和三八年五月二二日主課固発第一七四号主税局長通達)をいう。 一一比準表東京都土地価格比準表をいう。 一二評価基準等評価基準、取扱要領及び比準表をいう。 一三七割評価通達 「固定資産評価基準の取扱いについて」の依命通達の一部改正について」(平成四年一月二二日自治固第三号)をいう。 一四時点修正通知 「平成六年度評価替え(土地)に伴う取扱いについて」(平成四年一一月二六日自治評第二八号)をいう。 一五本件標準宅地イ別紙標準宅地目録記載イの標準宅地をいう。 一六価格決定資料イ本件標準宅地イの評価の資料とされた東京都中央都税事務所固定資産税課長作成の「当該標準宅地の価格について」と題する書面(乙第七号証)をいう。 一七本件鑑定評価書イ価格決定資料イに含まれる不動産鑑定 件標準宅地イの評価の資料とされた東京都中央都税事務所固定資産税課長作成の「当該標準宅地の価格について」と題する書面(乙第七号証)をいう。 一七本件鑑定評価書イ価格決定資料イに含まれる不動産鑑定士作成の本件標準宅地イに係る鑑定評価書(乙第一五号証)をいう。 一八意見書イ本件鑑定評価書イの作成者である不動産鑑定士作成に係る「平成六基準年度にかかる不動産鑑定評価書の時点修正率について(回答)」と題する書面(乙第一七号証)をいう。 一九公示地価・相続税路線価比較表被告指定代理人作成の乙第一〇号証の一、二をいう。 以上別紙当事者及び本件審査決定の経緯一原告は、本件各土地の所有者であり、本件各土地の固定資産税の納税義務者である。 二都知事は、本件各土地に対する平成六年度の固定資産税の評価額を別紙物件目録記載の各平成六年度登録価格のとおり決定し、これを固定資産課税台帳に登録し、平成六年四月二四日まで縦覧に供した。 三原告は、右各登録価格につき、法定の期間内である平成六年四月二二日、被告に対し、法四三二条一項の規定により、審査の申出をなし、同日受理されたが、被告は右審査申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定を行わないので、原告は法四三三条八項に基づき、被告が原告の右審査申出を却下する旨の決定をなしたものとみなし、平成七年六月二八日、本件訴えを提起した。 四被告は、本件訴え提起後の平成七年一〇月一一日、本件各土地の平成六年度の価格を別紙物件目録記載の各変更価格のとおりとし、原告のその余の審査申出を棄却する旨の本件審査決定をした。 以上別紙価格決定の仕組み一市町村長(法七三四条一項により特別区においては都知事をいう。)は、法四〇三条一項により、法三八八条一項に定める評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならな 上別紙価格決定の仕組み一市町村長(法七三四条一項により特別区においては都知事をいう。)は、法四〇三条一項により、法三八八条一項に定める評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならないものとされている。そして、特別区においては、評価基準及びこれに基づいて定められた取扱要領(乙第五号証)により、固定資産(土地)の評価を行っている。 二宅地の評価概要は、次のとおりである(評価基準第一章第三節及び取扱要領)。 1 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数に評点一点当たりの価額を乗じて各筆の宅地の価格を求める方法によるものとする。 2 各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によって付設する。 「市街地宅地評価法」とは、いわゆる「路線価方式」といわれるものであり、次の順序により行う。 (一) 用途地区を区分する。 (二) 各用途地区について、その状況が相当に相違する地域(状況類似地区)ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定する。 標準宅地の選定に当たっては、原則として当該用途地区の用途と同一の用途に供され、主要な街路のみに接し、形状が矩形で、奥行き、間口等が当該用途地区から見て標準的なものであることに留意する。 (三) 標準宅地について、地価公示法による地価公示価格、国土利用計画法施行令による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格を活用して、適正な時価を求める。これに基づいて当該標準宅地の沿接する街路について路線価を付設し、これに街路条件、交通・接近条件、環境条件及び行政的条件を比準して、その他の街路の路線価を付設する。 (四) 路線価を基礎とし、画地計算法を適用し て当該標準宅地の沿接する街路について路線価を付設し、これに街路条件、交通・接近条件、環境条件及び行政的条件を比準して、その他の街路の路線価を付設する。 (四) 路線価を基礎とし、画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設する。 別紙価格決定の経緯及び根拠一本件各土地の地目本件各土地の登記及び現況地目はいずれも宅地であり、主として市街地的形態を形成する地域における宅地に該当するから、市街地宅地評価法により評価した。 二本件各土地が属する地域の用途地区区分本件各土地の付近は、主として都心又は副都心にあり、店舗が連なり、商業地として高度に発達している地区に該当するから、高度商業地区とした。 三本件各土地は、後述するとおり隣接する<以下略>及び同番<以下略>の土地を合わせて一画地と認定される土地であるが、都知事は、右の高度商業地区について、状況類似地区ごとに区分し、本件各土地の所在する地域の標準宅地をいずれも本件標準宅地イとした(乙第六号証)。 四1 本件標準宅地イに係る適正な時価については、価格調査基準日である平成四年七月一日時点の不動産鑑定価格一四二〇万円(平成四年一月一日時点の不動産鑑定価格一五六〇万円に平成四年七月一日までの地価動向を勘案しマイナス八・九パーセントの時点修正を行ったもの)を活用するとともに、平成五年一月一日までの六か月の地価動向を勘案しマイナス一八・三パーセントの時点修正を行い、その七割程度の価格をもって八一二万円とした(乙第七号証)。 2 右に述べた本件標準宅地イの価格に基づいて、標準宅地に沿接する街路(主要な街路)の路線価八一二万点を付設したものである。 3 都知事は、右に述べた主要な街路の路線価を基礎とし、本件標準宅地イと本件各土地に沿接する街路とを比較し(乙第八号証)、その格差を幅員、連続性等の街路 路)の路線価八一二万点を付設したものである。 3 都知事は、右に述べた主要な街路の路線価を基礎とし、本件標準宅地イと本件各土地に沿接する街路とを比較し(乙第八号証)、その格差を幅員、連続性等の街路条件九三パーセント(乙第九号証一頁、三頁ないし五頁)、最寄駅への距離等の交通・接近条件一〇三パーセント(乙第九号証七頁及び八頁)、商業密度等の環境条件一〇〇パーセント(乙第九号証二四頁、二五頁及び二八頁)、容積率等の行政的条件八二パーセント(乙第九号証三一頁及び三三頁)と算定し、これらを乗じた格差率七九パーセントを主要な街路の路線価に乗じて六四一万点と付設した(別表1の①)。 五1 本件各土地の評点数は、前述した四3の路線価を基礎として、評価基準等に定める画地計算法にしたがって、算出した。 2 評価基準等では、画地の認定は、原則として土地(補充)課税台帳に登録された、一筆の宅地を一画地とするものであるが、例外として、隣接する二筆以上の宅地にまたがり、恒久的建物が存在する土地等については、二筆以上の宅地を合わせて評価するものと規定している(乙第五号証三一頁及び三二頁)。 本件各土地は、隣接する<以下略>及び同番<以下略>の土地を合わせて鉄骨造地上六階建事務所店舗ビルの敷地として利用されているから、隣接する二筆以上の宅地にまたがり恒久的建物が存在する土地として、一画地と評価した。 3 右に述べたことを前提に本件各土地について検討し、当該路線から本件各土地の奥行きは一四・〇メートルと算定し、取扱要領付表1に基づき奥行価格補正率一・〇〇を適用した(乙第五号証三四頁及び七三頁、別表1の②)。 4 以上のことから、本件各土地の評価は、3において算出された基本単価を基に、単位地積当たりの評点を算出した上(別表1の②)、地積を乗じて総評点を求め(別表1の③、④) 頁及び七三頁、別表1の②)。 4 以上のことから、本件各土地の評価は、3において算出された基本単価を基に、単位地積当たりの評点を算出した上(別表1の②)、地積を乗じて総評点を求め(別表1の③、④)、最後に評点一点当たりの価格一円を総評点に乗じて求めた(別表1の⑤、⑥)。 以上別紙原告の主張(一)第一評価時点に関する違法一賦課期日における価格、「適正な時価」の算定基準日固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする(法第三五九条)と定められている。 また、法第三四九条(固定資産税の課税標準)においては、土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格とする、と規定されている。 したがって、基準年度である平成六年度の固定資産税の賦課期日は平成六年一月一日であり、課税標準は、平成六年一月一日における価格(適正な時価。法三四一条五号)である。すなわち、本件における「適正な時価」の算定基準日は、平成六年一月一日である。平成六年度の固定資産税の課税標準たる価格は、平成六年一月一日現在における適正な時価でなければならないのである。 「地方税法は、土地課税台帳等に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているから(法三四九条一項)、右登録価格を算定すべき基準日は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日であり、本件では、平成六年一月一日時点における客観的時価をもって登録価格とすべきである。そして、評価基準の定めも、この理解を前提とするものと解すべきであり、他の時点をもって登録価格の算定基準日とすることはできない」(東京地裁平成八年九月一一日判決)ものといわなければならないのである。 二1 ところが被告は、「賦課期日における価格」として、基準年度の賦課 の時点をもって登録価格の算定基準日とすることはできない」(東京地裁平成八年九月一一日判決)ものといわなければならないのである。 二1 ところが被告は、「賦課期日における価格」として、基準年度の賦課期日(本件では平成六年一月一日)から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とし、右価格をして、「賦課期日における価格」とみなすことまで、許容しているというべきであると主張する。 しかしながら、法は、基準年度に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたものとする(法三四九条一項)と定めており、被告の主張はこの法の明文に反するものである。 仮に被告の主張する評価事務に要する時間が必要であるとしても、それは違法性を阻却するものではない。せいぜい、国家賠償請求事件における責任阻却事由となりうるにすぎないものであり、本件における抗弁事由とはならない。 2 さらに被告は、「平成五年三月三一日、平成六年度評価替えにかかる地方税法の改正が行われたが、この改正法によれば、平成六年度から平成八年度までの価格の上昇による特例措置、平成六年度から平成八年度までの負担調整措置について、いずれも、平成四年七月一日を価格調査基準日とする各都道府県の基準宅地価格を基礎として平成五年度課税標準に対する上昇率を算定し、それにより平成六年度から平成八年度までの課税標準を決定することとされている(同法附則一七条の二及び一八条)。換言すれば、同法は価格調査基準日の価格を基礎として、平成六年度から平成八年度までの固定資産税の課税標準を決定しているのであり、同法が、価格決定の基準日を価格調査基準日であるとしていることは明らかなのである。」と主張する。 しかしなが 基礎として、平成六年度から平成八年度までの固定資産税の課税標準を決定しているのであり、同法が、価格決定の基準日を価格調査基準日であるとしていることは明らかなのである。」と主張する。 しかしながら、およそ法は、その同法附則一七条の二、一八条等を含めて、平成四年七月一日をもって「適正な時価」の算定基準日とするなどとは決して定めていないのである。 すなわち、同法附則一七条の二第一項は、「・・当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき価格を・・・平成五年度課税標準額で除して得た数値・・・」とし、また、同法附則一八条第二項は「前項の「前年度分の固定資産税の課税標準額」とは次の各号に掲・・・をいう。一、平成五年度に係る固定資産税の賦課期日に・・・」としており、いずれも被告が主張するような「平成四年七月一日を価格調査基準日とし、その日の価格を基礎として課税標準を決定している」根拠条文たり得ない。むしろ、同法附則一七条の二、一八条は、固定資産税の賦課期日を基準としたものであることが明らかであり、また、賦課期日が「当該年度の初日の属する年の一月一日とする。」(法三五九条)ことも明らかであって、被告の主張は理由がない。 3 また、被告は「将来の価格変動は鑑定評価の要因とはされていない」ことを理由として、「価格調査基準日における価格を基礎として算定した価格が賦課期日における適正な時価を上回ると見込まれるときは、あらかじめ想定される価格下落率を折り込んで各固定資産税評価額を決定すべき」ではない、と主張する。 しかし、被告は標準宅地の価格評価について、不動産鑑定価格のみを唯一の基礎とはしていないと主張しながら、他方で将来の価格変動については「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」をもち出して、それはできないものとしている。 しかしながら、被告提出の土地鑑定 格のみを唯一の基礎とはしていないと主張しながら、他方で将来の価格変動については「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」をもち出して、それはできないものとしている。 しかしながら、被告提出の土地鑑定書(「当該標準宅地の価格について」、「鑑定評価書」)は、不動産鑑定士による鑑定をベースにしながらも都知事(東京都中央都税事務所固定資産税課長)が独自に標準宅地の価格を決定しているものであり、都知事の価格決定システムは、不動産鑑定一般の理論どおりにはそもそも行われていないのである。 しかるに被告は、不動産鑑定士による鑑定結果で不都合なものは自己都合により不動産鑑定理論によらず変更し、その結論を批判されると不動産鑑定理論上の理由からできないからやむを得ない、という論理で責任転嫁しようとしているのである。 また、鑑定というものは、一定の鑑定時点(通常は過去の時点)における価格を評価するものである以上、将来の価格変動を鑑定評価の要因として含めないことは当然のことであり、むしろ一般的なことである。 しかし、このことと、固定資産税における価格評価が客観的に「適正な時価」でなければならないこととは全く別の問題である。本件における「適正な時価」の算定基準日は、平成六年一月一日であり、仮に評価事務がそれ以前に行われるとしても、その評価の結果は、算定基準日現在において「適正な時価」でなければならないのである。したがって、そのため、評価作業上将来の価格変動をも含めて違法でないようにすること(客観的時価を超えないこと)は当然要請されるべきものである。 三都知事の評価方法とその違法しかるに都知事は、平成四年七月一日を価格調査基準日とする不動産鑑定価格を「活用」し、その価格に対し平成五年一月一日までの六か月間の「時点修正」をわずかに行い、その七割程度の価格をも 法とその違法しかるに都知事は、平成四年七月一日を価格調査基準日とする不動産鑑定価格を「活用」し、その価格に対し平成五年一月一日までの六か月間の「時点修正」をわずかに行い、その七割程度の価格をもって平成五年一月一日時点における価格とし、しかも、右の平成五年一月一日時点における価格をもって、平成六年一月一日現在における価格としているのである。 これには次のような違法が存する。 まず、右価格調査基準日(平成四年七月一日)と、賦課期日(平成六年一月一日)とが離れすぎている。このため、賦課期日における適正な時価を評価することができていない。 また、右価格調査基準日(平成四年七月一日)時点の価格と平成五年一月一日時点の価格との時点修正が適正に行われていない。 そしてさらに何より重要なことは、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの時点修正が全くなされていないことである。これでは、平成六年一月一日ではなく、平成五年一月一日を賦課期日として価格評価を行っているものといわざるを得ない(そしてさらに、右時点修正が適正になされていない結果、実質上一年半も前の平成四年七月一日時点の価格を基準に平成六年度の固定資産税の課税標準が定められているとさえいえるのである。)。 このような評価方法を行っているため、客観的な実態として時価が大幅な下落を続けているにもかかわらず、その実態が評価に全く反映されていないのである。 このような都知事の違法な評価を何ら是正していない本件審査決定には違法が存するものといわなければならない。 第二通達による七割評価の違法について一都知事は、平成六年度の評価替えにあたって、固定資産税の課税標準の基礎となる価格を地価公示価格の七割程度を目標として決定するという大幅な引上げを行ったものである。 しかるに、このような大幅な引上 都知事は、平成六年度の評価替えにあたって、固定資産税の課税標準の基礎となる価格を地価公示価格の七割程度を目標として決定するという大幅な引上げを行ったものである。 しかるに、このような大幅な引上げが、「法律」(憲法八四条)によってではなく、通達に基づいてなされたのである。このような、大幅な課税標準の引上げは、実質大幅増税であり、このような引上げを「法律」によらないで通達で行うことは違法である。 したがって、このような違法な評価を何ら是正することなく適正であるとした本件審査決定は違法である。 二租税法律(条例)主義日本国憲法はその三〇条において、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と規定するとともに、八四条に、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定し、租税法律主義の原則を明示している。租税法律主義は、単に租税の種類及び根拠を法律によって定めることを要求するだけでなく、納税義務者、課税物件、その帰属、課税標準、税率等の課税要件をすべて法律で定めるべきことを要求するものである。そして、課税標準や税率等の改変もまた法律によるべきものとなる(なお、「法律」とは、条例をも含む意味において用いる。)。 この原則によって、国民は経済生活の安定を図ることができ、経済活動の予見可能性が保障されるのである。 三固定資産の価格評価(二割評価)の法規範性固定資産税における固定資産の価格評価は、少なくとも昭和三九年度に現在の固定資産評価制度が実施されて以降、地価公示価格の二割以下程度の一定評価(二割評価)が継続的安定的に固定して行われてきており、それを前提として評価基準や税率等が定められてきたものである。 このように、固定資産の二割評価は、税務行政庁により個々の個 割以下程度の一定評価(二割評価)が継続的安定的に固定して行われてきており、それを前提として評価基準や税率等が定められてきたものである。 このように、固定資産の二割評価は、税務行政庁により個々の個別例外ケースについてではなく、広く一般的・普遍的に実施されていたものであり、しかもそれが三〇年以上もの長い期間にわたって繰り返され、さらにそれが単に税務行政庁の側だけでなく、広く一般国民の間にも法的意識を生ぜしめ、一般の法的確信を得て法規範にまで高められたものであるから、これを慣習法の一種としての行政先例法としてとらえることができるのである。 すなわち、二割評価は、税務行政庁により長年にわたって実施され、公権的に一定の解釈・見解として公表・施行されてきたものであり、かつ納税者を中心とする国民の側においてもその取扱い(行政実例)が異議なく了承され国民の信頼を得、それが国民の経済活動の基準の前提要素として機能し、収益予測・経営予測等の前提条件として確立する等規範的意識となる程に至り、もって、それが正しい法律の解釈として法的確信にまで高められるようになったものであるから、これを慣習法としての行政先例法としてとらえることができるのである(田中二郎、租税法新版・有斐閣法律学全集、九三、九四頁参照)。 したがって、二割評価には法規範性を認めることができるのである。 このように法三四九条(固定資産税の課税標準)にいう「価格」、及び法三四一条五号の「適正な時価」とは、地価公示価格の二割評価の価格であるとする慣習法が存するのである。 なお、東京地裁平成八年九月一一日判決は、七割評価通達に関する判断において「客観的時価に比して著しく低い価格をもって適正な時価とすべきことが規範的意識となる程に慣習化していたと認定することはできず、・・・」とするが、公示価格を 日判決は、七割評価通達に関する判断において「客観的時価に比して著しく低い価格をもって適正な時価とすべきことが規範的意識となる程に慣習化していたと認定することはできず、・・・」とするが、公示価格をべースとする客観的時価に対する二割評価をもって固定資産税における価格(法三四一条五号にいう「適正な時価」)とすべきことは右のとおり規範的意識となる程に慣習化していたものというべきであるから、二割評価は法規範そのものにまで高められていたものというべきである。 四二割評価の変更手続以上のように、二割評価は、法規範性を有するものであるから、その引上げは法律改正手続を要するものといわなければならない。 しかるに、このような手続によらないで、単に通達のみでこれを変更(引上げ)することは違法であり、租税法律主義(憲法三〇条、八四条)に反するものである。 五七割評価(価格評定)の違法また、仮に二割評価が法規範性を有する程度に至っていないとしても、固定資産税の課税要件の中で最も重要な課税標準の基礎となる評価額が、法律の改正手続を伴わずに突然一片の通達のみでなされたということのみならず、その価格評定においてそれまでの長年にわたる取扱いである二割から急拠七割へという著しく大幅な引上げがなされたということは、租税法律主義の趣旨からして許されないものといわなければならない。長年二割評価において課税が実施されてきたものが、突然七割評価の課税に変更されるということは、単なる価格評価の数的変更というレベルを越えて、実質は課税標準そのものの変更というべきものであり、租税法律主義の趣旨に反するものである。 また、このような七割評価通達、及びそれにもとづく価格評定は、納税者を中心とする国民の経済生活の安定を著しく害し、かつ経済活動の予見可能性を破壊するものであって、 主義の趣旨に反するものである。 また、このような七割評価通達、及びそれにもとづく価格評定は、納税者を中心とする国民の経済生活の安定を著しく害し、かつ経済活動の予見可能性を破壊するものであって、違法である。 以上別紙原告の主張(二)第一本件各土地の評価についての違法一本件標準宅地イの価格評価仮に都知事の価格調査基準日を前提として考えたとしても、その価格の評価につき次の違法が存する。 都知事は、「本件標準宅地に係る適正な時価について、価格調査基準日である平成四年七月一日時点の不動産鑑定価格一四、二〇〇、〇〇〇円を活用」(「決定書」七頁ア)しているが、右鑑定価格一四、二〇〇、〇〇〇円は右価格調査基準日時点における適正な時価をはるかに上回るものであり「適正な時価」とはいえないものである。 また、都知事が右鑑定価格に「平成五年一月一日までの六ヶ月の地価動向を勘案し、マイナス一八・三パーセントの時点修正を行」ったのに対し、被告もこの減少率をそのまま是認しているが、この間における本件標準宅地イ類似の土地の地価下落はこれよりはるかに大きいものであり、右時点修正率は適正を欠くものである。 二七割評価都知事は「その七割程度の価格をもって八、一二〇、〇〇〇円としている。」(右時点修正後の価格の一律七割評価)が、この形式的、画一的な七割評価はその内容においても合理性を欠き、また具体的妥当性を欠くものである。 三この本件標準宅地イの価格に基づいて主要な街路の路線価が付設され、さらにその路線価に基づいて本件各土地の評価も決定されていくわけであるから、本件標準宅地イの価格算定の誤りは、そのまま本件各土地の価格評価の誤りとなるものといわなければならない。 このように、これらを前提とする本件各価格もまた、適正な時価をはるかに上回る価格であ から、本件標準宅地イの価格算定の誤りは、そのまま本件各土地の価格評価の誤りとなるものといわなければならない。 このように、これらを前提とする本件各価格もまた、適正な時価をはるかに上回る価格であり、違法なものといわなければならない。 そして、このような違法な評価を何らの是正することなく適正であるとした本件審査決定は違法であり、取消されなければならない。 第二乙第七号証(「当該標準宅地の価格について」、「標準宅地鑑定価格時点修正率算定表」、「鑑定評価書」、及び「時点修正率について」)の不正確性について一被告は本件標準宅地イの価格について、「当該標準宅地に係る適正な時価については、価格調査基準日である平成四年七月一日時点の不動産鑑定価格一四、二〇〇、〇〇〇円を活用するとともに、平成五年一月一日までの六か月の地価動向を勘案しマイナス一八・三パーセントの時点修正を行い、その七割程度の価格をもって八、一二〇、〇〇〇円とした(乙七号証)。」と主張する。 そこで以下、本件標準宅地イの価格評定の基礎となった平成四年一月一日時点の右不動産鑑定価格を算出した「鑑定評価書」、平成四年一月一日から平成四年七月一日までの時点修正率なるものを算出した「標準宅地鑑定価格時点修正率算定表」、及び平成四年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率を算出した「当該標準宅地の価格について」「時点修正率について」(いずれも乙第七号証)の不正確性、信用性の低さについて主張する。 二取引事例比較法について 1 取引事例比較法における時点修正率について(乙第七号証五枚目)本鑑定においては、取引事例比較法を中心に鑑定価格を算定している。 この取引事例比較法における時点修正について検討する。 取引事例d(中央区<以下略>)の時点修正について本鑑定は、取引時点平成二年一二 定においては、取引事例比較法を中心に鑑定価格を算定している。 この取引事例比較法における時点修正について検討する。 取引事例d(中央区<以下略>)の時点修正について本鑑定は、取引時点平成二年一二月二六日から平成四年一月一日までの時点修正をマイナス七・〇パーセント(一〇〇分の九三)としている。 しかし、この時点修正率は、本鑑定書記載の右取引事例地最寄りの標準地(中央五-一)(乙第七号証九枚目左下)の下落率七・九三パーセント(平成三年の地価公示価格一四、〇〇〇、〇〇〇円を平成二年の地価公示価格一四、〇〇〇、〇〇〇円で割って算出した下落率〇パーセントを日割計算(三六五日分の五日)したものと、平成四年の地価公示価格一二、九〇〇、〇〇〇円を平成三年の地価公示価格一四、〇〇〇、〇〇〇円で割って算出した下落率七・八六パーセントを日割計算(三六五日分の三六五日)したものと、平成五年の地価公示価格九、四〇〇、〇〇〇円を平成四年の地価公示価格一二、九〇〇、〇〇〇円で割って算出した下落率二七・一三パーセントを日割計算(三六六日分の一日)したものの合計)に対して不当に少なく認定されている。 なお、被告は取引事例地を開示せずに時点修正率について反論しているがこれは全く無意味である。 また被告は「しかも、不動産鑑定価格は、鑑定評価書から明らかなように、一つの取引事例ではなく三つの取引事例を総合的に勘案して評価するところ、原告はこのうち一取引事例の時点修正率のみを問題にしているにすぎないから、他の時点修正率は妥当ないし大きく修正しすぎていることを自認しているといえる。とすれば、結論に大きな影響は認められないから、これをして本件標準宅地の価格評価に誤りが存するとの原告の主張が失当であることは明らかである。」と主張する。 しかしながら、原告が取引事例dのみしか反 とすれば、結論に大きな影響は認められないから、これをして本件標準宅地の価格評価に誤りが存するとの原告の主張が失当であることは明らかである。」と主張する。 しかしながら、原告が取引事例dのみしか反論していない理由は、本件標準宅地イについては、被告からの取引事例地に関する開示が不十分で、取引事例地dしか一応の地点特定ができないためである。 他の取引事例地b、eについては、取引事例地が何丁目の所までしかわからないため、近くの公示地(基準地)を特定することができず、部分的にせよ検証がなしえなかったものである。原告としては、被告が取引事例地を開示しないために検証ができないだけであり、その時点修正率の妥当性を自認したなどということでは決してない。 2 事情補正について本鑑定においては、三取引事例とも事情補正が全くなされていない(一〇〇分の一〇〇)。 しかし、これらの取引について事情補正要素は当然存したものであり、何ら補正を行っていない本鑑定は不正確である。 原告としては、被告から取引事例地の「所在地」が開示されないため、事情補正要素の個別検証がなしえないが、右取引事例の地域、取引の時期に鑑み、むしろ事情補正要素が存したであろうと強く推認されるものである。 また、本鑑定における取引事例比較法を採用して求めた価格は、収益還元法を採用して求めた価格に比して大幅に高く、この点からも適正なる事情補正がなされなかったことが明らかである。 なお、原告の主張は、被告のいうような「収益還元法により求めた価格が適正な価格であることを前提とする主張」ではない。一般に、取引事例比較法によって求めた価格に比して、収益還元法によって求めた価格が低くなる傾向があるが、それをふまえてもなお本件については、その格差があまりに異常に大きいため、売買取引に関して特別の事情 、取引事例比較法によって求めた価格に比して、収益還元法によって求めた価格が低くなる傾向があるが、それをふまえてもなお本件については、その格差があまりに異常に大きいため、売買取引に関して特別の事情が存した可能性が高い、と主張しているのである。 三 「鑑定評価書」(乙第七号証三枚目)の価格時点、及び「標準宅地鑑定価格時点修正率算定表」(乙第七号証二枚目)について本鑑定書は、平成四年一月一日の鑑定を流用してそれにわずかに時点修正なるものを加え、それをもって平成四年七月一日の鑑定価格としている。 このように本鑑定は、平成四年一月一日の鑑定価格に、根拠不明な「修正率」なるものを乗じただけで平成四年七月一日時点の鑑定価格としたものである。 このようなものをもって鑑定価格とは言い難い。 そしてさらに重要な問題点は、平成四年一月一日時点の価格を基に(しかも適正な時点修正もなされずに)平成六年一月一日(賦課期日)時点の価格が定められている点である。 四 「時点修正率について」(乙第七号証一二枚目)本鑑定後において、このような再調整をせざるを得ないこと自体が、端的に本「鑑定評価書」(乙第七号証二枚目~一一枚目)の不正確性、信用性の低さを示すものである。 本鑑定後の時期に、一部分についてのみこのような再調整をせざるを得なかったものであり、鑑定評価書の不正確性、信用性の低さを端的に示すものである。 被告は、再調整を行った理由について、「土地基本法一六条の規定の趣旨を・・・」を理由とするが、同法は既に平成元年に施行された法律であり、また、被告が主張する「土地政策審議会答申」(平成二年一〇月二九日付)、「政府税制調査会答申」(平成二年一二月一九日付)、「総合土地政策推進要綱」(平成三年一月二五日に閣議決定)はいずれも本鑑定よりもはるかに早い時期に存在し、 策審議会答申」(平成二年一〇月二九日付)、「政府税制調査会答申」(平成二年一二月一九日付)、「総合土地政策推進要綱」(平成三年一月二五日に閣議決定)はいずれも本鑑定よりもはるかに早い時期に存在し、公表され、なおかつそれらの趣旨のもとに本鑑定等は行われたものであるから、それらは何ら理由とはならないものである。 五まとめ以上のように、乙第七号証の不正確性、信用性の低さは明らかであり、これに基づく本件標準宅地イの価格評価には誤りが存するものといわなければならない。 以上別紙原告の主張(三)[価格自体の違法事由に係る原告の主張]第一本件の標準宅地の価格評定の違法について一まず、「通達」による「七割評価」それ自体の問題点は、ひとまずおくとしても、また、「七割評価通達の趣旨が公的評価制度における価格の一元化を目指すものであって、賦課期日までの時点修正を目的とするものでないとしても、評価基準の適用においては、七割評価による修正を経た価格が賦課期日における標準宅地の適正な時価とされるのであるから、賦課期日における標準宅地の適正な時価の当否は右修正を経た価格について判断されるべきことになる。」(前掲判決)とする考えを前提としても、都知事の本件の標準宅地の価格評定は賦課期日における適正な時価を超えるものであり、違法である。 すなわち、右判決の考え方を前提としても、都知事の本件の標準宅地の価格の評定は、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における価格下落率が三〇パーセントを超えるものであるため、賦課期日である平成六年一月一日時点における適正な時価(客観的時価)を上回るものであるから、違法である。 二以下、本件の標準宅地の価格について、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における下落率が三〇パーセントを超えるもの おける適正な時価(客観的時価)を上回るものであるから、違法である。 二以下、本件の標準宅地の価格について、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における下落率が三〇パーセントを超えるものであることを主張、立証する。 第二下落率三〇パーセント超の立証について一地価公示価格による方法東京都中央区における平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における地価変動率を地価公示価格でみると平均でマイナス三一・六三パーセントとなる(別表A3)。 二相続税路線価を基礎に標準宅地の修正地価公示価格を求め、その下落率を算出する方法本件の標準宅地の地価について、可及的に地価公示価格近似値を求める方法として、相続税の相続税路線価を基礎に「修正地価公示価格」を算出し、その下落率を算出するものである。 すなわち、平成五年と平成六年の各々について標準地公示価格に本件の標準宅地の相続税路線価と標準地の相続税路線価の比率を乗じて、本件の標準宅地の修正地価公示価格を算出し、その平成五年一月一日から平成六年一月一日までの修正地価公示価格の下落率を算出するものである。 標準宅地の修正地価公示価格対標準宅地に近い標準地の公示価格=標準宅地の相続税路線価対標準地の相続税路線価となるから、標準宅地の修正地価公示価格=標準宅地に近い標準地の公示価格×標準宅地の相続税路線価÷標準地の相続税路線価(なお、上記計算方法により求めた修正地価公示価格に〇・八を乗じたものが標準宅地の相続税路線価とほぼ合致するものであり、これは一般に地価公示価格と相続税路線価の割合が一〇対人とされていることからもこの計算方法の正当性を裏付けるものである。)そして、以上のようにして算出された平成五年一月一日時点の修正地価公示価格と、平成六年一月一日時点の修正地 路線価の割合が一〇対人とされていることからもこの計算方法の正当性を裏付けるものである。)そして、以上のようにして算出された平成五年一月一日時点の修正地価公示価格と、平成六年一月一日時点の修正地価公示価格とを比較し、その一年間の下落率を算出したものが別表A1「標準宅地の修正地価公示価格の下落率」である。 三東京都基準地価格による方法東京都基準地価格は、国土利用計画法施行令にもとづき東京都が毎年一回七月一日を価格時点として基準地の価格調査を実施し、公表したものである。これに対し、地価公示価格は、地価公示法にもとづき毎年一月一日を価格時点とし、その「標準地」も「基準地」とは必ずしも一致しないため両者を無条件で直接比較することは適切でない。 しかしながら、基準地も標準地と同じく近隣地域(標準地を含む地域で、商業地等当該標準地の用途と土地の用途が同質と認められるまとまりのあるものをいう。)内で土地の利用状況、環境、地積、形状等について標準的な画地が選定されており、近隣地域の標準的な画地の価格水準を示すものであるから、中央区内におけるこれらの価格は、本件の標準宅地の価格を算定する場合の基礎となるべきものである。そして、中央区内において公示価格の標準地と東京都基準地とが同一の地点が三地点存するから、これを基礎にして、平成四年七月一日から平成五年一月一日までと、平成四年七月一日から平成六年一月一日までの平均下落率を計算し、これに各基準地の平成四年七月一日の基準地価格を乗じて、平成五年一月一日と、平成六年一月一日の基準地の価格(仮定値)を算出した数値は本件の標準宅地の価格算定の基礎となるものである。これらをまとめたものが「東京都基準地価格(七月一日)と平成五年一月一日・平成六年一月一日の仮定値との比較表」(別表A4)である。 具体的計算方法 本件の標準宅地の価格算定の基礎となるものである。これらをまとめたものが「東京都基準地価格(七月一日)と平成五年一月一日・平成六年一月一日の仮定値との比較表」(別表A4)である。 具体的計算方法は別表A2のとおりである。 第三被告の「原告の主張の論理的陥穽および下落率算出方法の不合理性」に対する反論一同2について同①、②は漠然としていて何ら反論になっていない。 同③は、前記第一、で述べたように、法(四〇三条一項、三八八条一項)が個々の土地の固定資産税評価額の算出について、標準宅地価格をベースとして算出するシステムをとっていることを無視するものであり、失当である。 二同3について被告は、同(二)②において「原告の主張する公示価格に当該標準宅地の相続税路線価と標準地の相続税路線価の比率を乗ずる手法は、被告の標準宅地の正面路線と当該土地の正面路線において格差率を乗ずる方法に準ずるものと解されるが、原告の方法によると基本的に一定であるべき格差率が毎年変動することになり妥当性を欠くこと」と反論するが、これは前提となる原告の「相続税路線価を基礎に標準宅地の修正地価公示価格を求め、その下落率を算出する方法」を正しく理解していないものである。原告の右主張、立証方法は、「格差率」とは全く異なるものである。原告の右主張等は、本件の標準宅地の適正な時価算出に関するものであるが、「格差率」は、本件の標準宅地の価格をもとに本件各土地価格を算出する場合に適用するものであって、両者は適用の場面を全く異にするものである。 三同4「原告の主張の論理的陥穽その一」についてこれもその前提においてそもそも誤っている。原告の右主張は、平成五年一月一日現在における被告の算定した価格が正しいと仮定しても、平成六年一月一日までの下落率が三〇パーセント超であるから、 についてこれもその前提においてそもそも誤っている。原告の右主張は、平成五年一月一日現在における被告の算定した価格が正しいと仮定しても、平成六年一月一日までの下落率が三〇パーセント超であるから、七割評価をとっても違法となる、とする論理である。すなわち、被告の平成五年一月一日時点の被告の算定価格を一〇〇とした場合、その後の平成六年一月一日までの下落率が三〇パーセント超であり、七〇を下回るから違法となる、とするものである。 また、これらの被告の主張は、本件各土地の価格が適正な時価であるとの被告の主張と矛盾するものである。 四同5「原告の主張の論理的陥穽その二」についてこれは前述のように、法(四〇三条一項、三八八条一項)、固定資産評価基準による価格評価システムそのものを曲解するものであり、失当であるといわなければならない。 第四被告の「『適正な時価』の合理的算出方法とは」に対する反論一1 被告のこの主張は被告自ら「適正な時価」概念を放棄・無視するものであるといわなければならない。 また、被告は一方で「公的価格の一元化の要請(土地基本法一六条)より、地価公示、相続税評価及び固定資産税評価の公的土地評価については、相互の均衡と適正化が図られている」(同項3(一))と主張しながら、ここでは公的土地価格の相対性を主張し、その主張は一貫しないばかりでなく、相反するものである。 なお、仮に土地価格に関連する諸立法の中において「時価」概念の相対性があるとしても、少なくとも法「第三章、第二節固定資産税」においては、「価格」は「適正な時価」であり(同法三四一条五号)、「時価」概念は一義的に定められているものである。 また、路線価方式等は、多量の評価事務を処理するための方法として認められており、一定の評価基準方式に従って評価作業を行う方法自体は認め 一条五号)、「時価」概念は一義的に定められているものである。 また、路線価方式等は、多量の評価事務を処理するための方法として認められており、一定の評価基準方式に従って評価作業を行う方法自体は認められているとしても、その方式によりさえすればその評価結果が時価を超えてもかまわない(違法の問題を生じない。)というものでは決してない。 あくまで、客観的にみて時価を超えた評価は違法となるのである。 そして、各市町村間の調整手続もその間における不平等を是正するためのものにすぎず、時価を超えた評価を適法として認めるものではないことはいうまでもない。 2 被告は、「『適正な時価』と認めることが社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合にかぎり、右評価額は違法な価格になる」と主張するが、このような「適正な時価」概念は、およそ「時価」概念と相入れず、法三四一条五号を全く無視するものである。 また、被告主張によると、都知事は価格評価について極めて広範な自由裁量権をもつことになり、その裁量権の濫用にあたるようなごく例外的な場合でない限り、違法の問題を生じない、ということになってしまうものであり、被告の主張は法(三四一条五号等)に反するものといわなければならない。 二また、被告は、本件の標準宅地の価格(下落率)と本件各土地の価格(下落率)とは別個のものであるから、本件の標準宅地の下落率は関係ないと主張する。 しかし、この被告の主張は、法が固定資産評価基準によって個々の固定資産の価格を決定するシステム(固定資産評価基準に従って標準宅地の選定・標準宅地の適正な時価の評価をなし、それをもとに路線価を付設し、さらに画地計算法をあてはめて個々の土地の価格を算出する方式)をとっていることと相反するものである。 (同法四〇三条一項、三八八条一項)。 また、この被告 価の評価をなし、それをもとに路線価を付設し、さらに画地計算法をあてはめて個々の土地の価格を算出する方式)をとっていることと相反するものである。 (同法四〇三条一項、三八八条一項)。 また、この被告の主張は、被告の本件各土地の価格決定システムについての主張とも矛盾するものである。 第五訴えの利益に係る原告の反論一 「推定評価額」について被告は「被告は、原告の主張する下落率、当該標準宅地に沿接する路線の相続税路線価の対比による下落率、当該土地に沿接する路線の相続税路線価の対比による下落率等を総合的に勘案して、各路線についてもっとも低く見積もった路線価を基準に推定評価額を求め税額を算定したところ、被告の決定した固定資産税評価額に基づく税額(固定資産税額と都市計画税の平成六年度から平成八年度までの合計)と変わらないことが判明した。」と主張する。 この被告のいう「推定評価額」なるものが、どのような評価基準・手法、数値等にもとづいて算定されたのかは不明であるが、しかし、少なくとも明らかなことは、これが本件各価格とは、異質のものであることである。 被告が、本件各価格の他に、なぜ右のような「推定評価額」なるものを作出せざるを得ないのか、はなはだ疑問である。 二 「訴えの利益」について被告の主張内容は、固定資産税に関する法の不服申立システムを否定し、無視するものであって失当である。 1 法は、固定資産税に関する不服申立システムとして、(価格評価を含む)税額そのものを争うシステムをとっていない。すなわち、法は、固定資産税に関する不服については、固定資産課税台帳に登録された事項(登録価格)について、固定資産評価審査委員会への審査申出(法四三二条一項、三八一条一項)、さらにはその取消訴訟(法四三四条)、という不服申立の制度を定めており、併せて固定資産 税台帳に登録された事項(登録価格)について、固定資産評価審査委員会への審査申出(法四三二条一項、三八一条一項)、さらにはその取消訴訟(法四三四条)、という不服申立の制度を定めており、併せて固定資産税の賦課についての不服申立てにおいては、登録価格に対する不服を理由とすることはできない、としているのである(法四三二条三項)。 つまり、「登録価格及び課税標準額を記載した土地課税台帳は、関係者の縦覧に供され(法四一五条)、登録価格について不服のある納税者は、縦覧期間の末日後一〇日までの間に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をすることができ(法四三二条一項、三八一条一項)、さらにこの決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。 なお、登録価格に対する不服は右の方法に限られ(法四三四条二項)、固定資産税の賦課に対する不服申立てにおいては、登録価格に対する不服を理由とすることはできない(法四三二条三項)。 すなわち、登録価格に関する不服は、固定資産評価審査委員会に対する不服審査のみに限られ、審査決定のみが訴訟の対象となり、原処分である登録価格決定の取消しを訴求することはできず、また、登録価格に関する不服は賦課処分に対する不服とは別の登録価格の額のみに関するものとして位置付けられている。」(東京地裁平成八年九月一一日判決)のである。 このように、法は(価格評価を含む)固定資産税の不服については、税額でなく登録価格そのものを争う制度をとっており、本件取消訴訟もその枠内にあるものである(法四三四条一項、二項)。 しかるに、被告の主張は、このような法の固定資産税に関する不服申立の制度を否定、無視するものであって、失当である。 2 また、仮に、個別具体的な固定資産税額、都市計画税額に変更を生じない場合であったとしても、その他の 張は、このような法の固定資産税に関する不服申立の制度を否定、無視するものであって、失当である。 2 また、仮に、個別具体的な固定資産税額、都市計画税額に変更を生じない場合であったとしても、その他の法律関係、例えば登録免許税、あるいは民事訴訟費用等に関する法律(本件各土地に関する訴訟提起時における訴状に貼用すべき収入印紙額。平成六年四月一日から当分の間固定資産税評価額の二分の一とされているがそれでも変更あり。)の関係においては、変更が生じ、具体的な経済的損害を生ずることは明らかであるから、仮に被告の考えをとったとしても本件訴訟における訴えの利益は存するものである。 以上別紙被告の主張(一)第一問題の所在一原告は、本件各土地に関し都知事が決定した価格について、右決定には、①「法律」によらずに通達に基づいて評価額を大幅に引上げたこと、②評価時点を平成五年一月一日としたことの二点の違法が存するから、取消を免れない旨主張する。 二しかし、以下に述べるように、①法令の根拠に基づいて、固定資産税評価額が決定されたことは明らかであるし、②賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の当該土地の時価を基準として、賦課期日における当該土地の価格を求めることを法は当然に予定しているというべきであるから、これら二点に何ら違法なところはなく、原告の主張は失当である。 第二固定資産税評価額は適正な時価が原則であること一都知事は、平成四年一月二二日付けで「七割評価通達」を受けた。七割評価通達によると、「宅地の評価にあたっては、地価公示法(昭和四四年法律第四九号)による地価公示価格、国土利用計画法施行令(昭和四九年政令第三八七号)による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格(以下「鑑定評価価 年法律第四九号)による地価公示価格、国土利用計画法施行令(昭和四九年政令第三八七号)による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格(以下「鑑定評価価格」という。)を活用することとし、これらの価格の一定割合(当分の間この割合を七割程度とする。)を目途とすること」とされた。都知事は、七割評価通達を受けて、平成六年度の土地の評価替えにあたったものである。そこで、七割評価通達の内容が法の規定に合致しているかをはじめに検討することとする。 二1 法は、三四一条五号において、固定資産税における価格とは「適正な時価」をいうと規定している。そしてその「適正な時価」とは、現実の売買実例価額から不正常な要素に基づく価額を除去してえられる価格を、換言すれば、正常な条件の下において成立する取引価格をいうとされる(評価基準第一章第3節宅地二(一)3(1)、七割評価通達第2章第1節1)。 2 ところで、公的な土地評価には、固定資産税評価額の外に、地価公示価格、都道府県地価調査価格及び相続税路線価が存する。そこで、次に固定資産税評価額とその他の公的土地評価との異同について検討する。 3(一) 地価公示価格とは、一般の土地取引の指標とされるもので毎年一月一日の時点で評価され三月下旬ころに公表される価格である。右価格は、地価公示の標準地(全国二万六〇〇〇地点)について二人以上の不動産鑑定士(もしくは鑑定士補)による鑑定評価を受け、その結果を土地鑑定委員会(国土庁に設置)で審査、調整を行って「正常な価格」を判定した上で、公表される価格である(地価公示法二条一項)。 (二) 都道府県地価調査価格とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するためのもので、地価公示価格と同様に一般の土地取引の指標に使用される価格 である(地価公示法二条一項)。 (二) 都道府県地価調査価格とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するためのもので、地価公示価格と同様に一般の土地取引の指標に使用される価格である。右価格は、毎年七月一日の時点で評価され九月下旬ころに公表される価格である(国土利用計画法施行令九条)。 なお、都道府県地価調査価格は、基本的に、地価公示価格とほぼ一体となって用いられるものであるから、地価公示価格に準じて取り扱うこととする。 (三) 相続税路線価とは、相続税や贈与税の申告に際して用いられるもので、毎年一月一日の時点で評価され七月ないし八月ころに公表される価格である。右価格は、取得の時における「時価」によるものとされ、国税庁が評価する価格である(相続税法二二条)。 4 このように地価公示価格においては「正常な価格」が、相続税路線価においては「時価」が、それぞれの土地評価の基準とされている。右にいうその意義は次のとおりである。 (一) 地価公示価格における「正常な価格」とは、土地について自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格とされる(地価公示法二条二項)。 (二) 相続税路線価における「時価」とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額とされる(乙第三号証「相続税財産評価に関する基本通達」第1章1(2)時価の意義)。 三1 してみると、右に述べた固定資産税評価額の「適正な時価」と地価公示価格の「正常な価格」及び相続税路線価の「時価」とは、表現こそ異なるもののその意味において大きく異なるところがないことは明らかである。換言すれば、固定資産税評価額の「適正な時価」と地価公示価格の「正常な価格」とは、ほぼ一致するということがいえるのである。 なるもののその意味において大きく異なるところがないことは明らかである。換言すれば、固定資産税評価額の「適正な時価」と地価公示価格の「正常な価格」とは、ほぼ一致するということがいえるのである。 2 右に述べたことを前提に、固定資産税評価額がいかにあるべきかを検討すると、①法は、三四一条五号及び三四九条において、固定資産税評価額は、正常な条件の下において成立する取引価格、すなわち「適正な時価」であると規定していること、②固定資産税評価額の「適正な時価」と地価公示価格の「正常な価格」とは、ほぼ一致することより、そもそも法は固定資産税評価額を地価公示価格(これはおおむね時価と理解される。)と一致させることまで許容しているというべきである。 3 そうだとすれば、七割評価通達を契機として平成六年度の評価替えの際に本件各土地の固定資産税評価額が引上げられたとしても、通達の内容が法令の正しい解釈に合致するものである以上、本件各土地の登録価格の決定が法令の根拠に基づいてなされた適法なものであることは明らかである(最高裁昭和三三年三月二八日判決・民集一二巻四号六二四頁)。 4 もっともこれに対して、原告は、たとえ法律に通達の内容が合致するとしても、固定資産税について昭和三九年度以降三〇年以上にわたりいわゆる「二割評価」が広く一般的に実施されていた以上、一般国民の間にもいわゆる「二割評価」が法的確信にまで高められ慣習法として成立していたと認められるから、通達に基づいて評価額を引き上げることは租税法律主義に違反すると主張するようである。 5 しかし、①国民に納税義務を定める租税法においてそもそも慣習法の成立する余地はないこと、②地価公示価格と固定資産税評価額との比較から明らかなように、地価公示価格と固定資産税評価額の割合は、昭和五〇年代には約七〇パーセント、 定める租税法においてそもそも慣習法の成立する余地はないこと、②地価公示価格と固定資産税評価額との比較から明らかなように、地価公示価格と固定資産税評価額の割合は、昭和五〇年代には約七〇パーセント、場所によっては一〇〇パーセント近い地点も存したのであるから、原告の主張するように「固定資産税評価額は公示価格の二割以下である」との法的確信が過去三〇年以上にわたり国民に形成されていたとはとうてい認めがたいこと、③固定資産税評価額は、地価公示価格の二割以下とする旨の通達又は原告への言明・教示は存在しなかったこと、④法的安定性、法予測可能性は、あくまで固定資産税評価額についてではなく、税額について問題とされるべきところ、税額に関しては負担調整措置の導入等により、緩やかに変化するように規定されたから、法的安定性等は侵害されていないことより、原告の主張は妥当性を欠くというべきである。 四1 こうした帰結は、次に述べるような経緯からしても肯定することができる。 2 すなわち、昭和五八年ころ都心部の商業地に端を発し全国に急速に広まった地価高騰は、金融緩和ともあいまって投機的土地取引を誘発し、深刻な社会問題を生じさせた。 3 このような状況の下、平成元年一二月、適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な時価の形成を図ることを目的とする「土地基本法」が制定された。そしてその一六条において、「公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする」と規定されている。 次いで、平成二年一〇月二九日付けの土地政策審議会答申において、「地価公示、相続税評価及び固定資産税評価の公的土地評価については、相互の均衡と適正化を図るべきであり、その際、国民が理解しうるよう明確かつ具体的に推進する必要がある」旨明記されている。 さらに、平成二年一二月一九 評価及び固定資産税評価の公的土地評価については、相互の均衡と適正化を図るべきであり、その際、国民が理解しうるよう明確かつ具体的に推進する必要がある」旨明記されている。 さらに、平成二年一二月一九日付け政府税制調査会答申において、「平成六年度以降の評価替えにおいては、土地基本法第一六条の規定の趣旨等も踏まえ、速やかに、地価公示価格の一定割合を目標に、評価の適正化・均衡化を推進すべきである」とされ、また平成三年一月二五日に閣議決定された総合土地政策推進要綱では、「固定資産税評価について、平成六年度以降の評価替えにおいて、土地基本法第一六条の規定の趣旨を踏まえ、相続税評価との均衡にも配慮しつつ、速やかに、地価公示価格の一定割合を目標に、その均衡化・適正化を推進する」としている。 4 このように土地基本法の規定や一連の答申及びそれに基づく要綱は、何ら条件を付さずに、繰り返し公的土地評価の均衡と適正化を図ることを強調している。このことは、固定資産税評価額と地価公示価格(これはおおむね時価と理解される。)との均衡を図る上で何ら制約を課していないことを意味している。 すなわち、右規定や一連の要綱・答申は、地方税法が固定資産税評価額を地価公示価格(これはおおむね時価と理解される)と一致させることまで許容していることを、当然の前提としていることが明らかである。 5 もっともこれに対して、三つの公的土地評価はそれぞれ固有の目的を有しているのであり、地価公示価格が取引を重視した価格であるのに対し、固定資産税評価額は資産の保有継続を前提とした毎年経常的に課される税額の基礎となるから、右理解は従来の経緯を無視した誤りがあると批判されるかもしれない。 6 しかし、①今回の地価高騰を契機に制定された土地基本法及び一連の答申やそれに基づく要綱は、当然にそれぞれが固有の 基礎となるから、右理解は従来の経緯を無視した誤りがあると批判されるかもしれない。 6 しかし、①今回の地価高騰を契機に制定された土地基本法及び一連の答申やそれに基づく要綱は、当然にそれぞれが固有の目的を有していることを理解しながら、その目的を越えて、相互の均衡と適正化を図ろうとしたものであること、②固定資産税評価額は、従来、評価の手法が地価公示価格と異なっていたところ、平成六年度の評価替えより、宅地の評価に当たっては、地価公示法による地価公示価格、国土利用計画法施行令による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格を活用することとされ、三者の関係が密接になったこと(七割評価通達第2章第1節1)より、右批判は妥当しないというべきである。 第三賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の時価を基準として、賦課期日における土地の価格を求めることは適法であること。 一原告は、法三四九条一項において、土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、「賦課期日」(本件では平成六年一月一日)時点における価格であると定められているにもかかわらず、都知事は、平成四年七月一日を価格調査基準日とし、平成五年一月一日までの分のみを時点修正した価格に基づいて評価したものであるから、右評価は違法である旨主張する。 二しかしながら、「基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に登録されたもの」とは、基準年度の賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点における地価を基準として、当該基準年度の賦課期日における土地の価格を求め、その価格を法四一一条により基準年度の価格として登録すれば足りるというべきであるから、原告の主張は失当である。 1 固定資産の評価替えについて法は、登録価格につい 課期日における土地の価格を求め、その価格を法四一一条により基準年度の価格として登録すれば足りるというべきであるから、原告の主張は失当である。 1 固定資産の評価替えについて法は、登録価格について、市町村長に対し、法三八九条の規定によって道府県知事又は自治大臣が固定資産を評価する場合を除くほか、自治大臣が告示した法三八八条一項の評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないと定めている。 ところで、固定資産税の課税が適正に行われるためには、固定資産の評価が適正で、かつ、全国的に各市町村相互間で均衡がとれたものであることが必要である。 そこで、評価基準では、市町村のすべての土地(全国で約一億七五〇〇万筆)を同一の基準で評価し、この評価について都道府県及び市町村の評価の均衡を図る制度(評価基準第1章第3節三)を設けている。 2 その概要は次のとおりである。 (一) まず、市町村長は、評価基準に基づいて、すべての土地(全国では約一億七五〇〇万筆)を評価することになる。 市街地宅地評価法(路線価方式)を適用する宅地の評価をするに当たっては、評価基準に基づき、①用途地区の区分、②状況類似地区の区分、③主要な街路の選定、④標準宅地の選定、⑤標準宅地の適正な時価の評定、⑥主要な街路の路線価の付設、⑦その他の街路の路線価の付設、⑧個々の宅地の評点数の付設と評価額の算定という段階を経て、はじめて固定資産の価格が決定されることになる。 (二) 次に、市町村長が評価した価格について、市町村間の評価の均衡を図るため、評価基準においては、評点一点当たりの価額の算定についても、次のような自治大臣の調整が行われることとされている。 すなわち、市町村長が土地の価格を決定するについては、評価基準に基づいて土地の評点を算出し、最終的にその評点数に一点当たりの価額 定についても、次のような自治大臣の調整が行われることとされている。 すなわち、市町村長が土地の価格を決定するについては、評価基準に基づいて土地の評点を算出し、最終的にその評点数に一点当たりの価額を乗じて土地の価格を決定するが、ここで、一点当たりの価額は、宅地の指示平均価額に宅地の総地積を乗じ、これをその付設総評点数で除した額に基づいて市町村長が決定するものとされている。そして、この宅地の指示平均価額は、指定市町村(県庁所在地の市町村)にあっては、自治大臣が算定し、都道府県知事を経由して市町村長に指示し、指定市町村以外の市町村にあっては、自治大臣の指示に基づき、都道府県知事が算定し、市町村長に指示するものとされている。 (1) 自治大臣の指定市町村の指示平均価額の算定についてア自治大臣は、指定市町村の指示平均価額の算定をするが、この算定は、指定市町村の宅地の総評価見込額を算出し、これをその総地積で除して指定市町村の宅地の指示平均価額を算定することにより行う。 ① 自治大臣は、指定市町村の宅地の総評価見込額を算定するについて、次のような検討と調整を行う。 自治大臣は、市町村長が評定した基準宅地(最高の路線価を付設した街路に沿接する標準宅地)の適正な時価及び基準宅地の適正な時価に基づいて付設した路線価について検討し、次いで当該市町村長が評定した標準宅地の適正な時価及び基準宅地の適正な時価に基づいて付設した路線価及び当該市町村の宅地の評点付設の状況等を検討する。そして、この検討の結果に基づき、市町村間の評価の均衡上必要があると認めるときは、市町村長が評定した基準宅地の適正な時価について所要の調整を行い、これを基準として、標準宅地の適正な時価及び宅地の付設評点数について調整を行う。 ② また、自治大臣は、指定市町村の宅地の総評価見込額を算出 長が評定した基準宅地の適正な時価について所要の調整を行い、これを基準として、標準宅地の適正な時価及び宅地の付設評点数について調整を行う。 ② また、自治大臣は、指定市町村の宅地の総評価見込額を算出し、自治大臣が算定した総評価見込額と当該指定市町村の長が評価基準によって算定した総評価額の見込額が相違する場合においては、自治大臣は、当該指定市町村における宅地の評価方法の内容を検討し、必要があると認めるときは、当該指定市町村における総評価額の見込額を基礎として、総評価見込額を修正するものとする。 イ都道府県知事は、指定市町村以外の市町村の宅地の指示平均価額を算定するが、これは、当該市町村の宅地の総評価見込額を算出し、これをその総地積で除して当該市町村の宅地の指示平均価額を算定する。 ① 都道府県知事は、前記において算定した指定市町村以外の市町村の指示平均価額及びその算定の基礎を自治大臣に報告する。 ② 自治大臣は、前記において都道府県知事が報告した指示平均価額及びその算定の基礎を検討し、市町村間の評価の均衡上必要があるときは、指示平均価額について修正を行うように関係都道府県知事に指示する。 ③ 都道府県知事は、前記の自治大臣の指示があった場合においては、その指示に基づき、関係市町村の指示平均価額について修正を行う。 (2) 以上述べたように、自治大臣は指示平均価額の算定を通して、市町村間の評価の均衡を図るための調整を行い、その調整を終えて、法は、固定資産の価格を二月末日までに決定しなければならないとしている(法四一〇条)。 三1 このように土地課税台帳等に土地の価格を登録するためには、基準宅地の適正な時価を調整する手続を経なければならないから、相当長期間を要することになる。そこで、平成六年度の評価替え(土地)においては、平成四年七月一日を価格調 に土地の価格を登録するためには、基準宅地の適正な時価を調整する手続を経なければならないから、相当長期間を要することになる。そこで、平成六年度の評価替え(土地)においては、平成四年七月一日を価格調査基準日とし平成五年一月一日までの時点修正をすることになった(時点修正通知、乙第四号証)。東京都における平成六年度評価替えの際にも、右手続に基づいて実際に事務処理がなされているのである。 2 右に述べたことに加え、法が、基準年度の賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点における地価を基準として、当該基準年度の賦課期日における土地の価格を求めることを当然に予定していることは、次に述べることからしても明らかである。 (一) 原告主張のように平成六年一月一日の時点の価格に基づいて課税しなければならないとすると、固定資産の価格を同年二月末日までに決定し、同価格に基づいて課税を行った後に、賦課期日時点の地価を再評価して価格の修正を行い、その増減額について賦課決定を行わなければならないことになる。とすれば、膨大な数のすべての納税義務者に対して、課税・徴税事務を二度行う必要が生ずるが、法がこうした事務作業を予定していないことは、価格決定時期や縦覧時期についての規定の上からも明らかである。 (二) また、固定資産税の課税が適正に行われるためには、全国の各市町村間で実質面のみならず手続面でも、均衡が取れていることが必要である。それゆえ、全国の各市町村では、評価額はもちろんのこと、その前提となる価格調査基準日等についても、一致させなければならない。とすれば、各市町村は、面積の大小・筆数の多寡に関わらず同一の価格調査基準日に調査することになるから、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とすることを、法は当然に予定している 市町村は、面積の大小・筆数の多寡に関わらず同一の価格調査基準日に調査することになるから、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とすることを、法は当然に予定しているというべきである。 (三) さらに、地価公示価格の公表は、毎年三月下旬に行われており、固定資産の価格を決定すべき二月末日の時点では当該年の地価公示価格は公表されていない。したがって、基準年度の初日の属する年の地価公示価格を基準として評価することについては、制度上(価格決定時期、縦覧時期等)、実務上も困難であり、法の予定するところではない。 3 右に述べたことに鑑みると、法は、「賦課期日における価格」として、基準年度の賦課期日(本件では平成六年一月一日)から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点を価格調査基準日とし、右価格をして、「賦課期日における価格」とみなすことまで、許容しているというべきである(福岡地方裁判所平成二年九月二七日判決シュトイエル三五三号二二頁、福岡高等裁判所平成三年一〇月二日判決、新潟地方裁判所平成七年一二月二二日判決、奈良地方裁判所平成八年九月四日判決、前橋地方裁判所平成八年九月一〇日判決参照)。 4 そこで、本件についてみるに、本件各価格は、いずれも基準年度の賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の価格であるが、前記評価事務の手続的な制約等からみて、右日時は賦課期日から評価事務に要する期間を遡った相当な時点と解されるから、本件各価格は、いずれも法三四九条一項が定める「賦課期日における価格」に該当し、適法である。 5 「賦課期日における価格」を右のように解して固定資産の価格を賦課期日に近接した過去の一定時点に決定することにより、市町村長は、納税義務者に対し、時機に遅れることなく賦課期日における価格を周知させ 5 「賦課期日における価格」を右のように解して固定資産の価格を賦課期日に近接した過去の一定時点に決定することにより、市町村長は、納税義務者に対し、時機に遅れることなく賦課期日における価格を周知させることができるし、市町村は歳入計画を早期に算定することが可能となる。こうしたことからも、右取扱いは合理性を有するといえる。 6(一) また、こうした結論は、次に述べるところからしても、立法者意思に合致する適正なものということができる。 (二) すなわち、平成五年三月三一日、平成六年度評価替えに係る地方税法の改正が行われたが、この改正法によれば、平成六年度から平成八年度までの価格の上昇による特例措置、平成六年度から平成八年度までの負担調整措置について、いずれも、平成四年七月一日を価格調査基準日とする各都道府県の基準宅地価格を基礎として平成五年度課税標準に対する上昇率を算定し、それにより平成六年度から平成八年度までの課税標準を決定することとされている(同法附則一七条の二、一八条)。換言すれば、同法は価格調査基準日の価格を基礎として、平成六年度から平成八年度までの固定資産税の課税標準を決定しているのであり、同法が、価格決定の基準日を価格調査基準日であるとしていることは明らかなのである。 また、固定資産評価基準に定める指示平均価額についても、平成五年一月一日時点の価格に基づき決定されている。 (三) とすると、平成六年度の評価替えにおける価格算定基準日を平成五年一月一日としたことは、法が当然に予定しているものというべきである。 7 もっともこれに対して、原告は、価格調査基準日における価格を基礎として算定した価格が賦課期日における適正な時価を上回ると見込まれるときは、あらかじめ想定される価格下落率を折り込んで各固定資産税評価額を決定すべきであると主張する 価格調査基準日における価格を基礎として算定した価格が賦課期日における適正な時価を上回ると見込まれるときは、あらかじめ想定される価格下落率を折り込んで各固定資産税評価額を決定すべきであると主張するかもしれない。 8 しかし、①宅地の鑑定評価にあたっては、不動産鑑定士が、不動産鑑定評価基準(平成二年一〇月二六日、土地鑑定委員会の国土庁長官に対する答申)によって評価するとされているところ、右基準によると、不動産の鑑定評価においては、一般的要因(自然的要因・社会的要因・経済的要因・行政的要因)、地域要因(宅地地域・農地地域・林地地域)、個別的要因の三つの価格形成要因を考慮して評価するとされているだけであり、将来の価格変動は鑑定評価の要因とはされていないこと、②将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握・分析及び最有効使用の判定についてすべて予測しなければならない上、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、極めて不確実にならざるを得ないことから、「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項・総論」において、このような鑑定評価は行うべきではないとされていることより、不動産の鑑定評価にあたっては、将来の価格変動を考慮すべきではないから、原告の主張は妥当性を欠くというべきである。 四1 また、原告は、こうした解釈に対し、法が固定資産税評価額を「賦課期日」時点の価格(法三四九条)であり、賦課期日を「当該年度の初日の属する年の一月一日」(法三五九条)と規定していることに相反する解釈であり、受け入れがたいと批判するかもしれない。 2 しかし、①右に述べたように、そもそも法は、「賦課期日における価格」を決定するに当たり、両立することが極めて困難な内容を履践することを各市町村長に求めているのであり、これらにすべて応えることは不可能で かし、①右に述べたように、そもそも法は、「賦課期日における価格」を決定するに当たり、両立することが極めて困難な内容を履践することを各市町村長に求めているのであり、これらにすべて応えることは不可能であること、②本件各土地の地目の変更・画地の状況等については、平成六年一月一日現在における状況に基づいて評価されたものであること、③本来、法は、固定資産税評価額を適正な時価にすることまで許容しているにもかかわらず、全国の市町村では適正な時価そのものではなく、あえて地価の変動をも見込んで補正した価格を評価額と決定していることより、こうした解釈が一概に文理に反する解釈とはいえず、右批判は妥当しないというべきである。 むしろ、法は、こうした両立することが極めて困難な要請を調整すべく「賦課期日における価格」を決定するに際し、行政庁に一定限度の裁量を与えていると捉えるべきである。 五1 被告としては、すでに詳述したところから明らかなように、評価時点を平成四年七月一日(その後時点修正しているので平成五年一月一日)としたことは何ら違法ではないと解するものである。 2 しかし、仮に、法三四九条及び三五九条の文理に忠実に解釈して、固定資産税評価額は賦課期日すなわち当該基準年度の一月一日時点の価格でなければならないと解したとしても、なお本件各土地の価格は違法ではないというべきである。 なぜなら、繰り返し述べているように、そもそも法は固定資産税評価額を適正な時価にすることまで許容しているのであり、したがって、地価公示価格とほぼ同水準で固定資産税評価額における適正な時価が定まることになるところ、公的価格(地価公示価格、相続税路線価及び固定資産税評価額)の一元化の要請から算出した当該土地の修正価格は、固定資産税評価額を上回るので、本件各価格はいずれも「適正な時価」の範 ることになるところ、公的価格(地価公示価格、相続税路線価及び固定資産税評価額)の一元化の要請から算出した当該土地の修正価格は、固定資産税評価額を上回るので、本件各価格はいずれも「適正な時価」の範囲内にあるというべきだからである(別表B1)。 3 しかも、時価というものは、その性格上、一義的に決まるものではない。なぜなら、売買取引事例を比較して当該土地の時価を算定してみても、土地の形状は一筆ごとに異なるし、売買当事者や取引時点が異なれば、当然に価格は変動するものであるからである。 確かに、不動産鑑定評価額は、こうした不正常要素を可能な限り取り除いて客観的に求めた価格ではある。しかし、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額についても、評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかである。 4 そうだとすれば、固定資産税評価額における「適正な時価」とは、一義的に定まる価格ではなくある程度の幅を持つ価格と捉えるべきである。 このように「適正な時価」を理解することは、法及び評価基準において、評価額を求めるためには個々の土地の不動産鑑定ではなく路線価方式で足りるとしていること及び各市町村間で基準宅地の適正な時価を調整する手続を要すると規定していることからも認められる。 5 右に述べたことを前提に考えると、固定資産税評価額として決定された価格を「適正な時価」と認めることが社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合にかぎり、右評価額は違法な価格というべきである。 六1 右に述べたことの妥当性は、次のことからも裏付けられる。 2 過去における固定資産税の土地評価と地価公示価格(一) 昭和五〇年代の初頭から中頃にかけては地価安定期であった。この時期の固定資産における土地評価の地価公示価格に対する割合を全国の県庁所在地の基準宅地(最高価格地 資産税の土地評価と地価公示価格(一) 昭和五〇年代の初頭から中頃にかけては地価安定期であった。この時期の固定資産における土地評価の地価公示価格に対する割合を全国の県庁所在地の基準宅地(最高価格地)についてみると、各都市において若干の幅があるものの平均的には、昭和五四年度六一・四パーセント、昭和五七年度六七・四パーセントであり、七割程度の水準であった。 (二) このことは、前述した地価公示価格と固定資産税評価額との関係とも符合する。すなわち、先に述べたように地価公示価格と固定資産税評価額とは、ほぼ一致するはずである。ところが、実際には固定資産税評価額は地価公示価格を約三割下回っていた。これは、価格調査基準日から賦課期日まで当時一年六か月の期間を要したことにかんがみ、地価の動向を斟酌して補正したために生じた幅と解されるからである。 それゆえ、当面時価が昭和五〇年代初頭から中頃にかけてと同様に沈静化・安定化の傾向を示すとすれば、過去の地価安定期の経験値を踏まえ、地価公示価格の七割程度の比率を維持することは十分に根拠のあるところである。 以上別紙被告の主張(二)-イ一1 原告は、本件標準宅地イの価格評定の基礎とした価格決定資料イの不正確性、信用性の低さは明らかであるから、これに基づく本件標準宅地イの価格評価には誤りが存すると主張する。 2 しかし、価格決定資料イの各補正率は、次に述べるとおり、合理的な根拠に基づいて算定されたものであるから、これに基づく本件標準宅地イの価格は適正に評価されているというべきである。 二取引事例(別表B2)の時点修正率について 1 原告は、取引事例dの時点修正について、平成二年一二月二六日から平成四年一月一日までの時点修正率をマイナス七・九三パーセントとすべきであるのに、本鑑定ではマイナス七・〇パーセントと 正率について 1 原告は、取引事例dの時点修正について、平成二年一二月二六日から平成四年一月一日までの時点修正率をマイナス七・九三パーセントとすべきであるのに、本鑑定ではマイナス七・〇パーセントとされているから、右時点修正率は不当に少なく認定されていると主張する。 2 しかし、そもそも原告の主張する時点修正率は、求めるべき時点修正率が取引時点から平成四年一月一日までの修正率で足りるにもかかわらず、平成五年の地価公示価格と平成四年の地価公示価格との下落率まで加算しており、平成四年一月一日までの時点修正率を求めるに当たり不要な加算を加えているから、原告の批判は前提において妥当性を欠くというべきである。 また、本鑑定は、取引事例dの時点修正をするにあたり、近傍に存する地価公示地中央五-一、東京都基準地中央五-二〇等の公示価格等の推移を基に、事例地が存する地域の特性を勘案し、平成二年一月一日から平成三年一月一日までの時点修正率をプラス・マイナス〇パーセント、平成三年一月一日から平成四年一月一日までの時点修正率をマイナス七パーセントと査定したものであり、右認定に何ら不合理な点は認められない。 しかも、不動産鑑定価格は、鑑定評価書から明らかなように、一つの取引事例ではなく三つの取引事例を総合的に勘案して評価するところ、原告はこのうち一取引事例の時点修正率のみを問題にしているにすぎないから、他の時点修正率は妥当ないし大きく修正しすぎていることを自認しているといえる。とすれば、結論に大きな影響は認められないから、これをして本件標準宅地イの価格評価に誤りが存するとの原告の主張が失当であることは明らかである。 三取引事例の事情補正について 1 原告は、本鑑定において、三取引事例とも事情補正が全くなされていないが、これらの取引について事情補正要素は当然に るとの原告の主張が失当であることは明らかである。 三取引事例の事情補正について 1 原告は、本鑑定において、三取引事例とも事情補正が全くなされていないが、これらの取引について事情補正要素は当然に存したから、何らの補正を行っていない本鑑定は不正確であると主張する。 2 しかし、①事情補正は、売り急ぎ・隣接地の購入など個々の取引事例において通常とは異なる例外的な条件が存した場合の補正要素であるから、取引事例価格に事情補正をなさないのがむしろ原則であること、②各取引事例地と類似する地域に存する地価公示地及び東京都基準地の公的価格等と比較したところ、各取引価格はおおむね妥当な取引価格と判断されたことから、各取引事例の事情補正をしなかったことに不合理なところはないというべきである。 3 また、原告は「本鑑定における取引事例比較法を採用して求めた価格は、収益還元法を採用して求めた価格に比して大幅に高く、この点からも適正なる事情補正がなされなかったことは明らかである」と主張する。 4 しかし、「収益事例においては賃貸借という継続契約に伴う個別的要素が強く、賃料額も取引価格の変動に対して遅効性を有することを考慮すると、一定の時点における取引価格の評定方法として収益還元法が優るものとは断定できない」(東京地裁平成九年八月二九日判決)から、収益還元法により求めた価格が適正な価格であることを前提とする原告の主張は、妥当性を欠くというべきである。 四鑑定評価書等の時点修正率について 1 原告は、「本鑑定は、平成四年一月一日の鑑定価格に、根拠不明な『修正率』なるものを乗じただけで平成四年七月一日時点の鑑定価格とした」から、適正な鑑定価格とは言い難いと主張する。 2 しかし、本鑑定の平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正率マイナス八・九パーセントは、次に述 じただけで平成四年七月一日時点の鑑定価格とした」から、適正な鑑定価格とは言い難いと主張する。 2 しかし、本鑑定の平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正率マイナス八・九パーセントは、次に述べるとおり、合理的な根拠に基づいて求められた適正な修正率である。 すなわち、本件標準宅地イは中央通りや晴海通りの主要通りに直接面しておらず、かつ銀座四丁目の交差点という商業中心地から比較的離れた銀座地区の中では価格的に中位からやや下位に属する地区と評価することができる。そこで、時点修正率を求めるにあたっては、本件標準宅地イの所在する地域と類似する地価公示地中央五-一及び東京都基準地中央五-二〇等を参考に求めることとした。具体的には、公示地中央五―一の平成四年一月一日から平成五年一月一日までの地価変動率がマイナス二七・一パーセント、東京都基準地中央五-二〇の平成三年七月一日から平成四年七月一日までの地価変動率がマイナス一一・九パーセントであることより、これらの前年比変動率や平成三年秋以降に始まった地価下落が平成四年に入り加速度的に拡大していったこと等を参考にして、本鑑定は、平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正率をマイナス八・九パーセントと算定したのである。 とすれば、右時点修正率が合理的な根拠に基づいて求められたことは明らかであるから、原告の主張は失当というべきである。 3 また、本鑑定は、平成四年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率をマイナス一五・五パーセントと認定したが、これは右2に述べた事情等を総合的に勘案して求めたものであり、合理性を有するというべきである。 4 もっともこれに対して、原告は、そうであるならば本鑑定後において再調整する必要はないのであり、再調整せざるをえないこと自体が、端的に本鑑定評価書の不正確性を示す 合理性を有するというべきである。 4 もっともこれに対して、原告は、そうであるならば本鑑定後において再調整する必要はないのであり、再調整せざるをえないこと自体が、端的に本鑑定評価書の不正確性を示すものであると批判するようである。 5 しかし、すでに述べているように、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額についても評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかであるから、再調整をしたからといって本鑑定が不正確というわけではない。 あえて再調整を行ったのは、土地基本法一六条の規定の趣旨を踏まえ、公的価格の一元化の要請に応えるべく、相続税路線価との均衡にも配慮したからなのである。とすれば、必ずしも時点修正率を再調整する必要性はないのであるから、原告の主張は妥当性を欠くというべきである。 五結論以上より、価格決定資料イの各補正率の合理性は明らかであるから、これに基づく本件標準宅地イの価格が適正であることは明らかである。 以上別紙被告の主張(三)第一本件各土地の価格が適正であること一原告の主張の論理的陥穽及び下落率算出方法の不合理性 1 原告は、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における標準宅地の価格下落率が三〇パーセントを超える場合には、当該標準宅地の価格は適正な時価を上回り違法であると主張する。 そして、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの標準宅地の価格下落率が三〇パーセントを超えるものであることを、地価公示価格による方法、相続税路線価を基礎に標準宅地の修正地価公示価格を求めその下落率を算出する方法、東京都基準地価格による方法により、立証しようとする。 2 しかし、①原告の主張する当該標準宅地の価格下落率の算出方法自体が合理性を欠くこと、②仮に、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間におけ 基準地価格による方法により、立証しようとする。 2 しかし、①原告の主張する当該標準宅地の価格下落率の算出方法自体が合理性を欠くこと、②仮に、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における標準宅地の価格下落率が原告の主張するように三〇パーセントを超えるとしても、そのことから当然に本件各価格が「適正な時価」を上回り違法な価格となるわけではないこと、③本件訴訟において問題となっているのは、あくまで本件各価格が「適正な時価」といえるかであるのに、原告は本件各土地ではなく標準宅地を対象に検討しているにすぎないことより、いずれの点においても問題があり失当というべきである。 3 下落率算出方法の不合理性(一) 地価公示価格による方法原告は、「東京都中央区における平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における地価変動率を地価公示価格でみると平均マイナス三一・六三パーセントとなる」から、標準宅地の評価は誤っていると主張する。 しかし、①本来、土地の価格は個別に評価するのが適当であるところ、利用状況が類似していない地区の価格の変動を参考にして、標準宅地の価格の変動を推測しても妥当性を欠くこと、②原告の主張する中央区内の公示価格の中には、日本橋・日本橋兜町・八重洲・新川・築地・勝どき・八丁堀等の本件各土地とはかなり離れた地点の公示価格を含んでいることから、原告の主張する地価公示価格による方法は当該土地の下落率算出方法として妥当性を欠くというべきである。 (二) 相続税路線価を基礎に標準宅地の修正地価公示価格を求め、その下落率を算出する方法原告は、「平成五年と平成六年の各々について標準地公示価格に当該標準宅地の相続税路線価と標準地の相続税路線価の比率を乗じて、当該標準宅地の修正地価公示価格を算出し、その平成五年一月一日から平成六 原告は、「平成五年と平成六年の各々について標準地公示価格に当該標準宅地の相続税路線価と標準地の相続税路線価の比率を乗じて、当該標準宅地の修正地価公示価格を算出し、その平成五年一月一日から平成六年一月一日までの修正地価下落率を算出する」と地価下落率は三〇パーセントを超えているから、標準宅地の評価は誤っていると主張する。 しかし、①本来、土地の価格は個別に評価するのが適当であることからすると、原告の主張する「修正地価公示価格」なる想定価格は、いくつもの公的価格を操作して求めているため、誤差をかなり含んだ信憑性の疑わしい価格といわざるを得ないこと、②原告の主張する公示価格に当該標準宅地の相続税路線価と標準地の相続税路線価の比率を乗ずる手法は、被告の標準宅地の正面路線と当該土地の正面路線において格差率を乗ずる方法に準ずるものと解されるが、原告の方法によると基本的に一定であるべき格差率が毎年変動することになり妥当性を欠くこと、③原告は地価下落率を求めるために当該標準宅地から最寄りの六地点の公示地を取り上げその検討の対象とするが、当該標準宅地から各公示地への距離が一定でないばかりか、標準宅地によって対象にした公示地の範囲が大きく異なるから、比較の対象として不適当であること、④原告の方法では、同じ公示地を基準に地価下落率を求めているにもかかわらず、下落率にかなりの幅が認められることから、原告の主張する相続税路線価を基礎に標準宅地の修正地価公示価格を求め、その下落率を算出する方法は当該土地の下落率算出方法として妥当性を欠くというべきである。 (三) 東京都基準地価格による方法原告は、中央区内において公示価格の標準地と東京都基準地とが同一の地点が三地点存するから、これを基礎にして平成五年一月一日までと平成六年一月一日までの平均下落率を計算し、こ 都基準地価格による方法原告は、中央区内において公示価格の標準地と東京都基準地とが同一の地点が三地点存するから、これを基礎にして平成五年一月一日までと平成六年一月一日までの平均下落率を計算し、これに各基準地の平成四年七月一日の基準地価格を乗じて、平成五年一月一日と平成六年一月一日の基準地の価格を算出し、その平成五年一月一日から平成六年一月一日までの修正地価下落率を算出すると地価下落率は三〇パーセントを超えているから、標準宅地の評価は誤っていると主張する。 しかし、①原告の主張する算出方法は、中央区内の公示地と基準地が一致する三地点だけを基礎として、他のすべての基準地の下落率について右三地点と同一とみなし仮定値・地価下落率を算定したものであるが、地価下落率は、公示地の変動率にかんがみても公示地点により全く異なるのであり、その前提が明らかに誤りであること、②本来、土地の価格は個別に評価するのが適当であることからすると、原告の主張する「仮定値」なる想定価格は、いくつもの公的価格を操作して求めているため、誤差をかなり含んだ信憑性の疑わしい価格といわざるをえないことから、原告の主張する東京都基準地価格による方法は当該土地の下落率算出方法として明らかに妥当性を欠くというべきである。 4 原告の主張の論理的陥穽その一(一) 次に、原告は、平成五年一月一日から平成六年一月一日までの一年間における標準宅地の価格下落率が右に述べたところから三〇パーセントを超える以上、本件各価格は「適正な時価」を上回り違法であると主張する。 (二) しかし、原告の主張は、当該標準宅地の路線価が平成五年一月一日時点の「適正な時価」のちょうど七割であることが、その前提となって初めて成り立つ論理である。換言すれば、当該標準宅地の固定資産税評価額が適正な時価の七割より低く評価さ 宅地の路線価が平成五年一月一日時点の「適正な時価」のちょうど七割であることが、その前提となって初めて成り立つ論理である。換言すれば、当該標準宅地の固定資産税評価額が適正な時価の七割より低く評価されていれば、仮に平成五年一月一日の時点から平成六年一月一日の時点まで三〇パーセントを超えて土地の価格が下落したとしても、なお適正な時価の範囲内にあるというべきである。 そこで、固定資産税評価額が「適正な時価」の七割であるか否かを、公的価格の一元化の要請に基づき固定資産税の路線価と七対八の比となるべき相続税路線価が公示価格のちょうど八割になっているかにより検証すると、銀座の公示地である六地点(中央五-一ないし四、中央五-一八及び中央五-二三)の相続税路線価は公示価格の約七五パーセント、原告が比較の対象とした中央区内における公示地一八地点(中央五-一ないし五、中央五-七、八、中央五-一〇、一一、中央五-一四ないし一六、中央五-一八、一九、中央五-二二ないし二四、中央五-二七)の相続税路線価は公示価格の約七六パーセントであり、いずれも八〇パーセントを下回っていることが認められる。 (三) とすると、固定資産税評価額を決定する際に、平成四年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正率を決定するうえで相続税路線価等との均衡・調整を図っていることに鑑みると、平成五年一月一日の固定資産税評価額が適正な時価の七割より低く評価されていることは明らかである。 そうだとすれば、原告の主張は、その論理的前提において瑕疵があるから、その帰結にも誤りが存するといわざるをえない。 5 原告の主張の論理的陥穽その二(一) さらに、原告は右主張を本件各土地ではなく標準宅地を対象にしている。 (二) しかし、繰り返し述べているように、本件訴訟において問題となっているのは、あくま 5 原告の主張の論理的陥穽その二(一) さらに、原告は右主張を本件各土地ではなく標準宅地を対象にしている。 (二) しかし、繰り返し述べているように、本件訴訟において問題となっているのは、あくまで本件各価格が「適正な時価」といえるかであり、標準宅地の価格の是非ではないから、標準宅地を検討の対象とするのは妥当性を欠くというべきである。 (三) とすれば、原告の主張は、この点についても論理的飛躍が存するから、その帰結は妥当性を欠くといわざるをえない。 二 「適正な時価」の合理的算出方法とは1(一) 被告としては、そもそも時価というものは、その性格上、一義的に決まるものではないと解するので、「適正な時価」を一義的に算出する完璧な方法はないと考える。なぜなら、売買取引事例を比較して当該土地の時価を算定してみても、土地の形状は一筆ごとに異なるし、売買当事者や取引時点が異なれば、当然に価格は変動するものであるからである。 確かに、不動産鑑定評価額は、こうした不正常要素を可能な限り取り除いて客観的に求めた価格ではある。しかし、不動産鑑定理論に基づいて求められた不動産鑑定評価額についても、評価額に一定の幅が存することは経験則上明らかである。 (二) そうだとすれば、固定資産税評価額における「適正な時価」とは一義的に定まる価格ではなくある程度の幅を持つ価格と捉えるべきである。 このように「適正な時価」を理解することは、地方税法及び固定資産評価基準において、評価額を求めるためには個々の土地の不動産鑑定ではなく路線価方式で足りるとしていること及び各市町村間で基準宅地の適正な時価を調整する手続きを要すると規定していることからも認められる。 (三) 右に述べたことを前提に考えると、固定資産税評価額として決定された価格を「適正な時価」と認めることが社会通念上著し 地の適正な時価を調整する手続きを要すると規定していることからも認められる。 (三) 右に述べたことを前提に考えると、固定資産税評価額として決定された価格を「適正な時価」と認めることが社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合にかぎり、右評価額は違法な価格になるというべきである。 2 仮に、原告の主張するように平成六年一月一日を基準日としかつ「適正な時価」が一義的に定まるとすると、前述したことから、当該土地の固定資産税評価額が「適正な時価」にあたるか否かは、当該標準宅地ではなく当該土地を対象に、また価格下落率ではなく価格そのものを検討すべきである。 3(一) こうした条件に合致するもっとも適当な「適正な時価」の算出方法は、当該土地の相続税路線価を参考にして時価を求める方法というべきである。 なぜなら、公的価格の一元化の要請(土地基本法一六条)により、地価公示、相続税評価及び固定資産税評価の公的土地評価については、相互の均衡と適正化が図られているところ、平成六年一月一日時点の本件各土地を直接に対象とした評価は相続税路線価に限られるからである。 (二) こうした方法は被告のみならず原告の算出方法とも共通するものである。 なぜなら、原告は、自己の主張する下落率算出方法の妥当性を裏付けるために、地価公示価格と相続税路線価の割合が一〇対八とされていることから、修正公示価格に〇・八を乗じたものが標準宅地の相続税路線価とほぼ合致することをその論拠としているからである。 (三) そして、相続税路線価から適正な時価を求める際には、平成六年一月一日時点の公示地点の公示価格と相続税路線価との関係が銀座の公示地である前記六地点の相続税路線価は公示価格の約七五パーセント、原告が比較の対象とした中央区内における前記公示地一八地点の相続税路線価は公示価格の約七六パ の公示価格と相続税路線価との関係が銀座の公示地である前記六地点の相続税路線価は公示価格の約七五パーセント、原告が比較の対象とした中央区内における前記公示地一八地点の相続税路線価は公示価格の約七六パーセントであることにかんがみると、各相続税路線価を右各割合で割り戻して算出すべきである。 三本件各土地への当てはめ 1 右に述べたことを前提に本件各土地について検討すると、本件各土地の固定資産税の正面路線等の価格は平成五年一月一日時点の正面路線等の相続税路線価のほぼ八分の七と付設されているところ、時価算定の基礎となる本件各土地の正面路線等の平成六年一月一日時点の適正な時価は、平成六年度の固定資産税の正面路線等の評価額を上回ることが認められる(別表B1)。 2 とすると、本件各価格は「適正な時価」に当たるというべきであるから、本件審査決定が適法であることは明らかである。 3 もっともこれに対して、原告は、相続税路線価が適正な価格であることが立証されていない以上、かかる主張は前提において問題があると主張するかもしれない。 4 しかし、①公的価格の一元化の要請に基づき、地価公示価格・相続税路線価・固定資産税評価額の均衡が図られていること、②相続税路線価についても、地価公示価格及び不動産鑑定価格に基づいて、公的価格の均衡が図られていること、③固定資産税評価額と相続税路線価は、大量の評価を周辺地域間で相互に均衡を失しないよう評価する必要がある点で、共通性を有することから、原告の批判は妥当性を欠くというべきである。 第二被告主張の合理性一1 原告は、被告が標準宅地の価格(下落率)と本件各価格(下落率)とは別個のものであると主張していることに対し、かかる主張は、固定資産税評価額の算出システムと相反する主張であり認めがたいと批判するようである。 2 しかし 宅地の価格(下落率)と本件各価格(下落率)とは別個のものであると主張していることに対し、かかる主張は、固定資産税評価額の算出システムと相反する主張であり認めがたいと批判するようである。 2 しかし、被告の主張は、次に述べるとおり、東京地裁平成八年九月一一日判決の枠組みに従い、固定資産税評価額の妥当性の判断の仕組みにすべて適合していることが認められたとしても、結果として登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときには登録価格の決定は違法であるとの主張に対し、仮定的に反論を加えたものであるから、原告の批判は失当というべきである。 二1 すなわち、右判決の枠組みによると、固定資産税評価額の妥当性に関する判断の仕組みは、①評価方法の選定、標準宅地の選定、標準宅地の価格と基準宅地の価格との均衡、標準宅地の評価額から対象土地への比準の方式が評価基準及び市町村長の補正に関する基準(取扱要領等)に従ったものであるかどうか(基準適合性)、②右評価基準等が一般的に合理性を有するかどうか(基準の一般的合理性)、③評価基準による評価の基礎となる数値、すなわち標準宅地の価格が賦課期日における適正な時価であるかどうか(標準宅地の価額の適正さ)の三点の審理にあるが、右三点が立証されたとしても、④結果としての登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときは登録価格の決定は違法であるとされるのである(東京地裁平成八年九月一一日判決参照)。 2 そして、本件において、原告は、判決の枠組み①、②については争わないが、同③、④につき争っているものである。 3 そこで、被告としては、繰り返し主張しているように、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の時価を基準として、賦課期日における土地の価格を求めることは適法と解するものであるが、仮に右 そこで、被告としては、繰り返し主張しているように、賦課期日から評価事務に要する一定期間を遡った過去の時点の時価を基準として、賦課期日における土地の価格を求めることは適法と解するものであるが、仮に右判決が判示するとおり平成六年一月一日時点の価格でなければならないと解したとしても、本件各価格が客観的時価を下回らないことを明らかにするために、④に関し対象土地の客観的時価を主張立証したものである。 4 とすれば、被告がいわゆる路線価方式を採用していることをもって、被告の主張を失当と断ずる原告の主張こそ、判断の枠組みを理解しない失当の主張というべきである。 第三本件における標準宅地の価格も適正であること一1 さらに付言するに、原告の主張するとおり、本件各土地の価格ではなく標準宅地の価格が「適正な時価」にあたるかを検討してみても、標準宅地の価格は「適正な時価」を下回ることが認められるから、こうした結論が妥当であることは同様に裏付けられる。 2 なぜなら、第一、二3(三)において述べたことを前提に本件における標準宅地について検討すると、当該標準宅地の固定資産税の正面路線等の価格は平成五年一月一日時点の正面路線等の相続税路線価のほぼ八分の七と付設されているところ、時価算定の基礎となる当該標準宅地の正面路線等の平成六年一月一日時点の適正な時価は、平成六年度の固定資産税の正面路線等の評価額を上回ることが認められるからである(別表B3)。 3 とすると、当該標準宅地の固定資産税路線価は「適正な時価」に当たるというべきであるから、本件審査決定が適法であることは明らかである。 第四その他の主張について一1 原告は、被告は標準宅地の価格評価について、不動産鑑定価格のみを唯一の基礎とはしないと主張しながら、他方で将来の価格変動については「不動産鑑定評価基準運用 である。 第四その他の主張について一1 原告は、被告は標準宅地の価格評価について、不動産鑑定価格のみを唯一の基礎とはしないと主張しながら、他方で将来の価格変動については「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」を持ち出していて、矛盾する旨主張する。 2 しかし、被告が不動産鑑定価格のみを唯一の基礎とはしないと主張する趣旨は、①固定資産税評価が大量の土地を短期間に均衡を失しないよう評価する必要があること、②不動産鑑定価格は、経験則からも明らかなように、一定程度の幅を有することにかんがみ、相互のバランスを相続税路線価を参考に図る必要があるからにすぎない。したがって、東京都が、何らの根拠もなしに任意に数値を決めているわけではないから、原告の批判は失当である。 二1 また、原告は、被告は一方で「公的価格の一元化の要請(土地基本法一六条)より、地価公示、相続税評価及び固定資産税評価の公的土地評価については、相互の均衡と適正化が図られている」と主張しながら、公的土地価格の相対性を主張し、その主張は一貫しないばかりでなく、相反するものであると主張する。 2 しかし、原告の主張は、被告の主張を曲解するものであり、その前提において失当というべきである。 なぜなら、被告は、公的価格相互の相対性を主張したことは一度もないのであり、あくまで公的価格自体に幅があると主張しているにすぎないからである。言い換えれば、地価公示価格・相続税路線価・固定資産税評価額すべてに共通して、ある幅を持った価格であると主張しているのである。 第五結論以上より、本件における標準宅地の価格ひいては本件各価格が「適正な時価」であることは明らかである。 第六訴えの利益について一また、仮に原告の主張するとおり地価が下落し、適正な時価が固定資産税評価額を下回ることがあるとしても税額に変 いては本件各価格が「適正な時価」であることは明らかである。 第六訴えの利益について一また、仮に原告の主張するとおり地価が下落し、適正な時価が固定資産税評価額を下回ることがあるとしても税額に変動はないから、本件訴訟は訴えの利益を欠き却下されるべきである。 二取消訴訟における「訴えの利益」の意義 1 「訴えの利益」とりわけ行政処分の取消訴訟における「訴えの利益」の意義を検討することとする。 2 まず、狭義の訴えの利益であるが、これは具体的な四囲の状況という客観的な側面からみて、当該訴訟を維持・追行する法律上の利益があるかどうかを問題にするものである。 3 次に、行政処分の取消訴訟における訴えの利益の有無は、処分がその公定力によって有効なものとして存しているために生じている法的効果を除去することによって、回復すべき権利又は法律上の利益が存在しているか否かという観点から検討すべきである。したがって、訴えの利益の存否は、「口頭弁論終結時」において、「処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか否か」、「処分を取り消すことによって回復される法的利益が存するか否か」という観点から検討する必要がある。 三1 被告は、原告の主張する下落率、当該標準宅地に沿接する路線の相続税路線価の対比による下落率、当該土地に沿接する路線の相続税路線価の対比による下落率等を総合的に勘案して、各路線についてもっとも低く見積もった路線価を基準に推定評価額を求め税額を算定したところ、被告の決定した固定資産税評価額に基づく税額(固定資産税額と都市計画税の平成六年度から平成八年度までの合計)と変わらないことが判明した(別表B4参照)。 2 ところで、行政事件訴訟における「訴えの利益」は、民事訴訟の場合と同様、財産権上の請求である場合には、原告が「訴えをもって主張する 八年度までの合計)と変わらないことが判明した(別表B4参照)。 2 ところで、行政事件訴訟における「訴えの利益」は、民事訴訟の場合と同様、財産権上の請求である場合には、原告が「訴えをもって主張する利益」がどれだけか、すなわち勝訴判決を得た場合に原告が受けることとなる経済的利益がどれだけかに基づき算定された訴額によって把握されることになる。そして、本件のように固定資産税評価額に関する審査決定の取消訴訟においては、決定にかかる評価額を基礎として算定した税額と原告の主張する税額との差額を基準として求められる。 とすれば、「訴えの利益」の有無は、まさに訴額算定の基礎となった勝訴判決を得た場合に原告が受けることとなる経済的利益すなわち税額の増減によって把握されるべきである。 3 右に述べたことを前提に本件の「訴えの利益」の有無を検討すると、「処分を取り消すことによって」も税額は変動しないから、「回復される法的利益は存」せず、訴えの利益を欠くことは明らかである。 四1 もっともこれに対して、原告は、①訴えの利益の有無は訴え提起時に決定にかかる評価額を基礎として算定した税額と原告の主張する税額との間に利益があるかによって判断すべきであるし、②固定資産の評価に対する不服が賦課処分に対する不服とは別個の独立の不服方法とされ、賦課処分の違法事由として価格の違法を主張することができないとされていること、③実体審理の結果、実体審理を受ける利益がないことが判明したとして却下することは訴訟経済にかなうものではないから、訴えの利益は認められると主張するかもしれない。 2 しかし、①行政処分の取消訴訟における訴えの利益の存否は、「口頭弁論終結時」において、「処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか否か」、「処分を取り消すことによって回復される法的利益が存 かし、①行政処分の取消訴訟における訴えの利益の存否は、「口頭弁論終結時」において、「処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか否か」、「処分を取り消すことによって回復される法的利益が存するか否か」という観点から判断すべきであること、②固定資産の評価に対する不服が別個独立の不服方法とされてはいるが、そのことより法が経済的利益を伴わない純粋な公的価格の確定のみを求める特別な訴訟形態を認めたとみるべきではなく、あくまで「訴えの利益」があることを前提にした上で、争点を分別するために別個独立の不服方法を認めたと解するのが妥当であること、③実体審理の結果、実体審理を受ける利益がないことが判明して却下すると訴訟経済にかなわないとするが、税額の異同の判定をするためにはおおまかな審理で足りるのに対し、評価額を決定して判決をなすためには精緻な検討を必要とするのであり、実際の訴訟経済においても益するところが少なくないことより、原告の批判は妥当性を欠くというべきである。 3 考えるに、原告が訴訟をなす目的は、財産権上の請求の場合、あくまで勝訴判決を得たときに経済的利益が得られるからに他ならない。とすると、経済的利益が全く受けられないにもかかわらず、固定資産税評価額そのものを争う実益はないので、訴えの利益が存しないことは明らかである。 五結論以上より、適正な時価が固定資産税評価額を下回ることがあるとしても税額に変動がない以上、本件訴訟は訴えの利益を欠き却下されるべきである。 以上別紙適正な時価と登録価格の違法判断の枠組みについて一 「適正な時価」の意義固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則として(法三四九条一項、三四九条の二、条例一一八条一項)、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の 意義固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された固定資産の価格を課税標準とすることを原則として(法三四九条一項、三四九条の二、条例一一八条一項)、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下同じ。)に対して(法三四三条一項)、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であり、資産が土地の場合には、土地の所有という事実に着目するものであって、個々の所有者が現実に土地から収益を得ているか否か、土地が用益権又は担保権の目的となっているか否か、収益の帰属が何人にあるかを問わず、賦課期日における所有者を納税義務者として、その更地価格に着目して、課税されるのである。このような固定資産税の性質からすると、その課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」(法三四一条五号)とは、「時価」の一般的概念に照らしても、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(客観的時価)をいうものと解すべきである。 この点につき、原告は、平成三年度評価替え以前においては、地価公示価格の二割以下程度の一定評価(二割評価)をもって登録価格を決定していたとし、そのことをもって、公示価格を基礎とする客観的時価に対する二割評価をもって法の規定する「適正な時価」とすることが、規範的意識となるほどに慣習化していたとする。 しかし、租税法律主義の下において、課税標準が慣習によって決定されることは認め難い上、規範的効力を有する慣習が成立していたというためには、その内容が一義的に確定し得ること及びその内容を当該行政庁のみならず当該慣習の効力が及ぶ範囲の国民も拘束力ある規範として確信していたことが必要であるところ、二割評価の慣行があったとしても、それが右各要件を満たして 的に確定し得ること及びその内容を当該行政庁のみならず当該慣習の効力が及ぶ範囲の国民も拘束力ある規範として確信していたことが必要であるところ、二割評価の慣行があったとしても、それが右各要件を満たしていると認めるに足りる証拠はない。また、登録価格が地価公示価格の二割以下程度とされた期間が長期間にわたり、多数の者がこの事実を認識していたとすれば、かかる取扱いを公権的解釈とし、これに対する信頼を保護すべき事態はあり得るところである。しかし、この場合の信頼とは、右評価が土地の客観的時価を示すことに対する信頼ではなく、右評価がこれに基づいて算出される税額の多寡の指標となることに対する信頼をいうものと解すべきである。とすれば、右信頼を不当に破り不測の損害を生じさせないために急激な増税を回避する措置がとられることは望ましいことといえるが、それ以上に、法の文言に反する取扱いが継続したが故にこれを改めることができず、あるいはこれを改めるために国会の議決を要するというべきものではないから、原告が指摘する取扱いが長期間継続したとしても、そのことをもって、登録価格を客観的時価に近づけることが違法となるものではない。 したがって、原告の右主張を採用することはできない。 二 「適正な時価」の算定基準日法は、土地課税台帳等に登録すべき価格を基準年度に係る賦課期日における価格としているから(法三四九条一項)、右登録価格を算定すべき基準日は、賦課期日である当該年度の初日の属する年の一月一日であり、本件についていえば、平成六年一月一日時点における客観的時価をもって登録価格とすべきこととなる。 もっとも、法は、市町村長の価格決定を賦課期日の約二か月後に当たる二月末日までに行うべきものとしている(法四一〇条)ところ、大量に存在する課税対象となる固定資産につき「適正な時価」 きこととなる。 もっとも、法は、市町村長の価格決定を賦課期日の約二か月後に当たる二月末日までに行うべきものとしている(法四一〇条)ところ、大量に存在する課税対象となる固定資産につき「適正な時価」を算定する諸手続を考慮すると、約二か月間のうちに評価事務のすべてを行うことは困難であるから、賦課期日における価格算定の資料とするための標準宅地等の価格評定については、賦課期日からこれらの評価事務に要する相当な期間をさかのぼった時点を価格調査の基準日として行うことを法が禁止しているものとは解されない。 しかし、このことから、賦課期日以外の特定の日における価格をもって賦課期日における価格とみなすことまでを許容するものと解することはできない。 また、時点修正通知は、標準宅地の評価額を価格調査基準日のそれに固定することなく、時点修正をすべき旨の技術的援助と解されるが、さらに、賦課期日までの時点修正の必要性を否定する趣旨と解することはできない。 三評価基準による評価と客観的時価との関係 1 法は、固定資産の評価については評価基準によることを求めているから、法にいう「適正な時価」とは、評価基準に従って評定された時価ということになる。 しかし、評価基準は、各筆の土地を個別評価することなく、諸制約の下において大量の土地について可及的に適正な時価を評価をする技術的方法と基準を規定するものであって、宅地評価についてみれば、個別鑑定と同様の方法で標準宅地の客観的時価を算定し、価格形成要因の主要なものに関する補正等を加えて、対象土地の価格を比準評定するものであって、宅地の価格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものではないから、標準宅地の評定及び評価基準による比準の手続に過誤がないとしても、個別的な評価と同様の正確性を有しないことは制度上やむを得ないものという 格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものではないから、標準宅地の評定及び評価基準による比準の手続に過誤がないとしても、個別的な評価と同様の正確性を有しないことは制度上やむを得ないものというべきであり、評価基準による評価と客観的時価とが一致しない場合が生ずることも当然に予定されているものというべきである。 そうすると、「適正な時価」を客観的時価と解する場合には、客観的時価を下回る価格も、それを超える価格と同様に、客観的時価ではないということになり、客観的時価以下の評価については、納税者においてその取消しを求めることができないとしても(行政事件訴訟法一〇条)、かかる価格は「適正な時価」ではないというべきことになる。しかし、評価基準等による評価方法に内在する誤差を考慮すれば、評価基準等が技術的、中立的基準である以上、理念的には客観的時価を下回る場合とこれを超える場合が生ずることになるのであるから、少なくとも評価額が客観的時価を超えるという事態が生じないよう、予め減額した数値をもって計算の基礎となる標準宅地の「適正な時価」として扱うことは合理的な方法というべきであり、また、評価手続上、賦課期日の時価が予測値にならざるを得ないこと、あるいは固定資産税の前記性質に照らして、課税標準の特例以外にも一般的な負担軽減方法として「適正な時価」を予め控え目に評定することも課税処分の謙抑性に反しない限度で許されるものというべきである。 2 この観点からすれば、評価基準等を適用するに際し、公示価格の算定と同様の方法で行った個別評価額の一定割合を標準宅地の適正な時価とみなすことは、評価基準等に内在する評価誤差の是正方法として合理性を有するということができる。 なお、七割評価通達の趣旨が収益価格への配慮又は公的評価制度における価格の一元化を目指すものであっ 価とみなすことは、評価基準等に内在する評価誤差の是正方法として合理性を有するということができる。 なお、七割評価通達の趣旨が収益価格への配慮又は公的評価制度における価格の一元化を目指すものであって、賦課期日までの時点修正を目的とするものでないとしても、評価基準の適用においては、七割評価による修正を経た価格が賦課期日における標準宅地の適正な時価とされるのであるから、登録価格が賦課期日における適正な時価であるかどうかは右修正を経た価格について判断されるべきことになる。 3 この点につき、原告は、時点修正通知及びこれに従った本件評価が平成五年一月一日から賦課期日までの価格変動を考慮していないとして、右通知及び本件評価の違法をいうが、判断の対象は、平成五年一月一日までの時点修正及び七割評価を経た後の価格をもって賦課期日における標準宅地の適正な時価(客観的時価の範囲内)ということができるかどうかにあるのであって、その後の時点修正の要否も右判断において検討されるべき事柄ということになる。 また、原告は、七割評価通達を違法であるとするが、適正な時価が客観的時価を意味する以上、減額評価の違法は原告に有利になることはあっても不利となるものではないから、価格決定の違法事由とはならない。また、従前の評価額が時価に比して著しく低額であり、また、公示価格も実勢価格(時価)より低額であったとしても、そのような低い価格をもって法及び評価基準の前提とする「適正な時価」であると解することができないこと、そして、客観的時価に比して著しく低い価格をもって適正な時価とすべきことが規範的意識となる程に慣習化していたと認定できないことは、既に説示したとおりであるから、この点をとらえて租税法律主義の違反をいう主張を採用することはできない。 したがって、時点修正通知及び七割評価 規範的意識となる程に慣習化していたと認定できないことは、既に説示したとおりであるから、この点をとらえて租税法律主義の違反をいう主張を採用することはできない。 したがって、時点修正通知及び七割評価通達に従ったことの違法をいう原告の主張は採用することができない。 四登録価格の違法に関する判断の枠組み 1 以上の説示に照らせば、登録価格の違法に関する判断は、次の判断順序に従うべきことになる。 すなわち、第一に、評価方法の選定、標準宅地の選定、標準宅地の価格と基準宅地の価格との均衡及び標準宅地の評価額から対象土地への比準の方式が評価基準及び市町村長の補正に関する基準(取扱要領等)に従ったものであるかどうか(基準適合性)、第二に、右評価基準等が一般的に合理性を有するかどうか(基準の一般的合理性)、第三に、評価基準による評価の基礎となる数値、すなわち、標準宅地の価格が賦課期日における適正な時価であるかどうか(標準宅地の価格の適正さ)が審理されるべきである。 なお、既に説示したとおり、評価基準による評価が複数の評価要素の積み重ねを通じて結論において「適正な時価」に接近する方法であることからすると、評価基準に定める個別的評価要素が具体的な土地の特殊性に照らして適切さを欠く場合があるとしても、一般的に合理的とされる評価基準による評価が客観的時価を超えないときは、これを違法とすることはできない。 2 しかし、第一から第三までの点が立証されたとしても、結果としての登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときは、評価基準等は当該土地の具体的な「適正な時価」の評定方法として機能せず、法が客観的時価の算定方法を委任した趣旨を全うしていないことになるから、登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときは、その限度で登録価格の決定は違法 な時価」の評定方法として機能せず、法が客観的時価の算定方法を委任した趣旨を全うしていないことになるから、登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときは、その限度で登録価格の決定は違法であることになる。 3 本件評価が評価基準等に従ったものであることは、被告主張に係る価格算出方法から明らかであるところ、本件においては、前記1記載の第一、第二の各点について、当事者間に争いはないから、本件においては、前記1記載の第三の点(標準宅地の価格の適正さ)が問題となる。 五訴えの利益について被告は、登録価格が客観的時価を上回る場合であっても、固定資産税の税額が減少しないときは、当該登録価格の取消しを求める訴えの利益がない旨の主張をする。右被告の主張は、税額の差を生ずることが審査請求及び訴えの利益を基礎づける手続上の要件であることを前提として、審理の結果認められた価格について税額の計算をした場合に登録価格との間に税額の差を生じないときは、結局、訴えの利益がなかったことに帰するとの趣旨と解される。 しかし、法は、登録価格の変動が税額変動を結果することを本則とした上、固定資産の価格という客観的事実について審査申出を認め(法四三二条)、右申出に対する決定については、課税処分に対する不服とは区別して、審査決定に対する取消訴訟を提起すべき旨を規定しているのであるから、法四三四条は、税額の変動とは別個の観点から、評価委員会の評価に関する決定に対する取消しの訴えの利益を肯定しているものと解すべきであり、法附則一七条の二及び一八条も課税標準の調整及び負担調整の目的を超えて、法四三四条の性質を変更するものとは考え難い。さらに、被告の見解によれば、審理の結果、認定された価格が登録価格以上であれば請求棄却という実体判断をすべきであるが、認定された価格が登 整の目的を超えて、法四三四条の性質を変更するものとは考え難い。さらに、被告の見解によれば、審理の結果、認定された価格が登録価格以上であれば請求棄却という実体判断をすべきであるが、認定された価格が登録価格を下回り、税の減額を結果する価格を超えるものであるときは本案審理の要件を欠くものとして訴えを却下すべきであり、認定された価格が税の減額を結果する価格以下であれば本案に立ち入って決定の一部取消しをすべしということになるがこれは評価に関する紛争に審判の対象ではない税額の審理を取り込むものというべきであって、かかる見解を採用することはできない。 以上別紙本件標準宅地イの価格について一証拠(価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ、意見書イ)及び弁論の全趣旨によれば、東京都中央都税事務所固定資産税課長は、本件標準宅地イにつき、不動産鑑定士が、価格時点を平成四年一月一日として作成した本件鑑定評価書に基づき、不動産鑑定士が示した下落率九・〇パーセントを八・九パーセントとする時点修正を行って平成四年七月一日時点の価格を求め、更に、不動産鑑定士から求めた同日から平成五年一月一日までの時点修正率を活用し、同日時点の相続税路線価の約八分の七になるよう調整(原告が再調整と指摘する措置)を施した下落率一八・三パーセントを用いて時点修正した価格の約七割となるよう本件標準宅地イの価格を求めたこと、本件鑑定評価書イにおいて、取引事例地dの平成二年一二月の取引時点と平成四年一月一日の価格時点との間の時点修正率が一〇〇分の九三とされ、取引事例地のすべてについて、事情補正が一〇〇分の一〇〇とされていること及び平成四年一月一日における本件標準宅地イの一平方メートル当たりの鑑定評価額は、取引事例比較法による比準価格一七三〇万円を重視し、収益還元法による収益価格一二九〇万円を 分の一〇〇とされていること及び平成四年一月一日における本件標準宅地イの一平方メートル当たりの鑑定評価額は、取引事例比較法による比準価格一七三〇万円を重視し、収益還元法による収益価格一二九〇万円を酌量し、基準地価格に基づく比準価格一五八〇万円との均衡に留意して、一五六〇万円と決定されていることが認められる。 二取引事例地に関する補正について 1 原告は、別紙原告の主張(二)記載のとおり、本件標準宅地イの評価の資料とされた本件鑑定評価書イの内容につき、①本件鑑定評価書イが採用した取引事例比較法において、平成二年一二月二六日から平成四年一月一日までの時点修正が近隣公示地の公示価格下落率に比べて不当に低い下落率によって行われていること、②当然取引に当たって事情補正要素が存したはずであるのに、取引事例地のすべてについて、事情補正が全くされておらず、その結果求められた取引事例比較法による算出価格が収益還元法による算出価格を大幅に上回っていること、③平成四年一月一日を価格時点として求めた価格に根拠不明の「修正率」を乗じただけで、同年七月一日の鑑定価格とし、右鑑定価格につき、更に、時点修正という「再調整」をせざるを得ないものであったことを指摘し、不正確であり、信用性が低いと主張するので、以下検討する。 2 まず、右1記載①の点につき検討するに、証拠(価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ)によれば、本件鑑定評価書イにおいては、取引事例比較法による価格よりも約一〇パーセント低い額をもって、一平方メートル当たりの鑑定評価額としていることが認められるところ、右に照らせば、本件鑑定評価書イが取引事例地dについて採用した取引時点と価格時点との時点修正率一〇〇分の九三(下落率七パーセント)と原告が主張する下落率七・九三パーセントとの間で、右鑑定評価額決定に影響を及ぼ 、本件鑑定評価書イが取引事例地dについて採用した取引時点と価格時点との時点修正率一〇〇分の九三(下落率七パーセント)と原告が主張する下落率七・九三パーセントとの間で、右鑑定評価額決定に影響を及ぼすような差異が生ずるものとは考えられない。なお、後記のとおり、本件鑑定評価書イが取引事例比較法において採用した他の補正要素について、不当とすべきものは認められないから、この点についての原告の指摘は、本件鑑定評価書イの正確性、信用性に影響を与えるものということはできない。 3 次に、前記1記載②の点につき検討するに、前記のとおり、本件鑑定評価書イは、不動産鑑定士が作成したものであり、取引事例の事情補正についても、それを行ったか否かが本件鑑定評価書から判然としないというものではなく、本件鑑定評価書イにおいては、一〇〇分の一〇〇と明記されており、証拠(意見書イ)によれば、専門家たる不動産鑑定士が事情補正を検討した結果、補正率が一〇〇分の一〇〇との結論に達したものであることが認められるのであり、また、証拠(価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ)によれば、取引事例比較法による価格と収益還元法による価格との間に大きな開きが存することは鑑定評価に当たり十分認識されていることが認められるところ、そのような状況の下において、当該不動産鑑定士がことさら、本来ならば行うべき事情補正を行わなかったとの事実を窺わせるような事情は存しないのであるから、そのことをもって、行われるべき事情補正が行われていないとの結論を導くことはできないものというべきである。 4 そして、前記1記載③の点については、前記のとおり、いずれも不動産鑑定士が算出した時点修正率を用い、それに加えて、相続税路線価との均衡を図るという観点から調整したものであって、そのことにより、本件鑑定評価書イの正確性、信用 ついては、前記のとおり、いずれも不動産鑑定士が算出した時点修正率を用い、それに加えて、相続税路線価との均衡を図るという観点から調整したものであって、そのことにより、本件鑑定評価書イの正確性、信用性が低いとの結論が導かれるものではない。 5 以上のとおりであるから、本件標準宅地イの評価の資料である本件鑑定評価書イが正確性、信用性を欠くものであるとする原告主張を採用することはできない。 三平成四年七月一日までの時点修正について 1 原告は、本件標準宅地イの平成四年七月一日時点の鑑定評価額が、同年一月一日の鑑定評価額に根拠不明の「修正率」を乗じて求められたものであると主張する。 2 証拠(価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ、意見書イ)によれば、本件鑑定評価書イを作成した不動産鑑定士が公示価格や基準地価格の対前年比変動率や中間動向の四半期ごとの変動率等を参考に求めた下落率は九・〇パーセントであることが認められ、右下落率を不当とすべき理由は見出せないから、被告が下落率を八・九パーセントとして行った平成四年七月一日までの時点修正は違法というべきであるが、九・〇パーセント以上の下落率を認めるべき事情はない。 四平成五年一月一日までの時点修正について 1 原告は、下落率を一八・三パーセントとしてされた本件標準宅地イの平成四年七月一日から平成五年一月一日までの時点修正について、実際の下落率は右の率を上回ると主張する。 2 証拠(価格決定資料イ、意見書イ)によれば、本件標準宅地イの平成四年七月一日の価格を平成五年一月一日まで時点修正するに当たり、不動産鑑定士が示した下落率は一五・五パーセントであったが、平成五年一月一日における鑑定評価額と相続税路線価との比率を七対八に是正するため、下落率を一八・三パーセントに調整したことが認められる。このような調整は客観的価 下落率は一五・五パーセントであったが、平成五年一月一日における鑑定評価額と相続税路線価との比率を七対八に是正するため、下落率を一八・三パーセントに調整したことが認められる。このような調整は客観的価格変動率とは異なる観点に基づくものであるが、行政的配慮として、公的評価相互間の調整を図ることを不当とする理由はなく、本件においては、不動産鑑定士が示した下落率一五・五パーセントを不当とすべき理由は見出せないところ、右の調整は原告に有利に下落率を調整したものであって、原告が本件審査決定の取消しを求める理由となるものではない。 五平成五年一月一日から賦課期日までの時点修正について 1 証拠(甲第一ないし第三号証)によれば、平成五年一月一日の公示価格と平成六年一月一日の公示価格を比較すると、東京都中央区内の商業地の継続標準地が合計二八地点(標準地番号中央五-一ないし一二、同五-一四ないし二九)あったこと、その二八地点についての平成五年価格の合計が四億〇九五〇万円、平成六年価格の合計が二億八三四〇万円であって、その下落率は約三〇・七九パーセントであったことが認められ(なお、原告の主張する下落率三一・六三パーセントは、別表A3(甲第三号証)を根拠とするものであるが、同表において、公示価格下落率算定の対象たる標準地の中に含められている標準地番号中央七―一、二の各標準地はいずれも準工業地区に存する土地であるので、本件において、これらを含めて下落率を算定することは適当ではない。)、右事実に照らせば、東京都中央区内の商業地の平成六年一月一日時点の価格が平成五年一月一日時点の価格に比べて、平均して、三割をわずかではあるが超えて下落していることが推認されるが、他方、証拠(甲第一、第二号証、価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ)によれば、右二八地点には、本件標準宅地イ 時点の価格に比べて、平均して、三割をわずかではあるが超えて下落していることが推認されるが、他方、証拠(甲第一、第二号証、価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ)によれば、右二八地点には、本件標準宅地イと距離的に離れているものが多数含まれていること及び右二八地点のうち、本件鑑定評価書イにおいて、本件標準宅地イに係る規準価格を算出する基礎とされた標準地番号中央五-四の土地(<地名略>)の公示価格については、平成五年一月一日の価格が一九五〇万円、平成六年一月一日の価格が一三八〇万円であって、その下落率が約二九・二パーセントであったことが認められるのであるから、前記のように、東京都中央区内の商業地の平成六年一月一日時点の価格が平成五年一月一日時点の価格に比べて、平均して、三割をわずかながら超えて下落していることをもって、本件標準宅地イの平成五年一月一日から賦課期日までの価格変動(下落)が三割を超えるものとまで推認することはできないのであって、むしろ、前記標準地番号中央五―四の土地の平成五年一月一日から平成六年一月一日までの下落率が三〇パーセントを超えないものであったとの事実に照らせば、本件標準宅地イの賦課期日における価格は、平成五年一月一日時点の価格の七割を下回るものではないと推認することができる。 2 この点につき、原告は、別表A1記載の方法により、本件標準宅地イの平成五年一月一日時点及び平成六年一月一日時点の各修正地価公示価格を求めて、それらを基に本件標準宅地イの地価下落率を求めると、いずれも三〇パーセントを超えると主張する。しかし、右主張は、すべての土地について相続税路線価が当該土地の地価公示価格のほぼ一定割合となっていることが前提となるところ、証拠(公示地価・相続税路線価比較表)によれば、公示価格の標準地をみてみても、その公示価格と相続税 土地について相続税路線価が当該土地の地価公示価格のほぼ一定割合となっていることが前提となるところ、証拠(公示地価・相続税路線価比較表)によれば、公示価格の標準地をみてみても、その公示価格と相続税路線価との関係は、標準地ごとに異なり、また、同一標準地においても、年度が異なれば、相続税路線価の公示価格に対する割合が異なっていることが認められるのであるから、右事実に照らせば、本件標準宅地イの平成五年度、平成六年度の各修正地価公示価格を求めて、その比較をするという手法については、その前提を認めることが困難であり、右算出結果の精確性は必ずしも高くないものといわざるを得ないから、右算出結果をもって、前記のように、本件標準宅地イの価格鑑定に当たっての規準価格算定の基礎とされた標準地番号中央五―四の土地の公示価格に基づき算定される下落率に照らした推認結果を覆すには足らないものというべきである。 3 また、原告は、地価公示価格の標準地でもある東京都中央区内にある東京都地価調査の基準地三か所につき、別表A2記載の方法により、平成四年七月一日の基準地価格から平成五年一月一日の公示価格との間の平均下落率、平成四年七月一日の基準地価格から平成六年一月一日の公示価格との間の平均下落率を求め、別表A4(甲第九号証)記載のとおり、東京都中央区内の基準地につき、平成四年七月一日の基準地価格に一(一〇〇パーセント)から右各平均下落率を控除して得られた率(残存価格がその価格に占める割合を以下「残価率」という。)を乗じて、平成五年一月一日、平成六年一月一日の各仮定値を求めて、それぞれの合計を比較して、下落率を求めると三二・一二パーセントとなると主張する。しかし、右基準地三か所については、必ずしも、本件標準宅地イと距離的に近接しているとはいい難いから、この点から、本件標準宅 れの合計を比較して、下落率を求めると三二・一二パーセントとなると主張する。しかし、右基準地三か所については、必ずしも、本件標準宅地イと距離的に近接しているとはいい難いから、この点から、本件標準宅地イの地価下落率を推認することは相当でない。 また、別表A2記載の基準地三か所の二つの平均下落率に基づく残価率をもって、別表A4記載の他の基準地について平成五年一月一日及び平成六年一月一日の仮定値を求め、これに基づいて平均下落率を算出することは、その計算方法から明らかなように、平成四年七月一日の各基準地価格に右各残価率を乗じた数値の変化率を求めることに外ならないから、各仮定値における下落率は、いずれも当然に別表A2に記載された下落率から算出される三二・一一パーセントとなるのであって、前記三基準地以外の価格資料は無意味となっているのである。したがって、右算出結果をもって、前記のように、本件標準宅地イの価格鑑定に当たっての規準価格算定の基礎とされた標準地番号中央五-四の土地の公示価格に基づき算定される下落率に照らした推認結果を覆すには足らないものというべきである。 4 本件評価においては、本件標準宅地イの平成四年一月一日における正常価格について平成五年一月一日までの価格変動に応じた修正を施した価格の七割をもって本件標準宅地イの適正な時価としたことは既に摘示したとおりであり、本件の賦課期日における本件標準宅地イの価格算定の方法として、これは合理的なものと推認される。 六本件標準宅地イの賦課期日における適正な時価について以上説示したところによれば、被告が行った本件標準宅地イの賦課期日における価格の決定には、平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正につき、下落率を九・〇パーセントとすべきところを八・九パーセントとした違法が認められるが、その余の た本件標準宅地イの賦課期日における価格の決定には、平成四年一月一日から同年七月一日までの時点修正につき、下落率を九・〇パーセントとすべきところを八・九パーセントとした違法が認められるが、その余の手続及び内容において、違法というべき点はない。 そして、右期間の下落率を九・〇パーセントとすると、本件標準宅地イの賦課期日における時価は、一平方メートル当たり八一一万八六九二円と認められるから、これに基づく路線価はその上位四桁以下を切り捨てた八一一万点となる。 なお、右路線価八一一万点は、平成四年一月一日における一平方メートル当たりの鑑定評価額一五六〇万円を基に、右同日から同年七月一日までの時点修正率〇・九一、更に右同日から平成五年一月一日までの時点修正率〇・八一七を乗じた数値に〇・七を乗じて得たものであり、全体として、平成四年一月一日における価格に〇・五二〇四を乗じた点数となっているところ、本件鑑定評価書において本件標準宅地イに係る規準価格の基礎とされた標準地番号中央五-四の土地の一平方メートル当たりの価格は平成四年一月一日において二三四〇万円(甲第一〇号証の三、乙第一九号証)、平成六年一月一日において前記のとおり一三八〇万円であり、その後者の前者に対する割合は〇・五八九七となっているのであって、このことからすると、本件標準宅地イと右公示地との間には、一〇〇対一三五の地域格差が認められる(価格決定資料イ、本件鑑定評価書イ)ものの、右路線価の算定において施された時点修正には、結論においても、合理性があるものと推認することができる。 以上
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