昭和53(収ほ)1 没収の裁判の取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和54年3月22日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は、請求人代理人弁護士金子光邦が差し出した控訴趣意書に記載 してあるとおりであるから、これを引用し、これに

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判決文本文3,735 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、請求人代理人弁護士金子光邦が差し出した控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断する。 一、 理由不備の主張(控訴趣意第一点)について所論は、千葉地方裁判所松戸支部が、被告人Aに対する有価証券偽造被告事件の判決主文中で、「押収してある約束手形一枚(同裁判所昭和五三年押第一四号の一)の偽造部分を没収する」旨を言渡した裁判(昭和五三年五月一〇日確定)につき、請求人は、右の約束手形は、偽造部分をも含めて請求人の所有に属するものであるから、右の没収は、刑法一九条二項本文に違反するのみならず、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(以下「第三者所有物の没収手続法」という)二条に違反するとして、同法一三条により右の没収の裁判の取消を請求した。しかるに原判決は、判決理由の冒頭で、本件請求の趣旨及び理由を要約するにあたり、刑法一九条二項本文の違反の主張を明記していない点で不正確であるばかりでなく、本件約束手形の偽造部分が、刑法一九条二項本文にいう「其物犯人以外ノ者ニ属セサル」か否か、換言すれば、偽造部分が第三者の所有に帰しているか否かについてなんら判示していないから、原判決には理由不備の違法がある、というのである。 しかしながら、原判決は、判決理由中(3丁裏)において、「偽造文書は何人の所有にも属しない」すなわち、「何人もこれを真正な文書として主張行使できる筋合はない」との見解に立つて「請求人に没収しないままで所有せしめる要はないのである。」としたうえ、「所論のいうように、裏書により第三者に譲渡された手形はたとえ偽造手形であつたにしても犯人以外の者に属し没収できない、となつては、 求人に没収しないままで所有せしめる要はないのである。」としたうえ、「所論のいうように、裏書により第三者に譲渡された手形はたとえ偽造手形であつたにしても犯人以外の者に属し没収できない、となつては、保安処分上遺憾なことであるばかりでなく、到底首肯できる理論であるとは思われないのである。」と判示し、本件約束手形が偽造部分をも含め請求人の所有に属するとしても、右の約束手形はなんぴとにおいても、偽造されたままの状態では所有が許されないから、その意味において刑法一九条二項の要件を充足しており、右偽造部分を犯人以外の第三者から没収しても違法でない旨の判断を示しているものと解せられる(なお、原判決は、その3丁裏から4丁表にかけても、所論の主張について判断を示している)から、原判決には、所論の点に理由不備の違法はない。 なお、所論は、その他の点についても原判決には理由不備があるとし、原判決が本件請求を棄却した理由について種々の角度から論難しているが、その実質は原判決が判決理由中で述べている法律論を非難するものであって、理由不備の主張には当らない。論旨は理由がない。 二、 法令の解釈適用の誤りの主張(同第二点)について所論は、本件約束手形が偽造部分をも含め犯人以外の第三者である請求人の所有に属することは証拠上明らかであるにもかかわらず、原判決が本件没収を正当化したことは、原判決が部分没収の場合には、刑法一九条二項の適用がないと判断したものと解せられるのであつて、原判決は右の点について同条項の解釈適用を誤つており、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。 しかしながら、偽造変造文書(以下単に偽造文書という)については従来からその全部没収の場合と一部没収の場合とを問わず、「何人の所有をも許されない」とするのが判例である(全部没 る、というのである。 しかしながら、偽造変造文書(以下単に偽造文書という)については従来からその全部没収の場合と一部没収の場合とを問わず、「何人の所有をも許されない」とするのが判例である(全部没収につき、大審院判決明治四一年一二月二一日刑録一四輯二九巻一一四二頁など、一部没収につき、同明治四五年四月二五日刑録一八輯<要旨第一>一〇巻五一五頁)。もつとも、偽造文書が法禁物とされるのは、それが有害かつ危険であり、なんぴともその</要旨第一>ままの状態すなわち現状のままで所有することが許されないからであり(最高裁決定昭和三一年一一月一日刑集一〇巻一一号一五二五頁参照)、したがつて偽造文書の所有そのものが法律上全面的に禁止されているわけではないが、犯人以外の第三者が偽造文書を所有している場合であつても、実体法上の問題としては(没収手続上「第三者所有物の没収手続に関する法」によるべきか否かは別として)、右のような制限のもとに所有が許されているものと解すべきである。ところで、偽造文書の偽造部分に関する限り、当該部分は、被偽造者との関係において、これをなんぴとにも真正な文書として行使させない(行使禁止)のであり、また偽造部分という一個の文書の一部について物の所有権という観念を容れる余地はないのであるから、物の所有権の帰属を問題にしている刑法一九条二項は、ほんらい考える必要のないことであり(この場合、せいぜい刑訴法四九八条の表で足りる。)、また、仮に偽造部分について、何らかの意味において部分的にせよ、物の所有権の完全性が侵害されるとみる余地があるとすれば、当該部分が行使禁止に置かれる以上(請求人は、行使禁止に置かれること、すなわち偽造されたものでないことを争つているものではなく、もつぱら偽造部分を含め本件約束手形の所有権を主張していることは、後記の 当該部分が行使禁止に置かれる以上(請求人は、行使禁止に置かれること、すなわち偽造されたものでないことを争つているものではなく、もつぱら偽造部分を含め本件約束手形の所有権を主張していることは、後記のとおりである。)、結局右刑法一九条二項の「其物犯人以外ノ者ニ属セサルトキニ限ル」との要件は観念的には、当然充足しているものと認められるのであり、原判決も前記一のとおり右と同旨の見解(右の意味において、本件約束手形の偽造部分は、請求人の所有に属しない)をとつているものと解せられるから、所論の点について原判決が刑法一九条二項の解釈適用を誤つているとは考えられない。 次に所論は、請求人は本件約束手形の偽造部分の没収により「財産喪失の結果」をもたらすのであるから、「第三者所有物の没収手続法」によらなければ、本件約束手形の偽造部分を没収することができず、本件没収の裁判は、同法に違反しているから取消すべきであると主張する。 なるほど、約束手形の偽造部分については、同法二条以下の手続によつて没収すべきであるとの見解のある<要旨第二>ことは否定できない(同旨の判例として仙台高裁判決昭和三九年五月一四日)。しかし没収の裁判の取消請求</要旨第二>は、「法律上没収することのできない物について没収の裁判が確定した」(同法一三条一項)こと、すなわち、没収の確定裁判が実体法上違法なことを理由とするときに限り許容せられるのであつて、没収の裁判に手続上の瑕疵があり、上訴をすれば破棄されたであろうというだけでは、本条による取消しの請求をすることができない、と同法の立案者によつても解説されているのであり、同法七条の規定によつて没収の裁判をすることが許されないのに、裁判所が誤つて没収の裁判をした場合でも、そのことだけを理由とする取消し請求は、同様に理由がないものとして棄却す 解説されているのであり、同法七条の規定によつて没収の裁判をすることが許されないのに、裁判所が誤つて没収の裁判をした場合でも、そのことだけを理由とする取消し請求は、同様に理由がないものとして棄却すべきものと解されているから、仮に本件約束手形の偽造部分の没収手続に請求人を関与せしめなかつた点に違法があるとしても、それは本件没収の裁判を取消す理由にはならないというべきである。(所論が憂慮している、「財産喪失の結果」とか、「遡求権の行使も不可能」とか、の点については、振出が偽造であるとして、その旨の表示がなされたからといつて、本件請求人は、自己の前者に遡求することは、何んら妨げるものではない。)なお、その他請求人が本件没収の裁判の取消請求において、その理由としてあげているところを検討してみても、実体法上の違法理由としては、ただ本件約束手形が偽造部分をも含め請求人の所有に属していると主張するだけで、他に本件約束手形の没収部分が偽造されたものでないとか、その他没収要件を欠いているとかの主張はなく、またそれに添うような証拠も提出していないから、本件没収の裁判には取消すべき理由があるとはいえない。右と同旨の原判決には所論のような法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 以上のとおり本件控訴は理由がないから、「第三者所有物の没収手続法」一三条七項、刑訴法三九六条によりこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官向井哲次郎裁判官山木寛裁判官中川隆司)

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