令和4(ワ)17536 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月7日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-95133.txt

判決文本文12,048 文字)

令和7年4月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第17536号損害賠償等請求事件口頭弁論の終結の日令和7年1月27日判決 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して55万円及びこれに対する平成31年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え 2 被告株式会社朝日新聞出版は、原告に対し、5万9400円及びこれに対する平成31年3月23日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支 払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告に生じた費用の400分の1と被告株式会社朝日新聞出版に生じた費用の5分の1を被告株式会社朝日新聞出版の負担、原告に生じた費用の40分の1と被告Aに生じた費用の100分の3を被告Aの負担とし、原 告及び被告らに生じたその余の費用を原告の負担とする。 5 この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して1953万1202円及びこれに対する平 成31年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告株式会社朝日新聞出版は、同被告編集部内及び株式会社弾デザイン事務所に対し、本判決確定の日から7日以内に、別紙電子メール文案記載の文章を、原告を宛先に加えた電子メールにより送信せよ。 3 被告株式会社朝日新聞出版は、原告に対し、27万円及びこれに対する平成 31年3月23日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は、平成30年11月頃から平成31年1月頃まで、被告株式会社朝日新聞出版(以下「被告会社」という。)から委託を受け(以下「本件委託 6%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は、平成30年11月頃から平成31年1月頃まで、被告株式会社朝日新聞出版(以下「被告会社」という。)から委託を受け(以下「本件委託契約」という。)、同社が発行する出版物(以下「本件書籍」という。)の編集業務に従事した。被告A(以下「被告A」という。)は、被告会社の被用者であり、本件 書籍の編集責任者であった。 本件は、原告が、①被告Aは、原告が本件書籍の編集業務に従事していた際、一方的な叱責、補助の不履行、非難・恫喝・名誉毀損・侮辱、無理な業務の強要をしたことによって、原告に精神的苦痛を生じさせたと主張して、被告Aに対しては不法行為に基づき、被告会社に対しては使用者責任に基づき、連帯し て損害金1953万1202円(慰謝料300万円、治療費等1000円、休業損害1475万4638円、弁護士費用177万5564円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日である平成31年1月19日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下「改正前民法」といい、上記改正後の民法を単に「民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害 金の支払を求め(請求1)、②被告会社に対し、民法723条に基づき、名誉回復措置として関係者に別紙電子メール文案記載の内容を電子メールにより送信することを求める(請求2)とともに、③被告会社に対し、本件委託契約に基づき、報酬27万円(約定の25万円と当時の税率8%による消費税2万円の合計)及びこれに対する本件書籍の校了の日である平成31年1月21日から 60日後の日の翌日である同年3月23日から支払済みまで下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則所定の利率年14. 6%の割合による遅延損 成31年1月21日から 60日後の日の翌日である同年3月23日から支払済みまで下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息の率を定める規則所定の利率年14. 6%の割合による遅延損害金の支払を求めた(請求3)事案である。 1 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実を 除き、当事者間に争いがない。 (1) 当事者原告は、昭和45年9月生まれの女性である。原告は、平成30年当時、出版社から委託を受けて、出版物の記事の執筆等に従事していた。 被告会社は、出版物、その他印刷物の企画、制作、発行及び販売の事業等を目的とする株式会社である。被告会社は、平成30年から平成31年当時、 週刊誌である「週刊朝日」を発行していた。 被告Aは、昭和49年4月生まれの女性である。被告Aは、平成30年から平成31年当時、被告会社において「週刊朝日」の副編集長の地位にあった。 (2) 本件書籍の編集・発行 被告会社は、平成30年9月頃、「I」と題する出版物(本件書籍)を、平成31年1月29日を発売日として発行することとした。なお、本件書籍は、平成29年から年1回定期的に発行されている書籍の平成31年版であった。 被告Aは、本件書籍の編集責任者(デスク)として、その編集を担当した。 また、原告は、平成30年9月頃、被告会社から本件書籍の編集業務の委託 を受け、同年11月5日、これを承諾して、報酬25万円(消費税別)との約定により、被告会社との間で本件委託契約を締結し、本件書籍の編集者として、上記業務に従事した。本件書籍の編集業務は、被告A、原告と、被告会社と専属の業務委託契約を締結していた訴外B(以下「訴外B」という。)の3名が担当した。 を締結し、本件書籍の編集者として、上記業務に従事した。本件書籍の編集業務は、被告A、原告と、被告会社と専属の業務委託契約を締結していた訴外B(以下「訴外B」という。)の3名が担当した。 本件書籍は、平成31年1月29日、当初の予定どおり、発売された。 (3) 被告Aの原告に対する行為別紙当事者の主張一覧表中「前提事実」欄記載のとおり。 2 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 原告が本件書籍の編集業務に従事していた際、被告Aに原告に対する一方 的な叱責等の不法行為があったか。 (原告の主張)別紙当事者の主張一覧表中「原告の主張」欄記載のとおり。 (被告らの主張)別紙当事者の主張一覧表中「被告の主張」欄記載のとおり。 (2) 被告Aの不法行為により原告に生じた損害 (原告の主張)原告は、被告Aの上記不法行為によって、次の損害を被った。 ア治療費等 1000円原告が被告Aの上記不法行為による不眠・動悸・フラッシュバック等について、令和3年9月9日、病院で受診したことによる治療費等 イ休業損害 1475万4638円原告が被告Aの上記不法行為によって対面での業務が困難となったことによる減収分(平成30年の所得346万6451円と平成31年(令和元年)の所得(0円)との差額346万6451円・令和2年の所得(0円)との差額346万6451円・令和3年の所得(36万0927円) との差額310万5524円・令和4年の所得(110万8345円)との差額235万8106円・令和5年の所得見込額(110万8345円)との差額235万8106円の合計)ウ慰謝料 差額310万5524円・令和4年の所得(110万8345円)との差額235万8106円・令和5年の所得見込額(110万8345円)との差額235万8106円の合計)ウ慰謝料 300万円(小計)1775万5638円 エ弁護士費用 177万5564円上記小計額の10%(小数点以下四捨五入)相当額合計1953万1202円(被告らの主張)否認又は争う。 (3) 被告Aの名誉棄損行為につき、原告の名誉を回復するのに別紙電子メール 文案記載の電子メールの送信を命じることが適当であるか。 (原告の主張)被告Aは、別紙当事者の主張一覧表記載番号4から番号9までのとおり、訴外Bや本件書籍のライター、本件書籍のデザインを担当した事務所の担当者らを宛先に入れた電子メールを原告に送信して、公然と原告の名誉を棄損 した。その回復のためには、被告会社において、上記関係者らに対して、別紙電子メール文案記載の電子メールを送信させることが必要不可欠である。 (被告会社の主張)否認又は争う。 (4) 原告は被告会社から本件委託契約に基づく報酬全額の支払を受ける権利を 失わないか。 (原告の主張)原告が本件委託契約に基づいて履行するべき業務を完了できなかったのは被告会社の編集部の不手際によるから、原告は、改正前民法536条1項に基づき、報酬の全額25万円(消費税別)の支払を受ける権利を失わない。 (被告会社の主張)原告が本件委託契約に基づいて履行するべき業務を完了できなかったことについて、被告会社の責めに帰するべき事由はない。 25万円(消費税別)の支払を受ける権利を失わない。 (被告会社の主張)原告が本件委託契約に基づいて履行するべき業務を完了できなかったことについて、被告会社の責めに帰するべき事由はない。 原告が上記業務の履行を完了したのは本件書籍の11ページ分であり、これに対する報酬額は5万5000円(1ページ当たり5000円の11ペー ジ分、消費税別)が相当である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告が本件書籍の編集業務に従事していた際、被告Aに原告に対する一方的な叱責等の不法行為があったか。)別紙当裁判所の判断一覧表中「前提事実」欄記載(別紙当事者の主張一覧表 中の「前提事実」欄の記載と同じ)の各事実のほか、証拠(当裁判所の判断一 覧表中「証拠」欄記載のもののほか、甲86、乙19、原告本人、被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、同表中「認定事実」欄記載の各事実が認められる(事実認定に係る補足説明は、同欄中の「(補足説明)」のとおり)。そして、被告Aの各言動が原告に対する不法行為に当たるか否かの判断は、同表中「評価」欄記載のとおりである。 以上により、被告Aの原告に対する不法行為は、次の限度で認められる。 ① 平成31年1月17日、ライター1名及びデザイン事務所担当者も宛先に入れて、原告につき「考え方が非常識」「失礼」「無礼」「非礼」と記載した電子メールを送信した(別紙当裁判所の判断一覧表中番号4)。 ② 同日、ライター1名及び訴外Bも宛先に入れて、原告が過去に被告会社の 業務をしたことがあったのにないとの虚偽の説明をしたと印象付け、本件書籍の編集業務の委託を受けた経緯を追及する記載をした電子メールを送信した(同番号6)。 ③ 同月18日、訴外Bも宛先に入れて、原告が過去に被告会社 ったのにないとの虚偽の説明をしたと印象付け、本件書籍の編集業務の委託を受けた経緯を追及する記載をした電子メールを送信した(同番号6)。 ③ 同月18日、訴外Bも宛先に入れて、原告が過去に被告会社の業務をした際の評判が悪かったとの印象を与え、当時の担当者から連絡を入れさせると の記載をした電子メールを送信した(同番号7)。 ④ 同日、訴外Bも宛先に入れて、原告について、できもしない約束をした、周りに迷惑をかけても平気なのかと責め、親の顔が見たいと記載した電子メールを送信した(同番号8)。 ⑤ 同日、訴外Bも宛先に入れて、業務上の必要がないのに、原告の年齢、出 身地、過去の職歴を問う電子メールを送信した(同表中番号9)。 ⑥ 同日、深夜である午前1時頃に電話をかけ、業務上の必要がないのに、原告の年齢や出身地等を尋ねた(同番号10)。 ⑦ 同日、原告が補助なしに行うことが困難な作業を、補助がなく独力でするしかないと強調して、あえて指示した(同番号11) 2 争点(2)(被告Aの不法行為により原告に生じた損害) (1) 前記1に認定した被告Aの原告に対する①から⑦までの各行為は、全体として、編集責任者という優越的関係に基づき業務の適正な範囲を超えて原告を非難したり困難な作業を補助なく指示したりしたことによりその人格権を侵害し、また、原告を本件書籍の編集業務に関与していた第三者にも知られる方法で侮辱することによりその名誉感情を傷つけて、原告に精神的な苦痛 を与えたものと認められる。 (2)ア次に、証拠(甲49の1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告の所得金額は、平成29年が約476万円、平成30年が約346万円であったが、本件書籍の編集業務を終えた平成31年(令和元年)及びその翌年である令和2 の1から6まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告の所得金額は、平成29年が約476万円、平成30年が約346万円であったが、本件書籍の編集業務を終えた平成31年(令和元年)及びその翌年である令和2年は0円、令和3年は約36万円、令和4年は約110 万円であったことが認められる。そして、原告の陳述書(甲86)中には、原告は、被告Aの言動により、平成31年1月8日から動悸がするなどの変調があり、その後、悪寒や震え等も生じ、これらの身体反応は本件書籍の編集業務が終了した後も治まらず、仕事ができなくなったとの記載部分があり、原告の本人尋問における供述中には、本件書籍の編集業務の終了 後、動悸や震えが出るようになって、仕事をする自信がなくなり、自分から企画を出すなどの活動ができなくなったとの供述部分がある(以下、陳述書中の記載部分と本人尋問における供述部分を合わせて「供述等」という。)。 イしかしながら、原告の上記供述等を裏付ける客観的な証拠はない。 この点、原告に生じたという上記身体症状について、原告の陳述書(甲86)中には、最も激しかったのは令和元年(平成31年)夏から令和3年冬であったとの記載部分があるが、原告が本件書籍の編集業務を終えた平成31年1月頃から上記の間までに、原告に生じたという身体反応について原告が医師による診療を受けたとの事実は認められない。証拠(甲1 7、甲18)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、令和3年9月9日、医 師の診察を受けたことが認められるが、これが原告に生じたという上記身体反応についての診療であったと認めるに足りる証拠はない。 また、原告につき医師が作成した診断書(甲53)中には、原告は、令和4年12月12日、同年6月27日以来の再来新患として、上記医師の診察を受 についての診療であったと認めるに足りる証拠はない。 また、原告につき医師が作成した診断書(甲53)中には、原告は、令和4年12月12日、同年6月27日以来の再来新患として、上記医師の診察を受け、平成31年1月17日から同月18日にかけてのハラスメン トにより加害者の名前等に接するだけで動悸や過呼吸が起こると訴えたので、同医師は、抗不安薬等を処方したとの記載がある。しかし、この記載によれば、原告は、本件書籍の編集業務に従事していた当時から身体反応があったというのに、上記業務が終了した平成31年1月から約3年近くが経過した令和4年12月になって初めて、再来新患(判決注:初診の趣 旨と解される。)として同医師に上記のとおり訴えたといい、その約半年前である同年6月に同医師の診察を受けた際には、その旨訴えなかったというのであって、不自然、不合理である。また、原告に身体反応が生じ始めたという時期について、上記医師作成の診断書(甲53)中の記載は、原告の陳述書(甲86)中の前記アの記載部分と食い違っている。以上によ れば、上記医師作成の診断書(甲53)によっても、被告Aの原告に対する言動によって原告にその訴えた動悸や過呼吸等の身体症状が生じたとの事実は認められない。 ウ以上に述べたところにより、原告の前記アの供述等によっても、原告が被告Aの前記1の不法行為によって生じた身体反応により就労困難となっ て休業損害や治療費等の損害が生じたとの事実は認められない。したがって、被告Aの上記不法行為により原告に生じた損害(弁護士費用を除く。)は、これによって原告がその人格権を侵害され名誉感情を傷つけられた精神的苦痛に限られる。 (3)ア前記1に認定した被告Aの各行為は、原告を直接的に侮辱する文言を用 いて原告を攻撃し く。)は、これによって原告がその人格権を侵害され名誉感情を傷つけられた精神的苦痛に限られる。 (3)ア前記1に認定した被告Aの各行為は、原告を直接的に侮辱する文言を用 いて原告を攻撃し、原告が虚偽の説明をしたとかその業務の評判が悪かっ たと匂わせて原告に苦痛を与えるとともに、電子メールを原告本人のみならずライターやデザイン事務所担当者、他の編集部員にまで送信して原告の名誉感情を傷つけたものである。他方、被告Aの上記各行為は、⑥を除きいずれも面前での発言ではなく電子メールによるものであり、また、⑦以外の原告を非難する電子メールが送信された期間は2日間という短期間 であり、その通数は合計5通のみであって、原告以外の送信先は多くてもライター1名、デザイン事務所担当者数名、編集者である訴外Bという範囲にとどまるものであった。 これらの事情を総合考慮すれば、被告Aの原告に対する上記不法行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては、50万円が相当 である。 イまた、弁論の全趣旨によれば、原告は、本件訴訟の提起及び追行を本件の訴訟代理人弁護士に委任したことが認められ、このために要する弁護士費用のうち、上記慰謝料額の10%に相当する5万円は、被告Aの原告に対する不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。 (4) 以上の次第で、被告Aは、原告に対し、前記1に認定した不法行為によって原告に生じた上記損害を賠償する責任を負う。 そして、前提事実(1)のとおり、被告Aは被告会社が発行する雑誌の副編集長の地位にあり、被告会社はその事業のために被告Aを使用していたものであるから、上記損害は、被告Aが本件書籍の編集という被告会社の事業の執 行につき原告に加えた損害と認められ、被告会社は、原告に対し 位にあり、被告会社はその事業のために被告Aを使用していたものであるから、上記損害は、被告Aが本件書籍の編集という被告会社の事業の執 行につき原告に加えた損害と認められ、被告会社は、原告に対し、被告Aと連帯して上記損害を賠償する責任を負う。 3 争点(3)(被告Aの名誉棄損行為につき、原告の名誉を回復するのに別紙電子メール文案記載の電子メールの送信を命じることが適当であるか。)前記1に認定した被告Aの原告に対する不法行為は、原告を侮辱してその名 誉感情を傷つける言動を含むものであるが、原告に係る具体的な事実を摘示し て原告の社会的評価を低下させた部分は認められず、原告の名誉を棄損するものとは認められない。 したがって、民法723条に基づいて原状回復のための処分を求める原告の請求は理由がない。 4 争点(4)(原告は被告会社から本件委託契約に基づく報酬全額の支払を受け る権利を失わないか。)(1) 証拠(甲19、甲70、甲77、甲82、甲87、甲91、乙1、乙3、乙5、乙6、乙9、乙10、乙12、乙14、乙16、乙18、乙19、原告本人、被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告が本件委託契約締結時に受任した編集業務は、全体で約130ページの本件書籍のうち51ペー ジの編集を担当するというものであったが、原告の編集業務の進行状況により、平成30年12月21日、その担当するページは42ページに減らされ、さらに、平成31年1月8日には18ページ、同月15日には14ページに減らされたこと、この間の同月8日から同月16日までのうちに、被告Aと訴外Bにおいて、原告が初校の作成を完了していなかった原告担当部分の編 集業務を順次引き取ってこれらを処理し、最終的に、原告が初校の作成までの編集業務を 日から同月16日までのうちに、被告Aと訴外Bにおいて、原告が初校の作成を完了していなかった原告担当部分の編 集業務を順次引き取ってこれらを処理し、最終的に、原告が初校の作成までの編集業務を行ったのは合計11ページ(J)のみであったことが認められる。 (2)ア前提事実(2)のとおり、本件書籍の編集業務は、編集責任者である被告A、編集者である原告及び訴外Bの3名が分担する体制で行われた。そして、 前記(1)に認定のとおり、原告が本件委託契約締結時に受任した編集業務は、全体で約130ページの本件書籍のうち51ページを担当するというものであり、その担当ページ数は被告A及び訴外Bと比べて突出して多いものではなかった。また、証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、被告A及び訴外Bと異なり、原告が執筆まで担当することが当初予定されてい たページはなかったことが認められる。 このように、原告の担当する編集業務が、被告A及び訴外Bの担当する編集業務と比較して、格別、その分量が多かったとは認められない。 イ次に、前提事実(2)のとおり、本件書籍は、当初から平成31年1月29日を発売日として発行されることを予定して編集業務が開始され、当初の予定から遅れることなく、上記同日、発売された。そして、この間、被告 A、原告、訴外Bに加えて、新たに編集者が増やされたとの事実は認められず、かえって、証拠(甲70、甲77、甲82、乙5、乙9、乙10、乙12、乙14、乙16、乙19、原告本人、被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、平成31年1月8日以降、同月21日までの約2週間のうちに、被告Aや訴外Bが、各自の担当する編集業務に加えて、原告の担当 であった編集業務を順次引き取り、最終的には原告の担当のうち40ページ分(原告 年1月8日以降、同月21日までの約2週間のうちに、被告Aや訴外Bが、各自の担当する編集業務に加えて、原告の担当 であった編集業務を順次引き取り、最終的には原告の担当のうち40ページ分(原告が当初担当していた51ページから最後まで編集業務を実行した11ページを差し引いたページ数)の編集業務を引き取って、各自の担当業務と並行してこれを処理し、本件書籍の編集業務の全部をその発売予定日を変更せずに間に合うよう完了させることができたことが認められる。 そして、この間、原告が担当していた部分以外の編集業務に原告の担当業務と同じような遅れが生じていたとの事実を認めるに足りる証拠はない。 これらのことからも、原告が本件委託契約に基づいて担当することとなった編集業務が、一人で処理するのでは業務の遅滞を免れないような大量あるいは困難なものであったとは認め難い。 ウこの点、原告の陳述書(甲86)及びその別紙(甲86の2)並びに本人尋問における供述中には、原告の担当する編集業務に遅れが生じたのは、被告Aから業務に係る指示がなかったことによるとの供述等がある。 しかしながら、証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、本件委託契約において、本件書籍の各記事のうち原告がその編集業務を担当する箇所は 特定されており、その執筆者も明らかであったことが認められ、また、原 告の担当する本件書籍の編集業務が、執筆をするライターと相談して取材をし、ライターの執筆した原稿を受領して、初校を作成するためにデザイン事務所と打合せをして素材のやり取りをしないと進まないものであることは、誰から説明を受けずとも明らかというべきであって、編集責任者である被告Aの指示を待たずとも、編集者たる原告が自ら動いてライター やデザイン事務所担当者らと相談し ないと進まないものであることは、誰から説明を受けずとも明らかというべきであって、編集責任者である被告Aの指示を待たずとも、編集者たる原告が自ら動いてライター やデザイン事務所担当者らと相談して指示をすることにより行うことができたものと考えられる。したがって、原告が被告Aの個別具体的な指示なしにその編集業務を行うことが客観的にみて不可能であったとは、容易に認められないし、仮に被告Aの指示が必要であったのだとすれば、原告の方から被告Aに対して指示を求めてその担当業務を進めていてしかる べきである。かえって、証拠(甲71から甲73まで、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、取材先を見つけることに難儀していたが、被告Aらに相談して助力を求めたことはなかったことが認められ、このような原告の対応等により原告の業務の遅滞が生じたとも推認される。 以上に述べたところにより、原告の上記供述等は採用できない。 エまた、原告の陳述書(甲86)及び本人尋問における供述中には、原告の担当する編集業務のうち、表を作成する作業が、当初予定されていなかったものであって、負担が大きかったとの供述等がある。 しかし、表計算ソフトを利用してデータを入力することがその処理に何日もあるいは何週間も要するような過重な作業であったとは考えられな いし、その作業量が膨大であったとか、入力する数値を自分で調べたり複雑な計算をしたりすることを要するなどの格別の困難があったと認めるに足りる的確な客観的証拠はなく、かえって、証拠(乙6、原告本人、被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、これは取材先から受領した資料に基づいて数値を入力するにとどまるものであったことが認められる。 以上に述べたところに照らし、原告の上記供述等は採用しない。 )及び弁論の全趣旨によれば、これは取材先から受領した資料に基づいて数値を入力するにとどまるものであったことが認められる。 以上に述べたところに照らし、原告の上記供述等は採用しない。 オ前記(1)に認定のとおり、原告が完了させられずに被告A及び訴外Bが引き取った業務は、いずれも初校を作成する業務であって、初校作成後のものではないから、訴外Cが初校作成後の原告の業務を引き継ぐ予定であったとか、原告の初校作成後の業務を引き継ぐ者がなかったなどといったことが原告の編集業務の遅れや不履行の原因であったとは認め得ない。 (3) 前記(2)に説示したところによれば、原告が、本件委託契約において本件書籍のうち51ページの編集業務を受任したが、初校の作成までその編集業務を履行した部分が11ページのみであり、その余の部分についてその編集業務を履行できなかったことについて、被告会社の責めに帰するべき事由は認められない。したがって、原告は、被告会社に対し、本件委託契約に基づく 報酬全額を請求できる権利を失わないものとは認められない。原告は、被告会社に対し、本件委任契約に基づく編集業務につき既に履行した割合に応じて、被告会社が支払義務を認める5万9400円(約定の報酬25万円(消費税別)を原告が編集業務を受任した本件書籍のページ数である51で除して1000円未満を切り上げた1ページ当たりの単価5000円に、原告が 編集業務として初校の作成まで履行したページ数である11を乗じ、原告が上記業務を終了した平成31年1月当時の消費税率である8%を乗じた金額)の限度でその報酬を請求できるにとどまる。 5 結論よって、原告の請求は、被告Aに対しては不法行為、被告会社に対しては使用 者責任に基づき連帯して損害金55万円( である8%を乗じた金額)の限度でその報酬を請求できるにとどまる。 5 結論よって、原告の請求は、被告Aに対しては不法行為、被告会社に対しては使用 者責任に基づき連帯して損害金55万円(慰謝料50万円と弁護士費用5万円の合計)及びこれに対する不法行為の後の日である平成31年1月19日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告会社に対して本件委託契約に基づき報酬5万9400円及びこれに対する成果物の引渡しの日である同月21日から60日後の日の翌日である同年3月23日 から支払済みまで下請代金支払遅延等防止法第4条の2の規定による遅延利息 の率を定める規則所定の利率年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限りにおいてこれらを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文、65条1項本文、61条を、仮執行の宣言につき同法同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第50部 裁判官阿部雅彦 (別紙)電子メール文案関係者各位弊社従業員が2019年1月19日に弊社編集部員や弾デザイン事務所様および訴外D様に送信した編集者原告Eに関し、「失礼」「無礼」非礼」とするメール、並 びに弊社従業員が同日、弊社編集部員を宛先に加えて、編集者原告E様に関して「親の顔が見たい」などと書いた電子メールを送信したことは、原告E様の名誉を毀損するものと裁判所で認定されました。ここに原告E様に対してお詫びし、関係者皆様に、前記弊社従業員の電子メールによる発言を撤回させていただきます。 いた電子メールを送信したことは、原告E様の名誉を毀損するものと裁判所で認定されました。ここに原告E様に対してお詫びし、関係者皆様に、前記弊社従業員の電子メールによる発言を撤回させていただきます。 草々

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る