主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人河野曄二の上告理由について。原判決が確定したところによれば、新潟市所在のD組合(以下、組合という)の常務理事である上告人は、組合業務のため、日常上告人所有の本件自動車の使用を許すことがあつたが、同組合は、従業員数約七名の小規模のもので、自動車運転に専従する者がなく、自動車運転免許をもつ預金係見習の第一審被告Eがしばしば組合所有の自動車を運転して組合の業務に従事し、また、上告人に命ぜられその私用のために本件自動車を運転したこともあつたこと、上告人は、以前出張の際に、組合従業員に依頼して本件自動車を修理に出したことがあり、そのときには、組合従業員が修理の終わつた本件自動車を修理工場から受け取つて組合事務所まで運転して持ち帰つたこと、上告人は、昭和四一年七月一九日(原判決七枚目裏七行目に昭和四二年とあるのは同四一年の誤記と認められる)から同年八月二五日までの間組合業務のため神奈川、東京方面に出張するにあたり、組合営業部長であつてEの直属上司である訴外Fに鍵とともにこれを託し修理に出すことを依頼して出発したところ、その際、修理が出張期間中に完了することを予想して、その不在中の本件自動車の管理をFに一任したが、同人以外の者が本件自動車に触れることを禁ずる旨とくに指示したことはなく、むしろ、従前の事情から、組合事務所と修理工場との間の往復には、Fの指示により、Eを含む組合従業員が運転にあたるものと予想していたこと、Fは、右依頼に基づき、間もなくGモーター株式会社流作場サービス工場に鍵をそえて本件自動車を修理に出し、同年八月三日に修理完了予定の旨連絡を受けるや、その宰領方(その趣旨は修理完了後の本件自動車を修理工場から 頼に基づき、間もなくGモーター株式会社流作場サービス工場に鍵をそえて本件自動車を修理に出し、同年八月三日に修理完了予定の旨連絡を受けるや、その宰領方(その趣旨は修理完了後の本件自動車を修理工場から引き- 1 -取り組合事務所まで運転して帰ることを含むものと解される)を組合従業員Hに指示したこと、Hは、Eにこのことを告げ両名相談のうえ、本件自動車を無断使用して長岡市に祭見物に赴いたうえ、八月三日午前九時までにこれを組合事務所に届けておこうという計画をたて、同月二日夕刻、Eが右修理工場に赴き、修理の終わつた本件自動車を鍵とともに受け取り、Hを乗せてこれを運転して長岡市に祭見物に赴き、翌三日午前六時一五分ごろ、新潟市へ向けての帰途本件事故を惹起したものであること、以上の事実が認められるというのであり、この点の原審の認定判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができないものではない。 、八月三日午前九時までにこれを組合事務所に届けておこうという計画をたて、同月二日夕刻、Eが右修理工場に赴き、修理の終わつた本件自動車を鍵とともに受け取り、Hを乗せてこれを運転して長岡市に祭見物に赴き、翌三日午前六時一五分ごろ、新潟市へ向けての帰途本件事故を惹起したものであること、以上の事実が認められるというのであり、この点の原審の認定判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができないものではない。ところで、一般に、自動車が修理のために自動車修理業者に預けられている間は、修理業者がその運行を支配すると解されるのであるが、修理を終えた自動車が修理業者から注文者に返還されたときには、特段の事情のないかぎり、その引渡の時以後の運行は注文者の支配下にあるものと解すべきところ、右の確定事実関係によれば、上告人から本件自動車を修理に出すことを依頼されてその前後の管理を一任されていたFが、修理工場から本件自動車を引き取ることをHに指示し、Hの意を受けたEが修理工場に赴き修理業者から本件自動車の引渡を受けたというのであり、本件自動車がEに引き渡されたことは、原判示のように上告人の了解の範囲内のことであつたと解するのが相当であるから、E、Hらの内心の意図いかんにかかわらず、客観的には、右引渡により上告人が本件自動車の運行に対する支配を取得したものと認めることができる。そ の了解の範囲内のことであつたと解するのが相当であるから、E、Hらの内心の意図いかんにかかわらず、客観的には、右引渡により上告人が本件自動車の運行に対する支配を取得したものと認めることができる。そして、その後、Eが本件自動車を組合事務所のFの許に届ける予定のもとに、Fに無断で私用のため本件自動車を運転して新潟市から長岡市まで赴いただけでは、いまだ上告人の運行支配が排除されたものとはいえないとした原判決の判断も、正当として是認することができる。さらに、論旨は、原判決が運行利益の帰属の有無について判断をしていないことを違法と主張する。しかし、右の確定事実関係によれば、上告人、FおよびEない- 2 -しHとの間には前示のような関係があり、Eは、上告人のためにするものとして修理業者から本件自動車の引渡を受け、その運行を開始したのであり、前示の事情のもとで私用のため運転したことも、Fひいては上告人に本件自動車を届ける過程における一齣の出来事とみられるのであつて、当時のEの運行を全体として客観的に観察するとき、本件自動車の運行が上告人のためになされていたものと認めることができるのである。 い- 2 -しHとの間には前示のような関係があり、Eは、上告人のためにするものとして修理業者から本件自動車の引渡を受け、その運行を開始したのであり、前示の事情のもとで私用のため運転したことも、Fひいては上告人に本件自動車を届ける過程における一齣の出来事とみられるのであつて、当時のEの運行を全体として客観的に観察するとき、本件自動車の運行が上告人のためになされていたものと認めることができるのである。原判決も、このような趣旨において、前示事実関係を判示することにより、とくに上告人への運行利益の帰属につき説示することがないとしても、おのずから、これを肯定したものと解することができる。したがつて、前示確定事実関係のもとにおいて、本件事故により被上告人の被つた損害の賠償につき、上告人が自動車損害賠償保障法三条所定の自己のために自動車を運行の用に供する者としての責任を負うべきであるとした原判決の判断は正当であり、原判決の認定判断に所論の違法はなく、したがつて、右判断の違法を前提として原判決の違憲をいう論旨も、その前提を欠くものであつて、論旨は、すべて採用するこ うべきであるとした原判決の判断は正当であり、原判決の認定判断に所論の違法はなく、したがつて、右判断の違法を前提として原判決の違憲をいう論旨も、その前提を欠くものであつて、論旨は、すべて採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官岸盛一裁判官大隅健一郎裁判官藤林益三裁判官下田武三裁判官岩田誠は海外出張中につき署名押印することができない裁判長裁判官岸盛一- 3 -
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