- 1 -平成22年2月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(行ケ)第10053号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成21年12月16日判決原告X被告特許庁長官同指定代理人塚中哲雄同星野紹英同北村明弘同小林和男主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求特許庁が不服2004-6542号事件について平成21年2月5日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が名称を「抗脂血及び抗肥満剤」とする発明(本願発明)につき特許出願をしたところ,特許庁から拒絶査定を受け,これを不服として審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 争点は,本願発明が「日本農芸化学会誌,1991.03.15 発行,65 巻03 号1991,年度大会(京都)講演要旨集,340頁動物-38-2Gp1『フルクトシルトランスフェラーゼの蔗糖食ラットの血清トリグリセライドおよび脂肪組織に及ぼす影響高橋昌夫X甲1以下引用文献というに記載された発明以』,」(。 「」。)(下「引用発明」という)から容易に想到することができるか否かである。 。 - 2 - 特許庁における手続の経緯原告は,平成4年6月10日,本願発明につき出願し(平成4年特許願第194472号。甲2,平成15年5月12日,同年12月22日付けでそれぞれ補正)をした(甲3,4)が,特許庁は,同年10月21日付けで拒絶理由通知をし(乙5,平成16年2月27日付けで拒絶査定をした。 )原告は,同年4月1日,上記拒絶査定に対する不服審判請求をし,平成20年3月24日付けで補正を 特許庁は,同年10月21日付けで拒絶理由通知をし(乙5,平成16年2月27日付けで拒絶査定をした。 )原告は,同年4月1日,上記拒絶査定に対する不服審判請求をし,平成20年3月24日付けで補正をした(甲5。 )特許庁は,上記審判請求を不服2004-6542号事件として審理し,平成20年1月23日付けで拒絶理由通知をし(甲7,平成21年2月5日「本件審判),の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は,同月17日,原告に送達。 された。 本願発明の内容本願発明は,平成20年3月24日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下【請求項1】に記載されたものを「本願発明」という。 。)「請求項1】抗脂血性の有効成分が,ストレプトコッカス・サリバリウスに【よって生成されるか,又は前記ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるレバンからなる,抗肥満剤」。 「請求項2】抗脂血性の有効成分が,ストレプトコッカス・サリバリウスに【よって生成されるか,又は前記ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるレバンの部分加水分解物からなる,抗肥満剤」。 審決の内容審決は,次のとおり,引用発明から本願発明を想到することは容易であったとして,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした(なお,以下において引用した審決中の文献等の表記は,本判決の表記に統一した。 。)- 3 -(1) 引用発明「・・・日本農芸化学会誌,1991.03.15 発行,65 巻03 号1991 年度大会(京都)講演要旨集,340頁動物-38-2Gp1『フルクトシルトランスフェラーゼの蔗糖食ラットの血清トリグリセライド及び脂肪組 ,1991.03.15 発行,65 巻03 号1991 年度大会(京都)講演要旨集,340頁動物-38-2Gp1『フルクトシルトランスフェラーゼの蔗糖食ラットの血清トリグリセライド及び脂肪組織に及ぼす影響』高橋昌夫,X(以下『引用文献』とい,う)には,次の事項が記載されている(A」。 。 )「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされている。納豆菌やヒト消化管に存在するStreptococcussalivarius などは,フルクトシルトランスフェラーゼ(FTase)を産生する。本酵素は可溶性の非消化性フルクタン(レバン)を生成するので,蔗糖の過剰摂取軽減に寄与することが考えられ,ラットを用い,これを検討した。ラットに蔗糖食(20%,40%)またはこれにS.salivarius の菌体外FTase を添加した(1g当り毎分約0.5gの多糖を生成するに要する酵素を0.5%)餌を与え,毎週血清TG を,4週間目に精巣近傍の脂肪組織重量を測定した。FTase 投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められた」。 引用文献にはラットにS.salivarius の菌体外FTase を添加した餌を与えたところFTase「,,投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたことが記載されている(上記(A。したがって,引用文献には『S.salivarius の菌体外FTase)),からなる血清TG の上昇抑制及び脂肪組織重量増加抑制剤(以下『引用発明』という)が記』,。 載されているものと認められる」。 (2) 引用発明と本願発明の一致点及び相違点「本願発明の有効成分であるレバンは,ストレプトコッカス・サリバリウス,又は,ストレプト 明』という)が記』,。 載されているものと認められる」。 (2) 引用発明と本願発明の一致点及び相違点「本願発明の有効成分であるレバンは,ストレプトコッカス・サリバリウス,又は,ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるものであるから,ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるものである態様は『抗脂血性の有効成分が,ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるレバンからなる,抗肥満剤』である」。 。 「そして,引用発明のS.salivarius の菌体外FTase は可溶性の非消化性フルクタン(レバン)を生成する酵素であり,本願発明の,レバンを生成する酵素である『ストレプトコッカス- 4 -・サリバリウスが産生する酵素』に相当する」。 「そうすると,本願発明と,引用発明は『有効成分として,ストレプトコッカス・サリバ,リウスが産生するレバン生成酵素を利用する薬剤』である点で一致し,(相違点1)有効成分が,本願発明では抗脂血性のストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるレバンであるのに対して,引用発明ではストレプトコッカス・サリバリウスが産生するレバン生成酵素(FTase)自体である点(相違点2)薬剤が,本願発明では抗肥満剤であるのに対して,引用発明では血清TG の上昇抑制及び脂肪組織重量増加抑制剤である点で相違する」。 (3) 容易想到性についてア相違点1について「引用文献には,Streptococcussalivarius が産生するFTase は可溶性の非消化性フルクタンレバンを生成するので蔗糖の過剰摂取軽減に寄与すると考えられラットにS.salivarius(),,の菌体外FTase を添加した餌を与えたところ,FTas se は可溶性の非消化性フルクタンレバンを生成するので蔗糖の過剰摂取軽減に寄与すると考えられラットにS.salivarius(),,の菌体外FTase を添加した餌を与えたところ,FTase 投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたことが記載されているのであるから,引用文献には,投与されたFTase は,レバンを生成することによって,血清中の中性脂肪である血清TGの上昇抑制や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると認められる。 したがって,引用発明において,有効成分として,ストレプトコッカス・サリバリウスが産生するレバン生成酵素(FTase)自体に代えて,ストレプトコッカス・サリバリウスが産生する酵素によって生成されるレバンを用いてみること,有効成分のレバンが抗脂血性であることは,当業者が容易に想到し得ることである」。 イ相違点2について「血清TG の上昇抑制び脂肪組織重量増加抑制は肥満抑制につながる。したがって,引用発明の血清TG の上昇抑制及び脂肪組織重量増加抑制剤を抗肥満剤とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 なお,本願明細書においても,レバン投与の効果を,コレステロール値や脂質沈殿面積と共- 5 -に,血清TG(トリグリセリド)値,脂肪組織重量により評価している」。 (4) 作用効果について「,。」本願明細書の記載からは本願発明の効果が当業者の予想を超えるものとは認められない第3原告主張の要旨審決は,次のとおり,引用発明の認定及び判断を誤ったものである。 前提として,FTase とは,果糖とブドウ糖とが結合してなるショ糖に触媒的に作用し,ショ糖を構成している果糖を消化不能のレバンに変換するとともに,もう一方の構成成分のブドウ糖を遊離する ある。 前提として,FTase とは,果糖とブドウ糖とが結合してなるショ糖に触媒的に作用し,ショ糖を構成している果糖を消化不能のレバンに変換するとともに,もう一方の構成成分のブドウ糖を遊離する酵素である。そして,FTase の担う反応において,レバンの生成量はレバンの由来となったショ糖を構成していた果糖部分とほぼ同重量である。 審決は,引用文献上の「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされている」との文を除外したり,ショ糖食を与えているにもか。 かわらず「FTase を添加した餌を与えたところ」と通常の餌を与えたかのように,,,「」,「()記載しさらにレバンの特徴を示す非消化性の用語を削除したりレバンを生成するので」とあるのを「レバンを生成することによって」という表現に変えるなど,引用文献に記載された実験条件を根拠もなく取り払い,重要な文や語句を削除及び変更して引用文献の主旨を曲げ,あたかもFTase により生成されたレバンによって血清TG の上昇抑制や脂肪組織重量の増加抑制が示されたと引用文献が示唆していると受け取ることができる文を作り上げ,この作文に基づいて誤った判断を導いたものである。 実際には,引用文献においては,生成されるレバンは非消化性であるという以外の生理的意義は示されておらず,レバン自体がヒトあるいは動物に何らかの(生理的)作用を有しているか否かについては全く触れられておらず,示唆もない。 審決は「引用文献には,投与されたFTase は,レバンを生成することによ,って,血清中の中性脂肪である血清TG の上昇抑制や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると認められる」と認定するが,これは誤りである。 - 6 -引用文献に記載されているとおり「蔗糖の ,血清中の中性脂肪である血清TG の上昇抑制や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると認められる」と認定するが,これは誤りである。 - 6 -引用文献に記載されているとおり「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強い」とされていること及びFTase の作用特性からすれば,引用文献の「本酵素は可溶性の非消化性フルクタン(レバン)を生成するので,蔗糖の過剰摂取軽減に寄与することが考えられ」の文意は「本酵素(FTase)がショ糖の果,糖部分から非消化性のレバンを生成するので,その分だけ吸収されるべき果糖が少なくなることで,ショ糖の過剰摂取の軽減に寄与する」との意味である(以下,この考えを「可能性A」という。 。)また,目の前にFTase によってショ糖がレバンとブドウ糖とに変化した物体があれば,この物体を食べた場合,元のショ糖に比べ,摂取カロリーが50%程度減少し,血中や体の脂肪の増加が少ないと考えて不合理ではなく「FTase は消化管で,」,も実際にショ糖に作用し得るかということが引用文献の検討課題であるにすぎずレバンが何か生理作用を持っていると考える理由はない。 そして,レバンが非消化性で吸収されないため,生じたレバンの分だけ果糖の吸収が減少することは確かであり,同事実だけで引用文献に記述されている血清TGの上昇抑制や脂肪組織重量の増加抑制の効果は説明可能である。 このように,相違点2についての判断を検討するまでもなく,審決の上記認定・判断は誤りである。 本件において審査官が乙2特公昭45-21633号公報乙3特,,(),(),(,(),開昭49-101593号公報乙4福岡女子大学家政学部紀要VOL151984p33-39)により,各種レバンが血中コレステロール 633号公報乙3特,,(),(),(,(),開昭49-101593号公報乙4福岡女子大学家政学部紀要VOL151984p33-39)により,各種レバンが血中コレステロール抑制作用等を有することは公知であり,ストレプトコッカス・サリバリウスのレバンを抗脂血,抗肥満剤の用途に用いることは当業者が容易に行うことができるとの理由により,拒絶査定をしたのに対し,原告は,不服審判請求を行い,バチルス属起源のレバンに抗脂血作用がないと記載された論文等により,また,乙2ないし4につき審査官とは異なる解釈,評価をすることにより,レバンはその起源によって理化学的性質や生理作用が大きく異なるため,本願発明は当業者にとって容易に想到し得ないと主張したところ,- 7 -特許庁は,審決ではこの点について判断をしていない。 審決や不服審判における拒絶理由通知書(甲7)は,引用文献以外の文献について言及しておらず,審判官は,引用文献の記載のみから論理的に「有効成分のレバンが抗脂血性であることは当業者が容易に想到し得る」旨の結論を導いたものである。 それにもかかわらず,被告は,乙2ないし4を根拠として「特定のレバン生成,菌に限定されることなくレバンに血中コレステロール抑制作用があることは,本願出願前に当業者にとって技術常識であった」旨主張するが,これは,審決が不当であることを認めているに等しく,公知例を実質的に変更するものであって,審判手続で判断を示さなかった公知例に基づく拒絶理由を審決取消訴訟で主張することは違法である。 具体的に各文献をみると,レバンに抗脂血性を実験的に認めた確かな文献は1報(乙2)にとどまり,それは,シュードモナス属細菌由来の,公知のレバンとは化学構造の異なる新規なレバンについてのみであり,バチルス属細菌由来のレバンの レバンに抗脂血性を実験的に認めた確かな文献は1報(乙2)にとどまり,それは,シュードモナス属細菌由来の,公知のレバンとは化学構造の異なる新規なレバンについてのみであり,バチルス属細菌由来のレバンの抗脂血性又はその裏付けとなる物理化学的特性は,動物実験,試験管内実験の両面から各1報ずつ,計2報文(乙8,乙4)により否定されており(乙4記載のとおり,コレスチラミンの胆汁酸結合能は納豆菌のレバンの37倍以上であることからすれば,納豆菌のレバンが,摂取可能な量でコレステロール低下活性を示すことは困難であり,コレステロール低下剤となり得ないことが明らかである。なお,被告は,低い値でも,ゼロでない以上,コレステロールレベルの低下を示すと解するようだが,このような見解は研究者の常識からかけ離れたものである,レバンと抗。)脂血性に関する科学的報文は以上の3報しかなく,実験的,文献的根拠がなく,単に期待を述べただけの報文(乙3)を含めて4報で,極めて少ない。 以上のとおり「特定のレバン生成菌に限定されることなくレバンに血中コレス,テロール抑制作用があることは,本願出願前に当業者にとって技術常識であった」との被告の主張は理由がない。レバンは,果糖を構成単位とする特定の結合様式を- 8 -持つ多糖体の総称であり,その生成起源によって,分子構造や分子量等理化学的特性も生理作用も異なる別の物質とみるべきであるから,レバンの抗脂血性を論じるには科学的実験によらなければならず,本願発明は容易になし得るものではない。 FTase は,餌が口に入り,唾液と混ざった直後から作用し始めるものと解されるが,食餌の胃内滞留時間は数時間以上であり,小腸に至るまでに,ショ糖の相当の部分がFTase の作用を受けると解される。したがって,引用文献に記載された動物実験の結果 から作用し始めるものと解されるが,食餌の胃内滞留時間は数時間以上であり,小腸に至るまでに,ショ糖の相当の部分がFTase の作用を受けると解される。したがって,引用文献に記載された動物実験の結果は,FTase の作用によってレバンが生成した分の果糖の吸収がされなかったことによるものと解され,生成するレバンが抗脂血性を有すると解すべき必然性はない。 また,FTase と腸粘膜細胞のショ糖分解酵素(β-フルクトフラノシダーゼ)との競合が起こるにせよ,FTase は腸内容物中に均等に分布し,腸内容物中のどのショ糖にも作用し得るのに対し,ショ糖分解酵素は腸粘膜に存在するので,腸内容物のショ糖のうち腸粘膜に到達したショ糖にしか作用しないことを考慮すれば,小腸においても無視できない程度のショ糖がFTase の作用を受けると推察される。 なお,動物実験に使用したFTase 自身が,又はFTase に含まれる不純物が,脂質上昇抑制作用を有する可能性もある。 第4被告の反論(取消事由に対して) 審決は引用文献上の記載の一部を切り出し引用文献にはStreptococcus,,「salivarius が産生するFTase は可溶性の非消化性フルクタン(レバン)を生成するので,蔗糖の過剰摂取軽減に寄与すると考えられ,ラットにS.salivarius の菌体外FTase を添加した餌を与えたところ,FTase 投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたこと」が記載されている旨認定したものであり,誤りはない。 原告は,あたかも審決が意図的に文の除外や用語の変更を行ったかのように主張するが「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされて,」,,「」いることは当業者の技術常識に は,あたかも審決が意図的に文の除外や用語の変更を行ったかのように主張するが「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされて,」,,「」いることは当業者の技術常識に属することであるから除外したものであり餌- 9 -は,引用箇所に「餌を与え」と記載してあったため,そのまま「餌」と記載しただけで,他意はない。 審決は「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされ,ている」ことが当業者にとって技術常識であること「FTase を添加した餌を与え,たところ」の「餌」は当然にショ糖食であることを,いずれも前提とした判断をしている。 2(1)仮に,引用文献の著者(原告はその一人である)の主観的な意図が原告。 主張のとおり(可能性Aと同旨の内容)であるとしても,引用文献に記載された,ラットに一方はショ糖食,他方はショ糖食にS.salivarius の菌体外FTase を添加した餌を与えた動物実験の結果,S.salivarius の菌体外FTase 投与により血清TGの有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたとの客観的事実から,以下のとおり,当業者ならば,さらに,引用文献は「投与されたFTase,は,レバンを生成することによって,血清中の中性脂肪である血清TG の上昇抑制や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与する」ことを示唆するものであると理解するものであり,審決に誤りはない。 (2)シュードモナス(Pseudomonas)属及びバチルス(Bacillus)属に属する菌が生成するレバンに血中コレステロール抑制作用があることは,本願出願のほぼ23年前から8年前にわたって特許文献や学術雑誌に掲載されており,乙4の公開日からも8年という期間は,当業者が文献に接し,その内容を知るため ンに血中コレステロール抑制作用があることは,本願出願のほぼ23年前から8年前にわたって特許文献や学術雑誌に掲載されており,乙4の公開日からも8年という期間は,当業者が文献に接し,その内容を知るための期間としては十分に長い期間であって,特定のレバン生成菌に限定されることなくレバンに血中コレステロール抑制作用があることは,本願出願前に当業者にとって技術常識であった(乙2ないし4参照。 )また,FTase がショ糖に触媒的に作用し,ショ糖からレバンとブドウ糖を生成する酵素であることもまた技術常識である(乙1参照。 ),,,,そうすると当業者が引用文献の記載に接すればこれらの技術常識に照らし引用文献の著者の主観的な意図とは別に,引用文献に記載された「ラットに蔗糖食- 10 -と蔗糖食にS.salivarius の菌体外FTase を添加した餌を与えた動物実験の結果,S.salivarius の菌体外FTase 投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められた」との客観的事実から,果糖食(判決注:正しくは「ショ糖食」と解される)に添加されたS.salivarius の菌体外FTase がショ。 糖に触媒的に作用して生成したレバンに血中コレステロール抑制作用があり,このため,血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたのではないかと考えるのは自然である。 したがって,審決の「引用文献には,投与されたFTase は,レバンを生成することによって,血清中の中性脂肪である血清TG の上昇抑制や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると認められる」との認定に誤りはない。 (3) 通常,経口で摂取したショ糖は,ラットの腸内の粘膜細胞に存在するβ-フルクトフラノシダーゼにより や,脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると認められる」との認定に誤りはない。 (3) 通常,経口で摂取したショ糖は,ラットの腸内の粘膜細胞に存在するβ-フルクトフラノシダーゼにより,果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)に分解されるのであり,β-フルクトフラノシダーゼが存在するラットの腸内で,ど,,の程度S.salivarius の菌体外FTase がショ糖に作用し得るかは不明であるから餌として与えられたショ糖がすべて,およそ同重量の非消化性のレバンとブドウ糖に変化し,果糖を全く生成しないのでショ糖由来の摂取カロリーが50%程度減少するとはいえない当業者であればショ糖の一部がS.salivarius の菌体外FTase。 ,,によりレバンになり,このレバンに血中コレステロール抑制作用があり,血清TGの有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められたのではないかと考えるのが自然である。 そして,生成したレバンに血中コレステロール抑制作用があれば,餌として与えられたショ糖の全部がFTase によりレバンとブドウ糖に変化しなくとも,一部のショ糖がレバンに変化すれば,そのレバンの薬理作用により,動物実験の結果に表れるような有意な効果が奏され得る。 したがって,FTase がショ糖に作用し,非消化性のレバンとブドウ糖を生成する酵素であるという事実は,引用文献に接した当業者が,投与されたFTase がレバン- 11 -を生成することにより,血清中の中性脂肪である血清TG の上昇抑制や脂肪組織重量の増加抑制に寄与することが示唆されていると解することを否定する事由とはならない。 (4) なお,乙8は,納豆の粘質物の一成分であるレバンのコレステロール低下作,「」()用の有無につき報告していないこと乙8 ることが示唆されていると解することを否定する事由とはならない。 (4) なお,乙8は,納豆の粘質物の一成分であるレバンのコレステロール低下作,「」()用の有無につき報告していないこと乙8にBacillussubtilisnatto納豆菌産生レバン(乙3記載のBacilluslicheniformis とは異なる)がラットの血清と。 肝臓の脂質レベルを低下させなかったことが記載されているのみであり,乙8に基づいて乙3のレバンにコレステロール吸収阻害効果がないとする原告の指摘には理由がない。 また,一般に,拒絶理由通知において,引用文献に記載された事項が技術常識といえる事項か,公知ではあるが技術常識とまではいえない事項かを峻別することなく,公知の事項を示す引用文献として使用することは通常行われており,本件で審査官が乙2ないし4を公知技術を示す文献として引用したことは,これらの文献に記載された事項が技術常識でないことを意味するものではない。 以上のとおり,審決には,甲1(引用文献)の記載事項の認定において誤りはなく,相違点1についての判断にも誤りはない。 なお,審決は,乙2ないし4には言及していないが,その記載事項は当業者が当然に知っていた技術常識に関するものであり,さらに,審査官の拒絶理由通知において引用文献1ないし3として提示され,原告は,レバン生成菌の違いにより生成するレバンの化学構造等は相違する等の意見を述べている。 審決は,本願発明と同じストレプトコッカス・サリバリウスに関する発明を引用発明として,本願発明は当業者が容易に発明することができる旨判断したものである。 第5当裁判所の判断 取消事由について(1)ア(ア)本願発明の明細書(甲3,4)には,以下の記載がある。 - 12 -「0001【産業上の利用 に発明することができる旨判断したものである。 第5当裁判所の判断 取消事由について(1)ア(ア)本願発明の明細書(甲3,4)には,以下の記載がある。 - 12 -「0001【産業上の利用分野】【】レバン又はその部分加水分解物を有効成分として含有する抗脂血剤ないし抗肥満剤を含む食(甲4)品に関する。」「0010【課題を解決するための手段】【】ストレプトコッカス・サリバリウスの細菌が生成するレバンもしくはこの細菌が産生する酵素(レバンシュークラーゼ)により生成するレバンおよびレバンの部分分解物は,動物実験により,ペクチン他植物性ガムの投与量の3分の1以下で著明な抗脂血作用,コレステロール代(甲3)謝正常化作用および血清の中性脂肪および体脂肪の上昇抑制作用を認めた。」(イ) 本願発明の当初明細書(甲2)には,レバンや部分加水分解レバンの乾燥粉末をカプセルに詰めた検体等を用い,ウサギを対象とした血清コレステロール値,大動脈の脂質沈着面積比の測定,ラットを対象とした血清トリグリセリド値及び精巣近傍の脂肪組織重量の測定を,それぞれ行ったことが記載されている(001【8】ないし【0021。 】)イ甲1(引用文献)には,以下の記載がある。 「蔗糖の過剰摂取は高TG 血症の原因となり果糖にこの作用が強いとされている。納豆菌やヒト消化管に存在するStreptococcussalivarius などは,フルクトシルトランスフェラーゼ(FTase)を産生する。本酵素は可溶性の非消化性フルクタン(レバン)を生成するので,蔗糖の過剰摂取軽減に寄与することが考えられ,ラットを用い,これを検討した。ラットに蔗糖食(20%,40%)またはこれにS.salivarius の菌体外FTase を添加した(1g当り毎分約0.5gの多糖を生成する に寄与することが考えられ,ラットを用い,これを検討した。ラットに蔗糖食(20%,40%)またはこれにS.salivarius の菌体外FTase を添加した(1g当り毎分約0.5gの多糖を生成するに要する酵素を0.5%)餌を与え,毎週血清TG を,4週間目に精巣近傍の脂肪組織重量を測定した。FTase 投与により血清TG の有意な上昇抑制又は同傾向と脂肪組織重量の増加抑制が認められた」。 ウ乙1(株式会社東京化学同人発行生化学辞典(第2版)には,以下の記)載がある。 (ア)(392頁)「D-グルコース[D-glucose]=ブドウ糖」「スクロース,マルトース,ラクトースなどのオリゴ糖,デンプン,セルロース,デキスト- 13 -ラン,ラミナラン,グリコーゲンなどの多糖や各種配糖体の構成成分として多量に存在する。 これらを酸で加水分解するとD-グルコースを生ずる」。 「水や含水アルコールに溶けるが,エーテル,アセトンなどには不溶である」。 「グルコースは生物体の最も重要なエネルギー源で,食物として摂取されたデンプンやスク,,,,,ロースなどはα-β-アミラーゼα-グルコシダーゼアミロー16-グルコシダーゼβ-フルクトフラノシダーゼなどで分解され,生成したグルコースは腸管壁から吸収され,肝に運ばれる。肝では・・・グリコーゲンに合成され,肝に蓄えられる」。 (イ)(1151~1152頁)「D-フルクトース[D-fructose]=レブロース,果糖」「還元力をもち糖類中で最も甘味が強い」。 「フラノース型として二糖のスクロース,三糖,多糖のフルクタンなどの成分として広く生物界に存在する。ヒトの重要な炭水化物源の一つで,通常,スクロースの形で摂取される」。 (ウ)(686~687頁)「スクロース[sucrose] ース,三糖,多糖のフルクタンなどの成分として広く生物界に存在する。ヒトの重要な炭水化物源の一つで,通常,スクロースの形で摂取される」。 (ウ)(686~687頁)「スクロース[sucrose]=ショ糖」「β-D -フルクトースとα-D-グルコースが両方のアノマー炭素原子を介して結合したβ-D-フルクトフラノシルα-D-グルコピラノシドをいう」。 「水によく溶け(20℃で100mlの水に203.9g溶ける,甘味はD-グルコース)の約2倍,D-フルクトースよりはやや劣る」。 「希酸またはβ-フルクトフラノシダーゼで加水分解され等量のD-グルコースとD-フルクトースを生ずる」。 「動物体内に摂取されたスクロースは,腸内の粘膜細胞にあるβ-フルクトフラノシダーゼにより,D-グルコースとD-フルクトースに加水分解され吸収される」。 (エ)(1451頁)「レバン[levan]=β-2,6-フルクタン」「β 2 →6 結合のフルクトースから構成されるフルクタンの一種」。 「主として,Bacillus 属,Leuconostoc 属菌によってスクロースからフルクトシルトランスフェラーゼ判決注:FTaseの作用でつくられる植物起源のフルクタンであるイヌリンβ()。 (-2,1-D-フルクタン)と異なり高分子量で,枝分かれ構造をもち,レバナーゼ(levanase)によってフルクトースにまで分解される」。 - 14 -エ乙2(特公昭45-21633号公報)には,以下の記載がある。 「この発明はシュードモナス属に属する多糖類BM生産菌を培地に培養し,得られた培養物(1から多糖類BMを分離・採取することからなる多糖類BMの製造法に関するものである。」頁左欄)「従来シュードモナス・プルニム(Pseudomonasprunim ,シ に培養し,得られた培養物(1から多糖類BMを分離・採取することからなる多糖類BMの製造法に関するものである。」頁左欄)「従来シュードモナス・プルニム(Pseudomonasprunim ,シュードモナス・モルスプルノ)ルム(Pseudomonasmorsprunorm)等がレバンを生産することは知られている(例えば共立出版株式会社発行,多糖類化学,第368頁。この発明者等はシュードモナス属に属する菌が)従来知られているレバンとは異なる新規なレバン様物質を生産することを見出し,これを後述(1頁左欄)する性状から多糖類BMと命名した。」「・・・これらの結果からこの物質(判決注:多糖類BM)はフラクトースのベーター2,6結合を主鎖とし,ベーター2.1結合の分岐を有する多糖類構造が考えられ,いわゆるレバ(5頁左欄)ンに属する物質である。」「・・・上記のように多糖類BMは血中コレステロール上昇抑制作用を有し,脂質代謝の改(6頁左欄)善を目的とする医薬として使用できる。」オ乙3(特開昭49-101593号公報)には,以下の記載がある。 「特許請求の範囲(1)有機炭素源として,ショ糖,ラフィノース及び糖質のうち少なくとも一つを含有する液体培地にバチルス・リッケニフォルミス(Bacilluslicheniformis)種を接()種培養し培養液中にレバンを生産させることを特徴とするレバンの製造法,。」1頁左下欄「,,本菌種により生成されるレバンは・・・また腸管よりのコレステロール吸収阻害剤など(2頁右下欄~3頁左上欄)食品面,医薬品面などの多方面での用途が期待されている。」カ乙4(福岡女子大学家政学部紀要VOL15 (1984 ,p33-39)には,以下の記,)載がある。 「5大栄養素に次ぐ第6番目の栄養素ともい 医薬品面などの多方面での用途が期待されている。」カ乙4(福岡女子大学家政学部紀要VOL15 (1984 ,p33-39)には,以下の記,)載がある。 「5大栄養素に次ぐ第6番目の栄養素ともいわれる食物繊維(dietaryfiber, DF)に種々(33頁左欄)の生理作用があることが明らかにされてきている。」「胆汁酸は食事脂肪の消化吸収に欠かせない成分で,これがDFと結合すると結果的に脂肪の消化吸収が阻害され,ひいては成人病の原因となる食事中の中性脂肪やコレステロールの体- 15 -(33頁左欄)内吸収を抑制することになる。」「・・・消化管におけるDFと胆汁酸との吸着が血清や肝臓のコレステロールレベルを低下(33頁左欄)させる一因になっていることが推論されている。」「実験1から3までに得られた条件をもとにして種々の無処理のDFあるいはDF含有食品(35頁右欄~36頁左欄)と胆汁酸との結合能を調べた(Table 1)。」イヌリンは239%の結合度を示しDFの中では高い値を示した蔗糖溶液にBacillus「. ,。 subtilis が作用して生ずるレバンはきわめて弱い結合力(1.6%)で,イヌリンよりかなり(36頁右欄~37頁左欄)低い値であった。」キ乙8(納豆菌産生多糖類あるいは酵母のアルコール抽出物がラットの脂質「代謝におよぼす影響」と題する論文)には,以下の記載がある。 「納豆の粘質物の一成分であるレバンに,コレステロール低下作用があるかどうかについての報告はみあたらない。本実験ではコレステロール食ラットの肝臓肥大や血清,肝臓の脂質レ(68頁左欄)ベルを10%レバン食によって改善することはできなかった。」「Bacillussubtilisnatto(納豆菌)産生レバンはラットの血清と肝臓の脂質レベルを低 血清,肝臓の脂質レ(68頁左欄)ベルを10%レバン食によって改善することはできなかった。」「Bacillussubtilisnatto(納豆菌)産生レバンはラットの血清と肝臓の脂質レベルを低下(69頁左欄)させることはできなかった。」(2) 上記(1) エないしキの記載を総合すると,レバンが,その抑制作用の強弱や裏付けとなる実験結果の記載の有無はともかくとして,血中コレステロール上昇抑,,,制作用を一定程度有し同事実が本願発明の出願時において周知であったことがいずれも認められる。 この点に関し,原告は,乙2記載のレバンは,周知のレバンとは異なる新規なレバンである上,乙3上の記載には何ら根拠が示されておらず,乙4,8上の記載はレバンにコレステロール低下作用がないことを示す旨,それぞれ主張する。 これらのうち,乙3において「レバンは・・・腸管よりのコレステロール吸収,,阻害剤としての用途が期待されている」ことがその具体的根拠が格別示されることなく記載されていることは事実であるが,乙2の記載からすれば,少なくともレバンの一種に血中コレステロール上昇抑制作用があることを否定することはできな- 16 -い。また,乙4においても,程度はともかく,レバンに一定程度の血中コレステロール上昇抑制作用があることは示されているというべきである。 他方で,乙8上,レバンにコレステロール低下作用が認められなかった事例が紹介されているが,この一事例の存在によって,直ちに他の文献に記載されたレバンの血中コレステロール上昇抑制作用を否定することはできない。 (3) 本件において,特許庁は,審査段階で,平成15年10月21日付け拒絶理由通知書(乙5)において,乙2ないし4を引用文献として「各種レバンが血中,コレステロール抑制作用,コレステロール吸収抑 (3) 本件において,特許庁は,審査段階で,平成15年10月21日付け拒絶理由通知書(乙5)において,乙2ないし4を引用文献として「各種レバンが血中,コレステロール抑制作用,コレステロール吸収抑制作用を有することは公知である」として拒絶理由通知をしているが,審決では,乙2ないし4に全く触れてい。 ない。 そして,審決において摘示されていない周知技術等であっても(ただし,上記のとおり,本件において,乙2ないし4は,審決では引用されていないものの,審査段階において,拒絶理由としては摘示されていたものである,容易想到性の認定。)判断において,拒絶理由を構成する引用発明の認定や容易性の判断の過程で補助的に用いる場合,あるいは関係する技術分野で周知性が高く技術の理解の上で当然又は暗黙の前提となる知識として用いる場合であれば,許容されるものである。 しかし,レバンに血中コレステロール上昇抑制作用があるという事実は,本願発明の容易想到性の有無を判断する上で,重要な要素となるものであって,審決では本願発明が容易想到であることの根拠とされていなかった乙2ないし4を,本訴において「レバンに血中コレステロール上昇抑制作用がある」ことの主要な根拠として用いることは,容易想到性の判断の過程で補助的に用いる場合などに当たらず,「周知技術」として許容される用い方を超えるものとして許されないというべきである。 したがって,本件においては,基本的に,引用文献の記載自体から,本願発明が容易想到であるかを検討すべきであり,乙2ないし4については,後記(4)のとおり,あくまで補助的に用いることができるにすぎない。 - 17 -(4)前記(1)ウ(ウ)(エ)の事実及び弁論の全趣旨からすれば,FTase が触媒として作用することにより,ショ糖がレバンとブドウ糖に分解し,か 助的に用いることができるにすぎない。 - 17 -(4)前記(1)ウ(ウ)(エ)の事実及び弁論の全趣旨からすれば,FTase が触媒として作用することにより,ショ糖がレバンとブドウ糖に分解し,かつ,その際に生成するレバンが,ショ糖を構成していた果糖とほぼ同重量であることは,技術常識といえる。 そして,前記(1)イのとおり,引用文献には「FTase は,蔗糖からレバンを生成,し,蔗糖の過剰摂取軽減に寄与する「ラットに蔗糖食又はこれにFTase を添加し」た餌を与えたところ(FTase を添加した餌を与えたものにつき)血清TG の有意な,上昇抑制効果があった」旨の記載がある。 上記技術常識を前提とすると,引用文献上の「蔗糖が,FTase 存在下で,レバン(及びブドウ糖)に分解された結果,血清TG の有意な上昇抑制効果があった」旨の上記記載につき,原告が主張するように「FTase が蔗糖の果糖部分から非消化,性のレバンを生成するので,その分だけ吸収されるべき果糖が少なくなることで,」(「」),,蔗糖の過剰摂取の軽減に寄与する旨可能性Aの解釈はあり得るが同時にショ糖からレバンが生成され,結果的に血清TG の有意な上昇抑制効果がみられた以上,当業者が,レバン自体にも血清TG の上昇抑制効果があるのではないかと考えるのは,何ら困難ではないというべきである。 この点につき,原告は,引用文献の上記記載からは「可能性A」のように読むのが通常であると主張するが,原告主張の解釈と「レバン自体に血清TG の上昇抑制,効果がある」旨の解釈は,両立し得るものであって,後者の解釈の成立を阻害する事由を認めるに足りる証拠はなく(前記(2)のとおり,レバンが血中コレステロール上昇抑制作用を一定程度有することが周知であったことからすれば,コレステロ し得るものであって,後者の解釈の成立を阻害する事由を認めるに足りる証拠はなく(前記(2)のとおり,レバンが血中コレステロール上昇抑制作用を一定程度有することが周知であったことからすれば,コレステロールとTG の違いがあるにせよ,上記の阻害事由は見い出せない,原告の上記主。)張は採用できない。 (5)コレステロールとTG(トリグリセリド)とは別異の物質であって,血中コレステロール上昇抑制作用と血清TG 上昇抑制作用とは,理論的には別個の作用であるとしても,高脂血症とは,血漿脂質成分が基準値以上に増加した状態を表し,- 18 -コレステロールやTG は,いずれも,その脂質成分である(生化学辞典第3版第4刷(株式会社東京化学同人発行)499頁左欄参照)ことからすれば,血中コレステロール上昇抑制作用と血清TG 上昇抑制作用との間に何らかの関係があると発想することは困難であるというより,むしろ自然な成行きであり,本願発明の容易想到性を判断するに際し,両者を無関係であるとして扱うのが,本願発明の出願当時の当業者の技術常識に照らし,かえって不自然である。 そして,前記(1)ア(イ)のとおり,原告は,本願発明の出願に当たり,動物を対象,,,としてレバンや部分加水分解レバンを検体として用いて血清コレステロール値大動脈の脂質沈着面積比,血清トリグリセリド値,精巣近傍の脂肪組織重量の測定を行いながら,特許請求の範囲においては,TG とコレステロールとを分けることなく,レバンにつき単に「抗脂血性」を有するとして「抗肥満剤」として特許出,願しており,本願発明は,血中において,TG とコレステロールの上位概念である脂質の状態を改善し,ひいては肥満を防止することを目的とするものと解される。 以上からすれば,引用文献上の記載から導かれる解釈(レバンに,血 発明は,血中において,TG とコレステロールの上位概念である脂質の状態を改善し,ひいては肥満を防止することを目的とするものと解される。 以上からすれば,引用文献上の記載から導かれる解釈(レバンに,血清TG の上昇抑制効果がある旨)を前提に「レバンには,TG やコレステロールを含む血中の,脂質成分の上昇抑制をもたらす作用がある」旨の本願発明は容易想到であったというべきである。 このほか,前記(4)のとおり,FTase が触媒として作用することにより,ショ糖がレバンとブドウ糖に分解することが技術常識であることからすれば,引用発明で(),はストレプトコッカス・サリバリウス由来のFTase 及びショ糖を有効成分とし本願発明ではストレプトコッカス・サリバリウス由来のFTase によって生成されるレバン自体を有効成分としている点についても,上記説示に照らし同様に容易想到であったというべきである。 (6) また,本願発明による効果についても,引用発明から予想される効果を超える格別のものとは認められない。 (7) なお,当事者双方は,引用文献上の記載に関して,餌として摂取されたショ- 19 -,()糖がFTase と腸粘膜細胞におけるショ糖分解酵素β-フルクトフラノシダーゼの双方からの影響を受けることにつき,それぞれの立場から主張する。 しかし,餌として摂取されたショ糖がFTase の作用を全く受けないものとは解されないところ,FTase の作用により少量であれ多量であれレバンが生成すれば,同レバンによる生理効果が発生し得るものであるから,上記結論に影響はない。 以上のとおり,審決による引用発明の認定に誤りはなく,相違点1は引用発明から容易想到であったとする審決は是認することができ,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求を棄却 影響はない。 以上のとおり,審決による引用発明の認定に誤りはなく,相違点1は引用発明から容易想到であったとする審決は是認することができ,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求を棄却することとする。 知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官塚原朋一裁判官東海林保裁判官矢口俊哉
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