令和3(行ケ)10040等 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年2月6日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文113,352 文字)

令和5年2月6日判決言渡 令和3年(行ケ)第10040号審決取消請求事件(以下「第1事件」という。) 令和3年(行ケ)第10038号審決取消請求事件(以下「第2事件」という。) 口頭弁論終結日令和4年11月29日判決 第1事件 原告兼第2事件被告滝沢ハム株式会社(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士新田裕子 同海老原輝 同前田葉子 同日野英一郎 同家村洋太 同奥田崇仁 同訴訟代理人弁理士豊岡静男 同廣瀬文雄 第1事件被告兼第2事件原告株式会社シンコウフーズ(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士弓削田博 同河部康弘 同平田慎二 同訴訟代理人弁理士平木祐輔 同藤田節 同田中夏夫 同漆山誠一 同河部秀男 主文 1 原告の請求を棄却する。 中夏夫同漆山誠一同河部秀男 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 被告の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、第1事件及び第2事件を通じてこれを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告の請求(第1事件)特許庁が無効2019-800030号事件について令和3年2月8日にした審決のうち、特許第5192595号の請求項3、4及び5に係る部分を取り消す。 2 被告の請求(第2事件) 特許庁が無効2019-800030号事件について令和3年2月8日にした審決のうち、特許第5192595号の請求項1及び2に係る部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ X(以下「X」という。)は、出願日を平成24年5月17日とし(以下「本 件出願日」という。)、発明の名称を「特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法」とする特許を出願し、平成25年2月8日、設定登録を受けた(特許第5192595号。請求項の数5。 以下「本件特許」といい、その特許権を「本件特許権」という。本件特許の特許査定時の特許請求の範囲、明細書及び図面は、別紙1の特許公報(甲5 2)のとおりであり、このうち明細書及び図面を、以下「本件明細書等」と いう。)。Xは、本件特許権を、被告に譲渡し、本件特許権の移転は平成28年4月19日付けで登録されたため、被告が本件特許権を有している(乙89)。 ⑵ 原告は、平成31年4月8日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許 権の移転は平成28年4月19日付けで登録されたため、被告が本件特許権を有している(乙89)。 ⑵ 原告は、平成31年4月8日、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明についての特許につき無効審判を請求し、特許庁は、これを 無効2019-800030号として審理した(以下「本件無効審判」という。)。 被告は、令和2年7月6日に訂正請求書を提出し、同日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について請求項ごとに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めた(甲45)。 ⑶ 特許庁は、本件無効審判について、令和3年2月8日、結論を「特許第5192595号の特許請求の範囲を令和2年7月6日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、5について訂正することを認める。特許第5192595号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。特許第5192595号の請求項3、4、5に係る 発明についての審判請求は、成り立たない。審判費用は、その5分の3を請求人の負担とし、5分の2を被請求人の負担とする。」とする審決(以下「本件審決」という。別紙2)をし、その謄本は、令和3年2月17日、原告及び被告に送達された。 ⑷ 被告は、令和3年3月16日、本件審決のうち、本件特許の請求項1及び 2に係る部分を取り消すことを求めて第2事件を提起し、原告は、同月17日、本件審決のうち、本件特許の請求項3、4及び5に係る部分を取り消すことを求めて第1事件を提起した。 ⑸ なお、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品とは、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号、以下「規格基準」という。食肉製品 については、別紙3(乙6)のとおりである。)に ⑸ なお、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品とは、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号、以下「規格基準」という。食肉製品 については、別紙3(乙6)のとおりである。)により、食肉製品の成分規格 のうちの個別規格として定められたものである。このうち特定加熱食肉製品は、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)及び規格基準の一部が、それぞれ平成5年3月17日厚生省令第6号及び厚生省告示第73号をもって改正された際に規格として定められたものであり(乙38)、規格基準の個別規格においては、「その中心部の温度を63℃で30分加熱する方 法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。」と定められており、また、加熱食肉製品は、「乾燥食肉製品、非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品をいう。」と定められている(別紙3、乙6)。 規格基準は、食肉製品の成分規格の他、食肉製品の製造基準及び保存基準 を定めており、これらの各基準について、個別基準が、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品についてそれぞれ定められている(別紙3、乙6)。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである(以下、本件訂正後の請求項1ないし5記載の各発明をそれぞれ「本件発明1」ないし 「本件発明5」といい、これらを併せて「本件各発明」という。本件審決第3〔本件審決8頁〕。なお、本件明細書等には「脱酸素材」と記載され、甲1、甲3等には「脱酸素剤」と記載されているが、これらは同じ意味であると解される。以下では、基本的に、本件各発明及び本件明細書等に関する部分では「脱酸素材」という表記を用い、 酸素材」と記載され、甲1、甲3等には「脱酸素剤」と記載されているが、これらは同じ意味であると解される。以下では、基本的に、本件各発明及び本件明細書等に関する部分では「脱酸素材」という表記を用い、それ以外の部分では「脱酸素剤」という表記を用 いる。)。 ⑴ 請求項1(本件発明1)特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素 材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライ スされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 ⑵ 請求項2(本件発明2)上記非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 ⑶ 請求項3(本件発明3)上記包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を更に含むことを特徴とする請求項1記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 ⑷ 請求項4(本件発明4) 上記包材内から上記非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きすることを特徴とする請求項3記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 ⑸ 請求項5(本件発明5)特定加熱食肉製品をス 件発明4) 上記包材内から上記非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きすることを特徴とする請求項3記載の特定加熱食肉製品の製造方法。 ⑸ 請求項5(本件発明5)特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程と、 当該酸素化する工程の後、炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、上記スライスされた上記特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態、且つ、当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を10 0%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが5 0%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっていることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法であって、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 3 本件無効審判で主張された無効理由本件無効審判において、原告は、次のような無効理由を主張した(本件審決 第4の1〔本件審決9頁〕)。 ⑴ 無効理由1本件発明1は、甲1(特開平10-327807号公報、別紙4)記載の発明(以下「甲1発明」という。主引用発明)、甲2ないし甲16及び甲18に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることが できたものであって、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。 ⑵ 無効理由2本件発明2は、甲1発明(主引用発明)、甲2ないし甲 当し、特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。 ⑵ 無効理由2本件発明2は、甲1発明(主引用発明)、甲2ないし甲16及び甲18に記 載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、甲1発明、甲2ないし甲18に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明2についての特許は、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。 ⑶ 無効理由3本件発明3及び4は、甲1発明(主引用発明)、甲2ないし甲16及び甲18に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明3及び4についての特許は、同法123条1項 2号に該当し、無効とすべきである。 ⑷ 無効理由4本件発明5は、甲1発明(主引用発明)、甲2ないし甲16及び甲18に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項に該当し、特許受けることができないものであり、本件発明5についての特許は、同法123条1項2号に該当し、 無効とすべきである。 4 本件審決の判断の要旨⑴ 無効理由1についてア甲1発明本件審決が認定した甲1発明は、次のとおりである(本件審決第7の1 ⑴〔本件審決55頁〕、甲1発明が本件審決の認定したとおりであることは、当事者間に争いがない。)。 ローストビーフをスライスする工程と、トレイ上にスライスされたローストビー 審決第7の1 ⑴〔本件審決55頁〕、甲1発明が本件審決の認定したとおりであることは、当事者間に争いがない。)。 ローストビーフをスライスする工程と、トレイ上にスライスされたローストビーフを並べる工程と、ローストビーフを並べられたトレイと脱酸素剤とを酸素ガスバリア性 材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにする工程を含む、スライスされたローストビーフの包装方法。 イ本件発明1と甲1発明の対比(本件審決第7の1⑵イ〔本件審決66頁〕) (ア) 一致点特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品を脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、スライスされた特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包材に密封された状態となっている、特定加熱食肉製品の製造方法。 (イ) 相違点1 本件発明1では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 (ウ) 相違点2脱酸素材について、本件発明1では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 (エ) 相違点3 本件発明1では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが れていない点。 (エ) 相違点3 本件発明1では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミオグロビンの種類の割合は特定されていない点。 ウ相違点に関する容易想到性の判断の結論(ア) 相違点1について(本件審決第7の1⑵ウ(ア)〔本件審決67頁〕)甲1発明において、より消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、甲2に記載された、肉などのミオグロビンを含有する食品の鮮度と鮮やかな赤色を維 持するための技術的事項である、食品に対して酸化を維持する期間を設け、その後、酸素を減少させる構成を採用することに困難性はない。 (イ) 相違点2について(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)甲1発明の脱酸素剤として、より消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、甲3 に記載された、ミオグロビンの変化に基づく生肉の鮮やかな赤色を保持 するための技術的事項である、「酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる脱酸素剤」として、甲3において唯一具体的に効果が確認されている非鉄系のエージレスG-200やこれと同種の脱酸素剤、すなわち非鉄系脱酸素剤を採用することは、当業者が容易になし得ることである。 (ウ) 相違点3について(本件審決第7の1⑵ウ(ウ)〔本件審決70頁〕) 相違点1及び2について、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して、消費者への有効な視覚 相違点3について(本件審決第7の1⑵ウ(ウ)〔本件審決70頁〕) 相違点1及び2について、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して、消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造するためにより好ましい構成を採用した場合には、得られたローストビーフは、相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高く、甲1発明に、甲2及び甲3 に記載された技術的事項を適用したものにおいて、消費者への有効な視覚的アピールができ、赤みの強いローストビーフを製造することを目的として、肉等の赤みの発色に関連することが知られているオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を、本件発明1の範囲に重複するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得 るといえる。 エ本件発明1の容易想到性(本件審決第7の1⑵オ〔本件審決78頁〕)本件発明1は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ⑵ 無効理由2について(本件審決第7の2〔本件審決79頁〕) 甲13に記載されたとおり、脱酸素剤は大きく分けて鉄系、非鉄系の2種類のタイプのものが知られているが、鉄系のものも非鉄系のものも酸素を吸収するという機能の点では同様に使用できることは周知であるから、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された技術的事項に基づいて酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生させる非鉄系脱酸素剤に加え、酸素を吸収すると 同時に炭酸ガスを発生させる非鉄系脱酸素剤の効果を損なわない程度に適宜 の割合で非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材を併用することも当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本件明細書等 酸ガスを発生させる非鉄系脱酸素剤の効果を損なわない程度に適宜 の割合で非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材を併用することも当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本件明細書等(別紙1)の段落【0056】の【表1】をみると、鉄系比率が0.0%の場合と鉄系比率が37.5%の場合では、その色調に差はないから、甲1発明の脱酸素剤として、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素 材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することにより、顕著な作用効果を奏するものとはいえない。 したがって、本件発明2は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ⑶ 無効理由3について ア本件発明3について(ア) 本件発明3と甲1発明の対比(本件審決第7の3⑴ア〔本件審決79~80頁〕)a 相違点1ないし3前記⑴イ(イ)ないし(エ)(本件発明1と甲1発明の相違点)のとおり。 b 相違点4本件発明3では、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を含むのに対し、甲1発明では、真空引きする工程が特定されていない点。 (イ) 相違点4に関する容易想到性の判断(本件審決第7の3⑴イ〔本件審 決80頁〕)真空包装をすることやその際に真空引きをすること自体は周知であったといえる。しかしながら、本件発明3は、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引きするという工程を含んでいるのであって、単に包材内の真空引きをするという方法ではないから、甲1発明に周知 の技術であった真空引きの技術を適用したとしても、それが酸素濃度が 検出 するという工程を含んでいるのであって、単に包材内の真空引きをするという方法ではないから、甲1発明に周知 の技術であった真空引きの技術を適用したとしても、それが酸素濃度が 検出限界以下になった後かどうかが特定されず、相違点4の構成とはならない。そのため、相違点4に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到することができなかった。 したがって、本件発明3は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組み合わせたとしても当業者が容易に発明をすることができ たとはいえない。 イ本件発明4について(本件審決第7の3⑵〔本件審決80頁〕)本件発明4は、本件発明3を引用して、包材内から非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きをすることを特定したものである。 本件発明3は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組合 せたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明4についても、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術的事項を組み合わせたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ⑷ 無効理由4について ア本件発明5と甲1発明の対比(本件審決第7の4⑴〔本件審決81頁〕)(ア) 一致点特定加熱食肉製品をスライスする工程と、スライスされた特定加熱食肉製品を脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程とを含み、スライスされた特定加熱食肉製品は、ガスバリア性を有する包 材に密封された状態となっている、特定加熱食肉製品がローストビーフであることを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 (イ) 相違点5本件発明5では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、 とを特徴とする特定加熱食肉製品の製造方法。 (イ) 相違点5本件発明5では「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」を含むのに対し、 甲1発明では「スライスされたローストビーフをトレイ上に並べる工程」 と特定され、「還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」が特定されていない点。 (ウ) 相違点6本件発明5では「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するのに対し、甲1発明は容器内を「窒素ガス及び /または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後」、該容器を密封する点。 (エ) 相違点7脱酸素材について、本件発明5では「非鉄系」脱酸素材を用いているのに対し、甲1発明では脱酸素剤と特定され、「非鉄系」であることが特定されていない点。 (オ) 相違点8本件発明5では「当該包材内の酸素濃度が検出限界以下の条件下で、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となる割合となっている」と特定しているのに対し、甲1発明ではミ オグロビンの種類の割合は特定されていない点。 イ相違点に関する容易想到性の判断(本件審決第7の4⑵〔本件審決81~82頁〕)相違点5、7及び8に関する容易想到性の判断は、相違点1ないし3に関する容易想到性の判断(前記⑴ウ(ア)~(ウ))のとおりである。 相違点6については、甲1発明において、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項であるから、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するものとする て、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項であるから、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するものとすることは動機付けられず、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明5は、甲1発明に甲2及び甲3に記載された技術 的事項を組み合わせたとしても当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ⑸ ローストビーフが「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」が本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に該当する場合について(本件審決第 7の5〔本件審決82~91頁〕)本件審決は、ローストビーフが「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」が本件発明1の「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」に該当するとした場合に関して、無効理由1ないし4を検討するが(本件審決第7の5〔本件審決8 2~91頁〕)、前記⑴ないし⑷で行った検討とは、相違点1が実質的な相違点ではないと判断した点(本件審決第7の5⑴イ(ア)〔本件審決83~85頁〕)が異なるのみであり、その余の判断は同様である。 5 被告が主張する本件審決の取消事由⑴ 取消事由1(本件発明1と甲1発明の一致点の認定の誤り-無効理由1関 係)⑵ 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)⑶ 取消事由3(相違点2の容易想到性の判断の誤り-相違点2に係る本件発明1の構成の甲3における記載の有無-無効理由1関係)⑷ 取消事由4(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載 された技 相違点2の容易想到性の判断の誤り-相違点2に係る本件発明1の構成の甲3における記載の有無-無効理由1関係)⑷ 取消事由4(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載 された技術的事項を組み合わせることについての動機付け-無効理由1関係)⑸ 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについての阻害事由-無効理由1関係)⑹ 取消事由6(相違点3の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)⑺ 取消事由7(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り-無効理由2 関係) 6 原告が主張する本件審決の取消事由⑴ 取消事由1’(本件発明5に関する容易想到性の判断の誤り-無効理由4関係)⑵ 取消事由2’(本件発明3及び4に関する容易想到性の判断の誤り-無効理由3関係) 第3 当事者の主張 1 被告が主張する本件審決の取消事由について⑴ 取消事由1(本件発明1と甲1発明の一致点の認定の誤り-無効理由1関係)〔被告の主張〕 ア甲1発明のローストビーフについて甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではない。その理由は、次のとおりである。 (ア) 保存性についてa 温度との関係 規格基準によれば、特定加熱食肉製品は、水分活性が0.95以上であれば4℃以下、0.95未満であれば10℃以下で保存しなければならないところ(別紙3、乙6〔8/8 頁〕)、水分活性が0.95未満のローストビーフを製造するためには、長時間塩漬けにして塩分濃度を上げなければならず、製造時間及び味覚の観点から販売可能な製品 の製造は困難であるから、特定加熱食肉製品であるローストビーフは、水分活性が0.95以上であり、4℃ 長時間塩漬けにして塩分濃度を上げなければならず、製造時間及び味覚の観点から販売可能な製品 の製造は困難であるから、特定加熱食肉製品であるローストビーフは、水分活性が0.95以上であり、4℃以下で保存しなければならないものである。そして、日本食肉加工協会が定める「期限表示のための試験方法ガイドライン」(乙77)は、消費者に提供するわけではない試験の際であっても、規格基準によるべきことを定めている。そうす ると、特定加熱食肉製品であるローストビーフは、試験時でも4℃で 保存されなければならない。甲1発明のローストビーフは、5℃で1週間程度又は7日間保存されていることから(甲1段落【0009】、【0032】、【0049】)、特定加熱食肉製品ではない。 b 保存期間との関係本件明細書等には、「特定加熱食肉製品の賞味期限は、スライス加工 日から2〜3日程度と短く設定される。」(段落【0003】)と記載されており、本件出願日である平成24年5月17日当時の認識においてすら、特定加熱食肉製品の保存期間はわずか2ないし3日程度であり、1週間も保存できなかった。そのため、それより約15年前の平成9年5月28日を出願日とする特許の公開公報である甲1に、流通 温度0ないし5℃において1週間程度保存することが可能(段落【0049】)と記載されていた、甲1発明に係るローストビーフは、特定加熱食肉製品であるとは到底いえない。 c 甲1に係る特許が出願された平成9年当時の状況との関係甲1に係る特許が出願された平成9年の前年の平成8年にはO-1 57の集団食中毒が発生し、平成9年当時は生食用食肉の安全確保が推奨されていたから、そのような時期に、特定加熱食肉製品であるローストビーフを、甲1に記載されたように、規 の平成8年にはO-1 57の集団食中毒が発生し、平成9年当時は生食用食肉の安全確保が推奨されていたから、そのような時期に、特定加熱食肉製品であるローストビーフを、甲1に記載されたように、規格基準を超える5℃で7日間も保存することは考えられない。 (イ) 色の評価について aa*値との関係甲1は、赤味の強さの基準として、a*値(L*a*b*表色系における色度を表す値であり、a*は赤方向、-a*は緑方向を表す。以下、「a*値」を「a値」、「b*値」を「b値」という。)の平均値が7.0を上回るものを最高基準の「5」と評価している。しかし、甲5(特 開2009-159825号公報)に「80℃の湯浴で30分間、ボ イルした後」(段落【0060】)という記載があることから、甲5に示された食肉組成物は加熱食肉製品であるところ、そのa値はいずれも7.0を超えている(【表4】)から、加熱食肉製品でもa値は7. 0を超える。また、加熱食肉製品は、亜硝酸塩等の発色剤を用いたりpHを調整したりして色を良くすることが通常行われるから、a値が 7.0を超えているとしても、甲1発明のローストビーフが発色剤等を用いた加熱食肉製品である可能性は否定できない。 したがって、a値が7.0を超えていることから甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であるとはいえない。 b 褐変との関係 甲3(特開昭60-221031号公報)には、生肉について、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されているところ、甲 1の実施 置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されているところ、甲 1の実施例1ないし5は、二酸化炭素を発生しない脱酸素剤と窒素ガス又は二酸化炭素によるガス置換により容器内の残存酸素濃度を0. 01%以下にしたものであるから(甲1の【表1】、【表2】及び段落【0041】)、容器内の残存酸素濃度が0.01%以下になる前に、必ず、炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤の使用あるいはN2ガス、C O2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%ないし10数%程度に達する段階を経たはずである。甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であるならば、その段階でミオグロビンがメト化して急速に赤みが失われて褐変するはずである。それにもかかわらず、甲1の実施例1ないし5のローストビーフは褐変せず赤みが強いというのであ るから(【表1】及び【表2】)、甲1発明のローストビーフは特定加熱 食肉製品ではない。 甲3の特許請求の範囲記載の発明(以下「甲3発明」という。)は生肉を対象としており、甲1発明はローストビーフを対象としているところ、メトミオグロビン還元酵素は、生肉中では失活していないのに対し、ローストビーフ中では失活しているから、メト化は、生肉では 数日かけて進行するのに対し、ローストビーフでは数時間で急速に進行する。そのため、生肉であれば褐変する状態で褐変しないことからすれば、甲1のローストビーフは、特定加熱食肉製品ではない。 c 加熱食肉製品でも赤みを呈し、脱酸素の効果があること(乙85)について 特定加熱食肉製品については、規格基準により、肉塊の内部に発色剤を注入できないのに対し、加熱食肉製品 ではない。 c 加熱食肉製品でも赤みを呈し、脱酸素の効果があること(乙85)について 特定加熱食肉製品については、規格基準により、肉塊の内部に発色剤を注入できないのに対し、加熱食肉製品にはこのような規制がなく、亜硝酸ナトリウム等の発色剤を肉塊の内部に注入し、スライス後のローストビーフの表面を発色させることができる。発色剤による発色について、乙85(「塩漬食肉製品の色調安定性に係る諸因子の研究」和 賀正洋、平成29年(2017年)3月)には、「発色とは食肉中Mbに対してNOが配位結合する現象であり、発色剤とは食肉中にNOを供与する化合物である。」(13頁下から6~5行目)、「発色色素とは、MbあるいはHbに酸素の代わりにNOが配位したNOMbあるいはMOHbを指す(図6)。」(28頁11~12行目)、「未変性ミオグロ ビンに対してNOは酸素の300万倍の親和性をもって結合する(中略)。この強力な親和性によって、NOは加熱後もヘムから解離することなく安定な赤色を保ち続ける。」(28頁20~22行目)と記載されている。甲1発明のローストビーフが褐変しないのは、甲1発明のローストビーフが、肉塊内に発色剤を注入できる加熱食肉製品である からである。 また、乙85に「酸素や光は加熱変性NOMbの安定性を著しく下げ、NOがMbから解離して退色に至る。これらの要素は両方が揃って初めて劇的な退色促進効果を呈する。例えば酸素を遮断して光照射を行った場合、あるいは光を遮断して酸素に曝露した場合には退色はわずかに進行するのみである。」(28頁29行目~29頁2行目)と 記載されているとおり、発色剤を入れた加熱食肉製品も退色を防ぐためには脱酸素をする必要がある。実際、脱酸素をした加熱食肉製品の「ロ かに進行するのみである。」(28頁29行目~29頁2行目)と 記載されているとおり、発色剤を入れた加熱食肉製品も退色を防ぐためには脱酸素をする必要がある。実際、脱酸素をした加熱食肉製品の「ローストビーフ」等が現在も多数販売されており、これらの商品は赤味を呈している(乙86)。このように、甲1発明のように脱酸素をすることは、加熱食肉製品でも効果を奏するから、甲1発明のロース トビーフを加熱食肉製品であると考えることは、極めて自然である。 (ウ) 甲1に係る特許の出願時の技術常識についてa 平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前の特許出願について本件審決は、甲1に記載されたローストビーフが特定加熱食肉製品 であることの根拠として、乙36(特開昭61-242563号公報)、甲29(特開平6-217736号公報)に基づき、平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前に特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製造方法に関する発明が特許出願されていたと判断した(第7 の1⑵ア(ア)(ア-2)〔本件審決56頁〕)。しかし、乙36、甲29には、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製造方法に関する発明は記載されていない。 乙36には、「牛肉塊の中心部分の温度(以下、中心温度という)が30~35℃に到達した後1~3時間好ましくは2~3時間で中心温 度の最高到達温度を57~63℃、好ましくは59~61℃になるよ うにする。その際、余熱を考慮し、中心温度が52~59℃、好ましくは54~57℃の時に牛肉塊を加熱装置から取り出して冷却するのが好ましい。」(306頁左下欄最終行~右下欄6 になるよ うにする。その際、余熱を考慮し、中心温度が52~59℃、好ましくは54~57℃の時に牛肉塊を加熱装置から取り出して冷却するのが好ましい。」(306頁左下欄最終行~右下欄6行目)と記載されているところ、特定加熱食肉製品では、加熱殺菌は、製品の中心部の温度が35℃以上52℃未満の状態の時間を170分以内としなければ ならないから(別紙3、乙6〔6/8 頁17~18行目〕)、余熱の影響も考えれば、上記の乙36記載の加熱条件のうち、加熱時間が3時間(180分)の場合は、特定加熱食肉製品の加熱殺菌の条件を満たさないと考えられる。そもそも、乙36は、「効果」において、「食品衛生上の安全性を保証」(307頁右下欄15~17行目)すると明言してお り、乙36が公開された昭和61年当時、特定加熱食肉製品というカテゴリ自体が存在していなかったから、乙36に記載された加熱方法は、加熱食肉製品の加熱方法によって製造されていると考えざるを得ない。 甲29に係る特許は、特定加熱食肉製品が規格基準により制度上認 められた平成5年3月17日のわずか2か月前に出願されたものであり、このような出願時期からすると、甲29に係る特許は、特定加熱食肉製品が制度上認められる予定であったことから、実験的に特定加熱食肉製品に関する特許を出願しただけであると考えるのが自然であり、甲29には、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当する ローストビーフの製造方法に関する発明は記載されていない。 b 甲30(特許第3115288号公報)に係る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたかについて本件審決は、甲1に記載されたローストビーフが特定加熱食肉製品 であることの根拠として る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたかについて本件審決は、甲1に記載されたローストビーフが特定加熱食肉製品 であることの根拠として、甲30に基づき、甲30に係る特許の出願 時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたと判断した(第7の1⑵ア(ア)(ア-1)〔本件審決57頁〕)。 しかし、甲30の請求項に記載された発明は、原料肉に調味料等を注入するもので、特定加熱食肉製品の製造方法とは異なるものであるし、「ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定 加熱の方法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である」(段落【0002】)という明細書の記載から、本来の色を出そうとするときに特定加熱食肉製品の製造方法によることを示すにとどまる。また、甲30には、「店頭に置いている間の3-5時間程度でその色が変わってしまって商品価値がなくなり」(段落【0002】)と記載されてい るから、ローストビーフを工場でスライスする場合まで特定加熱食肉製品の製造方法が一般的であったとはいえない。 (エ) 加熱食肉製品であるローストビーフの存在について甲1に係る特許が出願された平成9年5月28日当時、スーパーマーケット等で販売されているローストビーフは加熱食肉製品であり、同日 から20年以上が経過し、はるかに技術が進んだ現在に至っても、加熱食肉製品のローストビーフが存在する以上(乙18及び乙30)、甲1発明のローストビーフを特定加熱食肉製品であると断定できる理由はない。 (オ) 実験についてa 被告の当初の実験 被告は、甲1と同じ条件下で色調の変化を測定する実験(以下「被告当初実験」という。乙106及び乙 定加熱食肉製品であると断定できる理由はない。 (オ) 実験についてa 被告の当初の実験 被告は、甲1と同じ条件下で色調の変化を測定する実験(以下「被告当初実験」という。乙106及び乙123〔試験結果報告書〕)をした。その内容、結果等は、次のとおりである。 (a) 実験の内容(i) 測定試料 ① 特定加熱食肉製品のローストビーフで空気に触れさせたまま にしたもの、② 特定加熱食肉製品のローストビーフで窒素ガス置換をした上で脱酸素剤を入れたもの、③ 加熱食肉製品のローストビーフで空気に触れさせたままにしたもの、 ④ 加熱食肉製品のローストビーフで窒素ガス置換をした上で脱酸素剤を入れたもの。 原木、スライスした時期、ガス置換の時期等は同一のパックを複数用いる。 使用原料、使用機材は乙124に記載のとおりであり、ロー ストビーフは未スライスの市販品を(特定加熱食肉製品は、原告から購入した製品)、脱酸素剤は、鉄系脱酸素剤(鳥繁産業エバーフレッシュ Q-100)を使用している。 (ii) 測定方法D0(包装直後)、D2(2日後)、D4(4日後)のそれぞれ の時点で、酸素濃度の測定と写真撮影を行った。ガス濃度測定値は乙125に記載のとおりである。 (iii) 結果②の窒素ガス置換をした特定加熱食肉製品は、D0(包装直後)は赤色を呈していたものの(乙123別紙1番号16~24)、D 2(2日後)(乙123別紙1番号40~48)、D4(4日後)(乙123別紙1番号52~60)には褐色に変化していた。 これに対し、④の窒素ガス置換をした加熱食肉製品は、D0(包装直後)(乙123別紙1番号4~12)と、D2(2日後)(乙123別紙1番号28~36)、D4 52~60)には褐色に変化していた。 これに対し、④の窒素ガス置換をした加熱食肉製品は、D0(包装直後)(乙123別紙1番号4~12)と、D2(2日後)(乙123別紙1番号28~36)、D4(4日後)(乙123別紙1 番号64~72)の色にさほど変化はなかった。 【包装後4日後の試料における「開封前」のa値】No.試料名容器内雰囲気脱酸素剤a値(D4)(カッコ内は平均値)49~51①特定加熱 D4含気 7.79~8.00(7.87)52~60②特定加熱 D4-1~3窒素ガス置換〇3.80~7.24(5.10)61~63③加熱 D4含気 9.68~13.73(11.83)64~72④加熱 D4-1~3窒素ガス置換〇9.40~16.95(13.1) (b) 被告による考察甲1において、色の評価は、次のとおり5段階基準により行われ、赤みが最も強い場合の評価は「5」であり、a値の平均値が7.0 より大きい場合がこれに当たるとされている(段落【0033】)。 5:7.0<a値の平均値4:6.0<a値の平均値≦7.03:5.0<a値の平均値≦6.02:3.0<a値の平均値≦5.0 1:a値の平均値≦3.0そして、甲1においては、脱酸素方法として窒素ガス置換と脱酸素剤を併用した実施例1について、色の評価が「5」とされている(段落【0039】【表1】)。前記(iii)の表に示された実験の結果と、甲1の上記記載を考慮すると、甲1発明のローストビーフは、前記(iii) の表においてa値の平均が5.10になっている特定加熱食肉製品(№52~60)ではなく、13.1になっている加熱食肉製品(№6 上記記載を考慮すると、甲1発明のローストビーフは、前記(iii) の表においてa値の平均が5.10になっている特定加熱食肉製品(№52~60)ではなく、13.1になっている加熱食肉製品(№64~72)であると考えられる。 甲3における「N2ガス、CO2ガス置換によつて容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト 化して急速に赤味が失われて褐変する。」(182頁右上欄7~10行目)との記載は、「数%~10数%程度」以下(0.08%でも構わない)になりさえすれば褐変することを意味している。 b 被告の新実験被告は、甲1と可能な限り条件を揃え、スライスされたローストビ ーフがどのような色彩を示すのか再現した実験(以下「被告新実験」という。乙151〔事実実験公正証書〕)をした。その内容、結果等は、次のとおりである。 (a) 実験の内容(i) 実験材料 ①ローストビーフ特定加熱食肉製品は原告製ローストビーフ原木、加熱食肉製品は発色剤(亜硝酸塩)が使用されているローマイヤ株式会社製。(乙151〔7~9 頁〕)②包装材の酸素透過度温度が20℃かつ相対湿度65%の条件下において酸素透過度が21ml/㎡・d・MPaのガスバリア性能を有する株式会社福助工業製の「ナイロンポリGタイプ」を使用した。(乙151〔10~11頁〕)(甲1【0015】を参照)③ガス置換の程度窒素ガス置換直後の容器内の残存酸素濃度を0.08%以下にする(乙151 の実験では、全てのサンプルが0.06%以下)。(乙151〔22~23 頁、26~27 頁〕)(甲1【0022】を参照)④包装体内の酸素濃度密封から1週間後の残存酸素濃度を0.002%以下にする(乙151 のサンプルが0.06%以下)。(乙151〔22~23 頁、26~27 頁〕)(甲1【0022】を参照)④包装体内の酸素濃度密封から1週間後の残存酸素濃度を0.002%以下にする(乙151の実験では、全サンプルが0.001%以下)。(乙151〔35~36 頁〕)(甲1【0020】を参照)⑤トレイ内容積が444cm3の中央化学社製のトレイ(PP15-11)を使用した。(乙151〔10 頁〕)(甲1【0030】を参照)⑥脱酸素剤鉄系脱酸素剤であるエージレスSS-200を使用した。(乙151〔11~12 頁〕)(甲1【0030】を参照) (ii) 実験方法 ①スライス、盛り付けローストビーフ原木を厚みが1mmになるようにスライスし重量約が40gになるようにして、鉄系脱酸素剤エージレスSS-200各1個と共にトレイに盛り付けた。(乙151〔9 頁、19~20 頁、25頁〕)(甲1【0031】を参照)②密封盛り付けたローストビーフを包装容器に入れ、この包装体を窒素ガス置換するとともに、熱シール加工により密封してサンプル24個(特定加熱食肉製品12個、加熱食肉製品12個)を作成した。(乙151〔19~22 頁、25~26 頁〕)③密封直後の12 サンプル(各6個)の酸素濃度24サンプルのうち、12サンプルの酸素濃度を測定した。その結果、特定加熱食肉製品の酸素濃度は0.028%~0.060%(乙151〔27 頁〕)、加熱食肉製品0.05~0.06%(乙151〔23頁〕)となっており、甲1の「残存酸素濃度は0.08%以下であれば良く」(【0022】)との記載に合致。 ④5℃で1週間保存(残り各6個)の色彩残りの6サンプルは、室内温度5℃の冷 頁〕)となっており、甲1の「残存酸素濃度は0.08%以下であれば良く」(【0022】)との記載に合致。 ④5℃で1週間保存(残り各6個)の色彩残りの6サンプルは、室内温度5℃の冷蔵庫中で1週間保存した。 1週間保存後、サンプルの色彩を3か所ずつ分光式色彩計で測定した。同時に、肉眼での目視評価の参考として色彩見本と並べて写真撮影を行った。(乙151〔30~35 頁〕)⑤1週間保存後の酸素濃度各サンプルの酸素濃度を測定した結果、特定加熱食肉製品では全てが酸素濃度0.000%、加熱食肉製品では3個体が酸素濃度0. 001%、残りが0.000%であり(乙151〔35~36 頁〕)、甲1の「該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持される」(請求項1)との記載に合致。 ⑥開封30分後の色彩各サンプルの開封後30分経過後のローストビーフの色彩を分光式色彩計で測定し、同時に肉眼での目視評価の参考として色彩見本と並べて写真撮影を行った。(乙151〔36~39 頁〕) (b) 「開封前」の結果と被告による考察開封前の特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品の測定結果のa値 及びb値は、下記の第1表及び第2表のとおりである(各表に記載の「T」は特定加熱食肉製品、「K」は加熱食肉製品を示す。)。 ① 甲1と条件を揃えて実験を行った特定加熱食肉製品のサンプルは、褐変していた(乙151の資料116の写真)。 このことは、a値を指標にした場合に明らかであり、第1表において、特定加熱食肉製品のサンプルのa値は、6サンプルの平均値は全て7を下回っており、その中の5サンプルは、甲1の5段階評価(甲1段落【0033】)の下から2番目の5.0をも下回っていた。さらに、b/aという指標でも1を大きく上回って 6サンプルの平均値は全て7を下回っており、その中の5サンプルは、甲1の5段階評価(甲1段落【0033】)の下から2番目の5.0をも下回っていた。さらに、b/aという指標でも1を大きく上回って いた。 ② これに対し、加熱食肉製品のサンプルは、乙151の資料110の写真のとおり、赤色を維持していた(乙151の資料122以下は特定加熱食肉製品との比較)。第2表において、加熱食肉製品のサンプルのa値は全て7.0を上回り、半数が10.0をも 上回っていた。b/aという指標でも1を大きく下回っていた。 (c) 「開封後30分」の結果と被告の考察開封後30分の特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品の測定結果のa値及びb値は、下記の第3表及び第4表のとおりである(なお、開封後の測定において、K-6の試料Cはb値が-3.86という 異常値を示したため、考察の対象から除外した。乙151〔資料145〕)。 ① 前記(b)①のとおり、特定加熱食肉製品のサンプルは、開封前に全て褐変していたが、念のため確認すると、開封後30分の特定加熱食肉製品のローストビーフの肉の色は、開封前と比較して大 きく変化し、ある程度赤くなった(a値も第3表では第1表より増加している。)。 これは、甲1のように窒素ガス置換をする場合、酸素に晒される期間が短いから、開封前の特定加熱食肉製品には還元型ミオグロビンが残っており、開封することで酸素に触れてオキシミオグ ロビンに変化したからであると考えられる。 ② 他方、加熱食肉製品では、さほど色は変わらなかった。 <開封前> <開封30分後> c 実験に基づく被告の主張(a) 被告新実験に基づく被告の主 は変わらなかった。 <開封前> <開封30分後> c 実験に基づく被告の主張(a) 被告新実験に基づく被告の主張(i) 甲1の実施例に可能な限り条件を合わせた被告新実験では、特定加熱食肉製品のサンプルのa値の平均値は7.0を大幅に下回り、褐変している。本件審決が述べるとおり、甲1発明のロース トビーフが特定加熱食肉製品であるとすると、流通段階でそのローストビーフは褐変していたことになるが、消費者の手に渡る前、すなわち開封前の褐変したローストビーフを「消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能」(甲1段落【0009】)などと評価しているとすれば、明らかな誤りであり、甲1そのものの 信用性が否定されるし、誤った事実が記載された甲1は主引用発明とはなり得ない。開封前のローストビーフの赤さを重視するならば、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品ではなくむしろ加熱食肉製品であるという結論が導かれる。仮に、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であるとすれば、実験の結果 を踏まえると、開封前のローストビーフは褐変しており、a値が7.0を大幅に下回っているのに、開封後30分のローストビーフは色が戻り、a値が7.0を上回ったことになるが、甲1発明がローストビーフの色等の維持を課題としていることに照らせば、このような大きな変化が甲1に記載されていないことは、極めて 不自然である。一方、甲1のローストビーフが加熱食肉製品であるとすれば、特定加熱食肉製品ほどの色の変化はないから、開封前と開封後の違いについて特に記載がなくても違和感はなく、また、開封後30分でも赤いと評価されるのは加熱食肉製品の方であって、むしろ被告新実験の結果を 特定加熱食肉製品ほどの色の変化はないから、開封前と開封後の違いについて特に記載がなくても違和感はなく、また、開封後30分でも赤いと評価されるのは加熱食肉製品の方であって、むしろ被告新実験の結果を踏まえれば、甲1発明のロー ストビーフは、発色剤を使用した加熱食肉製品であると考えるの が妥当である。 (ii) 甲1の実施例に可能な限り条件を合わせた被告新実験によれば、特定加熱食肉製品の場合、開封前のローストビーフは褐変しており、開封後30分経過して、ようやくa値が7を超えるようになったから、甲1はあくまで開封後30分の色の良さを志向し、 評価の基準として採用したと考えるのが妥当であり、開封前の色の良さを志向する本件各発明と全く技術的思想が異なるから、主引用発明として不適格であるというほかない。 (iii) 被告新実験によれば、流通段階、すなわち開封前の特定加熱食肉製品は褐変するから、本件審決の相違点1及び2に関する判断 は、その前提を欠いており、失当である。 (b) 原告実験に対する被告の主張原告実験の目的は、甲1の明細書の記載及び実験結果に照らして甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品と加熱食肉製品のいずれと考える方がより自然かを明らかにすることであるから、加 熱食肉製品との比較が必要であるにもかかわらず、原告実験は特定加熱食肉製品の実験しか行っていないから、その結果は採用できない。 原告実験は、甲1発明が開封前の色も良好であることを前提としており、消費者は、開封1時間後の色が良好であるから購入すると いうことはあり得ないにもかかわらず、「開封後1時間」において測定をしている点、また、敢えて甲1の実験(開封して30分後)と異なる条件で測定をしている点から、採用することができな 購入すると いうことはあり得ないにもかかわらず、「開封後1時間」において測定をしている点、また、敢えて甲1の実験(開封して30分後)と異なる条件で測定をしている点から、採用することができない。 乙133(「生鮮刺身の色変わり特性と官能評価」上西由翁ら、平成31年)には、「b/aは黄色系と赤色系の比率であり、その角度 tan-1(b/a)が小さければ赤色系に、大きくなるにつれて黄 色系が混ざり合った褐色になる。」(4頁)と記載されているところ、原告実験によれば、甲1と同じ状況(窒素ガス置換+鉄系脱酸素剤)に置き4日間保存した特定加熱食肉製品(№79~81)の開封前のb/a(1.90、1.84、1.64)は、本件明細書等(段落【0056】及び【0057】)において「褐変している」と評価されて いる「鉄系比率100.0」の「D+1」(スライス加工から1日保存)の1.75を3例中2例上回る数字であって褐変しており、「消費者への有効な視覚的アピール」という甲1発明の課題を達成していないから、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品とは考えられない。 仮に原告実験の結果が正しいと仮定しても、「赤みの強いローストビーフ」は、特定加熱食肉製品より加熱食肉製品であるというべきであり、開封前に褐変している特定加熱食肉製品が甲1発明のローストビーフであるはずがないから、甲1発明のローストビーフを特定加熱食肉製品であると認定した本件審決の判断は誤りであり、甲 1発明と甲3に記載された技術的事項を組み合わせても、自然と本件発明1の本件発明1の相違点3に係る構成のオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合(以下、オキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を「 、自然と本件発明1の本件発明1の相違点3に係る構成のオキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合(以下、オキシミオグロビン、メトミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を「各ミオグロビン割合」という。)に収まることはないから、甲1 発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用すると相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高いとした本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(ウ)〔本件審決70頁〕)は誤りである。 (カ) ドリップについて 加熱食肉製品よりも特定加熱食肉製品の方がドリップ(肉から出てく る赤い汁)が出やすいという観点からすれば、実施例及び比較例のほとんどでドリップが全く認められない甲1発明のローストビーフはむしろ加熱食肉製品である。そして、ドリップが生じるか否かの実験(乙129の1)によれば、特定加熱食肉製品、加熱食肉製品のいずれも、「真空包装」、「窒素置換+脱酸素剤」及び「脱酸素せず(含気)」の包装態様の うち、「真空包装」の場合のみ多くのドリップが発生し、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品とでドリップ量に大差はないから、ドリップ量の観点から、甲1発明のローストビーフを特定加熱食肉製品と認定することはできない。 イ取消事由1の成否 前記アのとおり、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではないから、本件審決が、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であると認定し、無効理由1に関し、本件発明1と甲1発明の対比において、特定加熱食肉製品の製造方法である点を一致点として認定したことは誤りである。 〔原告の主張〕ア 〔被告の主張〕ア(甲1発明のローストビーフについて)に対し甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製 品の製造方法である点を一致点として認定したことは誤りである。 〔原告の主張〕ア 〔被告の主張〕ア(甲1発明のローストビーフについて)に対し甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品である。 (ア) 保存性についてa 温度との関係 甲1に記載されている実験は、特許発明の実施の効果を確認するために行われたものであり、販売する製品の期限表示を設定するための試験の条件を遵守しなければならないものではない。5℃で保存試験が行われたのは、あえて規格より厳しい条件で試験を行ったものと考えられ、平成8年(1996年)に開始されたチルドゆうパックの輸 送温度が0ないし5℃であることによるとも考えられる。加熱食肉製 品の保存温度が10℃以下であることに照らしても、5℃で保存試験が行われた甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるとは考えられない。 b 保存期間との関係賞味期限が2ないし3日程度であれば、保存期間(消費期限)が3 日より長いことは明らかである。本件明細書等に「冷蔵保存する場合には、4℃以下で15日間保存することができる。」(段落【0039】)と記載されていることからすると、特定加熱食肉製品である甲1発明のローストビーフが流通温度0ないし5℃において1週間程度保存することが可能(段落【0049】)であったとしても不自然ではない。 c 甲1に係る特許が出願された平成9年当時の状況との関係甲1発明のローストビーフは実験のために製造されたものであり、そのまま販売されるものではなく、甲1発明を利用した製品の賞味期限は別の観点から決定されるものである。 (イ) 色の評価について aa値との関係甲5の段落【0059】ないし【0064】及び【表4】には、豚 はなく、甲1発明を利用した製品の賞味期限は別の観点から決定されるものである。 (イ) 色の評価について aa値との関係甲5の段落【0059】ないし【0064】及び【表4】には、豚肉に由来する赤肉のひき肉1㎏に対し、硫酸アルミニウムカリウム、炭酸水素ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウムを配合し、pHを6.2ないし8に調整するなどの操作を行い、80℃の湯浴で30分 間ボイルするという加熱食肉製品に要求される殺菌を行った実施例1について、a値が7.0を超えるものが得られたことが記載されているのに対し、甲1発明のローストビーフには上記の操作は行われておらず、甲1発明のローストビーフのa値が7.0以上であることから、それが加熱食肉製品であるとはいえない。 b 褐変との関係 甲3に、生肉について、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されているが、甲1と甲3では、包装条件(容器の材質や容積、 酸素ガス透過度)、脱酸素条件(脱酸素剤の酸素吸収能力等)その他の条件が一致するわけではないから、甲3の記載をもって直ちに甲1においてミオグロビンがメト化して急速に赤みが失われて褐変することが導かれるわけではない。 加熱食肉製品においてですら、加熱後に褐色状態から赤色を呈する 現象が報告されており(甲64)、加熱後も変性せずに存在する耐熱性のミオグロビン(未変性ミオグロビン)により、還元状態の鉄によって赤色を呈するものと考えることができるから(甲65)、特定加熱食肉製品においては、メトミオグロビン還 加熱後も変性せずに存在する耐熱性のミオグロビン(未変性ミオグロビン)により、還元状態の鉄によって赤色を呈するものと考えることができるから(甲65)、特定加熱食肉製品においては、メトミオグロビン還元酵素がより多く存在し、機能することは明らかである。 c 加熱食肉製品でも赤みを呈し、脱酸素の効果があること(乙85)について甲1発明は、ローストビーフの色等の維持を課題としているにもかかわらず、解決方法として、もっぱら7日間程度の期間の外気との接触による色味の劣化のみに言及しており、発色剤については何ら言及 していないから、甲1発明のローストビーフは、肉塊内に発色剤を注入できる加熱食肉製品であるとは考えられない。 (ウ) 甲1に係る特許の出願時の技術常識についてa 平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前の特許出願について 乙36は、製品の中心部の温度が35℃以上52℃未満の状態が1 70分以内のローストビーフを開示していることは明らかであるから、それによって、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフを製造することができる。甲29に係る特許は、実験的に特定加熱食肉製品についての特許を出願しただけであるという被告の主張には何らの根拠もない。 したがって、本件審決が、乙36、甲29に基づき、平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前に特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製造方法に関する発明が特許出願されていたと判断したことに誤りはない。 b 甲30に係る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたかについて甲3 法に関する発明が特許出願されていたと判断したことに誤りはない。 b 甲30に係る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたかについて甲30の「従来の技術」の記載によれば、甲30に係る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたことは明らかである。 (エ) 加熱食肉製品であるローストビーフの存在について現在、加熱食肉製品であるローストビーフが販売されているとしても、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはない。 (オ) 実験について a 原告の実験(甲68及び甲69)(a) 実験の内容(i) 測定試料特定加熱食肉製品のローストビーフについて、①含気包装されたもの、 ②窒素ガス置換を行い、非鉄系脱酸素剤を使用したもの、 ③窒素ガス置換を行い、鉄系脱酸素剤を使用したもの。 同じ条件及び同じ時期に開封した試料を各6パック(合計18パック)用いる。 (ii) 測定方法包装後2日目に各3パック、包装後4日目に残りの各3パック の試料につき、開封前と開封後(60分後)に色の測定を行った。 甲1の測定(段落【0033】)は「包装体を開封して30分後」に行われているため、甲1の追試を行うには、開封後、一定時間の経過を待った上で測定を行う必要がある。また、開封前と開封後で色調に変化があるかを調べるために、原告は開封前の色調に ついても測定を行った。 (iii) 結果特定加熱食肉製品のローストビーフに対し、脱酸素剤を使用し容器内の空気を窒素ガスに置換したもの(②及び③)において、開封60分経過後のa値は、開封前のa値と比較して大幅に高く ii) 結果特定加熱食肉製品のローストビーフに対し、脱酸素剤を使用し容器内の空気を窒素ガスに置換したもの(②及び③)において、開封60分経過後のa値は、開封前のa値と比較して大幅に高くなっており全て11以上となっている。また、開封前のa値について、2日目よりも4日目の方が高くなっている。 【包装後4日目/開封前後の試料のa値】 No. 試料名(D4:4日目、a:開封前、b:開封後) 容器内雰囲気 脱酸素剤 a値 a値 鉄 非鉄 a 開封前 b 開封後 ① D4-1_a/b 含気 7.46 8.41 ① D4-2_a/b 含気 6.47 7.26 ① D4-3_a/b 含気 5.98 6.87 ② D4-1_a/b 窒素ガス置換 〇 7.20 12.31 ② D4-2_a/b 窒素ガス置換 〇 7.69 13.49 ② D4-3_a/b 窒素ガス置換 〇 8.31 14.28 ③ D4-1_a/b 窒素ガス置換 〇 6.78 11.84 ③ D4-2_a/b 窒素ガス置換 〇 7.94 13.10 ③ D4-3_a/b 窒素ガス置換 〇 7.46 14.29 (b) 原告による考察前記(a)(iii)の結果によれば、開封前のa値について、2日目よりも4日目の方が高くなっているから、7日目には4日目より高くなると解され、保存中においても、全ての試料のa値が7.0以上となる可能性が高く、開封後にはさらにa値が大幅に高くなるから、7.0以上になるのは明らかである。 7日目には4日目より高くなると解され、保存中においても、全ての試料のa値が7.0以上と なる可能性が高く、開封後にはさらにa値が大幅に高くなるから、7.0以上になるのは明らかである。 b 実験に基づく原告の主張(a) 原告実験に基づく原告の主張原告実験により、甲1と同等の条件を特定加熱食肉製品のロース トビーフに適用した場合に、甲1と同等の色調のローストビーフを得られることが確認された。原告実験によれば、開封前の試料と比較して、開封後の試料のa値が非常に向上しており、被告が主張するような、特定加熱食肉製品のローストビーフに対して窒素ガス置換を適用すると肉色が褐変して色が戻らないという事象が、必ずし も生じるわけではないことが確認された。甲1のローストビーフが加熱食肉製品のローストビーフなのであれば、発色条件などが記載されてしかるべきであるが、甲1にはそのような記載は一切存在しないから、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であることは明らかである。 (b) 被告による実験に対する原告の主張甲1発明では、容器内の残存酸素濃度が0.01%以下であるところ、原告実験の各サンプルと同一条件で測定した試料の密封直後の残存酸素濃度は概ね0.01%~0.1%であり(甲74)、原告実験では甲1発明の窒素ガス置換と同等のガス置換を行っている のに対し、被告当初実験におけるガス濃度測定値は、ガス置換直後のD0での残存酸素濃度が0.1%~0.649%であり(乙125)、甲1発明とは密封した時点での残存酸素濃度が1桁異なっており、被告当初実験は、甲1の追試を行えていない。 当業者であれば、甲1に記載されたローストビーフに発色剤が用 いられていると考えることはないから、加熱食肉製品につ 残存酸素濃度が1桁異なっており、被告当初実験は、甲1の追試を行えていない。 当業者であれば、甲1に記載されたローストビーフに発色剤が用 いられていると考えることはないから、加熱食肉製品についての比較実験は意味がないし、被告による実験の加熱食肉製品は発色剤を利用したものであるから、これと甲1の特定加熱食肉製品を比較することも意味がない。 原告実験の「開封後1時間経過後」の評価は、原告から栃木産業 技術センターに誤って計測時点を伝えたことに起因するものであるが、開封後30分のa値は、開封前と開封後1時間のa値の中間程度と合理的に推認できるから、開封後30分後に測定を行ったとしても、窒素ガス置換を行った各サンプルのa値が7.0を超えることは明らかである。 被告当初実験は、甲1の明細書に明確に記載されている開封後の評価を全く行っていないから、甲1とは異なる条件で行われたものである。なお、被告当初実験の特定加熱食肉製品のローストビーフにおいても、メトミオグロビン還元酵素が一定程度残存した上で、メトミオグロビンの減少と還元型ミオグロビンの増加に寄与して いることが示されているといえるから、ローストビーフにおいてメ トミオグロビン還元酵素が失活していることはなく、被告当初実験でも開封後の測定を行えばa値が改善されることが合理的に推測できる。 開封前のa値の平均値が7.0を下回っていたとしても、甲1発明の主引用発明としての適格性に何ら影響しないし、被告新実験の 結果によっても、開封30分後のa値は全てのサンプルにおいて7. 0以上を超えていたのであるから、被告新実験はむしろ甲1発明の主引用発明の適格性を裏付けるものである。 被告新実験の結果は、特定加熱食肉製品のローストビーフは窒素ガス置換をし サンプルにおいて7. 0以上を超えていたのであるから、被告新実験はむしろ甲1発明の主引用発明の適格性を裏付けるものである。 被告新実験の結果は、特定加熱食肉製品のローストビーフは窒素ガス置換をした場合には褐変して元に戻らないという被告の主張 を明確に否定するものである。 (カ) ドリップについて甲1には、「上記真空包装においては、ローストビーフからのドリップが激しくなり、商品価値が著しく低下する。」(段落【0008】)と記載されているところ、高温で加熱された加熱食肉製品においてドリップが 激しく出るということは考えにくく、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品である。 イ取消事由1の成否前記アのとおり、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であるから、本件審決が、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品である と認定し、無効理由1に関し、本件発明1と甲1発明の対比において、特定加熱食肉製品の製造方法である点を一致点として認定したことに誤りはない。 ⑵ 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)〔被告の主張〕 甲1発明はスライスされたローストビーフの包装方法の発明であるのに対 して、甲2に記載された発明は冷凍庫の操作手段を用いた冷凍化条件を特徴とする生肉の貯蔵方法に関する発明であり、両者は技術分野が異なり技術的関連性もないから、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用することはできないし、甲2は対象とする生肉の冷凍化を前提としているから、甲2により単に食品を冷却しながら行う技術的事項を認定している本件審決(本 件審決第7の1⑵ウ(ア)〔本件審決66頁〕)は誤りである。また、本件審決が甲2に記載された技術的事項として認定した、鮮やかな赤色を に食品を冷却しながら行う技術的事項を認定している本件審決(本 件審決第7の1⑵ウ(ア)〔本件審決66頁〕)は誤りである。また、本件審決が甲2に記載された技術的事項として認定した、鮮やかな赤色を維持するという課題は、甲1には記載されておらず、甲1発明については包装中のローストビーフの色彩の測定も行われていないから、甲1発明の課題とは認められず、甲2に記載された技術的事項と甲1発明には課題の共通性がない。 生肉ではメトミオグロビン還元酵素が活性化しているのに対し、ローストビーフではメトミオグロビン還元酵素が失活しており、メト化に至る経緯が全く異なるから、生肉の保存に関する甲2記載の技術的事項と、ローストビーフの包装方法に関する甲1発明との間には、甲2記載の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けを基礎付ける作用、機能の共通性もない。 そうすると、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項を採用することは容易であるとはいえず、したがって、甲1発明において、食品に対して酸化を維持する期間を設け、その後酸素を減少させるという甲2に記載された技術的事項を採用することに困難性はないという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(ア)〔本件審決67頁〕)は誤りである。 〔原告の主張〕甲1発明と甲2に記載された技術的事項は、良好な肉色を得るという課題、ミオグロビンの酸化反応によって肉色が変化するという機序は共通するから、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を採用する動機付けはある。 ⑶ 取消事由3(相違点2の容易想到性の判断の誤り-相違点2に係る本件発 明1の構成の甲3における記載の有無-無効理由1関係) 〔被告の主張〕甲3から読み取れる技術的思想は、あくまで酸素を吸収するのと同時に炭酸ガスを発 相違点2に係る本件発 明1の構成の甲3における記載の有無-無効理由1関係) 〔被告の主張〕甲3から読み取れる技術的思想は、あくまで酸素を吸収するのと同時に炭酸ガスを発生する脱酸素材を用いることで、炭酸ガス濃度が高まっていく中では、生肉の褐変現象が生じにくく、鮮やかに赤い色調に近い赤味を保持できるというものであり、甲3には、脱酸素剤が鉄系脱酸素剤でも構わない旨 が記載されており(甲3の183頁左上欄5~7行目)、甲3発明の効果が非鉄系脱酸素剤を用いることによって生じるものであることを真っ向から否定しているから、甲3には、非鉄系脱酸素剤を用いるとの技術思想は記載されていない。他方、炭酸ガスを発生しない非鉄系脱酸素剤を用いることによって肉の色が良くなるという効果を生じることは乙49の実験成績報告書によ り裏付けられているから、本件発明1は、炭酸ガスを発生させなくても、非鉄系脱酸素剤を用いることによって肉の色が良くなるという効果を生じる。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された炭酸ガスを発生する脱酸素剤を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではなく、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用するこ とは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)は誤りである。 〔原告の主張〕甲3で実施例として唯一開示されている脱酸素剤は、非鉄系脱酸素剤であるエージレスG-200であり、鉄系脱酸素剤には炭酸ガスを発生させる型 のものはなく、甲3には、炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合には赤味を保持できないことが記載されており、さらに、エージレスG-200以外の非鉄系脱酸素剤を用いることは 生させる型 のものはなく、甲3には、炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合には赤味を保持できないことが記載されており、さらに、エージレスG-200以外の非鉄系脱酸素剤を用いることは妨げられないから、甲3からは、非鉄系脱酸素剤を用いるという技術的思想を読み取ることができる。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素 剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判 断に誤りはない。 ⑷ 取消事由4(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについての動機付け-無効理由1関係)〔被告の主張〕食肉の色調の変化については、その原因や機序が明確に分かっておらず、 肉色に影響を与える因子の相互作用については十分に解明されておらず(乙73)、非鉄系脱酸素剤を採用すること(本件審決が認定する甲3記載の技術的事項)が、元々好適であった甲1発明のローストビーフの色調にどのような影響を与えるのかも分からないことからすると、甲1発明に甲3記載の技術的事項を組み合わせる動機付けはない。 仮に、甲3において唯一具体的に効果が確認されている非鉄系のエージレスG-200を採用することを当業者が容易になし得るとしても、甲3発明は、一般に非鉄系脱酸素剤が肉の色を良くするという発想に至っていないから、甲3により、エージレスG-200と同種の脱酸素剤、すなわち非鉄系脱酸素剤を採用することを容易に想到できるとは考えられない。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)は誤りであ たがって、甲1発明の脱酸素剤として甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)は誤りである。 〔原告の主張〕甲1発明は、ローストビーフについて、「消費者への有効な視覚的アピール をする」ことを課題とするものであり、この課題を解決するためには、ローストビーフの赤味を強くし、変色度合いを小さくする必要がある。他方、甲3には、炭酸ガスを発生する非鉄系脱酸素剤が記載されており、炭酸ガス発生型の脱酸素剤を使用すると、肉の褐変が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビン(オキシミオグロビン)の色調である鮮やかに赤い色調 に近い赤味を保持することができると記載されているから、甲1発明に甲3 に記載された技術的事項を適用しようとする動機付けはある。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断に誤りはない。 ⑸ 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載 された技術的事項を組み合わせることについての阻害事由-無効理由1関係)〔被告の主張〕甲3には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」 (182頁右上欄6~10行目)と記載されており、ガス置換をすると褐変することが記載されている。本件審決が述べるように、甲1発明が、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能なスライスされたローストビーフの包装方法及び包装体の提供を目 おり、ガス置換をすると褐変することが記載されている。本件審決が述べるように、甲1発明が、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能なスライスされたローストビーフの包装方法及び包装体の提供を目的としているならば、流通段階で褐変しているローストビーフを提供することはあり得ず、当業者は、甲3の記載を 見て、窒素ガス置換をする甲1発明と甲3記載の技術的事項を組み合わせようとは考えない。 甲1発明の対象であるローストビーフと甲3の対象である生肉とでは、ローストビーフではメトミオグロビン還元酵素が失活しているのに対し(乙5の2)、生肉ではメトミオグロビン還元酵素が失活していないという違いが あり、当業者であれば、メトミオグロビン還元酵素が失活しているローストビーフを対象とする甲1発明に対し、急速にメト化する窒素ガス置換を組み合わせれば、メトミオグロビン還元酵素によってミオグロビンを還元できる甲3発明とは異なって、ミオグロビンがメト化したままになる危険があり、「消費者への有効な視覚的アピール」の妨げになると考える。乙102(「食 肉のメトミオグロビン形成とメトミオグロビン還元活性におよぼす脱酸素と 炭酸ガスの影響」泉本勝利ら、1985年(昭和60年))の「炭酸ガスはMbのメト化を進行させるとも考えられ、脱酸素/炭酸ガス充てん貯蔵の2日目で炭酸ガス濃度が高いほどMMbの割合が高く、脱酸素しないC40区はA区よりも高いMMbの割合で推移した。(略)この点から、炭酸ガスによるメト化の進行が著しくとも、脱酸素によるMRAの発現で、脱酸素剤の封入 で良い色調に保たれることになる。」(28頁右欄10~13行目、15~18行目。なお、上記の「MRA」はメトミオグロビン還元活性を指す。)との記載も考え併せると、甲3発明 現で、脱酸素剤の封入 で良い色調に保たれることになる。」(28頁右欄10~13行目、15~18行目。なお、上記の「MRA」はメトミオグロビン還元活性を指す。)との記載も考え併せると、甲3発明の作用機序として、メト化促進と、メトミオグロビン還元酵素によりメトミオグロビンを還元型ミオグロビンにする効果がうまくつり合い、オキシミオグロビンの鮮赤色になると考えられ、甲3発 明の効果は明らかにメトミオグロビン還元酵素に影響されている。そうすると、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについては阻害事由がある。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判 断(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)は誤りである。 〔原告の主張〕甲1と甲3では、包装条件(容器の材質や容積、酸素ガス透過度)、脱酸素条件(脱酸素剤の酸素吸収能力等)その他の条件が一致するわけではないから、甲3の記載をもって直ちに甲1においてミオグロビンがメト化して急速 に赤みが失われて褐変することが導かれるわけではない。 甲3の開示する肉色保持の作用機序は、CO2によって生肉中の酸素型ミオグロビン(オキシミオグロビン)のメト化を妨げ、赤色から褐色への変化を抑えるものであり、メトミオグロビン還元活性とは無関係であるから、メトミオグロビン還元酵素の活性の有無を問題とする被告の主張はその前提を 欠いている。 したがって、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断に誤りはない。 ⑹ 取消事由6(相違点3の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関 の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断に誤りはない。 ⑹ 取消事由6(相違点3の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)〔被告の主張〕 事実認定のためには、その立証の程度は通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信をもち得るものであることが必要とされるにもかかわらず、本件審決は、「相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高い。」などとして、相違点3に係る本件発明1の構成を想到することが容易であることについて、通常人が疑を差し挟まない程度に立証していないから、容易想到性が 立証されたとはいえない。 したがって、相違点1及び2について、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して、消費者への有効な視覚的アピールができる、赤みの強いローストビーフを製造するためにより好ましい構成を採用した場合には、得られたローストビーフは、相違点3に係 るパラメータを満足する蓋然性が高いという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(ウ)〔本件審決70頁〕)は誤りである。 また、主引用発明である甲1発明は、「本件発明1の方法の前にガス置換によって急速に酸素を減少させる」という、本件発明1と対比して「特別な方法」によるものであり、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に 記載された技術的事項を組み合わせても本件発明1の相違点3に係る構成の各ミオグロビン割合に至らず、また、原告実験(甲68)によっても、相違点3に係る構成の各ミオグロビン割合を導き得ない以上、公知技術からそれを容易に導けるものではない。 そして、本件明細書等の段落【0044】の記載によれば、還元型ミオグ ロビンの割合を一定以上とすることで鮮明 各ミオグロビン割合を導き得ない以上、公知技術からそれを容易に導けるものではない。 そして、本件明細書等の段落【0044】の記載によれば、還元型ミオグ ロビンの割合を一定以上とすることで鮮明な赤色が回復するという発想が本 件発明1に存在することは明らかであるから、本件発明1は格別の技術的意義を有する。 さらに、本件発明1は、冷蔵保存する場合には、実施例を前提にしても、スライス加工から20日後のものについてまで色調が維持されており、甲3発明等に比して予測し難い顕著な作用効果を有しており、また、生肉にはメ トミオグロビン還元酵素があるのに対し、特定加熱食肉製品にはメトミオグロビン還元酵素がなく、特定加熱食肉製品はメト化までの時間が非常に短いから、生肉以上の保存期間を可能にすれば、顕著な作用効果があるということができ、本件発明1には顕著な作用効果があるといえる。 したがって、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載され た技術的事項を適用しても本件発明1を容易に想到することはできない。 〔原告の主張〕訴訟上の因果関係の立証の程度につき、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信をもち得るものであることを必要とするとしても、それは事実認定一般に適用されるものではないし、本件審決は、相違点3に係るパラメ ータを満足する高度の蓋然性があることを述べたものであるから、そのような本件審決の判断に誤りがあるとはいえない。 また、本件発明1に顕著な作用効果があるとはいえないから、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して本件発明1を容易に想到することができるとした本件審決の判断に誤りはない。 ⑺ 取消事由7(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り-無効理由 的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用して本件発明1を容易に想到することができるとした本件審決の判断に誤りはない。 ⑺ 取消事由7(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り-無効理由2関係)〔被告の主張〕本件審決は、「本件特許明細書【0056】の表1をみると、鉄系比率が0. 0%の場合と鉄系比率が37.5%の場合では、その色調に差はないから、 甲1発明の脱酸素剤として、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37. 5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することにより、格別の効果を奏するものとはいえない。」(本件審決第7の2〔本件審決79頁13~18行目〕)と述べる。 しかし、本件明細書等の【表1】を見れば、鉄系比率42.9%の場合と 比較して、鉄系比率37.5%の場合にa値がほぼ倍以上となっており、鉄系比率を37.5%より低くすれば、鉄系比率が高い場合と比較して顕著な作用効果を奏することは明らかである。 また、本件明細書等の段落【0036】に記載のとおり、「鉄系脱酸素材を補助的に利用して、(中略)酸素を吸収する処理時間を短縮することができ る。」ところ、好気性の細菌を増やさないという観点からは、短時間で脱酸素できる鉄系の脱酸素材を利用した方が好ましく、このような意味で、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(鉄系脱酸素材0%の場合を除く。)の割合で使用する本件発明2は、好気性の細菌を増やさず、かつ非鉄系脱酸素材を使用することによる色調の良さを維持できるという顕著な作 用効果を奏している。 そうすると、本件発明2には顕著な作用効果があり、したがって、本件発明2は容易に発明をすることができたという 材を使用することによる色調の良さを維持できるという顕著な作 用効果を奏している。 そうすると、本件発明2には顕著な作用効果があり、したがって、本件発明2は容易に発明をすることができたという本件審決の判断(本件審決第7の2〔本件審決79頁〕)は誤りである。 〔原告の主張〕 数値範囲の最適化や好適化は設計事項にすぎないし、本件明細書等の記載によっても、本件発明2に定められた鉄系脱酸素材の比率の上限である37. 5%という数字に臨界的な意義はないから、鉄系脱酸素材の比率を37.5%以下にすることは当業者にとって容易であった。短時間で脱酸素できるという効果は、鉄系脱酸素材を利用することにより当然に得られるものであって、 何ら顕著な作用効果ではない。本件明細書等では鉄系脱酸素材の作用効果に ついて、「(略)鉄系脱酸素材を補助的に利用して、(略)酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。」(段落【0036】)と記載されているから、鉄系脱酸素材を利用することの作用効果は、酸素の吸収時間を短縮することであり、好気性の細菌を増やさない等の効果があるとする被告の主張は、本件明細書等の記載に基づかないものであり、失当である。 2 原告が主張する本件審決の取消事由について⑴ 取消事由1’(本件発明5に関する容易想到性の判断の誤り-無効理由4関係)〔原告の主張〕甲1には、「容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することにより、 スライスされたローストビーフの酸化を十分に防止することが可能となる。」(段落【0012】)、「容器12内の残存酸素濃度が0.01%より大きいと、周囲温度が5℃の状態において、スライスされたローストビーフの鮮度を1週間以上維持することができなくなり、スライスされたロー 段落【0012】)、「容器12内の残存酸素濃度が0.01%より大きいと、周囲温度が5℃の状態において、スライスされたローストビーフの鮮度を1週間以上維持することができなくなり、スライスされたローストビーフの流通において必要なシェルフライフを満たすことができなくなる。」(段落【0 020】)及び「スライスされたローストビーフ2を最低7日間保存するためには、容器12内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することが必要であることが分かる。」(段落【0041】)という記載があり、これらの記載によれば、甲1発明の必須の技術的事項は残存酸素濃度を0.01%以下にすることであった。 脱酸素材だけで包材内の残存酸素濃度を0.01%以下にすることは、甲3に記載されているだけでなく、甲53ないし甲57にも示されているとおり周知技術であり、ガス置換を行うことは、置き換えができないような必須の構成ではなく、甲7ないし甲9及び甲18に示されるとおり、本件特許出願当時、当業者は、脱酸素材を単独で使用するか、脱酸素材の使用とガス置 換とを併用するかを必要に応じて選択することができた。 平成21年に発行された文献である甲58、平成17年の出願に係る特許の公報である甲8によれば、甲1に係る特許が出願された平成9年5月28日から本件特許が出願された平成24年5月17日までの間に、包材の酸素バリア性は飛躍的に進歩したから、甲1に係る特許の出願当時と比較して、本件出願日当時においてはガス置換を行う意義が相当程度減殺されていたこ とは明らかである。 したがって、「甲1発明において、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項である」という本件審決の判断(本件審決第7の4⑵〔本件 かである。 したがって、「甲1発明において、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項である」という本件審決の判断(本件審決第7の4⑵〔本件審決82頁〕)は誤りであり、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密 封するという、本件発明5の相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえないという本件審決の判断(本件審決第7の4⑵〔本件審決82頁〕)も誤りである。 〔被告の主張〕甲1には、「脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換とを併用 することにより容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に維持することが簡易かつ確実になり」(段落【0012】)、「容器12内は、脱酸素剤13の封入および窒素ガス置換によって、残存酸素濃度が0.01%以下に維持されている」(段落【0020】)、「容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、つまり0.01%以下まで確実に下げるためには、脱酸素剤13の封入のみで は十分ではなく、脱酸素剤13の封入と窒素ガス置換との併用が必要である。」(段落【0022】)、「また、残存酸素濃度が0.01%以下のレベルを確実に実現するための脱酸素方法としては、窒素ガス置換と脱酸素剤13との併用が必要であることも分かる。」(段落【0041】)と記載されており、これによれば、甲1発明において技術的に不可欠な事項は、「残存酸素濃度を0. 01%以下にすること」ではなく、これを実現する技術的手段である「窒素 ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気にすること」である。ガス置換をして急激に残存酸素濃度をゼロに近づける甲1発明から、ガス置換という構成を排除し、かつ、甲3に記載された技術的事項を適用 ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気にすること」である。ガス置換をして急激に残存酸素濃度をゼロに近づける甲1発明から、ガス置換という構成を排除し、かつ、甲3に記載された技術的事項を適用して、酸素を吸収するまでに時間がかかる非鉄系脱酸素材のみを用いるという構成に変更することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、「甲1発明において、窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは、技術的意義のある必要不可欠の技術的事項である」という本件審決の判断に誤りはなく、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するという、本件発明5の相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえないとい う本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 取消事由2’(本件発明3及び4に関する容易想到性の判断の誤り-無効理由3関係)〔原告の主張〕甲1発明の本質は、容器内の残存酸素濃度を0.01%以下にするところ にあるから、甲1発明に真空引きの工程を適用するのであれば、残存酸素濃度が0.01%以下、すなわち酸素濃度が検出限界以下になった後の状態で適用すべきであることは当然であり、当業者であれば、「包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を含む」という、本件発明3の相違点4に係る構成を容易に想到することができる。 したがって、甲1発明に周知の技術であった真空引き技術を適用したとしても、それが酸素濃度が検出限界以下になった後かどうかは特定されず、本件発明3の相違点4に係る構成とはならないとし、本件発明3は当業者が容易に発明することができたとはいえないという本件審決の判断(本件審決第7の3⑴イ〔本件審決80頁〕)は誤りである。 されず、本件発明3の相違点4に係る構成とはならないとし、本件発明3は当業者が容易に発明することができたとはいえないという本件審決の判断(本件審決第7の3⑴イ〔本件審決80頁〕)は誤りである。 また、本件発明4は、本件発明3に、包材内から非鉄系脱酸素材を取り除 いた後に真空引きする構成を加えたものであるが、脱酸素材により酸素濃度が検出限界以下となった後、真空包装をすることにより、酸素濃度が検出限界以下に維持できるのであるから、包材内から脱酸素材を取り除いた後に真空引きする工程を追加することも容易に想到し得る。 したがって、本件発明4は当業者が容易に発明をすることができたとはい えないという本件審決の判断(本件審決第7の3⑵〔本件審決80頁〕)は誤りである。 〔被告の主張〕甲1発明の必須の技術的事項が残存酸素濃度を0.01%以下にすることにあるのであれば、脱酸素材を用いて酸素濃度を検出限界以下にできている のに、真空引きという酸素濃度を下げる方法を更に追加しようとは思わないから、包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引きするという工程を含む本件発明3は当業者が容易に発明することができたとはいえないという本件審決の判断に誤りはない。 また、仮に真空引きをするとしても、酸素濃度が検出限界以下になる前に 行うから、包材内から非鉄系脱酸素材を取り除いた後に真空引きをするという工程を含む本件発明4は当業者が容易に発明をすることができたとはいえないという本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件各発明の技術的意義等 ⑴ 本件明細書等の記載本件明細書等には、別紙1のとおりの記載がある。 ⑵ 本件明細書等にいう特定加熱食肉製品特定加熱食肉製品について、本件明 断 1 本件各発明の技術的意義等 ⑴ 本件明細書等の記載本件明細書等には、別紙1のとおりの記載がある。 ⑵ 本件明細書等にいう特定加熱食肉製品特定加熱食肉製品について、本件明細書等には、「本発明において特定加熱食肉製品とは、一般に食品規格基準にて規定されるように、その中心部の温 度を63℃で30 分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以 外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品は除く)を含む意味とする。」(段落【0018】)と記載されている。このような本件明細書等の記載によれば、本件明細書等でいう特定加熱食肉製品は、規格基準において定められたものであると認められる。そして、前記第2の1⑸のとおり、規格基準は、食肉製品の成分規格の他、食肉製品の製造 基準及び保存基準を定めており、これらの各基準について、個別基準が特定加熱食肉製品について定められている(別紙3、乙6)から、本件明細書等にいう特定加熱食肉製品は、これらの個別基準をも満たすものであると認められる。 ⑶ 本件各発明の技術的意義 本件明細書等において、特定加熱食肉製品の一例としてローストビーフが挙げられているところ、このような特定加熱食肉製品は、スライスされた状態で真空パックや含気パックで保存されると、短時間で褐変してしまい商品価値が損なわれるため、従来は、特定加熱食肉製品はスライスされる前のブロックの状態で流通することが一般的であった(段落【0002】)。 本件各発明は、上述した実情に鑑み、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供することを技術課題としており、当該技術課題を解決するために、特定加熱食肉製品をスライ た実情に鑑み、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提供することを技術課題としており、当該技術課題を解決するために、特定加熱食肉製品をスライスした後、所定の手順及び条件、すなわち、酸素化する工程及び非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程にて処 理することで、スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビン、オキシミオグロビン及びメトミオグロビンの存在比を所望の範囲に制御することを技術的特徴とするものである(段落【0008】~【0010】)。 また、本件各発明の効果を具体的に裏付けるものとして、実施例1に、所定の加熱条件にて製造したローストビーフをスライスし、冷蔵庫で1時間保 存することで酸素化した後、三方フイルム(ガスバリア包材)内に脱酸素材 とともに入れ密封する製造方法が記載されており、脱酸素材として、非鉄系脱酸素材のみを使用した場合、あるいは非鉄系脱酸素材及び鉄系脱酸素材を使用するが鉄系脱酸素材の割合を37.5%とした場合には、酸素濃度の検出限界以下において、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビ ンが34%以上となっており、その色調は、酸素化の時点とほとんど変わらず、鮮赤色を維持しているという結果が得られている(段落【0046】~【0058】)。 このように、本件明細書等の記載によれば、本件各発明の製造方法によって製造された特定加熱食肉製品は、スライスされた状態であるにもかかわら ず、褐変することなく長期にわたって優れた肉色を維持するという効果を有する(段落【0014】)。 2 本件出願日当時の技術常識⑴ 食肉の色調の変化 、スライスされた状態であるにもかかわら ず、褐変することなく長期にわたって優れた肉色を維持するという効果を有する(段落【0014】)。 2 本件出願日当時の技術常識⑴ 食肉の色調の変化と、ミオグロビン誘導体の構造との関係についてア本件出願日前の刊行物の記載は、別紙5のとおりである。別紙5の1⑴ の乙73の記載、同別紙の1⑵の甲4の記載、同別紙の1⑶の乙98の記載、同別紙の1⑷の乙96の1、同別紙の1⑸の乙94の記載によれば、次の事項は、本件出願日当時の技術常識であったことが認められる。 ミオグロビンは、筋肉内で酸素を貯蔵する役割をもつ色素タンパクであり、還元型ミオグロビン(RMb)、オキシミオグロビン(O2Mb)、メト ミオグロビン(MMb)の3種の誘導体が存在し、酸素による食肉の色調の変化とこれらのミオグロビン誘導体の関係は、別紙5の1⑴の乙73の図5-8に示されているとおりである。暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb)は、空気中の酸素と容易に結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になり、オキシミオグロビン(O2Mb)は更に酸 化(メト化)することにより、褐色のメトミオグロビン(MMb)になる。 食肉の新鮮な切り口や肉塊の中の色は、還元型ミオグロビン(RMb)の色である暗赤色(紫赤色)であるが、空気中でしばらく経つと、オキシミオグロビン(O2Mb)の色である鮮赤色になるいわゆる酸素化又はブルーミングと呼ばれる現象が見られ、更に時間が経つと、酸化により、メトミオグロビン(MMb)の色である褐色となる。なお、暗赤色(紫赤色) の還元型ミオグロビン(RMb)が酸素と結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になるまでの時間について、別紙5の1⑵の甲4には「 MMb)の色である褐色となる。なお、暗赤色(紫赤色) の還元型ミオグロビン(RMb)が酸素と結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になるまでの時間について、別紙5の1⑵の甲4には「15~30分ほど」、同別紙の1⑷の乙96の1には「数分」と記載されている。そして、表層部のミオグロビン(Mb)の誘導形態のうちオキシミオグロビン(O2Mb)の割合が高い鮮赤色の状態が消費者に好まれる色 調とされ、小売陳列時ではブルーミングの程度が購買に大きく影響し、さらに、オキシミオグロビン(O2Mb)は自動酸化によって褐色のメトミオグロビン(MMb)に変わり、ミオグロビンのうち30ないし40%以上がメトミオグロビン(MMb)に酸化されると、肉の変色が目に見えて分かり、消費者に好まれないものとなり、メトミオグロビン(MMb)の割 合が40%以上になると、視覚的に明確な色調の悪化が認められる。 また、酸素透過性の低いフィルムで真空包装した場合などの低い酸素濃度(pO2)、例えば、1%程度の酸素が残存するような不十分な(真空)包装では、メトミオグロビン(MMb)が生成し褐変するが、酸素濃度(pO2)が更に低下し酸化に関与する酸素がなくなると、メトミオグロビン (MMb)の生成は起こらず、還元型ミオグロビン(RMb)が安定的に保持されるようになる。 イ別紙5の1⑹の甲5の記載、同別紙の1⑺の乙36の記載によれば、次の事項は、本件出願日当時の技術常識であったことが認められる。 ローストビーフにおいても、ミオグロビンの作用による色調の変化がみ られ、食肉本来の鮮やかな赤色に近い、ローストビーフのスライス面の鮮 赤色は、食欲を喚起する色として重要な要素である。 ウ別紙5の1⑻の乙29の記載、同別紙の1⑴の乙7 がみ られ、食肉本来の鮮やかな赤色に近い、ローストビーフのスライス面の鮮 赤色は、食欲を喚起する色として重要な要素である。 ウ別紙5の1⑻の乙29の記載、同別紙の1⑴の乙73の記載によれば、次の事項は、本件出願日当時の技術常識であったことが認められる。 牛肉の加熱の際の内部温度と色調の関係について、内部温度60℃で調理した牛肉は内部が鮮やかな赤色を示し、内部温度60℃ないし70℃で 調理した場合は内部がピンク色であり、内部温度70℃ないし80℃以上で調理した場合は、灰色がかった茶色であり、加熱による色調の変化は、ミオグロビンの熱変性によるものである。 ⑵ 特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品の定義と、ローストビーフの製法について ア別紙5の2⑴の乙38の記載、及び別紙3(乙6)の記載によれば、次の事項は、本件出願日当時の技術常識であったことが認められる。 前記第2の1⑸のとおり、特定加熱食肉製品は、食品衛生法施行規則及び規格基準の一部が平成5年3月17日付けで改正された際に規格として定められたものであり、規格基準においては、食肉製品の製造基準及び 保存基準の個別基準が、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品についてそれぞれ定められている(別紙3、乙6)。本件明細書等の段落【0002】及び【0018】に記載された特定加熱食肉製品の意味は、前記1⑵のとおり、規格基準に基づくものである。別紙3(乙6)の記載のとおり、食肉製品の製造基準及び保存基準の個別基準においては、温度、時間等の条件が細 かく定められている。 イ別紙5の2⑵の甲29の記載によれば、平成5年3月17日付けの規格基準の改正によってローストビーフについて特定加熱食肉製品としての製造流通が認められるようになったことは、平成5年ないし いる。 イ別紙5の2⑵の甲29の記載によれば、平成5年3月17日付けの規格基準の改正によってローストビーフについて特定加熱食肉製品としての製造流通が認められるようになったことは、平成5年ないし平成6年当時には当業者の技術常識であったことが認められる。 ウまた、別紙5の2⑶の甲30の記載によれば、平成11年ないし平成1 2年当時、ローストビーフの製法には、二つの加熱条件の異なる製造法(加熱食肉製品の製造法に当たるものと特定加熱食肉製品の製造法に当たるもの)があり、それぞれ流通時の保存温度が異なることは、当業者の技術常識であったことが認められる。 3 被告が主張する本件審決の取消事由について ⑴ 取消事由1(本件発明1と甲1発明の一致点の認定の誤り-無効理由1関係)についてア甲1発明のローストビーフについて甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加熱食肉製品を含むものであると認められる。その理由は、次のとお りである。 (ア) 特定加熱食肉製品と加熱食肉製品の意義前記1⑵のとおり、本件明細書等の記載(段落【0018】)によれば、本件明細書等でいう特定加熱食肉製品は、規格基準において定められたものであり、規格基準で定められた製造基準及び保存基準を満たすもの であると認められる。 他方、加熱食肉製品は、規格基準によれば、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならないとされている(別紙3、食肉製品の製造基準の個別基準のうち加熱食肉製品の項)。 前記2⑵イ及びウによれば、市販のローストビーフ製品に、特定加熱食肉製品に該当するものと、加熱食肉製品に該当するものの両方が存在する 製品の製造基準の個別基準のうち加熱食肉製品の項)。 前記2⑵イ及びウによれば、市販のローストビーフ製品に、特定加熱食肉製品に該当するものと、加熱食肉製品に該当するものの両方が存在することは、本件出願日当時の技術常識であった。 (イ) 甲1の記載についてa 甲1に記載された技術的事項 (a) 甲1(別紙4)の記載によれば、甲1発明の従来技術には、次の ような問題があったことが認められる。すなわち、昨今の食生活の改善、衛生上の問題の回避、及び家庭における簡便性の追求により、ローストビーフを製造業者があらかじめスライスして流通させる必要性が高まっているが、スライスされたローストビーフを流通させる上での主な問題点は、スライスすることによって外気との接触面 積が大きくなるため、ローストビーフの酸化が激しくなるという点であり、その結果、消費者の手に渡るまで、色、臭い、味などを維持することが困難になることであった(段落【0002】及び【0003】)。また、酸化を防止するために、スライスされたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法などが知ら れていたものの、切断面が外気に触れない状態で切断するための特別な装置が必要で、多大なコストがかかること、ローストビーフのスライス面が外部から見えず、ローストビーフの品質、特に色調を消費者にアピールできないこと、及び上記真空包装においては、ローストビーフからのドリップが激しくなり、商品価値が著しく低下 することといった問題があった(段落【0005】~【0008】)。 そのため、甲1には、課題として、「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく 5】~【0008】)。 そのため、甲1には、課題として、「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が外部から見えるようにすることによって、 消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提供すること」(段落【0009】)が記載されていた。 (b) 甲1の特許請求の範囲の請求項1には、課題を解決するものとして、「スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガス バリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス及び /または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装方法」の発明が記載されている(請求項1及び段落【0010】)。 また、甲1には、発明を実施する際には、「本実施形態に係るスラ イスされたローストビーフの包装方法の第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされたローストビーフ2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガ スで置換し、容器12を密封して完了する」(段落【0021】)ことが開示されており、甲1に記載された発明は、トレイに並べる前に、ローストビーフをスライスする工程を有する。 (c) 甲1においては、スライスされたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法では、ローストビーフの品質、特 、トレイに並べる前に、ローストビーフをスライスする工程を有する。 (c) 甲1においては、スライスされたローストビーフをブロック状態に維持したまま真空包装する方法では、ローストビーフの品質、特 に色調を消費者にアピールできないとの問題があり、消費者への有効な視覚的アピールをすることが課題とされており(前記(a)、段落【0007】及び【0009】)、「スライスされたローストビーフ2は、切り口が外部から見えるような状態でトレイ11上に並べられている。これにより、消費者に対して、有効な視覚的アピールをす ることが可能となっている。」(段落【0019】)、「スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能となる。」(段落【0049】)と記載されていることからすると、「視覚的アピール」は、「製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまで」という流通 段階において「スライス面が外部から見える」ようにされたスライ ス面の「色調」によるものであると認められる。そして、包装体の開封後ではあるものの、色に関しては、赤みの強いものが、商品として優れていると評価されている(段落【0033】、【0038】、【0039】【表1】及び【0047】【表2】)ことから、「色調」としては、赤みが強いほど好ましいとされているものと認められる。 b 甲1の記載と甲1発明のローストビーフの成分規格について甲1には、甲1発明のローストビーフについて、定義に当たる記載がなく、「スライスされたローストビーフ」を用いることが記載されているのみで(段落【0019】、【0021】及び【0031】)、特定加熱食肉製品又は加熱食肉製品のいずれに属するかについての記載は 、「スライスされたローストビーフ」を用いることが記載されているのみで(段落【0019】、【0021】及び【0031】)、特定加熱食肉製品又は加熱食肉製品のいずれに属するかについての記載は なく、ローストビーフの製造方法についての記載もないから、製造条件(加熱温度及び時間等)に基づいて特定加熱食肉製品であるか否かを判断することもできない。 しかし、前記a(a)のとおり、ローストビーフをスライスすることによって酸化が激しくなり、消費者の手に渡るまで、色、臭い、味など を維持することが困難になり、また真空包装によりドリップが激しく生じるという従来技術の問題点を踏まえて、甲1発明は、流通段階において、スライス面を外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることを課題としており、前記a(c)のとおり、甲1には、包装体を開封して30分後の色の評価ではある が、赤みが強いものを好ましいと評価する旨記載されている。このようなことを考慮すると、当業者は、中心部の温度が63℃、30分以上となる条件で加熱され(前記ア(ア))、内部がピンク色又は灰色がかった茶色になる加熱食肉製品(前記2⑴ウ)であれば、開封した30分後も、上記の色調に変化はないものと考え、甲1発明のローストビ ーフは、上記の加熱食肉製品というよりは、中心部の温度を63℃で 30分加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行い(前記第2の1⑸)、スライス面が食肉本来の鮮やかな赤色に近い色調、すなわち食欲を喚起する色調になる特定加熱食肉製品(前記2⑴イ及びウ)を対象とするものと認識すると認められる。 したがって、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加 ち食欲を喚起する色調になる特定加熱食肉製品(前記2⑴イ及びウ)を対象とするものと認識すると認められる。 したがって、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加熱食肉製品を含むものであると認められる。 (ウ) 保存性についてa 保存性と甲1発明のローストビーフの成分規格について甲1には、スライスされたローストビーフの保存条件として、「流通 温度が0~5℃において1週間程度」(段落【0009】)、「周囲温度が5℃の状態において、スライスされたローストビーフの鮮度を1週間以上維持」(段落【0020】)、「外気温5℃の暗所に7日間保存」(段落【0032】)と記載されている。他方、規格基準においては、食肉製品の保存基準として、特定加熱食肉製品については、水分活性 が0.95以上のもの(ローストビーフはこれに当たると解される。)は4℃以下で保存しなければならないと定められ、加熱食肉製品については、10度以下で保存しなければならないと定められている(別紙3、乙6)。 甲1に記載の流通温度「0~5℃」には、特定加熱食肉製品の保存 温度である4℃以下が含まれており、これらの温度範囲はほぼ近いものであるから、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品を想定していたとしても不自然ではない。そして、甲1において5℃で保存試験が行われ、優れた品質のものが得られることが確認されれば、特定加熱食肉製品に義務付けられている4℃以下という条件で保存された場 合にも優れた品質のものが得られることは確実であるから、甲1にお いて、「外気温5℃の暗所に7日間保存」し、試験が行われたことをもって、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはない。 b 被告の主張に対す ら、甲1にお いて、「外気温5℃の暗所に7日間保存」し、試験が行われたことをもって、甲1のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはない。 b 被告の主張に対する判断(a) 温度との関係について 被告は、「期限表示のための試験方法ガイドライン」(乙77)は、消費者に提供するわけではない試験の際であっても規格基準によるべきことを定めているから、5℃で1週間程度又は7日間保存されている甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではない旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(ア)a)。 しかし、「期限表示のための試験方法ガイドライン」(乙77)は、食肉製品に期限を表示する際の試験方法を示すものであり、甲1に示された実験がそれと異なることをもって、直ちに甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではないということはできず、むしろ、発明の実施可能性を確かめるために、規格基準よりも厳しい条 件において課題が解決できるかを確認することは合理性があると認められるから、被告の上記主張は採用することができない。 (b) 保存期間との関係について被告は、本件明細書等に「特定加熱食肉製品の賞味期限は、スライス加工日から2〜3日程度と短く設定される。」(段落【0003】) と記載されていることから、それより約15年前の平成9年5月28日を出願日とする特許の公開公報である甲1に1週間程度保存できると記載されていた甲1発明に係るローストビーフは、特定加熱食肉製品であるとはいえない旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(ア)b)。 しかし、「消費期限」とは、定められた方法により保存した場合に おいて、腐敗、変質その他の品質(状態)の劣化に伴い安全 主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(ア)b)。 しかし、「消費期限」とは、定められた方法により保存した場合に おいて、腐敗、変質その他の品質(状態)の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日のことで、開封前の状態で定められた方法により保存すれば食品衛生上の問題が生じないと認められるものであるのに対し、「賞味期限」とは、定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品 質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日のことで、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあり、そのため、「賞味期限」を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない。そのため、賞味期限がスライス加工日から2、3日程度であるという本件明細書等の 記載から、その保存期間が2、3日程度であったと直ちにいうことはできない。 なお、仮に本件明細書等の「特定加熱食肉製品の賞味期限は、スライス加工日から2〜3日程度と短く設定される。」の「賞味期限」が「消費期限」の誤記であり、本件明細書等に、特定加熱食肉製品 の消費期限が2から3日程度と短く設定されている旨記載されていたしても、それによって、甲1に1週間程度保存できると記載されていた甲1発明に係るローストビーフが特定加熱食肉製品であることが直ちに否定されるとはいえない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (c) 甲1に係る特許が出願された平成9年当時の状況との関係について被告は、生食用食肉の安全確保が推奨されていた平成9年当時に、特定加熱食肉製品であるローストビーフを、甲1に記載されたように、規格基準を超える5℃で7日間も保存することは考えら との関係について被告は、生食用食肉の安全確保が推奨されていた平成9年当時に、特定加熱食肉製品であるローストビーフを、甲1に記載されたように、規格基準を超える5℃で7日間も保存することは考えられない 旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(ア)c)。 しかし、甲1には、実際に消費者に供給するときの保存条件が記載されているわけではなく、発明の実施可能性を確かめるために、規格基準よりも厳しい条件において課題が解決できるかを確認する実験が記載されているとも解されるところであり(前記a)、これはむしろ食肉の安全確保に資すると解されるところであるから、被 告の上記主張は採用することができない。 (エ) 色の評価についてa 色の評価と甲1発明のローストビーフの成分規格について(a) 甲1の実施例における「色の評価」は、「スライスされたローストビーフ」を甲1発明の包装方法にて包装し、外気温5℃の暗所に7 日間保存後、包装体を開封して30分後に、分光式測色色差計を用いて、色差表示方法(JISZ 8730)の「ハンターの色差式による色差」の項に示されているa値を測定し、その平均値を求めたものであって、この平均値が大きいほど、スライスされたローストビーフの赤みが強く、変色度合いが小さいことを示すものであ る(段落【0032】及び【0033】)。甲1発明の製造方法が具体的に開示された実施例1におけるスライスされたローストビーフは、包装体を開封して30分後において、色の評価が「5:7.0<a値の平均値」すなわち「a値の平均値が7.0より大きい」ものであり、赤みが強く、変色度合いが小さいものであったことが示 されている。 (b) ところで、前記2⑴アのとおり、食肉の新鮮な切り口や肉塊の中は暗 わち「a値の平均値が7.0より大きい」ものであり、赤みが強く、変色度合いが小さいものであったことが示 されている。 (b) ところで、前記2⑴アのとおり、食肉の新鮮な切り口や肉塊の中は暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb)であるが、空気中の酸素と容易に結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になり、いわゆる酸素化又はブルーミングと呼ばれる現象が みられることは技術常識であり、乙73の「フィルムから出せば食 肉の表面はブルーミングを起こし鮮赤色を呈するようになる。」(別紙5の1⑴イ)という記載、及び甲4の「還元型ミオグロビンは、空気中の酸素と容易に結びついて、15~30分ほどで鮮紅色のオキシミオグロビンになる。」(別紙5の1⑵)という記載からすると、スライスされたローストビーフの包装体を開封して30分後に赤み の強い色を呈したという場合としては、保存中においてもオキシミオグロビンの多い鮮赤色である場合の他に、保存中に還元型ミオグロビンが多く、紫赤色に近い状態であったものが、空気にさらされてブルーミングを起こした結果、オキシミオグロビンが増加し、鮮赤色に変化した場合が考えられる。そうすると、甲1の実施例1に おける色の評価(前記(a))に基づいて、前記(イ)a(c)で述べた「流通段階」の保存中(開封前)において、スライスされたローストビーフが赤みの強い色であったことを確認できるとまではいえない。 しかし、甲1の実施例1における色の評価(前記(a))によれば、甲1発明におけるスライスされたローストビーフは、少なくとも、 保存中にメトミオグロビンが生じて褐変した商品価値を損なう状態(別紙5の1⑴イ)にはなっておらず、加熱食肉製品の製造条件によってピンク色又は茶色を呈した状 れたローストビーフは、少なくとも、 保存中にメトミオグロビンが生じて褐変した商品価値を損なう状態(別紙5の1⑴イ)にはなっておらず、加熱食肉製品の製造条件によってピンク色又は茶色を呈した状態にもなっていないことが理解される。そのため、甲1の実施例1におけるローストビーフのスライス面が、開封後のオキシミオグロビンの増加によって鮮赤色 に変化したものであるとしても、それは、加熱食肉製品ではなく特定加熱食肉製品であることを示していることになるから、甲1発明のローストビーフが、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加熱食肉製品を含むものであるとした前記(イ)の認定と矛盾するものではない。 b 被告の主張に対する判断 (a) a値との関係について被告は、甲5の【表4】によれば、加熱食肉製品でもa値が7. 0を超えるから、a値が7.0を超えていることから甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であるとはいえない旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(イ)a)。 甲5には、その実施例1及び比較例1ないし4(段落【0059】~【0064】、【表4】)において、豚肉に由来する赤肉のひき肉1㎏に対し、【表4】所定のとおりに、硫酸アルミニウムカリウム、炭酸水素ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウムを配合するという発色性を向上させるための操作を行い、pHを6.2ないし8に 調整し、80℃の湯浴で30分間ボイルした後に、得られた食肉組成物の発色状態を評価し、実施例1について7.0を超えるa値のものが得られたことが記載されているところ、段落【0033】には、空気と接触して3価の状態(Fe3+)で存在するミオグロビンのヘム鉄が、アスコルビン酸又はその塩と接触することにより、鮮 やかな赤色を られたことが記載されているところ、段落【0033】には、空気と接触して3価の状態(Fe3+)で存在するミオグロビンのヘム鉄が、アスコルビン酸又はその塩と接触することにより、鮮 やかな赤色を示す2価のヘム鉄(Fe2+)に還元されることが記載されているので、加熱食肉製品の条件で加熱された食肉組成物が7. 0を超えるa値となったのは、アスコルビン酸ナトリウム等による発色性を向上させるための処理を行ったためであると認められる。 これに対し、甲1発明は、甲5に記載されているような発色性を向 上させるための操作を行うことを前提としていないから、甲5において、加熱食肉製品のa値が7.0を超える実験結果が示されているとしても、甲1発明のローストビーフが加熱食肉製品であるとはいえない。 (b) 褐変との関係について 被告は、甲3には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用し た場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されているところ、甲1の実施例1ないし5は、脱酸素剤又はガス置換によって容器内の残存酸素濃度を0.01%以下に したものであるから(甲1の【表1】、【表2】及び段落【0041】)、容器内の酸素濃度が数%ないし10数%程度に達する段階を経たはずであり、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であれば、その段階で褐変するはずであるにもかかわらず、甲1の実施例1ないし5のローストビーフは褐変せず赤みが強いというのであ るから(【表1】及び【表2】)、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではないと主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア 例1ないし5のローストビーフは褐変せず赤みが強いというのであ るから(【表1】及び【表2】)、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品ではないと主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(イ)b)。 しかし、前記2⑴アのとおり、別紙5の1⑴の乙73の記載、同別紙の1⑶の乙98の記載等によれば、酸素透過性の低いフィルム で真空包装した場合などの低い酸素濃度(pO2)、例えば、1%程度の酸素が残存するような不十分な(真空)包装では、メトミオグロビン(MMb)が生成し褐変するが、酸素濃度(pO2)が更に低下し酸化に関与する酸素がなくなると、メトミオグロビン(MMb)の生成は起こらず、還元型ミオグロビン(RMb)が安定的に保持 されるようになることは、本件出願日当時の技術常識であったから、1%程度の酸素が残存するような不十分な(真空)包装が相当の時間にわたって維持されたときには、メトミオグロビン(MMb)が生成し褐変するとしても、甲1発明のように容器内の残存酸素濃度を0.01%以下にまで脱酸素化する場合に、酸素濃度を1%より も低い値に低下させる過程で一時的に酸素濃度が1%になったと きに、それによって直ちに褐変が生じるとは認められない。そして、上記のような技術常識及びそこから導かれる技術的事項に照らすと、甲3の上記記載も、容器内の酸素濃度が数%ないし10数%程度に達すると直ちにメト化し褐変することを述べたものではないといわざるを得ない。そうすると、甲3に上記記載があるとしても、 甲1の実施例1ないし5のローストビーフが褐変せず赤みが強いことによって(【表1】及び【表2】)、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはないから、被告の上記主張は採用することができな し5のローストビーフが褐変せず赤みが強いことによって(【表1】及び【表2】)、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはないから、被告の上記主張は採用することができない。 (c) 加熱食肉製品でも赤みを呈し、脱酸素の効果があること(乙85) について被告は、乙85に、亜硝酸ナトリウム等の発色剤を肉塊の内部に注入し、ミオグロビン(Mb)に一酸化窒素(NO)が配位してNOMbとなることにより安定な赤色を保ち続けること等が記載されていることから、甲1発明のローストビーフが褐変しないのは、 肉塊内に発色剤を注入できる加熱食肉製品であるからである旨主張し、また、乙85の記載に基づき、発色剤を入れた加熱食肉製品も退色を防ぐためには脱酸素をする必要があるから、脱酸素をする甲1発明のローストビーフを加熱食肉製品と考えることは極めて自然であると主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(イ)c)。 乙85には、発色剤である亜硝酸塩を用いた場合、ミオグロビン(Mb)にNO(一酸化窒素)が配位してNOMbとなるところ、NOは酸素の300万倍の親和性を持って結合するため、加熱後もヘム鉄から解離することなく安定な赤色を保ち続け、この赤色は冷暗所でかつ酸素を遮断すると数年間安定に保たれる場合があると されている旨記載されている。乙85は、本件出願日である平成2 4年(2012年)5月17日よりも後の平成29年(2017年)3月に発表されたものであるが、上記の事項は、本件出願日前に発表された文献を引用して書かれており、甲5(特開2009-159825号公報、平成21年(2009年)7月23日公開)の段落【0004】ないし【0009】にも、亜硝酸塩を発色剤として 用いてミオグロビン 献を引用して書かれており、甲5(特開2009-159825号公報、平成21年(2009年)7月23日公開)の段落【0004】ないし【0009】にも、亜硝酸塩を発色剤として 用いてミオグロビン(Mb)に一酸化窒素(NO)を配位させて食肉製品の退色を抑制する方法が記載されているから、上記の事項は、本件出願日前に広く知られていたものと認められる。そして、甲5によれば、発色剤による発色状態を評価するためには、使用する発色剤の種類や配合割合、pH等を調整し、比較することが必要であ ると認められる。ところが、甲1では、ローストビーフの発色状態について検証を行っているにもかかわらず、発色剤の種類や配合割合、pHの調整値など、発色剤による発色状態を評価するための重要な条件が全く記載されていない。また、甲1発明は、酸化による色の維持が困難であることを従来技術の問題とする(甲1段落【0 003】)にもかかわらず、甲1では、発色剤を使用して色を維持することに何ら言及はなく、実施例について、残存酸素濃度を一定の値以下に保持して、暗所に「7日間」保存後の色の評価をする(実施例1)とされており、これらのことに鑑みると、甲1発明は、発色剤を用いて色調が安定化されている加熱食肉製品というよりは、 ミオグロビン割合によって色調が変化する特定加熱食肉製品を想定しているものと理解する方が自然である。 したがって、乙85の記載を考慮しても、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることは否定されず、被告の上記主張は採用することができない。 (オ) 甲1に係る特許の出願時の技術常識について a 平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前の特許出願について(a) 前記2⑵ア及 (オ) 甲1に係る特許の出願時の技術常識について a 平成5年3月17日の規格基準の改正により特定加熱食肉製品の製造流通が認められる前の特許出願について(a) 前記2⑵ア及びイのとおり、平成5年3月17日付けの規格基準の改正によってローストビーフについて特定加熱食肉製品としての製造流通が認められるようになったことは、平成5年ないし平成6 年当時には当業者の技術常識であり、規格基準において、食肉製品の製造基準及び保存基準の個別基準が、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品についてそれぞれ定められていることは、本件出願日当時の技術常識であった。 (b) 被告は、乙36記載の加熱条件のうち、加熱時間が3時間(18 0分)の場合は、特定加熱食肉製品の加熱殺菌の条件を満たさないと考えられる旨、乙36が公開された昭和61年当時、特定加熱食肉製品というカテゴリ自体が存在していなかったから、乙36に記載された加熱方法は、加熱食肉製品の加熱方法によって製造されていると考えざるを得ない旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕 ア(ウ)a)。 しかし、仮に乙36記載の加熱条件のうち、加熱時間が3時間(180分)の場合が、特定加熱食肉製品の加熱殺菌の条件を満たさないとしても、乙36に記載されたそれ以外の加熱条件は、特定加熱食肉製品の加熱殺菌の条件を満たしていると考えることができる。 また、乙36には、「〔従来の技術・発明が解決しようとする問題点〕」として、「我が国の食品衛生法は、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品以外の食肉製品の製造に当たっては、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌することを要求している。しかしながら、この殺菌方法によると、 良好な品質 食肉製品の製造に当たっては、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌することを要求している。しかしながら、この殺菌方法によると、 良好な品質特性を有するローストビーフ、特に食欲を喚起する特有 の鮮紅色を呈する製品の製造は不可能である。かかる事情により、食品衛生法に定める食肉製品の製造基準に適合したローストビーフの大量生産方式による調製方法は従来確立されていなかった。そのため、食肉製品製造業者によるローストビーフの商業的生産が許可されておらず、ホテル、レストラン等の飲食店営業者により店内で 調製されているにすぎなかった。(中略)本発明は、上記問題点を解決し、ローストビーフの品質特性を損なわない条件でサルモネラ属細菌や大腸菌(Escherichiacoli)を殺菌し、且つウェルシュ菌の増殖を抑制するローストビーフの調製方法を提供することを目的とする。」(305頁右下欄1行目~306頁右上欄 17行目)と記載されているから、乙36記載の発明は、加熱食肉製品の殺菌方法によらなくても、サルモネラ属細菌や大腸菌(Escherichiacoli)を殺菌し、かつウェルシュ菌の増殖を抑制するローストビーフの調製方法を提供するものと認められる。したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (c) 被告は、甲29に係る特許が、特定加熱食肉製品が規格基準により制度上認められた平成5年3月17日のわずか2か月前に出願されたものであることから、実験的に特定加熱食肉製品に関する特許を出願しただけであると考えるのが自然であり、甲29には、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製 造方法に関する発明は記載されていない旨主張する(前記第 に関する特許を出願しただけであると考えるのが自然であり、甲29には、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製 造方法に関する発明は記載されていない旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(ウ)a)。 しかし、前記(b)の乙36の記載によれば、平成5年に規格基準が改正される前から、加熱食肉製品の殺菌方法によると鮮紅色を呈するローストビーフの製造は不可能であるとして、加熱食肉製品の殺 菌方法によらず、なおかつ人体に対する安全性を確保するに足りる 殺菌を可能とするローストビーフの製造方法が求められていたものと認められ、別紙5の2⑴の乙38の記載によれば、平成5年の規格基準の改正は、そのような要請を踏まえて行われたものと認められる。そして、前記(a)の認定も考慮すると、甲29には、特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製 造方法に関する発明が記載されていると認められる。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (d) そうすると、本件審決が、乙36及び甲29に基づき、平成5年の規格基準の改正前に特定加熱食肉製品の製造基準や保存基準に該当するローストビーフの製造方法に関する発明が特許出願されてい たと判断した点に誤りはない。 b 甲30に係る特許の出願時である平成11年7月の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたかについて甲30(特許第3115288号公報、平成11年(1999年)7月19日出願、請求項の数1)の特許請求の範囲に記載された発明 は、「ローストビーフの原料肉にアスコルビン酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウムの溶液を注入し、次いでこの原料肉を加熱加工することを特徴とするローストビーフの製造方法。」で、 記載された発明 は、「ローストビーフの原料肉にアスコルビン酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウムの溶液を注入し、次いでこの原料肉を加熱加工することを特徴とするローストビーフの製造方法。」で、実施例1及び対照例1は、中心の温度が63℃になってから30分以上加熱する製造方法であり(段落【0009】及び【0010】)、退色又は変色を抑制する 物質を使用する加熱食肉製品の製造方法によるものである。また、甲30に記載された発明の課題は、「ローストビーフ、たたきなどの食肉加工品を販売のために店頭に置いた場合に退色又は変色しない食肉加工品及びその製法を提供することにある。」(段落【0003】)とされ、実施例1及び対照例1、実施例2及び対照例2の実験における保存の 条件は、肉を入れたパックを「AM11:00からPM7:00まで 照明付きの冷蔵ショーケースに入れる。」(段落【0009】及び【0010】)とされており、甲1発明の「0~5℃において1週間程度」保存することを目指す方法とは、保存条件も異なる。 しかしながら、甲30には、従来の技術として、「従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパーマーケット等に置いた場合、店頭 に置いている間の3-5 時間程度でその色が変わってしまって商品価値がなくなり店舗ではロスを生じる原因になっていた。ローストビーフの製法としては、食品衛生法により食肉原料の中心温度を56℃、30分以上加熱する(流通は10℃以下、またこの場合製造過程で原料肉に調味液等の注射をすることが認められている)製造法と中心温 度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)による製造法の二つの方法がある。ローストビーフに )製造法と中心温 度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)による製造法の二つの方法がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。このローストビーフをスライスしてから店頭に置 くと退色が著しく商品価値を落とすこととなり問題となっていた。そこで、この点を解決する方法の開発が強く望まれている。」(上記記載の「56℃、30分以上」という部分の「56℃」は、規格基準の個別規格によれば、「63℃」の誤記であると認められる。前記(ア)、別紙3(乙6))と記載されているから、甲30に記載された発明は、特定 加熱食肉製品における退色の問題を解決するために退色又は変色を抑制する物質を注入する製造方法を採用したものと解されるものであり、本件審決が、甲30に基づき、甲30に係る特許の出願時である平成11年7月19日の時点で特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたと判断したことに誤りがあるとは認められない。甲1発明に 係る特許は、平成5年3月17日付けの規格基準の改正により新たな 規格として特定加熱食肉製品が定められた後の約4年後であり、また、上記のとおり、特定加熱食肉製品の製法が一般的に用いられていたと判断される平成11年7月19日の約2年前である平成9年5月28日に出願されたものであるから、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であると認定することは何ら不自然ではない。 (カ) 加熱食肉製品であるローストビーフの存在についてこれまで述べたところによれば、甲1発明のローストビーフは、ローストビーフの本来の色を出すのに有利であり、そのために 不自然ではない。 (カ) 加熱食肉製品であるローストビーフの存在についてこれまで述べたところによれば、甲1発明のローストビーフは、ローストビーフの本来の色を出すのに有利であり、そのために一般的に用いられている(前記(オ)b)特定加熱食肉製品であると認めるのが相当である。現在、加熱食肉製品であるローストビーフが販売されているとして も、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはない。 (キ) 実験についてa 実験結果の検討(a) 原告実験(甲68及び甲69)によれば、特定加熱食肉製品のロ ーストビーフに、窒素ガス置換及び鉄系脱酸素剤を適用し(試料№79~81)、包装後4日目の開封後(60分後)のa値は7.0以上で、色調は赤色であり、ミオグロビン割合についても、鮮赤色であるオキシミオグロビン割合の増大が確認できる。 なお、原告実験により測定されたa値は、包装後4日目に開封し て60分後の測定であるため、その測定条件は、甲1における7日間保存後(段落【0032】)の開封して30分後(段落【0033】)という測定条件とは一致していない。しかし、還元型ミオグロビンからオキシミオグロビンへの変化は、15ないし30分程度で進行し(甲4)、原告実験の試料№79 ないし81 の開封前のa値(6.7 8~7.94)と開封60分後のa値(11.84~14.29) のほぼ中間に、被告新実験(乙151)における特定加熱食肉製品の開封30分後のa値(第3表、9.15~11.83)が存在することからすれば、原告実験においても、甲1における7日間保存後の開封して30分後という測定条件で測定すれば、被告新実験における上記のa値と同様の結果を確認できるものと推認され、a値 は 在することからすれば、原告実験においても、甲1における7日間保存後の開封して30分後という測定条件で測定すれば、被告新実験における上記のa値と同様の結果を確認できるものと推認され、a値 はいずれも7.0以上であると推認される。 (b) 次に、被告当初実験(乙106)では、開封前のa値しか測定されていない。特定加熱食肉製品のローストビーフに、窒素ガス置換及び鉄系脱酸素剤を適用し、4日目の開封前のa値が5.1であるという被告当初実験の結果が得られていることをもって、特定加熱 食肉製品について、「7日間保存後」の「開封して30分後」のa値が7.0以上になるという甲1の実験結果の信用性が否定されるとはいえない。 (c) 開封前後の測定を行った被告新実験(乙151)では、特定加熱食肉製品のローストビーフに、窒素ガス置換及び鉄系脱酸素剤を適 用し、5℃で1週間保存して開封30分後のa値は7.0以上となっており(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(オ)b(c)の第3表)、ローストビーフの肉色が赤くなるという結果が得られている。 (d) 甲1の実施例1においては、スライスされたローストビーフに、窒素ガス置換及び鉄系脱酸素剤を適用し、5℃で7日間保存後、包 装体を開封して30分後のa値が7.0以上であることをもって、「赤みが強く、変色度合いが小さい」と色の評価がされているところ(段落【0039】及び【0033】)、前記(a)ないし(c)によれば、原告実験、被告当初実験及び被告新実験の各実験結果は、いずれも、甲1における上記の色の評価と特に矛盾するものではなく、他に、 特定加熱食肉製品のローストビーフについて、甲1に記載された色 の評価が得られるはずはないと解すべき事情も認められない。 したがって、上記各 と特に矛盾するものではなく、他に、 特定加熱食肉製品のローストビーフについて、甲1に記載された色 の評価が得られるはずはないと解すべき事情も認められない。 したがって、上記各実験結果により、甲1発明が特定加熱食肉製品を対象とするものであるとの認定が否定されることはなく、むしろ、甲1に記載された実験及び色の評価に基づいて、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であると認定することは、合理性 があるものと認められる。 b 実験に基づく被告の主張に対する判断(a) 被告は、甲1の実施例に可能な限り条件を合わせた被告新実験では、特定加熱食肉製品のサンプルのa値の平均値は7.0を大幅に下回って褐変しており、開封前の褐変したローストビーフを「消費 者への有効な視覚的アピールをすることが可能」(甲1段落【0009】)などと評価することはできず、誤った事実が記載された甲1は主引用発明とはなり得ない旨、開封前のローストビーフの赤さを重視するならば、甲1のローストビーフは、特定加熱食肉製品ではなくむしろ加熱食肉製品であるという結論が導かれる旨、特定加熱食 肉製品であるローストビーフについて、開封前にa値が7.0を下回って褐変しており、開封30分後にa値が7.0を上回って色が戻ったとすれば、そのような大きな変化について甲1に記載されていないのは不自然であり、被告新実験の結果を踏まえれば、甲1発明のローストビーフは、発色剤を使用した加熱食肉製品であると考 えるのが妥当である旨主張する(前記第3の1⑴〔被告の主張〕ア(オ)c(a)(i))。 しかし、前記aのとおり、原告実験、被告当初実験及び被告新実験の各実験結果により、甲1発明が特定加熱食肉製品を対象とするものであるとの認定が否定されることはなく、む 〕ア(オ)c(a)(i))。 しかし、前記aのとおり、原告実験、被告当初実験及び被告新実験の各実験結果により、甲1発明が特定加熱食肉製品を対象とするものであるとの認定が否定されることはなく、むしろ、甲1に記載 された実験及び色の評価に基づいて、甲1発明のローストビーフが 特定加熱食肉製品であると認定することは、合理性があるものと認められるものであり、前記(ア)ないし(カ)で述べたところによれば、当業者は甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であると認識すると認められるから、被告の上記主張は採用することができない。 (b) 被告は、甲1の実施例に可能な限り条件を合わせた被告新実験によれば、甲1はあくまで開封後30分の色の良さを志向し、評価の基準として採用したと考えるのが妥当であり、開封前の色の良さを志向する本件各発明と全く技術的思想が異なるから、主引用発明として不適格であるというほかない旨主張する(前記第3の1⑴〔被 告の主張〕ア(オ)c(a)(ii))。 しかし、仮に、当業者が甲1発明のローストビーフを特定加熱食肉製品であると考えて追試を行い、被告新実験のように、開封前に褐変することを確認したとしても、開封後には、甲1に記載されたように赤くなることも確認するから、消費者の視覚にアピールする という甲1記載の課題が、通常発色剤が使用される加熱食肉製品に関するものであると認識を改めるとは考えられず、むしろ、開封前の色調もより良くする方向に思考を働かせると考えられる。 したがって、甲1発明は、開封前に優れた肉色を維持することを課題とする本件各発明と全く技術的思想が異なるとはいえず、主引 用発明として不適格であるとはいえないから、被告の上記主張は採用することができない。 (c 、開封前に優れた肉色を維持することを課題とする本件各発明と全く技術的思想が異なるとはいえず、主引 用発明として不適格であるとはいえないから、被告の上記主張は採用することができない。 (c) 被告は、被告新実験によれば、流通段階、すなわち開封前の特定加熱食肉製品は褐変するから、本件審決の相違点1及び2に関する判断は、その前提を欠いており、失当である旨主張する(前記第3 の1⑴〔被告の主張〕ア(オ)c(a)(iii))。 しかし、仮に被告新実験により、特定加熱食肉製品であるローストビーフについて甲1に記載された条件で実験を行い、開封前に褐変し、開封後に赤くなることを確認したとしても、甲1発明が、消費者への有効な視覚的アピールを目的としていることに変わりはないから、甲1発明に、甲2に記載された、肉などのミオグロビン を含有する食品の鮮度と鮮やかな赤色を維持するための技術的事項や、甲3に記載された、ミオグロビンの変化に基づく生肉の鮮やかな赤色を保持するための技術的事項を採用するという動機付けが否定されることはなく、本件審決の相違点1及び2に関する判断が誤りであるとは認められない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (ク) ドリップについて甲1には、発明が解決しようとする課題として、真空包装においてローストビーフからのドリップが激しくなることが記載されており(段落【0008】)、他方、比較例及び実施例を用いた実験においては、比較 例4のように真空包装した場合はドリップが多く発生する(段落【0043】)のに対し、実施例1のように窒素置換と脱酸素剤により脱酸素を行い、包材内の圧力が変化しない方法をとった場合にはドリップが全く認められない(段落【0036】、【0039 く発生する(段落【0043】)のに対し、実施例1のように窒素置換と脱酸素剤により脱酸素を行い、包材内の圧力が変化しない方法をとった場合にはドリップが全く認められない(段落【0036】、【0039】及び【表1】)との結果が示されており、甲1記載の発明によって課題を解決し得ることが記載さ れている。そして、被告のドリップに関する実験(乙129の1)によれば、脱酸素の方法として窒素置換と脱酸素剤による場合にはドリップが発生しないが、真空包装による場合には多くのドリップが発生し、特定加熱食肉製品と加熱食肉製品とでドリップ量に大差がないとされるところ、この実験の結果は、甲1の上記記載に矛盾するものではなくむし ろ合致するものであるし、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製 品であることを否定する根拠となるものではない。 したがって、ドリップの点から、甲1発明のローストビーフが特定加熱食肉製品であることが否定されることはない。 (ケ) 前記(ア)ないし(ク)によれば、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加熱食肉製品を含むものであると認め られる。 イ取消事由1の成否前記アのとおり、甲1発明のローストビーフは、特定加熱食肉製品であるか、少なくとも特定加熱食肉製品を含むものであるから、本件審決が、甲1発明のローストビーフは特定加熱食肉製品であると認定し、無効理由 1に関し、本件発明1と甲1発明の対比において、特定加熱食肉製品の製造方法である点を一致点として認定したことに誤りはなく、取消事由1は理由がない。 ⑵ 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)について ア本件発明1の「酸素化する工程」の意味と甲1発明における「酸素化する工程」 く、取消事由1は理由がない。 ⑵ 取消事由2(相違点1の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)について ア本件発明1の「酸素化する工程」の意味と甲1発明における「酸素化する工程」の有無について(ア) 本件発明1の「酸素化する工程」の意味について本件発明1における「スライスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオグロビンに酸素化する工程」について、本 件明細書等には、「酸素化とは、酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなることを意味する。」(段落【0022】)と定義されており、「これは、特定加熱食肉製品における断面がスライス直後の紫赤色から鮮赤色に変化する現象として捉えることもできる。」 (段落【0022】)とされている。そして、本件明細書等には、酸素化 の処理の時間等について、「スライス加工の後、特定加熱食肉製品を酸素化は、メトミオグロビンの割合が増加する前に終了することが好ましい。 例えば、スライス加工の後、空気に特定加熱食肉製品をさらすことで酸素化処理を行う場合、例えば30~90分、好ましくは50~70分、より好ましくは60分の処理時間とすることができる。上記範囲の処理 時間とすることで、メトミオグロビンの割合が増加することなく、オキシミオグロビンが増加して強い赤みを呈することができる。」(段落【0023】)とされ、「例えば、酸素化処理は、特定加熱食肉製品の断面におけるスライス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。」(段落【002 4】)とされている。そうすると、本件明細書等によれば、酸素化の処理 イス直後の紫赤色が鮮赤色に変化する状態を目視により確認し、十分に赤色を呈した段階で処理を終了しても良い。」(段落【002 4】)とされている。そうすると、本件明細書等によれば、酸素化の処理時間は、紫赤色から鮮赤色に変化することが確認されるのに十分であるが、褐変に至らない時間であり、30ないし90分、好ましくは50ないし70分、より好ましくは60分とされているものと認められる。 他方、本件出願日前において、食肉の酸素化(ブルーミング)は、食 肉の新鮮な切り口や肉塊の中の暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb)が、空気中の酸素と容易に結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になる現象であること(前記2⑴ア)、ローストビーフのスライス面でも、同様の色調の変化がみられること(前記2⑴イ)は技術常識であり、暗赤色(紫赤色)の還元型ミオグロビン(RMb) が酸素と結びついて鮮赤色のオキシミオグロビン(O2Mb)になるまでの時間は、別紙5の1⑵の甲4には「15~30分ほど」、同別紙の1⑷の乙96の1には「数分」と記載されている。 そうすると、「酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシ ミオグロビンとなる」という本件明細書等でいう酸素化の工程に必要な 処理時間は、技術常識も考慮すると、本件明細書等に記載の30ないし90分、好ましくは50ないし70分、より好ましくは60分に限定されるとまでは認められないが、少なくとも数分であるものと認められる。 したがって、ローストビーフのスライスから容器の密封までにどのくらいの時間空気に曝すかによって酸素化の程度は異なるが、ごく僅かな 時間(例えば30秒以内)空気中の酸素と触れる場 と認められる。 したがって、ローストビーフのスライスから容器の密封までにどのくらいの時間空気に曝すかによって酸素化の程度は異なるが、ごく僅かな 時間(例えば30秒以内)空気中の酸素と触れる場合についてまで、本件発明1の「酸素化する工程」に該当するとはいえない。 (イ) 甲1発明における「酸素化する工程」の有無について甲1には、スライスされたローストビーフの包装方法について、「包装対象となるローストビーフは、家庭において加工を必要としないように、 あらかじめスライスされたものである。スライスされる厚みは、通常1~2mmくらいである。また、スライスされたローストビーフ2は、切り口が外部から見えるような状態でトレイ11上に並べられている」(段落【0019】)、「第1の工程では、トレイ11上にスライスされたローストビーフ2を並べる。第2の工程では、第1の工程にてスライスされ たローストビーフ2を並べられたトレイ11と、脱酸素剤13とを袋状の容器12に挿入する。第3の工程では、ガス置換兼用真空包装機を用いて、容器12内を窒素ガスで置換し、容器12を密封して完了する」(段落【0021】)と記載されているが、甲1には、ローストビーフをスライスしてから、脱酸素剤の封入及び窒素ガス置換を行うまでの間に、 積極的に「酸素化」を行うことは記載されていない。 通常、ローストビーフをスライスする際に、空気中の酸素を排除する条件で行わない限りはある程度空気に曝されることになるが、甲1には、空気に曝される時間、すなわち、ローストビーフをスライスしてから、脱酸素剤の封入及び窒素ガス置換を行うまでの時間等の条件が明らかに されていない。そのため、仮に、甲1発明において、本件明細書等にお ける酸素化の定義(「酸素含 ライスしてから、脱酸素剤の封入及び窒素ガス置換を行うまでの時間等の条件が明らかに されていない。そのため、仮に、甲1発明において、本件明細書等にお ける酸素化の定義(「酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くことにより、還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなる」、前記(ア))中、「酸素含有気体中にスライスされた特定加熱食肉製品を置くこと」という部分は満たす可能性があるとしても、ローストビーフの切り口が紫赤色から鮮赤色に変化する程度ま で空気に曝され、「還元型ミオグロビンが酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビンとなる」という部分まで満たしているかは不明である。 また、甲1では、スライスされたローストビーフの切り口が外部から見えるような状態でトレイに並べられ、消費者に対して視覚的アピールをすることが可能となっている(段落【0019】)とされているものの、 切り口の色は明らかにされておらず、前記⑴ア(エ)a(b)のとおり、実施例の「色の評価」からは、密封後の保存中(開封前)の色までは判明しないから、甲1発明のローストビーフが、スライスしてから密封されるまでの間に、「酸素化する工程」を有していたことが「色の評価」から自明であるともいえない。そうすると、甲1発明において、本件発明1の「酸 素化する工程」があるのか否かは明らかでないから、本件発明1と甲1発明の間には相違点1が存在するものと認められる。 したがって、本件審決が本件発明1と甲1発明の対比において相違点1を認定したこと(本件審決第7の1⑵イ〔本件審決66頁〕)に誤りはないが、ローストビーフが「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」 が本件発明1の「酸素化する工程」に該当するとして、相違点1は実 定したこと(本件審決第7の1⑵イ〔本件審決66頁〕)に誤りはないが、ローストビーフが「僅かの時間でも空気中の酸素と触れる場合」 が本件発明1の「酸素化する工程」に該当するとして、相違点1は実質的な相違点ではないとした本件審決の判断(前記第7の5⑴イ(ア)〔本件審決83~85頁〕)は採用することができない。 イ相違点1の容易想到性の判断の誤りについて(ア) 甲2記載の技術的事項 甲2(特開2012-37202号公報)には、別紙6の記載がある。 その記載によれば、甲2には、次のような技術的事項が記載されていたものと認められる。 すなわち、肉などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮やかな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、冷蔵庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、食品が冷却される前に貯蔵空 間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色するという問題があった(段落【0004】)ため、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品の貯蔵方法を提供することを課題として、「冷気を用いてミオグロビン を含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させる」という技術的特徴を有する発明が記載されていた(請求項1、段落【0005】~【0006】)。 具体的には、収納容器内に食品が投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器内の食品を冷却するとともに、酸素減少手段を停止させ収納容器内に貯蔵された食品の酸化を維持する期間( 006】)。 具体的には、収納容器内に食品が投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器内の食品を冷却するとともに、酸素減少手段を停止させ収納容器内に貯蔵された食品の酸化を維持する期間(例えば1時間)を設けることにより、食品に含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))(判 決注:「還元型ミオグロビン」と同じ。)が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食品の色彩がより鮮やかな赤色となり、食品の赤みが向上するものであり、その後酸素減少手段を動作させるが、収納容器内に投入された食品がある程度冷却(凍結)されて、オキシミオグロビンの還元反応を起こりにくくしてか ら収納容器内の酸素を減少させることができるため、収納容器内の酸素 が減少しても、食品に含まれるオキシミオグロビンが還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビンが生成されにくくなり、食品の鮮やかな赤色を維持することができ、しかも、収納容器内の酸素が減少しているため、褐色を呈するメトミオグロビン(metMbFe(III))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、 食品の劣化を抑え鮮度を維持することができ長期保存が可能になるというものである(段落【0035】、【0038】~【0041】)。 (イ) 甲1発明に甲2に記載された技術的事項を組み合わせることの容易想到性について前記(ア)のとおり、甲2に記載された技術的事項は、肉などのミオグロ ビンを含む食品を、冷却する前に酸素が減少した低酸素状態とすると、食品が紫赤色に変色してしまうという課題があったところ、酸素減少手段を作動させる前に、食品を冷却するとと は、肉などのミオグロ ビンを含む食品を、冷却する前に酸素が減少した低酸素状態とすると、食品が紫赤色に変色してしまうという課題があったところ、酸素減少手段を作動させる前に、食品を冷却するとともに、酸化を維持する期間を設ける、具体的には、貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで、食品を空気中の酸素濃度のままに置くことで、 そこに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビンを酸化させ、鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンに変化させる工程を備えるということである。そして、このような甲2に記載された工程は、「酸素化(ブルーミング)」と呼ばれる現象であり、消費者の購買意欲に影響を与えるものであることは技 術常識であった(前記2⑴ア)。 他方、甲1発明は、特定加熱食肉製品であるローストビーフを対象とするものであり(前記⑴)、「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面 が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的ア ピールをすることが可能な」スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体の提供を目的としたものであって(前記⑴ア(イ)a(a)、段落【0009】)、その視覚的アピールには、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフのスライス面の色調が含まれており、また、「色調」としては、赤み が強いほど好ましいとされていると認められる(前記⑴ア(イ)a(c)、段落【0007】、【0019】、【0033】及び【0049】)。 そして、ロ が含まれており、また、「色調」としては、赤み が強いほど好ましいとされていると認められる(前記⑴ア(イ)a(c)、段落【0007】、【0019】、【0033】及び【0049】)。 そして、ローストビーフにおいても、ミオグロビンの作用による色調の変化がみられ、食肉本来の鮮やかな赤色に近い、スライス面の鮮赤色は食欲を喚起する色として重要な要素であることが本件出願当時の技術 常識であったものと認められる(前記2⑴イ)。 そうすると、甲1発明において、消費者への有効な視覚的アピールができる、スライス面が赤みの強いローストビーフを製造するという課題があることが認められるから、酸素を減少させる工程に先立ち、甲2に記載された、肉などのミオグロビンを含有する食品の鮮度と鮮やかな赤 色を維持するための技術的事項を適用し、食品に対して酸化を維持し、食品に含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビンを酸化させ、鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンに変化させる工程を設けることは、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。 (ウ) 被告の主張に対する判断a 被告は、甲1発明と甲2に記載された技術的事項は、技術分野が異なり技術的関連性もないから、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用することはできないし、甲2は対象とする生肉の冷凍化を前提としているから、甲2により単に食品を冷却しながら行う技術的事 項を認定している本件審決は誤りであり、また、甲2に記載された技 術的事と甲1発明には課題の共通性がない旨主張する(前記第3の1⑵〔被告の主張〕)。 しかし、甲1発明と甲2に記載された技術的事項は、良好な肉色を得るという課題及びミオグロビン誘導体と色調に着目 術的事と甲1発明には課題の共通性がない旨主張する(前記第3の1⑵〔被告の主張〕)。 しかし、甲1発明と甲2に記載された技術的事項は、良好な肉色を得るという課題及びミオグロビン誘導体と色調に着目するという作用機能において共通するといえる。しかも、前記2⑴アのとおり、食品 の酸化を維持する期間を設けるという工程は、いわゆる酸素化(ブルーミング)と呼ばれる現象として、ミオグロビンを含む食肉等の食品における技術常識でもあるから、当業者であれば、甲1発明における、消費者への有効な視覚的アピールができる、スライス面が赤みの強いローストビーフを製造するという課題(前記(イ))に鑑み、甲1発明に、 甲2記載の酸化を維持する工程を適用することを容易に想到し得ると認められる。また、甲2に記載された方法では、食品に対して酸化を維持する工程は、酸素を減少させる工程よりも前の冷蔵状態で行われるから、それは、甲1発明のローストビーフを含む食品の通常の保存条件で行われる操作であり、その後の工程の温度条件(冷凍等)が当 該工程に直接影響するものではない。また、甲2には、酸化を維持する工程の後について、ある程度冷却された後は、酸素を減少してもオキシミオグロビンが還元されにくく、食品の鮮やかな赤色を維持できることが記載されており(段落【0040】)、実施態様において、酸素減少手段72が設置された第1冷凍室44は、冷凍温度帯(-18℃ ~-3℃)と冷蔵温度帯(1℃~5℃)とに切換可能となっていること(段落【0015】~【0017】、段落【0029】及び【図1】)を考慮すると、酸化を維持する工程の後の酸素を減少させる工程は、冷凍条件下に限定されているともいえない。そのため、甲2に記載された方法において、酸化を維持する工程の後の酸素を減少させる び【図1】)を考慮すると、酸化を維持する工程の後の酸素を減少させる工程は、冷凍条件下に限定されているともいえない。そのため、甲2に記載された方法において、酸化を維持する工程の後の酸素を減少させる工程 が、主に冷凍条件下で行われていたとしても、それは、甲1発明の脱 酸素工程の前に上記の酸化を維持する工程を適用することを阻害するとまではいえない。 b 被告は、生肉ではメトミオグロビン還元酵素が活性化しているのに対し、ローストビーフではメトミオグロビン還元酵素が失活しており、メト化に至る経緯が全く異なるから、生肉の保存に関する甲2記載の 技術的事項と、ローストビーフの包装方法に関する甲1発明との間には、甲2記載の技術的事項を甲1発明に適用する動機付けを基礎付ける作用、機能の共通性もないと主張する(前記第3の1⑵〔被告の主張〕)。 甲2には、実施例において、収納容器60内に投入された食品が凍 結するまで、すなわち冷蔵の状態で、酸素減少手段72を停止させることが記載されており(段落【0042】)、収納容器60に牛肉を貯蔵してから1時間経過するまで酸素減少手段72を停止させ、収納容器60内の酸素濃度を維持することが記載されている(段落【0049】、【0055】)。メトミオグロビン還元酵素は、ミオグロビンがメ ト化した後にこれを還元する働きがあるから、ローストビーフと生肉におけるメトミオグロビン還元酵素の失活の有無は、ミオグロビンがメト化し褐変した後に影響があるところ、甲2の上記記載に照らしても、ローストビーフや生肉を、冷蔵状態で1時間程度放置するだけでは、メト化し褐変するところまではいかないものと認められるから、 甲2に記載されたように、食品に対して酸化を維持する期間を設け、還元型ミオグロビン や生肉を、冷蔵状態で1時間程度放置するだけでは、メト化し褐変するところまではいかないものと認められるから、 甲2に記載されたように、食品に対して酸化を維持する期間を設け、還元型ミオグロビンからオキシミオグロビンへ変化させる工程において、メトミオグロビン還元酵素が関与する余地はないものと認められ、メトミオグロビン還元酵素の失活の有無は、甲2記載の技術的事項を適用することの動機付けや阻害要因に影響を及ぼすとはいえない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (エ) 以上によれば、甲1発明において、食品に対して酸化を維持する期間を設け、その後酸素を減少させるという甲2に記載された技術的事項を採用することに困難性はないという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(ア)〔本件審決67頁〕)に誤りはなく、取消事由2は理由がない。 ⑶ 取消事由3(相違点2の容易想到性の判断の誤り-相違点2に係る本件発 明1の構成の甲3における記載の有無-無効理由1関係)についてア甲3で唯一実施例において開示されている脱酸素剤は、エージレスG-200であり(183頁左下欄)、これは炭酸ガスを発生する非鉄系の脱酸素剤である(甲13)。このように、甲3には、非鉄系脱酸素剤を使用するという、相違点2に係る本件発明1の構成が記載されているから、甲1発 明の脱酸素剤として、甲3に記載された非鉄系脱酸素剤を採用することは当業者が容易になし得ることであるという本件審決の判断(本件審決第7の1⑵ウ(イ)〔本件審決68~69頁〕)に誤りはない。 イ被告は、甲3から読み取れる技術的思想は、炭酸ガスを発生する脱酸素材を用いることで赤味を保持できるというものであり、甲3には、脱酸素 剤が鉄系脱酸素剤でも構わない旨が記載 に誤りはない。 イ被告は、甲3から読み取れる技術的思想は、炭酸ガスを発生する脱酸素材を用いることで赤味を保持できるというものであり、甲3には、脱酸素 剤が鉄系脱酸素剤でも構わない旨が記載されており(183頁左上欄5~7行目)、甲3発明の効果が非鉄系脱酸素剤を用いることによって生じるものであることを真っ向から否定しているから、甲3には非鉄系脱酸素剤を用いるとの技術的思想は記載されていない旨、炭酸ガスを発生しない非鉄系脱酸素剤を用いることによって肉の色が良くなるという効果を生じるこ とは乙49の実験成績報告書により裏付けられているから、本件発明1は、炭酸ガスを発生させなくても、非鉄系脱酸素剤を用いることによって肉の色が良くなるという効果を生じる旨主張し、したがって、甲1発明の脱酸素剤として、甲3に記載された脱酸素剤を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない旨主張する(前記第3の1⑶〔被告の主張〕)。 しかし、甲3には、「本発明においては脱酸素剤としては例えば鉄粉また は亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、第一鉄塩などの還元性の無機塩、ヒドロキノン、カテコール等で例示されるポリフエノール類、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩などで例示される還元性の多価アルコール、からなる群から選ばれる還元剤を主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素剤が使用される。」(183頁左上欄5~12行目)と記載されており、利 用できる脱酸素剤の中には鉄系脱酸素剤が例示されているが、実施例1では、「エージレスG-200(三菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)」(183頁左下欄7~8行目)を使用することが記載されており、同脱酸素剤は非鉄系脱酸素剤であって(甲13)、甲3には、非鉄系脱酸素剤の使用を排除する趣旨の記載は 菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)」(183頁左下欄7~8行目)を使用することが記載されており、同脱酸素剤は非鉄系脱酸素剤であって(甲13)、甲3には、非鉄系脱酸素剤の使用を排除する趣旨の記載はないから、甲3には、非鉄系脱酸素剤を使用すると いう技術的事項が記載されていると認められる。 また、本件明細書等の記載からは、実施例における、鮮赤色を維持するという作用機序が、脱酸素剤が「非鉄系」であることによるものか、「炭酸ガスを発生するタイプの非鉄系」であることによるものかは明らかではなく、非鉄系脱酸素剤の種類によって効果が変わるのかも明らかでない。炭 酸ガスを発生しない非鉄系脱酸素剤を用いることによって肉の色が良くなるという効果を生じるという実験例が得られたとしても(乙49)、それに基づく主張は、本件明細書等の記載に基づくものではなく、甲3に、非鉄系脱酸素剤を使用するという技術的事項が記載されていることを否定するものではないし、甲1発明に、非鉄系脱酸素剤を使用するという甲3 に記載された技術的事項を組み合わせることを否定するものでもない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 取消事由4(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについての動機付け-無効理由1関係)について ア本件発明1における「非鉄系脱酸素材」使用の技術的意義について 本件明細書等には、本件発明1の「酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程」について、この工程では、非鉄系脱酸素材を使用することで、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸 材とともにガスバリア性を有する包材に密封する工程」について、この工程では、非鉄系脱酸素材を使用することで、包材内に密封された気体に含まれる酸素及び特定加熱食肉製品のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収しており、これにより、包材内 の酸素濃度が検出限界以下になったときに特定加熱食肉製品に含まれる各ミオグロビンの割合を、所望の範囲すなわち本件発明1に定められた各ミオグロビンの割合に制御することができる旨記載されている(段落【0034】)。一方、上記工程において鉄系脱酸素材のみを使用した場合については、鉄系脱酸素材のみを使用して包材内の酸素及び特定加熱食肉製品 のオキシミオグロビンに結合した酸素を吸収すると、短時間に酸素吸収が行われ、オキシミオグロビンの割合を12%以上に維持することができないし、場合によってはメトミオグロビンの割合が50%を超えることもあり、その結果、特定加熱食肉製品のスライス断面は褐変してしまう旨記載されている(段落【0035】)。 また、上記工程で使用する非鉄系脱酸素材については、より具体的には、三菱化学社製のエージレスを使用することができ、エージレスの中でも、複合機能タイプ、すなわち酸素吸収と同時に炭酸ガスを発生するタイプ(GT タイプ)を使用することが好ましく、酸素吸収と同時に炭酸ガスを発生するタイプを使用することで、包材の収縮といった問題を回避でき、 包材の収縮を回避することにより、特定加熱食肉製品からのドリップの発生を防止することができる旨記載されている(段落【0032】)。 そして、本件明細書等の実施例1の実験の結果によれば、酸素化の時点では、還元型ミオグロビン(RMb)が空気中の酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビン(O2Mb)となっており、ローストビーフの色調は 件明細書等の実施例1の実験の結果によれば、酸素化の時点では、還元型ミオグロビン(RMb)が空気中の酸素と結合(酸素化)してオキシミオグロビン(O2Mb)となっており、ローストビーフの色調は 紫赤色から鮮赤色に変化していたものが、鉄系脱酸素材(三菱ガス化学社 製のエージレス(SAタイプ))のみを使用した場合(比較例)には、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%未満となっており、スライス加工から約1日程度でa値及びb値が著しく低下し、かつb値がa値を上回り、褐変しているのに対し、非鉄系脱酸素材(三菱ガス化学社製のエージレス(GTタイプ))のみを使用した場合、又は非 鉄系脱酸素材及び鉄系脱酸素材を使用するが鉄系脱酸素材の割合を37. 5%とした場合には、酸素濃度の検出限界以下において、全ミオグロビン量を100%としたときにオキシミオグロビンが12%以上、メトミオグロビンが50%未満、還元型ミオグロビンが34%以上となっており、その色調は、全てにおいてa値が酸素化の時点のa値とほとんど変わらず、 鮮赤色を維持していることが確認された(段落【0055】、【0056】【表1】、【0057】及び【0058】)。 イ甲3に記載された技術的事項甲3によれば、従来の脱酸素剤による生肉の保存方法は、脱酸素効果によって、生肉の赤味成分であるミオグロビンを還元型に保持し、開封して 空気中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオグロビン(オキシミオグロビン)の鮮紅色に発色させる方法であった(182頁左上欄17行目~右上欄5行目)のに対し、甲3発明は、「生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを った(182頁左上欄17行目~右上欄5行目)のに対し、甲3発明は、「生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを特徴とする生 肉の保存方法」(特許請求の範囲)である。 甲3には、炭酸ガス発生を伴う脱酸素剤を使用した場合、従来とは異なり、脱酸素剤によって酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まってゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調である鮮やかに赤い色調 に近い赤味を保持することができること(182頁右上欄18行目~左下 欄6行目)、この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、長期保存中においても、還元型ミオグロビンの暗赤色に変化することがなく赤味の強い色調を保持されたこと(182頁左下欄7~10行目)、また容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤の時と同様、生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常型脱酸素剤と の差はなかったこと(182頁左下欄11~14行目)が示されている。 これらのことを裏付けるものとして、甲3の実施例1においては、生のひき肉に対し、「エージレスG-200」(CO2発生型脱酸素剤)を用いて密封包装することで、生肉の色が、2日目から13日目にわたって「4 赤色」に保持されているのに対し、比較例1においては、鉄系脱酸素剤であ る「エージレスS-200」(CO2を発生しない脱酸素剤)を用いた以外、上記実施例1と同様の条件で、2日目に「1 褐色(赤みなし)」だったものが、5日目から13日にわたっては「3 赤紫色」となったこと(183頁左下欄、184頁右下欄の補正後の「表-1」)ことが示され 上記実施例1と同様の条件で、2日目に「1 褐色(赤みなし)」だったものが、5日目から13日にわたっては「3 赤紫色」となったこと(183頁左下欄、184頁右下欄の補正後の「表-1」)ことが示されている。 ウ甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについての 動機付けの有無(ア)a 前記イのとおり、甲3によれば、密封包装前(脱酸素工程前)に、生肉の色が酸素型ミオグロビンの色調である鮮やかに赤い色調に近い赤味であったことを前提として、甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用した場合には、還元型ミオグロビンの赤紫色(紫赤色) に変化することがなく、酸素型ミオグロビンの色調である生肉の赤味が長期間にわたって保持されたこと、また、容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤(炭酸ガスを発生しない鉄系脱酸素剤)の時と同様、生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常型脱酸素剤(鉄系脱酸素剤)との差がないことが認めら れる。 b 他方、甲1発明は、「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消費者の手に渡るまで、具体的には流通温度が0~5℃において1週間程度、簡易かつ効率よく保存可能とすると共に、スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装 方法及び包装体を提供すること」(段落【0009】)を課題とするものであって(前記⑴ア(イ)a(a))、その視覚的アピールは、製造業者によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフのスライス面の「色調」によるものである(段落【0007】、【0019】及び【0049】。前記⑴ア(イ) によってスライスされたローストビーフが消費者の手に渡るまでの流通段階におけるローストビーフのスライス面の「色調」によるものである(段落【0007】、【0019】及び【0049】。前記⑴ア(イ)a(c))。 c また、甲1発明の製造方法が具体的に開示された実施例1(鉄系脱酸素剤であるエージレスSS-200を使用)におけるスライスされたローストビーフは、包装体を開封して30分後において、色の評価が「5:7.0<a値の平均値」すなわち「a値の平均値が7.0より大きい」ものであり、赤みが強く、変色度合いが小さいものであっ たことが示されている(段落【0033】)。この結果は、甲3における容器を開封した際に生肉が酸素型ミオグロビンの鮮紅色であることと共通する。 d そして、前記2⑴イのとおり、ローストビーフにおいても、スライス面の鮮赤色は食欲を喚起する色として重要な要素であることが本件 出願当時の技術常識であったものと認められる。 (イ) そうすると、ローストビーフにおいても、スライス面の鮮赤色は食欲を喚起する色として重要な要素であることが本件出願当時の技術常識であり(前記(ア)d)、甲1発明において、より消費者への有効な視覚的アピールができる、スライス面が赤みの強いローストビーフを製造したいと いう課題があることが認められるから(前記(ア)b)、甲1発明の脱酸素 剤として、実施例で用いられる鉄系脱酸素剤(前記(ア)c)に代えて、甲3発明と同様に、容器の開封後において従来の通常型脱酸素剤(鉄系酸素剤)と色調に差異がなく、かつ密封包装中にも酸素型ミオグロビンの色調である鮮赤色を長期間にわたって保持することを可能とする、炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤であるエージレスG-200、すなわち非鉄 系脱 色調に差異がなく、かつ密封包装中にも酸素型ミオグロビンの色調である鮮赤色を長期間にわたって保持することを可能とする、炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤であるエージレスG-200、すなわち非鉄 系脱酸素材を採用することについては、動機付けがあり、当業者が容易に想到し得ることであると認められる。 エ被告の主張に対する判断(ア) 被告は、食肉の色調の変化については、その原因や機序が明確に分かっておらず、肉色に影響を与える因子の相互作用について十分に解明さ れておらず(乙73)、非鉄系脱酸素剤を採用すること(本件審決が認定する甲3記載の技術的事項)が、元々好適であった甲1発明のローストビーフの色調にどのような影響を与えるのかも分からないことからすると、甲1発明に甲3記載の技術的事項を組み合わせる動機付けはないと主張する(前記第3の1⑷〔被告の主張〕)。 確かに、甲1発明の実施例1には、スライスされたローストビーフが、包装体を開封して30分後において赤みが強く変色度合いが小さいものであったことが示されているものの(前記⑴ア(エ)a(a))、甲1の実施例1における色の評価に基づいて、「流通段階」の保存中(開封前)において、スライスされたローストビーフが赤みの強い色であったことを確認 できるとまではいえない(前記⑴ア(エ)a(b))。しかし、食肉の色が、還元型ミオグロビン(RMb)の色である暗赤色(紫赤色)から、酸素化によりオキシミオグロビンの色である鮮赤色となり、更に酸化によりメトミオグロビン(MMb)の色である褐色となることは、本件出願日当時の技術常識であり(前記2⑴ア)、ローストビーフにおいても、ミオグ ロビンの作用による色調の変化がみられ、食肉本来の鮮やかな赤色に近 い、ローストビーフのスラ は、本件出願日当時の技術常識であり(前記2⑴ア)、ローストビーフにおいても、ミオグ ロビンの作用による色調の変化がみられ、食肉本来の鮮やかな赤色に近 い、ローストビーフのスライス面の鮮赤色は、食欲を喚起する色として重要な要素であることも技術常識であったこと(前記2⑴イ)、甲1発明は、流通段階において、スライス面が外部から見えるようにすることによって、消費者への有効な視覚的アピールをすることを課題としていること(前記⑴ア(イ)a(a))を踏まえると、保存中(開封前)の色調も鮮や かな赤色に近い色味とするように、食肉のオキシミオグロビンの鮮赤色に保持するという甲3に記載された技術的事項を適用する動機付けはあると認められる。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 被告は、仮に、甲3において唯一具体的に効果が確認されている非鉄 系のエージレスG-200を採用することを当業者が容易になし得るとしても、甲3発明は、一般に非鉄系脱酸素剤が肉の色を良くするという発想に至っていないから、エージレスG-200と同種の脱酸素剤、すなわち非鉄系脱酸素剤を採用することを容易に想到できるとは考えられない旨主張する(前記第3の1⑷〔被告の主張〕)。 しかし、甲3には、非鉄系脱酸素剤であるエージレスG-200を用いることが技術的事項として記載されていると認められるから、非鉄系脱酸素剤を用いることは容易に想到し得ると認められ、被告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 取消事由5(相違点2の容易想到性の判断の誤り-甲1発明に甲3に記載 された技術的事項を組み合わせることについての阻害事由-無効理由1関係)についてア(ア) 被告は、甲3には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した 判断の誤り-甲1発明に甲3に記載 された技術的事項を組み合わせることについての阻害事由-無効理由1関係)についてア(ア) 被告は、甲3には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤 みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されて おり、ガス置換をすると褐変することが記載されているから、当業者は、甲3の記載を見て、窒素ガス置換をする甲1発明と甲3発明を組み合わせようとは考えない旨主張し、また、甲1発明の対象であるローストビーフと甲3の対象である生肉とでは、ローストビーフではメトミオグロビン還元酵素が失活しているのに対し(乙5の2)、生肉ではメトミオグ ロビン還元酵素が失活していないという違いがあり、当業者であれば、メトミオグロビン還元酵素が失活しているローストビーフを対象とする甲1発明に対し、急速にメト化する窒素ガス置換を組み合わせれば、メトミオグロビン還元酵素によってミオグロビンを還元できる甲3発明とは異なって、ミオグロビンがメト化したままになる危険があり、「消費者 への有効な視覚的アピール」の妨げになると考える旨主張し、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについての阻害事由があると主張する(前記第3の1⑸〔被告の主張〕)。 確かに、甲3には、「炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によって容器内の酸素濃度が数%~ 10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されている。しかし、甲3の上記記載箇所 て容器内の酸素濃度が数%~ 10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤みが失われて褐変する。」(182頁右上欄6~10行目)と記載されている。しかし、甲3の上記記載箇所から、ガス置換をすると常に褐変する、又は直ちに褐変すると認めることはできないし、甲3のその余の記載を考慮しても、そのようなことまでは認められない。また、前記⑴ア(エ)b (b)のとおり、本件出願日前の技術常識及びそこから導かれる技術的事項によれば、甲3の上記記載は、容器内の酸素濃度が数%ないし10数%程度に達すると直ちにメト化し褐変することを述べたものではない。さらに、仮に、甲3の記載に接した当業者が、甲3の182頁右上欄の上記記載について、容器内の酸素濃度が数%ないし10数%程度に達する と直ちにメト化し褐変することを示していると解したとしても、甲3の 他の記載に基づき、甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用することにより、メト化が抑制され、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調である鮮赤色が長期間にわたって保持されることを期待するといえるから、甲3の182頁右上欄の上記記載があることをもって、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合せることができないと 考えるとはいえず、したがって、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合せることについて阻害要因があるとはえいない。 また、前記⑷イで甲3の実施例1及び比較例1について述べたとおり、鉄系脱酸素剤を用いた比較例1では、酸素濃度の低下により、2日目の時点でメトミオグロビンの「1 褐色(赤みなし)」だったものが、還元 型ミオグロビンの「3 赤紫色」に変化する、すなわち、メト化した後に還元するという現象がみられるのに対し、炭酸ガスの発生を伴う 点でメトミオグロビンの「1 褐色(赤みなし)」だったものが、還元 型ミオグロビンの「3 赤紫色」に変化する、すなわち、メト化した後に還元するという現象がみられるのに対し、炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を用いた実施例1では、当初の生肉の赤味が脱酸素後においてもほとんど変化せず、酸素型ミオグロビンの赤色を保持することが示されている。甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤は、「O2を吸収し始め ると同時にCO2を発生する型であり、生肉の褐変が生じるO2濃度に達する前にCO2の発生が生じる型」(182頁右下欄17~19行目)であるとされ、実際にも、肉の色は褐変や紫赤色への変化をすることなく、赤味の強い色調を保持していると認められることから、甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用した場合、ミオグロビンのメト化及び 褐色への変化が抑制されているものと解される。そして、メトミオグロビン還元酵素は、ミオグロビンがメト化した後に作用するものであるところ、比較例1においては、メト化した後に還元するという現象がみられるので、メトミオグロビン還元酵素が働いているものと推認されるが、甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用した場合には、そもそ もミオグロビンのメト化が抑制されているといえるから、メト化後に機 能するメトミオグロビン還元酵素は直接関係がなく、ローストビーフと生肉のメトミオグロビン還元酵素の活性の違いを前提とする被告の主張は、失当といわざるを得ない。 (イ) この点に関し、さらに、被告は、乙102の「炭酸ガスはMbのメト化を進行させるとも考えられ、脱酸素/炭酸ガス充てん貯蔵の2日目で 炭酸ガス濃度が高いほどMMbの割合が高く、脱酸素市内C40区はA区よりも高いMMbの割合で推移した。(略)この スはMbのメト化を進行させるとも考えられ、脱酸素/炭酸ガス充てん貯蔵の2日目で 炭酸ガス濃度が高いほどMMbの割合が高く、脱酸素市内C40区はA区よりも高いMMbの割合で推移した。(略)この点から、炭酸ガスによるメト化の進行が著しくとも、脱酸素によるMRAの発現で、脱酸素剤の封入で良い色調に保たれることになる。」(28頁右欄10~13行目、15~18行目)との記載も考え併せると、甲3発明の作用機序として、 メト化促進と、メトミオグロビン還元酵素によりメトミオグロビンを還元型ミオグロビンにする効果がうまくつり合い、オキシミオグロビンの鮮赤色になると考えられ、甲3発明の効果は明らかにメトミオグロビン還元酵素に影響されている旨主張する(前記第3の1⑸〔被告の主張〕)。 しかし、甲3の実施例1の色の評価は当初から「4 赤色」で保持さ れており(表1)、上記のようなメト化促進や、メトミオグロビン還元酵素の働きに伴う色調の変化は把握できないから、被告の上記作用機序の主張は根拠に欠けるものであり、採用することはできない。 イそうすると、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を組み合わせることについては阻害事由はなく、取消事由5は理由がない。 ⑹ 取消事由6(相違点3の容易想到性の判断の誤り-無効理由1関係)についてア本件発明1の相違点3に係る構成の容易想到性について(ア) 本件発明1の「当該酸素化する工程の後、スライスされた特定加熱食肉製品を非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封する 工程」に関する本件明細書等の記載(段落【0034】~【0044】) 及び実施例1の記載をみても、本件発明1の相違点3に係る各ミオグロビン割合を満たすために、特別な操作を必要とするという説明はされ る本件明細書等の記載(段落【0034】~【0044】) 及び実施例1の記載をみても、本件発明1の相違点3に係る各ミオグロビン割合を満たすために、特別な操作を必要とするという説明はされていない。そして、本件発明1の上記工程については、非鉄系脱酸素材以外の脱酸素材(鉄系脱酸素材)の併用の有無やその割合については特定されていないところ、本件明細書等の実施例の表1においては、酸素化 工程及びその後の非鉄系脱酸素材を使用する工程(相違点1及び2に係る構成)を有しても、併用する鉄系脱酸素材の比率(鉄系比率)が50%のように多くなる場合においては、パック内のO2濃度が0.0%の検出限界以下となったときに、スライス加工した日から1日ないし3日保存された後(D+1~D+3)のいずれの各ミオグロビン割合も、本件発 明1の範囲を満たさず、その結果、赤みを表すa値が4.63ないし7. 49と低くなっているものが存在する。他方、本件明細書等の実施例の表1によれば、併用する鉄系脱酸素材の比率(鉄系比率)が37.5%以下の場合は、パック内のO2濃度が0.0%の検出限界以下となったときに、スライス加工した日から2日及び3日保存された後(D+2、D +3)のいずれの各ミオグロビン割合も、本件発明1所定の範囲(本件発明1の相違点3に係る構成の範囲)を満たし、赤みを表すa値が13. 84以上となり赤みが強いという結果が得られている。本件明細書等には「鉄系脱酸素材を補助的に利用」することができるとも記載されているが(段落【0036】)、「鉄系脱酸素材を使用を補助的に使用する場合、 鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。」(段落【0036】)と記載されているところ、 を使用を補助的に使用する場合、 鉄系脱酸素材は、非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材の合計量を100%としたときに37.5%以下とすることが好ましい。」(段落【0036】)と記載されているところ、上記の結果は、このような本件明細書等の記載に符合するものである。そうすると、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)は、本件発明1の相違点1に係る構成(スラ イスされた特定加熱食肉製品における還元型ミオグロビンをオキシミオ グロビンに酸素化する工程)及び相違点2に係る構成(非鉄系脱酸素剤を用いていること)を採用した製造方法で製造した特定加熱食肉製品が備えるパラメータを規定したものであるところ、非鉄系脱酸素剤と併用される鉄系脱酸素剤の割合が37.5%以下の場合は、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)を満たす場合があるが、非鉄 系脱酸素剤と併用される鉄系脱酸素剤の割合が大きい場合には、上記構成を満たさない場合も存在するものと認められる。 (イ) そこで、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)の容易想到性について検討する。 前記⑵イ(イ)のとおり、甲1発明において、酸素を減少させる工程に先 立ち、甲2に記載された、肉などのミオグロビンを含有する食品の鮮度と鮮やかな赤色を維持するための技術的事項を適用し、食品に対して酸化を維持し、食品に含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビンを酸化させ、鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビンに変化させる工程を設けることは、当業者 が容易に想到し得ることであると認められ、そのような工程を設けることにより得られた甲1発明のローストビーフには、オキシミオグロビンが十分に存在するものと認められる 工程を設けることは、当業者 が容易に想到し得ることであると認められ、そのような工程を設けることにより得られた甲1発明のローストビーフには、オキシミオグロビンが十分に存在するものと認められる。また、前記⑷イのとおり、甲3によれば、密封包装前(脱酸素工程前)に、生肉の色が酸素型ミオグロビン(オキシミオグロビン)の色調である鮮やかに赤い色調に近い赤味で あったことを前提として、甲3発明の炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用した場合には、還元型ミオグロビンの赤紫色(紫赤色)に変化することがなく、酸素型ミオグロビンの色調である生肉の赤味が長期間にわたって保持されたことが認められ、炭酸ガスの発生を伴う脱酸素剤を使用して得られた甲1発明のローストビーフには、オキシミオグロビンが 十分に存在するものと認められる。そして、前記2⑴アのとおり、本件 出願日当時の技術常識によれば、メトミオグロビン(MMb)の割合が40%以上になると、視覚的に明確な色調の悪化が認められる。そうすると、甲1発明において、甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用することにより、スライス面がより一層鮮赤色となるローストビーフを製造する際に、メトミオグロビンに関する上記 技術常識を考慮して、その上限値を50%に設定しつつ、望ましいとされるオキシミオグロビンの色調である鮮赤色となるような、オキシミオグロビンの下限値を設定し、その余の還元型ミオグロビンの下限値を設定することにより、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。 したがって、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用することにより、本件発明1の相違点3に係る構成 とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。 したがって、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用することにより、本件発明1の相違点3に係る構成は容易に想到し得ると認められるから、本件審決の同旨の判断(本件審決第7の1⑵ウ(ウ)〔本件審決70頁〕)に誤りはない。 イ被告の主張に対する判断 (ア) 被告は、事実認定のためには、その立証の程度は通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信をもち得るものであることが必要とされるにもかかわらず、本件審決は、「相違点3に係るパラメータを満足する蓋然性が高い。」などとして、相違点3に係る本件発明1の構成を想到することが容易であることについて、通常人が疑を差し挟まない程度に立証し ていないから、容易想到性が立証されたとはいえない等と主張し、本件審決の相違点3の容易想到性の判断は誤りである旨主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕)。 しかし、前記ア(ア)のとおり、本件明細書等には、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)を満たすために、特別な操作を必 要とするという説明はされていないことから、本件審決は、容易想到性 を判断する過程で、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用し、赤みの強いローストビーフを製造するためにより好ましい構成を採用した場合に、その結果として、特別の操作なく、相違点3に係るパラメータが実現されることを述べたものと認められる。そうすると、訴訟上の因果関係の立証の程度につき、通常人 が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信をもち得るものであることを必要とするとしても、本件審決は、因果関係を判断したものではなく、容易想到性について判断する過程で、上 立証の程度につき、通常人 が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信をもち得るものであることを必要とするとしても、本件審決は、因果関係を判断したものではなく、容易想到性について判断する過程で、上記のような判断を示したものであり、その点について誤りがあるとは認められない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 被告は、主引用発明である甲1発明は、「本件発明1の方法の前にガス置換によって急速に酸素を減少させる」という、本件発明1と対比して「特別な方法」によるものであり、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を組み合わせても本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)に至らず、また、原告実験 (甲68)によっても、相違点3に係る構成の各ミオグロビン割合を導き得ない以上、公知技術からそれを容易に導けるものではない旨主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕)。 しかし、前記アのとおり、甲1発明に甲2に記載された技術的事項及び甲3に記載された技術的事項を適用することにより、本件発明1の相 違点3に係る構成は容易に想到し得ると認められる。 また、原告実験(甲68)は、酸素化工程を経ているか明らかでなく、鉄系脱酸素材を使用している点で本件発明1とは方法が異なるから、その結果が相違点3に係る構成を満たさなくても不自然ではない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 被告は、本件明細書等の段落【0044】の記載によれば、還元型ミ オグロビンの割合を一定以上とすることで鮮明な赤色が回復するという発想が本件発明1に存在することは明らかであるから、本件発明1は格別の技術的意義を有する旨主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕) オグロビンの割合を一定以上とすることで鮮明な赤色が回復するという発想が本件発明1に存在することは明らかであるから、本件発明1は格別の技術的意義を有する旨主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕)。 前記1⑶のとおり、本件各発明は、スライスした後の保存中の褐変を防止して優れた肉色を維持した特定加熱食肉製品及びその製造方法を提 供することを技術課題としており、本件明細書等の段落【0042】の「保存状態において、スライスされた特定加熱食肉製品は、褐変することなく本来の赤色を呈しており、優れた商品価値を維持している。」という記載からみても、保存状態での褐変防止や肉色維持を目的としていたことは明らかであり、それ以上に、還元型ミオグロビンの割合を一定以 上とすることであえて赤味を抑えておくことまでを課題としていたとは認められない。 また、本件明細書等の実施例の記載を見ても、酸素化工程及び所定の脱酸素剤を用いる工程を行ったことで、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)を満たしたことが記載されているのみで、そ れ以上に還元型ミオグロビンを「34%以上」に制御するための特別な操作が行われたことは認められない。 そして、本件明細書等の段落【0044】の「還元型ミオグロビンが34%以上とすることができるため、包材を開封して空気に曝すと鮮明な赤色が回復すると考えられる。」という記載は、スライスした後の保存 中の褐変を防止するという本件発明1の技術的課題を解決したことによる効果自体ではなく、包材を開封した後における色味という、付随する効果を述べたものと認められるところ、食肉の色調の変化とミオグロビン誘導体の構造との関係に関する技術常識(前記2⑴ア)に照らせば、還元型ミオグロビンが多少なりとも残存していれば、空気 いう、付随する効果を述べたものと認められるところ、食肉の色調の変化とミオグロビン誘導体の構造との関係に関する技術常識(前記2⑴ア)に照らせば、還元型ミオグロビンが多少なりとも残存していれば、空気に曝したとき にオキシミオグロビンに変わり、赤みが増すという技術常識を述べたに すぎないから、その記載により、本件発明1が格別の技術的意義を有するとは認められない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (エ) 被告は、本件発明1は、冷蔵保存する場合には、実施例を前提にしても、スライス加工から20日間後のものについてまで色調が維持されて おり、甲3発明等に比して予測し難い顕著な作用効果を有しており、また、生肉にはメトミオグロビン還元酵素があるのに対し、特定加熱食肉製品にはメトミオグロビン還元酵素がなく、特定加熱食肉製品はメト化までの時間が非常に短いから、生肉以上の保存期間を可能にすれば、顕著な作用効果があるということができ、本件発明1には顕著な作用効果 があると主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕)。 しかし、前記1⑶のとおり、本件各発明の製造方法によって製造された特定加熱食肉製品は、スライスされた状態であるにもかかわらず、褐変すること無く長期にわたって優れた肉色を維持するという効果を有するものの(本件明細書等段落【0014】)、前記アのとおり、甲1発明 に、甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を適用することにより、スライス面がより一層鮮赤色となるローストビーフを製造することができ、当該鮮赤色となるようなオキシミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を設定することにより、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)とすることも当業者が容易になし得るといえ る 、当該鮮赤色となるようなオキシミオグロビン及び還元型ミオグロビンの割合を設定することにより、本件発明1の相違点3に係る構成(各ミオグロビン割合)とすることも当業者が容易になし得るといえ るところ、甲2に記載された技術的事項は、肉などのミオグロビンを含有する食品の鮮度と鮮やかな赤色を維持するためのものであり、甲3に記載された技術的事項は、ミオグロビンの変化に基づく生肉の鮮やかな赤色を保持するためのものであるから、甲1発明に、甲2記載の技術的事項及び甲3記載の技術的事項を適用することにより得られたロースト ビーフが、スライスされた状態であるにもかかわらず、褐変することな く長期にわたって優れた肉色を維持するという効果を有することも、当業者が予測し得るものといえる。 したがって、本件発明1の効果は、当業者の予測を超える顕著なものであるとはいえず、被告の上記主張は採用することができない。 (オ) 被告は、本件発明1は、冷蔵保存する場合には、実施例を前提にして も、スライス加工から20日後のものについてまで色調が維持されており、甲3発明等に比して予測し難い顕著な作用効果を有しており、また、生肉にはメトミオグロビン還元酵素があるのに対し、特定加熱食肉製品にはメトミオグロビン還元酵素がなく、特定加熱食肉製品はメト化までの時間が非常に短いから、生肉以上の保存期間を可能にすれば、顕著な 作用効果があるということができ、本件発明1には顕著な作用効果があると主張する(前記第3の1⑹〔被告の主張〕)。 しかし、甲3発明は、生肉を炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存するという生肉の保存方法であり、甲3の表-1によれば、実施例は、13日後まで 色が良好であった 生肉を炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存するという生肉の保存方法であり、甲3の表-1によれば、実施例は、13日後まで 色が良好であったというのであり、本件発明1が、非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性を有する包材に密封するという工程の他に酸素化する工程を有するものであることからすれば、本件発明1の実施例について、20日後まで色が良好であったとしても、それをもって、本件発明1の効果が、当業者の予測を超える顕著なものであるとはいえない。 また、メトミオグロビン還元酵素の働きが問題となるのは、メト化した後であるから、メト化を防ぎ鮮赤色を保持することを目的とする本件発明1及び甲3発明が赤色を維持することに関して、メトミオグロビン還元酵素の量が関係するとはいえない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 ウ以上によれば、取消事由6は理由がない。 ⑺ 取消事由7(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り-無効理由2関係)についてア本件発明2についての容易想到性脱酸素剤は大きく分けて鉄系、非鉄系の2種類のタイプのものが知られており、鉄系のものも非鉄系のものも酸素を吸収するという機能の点で同 様に使用できることは周知であるから(甲13)、甲1発明の脱酸素材として、適宜の割合で非鉄系脱酸素材と鉄系脱酸素材を併用することは当業者が容易に想到することができたものと認められる。そして、本件発明2は、本件発明1を引用しつつ、本件発明1の構成にはなかった、鉄系脱酸素材を37.5%以下併用することを構成として含むものであるところ、鉄系 脱酸素剤を使用しない「鉄系脱酸素剤0%の場合」と比べて、鉄系脱酸素剤を併用する場合の効果につい にはなかった、鉄系脱酸素材を37.5%以下併用することを構成として含むものであるところ、鉄系 脱酸素剤を使用しない「鉄系脱酸素剤0%の場合」と比べて、鉄系脱酸素剤を併用する場合の効果についてみると、本件明細書等の段落【0056】の【表1】によれば、鉄系比率が0.0%の場合と鉄系比率が37.5%の場合では、色調に差はないから、甲1発明の脱酸素材として、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(非鉄系脱酸素材と鉄系脱 酸素材の合計量を100%とし、鉄系脱酸素材0%の場合を除く)の割合で使用することにより、顕著な作用効果を奏するものとは認められず、同旨の本件審決の判断(本件審決第7の2〔本件審決79頁〕)に誤りがあるとは認められない。 イ被告の主張に対する判断 (ア) 被告は、本件明細書等の【表1】を見れば、鉄系比率42.9%の場合と比較して、鉄系比率37.5%の場合にa値がほぼ倍以上となっており、鉄系比率を37.5%より低くすれば、鉄系比率が高い場合と比較して顕著な作用効果を奏することは明らかであると主張する(前記第3の1⑺〔被告の主張〕)。 甲3の表-1(補正後、184頁右下欄)によれば、脱酸素工程前に、 生肉の色が酸素型ミオグロビンの色調である鮮やかに赤い色調に近い赤味であったことを前提として、従来の鉄系脱酸素剤(比較例1)では、2日目の時点でメトミオグロビンの褐色になっており、その後、還元型ミオグロビンの赤紫色(紫赤色)に変化するのに対し、炭酸ガスの発生を伴う非鉄系脱酸素剤(実施例1)では、当初より酸素型ミオグロビン (オキシミオグロビン)の赤色を保持したものと見て取れるから、鉄系脱酸素剤の量を増加することで、上記の比較例1の場合に近づき、メトミオグロビン又は還 実施例1)では、当初より酸素型ミオグロビン (オキシミオグロビン)の赤色を保持したものと見て取れるから、鉄系脱酸素剤の量を増加することで、上記の比較例1の場合に近づき、メトミオグロビン又は還元ミオグロビンの割合が増加するなど、炭酸ガスの発生を伴う非鉄系脱酸素剤の作用効果がある程度減弱することは、当業者の予測の範囲内であると認められる。そうであるとすれば、炭酸ガス の発生を伴う非鉄系脱酸素剤の作用効果を確保し、赤みを保持させるために、鉄系脱酸素材の比率の上限値を設定することも、当業者が容易に想到し得ることであり、それによって色調に生じる効果も、当業者の予測の範囲内であって、それによって、当業者の予測を超える顕著な作用効果を奏するとは認められない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 (イ) 被告は、本件明細書等の段落【0036】に記載のとおり、「鉄系脱酸素材を補助的に利用して、(中略)酸素を吸収する処理時間を短縮することができる」ところ、好気性の細菌を増やさないという観点からは、短時間で脱酸素できる鉄系の脱酸素材を利用した方が好ましく、このよう な意味で、非鉄系脱酸素材とともに鉄系脱酸素材を37.5%以下(鉄系脱酸素材0%の場合を除く。)の割合で使用する本件発明2は、好気性の細菌を増やさず、かつ非鉄系脱酸素材を使用することによる色調の良さを維持できるという顕著な作用効果を奏していると主張する(前記第3の1⑺〔被告の主張〕)。 確かに、本件明細書等には鉄系脱酸素材の作用効果について、「(略) 鉄系脱酸素材を補助的に利用して、(略)酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。」(段落【0036】)と記載されている。 しかし、甲57(特開2003-10627号公報、 ) 鉄系脱酸素材を補助的に利用して、(略)酸素を吸収する処理時間を短縮することができる。」(段落【0036】)と記載されている。 しかし、甲57(特開2003-10627号公報、公開日平成15年1月14日)には、「【0002】【従来技術】(略)酸素吸収剤には大別して、無機系と有機系のものがあり、代表的な酸素吸収剤としては無 機系では主剤が鉄粉である鉄系のもの、有機系では主剤がアスコルビン酸であるアスコルビン酸系のものが従来からよく用いられている。一般的にこれら酸素吸収剤の活性(酸素吸収速度、持続性等)を比較した場合、鉄系酸素吸収剤の方が優れていることが多い。(略)」という記載があり、これによれば、鉄系脱酸素材の酸素吸収速度が大きいことは本件 出願日当時の技術常識であるから、短時間で脱酸素できるという鉄系脱酸素材の作用効果は、鉄系脱酸素材を利用することで当然に得られるものであって、顕著な作用効果ではない。 また、被告が、酸素を吸収する処理時間の短縮化によるものとして主張する、好気性細菌を増やさないという効果は、本件明細書等の記載に 基づくものではないから、本件発明1の作用効果ということはできない上、乙90(星野純他、食品と微生物、Vol.2、№2、1985年(昭和60年))には、「近年、各種食品の長期保存等に脱酸素剤が広く利用されてきた。脱酸素剤は酸素を化学的に除去するため、従来の食品保存に使用されて来たガス置換法や真空パック法のような物理的除去法に比べ、 酸素の除去率が高く、さらに長期間、低い酸素濃度を維持することが出来る。そのため、食品のカビの発育の防止、油脂の酸化の防止、変退色の防止、虫の発生の防止等の目的で使用されている。」(73頁左欄2~9行)、「1)偏性好気性菌である細菌、酵母、 度を維持することが出来る。そのため、食品のカビの発育の防止、油脂の酸化の防止、変退色の防止、虫の発生の防止等の目的で使用されている。」(73頁左欄2~9行)、「1)偏性好気性菌である細菌、酵母、カビに対して脱酸素剤は静菌効果の他、菌を殺す効果もあることが認められた。」(79頁左欄1 2~14行)という記載があり、これによれば、脱酸素下で好気性細菌 の増殖が抑制されることも本件出願日当時の技術常識であるから、これをもって、顕著な作用効果ということはできない。 したがって、本件発明2において鉄系脱酸素材の比率を37.5%以下(鉄系脱酸素材0%の場合を除く。)に設定したことによる効果は、当業者の予測を超える顕著な作用効果ということはできず、被告の上記主 張は採用することができない。 ウ以上によれば、取消事由7は理由がない。 4 原告が主張する本件審決の取消事由について⑴ 取消事由1’(本件発明5に関する容易想到性の判断の誤り-無効理由4関係)について ア本件発明5の相違点6に係る構成の容易想到性について(ア) 原告は、甲1発明の必須の技術的事項は残存酸素濃度を0.01%以下にすることであって、ガス置換を行うことは、置き換えができないような必須の構成ではなく、本件特許出願当時、当業者は、脱酸素材を単独で使用するか、脱酸素材の使用とガス置換とを併用するかを必要に応 じて選択することができたものであって、甲1に係る特許の出願当時と比較して、本件出願日当時においてはガス置換を行う意義が相当程度減殺されていることは明らかであると主張し、本件審決が、本件発明5と甲1発明の相違点6に関して、「甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは必須の技術的事項である」(本件 れていることは明らかであると主張し、本件審決が、本件発明5と甲1発明の相違点6に関して、「甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは必須の技術的事項である」(本件 審決第7の4⑵〔81~82頁〕)とした判断は誤りであり、ガス置換をすることなく包材に密封するという、本件発明5の相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであると主張する(前記第3の2⑴〔原告の主張〕)。 (イ) 甲1には、「製造業者によってスライスされたローストビーフを、消 費者の手に渡るまで(略)スライス面が外部から見えるようにすること によって、消費者への有効な視覚的アピールをすることが可能な、スライスされたローストビーフの包装方法及び包装体を提供すること」(段落【0009】)を課題とすることが記載され(前記3⑴ア(イ)a(a))、その解決手段として、「スライスされたローストビーフを、脱酸素剤と共に、酸素ガスバリア性材料からなる容器内に配置し、前記容器内を窒素ガス 及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換した後、該容器を密封して、該容器内の残存酸素濃度が0.01%以下に維持されるようにすることを特徴とする、スライスされたローストビーフの包装方法」の発明が記載されており(前記3⑴ア(イ)a(b))、これによれば、「窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換」することが課題を解決するための手 段の要件とされている。 また、甲1の記載全体を見ても、「脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換とを併用することにより容器内の残存酸素濃度を0. 01%以下に維持することが簡易かつ確実になり」(段落【0012】)、「容器12内は、脱酸素剤13の封入および窒素ガス置換によって、 酸化炭素ガス置換とを併用することにより容器内の残存酸素濃度を0. 01%以下に維持することが簡易かつ確実になり」(段落【0012】)、「容器12内は、脱酸素剤13の封入および窒素ガス置換によって、残 存酸素濃度が0.01%以下に維持されている必要があり」(段落【0020】)、「本実施形態において、容器12内の残存酸素濃度を必要レベル、つまり0.01%以下まで確実に下げるためには、脱酸素剤13の封入のみでは十分ではなく、脱酸素剤13の封入と窒素ガス置換との併用が必要である。」(段落【0022】)、「また、残存酸素濃度が0.01%以 下のレベルを確実に実現するための脱酸素方法としては、窒素ガス置換と脱酸素剤13との併用が必要であることも分かる。」(段落【0041】)というように、「脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換」との「併用」が必要であるとの記載しか存在せず、しかも、実施例1と比較例2及び3において、窒素ガス置換と脱酸素剤の併用と、いずれか 単独の使用とにおける「色の評価」が比較されており、甲1の記載全体 にわたって、脱酸素剤と窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス置換との併用が、課題解決に不可欠な事項とされていることは明らかである。そうすると、甲1の記載から、単に、残存酸素濃度を0.01%以下とすればよいという技術的事項を読み取ることはできず、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をする」という甲1発明の課題解決に不可欠 な事項を除外し、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をすることなく」包材に密封するものとすることが動機付けられることはない。 したがって、「甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは必須の技術的事項である」という本件 することなく」包材に密封するものとすることが動機付けられることはない。 したがって、「甲1発明において窒素ガス及び/または二酸化炭素ガス雰囲気に置換することは必須の技術的事項である」という本件審決の判断に誤りはなく、「炭酸ガス及び/又は窒素ガスによるガス置換をするこ となく」包材に密封するという、本件発明5の相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たとは認められず、原告の上記主張は採用することができない。 イ以上によれば、取消事由1’は理由がない。 ⑵ 取消事由2’(本件発明3及び4に関する容易想到性の判断の誤り-無効 理由3関係)についてア本件発明3の相違点4に係る構成の容易想到性について甲10(特開2005-137215号公報、公開日平成17年6月2日)には、別紙8のとおりの記載がある。 甲10には、食材等の内容物の腐敗を防止する目的で、包装体内を無酸 素状態に保つ方法として、包装体内を真空状態で包装する真空包装をしたり、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装をする方法が挙げられているが、少なくとも内容物から溶出してくる酸素を包装時に完全に除去することは困難であり、時間経過によって少なからず酸素が存在してしまうため、酸素吸収剤を使用することが記載され、その順番については、 真空包装及びガス置換法によってあらかじめ酸素が少ない環境を包装体 内で作成してから、残存した酸素を酸素吸収剤にて除去する方法が効率的で好ましいことが記載されている(段落【0002】~【0006】及び【0037】)。上記記載によれば、食品を真空包装することやその際に真空引きをすること自体は周知であったとしても、本件発明3のように、「包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引き 06】及び【0037】)。上記記載によれば、食品を真空包装することやその際に真空引きをすること自体は周知であったとしても、本件発明3のように、「包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後に真空引きする」ことが技術常 識であったとはいえない。そうすると、真空引きの工程を、酸素濃度が検出限界以下になった後の状態で適用すべきであることは当然であるという原告の主張は根拠を欠くものであって採用することができず、他に、当業者であれば、「包材内の酸素濃度が検出限界以下となった後、当該包材内を真空引きする工程を含む」という、相違点4に係る本件発明3の構成を 容易に想到することができたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、甲1発明に周知の技術であった真空引きの技術を適用したとしても、それが酸素濃度が検出限界以下になった後かどうかは特定されず、本件発明3の相違点4に係る構成とはならないとし、本件発明3は当業者が容易に発明することができたとはいえないという本件審決の判断 (本件審決第7の3⑴イ〔本件審決80頁〕)に誤りはない。 イ本件発明4の容易想到性について本件発明4は、本件発明3を引用するものであるところ、前記アのとおり、本件発明3は当業者が容易に発明することができたとはいえないから、本件発明4も当業者が容易に発明することができたとはいえず、同旨の本 件審決の判断(本件審決第7の3⑵〔本件審決80頁〕)に誤りはない。 ウ以上によれば、取消事由2’は理由がない。 5 結論被告は、取消事由1ないし7について、原告は取消事由1’及び2’について、その他縷々主張するが、それらの主張は、いずれも理由がない。 したがって、取消事由1ないし7並びに取消事由1’及び2’はいずれも理 由がない。 事由1’及び2’について、その他縷々主張するが、それらの主張は、いずれも理由がない。 したがって、取消事由1ないし7並びに取消事由1’及び2’はいずれも理 由がない。 よって、被告の請求及び原告の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官東海林保 裁判官中平健 裁判官都野道紀 別紙1特許公報写し、別紙2審決書写し、別紙4公開特許公報写し省略 別紙5本件出願日前の刊行物の記載 1 食肉の色調の変化と、ミオグロビン誘導体の構造との関係について ⑴ 乙73(木村進ら編著、「食品の変色の化学」、株式会社光琳、平成7(1995年)年10月30日)ア「 」(392頁図5-8 食肉の色調の変化とミオグロビン誘導体の関係)イ「O2Mb は酸素を離し還元されてRMb を生じるが、RMb は存在する酸素の影響で急速にMMbヘ酸化される。未包装のまま貯蔵した肉塊の新鮮な切り口を注意深く観察すると、表面のO2Mb による鮮赤色の層の下に、通常1~2mmの厚さのMMb を含む褐色の層が認められるが、この部分はMMb の生成に適したpO2 になっていることを示している。pO2 がさらに低下し酸化に関与する酸素がなくなると、MMb の生成は起こらずRMb は安定に保持されるようになる。肉 れるが、この部分はMMb の生成に適したpO2 になっていることを示している。pO2 がさらに低下し酸化に関与する酸素がなくなると、MMb の生成は起こらずRMb は安定に保持されるようになる。肉塊内部がRMb で占められているのはそのためである。 低いpO2 においてMMb を生ずる現象は、液体窒素を用いてコンテナー内を冷却したり酸素透過性の低いフィルムで真空包装した場合、その中の食肉が褐変を起こすことになるので留意しなければならない。MMb を生じ褐変した食肉は、新鮮でなく還元力が十分には残存しない場合、再び空気にさらしても還元と酸素化が起こらず赤色のO2Mb に戻らないため、著しく商品価値を損なうことになる。これを防止するには、食肉の包装に酸素透過度が高いフィルム(6,000~13,000ml/m3/24 hrs/atm)を用いる必要がある。また、ガス置換によるCA(Controlatmosphere)貯蔵法も効果的と考えられ、これに関する多くの研究があり実用化されつつある。酸素透過性のないフィルムを用いて真空包装すると、食肉中のMb は表面まですべて紫赤色のRMb に還元される。この包装ではチルドの状態で数週間は保存可能で、販売前にフィルムから出せば食肉の表面はブルーミングを起こし鮮赤色を呈するようになる。 食肉で一般にみられる色調の変化と生ずるMb 誘導体との関係をまとめると、図5-8 のとおりである。」(392頁1行目~393頁2行目)(判決注:図5-8 に示されているとおり、上記の「O2Mb」はオキシミオグロビンを指し、「RMb」は還元型ミオグロビンを指し、「MMb」はメトミオグロビンを指し、pO2 は酸素分圧(partialpressureofoxygen)を指す。)ウ「食肉の色調の変化に ビンを指し、「RMb」は還元型ミオグロビンを指し、「MMb」はメトミオグロビンを指し、pO2 は酸素分圧(partialpressureofoxygen)を指す。)ウ「食肉の色調の変化には、すでに述べたpO2 のほかにも多くの因子が関与している。しかも、これらの因子は相互に関連し合って肉色に影響を及ぼすことが知られている。しかしながら、これら諸因子の相互作用についてはまだ十分に解明されていない。食肉の変色を抑制し、その鮮赤色を安定に保持する実用的方法の確立については今後の検討に待たなければならない。」(393頁4~8行目)エ「温度の上昇はO2Mb の自動酸化速度を著しく早める。O2Mb 溶液を用いた実験によると、MMb への酸化は0℃に比較し10℃では約5 倍の速度で進行することが認められている。」(393頁14~17行目)オ「食肉を調理するとき観察されるように、加熱することによって食肉の色調は急速に赤色から褐色に変化する。この現象は、Mb のグロビン部の熱変性によってヘム鉄が2 価から3 価に容易に酸化され、その結果褐色の変性グロビンヘミクロム(denaturedglobinhemichrome)を生ずるためである。牛肉を加熱したときの中心部の温度と内部の色調変化の関係を観察した結果、60℃まで色調は変わらず、60~70℃で桃赤色、70~80℃で灰褐色に変化する。」(393頁24~29行目)カ「(2)メトミオグロビン還元酵素系前述のように、O2Mb は水溶液中で速やかに酸化されるが、食肉中で酸化はそれほど進化しない。生体において筋肉中のMMb 蓄積はほとんど認められない。これらの主な理由は、MMb を還元する反応系が筋肉に存在し働いているためと考えられている。このMMb 還元系は非酵素系と酵素系に分けられる。 生体において筋肉中のMMb 蓄積はほとんど認められない。これらの主な理由は、MMb を還元する反応系が筋肉に存在し働いているためと考えられている。このMMb 還元系は非酵素系と酵素系に分けられる。・・・酵素系すなわちMMb 還元酵素系が重要な役割を演じているといわれている。 (略)・・・この酵素活性の至適pHは6.5 であるため、屠殺後筋肉のpH低下に伴い次第に活性は弱まっていくであろう。」(394頁1~18行目) ⑵ 甲4(特開2006-64630号公報、平成18年(2006年)3月9日公開)「牛肉において肉の色が小売段階でいかに重要であるかを調べた報告がある。それによると、日本の消費者の約6割が牛肉の購入に際して肉の色を最も重視すると答えている。 牛肉の色を決定する因子はいくつかあるが、ほとんどミオグロビンによって決定されると考えてよい。ミオグロビンは、筋肉内で酸素を貯蔵する役割をもつ色素タンパクである。 枝肉の新鮮な切り口や肉塊の中は暗赤色の還元型ミオグロビンであり、この還元型ミオグロビンは、空気中の酸素と容易に結びついて、15~30分ほどで鮮紅色のオキシミオグロビンになる。 この色が店頭で見られる、消費者に最も好まれる肉の色であるが、オキシミオグロビンは自動酸化によって褐色のメトミオグロビンに変わる。ミオグロビンのうち30~40%以上がメトミオグロビンに酸化されると、肉の変色が目に見えて分かり、消費者の購買意 欲がなくなると言われている。」(【0002】) ⑶ 乙98(泉本勝利、「総説食肉の色調現象の化学的要因と特性化に関する研究」、岡山大農学報、(81)、平成5年(1993年))「I.色調現象の化学的要因食肉の表面状態とくに色調は品質を決定する重要な項目である。・・・食肉の色調現象の基本は 因と特性化に関する研究」、岡山大農学報、(81)、平成5年(1993年))「I.色調現象の化学的要因食肉の表面状態とくに色調は品質を決定する重要な項目である。・・・食肉の色調現象の基本は主としてミオグロビンと素地の化学的要因にある。 1.ミオグロビン筋肉には筋線維内のミオグロビン(myoglobin :Mb )と血管内のヘモグロビン(hemoglobin:Hb)が存在する。これらは食肉の色調に反映する主要な色素成分である。 Mb とHb は、それぞれ色のないポリペプチド部分にヘムといわれる色のある非ペプチド部分が結合したタンパク質であり、ヘムタンパク質あるいはヘム色素といわれる。Mb はアミノ酸153 個、分子量約18,000(モノマー)で、タンパク質として小さい方である。」(82頁下から17~4行目)「2.分光学的特性1)Mb の吸収と透過率スペクトルMb の各種誘導形態の分子吸光スペクトルをFig.5、6 に示す。生肉のMb には酸素型(O2Mb)、還元型(RMb)、メト型(MMb)の3種の誘導形態が混在し、それぞれの典型的な色調は鮮紅色、赤色、褐色である。一酸化炭素型(MbCO)、シアンメト型(MMbCN)、一酸化窒素型(NOMb)は人工的に調製された誘導形態である。ソーセージやハムの加工肉でNOMb に発色処理を行った加熱塩漬肉の典型的な色調はピンク色である。・・・(略)Mb の誘導形態はそれぞれ特有な吸収スペクトルを示すので、筋肉中のMb の含量とその誘導形態の混在割合によって、多様な色調を呈することになる。・・・」(84頁24~37行目)「3.Mb の誘導形態と殺後のMb 誘導形態の経時的変化は、以下のように、RMb からO2Mb に、そして最終的にMMb になる。・・・O2Mb は ・・・」(84頁24~37行目)「3.Mb の誘導形態と殺後のMb 誘導形態の経時的変化は、以下のように、RMb からO2Mb に、そして最終的にMMb になる。・・・O2Mb は環境に酸素が少なくなると結合している酸素を放つ性質があり、急速にO2Mb はRMb になってくる。それで、と殺放冷後の筋肉内部のMb はRMb である。また、食肉を真空包装や脱酸素包装すると、酸素が供給されないので、筋肉の呼吸系による酸素の消費と筋肉の還元活性(MRA:metmyoglobinreducingactivity)が持続するかぎり、表面も内部と同じくRMb で占められるので色調は濃くなる。RMb のヘム鉄は2価で、これに何も結合していない。 RMb は非酵素的に酸素と結合する能力を保持している。それで、枝肉分割や調理の際に、食肉を切断したり挽肉にすると組織に空気が拡散して、表層部においてRMb は酸素と結合するので、しだいにO2Mb になり、濃い赤色から鮮やかな赤色になる。この現象は酸素化(oxygenation)あるいはブルーミング(blooming)といわれる。 挽肉は表面積が大きく空気が十分に拡散するので、速やかに内部全体のブルーミングが発現する。これが塊肉と挽肉のブルーミングの違いである。すなわち、塊肉やステーキ肉 などはブルーミング層に続く深部のRMb の色調が表面色調に反映するので、ブルーミング後の色調は挽肉とは異なる。 Mb がRMb に保持されているなら、空気と接触させればブルーミングが発現するのであるから、O2Mb である必要はないとも考えられる。しかし、(略)小売陳列時ではブルーミングの程度が購買に大きく影響するので無視できないだろう。 食肉の良好な色調は表層部のMb の誘導形態のうち るから、O2Mb である必要はないとも考えられる。しかし、(略)小売陳列時ではブルーミングの程度が購買に大きく影響するので無視できないだろう。 食肉の良好な色調は表層部のMb の誘導形態のうちO2Mb の割合が高いことと、ブルーミング層が十分にあることで達成されることになる。O2Mb のヘム鉄には酸素分子が結合している。(略)ブルーミングによりO2Mb が形成された後、自動酸化(autoxidation)によりMMb を形成し、肉色はしだいに褐色になる。すなわち、この褐色化は長時間の経過と符合するので、経験的にも古い肉と判定され、忌避されるので、RMb の色調よりも好まれない。MMb が40%、50%以上になると明らかに色調の劣化が認められるようになる。MMb のヘム鉄は3価で、これに水が結合している。」(86頁1行目~87頁8行目)「Mb の自動酸化速度は高温度、低pH、Mb を純化するほど速くなる。その速度はMb 溶液でMb の酸素飽和度50%になるpO2 が1-1.4Torr で最大になる。多成分である食肉のMMb の形成はpO2 が7.5Torr で最大になる。これは筋肉の酸素消費によって、実質的に内部は1Torr 程度になっているとも考えられる。このことから、1%程度の酸素が残存するような不十分な(真空)包装はメト化を進行させることになる。 O2Mb の純粋溶液に比べて、食肉で自動酸化がゆっくり進行するのはMRA による。MRA は嫌気的条件下で強く発現し、脱酸素包装によってMMb の形成による褐色化が防止される。 MRA はpH5.8 以上の中性域の方が酸性域よりも活性が高い。」(87頁16~23行目)(判決注:1Torr は標準大気圧の1/760である。)「5.ブルーミング(略)食肉のO2Mb の形成すなわち pH5.8 以上の中性域の方が酸性域よりも活性が高い。」(87頁16~23行目)(判決注:1Torr は標準大気圧の1/760である。)「5.ブルーミング(略)食肉のO2Mb の形成すなわち鮮紅色化の機構はつぎのような平衡関係にあると考えられる。 (1) 酸素消費活性は温度とpH に依存する。中性に近いpH と高い品温ほど酸素消費が大きくなり、嫌気状態によるMRA の持続はRMb を形成することになる。 (2) RMb である状態で、pH の低下、品温の低下が持続すると、酸素消費活性が低下するので、酸素の筋肉内への拡散が酸素消費に優り、保持されていたRMb と結合して、O2Mbを形成する。 (3) O2Mb の自動酸化はpH8-10 で最低である。そこで、低pH の持続は自動酸化により、O2Mb からMMb を形成を促進する。MMb はMRA 還元活性でRMb になるが、pH と温度が低いほどその活性は低くなる。RMb が形成されなければ、酸素の筋肉内への拡散が酸素消費に優ったとしてもO2Mb は形成されないことになる。 (4) MMb への自動酸化を防ぐMRA の活性を高めるには(1)のような条件となり、O2Mb からRMb に移行することになる。MRA が失活あるいは十分でないと、温度が高いほど自動酸化が進行することになる。 このように、Mb はMMb やRMb への反応が傾きやすく、良好な色調品質であるO2Mb の形成は微妙な平衡関係にある。食肉の鮮紅色化はと殺後しばらくしてからのO2Mb の形成の機構 ということができる。」(87頁下から15行目~88頁14行目) ⑷ 乙96の1(AMSA, MeatColorMeasurementGuidelines(肉色の測定ガイドライン)2012年改訂 とができる。」(87頁下から15行目~88頁14行目) ⑷ 乙96の1(AMSA, MeatColorMeasurementGuidelines(肉色の測定ガイドライン)2012年改訂版抜粋、2012年(平成24年)12月)「新鮮な肉の表面は、酸素がないため紫色(DMb)であるが、空気中に数分置いた後、肉の表面は真っ赤になる(OMb、図2.2 の反応1)。肉の断面から、赤い表面層の厚さは1mm 未満であり、より深い筋肉組織は紫色であることがわかる。数時間後に、赤い表面層はだいたい2mm から3mm の厚さに達する。」(5頁下から14~10行目)(判決注:乙96の1は、2012年(平成24年)12月に発行された米国の肉色の測定ガイドラインの改訂版であるが、ガイドラインであることから、その内容は、本件特許の出願日である平成24年5月17日には、周知技術であったと推認される。「DMb」は還元型ミオグロビンを指し、「OMb」はオキシミオグロビンを指す。) ⑸ 乙94(「牛肉のメトミオグロビン生成量,酸敗及び㏗に及ぼすガス充填包装の影響」岡山高秀、昭和59年(1984年))「MetMb 生成量が40%以上に達すると視覚的に明確な色調の悪化が認められた。」(336頁左欄3~4行、上記の「MetMb」は、メトミオグロビンを指す。) ⑹ 甲5(特開2009-159825号公報、平成21年(2009年)7月23日公開)「食肉と、2価又は3価の金属を含有する金属塩と、アスコルビン酸又はその塩とを含有し、pHを6.2~8に調整した食肉組成物を調製する食肉調製工程を備えることを特徴とする発色性に優れた食肉製品の製造方法。」(【請求項1】)「食肉と、2価又は3価の金属を含有する金属塩と、アスコルビン酸又はその塩とを含有し、pH 組成物を調製する食肉調製工程を備えることを特徴とする発色性に優れた食肉製品の製造方法。」(【請求項1】)「食肉と、2価又は3価の金属を含有する金属塩と、アスコルビン酸又はその塩とを含有し、pHを6.2~8であることを特徴とする発色性に優れた食肉製品。」(【請求項8】)「ハム類、ベーコン類、ソーセージ類、ローストビーフ、ハンバーグ、又は焼豚のいずれかの形態である請求項8に記載の食肉製品。」(【請求項9】)「ハムやソーセージ等の食肉製品は、継時的に、又は、製造時の加熱により、食肉本来の鮮やかな色が退色して、見た目が悪くなることが知られている。」(【0002】)「食肉本来の鮮やかな赤色は、食肉に含まれるミオグロビンのヘム鉄の6位に酸素が結合したときの、2価の状態のヘム鉄によるものである。このような鮮やかな赤色の食肉を空気中に放置すると、褐色を示すようになる。これは、ミオグロビンの2価のヘム鉄が、6位に結合した酸素が水分子に置き換わることにより生成する、3価の状態のヘム鉄によると考えられている。」(【0003】) ⑺ 乙36(特開昭61-242563号公報、昭和61年(1986年)10月28日)「2.特許請求の範囲(1)80乃至150℃の温度に調整した加熱装置中に牛肉塊を入れ、前記牛肉塊の中心温度が30乃至35℃に到達した後1乃至3時間で前記中心温度の最高到達温度を57乃 至63℃にすると共に、前記中心温度が52乃至59℃のときに前記牛肉塊を加熱装置から取り出し、前記中心温度が60℃から40℃の温度域を2時間以内、40℃から20℃の温度域を2.5時間以内、及び20℃から10℃の温度域を3時間以内に通過させて冷却を行うローストビーフの調製方法。」「我が国の食品衛生法は、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品以外の食 0℃から20℃の温度域を2.5時間以内、及び20℃から10℃の温度域を3時間以内に通過させて冷却を行うローストビーフの調製方法。」「我が国の食品衛生法は、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品以外の食肉製品の製造に当たっては、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で殺菌することを要求している。 しかしながら、この殺菌方法によると、良好な品質特性を有するローストビーフ、特に食欲を喚起する特有の鮮紅色を呈する製品の製造は不可能である。」(1頁右下欄1~9行目)「ローストビーフのスライス面は、食欲を喚起する特有の鮮紅色部分(未変性オキシミオグロビン)とそれを取り囲む茶褐色部分(変性Fe3+ヘモグロモーゲン)から成る。ローストビーフは、前者の占める面積が全スライス面積の55~70%、好ましくは60~65%であり、且つ鮮紅色部分のハンターa値が16以上であるとき、良好な品質を保持していると判断できる。しかしながら、牛肉塊の中心部分を63℃以上、特に65℃以上に加熱すると、上記条件を充足するローストビーフを得ることが不可能となる。」(2頁左上欄6~16行目) ⑻ 乙29(R. A. LawrieandD. A. Ledward、 Lawrie'smeatscience、 WoodheadPublishingLimitedandCRCpressLLC、 SeventhEnglishedition、 2006、(R.A. ローリー及びD.A.レドワード著、ローリーの肉科学、ウッドヘッド出版及びCRCプレス、英語第7版、2006年(平成18年)))「調理の温度は、天然の状態で、色素の変換率に影響を与える。このため、内部温度60℃で調理した牛肉は内部が鮮やかな赤色を示し、内部温度60℃ CRCプレス、英語第7版、2006年(平成18年)))「調理の温度は、天然の状態で、色素の変換率に影響を与える。このため、内部温度60℃で調理した牛肉は内部が鮮やかな赤色を示し、内部温度60℃~70℃で調理した場合は内部がピンク色であり、内部温度70℃~80℃以上で調理した場合は、灰色がかった茶色である(Jensen、 1949)。肉におけるミオグロビンの変性は、溶液中における色素の変性を引き起こす温度と考えられる(図10.1;Bernofskyetal.、 1959)」(285頁10~16行目) 2 特定加熱食肉製品、加熱食肉製品の定義と、ローストビーフの製法について ⑴ 乙38(食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について厚生省、平成5年(1993年)3月17日)「食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号。以下「省令」という。)及び食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号。以下「告示」という。)の一部が、それぞれ平成五年三月一七日厚生省令第六号及び厚生省告示第七三号をもって改正された(略)」(1頁5~7行目)「第一改正の要旨近時、食肉製品に対する嗜好の多様化、その製造技術の進歩、諸外国における生産 及び流通の実態等を勘案し、従来我が国で製造、販売等が認められていなかった食肉製品について新たに規格基準を設けるとともに、従前の規格基準について一部改正を行い、併せて、食肉製品に係る表示事項の改正を行ったこと。」(1頁9~12行目)「第二改正の内容 1 省令関係(略)(2)特定加熱食肉製品(その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう 容 1 省令関係(略)(2)特定加熱食肉製品(その中心部の温度を六三度で三〇分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。ただし、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。以下同じ。)にあっては、特定加熱食肉製品である旨及び水分活性を表示することとしたこと。(略) 2 告示関係(1)食肉製品及び鯨肉製品の規格基準を「食肉製品」と「鯨肉製品」に分け、食肉製品について次のように改正したこと。 ア成分規格(ア) 微生物規格の全面的見直しを行い、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品及び加熱食肉製品のうち容器包装に入れた後加熱殺菌したもの並びに加熱食肉製品のうち加熱殺菌したのち容器包装に入れたものそれぞれについて、食肉製品の特性に応じ、大腸菌群、E.coli、クロストリジウム属菌、黄色ブドウ球菌及びサルモネラ属菌による成分規格を設けたこと。(略)イ製造基準(略)(ク) 特定加熱食肉製品について、新たに基準を設けたこと。(略)ウ保存基準(略)(イ) 特定加熱食肉製品について、新たに保存基準を設け、水分活性が○・九五以上のものについては四度以下、水分活性が〇・九五未満のものについては一〇度以下で保存することとしたこと。」(1頁13行目~2頁9行目) ⑵ 甲29(特開平6-217736号公報、平成6年(1994)年8月9日)「【従来の技術】(発明の背景)米国では牛肉の「うちもも」のかなりの分量がローストビーフとして食されている。我国でも食生活の欧米化に伴い、食肉製品の規格基準が見直され、加熱殺菌の方法及び製品の水分活性により、食肉製品を非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品、加熱食肉製品 量がローストビーフとして食されている。我国でも食生活の欧米化に伴い、食肉製品の規格基準が見直され、加熱殺菌の方法及び製品の水分活性により、食肉製品を非加熱食肉製品、特定加熱食肉製品、加熱食肉製品、乾燥食肉製品の4種類に区分し、ローストビーフを「特定過熱食肉製品」(判決注:「特定加熱食肉製品」の誤記と認められる。)として、ロースハム、フランクフルトソーセージ等の加熱食肉製品より加熱程度が緩やかな状態で製造流通することが認められることとなった。(略)」(【0002】)「(従来技術)ローストビーフを製造する場合に、牛肉肉塊の中心温度を、ロースハム等と同様の加熱条件(63℃で30分以上;結核菌が死ぬ殺菌条件)で加熱した場合に は、肉塊の中心部まで熱によるタンパク変性が起こり肉のうま味・風味がなくなる虞がある。ローストビーフを製造する際、加熱する牛肉肉塊内部の中心温度が低い程、タンパク変性が少なく、うま味・風味を保持したローストビーフが得られる。(略)」(【0003】) ⑶ 甲30(特許第3115288号公報、平成12年(2000年)9月29日)「【従来の技術】従来、ローストビーフやたたきを販売のためスーパーマーケット等に置いた場合、店頭に置いている間の3-5 時間程度でその色が変わってしまって商品価値がなくなり店舗ではロスを生じる原因になっていた。ローストビーフの製法としては、食品衛生法により食肉原料の中心温度を56℃(判決注:規格基準に照らして、「63℃」の誤記と認められる。)、30 分以上加熱する(流通は10℃以下、またこの場合製造過程で原料肉に調味液等の注射をすることが認められている)製造法と中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められてい の場合製造過程で原料肉に調味液等の注射をすることが認められている)製造法と中心温度を56℃、64分以上もしくは同等以上の加熱を行う特定加熱法(流通は4℃以下、原料肉に調味液等の注射は認められていない。)による製造法の2つの方法がある。ローストビーフにおいてその本来の色を出そうとすると後者の特定加熱の製法で行う方が有利であり一般的に用いる製法である。このローストビーフをスライスしてから店頭に置くと退色が著しく商品価値を落とすこととなり問題となっていた。そこで、この点を解決する方法の開発が強く望まれている。」(【0002】) 別紙6 (特開2012-37202号公報、甲2の記載) 「冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させることを特徴とする食品の貯蔵方法。」(【請求項1】)「肉や赤身の魚などのミオグロビンを含む赤色の食品では、一般的に、鮮やかな赤色であるほど新鮮であるとされ人々に好まれるが、上記のような冷蔵庫でミオグロビンを含む食品を保存する場合、貯蔵空間に投入された食品が冷却される前に貯蔵空間の酸素を減少させると、食品自身の鮮度は維持できるものの、食品が青みを帯びた赤色(紫赤色)に変色することを本発明者は見出した。」(【発明が解決しようとする課題】【0004】)「そこで、本発明は、ミオグロビンを含む赤色の食品の鮮やかな赤色を維持しつつ、貯蔵空間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品の貯蔵方法を提供することを目的とする。」(【発明が解決しようとする課題】【0005】)「本発明の実施形態に係る食品の貯蔵方法は、冷気を用いて 間の酸素を減少させ食品の鮮度を維持することができる食品の貯蔵方法を提供することを目的とする。」(【発明が解決しようとする課題】【0005】)「本発明の実施形態に係る食品の貯蔵方法は、冷気を用いてミオグロビンを含む食品を貯蔵する方法において、箱体の内部に収容した前記食品に対して冷気を供給し前記食品を冷却するとともに前記食品の酸化を維持する期間を設け、その後、前記箱体内の酸素を減少させることを特徴とする。」(【課題を解決するための手段】【0006】)「第1冷凍室44については、上記した冷凍サイクルの運転、及び第1冷凍室44に冷気を吹き出す吹出口の開度を変更するダンパ38を制御して室内への冷気導入量を調整することで、第1冷凍室44内に配設された収納容器60内の温度が、例えば、-18℃から-3℃までの食品Mが凍結する冷凍温度帯と、1℃~5℃までの冷蔵温度帯とに切換可能に設けられている。なお、本実施形態では、初期設定状態において、第1冷凍室44内の温度が第2冷凍室46内の温度と同じ温度(例えば、-18℃)に設定されている。」(【0029】)「次いで、制御部34は、タイマ66によって測定される収納容器60内に食品Mが貯蔵されてからの経過時間が所定時間(例えば、1時間)に達するまで、酸素減少手段72を停止させた、あるいは酸素減少手段停止72の停止を維持した状態で収納容器60内の食品Mを冷却することで、収納容器60内の酸素濃度を低下させずに食品Mが収納容器60内の酸素によって酸化しやすい状態を維持しつつ食品Mを冷却する(図5のステップS2、ステップS3参照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。」(【0035】)「以上のように、本実施形態の食品の貯蔵方法では、収納容器 照)。つまり、収納容器60内に食品Mが貯蔵されてから所定時間に達するまでの期間は、食品Mの酸化を維持する期間に相当する。」(【0035】)「以上のように、本実施形態の食品の貯蔵方法では、収納容器60内に食品Mが投入されてから所定条件を満たすまで、収納容器60内の食品Mを冷却するとともに、酸素減少手段72を停止させ収納容器60内に貯蔵された食品Mの酸化を維持する期間を設けている。」(【0038】)「これにより、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が酸化され鮮やかな赤色を呈するオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)に変化し、食品Mの色彩がより鮮やかな赤色となり、食品Mの赤みが向上する。また、食品Mに含まれるミオグロビンのうち、収納容器60に投入 される前から既に酸化状態にあるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)は、還元状態のミオグロビン(MbFe(II))との間で可逆的に酸化還元反応が起こりえるが、上記のように酸素減少手段72を停止させ収納容器60内の酸素分圧がほぼ一定に維持されているため、オキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を抑えて収納容器60内に貯蔵された食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。」(【0039】)「 」(【数1】) 「そして、所定条件を満たしてから酸素減少手段72を動作させ収納容器60内の酸素を減少させるため、収納容器60内に投入された食品Mがある程度冷却されオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)の還元反応を起こりにくくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が (II)O2)の還元反応を起こりにくくしてから収納容器60内の酸素を減少させることができる。そのため、収納容器60内の酸素が減少しても、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が還元されて青みを帯びた赤色(紫赤色)を呈する還元状態にあるミオグロビン(MbFe(II))が生成されにくくなり、食品Mの鮮やかな赤色を維持することができる。」(【0040】)「しかも、所定条件を満たした後では、収納容器60内の酸素が減少しているため、食品Mに含まれるオキシミオグロビン(MbFe(II)O2)が上記式(1)に示すような褐色を呈するメトミオグロビン(metMbFe(III))に変化する、いわゆるメト化を抑えることができ、食品Mの劣化を抑え鮮度を維持することができ長期保存が可能になる。」(【0041】) 別紙7 (特開昭60-221031号公報、甲3の記載) 「2.特許請求の範囲生肉を酸素を吸収すると同時に炭酸ガスを発生する脱酸素剤とともに実質的に非通気性の容器に密封し、冷蔵あるいは氷温に保存することを特徴とする生肉の保存方法」「3.発明の詳細な説明本発明は生肉の保存方法に関するものである。特に生肉の鮮度の指標となる赤味の保持効果を高めた発明に関するものである。 更に詳しくは、脱酸素剤効果によつて生肉の変質を防止するとともに従来、脱酸素剤による保存方法の欠点であつた、無酸素状態に置くことでひき起こされていた生肉が赤紫色あるいは赤黒く変色することを防止し、無酸素状態下においてもあざやかな赤味を保持する生肉の保存方法に関する発明である。 畜肉や魚肉は赤色を呈しているが、この赤い色はミオグロビンやヘモグロビンによるもので、一般にミオグロビンが80~90%を占めている。ミオグロビンは空気中の酸素と 生肉の保存方法に関する発明である。 畜肉や魚肉は赤色を呈しているが、この赤い色はミオグロビンやヘモグロビンによるもので、一般にミオグロビンが80~90%を占めている。ミオグロビンは空気中の酸素と結合してオキシミオグロビンの形でも存在するが、肉類の鮮度が落ちるとオキシミオグロビンは酸化されて褐色のメトミオグロビンに変化し、肉は褐色を呈するようになる。 本発明は肉類を脱酸素剤とともに密封するものであり、本発明方法の場合は包装容器を開封せずに、肉類の赤色を保持することが可能である。」(181頁左下欄9行目~右下欄12行目)「肉の赤色を保持させる方法としては発色剤として硝酸塩を用いる方法があるが、この方法は化学物質を食品に添加するので好ましい方法ではない。 本発明者等は肉類を脱酸素剤と共に密封し、肉類の退色を防止する方法について研究を行なつた結果、炭酸ガスを発生させながら、容器中の酸素濃度を低下させることによつて、密封した場合でも肉の赤味を保持出来ることを発見して本発明を完成するに至つた。 本発明において、肉類は特に限定されるものではなく、例えばとり、豚、牛肉等の畜肉、またはマグロ、カツオなどの魚肉等の食肉を意味するものである。」(182頁左上欄3~16行目)「従来の脱酸素剤による生肉の保存方法は特開昭51-104061・・・などに記載されているが、いずれも脱酸素効果によつて、生肉の赤味成分であるミオグロビンを還元型に保持し、開封して空気中の酸素に曝すことで還元型ミオグロビンの赤紫色から酸素型ミオグロビンの鮮紅色に発色させる方法である。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によつて容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。 炭酸ガスを発生しない型の脱酸素剤を使用した場合あるいはN2ガス、CO2ガス置換によつて容器内の酸素濃度が数%~10数%程度に達すると生肉中のミオグロビンはメト化して急速に赤味が失われて褐変する。 そして脱酸素した後、生肉中のメトミオグロビンはメトミオグロビン還元酵素の働きで還元され、還元型ミオグロビンに変化する。還元型ミオグロビンに変化した生肉はメトミオグロビンの褐色から還元型ミオグロビンの色調である赤紫色へと変色し、脱酸素包装中において、赤紫色の色調を保持することになる。 しかし、本発明の特徴である炭酸ガス発生をともなう脱酸素剤を使用した場合、従来と全 く異なる色調の変化が生じることが見い出された。 すなわち、脱酸素剤によつて酸素が吸収され、容器内の酸素濃度が低下しても、同時に炭酸ガス濃度が高まつてゆく中では生肉の褐変現象が生じにくく、脱酸素後においても酸素型ミオグロビンの色調であるあざやかに赤い色調に近い赤味を保持することが出来ることである。 この生肉の赤味は脱酸素後においてもほとんど変化せず、長期保存中においても、還元型ミオグロビンの赤紫色に変化することがなく赤味の強い色調を保持した。 また容器を開封し、空気中の酸素に曝しても通常の脱酸素剤の時と同様、生肉は酸素型ミオグロビンの鮮紅色を保持し、炭酸ガス発生型と通常型脱酸素剤との差はなかつた。」(182頁左上欄17行目~左下欄14行目)「本発明方法の場合のCO2発生型脱酸素剤は、O2を吸収し始めると同時にCO2を発生する型であり、生肉の褐変が生じるO2濃度に達する前にCO2の発生が生じる型である。」(182頁右下欄16~19行目)「本発明においては脱酸素剤としては例えば鉄粉または亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、第一鉄塩などの還元性の無機塩、ヒドロキノン、カテコール O2の発生が生じる型である。」(182頁右下欄16~19行目)「本発明においては脱酸素剤としては例えば鉄粉または亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、第一鉄塩などの還元性の無機塩、ヒドロキノン、カテコール等で例示されるポリフエノール類、アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩などで例示される還元性の多価アルコール、からなる群から選ばれる還元剤を主たる有効成分とするCO2発生型の脱酸素剤が使用される。」(183頁左上欄5~12行目)「実施例 1生の牛ひき肉100gをプラスチツクトレイに入れ、エージレスG-200(三菱瓦斯化学製CO2発生型脱酸素剤)と共に非通気性のKON/PEの包材で密封包装し、5℃で冷蔵保存した。スタートの包装内のO2量は150ccであつた。 比較例 1エージレスG-200のかわりにエージレスS-200(三菱瓦斯化学製CO2を発生しない脱酸素剤)を用いた以外は実施例1と同様にして実施した。 比較例 2脱酸素剤を使用しない以外は実施例1と同様にして実施した。それぞれの結果を表-1、表-2に示した。」(183頁左下欄5行目~右下欄3行目) <4頁右下欄の補正後の「表-1 牛ひき肉の色、風味の保存結果」> (注:評価色:4 赤色、3 赤紫色、2 褐赤色、1 褐色(赤みなし))」 別紙8 (特開2005-137215号公報、甲10の記載) 「スーパーなどで食材を購入し、各家庭でその購入した食材を調理して食べるという従来の形態に加え、最近では共働きのため調理の時間がない、自分の趣味の時間を多く取りたい等の理由により、家事を簡便に行いたいという意向から、調理に関してはスーパー等のバックヤードやセントラルキッチンなどで調理された調理済み内容物等を購入し、家庭で食す形態が増えてきている。 一 い等の理由により、家事を簡便に行いたいという意向から、調理に関してはスーパー等のバックヤードやセントラルキッチンなどで調理された調理済み内容物等を購入し、家庭で食す形態が増えてきている。 一方、スーパーやコンビニエンスストアの調理済内容物においては、調理済内容物の利便性を売りに個々の内容物の味、量等、好みに合わせた商品開発が活発になされ、多種類の内容物が市場に投入されている。また、スーパーやコンビニエンスストア等の惣菜販売者は、消費者の強いニーズである素材そのもののおいしさの提供および安心・安全・健康志向に応えるため、内容物保存料等を削減した惣菜等の提供を模索しているが、内容物保存料を削減すると内容物の腐敗開始が早くなるため、内容物の安全対策が必須となっている。また、内容物の腐敗に関する研究から、空気中の酸素の影響が重要であることが広く知られている。そのため、包装体内を無酸素状態で包装する種々の方法が検討されている。」(【0002】)「内容物の腐敗を防止する目的で、包装体内を無酸素状態に保つ方法として、包装体内を真空状態で包装する真空包装したり、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法が挙げられる。 例えば、真空包装の場合、包装体内を真空状態にするため、酸素による内容物の酸化等の腐敗を防止でき有効な手段である。また、保管、陳列スペースの点において有利であり、比較的長期の保存が必要な場合に多用されている。しかしながら、長期保管の場合、内容物内部に溶存している酸素が時間と共に内容物外に溶出するため、その酸素によって腐敗が促進したり、包装体内を真空にするため、内容物が該包装体を包装しているフィルム等によって大気圧によって密着した包装形態になり、ボリューム感を与えることができない他、内容物の形態がいびつになってしまうた 進したり、包装体内を真空にするため、内容物が該包装体を包装しているフィルム等によって大気圧によって密着した包装形態になり、ボリューム感を与えることができない他、内容物の形態がいびつになってしまうため美粧性の観点で問題が残る。」(【0003】)「一方、ガス置換包装とは、不活性気体である窒素、アルゴン等で包装体内を密封して内容物の酸素による酸化劣化を抑制する手法であるが、内容物の微生物的な汚染防止の観点からこのガス置換技術に加え、微生物等の繁殖抑制・殺菌を目的として他種の気体を不活性気体に混合することがよく知られている。微生物等の繁殖抑制に使用される気体や殺菌に使用される気体の例として、低コスト・内容物安全の観点から二酸化炭素やアルコール等が挙げられる。二酸化炭素は主として微生物の繁殖を抑制する制菌作用を有し、アルコールは主として微生物の殺菌作用を有している。このようなガス置換包装においては包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法では、内容物を大気圧によって押しつぶすこと無く、内容物を作ったままの形状でディスプレイできるため、商品をおいしく見せれる等のいわゆるディスプレイ効果による商品差別化が図れる点で優れている。そのため、賞味期限が数日から1ヶ月以内の比較的短期間の商品についてはガス置換包装の検討が主として行われている。しかしながら、真空包装と同様、長期保管の場合、内容物内 部に溶存している酸素の内容物外への溶出や包装材を透過する酸素によって腐敗が促進する問題が残されている。」(【0004】)「このように、包装体内を真空包装する方法や包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法では、少なくとも内容物から溶出してくる酸素を包装時に完全に除去することは困難であり、時間経過によって少なからず、酸素が存在 内を真空包装する方法や包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法では、少なくとも内容物から溶出してくる酸素を包装時に完全に除去することは困難であり、時間経過によって少なからず、酸素が存在してしまうのである。この酸素は内容物の種類、量によって一定ではなく、賞味期限を短くしてしまう主原因であり、内容物の微生物的な汚染防止の観点より、一番早く腐敗するものにあわせてしまうため、製品の賞味期限を短くしてしまったり、ロスが多くなってしまうのである。そのため、この酸素を除去する酸素吸収剤が色々と検討されているのである。」(【0005】)「従来技術である酸素吸収剤として大きく分けて2種類ある。1つは鉄等の金属を用いた金属酸化を利用した酸素吸収剤であり、もう1つは有機化合物である低分子フェノール等の低分子化合物を用いた酸素吸収剤である。鉄等の金属を用いた金属酸化を利用した酸素吸収剤とは、鉄等の金属が酸素と結合して酸化鉄となる時に酸化鉄を合成する際に包装体内の酸素を使用することによって除去する酸素吸収剤であり、安価、かつ、有効な酸素吸収能力を有するが、食品工業において、近年、内容物の異物混入の観点より、多くの場合、食品包装後に金属探知機によって、食品作成機械および包装機械の金属片等を異物として食品への混入試験を行っており、鉄等の金属を使用した酸素吸収剤は使用できなくなっている他、該方法では酸素吸収時に水分を必要とするため、低湿度の環境における使用が困難である。そのため、鉄等の金属を使用しない酸素吸収剤の検討が盛んに行われ、検討されている。そのため、もう1つの酸素吸収剤である有機化合物である低分子フェノール等の低分子化合物を用いた酸素吸収剤が着目されているのである。」(【0006】)「本発明の酸素吸収剤はあらかじめ酸素が少ない環境を包装体内で作 1つの酸素吸収剤である有機化合物である低分子フェノール等の低分子化合物を用いた酸素吸収剤が着目されているのである。」(【0006】)「本発明の酸素吸収剤はあらかじめ酸素が少ない環境を包装体内で作成したから、残存した酸素を本発明の酸素吸収剤にて除去する方が効率的で好ましく、その酸素が少ない環境を作成する方法として真空包装およびガス置換法が挙げられる。 本発明でいう真空状態とは包装体内をあらかじめ酸素が少ない環境を実現するのみ有効であり、本発明の酸素吸収剤は真空包装にて除去できなかった酸素および時間経過で内容物内部から溶出する酸素を除去する方が効率的で好ましい。また、真空包装と同様でガス置換包装も有効である。包装体内のガスを吸引脱気する真空包装においても、ガス置換するガス置換包装においても包装体内に残留する酸素を極力少なくするため、一旦、無酸素のガスに置換してから吸引脱気もしくはガス置換することが好ましい。」(【0037】)

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