平成12(行ウ)5 課税処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月22日 松山地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-8773.txt

判決文本文14,908 文字)

平成12年(行ウ)第5号課税処分取消請求事件判決 主文 1 被告が平成10年6月30日付けでした原告の平成7年分以降の所得税の青色申告の承認の取消処分を取り消す。 2 被告がいずれも平成10年6月30日付けでした,原告の平成7年分の所得税の更正のうち,総所得金額5115万2693円を超える部分及び同年分の所得税の過少申告加算税賦課決定,原告の平成8年分の所得税の更正のうち,総所得金額3860万9848円を超える部分及び同年分の所得税の過少申告加算税賦課決定,並びに原告の平成9年分の所得税の更正のうち,総所得金額2985万4682円を超える部分及び同年分の所得税の過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要等本件は,愛媛県川之江市において内科診療所を開業し,所得税の青色申告の承認を受けていた原告が,平成7年分ないし平成9年分(以下「本件係争各年分」という。)の所得税について法定申告期限内に確定申告をしたところ,被告が,原告につき所得税法150条1項1号に該当する事実があるとして,平成7年分以降の所得税の青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)を行うとともに,本件係争各年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)を行ったことから,原告が本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分等の取り消しを求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠を摘示した以外は争いのない事実)(1) 原告は,平成5年9月以降,愛媛県川之江市所在の肩書住所地において,内科の無床診療所(医師は原告1名)を営んでおり,本件係争各年分の所得税の確定申告を青色申告書により行うことを承認されていた (1) 原告は,平成5年9月以降,愛媛県川之江市所在の肩書住所地において,内科の無床診療所(医師は原告1名)を営んでおり,本件係争各年分の所得税の確定申告を青色申告書により行うことを承認されていた。 (2) 原告は,本件係争各年分の所得税について,別紙課税等経過表記載のとおり,法定申告期限内に青色申告書による確定申告を行った。 (3) 被告所属のA調査官は,本件係争各年分の所得税の調査(以下「本件調査」という。)を行うため,平成10年4月15日,同年5月13日,同月20日,同月28日,同年6月2日,同月9日,同月17日,同月26日の8回にわたって原告方に臨場したが,最終的には,第三者の立ち会う場で調査を行えば自らが守秘義務違反に問われるおそれがあるので調査を行うことができないとして,本件係争各年分の青色申告に係る帳簿書類(以下「本件帳簿書類」という。)を確認することなく本件調査をうち切った。 (4)ア被告は,平成10年6月30日,原告につき所得税法150条1項1号に該当する事実があったとして,別紙課税等経過表記載のとおり,本件青色申告承認取消処分を行うとともに,推計の方法により事業所得金額を算定し,これに基づき,本件更正処分等を行った。 イ被告から原告に宛てた「所得税の青色申告の承認取消しの通知書」には,「取り消しの基因となった事実」として,次のような記載がなされている(甲1)。 「 平成7年分,平成8年分及び平成9年分の所得税の調査に関し必要があったので,当税務署の調査担当者が,平成10年5月13日,平成10年5月20日,平成10年5月28日,平成10年6月9日,平成10年6月17日及び平成10年6月26日の6回にわたり,あなたの自宅において,あなたに対して調査年分の青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず,あなたは青色 日,平成10年6月9日,平成10年6月17日及び平成10年6月26日の6回にわたり,あなたの自宅において,あなたに対して調査年分の青色申告に係る帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず,あなたは青色申告に係る帳簿書類を提示されませんでした。 このことは,青色申告に係る帳簿書類の備付け,記録又は保存が,所得税法第148条《青色申告者の帳簿書類》第1項に規定する大蔵省令で定めるところに従って行われていないことになります。 したがって,同法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に該当しますので,平成7年分以降の青色申告の承認を取り消します。」(5) 原告は,平成10年8月27日,被告に対し,異議申立てを行ったが,被告は,同年11月20日,異議申立てを棄却する旨の異議決定を行った。 (6) 原告は,平成10年12月16日,国税不服審判所長に対し,審査請求を行ったが,同所長は,平成12年1月31日,審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行った。 (7) 原告は,平成12年3月17日,本訴を提起した。 2 主要な争点(1) 本件青色申告承認取消処分及び本件更正処分等の違法性(争点1)(2) 本件における推計の必要性及び合理性(争点2)第3 争点に対する判断 1 原告は,争点1に関し,①原告が本件帳簿書類の提示を拒否した事実はなく,A調査官が守秘義務を根拠に記帳補助者らの立会いの排除を求め,本件帳簿書類の内容等を確認することなく本件調査をうち切ったことは,調査担当者の裁量を逸脱するものであって,本件青色申告承認取消処分は違法である,②青色申告承認取消処分が取り消されれば,これを前提とする更正処分等は理由の附記を欠くことになるから,本件更正処分等も違法である旨主張する。 2 証拠(甲3,4の1~6,5,6の1~3,7,10,15,17の1~14 処分が取り消されれば,これを前提とする更正処分等は理由の附記を欠くことになるから,本件更正処分等も違法である旨主張する。 2 証拠(甲3,4の1~6,5,6の1~3,7,10,15,17の1~14,18の1~7,乙1,9,証人A,同B,原告本人,検証の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告の医療活動の概要原告は,往診中心の医療活動を行っており,日曜日を休診日として,午前8時30分から午後零時30分までを外来,午後1時から午後2時までを往診,午後2時から午後3時までを外来,午後3時から午後4時30分までを往診,午後4時30分から午後7時までを外来とし,午後7時以降も往診や外来の要請に応じていた。平成10年当時,1日平均の外来患者数は100名程度,往診患者数は15名程度であった。また,実際には,休診日である日曜日についても,往診や外来の要請に応じていた。 (2) 原告と宇摩民商との関係等ア原告は,従前から依頼していた税理士が老齢を理由に依頼を断ってきたことなどから,平成8年7月,宇摩民主商工会(以下「宇摩民商」という。)に入会した。 イ宇摩民商の事務局員であるBは,原告の入会以降,原告が開業している原告診療所の経理担当事務員に対して,伝票の書き方,金銭出納帳・売上帳・経費帳のつけ方,原始記録の保存方法等,記帳全般にわたって指導を行い,決算に当たっては,集計の仕方,売掛・買掛等の算入の仕方,減価償却の方法等について指導を行っており,記帳補助者として,取引先に関する事項を含む本件帳簿書類の内容について説明し得る知識を有していた(なお,宇摩民商は,原告診療所の総勘定元帳,金銭出納帳,決算書のコンピューターによる管理を委託されており,Bがこれを担当していた。)。 ウ他方,原告は,本件帳簿書類の内容につ る知識を有していた(なお,宇摩民商は,原告診療所の総勘定元帳,金銭出納帳,決算書のコンピューターによる管理を委託されており,Bがこれを担当していた。)。 ウ他方,原告は,本件帳簿書類の内容について十分に説明し得る知識を有しておらず,これまでBの指導のもとで記帳事務を行っていた経理担当事務員は平成10年3月に退職し,同年4月以降,新しい経理担当事務員が記帳事務を行うことになっていた。 (3) 原告に対する質問検査権の行使の方針等ア被告は,平成5年の開業以来,所得税の調査を行っていない原告診療所について,調査の必要があると判断して質問検査権を行使することとし,A調査官が本件調査を担当することになった。 イ A調査官は,約10年の税務調査経験があり,伊予三島税務署には平成8年7月から勤務していた。 ウなお,国税庁の方針を示した「税務運営方針」(昭和51年4月1日)の中の「調査方法等の改善」の項目には,「税務調査は,その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で,納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし,一般の調査においては,事前通知の励行に努め,また,現況調査は必要最小限にとどめ」などと記載されている。 (4) 平成10年(以下,同年中の出来事は月日で示す。)6月17日の臨場に至るまでの経過ア 4月15日(午後1時30分ころから同45分ころまで)A調査官は,原告方に無予告で臨場し,応対に出た原告に対して,調査に来た旨を伝えた。 原告は,「私は土日も働いているんです。体力的にも1日しか無理です。12時半まで診察をしているので,午後1時20分から午後2時の40分だけ時間をとりますので,その間に帳簿を見てください。」などと述べたことから,A調査官は,自らの調査経験上, にも1日しか無理です。12時半まで診察をしているので,午後1時20分から午後2時の40分だけ時間をとりますので,その間に帳簿を見てください。」などと述べたことから,A調査官は,自らの調査経験上,帳簿書類の確認を含めて40分で調査を完了することは不可能である旨を伝えた。 A調査官は,なおも原告が同様の求めを繰り返したことなどから,この日はこれ以上の進展が期待できないと判断し,原告に対して調査への協力を求めて調査を打ち切った。 イ 4月22日A調査官は,同日午後1時30分ころ,次回の臨場期日を調整するため,原告方に電話をかけたが,原告は往診のため不在であったことから,応対に出た原告診療所の受付の女性に対して,原告からA調査官に対して連絡してほしい旨を求めた。 原告は,同日午後3時6分ころ,A調査官に電話をかけ,「何回ですか。見に来られる回数をおしゃってください。」などと述べた。A調査官は,「回数は帳簿書類の量も見ないといけませんし,何回とは申せません。」などと回数の制限をしないように求めたが,最終的には,原告が「もう診察を始めますので,またにしてください。」などと述べたことから,次回の臨場期日を決めるにも至らなかった。 ウ 4月27日(午後1時22分ころから同40分ころまで)原告は,A調査官に電話をかけ,診療行為との兼ね合いから,調査の回数を4回,時間を午後1時から午後2時までとするように求めるとともに,「事務をしていた者が3月20日で退職していないんです。私ではわからないので,帳簿書類を見てもらっている宇摩民商の人に立会いを頼んでいますので認めてくださいね。」などと,Bの立会いを認めることを求めた。A調査官は,調査を担当する職員である自分には守秘義務が課せられており,第三者の立会いは自らが守秘義務違反に問われるおそれがあるので ので認めてくださいね。」などと,Bの立会いを認めることを求めた。A調査官は,調査を担当する職員である自分には守秘義務が課せられており,第三者の立会いは自らが守秘義務違反に問われるおそれがあるので認められないこと,仮に記帳担当者がいる場合は,必要があると認められるときはこちらから要請することなどを伝えたが,なおも原告が同様の求めを繰り返し,「宇摩民商の人に相談しますので時間をください。」などと述べたことから,次回の臨場期日を決めるにも至らなかった。 エ 4月28日(午後2時18分ころから同20分ころまで)原告は,A調査官に電話をかけ,5月13日の昼から半日時間を取るので,その日だけで調査を終えるように求めた。A調査官は,その日だけで調査を終える約束はできないこと,帳簿書類はすべて用意しておくこと,午後1時ころに臨場することなどを伝えて,次回の臨場期日を5月13日とすることは決まった。 オ 5月13日(午後1時ころから午後2時12分ころまで)(ア) A調査官は,C調査官とD調査官を同行して原告方に臨場し,本件帳簿書類が用意されている応接室に案内された。 (イ) A調査官は,応接室のテーブルの上に,「集計表」,「総勘定元帳」などと見出しの付いた,原告が本件帳簿書類であると説明する書類を認めたが,テーブルのソファーには原告ほか4名が,応接室に隣接する食堂(両部屋には高低差があり,一部は板壁で仕切られているものの,開け放たれている。)の椅子には2名が,それぞれ着席していることを確認した。 A調査官が,原告に対して,立会人について尋ねたところ,応接室の4名は,原告の父親(以下「父」という。),B,E,Fと自己紹介し,食堂の2名については,原告が原告の母親(以下「母」という。)と原告の弟(以下「弟」という。)であると紹介した。 A調査官は,原 の4名は,原告の父親(以下「父」という。),B,E,Fと自己紹介し,食堂の2名については,原告が原告の母親(以下「母」という。)と原告の弟(以下「弟」という。)であると紹介した。 A調査官は,原告に対して,調査に関係のない第三者を退席させて本件帳簿書類を提示してほしい旨を繰り返し求めたが,原告は,「第三者の立会いは認められています。立会いを認めないのは違法行為です。」などと述べて,立会人を退席させなかった。 両室の立会人も,「そこにいるDは『でっち上げ事件(宇摩民商の一会員が,伊予三島税務署員により公務執行妨害罪・傷害罪で告訴され,3月27日に不起訴処分になったというもの。)』に関係のあったやつや。」,「わざと転んで公務執行妨害なんて捏造しやがって。」などと発言したり,原告から渡されたポラロイドカメラを手に持って歩き回ったりした。 A調査官は,原告に対して,調査に関係のない第三者の立会いは守秘義務の関係上認められないので,第三者を退席させて本件帳簿書類を見れる状況にして調査に協力してほしい,調査に協力しないと青色申告承認の取消しもあり得る旨を伝えたが,原告は立会人を退席させなかった。 (ウ) A調査官は,このようなやり取りが繰り返された後,原告が「水掛け論はする暇がありません。後はこの人たちに任せますので進めてください。」などと述べて退席したことから,この日の調査を打ち切った。 (エ) なお,Eは宇摩民商の副会長,Fは宇摩民商の会計担当者であり,原告診療所において,母は薬局長,弟は事務長という立場にあった。 カ 5月20日(午後1時5分ころから同15分ころまで)A調査官は,C調査官を同行して原告方に無予告で臨場し,勝手口において,応対に出た原告に対して,「調査に協力していただこうと思って参りました。」などと来意を告げた。 A調 から同15分ころまで)A調査官は,C調査官を同行して原告方に無予告で臨場し,勝手口において,応対に出た原告に対して,「調査に協力していただこうと思って参りました。」などと来意を告げた。 A調査官は,原告が「第三者の立会いは法律に明文化されて認められている。」などと述べたことから,原告との間で前回同様のやり取りを行ったが,更に原告が「これからワクチン接種があるので時間がとれない。」などと述べたことから,この日の調査を打ち切った。 キ 5月28日(午後1時12分ころから同26分ころまで)A調査官は,C調査官を同行して原告方に無予告で臨場し,勝手口において,応対に出た原告に対して,調査に来た旨を告げた。 原告は,「帳簿書類は宇摩民商のBさんのところにあります。そこに行ってください。」などと述べて,本件帳簿書類を引き上げてほしいとのA調査官の求めに対しても,「私のところに置いておかないと違法なんですか。」などと述べて,これを断った。 A調査官は,なおも原告が「宇摩民商の人の立会いのもとに帳簿書類はお見せします。」などと述べたことから,この日も調査への協力が得られないと判断し,署独自の調査を進めざるを得ない旨を告げて,この日の調査を打ち切った。 ク 5月29日原告は,被告に対して,「調査担当者であるA署員は『質問検査権の行使をするかどうかは,職員の裁量に任されている。担当者にはすべての権限がある。私が認めなかったらダメだ。』などという発言を繰り返し,私の主張には耳を傾けず,一方的な調査を行おうとしています。」,「職員の裁量で何でも出来るのでしょうか。回答をお願いします。」などと記載された「税務調査に関する請願書」と題する文書を内容証明郵便物として送付した。 ケ 6月2日A調査官は,同日午後1時16分ころ,C調査官を同行して原告方に しょうか。回答をお願いします。」などと記載された「税務調査に関する請願書」と題する文書を内容証明郵便物として送付した。 ケ 6月2日A調査官は,同日午後1時16分ころ,C調査官を同行して原告方に無予告で臨場したが,原告は不在であったため,応対に出た母に対して,午後2時30分ころに電話をする旨を告げて,原告方を辞去した。 A調査官は,同日午後2時30分ころ,原告に電話をかけ,次回の臨場期日を調整していたが,原告が前記の内容証明に対する返事を求め,「とにかく今は診療中です。迷惑ですので切りますよ。」などと述べたことから,次回の臨場期日を決めるにも至らなかった。 コ 6月9日(午後1時15分ころから同29分ころまで)A調査官は,C調査官を同行して原告方に無予告で臨場し,勝手口において,応対に出た原告に対して,「帳簿書類を見せていただきに伺いました。」などと来意を告げた。 A調査官は,原告が「私は調査を受けるのが初めてで,何もかもよくわからないので,1回目だけ宇摩民商の立会いを認めてほしい。それでしたら時間を取ります。」などと述べたことから,これまでと同様,守秘義務違反に問われるおそれがある旨を伝えて,これを断った。 原告は,本件帳簿書類は宇摩民商にあるとして,これを提示しなかったが,A調査官に対し,立会人は別室にいればいいのかと尋ねたことから,A調査官は,別室にいて話し声が聞こえないのであれば調査ができる旨を回答した。 A調査官は,原告が宇摩民商と相談して2,3日中に連絡する旨述べたことから,この日の調査を打ち切った。 サ 6月10日(午前9時24分ころ)原告は,A調査官に電話をかけ,6月17日午後1時から時間をとったので来てほしい旨を伝えた。 シ 6月16日(午後2時ころから同20分ころまで)A調査官は,原告の取引銀行であ 9時24分ころ)原告は,A調査官に電話をかけ,6月17日午後1時から時間をとったので来てほしい旨を伝えた。 シ 6月16日(午後2時ころから同20分ころまで)A調査官は,原告の取引銀行である株式会社愛媛銀行金生支店に臨場し,原告の取引内容の調査等を行った。 (5) 6月17日の臨場(午後1時3分ころから同58分ころまで)ア A調査官は,C調査官を同行して原告方に臨場し,本件帳簿書類が用意されている応接室に案内された。 なお,原告は,A調査官から,立会人は別室にいて話し声が聞こえなければ構わないという回答を得ているとして,5月13日の臨場の際とは異なり,応接室と食堂の間に,原告診療所で使用しているナイロン製の衝立(以下「本件衝立」という。)を設置し,両部屋の間仕切りとしていた。 イ A調査官は,応接室のテーブルのソファーに着席したが,テーブルのソファーには原告のほか弟も着席し,A調査官の斜め後ろには母が座っており,食堂の椅子には父,E,B,Fが着席していることを確認した。A調査官は,応接室のテーブルの上に原告が本件帳簿書類であると説明する書類が置かれていたことから,原告に対して,本件帳簿書類の全部であることを確認した。A調査官は,原告に対して,本件帳簿書類を見せてもらうことを伝えるとともに,調査に関係のない第三者の退席を求めた。これを聞いた応接室の弟,食堂のE,Fは,「家族も退かんといかんのか。」などと述べたが,Bと父以外は,それぞれの場所から退席した。A調査官は,「まだおられますね。」などとBと父の退席を求めたが,原告は,「私では何もわからないので記帳補助者のBさんに別室(食堂)にいてもらっています。何か聞かれたときに,すぐに相談に行けるようにしています。」などとBの同席を求めた。A調査官は,応接室と食堂の間に襖戸を入れるなど からないので記帳補助者のBさんに別室(食堂)にいてもらっています。何か聞かれたときに,すぐに相談に行けるようにしています。」などとBの同席を求めた。A調査官は,応接室と食堂の間に襖戸を入れるなど,会話内容がBに聞こえないような何らかの手当てを求めたが,原告は,「ここには初めから戸はありません。」,「そこまで10メートルもあるじゃないですか。衝立も置いてあります。」などと述べるとともに,Bには会話内容は聞こえないと述べた。 A調査官は,Bとともに食堂にいた父が「何をごちゃごちゃ言いよるんや,むかっ腹が立つ。ぐずぐず言わんと見てくれたらええやろ。」などと述べたことを捉え,A調査官と原告の会話内容がBに聞こえる証拠であるとして,残っている立会人の退席を要請した。退席していたはずの弟も戻ってきていて,「家族も退けと言いよるんか。」などと述べたが,父と弟はその場所から退席した。 A調査官は,Bが残っていることから,原告との会話内容がBに聞こえるので調査を進めることができないとして,原告に対して,Bを退席させるよう重ねて求めたが,原告が依然として「話は聞こえません。」などと述べたので,C調査官をBのいる位置まで行かせ,A調査官が普通の大きさと称する声を出し,その位置では原告との会話内容がBに聞こえることを確認して,原告に対して,聞こえる旨を伝えた。Bが「テレビをつけたら聞こえんがな。」などと述べたところ,退席していた弟が戻ってきて,A調査官の斜め前にある大型テレビをつけ,音声を流した。A調査官は,原告に対して,隣の部屋等での調査を求めたが,原告は,「ここは納戸ですよ。」,「片付けても納戸ではやりたくない。」,「この家で一番離れたところはトイレか風呂しかないでしょう。」などと述べて,これを断った。 戻ってきていた母は,このようなやり取りを見て,原告 は納戸ですよ。」,「片付けても納戸ではやりたくない。」,「この家で一番離れたところはトイレか風呂しかないでしょう。」などと述べて,これを断った。 戻ってきていた母は,このようなやり取りを見て,原告に対して,「そしたら,二階でしてもらったら。」などと述べた。A調査官は,原告に対して,「二階があるんですか。二階でしたら話は聞こえないでしょうね。そちらの方々に二階に行っていただいても結構ですし,私どもが行っても構いません。」などと述べたが,原告は,立会人等と相談した後,「二階はプライベートな部屋です。」などと述べて,これを断った。 A調査官は,再び原告に対して,守秘義務が守れるような状況で本件帳簿書類を見せてほしいこと,このような状況では青色申告承認の取消しの要因になることを伝えた。退席していた父が戻ってきて,「30分も経っとるからもう終わったと思ったのに,まだ何も見ていないのか。」などと述べて,原告とのやり取りに加わってきた。A調査官は,これ以上この場で調査を進めることはできないと判断し,原告に対して,「帳簿書類を貸していただけませんか。」などと述べて,本件帳簿書類を預かって調査することを求めたが,原告は,「ここにあるのは私のプライベートですよ。それこそプライベートの侵害だ。」などと述べて,これを断った。 ウ A調査官は,再び原告に対して,立会人等を退席させた上で本件帳簿書類を提示することを求めるとともに,調査に協力しなければ青色申告承認の取消しの要因になることを伝えたが,なおも原告が,Bが食堂に控えていることを前提とした調査を求めたことなどから,これ以上の調査への協力は得られないと判断し,この日の調査を打ち切った。 エ Bは,A調査官の調査の際,上記イ以上に,食堂を歩き回ったり,応接室をのぞき込んだり,声をかけたりするなど,積極的に調査 ,これ以上の調査への協力は得られないと判断し,この日の調査を打ち切った。 エ Bは,A調査官の調査の際,上記イ以上に,食堂を歩き回ったり,応接室をのぞき込んだり,声をかけたりするなど,積極的に調査を妨害するような言動をとったことはなかった。 オなお,検証(平成12年7月26日実施)の結果によれば,①上記イの原告,A調査官の位置からBの位置までは約10メートルの距離があり,②A調査官の位置からは,本件衝立と仕切壁の間を通じて,Bの位置が見える状況にあり,③原告,A調査官の位置での会話内容のBの位置における聴取状況は,次のようなものであったことが認められる。 (ア) 普通に会話した場合,Bの位置では,神経を集中すると会話内容は聞こえる。 (イ) 少し声を落として会話した場合,Bの位置では,会話内容はとぎれとぎれで一部聞き取れない部分もあるが,概ね聞こえる。 (ウ) 普通に会話した場合で,大型テレビを普通の音量でつけた場合,Bの位置では,テレビの音と重なっているときは,会話内容は聞こえない。ただし,重なっていないときは,会話内容は聞こえる。 (エ) 少し声を落として会話した場合で,大型テレビを普通の音量でつけた場合,Bの位置では,会話内容は聞こえない。 (6) 6月17日の臨場後の経過ア 6月23日(午後1時10分ころから同13分ころまで)A調査官は,原告に電話をかけ,6月25日午後1時ころに臨場したい旨を伝えたが,その後原告から25日は不都合である旨の電話があり,次回の臨場期日は翌日の26日と決まった。 イ 6月26日(午後1時2分ころから同25分ころまで)(ア) A調査官は,C調査官を同行して原告方に臨場し,本件帳簿書類が用意されている応接室に案内された。 なお,原告は,6月17日の臨場の際と同様,応接室と食堂の間に,本 ろから同25分ころまで)(ア) A調査官は,C調査官を同行して原告方に臨場し,本件帳簿書類が用意されている応接室に案内された。 なお,原告は,6月17日の臨場の際と同様,応接室と食堂の間に,本件衝立を設置し,両部屋の間仕切りとしていた。 (イ) A調査官は,応接室のテーブルのソファーに着席したが,テーブルのソファーには原告のほか父,弟も着席し,A調査官の斜め後ろにはEが座っており,食堂の椅子にはBが着席していた。A調査官は,応接室のテーブルの上に原告が本件帳簿書類であると説明する書類が置かれていることを確認し,これまでと同様,原告に対して,守秘義務違反に問われるおそれがあるので調査に関係のない第三者に退席してもらうことを求めたが,父がポラロイドカメラを持ち出してA調査官らを撮影しようとしたことから,これを制止するとともに,再び原告に対して,調査に関係のない第三者の退席を求め,これに応じない場合には青色申告承認の取消しの要因になることを伝えた。 (ウ) A調査官は,Eだけは退席したものの,Bらが残っていたことから,再び原告に対して,会話内容がBらに聞こえる状況では自らが守秘義務違反に問われるおそれがあるので調査を進めることができないことを伝えたが,なおも原告が,Bが食堂に控えていることを前提とした調査を求めたことなどから,これ以上の進展は望めないと判断し,調査を打ち切った。 3 以上の事実をもとに検討する。 (1) 青色申告制度は,納税者に対し,帳簿書類の備付け,記録及び保存が正しく行われていることを前提として,種々の税法上の特典を与える制度であるから,税務署長が,帳簿書類の備付け,記録及び保存が正しく行われていることを確認することができる場合にのみ,納税者に上記の特典を与える趣旨であると解される。したがって,税務署長は,青色 る制度であるから,税務署長が,帳簿書類の備付け,記録及び保存が正しく行われていることを確認することができる場合にのみ,納税者に上記の特典を与える趣旨であると解される。したがって,税務署長は,青色申告者が正当な理由なく帳簿書類の提示要求を拒否し,これにより上記の確認ができない場合には,所得税法150条1項1号にいう帳簿書類の備付け,記録及び保存が大蔵省令で定めるところに従って行われていないとして,青色申告の承認を取り消すことができるものと解するのが相当である。そして,税務調査の際,被調査者が帳簿書類を税務署職員である調査担当者に提示したとしても,税理士以外の第三者の立会いにより調査担当者による帳簿内容等の確認に支障を生じるおそれがあるときは,調査担当者は被調査者に対して第三者の立会いの排除を求めることができるというべきであり,被調査者がこれに応じないために調査担当者が合理的な判断に基づいて調査を打ち切った場合にも,税務署長は,上記のような確認ができない場合として,青色申告の承認を取り消すことができるものと解される。 もっとも,青色申告承認の取消しが納税者に与えられた特典を剥奪するものであり,帳簿書類の単なる提示拒否が青色申告承認の取消事由とはされていないことなどにかんがみると,青色申告承認の取消事由の認定は慎重になされるべきであり,第三者の立会いの可否が調査担当者の合理的裁量に委ねられているとしても,当該場面における被調査者と調査担当者の利害等が具体的に衡量される必要があるというべきである。 (2)アこれを本件についてみると,5月13日,6月17日,同月26日の各臨場の際には,A調査官が本件調査を行うつもりで原告方の応接室に入り,テーブルの上には本件帳簿書類が置いてある状態にあったところ,A調査官が,本件調査を進めるに当たって,まず 17日,同月26日の各臨場の際には,A調査官が本件調査を行うつもりで原告方の応接室に入り,テーブルの上には本件帳簿書類が置いてある状態にあったところ,A調査官が,本件調査を進めるに当たって,まずは自らの守秘義務の見地から,本件調査に関係のない第三者の排除を求めたことは,その限りにおいて,裁量の範囲内の行為であるということができる。 しかしながら,立会いの排除を求められた者のうち,Bについては,原告の記帳補助者の立場にあったのであるから,本件調査に関係のない第三者であるということはできない。そして,少なくとも,6月17日の臨場の際には,A調査官の要請を踏まえて,応接室と食堂の間に本件衝立が設置され,応接室には原告,A調査官,C調査官,食堂には記帳補助者であるBのみが残った状態になったのであり,その際,原告がBの立会いを認めなければ本件帳簿書類の提示を拒否するといった言動をとったことはなく,また,Bが食堂を歩き回ったり,応接室をのぞき込んだり,声をかけたりするなど,積極的に調査を妨害するような言動をとったこともなかったのであるから,本件帳簿書類の内容等の確認に支障を生じるおそれがあったとは直ちには認め難く,A調査官にその意思があれば,本件調査を進めることができたのではないかと考えられる。 イ被告は,Bが記帳補助者であるとしても,法律上の守秘義務を負わない第三者であり,Bを立ち会わせることはA調査官らの守秘義務(国家公務員法100条,所得税法243条)違反の結果を招くことになるので,本件帳簿書類の内容等を確認することができなかった旨主張する。 しかしながら,Bは記帳補助者として,もともと取引先に関する事項を含む本件帳簿書類の内容について説明し得る知識を有していたのであるから,仮にBがA調査官らと原告との間の会話内容を聴取し得たとして 。 しかしながら,Bは記帳補助者として,もともと取引先に関する事項を含む本件帳簿書類の内容について説明し得る知識を有していたのであるから,仮にBがA調査官らと原告との間の会話内容を聴取し得たとしても,取引先の秘密を第三者に漏洩したなどとして,実際にA調査官らが守秘義務違反に問われる可能性は極めて低いものであったと考えざるを得ない。A調査官は,原告がBは記帳補助者であり,本件調査を受けるためにはBの協力が必要である旨訴えているにもかかわらず,その真否等を確認することなく立会いの排除を求めているが,このようなA調査官の態度は,税理士以外の第三者一般については,事情の如何にかかわらず常に帳簿内容等の確認に支障を生じるおそれがあるというに等しいものであって,調査担当者の一般的・抽象的な守秘義務のみを根拠にして,被調査者の現実的な私的利益を一方的に制限するものであるといわざるを得ない。本件における被調査者と調査担当者の利害等を具体的に衡量すると,A調査官としては,本件衝立が設置され,食堂には記帳補助者であるBしか存在していない状況を前提として,まずは本件調査を進め,その進行途中において,なおも現実に守秘義務違反に問われる可能性のある事項について調査が及ぶ場合には,その段階で本件帳簿書類の内容等の確認に支障を生じないような方法を講じるべきであったというべきであり,にもかかわらず,A調査官においては,原告がBの立会いとその方法等に固執していることに執着するあまり,逆にBの立会いの排除に固執し,提示されていた本件帳簿書類の内容等を確認しようとしなかったものと評価せざるを得ない(なお,A調査官は,6月17日の臨場以外にも原告方に臨場し,原告に対して説明や説得を行っているが,その際の言動からして,6月17日の臨場と同様の状況では本件調査を進める意図は と評価せざるを得ない(なお,A調査官は,6月17日の臨場以外にも原告方に臨場し,原告に対して説明や説得を行っているが,その際の言動からして,6月17日の臨場と同様の状況では本件調査を進める意図はなかったことがうかがえるから,これらの説明や説得行為を重ねたからといって直ちにA調査官が本件帳簿書類の内容等を確認するために努力を尽くしたなどと評価することはできない。)。 ウその他,前記認定の原告の態度(原告は,本件調査に必ずしも協力的であるとはいい難く,宇摩民商関係者を含め,A調査官との対応に穏当さを欠くきらいがないとはいえないが,A調査官と電話あるいは直接口頭で打ち合わせるなどして,一貫して,本件調査には応ずる姿勢を示していること),Bの立会いの態様・本件帳簿書類への関与の程度,A調査官らの守秘義務違反の具体的可能性等にかんがみると,A調査官がBの立会いの排除に拘泥して本件調査を進めず,最終的に本件調査を打ち切ったことは,合理的な判断に基づくものであったとは認め難い。 そうすると,原告が正当な理由なく本件帳簿書類の提示要求を拒否し,これにより被告が帳簿書類の備付け,記録及び保存が正しく行われていることを確認することができなかったとはいえず,被告が処分理由として主張する事実の存在を肯定することはできないから,本件青色申告承認取消処分は違法であり,取消しを免れないというべきである。 4 本件更正処分等は本件青色申告承認取消処分を前提として行われているのであるから,本件青色申告承認取消処分を違法として取り消すべき以上,本件更正処分等も違法なものとして取り消されるべきである。 第4 結論以上によれば,原告の本訴請求は,その余の争点2(本件における推計の必要性及び合理性)を判断するまでもなく理由があるから,これを認容することとして,主文の として取り消されるべきである。 第4 結論以上によれば,原告の本訴請求は,その余の争点2(本件における推計の必要性及び合理性)を判断するまでもなく理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。 松山地方裁判所民事第2部裁判長裁判官豊永多門裁判官中山雅之裁判官末弘陽一

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る