【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人両名の上告趣意第一点について。 原判決の所論第一事実に摘示するところによれば、原判決は、被告人が同判示の ごとく
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人両名の上告趣意第一点について。 原判決の所論第一事実に摘示するところによれば、原判決は、被告人が同判示のごとく(1)組合長D外七七名に対して出勤停止処分をなし(2)次で同人外七五名を解雇したのは、被告人が右全員に対して、同人等が判示労働争議に参加した責任を問い、これら鉱員労働組合員に弾圧を加え、組合の団結を破壊してこれを弱体化せしめようとの意図の下に、為されたものであるとするものであることは判文上明白である。ただ右組合員中には同判示のごとく、争議後において不当怠業をなした者もあつたので、これらの者に対しては右怠業の責任を問う意図もあつて、前記のごとき不利益処分に出でた旨を判示したに過ぎないのであつて、論旨のごとく、右不利益取扱を受けた者の中に、不当怠業責任のみを問われたものの存しないことは、判文上おのづから明かである。 しかして、判示のごとく、使用者が労働者のなした労働争議に対する責任を問い、労働組合員に弾圧を加え、組合の団結を破壊して、これを弱体化せしめようとする意図の下に、労働者に対して不利益取扱をした場合においては、たとい、右意図の外に組合員の不当怠業行為の責任をも併せて問う意図があつたにもせよ、単に不当怠業行為の責任のみを問うて不利益取扱をなした場合とは異つて、労働者が労働組合員であること、若は労働組合の正当な行為をなしたこと又は労働争議をなしたこと等と右の労働者に対する不利益取扱との問には因果関係が存することが明かであるから、右使用者の労働者に対する不利益取扱行為は労働組合法第一一条又は労働関係調整法第四〇条に違反するものと認むべきである。従つて、原判決が前記の如き被告人の所為を認定してこれを前記各法条に違反するものと判示したことについ- る不利益取扱行為は労働組合法第一一条又は労働関係調整法第四〇条に違反するものと認むべきである。従つて、原判決が前記の如き被告人の所為を認定してこれを前記各法条に違反するものと判示したことについ- 1 -ては、少しも法の解釈を誤つた違法はなく、その他所論の如き理由不備又は審理不尽の違法はない。 同第二点について。 原判決の認定した被告人の本件犯罪行為は、原判決挙示の証拠を綜合してこれを認めるに充分であつて、所論のように、証拠に基かないで事実を認定した違法又は採証の法則に違反した点は認められない。論旨は、被告人のなした判示労働組合員に対する不利益取扱が単に右組合員等の判示の如き不当怠業行為の責任のみを問うてなされたものである旨縷々主張するものであるが、原判決は前点説明の如く、判示組合員の一部に対しては判示の如き不当怠業行為の責任をも問う趣意のあつたことはこれを否定するものではないが、尚同人等に対して不利益取扱をなしたのは、単にこの不当怠業責任のみを問うたものではなく、これと併せて、判示争議責任等をも問う趣旨に出たものであること並にその他の組合員に対しては専ら判示争議責任等を問ふ趣旨に出たものであることを認定したものであるから、論旨は原審の認定せざる事実を強調するに過ぎず、畢竟原審の事実誤認を主張するものに外ならないから、適法な上告理由とならない。 同第三点について。 A炭鉱株式会社鉱業所と同鉱業所職員をもつて結成せられたB炭鉱職員労働組合との間には、昭和二一年一一月労働協約が締結せられ、その協約において、いわゆるクローズド・シヨツプ制の規定がなされていること、右組合の組合員であつたE外一三名が昭和二二年九月下旬頃及び同年一〇月初旬頃の二回に亘つて、右職員労働組合より除名せられ同組合は会社に対して同人等被除名者の解雇を要求した事実は本 なされていること、右組合の組合員であつたE外一三名が昭和二二年九月下旬頃及び同年一〇月初旬頃の二回に亘つて、右職員労働組合より除名せられ同組合は会社に対して同人等被除名者の解雇を要求した事実は本件証拠上うかがわれるところである。 しかして、使用者が労働組合との間に締結した労働協約において、いわゆるクローズド・シヨツプ制の規定を設けた場合に組合がその組合員を除名したときは、別段- 2 -の事情のないかぎり使用者は被除名者を解雇すべき義務あることは所論のとおりである。しかしながら、クローズド・シヨツプの規約がある場合においても組合から除名された者に対する、使用者の解雇その他の不利益取扱は、すべて労働関係調整法第四〇条に違反しないものと即断することはできない。かゝる場合でも、右クローズド・シヨツプ制に関する規約の具体的内容、組合と使用者との関係、組合員除名の理由、右の除名が果して組合の自主性においてなされたかどうか、不利益取扱をした使用者側の意図等を十分に審理検討した上、右不利益取扱が労働者の争議権を不当に侵犯するものであるかどうかを基準として、その不利益取扱が同法第四〇条の違反となるかどうかを決しなければならないのである。 原判決が本件において右労働協約におけるクローズド・シヨツプ制の存在及び前示除名並びに解雇要求等の事実が窺われるにかゝわらず、前述のごとき諸種の事情関係につき判文上何等説明するところなくして、本件不利益取扱をもつて、直ちに同条違反となるものと判示したことは、判決説示として委曲をつくしたものとはいい難いけれども、本件記録によれば、原審は、如上各事情についても十分に審理検討を加え殊に判決挙示の原審証人Eに対する訊問調書中の供述記載によつて判示職員労働組合の同人外一三名に対してなした除名は同組合において自主的になしたもので 、原審は、如上各事情についても十分に審理検討を加え殊に判決挙示の原審証人Eに対する訊問調書中の供述記載によつて判示職員労働組合の同人外一三名に対してなした除名は同組合において自主的になしたものでないことを確定した上遂に右クローズド・シヨツプ制並除名等の事情あるにかゝわらず、本件不利益取扱は同条違反に該当するものであるとの結論に達したものと推認することができる。もとよりクローズド・シヨツプ制に関する如上の点は、旧刑訴法第三六〇条第二項にいわゆる「法律上犯罪ノ成立ヲ阻却スベキ原由」には該らないのであるから右に関する事実上の主張に対し、判決において、特にその判断を示さなかつたからといつて、これがためにその判決に所論のごとき違法ありとすることはできない。 同第四点について。 - 3 -判示A炭鉱株式会社C鉱業所長の追放を主張して労働争議をなす場合においても、それが専ら同所長の追放自体を直接の目的とするものではなく、労働者の労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図るための必要的手段としてこれを主張する場合には、かゝる行為は必ずしも労働組合運動として正当な範囲を逸脱するものということを得ないものと解すべきである。 原判決は、判示争議において、判示組合員等の主張するところは「スライド」制増賃金の支払などの経済的要求の貫徹に終始し判示鉱業所長たる被告人の追放といふことはその主眼でなかつたことを認めたものであつて、しかもこの事実は、原判決の認定にかゝる判示争議の経緯によつてこれを看取し得るところであるから、原判決が、判示組合員等の判示争議は労働組合運動又は労働運動として正常な範囲を逸脱したものでないと判断したのは少しも違法ではない。論旨は、判示組合員等の主張が経済的要求に終始し、判示鉱業所長の追放はその主眼でなかつたとの原判決の確定した事実を争 は労働運動として正常な範囲を逸脱したものでないと判断したのは少しも違法ではない。論旨は、判示組合員等の主張が経済的要求に終始し、判示鉱業所長の追放はその主眼でなかつたとの原判決の確定した事実を争うことに帰するものであつて理由がない。 同第五点について。 労働組合法第一一条又は労働関係調整法第四〇条にいわゆる不利益な取扱とは、たとえば、減俸昇給停止等の経済的待遇に関して不利な差別待遇を与えるのみでなく広く精神的待遇等について不利な差別的取扱をなすことをも含むものと解すべきである。従つて、使用者が労働者に対して出勤停止処分をなした場合においては、たとえ、これによつて給与その他の経済的待遇について、不利益な結果をきたさなくとも、右法条にいわゆる不利益な取扱に当るものと解して妨げない。殊に、原判示によれば、被告人は判示組合員D外七七名に対して、出勤停止処分をなし、因つて給与の減少をきたさしめたことを認定してゐるのであつて、且挙示の証拠によれば判示組合員等は右出勤停止処分によつて本給のみの支給を受くるに止まり、家族手当、入坑料を受け得ないこととなつたことが認め得られるのであるから、原判決が- 4 -右の出勤停止処分を目して前記法条にいわゆる不利益な取扱であると解したことは少しも違法でない。 同第六点について。 原判決は、結局被告人が、争議に対する責任を問い組合員に弾圧を加え組合の団結を破壊してこれを弱体化せしめようとする趣旨の下に、判示鉱業労働組合員D外七〇余名、及び鉱業所職員組合員E外一三名に対して、それぞれ、出勤停止処分及び解雇をなしたことを認定したものであることは、前段説明のとおりであつて論旨はくりかへして、右組合員等に不当怠業の責任あり、本件処分は右怠業責任を問うためになされたものであることを論述し、これを前提として、原判決を攻撃す 定したものであることは、前段説明のとおりであつて論旨はくりかへして、右組合員等に不当怠業の責任あり、本件処分は右怠業責任を問うためになされたものであることを論述し、これを前提として、原判決を攻撃するに過ぎず、畢竟、原審の専権に属する事実認定を非難するものであつて、上告適法の理由とならない。 以上の理由により、刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条に従い主文のとおり判決する。 右は全裁判官一致の意見である。 検察官宮本増蔵関与昭和二四年四月二三日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官藤田八郎- 5 -
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