主文 一被告が平成一〇年二月二四日付けでした原告の弁護士名簿登録請求を拒絶する旨の決定を取り消す。 二訴訟費用は、被告の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨主文と同旨二請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二事案の概要一本件は、一四年間にわたり香川大学法学部教授の職にあった原告が、定年を迎えるに際して沖縄県弁護士会の進達により被告日本弁護士連合会に弁護士名簿への登録の請求をしたところ、被告がこれを拒絶する決定をしたので、この登録拒絶決定の取消しを請求した事案である。 二争いのない事実及び証拠上容易に認定することができる事実 1 原告の経歴は、別紙「経歴表」記載のとおりであり、昭和五八年四月から平成九年三月まで、香川大学法学部において無体財産権法(以下「知的財産権法」ともいう。)の講義を担当してきた。その間に原告が公表した法律学に関する論文著作は、別紙「経歴表」記載のとおりである。 2 原告は、沖縄県弁護士会に入会しようとして、平成九年九年一〇日、同会の進達により、被告に対して弁護士名簿への登録を請求した。 3 被告は、右請求に対して、平成一〇年二月二四日の日本弁護士連合会資格審査会の議決に基づき、同日付けで原告の弁護士名簿登録請求を拒絶する旨の決定をし、同月二七日これを原告に告知した。右の決定の理由の要旨は、「原告が香川大学で担当してきた講義及び研究業績は、特許法など主として無体財産権法に限定されているところ、そのような無体財産権法は日本弁護士連合会審査基準に定める基本的実体法又は手続法に該当しないものと認められ、また、その内容からこれらの習得を前提とするものと明らかに認めることもできないから、弁護士法第五条第三号に規定する 日本弁護士連合会審査基準に定める基本的実体法又は手続法に該当しないものと認められ、また、その内容からこれらの習得を前提とするものと明らかに認めることもできないから、弁護士法第五条第三号に規定する『法律学』に該当しない。」というものであった(甲第二号証)。 三争点 1 弁護士法(昭和二四年法律第二〇五号。以下「法」という。)五条三号及び弁護士法第五条第三項に規定する大学を指定する法律(昭和二五年法律第一八八号。 以下「大学指定法」という。)の趣旨 2 日本弁護士連合会の法五条三号の資格審査基準(以下「資格審査基準」という。)の解釈及びその適法性 3 原告について弁護士名簿登録を拒絶する事由があるか(知的財産権法学は法五条三号にいう法律学に当たるか。)。 四原告の主張 1 法五条三号の「大学」を定める大学指定法がこれを「学校教育法(昭和二五年法律第一八八号)による大学で法律学を研究する大学院の置かれているもの」と規定しているのは、そのような大学の学部に一定期間法律学の教授等として在職した者は、実定法一般に通ずる法律的思考様式を体得し、相当範囲について法律実務家としての必要な程度の知識を有していると認められるからである(東京高等裁判所昭和四〇年一月二九日判決行裁集一六巻一号一〇三頁)。したがって、法五条三号に該当する大学教授らが厳密に法四条の「司法修習生の修習を終えた者」と同質同等の能力を有していなければならないというわけではない。法五条三号をそのように狭く解釈することはできない。 2 被告は、法五条三号の資格審査に関して審査基準を有しているところ、右資格審査基準によれば、そこでいう法律学は、「弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法(現段階においては、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法を指す。 、右資格審査基準によれば、そこでいう法律学は、「弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法(現段階においては、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法を指す。)、あるいは、これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」というものであるが、そもそも、このような基準の定め方は、法定の資格要件を被告理事会の議決により縮小するものであり、違法である。 また、知的財産権法を右の例示に加えず、また、「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」にも当たらないと解釈することは誤りであり、違法である。法五条三号は、一定の要件を具備する大学教授等が高度の法律的素養を有することを推認しているのであり、最高裁判所第二小法廷昭和四三年一二月六日判決民集第二二巻第一三号二九〇八号の判例は、法五条三号の適用を受ける学者の担当科目は「高度な専門的なもの」を指すとしながら、その担当科目が高度で専門的か否かについては個別に内容を審査する方法を採用せず、「法律学研修の施設に当たる学部において、その研修の課程をなす授業科目」であればよいとして、その教授等が所属する学部の性質によって判断すべきものと解している(なお、その原審である前掲東京高等裁判所判決は、「たとえば憲法、民法等を対象とする実定法学については、おのおのが一応完成された理論的体系を有するのであるから、それを対象とする法律学である限りこれを担当する教授または助教授の講義ないし研究の内容に立ち入るまでもなく、一応前記のような弁護士法の趣旨を満足させるに足るものと推認することができる。」として「一応完成された理論的体系を有するもの」であることを基準にしているが、前記最高裁判所の判例は、この見解を取っていない。もっとも、知的財産権法は、民法、民事訴訟法等 と推認することができる。」として「一応完成された理論的体系を有するもの」であることを基準にしているが、前記最高裁判所の判例は、この見解を取っていない。もっとも、知的財産権法は、民法、民事訴訟法等の予備知識なしには修得研究ができない科目であり、「一応完成された理論的体系を有するもの」であるから、右東京高等裁判所の判決の基準によっても「法律学」に当たると解すべきである。)。したがって、登録請求を受けた被告が、請求者の研究した法律学が基本的実体法又は手続法の修得を前提とするものであるか(あるいは密接に関連しているか)、どの程度習得したかを審査することは予定されず、被告の右の審査基準は違法である。 3 右資格審査基準によることが許されるとしても、知的財産権法は、右資格審査基準にいう「弁護士の実務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法」にも該当する(「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」にも該当する。)。無体財産権法は、民法、民事訴訟法、国際私法、労働法、行政法、行政事件訴訟法、刑法に関連した応用科目であり、これらの実定法の知識の習得を伴うものであるから、法五条三号の「法律学」に含まれると解すべきであるし、被告の審査基準にいう「弁護士の実務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法」、また、「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」にも該当する。 すなわち、特許権について見ると、その主体に関する要件は、権利能力、権利者適格などの概念が用いられ、特許を受ける権利の性質には物権の概念が、その権利移転については所有権移転の解釈が前提となっている。権利侵害については、不当利得、不法行為の規定の適用があり、権利譲渡や実施許諾契約については瑕疵担保、不完全履行、保証などの契約責任の規定や解釈理論が適用される。特許権の効力 釈が前提となっている。権利侵害については、不当利得、不法行為の規定の適用があり、権利譲渡や実施許諾契約については瑕疵担保、不完全履行、保証などの契約責任の規定や解釈理論が適用される。特許権の効力たる排他権、独占権は物権概念を基本に構成されており、侵害に対する民事救済については、民法の不法行為の規定が適用されることを前提にその特則が規定されており、差止請求権は、物権的請求権の概念に基づいて規定されている。さらに専用実施権の設定は物権設定契約の、通常実施権の許諾契約は債権契約の概念に基づいて規定されている。その他、手続法の部分は、民事訴訟法の準用が多く、当事者能力、手続能力は、民事訴訟法、民法の概念を前提とするものである。その他、審査、審判、再審には民事訴訟法の中断、中止の規定が、送達については同法の送達の規定がそれぞれ準用され、審判は、当事者対立構造を有する民事訴訟類似の手続である。審判の結論である審決は行政処分の効力があり、特許行政訴訟は、行政事件訴訟法の適用を受け、抗告訴訟として争われる。また、既に発生した特許権等に関する紛争は、民事訴訟により解決されることとなる。このように無体財産権法は、基本的実定法及び手続法を前提にするものであり、その学問がこれら実体法、手続法の習得を前提とするものであることは明らかである。 また、近時は知的財産権法の社会的重要性が増している。被告自身、その知的所有権委員会においてこの分野の研究をし、「工業所有権仲裁センター」を設立して、原告に仲裁人候補者となるよう委嘱している事実があり、無体財産権法が社会的に極めて重要であることは、被告自身認めているところである。被告がこれを前記「弁護士の実務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法」、「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」に当たらないと て重要であることは、被告自身認めているところである。被告がこれを前記「弁護士の実務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法」、「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」に当たらないということは禁反言の原則に反するというべきである。 4 原告は、昭和五八年四月から平成九年三月までの一四年間にわたり、香川大学法学部教授として、毎年、無体財産権法講義四単位、研究演習六単位を担当し、また、昭和六〇年四月から平成九年三月まで一二年間、同大学大学院法学研究科において無体財産権法特殊講義四単位、研究演習六単位を担当してそれぞれ法律学の研究指導に従事してきた。知的財産権法は、前述のとおり、一応の完成された理論的体系を有するものであり、民法、民事訴訟法等の習得なくしてこの講義を担当し、研究することはできないものであるところ、原告の前記経歴と原告が昭和四四年から昭和五八年まで神戸商科大学において一四年間にわたって民法等の講義を担当してきたこと、その他別紙経歴表のとおりの著書論文の執筆があることに照らせば、原告には民法、民事訴訟法の分野全体について「高度の法律的素養」があるものと推認されるべきである。 5 また、本件拒絶決定は、被告の従前の登録を認めた先例との間においても平等原則に反しており、不当である。すなわち、国際法、海法、国際取引法、税法、経済法について、請求人の登録が認められているが、これらに比較すれば、知的財産権法についても基本法との密接関連性が認められてしかるべきである。 6 被告は、弁護士会の高度の自治権から資格審査に裁量権があると主張するが、右裁量権は自由裁量ではない。法五条三号の「法律学」の解釈には裁量権は及ばず、認定事実の要件への当てはめについてのみ裁量権があるにすぎない。したがって、原告の担当した知的財産権法が「法律学」 るが、右裁量権は自由裁量ではない。法五条三号の「法律学」の解釈には裁量権は及ばず、認定事実の要件への当てはめについてのみ裁量権があるにすぎない。したがって、原告の担当した知的財産権法が「法律学」に当たるか否か、原告が基本的実体法及び手続法の習得をしているか否かついては、被告の裁量権が及び得るとしても、前述のとおり、被告はこれらの点で裁量権の行使を誤っており、本件登録拒絶決定は違法である。 五被告の主張 1 法五条三号は、原則的な弁護士資格を定めた同法四条の例外的な特則規定として設けられている。その趣旨は、法四条に規定する「司法修習生の修習を終えた者」でなくても、一定の人的、物的設備のある大学の学部、専攻科又は大学院で法律学を五年以上教授する職にあった者であれば、実定法一般に通ずる基本的な法律的思考様式を体得し、法律実務家として必要な知識を有すると合理的に期待されることから、その者に弁護士資格を付与しようとするものである。したがって、この趣旨からいえば、法五条三号の「法律学」はすべての法律学をいうものではなく、弁護士の職務に必要な基本的実体法又は手続法あるいはこれらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学でなければならない。 もともと弁護士となるためには、司法試験に合格し司法修習生の修習を終えることが必要なのであるから、法五条三号の法律学につき右のように「弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法あるいはこれらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学でなければならない。」という場合の基本的実体法又は手続法の習得は、単に大学や大学院で一般的に学ぶ程度では足りず、基本的実体法又は手続法を専門的、体系的に深く考究したと認められることが必要であり、少なくとも司法修習生の修習を終えた者と同等の法律実務家としての能力を有 に大学や大学院で一般的に学ぶ程度では足りず、基本的実体法又は手続法を専門的、体系的に深く考究したと認められることが必要であり、少なくとも司法修習生の修習を終えた者と同等の法律実務家としての能力を有していなければならないものと解される。 2 そこで、被告においては、昭和五〇年九月二〇日の理事会において「法五条三号の審査基準」を決定したが、その内容は、「弁護士法五条三号に定められた教授又は助教授とは、公法、民事法、刑事法等の基本的な法律学を研究することを目的とし、それに必要な人的、物的設備を備え、これに基づき実質的に研究機能を果たしている大学院のある大学及び旧大学令による大学で、法律学の研究を目的とする学部、専攻科又は大学院において、弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法(現段階においては、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法を指す。)、あるいは、これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学の教授又は助教授の職に五年以上在った者をいう。」というものであるところ、これは、法五条三号の立法趣旨から同号の解釈を明らかにしたものであり、その法意を離れてこれを縮小したものではない。 3 ところで、被告には高度の自治権が認められており、その資格審査会にも弁護士の登録、登録換え、登録取消しの各請求に際して必要な審査を行う権限と義務がある(弁護士法五五条)。被告において登録の請求に対する資格審査基準を設け、すべて登録請求者に審査会の審査を受けるべきものとしたのは、公正な運用を図り、右のとおり合理性を有する資格審査基準により、全国的な判断の不統一が生ずることを防止しようとしたものである。 また、法五条三号は、司法修習生の修習を経ることなく、弁護士資格を付与するものであるから、司法試験を回避する迂回路と 審査基準により、全国的な判断の不統一が生ずることを防止しようとしたものである。 また、法五条三号は、司法修習生の修習を経ることなく、弁護士資格を付与するものであるから、司法試験を回避する迂回路として機能する危険性がある。これらの事情をも考慮すると、法五条三号を拡大解釈することはできないというべきである。 4 特許法を始めとする知的財産権法が産業界において重要な地位を占めていることはいうまでもないが、特に特許法の領域は、主として理科学面、技術的要素に関して規定するものであり、基本的実体法又は手続法が扱う分野を直接対象とするものではなく、法律全体からみれば、極く限られたしかも特殊な領域に属している。 したがって、これらの知的財産権法が基本的実体法又は手続法の習得を当然に前提としているものとは認められず、これをもって、法五条三号にいう「法律学」ということはできない。 また、実際の知的財産権法の実務運用には弁理士が関与することが多い。法五条三号に規定する「法律学」に知的財産権法が含まれるというのであれば、弁理士にも弁護士資格が与えられることとなり、現在の弁理士制度と平仄が合わないこととなる。 5 原告の香川大学法学部と大学院法学研究科における担当講義は、無体財産権法を主とするもので、特許法、実用新案法、著作権法、不正競争防止法、意匠法、商標法等の概説、入門、基本的制度及び関連判例等の講義をしていたものと認められたが、これらはいずれも基本的な実体法又は手続法ということはできない(なお、原告の大学院法学研究科における講義は殆ど休講であった。)。また、原告の主たる著書、論文をみると、主として特許法を専門にしていたことが認められ、広く国民生活に関する基本的な法律学を直接に研究し習得していたものとは認められない。 また、原告自身の資格審査会における 告の主たる著書、論文をみると、主として特許法を専門にしていたことが認められ、広く国民生活に関する基本的な法律学を直接に研究し習得していたものとは認められない。 また、原告自身の資格審査会における陳述によっても、特許法以外の基本的実体法について体系的、専門的に研究したものと認めることはできない。 6 このようにして、原告を法五条三号にいう「法律学」の教授又は助教授の職に五年以上在った者と認めることはできないとしてされた本件登録拒絶決定は適法である。 第三当裁判所の判断一法五条三号の趣旨 1 法四条は、「司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。」と定め、法五条は「左に掲げる者は、前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有する。」と規定するから、法が弁護士の資格を有する者として「司法修習生の修習を終えた者」を原則とし、その特例を規定するために法五条各号を置いていることは明らかである。そして、法五条三号は、「五年以上別に法律で定める大学の学部、専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在った者」と規定し、大学指定法は「弁護士法(昭和二四年法律第二〇五号)第五条第三項に規定する大学は、学校教育法(昭和二二年法律第二六号)による大学で法律学を研究する大学院の置かれているもの及び旧大学令(大正七年勅令第三八八号)による大学とする。」と定めるから、これらの趣旨によれば、法五条三号によって付与される弁護士資格は、相当高度の法律学研究の人的、物的施設を具えていると認められる大学の学部等において、五年以上法律学を担当する教授又は助教授の職に在った者を対象者としていると解され、右のような人的、物的施設の備わった学部等において五年以上法律学の教授又は助教授として在職した者は、その経歴から法律的素養の修得者として相当程度高く評価 授の職に在った者を対象者としていると解され、右のような人的、物的施設の備わった学部等において五年以上法律学の教授又は助教授として在職した者は、その経歴から法律的素養の修得者として相当程度高く評価できるところであるから、このような者に弁護士資格を付与しようとするものと解すべきである(最高裁判所第二小法廷昭和四三年一二月六日判決民集二二巻一三号二九〇八頁参照)。 また、右のとおりの特例的規定である法五条の各号の例示に照らせば、同条各号が規定する特例的な弁護士資格を付与される者は、いずれも相当程度高度の法律的素養を具えている者であると考えられるから、同条三項に規定する五年以上在職する教授又は助教授についても同様に解すべきであり、したがって、その担当する「法律学」も高度で専門的なものでなければならないと解される、しかしながら、法五条三号と大学指定法は、右「法律学」の具体的な内容程度等については何ら規定するものではないから、結局、これらの実質的要件は、前記のような人的、物的施設の備わった学部等において五年以上法律学の教授又は助教授として在職した者という形式的要件により、推定すべきものと法律は規定していると解するのが相当である(前記最高裁判所判決参照)。 2 したがって、法は、人的、物的施設の備わった学部等において五年以上法律学の教授又は助教授として在職した者を、相当程度高度の法律的素養を修得しこれを具える者と推定しているのであるから、右の形式的要件が具備されている限り、また、法の右の推定を覆す特別の事情のない限り、原則として当然に弁護士資格が付与されるべきものと解すべきである。したがって、被告は、これらの者から弁護士名簿への登録の請求を受けた場合には、法一二条一項、二項に規定する事由があるとして登録を拒絶する場合を除き(法一五条参照)、原則 れるべきものと解すべきである。したがって、被告は、これらの者から弁護士名簿への登録の請求を受けた場合には、法一二条一項、二項に規定する事由があるとして登録を拒絶する場合を除き(法一五条参照)、原則としてその登録請求を拒絶することはできないというべきである。 被告は、この点について、法五条三号の趣旨について、前記のような人的、物的施設のある大学の学部等で五年以上法律学の教授等に在職した者であれば、実定法一般に通ずる基本的な法律的思考様式を体得し、法律実務家として必要な知識を有すると合理的に期待される者であるとし、法五条三号の「法律学」は、弁護士の職務に必要な基本的実体法又は手続法あるいはこれらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学でなければならず、これを専門的、体系的に深く研究したと認めることが必要であり、少なくとも司法修習生の修習を終えた者と同等の法律実務家としての能力を有していなければならないと主張するが、必ずしも右のように解することはできない。すなわち、前示のとおり、法五条三号は法四条の特例的規定であり、司法修習生の修習の終了という要件によることなく、これとは別に弁護士資格を付与しようとするものであって、その資格要件も前示のとおり、形式的要件により実質的能力を推定しようとするものであるから、右規定は、別個の資格要件を定めたもので、特に法四条と共通の実質的能力要件を定めたものとして解釈すべきではない。また、右の形式的な資格要件によれば、この要件を充たす者については、実定法一般に通ずる基本的な法律的思考様式が体得されていると推認することができるも、必ずしも弁護士として必要な実質的能力が既に獲得されているとまでも合理的に期待し得るものではなく、法は、右の形式的要件から高度の法律的素養を推認し、実務における修練によって弁護士と ることができるも、必ずしも弁護士として必要な実質的能力が既に獲得されているとまでも合理的に期待し得るものではなく、法は、右の形式的要件から高度の法律的素養を推認し、実務における修練によって弁護士として必要な知識や実質的能力を向上することを期待したうえで、そのことのみで弁護士資格を付与しようとするものと解される。したがって、法五条三号の「法律学」を弁護士の職務に必要な基本的実体法又は手続法あるいはこれらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学でなければならないとする必要はない。また、同様の理由から、右の形式的資格要件を充たす者が司法修習生の修習を終えた者と同等の法律実務家としての実質的能力(素養)を有していなければならないと解することもできない。 3 なお、被告は、法五条三号の資格付与が、司法試験を回避する迂回路として機能する危険があることを理由に、同条三項の要件を拡大することはできないと主張するが、前示のとおり、もともと法五条三号の資格付与は、司法修習の制度とは別個のものとして設けられてものであるから、これが司法修習の制度に対する迂回路として機能するという批判は、法五条三号に立法動機に対する批判にすぎないものであるうえ、右の危険を防止するための法改正の必要があるとする根拠になり得ても、現行法の解釈、運用として被告の右主張を採用することはできない。仮に司法試験を回避する迂回路として本件のような登録請求がなされることを制限すべき場合があったとしても、本件において原告が司法試験を回避する目的で香川大学の法学部教授に在職し、法五条三号の形式要件を充たしたうえで、濫用的な登録請求したものであると認めるに足りる証拠はない。 4 右のとおりであり、被告は、法五条三号、大学指定法に規定する要件に該当するとして弁護士名簿への登録を請求する者に対 件を充たしたうえで、濫用的な登録請求したものであると認めるに足りる証拠はない。 4 右のとおりであり、被告は、法五条三号、大学指定法に規定する要件に該当するとして弁護士名簿への登録を請求する者に対して、右の形式的要件の具備を審査し、右要件を欠く者、又は法一二条一項、二項に規定する事由を有する者に対しては、法一五条の規定により登録拒絶の決定をすべきであるが、右の形式的要件を具備する者に対しては、高度の法律的素養を実質的に備えていないことが明らかに認め得る特別の事情がない限り、原則的に登録の決定をしなければならないものと解される。 二被告の資格審査基準の適否について 1 被告が、法五条三号の資格審査のために、昭和五〇年九月二〇日の理事会において、「法五条三号の審査基準」を設け、右基準において「弁護士法五条三号に定められた教授又は助教授とは、公法、民事法、刑事法等の基本的な法律学を研究することを目的とし、それに必要な人的、物的設備を備え、これに基づき実質的に研究機能を果たしている大学院のある大学及び旧大学令による大学で、法律学の研究を目的とする学部、専攻科又は大学院において、弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法(現段階においては、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法を指す。)、あるいは、これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学の教授又は助教授の職に五年以上在った者をいう。」と定めていることは当事者間に争いがない。 右資格審査基準は、大学指定法の趣旨を織り込んで、法五条三号の前述の形式的要件のうちの「教授又は助教授」を定義しつつ、同時に「法律学」の範囲を画しようとするものと解されるが、原告は、法定の「法律学」の範囲を狭めるものであり、違法であると主張する。しかしながら、右の資格要件 件のうちの「教授又は助教授」を定義しつつ、同時に「法律学」の範囲を画しようとするものと解されるが、原告は、法定の「法律学」の範囲を狭めるものであり、違法であると主張する。しかしながら、右の資格要件は、前示のとおり、その該当者に高度の法律的素養を推認することができるものであり、形式的要件ではあるが、およそ法律学であれば実定法解釈学に関係しないいかなるものも無条件に含まれると解することはできないから、法解釈の運用の統一を図るなどの実務の便宜のために一定の基準を設けること自体は、これを違法ということはできない(仮に違法があるとしても、右基準に従い実際に決定がされた場合にその決定の違法原因となるにすぎないものである。)。 2 前示のとおり、法五条三号の形式的要件は、高度の法律的素養を推定させるべきものであるところ、右の資格審査基準は、法五条三号でいう「法律学」を、弁護士の職務を行うのに必要な基本的実体法又は手続法とし、具体的には、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法と限定するものであるから、右の限りでは狭きに失するということができるが、そのほかに、「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」を含めているから、これを法五条三号の法意や文理に沿って忠実に「高度の法律的素養を推認することができる法律学」と解釈運用する限り、必ずしも右の形式的要件である「法律学」の範囲を狭めることにはならない(なお、基本的な実体法又は手続法の習得を前提とするものと明らかに認められる法律学であるか否かが問題となる事案においては、法五条三号の文理、法意に照らし、被告において、「前提とするものと明らから認められない法律学であったこと」を主張立証することとして資格審査基準を解釈運用すべきである。)。 したがって、右資格審査基準が 条三号の文理、法意に照らし、被告において、「前提とするものと明らから認められない法律学であったこと」を主張立証することとして資格審査基準を解釈運用すべきである。)。 したがって、右資格審査基準が違法であることを理由として本件登録決定が違法であるとする原告の主張は理由がない。 三原告の資格要件の具備について 1 そこで、原告につき前記形式的要件が具備するか否かについて判断するに、甲第二、第九号証、第一六、第一七号証の各一、二、第二〇、第二二号証、証人Aの証言、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和四四年四月から昭和五八年三月までの一四年間神戸商科大学において助教授又は教授として在職し、民法財産法を担当して講義等を行った経験を有していたが、昭和五八年四月から平成九年三月までの一四年間にわたって大学指定法の指定する大学である香川大学の法学部教授の職に在り、その間、学部において、毎年、無体財産権法講義四単位、研究演習六単位を担当し、また、昭和六〇年四月から平成九年三月まで(一二年間)は、同大学大学院法学研究科において無体財産権法特殊講義四単位、研究演習六単位を担当していたが、右大学院での研究演習は受講者が少なく、実際にこれを行ったのは、通算して数年間のみであったことが認められる。右の事実によれば、原告の在職した香川大学は、学校教育法による大学であり、法律学を研究する大学院が置かれている大学であるということができるから、大学指定法の規定する在職大学に関する形式的要件は、これを充たしていると認められる。 2 次に、原告が担当した知的財産権法が法五条三号にいう「法律学」に該当するかについて検討する。甲第一六号証の一、二、第二〇号証、証人Aの証言によれば、この法律分野の研究者については法五条三号が予定する高度の法律的素養を推認するこ 法が法五条三号にいう「法律学」に該当するかについて検討する。甲第一六号証の一、二、第二〇号証、証人Aの証言によれば、この法律分野の研究者については法五条三号が予定する高度の法律的素養を推認することができないという性質のものではないと認めるのが相当である。すなわち、知的財産権法又は無体財産権法と総称される実定法群は、程度の差はあるものの、いずれも民法、商法上又は民事訴訟法の概念、規定を一部用いて、その概念又は制度を構成し、審判請求等の手続は行政不服審査法上の概念等を前提とし、その審決に対する救済は、行政事件訴訟によるものであり、これらの関連法律の予備知識なくしては、その体系の正確な理解は困難であること、現に日本において知的財産権法を研究している大学教授の多くは民法、商法や民事訴訟法の研究者から専門特化して知的財産権法研究者になった者であるのが実情であること、したがって、人的、物的施設を備えた大学又は大学院で、五年以上、知的財産権法(無体財産権法)を担当する教授又は助教授には、法五条三号が予定する相当程度高度の法律的素養が培われているものと十分に推認することができる法律学であると認められる。そうすると、法五条三号の形式的要件を充たしているというべきであり、また、被告の前記資格審査基準のいう「これらの習得を前提とするものと明らかに認められる法律学」にも当たるというべきである。 3 なお、被告は、知的財産権法を法五条三号の「法律学」に当たるとして、要件該当者に弁護士資格を与えることは、弁理士制度と平仄が合わなくなると主張するが、立法論としてはともかく、もともと知的財産権法に関する実務を担当する弁理士が、当然に法五条三号の形式的要件を充たすわけのものではないし、高度の法律的素養を有するものと推認されるべき社会的実態があると認めるに足りる証拠もな 、もともと知的財産権法に関する実務を担当する弁理士が、当然に法五条三号の形式的要件を充たすわけのものではないし、高度の法律的素養を有するものと推認されるべき社会的実態があると認めるに足りる証拠もないから、弁理士制度と平仄が合わないということはない。 4(一) 右のように形式的要件が充たされていることから、原告については高度な法律的素養を有するものと推認すべきであると認められるが、被告は、原告については、高度の法律的素養が備わると認定することができないとも主張するので、この点について検討するに、甲第一、第二二、第九号証、第一六及び第一七号証の各一、二、第二〇、第二二号証、証人A、原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 (1) 原告は、昭和三五年三月に一橋大学を卒業して一旦就職したものの、昭和三九年四月に神戸大学大学院法学研究科修士課程に進学し、国際私法のゼミナールに所属して国際私法と民法を研究し、「アメリカ特許法における特許権の間接侵害について」と題する修士論文を提出した。昭和四一年四月には一橋大学法学研究科博士課程に進学し、商法のゼミナールに所属して主として商法、不法行為法、特許法を研究し、昭和四四年三月に単位を取得して退学した後、同年四月から神戸商科大学の専任講師として就職し、数年後に助教授となり、さらにその後、教授となった。 (2) 神戸商科大学は、大学指定法で指定する大学ではないが、原告は、専ら民法総則、物権法、債権法の講義を担当し、柚木馨「物権法」、我妻・有泉「民法Ⅰ総則物権」、遠藤・川井など編「民法(七)」、遠藤など編「民法Ⅰ総則」田中誠二「民法概説」、星野「民法概論Ⅰ(序論・総則)」などをテキストとして使用し、また、昭和四七年からはゼミナールをも担当し、民法判例の演習等を行った。 そして、原 七)」、遠藤など編「民法Ⅰ総則」田中誠二「民法概説」、星野「民法概論Ⅰ(序論・総則)」などをテキストとして使用し、また、昭和四七年からはゼミナールをも担当し、民法判例の演習等を行った。 そして、原告は、このころの研究成果を、「未特許発明に係る契約責任」、「未特許発明の譲渡と権利移転時期」、「発明者の返還請求権」、「使用人発明の法的諸問題」、「特許を受ける権利の侵害による不法行為の成否」などの論文として公表している。 (3) 前記認定のとおり、昭和五八年四月からは大学指定法の指定する大学である香川大学において法学部教授として在職し、平成九年三月に定年により退職した。この間の研究と教育の状況は、前記認定のとおり、学部において一四年間にわたり、毎年無体財産権法講義四単位、研究演習六単位を担当し、また、昭和六〇年四月からの一二年間は、実際に実施したのは通算して数年間にすぎなかったものの、同大学大学院法学研究科において無体財産権法特殊講義四単位、研究演習六単位を担当していた。この在職期間において、原告の研究対象は、著作権法を含む知的財産権法の全体に及んだ。 (4) 原告の主要な著書には、「特許法の課題と構造」(神戸商科大学、昭和五五年)、「特許法の構造と課題」(三嶺書房、昭和五八年)、「アメリカ特許法概説」(発明協会、昭和六二年)、「特許法講義」(勁草書房、平成七年)があり、主要な論文には、「特許権の無効と実施料支払い義務の関係」(「特許管理」、昭和五五年)、「著作権法における意匠の保護」(「無体財産権法の諸問題」所収、昭和五五年)、「技術的思想の保護をめぐる著作権法と特許法の関係」(一橋論叢、昭和六一年)などがある。 (二) 右の事実によれば、原告における知的財産権法に対する研究は、既に三十数年間に及んでいるものと認められ、その在職大学と著書 めぐる著作権法と特許法の関係」(一橋論叢、昭和六一年)などがある。 (二) 右の事実によれば、原告における知的財産権法に対する研究は、既に三十数年間に及んでいるものと認められ、その在職大学と著書、論文の傾向等に鑑みると、原告は知的財産権法に関する学会において水準的な研究者として認知されているものと認められ、証人Aによれば、原告については特に民法などの一般法の原則との整合を重視する解釈を行う学者であるという評価があるものと認められる。また、前記認定のとおり、原告の神戸商科大学における民法財産権法の講義は、一応水準的な教科書を用いたものであったと認められ、その期間が一四年間に及んでいることを考慮すると、原告にはその間に民法等に関する高度の法律的素養が蓄積されたものと推認するのが相当である。被告は、神戸商科大学は、大学指定法が指定する大学ではないと主張するが、その主張は、右の在職期間が法五条三号の資格要件には該たらないことを指摘するものに過ぎず、現在の原告の法律的素養の程度を認定する資料とすることを妨げるものではない。 このようにして、原告の神戸商科大学と香川大学の合計二八年間に及ぶ民法又は知的財産権法に関する研究活動の経歴に照らしてみれば、原告には、法五条三号が予定する高度な法律的素養を備える者であるとの推定を覆すに足りる事情があるとまで認定できない。なお、被告の本件登録拒絶決定の議決書の理由において、原告の講義、研究業績が無体財産権法に限定されており、基本的な実体法又は手続法に該当しないと判断しているようにもみられるが、論文等はその性質上、研究している法律学の中でも特化したテーマを取り上げて論ずるものであり、論文等の内容から、研究業績が限定され法律的素養も限定されていると推認することは的を得ない立論である。右素養が欠けるとする被告の 究している法律学の中でも特化したテーマを取り上げて論ずるものであり、論文等の内容から、研究業績が限定され法律的素養も限定されていると推認することは的を得ない立論である。右素養が欠けるとする被告の主張は理由がない。 5 したがって、被告の資格審査においては、法五条三号の要件を具備するとして登録の決定をすべきであったと認められるから、前記認定のとおり、原告が香川大学において講義し研究した特許法などを主とする無体財産権法は資格審査基準に定める基本的実体法又は手続法に該当せず、「これらの習得を前提とするものと明らかに認めるられる法律学」に該当しないとしてした本件登録拒絶決定は、法五条三号に規定する形式的要件に対する当てはめに関する裁量判断を誤ったものであり、その裁量権を逸脱したものとして違法というべきである。 6 以上によれば、被告の本件登録拒絶決定は違法であるから、取り消すべきである。 四結論よって、原告の本件請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第四特別部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官慶田康男裁判官廣田民生
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