令和2年第352号再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件 主文 本件即時抗告を棄却する。 理由 第1 本件申立の趣旨等本件即時抗告の趣旨及び理由は,弁護人池田崇志作成の即時抗告申立書及び意見書3通(令和2年12月28日付け,令和3年1月14日付け及び同年6月23日付け)に,これに対する反論は検察官緒方淳作成の意見書(令和3年4月16日付け)に,各記載のとおりである。その論旨は,要するに,申立人(原審請求人)に対する強盗被告事件(神戸地方裁判所姫路支部平成13年第441号)について,平成16年1月9日神戸地方裁判所姫路支部が言い渡した有罪の確定判決(以下「確定判決」という。)に対する本件再審請求について,原審で弁護人が提出した新証拠には,刑訴法435条6号の明白性が認められないとして,本件再審請求を棄却した原決定は,証拠開示の勧告等の真実発見に向けた努力が著しく欠けており,審理不尽の違法がある上,新証拠の明白性の判断の方法を誤り,新証拠の明白性を認めなかった事実の誤認があるから,これを取り消した上で,再審を開始する裁判を求める,というものである。 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果をも併せて検討する。 なお,略称及び証拠の表記方法は,基本的に原決定の例による。当審において取り調べた証拠については,原審の続き番号を用いることとする。 第2 原決定までの審理経過等 1 確定判決が認定した事実確定判決が認定した犯罪事実の要旨は,申立人は,自称Aと共謀の上,兵庫県姫路市内にあるB郵便局(以下,単に「郵便局」という。)において,平成13年6月19日午後3時10分過ぎ頃,郵便局職員ら4名に対し,こもごも所携の模造けん 旨は,申立人は,自称Aと共謀の上,兵庫県姫路市内にあるB郵便局(以下,単に「郵便局」という。)において,平成13年6月19日午後3時10分過ぎ頃,郵便局職員ら4名に対し,こもごも所携の模造けん 銃を突き付けて脅迫するとともに,同人らの頭部等を所携の傘で殴り付ける暴行を加えて,同人らの反抗を抑圧した上,郵便局局長管理の現金2275万6000円を強取した,というものである。 2 確定審における審理経過申立人は,前記認定事実と同旨の公訴事実について,本件強盗が行われた時間に郵便局にはおらず,一切関わっていないとして,捜査・公判を通じて犯人性を否認し(ただし,後述するように,起訴後のある時期,検察官に対して犯行を認めるかのような供述をしたことがある。),本件強盗はAとCなる人物の犯行であるとして無罪を主張していたが,平成16年1月9日,神戸地方裁判所姫路支部において,申立人が実行犯人2人のうちの1人であると認定され,懲役6年に処する旨の有罪判決が宣告された。この判決は,平成17年11月24日の大阪高等裁判所での控訴棄却,平成18年4月19日の最高裁判所での上告棄却の各裁判を経て,同月25日に確定した。 3 確定判決の概要確定判決は,申立人を強盗の実行犯として有罪であると認定したが,その判断の概要は以下のとおりである(神戸地方裁判所姫路支部の確定第1審を基本としたが,それだけでは分かりにくい点は,これを維持した大阪高等裁判所の確定控訴審の内容も用いている。)。 本件強盗事件の発生本件当日,えんじ色と紺色の雨合羽を着て白色の軍手をはめた黒人の二人組が,それぞれけん銃様の物を持って郵便局に入ってきて,えんじ色の雨合羽を着た人物が,出入口付近に座っていた警備員にけん銃様の物を突き付けた後,郵便局ロビーに入っていき,カウンター はめた黒人の二人組が,それぞれけん銃様の物を持って郵便局に入ってきて,えんじ色の雨合羽を着た人物が,出入口付近に座っていた警備員にけん銃様の物を突き付けた後,郵便局ロビーに入っていき,カウンターを乗り越えて郵便局職員らにけん銃様の物を突き付けた。 職員らが逃げようとすると,紺色の雨合羽を着た人物がその職員らに対して持っていた傘で殴りつけるなどし,その間にえんじ色の雨合羽を着た人物が金庫から現金を取り出し,その二人組は,郵便局の外に止めていた緑色の日産シルビア(逃走時 にナンバープレートの下4桁が「6625」であることが目撃されている。以下,「本件シルビア」という。)に乗り込んで逃走した。郵便局内には,目出し帽1個と傘2本が犯人らにより遺留されていた。 申立人の逮捕及びAの出頭本件犯行の約30分後,郵便局と同じ町内で,かねてより顔見知りであった者が申立人を,また別の者がD(D工業所の通称名)の方に走って行く背の高い黒人男性を目撃した旨の情報があり,警察官が事情聴取中,申立人が近くの倉庫で解体の仕事をしている人物であるという情報が入った。その倉庫へ向かった前記目撃者の1人に案内されたE警察官によって,同日午後4時20分頃,同倉庫内に,車体が濡れてナンバープレートが取り付けられていない緑色の本件シルビアがあるのが発見された。連絡を受けた警察官らの捜査により,その倉庫は,申立人が当時経営していた会社の事務所や倉庫として使用・管理されている建物(以下「本件倉庫」という。)であることが判明し,同日,申立人は警察から任意同行を求められ,翌20日の朝に緊急逮捕された。これを知ったAは,翌21日に池田崇志弁護士(その後は基本的に申立人の弁護人)に付き添われて姫路警察に出頭し,逮捕された。 ⑶ 申立人が本件強盗の実行犯人であることを推認さ 日の朝に緊急逮捕された。これを知ったAは,翌21日に池田崇志弁護士(その後は基本的に申立人の弁護人)に付き添われて姫路警察に出頭し,逮捕された。 ⑶ 申立人が本件強盗の実行犯人であることを推認させる間接事実は,次のとおりである(項目的に整理したので,記載の順番等は確定判決とは異なる部分がある。)。 ア犯行に使用されたと認められる物品等や犯行によって得られた現金が,申立人の管理する本件倉庫から発見されたり,申立人の生活領域内にあったこと① 犯行に際し,犯人らが乗っていた本件シルビアは,犯行のあった月(平成13年6月)の初め頃に申立人が購入し,本件倉庫内に置かれていたもので,目撃されたナンバープレート(下4桁が6625)は,申立人が購入した別の車両のナンバープレートであり,これが当時本件シルビアに取り付けられたものであった。 ② 本件シルビアは,犯行の1時間余り後には,本件倉庫内に止められ,ナンバープレートも,取り外されてナンバー部分が焼き切られた上,本件倉庫内に置かれていた。 ③ 本件倉庫内の2か所から,郵便局の帯封が付いたままなどの現金合計2275万6000円が発見され,その金額は被害金額相当であった。また,犯行に用いられたものと考えて矛盾のない雨合羽や靴等も本件倉庫内から発見された。 ④ 犯行には2丁のけん銃様の物が使用されたが,申立人は,それまでにエアガンを少なくとも2丁は購入して所持していた。 ⑤ 犯人らが犯行時に着用していた雨合羽は,申立人らが当時の勤務先(D)の作業において使っていたものと同様のものである。 イ本件倉庫は申立人が管理していた場所であること⑥ 本件倉庫は,申立人が管理しており,他の者が申立人の了解を得ないまま本件倉庫内にある物品を利用して犯行を行い,本件倉庫内において証拠物の隠匿やナン 本件倉庫は申立人が管理していた場所であること⑥ 本件倉庫は,申立人が管理しており,他の者が申立人の了解を得ないまま本件倉庫内にある物品を利用して犯行を行い,本件倉庫内において証拠物の隠匿やナンバープレートの数字を焼き切るなどの作業を行うことは容易にできるものではない。 ウ犯行後に申立人が目撃されたこととの整合性⑦ 犯行の約30分後には,本件倉庫の近辺で申立人が目撃されているが(このことは,申立人の捜査や公判での供述には沿わない。),犯行場所である郵便局から本件倉庫まで自動車で移動するのに要する時間,及び本件倉庫内で現金等を隠し,ナンバープレートを焼き切るなどに要する時間を考慮すると,前記目撃内容は,申立人が犯人であるならば不自然ではない。 エ実行犯であることが明らかなAとの関係⑧ Aは,本件の実行犯であることは明らかであるが,Aは申立人の弟(Aの認識は従弟)であり,同じ職場(D)で働いていたほか,自動車部品等の輸出,販売等を業とする申立人の会社の仕事も手伝っていた。 オこれらを総合すると,申立人が,Aの共犯者として本件強盗を敢行したことが強く推認される。 ⑷ 申立人が共犯者であるとの認定に合理的な疑いは生じない。 ア Cというナイジェリア人が共犯者であるとするAの供述について Cというナイジェリア人からの盗みの誘いを断り切れず,一緒に郵便局に行ったら,Cが模造けん銃を使って大金を奪ってしまった旨を供述するAの証言は,供述内容が不自然,不可解で,捜査・公判で変遷もあり,信用性に乏しい。 ⑨ Aの供述によれば,会って3回目にすぎない相手(C)から,郵便局の金銭を取るという話を持ち掛けられ,その内容からみて強盗に及ぶことが予測されるのにこれを承諾し,申立人の管理する本件倉庫から犯行に使う雨合羽等を勝手に持ち出 3回目にすぎない相手(C)から,郵便局の金銭を取るという話を持ち掛けられ,その内容からみて強盗に及ぶことが予測されるのにこれを承諾し,申立人の管理する本件倉庫から犯行に使う雨合羽等を勝手に持ち出し,犯行後は,事情を全く知らない申立人に力を借りるとして奪った2000万円以上の現金や犯行に用いた自動車や雨合羽を本件倉庫に放置したまま離れたことになるが,その内容は不自然である。 ⑩ Aの供述するCの行動も不可解である。金に困ってAに犯行を持ち掛けて,執拗に誘って強盗に及び,奪った現金を持って逃げようとしていたのに,現金を本件倉庫に隠しておこうというAの説得に従い,ポケットに入れていた100万円ほどの現金もAの言うがままに渡してしまったというのであって,いささか不可解である。 イ犯行への関与を否定する申立人の供述も,信用性に乏しい。 ⑪ 申立人の供述は,Cなる人物が申立人の車等を勝手に使って犯行を行ったことをうかがわせる内容も含んでいるが信用できない。申立人は,日本のヤクザらに脅かされていたとし,本件強盗があった頃は,自宅を出てDの寮に行き,同僚のFの部屋でテレビを見て本件倉庫に戻った旨を供述するが,その内容に不自然なところが見られる上,捜査段階と公判,また公判段階の中でも詳細な供述をしていながら,種々の点で不自然に変遷している。さらに,公判審理中に,一度は検察官に対して,マフィアに脅迫されて郵便局から現金と鍵を奪ってきた旨を述べてもおり,真に犯行に関与していない者が,このような段階でかかる供述をするというのは理解し難く,また,他の者(事件直後の目撃者,F及び自宅にいた妻の祖母)の供述とも矛盾しているのであって,信用性に乏しい。 ⑸ 確定判決は,他に申立人の管理下にある事務所の中の車両等を申立人以外の 者が用いて犯行を行い,証 の目撃者,F及び自宅にいた妻の祖母)の供述とも矛盾しているのであって,信用性に乏しい。 ⑸ 確定判決は,他に申立人の管理下にある事務所の中の車両等を申立人以外の 者が用いて犯行を行い,証拠物を事務所内に隠匿したとの合理的な疑いが生じ得るような事情は見受けられないとして,以上の諸事情に照らすと,Aとともに本件強盗行為を行った人物は申立人であると認めた。 4 原決定(差戻後再審請求審)までの経過等⑴ 差戻前再審請求審の判断内容等申立人は,本件強盗の犯人ではないと主張して再審請求を申し立てたが,神戸地方裁判所姫路支部は,平成26年3月28日,再審請求を棄却した(平成24年第3号,以下「差戻前棄却決定」という。)。その理由の要旨は,以下のとおりである。 本件強盗の被害現金が犯行から1時間10分以内という極めて短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,その全額が保管されていたことを「中核的事実関係1」とし,本件強盗には申立人が購入していた車両(本件シルビア)や申立人が購入した別の車両に付けられていたナンバープレートが使用されたのみならず,これらも犯行から極めて短時間のうちに本件倉庫に持ち込まれ,同ナンバープレートには罪証隠滅とみられる工作が施されていたことを「中核的事実関係2」とし,これらを併せ考えると,申立人が本件強盗の犯人の1人であることが極めて強く推認される。 そして,中核的事実関係1の強い推認力は,申立人に本件倉庫の管理権限があること自体を基礎とするものであるから,申立人以外の者でも本件倉庫内に立ち入ることが可能であったという事実が存在しても,基本的にはその推認力が大きく減殺されることはなく,あるいは,実行犯人である二人の黒人の中に申立人が含まれていない可能性があるとの事実が存在しても,同様である(本件強盗が3人以上の共犯者 在しても,基本的にはその推認力が大きく減殺されることはなく,あるいは,実行犯人である二人の黒人の中に申立人が含まれていない可能性があるとの事実が存在しても,同様である(本件強盗が3人以上の共犯者による犯行ということになるが,申立人が共犯者に含まれない可能性が生じることはない。)。刑訴法435条6号の無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとして弁護人が提出した,申立人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠,申立人の実行犯人性に関する証拠及びCの実在性に関する証拠等は,前述の強力な推認力に照らすと,本件強盗の2人の実行犯人の中に申立人が含まれない としても,申立人とAとの共犯関係に第三の共犯者が加わることになるにすぎず,申立人が共犯者の1人であるとの嫌疑が晴れるわけではないため,そもそも新規性がないか,新規性が認められるものについても,申立人の犯人性の推認を妨げる事情にはなり得ないから,各証拠の信用性を判断するまでもなく,明白性がないことが明らかであり,いずれも刑訴法435条6号の証拠に当たらない。 ⑵ 即時抗告審の判断内容等その即時抗告審である大阪高等裁判所は,平成28年3月15日,再審請求棄却決定を取り消して,事件を神戸地方裁判所に差し戻す決定をし(平成26年第148号,以下「本件差戻決定」という。),その特別抗告も,平成29年10月31日に棄却された。本件差戻決定の理由の要旨は,以下のとおりである。 確定審で取り調べられた証拠と新証拠とを総合的に評価した結果,確定判決が認定した犯罪事実の一部に合理的な疑いが生じた場合であっても,公訴事実の同一性が認められる範囲内で,なお同一の構成要件に該当する事実が認定できるという心証を得た場合に,再審を開始しない余地はあるが,再審請求審においても,申立人に対する不意 た場合であっても,公訴事実の同一性が認められる範囲内で,なお同一の構成要件に該当する事実が認定できるという心証を得た場合に,再審を開始しない余地はあるが,再審請求審においても,申立人に対する不意打ちを防止し,申立人に対して十分防御の機会を与えて審理を尽くす必要がある。本件では,①実行共同正犯か,実行行為を伴わないその他の共犯かによって,間接事実の持つ意味や構造に変化が生じることも考えられ,推認過程に対する反論や反証も異なり得るから,その点について申立人に主張,立証の機会を与えなかったことは不意打ちに当たる,②差戻前棄却決定にいう中核的事実関係1及び2による犯人性の推認は,事実上も,第三者が申立人に無断で本件倉庫に物品を持ち込み,隠匿することや証拠隠滅の作業をすることがない管理状態であったことが前提となるはずであり,申立人の管理権限そのものを基礎として,中核的事実関係1に強力な推認力を認めるのは相当ではなく,論理則,経験則に反する。各中核的事実関係の推認力が減殺されるか否かは,申立人の関与なしに,申立人以外の者が本件倉庫に立ち入り,物品の隠匿や毀棄等の行為ができたかという点に関して,弁護人から提出された証拠の信用性等を検討して初めて評価できるが,差戻前棄却 決定はこの点について検討しておらず,審理が尽くされているとはいえない,③確定判決は,申立人が実行犯人であることを前提としているところ,本件は,申立人が実行犯人であることから,共同正犯と評価,認定した事案ということができ,申立人の実行犯人性に合理的疑いが生じるのであれば,残る間接事実によって申立人の共犯性を認定できるかについては更に検討を要することとなるのに,差戻前再審請求審における審理経過をみても,弁護人からこの点に関連する複数の証拠が提出され,検察官も各証拠の信用性を争う よって申立人の共犯性を認定できるかについては更に検討を要することとなるのに,差戻前再審請求審における審理経過をみても,弁護人からこの点に関連する複数の証拠が提出され,検察官も各証拠の信用性を争うなどしていたにもかかわらず,差戻前棄却決定は,各証拠の信用性について検討を加えておらず,申立人の実行犯人性を前提としない場合に,申立人の共犯性が認定できるか否かの間接事実の検討について,十分な審理が尽くされているとはいえない。これらの手続違背は決定に影響を及ぼすことが明らかであって取消しを免れず,前記の点について,当事者に十分な主張,立証の機会を与え,刑訴法435条6号の該当性について更に審理を尽くさせる必要がある。 本件差戻決定は,その説示からも明らかなように,申立人側から提出された証拠を具体的に検討したものではない。差戻前棄却決定が,申立人の実行犯人性を認めた確定判決の判断に合理的な疑いを生じさせるだけでは足りず,申立人の共犯性を含む犯人性に合理的な疑いを生じさせる必要があるとの観点から,申立人側が提出した証拠を検討し,結論を出したことに対し,理論的には,そのような判断の仕方を是認しつつも,実際の審理の仕方に不意打ちや判断不足等があるとして,差し戻したものである。 第3 原決定(差戻後再審請求審の決定)の判断の概要差戻し後の審理を行った神戸地方裁判所(以下「原審」という。)は,令和2年6月15日,本件再審請求は理由がないとして棄却する決定をした(神戸地方裁判所平成30年第1号,原決定)。本件は,この原決定に対してなされた即時抗告申立事件である。 1 原決定の理由の要旨 原決定の弁護人の主張に対する判断の概略は,以下のようなものである。後の当裁判所の判断に際し,原決定の判断の要旨も適宜示すことになるから,ここでは結論的 ある。 1 原決定の理由の要旨 原決定の弁護人の主張に対する判断の概略は,以下のようなものである。後の当裁判所の判断に際し,原決定の判断の要旨も適宜示すことになるから,ここでは結論的なもののみ示す。 原決定は,申立人の主張に従い,提出された証拠を,申立人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠,申立人の実行犯人性に関する証拠,Cの実在性に関する証拠と分類し,それぞれの主張を検討した。 本件倉庫には申立人以外の者も比較的自由に出入りすることができたもので,確定判決における間接事実⑥の認定は誤っているとの主張について弁護人が提出した,G(再審弁14),H(再審弁40)及びI(再審弁71)の各陳述書並びにDVD(再審弁70)の各証拠の中に,確定判決における間接事実⑥の認定を揺るがすに足りるものはなく,本件差戻決定の指摘(第2の4⑵②)をも踏まえて原審で実施した,G及びHの証人尋問の結果を考慮しても,前記判断は左右されない。 申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせる種々の新証拠が存在するとの主張について弁護人の提出する,①防犯カメラの映像に関する証拠である,DVD(再審弁86)及び写真(再審弁92),②目出し帽の付着物に関する証拠(再審弁3の1,2,26,27の1,2,28の1,2,34ないし36,41,89),③申立人の血液型に関する証拠(再審弁6ないし8,9の1ないし6,46,87,88),④申立人の足のサイズに関する証拠(再審弁20),⑤申立人の左足の負傷に関する証拠である医師から聴取した報告書(再審弁15)及びJの陳述書(再審弁16),⑥指掌紋に関する証拠(再審弁42ないし44,90,96ないし99)は,いずれも申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものとはいえない。 申立人やAが実行犯人 及びJの陳述書(再審弁16),⑥指掌紋に関する証拠(再審弁42ないし44,90,96ないし99)は,いずれも申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものとはいえない。 申立人やAが実行犯人の1人であると主張したCは実在しているとの主張について弁護人が提出する,Cの実在性に関連する証拠(再審弁17ないし19の1,2, 22,23,31の1,2,80)は,申立人を本件強盗の実行犯人であると認定した確定判決の判断構造に全く影響を与えるものではないから,いずれも明白性はない。 以上の各証拠のほか,弁護人が提出した全ての証拠を踏まえて記録を精査しても,申立人が本件強盗の実行犯人であるとした確定判決の事実認定に誤りがあるとは認められない。弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められず,刑訴法435条6号の再審事由は認められない。 なお,弁護人は,申立人が提起している別件の国家賠償請求事件において,証拠の改ざん,偽造又は変造を認定した判決が確定した場合は,刑訴法435条1号にいう「確定判決」に含まれるとして同号が認められるとも主張するが,あくまでも仮定の話であり,そのような趣旨の確定判決があるわけではないし,そもそも,同号の「確定判決」とは刑事事件の確定判決をいい,国家賠償請求事件の確定判決は含まれないと解されるから,主張自体失当である。 第4 当裁判所の判断 1 はじめに原審は,即時抗告審の指摘①に従い,当事者に共犯の形式についての主張,立証の機会を与え(もっとも,弁護人は主張,立証の要なしと述べた。),また,同指摘②に従い,間接事実⑥について,申立人の関与なしに,申立人以外の者が本件倉庫に立ち入り,物品の隠匿や毀棄等の行為ができたかという点に関して,弁護人から提出された証拠の信用性等を検討する一環として,事実の 従い,間接事実⑥について,申立人の関与なしに,申立人以外の者が本件倉庫に立ち入り,物品の隠匿や毀棄等の行為ができたかという点に関して,弁護人から提出された証拠の信用性等を検討する一環として,事実の取調べとして,陳述書作成者2名の証人尋問を行うなどした。 その結果,原審は,弁護人が提出した証拠の明白性を否定し,本件再審請求には刑訴法435条6号の再審事由があるとはいえないとして,本件再審請求を棄却した(原決定)。その判断に,論理則,経験則等に照らして不合理な点はなく,当裁判所もおおむね正当なものとして是認することができる(当審では主張されていないが,同条1号についての原審の判断についても同様である。)。 当審における所論も,基本的には原審における主張と同旨であるが,原決定については,十分な審理を尽くさないまま,証拠の明白性判断の方法を誤り,その評価を誤ったものであり,取り消されるべきであるとしている。 そこで,以下において,所論に鑑み,それぞれの論点に関する弁護人提出証拠が,刑訴法435条6号に規定する証拠に該当しないとした原決定の当否を検討する。 2 申立人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する証拠について⑴ 所論所論は,間接事実⑥の認定には誤りがあるとして,本件倉庫の大扉は表に鍵は掛けられておらず,内側から開けることができるものであり,申立人らが本件倉庫を利用する場合,左側の扉の一部に付いていた,鍵の掛けられた小さな扉から中に入っていた,申立人は本件倉庫の大扉を開けていることが多く,その場合には,申立人以外の者が出入りしており,本件当日も,大扉は鍵が掛かっていない状態で,申立人以外の第三者が出入りすることができたと主張している。 そして,これを前提に,間接事実⑥を認定する根拠となった,本件倉庫で誰も作業をし りしており,本件当日も,大扉は鍵が掛かっていない状態で,申立人以外の第三者が出入りすることができたと主張している。 そして,これを前提に,間接事実⑥を認定する根拠となった,本件倉庫で誰も作業をしていないときはいつも本件倉庫の扉に鍵が掛かっており,申立人,その妻及びA以外の人物が本件倉庫の扉を開けるのを見たことがなく,本件当日も,午後2時前頃までの間,本件倉庫の鍵が掛けられたままであった旨のHの確定審における証言(以下「確定審証言」という。)は信用性がないと主張し,その立証のための新証拠として,同人の陳述書(再審弁40,以下「H陳述書」という。)を,前同様に認定根拠となった,本件強盗が発生した1時間10分後である午後4時20分頃には,本件倉庫の大扉には鍵が掛かっていて,E警察官が鍵の開いていた窓から本件倉庫に入った旨のE及びKの確定審における各証言には信用性がないと主張し,その立証のための新証拠として,本件倉庫の所有者の妻であるGの陳述書(再審弁14,以下「G陳述書」という。)を,その他,本件倉庫の扉が大概の場合は開いていたという事実を立証するための新証拠として,Iの陳述書(再審弁71,以下「I陳述書」という。)とDVD(再審弁70)をそれぞれ提出した。 ⑵ H陳述書についてア H陳述書の要旨H陳述書における陳述内容の要旨は以下のとおりである。H(本件倉庫の南隣にある皮革会社の経営者)は,仕事中に訪ねてきた警察官から,本件倉庫の扉の施錠状況等について話を聞きたいとしつこく言われ,早く終わらせて仕事をしたいと思っていたため,記憶が曖昧でよく分からないことについても,警察官に言われたとおりの事実を適当に答えた,もともと倉庫の扉を意識的に見たことはなく,扉の外側に南京錠がついていたかどうかはっきり覚えていなかった,はっき 記憶が曖昧でよく分からないことについても,警察官に言われたとおりの事実を適当に答えた,もともと倉庫の扉を意識的に見たことはなく,扉の外側に南京錠がついていたかどうかはっきり覚えていなかった,はっきり言えることは,黒人の2人は,倉庫に来ると,まず小さな扉を開けて倉庫の中に入っていたということであり,今から思えば,大きな扉の外側に鍵はついていなかったのかもしれない,検察官からの事情聴取も,裁判所の証人尋問の際も,早く終わればいいと思って,警察官や検察官から話を聞かれて話したことと同じことを話した。 イ Hの確定審証言の信用性しかし,確定審において,Hは,自己の証言如何によって,やっていないと犯行を否認している申立人が有罪判決を受けることがあり得るもので,極めて重要な証言になるということを念押しされた上で(確定審第4回公判H証人尋問調書9頁),反対尋問において弁護人から厳しい追及を受けても,自分が見聞きした範囲での話と断った上で(同29,31,36頁),本件当時,本件倉庫には大きい扉と小さい扉の両方に1つずつ南京錠が掛けられており(同16,34頁),本件倉庫を誰も使用していないとき(同4頁),誰もいないとき(同20頁)には鍵が掛かっている状態であった,南京錠を開けるところを見たことがあるのは,申立人とAのほか,申立人の妻が1回だけあるが,それ以外の者が開けるのは見たことがない(同35,38頁)旨一貫した供述をしていた。特に,小さい扉だけではなく,大きい扉にも南京錠が掛けられていたという点については,各扉の南京錠を区別して尋ね,本件当時からそうであったか,事件後のことか,質問を重ねられても,動揺することなく明言し(同16頁),南京錠が掛けられていた2か所を法廷で自ら図示してもいる のであって(同18頁),原決定も指摘するとおり, あったか,事件後のことか,質問を重ねられても,動揺することなく明言し(同16頁),南京錠が掛けられていた2か所を法廷で自ら図示してもいる のであって(同18頁),原決定も指摘するとおり,その証言内容や証言態度に照らすと,記憶が曖昧でよく分からないのに,施錠状況を明言する証言を貫いたとはにわかに考え難い。 ウ Hの原審証言の信用性ところが,Hは,H陳述書の信用性を吟味するために原審で実施した証人尋問(以下「原審証言」ともいう。)では,①大きな扉の外側には南京錠は付いていなかったと明言した(原審H証人尋問調書9,11,14頁)。これは,確定審証言とも,H陳述書における陳述とも異なる内容の供述であり,この点で大きく変遷している。 Hの説明によれば,大きな扉に南京錠が付いていなかったことを思い出したのは,再審をしたいからと言って弁護士が2人来て,話をするうちに思い出したのがきっかけであるというのであり(同16頁),弁護士の人数やHを訪ねた理由に照らし,平成25年10月17日付けのH陳述書を作成した際のことをいうものと解されるが,H陳述書の内容は,前記要旨のとおり,扉の外側に南京錠がついていたかどうかはっきり覚えていなかったが,警察官に言われるとおり適当に答えたのを証言時も維持したというもので,まず小さな扉を開けて倉庫の中に入っていたから,今から思えば,大きな扉の外側に鍵は付いていなかったのかもしれないとの推察を述べるにとどまっており,大きな扉に南京錠は掛けられていなかったと明言する前記供述はこれと矛盾する。また,Hは一方で,思い出した時期がいつ頃かを確認されたのに対し,6年ぐらい前ではなくて,数か月前とか最近のことであり,陳述書を書いた平成25年のときは思い出していないとも供述しており(同16,17頁),仮にそのとおりだとすると がいつ頃かを確認されたのに対し,6年ぐらい前ではなくて,数か月前とか最近のことであり,陳述書を書いた平成25年のときは思い出していないとも供述しており(同16,17頁),仮にそのとおりだとすると,本件発生からは実に18年,陳述書作成からでも6年という年月が経過した後になって,突如,本件倉庫の当時の施錠状況を新たに思い出したことになり,不自然,不合理といわざるを得ない。Hは,確定審の証人尋問の際に,大きい扉に鍵が掛かっていたかについて聞かれたことも,その絵を描いたことも覚えていないと供述するが,左右に矢印を2個並べて「カギ」と記載した,明らかに2か所を指し示す趣旨の自筆の絵を見せられても,これは小さい扉の鍵では ないか,大扉の鍵ではないと強弁するなど(同13ないし15,36頁),極めて不自然な証言に終始した。 また,②Hは,鍵以外の点では,主尋問で,申立人がDで働いている時間帯でも,時々は本件倉庫の大きな扉は開いていたことがある(同11頁)と供述した。しかし,反対尋問で,開いていた記憶があるのか,開いていたのを見たのかと問い質されると,見聞きした覚えがあるというのではなく,クーラーも付いていないみたいだから暑いときには開いているときもあるのではないかと考えての答えである旨認めており(同24,25頁),具体的な体験に基づく事実を述べるものではない。 このように,Hの原審証言は,全体を通じて曖昧で,一貫性に欠ける要領を得ないものであり,供述態度や変遷状況に照らしても,およそ信用できない。しかも,H自身,捜査段階の供述で記憶にないことも言ったと一旦は述べた後,最終的には,確定審証言で,あえてうそをついたり,記憶にないことを述べたりはしていないと認めており(同20,32頁),Hの確定審証言の信用性を揺るがすものとはとても認められな ったと一旦は述べた後,最終的には,確定審証言で,あえてうそをついたり,記憶にないことを述べたりはしていないと認めており(同20,32頁),Hの確定審証言の信用性を揺るがすものとはとても認められない。 エ H陳述書の明白性以上の検討によれば,Hの確定審証言の信用性に疑問を差し挟む余地はない。加えて,Hが確定審証言の直前,検察官に対し,被告人(申立人)は日本人女性と結婚して子供もおり,いずれは社会復帰すると思われ,恨みを持たれるのは嫌だとして,被告人や妻の前で彼らの不利になることは言いたくないと苦しい心情を吐露しており(検察官の「再審請求に対する意見書⑹」別添の平成13年11月2日付けHの検察官調書),そのような中,申立人に不利な内容の確定審証言をして(平成13年11月12日第4回公判),有罪判決が下された。その後服役を終えた申立人が,家族とともにHの近隣で生活を再開し,再審請求をする中で,当時の話を聞きたいと弁護人が訪ねてきたというHの置かれた状況に鑑みれば,申立人やその家族から恨まれたくないとの思いから,確定審証言を翻した疑いは否定できない。H陳述書のうち,同人の確定審証言と齟齬する部分は信用できず,確定審証言の信用性を揺 るがすものとは認められない。 以上とおおむね同旨の原決定の判断は,その理由として説示するところも含めて相当であり,誤りはない。 オ所論についてこれに対し,所論は,警察は,後日,証人として出頭することになるHに対して,無理に虚偽の供述を求めていたものであり,これを証明するHの原審証言は,H陳述書と極めて整合性の高いものであると主張する。しかし,Hは,原審証言で,最初に話を聞きに来た警察官に誘導されている感じがしたと述べるものの,どういう事項についてであったかは答えられず,具体性に欠ける供述に終 て整合性の高いものであると主張する。しかし,Hは,原審証言で,最初に話を聞きに来た警察官に誘導されている感じがしたと述べるものの,どういう事項についてであったかは答えられず,具体性に欠ける供述に終始している(原審H17,34頁)。また,警察官に記憶にないことを話したのかという点も,早く帰ってほしいのに居座られて仕事もできずに困った,いろいろと聞かれて,従わないとしょうがないなどとして,記憶にないことも言ったと認めたかと思えば,即座に,記憶にないことは言っていない,記憶にあることだけ言わないとしょうがないと述べて否定するなど(同18ないし20頁),言を左右にする信用性に欠けるもので,所論の主張を証明するものとは到底認められない。このような原審証言と整合する内容のH陳述書も同様に信用できない。 また,所論は,原決定は,Hの原審証言に信用性がないことから,H陳述書の明白性を吟味しており,明白性の判断の方法が誤っていると主張するが,H陳述書がHの原審証言と整合的であることは,まさに所論の主張するところであって,Hの原審証言の内容が信用できないものであれば,これと同旨のH陳述書の内容も信用できないことになるのは論理的帰結であるから,原決定の明白性の判断の方法に誤りがあるとはいえない。 なお,所論は,H陳述書に関連して,原決定は,証拠開示の勧告等の真実発見に向けた努力が著しく欠けており,審理不尽の違法があるとも主張している。これをH陳述書に限らず,原審の訴訟指揮全般に対する主張とみて,再審請求において時に証拠開示が重要な役割を果たすことがあることを考慮しても,本件において,新 証拠の新規性や明白性を判断するために,証拠開示が具体的に必要であると認められる場面が特段あるとも思われない。弁護人が,差戻前再審請求審における証拠開示命令申立 しても,本件において,新 証拠の新規性や明白性を判断するために,証拠開示が具体的に必要であると認められる場面が特段あるとも思われない。弁護人が,差戻前再審請求審における証拠開示命令申立(平成24年6月29日付け等)や,原審における証拠開示請求(令和元年8月30日付け)で開示を求めていた証拠について,原審が,開示するよう検察官に勧告したり,開示命令を発するなどの職権を発動しなかった(必要性が認められないか,関連性がないと判断したものとみられる。)ことが,審理不尽を招く違法なものであるとは認められない。 ⑶ G陳述書についてア G陳述書の要旨G陳述書において,G(本件当時,本件倉庫を申立人に貸していたLの妻)は,要旨,①本件の1か月弱前,本件倉庫の前を通ったとき,大扉が全開になっていたことがあり,申立人がいれば声をかけようと思い,本件倉庫の中に向かって大声で申立人の名前を読んだが,返事はなかった,②大扉の左側の窓には格子が窓1枚分しかはめられていないが,これは窓の内側に設置された荷物運搬用のエレベーターの鉄板がもう片方の窓を塞いでいるからであり,結局この窓は外から人が入ることはできない,③確定審で取り調べられた証拠では,事件があった翌日の朝に,自分が立会いをして本件倉庫の捜索が行われ,順次現金等が発見されたと記載されているが,自分が警察から連絡を受けて本件倉庫の中に入ったのは本件当日の夜だけであり,翌日には行っていない,などと陳述する。 イ G陳述書の信用性まず,原決定が説示するとおり,①の点は,約11年前に1回あったという客観的な裏付けもない話であり,②の点は,検察官の「再審請求に対する意見書⑶」添付資料8及び9によれば,本件倉庫の大扉の左側(西側)にある窓の西側半面には,内側に格子ははめられておらず,窓枠から倉 客観的な裏付けもない話であり,②の点は,検察官の「再審請求に対する意見書⑶」添付資料8及び9によれば,本件倉庫の大扉の左側(西側)にある窓の西側半面には,内側に格子ははめられておらず,窓枠から倉庫内エレベーターの壁面まで約35. 5㎝の間隔があり,E警察官と似た体形の警察官が再現した結果,その隙間から倉庫内に入ることが可能であることが認められ,Gの陳述はこれと矛盾する(なお, 再現したのは平成24年であるが,本件当時と比べて,侵入口となった窓付近に改装等による状況の変化があったとは認められない。)。また,③の点も,写真撮影報告書添付の写真に,陽光を透過している窓(1審検29番号1及び3)や,夜であれば見えないはずの本件倉庫前の景色(1審検52番号1)がGの背景として写っていることと矛盾する。この点につき,弁護人は,当審において,同じ場所で撮影したAの再現時の写真と比較して,陽光を透過していると指摘された光は,フラッシュで窓が白くなったものであり,実況見分は当日の夜間に行われた旨のGの供述を裏付けていると主張して,再審弁111を提出するが,同証拠は確定審で取り調べられた,1審検29と検142の主張に沿う写真を抜粋して並べただけのものであり,新規性が認められない。また,Aの撮影時間帯は夕方で撮影条件が異なり,写真の色合い・仕上がりも異なっていて比較にならない上,Gの写真3では,主張する窓ガラス部分のみ強烈にフラッシュの影響を受けていて,他はさほど感じられないというのも不自然であり,③の点を裏付けるものとは認められない。 以上によれば,Gの陳述は,全体として信用性に乏しいとした原決定の評価に誤りはない。 ウ Gの原審証言の信用性さらに,G陳述書の信用性を吟味するために原審で実施した証人尋問(以下「原審証言」ともいう。)の結 の陳述は,全体として信用性に乏しいとした原決定の評価に誤りはない。 ウ Gの原審証言の信用性さらに,G陳述書の信用性を吟味するために原審で実施した証人尋問(以下「原審証言」ともいう。)の結果をみると,その内容はG陳述書とおおむね同旨であるものの,①の点に関し,本件倉庫を通りかかって車を止めた理由について,最終的には,大窓が全開であったため,申立人が中にいると思い,付き合いはないが一応大家なので声を掛けようと思ったとの理由を答えるに至ったが(原審G証人尋問調書58頁),主尋問では,大扉が全開だったのでびっくりしたと供述したり(同7頁),物騒というのもあるとも供述したりしており(同59頁),内容的に,日中に大扉が開いていたからといって特段驚く理由などなく不合理であり,また,重要な点で供述が二転三転しており,同事実があったこと自体を疑わせる。③の点についても,昼間に撮影されたものと認められる前記写真を示され,昼間であることは認めつつ も,自分の写真だけ後で貼り付けたのではないかといぶかしむなど(同38頁),捜査機関への不信が強く,思い込みが疑われる供述も修正等する様子はない。また,大扉の南京錠の有無について,主尋問では,本件当時,外側に南京錠は付いていなかったと断言していたが(同6頁),反対尋問でその根拠を問われると,自分達が使用していた平成8年まではそうであったからとの理由を述べ,申立人が使用していた当時に付いていたかは分からないと認めており(同31,33頁),推測で断言したことが明らかとなっている。このような供述態度等に照らしても,Gの原審証言は信用性に乏しく,G陳述書の信用性についての前記判断を左右するものではない。 エ G陳述書の明白性以上によれば,G陳述書は,原審証言を踏まえた検討を経ても,全体として信用性 も,Gの原審証言は信用性に乏しく,G陳述書の信用性についての前記判断を左右するものではない。 エ G陳述書の明白性以上によれば,G陳述書は,原審証言を踏まえた検討を経ても,全体として信用性に乏しく,その陳述内容を前提としても,普段から,第三者が申立人の関与なく,本件倉庫内に立ち入ることが可能な状況にあったとの疑いが生じるものとはいえない。 そうすると,G陳述書は,確定審が間接事実⑥を認定する根拠とした,本件倉庫の大扉の施錠状況についての前述したHの確定審証言のほか,本件発生後間もない午後4時20分頃,本件倉庫の大扉が施錠されていて,E警察官が大扉西側の腰高窓から本件倉庫内に入った旨のE及びKの確定審証言の信用性を揺るがすものとは認められない。 以上とおおむね同旨の原決定の判断は,その理由として説示するところも含めて相当であり,誤りはない。 オ所論について所論は,Gの原審証言は具体的で迫真性があり,G陳述書とは極めて整合性が高いものであり,いずれも信用性が高いとして,信用性を否定する原決定の判断は一方的なものであると論難するが,前記検討のとおり,いずれもそのようには評価できず,間接事実⑥を否定するG陳述書は,申立人の有罪に合理的な疑いを生じさせる新証拠であるとの主張は,採用できない。 ⑷ I陳述書についてア原決定の要旨原決定は,I(中古家具の輸出業を営み,申立人に作業の手伝いを依頼するなどしていた)の陳述書は,確定審の控訴審において,弁護人が請求し(控訴審弁22),検察官に不同意とされてその請求を撤回するとともに,Iの証人尋問請求をしたが,裁判所が請求を却下したものであるとして,新規性を否定し,I陳述書の要旨は,「自分が本件倉庫に行ったときは,大概倉庫は開いていた。申立人以外にも,その知人らが入れ ともに,Iの証人尋問請求をしたが,裁判所が請求を却下したものであるとして,新規性を否定し,I陳述書の要旨は,「自分が本件倉庫に行ったときは,大概倉庫は開いていた。申立人以外にも,その知人らが入れ替わりやって来て,倉庫の中で自分の仕事をしていた。写真を見せてもらったAほか1名も申立人と一緒に働いていた。他にも何人かの黒人が本件倉庫で働いていた。」というものであるが,誰が鍵を管理しているか等について確認したものではなく,この陳述を前提としても,申立人の承諾なく第三者が本件倉庫内に立ち入ることが可能であった疑いが生じるものではないとした。このような原決定の判断は,新規性を否定した点は疑問があるが,その余は理由として説示するところも含めておおむね相当として是認できる。 イ所論についてこれに対し,所論は,証拠の新規性の判断は,証拠の未判断性の有無によるのであり,I陳述書は,裁判所にとって証拠として判断されていなかった以上,新規性は肯定されるべきであり,これを否定した原決定の判断は誤っていると主張する。 刑訴法435条6号にいう「あらたに発見したとき」(新規性)とは,裁判所にとっての証拠資料の未判断性をいうことは所論指摘のとおりであるが,その趣旨は,確定判決の有罪認定とは異なった事実認定を導くような新証拠が判決確定後に発見されたという意味での事情変更がなければならないと解されることからすると,既に裁判所による実質的な証拠価値の判断を経ているものかどうかが問題となる。この点,I陳述書は,確定審の控訴審段階で請求された証拠(控訴審弁22,平成17年2月22日付け)と同じものであるところ,控訴審における経過をみると,期日に先立つ同月23日に,弁護人から事実取調請求書が提出され,翌24日の第10 回公判期日において,正式に事実取調請求 2月22日付け)と同じものであるところ,控訴審における経過をみると,期日に先立つ同月23日に,弁護人から事実取調請求書が提出され,翌24日の第10 回公判期日において,正式に事実取調請求がなされたが,検察官が不同意意見であったため請求を撤回し,これに代わるものとして,同期日において同人の証人尋問を請求し(控訴審弁29),控訴審裁判所は,第11回公判期日において,立証趣旨(「被告人の倉庫に多くの黒人が出入りしていたこと,被告人と一緒にCが来たことがあることなど」)等によって,I陳述書の内容と同旨の証言内容を一応予測した上で,その証人尋問請求を却下したものと解される(なお,弁護人は,第12回公判期日にもI陳述書の事実取調べを再度請求し[控訴審弁73],不同意意見により撤回している。)。このような経過を踏まえると,確定審の控訴審の段階で,裁判所は,Iの証人請求を却下した時点で,I陳述書の証拠価値を一定程度判断したものと解され,したがって,I陳述書の新規性を否定した原決定の判断は一概に誤りであるとはいえない。しかし,Iの証人請求を却下した理由が記録上一義的に明確になっているわけではないし,裁判所にとって供述内容が明らかになっていないのに,その証拠の実質的な証拠価値についての判断が既になされているとすることには慎重であるべきで,このような場合に,新規性を一律に否定し,当初から再審を開始すべき根拠となる証拠から締め出すことには疑問がある。当裁判所は,このような見地から,明白性の判断を行うものである(もっとも,原決定においても検討を加えているところである。)。 所論は,Iが本件倉庫に行ったときには,大概倉庫は開いており,申立人以外にも,その知人らが入れ替わりやって来て,倉庫の中で自分の仕事をしていたとのことであり,間接事実⑥を否定するも ろである。)。 所論は,Iが本件倉庫に行ったときには,大概倉庫は開いており,申立人以外にも,その知人らが入れ替わりやって来て,倉庫の中で自分の仕事をしていたとのことであり,間接事実⑥を否定するもので,申立人の有罪に合理的な疑いを生じさせる新証拠であり,明白性を有するとも主張するが,採用できない。まず,I陳述書の内容を裏付ける証拠がないし,陳述書の内容をみても,内容自体から信用性の高さをうかがわせるようなものは見いだせないから,陳述書の信用性が高いとはいえない。また,I陳述書の内容を前提としても,申立人以外の者が本件倉庫に出入りしていたときに,申立人も一緒にいたのか否か,申立人が不在であっても,申立人以外の者に立入りについての許諾を与えていたのか否か,さらには,その場合の鍵 の管理状況等について,一切明らかとなっておらず,「申立人不在のときでも,本件倉庫が施錠されておらず,申立人の許可なく誰でも自由に出入りする状況にあったか否か」という点についての認定・判断に有意な影響を及ぼすものとは認められず,間接事実⑥を否定するものなどとはいえない。 ⑸ DVD(再審弁70)について本件DVDは,本件の一審判決前日にテレビで放映された,本件について取り上げた報道番組が録画されたものであるが,その中で,背を向けた男性がインタビューに答えて,「(本件倉庫は)大概開いていました。本人はいなくても鍵だけは開いていました。」と発言している場面があり,弁護人は,この男性がIであると主張している。しかし,男性の氏名等は明らかでない上,この発言自体,本件倉庫の鍵が開いていた具体的時期や状況等について言及のない漠然としたものであり,裏付ける具体的な資料もなく,信用性に乏しい。これと同旨を説示して,Hの確定審証言の信用性に疑義が生じるとはいえないとした の鍵が開いていた具体的時期や状況等について言及のない漠然としたものであり,裏付ける具体的な資料もなく,信用性に乏しい。これと同旨を説示して,Hの確定審証言の信用性に疑義が生じるとはいえないとした原決定の判断に誤りはない。 なお,本件DVDは,確定審の控訴審において弁護人から請求された「ビデオ・テープ1巻」(控訴審弁72の1,撮影者M放送,撮影日平成15年12月30日,立証趣旨「本件被告事件の真相を追及した番組取材の中で,近所の住民がNの事務所倉庫の扉がたいがい開いていたと述べたこと」)と同じ内容を録画したものと考えられる。そうだとすれば,検察官が不同意意見を述べ,裁判所は証拠請求を却下したものであるから,立証趣旨等に照らして予想される証拠の中身から判断したものと解され,原決定の立場からすれば,新規性の問題もあるということになろう(原決定は言及してはいない。)。 まとめアこの関係で申立人が提出した証拠は,確定審段階で既に詳細な証人尋問が行われている者の陳述書が複数あり,念のため,原審において再度証人尋問を行っても,内容が異なっている部分について,なぜ確定審段階での供述よりも,陳述書の方が信用できるのかといった点で全く合理的な説明ができないものばかりであり, 信用性を肯定することはできない。また,その余の原決定が新規性を認めなかったもの等を検討しても,信用性を肯定し難いか,内容自体が確定審の事実認定に疑問を抱かせるようなものを含んでいないものであることは前述したとおりである。 イ以上のように,この関係で申立人が提出する証拠は,いずれも,確定審段階の他の証拠と比較する以前の,新証拠とされる証拠それ自体の一定の信用性,いわば最低限の証明力ともいえるものすら肯定できないものであり,これらの証拠と立証命題において関連する確 ,いずれも,確定審段階の他の証拠と比較する以前の,新証拠とされる証拠それ自体の一定の信用性,いわば最低限の証明力ともいえるものすら肯定できないものであり,これらの証拠と立証命題において関連する確定審段階の証拠の検討も本来必要がないと思料される。 しかし,事件当日の午後4時20分頃(事件発生から約1時間10分後),本件倉庫に赴いたところ,扉が施錠されていて,E警察官が大扉西側腰高窓から本件倉庫に入り,中に犯行に使用された本件シルビアが駐車されていたという,E及びKの確定審における各証言は,申立人の実行犯人性にとって極めて重要な意味を有しており,所論は,これらも信用できないというので,新証拠も踏まえて,念のためその信用性について検討を加え,確定審におけるこれらの証言の本件における証拠上の意味を再確認する。 ウまず,E及びKの各供述の信用性を疑うべき証拠は現在に至るも存在しない。 すなわち,この点を直接弾劾する目的と思われるGの陳述書は,前述したとおり信用できない。再論すれば,Gは腰高窓からは人が入ることはできないはずだというが,本件倉庫の大扉の左側(西側)にある窓の西側半面には,内側に格子ははめられておらず,窓枠から倉庫内エレベーターの壁面まで約35.5㎝の間隔があり,E警察官と似た体形の警察官が再現した結果,その隙間から倉庫内に入ることが可能であることが認められ,Gの陳述はこれと矛盾する。また,このE警察官の行動は,捜査の最も初期のもので,本件倉庫内に本件シルビアを発見し,それを警察署に連絡したことによって捜査が進展した端緒でもある。そのような初期の段階で,本件倉庫に立ち入るにつき,わざわざ窓から本件倉庫に立ち入ったなどと虚偽の供述をすることは考え難いし,その場にいた民間人であるKも同じ供述をしていることからも,E供述の信用性は裏付 な初期の段階で,本件倉庫に立ち入るにつき,わざわざ窓から本件倉庫に立ち入ったなどと虚偽の供述をすることは考え難いし,その場にいた民間人であるKも同じ供述をしていることからも,E供述の信用性は裏付けられている。さらに,もしGが陳述書や原審で 供述するように,腰高窓から人が入ることが物理的に不可能であったならば,事実関係を激しく争っていた確定審の段階で当然問題とされ,人が入れなかったことが客観的に明らかになっていたものと思われる。この点のE供述の信用性に疑問の余地はない。 エそして,E警察官によれば,本件倉庫内には,犯行に使用された本件シルビアが入口からみて奥側に,その手前にもう1台の申立人保有車両が駐車されていたのである。仮にもし,本件倉庫が施錠されておらず,申立人以外の者が本件倉庫に入り込む余地があったとしても,実行犯は,犯行後E警察官が本件倉庫に到着する前に本件シルビアを倉庫内に駐車し,その後扉が施錠されたということになる。しかし,本件倉庫の扉を施錠するには,大きな扉を内側で施錠した上で(こちらの南京錠には錠自体に鍵が付いていたというから鍵の所持は問題にならない。),小さな扉から出て,外側から小さな扉を施錠する必要があり,どうしても小さな扉を施錠するための鍵が必要である。この点,実行犯であることの明らかなAは,本件犯行前に本件倉庫に入ったときは,施錠はされておらず自由に入れたし(確定審第13回公判A証人尋問調書9頁),犯行後に行った時も開いていたし(同18頁),現金を隠匿し,ナンバープレートを焼き切って本件倉庫を出た時も,鍵は掛かっていなかったし,当時A自身はその鍵を持っていなかった(同24頁)と供述している。 Aの供述は,共犯者が申立人ではなくCであるとの前提であるが,自身が扉の鍵を持っていたか否かについてまで,あえ 掛かっていなかったし,当時A自身はその鍵を持っていなかった(同24頁)と供述している。 Aの供述は,共犯者が申立人ではなくCであるとの前提であるが,自身が扉の鍵を持っていたか否かについてまで,あえて虚偽の説明をする必要があるとは思えない。 Aが鍵を掛けていないとすれば,その際かその後誰かが鍵を掛けたとしか考えられないが,この時点で鍵を掛けた人物としては,他に可能性のある人物がうかがわれないことも併せ,現実的には申立人以外には考え難い(なお,申立人は,Cが本件倉庫の鍵を持っていて,それで施錠したというが(確定審第9回公判被告人供述調書30頁),申立人の弁解は,変遷著しく,内容的にも,不自然,不可解,不合理であって,全体的に到底信用できないことは,確定判決が的確に指摘するとおりであって,その評価を揺るがすような事情は全くうかがわれない。)。 オ以上によれば,本件犯行から約1時間10分後に本件倉庫の扉が施錠されていた事実は,実行犯が,犯行後郵便局から本件倉庫まで本件シルビアで逃走し,本件倉庫内に立ち入って,倉庫内に本件シルビアを駐車させ,現金を本件倉庫内の複数箇所に隠匿し,さらには本件シルビアに取り付けてあったナンバープレートを取り外して焼き切るといった作業をした後,本件倉庫を出て,その際施錠したものと考えるのが最も合理的である。本件倉庫内には,本件犯行の目的である現金や,本件シルビア,焼き切ったナンバープレートなどという本件犯行の極めて重要な証拠が残された状態であったから,犯人が鍵を持っていたら,犯人以外の者が立ち入ることのないように施錠するのが通常であろう。こういった事情は,郵便局での犯行からの時間的間隔や他に鍵を掛ける可能性のある人物がいないことをも併せ考慮すると,本件倉庫の借主でその鍵の保管者である申立人が,郵便局強盗の 施錠するのが通常であろう。こういった事情は,郵便局での犯行からの時間的間隔や他に鍵を掛ける可能性のある人物がいないことをも併せ考慮すると,本件倉庫の借主でその鍵の保管者である申立人が,郵便局強盗の実行犯であると推認させるもので,その推認力は相応に高いといえる。 カこのように考えると,本件倉庫を申立人が管理していたとの事実は,申立人の関与なしでは本件犯行はありえないという意味で犯人性を基礎づけるものであることはもとより,申立人が実行犯であることをも相応に推認させるものといえ,これに反する客観的な事情は見いだせない。確定判決における推認の構造も,これと同様であると理解できる。 3 申立人の実行犯人性に関する証拠について所論所論は,本件差戻決定は,申立人が実行共同正犯かその他の共犯かによって,間接事実の持つ意味や構造に変化が生じる可能性があることを認めているところ,弁護人が提出した,防犯カメラの映像に関する証拠等から,「Aが目出し帽を脱いでいなかった事実」が証明されたとして,これにより郵便局に遺留されていた緑色目出し帽(以下「緑色目出し帽」という。)を着用していた人物はAではなかった,すなわち,もう1人の実行犯人であったことになり,その目出し帽の付着物に関する証拠は,申立人の実行犯人性を認定する上で極めて重要な証拠であり,間接事実の持 つ意味や構造に変化が生じているとする。しかし,原決定は,こうした観点から,各証拠(特に緑色目出し帽の付着物に関する証拠)を十分に吟味,検討していないから,原決定には審理不尽の違法があり,また,証拠の明白性の判断を誤ったものであると主張する。 しかし,結論からいえば,弁護人が刑訴法435条6号に該当する新たな証拠として提出した,申立人の実行犯人性に関する証拠の中に,同号の要件を充たすもの 拠の明白性の判断を誤ったものであると主張する。 しかし,結論からいえば,弁護人が刑訴法435条6号に該当する新たな証拠として提出した,申立人の実行犯人性に関する証拠の中に,同号の要件を充たすものはない。以下,原決定の理由の要旨を証拠の種類毎に示しつつ,所論に鑑み説明する。 ⑵ 防犯カメラの映像に関する証拠ア原決定の要旨弁護人は,新たに提出した鑑定書等によれば,確定審において防犯カメラの映像として取り調べられた2本のビデオテープ(1審検160,162。以下それぞれ「検160ビデオ」「検162ビデオ」といい,これらを指して「本件ビデオテープ」ともいう。)は,いずれも捜査機関が意図的に偽造,改ざんしたものであることが明らかであり,これらの中の画像がいわゆる「砂嵐」(砂嵐状の画像の乱れ)となっている部分を復元したというDVD(再審弁86,以下「修復DVD」ともいう。)及びその「砂嵐」直前のコマ割り写真(15時13分41秒の30コマ)(再審弁92,以下「コマ割り写真」ともいう。)によれば,Aが郵便局で目出し帽を脱いでいなかったことが認められ,郵便局に遺留されていた目出し帽はA以外の実行犯人が遺留したものということになり,この事実関係は申立人の実行犯人性に疑いを生じさせるものであると主張している。 これに対し,原決定は,修復DVD及びコマ割り写真を参照してみても,「砂嵐」となっている部分が復元されているとは認められず,Aが郵便局内で目出し帽を脱いでいなかったという事実も認められないから,弁護人の主張は前提を欠き,防犯カメラの映像に関する証拠は,いずれも申立人の実行犯人性に合理的疑いを生じさせるに足りるものではない,と判断した。 このような原決定の判断は,その理由として説示するところも含めて,おおむね相当であり,是認 証拠は,いずれも申立人の実行犯人性に合理的疑いを生じさせるに足りるものではない,と判断した。 このような原決定の判断は,その理由として説示するところも含めて,おおむね相当であり,是認することができる。 イ所論についてこれに対し,所論は,修復DVDの映像等,防犯カメラの映像に関する証拠から,明らかにAが目出し帽を脱いでいなかったことは,客観的に証明された事実であると主張する。すなわち,①仮に15時13分42秒の画像がなかったとしても,その前後である15時13分41秒及び15時13分43秒の画像において,Aの体勢は同じであり,目出し帽を脱いだ事実は認められない,また,②15時13分41秒のコマ割り写真において,Aの体勢にほとんど変化は見られず,15時13分42秒の1秒間に,目出し帽を脱いでまた同じ体勢に戻ることは物理的にあり得ないというのである。そうすると,郵便局の床に遺留されていた緑色目出し帽は,Aが着用していたものではなかったことになり,共犯であったもう1人の人物が着用していたことになるのであり,原決定は,Aが目出し帽を脱いだとした点で,重大かつ明白な事実誤認を犯していると主張する。 そこで,一件記録に加え,当審における事実取調べとして行った,兵庫県警察本部刑事部科学捜査研究所のOの証人尋問の結果をも踏まえて検討する。まず,原決定が指摘するとおり,修復DVDの時刻の表示は,「砂嵐」が始まる直前の画像(15時13分41秒)と「砂嵐」が終了した直後の画像(15時13分43秒)との間で秒数が飛んでおり(15時13分42秒がない),「砂嵐」部分をカットしてつなぎ合わせたものといえ,所論がいう,「砂嵐」を復元したといえるようなものではない。 なお,この点につき,2点補足しておく。1点目は,弁護人が,令和3年6月2 ない),「砂嵐」部分をカットしてつなぎ合わせたものといえ,所論がいう,「砂嵐」を復元したといえるようなものではない。 なお,この点につき,2点補足しておく。1点目は,弁護人が,令和3年6月23日付け即時抗告審意見書において,原決定が,15時13分42秒の画像は確認できないとしているのは,再審弁114にその時刻の画像が存在するから誤りであると主張している点である。しかし,この主張は失当である。原決定は,弁護人が,画像が砂嵐になっているその42秒の部分を復元したものとして修復DVDを提出 したので,これを調査したところ,肝心な42秒の部分が飛んでいて画像が確認できないので(当裁判所も確認したが,42秒の部分は飛んでいる。),その旨を述べただけであり,何ら誤りではない。弁護人が存在すると主張する,再審弁114の42秒の画像(コマ割り写真)を詳しく見ても,極めて不鮮明で,その前の画像も含めて通常の状態の画像とは到底いえないもので,わずかに判別できる画像も,41秒から43秒への経過の画像として特段不自然な点があるわけでも,弁護人の主張を特段裏付けるわけでもない。 2点目は,即時抗告申立書に,「15時13分42秒の映像を復元したパターンもあるので,あらためて提出する。」と記載している点である。当裁判所としては,弁護人に再三提出を促したが,復元された修復DVD(動画)は提出されることはなかった。 そして,修復DVD及びコマ割り写真に加え,当審で弁護人が提出した,2本の本件ビデオテープの全コマ割り写真(再審弁108)をも参照して,「砂嵐」になる前後のAの動きを見ると,15時13分39秒から41秒にかけて,郵便局のロビーを奥から出入口の方へ歩きながら,雨合羽のフード部分を両手で持って,前方ないし斜め上方に引っ張り上げては,その手を下げて 前後のAの動きを見ると,15時13分39秒から41秒にかけて,郵便局のロビーを奥から出入口の方へ歩きながら,雨合羽のフード部分を両手で持って,前方ないし斜め上方に引っ張り上げては,その手を下げて頭部に置き,またフード部分を持って同様に引っ張り上げて,何かを脱ごうとする動きを二,三回繰り返している。「砂嵐」になる直前の同41秒について更に子細に見ると,最初,後頭部に雨合羽の後ろの裾が掛かり,もう少しで頭が抜けて脱げそうになるぐらいまでフード部分を引っ張り上げていたが,一旦手を下げて頭頂部付近に置き,またフード部分を上方へ引っ張り上げていたところで「砂嵐」となり,「砂嵐」が終了した直後の同43秒の画像では,雨合羽から手を離し,フードをかぶって雨合羽を普通に着用した元の状態に戻っており,以後,同45秒に手でフードを下に引っ張り下ろす感じで画面左へと消えるまで,前同様のフード部分を引っ張り上げる動作はしていない。 このように,15時13分39秒から「砂嵐」の最中である42秒にかけて,歩きながら雨合羽のフード部分を前方ないし斜め上方に引っ張り上げては戻すことを 繰り返していたAの動きと,緑色目出し帽が遺留されていた地点が,本件郵便局の窓口ロビーの床上,記入台右端付近の点字ブロック上であり(1審検21,現場見取図3㋑,写真36ないし41),Aが前述の動きをしながら歩いていた経路上におおむね位置していることに照らすと,遺留品の緑色目出し帽は,Aが雨合羽のフードの下に着用していたものが,一連の引っ張られる動きの中で脱げて,床上に落下したものと認めるのが合理的である。 確かに,所論が強調するように,防犯カメラの画像上,目出し帽が脱げて落下している状況を確認することはできない(この点はO証人も確認できないとしているし,当裁判所としても,防犯 るのが合理的である。 確かに,所論が強調するように,防犯カメラの画像上,目出し帽が脱げて落下している状況を確認することはできない(この点はO証人も確認できないとしているし,当裁判所としても,防犯カメラの映像を子細に検討したが確認はできなかった。)。 しかし,Aが,カウンター上に設置された一番奥側(金庫室側)の案内板(ロビー側から見て,上部上段が緑色[貯金,為替,振替,年金,恩給と記載],上部下段が青色[簡易保険と記載]で,下部は透明素材のもの)の向こう側を歩いていたときは,防犯カメラの撮影方向上,案内板で死角になっており,Aの体自体も一部見えなくなっている(15時13分39秒から40秒)ほか,防犯カメラ画像の鮮明度も考慮すると,落下の瞬間が画像上確認できないことが,結論として前記認定に疑問を抱かせるものとはいえない。これに対し,所論は,前記認定のとおり,「砂嵐」の直前と直後とでは,Aの体勢や動きに大きな違いがあるにもかかわらず,前記①②のとおり,直前直後の画像でAの体勢は同じであるとしており,その前提にまず疑問がある。そして,その間の「砂嵐」になっていた約1秒の間に目出し帽を脱いだとは認められないから,Aは目出し帽を脱いでいないと主張するが,目出し帽が脱げて落下した可能性をごく自然に想起できる「砂嵐」になる直前の同人の動きを完全に捨象して結論付けている点で不合理であり,採用できない。防犯カメラの画像上,「砂嵐」になる前は,Aの顔面左側が写っているものもあるが,不鮮明であり,顔の前に垂れてきて邪魔だったという白い布がどうなったのか,雨合羽のフードの下に着用している目出し帽の有無を読み取ることは困難であるし,「砂嵐」の直前以後は,左後方からの角度で撮影されているため,Aの顔面付近は写っておらず,「砂 嵐」が終了した直後の時点で ドの下に着用している目出し帽の有無を読み取ることは困難であるし,「砂嵐」の直前以後は,左後方からの角度で撮影されているため,Aの顔面付近は写っておらず,「砂 嵐」が終了した直後の時点で,同人が目出し帽を着用しているのか否かは不明であって,Aが目出し帽を脱いでいなかったことが客観的に証明されたという所論の根拠は,「砂嵐」の1秒間で着脱するのは不可能であるという前述の推論以外に指摘はなく,客観的に証明されたなどとは到底いえない。 また,防犯カメラの画像上,もう1人の実行犯人の姿は,目出し帽を着用した状態でカウンターを乗り越えて事務スペース内に入って以後,後述のとおり,防犯カメラの画像上,ATMコーナーとロビーの間の出入口に近いカウンター付近を逃走しようとする姿が画像の左端に一瞬写り込んでいるのみで,カウンター外のロビーにいるところは一切写っておらず,緑色目出し帽の遺留場所は,もう1人の実行犯人が通った経路上にあるとは認められない。 これに対し,原審において,弁護人は,防犯カメラの映像によれば,15時13分58秒において,A以外の実行犯人が郵便局の室内から出ていくところが一瞬撮影されており(再審弁93),同人はカウンターの外側を屈みながら移動したのであり,その際,緑色目出し帽を脱いだ結果,遺留されたものであると主張している。 この点,原決定は,弁護人が指摘する前記写真を参照しても人物の姿は確認できないとするが,この点は賛同できない。捜査報告書(1審検20)によれば,警察は,捜査段階から,弁護人指摘の前記画像の人物を指して,被疑者が犯行後逃走する最終映像であるとして,犯行時刻の終期としていたものである上,当審で提出された全コマ割り写真を参考にすれば,15時13分45秒にAが左の方に消えて,誰も映らない状況が続いた後,15時13 後逃走する最終映像であるとして,犯行時刻の終期としていたものである上,当審で提出された全コマ割り写真を参考にすれば,15時13分45秒にAが左の方に消えて,誰も映らない状況が続いた後,15時13分58秒にそれまで認められなかった黒っぽい人物らしきものが左端に一瞬写り込み,左の方に消えるという前後の状況が確認できる(当審における証人尋問において,O証人も,これが人物らしきものに見えることを肯定している(O証人尋問速記録44頁。以下,証人と頁数で略す。)。)。これはA以外のもう1人の実行犯人が逃走する際に写り込んだものと考えるのが合理的であり,これを前提とする所論の指摘は,その限度では理由がある。 しかし,全コマ割り写真で前後の状況をみると,A以外のもう1人の実行犯人は, 15時13分58秒に突如として画像の左端に現れたものであるところ,事務スペース内,右奥後方の高所から撮影している防犯カメラの画像上,カウンター外のロビーにいたにもかかわらず,撮影範囲内に一切写り込まないというのは,弁護人がいうように,いくら腰を屈めて移動するなどしたとしても,およそ考え難い。防犯カメラの撮影範囲外の直近左側には,他の窓口カウンター(約94cm)よりも高さが一段低くなっているカウンター(約70cm)があること,そのカウンターの左前方の先に観葉植物があり,その左側に椅子が置かれていたが(1審検21,現場見取図3,写真39等),もう1人の実行犯人が写っているときには隠れて見えなくなっていることからすると,同人が椅子の手前に現れたため遮られて写っていないと考えられること,その一段低いカウンターの向こう側のロビー床上に,金庫室から取ってきた現金の一部である札束3束が遺留されていること(1審検22,1階見取図No6)からすると,A以外のもう1人の実行犯人 えられること,その一段低いカウンターの向こう側のロビー床上に,金庫室から取ってきた現金の一部である札束3束が遺留されていること(1審検22,1階見取図No6)からすると,A以外のもう1人の実行犯人は,金庫室から出てきて,この低くなっているカウンターに至り,同カウンターを乗り越えてロビーへ出た際に,被害現金の一部を落として逃走したものと推認できる。遺留された緑色目出し帽がもう1人の実行犯人が着用したものであることの説明として,同人がカウンターの外を屈みながら移動したとする所論は採用できない(そもそも,逃走するのに,わざわざカウンターの外の部分という極めて一部の区間だけ屈みながら進むというのは相当不自然であり,通常そのような逃走の仕方をするとは考え難い。)。 加えて,Aは,確定審の捜査・公判を通じて,カウンターを乗り越えた共犯者についてはCであるとしつつ,自身は,ロビーの奥の扉まで行き隙間から傘を差し込んで振るなどした後,ロビーを戻って外へ出た旨,犯行時の動きについて供述していたところ,目出し帽については,捜査段階(1審検136),自身の公判(1審検186,11頁)を通じ,運転して逃走する際には,目出し帽を着用していなかったことを認めており,一方,Cだとするもう1人の実行犯人が郵便局から出てくるとき,目出し帽の上に雨合羽のフードをかぶっていたと明確に供述していたのであり(1審検186,13頁),これらの点の信用性を疑う理由はない。 以上によれば,緑色目出し帽を遺留したのはAであると認められ,これに反する前提に依拠した所論は採用できない。 ウ捜査機関による本件ビデオテープの改ざん等をいう所論についてさらに,原審において弁護人は,本件ビデオテープは,捜査機関が意図的に偽造,改ざん等したものであると主張し,画像鑑定書等を ない。 ウ捜査機関による本件ビデオテープの改ざん等をいう所論についてさらに,原審において弁護人は,本件ビデオテープは,捜査機関が意図的に偽造,改ざん等したものであると主張し,画像鑑定書等を提出していたが,所論もこれと同旨の主張の下,全コマ割り写真で分析したところによると,これまでの検察官の説明は虚偽であり,本件ビデオテープには意図的に作為が介入していることが明らかとなったと主張し,当審で関連する証拠を追加提出している(再審弁108のほか,109,114)。すなわち,原審において,弁護人が,画像鑑定書等(再審弁31の1,2等)の結果を基に,防犯カメラ映像にはカウンター内にいた犯人の姿が記録されていた可能性,あるいは,その犯人が写っていなくとも,カウンター外にいた犯人がAか否か判明する事情が記録されていた可能性があったところ,高速再生や「砂嵐」によって,目出し帽を脱いだ犯人の顔が見られないように捜査機関により改ざんされている可能性が非常に高いなどと主張している。 この点につき,原決定は,郵便局の防犯カメラのタイムラプス記録方式(ビデオテープの記録時間を延ばすために時間間隔を空けて間欠録画する,コマ落とし撮影の方式)の2つのモード(平時の「間欠モード」と警報装置のボタンが押されることで切り替わる「連続モード」)の特徴,同方式で録画された映像を確認する場合の再生方法,間欠モードで録画された映像を一般のビデオデッキ(連続モード)で再生した場合に起きる現象(2つのフィールドが重なった状態となるフレーム再生,早送りのような映像),その作成経過によれば,検162ビデオは検160ビデオ(原本テープ)の単純な複製ではなく,ノイズ(砂嵐)の発生やノイズ時間の長さといった点で異なる可能性があること,本件ビデオテープを通常のビデオデッキでダビングした ば,検162ビデオは検160ビデオ(原本テープ)の単純な複製ではなく,ノイズ(砂嵐)の発生やノイズ時間の長さといった点で異なる可能性があること,本件ビデオテープを通常のビデオデッキでダビングしたVHSテープ又はそれを更にデータ化したDVDを再生した場合,検160ビデオを基にしたものではフレーム再生,早送りのような映像となることなどが考えられるが,検162ビデオを基にしたものではフレーム再生はされないこ となどが考えられることを認定した上で,以下のとおり結論付けた。弁護人が問題としている「砂嵐」は,郵便局員が警報装置のボタンを押したことで録画モードが間欠モードから連続モードに切り替わった後,再び間欠モードに戻った際に生じたものと考えて矛盾がなく,「砂嵐」が生じている時間帯にA以外の実行犯人は画面に写っていなかったものと考えられることからすると,捜査機関において,申立人が本件強盗の実行犯人ではないことを隠蔽する目的で,A以外の実行犯人が写っていない時間帯の画像を消去して,「砂嵐」を作出したなどとは到底考え難く,意図的に偽造,改ざん等したものであるとは認められない,画像鑑定書等で示されている見解は,いずれも,タイムラプス方式で記録されたVHSテープの特性等を正解しないものであるか,あるいは,その見解から直ちに捜査機関が原本テープに故意に改ざん等を加えたと疑うことはできないものなどであって,原決定の判断を左右するものではない,とした。 このような原決定の認定,判断は相当であって,誤りはなく,当裁判所としても是認できる。なお,当審における事実取調べの結果も踏まえて更に付け加えると,警報装置のボタンを押したことで連続モードに切り替わった後,約19秒後に再び間欠モードに戻った理由について,前記O証人は,警報ボタンの押下により間欠モード 実取調べの結果も踏まえて更に付け加えると,警報装置のボタンを押したことで連続モードに切り替わった後,約19秒後に再び間欠モードに戻った理由について,前記O証人は,警報ボタンの押下により間欠モードから連続モードに切り替わった後,再び元の間欠モードに戻るまでの時間が設定でき,その際には,タイムラプスビデオデッキと,ATMと局内のカメラを切り替えるフレームスイッチャーの双方について設定する必要があるところ,本件の防犯カメラ映像を見ると,再び間欠モードに戻った後は,警報ボタン押下前のように,ATMと局内が交互に映し出されず,ずっと局内のみが映し出されている,このことからすると,フレームスイッチャーはきちんと2分間なり5分間なり一定の時間は局内のみを撮影するよう設定されていたため,平時と異なり局内のみがしばらく映し出されていたのに対し,タイムラプスビデオデッキの方が間欠モードに戻るまでの時間が設定されておらず,工場出荷時のままであったために,警報アラームが切れる時間にずれが生じ,緊急事態としては短すぎる僅か19秒で元の間欠モード に戻ることになってしまったのではないかと考えられる旨説明している。このような説明は,ある程度専門的知見に基づくもので,かつ,実際に録画されている映像等を合理的に説明するもので,信用できる。このことからも,捜査機関がAが目出し帽を脱ごうとするタイミングで故意に「砂嵐」を起こした可能性を疑う弁護人の主張は採用できない。 以下,所論に鑑み,若干補足する。 所論は,本件ビデオテープには,明らかに,A以外の人物がもう1人撮影されており,カウンター内にいた人物がいることが判明したのであるから,画像鑑定書には新証拠としての明白性が認められ,このことは全コマ割り写真によって証明されるものであると主張する。 しかし,そ 影されており,カウンター内にいた人物がいることが判明したのであるから,画像鑑定書には新証拠としての明白性が認められ,このことは全コマ割り写真によって証明されるものであると主張する。 しかし,そのようなことは確定審で取り調べた本件ビデオテープの映像や写真化した証拠から,とうに明らかになっていた事実であり,それを手がかりにして,A以外のもう1人の実行犯人が着用していた雨合羽や運動靴の色を特定し(1審検19),同人がカウンターを乗り越える直前にロビーに立っている姿から推定身長を割り出して,Aと整合しないことが判明するなど(1審検164,131),捜査が進展していったのであって,新たに判明した事実でも,全コマ割り写真によって証明されるものでも全くなく,画像鑑定書が新証拠であるという説明になっていない。 その他,所論は,防犯ビデオの改ざんについて,検160ビデオと検162ビデオを元にした全コマ割り写真の枚数の違い等から,改ざんを疑わせるとする不審点を縷々指摘し,①例えば,15時12分15秒の場合,検162ビデオの映像では,1秒間あたり38枚ものフレームがあり,検察がこれまでしていた,タイムラプス方式の72時間モード(間欠モードのこと)で記録された場合には,1秒あたり1.6枚の静止画が撮影されるとの説明と矛盾している,②検160ビデオの映像も,ATMコーナーの映像と,郵便局内の映像とが重なって撮影されており,検察がこれまでしていた,これらが交互に写真撮影されていたとの説明は虚偽であることなどを挙げる。 そこで,これらについても検討すると,まず,ビデオ画像は,奇数フィールド(奇数の走査)と偶数フィールド(偶数の走査)の2つのフィールドが組み合わさって1フレーム(1コマ)の画像が作られており,1秒間で30フレーム(30コマ), と,まず,ビデオ画像は,奇数フィールド(奇数の走査)と偶数フィールド(偶数の走査)の2つのフィールドが組み合わさって1フレーム(1コマ)の画像が作られており,1秒間で30フレーム(30コマ),60フィールドで構成され(奇数フィールドと偶数フィールドの間隔が1/60秒),それが連続的に流れることで映像になっている(O3ないし5頁)。 この点,検160ビデオ(原本テープ)の中で,当初(通常モードに切り替わる前),間欠モード(72時間モード)で録画されていた映像は,郵便局入口のATM(奇数フィールド)と局内(偶数フィールド)の2か所の画像が,フレームスイッチャーで切り替えられて,約0.6秒毎に交互に映し出されて,タイムラプスビデオデッキに間欠録画されたものである。このようなタイムラプス記録方式で録画された映像を再生して確認する際には,タイムラプスビデオデッキを用いて,記録時間モードと同じモードで再生する必要があり,一般のビデオデッキ(連続モード)を用いて,間欠モードで録画された映像を再生した場合,1フレームでしか表示せず,1秒間に30フレームを表示するものであるため,ATMと局内の2つのフィールドの画像が重なって,更に早送りされたような状態で(1/30秒に1フレーム)表示されること,⒝間欠モードで録画された映像を通常のビデオデッキでダビングしたVHSテープ又はそれを更にデータ化したDVDを再生した場合も,これと同様の映像となること(O49頁)は,原決定も説示するところである。他方,タイムラプスビデオデッキを用いて,間欠モードで録画された映像を適正なモードで再生した場合は,フィールド画像を電気的な補間処理をしてフレーム画像とし,約0.6秒毎にATM画像,局内画像と交互に切り替わりながら表示される。そして,⒝これをDVD(1秒間30フレー 正なモードで再生した場合は,フィールド画像を電気的な補間処理をしてフレーム画像とし,約0.6秒毎にATM画像,局内画像と交互に切り替わりながら表示される。そして,⒝これをDVD(1秒間30フレームで構成される)にダビングすると,ATMの同じ画像がコマ送りで0.6秒間に約18フレーム続き,次に局内,またATMと同様に繰り返される(令和3年5月17日付け検察事務官作成の報告書添付資料6,8,9枚目参照)。 以上を前提に,全コマ割り写真についてみると,その左欄は,検160ビデオを 一般のビデオデッキの連続モードで数回ダビングし,更にデータ化したDVDを元に画像化されたものであり(再審弁101,検察官「再審請求に対する意見書⑹」別添の図1「各メデイアの相関図(2087丁)),前記⒝に該当する。また,その右欄は,検162ビデオを同様に数回ダビングし,更にデータ化したDVDを元に画像化されたものであるところ(再審弁102),検162ビデオは検160ビデオ(原本テープ)の単純な複製ではなく,タイムラプスビデオデッキで,検160ビデオを記録モードに合わせて再生モードを切り替えて適正なモードで再生し,一般のビデオデッキを用いて連続モード録画でダビングして作成されたものであるから,前記⒝に該当する。 そうすると,右欄で1秒間あたり38枚ものフレームがあるのは,間欠モードでは1秒あたり1.6枚の静止画が撮影されるとの説明と矛盾するという所論①の点は,検162ビデオをダビングしたものをデータ化したDVDのコマ割り写真である右欄の場合,0.6秒毎に約18フレームと多くなることは前記⒝のとおりであり,そこで前提とされている,「0.6秒毎に1枚の静止画が撮影される」を言い換えると,「1秒あたり1.6枚記録される」(1フィールド÷0.6秒=約1 約18フレームと多くなることは前記⒝のとおりであり,そこで前提とされている,「0.6秒毎に1枚の静止画が撮影される」を言い換えると,「1秒あたり1.6枚記録される」(1フィールド÷0.6秒=約1.66フィールド/1秒あたり)ということになるのであり,何ら従前の検察の説明と矛盾するものではない(O9頁)。さらに,O証人によれば,これを表示時間1秒あたりのフレーム数として合計すると,秒によって約36フレームになることが認められ(令和3年5月17日付け検察事務官作成の報告書添付資料10枚目参照),所論が例として挙げた15時12分15秒におけるフレーム数が,1秒間あたり38枚というのは誤差の範囲内といえ,O証言に整合する枚数であって何ら矛盾はない。 また,左欄でATMと局内の映像が重なって撮影されており,交互に撮影されていたとの説明は虚偽であるという所論②の点も,前記⒝のとおり,左欄は,検160ビデオを適正なモードで再生せずに,通常のビデオデッキで連続モードで再生したために,そのダビングしたものをデータ化したDVDのコマ割り写真は,元々は0.6秒毎に1フィールド,ATMと局内の2つのカメラで交互に映し出された 画像が間欠録画されていたのが,DVDでは2つのフィールドが重なった状態になった上,更に1秒間に30フレームが重なって,ATMと局内の画像が重なった状態のコマ割り写真が1枚出てくることになったにすぎず,原本では交互に撮影されていたとの説明に何ら虚偽はない(O32頁以下)。 以上のとおり,本件ビデオテープが捜査機関によって意図的に偽造,改ざん等されたものであると主張する所論は理由がない。 ⑶ 目出し帽の付着物に関する証拠ア原決定の要旨原決定は,㋐郵便局に遺留されていた緑色目出し帽について,申立人の毛髪やDNA型が検 ,改ざん等されたものであると主張する所論は理由がない。 ⑶ 目出し帽の付着物に関する証拠ア原決定の要旨原決定は,㋐郵便局に遺留されていた緑色目出し帽について,申立人の毛髪やDNA型が検出されず,申立人及びAの毛髪とは類似性の乏しい人毛が付着しており,付着物から申立人及びAのものとは一致しないDNA型が検出された事実(再審弁26,27の1,89),㋑本件倉庫から発見された青色の目出し帽(以下「青色目出し帽」という。)について,申立人の毛髪やDNA型が検出されず,付着物から申立人及びAのものとは一致しないDNA型が検出された事実(再審弁28の1)が認められ,申立人の実行犯人性に合理的な疑いが生じる旨の弁護人の主張に対し,㋐については,緑色目出し帽をAがかぶっていたことは動かし難い事実であると認められ,犯行時にA以外の実行犯人がかぶっていたものとは認められないから,申立人の実行犯人性とは無関係である,㋑については,申立人が青色目出し帽をかぶっていたら必ず申立人のDNA型等が検出されるといえるものではないし,弁護人依頼に係る鑑定が実施されるまでの間には長い年月が経過し,保管者や場所が移動するなどしており,捜査関係者など複数の者が直接触れた可能性等を否定できないから,青色目出し帽の付着物から申立人及びAのものとは一致しないDNA型が検出されたからといって,それが本件強盗の実行犯人のものであるとは断定できず,申立人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえないと判断した。 このような原決定の判断は,その理由として説示するところも含めて相当であり,是認できる。 イ所論について所論は,緑色目出し帽をAがかぶっていたことは動かし難い事実であるとした原決定の事実認定には重大な誤りがあるとして種々主張するが,既に検討したとおり ,是認できる。 イ所論について所論は,緑色目出し帽をAがかぶっていたことは動かし難い事実であるとした原決定の事実認定には重大な誤りがあるとして種々主張するが,既に検討したとおり,この点に関する原決定の事実認定に誤りがないことは明らかであり,関連して弁護人が提出した,目出し帽の付着物に関する鑑定書等の証拠についての判断にも誤りはない。 若干補足する。 まず,緑色目出し帽は,防犯カメラ映像の検討の際に詳述したように,Aが着用していたと認められるから,それから申立人のものと一致するDNA型が検出されなくても,全く不自然ではない。反面,Aのものと一致するDNA型が検出されても不思議ではないが,新証拠によっても,AのDNA型は判明していないから(再審弁27の1によれば,Aの毛髪については,毛根が確認できなかったことから,鑑定を実施しなかったとされており,所論がAのDNA型が判明していることを前提にしたような主張をしている点は,前提が誤っている。),この点は不明である。 次に,青色目出し帽は,申立人が着用していた可能性があり,その意味では,申立人のものと一致するDNA型が検出されても不思議ではないが,鑑定では検出されていない。しかし,検出されていないことが,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものでないことは,原決定が説示するとおりである。すなわち,申立人が青色目出し帽を着用したからといって,必ずしも着用した者のDNA型が検出されるとは限らないし,しかも,原決定が指摘するように,保管者や場所が移動するなどしており,捜査関係者など複数の者が直接触れた可能性等を否定できないから,目出し帽の付着物から申立人及びA(これは判明していないが。)のものとは一致しないDNA型が検出されたからといって,それが本件強盗の実行犯人のも 者など複数の者が直接触れた可能性等を否定できないから,目出し帽の付着物から申立人及びA(これは判明していないが。)のものとは一致しないDNA型が検出されたからといって,それが本件強盗の実行犯人のものであるとは断定できず,申立人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえない。 申立人(類似)の毛髪が検出されていないことも,着用すれば必ず検出されるとは限らないし,時間的経過や保管状況の点も問題であり,この点が,申立人の実行犯 人性に疑問を抱かせるものとは認められない。 なお,DNA鑑定について若干付け加えておく。この鑑定がなされたのは,平成23年から24年にかけてであって,事件から約10年が経過している上,その間の各鑑定資料の保管状況も明らかとはいえない(検察官「再審請求に対する意見書」第2の1イ参照)。そのような中で,本件の実行犯人以外の者が各鑑定資料に触れるなどしてこれらが汚染(コンタミネーション)を受け,その者のDNA型が検出されている可能性は決して低くない。そのような意味から,鑑定方法や型判定のあり方に問題があるわけではないが,DNA鑑定の結果が,本件の実行犯人性に有意な影響を及ぼすかは大いに疑問である。この疑問は,各鑑定結果を比較すると,より具体的になるように思われる。すなわち,各鑑定結果を比較すると,常染色体及びY染色体のいずれも,鑑定資料3の1(緑色目出し帽の付着物)と鑑定資料3の2(同目出し帽の一部)から検出されたDNA型(STRの型検査)は相当近似しており,また,それらと,鑑定資料4の1(青色目出し帽の一部)から検出されたDNA型も,違う帽子であるにもかかわらず,相当近似しているように思われる。検出が間違いないと思われるものを比較すると,鑑定資料3の2のものと,鑑定資料4の1のものとは一致しているとみられる されたDNA型も,違う帽子であるにもかかわらず,相当近似しているように思われる。検出が間違いないと思われるものを比較すると,鑑定資料3の2のものと,鑑定資料4の1のものとは一致しているとみられる(再審弁27の1及び同28の1の各結果表参照。)。この点は,緑色が犯行現場,青色が本件倉庫という,違うところで発見,領置された目出し帽であるのに,同一人に由来するDNA型が検出された可能性が示されていると理解できる。その意味は必ずしも一義的ではなく,経過年数等からみれば,本件の事件後に,一人の人間が両方の帽子に接触等した可能性が高いとは思われるが,事件前に一人の人間が両方の帽子に接触等した可能性も否定できない。もっとも次のようにはいえるであろう。本件の犯行時,緑色の目出し帽はAが着用していたことは明らかであり,青色の目出し帽が犯行に使用されたものであれば,もう1人の実行犯が使用していたことになるから,犯行時の着用者のDNA型が検出されたとすれば,異なるDNA型が検出されるはずである。ところが,鑑定結果は同一人と考えて矛盾のないDNA型が検出されているから,その 検出された型は,犯行時の着用者のものではない可能性が大きいことになると思われるのである。 以上によれば,目出し帽を着用すれば,着用した者のDNA型が,その目出し帽から検出されるとは限らないという一般論も含めて種々の観点からみて,新証拠として提出されているDNA鑑定の結果は,本件の実行犯人性の判定にとって,少なくとも有意なものとはいえない。申立人のDNA型が,緑色及び青色のどちらの目出し帽からも検出されていないことは所論の主張するとおりであるが,そのことが直ちに申立人の実行犯人性を否定する根拠にならないのは明らかであり,目出し帽に関するDNA鑑定の結果は,再審開始のための明白 出し帽からも検出されていないことは所論の主張するとおりであるが,そのことが直ちに申立人の実行犯人性を否定する根拠にならないのは明らかであり,目出し帽に関するDNA鑑定の結果は,再審開始のための明白性を充たすものではない。 ⑷ 申立人の血液型に関する証拠についてア原決定の要旨原決定は,弁護人が,捜査機関において,当初,申立人の血液型はB型と把握されていたが,実際にはAB型であること(再審弁6,8,9の1ないし6,46,88),他方,申立人は,捜査機関から,A以外の実行犯人の血液型はB型と聞かされていたこと(再審弁7)が認められ,申立人は本件強盗の実行犯人ではあり得ない旨主張するのに対し,記録上,A以外の実行犯人の血液型は不明であり,捜査機関において,当初,申立人に実行犯人の血液型がB型であると伝えていたとしても,それにより実行犯人の血液型がB型であると認定できるものではないから,申立人の血液型がAB型であるという事実によって,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえないと判断した。 このような原決定の判断は,説示も含めて相当であり,是認することができる。 イ所論についてこれに対し,所論は,警察は,真犯人が「B型」であると判明していることを前提に,その事実に合致させるため,あえて申立人から血液を採取せず,単に唾液から血液型を判定し,「B型」と認定するという捜査方法をとった,検察は,弁護人から科学的証拠を提出するよう請求されるまで,意図的に隠匿していたなどと論難す るが,A以外のもう1人の実行犯人の血液型は記録上判明しておらず,申立人は,緊急逮捕された当初,自身の血液型を「B型」と説明していたのであり(1審検130),所論がいう警察等の意図は憶測の域を出ない。申立人の血液型が正しくは「AB型」であり,それが しておらず,申立人は,緊急逮捕された当初,自身の血液型を「B型」と説明していたのであり(1審検130),所論がいう警察等の意図は憶測の域を出ない。申立人の血液型が正しくは「AB型」であり,それが唾液を採取する方法でも得られる結論であったとしても,科捜研の鑑定が杜撰であったとか,捜査機関の意図が前記のようなものであったことを証明するものではないし,ましてや,実行犯人の血液型が不明である以上,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものではないから,申立人の血液型に関する証拠についての原決定の判断に誤りはない。 ⑸ 申立人の足のサイズに関する証拠についてア原決定の要旨原決定は,A以外の実行犯人が履いていた靴のサイズが27㎝であるところ,靴店において,申立人の足のサイズは右27.9㎝,左28.1㎝と計測されており(再審弁20),申立人がこの靴を履けるはずがなく,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせる旨の弁護人の主張に対し,現に足のサイズが29㎝のAは,当時,26.5㎝のサイズの靴を履いていたものと認められ,前記足のサイズの人物が27㎝のサイズの靴を履けるはずがないとはいえず,実行犯人性に合理的な疑いを生じるとはいえないと判断した。 このような原決定の判断は,説示も含めておおむね相当であり,是認することができる。 イ所論についてこれに対し,所論は,A以外の実行犯人の行為態様は,カウンターを軽々と飛び越えて職員の机をまたぎ,奥にある金庫の方に進むというものであり,①申立人が左足を負傷していたこと,②原決定は,Aが現に小さな靴を履いていたことを理由に挙げるが,カウンターの外を行き来するAの動きとは異なるものであることに照らすと,足より小さな靴を履いて窮屈な状態でこのような行為はできなかったはずであるとして,前記証拠( を履いていたことを理由に挙げるが,カウンターの外を行き来するAの動きとは異なるものであることに照らすと,足より小さな靴を履いて窮屈な状態でこのような行為はできなかったはずであるとして,前記証拠(再審弁20)は,申立人が実行犯人ではないとの合理的 な疑いを生じさせる新証拠であり,原決定の認定は誤っていると主張する。 しかし,①の点は,後述のとおり,申立人が当時左足を負傷していたとしても,申立人自身,確定審において,犯行は否認しつつ,本件当日の出来事を語る中で,ジョギングなりステップクライミングなりの運動ができる程度の状態であったことは認めていたのであり,A以外の実行犯人の動きも,所論がいうように「カウンターを軽々と飛び越えて」などおらず,カウンターの上に両膝を付いて乗ってから立ち上がり,職員の机の上を渡って奥へ進んでいるのであり(1審検18写真3,再審弁108[15時12分51秒から52秒]),膝を負傷していたらできないというような多大な運動能力を要する動きではない。また,②の点は,Aの動きと,もう1人の実行犯人の動きとでは確かに差はあるが,Aの場合,履いていた白色運動靴のサイズは26.5㎝(1審検105),足の大きさは29㎝(1審検131)で,その差は2.5㎝もあるが,警察官の前で実際に同靴を履いて見せたのに対し(1審検132),申立人の場合,靴店で測定した最新の数値によっても,足の大きさは右27.9㎝,左28.1㎝(再審弁20),黒色運動靴のサイズは27㎝(1審検105)であって,その差は1.1㎝ないし0.9㎝にとどまり,申立人には履くことができないといえるような誤差ではない。むしろ,緊急逮捕時の測定では,足の大きさは27.3㎝(1審検130)であったのであり,ジャストサイズといえるものであった。なお,弁護人が当審で提出 は履くことができないといえるような誤差ではない。むしろ,緊急逮捕時の測定では,足の大きさは27.3㎝(1審検130)であったのであり,ジャストサイズといえるものであった。なお,弁護人が当審で提出した証拠(再審弁110)によれば,捜査段階において,警察が申立人の妻から任意提出を受けた申立人の靴のサイズは,黒色運動靴のサイズよりも大きいものであることがうかがわれるが,そもそも本件当時も最近もいずれの測定値も,黒色運動靴を明らかに履くことができないという足の大きさではない以上,意味を持つものではない。 以上によれば,Aともう1人の実行犯人の動きの違いや当時申立人が所有していた靴のサイズと異なることを考慮に入れても,前記証拠は申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものではなく,原決定の判断に誤りはない。 ⑹ 申立人の左足の負傷に関する証拠について ア原決定の要旨原決定は,事件当時,申立人は左膝内側半月断裂,左大腿骨内顆骨壊死の状態にあり,痛みのため左足を引きずっていたことは間違いない旨記載された,当時の弁護人がP医師(申立人を本件犯行前に診察していた医師)から聴取した報告書(再審弁15)について,そのような目撃証拠がない本件において,申立人の実行犯人性に疑いを生じさせる証拠である旨の弁護人の主張に対し,前記報告書の基になった証拠(控訴審弁25,26,41)は,いずれも確定審の控訴審で弁護人が請求して同意部分が取り調べられ,不同意部分を撤回の上,P医師の証人尋問を請求したが,裁判所が請求を却下したもので,前記報告書の記載内容は,実質的に確定審の控訴審において審理の対象とされていたものといえるとして新規性を否定した。 また,明白性に関し,P医師が検察官の照会に対し,事件当時も必死になれば全力疾走は不可能とはいえない旨回 は,実質的に確定審の控訴審において審理の対象とされていたものといえるとして新規性を否定した。 また,明白性に関し,P医師が検察官の照会に対し,事件当時も必死になれば全力疾走は不可能とはいえない旨回答し,申立人も第1審で犯行を否認しつつ,事件当時走ることができる状態にあったことを認める供述をしていたことからすると,申立人が,足が悪いことに他者が気付かない程度に迅速な動きができた可能性はあると認められると判断した。 また,原決定は,Jの陳述書(再審弁16,以下「J陳述書」という。)について,実行犯人を目撃した際,2名とも足を引きずっていなかった旨をいう点は,確定審で取り調べられた供述調書(1審検12)では触れられていなかったもので,新規性があり,申立人の実行犯人性を疑わせるもので,明白性も認められる旨の弁護人の主張に対し,Jは,前記供述調書で,実質的にみて,足を引きずるなどの状況にはなかったことを述べていたとして新規性を否定し,明白性に関しても,実行犯人が足を引きずっているように見えなかったからといって,申立人の実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえないと判断した。 このような原決定の判断は,報告書(再審弁15)の新規性の点は疑問であるが,その余は理由として説示するところも含めておおむね相当として是認できる。 イ所論について これに対し,所論は,確定判決の控訴審裁判所は,判決書に前記報告書の基となった証拠を引用していないことからも,申立人の怪我の有無や状態,足を引きずっていたか否かといった問題を意識しないまま事実を認定しているから,同証拠には新規性が認められると主張する。 この点は,前記2⑷イ(I陳述書)で検討したのと同様の問題がある。前記報告書は,差戻前再審請求審の弁護人であるQ弁護士(確定第1審の弁護人でもある) から,同証拠には新規性が認められると主張する。 この点は,前記2⑷イ(I陳述書)で検討したのと同様の問題がある。前記報告書は,差戻前再審請求審の弁護人であるQ弁護士(確定第1審の弁護人でもある)がP医師から当時の怪我の状態等を改めて聴取した内容の報告書(平成24年5月22日付け)であるが,その基となった証拠は,いずれもP医師が作成した①診断書(控訴審弁25),②所見メモ(控訴審弁26)及び③カルテ(控訴審弁41)であるところ,控訴審における経過をみると,第10回公判期日(平成17年2月24日)において,弁護人から①,②の事実取調べ請求がなされ,第11回公判期日(同年3月24日)において,検察官の各同意部分が取り調べられ,各不同意部分は請求が撤回され(同期日に検察官から取調べ請求がされたP医師からの電話聴取書(控訴審検16)も,弁護人が不同意意見であったため請求が撤回された。),弁護人から,「請求人の診断,手術予定,足に負担のかかる過激な運動を控えるように指示したこと」との立証趣旨(平成17年3月23日付け証拠調請求書(証人)上)でP医師の証人尋問が請求されたが(控訴審弁36),控訴審裁判所はこれを却下したことが認められる。このような経過をみると,P医師の証人尋問請求を却下した時点で,P医師の証言内容を一応予測した上で,その証拠価値を判断したものと解されるから,原決定は新規性を否定したものと思われるが,このような場合に,新規性を一律に否定することには疑問があるのは,I陳述書の場合と同様である。そこで,明白性について検討すると,原決定のこの点についての判断に誤りはないといえる。P医師が検察官の照会に対し,事件当時も必死になれば全力疾走は不可能とはいえない旨回答しており,それだけとっても明白性は否定されるし,申立人自身,事件当時走ること ついての判断に誤りはないといえる。P医師が検察官の照会に対し,事件当時も必死になれば全力疾走は不可能とはいえない旨回答しており,それだけとっても明白性は否定されるし,申立人自身,事件当時走ることができる状態にあったことを認めていた。したがって,所論指摘の証拠に,申立人の実行犯人性に疑問を生じさせるような明白性を認めること はできない。 また,所論は,A以外の実行犯人は,単に迅速な動きをしているのではなく,多大な運動能力を要する行動に出ており,左膝を怪我していた申立人にとてもなし得るものではないと主張するが,前記⑸イ(足のサイズに関する証拠)で述べたとおり,所論がいうほど運動能力を要する行動とはいえず,膝を負傷していても可能な動きであり,原決定の判断に誤りはない。 さらに,所論は,J陳述書について,同人は,確定審における供述調書では,2人の男が郵便局から出てきた点に注目していたものであり,足を引きずっていたかについて問題意識を持っていたわけではないから,その点の質問があって初めて着目できるものであるとして,これを初めて意識して回答したJ陳述書には新規性が認められ,足に怪我をしていた事実を証明する証拠とともに総合的に斟酌すれば,申立人の有罪に合理的な疑いを生じさせる新証拠であると主張する。しかし,Jは,警察官調書(1審検12)において,郵便局から2人の男が順番に飛び出してきてシルビアに乗り込んだこと,犯人の服装等の特徴,後から飛び出してきた男が走って助手席に行く姿について,日本人のように焦ったようにセカセカした走り方ではなく,長い足で軽やかに大股で走っていたように覚えていたことを供述している。 A以外の実行犯人であると認められる,後から飛び出してきた男の走る様子に着目した上で,特段走ることに支障がある様子はなかったことをうかが で軽やかに大股で走っていたように覚えていたことを供述している。 A以外の実行犯人であると認められる,後から飛び出してきた男の走る様子に着目した上で,特段走ることに支障がある様子はなかったことをうかがわせる供述をしているのであり,当時,足を引きずっていたかについて特に問題意識を持っていたか否かは明確ではないものの,実際の走る様子については具体的に供述できるだけの観察をしていたのである。そして,立証趣旨を,実行犯人の1人が左足を引きずる様子は目撃されていないとされるJ陳述書で語られている内容は,前記警察官調書で既に語られている内容と実質的に同一であって,新規性を欠くことは,原決定が適切に説示するとおりである。また,申立人の左足の負傷に関する証拠によって,当時左膝を負傷していたこと,実行犯人に足を引きずる様子がなかったことが認められたとしても,前述のとおり,A以外の実行犯人の動きが左膝を負傷していたら できないというようなものではない上,申立人も確定審において,ジョギングないしステップクライミングをするのに支障のない足の状態であったことを認めていたことに照らせば,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものではない。 ⑺ 指掌紋に関する証拠についてア原決定の要旨原決定は,①本件倉庫から発見されたエアガンの箱や取扱説明書から申立人の指掌紋が検出されず,②同取扱説明書から申立人及びAの指紋とは一致しない指紋が検出されている事実(再審弁42ないし44,96ないし99)は,申立人の実行犯人性に合理的な疑いを生じさせるものである旨の弁護人の主張に対し,①触れたら必ず申立人の指紋が検出されるとは限らず,検出されなかった事実によって,実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえないし,②本件強盗とは別の機会に,両名以外の者の指紋が取扱 人の主張に対し,①触れたら必ず申立人の指紋が検出されるとは限らず,検出されなかった事実によって,実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえないし,②本件強盗とは別の機会に,両名以外の者の指紋が取扱説明書に付着し,検出される可能性が考えられるから,一致しない指紋が検出された事実によって,実行犯人性に合理的な疑いが生じるとはいえないと判断した。 このような原決定の判断は,説示も含めて相当であり,是認することができる。 イ所論についてこれに対し,所論は,申立人が実行犯人であったとすれば,おもちゃのピストルをAに手渡すため,おもちゃのピストルの箱や取扱説明書に申立人の指紋が残されていることが一般であり,原決定のような考え方は,社会一般の経験則に反すると主張する。しかし,そもそも指紋の検出は,付着面の素材や性質,付着の仕方等,諸条件に左右され,また,一般に正当性が承認されている鑑定方法による対照作業を行う必要もあるものであり,触れれば必ず指紋が付いて残され検出されるとは限らない。所論は社会一般の経験則だともいうが,これは,証拠を鑑定等により科学的見地から検討すべきものであって,社会一般の経験則なるものを持ち出すこと自体が適切でない(もっとも,確定判決上,申立人が購入したエアガンが本件に使用されたものであると扱ってよいかは疑問の余地がある。)。 原決定の明白性の判断方法が誤っているとの所論は理由がない。 まとめア申立人が提出する,実行犯人性に関する証拠についてまとめておく。 まず,防犯カメラ映像に関して提出している証拠は,結論として新証拠といえるものが提出されたとはいえないし,確定審の本件ビデオテープに改ざんの疑いもない。 目出し帽に関する証拠は,申立人の実行犯人性に疑問を生じさせるような証拠とはいえない。所論が強 として新証拠といえるものが提出されたとはいえないし,確定審の本件ビデオテープに改ざんの疑いもない。 目出し帽に関する証拠は,申立人の実行犯人性に疑問を生じさせるような証拠とはいえない。所論が強調する緑色目出し帽は,防犯カメラ映像上Aが落としたものとは確認できないものの,確認できないのは,画像の鮮明度やカメラ映像の死角等の理由によると考えられ,確定審の証拠上明らかになっている,緑色目出し帽の落ちていた場所と,Aともう一人の実行犯人の郵便局内における各行動の軌跡を比較検討し,さらには,確定審におけるAの供述をも総合すれば,Aが落としたものと認めることができる。したがって,それと異なる前提に立つ所論は採用できないし,その余のDNA鑑定の結果も,DNA鑑定自体の信用性を否定するものではないが,それが,本件の実行犯人のそれであるとはいえないから,その鑑定結果によっても,申立人の実行犯人性を否定するものとはいえない。毛髪の点も同様である。 申立人の血液型の証拠は,実行犯人の血液型が不明である以上,これを提出しても意味がない。 申立人の足のサイズも,提出された証拠との関係でも,約1cm しか違わないし,緊急逮捕時の申立人のサイズと靴のサイズはほぼ合致していて(0.3cm しか違わない。),これが実行犯人性を否定するとは到底考え難い。 申立人の左足の負傷の点は,一応犯行当時,申立人が負傷していたことが認められるとしても,それが,本件の実行を不可能にするとか,目撃供述と比較して実行犯人性に合理的疑いを生じさせるといったものではないし,エアガンの箱等から申立人の指掌紋が検出されていないからといって,実行犯人性を否定するまでのことはない。 イそして,これらの証拠の中で,申立人の実行犯人性という観点から,確定審の証拠関係に多少なりとも影 立人の指掌紋が検出されていないからといって,実行犯人性を否定するまでのことはない。 イそして,これらの証拠の中で,申立人の実行犯人性という観点から,確定審の証拠関係に多少なりとも影響を及ぼすことがあり得るといえないものについては,これ以上の検討は必要ない。 これに対して,その新証拠だけでは,申立人の実行犯人性を否定する明白な証拠とはいえないが,どちらかといえば,実行犯人性を否定する方向にあるものは,それらが積み重なった場合に,確定判決の事実認定にどのような影響を与えるかは,さらに,検討する余地がある。 本件でそのような証拠に該当するのは,申立人の左足の負傷に関する証拠のほか,一定の留保付きだが,エアガンの箱等から申立人の指紋等が検出されていないとの証拠,さらに挙げるとすれば,目出し帽(特に申立人が着用していた可能性のある青色のもの)から申立人のものと一致するDNA型が検出されていないとする証拠であろう(毛髪の点も同様に考えることが可能である。)。 これらの証拠については,新旧全証拠による総合評価のところで,再度確認,検討するが,申立人の実行犯人性を否定する力は,相当に弱いものであることは,それぞれの証拠についての検討において明らかにした。そして,これらの証拠は,積み重なったとしても,実行犯人性を否定する核となるような証拠がないことはもちろん,積み重なることによって,実行犯人でないことを推認させる力が特段に増すような関連性を有しているとも認められないから,やはり,申立人の実行犯人性を否定する力は,相当に弱いといわざるを得ない。 確定判決が指摘する各間接事実が全体として申立人の実行犯人性を推認させる推認力と比較すると,これらの証拠の持つ力は圧倒的に弱く,合理的な疑いを生じさせるには程遠い。 4 Cの実在性に関する証 確定判決が指摘する各間接事実が全体として申立人の実行犯人性を推認させる推認力と比較すると,これらの証拠の持つ力は圧倒的に弱く,合理的な疑いを生じさせるには程遠い。 4 Cの実在性に関する証拠について原決定は,Cが実在している旨主張して,その事実やその関連事実を立証するものとして弁護人が提出している,Cと面識があるという関係者の陳述(再審弁17,18,22)やオービス写真に写っているのがCであるとする鑑定書等の証拠(再 審弁19の1,2,23,31の1,2,80)について,Cが実在しているという事実関係は,申立人を本件強盗の実行犯人であると認定した確定判決の判断構造に全く影響を与えるものではないと判断した。 若干補足すると,前記2のとおり,申立人以外の者の本件倉庫への立入り可能性に関する弁護人提出証拠を検討しても,申立人が不在のときでも本件倉庫が施錠されておらず,申立人の許可なく,申立人以外の者も本件倉庫に自由に出入りできる状況にあったというような,間接事実⑥の認定を揺るがすに足りる事実は認められない。そうすると,Cが実在の人物であったところで,本件証拠構造との関係では意味を持たない事実関係であり,申立人の実行犯人性に合理的疑いを抱かせるものではない。これと同旨の原決定の判断は相当であり,是認できる。 5 新旧全証拠による総合評価確定判決は,本件強盗におけるA以外のもう1人の実行犯人が申立人であることを推認させる複数の間接事実①ないし⑦が認められ,これに申立人とAの密接な関係等を考慮すると,申立人がAの共犯者として本件強盗を敢行した実行犯人であることが強く推認されるとした。このような事実関係が同時に存在することをさらに詰めて考えれば,申立人が実行犯人でないとしたならば合理的に説明することができない,あるいは, 強盗を敢行した実行犯人であることが強く推認されるとした。このような事実関係が同時に存在することをさらに詰めて考えれば,申立人が実行犯人でないとしたならば合理的に説明することができない,あるいは,少なくとも説明が極めて困難であるといえる。 間接事実について再度みておく。まず,本件の実行犯人は,2名の外国人であり(いずれも黒人,うち1名がA),Aではない方の実行犯人が,積極的に犯罪を遂行して現金を現に奪ったことは動かしようのない事実である。その上で,主な点だけとっても,犯行に使用した車両シルビアは申立人のもので,犯行の約1時間10分後には,申立人の管理する本件倉庫(鍵は申立人が保管し,通常は施錠されていたが,この時も施錠されていた。)にシルビアが格納され,そのシルビアのナンバープレートは焼き切られていたという明らかな罪証隠滅工作がなされ,現金も本件倉庫の複数箇所に全額隠匿されていたし,犯行に使用されたと考えて矛盾のない雨合羽なども本件倉庫から発見された。申立人は,犯行後,犯行を実行したとして不自然 ではない時間帯に,本件倉庫近辺で目撃されており,もとよりアリバイもない。Aは,申立人の弟であり,申立人と同じ職場で働き,申立人自身の仕事も手伝っていた。 以上のような確定判決の推認の根拠となった間接事実は,いずれも証拠上明らかなものであり,しかも,その中には申立人の実行犯人性を強く推認させるものが含まれている。確定判決の推認の構造は,相当に強固であるといえる。 これに対して,申立人が提出した新証拠に対する検討結果を確認しておく。 まず,確定判決の推認の根拠となった間接事実の存在自体を動揺させるものは,ないといわざるを得ない。申立人が本件倉庫を管理していた状況(間接事実⑥)について提出された陳述書等は,その証拠自体の信用性を肯定し 確定判決の推認の根拠となった間接事実の存在自体を動揺させるものは,ないといわざるを得ない。申立人が本件倉庫を管理していた状況(間接事実⑥)について提出された陳述書等は,その証拠自体の信用性を肯定し難いものか,内容自体が確定審の事実認定に疑問を抱かせるようなものではなかった。 次に,確定判決が,間接事実の積み重ねにより,申立人の実行犯人性が強く推認されるとする点で,この推認に疑問を投げかけ,推認を阻止するような力を持った新証拠も提出されていない。前述した(3),申立人が実行犯人でないとの方向性をもった新証拠を,前提における疑問をひとまず問題にせずに,あえて申立人に有利に積み重ねても,確定判決の推認を揺るがすものとはいえない。すなわち,左足を負傷していた申立人(といっても,無理すれば全力疾走でき,申立人自身も本件当時走ることができたと認めている。)が,目出し帽(青色)を着用して郵便局に押し入り,2000万円以上の大金を強奪して,本件倉庫に逃げ帰ったとして,その目出し帽から申立人のものと一致するDNA型が検出されず,犯行に使用したエアガンの箱や取扱説明書から申立人の指紋等が検出されないということが,現実的にはそうそう起き得ないほど可能性が低いといえるであろうか。現実的に起き得ない,又は相当起きる確率が低いといえるのであれば,推認を動揺させるほどの力があるということになるであろうが,今一度考えても,やはり動揺させることはないと判断される。本件で,申立人の実行犯人性を推認させる間接事実(その間接事実自体は明らかに証明されている。)が同時に多数存在することは,申立人が実行犯でなけ れば合理的に説明することができないか,少なくとも,説明が著しく困難であることに変わりはなく,一方,推認を動揺させる方向の間接事実は,それが同時に起きたとし ことは,申立人が実行犯でなけ れば合理的に説明することができないか,少なくとも,説明が著しく困難であることに変わりはなく,一方,推認を動揺させる方向の間接事実は,それが同時に起きたとしてもあながち不自然,不合理とまでいえず,両者を比較すれば,確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせることはないことは明らかである。しかも,推認を動揺させる方向の新証拠,特にDNA鑑定については,本来は,前述したように,検出されたDNA型が犯行時に着用していた者に由来する可能性は低いとの事情がある。 新旧全証拠の中で,申立人の実行犯人性に最も疑問を投げかけるのは,やはりAの確定審の供述であろう。確定判決が,Cという別の人間が共犯者であるとするAの供述は信用できないとしたのは,確定判決の概要で要約したとおりである。 そして,申立人が再審で提出した新証拠の中に,このAの供述の信用性を具体的に補強するようなものは見当たらない。Aは,申立人が事件の翌日に緊急逮捕されたのを知って,その翌日(事件の2日後),池田弁護士に付き添われ,自ら警察署に出頭し,自分が実行犯人であることを認めつつ,申立人が犯人でないことを一貫して訴えている。このような場合,Aは,真実を述べているか,又は,申立人を庇っているか,あるいはその他の意図があるかであろうが,まずもって考えられるのは前二者である。確定審も,そのような観点から,Aの証人尋問等に時間を掛け,Aの供述の検討には相当念を入れ,その結果,Cが共犯者であるという供述は信用性に乏しいと判断している。Aは,知り合ってさほど付き合いも深くないのに,Cの誘いで郵便局強盗を実行したというが,そのいきさつは相当不自然である(なお,犯行当時にCの存在に言及するのは,Aと申立人だけで,他の者が犯行当時Cと目される人物の存在に気付いたと 深くないのに,Cの誘いで郵便局強盗を実行したというが,そのいきさつは相当不自然である(なお,犯行当時にCの存在に言及するのは,Aと申立人だけで,他の者が犯行当時Cと目される人物の存在に気付いたというような証拠はない。)。また,現金強奪に成功しながら,強盗を持ち掛け,実際に多額の現金を奪った張本人であるCが,現金を全く持たずに,すべて本件倉庫に隠匿して倉庫を後にしたというが,この点は不自然を超えて不合理である。本当にC主導で強盗が行われたのであれば,目的の現金を持って逃げるのが通常であるのに,誘い入れた従たる立場のAの説得で,現金全額を本 件倉庫に置いたまま,その後どのようにしてその現金を手にするかといった確かな保証もないのに,その場を立ち去る(その時点で警察等に追われていたという切迫した事情は認められない。)というのは,極めて不自然であり,不合理である。Cは姫路に特段生活の拠点があるわけではなさそうなので,現金を持って姫路から逃げ出すことに支障があったとは考え難い。確定判決が,Aの供述の内,Cが共犯者であるとする部分は信用できないとしたのは,当然である。 そして,一緒に郵便局強盗を実行した共犯者が誰かという点で,事件直後から人違いをするということは考え難いから,その点の供述が信用できないということは,あえて虚偽の共犯者を仕立て上げていると考えざるを得ない。そのような意図的な虚偽供述をする動機としては,やはり兄である申立人を庇うということが考えられ,証拠上その他の可能性をうかがうことはできない。 最後に申立人の供述であるが,確定判決は,申立人の供述の信用性を排斥したが,当然である。申立人の供述は,再度検討しても,変遷が著しく(公判段階になっても変遷が著しく,一時期,検察官に対して犯行を認めるかのような供述をしてもいる。) 決は,申立人の供述の信用性を排斥したが,当然である。申立人の供述は,再度検討しても,変遷が著しく(公判段階になっても変遷が著しく,一時期,検察官に対して犯行を認めるかのような供述をしてもいる。),内容は率直に言えば荒唐無稽ともいえるものである。Cからの連絡で同人と知り合い,その後,日本人のヤクザやナイジェリア人やアジア系のマフィアなどが多数登場し,申立人を脅し,申立人に薬物の密輸や殺人を行わせようとしたが,物品を渡したり,ナイジェリアの土地の権利証を渡して解決したというのである。いずれも全く裏付けとなるような事実がなく,家族や周りの者も,そのような事実に気付いていないし,申立人が周りの者や知り合いの警察官にも相談していない。本件当日も,もう来ないと約束したCが突然本件倉庫に来たり,日本人のヤクザがそのCを捜しているとして来たりしたというが,この点も全く裏付けがない。 その後のCと自分の行動の説明にも,裏付けがないばかりか,本件当日の出来事については,他の証拠とも矛盾している。 ちなみに,申立人のいうCは,AのいうCと同一人物なのであろうが,それぞれが説明するCと知り合った経緯や,その後の交友状況は,別個独立で全く異なって いて,さらには,犯行時も,申立人とAは,それぞれが全く接点のない形で,Cの行動を説明している。時間的に相当短い時間に起きているものが含まれているのに,申立人とAが全く接触することがない。Aは,申立人の弟であり,申立人と同じ職場で働き,申立人が独自に行っている仕事も手伝っている関係であることを考えると,相当に不自然であるといわざるを得ない。 申立人の確定審での供述は疑問な点が多々あり,信用性を担保できる事情はうかがわれないから,その信用性が認められないのは当然であるが,再審請求に当たり,このような申立人の供 あるといわざるを得ない。 申立人の確定審での供述は疑問な点が多々あり,信用性を担保できる事情はうかがわれないから,その信用性が認められないのは当然であるが,再審請求に当たり,このような申立人の供述の信用性を直接補強する証拠は全く提出されていない。 以上によれば,申立人が提出する新証拠には,確定判決の証拠関係に影響を与える可能性のある証拠はほとんどなく,数少ない可能性のある証拠を積み重ねても,確定判決の証拠関係を見直すことには全くならない。念のため,申立人の犯人性を否定するA及び申立人の確定審における各供述を点検し,提出された新証拠がこれらを補強する関係にないかも確認したが,そのようなものも存在しない。 弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められず,申立人が本件強盗の実行犯人であるとした確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じる余地はない。原決定の判断は正当である。ちなみに,差戻前再審請求審がその可能性を示唆した,申立人が実行共同正犯ではなく,実行行為を伴わないその他の共犯である可能性は否定できるから,申立人の実行犯人性に合理的疑いが生じることを前提とした即時抗告審の指摘,すなわち,申立人の共犯性が別の形で認定できるか否かの間接事実の検討は不要であることはいうまでもない。 第5 結論以上の次第により,本件再審請求には刑訴法435条6号の再審事由があるとはいえないとした原決定の判断に誤りはなく,当審において弁護人が追加提出した新証拠(当審における事実取調べも含む。)を併せて検討しても,この判断は動かない。 論旨は理由がない。 よって,刑訴法426条1項により本件即時抗告を棄却することとし,主文のと おり決定する。 令和3年6月30日大阪高等裁判所第6刑事部 裁判長 主文 刑訴法426条1項により本件即時抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。 理由 令和3年6月30日大阪高等裁判所第6刑事部 裁判長裁判官村山浩昭 裁判官末弘陽一 裁判官宇田美穂
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