平成11(ワ)524 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成13年10月31日 奈良地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7390.txt

判決文本文9,831 文字)

平成13年10月31日判決言渡平成11年(ワ)第524号損害賠償請求事件判決 主文 1 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して375万円及びこれに対する平成10年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,競売によって別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を取得したが,同土地の評価人であった被告Aは,評価書に同土地に課せられた公法上の規制等を正確に記載せず,また同土地の最有効使用法として一戸建て住宅が最適である等と事実に反した記載をしたとして,同人に対しては,民法709条の不法行為に基づいて,また被告国に対しては, 執行裁判所を構成する国家公務員である裁判官がその職務を行うについて,重大な過失により不適切な評価書を是正する義務を怠ったとして,国家賠償法1条1項(以下「国賠法」という。)に基づき,連帯して原告に生じた損害の賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 本件土地は,もと訴外Bの所有であったところ,平成8年8月28日 ,本件土地に根抵当権を有していた株式会社Cにより,不動産競売が申し立てられた(当庁平成8年(ケ)第221号不動産競売申立事件,以下「本件競売事件」という。)。 本件競売事件は,同年9月5日,開始決定がされ,同月17日,執行裁判所は,被告Aに対し,同人を評価人として選任し本件土地の評価を命じた。 (2) 被告Aは 件,以下「本件競売事件」という。)。 本件競売事件は,同年9月5日,開始決定がされ,同月17日,執行裁判所は,被告Aに対し,同人を評価人として選任し本件土地の評価を命じた。 (2) 被告Aは,平成8年11月18日付で,本件土地の完全所有権価格を632万円とする旨の評価書を作成し執行裁判所へ提出した。 執行裁判所は,最低売却価格を632 万円と定め,平成9年3月25日,売却の方法,入札期間,開札期日及び売却決定期日を定めて売却実施命令を発し,同年4月8日から物件明細書,現況調査報告書及び評価書の写しが執行裁判所閲覧室に備え置かれたが,期間内に適法な入札がなかった。 (3) その後,再度期間入札が実施されたが,入札はなかった。同年11月14日,執行裁判所は,被告Aに対し,本件土地について,補充評価を命じた。 被告Aは,再度本件土地を評価し,同年12月17日,完全所有権価格を502万円とした評価書(以下「本件評価書」という。)を執行裁判所に提出した。 (4) 原告は,当庁閲覧室において本件土地の物件明細書,現況調査報告書,本件評価書等の写しを閲覧した上,平成10年4月中旬ころ,入札価格を675万円として入札した。期日における開札の結果,原告が最高価買受申出人と定められ,執行裁判所は,同月28日,本件土地の原告への売却を許可する決定をした。 原告は,同年5月19日,執行裁判所に代金を納付して,本件土地の所有権を取得した。 2 争点(1) 本件評価書の記載につき,被告Aに過失があるかどうか(2) 執行裁判所を構成する裁判官に本件評価書の記載を補正すべき義務を怠った重大な過失があるかどうか(3) 原告の被った損害 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1 )(本件評価書の記載につき,被告Aに過失があるかどうか)に 本件評価書の記載を補正すべき義務を怠った重大な過失があるかどうか(3) 原告の被った損害 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1 )(本件評価書の記載につき,被告Aに過失があるかどうか)について(原告の主張)ア一般に,競売における買受希望者には何ら資格等の制限がなく,評価書,現況調査報告書,物件明細書を頼りに,これを信頼して入札するかどうか及び入札価格を決めるのであって,評価書には,一般買受希望者を対象としてどのような建物を建てることが可能かについて及び当該土地の利用上,行政上の規制について,漏らさず記載し周知させる義務がある。 イ本件土地の北側間口は実測で5.37 メートル(測量図では5.75メートル)しかないので,壁面後退距離を差し引くと実測ではわずか幅2.37メートルしかない。 また,有効建築可能面積は,地積93平方メートルに対しわずか57.02平方メートルであり,実測面積の約60パーセントにすぎない。 このような土地には,現実には一戸建ての住居を建てることはできない。仮に建築可能であるとしても,耐震性,耐圧性の点で著しく非効率的な住居しか建築できない。 ウ被告Aは,本件土地に課せられた外壁後退距離の規制が1.5メートル以上であることを本件評価書に記載せず,かつ上記イのとおり現実的には一戸建て住居の建築は不可能であるのに,本件土地の最有効使用を一戸建て住居の敷地と判定したものである。 被告Aのこのような本件評価書の作成は,本件土地を評価するに当たっての評価人の注意義務に違反し,結果的に評価を誤った過失があり,その結果執行裁判所の最低売却価格の決定を誤らせたものである。 (被告Aの主張)ア外壁の後退距離の規制は,本件土地が都市計画法上の第一種低層住居専用地域と指定されていることによっ 過失があり,その結果執行裁判所の最低売却価格の決定を誤らせたものである。 (被告Aの主張)ア外壁の後退距離の規制は,本件土地が都市計画法上の第一種低層住居専用地域と指定されていることによって法律上当然に適用される規制の一つにすぎないものであり,当該地域の指定とは別の法規によって加えられる規制ではない。しかも,本件土地を含む甲町のすべての第一種低層住居専用地域の外壁の後退距離は1.5メートルと定められており,広く一般に縦覧周知されている。 イ本件土地に建物を建築することは法律上可能である。原告の希望する建物が建築できるか否かということと,本件土地上に法律上建物が建築できるか否かということは全く別個の問題である。 したがって,本件土地の最有効使用の判定を一戸建て住居の敷地としたことは正当である。 (2) 争点(2)(執行裁判所を構成する裁判官に本件評価書の記載を補正すべき義務を怠った重大な過失があるかどうか)について(原告の主張)本件土地が登記簿上93平方メートルであり,間口が狭く奥が長い土地であることは,本件評価書を一見すれば判明するし,原所有者が資材置場として使用していたことも明らかとなっている。 そうすると,執行裁判所においても, このような細長い土地に,物理的に建物が建築可能かどうか当然に疑問をもつべきであり,債務者が本件土地所有者で,最有効使用をしていない点もこれを疑問として更に評価人に検討させ,また都市計画法上の制限の有無について確認させるべき義務があった。 (被告国の主張)ア裁判官が行った争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても,これによって当然に国賠法1条1項所定の違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生じることはなく ,上記責 訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても,これによって当然に国賠法1条1項所定の違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生じることはなく ,上記責任が肯定されるためには,当該裁判官が違法又は不法な目的をもって裁判をしたなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められるような特別の事情があることが必要であるが,原告の主張する事情は,この「特別な事情」には当たらない。 イ(ア) 評価書の記載内容については,民事執行規則30条1項に,評価の目的物が土地である場合には都市計画法,建築基準法その他の法令に基づく制限の有無及び内容を記載すべきものとされているが,都市計画法10条及び建築基準法48条以下の制限等の記載方法については,それぞれの地域の指定を特定して記載すれば,法律上その制限が明らかなものについては,それ以上具体的な制限の内容についてまで記載する必要はないのであって,本件評価書には,公法上の規制が明白に過不足なく記載されている。 原告主張のような,公法上の規制について漏らさず記載し周知させる義務は執行裁判所には課せられていない。 (イ) そもそも,評価書において行政的な規制の内容を逐一具体的かつ網羅的に記載することは不可能なのであるから,競売物件の買受希望者においても,自ら対象不動産に関する調査を行うことが求められている。 裁判所においても,「競売不動産の買受けをされる方のために」と題する冊子(丙1)を備え置き,評価書等の記載が参考資料であって,対象不動産の調査を買受希望者自身においても行うよう注意喚起しているところであり,原告もこれを目にしたか又は少なくとも目にする機会があった。 しかるに,原告は本件入札に先出ち, 考資料であって,対象不動産の調査を買受希望者自身においても行うよう注意喚起しているところであり,原告もこれを目にしたか又は少なくとも目にする機会があった。 しかるに,原告は本件入札に先出ち, 本件土地の状況を一瞥したにすぎず,それ以上の調査は何ら行わなかったというのであるから,原告は,買受希望者に一般に求められる調査義務を尽くさなかったものである。 (3) 争点(3 )(原告の被った損害)について(原告の主張)本件土地は,資材置場又は2,3台分の駐車場としてしか利用できず,住宅用の土地とするには,隣地と地続きで使用するしかない。隣地所有者は原告に対し270万円以下で本件土地を買い受ける用意がある旨を表明した。 このような状況のもとでは,本件不動産の正常価格は,279万円が相当である。 よって原告は,原告の入札価格675万円と上記価格の差額396万円を損害として被ったところ,同差額の範囲内で,375万円を被告らに対し連帯して賠償するよう求める。 (被告らの主張)本件土地の最低売却価格は執行裁判所より502万円と決定されたのであるから,仮に被告Aが本件土地の評価を誤ったとしても,この最低売却価格と本件土地の客観的評価額との差額が損害となるべきものである。 本件土地の平成9年 12月15日現在の更地価格は642万円であって同日時点における本件評価書の評価額よりも高額なのであるから,本件土地を買った原告には何らの損害も発生していない。 (被告Aの主張)仮に,本件土地が一戸建て住宅敷地でなく,完全に青空駐車場としての使用しかできないという前提であっても,549万余の価値があるのであって,被告Aが評価した502万円を上回っているのであって,この点からも原告に損害は生じていない。 第3 争点に 駐車場としての使用しかできないという前提であっても,549万余の価値があるのであって,被告Aが評価した502万円を上回っているのであって,この点からも原告に損害は生じていない。 第3 争点に対する判断 1 証拠(甲1ないし5,7,8の1・2,9の1・2,15,16,鑑定の結果,原告本人)及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると,次の事実を認めることができる。 (1) 本件評価書の記載本件評価書には,①対象物件の評価額及び評価の年月日,②対象物件の表示並びに地積及び建物の種類,構造,床面積,③本件評価に関する人的,物的の利害関係の有無,④対象物件の確認,⑤対象物件及びその所在する場所の環境の概要,⑥評価方式及び上記以外の評価の参考とした事項,⑦対象物件の評価額の算出及び決定の各項目の下,それぞれ所定の記載がされている。 このうち,⑤対象物件及びその所在する場所の環境の概要については,ア位置及び交通の便乙線「丙」駅の北西方約700メートル(直線距離)イ地域要因市街化 (市街化区域の意)1低専 (第一種低層住居専用地域の意)建ぺい率  50パーセント容積率 80パーセント防火規制無し(以下略)ウ個別的要因(土地)地積公簿(=)現況規模標準より小形状長方形(以下略)エ備考最有効使用の判定一戸建住宅の敷地である現在は最有効使用でない(工作物敷地であるから)(以下略)と記載されていた。 また,⑥評価方式及び上記以外の評価の参考とした事項として,比較法を中心とし,原価法,収益法を関連 現在は最有効使用でない(工作物敷地であるから)(以下略)と記載されていた。 また,⑥評価方式及び上記以外の評価の参考とした事項として,比較法を中心とし,原価法,収益法を関連づける標準として,近隣の宅地(価格1平方メートル当たり11万7000円)を挙げている。 被告Aは,右標準価格に,時点修正, 個別格差 (面積過小,奥行長大),を適用し,更に市場性減価として30パーセントの減価をして,本件土地の価格を502万円(一平方メートル当たり5万4000円)と算出した。 (2) 本件土地の画地条件は,両隣接地のコンクリートブロック擁壁の外面間の距離で間口が約5.4メートル(同擁壁のセンター間では約5.5メートル,奥行きは約17メートルの矩形地で,北側が県道に接し,南側は用水路に接している。 (3) 本件土地が属する地域は,都市計画により,第一種低層住居専用地域に指定され,都市計画法及び建築基準法に基づいて,境界線から1.5メートル以上は壁面を後退させる必要があった。 その結果,本件土地上には,幅約2.4メートル程度の建物しか適法には建築できない。 しかも,原告が本件土地を所轄する土木事務所等に問い合わせたところ,仮に本件土地に建物を建てるとしても,耐震性を保つため,筋交いを入れるなどの処置が必要になるとの話が事実上された。 (4) 当裁判所から選任された鑑定人は, 本件土地につき,本件評価書が作成された平成9年12月15日現在の評価額について,画地条件として,本件土地が間口5.4メートル,奥行約17メートルの矩形地であることをふまえ,その最有効使用を単独利用としては駐車場ないし資材置場としての利用が相当とし,比準価格及び収益価格を算出し,公示価格を基準とした価格を参酌して標準価格を1平方メー ルの矩形地であることをふまえ,その最有効使用を単独利用としては駐車場ないし資材置場としての利用が相当とし,比準価格及び収益価格を算出し,公示価格を基準とした価格を参酌して標準価格を1平方メートル当たり11万5000円と算定し,更に,本件土地の地積が約93平方メートルとやや小さいこと,間口が約5.4メートルと狭い矩形地で,単独では住宅敷地として利用することが困難であること,奥行長大であることの各個別的要因による40パーセント減価の補正をして,1平方メートル当たり6万9000円,総額で642万円であると鑑定した。 (5) 本件土地は前記のとおり第一種低層住居専用地域内にあり,現実にも周辺は低層の住宅地であり,間口が極端に狭小な住宅が建ち並ぶような地域ではない。 そして,上記の通り,鑑定の結果によれば,本件土地は「単独での利用困難」とされているところであり,本件土地上に一戸建て建物を適法に建てようとすれば,両隣地の敷地から壁面距離を各1.5メートル,合計で3メートルを確保し,間口が約2.4メートル程度の建物しか建てることができず,このような建物を本件土地上に建てようとするのは,上記本件土地の地域や周辺の状況にてらし,常識的に考えれば非現実的な計画である。 2 上記事実を前提として,当裁判所は次のとおり判断する。 (1) まず,評価書に壁面後退距離についてどの程度の情報を記載すべきかについて検討する。 この点について,民事執行規則30条 1項5号は,評価の目的物が土地である場合には,(イ)地積, (ロ)都市計画法,建築基準法その他の法令に基づく制限の有無及び内容,(ハ)基準とした公示価格その他の評価の参考とした事項を記載しなければならないと定めている。 このうち,(ロ)の事項については, 市街化区域又は市街化調 その他の法令に基づく制限の有無及び内容,(ハ)基準とした公示価格その他の評価の参考とした事項を記載しなければならないと定めている。 このうち,(ロ)の事項については, 市街化区域又は市街化調整区域の指定に基づく制限,市街化開発事業等予定区域の指定に基づく制限,都市計画に定められた都市計画施設の区域又は市街化開発事業の施行区域における制限,風致地区の指定に基づく制限(以上,都市計画法に基づく指定及び制限),第一種低層住居専用地域等の地域地区の指定に基づく制限(都市計画法に基づく指定並びに同法及び建築基準法に基づく制限),災害危険区域の指定に基づく制限(建築基準法に基づく指定及び制限)などがある。 そして,これらの制限については,その地域の指定さえ特定すれば,法律上その制限が明らかなものについては,具体的制限の内容まで規制する必要はないものというべきである。 これを本件についてみると,前判示のとおり,本件評価書には民事執行規則30条1項5号(ロ)に該当する事項として,第一種低層住居専用地域であることを示す「1低専」との文言があり,これと本件土地の属する地域の都市計画とを参照すれば,本件土地の壁面の後退距離が1.5メートルであることについては容易に判明するものである。 そうすると,本件において,本件土地の壁面後退距離は,第一種低層住居専用地域の指定を受けているとの記述によって表現されているというべきであり,具体的な壁面後退距離を記載しなかったことをもって被告Aに過失があるということはできない。 (2) 最有効使用の判定についてア(ア) 前記認定のとおり,本件評価書は,最有効使用の判定について,一戸建て住宅用の敷地と判定し,現在は工作物敷地であるから最有効使用でないとしている。 同判定は,本 効使用の判定についてア(ア) 前記認定のとおり,本件評価書は,最有効使用の判定について,一戸建て住宅用の敷地と判定し,現在は工作物敷地であるから最有効使用でないとしている。 同判定は,本件土地上に建物が建築可能であることを前提とするものであるが,前記認定事実によれば,常識的に考えると,本件土地を単独で利用することを前提に居住用建物を建築することの現実的な可能性は低く,したがって妥当性を欠くものといわざるをえない(にもかかわらず,被告Aがこのような判定をしたのは,同人は,本件土地が属する区域が第一種低層住居専用地域に指定されていることの調査はしたものの,具体的な壁面後退距離の規制を看過したまま判断したことによるものと強く推定される。)。 したがって,本件評価書の最有効使用の判定及びその記載には瑕疵があるものと認められる。 (イ) この点に関し,被告Aは,間口2. 37メートルに満たない一戸建て住宅は多数存在するし,そのような建物は建てたくないというのは原告の趣味嗜好の問題であって,法律上は本件土地上に適法な建物が建築可能であるから,本件土地上の最有効使用の判定を一戸建て住宅の敷地としたことは正当である旨主張する。 しかし,本件土地上に一戸建ての住宅を建築しようとするのは非現実的な計画であることは前記のとおりであり,被告Aの上記主張は,本件土地について1.5メートルの壁面後退距離があることを看過したことを殊更糊塗しようとする弁明にすぎない。 イ同記載をした被告Aに過失があるかどうか(ア) しかしながら,そもそも,競売手続において評価人に評価が要求されるのは,最低売却価格を公正に算出することにより債務者や抵当権者等に不当な損害を与えないようにするとともに,買受人に対し情報を提供し,入札価格の ら,そもそも,競売手続において評価人に評価が要求されるのは,最低売却価格を公正に算出することにより債務者や抵当権者等に不当な損害を与えないようにするとともに,買受人に対し情報を提供し,入札価格の決定の際の参考とする趣旨にでたものであると解される。買受希望者は,最終的には専ら自己の責任によって競売に参加し,入札するものである。 そして,前述の趣旨にてらせば,評価人の最有効使用の判定は,最低売却価格の前提たる評価額の根拠としての評価人なりの判断に過ぎない。買受希望者は,当該土地の用途についての買受希望者なりの主観的意図を有するのが通常であって,それをもとに入札するかどうか及び入札価格を吟味するものであるところ,本件においては,前述のとおり,本件評価書中に第一種低層住居専用地域であることが表明され,本件土地のある地域の都市計画を参照すれば,本件土地の壁面後退距離が判明したのであるから,買受希望者なりの最有効使用を判断しうる情報は与えられていたというべきである。 したがって,前記アのとおり,評価人の最有効使用の判定には瑕疵があったものの,本件評価書全体をみるとその瑕疵は重大なものとまではいうことはできない。 (イ) また,評価書の評価額算定にあたっての所定事項の各記載は,評価額を算出するに当たっての評価の合理性を担保するために記載されるものであるから,誤った評価書を作成したとして評価人の過失を問うためには,評価額を導くについての当該物件の個別的事項の記載の誤りによって,本来あるべき評価額が不当に歪められたとの事情が必要である。 しかるところ,本件評価書の作成当時の平成9年12月15日現在の本件土地の客観的評価額は,前記鑑定結果のとおり642万円と算出されており,上記算出過程は前記1( 4)のとおりであっ である。 しかるところ,本件評価書の作成当時の平成9年12月15日現在の本件土地の客観的評価額は,前記鑑定結果のとおり642万円と算出されており,上記算出過程は前記1( 4)のとおりであって,特に不合理な点はなく,本件評価書の評価額である502万円を優に上回っているものである。本件評価書の記載中の,本件土地の最有効使用を一戸建ての敷地とした誤りによって,評価額が不当に高く算出されたとの事情を認めることはできない。 そうすると,本件土地の最有効使用の判定及びその記載の瑕疵は,本件評価書による本件土地の評価額の決定には結果として影響を与えていないというべきであるから,結局のところ,本件評価書は本来あるべき評価額が不当に歪められた評価書とは認められない。 従って,本件評価書の記載について,被告Aに過失があると認めることはできない。 3(1) 以上のとおりであって,争点(1 )の被告Aの過失を認めることはできず,被告Aに対する請求はその余の点を判断するまでもなく失当である。 (2) また,争点(2)の被告国の責任に関しては,そもそも執行裁判所が評価人に不動産の評価を命ずるのは,不動産競売手続において,最低売却価格を決定するためのものであるから,評価人が提出する評価書の個々の事項の記載内容について是正させる義務までを負うものではないのみならず,本件評価書による本件土地の評価額が客観的価格を優に上回っていたことは前記のとおりであり,執行裁判所が本件土地の最低売却価格を前記のとおり502万円と定めたことにも何らの違法もない。原告の被告国に対する請求はその余の点を判断するまでもなく失当である。 4 結論以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がないから,これ 法もない。原告の被告国に対する請求はその余の点を判断するまでもなく失当である。 4 結論以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がないから,これを棄却する。 奈良地方裁判所第2民事部裁判長裁判官永井ユタカ裁判官島川勝裁判官松阿弥隆

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る