【DRY-RUN】主 文 本件各上告を棄却する。 理 由 被告人Cの弁護人田中秀次の上告趣意書第一点は「原判決は擬律錯誤の違法なる 判決なり原判決は「被告人等は共同して昭和二十
主文 本件各上告を棄却する。 理由 被告人Cの弁護人田中秀次の上告趣意書第一点は「原判決は擬律錯誤の違法なる判決なり原判決は「被告人等は共同して昭和二十二年七月二十七日午前一時三十分頃鳥取県a大字bc番地A方養蚕室内で馬齢薯等を窃取することを企て被告人Bは右養蚕室表入口で見張り被告人C同Dは右養蚕室に侵入し被告人は馬齢薯に近寄らんとした時警戒中の警察官及部落民に発見せられた為め窃取の目的を遂けなかつた事実」を確定したか該事実に対し住居侵入と窃盗未遂を以て所断したのである。然れども被告人か相被告人等と右養蚕室に侵入するに至つた動機は平素被告人等は常に其行を共にし非常に懇親の間柄であつて偶々犯行日時頃三人相会し村芝居見物に行つたが既に終つて居たので空しく帰るも所在がない処から今日尚農村青年の間に残つて居る悪習と闇夜の悪戯心に誘惑せられ予て被告人DがA方に密造酒の在る事を知つて居たので之を盗飲せんとして右養蚕室に侵入した偶発的犯罪てある事は原審公判で被告人が供述した通りである。原判決は侵入の目的が馬齢薯窃取に在つた様に謂ふけれども被告人は農家で馬齢薯は腐る程有るから此等客観的事実から見て馬齢薯窃取だと謂ふのは牽強附会であらうたから被告人等は密造して居るであらうと思はれる前記養蚕室入口に近ついたが施錠かしてあつたのて外部から窺ひ次て屋根から内部に這入り直に内部から入口戸を開かうとした処外に警察官や部落民か迫つて居たので二階に上り屋根に出て逃避しようとした事か本件の真相てある将して然らは被告人は密造酒を窃取する意思のあつた事其目的を遂ける為右養蚕室に侵入した事は何れも争ひない事実てあるけれとも被告人か盗窃行為に着手する寸前に発覚しまだ窃盗行為に着手するに至つてゐない。凡そ窃盗とは領得の意思を以て他人 る意思のあつた事其目的を遂ける為右養蚕室に侵入した事は何れも争ひない事実てあるけれとも被告人か盗窃行為に着手する寸前に発覚しまだ窃盗行為に着手するに至つてゐない。凡そ窃盗とは領得の意思を以て他人の財物の上に不正な支配的実力を行使することであるから犯人が家宅に侵入した丈- 1 -けてまた何物の上にも実力的支配をしなければ窃盗着手とは謂へない。本件は被告人か右養蚕室に侵入した許りて未た窃盗行為に移行する余裕のない裡に発覚して仕舞つたのであるから窃盗行為は構成する暇がなかつたのである況んや被告人の目的は密造酒の窃盗に在つたから密造酒以外の物か何程あらうと夫等の物を窃取する意思はないから密造酒が同所に無い限り他人の財物に対する不正支配か起らないので本件は寧ろ不能犯でもある。或は窃盗犯人か財物窃取の目的で家宅に侵入すれは侵入行為夫れ自体で窃盗の着手にもなると謂ふ者かあるかも知れないが斯様な場合は犯人か何にかにを問はす手当り次第其場所に在る他人の財物を盗取する目的を有し又之を実行するからであつて本件の様に目的物を特定した場合は其の特定物に実力を及ほさなけれは窃盗の着手とは謂へないし又其処に其特定物が無ければ窃盗は遂に不能に終らさるを得ないから不能犯であると謂ふへきであらう。然るに原判決か被告人の前記所為を窃盗未遂として処断したのは擬律錯誤の違法を犯したもので破毀を免れない」というのである。 しかし、原判決の認定するところによれば、被告人等は、共謀の上馬齢薯その他食料品を窃取しようと企てA方養蚕室に侵入し、懐中電燈を利用して食料品等を物色中、警察官等に発見せられて、その目的を遂けなかつたというのであつて、被告人等は、窃盗の目的で他人の屋内に侵入し、財物を物色したというのであるから、このとき既に、窃盗の着手があつたとみるのは当然である。従つて、如 発見せられて、その目的を遂けなかつたというのであつて、被告人等は、窃盗の目的で他人の屋内に侵入し、財物を物色したというのであるから、このとき既に、窃盗の着手があつたとみるのは当然である。従つて、如上判示の事実をもつて、住居侵入、窃盗未遂の罪にあたると判断した原判決は正当である。 論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、若しくは、原審の認定していない事実を前提として原審の判断を攻撃し、本件窃盗は、未だ着手に至らなかつたと主張するもので、上告の理由として採用することはできぬ。尚弁護人の不能犯に関する主張も、被告人等の本件住居の侵入は、密造酒を盗む目的であつたということを前提とするものであるがかゝる目的で住居に侵入したということは、原審- 2 -の認定しないところてある。結局原審の事実認定を非難するか、または原審の認定しない事実に立脚しての主張であるから、これまた採用に値しない。論旨は理由がない。 同第二点は「原判決は被告人か法定の除外事由かないのに刃渡十六糎五粍の匕首一本を所持した事実を確定し銃砲等禁止令違反罪として処断した。然し被告人は左官職であるから日常竹類の裁断に使用して居た職業用具てあつて他の職業用の刃物と何等異るものてないから単に其形状や寸尺たけで右禁止令に該当するものであると断定してはいけない然るに原判決か右匕首の日常用途を無視して右禁止令に違反するものとしたのは前記法条の精神趣旨を誤解したもので結局原判決は此点に於て亦擬律錯誤の違法を犯したもので破毀を免れない」というのである。 しかし、所論の匕首が、刃渡約十六糎余あることは原判決の確定するところであるから、この匕首が銃砲等所持禁止令第一条、同施行規則第一条に照し同令第一条にいう刀剣に該当することは疑ない。従つてかりに、弁護人の主張するように、この匕首は左官職 ことは原判決の確定するところであるから、この匕首が銃砲等所持禁止令第一条、同施行規則第一条に照し同令第一条にいう刀剣に該当することは疑ない。従つてかりに、弁護人の主張するように、この匕首は左官職である被告人の職業用具であるとしても、左官職の職業用具であるというだけの理由では、同令第一条の除外例とならぬことは、同条において、特に狩猟を業とするものが、その業務の用に供するものについて地方長官の許可を受けた場合にのみ除外例をもうけ、他の業者の営業用具について、何ら規定するところのない法意から推してあきらかである。もとより、被告人か本件匕首の所持について、適法に地方長官の許可を受けたという事実は、弁護人も主張せず、原審も認定しないところである。原審か被告人の本件匕首の所持と、同令第一条違反の罪にあたると判断したのは正当であつて、論旨は理由がない。 被告人Dの弁護人君野順三の上告趣意書第一点は「原判決は実験法則に違反し証拠の認識を誤り不当に事実を確定したる違法ありと信します。被告は原審に於て第一審迄の陳述の一部を訂正し被害者A方養蚕室に侵入したのは同家に濁酒を密造せ- 3 -ることを知りたるより好酒者たる被告人等は之れを盗飲する為めにして今迄之れを供述せざりしは同家は得意先に当り税法違反に問はるゝことは気の毒なりと考へたからである旨の陳述をしました若し然りとすれは農村青年の野荒しの類にて一の悪習慣の昂じた程度本格的の窃盗でなく其情状大に異なり量刑に影響する事実たることは明かである。被告人は石工にして其傍農業を営み馬齢薯の如きは供出完了後も自家消費に供し尚ほ余りあり腐敗を前にして処分に窮したる実状にありこの事実は被告人のみならず当地方農家一般の顕著なる事実なるのみならず当時農村に於て馬齢薯は近隣に沢山保存し居り斯の如き重量ある物品を遠隔の地に 供し尚ほ余りあり腐敗を前にして処分に窮したる実状にありこの事実は被告人のみならず当地方農家一般の顕著なる事実なるのみならず当時農村に於て馬齢薯は近隣に沢山保存し居り斯の如き重量ある物品を遠隔の地に盗取に赴く如きことは社会常識に照して首肯し得さることは寔に明瞭なるところであります。されば原審に於ける被告人の訂正陳述は諸般の情況を考察し之れが真の事実たることを容易に看取することが出来る次第であります。然るに原審が此自供を採容せられざりしは単に事実の著しき誤認と称すべき程度を超越し吾人の実験法則乃至条理を逸脱したるものと云ふべく事実認定は原審の専権に属する処で上告理由とならないことは無論であるが斯くの如き判断は其の専権行使の過程に於て重大なる誤謬をおかし証拠の認識を誤りたる違法あるものと信する」というのである。 しかし、原判決の引用した証拠を綜合すれば原判示の事実は十分認定できるのであるから、原審が、この証拠によつて、この事実を認定したことをもつて或は吾人の経験律に反するといい、或は条理を逸脱するものと主張する弁護人の非難はあたらない。論旨は結局、原審の事実認定を非難し、かつ、量刑の不当を攻撃するものであつて、上告適法の理由とはならない。尚同弁護人の援用する弁護人田中秀次提出の上告趣意第一点に対する判断は、前述べたとおりである。 よつて、刑事訴訟法第四百四十六条を適用し、主文の通り判決する。 右は裁判官全員の一致した意見である。 検察官松岡佐一関与- 4 -昭和二十三年四月十七日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官 官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 5 -
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