令和3(ネ)270 不当利得返還等請求控訴事件、同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月19日 札幌高等裁判所 破棄自判 札幌地方裁判所 令和1(ワ)916
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判決文本文11,770 文字)

1 主 文1 控訴人の被控訴人Aに対する控訴及び被控訴人らの各附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 2 控訴人は、被控訴人Aに対し、18万5903円及びうち17万6786円に対する平成30年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人は、被控訴人Bに対し、180万9492円及びうち121万1306円に対する平成31年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 控訴人の被控訴人Bに対する控訴を棄却する。 6 訴訟費用は、原審及び当審を通じてこれを10分し、その1を被控訴人らの負担とし、その余を控訴人の負担とする。 7 この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判1 控訴の趣旨(1) 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 上記取消し部分に係る被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 2 各附帯控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 控訴人は、被控訴人Aに対し、21万5904円及びうち17万6787円に対する平成30年12月28日から、うち3万円に対する令和元年6月4日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 控訴人は、被控訴人Bに対し、204万9492円及びうち121万1306円に対する平成31年1月12日から、うち24万円に対する令和元年6月2 4日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 仮執行宣言第2 事案の概要(以下、略語は特記ない限り原判決の例による。また、原判決を引用する場合、「原告」を「被控訴人」と、「原告1」を「被控訴人A 5分の割合による金員を支払え。 (4) 仮執行宣言第2 事案の概要(以下、略語は特記ない限り原判決の例による。また、原判決を引用する場合、「原告」を「被控訴人」と、「原告1」を「被控訴人A」と、「原告2」を「被控訴人B」と、「亡2」を「亡C」と、「被告」を「控訴人」と、「元奨学生1」を「D」と、「連帯保証人1」を「D父」と、「元奨学生2」を「E」と、「連帯保証人2」を「E父」とそれぞれ読み替える。)1 本件は、日本育英会から第2種奨学金を借り受けた元奨学生Dの単純保証人であった被控訴人Aと、日本育英会から第2種奨学金を借り受けた元奨学生Eの単純保証人であった亡Cの相続人である被控訴人Bが、それぞれ、他に共同保証人が存在したから、分別の利益により、その保証債務額は各奨学金返還残債務の2分の1であったのに、控訴人の請求により、これを超える金額の支払を余儀なくされたと主張して、控訴人に対し、それぞれの主張する保証債務額を超えて支払った金員(ただし、被控訴人Aについては後に控訴人から返還を受けた支払部分を除く。)について、控訴人は同額の受領につき悪意の受益者であるなどとして、不当利得返還請求権に基づき、同額並びに民法704条に基づき、それぞれ各受領日の翌日から控訴人に対して返還請求をした日までの民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による利息の返還及び返還請求をした日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに、控訴人による上記請求が不法行為に当たり、これにより精神的苦痛を被ったとして、慰謝料及び訴状送達の日の翌日(令和元年6月4日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人らの各請求の より精神的苦痛を被ったとして、慰謝料及び訴状送達の日の翌日(令和元年6月4日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人らの各請求のうち、被控訴人らがそれぞれ主張した金額の不当利得の返還と、原審の判決言渡日(令和3年5月13日)を起算日とする附帯求の限度で認容し、その余をいずれも棄却した。 3 これに対し、控訴人が控訴し、被控訴人らが附帯控訴した。 2 前提事実、争点及びこれについての各当事者の主張は、原判決を後記3のとおり補正し、当審における控訴人の追加主張を後記4のとおり付け加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」の2ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 原判決の補正(1) 原判決4頁2行目の「基づいて」を「基づくものとして」に改める。 (2) 原判決4頁4行目冒頭から7行目末尾までを、次のとおり改める。 「 被控訴人Aは、控訴人に対し、本件保証契約1に基づくものとして、本判決別表記載のとおり、平成24年10月22日から平成31年1月4日までの間に合計67万0800円を支払った。 エ 被控訴人Aは、平成30年12月25日、控訴人に対し、同年11月までの支払額のうち奨学金返還残債務の2分の1を超える部分について、控訴人の不当利得であるとして、その返還を求める書面を送付し、この書面は同年12月27日に控訴人に到達した(甲3、4)。 オ 控訴人は、平成31年3月22日、分別の利益を認め、上記支払のうち平成30年11月2日、同年12月17日及び平成31年1月4日の支払分合計2万5800円を、被控訴人Aに返還した(乙15)。」(3) 原判決4頁20行目の「基づいて、」を「基づくものとして ち平成30年11月2日、同年12月17日及び平成31年1月4日の支払分合計2万5800円を、被控訴人Aに返還した(乙15)。」(3) 原判決4頁20行目の「基づいて、」を「基づくものとして、残債務全額である」に改める。 (4) 原判決4頁25行目末尾の次に行を改めて、次のとおり加える。 「オ 被控訴人Bは、平成31年1月9日、控訴人に対し、既に支払った額のうち奨学金返還債務の2分の1を超える部分について、控訴人の不当利得であるとして、その返還を求める書面を送付し、この書面は同月11日に控訴人に到達した(甲12、13)。」(5) 原判決6頁20行目の「受領時から」を「各受領日の翌日から被控訴人らが4 それぞれ不当利得の返還を控訴人に請求した日(被控訴人Aについては平成30年12月27日、被控訴人Bについては平成31年1月11日)までの」に改め、20行目末尾の次に行を改めて「上記利息の額は、被控訴人Aについては、本判決別紙利息金計算書(A)記載のとおり、合計9117円であり、被控訴人Bについては、59万8186円である。」を加える。 4 当審における控訴人の追加主張(1) 連帯債務者間の求償に関する民法442条1項において、「負担部分」という用語は、連帯債務者間の対内的関係について用いられていることに照らせば,分別の利益を有する共同保証人間の求償について規定する民法465条2項の「負担部分」という語も、対内的関係について用いられていると解するべきである。 また、共同保証人は、主債務者から、主債務の全額について委託を受けて、債権者との間で保証契約を締結している。 さらに、日本育英会法25条3項の委任を受けた日本育英会が行う学資金回収業務の方法に関する省令4条ないし7条及び独立行政 の全額について委託を受けて、債権者との間で保証契約を締結している。 さらに、日本育英会法25条3項の委任を受けた日本育英会が行う学資金回収業務の方法に関する省令4条ないし7条及び独立行政法人通則法等の規定に基づく独立行政法人日本学生支援機構に関する省令28条ないし31条において、単純保証人に対する請求は、元奨学生や連帯保証人に対する請求と同列に規定されており、元奨学生が延滞している割賦金及び元奨学生に賦課する延滞金の全部を請求することとされている(以下、これらの規定を含めて「本件省令等の定め」という。)。 これらのことからすると、単純保証人の保証債務は、民法427条、456条により、共同保証人の存在によって、当然に頭数に応じた平等分割になるのではなく、保証人側の分別の利益の主張をもって、保証人の数に応じて分割されると解するべきである。 (2) 仮に、単純保証人が当然に分別の利益を有するにもかかわらず、そのことを知らずに負担部分を超える額を弁済したのだとしても、保証人は主債務全額に5 ついて委託を受けているのであるから、負担部分を超えてされた弁済は、「他人(主債務者)のためにする意思」で保証債務を履行したものであり、事務管理が成立する、あるいは、主債務者の債務を弁済する意思で主たる債務者に代わって弁済したものであるから、第三者弁済として有効である。 控訴人は、本件省令等の定めにあるとおり、主債務者や連帯保証人と同様、単純保証人に対しても返還未済額の全額の返還を確保することが予定され、控訴人が保証人に対して返還未済額の全額を請求することは法令に則ったものであるから、控訴人の請求に対する保証人の弁済について、分別の利益を有することについての錯誤という控訴人が知り得ない保証人の内心の事情により弁済の有効性が事後的 全額を請求することは法令に則ったものであるから、控訴人の請求に対する保証人の弁済について、分別の利益を有することについての錯誤という控訴人が知り得ない保証人の内心の事情により弁済の有効性が事後的に左右されるのは、法的安定性、奨学金事業の安定性・健全性が害されることとなり妥当ではない。 (3) 亡Cが平成21年2月25日に残債務全額を弁済した当時、控訴人は、亡Cが分別の利益を有することを知らなかったことについて善意であった。 そして、控訴人は、全額弁済を受けたことから、控訴人内部の取扱いにより、本件奨学金2に係る返還誓約書その他全データを廃棄ないし消去した。これは、民法707条1項の証書の滅失にあたる。 また、本件奨学金2は、平成20年10月から令和5年9月までの分割返済の約定となっていたところ、少なくとも平成24年2月分までの割賦金合計59万1384円の2分の1に相当する29万5692円について、主債務者であるE及び連帯保証人であるE父に対する請求権は時効により消滅した。これは亡Cが全額弁済したため、E及びE父に対する時効中断の措置をとらなかったからである。 したがって、民法707条1項により、被控訴人Bは、控訴人に対して過払分の返還を請求することができない。仮に、控訴人による返還誓約書等の廃棄ないし消去が証書の滅失にあたらないとしても、少なくとも平成24年2月分までの29万5692円については、時効によりE及びE父に請求できなくな6 ったものとして、被控訴人Bは、控訴人に対して過払分の返還を請求することができない。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所は、被控訴人Aの請求は、不当利得元金として17万6786円及びこれに対する利息金として9117円並びに上記元金に対する遅延損害金の支払を求める限 できない。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所は、被控訴人Aの請求は、不当利得元金として17万6786円及びこれに対する利息金として9117円並びに上記元金に対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、被控訴人Bの請求は、不当利得金元金として121万1306円及びこれに対する利息金として59万8186円並びに上記元金に対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。 その理由は、原判決を後記2のとおり補正し、当審における控訴人の追加主張に対する判断を後記3のとおり付け加えるほか、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正(1) 原判決11頁20行目の「本件保証契約1締結時」の次に「、控訴人から分別の利益についての説明はなく、連帯保証人がいることは知っていたが」を、21行目の「甲32〔2頁〕」の次に「、乙1」をそれぞれ加え、「原告1本人〔12頁〕」を「原審被控訴人B本人〔1・12・21頁〕」に改める。 (2) 原判決12頁20行目の「協議を重ねた結果」を「協議を重ねたが、控訴人から分別の利益の説明はなく」に改め、26行目の「同月22日から」の次に「、保証債務の履行として」を、13頁2行目の「乙15〔項番61~71〕」の次に「、原審被控訴人A本人〔5頁〕」をそれぞれ加える。 (3) 原判決13頁5行目末尾の次に行を改めて、次のとおり加える。 「キ 被控訴人Aは、その後も控訴人から分別の利益についての説明を受けることなく、分別の利益について知らないまま、控訴人に対し、本件保証契約1に基づくものとして、本判決別表記載のとおり、平成24年10月22日から平成31年1 控訴人から分別の利益についての説明を受けることなく、分別の利益について知らないまま、控訴人に対し、本件保証契約1に基づくものとして、本判決別表記載のとおり、平成24年10月22日から平成31年1月4日までの間に、合計67万0800円を支払っ7 た。」(4) 原判決13頁6行目の「キ」を「ク」に改め、10行目の末尾の次に行を改めて、次のとおり加える。 「ケ 被控訴人Aは、控訴人に対し、平成30年12月27日に到達した書面をもって、同年11月までの支払額のうち奨学金返還残債務の2分の1を超える部分について、控訴人の不当利得であるとして、返還を求めた。 控訴人は、平成31年3月22日、分別の利益を認め、上記支払のうち平成30年11月2日、同年12月17日及び平成31年1月4日の支払分合計2万5800円を、被控訴人Aに返還した。」(5) 原判決14頁2行目の「本件保証契約2締結時」の次に、「、控訴人から分別の利益についての説明はなく、連帯保証人がいることは知っていたが」を加え、3行目の「甲33〔3~4頁〕」を「甲9、33〔2~4頁〕」に改める。 (6) 原判決15頁3行目の「原告2は」の次に「、控訴人から分別の利益について説明を受けたことはなく、分別の利益について知らなかった。そして、保証人は全額を支払う義務があるものと考え」を、6行目の「被告に対し」の次に「、本件保証契約2に基づくものとして」を、7行目の「〔6~7頁〕」の次に「、原審被控訴人B本人〔8頁〕」をそれぞれ加え、同行目末尾の次に行を改めて、次のとおり加える。 「 カ 亡Cは、平成28年12月28日死亡した。 亡Cの相続人ら全員は、平成31年1月1日、亡Cが本件保証契約2に関して控訴人に対して有する不当利得返還請求権を、被控訴 。 「 カ 亡Cは、平成28年12月28日死亡した。 亡Cの相続人ら全員は、平成31年1月1日、亡Cが本件保証契約2に関して控訴人に対して有する不当利得返還請求権を、被控訴人Bが単独で相続する旨の遺産分割協議をした。 被控訴人Bは、控訴人に対し、平成31年1月11日に到達した書面をもって、支払った額のうち奨学金返還債務の2分の1を超える部分について、控訴人の不当利得であるとして、返還を求めた。 (3) 控訴人は、平成16年に独立行政法人になった当初、顧問弁護士の意見8 を参考に、保証人から「分別の利益」の主張があった場合には、保証人の負担額を減ずることにし、それ以降、特段の議論をすることなく、同様の扱いをしていたが、保証人に対して、契約時においても、請求時や弁済受領時においても、分別の利益についての説明をしていなかった(甲41、46、弁論の全趣旨)。そして、平成30年11月頃、控訴人が保証人に対して分別の利益を知らせずに全額請求している旨の新聞報道がされたことを契機に(甲22)、控訴人の公式ウェブサイトに保証人から分別の利益の主張があった場合には請求額を2分の1にすることができる旨の説明を掲載し、平成31年度からは契約をする保証人に対して、契約時の書類などで分別の利益について同趣旨の説明をすることとした(甲37)。」(7) 原判決15頁9行目の「連帯保証人1・2が」を「それぞれ連帯保証人が」に改める。 (8) 原判決16頁1行目末尾の次に行を改めて、次のとおり加える。 「控訴人は、その主張を裏付けるものとして、民法解釈に関する文献を書証として提出するが(乙6ないし10、13、19ないし21、25ないし27)、乙第10号証を除き、共同保証人に分別の利益 。 「控訴人は、その主張を裏付けるものとして、民法解釈に関する文献を書証として提出するが(乙6ないし10、13、19ないし21、25ないし27)、乙第10号証を除き、共同保証人に分別の利益がある場合には、保証人の特段の行為がなくとも当然に分割された債務額についてのみ保証債務を負担するとの趣旨を述べるものはあっても、保証人が分別の利益を主張しなければ債務が分割されない趣旨を述べるものはない。乙第10号証は、本件訴訟にあたって作成された法律意見書であり、分別の利益の主張立証責任が訴訟法上保証人にあるという判例通説の考え方の帰結として、実体法上も保証人が分別の利益の主張をしなければ分別の利益が適用されない旨述べるが、その論述は訴訟法上の主張立証責任と実体法の解釈とを混同するものであって、採用することができない。」(9) 原判決17頁11行目の「しかし」から15行目末尾までを、次のとおり改める。 9 「しかし、保証債務の履行は、自己の債務の履行であるとともに、他人のための事務でもあるから、事務管理が成立することがあり得るとしても、保証債務が存在しないのにこれが存在すると誤信して弁済した場合は、他人のためにしたとはいえず、非債弁済として不当利得となると解すべきであるから(なお、乙26参照)、事務管理は成立しないというべきである。 よって、この点についての控訴人の主張は採用することができない。」(10)原判決17頁17行目から18行目にかけての「民法459条1項、462条1項、465条1項参照」を「民法462条1項、465条2項参照」に改める。 (11)原判決18頁2行目の「46万8213円」を「46万8214円」に、11行目の「17万6787円」を「17万6786円」にそれぞれ改める。 ( 1項、465条2項参照」に改める。 (11)原判決18頁2行目の「46万8213円」を「46万8214円」に、11行目の「17万6787円」を「17万6786円」にそれぞれ改める。 (12)原判決18頁23行目の「弁済したのは」の次に「、控訴人から「奨学金の返還について」(甲7、8)の送付を受け、同書面の記載内容から、保証債務の履行を請求されると認識し」を加える。 (13)原判決19頁6行目冒頭から22行目末尾までを、次のとおり改める。 「4 悪意の受益者性及び発生する利息について(1) 控訴人は、悪意の受益者であったことを否認する。 しかし、前記認定事実によれば、控訴人は、被控訴人ら及び亡Cに対して、分別の利益について説明することなく、保証債務を履行するよう請求し、あるいは、保証人に請求する場合がある旨を記載した書面を送付し、これに応じて、被控訴人A及び亡Cは弁済したものであるから、控訴人は、同人らが、保証債務の履行として弁済したことを認識していたものと認めるのが相当である。そして、控訴人は、被控訴人A及び亡Cから保証債務の履行として支払を受けた時点において、上記両名の他にそれぞれ連帯保証人がいることを知っていたのであるから、不当利得が発生する根拠となる事実関係については、全て知悉していたものであ10 る。また、控訴人は、被控訴人A及び亡Cがいずれも分別の利益を有していることも認識しており,ただ保証人が分別の利益を主張した場合に限り,保証債務の額を減ずるとの扱いをしていたというにとどまる。 控訴人が、分別の利益は保証人の主張を要すると考えて、保証人の弁済が保証債務の履行として有効であると認識していたとしても、これは事実についての誤認ではなく、法律上の誤解であることに 控訴人が、分別の利益は保証人の主張を要すると考えて、保証人の弁済が保証債務の履行として有効であると認識していたとしても、これは事実についての誤認ではなく、法律上の誤解であることに加え、分別の利益を有する共同保証人が存在する場合、当該共同保証人は、何らの行為の必要もなく当然に分割された額についてのみ保証債務を負うことは、被控訴人A及び亡Cの各支払の当時、通説であってほぼ異論をみないこと(甲15(40頁)、甲28(195頁)、甲38(190頁)、乙6(457頁)、乙8(177頁)、乙13(93ないし96頁)、乙19(147ないし150頁)、乙20(504頁)、乙25(177ないし178頁))、控訴人は、保証人を付して全国で多数の学生に対して奨学金の貸与等を行っている公的な団体であることからすると、分別の利益について保証人の主張を要するとの認識を有したことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえない。 以上のとおり、控訴人は、不当利得の発生根拠となる事実関係を全て知っており、法律上の根拠も認識していたのであり、分別の利益について保証人の主張を要すると認識したことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえないから、被控訴人A及び亡Cからそれぞれ本来の保証債務を超えた部分の支払を受けた時点において、不当利得の発生について民法704条の「悪意の受益者」であるというべきである。 (2) 被控訴人Aの控訴人に対する支払及びこれによる不当利得の発生の経過は本判決別表記載のとおりであるから、各支払日の翌日から平成30年12月27日までの年5分の割合による利息の額を計算すると、本11 判決別表記載のとおりとなり、その合計額は、9117円となる。 また、亡Cは控訴人に対し、平成21 ら平成30年12月27日までの年5分の割合による利息の額を計算すると、本11 判決別表記載のとおりとなり、その合計額は、9117円となる。 また、亡Cは控訴人に対し、平成21年2月24日、242万2613円を支払い、これにより、121万1306円の不当利得が生じたのであるから、支払日の翌日である同月25日から平成31年1月11日まで(9年320日)の年5分の割合による利息の額を計算すると、59万8186円となる。 (3) 以上をまとめると、不当利得に係る被控訴人Aの請求は、不当利得金元金17万6786円及び平成30年12月27日までの利息金9117円(合計18万5903円)並びに上記元金に対する同月28日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、不当利得に係る被控訴人Bの、不当利得金元金121万1306円及び平成31年1月11日までの利息金59万8186円(合計180万9492円)並びに上記元金に対する同月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求は、理由がある。」(14)原判決20頁1行目冒頭から8行目末尾までを、次のとおり改める。 「しかし、保証人は、分別の利益があることを知っていても、債権者に対してこれを主張しないで、自己の負担部分を超える部分について弁済し、主債務者等に求償するという選択もできること、前記のとおり、分別の利益によって共同保証人の保証債務が当然に分割されることは通説ではあったものの、従前このことを直接述べた裁判例が乏しかったことは裁判所に顕著であることに照らせば、控訴人が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、これを秘して、あえて被控訴人A及び亡Cに対して全額の支払を請求したとまで認めることはできないから かったことは裁判所に顕著であることに照らせば、控訴人が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、これを秘して、あえて被控訴人A及び亡Cに対して全額の支払を請求したとまで認めることはできないから、控訴人が被控訴人A及び亡Cに対して全額の支払を請求したことが、社会通念上著しく相当性を欠くとはいい難く、また、控訴人において、被控訴人A又は亡Cに対し、当時、分別の利益について説明すべき法的義12 務を負っていたということもできないから、不法行為が成立するということはできない。」3 当審における控訴人の追加主張に対する判断(1) 控訴人は、前記第2の4(1)のとおり主張する。 しかし、分別の利益は、数人の共同保証人がある場合に、保証人の債権者に対する関係における問題であって、保証人と債務者又は保証人相互の内部関係についてはかかわりがないものである(最高裁昭和46年3月16日第三小法廷判決・民集25巻2号173頁参照)。 民法465号2項にいう「負担部分」は、保証人と債務者間又は共同保証人間における求償の範囲を画する概念として用いられる用語であって、この用語が用いられていることと、保証人と債権者との関係は別の問題である(なお、乙19(138ないし142頁)参照)。 各共同保証人が、主債務の全額について主債務者からの委託を受けているとしても、これが分別の利益に影響する理由はない。 控訴人は、本件省令等の定めが、単純保証人の保証債務が保証人の数によって当然に分割されないことを前提としているなどとも主張するが、本件省令等の定めは、単に法令の委任により、学資貸与金の回収の業務の方法について定めたものにすぎないし、そもそも民法典の規定による権利の消長を下位法である省令によって変更することはできないと るが、本件省令等の定めは、単に法令の委任により、学資貸与金の回収の業務の方法について定めたものにすぎないし、そもそも民法典の規定による権利の消長を下位法である省令によって変更することはできないというべきであるから、この点に関する控訴人の主張は採用することができない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 (2) 控訴人は、前記第2の4(2)のとおり主張する。 しかし、保証人が保証債務が存在しないのに、あると誤信して保証債務を履行した場合に、事務管理が成立しないことは、補正して引用した原判決説示のとおりである。また、前記認定事実のとおり、被控訴人A及び亡Cは、保証債務の履行として弁済したものであって、第三者として主債務を弁済したもので13 はないから、第三者弁済に当たらないことは明らかである。 したがって、この点に関する控訴人の主張は採用できない。 (3) 控訴人は、前記第2の4(3)のとおり主張する。 しかし、前記認定事実及び前記2(13)のとおり、控訴人は、亡Cが分別の利益を有することを認識しながら、被控訴人Bや亡Cに対して分別の利益について説明をしていないこと、控訴人は、亡Cが保証債務の履行として弁済したことを認識していたものであり、亡Cの弁済が第三者弁済であるとの認識を有していたとは認められないこと、亡Cから奨学金返還残債務の2分の1を超える部分について受けた支払が不当利得となることについて悪意であったと認められることからすると、控訴人が、亡Cが奨学金返還残債務の2分の1を超える部分について保証債務が存在すると誤信して弁済したことについて、善意であったとは到底認めることはできない。 したがって、控訴人の主張は、その余の点を検討するまでもなく、理由がない。 (4) る部分について保証債務が存在すると誤信して弁済したことについて、善意であったとは到底認めることはできない。 したがって、控訴人の主張は、その余の点を検討するまでもなく、理由がない。 (4) 控訴人のその余の主張は、いずれも上記認定判断を左右しない。 4 よって、被控訴人らの請求は、前記1の限度で理由があるところ、これと一部異なる原判決を、控訴人の被控訴人Aに対する控訴及び被控訴人らの各附帯控訴に基づき変更することとして、主文のとおり判決する。 札幌高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官 大 竹 優 子 裁判官 守 山 修 生 14 裁判官 髙 木 健 司 15 (別紙)当事者目録省略

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