【DRY-RUN】主 文 一 申請人が被申請人の従業員としての地位を有することを仮に定める。 二 被申請人は申請人に対し、昭和四四年四月二六日より本案判決確定に至るまで 毎月二五日限り一ケ月金三万一、四九八円を仮に
主文 一申請人が被申請人の従業員としての地位を有することを仮に定める。 二被申請人は申請人に対し、昭和四四年四月二六日より本案判決確定に至るまで毎月二五日限り一ケ月金三万一、四九八円を仮に支払え。 三申請費用は被申請人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一、申請人主文第一、二項と同旨の判決。 二、被申請人「申請人の仮処分申請を却下する。申請費用は申請人の負担とする。」との判決。 第二申請人の主張(申請の理由)一、(一) 被申請人は、肩書地に本社、山口県下松井市<以下略>に工場を有し、従業員二、一五〇名を擁して、主として錻力および鋼板ならびにその加工品の製造販売を業とするものである。 (二) 申請人は、昭和三九年七月二九日財団法人電機通信共済会訓練所に入所し、電話交換手としての訓練を受け、同年八月二六日同所を終業し、右交換手の資格を得たものであり、同年九月二一日被申請人に電話交換手として雇用され、被申請人研究所において電話交換手の業務に従事していたところ、昭和四二年一一月一日受付係へ、同四三年四月一日購買係へそれぞれ配置転換(以下配転という)され本件配転当時においても右購買業務を担当していたものである。 二、被申請人は産休明けの申請人に対し、昭和四四年四月二一日付をもつて横浜市<以下略>地所在の本社総務部独身寮(以下「独身寮」という。)への勤務を命じ(以下「本件配転」という。)、さらに同年六月一三日申請人が本件配転命令に応じないことを理由として懲戒解雇する旨を通知し、その後申請人の就労を拒否している。 三、しかしながら、右解雇の意思表示は後記のとおり無効であり、申請人は依然として被申請人の従業員であり、被申請人に対し賃金を請求する権利を有する。ところで申請人の賃金は毎月二一日から翌月二〇日ま 。 三、しかしながら、右解雇の意思表示は後記のとおり無効であり、申請人は依然として被申請人の従業員であり、被申請人に対し賃金を請求する権利を有する。ところで申請人の賃金は毎月二一日から翌月二〇日までを一ケ月分として同月の二五日に支払われる定めであり本件配転命令を受けた当時における平均賃金は月額金三万一、四九八円であるのに被申請人は昭和四四年四月二六日以降賃金の支払いをしない。 四、申請人は当働者であつて資産がなく自己および同じく被申請人の従業員である夫Aの賃金によつて生活しているものであるが、右夫の賃金は一ケ月約三万四、〇〇〇円に過ぎず、夫のみの給料によつては親子三人が生活していくことは不可能であり、本案判決の確定を待つていては回復し難い損害を生ずることが明らかである。 よつて申請趣旨記載の命令を求める。 (抗弁に対する答弁)一、抗弁一項の冒頭部分は争う。 同項の1の事実のうち、被申請人が申請人に対しその主張の日時に配転命令を発したこと、申請人が配転先である独身寮に出勤しなかつたことは認めるが、その余は争う。 同項の2の事実のうち、被申請人が配転先への就業命令を発したことおよび申請人がこれに従わなかつたことを認めその余は否認する。申請人は本件配転が違法無効であるとの判断のもとにその本来の職場である研究所に出勤したが被申請人はこれを拒否し実力をもつて申請人の就労を拒否した。申請人が管理者の義務を妨害したことはなく、また本件配転に従わなかつたことによつて配転先の独身寮の業務が紊されたというような事実は全くない。 同項の3の事実のうち、就業規則に主張の規定が存すること、申請人が本件配転に応じなかつたことは認めその余を否認する。 二、同二項の1の事実は争う、後記のように、コンピユーター方式導入後も申請人のなすべき購買補助業務は残つており 則に主張の規定が存すること、申請人が本件配転に応じなかつたことは認めその余を否認する。 二、同二項の1の事実は争う、後記のように、コンピユーター方式導入後も申請人のなすべき購買補助業務は残つており、それは独身寮でなすべき事務量よりも多いものであつた。 同項の2の事実は争う。 同項の3の事実のうち、本社独身寮に従来寮事務を専任処理する事務職員がいないこと、独身寮に管理人一名、寮母二名がおり、寮費や食品購入の記帳を同人らが行つていたこと、同人らが住込みで賄業務を行う断続労働であること、被申請人が申請人に対し本件配転に際し勤務時間の延長や住込みの断続労働にする旨の申し入れをしたことがないことはいずれも認めるが、その余の主張は争う。 三、同三項の事実は争う。被申請人が申請人に対し解雇前に充分に説得をしたような事実はない。 四、同四項は争う。 (再抗弁)一、本件配転命令は思想信条を理由とする差別待遇であり、憲法第一四条、第一九条および労働基準法第三条に違反し無効である。 1 被申請人には組合員約一、七〇〇名を擁する東洋鋼鈑労働組合が存在し、申請人はその組合員である。また申請人は横浜勤労者音楽協議会の会員であり、その活発な活動家である。右協議会は通称労音と呼ばれ(以下「労音」という。)、「勤労者の自主的な力を結集して、よい音楽を安く聞く一切の活動を行う。」ことを主たる目的として、横浜市およびその周辺の勤労者を中心にこの目的に賛同するすべての音楽愛好家によつて組織されている団体である。 2、ところが被申請人は、労音活動は左翼運動であり、労音会員は左翼思態の持主であるとしてこれを嫌悪し、昭和四一年一一月頃より労音および同会員に対し露骨な誹謗中傷、脱退の慫慂、差別待遇、嫌がらせ等を行つた。 同年一一月一日同研究所長であり被申請人専務取締役であるBは、朝 主であるとしてこれを嫌悪し、昭和四一年一一月頃より労音および同会員に対し露骨な誹謗中傷、脱退の慫慂、差別待遇、嫌がらせ等を行つた。 同年一一月一日同研究所長であり被申請人専務取締役であるBは、朝礼の席上労音に対し全くいわれのない誹謗中傷を行つた。 その後会社職制による労音および同会員に対する攻撃が開始された。即ち、翌一一月二日溌発な労音活動家であり後に申請人と結婚した申請外立中Aは直接の上司であるC室長に「君は共産党ではないか。組会活動はいいが共産党は困る。」などといわれ、その他殆んどすべての労音会員およびサークル活動家は職制に吸び出され、「君は共産党か民青同盟員か。」「労音はアカだからやめろ。」等と言われ、思想攻撃を受け、労音からの脱退を強要された。 さらに所員が脱退慫慂に応じないとみるや会社主催の慰安旅行や忘年会にその者を参加させず、また出向、配転、派遣等露骨な差別待遇を行つた。このような被申請人の労音会員たる従業員に対する攻撃は熾烈をきわめ、例えば同会員である申請外D、同E、同F、同G、同H等に対しては、所長を先頭に全職制を挙げて、攻撃が系統的かつ執拗に加えられたのである。 3、右被申請人の一連の攻撃を申請人についてみるに、(一) 申請人は入社以来電話交換手として勤務していた昭和四一年一二月頃I人事課長から労音活動家であつた前記Dおよび同Jの電話内容をチエツクして伝えるように、また同人等がいない時先方が電話を誰に廻してくれというか、その氏名もチエツクするように命じられたがこれに応じなかつたところ、翌一六日申請人はK総務課長に呼出され「労音は、外国の共産党から金が流れている。共産党や民青には気をつけるように、電話交換手は会社の情報センターの仕事だから労音は困る。」等と言われた。さらに、昭和四二年八月一一日I人事課長は現在の夫で 「労音は、外国の共産党から金が流れている。共産党や民青には気をつけるように、電話交換手は会社の情報センターの仕事だから労音は困る。」等と言われた。さらに、昭和四二年八月一一日I人事課長は現在の夫である立中Aと交際していた申請人を呼出し、「A君は労音の活動をしているし共産主義者だということを知つているか。」「あなたが彼と結婚して会社をやめれば何ともいわないが勤めを続けるとなると交換手として置いておく訳にはいかない。会社は労音を共産党であり民青とみている。会社の嫌がることを続ける限り、親はもちろん保証人にも手を打つ。」等と脅迫的言辞をもつて申請人の労音会員であることを嫌悪し、その飜意を迫つた。 (二) 昭和四二年一一月一日被申請人はまつたく一方的に申請人を受付係に配転した。右受付係の事務は郵便物の処理、文書の整理、来客の接待等であり、電話交換とは全然職種が異る。右配転の表面的理由は会社が国際的になるので英語のできる者を交換手として採用するということであつたが、実際にはその必要はなくその真の理由は申請人が労音会員であり立中Aと結婚を前提として交際していたところから同人を「情報センター」たる交換手から除外し、併せて労音会員たる申請人を差別待遇することにあつたことは明白である。 (三) 申請人は、昭和四三年三月三一日立中Aと結婚したが、翌四月一日付をもつて夫Aは一年間の期限付で京都大学へ派遣され、同時に申請人はまたもや購買係へ配転された。右婚姻の数日前、K総務課長は申請人を呼出し、「結婚したら会社をやめたらどうか。彼は京都へ派遣されることになつているから一緒に行つて家庭を築いたらどうか。女性は家庭に入り主人に仕えるのが一番しあわせだ。」等と退職を強要した。右購買係の責務は伝票の整理であつて仕事らしい仕事はなく全くの閑職であり、申請人を配転させる 一緒に行つて家庭を築いたらどうか。女性は家庭に入り主人に仕えるのが一番しあわせだ。」等と退職を強要した。右購買係の責務は伝票の整理であつて仕事らしい仕事はなく全くの閑職であり、申請人を配転させる必要は全然無く、その真意は自ら退職せしめるかあるいは合理化を理由として同人を解雇する布石を敷くことにあつたものと考えられる。 また夫Aに対する京大への派遣は、当時組合執行委員であり、活発な労音活動家であつた同人に対する差別待遇であることが従来の経過から見て明らかである。 (四) 申請人は昭和四四年三月八日出産予定であつたので、同年一月二六日より出産休暇に入つたのであるがその前日K総務課長は申請人に対し、「子供ができたら会社を退職してほしい。」と申し入れた。申請人が子供は親が面倒をみるので従来どおり勤務できる。生活のこともあり自分も仕事がしたいので退職の意思はない旨答えるや、同課長は、「女は育児に専念することが大切だ。産休明けには現職を期待するな。」と述べた。 同年三月一三日男児を出産し、その産休明けに本件配転命令を受けたものであるが、配転先たる独身寮は、後記3に記載のとおり、本社総務部に所属し、その指揮命令系統および勤務場所が従来の職場と全然異るばかりでなくその職種が全く異質のものである。 (五) さらに被申請人は同年三月立中Aに対する派遣期間を一年延長した。このように申請人夫妻は労音活動家であるということで、結婚直後から夫婦別居を強いられ、長男出生後も派遣期間が延長されてさらに別居の継続を余儀なくされたうえ申請人自身もかかる不当な配転を受けたのである。 以上の諸事実によつて明らかなように、本件配転命令は申請人がその夫とともに労音会員であり、かつその活発な活動家なるがゆえにこれを嫌悪し、ことさら差別して取扱つたものであり、したがつてこのよう る。 以上の諸事実によつて明らかなように、本件配転命令は申請人がその夫とともに労音会員であり、かつその活発な活動家なるがゆえにこれを嫌悪し、ことさら差別して取扱つたものであり、したがつてこのような配転命令は無効というべきである。 二、本件配転命令は申請人を女性なるがゆえにことさら差別して取扱つたもであり憲法第一四条、民法第九〇条に違反し無効である。 (一) 被申請人はかねて結婚した女子職員は退職させる方針をとつており、昭和四三年ころから女子職員の入社に当りその旨の念書をとつていた。そのため結婚後も在職している女子職員は稀であつて況んや出産後も勤務を続ける者は現業職を除き皆無であつた。つまり被申請人においては女子は出産時をもつて退職するのが通例であると考えられていたので申請人が産休に入る前から産休中にかけて数回も執拗に退職を強要してきたのである。 (二) さらに被申請人は本件配転の理由として、申請人が妊産婦として産前産後の休暇を取得し、かつ生後一ケ年未満の生児を育てる母親という条件では規律ある勤労には不安定な要素があり責任ある業務分担を期待できないこと、一日二回以上の育児時間等勤務上の空白が予想され、育児施設も考慮し、業務上支障の少い職種、勤労場所へ配転する必要がある等を挙げているけれども、申請人は一貫して、子供は同居中の夫の母親が世話を見ることを伝えてあり、育児時間を請求したこともない。育児時間の請求は権利であつて義務ではない。 また就業規則第八八条の「妊産婦」とは労働基準法第六五条三項の「妊娠中の女子」に相当する者を指すのであつて申請人のように出産後六週間を経過した者は含まれないというべきである。 被申請人は申請人に欠勤が予想されるとか、半人前であると勝手に推測し申請人が結婚したこと、出産したことを嫌悪して、同人の望まない配転を一 うに出産後六週間を経過した者は含まれないというべきである。 被申請人は申請人に欠勤が予想されるとか、半人前であると勝手に推測し申請人が結婚したこと、出産したことを嫌悪して、同人の望まない配転を一方的に押しつけたもので女性に対する不当な差別である。 三、本件配転命令は異種配転、即ち労働契約違反であつて無効である。 1、申請人は電気通信共済会訓練所において電話交換手としての訓練を受け、同所を終業するに際して同所の紹介により被申請会社に入社したものであり、入社の際には、前記研究所において電話交換の業務を行うべき旨職種を明示されている(川島紡績株式会社在籍および同高等家政学校卒業の事実は口頭をもつて会社に申告している。)。したがつて同人と会社との労働契約の内容のうちその職種は特定されていたというべきであるが、前記のとおり二回に亘る配転により、本件配転当時購買係としてその事務に従事していたものであり、同人の会社に提供すべき労務の種類内容は少くとも事務系労働の範囲において特定されていたというべきである。 申請人の従来の職場における購買事務の具体的内容は、研究資材の請求書、購買伝票の整理、集計、報告および研究費の項目別の分類・集計、報告等の事務系の作業であつたものである。 2、しかし本件配転命令先の独身寮での仕事は従前のそれとは全く異る現場作業労働たる右寮の炊事、掃除等の賄婦たる作業であり、また指揮命令系統も研究所の所轄に属せず本社総務部直轄なのであるから、そと職種は異る。この様に職種を変更するにあたつてはあらたな内容の労働契約を結ぶこと又は内容の変更の合意が必要とされるのであつて会社の人事権の発動として一方的に配転命令を出しても申請人はこのような配転命令に応ずる義務はない。 3、被申請人は配転先たる独身寮において申請人の従事すべき業務は申請人の従前 が必要とされるのであつて会社の人事権の発動として一方的に配転命令を出しても申請人はこのような配転命令に応ずる義務はない。 3、被申請人は配転先たる独身寮において申請人の従事すべき業務は申請人の従前の仕事と同種の事務作業であり、それは寮の購買業務、会計関係の事務、伝票整理等であると主張するが、申請人に対し配転にあたりかような事実を示したことはないし、また客観的にも寮には会社主張の如き事務作業が存在したとは考えられない。 (イ) 申請人は本件配転命令の出される前後から解雇されるに至るまで本件配転に応じられない理由の一つとしてこれが職種の変更になることを終始一貫して被申請人に対し訴え続けてきたのであるが、これに対し被申請人は配転が申請人に不利益とならないこと、会社の業務運営上必要であることを強調するのみで、配転先の作業内容が現在会社の主張するような事務系の作業であつて職種の変更にならない旨の説明は文書によつても口頭によつても一言半句も言及していない。 (ロ) 本件配転当時独身寮には二二名の寮生が居住していたに過ぎずこれに対し既に管理人夫妻およびその他に賄婦一名(いずれも嘱託)が勤務していたものであるから被申請人主張のような事務(デスクワーク)が存在していたとは到底考えられない。仮に事務的作業があるとしてもそれはそもそも独立した実態を有する「一般事務職」における事務的労務ではなくその他の職種における「事務的労務」にすぎないものというべきである。 四、人事権ならびに解雇権の乱用1、一般的に使用者が人事権を有することが承認されるとしてもこれが他方において必然的に労働の自由ないし権利を制約する契機を含むものである以上その無制限の行使が許されないことは当然である。これを本件配置転換についてみると、本件配転により申請人は後記3のとおり労働上の不利益及び 必然的に労働の自由ないし権利を制約する契機を含むものである以上その無制限の行使が許されないことは当然である。これを本件配置転換についてみると、本件配転により申請人は後記3のとおり労働上の不利益及び精神的苦痛を蒙つているのであるから当該配転について企業運営上の客観的な合理性ないし業務上の必要性が充分認められなければならない。 2、本件配転においては申請人を独身寮勤務へ配転しなければならない業務上の客観的な合理性ないし必要性は存在しない。 (一) 先ず被申請人はコンピユーター方式の導入により購買担当の人員も減少に向い、産休後の申請人の原職が消滅することになつたと主張するのであるが、かかる主張は配転先の業務の内容と同様、本件訴訟において始めて現われたものであつて真の理由ではない。本件配転の前後より解雇に至るまで会社は本件配転の「業務上の必要」として専ら「妊産婦として産前産後の休暇を取得し、かつ生後一ケ年未満の幼児を育てる母親という条件では規律ある勤務には不安定な要素がある」ことを理由にしていたのみであつて、コンピユーター導入等による原職消滅については全く言及されていない。 仮にコンピユーターの問題があるとしても研究所にコンピユーター方式が導入され実施されたのは八月一日よりであり、申請人の産休明けである四月二〇日当時から七月末までは従来の方式とは異るが、いわゆる手計算による伝票整理、集計等申請人が従来行つていたものに相当する業務は存在していた。 従つて五月一日をもつて原職が消滅したということはない。更に被申請人によれば、コンピユーターのシステム、コードナンバー等について一ケ月以上の教育が必要であるというが、購買係たる申請人に本格的なコンピユーターシステムの知識など必要なく、コードナンバーのチエツクに必要な知識は数日間の講習で足りるし、コンピ ドナンバー等について一ケ月以上の教育が必要であるというが、購買係たる申請人に本格的なコンピユーターシステムの知識など必要なく、コードナンバーのチエツクに必要な知識は数日間の講習で足りるし、コンピユーター方式移行後においても、キーパンチ等申請人の行い得る業務はなお存在したのである。 (二) 次に被申請人は申請人の配転先として女子社員の就く業務は四、五種しかなく当時いずれも欠員がなく、僅かに独身寮に事務員が一名必要であつたと主張するのであるが、研究所における女子従業員の職場は受付、文書、電話交換、経理、人事、図書、タイプ、医務の八種類あり、このうち医務を除き申請人は右いずれにも就労することが可能であつた。仮に申請人の産休明け当時に欠員がなかつたとしても、その時期は事前に確定していたものであり、かつ人事移動期の直後の時期であつたのであるから、このいずれかの係に配属することは充分可能であつた。当時経理係のLは昭和四四年九月三〇日に、タイプ係のMは同月二日にそれぞれ結婚して退職したが、このことは既に当時会社に判明していたことであり、これを予定して人事配置を組むことができたはずである。 3、本件配転は申請人に著るしい労働上の不利益及び精神的苦痛を与えるものである。 (一) 本件配転先は独身寮の賄業務を含むものである。独身寮はいうまでもなく会社の支店或は営業所ではない。「一般事務職員」として入社した者は何人も、自己が会社の独身寮で賄業務を担当して働かなければならないなどとは夢想だにしないであろう。 しかも、数日間や、数ケ月間の応援ならともかく本件では無期限の配転であり、申請人の身分をそこに固定化しようというのであるから本件配転は「嫌がらせ配転」であるというべきである。 如何に「仕事に貴賤がない」とはいえ寮管理人を上司としてその指揮命令のもとに、 の配転であり、申請人の身分をそこに固定化しようというのであるから本件配転は「嫌がらせ配転」であるというべきである。 如何に「仕事に貴賤がない」とはいえ寮管理人を上司としてその指揮命令のもとに、独身寮へ勤務させるとは非常識というべきであつて申請人が働く意欲をなくすことは当然であり、精神的苦痛は大きい。 (二) 被申請人は賃金、労働時間が変らないことをもつて労働条件に変更なく、不利にならないと云つているが、労働条件はこれに限られるわけではない。 通勤時間も若干長くなり、スポーツ施設等の厚生施設がないこともさることながら、労働環境に質的差異がある。 寮は、寮生が寝泊りするところであつて、会社本来の職場(特に事務系職員としての)ではない。申請人の出勤時間中には寮生は誰れもいず、一日中管理人や賄婦の手伝いをしていなければならないのである。若し被申請人主張の事務のみをするとすれば事務員が少く、勤務時間が余り、なすべき仕事もなく、時間を過さなければならないこととなる。労働者は、単に賃金を貰つていればいいというものではない。労側環境はいまや主要な労働条件の一つである。このような箇所への配転は、他意あるものであるか、そうでなければ、それ自体企業合理性を疑わしめるものであるばかりでなく、当該労働者にとつても精神的に不利益を与えるものである。 また、狭義の労働条件(賃金等)についても、配転時はともかく、将来営業所における事務職員との間に較差が生じてくることは見易い道理である。 4、以上のとおり本件配転には企業運営上の客観的合理性ないし必要性はなく、申請人に労働上の不利益、精神的苦痛を与えるものであり、結局会社が以前から申請人に対して度々退職を強要してきた経過から明らかなように、本件配転は「嫌がらせ配転」であり「いびり出し配転」であつて配転命令権あるいは指 の不利益、精神的苦痛を与えるものであり、結局会社が以前から申請人に対して度々退職を強要してきた経過から明らかなように、本件配転は「嫌がらせ配転」であり「いびり出し配転」であつて配転命令権あるいは指示命令権の乱用であり、本件配転命令は無効である。 五、本件解雇の無効1、以上の諸理由により本件配転命令は、無効であり、申請人がこれに従う義務はない。 したがつて、本件配転命令に従わないことを実質的理由とする本件懲戒解雇もまた当然無効である。 2、仮に配転命令自体が無効でないとしても、叙上の如き諸事情のもとにおいて、申請人がこの配転命令に従わなかつたのは尤もなことでなり、同人に法律上の責任を追及することはできない。 したがつて、配転命令を理由なく拒んだことを理由とする本件解雇は解雇権の乱用として無効である。 3、個別的解雇理由について(一) 「無断欠勤」申請人の就労請求にも拘らず、被申請人がこれを拒否していたものであつて、本件配転が無効であり或はその拒否に正当な事由が存する以上問題とならない。 (二) 「就業命令違反」これも、配転が無効、あるいはその拒否に正当性が認められる限り問題はない。 第三被申請人の主張(申請の理由に対する答弁)一、申請の理由中一項の(一)は認める。同一の(二)については、申請人を雇傭したことは認めるが、申請人は被申請会社本社において一般従業員として雇用されたものであつて電話交換手として雇用されたものではない。 二、同二項のうち申請人主張の如き配転命令を発したこと、懲戒解雇の通知をなしたことは認める。 三、同三項のうち申請人の当時の平均賃金額および会社における賃金計算の方法、申請人が主張の日以降賃金支払を受けていないことは認めるが、その余は争う。 四、同四項は争う。申請人の夫の賃金は一ケ月金四万六、三七八円である。 請人の当時の平均賃金額および会社における賃金計算の方法、申請人が主張の日以降賃金支払を受けていないことは認めるが、その余は争う。 四、同四項は争う。申請人の夫の賃金は一ケ月金四万六、三七八円である。 (抗弁)一、本件懲戒解雇の意思表示とその理由被申請人は、申請人に次に述べるような懲戒事由に該当する行為があるため就業規則第七四条一号、三号、八号、一一号の定めに基づき昭和四四年六月一三日付で懲戒解雇する旨の意思表示をなしたから申請人との間の雇用契約関係は右日時限りで終了したものである。 懲戒解雇事由に該当する事実は次のとおりである。 1、被申請人は後記のとおり申請人に対し昭和四四年四月一一日付をもつて、同月二六日以降本社総務部所属独身寮に配属する旨の配転命令を発したのに申請人は、同日以降も勤務先たる独身寮に出勤せず、本件解雇時まで二〇余日間無断欠勤を連続した。この間被申請人は同月二五日本社において配置先の業務内容の指示説明を行わんとしたが、申請人はこれを受けることを拒み、就労の意思なき旨を述べるのみであり被申請人は後記のようにさらに数回に亘り就業命令を具体的に発したが、申請人はすべてこれを無視して欠勤し続けた。右行為は就業規則第七四条(懲戒解雇)第一号「正当な理由なく無断欠勤引続き一四日以上におよぶとき」に該当する。 2、さらに申請人は、前記の配転命令を服さず新配属先に赴任しなかつた指示命令違反、具体的に発せられた個々の就業命令(四月二六日、二八日、三〇日、五月二日、二〇日、二二日、二六日等)をも無視して、四月二五日本社で行なつた業務上の指示説明も拒否して受けなかつた指示命令違反があるのみならず、その間次のとおり配転前の旧職場に押しかけて積極的に管理者の業務執行を妨害する挙に出た。 例えば四月二六日、二八日には退去命令に従わず研究所に立 明も拒否して受けなかつた指示命令違反があるのみならず、その間次のとおり配転前の旧職場に押しかけて積極的に管理者の業務執行を妨害する挙に出た。 例えば四月二六日、二八日には退去命令に従わず研究所に立入り、事務室長の執務する机の前に長時間にわたり座りこみ、同室長の執務を妨害し、五月一二日、一六日、二六日等数回にわたり、出勤時間に部外者一〇数名ないし数一〇名を伴つて研究所の門附近に立塞り、出勤してくる所員の入門を実力をもつて阻止しその就業を妨害した。またその他四月末から解雇時までの間多数回にわたり研究所の門において阻止を押しのけて実力で入門せんとし管理者多数の執務を妨害した。これらの包括的および個別的指示命令への申請人の違反行為により、被申請人の人事管理秩序が甚しく紊されるとともに、配転先職場の業務も紊され、さらに積極的妨害活動によつて研究所の業務も紊された。 申請人の右行為は就業規則第七四条第三号「職務上上長の指示命令に従がわず越権専断の行為をなし職場の秩序を紊した」ときに該当する。 3、被申請人の研究所の就業規則中には従業員は所属上司の命に従い職場秩序を守らねばならず(第四条職場規律)、勤務時間中は所定の業務に専念しなければならない(第六条業務専念)ものと定められている。また配転等の異動を命じられたときは正当の理由のない限りこれを拒否することはできず、所定期間内に新配置に赴任しなければならない(第五三条、五四条)と定められている。しかるに申請人は前記のとおり配転命令によつて生じた職務内容の変動を無視して赴任せず、具体的就業命令にも従がわずに無断欠勤を続け、従業員として守るべき就業規則の右条項に対し極めて重大な違反をなした。これは就業規則第七三条八号「この規則又はこの規則に基づいて作成された諸規定に違反しその情状が重いとき」の加重条項たる 欠勤を続け、従業員として守るべき就業規則の右条項に対し極めて重大な違反をなした。これは就業規則第七三条八号「この規則又はこの規則に基づいて作成された諸規定に違反しその情状が重いとき」の加重条項たる同第七四条(懲戒解雇)一一号「前条各号の一に該当しその情状が著しく重いとき」に該当する。 二、本件配転とその事情1、申請人は当時研究室購買事務補助の業務に従事していたが、申請人の産休明けころにはコンピユーター方式導入による事務作業合理化のため次の事情のとおり消滅するに至つた。 (一) 被申請人の研究所事務室での購買事務処理の適正化については、昭和四三年四月申請人を文書受付から購買に担当を変更した当時までは必要に応じて人員を投入する方法によつて図つてきたが昭和四三年末ころに研究所全体として研究費管理をコンピユーター(電子計算機)方式の導入により合理化する旨の基本方針を決定し、翌四四年初頭より購買事務処理をコンピユーター方式によつて適正化する方針が採用され、同四月より購買業務の中でのすべての集計々算および報告作成の業務(これを申請人が担当していた)をコンピユーターで処理すべく試行に入り同年七月より本格的コンピユーター化への移行が実施され今日に至つているのである。 (二) 申請人がもと購買事務補助として担当していた業務内容は、研究資材の請求書の整理、集計、報告ならびに研究費の項目別の分類、集計、報告等であり、具体的には研究所内各所から購買に集つてくる伝票の整理、集計が主たるものであるが、この伝票の整理集計という仕事をコンピユーターにやらせるためにはまず一定の処理方式を確立しこれを電子計算機に記憶させなければならずまたそのプログラムに合わせて伝票上の諸記載事項もこれを数字からなる一連の記号に置き換えて記載することが必要となりそのため伝票の様式も改変さ の処理方式を確立しこれを電子計算機に記憶させなければならずまたそのプログラムに合わせて伝票上の諸記載事項もこれを数字からなる一連の記号に置き換えて記載することが必要となりそのため伝票の様式も改変されることになつた。研究所においてはコンピユーターによる研究、管理方式の一環として購買等の事務処理も昭和四四年四月一日から実施することを目標とし、そのため同年二、三月ころには購買業務としても、前記のとおり伝票方式の改変その他コンピユーター方式導入に向つて諸準備作業が行なわれたのである。同年四月以降は右準備作業の結果、購買補助業務としての伝票の整理集計もコンピユーターによる処理方式に合わせた方法で行なわれることになり、一般事務職従業員の手を離れて専門技術者(コンピユーター要員)の処理するところとなり、同年五月一日以降もはや申請人が従来購買において処理していたような処理方法による購買関係の伝票の整理集計の補助業務というものは消滅したのである。 (三) ところで、コンピユーター方式導入後も購買担当の職員Nは依然として従来の購買業務を担当しているのであるが、前記のコンピユーター要員の処理するところとなつた購買関係業務とは、申請人が担当していた購買補助業務が中心であつて、Nが担当していた購買の本体的業務(発注、検収、現品管理等)は業務の性質上コンピユーターの機械処理に親しまないものであつて右Nにはその後も右業務を担当する必要があつた。申請人が購買に移る前には、Nは購買本体の仕事の他、補助業務まで一人で処理しきわめて多忙で、本体的業務を充分果すことができなかつたのであるが、申請人が購買に移つてからは補助業務は申請人が処理しNは主として購買本体の業務に専念することができたのである。 (四) 申請人の原職である購買(補助)業務のコンピユーター化移行の時期従来 であるが、申請人が購買に移つてからは補助業務は申請人が処理しNは主として購買本体の業務に専念することができたのである。 (四) 申請人の原職である購買(補助)業務のコンピユーター化移行の時期従来、人手を以つて処理していた事務をコンピユーターにかけるためには、事務内容をコンピユーターの読める用語(コード番号等の数字)に改める必要があり、そのため移行の途中で事務処理の方法もコンピユーターシステム用の処理方法に改めねばならない。研究所の購買業務の例でいえば、研究資材の請求書の整理、集計、報告並びに研究費の項目別分類、集計、報告等具体的には、研究所内各所から集つてくる伝票の整理、集計業務が、当初の計画より一ケ月遅れて、(1) 昭和四四年四月末日まで(三月分の処理)は従来の方法(2) 同年五月一日より七月末日まで(四月から六月分)は移行のための試行期間としての手計算の方法(3) 同年八月一日以降(七月分以降)はコンピユーターシステムという経過をたどつている。従つて、申請人の担当した購買補助業務の人手による仕事が消滅した時期は四四年八月一日以降となるのであるが、申請人の処理してきた従来の方法による事務処理は同年四月末日を以つて消滅している。すなわち、五月から七月までの購買補助業務はコンピユータシステムを前提とした従来と違つた処理方法である上に、特にこの移行のための過渡的手計算を行う目的は、各所員が新システムに理解不充分、不慣れなために起る書類の誤りを発見したり、処理システム自体実情に合わぬ個所の修正をしたりすることにあるため、この時期における手計算の担当者は一般職員より遥かに高度のシステムに対する理解と熟練が要求され、そのための特別の訓練を経てこの衝にあたつたものでなければならなかつた。一般職員はコードシステムのうち自己の担当する部署ないしプ 当者は一般職員より遥かに高度のシステムに対する理解と熟練が要求され、そのための特別の訓練を経てこの衝にあたつたものでなければならなかつた。一般職員はコードシステムのうち自己の担当する部署ないしプロジエクトに関係ある部分のみを知れば足りるため、これに対し数日の講習を行つたが、購買担当者は所内全員から集る伝票を整理しなければならず、コードシステム全体系を頭に入れ、しかも複雑な誤記の形態の処理をしなければならずコンピユーター要員から相当期間の教習を受けた。 ところが、申請人はたまたま、手計算の訓練期間中は出産休暇で出勤しておらず、手計算期間はわずか三ケ月程度の過渡的なものであつたため、出勤後改めて申請人に教習を施す暇も必要もなかつたことから五月以降の手計算作業を担当させなかつたものである。従つて申請人の処理すべき事務(従前の処理方法による購買補助業務)が消滅する四月末日以降、同人の原職は消滅し購買においては冗員となつたのである。 2、研究所内において他に適職が存在しなかつた。 (一) 被申請人の事業場は関東地区では前記総合研究所および本社があるだけであり、またもともと被申請人の女子従業員は高等学校卒業以上(短大卒、大卒をふくむ。)が原則であつて申請人のように中学卒業者は極めて少なく従つてその配置可能な職場は自ずから局限されざるを得ない。 (二) ところで、研究所における各部課の業務分担内容は研究部(部に相当するもので、この中がさらに数個の研究室に分れている。研究部内で調査企画、業務班などと呼ばれるものは分担業務の名称であつて職制機構としての名でない。)と事務室(昭和四一年一〇月一日までは総務課。規模は部と課の中間にあたり、事務課あるいは事務部に相当するものである。職制上この中に人事課をふくみそれ以外は分担業務の種類が分かれているにすぎない 。)と事務室(昭和四一年一〇月一日までは総務課。規模は部と課の中間にあたり、事務課あるいは事務部に相当するものである。職制上この中に人事課をふくみそれ以外は分担業務の種類が分かれているにすぎない。)の二つとなつているところ、右研究所で女子従業員が就業していた業務は、研究部にももちろん存在し事務室所管でも受付、人事、経理、交換、図書、タイプ、診療所および購買の他雑役(掃除婦)、食堂炊事婦がある。しかしこれらのうち研究部は高度の学歴と技能をもつ専門家の仕事であつて一般事務職員をもつて充て得ないし、図書、タイプ、診療所の業務もそれぞれ専門技能者資格者の職場である。雑役と食堂賄は用務員の業務であつてこれも一般事務職員の仕事でない。結局一般事務職員の就業する業務は受付、人事、経理、電話交換、購買の五種類にすぎない。そのうち人事、経理は等しく一般事務職の女子従業員といつてもその仕事の性質上比較的高い学歴、技能、経験ある者をもつて充てざるを得ず、その点中卒の資格しかない申請人は適当でない。受付と交換は既にかつて申請人が一旦担当したが後にこれから転出せしめられており、不適当であることが実証されている。結局は残るは購買業務だけなのであるが前記のとおりこれがコンピユーター導入により冗員となる以上もはや研究所には昭和四四年四月末ころの申請人の産休明けには同人の担当すべき適当な業務は存在しなかつたのであり、また申請人の学歴等の関係で本社においても同人を充てるべき適当な業務がなかつた。 もとより当時各部署に欠員ないしその予定も存在していなかつた。 3、本社独身寮への申請人の配置決定とその事情(一) 申請人の配置先の本社における選定研究所から申請人に配置すべき適当な部署の依頼をうけた本社では、申請人の学歴、経験、技能及び本人の当時置かれている生活、健康状態 申請人の配置決定とその事情(一) 申請人の配置先の本社における選定研究所から申請人に配置すべき適当な部署の依頼をうけた本社では、申請人の学歴、経験、技能及び本人の当時置かれている生活、健康状態(出産直後で乳呑児を抱えている)等を総合判断し、申請人の提供を期待しうる労働力の内容と各職場の状況とを考え合せて、種々検討を行つた。 被申請人の主要な事業場は、山口県の工場の他は東京の本社と横浜の研究所があるだけである。本社自体としても、当時は研究所と同様の高学歴化が見られ、女子でも高卒以上が原則で中卒者は例外的となつており、配属しうる職場も限局されざるを得なかつたが、そうしたところにも欠員又は欠員予定者は見当らなかつた。このように、会社の側からみて与えるに適当な仕事が見出し難い他に、出産直後で乳呑子を抱えている当時の申請人の側にも、育児休憩や健康要保護者(就業規則八八条)などの制約があつて、相当期間にわたり普通の従業員に期待される労働量(一工数)は期待し難く本社、研究所に配置すると職場の同僚に不衡平の感じを抱かせるなど悪いえいきようがでるので一層職務の選択が困難となつたのである。 斯様に種々検討の結果、諸制約の下で強いて求めるならば、本社独身寮の事務担当者の職務であれば、学歴、経験、技能いずれの点よりするも申請人を充てて問題がないばかりでなく、〇・五ー〇・七工数の労働量であるので、申請人に当時期待しうる程度の労側力でも処理が可能であり、且独立した職務であるため、多少欠勤や労働能率の低下があつても、他の同僚の作業に影響が殆んど無く、一日を争う内容の仕事でもないなどから、当時考えられる唯一の適職であつたのみならず、独身寮は和室、炊事場、洗濯場等も完備していて、申請人が乳呑子の保育上必要な便宜も整つており、通勤距離、時間の面でも研究所の場合と殆 仕事でもないなどから、当時考えられる唯一の適職であつたのみならず、独身寮は和室、炊事場、洗濯場等も完備していて、申請人が乳呑子の保育上必要な便宜も整つており、通勤距離、時間の面でも研究所の場合と殆んど全く変るところがなく、労働条件も前と同様であるなど、申請人にとつて有利でこそあれ、不利になる点は何一つ無い最適の職場と考えられたので、被申請人は三月下旬、申請人を本社独身寮の事務職に勤務させることと決定したものである。 (二) 独身寮事務職への配置の意義申請人は本社独身寮の事務職を担当する者が、申請人に対する配置命令以前に居なかつたしその後も居ない点をとらえて、元来寮の事務職という仕事は架空であり存在しないと主張するが、本件の申請人の場合は、研究所に冗員となつた申請人に、本社内に他に適当な職場がないといつても整理解雇するのでない以上、無理にもどこかに職場を見出して与えなければならず、その結果寮事務職を命じたものである。 尤も申請人に職場を与える為に見出した寮事務職であるからといつて、ここに申請人を配置することが被申請人にとつて、有効なものでないとはいえないのである。 即ち、従来から寮の事務を処理する専任の者がいないため、管理人、寮母等が本来の寮管理業務の片手間に事務処理を行つている。その結果、管理人等が本来業務に専念できず、管理業務が不充分におわつているほか、元来寮事務の一部に属す業務を、管理人等では処理しきれないため寮生に処理を任せたり、本社総務部で処理したりしている部分もあり、それでも尚寮事務の処理が不完全、不充分であつて、備付けるべき諸帳簿類にしても未整理のままでおかれているのである。申請人が寮事務に専念することになれば、右の如き事務処理の不備は逐次癒され、管理人等は本来業務に専念できて、より充実した管理がなされるばかりでなく 諸帳簿類にしても未整理のままでおかれているのである。申請人が寮事務に専念することになれば、右の如き事務処理の不備は逐次癒され、管理人等は本来業務に専念できて、より充実した管理がなされるばかりでなく、状況によつては(管理人、寮母が本来業務に専念できることによつて、寮母の一人に若干の余裕が生じるようになれば)、従前から親会社東洋製缶より要請されていた東缶寮への応援に、寮母の一人を若干時間差し向けることも可能となることが予測された。 寮事務の仕事は既掲の通り〇・五ー〇・七工数の仕事にすぎず、普通に働ける従業員一人を配置する程の仕事量ではないから、(それだから従来管理人等によつて曲りなりにも処理できている。)申請人以前に専任者がいないし、配転命令拒否の後も誰も赴任していないのは当然のことであり、それだからといつて申請人のための寮事務が、存在しないということにはならない。 なお申請人が専任処理すべき寮事務の具体的内容は管理費明細等の整理、集計、報告等である。 三、本件配転命令および懲戒解雇手続の公正被申請人は配転命令拒否という事態の重大性に鑑み、申請人に対し解雇以前に充分説得を行つたが、労働組合もその間何回も説得を重ねている。 1、組合は申請人が強硬に反対しているので、その意向を一応は被申請人に取次ぎながらも、組合としては申請人の反対が究極に於て本件配転を拒否しうる正当理由となり得るものではないという判断の下に、同時に申請人に対して、もしこの反対を被申請人が受入れないときは配転命令に服し、ただ配転先の労働条件が低下しないようにその権利の保護をはかるというのが、この際の正しい態度であることを告げて、その意味の説得も重ねている。然し申請人は終始絶対反対の態度を変えていない。 2、四月二五日には被申請人から申請人に対し、配転命令を正式に伝達するとと いうのが、この際の正しい態度であることを告げて、その意味の説得も重ねている。然し申請人は終始絶対反対の態度を変えていない。 2、四月二五日には被申請人から申請人に対し、配転命令を正式に伝達するとともに併せて新職場での担当業務の内容を説明せんとしたのであるが、申請人は既にこれより数日前、文書で反対の意思表明をした通り、配転それ自体に反対である態度を明示し、被申請人からの説明は全く受けようとしなかつた。被申請人は尚も種々説得したが申請人は頑としてきかなかつた。 更に当日申請人は研究所にもゆき、執務中のK室長の前に座込んだので、室長からも説得を行つている。 3、翌二六日から解雇に至るまで、申請人は連日研究所に押しかけて強行就労しようと企てたので、研究所管理者は総出で之を押止めるとともに、その都度連日にわたり申請人に説得し、配転命令に従うよう話している。それでも申請人は執拗に同じ行動を繰返していた。 4、五月二日には本社総務部長名で文書による説得を行つた。更に五月二六日にも、申請人が本社に給料を受取りに来た際、総務部長以下が直接本人を説得しているが、本人の態度には変化がみられなかつた。 5、五月下旬に至り、会社は事態をそのまま放置するわけにはゆかず、申請人を懲戒解雇する方針を決めて労組と協議に入つた。このあと六月一一日までの間にも労働組合は、更に何回か申請人と接触し、重ねて本人に飜意して配転命令に従うよう説得した。 この当時組合の機関の討議に於ても、申請人の態度を正しいと判断する者は無かつたものと見られる。懲戒解雇に関する団体交渉の段階に於てすらも尚、もし申請人がこの時点で飜意すれば、若干の処分はしても解雇にはしない被申請人の考えであつた。 申請人は組合の説得にも少しも耳をかす事なく、組合の機関決定にも従えない態度を明言したので、遂に組合 、もし申請人がこの時点で飜意すれば、若干の処分はしても解雇にはしない被申請人の考えであつた。 申請人は組合の説得にも少しも耳をかす事なく、組合の機関決定にも従えない態度を明言したので、遂に組合も説得をあきらめ、条件付ではあるが、懲戒解雇を諒承した。 四、本件懲戒解雇の相当性1、本来、他の就業規則違反と異り、配置転換命令の違反は特異な性格の問題である。若し正当な配置転換命令が発せられたのに対して従わず反抗した者を、解雇以外のより軽度の懲戒しか為し得ないものとすれば、被配転者は軽度の懲戒さえ忍ぶならば、配転命令そのものには従わないでも済む結果となり、被申請人の配転命令は実効を失い、従業員を有機的組織的に適材適所に配置することによつて最大効率を発揮せんとする、人事管理秩序は崩壊に帰する結果となることが予想される。従つて配置転換拒否行為には、解雇以外の懲戒は無意味であり、適用の余地がないものと解される。 のみならず本件の場合、申請人は配転命令に対して、単に消極的に不服従であるに止らず、強行就労に出るなど積極的に命令と背反した態度・行動を実践し、その上研究所の管理職の業務に対する積極的妨害活動を、長い期間、多数回にわたつて実行したものであるから、その情状は誠に重いものがある。 2、本件配転発令自体も、労働協約上の協議条項に則り、労働組合との充分な事前協議を行い、その承認を得て発令したものであるが、更に配転命令から解雇にいたる約二カ月近い間、被申請人及び労働組合から申請人に対し、あらゆる手を尽して度重なる執拗なまでの説得がなされたのである。申請人は最初に被申請人の説明をきく前から既に拒否し反対の態度を示して以来、頑としてその態度を少しも変えず、独善的な見解を固執して終始反抗し続けた。之はその後懲戒処分に関する労使協議に於て、組合も申請人の非 初に被申請人の説明をきく前から既に拒否し反対の態度を示して以来、頑としてその態度を少しも変えず、独善的な見解を固執して終始反抗し続けた。之はその後懲戒処分に関する労使協議に於て、組合も申請人の非を認め、懲戒解雇を承認する程の行為であつて、申請人の態度がいかに従業員の通念に反するものであつたかが裏付けられている。 之ら諸点からして、申請人の本件行為には、懲戒解雇を減軽すべきいかなる理由も見出されないのであり、本件処分は正当である。 (再抗弁に対する答弁)一、再抗弁一項の前文については争う。 二、同項の1の事実については、その主張のような労働組合があることは認めるがその他はすべて争う。横浜労音およびそれと研究所、申請人との関係は不知。 三、同項の2の事実のうち、昭和四一年一一月一日研究所長のBが朝礼を行つたことは認めるが、同人は中国と関係が深いので中華人民共和国の状況に話が及ぶことはあるが、申請人主張のような発言はしていない。その他はすべて争う。 四、同項の3(一)(二)の事実については、主張の日時に被申請人が申請人を事務室内の文書収受(その業務内容は郵便物の処理、文書の整理、来客の接待等である。)に分担業務を変更したことは認めるが受付係なる地位はなく配転ではない。 その余はすべて争う。 なお、右分担業務変更の理由は、当時米国の技術提携先会社と研究員の交換交流を行つており現実に同年八月ころから米国人研究員が派遣されて来ていて、国際電話の応接もあり当時の交換手に国際電話受信上の過誤が生じたため、こうした現実の必要に基づき英語のできる者を交換手にあてることになり、その結果申請人が事務室で他の業務を分担することとなつたものである。 同項の3の(三)の事実については申請人がその主張の日に立中Aと結婚したこと、同人が主張の日付をもつて京都大学へ派遣さ とになり、その結果申請人が事務室で他の業務を分担することとなつたものである。 同項の3の(三)の事実については申請人がその主張の日に立中Aと結婚したこと、同人が主張の日付をもつて京都大学へ派遣されたことは認めるが、その余はすべて争う。 なお、右Aの京大派遣は結婚の届出がある以前から決定していたものであり、右結婚前に、K室長が申請人に対し、結婚後は退職するか否かを確かめたことはあるが、これは右Aの社宅を用意することの要否および申請人の後任補充の要否を調査するために行つたもので退職を強要したことはない。 同項の3の(四)の事実については申請人が主張のころ出産の予定であつたこと、主張のころ出産休暇に入つたこと、出産したこと、主張の日に文書で本件配転命令が発せられたことは認める。 また出産休暇願いの際、K事務室長が申請人に対し出産後退職するか否かを確かめたことはあるがこれは人事所管者として当然の措置であつて、退職を強要したことはない。その余はすべて争う。 同項の3の(五)の事実のうち、立中Aの派遣を同人との合意に基づき延長したことは認める。その余はすべて争う。 五、同二項の女性なるがゆえの差別したとの主張はすべて争う。 六、同三項の事実は争う。申請人の独身寮への配置替の前後において職種に変更は存しない。(独身寮勤務は当初の申請人と被申請会社の労働契約にふくまれている。)。即ち、申請人は、入社当初から解雇時に至るまで終始一般事務職の従業員であつて、入社の際も本社において採用され、研究所の事務室に配属されていた。 そして当初は一般事務職の資格であつても主として電話交換業務を担当していたところ、その後昭和四二年一一月に電話交換から文書受付へと担当業務の変更があり、以後解雇時まで文書、購買等の一般事務職業務についていたものである。 このように申請 主として電話交換業務を担当していたところ、その後昭和四二年一一月に電話交換から文書受付へと担当業務の変更があり、以後解雇時まで文書、購買等の一般事務職業務についていたものである。 このように申請人は終始一般事務職の従業員であつたから、あえて購買業務に限らず一般事務職の者の担当業務たるべき範囲内にすべて職種の変更とならないというべきところ、本件配転当時、申請人は前記のとおりの内容の購買(補助)業務を担当し、一方配転先の独身寮における事務(主として購買)は前記のとおりであつて、等しく購買といつても、配転前後の両者で購買の対象が異るために両者の業務内容が完全に同じというわけではないが、いずれも職種でいえば事務(デスクワーク)であり、その主体は集計、計算、整理、報告等の業務である点で共通している。 七、同四項の事実はすべて争う。 八、同五項の主張はすべて争う。 第四証拠(省略) 理由 第一 (本件配転命令、本件懲戒解雇の存在)被申請人は、従業員二、一五〇名を擁し、主として鐇力および鋼板ならびにその加工品の製造販売を業とする株式会社であり、申請人は昭和三九年九月被申請人に雇用され、綜合研究所において電話交換手として勤務していたところ、昭和四二年一一月一日同研究所の受付係へ、同四三年四月一日同購買係へと担当部署が変更され更に昭和四四年四月二一日付をもつて横浜市<以下略>地所在の本社総務部所轄の独身寮へ配転命令(本件配転命令)を受けたが、右配転命令に応じなかつたため、被申請人から同年六月一三日付をもつて就業規則第七四条一、三、一一号各号に該当するものとして懲戒解雇の処分(本件懲戒解雇)を受け、その後従業員としての扱いを拒否されている。 以上の事実は当事者間に争いがない。 第二 (本件配転命令の効力)一、申請人が購買補助業務 号に該当するものとして懲戒解雇の処分(本件懲戒解雇)を受け、その後従業員としての扱いを拒否されている。 以上の事実は当事者間に争いがない。 第二 (本件配転命令の効力)一、申請人が購買補助業務係(本件配転発令当時の業務)担当となるまでの経過その成立に争いない疎乙第四四号証、申請人本人尋問の結果およびこれによつて成立を認めうる疎甲第一七、二五、二六号証、証人Oの証言および同証言によつて成立を認めうる疎乙第四五号証の一、二、同第四九、五二号証、証人Pの証言および同証言によつて成立を認めうる疎乙第五〇、五六、六一号証ならびに弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができる。 1、申請人は被申請人に入社以来研究所において電話交換手として勤務していたのであるが、昭和四二年ころ被申請人は、アメリカの技術提携会社との研究員の交換交流がはじまり、研究員一名が研究所に派遣されて研究を行うことになり、研究所においても国内国外との英語による電話の発受信が多くなり、当時電話交換を担当していた申請人およびQは英会話がほとんど出来なかつたため、数回英語による通話上のミスを生じた。そのため研究所では、電話交換担当者に英語のできる者を少くとも一名あてる必要を感じ申請人らに英語のテストを試みたが右両名が辞退したため、両名にその能力がないものと判断し、当時英会話のできた会計担当の短大卒のRをしてこれにあたらせ、前記両名のうち電話交換担当の経験の少い申請人を電話交換からはずすこととした。 2、他方その頃、研究所事務室における購買業務はNが担当していたが、昭和四二年ころから業務量が急激に増加し、同人の残業時間が増加し、購買本来の仕事である発注、検収等が処理し切れなくなり、やむなく、その担当業務の一部を研究部に代行してもらうなど右業務の補助者を必要とする状況にあつた。 業務量が急激に増加し、同人の残業時間が増加し、購買本来の仕事である発注、検収等が処理し切れなくなり、やむなく、その担当業務の一部を研究部に代行してもらうなど右業務の補助者を必要とする状況にあつた。一方、前記Rの異動によりその空白を至急補充する必要も生じたのでその補充を当時人事担当のLをもつて埋め、右Lの後任を受付担当のSをもつてあてたため、右受付業務にも人員の配置が早急に必要となつた。ところで被申請人会社においては受付業務は研究所の窓口として重要であるとして、その方針として徒来から高卒以上の新入社員をあてる慣例があつたが、当時一一月ころは新卒者を採用することが難しかつたので、翌年四月まで暫定的に正式高卒者でない申請人を配置することになつた。 3、翌昭和四三年四月高卒の新入社員としてTが本社において採用され研究所に配属されたので、前記の慣例により右Tに受付業務を担当させることになり、申請人に前記購買業務の補助をさせることを決定しその旨同人に対し三月末ころ通知し、四月一日をもつて右業務に担当換えした。 右配置替のころ、購買関係の事務量は研究所の拡大に伴いさらに増加し、前記Nの本来なすべき業務である発注、物品の入手、品質検査、業者の選定を充分行うためには伝票処理、集計等の補助事務を専任として担当する者が必要となつていたものである。 以上の事実を認めることができ、前掲疎甲第一七、二五号証、疎乙第五二号証、証人Hの証言によつて成立を認めうる甲第二二号証、弁論の全趣旨によつて成立を認めうる甲第四〇号証、乙第六〇号証、申請人本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分は信用できない。 二、コンピユーター方式導入による申請人の購買補助業務の消滅について。 弁論の全趣旨によつて成立を認めうる疎乙第七号証の一ないし三〇、同第一八、一九、六八号証、証人Pの証 する部分は信用できない。 二、コンピユーター方式導入による申請人の購買補助業務の消滅について。 弁論の全趣旨によつて成立を認めうる疎乙第七号証の一ないし三〇、同第一八、一九、六八号証、証人Pの証言および同証言によつて成立を認めうる疎乙第一〇ないし一七号証、同第二〇号証の一ないし四、同第五三、五九号証証人Oの証言同Hの証言前掲疎乙第四九、五〇、五二、五六号証ならびに弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができる。 1、研究所事務室購買業務の内容は、(イ) 研究資材購入業務(ロ) 設備資産購入業務(ハ) 研究費の項目別分類、集計、報告(ニ) 研究費材価格調査があり、申請人が担当していたのは右の(イ)の業務のうち、主として、請求書の業者別、発注先別分類および金額集計、業者毎の会計宛支払伝票発行、(ハ)の業務のうち、検収報告書の分類、金額集計、研究項目別の予算実績対比表作成、(ニ)の業務のすべて、購入した研究資材の品種、業者別の価格比較書の作成のいわゆる購買補助業務であり、それ以外の本来の購買業務である発注、現品の検収・払出、照合等はNの担当であつた。 2、ところで、被申請人においては、前記の申請人の担当していた購買補助業務をも含めて、研究費等の管理の強化と研究成果の評価の適正化を図るべくコンピユーター方式の導入が検討されていたが、昭和四三年一一月ころ研究所内において正式に導入が決定され、同年末ころから翌年三月ころまで被申請人主張のような実施のための準備作業がなされた。 3、そして、右準備作業の結果ようやく同年五月一日からコンピユーターシステムによる事務処理を七月末日まで試験的に実施する運びとなつたので申請人の従来担当していた方式による手作業による購買補助業務は五月一日を以つて消滅するに至つた。もつとも右期間中研究所においては所員 テムによる事務処理を七月末日まで試験的に実施する運びとなつたので申請人の従来担当していた方式による手作業による購買補助業務は五月一日を以つて消滅するに至つた。もつとも右期間中研究所においては所員全体について各人の担当する研究項目のコード番号の書き方について数日間の教育を行つたが、これに対し購買担当者も所内全部から廻つてくる伝票のコード番号をチエツクする必要があり、特別に担当期間コード番号体系に関する教育を行い、コード番号設定についてもコンピユーター要員とともに参画した。 しかしこの様な状態であつたので、申請人が後記のとおり産休明けの状態で直ちに、購買業務担当者として旧職場に復帰しても新しいコンピユーター方式による伝票等の分類、集計を、その記載の誤りをチエツクしつつ遂行することは困難であり、申請人に対し相当期間の教育、訓練を施して右業務にあたらせることは、新たな右手計算の過渡的な状態も七月末日で終了すること及び右作業が現にコンピユーター要員、L等の応援等によつて一応処理できていたことからその必要性が余りなく、また人事管理上不経済と判断された。 4、右のコンピユーター方式による作業は八月一日から完全実施により一般従業員の手を離れ専ら専門技術者たるコンピユーター要員の担当するところとなり、Nはコンピユーター方式に親しまない発注、検収、現品管理の業務を継続して担当することとなつた。 以上の事実を認めることができるので申請人の担当していた購買補助に関する各種の業務は、コンピユーター方式導入により消滅したということができる。 三、本件配転先(独身寮)の職務内容について。 1、成立に争いのない疎乙第二三号証、官署作成部分については争いがなく、その余については弁論の全趣旨により成立を認めうる疎乙第二四号証の一、二、前掲疎乙第四八号証、証人Oの証言お 職務内容について。 1、成立に争いのない疎乙第二三号証、官署作成部分については争いがなく、その余については弁論の全趣旨により成立を認めうる疎乙第二四号証の一、二、前掲疎乙第四八号証、証人Oの証言および弁論の全趣旨を総合すれば次の事実を認めることができる。 (一) 被申請人は、横浜市<以下略>地に約五〇名を収容できる四階建(各階一六室、二階から四階までを寮生が使用。)の独身寮を有していたところ、昭和四四年三月ころは寮生は二二、三名であり、右寮の管理、給食等は、嘱託である住み込みの管理人夫婦、賄婦一名がこれを担当していた。なお右独身寮には従前東洋製缶株式会社の社員も収容されていたが被申請人の要請により、右東洋製缶は自社の独身寮を建設して同社の寮生を引き取つたのであるが、寮母の適任者が見当らず、暫時被申請人の寮母一名の応援方を依頼したので、寮母一名が若干時間居なくなる可能性があつた。 (二) また、右独身寮においては徒来より寮事務を専任処理する者がいないため、管理人、寮母等が本来の寮管理業務の片手間にこれを処理していたので、管理人等が本来の管理業務が必らずしも充分に行き届かず、時には寮事務の一部を寮生や本社総務部が代行して処理しており、事務関係帳簿も充分整備がなされていない状況であつたので、新たに寮事務を担当する者があれば、寮母が東洋製缶の寮に容易に応援に出るのを可能にし、また右の不都合を改善することができる状態ではあつた。 (三) しかしながら後述のとおり、右寮における事務は被申請人においても通常一工数として処理されるべき事務の量、質をかなり下回ることが予想されており、専任事務処理担当者が必要、不可欠の状態ではなかつた。(このことは申請人が独身寮への配転を拒否した後、とくに専任の事務処理者を補充していないことからも窺い知ることができる。) ことが予想されており、専任事務処理担当者が必要、不可欠の状態ではなかつた。(このことは申請人が独身寮への配転を拒否した後、とくに専任の事務処理者を補充していないことからも窺い知ることができる。)(四) そこで、被申請人本社では、昭和四四年三月末ころ、後述のように、四月二五日ころ産休明けが予想される申請人の新しい職務を前記のような内容の独身寮の事務と決定し、併せて同人が附随的に現業である寮の賄いをすることも期待した。 2、申請人は、本件配転先の業務は専ら寮の賄い業務であり(後記のとおり)職種変更であると主張するのであるが、前項掲記の疎明によれば申請人の担当すべき業務の内容についていえば、先ず、申請人は午前九時から午後五時までの勤務であつて、管理人、寮母のように住み込みのいわゆる継続勤務でないことは明らかであり、その質、量こそ一工数に満たないものであるが、本来的事務(机上事務)も一応存することが認められる。もつとも、被申請人は申請人を右業務にあて、併わせて同人の手の空いたときは賄いの手伝いをすることを事実上期待していたことは前記認定のとおりであるが、証人Hの証言によれば本件配転当時寮生の食事の賄いは管理人の妻の寮母と賄婦二名が、朝食(午前七時から八時)は交替で、夕食(午後六時から八時)は右両名がこれを住み込みで担当していたのであり、また当時寮生は寮の収容能力の半分以下である二二、三名であり、賄いの仕事は、当時は右二名で一応足りていたことが窺われるのであるから申請人に賄いの手伝いが期待されていたとはいえ、実際に当つての、従前の労働と異る労働の量そのものは必らずしも多くなく、被申請人が申請人に行なわせる実質業務はいわゆる寮事務を中心とした業務であり、賄業務を専業とした業務ではないと認めるのが相当である。 四、本件配転は異種配転か。 1、前掲 のものは必らずしも多くなく、被申請人が申請人に行なわせる実質業務はいわゆる寮事務を中心とした業務であり、賄業務を専業とした業務ではないと認めるのが相当である。 四、本件配転は異種配転か。 1、前掲疎乙第二七ないし四二、四九号証、証人Oおよび同Hの各証言ならびに弁論の全趣旨を総合すると申請人の担任すべき事務については、更に次の事実を認めることができる。 本件配転当時、独身寮においては管理人夫婦、賄婦ならびに寮生らのおこなつていた寮の事務は、(1) 寮費徴収明細綴の記載、(2)寮費明細綴の記載、(3)金銭出納帳の記帳、(4)食事および支払台帳の記帳、(5)物品購入控台帳の記載、右物品(什器、備品、消耗品)の検収、保管、(6)電灯動力使用量調帳の記載、(7)水道使用量帳の記載、(8)プロパン使用量調帳の記載、(9)備品台帳の記載、(10)電報電話料の記載、(11)市外電話料金帳の記載、(12)特殊郵便物授受簿の記載、(13)速達便受簿、(14)日誌の記帳、(15)浴場日誌の記載、(16)外来者名簿の記載、(17)各帳簿の整備、保管、(18)光熱費支払の事務、(19)防火管理に関する補助事務、であるが、右の各事務のうち、(14)および(15)は管理人の責任において記入されるべきものであり、それを除きその余は可能な限り、本件配転後は申請人が専任して処理する予定であつた。そして、そのうち(4)は毎日記帳されるものであり、(3)、(5)、(12)、(13)は随時必要に応じて記帳され、(1)、(2)、(6)、(7)、(8)は毎月ないし二ケ月に一回記帳されるものであるから、他の支払、保管等の事務を併わせ考えると申請人の寮事務処理業務は〇・三工数(管理人の担当していた仕事のうち寮事務はその約三割であり、さらにそのうち申請人に移譲されるべき業務は約八割で のであるから、他の支払、保管等の事務を併わせ考えると申請人の寮事務処理業務は〇・三工数(管理人の担当していた仕事のうち寮事務はその約三割であり、さらにそのうち申請人に移譲されるべき業務は約八割であるが、これに他の寮事務も加わる。)を上回ることはなく、約〇・三工数弱である。 以上の事実が認められ疎甲第二二、三八号証ならびに証人Hの証言中右認定に反する部分は、これを措信しない。 2、ところで、異種配転か否かは、当該人の労働契約によつて判断すべきところ、労働契約が締結される際、職種あるいは勤務場所が明示されていない場合は結局契約内容は被用者の職歴、経歴、同時採用者等との比較におけるその従事する労働の種類、態様、当該企業の慣行、就業規則、労働協約上の定め等を基準として当事者の意思を確定すべきである。 そこで、本件についてこれを検討するに、成立に争いのない疎乙第四四号証、証人Oの証言および同証言によつてその成立を認めうる疎乙第四五号証の一、二、同第四八、四九号証および弁論の全趣旨を総合すれば、(一) 申請人は前記のとおり、昭和三九年四月二一日財団法人電気通信共済会訓練所の約一ケ月間の訓練を経たものではあるが被申請人は同人を一般従業員として本社採用し、研究所総務課に勤務することを命じ、右研究所内で電話交換の業務にあたらしめた。申請人は、右採用決定当時有ひもの交換手としての資格を有していたが、被申請人の研究所交換機械に適合するのは無ひも資格であつて右採用時に電話交換手の資格を取得することを条件とされたこともなく、更に担当すべき職種として電話交換手を、勤務場所として前記研究所にそれぞれ限定する旨明示されたこともない。 (二) 被申請人における職種に関する慣例あるいは規程については、昭和二二年頃それまでに存していた「職員」、「工員」の身分上の区別は 務場所として前記研究所にそれぞれ限定する旨明示されたこともない。 (二) 被申請人における職種に関する慣例あるいは規程については、昭和二二年頃それまでに存していた「職員」、「工員」の身分上の区別は撤廃され、その後は職種ならびにそれに附随する賃金体系は存せず、就業規則にも職種に関する定めはない。もつとも被申請人の旧賃金規定に職務等級表なるものが添付されてはいるが、右は作成当時職務給制を導入する動きがあつてその為に作成されたものであるが現実にはその一部が初任給の等級格付表として一時利用されたにすぎず、昭和四三年四月に旧賃金規程の改正に伴い右附表もなくなつた。右附表のうち研究所に適用となるべきものは、「研究員」、「技術員」、「事務員」の区分のみであつてそれ以上に具体的に職種を規定したものはない。 (三) 申請人が本件配転直前担当していた購買補助業務の内容は前記のとおりであるが、その前に担当していた受付業務の内容は文書の受発信、所内への文書の配布等が主なものであつた。 以上の事実を認めることができる。 そして、右認定の事実によると、申請人は「本社の一般従業員」として採用され、とくにそれ以上具体的な職種、勤務場所を限定して採用されたものでないことは明らかであるところ、被申請人の就業規則、協約、慣例および申請人の実際従事した労働の種類、態様からみても、申請人の職種はいわゆる事務系労働という程度の包括的なものにとどまり、より具体的な内容の限定はなかつたものと解するのが相当である。 そして、右のように労使の合意が「事務系労働」という包括的な職種限定である限り、使用者は当該労働者を、その事務系労働の範囲内で、一方的に配転を命ずることができるものと解すべきである。ところで申請人の本件配転先である独身寮における「寮事務」は、職務体系として寮の規模、入寮者 り、使用者は当該労働者を、その事務系労働の範囲内で、一方的に配転を命ずることができるものと解すべきである。ところで申請人の本件配転先である独身寮における「寮事務」は、職務体系として寮の規模、入寮者数等からみて、申請人主張のように賄婦、管理人の現場作業労務に附随する事務として、賄現業務の一部としてこれに吸収してしまうことも全く不可能ではないのであるが、(被申請人は現に、従来右のような体系下において運用していたものと認められる。)前述のとおりその本来的事務を整理し関係事務を分離独立させることにより、現場作業労務と切り離れた専任事務となり得るもであり、被申請人もまたその方針であつたことは明らかであるから、寮の右事務も、実質は事務員のなす「事務系労働」の範囲内に体系化された「事務系労働」であると考えるべきである。 したがつて、本件配転をいわゆる異種配転とし、労働者の同意がなければ無効であるとする申請人の主張は採用できない。 五、本件配転命令は人事権の乱用か。 1、申請人の配転命令前の担任業務が研究所事務室に所属する資材等購買の補助事務であることは前記認定のとおりである。ところで配転先の業務については、前記判示のとおり、いわゆる寮業務中の机上事務であり、それ自体購買補助事務と異質の事務とは認め難いけれども、被申請人において右地位への正社員の配転は初めてであるところ、本来右事務は、その分量如何によれば、寮の現業たる賄業務の附随業務として、現業従業員の担当業務として包含されても奇異でない事務であること、すなわち、現業従業員の担当すべき業務と解される余地が大いにある業務であり、現に右寮において現業従業員たる管理人、寮母が従来これを扱つていたものであること、そして右管理人、寮母はともに嘱託であり、申請人の如き正社員でないこと、本件寮事務の分量は一工数に にある業務であり、現に右寮において現業従業員たる管理人、寮母が従来これを扱つていたものであること、そして右管理人、寮母はともに嘱託であり、申請人の如き正社員でないこと、本件寮事務の分量は一工数に足らぬものであること、したがつて申請人の担当すべき業務が規定上は机上事務のみと定められたとしても、実際上には職場全体の雰囲気から申請人は賄業務の一部にも携わらなければならず、またそれが社内において当然と期待されており、実際の稼働上は事務職と現業職の区別がつけ難く、従来の職務体系からは寧ろ、現業職(嘱託によつて担任されている職)への配転と解されて当然である状況にあつたことは上段判示のとおりである。 そうとすれば、本件配転は、給料、勤務時間等労働条件に実質的差異がないとしても社会通念としての勤務条件について変動があり、後記判示の経歴を有し、被申請人の正社員たる研究員の妻である申請人にとり地位の評価上著しく不利益な配転と解さざるを得ないところである。 2、被申請人は、申請人に対し前記のような不利益を伴う本件配転をなしたのは産休明けの申請人には就くべき他に適当の職務はなかつたと主張するので、以下判断する。 (一) 証人Pの証言ならびに同証人によつて成立を認めうる疎乙第二、六五号証、証人Oの証言ならびに同証言によつて成立を認めうる疎乙第四八、五四号証前掲疎乙第五〇号証ならびに弁論の全趣旨を総合すれば次の事実を認めることができる。 (1) 研究所における各部課の業務分担内容は、研究部と事務室に分れ、後者は申請人の配属された当時総務課と称し、研究以外の事務一般を担当し、事務室は人事課(人事、医務、炊事)および庶務(受付、文書、電話交換、庶務営繕、運転、清掃)、経理、購買(補助業務をふくむ。)に分れ、研究部は研究室から成り、また部内には図書管理、資料整備、タ し、事務室は人事課(人事、医務、炊事)および庶務(受付、文書、電話交換、庶務営繕、運転、清掃)、経理、購買(補助業務をふくむ。)に分れ、研究部は研究室から成り、また部内には図書管理、資料整備、タイプ等の業務がふくまれている。 (2) 昭和四四年四月ころ、右研究所の所員は約一二〇名そのうち女子従業員は申請人をふくめて一一名であつた。 昭和四四年四月一日当時、研究室において女子従業員の就業していた業務は、研究部においては研究員(U)、和文タイプ(M)、資料整備(V)、図書管理欧文タイプ(W)、事務室においては人事課(S)、経理(L)、受付(T)、医務(X)、電話交換(Y、Z)であつた。しかし、被申請人は従来右各業務のうち、図書、タイプ、医務はそれぞれ司書、タイピスト、看護婦の資格を有する専門技能者をあてており、その余の一般事務業務のうち経理、人事はその仕事の性質上比較的高い学歴、技能、経験を有する者を充てるようにしていた。 (二) 成立に争いない疎乙第四三号証、弁論の全趣旨によつて成立を認めうる疎甲第三号証、申請人本人尋問の結果によると、申請人は昭和三四年四月新制中学校を卒業後川島紡績株式会社に入社し、同会社に在職中同社経営の川島高等家政学校で三年間の課程を修め、昭和三七年四月日本機械土木株式会社に転職し、その後昭和三九年七月同社を退職して翌月財団法人電機通信共済会訓練所に入所して電話交換手としての訓練を受け、同月同所を終了し電話交換手(有ひも式)の資格を得た後、前記のとおり被申請人に入社したことが認められる。 そこで、申請人が前項認定の各業務のうち、専門技能を必要とする図書、タイプ、医務に適しないことは当然だとしても、その余の業務のうち人事、経理、受付についても全く不適だとする被申請人の主張には、にわかに肯首し難いところがある。 す うち、専門技能を必要とする図書、タイプ、医務に適しないことは当然だとしても、その余の業務のうち人事、経理、受付についても全く不適だとする被申請人の主張には、にわかに肯首し難いところがある。 すなわち、人事、経理担当の従業員には比較的高度の技能、経験を要すると云つても、事務補助の女子従業員においてはあくまで相対的なものであると理解されるところ、既に認定のような申請人の学歴、職歴、被申請人に入社後の職務内容、年令(当時二五才)等から考えると、申請人を右業務に就かせることが適当であるかどうかはともかく能力上全く不適であるとは断言できないところである。また、受付には高卒以上の新規採用者をもつてあてるのが被申請人の方針であつたとしても、申請人は前記のとおり企業内特殊学校を卒業したものの、前掲疎甲第三号証によれば、その間に、学校教育法に定める高等学校におけるものとそれほど大差のない学・教科目を履修したことが認められ、申請人に入社した後も本件配転命令を受けるまで、右学歴が格別障害になつたことが認められないのであるから(前記のとおり英会話ができないことは高卒者でも同様であろう。)、申請人を高卒の学歴がないことのみをもつて受付に不適だとすることは合理性があるとはいえない(なお、申請人は、被申請人が採用時に同人を高卒者として扱う旨約した旨主張するが、これを認める疎明は十分でない。)。しかも、被申請人は昭和四四年四月当時前記各業務に女子従業員の欠員は存在しなかつた旨主張するが前掲甲第二二号証、証人Pの証言および弁論の全趣旨を総合すると前記女子従業員のうちM、Lが研究所の技術員、本社の運転手とそれぞれ昭和四四年九月、一〇月に結婚して退職したことが認められるところ、研究室の人事課長Pは右両名が退職するであろうことは少くとも本件配転命令当時すでに聞き及んでい 研究所の技術員、本社の運転手とそれぞれ昭和四四年九月、一〇月に結婚して退職したことが認められるところ、研究室の人事課長Pは右両名が退職するであろうことは少くとも本件配転命令当時すでに聞き及んでいたものと推認される。(証人Pの証言中右認定に反する部分はこれを採用しない。)さらに、申請人の就くことのできる職務を被申請人の本社のそれに広げて考えれば、本件配転当時申請人を充てるべき業務が全く存しなかつたことを具体的に認めるだけの疎明はなく、かえつて成立に争いのない疎甲第四二号証の一、二、同第四三号証の一、二、同第四五号証の一、二、同第四六号証の一ないし三、弁論の全趣旨によりその成立を認めうる疎甲第四四号証によれば、被申請人本社において本件配転命令が検討されていた当時数名の女子従業員を新に採用していることが認められる。(右認定に反する証人Pの証言はこれを採用しない。)以上の次第であるとすれば、申請人の従来担当していた購買補助業務は消滅したのであつても同人の学歴、経験、技能の点からすれば同人を充てるべき職務が研究所および本社全体をみても全く存しなかつたとはいえないし、まして同人が被申請人にとつて整理解雇されてもやむをえない無用の従業員即ち冗員であつたとは到底いうことができず(要健康保護者との関連については後述する。)、この点をもつて申請人の不利益配転の合理的理由と認めることはできない。 3、申請人は、右のような本件配転を受けたのは被申請人が申請人の思想信条や同人が女性であること、とくに結婚をし出産までした女性であることを嫌悪した結果、不当に差別待遇したものである旨主張するので、まず後者の点から検討する。 (一) 申請人が、昭和四三年三月三一日同じ研究所の研究員立中Aと職場結婚し、翌四四年三月一三日出産したが、その前後の一月二六日から四月二四日ま たものである旨主張するので、まず後者の点から検討する。 (一) 申請人が、昭和四三年三月三一日同じ研究所の研究員立中Aと職場結婚し、翌四四年三月一三日出産したが、その前後の一月二六日から四月二四日まで出産休暇(産休)をとつたことは、当事者間に争いがない。 (二) そして前掲疎甲第八、一七、二六号証、同疎乙第四八、四九、五一号証および証人Pおよび同Oの各証言、申請人本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を総合すれば次の諸事実を認めることができる。 (1) 被申請人においては、かねてから結婚した女子従業員には退職してもらうことを希望する方針をとつており、昭和四三年ころより女子従業員の入社の際に結婚退職の念書をとつていた。そして本件配転当時現に、既婚者の女子従業員はほとんど退職しており、結婚して退職しない者でも、出産するに至つたときはすべて退職していたので、被申請人において産休問題を生じた例は皆無ではなかつたものの育児休憩の問題を生じた例はなく、被申請人の人事担当者は生後間のない子供を抱えた女子従業員を使用した経験がなかつた。 (2) 申請人が前記のとおり昭和四三年三月結婚した際にも、K事務室長は、同人に対し、女性は結婚したら退職して家庭に入るのが一番幸福である旨述べまた同四四年一月申請人が産休をとる旨の届を提出した際にも前記Kは、同人に対し、「子供ができたら育児に専念すべきであるから会社をやめて家庭に入つたらどうか。」などと、暗に退職を勧めていた。(なお、被申請人は、右Kの言辞は人事担当者として後任の補充との関係で、退職の意思の有無を確めたにすぎない旨主張し、前掲疎乙第五〇、五六号証にはこれに副う疎明部分があるが、前認定の如き会社の方針実情等と対比すれば、右Kが申請人に対し退職を強要したとはいえないまでも、退職するよう強く希望していたであろうこと し、前掲疎乙第五〇、五六号証にはこれに副う疎明部分があるが、前認定の如き会社の方針実情等と対比すれば、右Kが申請人に対し退職を強要したとはいえないまでも、退職するよう強く希望していたであろうことは否定できない。)。 (3) ところが、右のような申請人の希望にもかかわらず、申請人はK室長の説得に対し、その都度退職する意思のないことを示し、産休をとる前には育児休憩の取得手続等をP人事課長に問いあわせたりしたため、被申請人は生後間もない子供を抱えた女子労働者を使うという前例のない事態に直面した。 以上の事実を認めることができ、疎乙第四八、四九、五一号証、証人Pの証言中右認定に反する部分はこれを採用しない。 以上の諸事実を総合して考えると、被申請人においては本件配転当時、女子従業員は結婚したら退職するのが通例とされ、いわんや出産後も退職しないで就労した者は皆無であつたために、前記のとおり職場結婚をし出産までしてなお退職しようとしない申請人が強く敬遠される存在であつたことは容易に推認できるところである。 4、もつとも、被申請人は、申請人を嫌悪したことはなく、本件配転が、出産直後で乳呑児を抱えている、という申請人の置かれた生活、健康状態を考慮した、むしろ同人の利益を考えた配転である旨主張する。 なるほど、成立に争いのない疎甲第八号証、疎乙第一号証によると、被申請人の就業規則には「妊産婦」を健康要保護者として、就業制限、作業転換、治療その他保健衛生上必要な措置をとることがあること(第八八条四号)、また、生後満一年に達しない生児を育てる女子は通常の休憩時間の外予め申出て勤務時間中一日について二回、一回について少くとも三〇分の育児時間を受けることができること(第一七条)が、それぞれ定められており、被申請人が申請人に対し説明した本件配転理由の一つにも の外予め申出て勤務時間中一日について二回、一回について少くとも三〇分の育児時間を受けることができること(第一七条)が、それぞれ定められており、被申請人が申請人に対し説明した本件配転理由の一つにも、申請人が乳呑児を抱えた妊産婦であつて、右就業規則上から勤務上各種の制約があり、使用者として健康保護の配慮が必要であつた旨を掲げていることが認められる。 そして、右のうち育児休憩の点は、たとえ申請人主張のように同人が請求していなくとも、就業規則、労基法上の労働者の権利であり、かつ使用者において事前に放棄せしめることはできないのであるから、被申請人の人事担当者が将来、この請求あることを考え、その際申請人の実質的労働能率が低下することを予想し、それに即応した措置をとることはむしろ当然であり、この点からみる限り、前記のように申請人の原職が消滅し、産休明けに新しい職場を捜して与えねばならなかつた本件においては、被申請人が本件配転にあたり申請人を他の従業員と区別して取扱うことは納得さるべきであり、さらに、また被申請人にとつて右の様な状態にある女子従業員を使用した経験がなかつたことから、研究所、本社において右のように制約がありまた無理のきかない申請人を組み入れることを、職場の他の同僚に余計な負担をかけまた不衡平の感じを抱かせる等好ましくない影響を与えるであろうと判断したものとすれば、これまた企業運営上あながち不当とはいえないところであつて、その結果、申請人が右の制約を伴う期間、その意に反し閑職に配転されたとしても、不合理といえないであろう。 しかし、本件配転が被申請人の主張のように、真実申請人の健康保護の配慮からなされたものとは認め難い事情がある。すなわち、前記就業規則上の「妊産婦」とは出産後一年未満の婦女子というものと解すべきであるから育児休憩の点と 被申請人の主張のように、真実申請人の健康保護の配慮からなされたものとは認め難い事情がある。すなわち、前記就業規則上の「妊産婦」とは出産後一年未満の婦女子というものと解すべきであるから育児休憩の点とならんで、被申請人が申請人を前記のような制約のある労働者として配慮する必要があるのは、結局出産後満一年間という暫定的な間に限つて考えるべきであり、その期間経過後もなお、申請人を他の従業員と区別して取扱う合理的理由は見当らない。ところが、前掲疎甲第一四、一七号証、証人Pの証言によれば、申請人が本件配転命令内示を受けた翌日である昭和四四年四月八日、P人事課長に電話して、独身寮への配転は妊産婦等の制約のある間の一時的なものであるかどうかを問い合わせたところ、同課長は、本件配転がそのような暫定的な措置ではない旨回答していること、また申請人の所属する東洋鋼鈑労働組合でも本件配転の可否が検討され、研究所に欠員、増員のあつた場合は申請人を第一候補として考慮するよう要求することを決定し四月一九日の団体交渉で被申請人に対し、その旨申入れたが、被申請人からは研究所復帰の時期の約束はできない旨回答したことが認められるので、これらの事実からすれば、本件配転は、申請人が出産に伴う労働制約を受ける間企業の効率的運用の問題としてこれを一時的、暫定的に配転するというものではないことが明らかである。 5、以上、判示各事実を綜合すれば、申請人には産休明けには同人の原職が消滅し、配転を受ける業務上の必要性が生じ、その配転先についても妊産婦等の制約から一時的に限定されてしまう事情があつたことは否定できないのであるが、被申請人は右事情を利用し、女子従業員については従前から結婚退職を通例とし、少なくとも出産後はすべて退職される方針でいたところ、申請人はこれに反し出産後も退職しようとし とは否定できないのであるが、被申請人は右事情を利用し、女子従業員については従前から結婚退職を通例とし、少なくとも出産後はすべて退職される方針でいたところ、申請人はこれに反し出産後も退職しようとしないので、これを敬遠する余り、産休明けに、偶々原職が消滅したのを奇貨として、就業規則上の保護に名をかりて、さして業務上の必要のないのに評価上不利益な地位である新しい現業まがいの職場を創設して独身寮の寮事務係として配転させ、結局は同人の労働意欲を喪失させることにより、退職の決意をさせようとしたものと推認できるのであり、被申請人が本件配転をなした決定的動機もここにあつたものと解さざるを得ない。 そうだとすれば、本件配転は、女子従業員が結婚、出産したことをもつて、これを離職に至らしめようとする意図から発した不利益処分であり合理的配転でなく、したがつて、人事権の乱用というべきで、無効と解すべきである。 第三本件懲戒解雇の効力以上のことから明らかなように、本件配転は無効と断ずべきであるから右命令違反を理由とする限り本件懲戒解雇は無効といわざるを得ず、被申請人主張のその余の解雇事由も配転命令が無効である以上、これと切り離した独立の非違行為として懲戒解雇の事由とすることは許されないものであるから、結局本件懲戒解雇は権利濫用として無効である。 第四賃金について申請人の解雇当時における給与額が一ケ月金三万一、四九八円であること、給与支給日が毎月二一日より翌月二〇日までを一ケ月として毎月二五日に支払われていること、申請人が昭和四四年四月二六日以降賃金の支払いを受けていないことは当事者間に争いがない。 第五保全の必要性弁論の全趣旨によると、申請人は同人と夫Aの得る賃金によつて、親子三人生活していることが認められ、申請人が本案判決あるまで、被申請人から けていないことは当事者間に争いがない。 第五保全の必要性弁論の全趣旨によると、申請人は同人と夫Aの得る賃金によつて、親子三人生活していることが認められ、申請人が本案判決あるまで、被申請人から賃金の支払いを拒まれるときは夫の賃金のみによつては生活に窮し回復し難い損害を蒙るおそれがあると推認できる。 第六結論よつて申請人の本件仮処分申請は理由があるから申請人に担保を供させないでこれを認容することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官小河八十次佐藤歳二桜井康夫)
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