平成28年10月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第10522号不正競争行為差止等請求事件(本訴)平成28年(ワ)第636号不正競争行為差止等請求事件(反訴)口頭弁論終結日平成28年8月25日判決 本訴原告(反訴被告)(以下「原告」という。)株式会社エコリカ 同訴訟代理人弁護士溝上哲也同河原秀樹本訴原告訴訟代理人弁理士山本 進 本訴被告(反訴原告)(以下「被告」という。)スカイホースジャパン株式会社 同訴訟代理人弁護士服 部 謙太朗本訴被告訴訟代理人弁理士広川浩司主文 1 原告の本訴請求をいずれも棄却する。 2 原告は,被告に対し,30万円及びこれに対する平成27年10月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,本訴・反訴を通じ,これを10分し,その8を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 本訴請求(1) 被告は,その包装に別紙被告表示目録記載1の各表示を使用した別紙被告商品目録記載1の商品及びその包装に別紙被告表示目録記載2の各表示を使用した別紙被告商品目録記載2の商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。 (2) 被告は,その製造又 目録記載2の各表示を使用した別紙被告商品目録記載2の商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸入し,若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。 (2) 被告は,その製造又は販売に係るリサイクルインクカートリッジの包装に別紙被告表示目録記載1及び2の各表示を使用してはならない。 (3) 被告は,別紙被告表示目録記載1及び2の各表示を使用したリサイクルインクカートリッジの包装を廃棄せよ。 (4) 被告は,別紙被告ウェブサイト目録記載1ないし3のインターネット上のアドレスにおいて開設する各ウェブサイトから,別紙被告広告目録記載1及び2の被告商品の画像を抹消せよ。 (5) 被告は,原告に対し,1200万0560円及びこれに対する平成27年10月22日(訴え提起の日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 反訴請求(1) 原告は,原告のホームページから別紙不正競争行為目録記載の内容の電磁的記録を削除せよ。 (2) 原告は,本判決確定の日から7日以内に,別紙謝罪文目録記載の謝罪文を,原告のホームページ(http://www.ecorica.jp/)上に掲載せよ。 (3) 原告は,被告に対し,500万円及びこれに対する平成27年10月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要【本訴請求事件】 本件本訴請求事件は,原告が,被告に対し,原告の販売するインクジェットプリンタ用のリサイクルインクカートリッジの包装のうち,別紙原告表示目録記載の各表示(以下同目録記載1の表示を「原告表示1」,同2の表示を「原告表示2」といい,これらを併せて「原告各表示」という。)が原告の商品等表示として周知になっており,被告が原告各表示に類似する 記載の各表示(以下同目録記載1の表示を「原告表示1」,同2の表示を「原告表示2」といい,これらを併せて「原告各表示」という。)が原告の商品等表示として周知になっており,被告が原告各表示に類似する別紙被告表示目録記載の各表示(以下同目録記載1の表示を「被告表示1」,同2の表示を「被告表示2」といい,併せて「被告各表示」という。)を使用するリサイクルインクカートリッジを販売などする行為が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するとして,下記請求をした事案である。 記① 同法3条1項に基づく被告商品目録記載の各商品の譲渡等の差止請求(本訴請求(1)),② 同項に基づく被告製造販売に係るリサイクルインクカートリッジの包装への被告各表示の使用差止請求(本訴請求(2)),③ 同条2項に基づく被告各表示を使用したリサイクルインクカートリッジの包装の廃棄等の請求(本訴請求(3)),④ 同項に基づく被告のウェブサイトから被告各表示を使用した包装の商品広告の画像の抹消請求(本訴請求(4)),⑤ 同法4条に基づく損害賠償として合計1200万0560円(不正競争防止法5条2項適用による損害990万9600円,信用毀損による損害100万円,弁護士費用相当額109万0960円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年10月22日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の請求(本訴請求(5))【反訴請求事件】本件反訴請求事件は,被告が,原告に対し,原告が別紙不正競争行為目録記載の内容(以下「本件掲載文」という。)を原告のホームページに掲載する行為が不正競 争防止法2条1項14号(平成27年法律第54号による改正前のもの。現行同項15号。以下現行法のみ指摘する。)の不正競争に該当する旨主張 を原告のホームページに掲載する行為が不正競 争防止法2条1項14号(平成27年法律第54号による改正前のもの。現行同項15号。以下現行法のみ指摘する。)の不正競争に該当する旨主張して,下記請求をした事案である。 記① 同法14条に基づく本件掲載文の電磁的記録の原告のホームページからの削除請求(反訴請求(1))② 同法14条に基づく原告のホームページへの別紙謝罪文目録記載の謝罪文の掲載請求(反訴請求(2))③ 同法4条に基づく信用毀損による損害賠償として500万円及びこれに対する不法行為の後の日の平成27年10月23日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の請求(反訴請求(3)) 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,事務用機器及び付属品のリサイクル商品の企画,製造及び販売などを目的として設立された会社であり,インクジェットプリンタに搭載されるリサイクルインクカートリッジの開発,製造等を主要な事業内容としている。 イ被告は,平成21年11月20日,コンピュータ関連機器の消耗品の輸出入,及び,販売などを目的として設立された会社であり,中国のスカイホース社製造に係るインクカートリッジを輸入し,日本国内において販売している。 (2) インクジェットプリンタ及びインクカートリッジ市場アインクジェットプリンタは,プリンタにインク色が異なる複数のインクカートリッジを装着し,インクカートリッジ内のインクを印刷用紙に吐出して印刷を行うものであるが,印刷に伴い消費されるインクはインクカートリッジを交換することで補充されるため,インクジェットプリンタを購入したユーザーは,当該機種に適合するインクカートリッジ 紙に吐出して印刷を行うものであるが,印刷に伴い消費されるインクはインクカートリッジを交換することで補充されるため,インクジェットプリンタを購入したユーザーは,当該機種に適合するインクカートリッジを繰り返し購入することが見込まれている。 イインクカートリッジの市場は,①プリンタメーカー自身が製造販売している純正品,②プリンタメーカーではないサードパーティが使用済みのインクカートリッジにインクを充填しリサイクルして販売しているリサイクルインクカートリッジ,③サードパーティが特定のプリンタに対応するよう製造した互換品が存在するところ,原告及び被告が販売しているインクカートリッジは,②のリサイクルインクカートリッジである。 (3) 原告の販売行為ア原告は,平成15年からインクジェットプリンタ用のリサイクルインクカートリッジの販売を始め,平成21年11月1日頃,エプソンのインクジェットプリンタに適合するリサイクルインクカートリッジである,別紙原告商品目録記載1の商品(以下,同目録記載の各商品を「原告商品1」,「原告商品2」などという。)の販売を始め,その後,リサイクル方法の開発が完了したものから順次,原告商品2,さらに原告商品3ないし7の販売を始め,現在に至るまでこれらの商品の販売を継続している(以下「原告商品1ないし7」を併せて「本件原告商品」といい,これらを含む原告の取扱商品をいうときは,「原告取扱商品」という。)。 イ本件原告商品は,全国の家電量販店,総合スーパー,ホームセンター,オフィス事務用品店などの実店舗で販売されているほか,インターネット,カタログなどの通販によっても販売もされている。原告は,原告各表示以外の表示を包装に用いた商品も販売している。 (4) 被告の販売行為等被告は,別紙被 で販売されているほか,インターネット,カタログなどの通販によっても販売もされている。原告は,原告各表示以外の表示を包装に用いた商品も販売している。 (4) 被告の販売行為等被告は,別紙被告商品目録記載1,2のエプソン用のリサイクルインクカートリッジ(以下「被告商品1」,「被告商品2」,併せて「被告各商品」という。)を商社を介して家電量販店に納入し,当該家電量販店が一般消費者に販売している。また,被告は,別紙被告ウェブサイト目録1ないし3に記載の各URLアドレスにおいてウェブサイトを開設し,被告商品1,2の画像を掲載している。(甲4の1,甲4の3及び4) (5) 原告のホームページにおける告知原告は,平成27年10月22日,当庁において本訴を提起し,同日,原告のホームページに,別紙不正競争行為目録記載のとおりの「スカイホースジャパン株式会社に対する提訴ついて」と題する本件掲載文を掲載した(以下,本文中の文章を各別に順に「第1文ないし第7文」という。)。(乙20の1及び2) 3 争点(1) 本訴請求ア原告各表示は原告の商品表示として周知か(争点1)イ被告各表示は原告各表示に類似するか(争点2)ウ混同を生じるおそれの有無(争点3)エ原告の損害額(争点4)オ先使用の抗弁の成否(争点5)(2) 反訴請求ア本件掲載文は被告の営業上の信用を害する虚偽の事実か(争点6)イ本件掲載文の抹消請求及び謝罪広告掲載請求(争点7)ウ被告の損害額(争点8)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(原告各表示は原告の商品表示として周知か)について(原告の主張)(1) 原告各表示の商品表示性アインクカートリッジ市場の特徴インクカートリッ に関する当事者の主張 1 争点1(原告各表示は原告の商品表示として周知か)について(原告の主張)(1) 原告各表示の商品表示性アインクカートリッジ市場の特徴インクカートリッジは,多数の事業者による商品が陳列,展示,掲載されているところ,ユーザーは,前回購入した商品と同じ商品を購入しようとする際に,インクカートリッジのパッケージに使用されている各社の商品表示を手掛かりにする。 そのためインクカートリッジの市場においては,事業者の名称等からなる商標に限らず,パッケージのデザイン,色彩,模様,更には本来情報を伝達するための文 字や写真であっても,サイズ,レイアウト,配列の順序等に特徴を有する商品表示が出所識別のために重要な役割を果たしているので,インクカートリッジを製造販売する事業者は,通常は,競合他社の商品と視覚上容易に区別できる分かり易い商品表示を選択し,ユーザーが商品を選択する際に混同が生じないようにしている。 イ原告各表示は,「商品の包装」(不正競争防止法2条1項1号)に属するものであるが,本件原告商品の包装箱に平面的に印刷されている以下の特徴点AないしEを特徴とするものであり,それ自体で商品表示性を備えている。 (ア) 特徴点Aパッケージの中央よりもやや左寄りにシフトさせて角が丸みを帯びた四角形状の背景部を下75%程度はブルー色に,上25%程度はグリーン色に塗り分けて配色していること。 (イ) 特徴点B前記ブルー色の部分の領域には,左上に対象純正品型番の2桁の数字を大きなポイントの文字で表示し,その右横には「エプソン用」「~互換」の文字を白抜きで表示すると共に当該商品の型番を表示していること。 (ウ) 特徴点C特徴点Bの文字列の下部には4色パックの場合は左からブラック 文字で表示し,その右横には「エプソン用」「~互換」の文字を白抜きで表示すると共に当該商品の型番を表示していること。 (ウ) 特徴点C特徴点Bの文字列の下部には4色パックの場合は左からブラック,シアン,マゼンタ,イエローの順に,6色パックの場合は前記4色に続けて左からライトシアン,ライトマゼンタの順にインクカートリッジを斜視方向から撮影した写真を配置していること。 (エ) 特徴点D前記背景部のグリーン色の部分の領域には「リサイクルインクカートリッジ」の白抜きの文字を含む商品の名称が表示されていること。 (オ) 特徴点E(原告商品1ないし3にみられる特徴点)左斜め下方向及び右斜め下方向に延びて先端がV字状にカットされたリボンを有し,周縁部が鋸歯状とされた円形のバッジをモチーフにしたアイコンを,パッケー ジの右辺側に表示していること。 ウまた,仮に,原告各表示が,それ自体で商品表示性を備えていないとしても,後記(2)の周知性に関するすべての事実を考慮すれば,原告各表示には商品表示性が認められる。 エ被告主張に対する反論被告は,本件原告商品の商品表示は,原告の名称である「エコリカ」であり,他方,本件原告商品のパッケージに統一性がないから,原告各表示は商品表示足り得ないように主張するが,統一性がないと被告が指摘する表示を使用した商品の販売数量の割合は全体から見れば,ごく僅かなものであり,原告各表示に統一性がないということにはならない。原告各表示を備えない商品の販売が振るわないことは逆に原告各表示の商品表示性が強いことを示している。 したがって,「エコリカ」を除いた原告各表示に商品表示性は認められないとする被告の主張は誤りである。 (2) 原告各表示の周知性ア原告各表示の使用期間原告 示性が強いことを示している。 したがって,「エコリカ」を除いた原告各表示に商品表示性は認められないとする被告の主張は誤りである。 (2) 原告各表示の周知性ア原告各表示の使用期間原告は,平成21年6月以降,一貫して,本件原告商品に原告各表示を使用しており,使用期間は6年を超えている。 イ販売数量及び売上金額等平成21年6月から平成27年8月までの間の本件原告商品の大手家電量販店における販売数量及び売上金額は,それぞれ別紙原告商品販売数量及び売上高のとおりであり,特徴点Eを有する原告商品1ないし3の(中略)であり,特徴点Eを有しない原告商品4ないし7では(中略)であり,合計すると,原告商品1ないし7の販売実績は,平成21年6月から平成27年8月の約6年間に,(中略)に達している。 また,通信販売による総合スーパー,ホームセンター,オフィス事務用品店等に対する出荷数量は,各発売日から平成27年8月31日までの間で,(中略) であった。 原告において集計した各発売日から平成27年8月31日までの間の原告商品の総出荷数は,(中略)に及んでいる。 ウ市場占有率平成25年6月から平成26年5月の間の実売データによれば,純正品を含むインクカートリッジ全体の市場において原告取扱商品の市場占有率は9.4%で第3位,非純正品のみの商品同士でのシェアは76.3%である。 平成25年8月から平成27年8月の間では,純正品を含むインクカートリッジ全体の市場において,(中略)である。 エ広告宣伝原告は,原告商品1の発売当初の平成21年度から積極的に新聞の全国紙,雑誌等への広告宣伝を開始し,平成24年度にはテレビコマーシャルを実施するに至った。原告取扱商品の広告宣伝費は,平成24年度以後も年度を重 原告商品1の発売当初の平成21年度から積極的に新聞の全国紙,雑誌等への広告宣伝を開始し,平成24年度にはテレビコマーシャルを実施するに至った。原告取扱商品の広告宣伝費は,平成24年度以後も年度を重ねるごとに増額しており,その詳細は,別紙出稿実績説明書のとおりである。 オ販促物の配布実績(ア) 対応表パネル本件原告商品を取り扱う店舗で展示され,取引者や需要者が接することになるプリンタ対応表パネルに,本件原告商品の型番と共に,原告各表示が使用されている(甲7の1及び2)。同対応表パネルの印刷会社への発注数は,(中略)であった。 (イ) 対応表カタログ本件原告商品を取り扱う店舗において,取引者や需要者が使用することになる対応表カタログ(甲8の1ないし7)に,本件原告商品の型番と共に,原告各表示が使用されている。同対応表カタログの印刷会社への発注数は,(中略)であった。 カ需要者の認識等原告商品1は,販売2年目の平成22年において(中略)である。原告商品2は,販売2年目の平成23年に(中略)である。原告商品3は,販売2年目の平成23 年に(中略)である。原告商品7も,販売2年目の平成23年の(中略)である。 以上によれば,平成21年ないしは22年頃から既に販売を開始していた原告商品1,2,3及び7の販売実績からすると,原告各表示は平成23年12月には周知性を獲得していたことが明らかである。 なお,本件原告商品は,原告が巨額の広告宣伝費や販促費を投じることで販売数量,売上高,市場占有率について傑出した実績を残してきた。その本件原告商品に継続的に使用されてきた原告各表示は,本件原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り,需要者・取引者の間にこの表示を見れば本件原告商品を指すものであ 残してきた。その本件原告商品に継続的に使用されてきた原告各表示は,本件原告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至り,需要者・取引者の間にこの表示を見れば本件原告商品を指すものであるという認識が定着している。原告各表示は,日本全国にテレビコマーシャルが放映された平成24年12月頃までには明らかに需要者の間に広く認識されていた。 (被告の主張)(1) 原告各表示の商品表示性ア包装容器の商品表示該当性商品表示は,特定の事業者の商品であることを示す表示,すなわち特定の事業者の営業に係る商品を他の者の営業に係る商品から識別する機能を有する表示である必要がある。 このような商品表示の主要なものは,商号や商標等であるところ,包装容器は,本来的には商品の包装としての機能・効用の発揮や商品の美感向上のために選択されるものであり,商品の出所を表示することを目的として選択されるものではない。 このため,包装容器が商品表示として認められるのは,包装の模様等や色彩が独自の特徴を有し,かつこれが長期間継続的かつ独占的に使用される等の限定的な場合に限られ,包装容器の色彩等がありふれたものからなる場合,商品表示該当性は否定される。 イインクカートリッジ市場の特徴純正品は,プリンタメーカー自身が製造販売するものであり,プリンタの説明書 等でも推奨されているから,需要者から見れば,対応するプリンタに確実に適合し,品質も保証されたものであると理解されており,ブランド力が高く,日本においては,純正品が極めて高いシェアを占めている。 一方,インクカートリッジは消耗品であることから,より低コストを求める需要者が,プリンタメーカー以外から販売されているリサイクル品や互換品を選択するもので,低価格であることに惹かれて購 めている。 一方,インクカートリッジは消耗品であることから,より低コストを求める需要者が,プリンタメーカー以外から販売されているリサイクル品や互換品を選択するもので,低価格であることに惹かれて購入しているのであって,リサイクル品の各メーカー間において,ブランド力にそれほどの差はなく,純正品の価格は高いが,リサイクル品はメーカーに関わらず同等の価格で販売されている。 ウインクカートリッジのパッケージデザイン(ア) 特定のインクジェットプリンタに適合するインクカートリッジの種類は基本的に1種類であり,間違えると,購入したものを使用することができないことから,需要者がインクカートリッジのパッケージを見る際に最も注目するのは,そのインクカートリッジの適合性の情報である。 適合性情報は,具体的には,①どのプリンタメーカー用であるか(キヤノン用,エプソン用など),②インクカートリッジの型番,特に,インクカートリッジにおける取引の実情として,型番末尾の数字等(エプソン用の場合2桁の数字,キヤノン用の場合3桁の数字等)を大きく表示し,需要者が型番を識別しやすいようにしている,③その商品が単色の製品であるか複数色のパック製品であるか,パック製品の場合は4色パックか6色パックかといったことが重要である。 (イ) インクカートリッジのメーカーの情報は,純正品か,またはリサイクル品や互換品かを識別するため,さらに,純正品でない複数あるメーカーの中から特定のメーカーを選択するためにも必要である。 メーカーの識別のために認識されるのは自他商品識別力を有する商標(スカイホースやエコリカ等)である。表示された商標を無視して他の表示により出所の識別がされる特別な事情があるのならばともかく,パッケージに商標がはっきりと表示してあれば,通常はその商標の表示により スカイホースやエコリカ等)である。表示された商標を無視して他の表示により出所の識別がされる特別な事情があるのならばともかく,パッケージに商標がはっきりと表示してあれば,通常はその商標の表示により出所が識別されるのが当然である。 インクカートリッジを選択するには,プリンタの適合性の情報を確認する必要があり,需要者はパッケージに表示された文字情報を必ず見るのだから,同じく文字を含む商標を確認することも当然である。類似しない商標が付された商品を,需要者が取り違えることはおよそ考えられないが,原告商品及び被告商品は,いずれも包装にそれぞれのメーカー名(商標)が付されている。 原告は,意図的に原告及び被告の商標について言及を避けているが,この様な恣意的な主張は失当である。原告は,被告の商品表示の画像を貼り付ける際,画像を加工して被告の商標を削除している。 (ウ) インクカートリッジの購入に際しては,インクカートリッジの適合性を判別するための情報を文字で確認する必要があるが,この情報自体には識別力はない。 識別力のない情報をいかに組み合わせてみたところで,その配置等の態様によって出所を示す識別力を有することは,よほど特殊な表示をしないかぎり,通常考えられない。そして,原告は,特徴点AないしEだけで商品表示足り得るように主張するが,いずれもありふれた表示にすぎず,原告各表示は,ありふれた表示の寄せ集めにすぎないから,識別力は有し得ない。 また,エプソン用のインクカートリッジの場合,純正品のパッケージが青を基調としている(乙5)ため,リサイクル品においても,原告を含む各社は,青を基調としたデザインを取り入れていることが多い(乙1,乙6,甲56)。したがって,青を基調としたインクカートリッジのパッケージデザインを需要者が見た場 ,リサイクル品においても,原告を含む各社は,青を基調としたデザインを取り入れていることが多い(乙1,乙6,甲56)。したがって,青を基調としたインクカートリッジのパッケージデザインを需要者が見た場合に,エプソンの純正品またはエプソン用のインクカートリッジであると認識することはあっても,それ以上の細かい点は文字情報を見るのが当然であって,パッケージデザインで出所を識別することはない。原告自身,エプソン以外のインクジェットプリンタのメーカーのリサイクル品を販売する際には,この様なメーカーのパッケージカラー(例えばキヤノン用のリサイクルインクカートリッジについてはキヤノンのカラーの赤色)を使用しており,パッケージデザインに一貫性がない。 以上を考慮すれば,インクカートリッジのパッケージにおいて,自他商品識別力 を有するのは,商標の表示である。原告は,パッケージデザインから商標の表示を外したものを「原告表示」や「被告表示」と称しているが,これらの表示のみで,需要者が特定のメーカーのインクカートリッジであると認識することはない。 エ原告が販売する商品のパッケージデザインに統一性がないこと原告は,キヤノン用,エプソン用等プリンタメーカーごとのインクカートリッジを販売しており,また,単色や複数色のパッケージなど,多種の商品を販売しているが,これらの商品におけるパッケージデザインはまちまちである(甲7の1及び2)。 また,原告は,平成21年6月以降,一貫して本件原告商品に原告各表示を使用してきたと主張するが,原告の示す原告商品1(甲9)についても,異なる表示を用いて販売されている(乙8)。 原告取扱商品は,種類によってパッケージデザインがまちまちであり,需要者から見て原告各表示が出所表示としては認識され得ない。ま 商品1(甲9)についても,異なる表示を用いて販売されている(乙8)。 原告取扱商品は,種類によってパッケージデザインがまちまちであり,需要者から見て原告各表示が出所表示としては認識され得ない。また,原告が原告各表示を用いていると主張する本件原告商品においてもそのパッケージデザインは統一されていない。 オ以上からすると,原告各表示は商品表示たりえず,本件原告商品のパッケージが商品表示として機能するのは,原告の商標及び原告の社名の表示に限られる。 (2) 原告各表示の周知性についてありふれた表示にすぎない原告各表示が,需要者の間に広く認識されているとはいえない。 ア原告主張の使用実績(ア) 出荷数量及び市場占有率について原告が示す本件原告商品の出荷数量は,原告自身が集計したもので信用できない。 市場占有率についても,限られたデータを前提にするもので信用できない。 本件原告商品のシェアが(中略)というのは疑問であるが,仮にこれがある程度正しいとしても,純正品が約80%のシェアを占めている市場において,本件原告商 品のシェアは,純正品に比べてはるかに小さいことに変わりはない。 (イ) 広告宣伝及び販促物の配布について新聞広告やテレビコマーシャルで一貫して強調されているのは,原告の社名である「エコリカ」であるから,これらを見た需要者は,「エコリカ」という社名はある程度記憶に残るかもしれないが,原告各表示を有するパッケージが需要者に認識されることはない。 原告が示す広告宣伝や販促物の配布は,本件原告商品についてのみ行われたものではない。販促物においても原告各表示を有するインクカートリッジはごく小さく表示されるのみであり,一方で,表紙等にはキヤノン用やブラザー用のインクカートリッジや,エプソン用で ついてのみ行われたものではない。販促物においても原告各表示を有するインクカートリッジはごく小さく表示されるのみであり,一方で,表紙等にはキヤノン用やブラザー用のインクカートリッジや,エプソン用でも原告各表示が見られない別パッケージのインクカートリッジが多数掲載されている(甲7,甲8)。 雑誌や新聞の広告においても,原告各表示を有するインクカートリッジはごく小さく表示され,原告各表示が見られない別パッケージのインクカートリッジが多数掲載されている一方で,原告の商標や原告の社名である「エコリカ」の文字は,目立つように配置されている(甲19)。 イこのように,原告による広告宣伝によって,原告の商標や原告の社名である「エコリカ」が周知となることはあっても,本件原告商品のパッケージデザインが周知となることはない。 そもそも,原告各表示は,パッケージデザインから商標の表示などを除いたありふれた表示の寄せ集めにすぎないのであるから,このようなそれ自体が識別力を有しない文字や色彩のありふれた組み合わせの表示について識別力が生じるためには,極めて高い著名性が必要であるところ,原告商品1はそれほどの著名性を獲得しているわけでもない。本件原告商品の売上げが大きいとすれば,それは本件原告商品が対応するエプソンのプリンタのマーケットシェアが大きいため,これに付随して本件原告商品も売れたということや,「エコリカ」の商標を強力に宣伝広告した結果であり,原告各表示があるからではない。 2 争点2(被告各表示は原告各表示に類似するか)について(原告の主張)被告各表示は,原告各表示の特徴点をすべて備えており,原告各表示と類似のものである。 (1) 被告各表示ア被告各表示の特徴点は,以下のaないしeのとおりである。 a (原告の主張)被告各表示は,原告各表示の特徴点をすべて備えており,原告各表示と類似のものである。 (1) 被告各表示ア被告各表示の特徴点は,以下のaないしeのとおりである。 a パッケージの中央よりもやや左寄りにシフトさせて角が丸みを帯びた四角形状の背景部を下75%程度はブルー色に,上25%程度はグリーン色に塗り分けて配色していること。 b 前記ブルー色の部分の領域には,左上に対象純正品型番の2桁の数字を大きなポイントの文字で表示し,その右横には「エプソン用」「~互換」の文字を白抜きで表示すると共に当該商品の型番を表示していること。 c 特徴点bの文字列の下部には4色パックの場合は左からブラック,シアン,マゼンタ,イエローの順に,6色パックの場合は前記4色に続けて左からライトシアン,ライトマゼンタの順にインクカートリッジを斜視方向から撮影した写真を配置していること。 d 前記背景部のグリーン色の部分の領域には「リサイクルインクカートリッジ」の白抜きの文字を含む商品の名称が表示されていること。 e 左斜め下方向及び右斜め下方向に延びて先端がV字状にカットされたリボンを有し,周縁部が鋸歯状とされた円形のバッジをモチーフにしたアイコンを,パッケージの右辺側に表示していること。 イ被告各表示は,純正品型番を示す2桁の数字の内容が異なる点を除けばそれぞれの基本構成は同じである。また,被告各表示は別紙被告表示目録のとおり4面からなるが,各面の表示は,①ケースの各面のサイズに合わせるために縦・横の比率が原告各表示と若干相違している点,②右端に現れるバッジ (特徴点e)の高さ位置が異なる点を除けば,基本構成は同じである。 (2) 原告各表示と被告各表示との対比原告各表示の特徴点AないしEと,被告 点,②右端に現れるバッジ (特徴点e)の高さ位置が異なる点を除けば,基本構成は同じである。 (2) 原告各表示と被告各表示との対比原告各表示の特徴点AないしEと,被告各表示の特徴点aないしeを対比すると,いずれの組合せでも差異はない。 なお,特徴点Bとbにつき,対象型番の2桁の数字は,色彩こそ,原告各表示が白であるのに対し,被告各表示は黄色で異なっているが,対象型番が配置される位置がブルー色の領域の左上である点や,ブルー色の領域に対する文字のサイズの比率などが極めて酷似している点の印象が強いため,白から黄色へというありふれた色彩の変更は表示を見る者の印象に残らない。 そのほか被告商品1については,パッケージの縦,横,高さのサイズまでが原告商品1と同一となっているし, 被告各商品の包装には「本製品の売り上げの一部を,自然保護団体である公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J)へ寄付いたします。」と,その商品を購入するだけで簡単に環境保護に貢献できることを需要者にアピールする説明文が存在するが,この説明文も,原告が原告商品のパッケージに使用している「エコリカは製品の売上げ1個につき1円を世界約100ヶ国で活動している地球環境保全団体WWFに寄付しております。」との説明文(甲9:左側面)を見た上で原告の手法を真似たと考えざるを得ない。 被告がインクカートリッジの市場において最も売れ筋であった本件原告商品に狙いを定めて意図的に類似の商品表示を採択し,不正競争行為を行ったことが強く推認される。 (被告の主張)(1) 本件原告商品のパッケージデザインと被告各商品のパッケージデザインの対比原告は,本件原告商品や被告各商品のパッケージデザインから,商品識別上重要な商標等を除いたものを「原告表示」や「被 (1) 本件原告商品のパッケージデザインと被告各商品のパッケージデザインの対比原告は,本件原告商品や被告各商品のパッケージデザインから,商品識別上重要な商標等を除いたものを「原告表示」や「被告表示」と称し,これらのみで商品表示として機能することを前提とした主張をしている。 しかし,需要者はパッケージの全体を見て商品を選択するのであり,原告が主張 する「原告表示」や「被告表示」の部分だけを見て商品を選択することはあり得ない。需要者が実際に目にするのは,パッケージの正面,平面,左右側面,背面の各全体表示である(底面については,通常,需要者があえて見ることは少ないと考えられるので,ここでは除外する。)。 パッケージの各面について対比すると,需要者が一番目にするパッケージ正面及び平面において,総合的に見て本件原告商品と被告各商品の印象差は大きく,需要者が混同するおそれはない。また,商品を手に取った需要者は,パッケージ左右側面や背面も確認することがあるが,これら各面についても,本件原告商品と被告各商品には大きな表示上の差異があるし,被告各商品の左右側面には需要者が十分に認識できる大きさで被告の商標が表示され,背面には被告の社名が表示されることによって,出所表示がなされているので,なおさら被告各商品を本件原告商品であると需要者が混同することは考えられない。 (2) 以上のように,本件原告商品と被告各商品のパッケージ表示は,需要者が注目する点を中心とした総合的な検討によれば類似しないことは明らかである。 3 争点3(混同を生じるおそれの有無)について(原告の主張)本件原告商品や被告各商品のようなインクカートリッジは,日常的に,実物が店舗で陳列販売され,あるいはインターネット上のサイト等に掲載して販売され,需 生じるおそれの有無)について(原告の主張)本件原告商品や被告各商品のようなインクカートリッジは,日常的に,実物が店舗で陳列販売され,あるいはインターネット上のサイト等に掲載して販売され,需要者は,商品の包装に使用されている商品表示の外観でどの商品であるかを瞬時に識別する。しかも,インクカートリッジは,低廉な消耗品であることから,需要者において会社名などの表示に厳密な注意を払わずに購入されることが通常である。 そのようなインクカートリッジにおいて,極めて共通点の多い類似の商品表示が被告の商品に使用された場合,商品表示を手掛かりに商品を購入するユーザーが,原告の商品であるかのように商品の出所を誤認して混同するおそれがあることは取引の経験則上明らかである。 以上の事情からすれば,被告各表示を使用している被告各商品は,需要者におい て,原告の商品ラインナップの1つである,あるいは,原告と何らかの関係を有する者により発売されているものであるなど,その商品の出所を混同するおそれがある。 (被告の主張)インクジェットプリンタは家庭で使われる割合が比較的高く,6色パックの場合,インクカートリッジはリサイクル品で4000円前後,純正品で6000円近くするから,家庭で使用される消耗品としては,決して安価なものとはいえないから,量販店等の店頭で販売される多数種類のインクカートリッジを需要者が選択するに当たっては,プリンタの適合性の情報を始めとして,パッケージに表示された情報をよく確認して購入するのが通常である。 そして原告商品1と被告商品1,原告商品2と被告商品2をそれぞれ対比すると,いずれも互いに類似しないから,これらを需要者が混同することはない。 4 争点4(原告の損害額)について(原告の主張)(1) 告商品1と被告商品1,原告商品2と被告商品2をそれぞれ対比すると,いずれも互いに類似しないから,これらを需要者が混同することはない。 4 争点4(原告の損害額)について(原告の主張)(1) 被告は,他に選択肢はあるにもかかわらず,原告各表示に類似する被告各表示を選択して被告各商品を販売しているのであるから,故意又は少なくとも過失により,原告の営業上の利益を侵害し原告に損害を与えたことも明らかである。 (2) 不正競争防止法5条2項の適用による損害ア被告商品1の販売による損害被告商品1の平成27年10月までの販売数量は5131個を下らないところ,被告が家電量販店に納入する商社に販売する価格は2388円である。 また,被告商品1の原価は688円を上回ることはないから,被告商品1を1個販売することによる被告の利益の額は1700円(仕切価格2388円-原価688円)である。 したがって,被告が,被告商品1を販売したことによって受けた利益の額は,872万2700円(1700円×5131個=872万2700円)である。 イ被告商品2の販売による損害被告商品2の現在に至るまでの販売数量は,913個を下らないところ,被告が家電量販店に納入する商社に販売する価格は1788円である。 また,被告商品2の原価は,488円を上回ることはないから,被告商品2を1個販売することによる被告の利益の額1300円(仕切価格1788円-原価488円)である。 したがって,被告が,被告商品2を販売したことによって受けた利益の額は,118万6900円(1300円×913個=118万6900円)である。 ウ合計額被告各商品の販売により被告が受けた得た利益の額は,合計で990万9600円であるから,不正競争防止法5条2項によ 18万6900円(1300円×913個=118万6900円)である。 ウ合計額被告各商品の販売により被告が受けた得た利益の額は,合計で990万9600円であるから,不正競争防止法5条2項により,同額が原告の受けた損害の額と推定される。 (3) 信用毀損による損害被告各商品は,原告商品に比べて印刷品質が劣っているから,被告各商品を原告各商品と混同し誤って購入したユーザーの中には,実際は被告各商品を使用しているのに,原告各商品の印刷品質が良くないと誤解しているケースもあると推測される。 そのようなユーザーは,今後,原告各商品の購入を控えるのが通常と考えられ,また周囲の人に原告各商品は品質が良くないと伝える可能性もあり。これにより,原告各商品の品質に対する信用は毀損される。 このような被告の行為により原告が受けた信用毀損による損害の額は,100万円を下らない。 (4) 弁護士費用原告は,本件訴訟を提起するために弁護士に委任せざるを得ず,その費用は,上記財産的損害及び信用毀損による損害の合計額の1割を下らないから,109万0960円を下らない。 (5) 合計額原告が受けた損害の額は,合計で1200万560円(990万9600円+100万円+109万0960円=1200万0560円)を下らない。 (被告の主張)全て否認ないし争う。 5 争点5(先使用の抗弁の成否)について(被告の主張)被告は,平成24年3月から被告各表示を不正の目的でなく使用しており,その時点では原告各表示は周知となっていなかったから,不正競争防止法19条1項3号の規定により,同法2条1項1号の行為について差止及び損害賠償の規定は適用されない。 なお,被告商品2の包装は,被告商品1の包装と同時期に作成していたものの, ったから,不正競争防止法19条1項3号の規定により,同法2条1項1号の行為について差止及び損害賠償の規定は適用されない。 なお,被告商品2の包装は,被告商品1の包装と同時期に作成していたものの,インクの品質を確保するため,販売開始は被告商品1よりも遅い平成25年2月22日であるが,被告商品2は,原告各表示が周知となる前から被告が使用していた被告表示1を,商品の内容に合わせて表示内容を変更したにすぎない表示であり,被告表示1の特徴を全て備えている。 したがって,被告には,被告表示1の使用について,同法19条1項3号適用による先使用の抗弁が認められる。 そして,被告表示2は,商品の内容に合わせて被告表示1から表示内容を変更した表示であって,被告表示1の特徴を全て備えているので,被告表示2についても,被告には先使用の抗弁が認められる。 (原告の主張)原告各表示は,被告各商品が販売を開始したとする平成24年3月より前の平成23年12月の時点で周知となっていたから,不正競争防止法19条1項3号の先使用の抗弁が適用される余地はない。 また,被告は,当初のパッケージ案を受け取った段階で他社のデザインと抵触し ないか確認する調査を行うのが通常であるのに,これをせず原告各表示に類似した商品表示をあえて選択したものであるから,被告には不正の意図があった,すなわち同号の「不正の目的でなく使用し」との要件を満たさないから,この点で,先使用の抗弁が適用される余地はない。 また,仮に被告商品1に先使用の抗弁が認められることがあったとしても,被告商品1に基づく先使用の抗弁は,被告商品2には及ばない。 6 争点6(本件掲載文は被告の営業上の信用を害する虚偽の事実か)について(被告の主張)(1) 被告と原告とは競争関係にあるとこ ,被告商品1に基づく先使用の抗弁は,被告商品2には及ばない。 6 争点6(本件掲載文は被告の営業上の信用を害する虚偽の事実か)について(被告の主張)(1) 被告と原告とは競争関係にあるところ,上記争点1ないし3の各(被告の主張)のとおり,被告が被告各表示を被告各商品に使用する行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当しないから,被告が同号の不正競争をした趣旨に理解される本件掲載文は,事実に反する虚偽のものであり,しかも被告の営業上の信用を害するから,原告による本件掲載文のホームページへの掲載行為は同項15号の不正競争に該当する。 本件掲載文が虚偽の事実であることにつき,問題となる記載について説明すると以下のとおりである。 ア第3文及び原告商品の画像(ア) その文章の下に原告商品1,2の画像を掲載している第3文には,その文章に続いて「パッケージのデザインは,エコリカ製品を表示するものとして,周知になっていました。」と原告各表示が周知になっていたとの記載があるが,その事実が「虚偽の事実」であることは上記争点1(被告の主張)のとおりである。 (イ) 原告は,「周知」との結論を得るためには裁判所の審理を経なければ公的判断が下されないことは当然であり,「周知」との説明は原告の意見の表明であると理解される旨主張するが,当事者の意見であるから「虚偽の事実」に該当しないかのような原告の主張は失当である。 イ第4文及び被告商品の画像 その文章の下に被告各商品を掲載した第4文には,「エコリカ製品のパッケージデザインと極めて似た」製品の販売を平成26年頃から開始したとの記載がある。 しかし,原告各表示と被告各表示が似ていないことは上記争点3(被告の主張)のとおりであるから,上記記載は「虚偽の事実」である ザインと極めて似た」製品の販売を平成26年頃から開始したとの記載がある。 しかし,原告各表示と被告各表示が似ていないことは上記争点3(被告の主張)のとおりであるから,上記記載は「虚偽の事実」である。また,製品の販売時期についても事実と異なる。 ウ第5文第5文中,「消費者が上記スカイホース製品をエコリカ製品と混同するおそれがある」という部分は虚偽である。 エ第6文第6文中,「小売店においてエコリカ製品のパッケージと酷似する上記スカイホース製品が現在も販売されており,ユーザーが取り違えて購入するおそれがある」,「エコリカが日々受けている損害」との部分は「虚偽の事実」に該当する(本訴において原告に損害が生じていないことは明白である。)。 (2) 原告が被告に対して訴訟を提起した旨告知するのであれば,訴え提起の事実だけを記載すれば十分であるはずであるのに,本件掲載文では,本訴でいう原告各表示が周知である一方,被告が原告からの使用中止の申し入れにもかかわらず,これと類似する被告各表示を付した被告各商品の販売を継続している旨,原告商品1,2と被告商品1,2の画像も添付して詳細に説明している。 その一方,被告が,原告に対し,本訴提起前に。原告各表示は商品表示に該当しないこと,原告各表示と被告各表示とは非類似であることや先使用の抗弁が成立すること等を主張していたにもかかわらず,このような被告の主張について一切言及がなく,原告による主張のみを一方的かつ詳細に記載されているため,本件掲載文に接した需要者らは,被告が原告の使用中止等の申入れに対して特に理由を付さずに使用等を継続しているという印象,ひいては被告が他社の知的財産権を尊重せず,また,法令を遵守しないような企業であるとの印象を持ちかねない。 本件掲載文は,本訴提起の告知ではな して特に理由を付さずに使用等を継続しているという印象,ひいては被告が他社の知的財産権を尊重せず,また,法令を遵守しないような企業であるとの印象を持ちかねない。 本件掲載文は,本訴提起の告知ではなく,被告の営業上の信用を害することを企 図したものであるといえ,被告の営業上の信用を害する虚偽の事実であることは明らかである。 (原告の主張)(1) 本件掲載文は,被告に対する訴訟の提起に関し,当事者の一方として,提訴に至った経緯と本訴の請求の趣旨の内容を社会通念上必要と認められる範囲内で説明したものであり,読み手は,原告が被告を相手方として不正競争防止法に基づく訴訟を提起したという事実を知り,これから裁判所で審理が始まるという事実を理解するが,いずれの点も客観的に正しい真実を知らせているもので,以下に順に説明するとおり,本件掲載文には,被告の営業上の信用を害する虚偽の事実は含まれない。 ア本件掲載文の表題本件掲載文は冒頭に,「スカイホースジャパン株式会社に対する提訴ついて」との表題があり,以下の文面が反訴原告に対する訴訟提起に関する記事であることを冒頭の表題において明記している。これにより,本件掲載文を読んだ読み手は,裁判所の判決,決定などの公的判断を知らせる記事ではないことを理解し,また,被告の商品の取り扱いを躊躇させるたぐいのいわゆる警告文でもないことを理解する。 イ第1文この文章により,以下の記事は,原告の取引先やユーザーに対するお知らせであることが明確になっている。 ウ第2文この文章により読み手は,原告が被告を相手方とする訴訟を提起したという本件掲載文の趣旨を明確に理解する。第2文について,虚偽の事実が含まれると判断される余地は全くない。 エ第3文第3文では,原告が本件原告商品を は,原告が被告を相手方とする訴訟を提起したという本件掲載文の趣旨を明確に理解する。第2文について,虚偽の事実が含まれると判断される余地は全くない。 エ第3文第3文では,原告が本件原告商品を発売開始した時期を正確に伝えており,本訴で主張している原告各表示の周知性について,読み手は,当事者の一方である原告 の単なる意見の表明にすぎないと理解する。そもそも第3文は,原告が原告自身のことを説明している文章で,これが被告の営業上の信用を毀損することはあり得ない。 オ第4文被告は,提訴前の回答書(甲49)において,被告各商品の販売開始時期を「平成22年4月」と説明していたが,この被告の説明は,原告が行った調査結果と符合せず,事実かどうか極めて疑わしいものであったので,その販売開始時期を,原告において調査した被告の商品の販売実績のデータから確認される平成26年と説明した。 したがって,「平成26年頃から」と説明していた点につき,原告の責任ではない合理的な理由が存在するし,その余の記載についても,被告の営業上の信用を害する虚偽の事実が含まれることは一切ない。 また「極めて似た」との記載も,当事者の一方として「極めて似た」と説明することは社会通念上何ら問題ない。訴訟上で「類似」との結論が得られるかについては裁判所の審理を経なければ公的判断が下されないことはいうまでもないから,読み手は,原告の単なる意見の表明と理解するのであり,この部分を裁判所が「類似」という判断を既に下していると誤解されることはあり得ない。 カ第5文第5文は,原告が被告を相手方とする訴訟を提起したという事実の告知に付随し,当事者の一方として,訴訟提起に至るまでの経緯を説明したもので,読み手の理解も同様であり,すべて正確な事実である。 被告 第5文は,原告が被告を相手方とする訴訟を提起したという事実の告知に付随し,当事者の一方として,訴訟提起に至るまでの経緯を説明したもので,読み手の理解も同様であり,すべて正確な事実である。 被告は,第5文に,被告の回答書(甲49)の主張が記載されていないことを問題にしているが,相手方の主張までは詳しく記載しないのが通常であるし,訴訟外での相手方の主張を説明すれば,訴訟上の正式な答弁との食い違いがあると,かえってその記事を読んだ読み手に誤解を与え混乱を招くだけであるから,一般に相手方の主張まで詳しく記載しないとされていることには合理性がある。 キ第6文読み手は,本件掲載文の表題と第1文から第5文を前提にしており,第6文のみを独立して認識することはなく,この記事が,原告が被告を相手とする訴訟を提起したという趣旨の記事であることを明確に理解する。原告が被告を相手方とする訴訟を提起したという事実の告知に付随し,当事者の一方として,提訴に至った理由を説明したものであり,読み手はこの部分は原告の意見の表明と明確に理解する。 このことは末尾が「…するため,提訴に至ったものです。」という表現で締めくくられていることからも明らかである。 そして,原告が主張している原告各表示の周知性,被告各表示との類似性及び混同性は証拠に裏付けされた理由があり,本訴において侵害が認定されれば,不正競争防止法5条2項の規定に基づき,被告が被告商品の販売により得た利益は原告の損害額と推定されることもまた,法律上の理由があるから,当事者の一方として,「日々受けている損害」という表現を用いることも社会通念上何ら問題はない。 ク第7文第7文は,第1文と整合しており,この文面により,以上に説明した記事が,原告の取引先やユーザーに対するお知らせで 日々受けている損害」という表現を用いることも社会通念上何ら問題はない。 ク第7文第7文は,第1文と整合しており,この文面により,以上に説明した記事が,原告の取引先やユーザーに対するお知らせであることが明確になっている。 被告は,被告「が他社の知的財産権を尊重せず,また,法令を遵守しないような企業であるとの印象をもちかねない。」と主張しているが,読み手がそのような印象を持つことはあり得ない。原告の企業姿勢を説明している文章であり,被告の企業姿勢にについて何らの言及もしていない。 したがって,被告の営業上の信用を害する虚偽の事実は一切含まない。 (2) 結論以上のとおり,本件掲載文の記載内容を1文ずつ精査すれば,これを読んだ読み手が受け止める事実の中に,被告の営業上の信用を害する虚偽の事実が含まれないことは明らかである。 7 争点7(本件掲載文の抹消請求及び謝罪広告掲載請求)について (被告の主張)原告による虚偽事実の告知行為により毀損された被告の信用の回復措置として,原告のホームページから本件掲載文の電磁的記録を削除する必要性,及び原告のホームページ上に,別紙謝罪文目録のとおりの謝罪文を掲載する必要がある。 (原告の主張)被告の主張は争う。 8 争点8(被告の損害額)について(被告の主張)原告による虚偽事実の告知行為によって,被告の営業上の信用が害され,無形損害が生じたが,その損害額は500万円を下らない。 (原告の主張)被告の主張は否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(原告各表示は原告の商品表示として周知か)について(1) 原告は,本件原告商品の包装(パッケージ)にある原告各表示が他の同種商品には見られない特徴を有するものであり,平成23年12月には原告の商品 原告各表示は原告の商品表示として周知か)について(1) 原告は,本件原告商品の包装(パッケージ)にある原告各表示が他の同種商品には見られない特徴を有するものであり,平成23年12月には原告の商品表示として周知性を獲得した旨主張する。 ところで,不正競争防止法2条1項1号の商品等表示には,括弧書きとして「商品の・・・包装」が例示されているが,商品の包装は本来商品の出所を表示する目的を有するものではないから,商品の包装が同号にいう商品等表示であるといえるためには,商品の包装が外観上他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており,かつ,その包装が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は短期間であっても強力な宣伝広告を伴って使用されることなどにより,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されるようになっていることを要すると解される。 (2) 後掲各証拠(以下,枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合はす べての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 アインクカートリッジ市場インクジェットプリンタ市場においては,エプソン製品及びキヤノン製品が各40%以上のシェアを占める二大勢力である。インクカートリッジは,各プリンタメーカーにより指定を受けた純正品が市場の大勢を占めており,原告商品1及び2に対応するインクカートリッジについても,75%以上(有力家電量販店における販売をベースとして。)を純正品であるエプソン製が占めている。(乙3,甲38,甲39)イインクカートリッジのパッケージデザインインクカートリッジのパッケージには,エプソン製であれば青色,キヤノン製であれば赤といったように,プリンタメーカー毎に異なるイメージカラ 8,甲39)イインクカートリッジのパッケージデザインインクカートリッジのパッケージには,エプソン製であれば青色,キヤノン製であれば赤といったように,プリンタメーカー毎に異なるイメージカラーが用いられており,一見してプリンタメーカーが判別できるようになっている。そして,リサイクルインクカートリッジにおいても,そのパッケージには,対応するプリンタメーカーのイメージカラーが用いられている。(乙2の6,乙5ないし乙7,乙23,乙24)ウ原告各表示原告各表示は,別紙原告表示目録のとおりであり,原告商品1,2の包装箱を置いた状態での各平面(上面)及び正面に用いられているデザインの一部である。(甲9,10)原告商品1,2の平面には,原告各表示の右側白地部分に原告各表示上部の緑色系と同色の四角形の中に原告の商号の一部であり,原告の販売する商品のブランド名として用いられている「ecorica」(エコリカ)が白抜きされたブランドマーク(以下「エコリカマーク」という。)が表示されている。そして,原告商品1の平面及び正面と原告商品2の正面には,原告各表示だけでなく,右側白地部分に明るい緑色系の長方形が傾いた中に白抜きの文字が記載されたマーク,加えてリサイクルマークも(原告商品2の平面を除く。)記載されている。(甲9,甲10) 原告各表示は,パッケージのやや左寄りにシフトさせて角が丸みを帯びた四角状の背景部の下75ないし80%程度をエプソン製のイメージカラーである青色を,残りの上部に緑色系を用いており,緑色の中には「エコリカリサイクルインクカートリッジ」との文字が白抜きされている。そして,青色の部分には,上部左側に,対応するエプソン製インクジェットプリンタ用インクカートリッジの製品番号の下二桁の数字である「50」 カリサイクルインクカートリッジ」との文字が白抜きされている。そして,青色の部分には,上部左側に,対応するエプソン製インクジェットプリンタ用インクカートリッジの製品番号の下二桁の数字である「50」あるいは「46」が大きな文字で,その横には「エプソン用」との文字と,互換するインクカートリッジの製品番号,その下に当該商品の製品番号が,いずれも白抜きで記載されている。青色部分下部には,6色あるいは4色の色見本として並んだ縦長の長方形とともに対応する色のインクカートリッジの写真が並んで記載されている(原告表示2イについては写真がない。)。そして,右側の白色部分には,「業界初!!」との白色文字が記載された黄金色の周辺部が鋸歯状の円形のバッジにV字にカットされたリボン2本が付されたアイコンが記載されている。(甲9,甲10)エ原告の販売する商品のパッケージ原告は,原告商品1,2として,原告各表示とは異なるパッケージデザインのもの(特徴点Eのバッジがないものや,全く異なる包装のもの。)も販売しており(甲13,甲14,乙1,乙8),また,他のエプソン製プリンタ用の商品には,原告各表示と異なるパッケージデザインの商品を従前から販売しており,さらに,キヤノン製プリンタ用の商品には,キヤノン製のイメージカラーである赤色を用いた異なるパッケージデザインの商品を多数販売している。(甲7の1及び2,甲8の1ないし8)オ原告による本件原告商品の宣伝広告,販売状況(ア) 原告は,遅くとも平成21年11月頃以降,原告各表示を用いた本件原告商品の販売を行っており,同年12月以降,新聞及び雑誌への広告を始め,別紙出稿実績説明書のとおり,毎年12月から1月の初頭にかけて全国紙を中心に新聞広告を掲載し,平成24年度以降15秒スポットのテレビコマーシャルを11月か 同年12月以降,新聞及び雑誌への広告を始め,別紙出稿実績説明書のとおり,毎年12月から1月の初頭にかけて全国紙を中心に新聞広告を掲載し,平成24年度以降15秒スポットのテレビコマーシャルを11月から1 2月にかけて流すなどの宣伝広告を行った。(甲8の1ないし8,甲18,甲21,甲23,甲25,甲30,甲32)(イ) 新聞及び雑誌の広告には,いずれも左上にエコリカマークが記載されている(ただし,背景が濃い色の場合,白色の四角系に文字が抜かれたものとなっている。)。(甲19,甲22,甲24,甲29,甲31,甲35,甲62,甲63,甲68の2,甲69,甲73,甲74,甲79ないし甲85,甲87,甲88)(ウ) 平成21年度の新聞広告には緑色で中央部分に「繰り返し使うインクカートリッジ。エコリカのエコ」との文字,下部には「一番売れているリサイクルインクカートリッジ-エコリカ」との文字,小さな原告商品1を含む原告の販売する商品の写真が多数掲載されたもの(甲19,甲68の2,甲74,甲79,甲80),平成22年度の新聞広告には緑色の背景に右部に大きく「年賀状にエコリカ」との文字,中央部や下部に「一番売れているリサイクルインクカートリッジ-エコリカ」との文字,下部には原告商品2,7を含む原告の販売する商品の写真が多数掲載されたもの(甲22,甲84,甲85),平成23年度の新聞広告には黄色の背景の右側に「今年の年賀状はエコリカスーパーボーナスパックで決まり」との大きな文字とともに原告各表示と異なるパッケージの写真を大きく掲載し,その横に通常のインクセット品として小さく原告商品1の写真を掲載しているもの(甲24)等があった。平成24年以降は,テレビコマーシャルと同様,有名アナウンサーを用い,中心付近に「年賀状印刷はこれで決ま 横に通常のインクセット品として小さく原告商品1の写真を掲載しているもの(甲24)等があった。平成24年以降は,テレビコマーシャルと同様,有名アナウンサーを用い,中心付近に「年賀状印刷はこれで決まり!エコリカプラスワンンパック」といった文字等とその下に原告商品1と原告のキヤノン用の商品3つの写真が掲載されていた。(甲29,甲31)(エ) また,平成21年度の雑誌の広告には,中央に大きく,「よく売れました一番エコリカ」との文字,「一番売れているリサイクルインクカートリッジ『エコリカ』」との文字や原告商品1を含む原告の販売する商品の写真が多数掲載されているもの(甲73)があり,平成22年度の雑誌の広告には,大きく「シェアNo.1」,「一番売れているリサイクルインクカートリッジ」,「エコリカリサイクルインクカート リッジ」の文字等とともに原告商品1及び2を含む多数の商品写真が掲載されているもの(甲82),インクカートリッジを掃除しているような写真を上部に,「リユース」の大きな文字を中央に配し,「一番売れているリサイクルインクカートリッジ-エコリカ」の文字等とともに原告商品1及び2を含む多数の商品写真が掲載されているもの(甲83,甲88)などがあった。 平成23年度の雑誌の広告には,有名アナウンサーを用い,原告商品1についても,原告表示1とは異なる,同人の顔写真入りの包装であるスーパーボーナスパックの写真を掲載していた。(甲62,甲63,甲66)(オ) 15秒スポットのテレビコマーシャルの中には,本件原告商品の正面が映し出される場面,本件原告商品が原告の販売する他の商品と共に販売のために多数積み置かれている場面,買い物かごに他の商品と共に無造作に入れられて原告各表示の一部が映し出されている場面等が見られるが,いずれ される場面,本件原告商品が原告の販売する他の商品と共に販売のために多数積み置かれている場面,買い物かごに他の商品と共に無造作に入れられて原告各表示の一部が映し出されている場面等が見られるが,いずれの場面もわずかであり,最後の場面に,エコリカマークと「エコで安くて高品質」,「エコリカ」という文字が表示される。(甲26)(カ) また,原告は,その販売するリサイクルインクの販促のためのプリンタ対応表パネル及びカタログを相当数配布したが,その中には,原告各表示が記載された包装の本件原告商品が掲載されていたが,その他の商品も多数掲載されていた。(甲7の1及び2,甲8の1ないし8,甲36,甲37)(3) 検討ア上記(2)認定の各事実を前提に,原告各表示の周知商品表示性を検討してみると,まず,原告の主張する特徴点AないしEを総合しても,原告各表示が顕著な特徴を有するということはできないというべきである。 すなわち,特徴点Aは,パッケージの配色であるところ,その色はエプソン製プリンタ用のインクカートリッジのイメージカラーである青色が大部分に用いられ,上部に用いられている緑色系も前記のエコリカマークに用いられている色と同色であるもので,はっきりした色が2色用いられているパッケージも他の商品に見られ ること(乙7)等からすれば,当該配色自体は一つのデザインであるといえるものの,特に独自性があるものではない。また,特徴点Bは,対応プリンタメーカーと互換品の型番,さらには商品の型番といった必須の事項を白抜きにしたよく用いられる表示方法で記載されているだけのものである。また,特徴点Cは,何色のパックかを示す表示であり,他のプリンタメーカーのパッケージにも色を並べて表示しているものがあり(プレジール乙2の5の3枚目,キヤノン純 方法で記載されているだけのものである。また,特徴点Cは,何色のパックかを示す表示であり,他のプリンタメーカーのパッケージにも色を並べて表示しているものがあり(プレジール乙2の5の3枚目,キヤノン純正品乙2の6の2枚目),また,インクカートリッジを斜め方向から撮影した写真を使用しているものもあること(乙5の2枚目,乙6)からすれば,一般的な表現であるといえる。特徴点Aの緑色系の部分にリサイクルインクカートリッジという記載があるという特徴点Dは,単に商品の一般的な名称を記載しただけである。そして,特徴点Eとして挙げるバッジも,リボンは付いていないが,同様の表示はエプソン純正品にも見られる(乙5)。 このように,原告の主張する特徴点AないしEは,他の商品にもみられるデザイン上の工夫を,配置や色彩を変えて組み合わせたものであり,全体としてみて原告各表示それ自体は顕著な特徴を有するものではないといえる。 イまた,原告各表示の周知性について検討してみても,これが需要者の間において周知になっていたとは認められないというべきである。 すなわち,原告各表示を用いた本件原告商品の一部は,平成21年11月頃には販売されていたが,その広告は,平成23年の年末までは,全国紙に掲載されていたとはいえインクカートリッジの需要期である12月から1月初頭にかけての新聞の広告や,単発の雑誌の広告に限られていたものである。そして,その広告においても,前記のとおり,本件原告商品は原告が販売する多くの商品のごく一部として写真が小さく掲載されているだけであって,このような広告方法では,原告各表示が原告の商品であることを認識させ得るほどのものとなったとは到底認められない。その後,本件原告商品の広告は,平成24年からテレビコマーシャルを用いてもされるようになっているが,テレビ は,原告各表示が原告の商品であることを認識させ得るほどのものとなったとは到底認められない。その後,本件原告商品の広告は,平成24年からテレビコマーシャルを用いてもされるようになっているが,テレビコマーシャル自体は需要期である11月から 12月にかけての短い期間にのみ放映されたものである。そして,原告各表示が顕著な特徴を有するものではない上に,原告各表示がテレビコマーシャルで示される場面は,15秒のコマーシャルの中で非常に短い数ショットであり,しかも,異なるパッケージデザインの原告の商品とともに並べられた中の一部,あるいは山積みの商品としてデザインの一部が見える状態の画面であるというのであるから,たとえ短期間に多数回このようなテレビコマーシャルが放映されたとしても,原告各表示を認識して記憶し,原告の商品であることを認識させ得るものであったとは認められない。むしろ,需要者がインクカートリッジを購入する際には,その商品の性格上,対応メーカーや互換製品であることの確認を慎重にすると考えられることからすると,本件原告商品のパッケージには,原告各表示だけでなく,目立つ態様で原告の商品のブランド名を示すエコリカマークや,特徴点Dにおける「リサイクルインクカートリッジ」との文字の前には「エコリカ」との文字が記載されている以上,需要者は,当該商品をブランド名である「エコリカ」によっても認識するのが通常であると考えられる。また,テレビコマーシャルは,最後にエコリカマークが表示されることからすれば,エコリカとのブランド名が需要者に印象付けられていると認められるものであって,そうであれば,原告による宣伝広告より,「エコリカ」という商品ないし営業表示が需要者の間に広く認識されるようになっていたと認められる余地は十分あるが,そうであるか ていると認められるものであって,そうであれば,原告による宣伝広告より,「エコリカ」という商品ないし営業表示が需要者の間に広く認識されるようになっていたと認められる余地は十分あるが,そうであるから,なお,「エコリカ」とは別に,原告の販売する多数の商品のうちの1つのパッケージデザインにすぎない原告各表示部分のみを対象として,それだけで原告の商品表示として広く認識されるようになっていたものとはおよそ認め難い。 2 したがって,原告各表示は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されていたとは認められないのであるから,被告による被告各商品の販売行為は,争点2,3の判断に及ぶまでもなく,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するものではないということになる。 3 争点6(本件掲載文は被告の営業上の信用を害する虚偽の事実か)について (1) 本件掲載文は,別紙不正競争行為目録のとおりであり,表題を「スカイホースジャパン株式会社に対する提訴について」とし,第1文で挨拶文を,第2文に本件被告を被告として不正競争防止法に基づく訴訟を提起した事実報告を,第3文から第6文にかけて訴訟提起に至る事実関係を記載し,また第3文と第4文の間に,周知営業表示であると主張する「エコリカ製品の画像」として,別紙原告表示目録記載1,2のアに相当する正面部分の写真(ただし,同目録では削除されているリサイクルマークなどはそのまま掲載されている。)を,第4文と第5文の間に「スカイホース製品の画像」として,別紙被告表示目録記載1,2のアに相当する正面部分の写真(ただし,同目録では削除されている被告の社名の記載はそのまま掲載されている。)を掲げ,末尾の第7文で,また定型的な結びの挨拶文を掲載したものである。(乙20の2)(2) 本件掲載 面部分の写真(ただし,同目録では削除されている被告の社名の記載はそのまま掲載されている。)を掲げ,末尾の第7文で,また定型的な結びの挨拶文を掲載したものである。(乙20の2)(2) 本件掲載文の記載内容をみると,確かに原告が被告に対し不正競争防止法に基づく訴訟を提起したという事実報告が前提になっており,読み手がその留保を前提に読むことが期待される体裁になっていることは認められる。 しかし,その一方で,本件掲載文は,不正競争防止法2条1項1号の要件を充足する事実については,原告の商品の「パッケージのデザインは,エコリカ製品を表示するものとして,周知になっていました」(第3文)と,訴訟で問題にされる余地のない確定した事実であるかのように記載し,また原告の商品と被告の商品のパッケージデザインが「極めて似た」(第4文),「酷似」(第6文)であるとして「類似」より強い表現を用い,さらに「ユーザーが取り違えて購入するおそれがあることから」,原告が「日々受けている損害」(第6文)があると,ここでも断定した表現を用いている。 そして,その上,これらの記載には,本件訴訟で特定したパッケージデザインのうち類似性を判断しやすい一部写真だけを取り出し,「エコリカ製品の画像」と「スカイホース製品の画像」として対比して観察できるよう掲げ,読み手をして両商品のパッケージデザインが類似し,これにより購入者が取り違えるおそれがあること を,それ自体から感得できるようにしている。 したがって,本件掲載文の読み手は,訴訟が提起されたばかりであるから,記載内容の事実が公的判断として確定した事実ではないことを理解しながらも,その理由として記載されている被告の商品の販売行為が不正競争防止法違反の行為であるとの事実は,裁判においても容易に認められ得る 載内容の事実が公的判断として確定した事実ではないことを理解しながらも,その理由として記載されている被告の商品の販売行為が不正競争防止法違反の行為であるとの事実は,裁判においても容易に認められ得る確実な事実と理解するものと認められる。 (3) 以上認定した本件掲載文についての読み手の通常の理解を前提とすると,本件掲載文を何人もアクセス可能な原告のホームページに掲載する行為は,訴訟提起の事実とともに,被告の商品の販売行為が不正競争防止法に違反するという事実を流布するものと認めるのが相当である。 この点,原告は,本件掲載文の読み手は,不正競争防止法違反と判断するために必要な事実は裁判所の判断を経なければ公的判断が下されないことは当然のことと理解しているし,本件掲載文中の訴訟提起に至る事実関係については原告の単なる意見表明と理解している旨主張するが,いずれも上記認定説示に照らし失当であり採用できない。 (4) そして,被告各商品の販売行為が,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当しないことは既に検討し判断したとおりであるから,被告各商品の販売行為が同号の不正競争に該当する趣旨をいう本件掲載文の記載内容は「虚偽の事実」であり,これをホームページに掲載した原告の行為は,訴訟提起の報告に仮託して,原告と競争関係にある被告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為といわざるを得ず,同法2条1項15号に該当する不正競争であるということになる。 (5) そこで,上記認定に係る不正競争についての原告の過失の有無について検討するに,上記1(2)オの本件原告商品の宣伝広告の実績からすると,原告が,本件原告商品がそのパッケージデザインそのもので周知であると考え,被告のする被告各商品の販売行為が不正競争防止法2条1項1 号に当たると考えたことが全く不 原告商品の宣伝広告の実績からすると,原告が,本件原告商品がそのパッケージデザインそのもので周知であると考え,被告のする被告各商品の販売行為が不正競争防止法2条1項1 号に当たると考えたことが全く不合理であるとまではいうことはできないといえる。 しかし,本件が「包装」の商品等表示性を問題とする事案であり,その周知商品等表示が裁判の場で認められることについて困難性があることはよく知られたことであり,少なくとも訴訟提起段階では,その主張に係る事実がすべて裁判手続を経て確定すべき事実であることは明らかであるから,原告が,本件掲載文によって訴訟提起をした経緯を報告する目的であったのなら,訴訟で審理されることになる事実関係については,その時点では原告の主張ないし意見であることを留保して表現するに留めるべきであって,またそのことは容易であるとともに,訴訟提起の経緯を説明する趣旨目的に反しないものであったはずである。 しかし,そうであるにもかかわらず,被告が,これをせずに断定的な表現で事実関係を記載したことは既述のとおりであり,とりわけ「その特徴的なパッケージデザイン・・が全国の消費者に認知され,パッケージのデザインは,エコリカ製品を示すものとして,周知となっていました」とする記載部分は,あたかも特許権者が特許権を有している事実を表現するかのように裁判所の判断を待たずとも自明な事柄のように断定的に記載しているのであるから,このような表現振りを選択した点に原告に注意義務違反があるとの非難は免れず,原告には上記認定に係る不正競争をしたことに過失があり,これによる損害賠償責任を負うというべきである。 4 争点7(本件掲載文の抹消請求及び謝罪広告掲載請求)について被告は,信用回復措置として原告のホームページ上に別紙謝罪文目録のとお とに過失があり,これによる損害賠償責任を負うというべきである。 4 争点7(本件掲載文の抹消請求及び謝罪広告掲載請求)について被告は,信用回復措置として原告のホームページ上に別紙謝罪文目録のとおりの謝罪文を掲載するよう求めるが,本件において原告に対し,被告に対する後記5で検討する損害賠償額の支払を命ずる以上に当該謝罪文を掲載する必要性までを認めることはできない。 なお,被告は,原告のホームページから本件掲載文の電磁的記録の削除も求めているが,本件掲載文の電磁的記録は不正競争防止法2条1項15号の不正競争を構成しているものであるから,この削除請求は,同法14条の信用回復措置としてではなく,同法3条2項の廃棄請求によるべきことになる。しかし,後者の廃棄請求の場合,同条1項の差止請求とともにされる必要があるが,本件においては同条1 項の差止請求がされていないから,結局,廃棄請求も認める余地がないことになる。 5 争点8(被告の損害額)について被告は,原告が本件掲載文を原告のホームページに掲載した不正競争により,営業上の信用を害され,無形損害として500万円を下らない損害を被った旨主張する。 本件掲載文は,被告商品を取り扱う量販品店をして,その取扱いを躊躇させるものであるから,原告の営業上の信用を害する結果をもたらしたことは容易に肯定できるところである。そして,原告が,本件掲載文をそのホームページに掲載したのが,本件訴訟を提起した平成27年10月22日であって, 一年を通して最もインクカートリッジの需要が多い年末の直前であることからすると,上記のような被告商品の取り扱いを量販店に躊躇させるに足りる本件掲載文の原告ホームページへの掲載が被告の営業に一定の影響を及ぼしたことも否定できない。 ただ,証拠(甲45)によ あることからすると,上記のような被告商品の取り扱いを量販店に躊躇させるに足りる本件掲載文の原告ホームページへの掲載が被告の営業に一定の影響を及ぼしたことも否定できない。 ただ,証拠(甲45)によれば,被告による被告商品の販売規模自体はさほど大きいものではないと認められるし,また被告が取引先との関係において実際に具体的な影響が及ぼされたことについての具体的な立証があるわけではないことも考慮すると,原告の不正競争により生じた被告の信用毀損についての損害の額は30万円と認めるのが相当である。 6 結論以上のとおりであるから,原告の本訴請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,被告の反訴請求は,不法行為に基づく損害賠償として30万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年10月23日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の反訴請求については理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官田原美奈子 裁判官大川潤子
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