平成27年10月30日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第36311号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成27年9月18日判決フランス国リヨン<以下略>原告メリアルエスアーエス同訴訟代理人弁護士熊倉禎男同渡辺光同相良由里子同佐竹勝一同補佐人弁理士山崎一夫同田代玄東京都品川区<以下略>被告フジタ製薬株式会社同訴訟代理人弁護士浜田治雄同補佐人弁理士西口克同赤津悌二同田辺稜 主文 1 被告は,別紙物件目録記載1及び2の各製品を,製造し,販売し,譲渡し,貸渡し,輸出し,又は譲渡等の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 主文第1項ないし第3項同旨 2 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,発明の名称を「哺乳動物,特に犬猫のノミを防除するための殺虫剤の組合せ」とする特許権(特許第3702965号。以下,その発明に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,別紙物 要本件は,発明の名称を「哺乳動物,特に犬猫のノミを防除するための殺虫剤の組合せ」とする特許権(特許第3702965号。以下,その発明に係る特許を「本件特許」という。)を有する原告が,別紙物件目録記載1及び2の製品(以下,それぞれ「被告製品1」,「被告製品2」といい,併せて「被告各製品」という。)は本件特許の請求項9,10及び12に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明3」ないし「本件特許発明5」という。なお,原告は,当初,本件特許の請求項5及び6をそれぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」としていたが,これらに基づく請求を取り下げた。),及び仮に無効審判請求における訂正請求が認められてこれが確定した後には,訂正後の請求項5,10及び12の発明(以下,それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」といい,本件特許発明3ないし5と併せ,「本件各特許発明」という。)の技術的範囲にそれぞれ属すると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告各製品の販売等の差止めと廃棄を求めた事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,動物用医薬品,ワクチンの開発,製造及び販売等を業とするフランス法人であり,犬及び猫のノミ・マダニ駆除用の医薬品「フロントライン」・「フロントラインプラス」を,日本を含む世界113か国以上で販売している。 イ被告は,医薬品,動物用医薬品,獣医用医薬品,飼料,化粧品,化成品,食料品,乳製品の製造・販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権 - 3 -原告は,次の特許権を有している(請求項の数64。以下「本件特許権」といい,また本件特許に係る明細書を「本件明 株式会社である。 (2) 原告の特許権 - 3 -原告は,次の特許権を有している(請求項の数64。以下「本件特許権」といい,また本件特許に係る明細書を「本件明細書」という。本件特許の特許公報を末尾に添付する。)。〔甲1,2,弁論の全趣旨〕特許番号特許第3702965号発明の名称 「哺乳動物,特に犬猫のノミを防除するための殺虫剤の組合せ」出願日平成9年3月26日優先日平成8年(1996年)3月29日〔フランス〕登録日平成17年7月29日(3) 本件特許権の出願経過等ア原告は,平成8年3月29日(フランス)及び同年8月5日(米国)の優先権を主張して,平成9年3月26日に本件特許の国際出願をし,同年12月1日に翻訳文を提出した。〔乙61〕イ原告は,平成13年1月24日に手続補正書を提出した。〔乙62〕ウ特許庁審査官は,平成16年9月15日付けで拒絶理由通知をした。拒絶理由通知においては,当時の請求項1ないし40に係る出願につき,同通知にいう引用文献7(特開平7-179307号,公開日平成7年7月18日,出願人住友化学工業株式会社,発明の名称「害虫防除剤」,本件乙1。以下「乙1公報」という。)の教示に従い,当該文献に記載された害虫防除剤をノミの防除に用いてみるのは当業者にとって容易であり,局所投与も害虫防除剤の投与方法としては普通のものであり進歩性を欠くことが拒絶理由の一つとされていた。〔乙63〕エこれに対し原告は,平成16年11月12日に手続補正書(乙64)を提出するとともに,同日付けで意見書(乙65)を提出した。 オ特許庁審査官は,平成16年12月17日付けで拒絶査定をした。〔乙 - 4 -66〕カ 補正書(乙64)を提出するとともに,同日付けで意見書(乙65)を提出した。 オ特許庁審査官は,平成16年12月17日付けで拒絶査定をした。〔乙 - 4 -66〕カ原告は,平成17年3月28日,拒絶査定不服審判請求(乙44)をするとともに,同日付けで手続補正書(乙67)を提出した。 キこれに対し,平成17年4月28日付けで拒絶理由通知(乙68)が発せられ,同年5月19日付けで,原告は手続補正(乙69)をするとともに,同日付けで意見書を提出した。 ク平成17年6月3日付けで,本件特許につき特許査定がされた。〔乙70〕(4) 被告による無効審判請求,原告による訂正請求,審決の経緯等ア被告は,本件特許に関し,平成25年2月6日付けで無効審判請求(無効2013-800020,乙17)をしたが,平成25年11月13日,同請求を取り下げた。〔乙46〕イ被告は,平成25年8月12日付けで,無効審判請求(無効2013-800149号。以下「本件無効審判請求」という。乙26)をした。 ウこれに対し原告は,同年12月12日付けで答弁書(甲33)を提出するとともに,同日付けで訂正請求(甲34)をした。また,原告は,平成26年2月13日付けで,上記訂正請求につき,手続補正をした。〔甲42。以下,この手続補正後の訂正請求を,「本件訂正請求」という。〕エこれにつき,平成27年1月5日付けで,「請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。」等とする審決がされた。〔甲53〕オ被告は,知的財産高等裁判所に対し,上記審決の取消しを求める審決取消訴訟を提起した。〔弁論の全趣旨〕(5) 本件特許発明3ないし5の内容ア本件特許発明3(請求項9)式(I)の化合物が1-[2,6-Cl2-4 判所に対し,上記審決の取消しを求める審決取消訴訟を提起した。〔弁論の全趣旨〕(5) 本件特許発明3ないし5の内容ア本件特許発明3(請求項9)式(I)の化合物が1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5- - 5 -NH2-ピラゾール(一般にフィプロニイル〔Fipronil〕とよばれる)である請求項6に記載の組成物。 イ本件特許発明4(請求項10)IGRタイプの化合物がメトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択される請求項6に記載の組成物。 ウ本件特許発明5(請求項12)式(I)の化合物(A)とタイプ(B)の化合物の重量比が80/20~20/80である請求項6に記載の組成物。 (6) 本件訂正発明1ないし3の内容本件訂正請求において,原告は,訂正前請求項6(取下げ前の本件特許発明2),同9(本件特許発明3)を削除するとともに,訂正後の請求項5(本件訂正発明1)を訂正前請求項9(本件特許発明3)と同一内容とし,請求項10(本件特許発明4),同12(本件特許発明5)については,それらが引用する請求項をそれぞれ訂正後の請求項5(本件訂正発明1)とする(後記本件訂正発明2,同3)などの訂正を行った。 なお,本件訂正請求が,特許法134条の2第1項(同条第9項が準用する規定を含む)に定められた訂正要件を満たすことについては当事者間に争いがない。 本件訂正発明1ないし3の内容は,以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す)。 ア本件訂正発明1(訂正後の請求項5。本件特許発明3と同内容)動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO 箇所を示す)。 ア本件訂正発明1(訂正後の請求項5。本件特許発明3と同内容)動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5-NH2-ピラゾール(一般にフィプロニイ - 6 -ル(Fipronil)とよばれる)(A)と少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との相乗量と,少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物。 イ本件訂正発明2(訂正後の請求項10)IGRタイプの化合物がメトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択される請求項5に記載の組成物。 ウ本件訂正発明3(訂正後の請求項12)式(I)の化合物(A)とタイプ(B)の化合物の重量比が80/20~20/80である請求項5に記載の組成物。 (7) 本件特許の請求項5,6(取下げ前の本件特許発明1,2)の構成要件の分説と,本件特許発明3ないし5及び本件訂正発明1ないし3の構成要件の分説(以下,各構成要件を請求項の番号とアルファベットに従って「構成要件1A」等と表記する。)ア請求項5(取下げ前の本件特許発明1)1A 動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,1B(1) 下記式(I)で表される少なくとも種の化合物(A)と - 7 - (ここで,R1はCN,メチルまたはハロゲン原子であり,R2はS(O)nR3または4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルまたはハロアルキルであり,R3は - 7 - (ここで,R1はCN,メチルまたはハロゲン原子であり,R2はS(O)nR3または4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルまたはハロアルキルであり,R3はアルキルまたはハロアルキルであり,R4は水素またはハロゲン原子,NR5R6基,S(O)mR7,C(O)mR7,C(O)O-R7,アルキル,ハロアルキル,OR8または基-N=C(R9)(R10)を表し,R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子,アルキル,ハロアルキル,C(O)アルキル,アルコキシルカルボニルまたはS(O)rCF3基を表すか,R5およびR6が一緒になって,酸素または硫黄のような一つまたは二つの二価ヘテロ原子を含んでいてもよい二価アルキレン基を形成してもよく,R7はアルキルまたはハロアルキル基であり,R8はアルキル,ハロアルキル基または水素原子であり,R9はアルキル基または水素原子を表し,R10は必要に応じてハロゲン原子またはOH,-O-アルキル,-S-アルキル,シアノまたはアルキルのような一つまたは複数の基で置換されていてもよい,フェニルまたはヘテロアリール基を表し,R11およびR12はそれぞれ独立に水素またはハロゲン原子あるいは必要に応じてCNまたはNO2を表し,R13はハロゲン原子またはハロアルキル,ハロアルコキシ,S(O)qCF3またはSF5基を表し, - 8 -m,n,qおよびrはそれぞれ独立に0,1または2に等しい整数を表し,Xは三価の窒素原子または基C-R12を表し,炭素原子の他の三つの原子価は芳香環の一部を成し,ただし,R1がメチルのときはR3がハロアルキルで,R4がNH2で,R11がClで,R13がCF3で,XがNであるか,R2が4,5-ジシアノイミダゾー 子の他の三つの原子価は芳香環の一部を成し,ただし,R1がメチルのときはR3がハロアルキルで,R4がNH2で,R11がClで,R13がCF3で,XがNであるか,R2が4,5-ジシアノイミダゾール-2-イルで,R4がClで,R11がClで,R13がCF3で,Xが=C-Clである)1B(2) 少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との1B(3)相乗量と,1C 少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,1D ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有する1E スポットオン用組成物。 イ請求項6(取下げ前の本件特許発明2)2A 式(I)が下記を満たすR1がCNまたはメチルで,R2がS(O)nR3で,R3がアルキルまたはハロアルキルで,R4が水素またはハロゲン原子であるか,基NR5R6,S(O)mR7,C(O)R7,アルキル,ハロアルキルまたはOR8または基-N=C(R9)(R10)を表し,R5およびR6がそれぞれ独立に水素原子またはアルキル,ハロアルキル,C(O)アルキル,またはS(O)rCF3基を表すか,R5およびR6が一 - 9 -緒になって酸素または硫黄等の一つまたは二つの二価ヘテロ原子を含んでいてもよい二価アルキレン基を形成し,R7がアルキルまたはハロアルキル基を表し,R8がアルキルまたはハロアルキル基もしくは水素原子を表し,R9がアルキル基または水素原子を表し,R10が必要に応じてハロゲン原子またはOH,-O-アルキル,-S-アルキル,シアノまたはアルキルのような一つまたは複数の基で置換されたフェニルまたはヘテロアリール基を表し,R11およびR12がそれぞれ独立 に応じてハロゲン原子またはOH,-O-アルキル,-S-アルキル,シアノまたはアルキルのような一つまたは複数の基で置換されたフェニルまたはヘテロアリール基を表し,R11およびR12がそれぞれ独立に水素またはハロゲン原子を表し,R13がハロゲン原子またはハロアルキル,ハロアルコキシ,S(O)qCF3またはSF5基を表し,m,n,qおよびrがそれぞれ独立に0,1または2に等しい整数を表し,Xが三価の窒素原子または基C-R12基を表し,炭素原子の他の三つの原子価が芳香環の一部を成し,ただし,R1がメチルのときは,R3はハロアルキルで,R4はNH2で,R11はClで,R13はCF3で,XはNである)2B 請求項5に記載の組成物。 ウ本件特許発明3(請求項9)3A 式(I)の化合物が1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5-NH2-ピラゾール(一般にフィプロニイル〔Fipronil〕とよばれる)である3B 請求項6に記載の組成物。 エ本件特許発明4(請求項10) - 10 -4AIGRタイプの化合物がメトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択される4B 請求項6に記載の組成物。 オ本件特許発明5(請求項12)5A 式(I)の化合物(A)とタイプ(B)の化合物の重量比が80/20~20/80である5B 請求項6に記載の組成物。 カ本件訂正発明1(なお,1B(1)’は,3Aと同じである。訂正後請求項5。本件特許発明3と同じ。)1A 動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,1B(1)’1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5-NH2-ピラ 5。本件特許発明3と同じ。)1A 動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,1B(1)’1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5-NH2-ピラゾール(一般にフィプロニイル〔Fipronil〕とよばれる)(A)と1B(2) 少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との1B(3)相乗量と,1C 少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,1D ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有する1E スポットオン用組成物。 キ本件訂正発明2(訂正後請求項10)4AIGRタイプの化合物がメトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択される4B 請求項5に記載の組成物。 ク本件訂正発明3(訂正後請求項12) - 11 -5A 式(I)の化合物(A)とタイプ(B)の化合物の重量比が80/20~20/80である5B 請求項5に記載の組成物。 (8) 被告の行為被告は,平成24年10月19日,犬及び猫のノミ・マダニ駆除用の医薬品「マイフリーガードα」について農林水産省の承認を取得し,被告各製品を販売している。 (9) 被告各製品の種類,構成等被告各製品の種類,構成及び用法は,それぞれ別紙被告各製品説明書の「2 種類」,「3 構成」及び「4 用法」各記載のとおりである。 別紙被告各製品説明書の被告各製品の「1 概要」及び「5 効果」については争いがある(争いがある部分に下線を付した。)。 (10) 被告各製品の本件各特許発明(本件特許発明3ないし5,本件訂正発明1ないし3)の構成要件充足性 1 概要」及び「5 効果」については争いがある(争いがある部分に下線を付した。)。 (10) 被告各製品の本件各特許発明(本件特許発明3ないし5,本件訂正発明1ないし3)の構成要件充足性被告各製品は本件各特許発明の構成要件1C以外の構成要件を全て充足する(なお,この点については後記第4,1(7)で検討する。)。 (11) 本件訂正請求の訂正要件及び本件における審理の対象本件訂正請求が訂正要件を満たすこと,本件における審理の対象が本件訂正請求後の発明(本件訂正発明1ないし3)の構成要件充足性であることにつき,当事者間に争いがない。 2 争点(1) 構成要件1Cの充足性(被告各製品が「スポットオン調合用アジュバント」を含有するか)(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものか - 12 -ア乙1公報に基づく新規性欠如イ乙1公報に基づく進歩性欠如ウ実施可能要件違反エサポート要件違反オ明確性要件違反第3 当事者の主張 1 争点(1)(構成要件1Cの充足性)について〔原告の主張〕(1) 「スポットオン調合用アジュバント」の意義構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」とは,その文言からして,「スポットオン製剤の調合に用いられるアジュバント」を意味する。 このうち「アジュバント」は英語の「adjuvant」であり,「補助剤」を意味する(甲18)。また,米国国立海洋庁の海洋水産局が,同国環境保護庁宛てに提出した殺虫剤の絶滅危惧種に対する影響に関する意見書(甲19)によれば,「adjuvant」は,殺虫剤の働きを助け,又は効果を高めるものと記載され,その例として,湿潤剤,散布剤,乳化剤,分散剤,溶媒,可溶化剤,貼付剤及び界面活性剤が挙げられている 書(甲19)によれば,「adjuvant」は,殺虫剤の働きを助け,又は効果を高めるものと記載され,その例として,湿潤剤,散布剤,乳化剤,分散剤,溶媒,可溶化剤,貼付剤及び界面活性剤が挙げられている(甲19,20頁14~16行)。これらによれば,「アジュバント」とは主剤に対する補助剤を意味する。したがって,本件各特許発明における「スポットオン調合用アジュバント」が「スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤(製剤の働きを助けまたは効果を高める成分)」であることは,技術常識である。 また,「補助剤」に関して,本件明細書の発明の詳細な説明に「本発明の点状塗布用組成物は一般に上記定義の構成要素を単純に混合するだけで製 - 13 -造できる(判決注;「できるる」は誤記)が,まず第1に活性材料を主溶剤中に混合した後に他の成分または補助剤を添加する(判決注;「すう」は誤記)のが有利である。」(12頁46ないし48行)と記載されている。また,スポットオン組成物に含まれる成分に関し,本件明細書の発明の詳細な説明には,①「活性材料」である化合物(A)及び化合物(B)を含むこと(10頁19ないし20行),②「主溶剤」(「この溶剤の含有率は組成物全体100%となる値」)として,「有機溶剤」を使用すること(11頁27ないし28行),③「その他の成分または補助剤」として,結晶化抑制剤(同頁22行)及び有機補助溶剤(同頁29行)を含むのが好ましいことが記載されている。ここに記載された各成分のうち,結晶化抑制剤及び有機補助溶剤は,それぞれ,結晶化の抑制及び乾燥の促進(11頁31行)という機能を有し,スポットオン製剤の働きを助け又は効果を高めるものである。 したがって,「スポットオン調合用アジュバント」が「スポットオン製剤の調合に用いら の抑制及び乾燥の促進(11頁31行)という機能を有し,スポットオン製剤の働きを助け又は効果を高めるものである。 したがって,「スポットオン調合用アジュバント」が「スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤(製剤の働きを助けまたは効果を高める成分)」であるとの文言解釈は,本件明細書の記載にも合致し,本件明細書に記載されている結晶化抑制剤及び有機補助溶剤がその例示であることは当業者には明白である。 以上のとおり,特許請求の範囲の文言及び本件明細書の記載に鑑みれば,構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」は,結晶化抑制剤及び有機補助溶剤により例示される「スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤(製剤の働きを助けまたは効果を高める成分)」を意味する。 (2) 被告各製品の溶解補助剤であるクロタミトンが,スポットオン調合用アジュバントに該当すること - 14 -被告各製品は,溶解補助剤としてクロタミトン,ポリオキシエチレンラノリン,ポリオキシエチレンフィトステロール(後記(3))及びアルキルシクロテトラシロキサンを含む(甲6,3頁)。これらの溶解補助剤は,いずれも殺虫活性成分が溶媒に溶解し易くすることにより,スポットオン製剤である被告各製品において,殺虫活性成分の働きを助け,効果を高める成分であり,スポットオン調合用アジュバントに該当するが,中でもクロタミトンについて,以下のとおりスポットオン調合用アジュバントに該当することが明らかである。 まず,溶解補助剤は,溶質を溶剤に溶解させる際には溶質の溶解を助ける機能を有するが,結晶析出の可能性がある場面においては,溶質の結晶析出を妨げるように働き,結晶化抑制剤としての機能も有する。そして,クロタミトンについて,特開2004-75537号公報(甲20)の段 機能を有するが,結晶析出の可能性がある場面においては,溶質の結晶析出を妨げるように働き,結晶化抑制剤としての機能も有する。そして,クロタミトンについて,特開2004-75537号公報(甲20)の段落【0018】には,「クロタミトンは,有効成分であるエストラジオールおよび/またはその誘導体に対して高い溶解性を付与し,粘着剤への結晶の析出を防止する。」と記載されている。 この結晶化抑制剤が持つ結晶化を抑制する機能は,本件各特許発明にかかる組成物が,スポットオン製剤として機能するために重要な役割を果たしている。すなわち,本件明細書の発明の詳細な説明に,本件各特許発明の作用機序及び作用効果に関し,「本発明組成物は一度塗布すると動物の体全体に広がってゆき,結晶化したり,毛の外観または手触りを変えたりすることなく(特に,白っぽい付着物や埃っぽい外観がない),乾燥する。 本発明の点状塗布用組成物は塗布および乾燥後の効果,作用の速さ,動物の毛の好ましい外観という点で特に有利である。」(11頁39ないし43行),「フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の - 15 -体全体を被覆し,皮脂腺中に濃縮される。この皮脂腺から非常に長い期間にわたって化合物が徐々に放出されるという発見はこれら組成物の効力の長い持続性をよく説明する」(13頁26ないし28行)と記載されていることからも明らかなように,本件各特許発明に係る組成物を動物の局所に塗布(スポットオン)すると,殺虫活性物質が皮脂中に溶解し,皮脂の移動と共に動物の体全体に広がり,皮脂腺中に蓄積され,長期間にわたって徐々に放出されることにより,本件各特許発明の作用効果を奏する。 そして,被告各製品に含まれる溶解補助剤は,いずれもその殺虫活性成分が溶剤に溶解するのを助 がり,皮脂腺中に蓄積され,長期間にわたって徐々に放出されることにより,本件各特許発明の作用効果を奏する。 そして,被告各製品に含まれる溶解補助剤は,いずれもその殺虫活性成分が溶剤に溶解するのを助け,結晶化するのを抑制する機能により,スポットオン製剤として効果を発揮するのを助け,その効果を高める成分であって,スポットオン調合用アジュバントに該当するところ,クロタミトンについては,特に上記のとおりこれに当たることが明らかである。 (3) 被告各製品に含まれるクロタミトン以外の溶解補助剤である,ビニルカプロラクタム・ビニルピロリドン・N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体エタノール液(以下「VC-713」という。)及びポリオキシエチレンフィトステロールは,いずれも本件各特許発明の結晶化抑制剤に相当し,スポットオン調合用アジュバントであることア VC-713は,ポリマータイプの皮膜形成剤である。VC-713がポリマーであることは,同物質が「コポリマーVC-713」と呼ばれること(乙29〔有限会社久光工房作成のVC-713に関する「表示名称,原料,処方例の検索ができる化粧品処方開発者のためのデータベースサイト(Cosmetic-Info.Jp)」〕,「原材料商品名」)ことなどから明らかであり,皮膜形成剤であることも明らかである(乙29,同「特徴」4行)。 - 16 -VC-713は,その構造及び機能において,ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマーに類似する。すなわち,VC-713は,その名称からも理解されるように,ビニルカプロラクタム,ビニルピロリドン及びN,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸のコポリマーである。このうち,ビニルピロリドンは,ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニ その名称からも理解されるように,ビニルカプロラクタム,ビニルピロリドン及びN,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸のコポリマーである。このうち,ビニルピロリドンは,ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマー中のビニルピロリドン(モノマー)と同一である。ビニルカプロラクタム(モノマー)は,環の大きさが7のN-ビニルラクタムであり,環の大きさが5のN-ビニルラクタムであるビニルピロリドンと類似する。N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸は,酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマー中の酢酸ビニルと類似する。これらの物質は,いずれも皮膜形成ポリマーに分類され,化粧品,医薬品等において同種の用途に用いられている。すなわち,「EncyclopediaofPolymerScienceandTechnology」と題する文献(甲36。以下「甲36文献」という。)には,これら三つの物質のポリマーがN-ビニルアミドポリマーに分類され,ポリビニルピロリドン及びその類似物質並びにその組合せからなる多数のコポリマーを含むN-ビニルアミドポリマーが皮膜形成剤として高い性能を有すると記載されている(1頁)。また,VC-713の物性や用途について記載する「CopolymerVC-713」と題する文献(甲37。 以下「甲37文献」という。)にも,VC-713が皮膜形成剤であることが記載されている。 本件明細書には,結晶化抑制剤について,「特に好ましくは,一対の結晶化抑制剤,すなわちポリマータイプの皮膜形成剤と界面活性剤との組合せを用いる。」(12頁26ないし27行)と記載され,さらに, - 17 -「特に有利なポリマータイプの皮膜形成剤としては下記のものを挙げることができる」(12頁28ないし29行)として (12頁26ないし27行)と記載され,さらに, - 17 -「特に有利なポリマータイプの皮膜形成剤としては下記のものを挙げることができる」(12頁28ないし29行)として,ポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマーが挙げられている。 VC-713はポリマータイプの皮膜形成剤であり,かつ,「特に有利なポリマータイプの皮膜形成剤」として列挙されているポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマーと構造上及び機能上,非常に類似するポリマーである。 したがって,被告各製品におけるVC-713は結晶化抑制剤に相当し,スポットオン調合用アジュバントに当たる。 イまた,ポリオキシエチレンフィトステロールは,非イオン界面活性剤であるところ,米国環境保護庁2005年(平成17年)3月18日付け「ActionMemorandum」と題する文献(以下「甲38の1文献」という。)及び同日付け「Memorandum」と題する文献(以下「甲38の2文献」という。)によれば,同物質は界面活性剤に分類され,殺虫剤に「アジュバント」として使用されるものであるとしている。また,特表2005-511586号公報(甲39)には,ポリオキシエチレンフィトステロールが難溶解性物質を溶解する際の可溶化剤として使用されることが記載されており(段落【0019】。「エトキシ化」が,ポリオキシエチレン化を含むことについては,同段落【0022】),かかる特性は,同じく非イオン界面活性剤であるポリソルベート80(本件明細書12頁19ないし20行)と同じである。 本件明細書は,多数のポリオキシエチレン化誘導体を,結晶化抑制剤としての非イオン界面活性剤として挙げる(12頁19ないし23行)。 ポリオキシエチレンフィトステ 2頁19ないし20行)と同じである。 本件明細書は,多数のポリオキシエチレン化誘導体を,結晶化抑制剤としての非イオン界面活性剤として挙げる(12頁19ないし23行)。 ポリオキシエチレンフィトステロールは,非イオン界面活性剤であり, - 18 -本件明細書が非イオン界面活性剤に分類して列挙する結晶化抑制剤であるポリオキシエチレン化誘導体の一つである。 したがって,被告各製品におけるポリオキシエチレンフィトステロールは結晶化抑制剤に相当し,スポットオン調合用アジュバントに当たる。 ウ以上のとおり,被告各製品は,本件明細書において結晶化抑制剤として好ましいとされる,ポリマータイプの皮膜形成剤(VC-713)と,非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンフィトステロール)を使用するものである。しかも,この組合せは,特に好ましい組合せとして,本件明細書に記載された構成である。 被告各製品に使用されているVC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールは,本件明細書に結晶化抑制剤として具体的にその名称が記載されているものではないが,前者は,列挙されたポリビニルピロリドン及び酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマーによく類似する物質であり,後者は,列挙された複数のポリオキシエチレン化誘導体の一種であり,いずれも本件各特許発明の結晶化抑制剤である。そして,前者はポリマータイプの皮膜形成剤であり,後者は非イオン界面活性剤であり,その組合せは,本件明細書に特に好ましいとして記載されている組合せである。 被告各製品に含まれるVC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールは,いずれも,本件各特許発明の結晶化抑制剤であり,スポットオン調合用アジュバントである。 (4) 被告の主張に対する反論被告は,スポットオン調合用 713及びポリオキシエチレンフィトステロールは,いずれも,本件各特許発明の結晶化抑制剤であり,スポットオン調合用アジュバントである。 (4) 被告の主張に対する反論被告は,スポットオン調合用アジュバントにつき本件明細書に記載を欠くにもかかわらず,原告はこれを補助剤と解している旨主張するが,前記のと - 19 -おり,これらは当業者の技術常識に属する用語であるから,明細書に詳細に記載する必要はない。 したがって,被告の主張は失当である。 〔被告の主張〕(1) 「スポットオン調合用アジュバント」の意義が不明であること原告は,スポットオン調合用アジュバントを本件明細書中に記載を欠くにもかかわらず,これを補助剤と解しているが,特許法70条2項に特許請求の範囲の用語の意義の解釈については「願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」とされていることから明らかな通り,明細書に記載もされてもいない意義で用語を解釈すべきではない。本件明細書の記載からは,構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」がどのような構成要素であるかは不明である。 仮に結晶化抑制剤や有機補助溶剤等が,原告主張の通りスポットオン調合用アジュバントの一種であるとするならば,本件明細書中にスポットオン調合用アジュバントの例示であると明記すべきであったのである。また,特許請求の範囲請求項24(本件訂正請求の前後で変更はない。)の記載では「結晶化抑制剤(b)を1~20%(W/V)の比率でさらに含む請求項5(判決注;取下げ前の本件特許発明1)に記載の組成物」と記載する一方,請求項24が従属している同請求項5では,「少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る」と記載さ さらに含む請求項5(判決注;取下げ前の本件特許発明1)に記載の組成物」と記載する一方,請求項24が従属している同請求項5では,「少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る」と記載されているところから,請求項24における記載は,請求項5の記載に結晶化抑制剤を加えたように解釈できる。そうすると,結晶化抑制剤が構成要件1Cのスポットオン調合用アジュバントと同一の物質であるとは解釈されないというべきである。 - 20 -(2) 被告各製品のクロタミトンはスポットオン調合用アジュバントに当たらないこと仮に構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」が,スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤の意味であり,結晶化抑制剤や有機補助溶剤がこれに含まれているとしても,被告各製品のクロタミトンは「スポットオン調合用アジュバント」には当たらない。 本件明細書には,有機溶剤,結晶化抑制剤,補助溶剤として,それぞれ具体的な物質名が挙げられているが,その中にクロタミトンは挙げられていない。また,本件明細書中に「スポットオン調合用アジュバント」として挙げられている結晶化抑制剤の物質のうち,「ポリビニルピロリドン」,「ポリソルベート80」をクロタミトンと比較すると,そこにおける「結晶化抑制剤」は本件各特許発明の構成要素の一つである化合物(A)にあたる「フィプロニル」を十分に溶解しない(乙18〔被告により平成25年5月20日ないし同月23日に実施された試験の結果である「フィプロニルの溶解度試験」と題する書面〕)ため,クロタミトンとは異なる性質のものである。そうすると,被告各製品に含まれるクロタミトンは,本件明細書中に記載もなく,かつ,当業者の理解を前提として記載されているに等しい物質であるとはいえない。 そして ミトンとは異なる性質のものである。そうすると,被告各製品に含まれるクロタミトンは,本件明細書中に記載もなく,かつ,当業者の理解を前提として記載されているに等しい物質であるとはいえない。 そして,結晶化を抑制する機能を持つ結晶化抑制剤には,配合すると通常よりも溶解度が上がることで結晶の種となる結晶核が生成されなくなる物質(以下「結晶核生成阻害物質」という。)と,不純物を混ぜることにより結晶核が目に見えるほど大きく成長するのを抑制する物質(以下「結晶核成長阻害物質」という。)との二つの物質があるところ,クロタミトンは,フィプロニルの溶解度を上げることにより結晶の析出を防ぐことから,このうち - 21 -の結晶核生成阻害物質に該当するといえる。しかし,本件明細書に結晶化抑制剤として挙げられている物質(12頁2ないし35行)は,全て溶解度を上げる機能はなく,結晶を大きく成長するのを抑制する機能があるため,結晶核成長阻害物質に該当するものである。 また,本件各特許発明は,結晶化抑制剤に結晶核成長阻害物質を用いることによって,溶解度を上げずにフィプロニル等の主剤を動物の体に滴下した後に過飽和状態にすることにより,主剤が皮脂腺に移行しやすくすることを意図したものであると解されるところ,被告各製品は,結晶核生成阻害物質であるクロタミトンを用いることによって,溶解度を上げ過飽和状態にしないことで薬液の表面張力を下げて全身に広がりやすくするものである。さらに,被告各製品は,溶解度が上がることで経皮吸収を起こり難くし,フィプロニル等の薬品の副作用を防ぐ効果も有している。 よって,結晶核生成阻害物質と結晶核成長阻害物質は,物質の性能や機能が全く違うことから,本件明細書の結晶化抑制剤にはクロタミトンは記載されておらず,かつ,当 の薬品の副作用を防ぐ効果も有している。 よって,結晶核生成阻害物質と結晶核成長阻害物質は,物質の性能や機能が全く違うことから,本件明細書の結晶化抑制剤にはクロタミトンは記載されておらず,かつ,当業者であっても記載されているに等しい物質と理解できるものではない。そうすると,被告各製品のクロタミトンは,構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」には当たらない。 (3) VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールもスポットオン調合用アジュバントに当たらないこと被告各製品のVC-713は,フィプロニルを溶解する目的ではなく,薬剤を投与した後の動物の体表から薬液が垂れ落ちることを防ぐ目的で展着剤として配合している。VC-713は人用の整髪剤に配合して使用されており,原告がスポットオン調合用アジュバントとして主張している結晶化抑制剤の物質とは異なるものである。 - 22 -原告は,VC-713を三つの物質に分解し,そのうちの二つの物質について,それぞれ,ポリビニルピロリドンに相当するとし,残る一つの物質と,ポリビニルピロリドンと類似すると指摘したうちの一つの物質とを結合させて酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマーの構造に相当すると主張する。しかし,ポリマー体に対し,モノマーごとに分解して,そのモノマーとして類似する,あるいはモノマー同士を部分的に結合させてポリマー化させてできたポリマー体が同一あるいは類似するため,一つのポリマー体とモノマー及びポリマーの混合物について化学構造や機能が類似するとの主張には根拠がない。モノマーとポリマーの混合物と,一つのポリマー体とは,構造が一部類似していたとしても,その全体としての機能がそのまま同じであるとはいえないからである。 また,原告は,ポリオキシエチレ 根拠がない。モノマーとポリマーの混合物と,一つのポリマー体とは,構造が一部類似していたとしても,その全体としての機能がそのまま同じであるとはいえないからである。 また,原告は,ポリオキシエチレンフィトステロールについて,非イオン界面活性剤として本件明細書に列挙されたポリオキシエチレン化誘導体の一つであり,エトキシ化がポリオキシエチレン化を含むため,それを備える特性がポリソルベート80と同じであるとし,そこからポリオキシエチレンフィトステロールも結晶化抑制剤に含まれると主張する。しかし,ポリオキシエチレンフィトステロールは,本件明細書の非イオン界面活性剤として好ましいと記載されたポリソルベート80の「ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル」(12頁33ないし34行)とは異なるものであり,本件明細書のポリオキシエチレン化誘導体には列挙されていない物質であり,原告の主張は前提を欠く。 さらに原告は,ポリマータイプの皮膜形成剤と界面活性剤の組合せを本件明細書における特に好ましい組み合わせであると主張するが,本件明細書には,結晶化抑制剤b)として「ポリマータイプの皮膜形成剤」と「非イオン - 23 -界面活性剤」それぞれについて,非常に多種多様の化合物が列挙され,様々な組み合わせが存在する中で,特に好ましい組合せについて本件明細書にその説明はされておらず,実施例に一つの例示もない。そうすると,本件明細書における「特に好ましい」とする「結晶化抑制剤」あるいは「皮膜形成剤」の構成要素は不明であり,そのような物質を配合するとする組成物との関係性についても不明である。 2 争点(2)ア(乙1公報に基づく新規性欠如)について〔被告の主張〕(1) 乙1公報には,本件各特許発明の構成要件が全て開示されている。 ま る組成物との関係性についても不明である。 2 争点(2)ア(乙1公報に基づく新規性欠如)について〔被告の主張〕(1) 乙1公報には,本件各特許発明の構成要件が全て開示されている。 まず,乙1公報記載の発明ではフィプロニルを構成要素に含み,幼若ホルモン活性化合物の例として,乙1公報の段落【0005】(3)において「メトプレン」と同義である「メソプレン」が挙げられ,同段落【0011】に製剤用補助剤が用いられる場合についても記載されている。 また,構成要件1B(3)の相乗量については,乙1公報の段落【0008】において,昆虫成長制御活性化合物:Nアリールジアゾール化合物(フィプロニル)が70:30~30:70の範囲内であることが明記されている。原告が主張する本件各特許発明の相乗量は,「式(Ⅰ)の化合物と化合物(B)との重量比は80/20~20/80」とであるから,乙1公報に相乗量は開示されている。 構成要件1Dの相乗効果については,乙1公報の段落【0018】には「昆虫成長制御化成化合物(判決注;ママ)と化合物Bを混用することにより,同薬量でほぼ2倍の防除効果が得られる。」と,同段落【0019】には,「N-アリールジアゾール化合物や昆虫成長制御活性化合物を各々単独で用いた場合に比べて,同薬量で非常に優れた害虫防除効果を示す」との各 - 24 -記載から,相乗効果を有することが示されている。 構成要件1Aの動物の皮膚に局所塗布可能な液体賦形剤に溶解することは,化合物を構成要件1Eのスポットオン用組成物にするための手法であると解される。 そして,特開平7-291963号公報(乙23。以下「乙23公報」という。),特表平7-500319号公報(乙24。以下「乙24公報」という。)によれば,殺 するための手法であると解される。 そして,特開平7-291963号公報(乙23。以下「乙23公報」という。),特表平7-500319号公報(乙24。以下「乙24公報」という。)によれば,殺虫剤の化合物を局所塗布することは通常行われることであるから,構成要件1A,同1Eのいずれも乙1公報に実質的に記載されているといえる。 以上のとおり,乙1公報に記載の発明は,本件各特許発明の構成要件を全て充足するから,新規性がない。 したがって,本件特許には特許法29条1項3号に違反する無効理由があり,特許法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 (2) なお,原告は,殺卵効果及び成長阻害効果の相乗効果を主張しているが,本件各特許発明には,これらの相乗効果が発揮されるとの記載はないからその主張は失当であり,たとえ相乗効果があったとしても,原告が主張する相乗量は乙1公報に開示されている。 〔原告の主張〕(1) 被告は,乙1公報に記載の発明は,本件特許発明1(請求項5)の構成要件を全て充足するから本件特許発明1は新規性がないとし,本件各特許発明についても同旨を主張するが,乙1公報には,フィプロニルと幼虫(幼若)ホルモン類似化合物がノミに対して相乗効果を奏すること,その量が80: - 25 -20~20:80であること(構成要件1B,1D),さらには,その用法がスポットオンであること(構成要件1A,1C,1E)について,いずれも開示がない。 (2) 被告は,構成要件1Dの相乗効果については,乙1公報の段落【0018】に記載があり,相乗量に関しても,乙1公報に開示されていると主張する。 乙1公報の特許請求の範囲 も開示がない。 (2) 被告は,構成要件1Dの相乗効果については,乙1公報の段落【0018】に記載があり,相乗量に関しても,乙1公報に開示されていると主張する。 乙1公報の特許請求の範囲の文言の上では,乙1公報記載の発明には,フィプロニルと成長ホルモン化合物の組合せも含みうる。しかし,乙1公報には,フィプロニルと成長ホルモン化合物の組合せは具体的に記載されておらず,当該組合せが高い害虫駆除効果を奏することも記載されていない。被告は,乙1公報の試験例に基づいて高い効果を得られたと主張するが,当該試験例は,成長ホルモン類似化合物ではなく,キチン合成阻害剤を用いており,かつ,害虫にはノミではなく,チャバネゴキブリ(試験例1)及びイエバエ(試験例2)を用いているほか,フィプロニルと成長ホルモン類似化合物とが,ノミに対して,相乗効果を奏することについて記載がない。 また,乙1公報では,チャバネゴキブリ(試験例1)及びイエバエ(試験例2)に対して高い効果を得られたとの結果が示されているが,生物が異なれば薬剤に対する生体内の反応も異なり,ノミに対して同様の効果を奏するかは全く不明である。 乙1公報は,試験例1及び2において「同薬量でほぼ2倍の防除効果が得られる。」と結論しているが,試験例1及び2は,いずれも対照がなく,「2倍の防除効果」が相乗効果であるかは不明である。むしろ,2倍程度の防除効果は,せいぜい,それぞれの薬剤が異なる機序で働いた結果の相加効果としか考えられない。 - 26 -したがって,乙1公報には,フィプロニルと幼虫ホルモン類似化合物がノミに対して相乗効果を奏することが開示も示唆もされていない。まして,相乗効果を発揮する量が80:20~20:80であることについては開示や示唆がない。 被告 ィプロニルと幼虫ホルモン類似化合物がノミに対して相乗効果を奏することが開示も示唆もされていない。まして,相乗効果を発揮する量が80:20~20:80であることについては開示や示唆がない。 被告は,殺虫剤の化合物を局所塗布することは通常行われることであると主張するが,殺虫剤の化合物を局所塗布することは,通常行われていないし,被告が引用する乙23公報,乙24公報は,いずれも,適用の可能性があるあらゆる使用方法を列挙するものであり,局所塗布は,多数の使用方法の一つとして挙げられているにすぎない。これらの文献中の実施例においてすら,殺虫剤の局所塗布は行われていない。したがって,局所塗布が通常行われているというのは,事実に反する。 乙23公報には,「経皮投与は,例えば浸漬,又はポアリングオン(poring-on)及びスポッティングオン(spotting-on),ならびに粉剤散布(dusting)の形態で行われる。」(段落【0053】)と記載されており,乙23公報における「スポッティングオン」は,皮膚を通じて体内に吸収させる方法である。また,乙24公報には,「局所,経口又は非経口投与により」(7頁右上欄20ないし21行)と記載されている。いずれも有効成分を体内に吸収させる投与方法である経口及び(注射に代表される)非経口と並列して記載されていることからして,「局所」投与は,皮膚を通じて体内に吸収させる投与方法であると理解される。これに対し,本件各特許発明のスポットオンは,皮膚の局所に投与すると,「皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し,皮脂腺中に濃縮される。この皮脂腺から非常に長い期間に亘って化合物が徐々に放出される」(13頁26ないし27行)という投与方法であって,公知の「局所塗布」とは全く異なるもの - 27 - れる。この皮脂腺から非常に長い期間に亘って化合物が徐々に放出される」(13頁26ないし27行)という投与方法であって,公知の「局所塗布」とは全く異なるもの - 27 -である。 以上のとおり,構成要件1A及び1Eの「局所塗布可能」及び「スポットオン用組成物」は,いずれも乙1公報に記載されていない。 したがって,本件特許に特許法29条1項3号違反の無効理由があるとの被告の主張は理由がない。 3 争点(2)イ(乙1公報に基づく進歩性欠如)について〔被告の主張〕(1) 乙1公報には,前記2〔被告の主張〕記載のとおり,フィプロニルと幼若ホルモン活性化合物と製剤用補助剤の組み合わせが開示されており,相乗量についても本件各特許発明の数値範囲が開示されている。そして,乙23公報,乙24公報,「FleaBiologyandControl」と題する文献(乙39。以下「乙39文献」という。),平成10年5月付けバイエル株式会社動物用薬品事業部研究開発作成の「新世代のノミ駆除剤『アドバンテージスポット』」と題する文献(乙40。以下「乙40文献」という。),特開平8-92091に対応する1995年(平成7年)11月23日公開のドイツ連邦共和国特許公報DE4417742A1(乙42。以下「乙42公報」という。)の各記載によれば,殺虫剤の化合物を局所塗布することは通常行われていることであるから,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。 (2) また,本件各特許発明にいう相乗効果は,原告が新たに証拠として提出した実験でのみ説明されているのであって,本件明細書の発明の詳細な説明には,原告が主張するような相乗効果は記載されていないから,新たに提出した証拠は参酌することができない。 さらには,相乗効果 出した実験でのみ説明されているのであって,本件明細書の発明の詳細な説明には,原告が主張するような相乗効果は記載されていないから,新たに提出した証拠は参酌することができない。 さらには,相乗効果を確認する追加データとして原告により提出された,アラン・マルチオンド作成の1999年(平成11年)9月30日付け「米 - 28 -国特許出願第08/863,692号 37CFR 1.132の宣誓供述書」(甲3。以下「甲3文献」という。)及びヤング・ベテリナリー・リサーチサービス作成の「イヌについた,ネコノミ(Ctenocephalidesfelis,Bouche)の産卵された卵,羽化中及び既に寄生している成虫に対する,フィプロニルと(S)-メトプレンの併用滴下製剤の効力」と題する文献(甲25。 以下「甲25文献」という。)の試験には信頼性がない。まず甲25文献の表3は大きな誤差を含む結果であるし,表3と表4のメトプレン試験区の結果には不自然な点があるということができる。 そもそもノミの卵は,動物の生活環境中に落下し,そこで生育し,成虫になってから再度寄生するのであるから,卵の時点だけで相乗効果があったとしても,現実的には何の役にも立たない効果である。孵化率の低下というノミの生活環の一時点において効果があっても,成虫が寄生することを防止する効果は生じない。 さらには,メトプレンは光分解し,成分量が減少してしまうから,相乗量を維持することはできないし,深瀬徹作成の「犬と猫に寄生するイヌノミおよびネコノミに対するフィプロニルの滴下投与用液剤の駆除効果―(S)-メトプレン配合に意義はあるか―」と題する文献(乙43)にも,フィプロニル単独の製剤とフィプロニルにメトプレンを配合した製剤のどちらも同等のノミの再寄生を防ぐこと 滴下投与用液剤の駆除効果―(S)-メトプレン配合に意義はあるか―」と題する文献(乙43)にも,フィプロニル単独の製剤とフィプロニルにメトプレンを配合した製剤のどちらも同等のノミの再寄生を防ぐことが示されているから,フィプロニルにメトプレンを加えることで相乗効果があるとはいえない。イヌに投与したフィプロニルとメトプレンの薬剤(フロントラインプラス)は,早い段階から,イヌが接触する寝床に付着することが確認されたことからしても(乙15,20),殺虫効力が持続するのは,当然の効果であるということもできる。 (3) 加えて,平成6年3月9日に株式会社大阪製薬バイオサイエンス研究所発行の「衛生動物」45巻3号245ないし251頁に掲載された小林由明ら作成の「ネコノミに対する幼若ホルモン活性化合物Pyriproxyfe - 29 -n,methopreneの効果」と題する文献(乙56。以下「乙56文献」という。)には,本件特許の出願(優先日)以前に,ネコノミに対し,幼若ホルモン活性化合物として,ピリプロキシフェン,メトプレンのそれぞれについて,異なる殺卵効果を含む殺虫効果があったことが示されており,その効果は周知であって,本件各特許発明の相乗効果は否定される。 以上によれば,本件特許には特許法29条2項に違反する無効理由があり,特許法123条1項2号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 〔原告の主張〕(1) 被告は乙23文献,乙24文献,乙39文献,乙40文献及び乙42公報を挙げ,これらに記載のスポットオン製剤と乙1公報記載の発明とを組み合わせることで本件各特許発明に想到することは容易であったと主張する。 しかし,乙23文献及び乙2 9文献,乙40文献及び乙42公報を挙げ,これらに記載のスポットオン製剤と乙1公報記載の発明とを組み合わせることで本件各特許発明に想到することは容易であったと主張する。 しかし,乙23文献及び乙24文献については前記2〔原告の主張〕記載のとおりであるほか,乙39文献,乙40文献及び乙42公報についても,それらに記載された局所投与等はスポットオンとは実質的に異なること,及び対象とする化合物が異なるものであることから,フィプロニルを本件各特許発明のスポットオン製剤化する動機付けはない。 乙56文献についても,ピリプロキシフェン単独の殺卵効果について記載するものにすぎず,フィプロニルとメトプレンの組み合わせによる相乗効果等に関する記載はない。 (2) また,本件明細書の実施例には,2か月後においても高い殺卵効果を有していたことが記載されている。原告が証拠として提出した甲3文献,甲25文献の各論文等は,本件明細書に記載された相乗効果について追加データをもって確認したものである。 - 30 -そして,甲3文献及び甲25文献には,フィプロニルとメトプレンの併用は,ノミに対する殺卵効果及び成長阻害効果が顕著に高まり,相乗効果を有することが示されている。 以上によれば,本件特許に特許法29条2項に違反する無効理由があるとの被告の主張は理由がない。 4 争点(2)ウ(実施可能要件違反)について〔被告の主張〕(1) 請求項5(取下げ前の本件特許発明1)には,「下記式(I)で表される少なくとも種の化合物(A)と少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との相乗量」(構成要件1Aないし1B(3))との記載がある。しかし,フィプロニルと幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調 の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との相乗量」(構成要件1Aないし1B(3))との記載がある。しかし,フィプロニルと幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物の比率と思われるものが実施例に記載されてはいるものの,もう一つの構成要素であるスポットオン調合用アジュバントの具体的な比率や分量についての記載や示唆が一切ないため,スポットオン調合用アジュバントの比率や分量が不明である。 本件特許発明1の構成要素の全ての比率若しくは分量が不明であるため,本件特許発明1は当業者が明細書の記載に基づいて本件各特許発明を実施することができない。 さらに,本件明細書には「フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し,皮脂腺中に濃縮される。この皮脂腺から非常に長い期間にわたって化合物が徐々に放出される」(13頁26ないし27行)としているが,本件各特許発明は動物の皮膚に局所的に塗布することにより動物の体全体に広がる組成物であると仮定したとしても,または, - 31 -フィプロニルが皮脂中に留まったと仮定したとしても,皮脂腺と皮脂腺がつながって全身に張り巡らされているわけではないので,局所塗布後に当該組成物が動物の体全体に広がる説明になっておらず,不明確である。 本件特許発明1は発明の詳細な説明が,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,これは本件各特許発明についても同様である。 よって,本件特許には平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項に違反する無効理由があり,特許法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3によ て,本件特許には平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項に違反する無効理由があり,特許法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 (2) 原告の主張に対する反論ア原告は,発明の詳細な説明には,発明の作用機序が記載されている必要はないと主張する。 しかし,本件各特許発明は,公知物質であるフィプロニルとメトプレンを組み合わせた組成物であるのだから,なぜ相乗効果があり単独で使用するよりも優れているのかを説明するために,明細書において作用機序を開示するべきである。 イさらに原告は,本件明細書13頁26ないし27行の記載は,フィプロニルは塗布後①皮脂に溶解する,②皮脂の移動と共に動物の体全体を被覆する,③皮脂腺中に濃縮される,④皮脂腺から長期間にわたり徐々に放出される,という過程を経ることを開示するものである旨主張する。 しかし,本件明細書には,「フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し・・・」(13頁26行)とあるから,原告が主張する作用機序はフィプロニル単独の機能であって,メトプレン - 32 -と組み合わせた本件各特許発明の機能を説明するものではない。 〔原告の主張〕被告は,本件明細書に作用機序が記載されていないから,実施可能要件に違反すると主張する。 しかし,そもそも明細書に作用機序を記載する必要はない。 また,本件各特許発明に関しては,明細書に作用機序が記載されていなくとも,当業者が実施可能である。現に,被告は,本件各特許発明の技術的範囲に属する被告各製品を開発し,同製品は,本件各特許発明の実施品である原告製品(フロントラインプラス)と同等の効果 されていなくとも,当業者が実施可能である。現に,被告は,本件各特許発明の技術的範囲に属する被告各製品を開発し,同製品は,本件各特許発明の実施品である原告製品(フロントラインプラス)と同等の効果を発揮している(乙2)。 以上のとおり,本件特許は実施可能要件を満たし,特許法36条4項違反はない。 5 争点(2)エ(サポート要件違反)について〔被告の主張〕(1) 請求項5(取下げ前の本件特許発明1)には,「少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとからなる」との記載がある。しかし,「スポットオン調合用アジュバント」が何を指すのか明細書中に記載や示唆が一切ない。本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載されていないため,サポート要件に違反する。これは本件各特許発明についても同様である。 また,ダニに対する相乗効果については実験が行われておらず,本件明細書を参酌してもどのような相乗効果が存するのか分からないため,発明の詳細な説明に記載されていないにもかかわらず,ダニに対する相乗効果が特許請求の範囲に含まれていることになり,サポート要件に違反する。 以上のとおり,本件特許には特許法36条6項1号に違反する無効理由があり,特許法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべ - 33 -きものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 (2) 原告の主張に対する反論原告は,本件明細書には,「スポットオン調合用アジュバント」の例として,結晶化抑制剤や有機補助溶剤が記載されていると主張する。 しかし,「結晶化抑制剤」や「有機補助溶剤」が「スポットオン調合用アジュバント」の一種であるというならば,本件明細書中にスポットオン調合用アジュバントの例示であると明記す されていると主張する。 しかし,「結晶化抑制剤」や「有機補助溶剤」が「スポットオン調合用アジュバント」の一種であるというならば,本件明細書中にスポットオン調合用アジュバントの例示であると明記するべきである。 また,特許請求の範囲の記載においても,例えば請求項24は「結晶化抑制剤(b)を1~20%(W/V)の比率でさらに含む請求項5に記載の組成物」と記載されている。しかし,請求項24が従属する請求項5の記載は,「少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る」となっており,特許請求の範囲の記載からは請求項5に「結晶化抑制剤」を加えたように解釈でき,「結晶化抑制剤」が請求項5の「スポットオン調合用アジュバント」であるとは理解できない。 したがって,本件各特許発明は発明の詳細な説明に記載されていない構成を含み,サポート要件を満たさないから,特許法36条6項1号の規定に違反する。そうすると,本件特許は,特許法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 〔原告の主張〕(1) 被告は,本件明細書中に結晶化抑制剤や有機補助溶剤がスポットオン調合用アジュバントの例示であると明示されていないことを根拠に,本件各特許発明は発明の詳細な説明に記載されていない構成を含むと主張する。 - 34 -しかし,スポットオン調合用アジュバントが,その文言から,「スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤(製剤の働きを助けまたは効果を高める成分)」であることは当業者に明らかであり,また,本件明細書に記載の結晶化抑制剤や有機補助溶剤がその一例であることは,その記載から明らかである。 (2) また,被告は,請求項24の記載を引用し, 成分)」であることは当業者に明らかであり,また,本件明細書に記載の結晶化抑制剤や有機補助溶剤がその一例であることは,その記載から明らかである。 (2) また,被告は,請求項24の記載を引用し,結晶化抑制剤がスポットオン調合用アジュバントには含まれないと主張するが,それがなぜ記載要件違反(36条6項1号違反)となるのかは不明である。しかし,いずれにせよ請求項24は,請求項5にかかる組成物において結晶化抑制剤以外のスポットオン調合用アジュバントを用いる場合において,結晶化抑制剤を一定量加えるというものであって,結晶化抑制剤がスポットオン調合用アジュバントではないことを示唆するものではない。 したがって,本件特許は,サポート要件を満たし,特許法36条6項1号違反はない。 6 争点(2)オ(明確性要件違反)について〔被告の主張〕(1) 本件特許は,フィプロニルと幼虫ホルモンを組み合わせた組成物が相乗効果を有するとし,その組成物が特許請求の範囲に記載されている。しかし,本件明細書には,記載されている組成物がどのような組成物と比較してどのような相乗効果を有するのかは明確に記載されておらず,それについての試験成績の科学的根拠について本件明細書中で全く示されていない。 また,本件特許発明1に記載の「少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバント」について説明する記載が一切なく,「スポットオン調合用アジュバント」が何を表しているか不明である。 - 35 -さらに,本件特許の特許請求の範囲請求項1に記載の「スポットオン用アジュバント」と同請求項5(取下げ前の本件特許発明1)に記載の「スポットオン調合用アジュバント」の名称が異なるため,これらが同一物質か否か不明である。 本件特許発明1に係る請求項5の記載は ン用アジュバント」と同請求項5(取下げ前の本件特許発明1)に記載の「スポットオン調合用アジュバント」の名称が異なるため,これらが同一物質か否か不明である。 本件特許発明1に係る請求項5の記載は,「下記式(I)で表される少なくとも種の化合物(A)」となっており,「少なくとも種」とは何を示すのか不明確である。 したがって,本件各特許発明は,不明確である。 本件特許には特許法36条6項2号に違反する無効理由があり,特許法123条1項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3により原告は権利を行使することができない。 (2) 原告の主張に対する反論原告は,相乗効果は殺卵効果及び成長阻害効果に対するものであると主張する。 しかし,請求項5は,「ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有する」と記載しているところ,この「相乗効果」が卵,幼虫,成虫のいずれに対する「相乗効果」を発揮するのかは本件明細書の記載を参酌しても不明である。 〔原告の主張〕(1) 前記4,5〔原告の主張〕のとおり「スポットオン調合用アジュバント」の意義は明確であり,また「少なくとも種」は,該当する本件明細書10頁19ないし20行にも「少なくとも一つの」と記載されているとおり,「少なくとも一種」の誤記であることが明白である。また,本件各特許発明は,フィプロニルとメトプレンがそれぞれ有する効果の少なくともいずれかにあ - 36 -れば足りるものであるから,それらの効果との関係で発明が不明確となるものではない。 したがって,本件特許は,明確性に欠けることはなく,特許法36条6項2号違反はない。 (2) なお,化合物(A)と化合物(B)の相乗量から成るとの特許請求の範囲の文言か となるものではない。 したがって,本件特許は,明確性に欠けることはなく,特許法36条6項2号違反はない。 (2) なお,化合物(A)と化合物(B)の相乗量から成るとの特許請求の範囲の文言からは,両化合物を組み合わせて成る組成物が,化合物(A)または化合物(B)をそれぞれ単独で含む組成物と比較して,相和以上の効果を生じる意味であることは明らかである。 そして,どのような相乗効果を有するのかについて,特許請求の範囲に記載がないとしても,発明の特定に欠けるものではない。本件各特許発明に係る組成物が化合物(A)または化合物(B)単独で使用した場合に比べ,高い相乗効果を有することは,甲3文献等から明らかである。 そして,「スポットオン調合用アジュバント」は,スポットオン製剤の調合に用いられる補助剤を意味することはその文言から明らかであるし,本件明細書の記載を参酌すれば,より明確であるということができる。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(構成要件1Cの充足性)について(1) 本件明細書には,以下の記載がある(以下,それぞれ「摘記事項ア」ないし「摘記事項ヌ」という。)。 ア 「本発明は哺乳動物のノミ,特に猫および犬のノミの防除方法の改良に関するものである。 本発明はさらに,この用途として既に公知の殺虫剤の新規な組合せにクレーム基ずく(判決注;ママ)相乗効果を有する組成物に関するものである。 本発明はさらに,この組成物を製造するための公知殺虫剤の使用に関 - 37 -するものである。」(6頁末行ないし7頁2行)イ 「本発明の方法および組成物の非常に高い効力は,即効性だけではなく,動物に処置した後の非常に長い間持続効果も含むものである。」(7頁30ないし31行)ウ 「本発明の対象は, いし7頁2行)イ 「本発明の方法および組成物の非常に高い効力は,即効性だけではなく,動物に処置した後の非常に長い間持続効果も含むものである。」(7頁30ないし31行)ウ 「本発明の対象は,皮膚への局所塗布に適した動物に塗布適可能な(判決注;ママ)流体ビヒクル中に,少なくとも一種の下記式(I)の化合物(A)とIGR(虫の成長調節剤)タイプの少なくとも一種の化合物(B)とを殺虫剤として有効な量および比率で含む,皮膚に局所的(好ましくは限定した小表面積上)に塗布(点状塗布)することによって動物を処置することを特徴とする,小哺乳動物,特に猫および犬のノミを長期間防除する方法にある」(7頁32ないし36行)エ 「」(7頁37ないし44行)オ 「本発明で特に好ましい式(I)の化合物は1-[2,6-Cl24-CF3フェニル]3-CN4-[SO-CF3]-5-NH2ピラゾールであり,その一般名はフィプロニルである。」(9頁8ないし9行)カ 「化合物(B)としては特に幼虫ホルモンによく似た化合物,特に下記のものを挙げることができる:アザジラクチン-アグリジン・・・ヒドロプレン(サンドス)キノプレン(サンドス) - 38 -メトプレン(サンドス)ピリプロキシフェン(住友/Mgk)・・・キチン合成抑制剤,特に下記のものを挙げることができる:クロルフルアズロン(石原産業)・・・これらの化合物は国際一般名(イギリス,クライヴ・トムリン編殺虫剤マニュアル1994年第10版)で定義される。 また,キチン合成抑制剤として・・・1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-(2-フルオロ-4-トリフルオロ-メチル)フェニルウレアを挙げることができる。」(9頁13ないし42行)キ 「好ま また,キチン合成抑制剤として・・・1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-(2-フルオロ-4-トリフルオロ-メチル)フェニルウレアを挙げることができる。」(9頁13ないし42行)キ 「好ましい化合物(B)はメトプレン,ピリプロキシフェン,ヒドロプレン,シロマジン,ルフェヌロンおよび1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-(2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルウレアである。」(9頁44ないし46行)ク 「本発明のさらに他の対象は,皮膚への局所塗布,特に小表面積に限定した塗布に適した,動物に適用可能な流体ビヒクル中に,上記定義の式(I)の少なくとも一つの化合物(A)と上記定義の化合物(B)とをノミの駆除に有効な量および比率で含むことを特徴とする組成物,特に小哺乳動物のノミを防除するための組成物にある。」(10頁18ないし21行)ケ 「本発明で特に好ましい式(I)の化合物は1-[2,6-Cl24-CF3フェニル]-3-CN4-[SO-CF3]5-NH2-ピラゾールである。」(11頁5ないし6行)コ 「上記のIGRタイプの化合物の中ではメトプレン,ピリプロキシフェン,ヒドロプレン,シロマジン,ルフェヌロンおよび1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-(フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルウレア - 39 -が好ましい。・・・」(11頁14ないし16行)サ 「式(I)の化合物と化合物(B)との重量比は80/20~20/80の範囲にあるのが好ましい。」(11頁17ないし18行)シ 「点状塗布用組成物はさらに下記b)~d)を含むのが好ましい:b) 結晶化抑制剤,特に1~20%(W/V),好ましくは5~15%の比率で存在するもの。下記c)で定義される溶剤中に10%(W/V)の 点状塗布用組成物はさらに下記b)~d)を含むのが好ましい:b) 結晶化抑制剤,特に1~20%(W/V),好ましくは5~15%の比率で存在するもの。下記c)で定義される溶剤中に10%(W/V)の式(I)の化合物と,この抑制剤10%とを含む0.3mlの溶液Aをガラススライド上に20℃で24時間載せ,ガラススライド上に結晶がわずかにあるか全くない,特に10個以下の結晶があるか,好ましくは全く結晶がないことが肉眼で確認できる抑制剤,c) 誘電率が10~35,特に20~30の有機溶剤;この溶剤c)の含有率は組成物全体100%となる値である。 d) 沸点が100℃以下,好ましくは80℃以下で,誘電率が20~30の有機補助溶剤;この補助溶剤は,d)/c)の重量/重量(W/W)比が1~15~1/2の範囲にあるのが好ましい。この溶剤は特に乾燥促進剤として作用するように揮発性で,水および/または溶剤c)と混和性である。」(11頁21ないし32行)ス 「本発明の点状塗布用の組成物は空気酸化を抑制するための酸化防止剤を含むことができる。・・・」(11頁35ないし36行)セ 「ペット,特に,猫および犬を対象とする本発明の組成物は一般に皮膚に塗布して使用する(「点状」または「流し込み」塗布)。これは一般に2ヵ所で,好ましくは動物の両肩の間に位置する10cm2以下,特に5~10cm2の表面積に対する局部的な塗布である。本発明組成物は一度塗布すると動物の体全体に広がってゆき,結晶化したり,毛の外観または手触りを変えたりすることなく(特に,白っぽい付着物や埃っぽい外観がない),乾燥する。 - 40 -本発明の点状塗布用組成物は塗布および乾燥後の効果,作用の速さ,動物の毛の好ましい外観という点で特に有利である。」(11頁37な い外観がない),乾燥する。 - 40 -本発明の点状塗布用組成物は塗布および乾燥後の効果,作用の速さ,動物の毛の好ましい外観という点で特に有利である。」(11頁37ないし43行)ソ 「本発明で使用できる有機溶剤c)としては,アセトン,アセトニトリル,ベンジルアルコール,ブチルジグリコール,ジメチルアセトアミド,ジメチルホルムアミド,ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル,エタノール,イソプロパノール,メタノール,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノメチルエーテル,モノメチルアセトアミド,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,液体ポリオキシエチレングリコール,プロミレングリコール,2-ピロリドン,特に,N-メチルピロリドン,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールおよびフタル酸ジエチルあるいはこれら溶剤の少なくとも二つの混合物を挙げることができる。」(11頁44ないし12頁1行)タ 「本発明で使用できる結晶化抑制剤b)としては特に下記のものを挙げることができる:〔1〕ポリビニルピロリジン,ポリビニルアルコール,酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマー,ポリエチレングリコール,ベンジルアルコール,マンニトール,グリセロール,ソルビトール,ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル;レシチン,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,メタクリル酸塩等のアクリル誘導体,〔2〕アルカリ性ステアレート,特に,ステアリン酸ナトリウム,カリウムまたはアンモニウム;ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸トリエタノールアミン;アビエチン酸ナトリウム;硫酸アルキル,特に硫酸ナトリウムラウリルおよび硫酸ナトリウムセチル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ジオクチルス リン酸カルシウム;ステアリン酸トリエタノールアミン;アビエチン酸ナトリウム;硫酸アルキル,特に硫酸ナトリウムラウリルおよび硫酸ナトリウムセチル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム;脂肪酸,特 - 41 -にヤシ油から得られた脂肪酸等の陰イオン界面活性剤,〔3〕式N+R'R”R”'R” ”,Y-(ここで,基Rは,必要に応じてヒドロキシル化した炭化水素基であり,Y-はハロゲン化物,硫酸塩およびスルホン酸塩陰イオン等の強酸の陰イオンである)で表される水溶性第4アンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤;臭化セチルトリメチルアンモニウムは使用できる陽イオン界面活性剤に含まれる,〔4〕式N+R'R”R”'(ここで,基Rは必要に応じてヒドロキシル化した炭化水素基であり)で表されるアミン。オクタデシルアミン塩酸は使用できる陰イオン界面活性剤に含まれる,〔5〕必要に応じてポリオキシエチレン化したソルビタンエステル,特にポリソルベート80,ポリオキシエチレン化アルキルエーテル;ステアリン酸ポリエチレングリコール,キャスターオイルのポリオキシエチレン化誘導体,ポリグリセロールエステル,ポリオキシエチレン化脂肪アルコール,ポリオキシエチレン化脂肪酸,酸化エチレンおよび酸化プロピレンのコポリマー等の非イオン界面活性剤,〔6〕ベタインの置換ラウリル化合物等の両性界面活性剤,あるいは,これら結晶化抑制剤の少なくとも二つの混合物。 特に好ましくは,一対の結晶化抑制剤,すなわちポリマータイプの皮膜形成剤と界面活性剤との組合せを用いる。 これらの薬剤の中では特に結晶化抑制剤b)として挙げた化合物から選択する。特に有利なポリマータイプの皮膜形成剤としては下記のものを挙げることができる:各 形成剤と界面活性剤との組合せを用いる。 これらの薬剤の中では特に結晶化抑制剤b)として挙げた化合物から選択する。特に有利なポリマータイプの皮膜形成剤としては下記のものを挙げることができる:各種ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,ならびに酢酸ビニルとビニルピロリドンのコポリマー。 また,界面活性剤としては非イオン界面活性剤,好ましくはポリオキシ - 42 -エチレン化ソルビタンエステル,特に,各種のポリソルベート,例えばポリソルベート80を挙げることができる。 皮膜形成剤および界面活性剤は上記結晶化抑制剤の全体量の範囲内または同一量で均質混合することができる。 上記組合せによって動物の毛で結晶化せず,被膜の外観が非常に好ましい,高濃度の活性材料にしても粘着性または粘着質外観を帯びる傾向がないという目的を達成することができる。」(12頁2ないし40行)チ 「補助溶剤d)としては特に無水エタノール,イソプロパノール,メタノールを挙げることができる。」(12頁41ないし42行)ツ 「本発明の点状塗布用組成物は一般に上記定義の構成要素を単純に混合するだけで製造できるる(判決注;ママ)が,まず第1に活性材料を主溶剤中に混合した後に他の成分または補助剤を添加すう(判決注;ママ)のが有利である。」(12頁46ないし48行)テ 「本発明の組成物は,一般に動物の両肩の間の皮膚の小面積に点状塗布するための濃縮乳濁液,懸濁液または溶液の形にするのが特に好ましい(点状塗布溶液)。明らかにこれにより好ましくはないが,噴霧用溶液または懸濁液の形,動物の体に流したい(判決注;ママ),塗り付ける溶液,懸濁液または乳濁液の形(流し込み溶液),オイル,クリーム,軟膏あるいは局所投与用のその他任意の流体配合物の形にす ,噴霧用溶液または懸濁液の形,動物の体に流したい(判決注;ママ),塗り付ける溶液,懸濁液または乳濁液の形(流し込み溶液),オイル,クリーム,軟膏あるいは局所投与用のその他任意の流体配合物の形にすることができる。」(13頁1ないし5行)ト 「・・・点状塗布用の直ちにに(判決注;ママ)使用可能な組成物の投与量の組成は1~20mg/kg,好ましくは2~10mg/kgの化合物(A),特にフィプロニルと,1~30mg/kg,好ましくは2~10mg/kgの化合物(B)または10~20mg/kgの別の化合物(B)とを含む。」(13頁7ないし10行)ナ 「本発明の組成物,特に,点状塗布用の組成物は,哺乳動物,特に猫や - 43 -犬等の小哺乳動物のノミに対する非常に長く持続する処置として極めて有効であることが証明されている。 フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し,皮脂腺中に濃縮される。この皮脂腺から非常に長い期間にわたって化合物が徐々に放出されるという発見はこれら組成物の効力の長い持続性をよく説明するものであり,おそらく併用する化合物(B)の作用の長い持続性も説明できるであろう。」(13頁24ないし29行)ニ 「本発明はさらに,その他の寄生虫,特にダニに対しても効果を発揮し,本発明の組成物の使用は獣医学の基準に従い,実際に得られる真の効用を持つことが証明される外部寄生虫,あるいは,内部寄生虫の防除にまで拡大することができる。従って,例えばフィプロニルおよびフルアズロンを基材とする組成物はダニに対して使用することも可能である。・・・」(13頁30ないし33行)ヌ 「本発明の別の利点および特徴は下記の説明から明らかになるであろう。 しかし,本発明が下記実施例に限定されるものでは 物はダニに対して使用することも可能である。・・・」(13頁30ないし33行)ヌ 「本発明の別の利点および特徴は下記の説明から明らかになるであろう。 しかし,本発明が下記実施例に限定されるものではない。 実施例以下に説明する組成物製造の実施例では式(I)の化合物(A)としてフィプロニルとして知られる化合物を使用する。 本発明の皮膚への局部塗布用組成物の製造例では下記の構成要素を混合するのが有利である:a1 化合物(B)を1~20%の比率(単位容量当たりの重量としての百分率W/V)a2 式(I)の化合物(A)を1~20%,好ましくは5~15%の比率(単位容量当たりの重量としての百分率W/V)例えば,本発明組成物は構成要素b,cおよびdの各々の代表要素を含 - 44 -む液体媒質中に化合物(A)および(B)を下記の濃度〔P/V〕で含む(合計容量は1mlである)。 実施例1フィプロニル 10%ピリプロキシフェン 5%実施例2フィプロニル 5%ピリプロキシフェン 5%実施例3フィプロニル 5%ピリプロキシフェン 20%実施例4フィプロニル 10%メトプレン 30%実施例5フィプロニル 10%1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-(2-フルオロ-4-トリフルオロメチル)フェニルウレア 5%猫は一匹につき100匹のノミを寄生させ,10日毎に寄生を繰り返した。 最初の徴候と同時に0.1ml/kgの実施例1の組成物を皮膚に局部塗布した。処置の2ヵ月後で最後の寄生から10日後にノミは検出されず,収集した卵は生存能力がなかった。 実施例1および実施例2の組成物を用いて同じ方法で処置した犬は,組成物の塗布から2ヵ月後に同じ処置効果を示した。」(13頁37行な ら10日後にノミは検出されず,収集した卵は生存能力がなかった。 実施例1および実施例2の組成物を用いて同じ方法で処置した犬は,組成物の塗布から2ヵ月後に同じ処置効果を示した。」(13頁37行ないし14頁末行)(2) 前記第2,1(5)ないし(7)及び上記(1)の本件明細書の記載によれば,本 - 45 -件各特許発明は,ノミ類及びダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物に関し,従来,共に殺虫剤として公知の化合物である,摘記事項ウ,エ記載の式(I)で表される化合物(A)と,虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)を,相乗効果が奏される量で組合せて用いるものであり,これにより,「即効性だけではなく,動物に処置した後の非常に長い持続効果」(摘記事項イ)が奏されるものである。そして,本件特許発明3及び本件訂正発明1においては,化合物(A)として,フィプロニルを用いること,本件特許発明4及び本件訂正発明2においては,化合物(B)として,メトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択されるものを用いること,さらに,本件特許発明5及び本件訂正発明3においては,化合物(A)と化合物(B)の重量比が80/20~20/80であること,とそれぞれ特定する発明であると認められる。 (3) 「スポットオン調合用アジュバント」の意義被告は,被告各製品に含まれるクロタミトンは,構成要件1Cにいう「スポットオン調合用アジュバント」には当たらない旨主張するので,以下,検討する。 本件明細書には「スポットオン」ないし「スポットオン調合用アジュバント」の意味するところについて直接の記載はないが,「スポットオン」が局所塗布の意味を含むことは技術常識 るので,以下,検討する。 本件明細書には「スポットオン」ないし「スポットオン調合用アジュバント」の意味するところについて直接の記載はないが,「スポットオン」が局所塗布の意味を含むことは技術常識であり(後記3(2)ア(ア)の乙23公報,乙24公報,乙42公報各記載のとおり),この点については当事者間に争いもないところ(平成26年5月29日付け被告準備書面(5)24頁等),前記(1)のとおり,本件明細書には「皮膚に局所的(好ましくは限定した小面積上)に塗布(点状塗布)する」(摘記事項ウ),「本発明の点状塗布用の組成物」(摘記事項セ。なお摘記ツにも同旨記載),「本発明の組成物は,一般に動物の両肩の間の皮膚の小面積に点状塗布するため - 46 -の濃縮乳濁液,懸濁液または溶液の形にするのが特に好ましい(点状塗布溶液)。」(摘記事項テ)等と記載されているところからみて,本件特許の構成要件1Cにいう「スポットオン」とは,点状塗布をいうものと解される。 そして,「アジュバント」については,英語の「adjuvant」が「補助剤(農薬)」を意味するとされること(甲18,「科学技術35万語大辞典」),アジュバントに関する記載として,「アジュバントは,殺虫剤の働きを助け,又は効果を向上させる。その例には,湿潤剤,散布剤,乳化剤,分散剤,溶媒,可溶化剤,貼付剤及び界面活性剤が含まれる」(甲19,「カルバリル,カーボフラン及びメトミルを含む殺虫剤が環境に及ぼす影響についての,米国国立海洋庁の海洋水産局の意見書」)とするものがあり,これは本件特許の優先日当時の技術常識を示すものと認められること,一般に,「用」の語について,これが接尾語的に用いられる場合は,「・・・に使うためのものの意を表す。」(広辞苑第6版,2882頁)とされ は本件特許の優先日当時の技術常識を示すものと認められること,一般に,「用」の語について,これが接尾語的に用いられる場合は,「・・・に使うためのものの意を表す。」(広辞苑第6版,2882頁)とされていること等によれば,「スポットオン調合用アジュバント」については,「スポットオン用組成物の調合に使うための補助剤」の意味であると解することができる。 (4) クロタミトンの「スポットオン調合用アジュバント」該当性被告各製品における溶解補助剤としてクロタミトンが添加されていることは当事者に争いがないところ,溶解補助剤の意義について「難溶性の物質に別の物質を加えると,溶液中で二つの物質が何らかの形で結合し,この結合したものがよく溶けることがある。このようにして難溶性物質の溶液を作ることができるが,このとき加える物質が溶解補助剤である。」(甲35,「薬科学大辞典」)とされることから,溶解補助剤とは,文字通り成分の溶解を補助する剤を意味すると解される。そして,「調合」については,「数種の薬剤をまぜ合わせて,ある薬をつくること。」(広辞 - 47 -苑第6版,1827頁)とされていることから,被告各製品に溶解補助剤として含まれるクロタミトンは,二つの主剤であるフィプロニルとメトプレンとを調合しスポットオン用組成物である被告各製品とするための補助剤であるものと理解することができる。そうすると,被告各製品に溶解補助剤として添加されたクロタミトンは,「スポットオン調合用アジュバント」に該当するというべきである。 以上により,被告各製品はクロタミトンの存在により「スポットオン調合用アジュバント」を含有すると認められるから,被告各製品は構成要件1Cを充足するというべきである。 (5) VC-713及びポリオキシエチレンフィトス 品はクロタミトンの存在により「スポットオン調合用アジュバント」を含有すると認められるから,被告各製品は構成要件1Cを充足するというべきである。 (5) VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールの「スポットオン調合用アジュバント」該当性原告は,被告各製品に含まれるVC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールについても,「スポットオン調合用アジュバント」に当たる旨主張するので,この点についても判断する。 被告各製品には,別紙被告各製品説明書記載3(1)ウ,エのとおり,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールがいずれも溶解補助剤として添加されていることについては争いがないところ,VC-713につき,甲37文献には,その特性について「VC-713は,陽イオン性の機能を有する被膜形成剤であり,水溶性は,シャンプーにより髪の毛から除去するのを容易にする」と,その用途について「被膜形成及びヘアスプレー中のヘア固定剤」と,それぞれ記載されている。 また,ポリオキシエチレンフィトステロール(混合されたフィトステロールのポリ(オキシエチレン)付加体)については,甲38の1文献及び甲38の2文献には,その「使用パターン」として,殺虫剤の「界面活性剤,関連するアジュバント」として使用するとされている。 これら文献の記載に照らすと,被告各製品に溶解補助剤として添加され - 48 -たVC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールは,いずれも皮膜形成剤ないし界面活性剤であり,結晶化抑制剤としての性質を有すると認めることができる。 そうすると,前記(4)で認定した溶解補助剤の意義からすれば,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールについても,クロタミトンと同様に「スポットオン調合用アジュ と認めることができる。 そうすると,前記(4)で認定した溶解補助剤の意義からすれば,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールについても,クロタミトンと同様に「スポットオン調合用アジュバント」に該当するものというべきである。 (6) 被告の主張に対する判断ア被告は,結晶化抑制剤は本件各特許発明の「スポットオン調合用アジュバント」に該当しない旨主張する。 しかし,本件明細書には,「点状塗布用組成物はさらに下記b)~d)を含むのが好ましい:b)結晶化抑制剤・・・。」(摘記事項シ)と記載されており,点状塗布用組成物において,結晶化抑制剤は動物の毛で成分が結晶化せずに毛の外観,手触りを変えないようにするために添加されるものであることも記載されていることから(摘記事項シ,同セ),結晶化抑制剤は,点状塗布用組成物の調合に使うための補助剤,すなわち「スポットオン調合用アジュバント」であると理解することができる。 そうすると,たとえ本件明細書にクロタミトンが明示的に記載されていないとしても,結晶化抑制剤であるクロタミトンは,構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」に該当すると解するのが相当である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 イこの点に関して被告は,被告各製品に含まれるクロタミトンは,本件明細書において結晶化抑制剤として挙げられたポリビニルピロリドンとは結晶化を抑制する詳細な作用機序が異なる,具体的には,結晶化抑制 - 49 -剤を分類すると結晶核生成阻害物質と結晶核成長阻害物質とすることができるとした上で,クロタミトンは前者に,本件明細書において結晶化抑制剤として挙げられた物質はいずれも後者に属するから,作用機序が異なり構成要件1Cを充足しない旨主張す 晶核成長阻害物質とすることができるとした上で,クロタミトンは前者に,本件明細書において結晶化抑制剤として挙げられた物質はいずれも後者に属するから,作用機序が異なり構成要件1Cを充足しない旨主張する。 しかし,前記(4)のとおり認められる溶解補助剤及び前記(6)アのとおり認められる結晶化抑制剤の意義からして,成分の結晶化を抑制するという最終的な作用としては,結局被告の主張する両結晶化阻害物質は同じものであって,いずれにしろ溶解補助剤として構成要件1Cにいう「スポットオン調合用アジュバント」に該当するものというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウさらに被告は,VC-713は被告各製品において展着剤として配合していること,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールについても,本件明細書に結晶化抑制剤ないし非イオン化界面活性剤として列挙された物質等とは異なること等を理由に,いずれも「スポットオン調合用アジュバント」に当たらない旨主張する。 まず展着剤の意義については,「多くの展着剤は,界面活性剤を主成分とする粘稠な液体で」あり(甲44),「表面活性剤」である(甲45。なお界面活性剤と同義)とされるところ,被告は,被告各製品の承認申請において,VC-713につき,それと記載することが可能な粘稠剤,粘稠化剤ないし界面活性剤ではなく(乙30),溶解補助剤として記載していること(乙27),前記(5)のとおりVC-713は皮膜形成剤であり結晶化抑制作用を有することからすれば,展着剤として配合されているとして「スポットオン調合用アジュバント」には当たらないとする被告の主張には理由がないというべきである。 また,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールが,本件明細書に結晶化抑制剤ないし非イオ 「スポットオン調合用アジュバント」には当たらないとする被告の主張には理由がないというべきである。 また,VC-713及びポリオキシエチレンフィトステロールが,本件明細書に結晶化抑制剤ないし非イオン化界面活性剤として列挙された - 50 -物質等とは異なるとしても,いずれも前記(5)のとおり溶解補助剤として機能することからすれば,いずれも構成要件1Cにいう「スポットオン調合用アジュバント」に当たると解するのが相当である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (7) なお,構成要件1C以外の充足性については,前記第2,1(10)のとおり,当事者間に争いがないか少なくとも被告は明らかに争っていないものと認められるが,被告は,平成27年1月27日付け被告準備書面(7)22ないし23頁において,以下のようにも主張しているので,念のため,その内容につき検討する。 被告は,上記準備書面において,①構成要件1Aにおける「液体賦形剤」については,構成要件1Cの「アジュバント」とどのように区別されるのか不明であるから明確性要件に違反し,その範囲が不明確である,②構成要件1B(2)の「少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)との点,及び,構成要件4Aの「IGRタイプの化合物がメトプレン,ピリプロキシフェン,ルフェヌロン,ヒドロプレンおよびクリロマジンから選択される」は,いずれも原告自身が形式的瑕疵の存在を認め訂正の用意があるとして未確定の範囲である,③構成要件1Dの「ダニ類」に対する点,及び「長期間保護するための相乗効果」については認められないことから未確定の範囲である,等の理由により,被告各製品の成分と比較ができないなどとする。 これらの被告の主張はい の「ダニ類」に対する点,及び「長期間保護するための相乗効果」については認められないことから未確定の範囲である,等の理由により,被告各製品の成分と比較ができないなどとする。 これらの被告の主張はいずれも判然とはしないものの,上記①の点について,「賦形剤」とは「薬剤を服用しやすくするなどのために加える物質。 水薬における蒸留水,散薬における乳糖など。成形薬。補形薬。」(広辞苑第6版,2444頁)とされているところ,本件明細書の摘記事項ウ,同ク,同テ等によれば,構成要件1Aの「液体賦形剤」については,主剤を溶解して局所塗布可能とする溶剤を指すものとして明確であり,被告各 - 51 -製品は局所塗布するために主剤を溶解する溶剤を含むことに争いはないから,構成要件1Aを充足する。 また,②の点について,なるほど原告は本件訂正発明2(訂正後請求項10)の構成要件4Aに記載された化合物のうちのルフェヌロン及びクリロマジンにつき,キチン合成阻害剤が審査の過程で誤って残ってしまった形式的瑕疵であり原告はこれを削除する予定であるとしている(平成26年7月29日付け原告代理人作成の特許庁審判長宛て「上申書(3)」と題する書面。乙58)。しかし,被告各製品において構成要件の充足性が問題とされているのは,構成要件4Aで示され,被告各製品が主剤として含むことに争いのないメトプレンであり,構成要件4Aに示されたルフェヌロン及びクリロマジンについて請求項からの削除の有無ないし可否にかかわらず,その充足性に問題はないというべきである。 さらに,③の点については,後記3(2)イ,5(1)イ,6(1)のとおり,本件各特許発明につき,「ダニ類」に対する効果及び「長期間保護するための相乗効果」について,これらはいずれも認められるものであって,本 の点については,後記3(2)イ,5(1)イ,6(1)のとおり,本件各特許発明につき,「ダニ類」に対する効果及び「長期間保護するための相乗効果」について,これらはいずれも認められるものであって,本件特許の有効性に問題はなく,被告各製品の構成要件充足性についても問題となる点は認められない。 以上のとおり,被告の上記主張は判然とはしないものの,いずれにしても理由がないことは明らかである。 2 争点(2)ア(乙1公報に基づく新規性欠如)について(1) 乙1公報には,以下の記載がある。 ア特許請求の範囲(ア) 請求項1「昆虫成長制御活性化合物と4-(2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル)-1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル - 52 -ピリジン-2-イル)-2-メチルイミダゾール,5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾールおよび5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾールからなる群より選ばれる一種以上のN-アリールジアゾール化合物とを有効成分として含有することを特徴とする害虫防除剤。」(イ) 請求項2「昆虫成長制御活性化合物が幼若ホルモン活性化合物である請求項1記載の害虫防除剤。」イ発明の詳細な説明・ 「【化3】 で示される5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾール〔以下,化合物Cと記す。〕からなる群より選ばれる一種以上のN-アリールジアゾール化合物とを有効成分として含有する害虫防除剤(以下,本発明組 ロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾール〔以下,化合物Cと記す。〕からなる群より選ばれる一種以上のN-アリールジアゾール化合物とを有効成分として含有する害虫防除剤(以下,本発明組成物と記す。)である。上述のN-アリールジアゾール化合物は特開平4-211682号公報および特開昭63-316771号公報に記載の化合物であり,該公報の記載にしたがっ - 53 -て製造される。」(段落【0004】)・「本発明において用いられる昆虫成長制御活性化合物としては,例えば以下に示されるような幼若ホルモン活性化合物やキチン合成阻害剤を挙げることができる。幼若ホルモン活性化合物としては,例えば以下のものが挙げられる。 (1)4-フェノキシフェニル 2-(2-ピリジルオキシ)プロピルエーテル〔ピリプロキシフェン〕・・・(3)イソプロピル (2E,4E)-11-メトキシ-3,7,11-トリメチル-2,4-ドデカジエノエート〔メソプレン〕・・・(5)エチル (2E,4E)-3,7,11-トリメチル-2,4-ドデカジエノエート〔ヒドロプレン〕」(段落【0005】)・「また,キチン合成阻害剤としては,例えば・・・および以下に示されるベンゾイル尿素系化合物(7)1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-〔2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル〕ウレア・・・」(段落【0006】)・「本発明組成物中の有効成分化合物は,通常,固体担体や液体担体と混合し,必要により界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加して,油剤,乳剤,粉剤,燻煙剤,エアゾール,液化炭酸ガス製剤,毒餌剤,樹脂剤などに製剤された本発明組成物として用いられる。これらの製剤中には,有効成分化合物は合計量で通常 0.001~95 を添加して,油剤,乳剤,粉剤,燻煙剤,エアゾール,液化炭酸ガス製剤,毒餌剤,樹脂剤などに製剤された本発明組成物として用いられる。これらの製剤中には,有効成分化合物は合計量で通常 0.001~95重量%含有される。」(段落【0009】) - 54 -・「・・・このようにして成型された本発明組成物を,さらに適宜成型,裁断等の工程を経て動物用防虫首輪とすることもできる。さらに,毒餌剤用の餌物質および誘引物質としては,例えば小麦粉,トウモロコシ粉等の穀粉,ポテトスターチ,コーンスターチ等の澱粉,グラニュー糖,麦芽糖,蜂蜜等の糖類,グリセリン,オニオンフレーバー,ミルクフレーバー,バターフレーバー,ストロベリーフレーバー等の食品フレーバー,蛹粉,魚粉,オキアミ粉等の動物性粉末,各種フェロモンなどが挙げられる。」(段落【0011】)・「このようにして得られる本発明組成物は,そのままであるいは水等で希釈して用いられる。乳剤等は,一般に水で希釈して有効成分化合物を重量割合で1~10000ppm程度含む希釈液にして施用し,油剤,エアゾール,燻煙剤,樹脂剤,毒餌剤等はそのまま施用する。本発明組成物の施用量は,防除対象害虫の種類,製剤の種類,施用場所,施用方法等により異なるが,一般に 0.0001 ~ 10 g/m2 程度である。」(段落【0012】)・「以下,本発明を製剤例および試験例にてより具体的に説明するが,本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。 製剤例1N-アリールジアゾール化合物0.1重量部および昆虫成長制御活性化合物0.1重量部を脱臭ケロシン59.8重量部に溶解し,エアゾール容器に入れる。エアゾール容器にバルブ部分を取り付け,該バルブ部分を通じプロパンガス40.0重量部を加圧充填することに 成長制御活性化合物0.1重量部を脱臭ケロシン59.8重量部に溶解し,エアゾール容器に入れる。エアゾール容器にバルブ部分を取り付け,該バルブ部分を通じプロパンガス40.0重量部を加圧充填することにより油性エアゾールを得る。 製剤例2 - 55 -N-アリールジアゾール化合物0.2重量部および昆虫成長制御活性化合物0.2重量部を脱臭ケロシン14.6重量部に溶解し,これに塩化メチレン40.0重量部と1,1,1-トリクロロエタン17. 0重量部とを添加し,エアゾール容器に入れる。エアゾール容器にバルブ部分を取り付け,該バルブ部分を通じプロパンガス28.0重量部を加圧充填することにより油性トータルリリースエアゾールを得る。」(段落【0013】)・「製剤例3・・・打錠成型し,毒餌剤を得る。 製剤例4・・・ペット用防虫首輪を得る。」(段落【0014】)・「以下,試験例にて本発明組成物の効果を具体的に示すが,試験例中,昆虫成長制御活性化合物およびN-アリールジアゾール化合物は前述の化合物記号および化合物番号で表す。 試験例1N-アリールジアゾール化合物Bと昆虫成長制御活性化合物(7)とを所定割合に混合したもの5重量部,ソルポールSM200(東邦化学製界面活性剤)10重量部およびキシレン85重量部を混合して乳剤を得た。該乳剤を蒸留水で250倍に希釈し,得られた希釈液をピペットにて15cm×15cmの化粧板6枚に50ml/m2 塗布した。2.0m×1.25m の試験容器の中の対角線上の2隅に餌と水とを置き,餌と水とを囲うように各隅に3枚ずつの化粧板を設置し,1日後および16週間後に,それぞれチャバネゴキブリ一令,二令,三令幼虫の各々10頭と成虫6頭(雄3頭,卵鞘を持った雌3頭)とを放した。2週間後 水とを囲うように各隅に3枚ずつの化粧板を設置し,1日後および16週間後に,それぞれチャバネゴキブリ一令,二令,三令幼虫の各々10頭と成虫6頭(雄3頭,卵鞘を持った雌3頭)とを放した。2週間後 - 56 -から24週間後まで2週間隔で,生存しているチャバネゴキブリの成虫,幼虫の数を数えた。のべ総数を表1に示す。」(段落【0015】)・「【表1】(判決注;略)上表に見られるように,化合物(7)の昆虫成長制御化成化合物(判決注;ママ)と化合物Bとを混用することにより,同薬量でほぼ2倍の防除効果が得られる。」(段落【0016】)・「試験例2N-アリールジアゾール化合物Bと昆虫成長制御活性化合物(7)とを所定割合に混合したもの1重量部,小麦粉12重量部,ブドウ糖35重量部,蛹粉7重量部,水10重量部および粉糖35重量部を混合して毒餌剤を得た。得られた毒餌剤を豚舎の床上に1g/m2 となるように散布し,予め決めておいた一定場所(豚舎ケージのてすり部分等)にとまっているイエバエの数を,薬剤処理前,薬剤処理1日後,4週間後,8週間後にそれぞれ数えた。薬剤処理後のイエバエの数の平均値より次式【数1】(判決注;略)により駆除率を算出した。結果を表2に示す。」(段落【0017】)・「【表2】(判決注;略)上表に見られるように,化合物(7)の昆虫成長制御化成化合物(判決注;ママ)と化合物Bとを混用することにより,同薬量でほぼ2倍 - 57 -の防除効果が得られる。」(段落【0018】)・「【発明の効果】本発明組成物は,N-アリールジアゾール化合物や昆虫成長制御活性化合物を各々単独で用いた場合に比べて,同薬量で非常に優れた害虫防除効果を示すものである。」(段落【00 018】)・「【発明の効果】本発明組成物は,N-アリールジアゾール化合物や昆虫成長制御活性化合物を各々単独で用いた場合に比べて,同薬量で非常に優れた害虫防除効果を示すものである。」(段落【0019】)(2) 上記(1)によれば,乙1公報には,以下の内容の発明(以下「乙1発明」という。)が記載されていると認められる(下線は判決で付記)。 「4-(2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル)-1-(3-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジン-2-イル)-2-メチルイミダゾール,5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾールおよび5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルチオピラゾールからなる群より選ばれる一種以上のN-アリールジアゾ-ル化合物と(請求項1。なお請求項2にも引用),幼若ホルモン活性化合物である昆虫成長制御活性化合物とを有効成分として含有する害虫防除剤(請求項2)。」そして,乙1発明における「5-アミノ-3-シアノ-1-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェニル)-4-トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール」(下線部分)は,フィプロニルに相当し(段落【0004】。なお,乙1公報にフィプロニルが示されていることについては当事者間に争いがない。),また,幼若ホルモン活性化合物である昆虫成長制御活性化合物の例として挙げられたピリプロキシフェン,メソプレン(メトプレン),ヒドロプレン(段落【0005】)は,本件各特許 - 58 -発明の構成要件1B(2)及び4AにいうIGRタイプの化合物と一致する(摘記事項ウ,同カ)。 以上を前提とする ヒドロプレン(段落【0005】)は,本件各特許 - 58 -発明の構成要件1B(2)及び4AにいうIGRタイプの化合物と一致する(摘記事項ウ,同カ)。 以上を前提とすると,本件特許発明3及び本件訂正発明1と,乙1発明との一致点及び相違点は以下のとおりであると認められる。 一致点:フィプロニル(A)と少なくとも一種の幼虫ホルモン類似化合物の虫の成長調節剤(IGR)タイプの殺卵子性化合物(B)とを含有する害虫防除剤組成物である点相違点:本件特許発明3(本件訂正発明1)においては,害虫防除剤組成物が,動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,成分(A)と成分(B)との相乗量と,少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物と特定されているのに対し,乙1発明には,そのように特定されていない点(3) そこで,上記相違点について検討するに,乙1公報には,フィプロニルと幼虫ホルモン類似物を組み合わせ,これに基づき同薬量でほぼ2倍の効果を得る相加効果については記載されていると認められるものの(段落【0016】,【0018】),両成分の「相乗量」(構成要件1B(3))の組み合わせにより「ノミ類及びダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有する」(構成要件1D)ことに関する記載があるものとは認められず,乙1公報の記載から上記「相乗量」や「ノミ類及びダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有する」ことを示唆する何らの技術的事項も窺うことができない。 また,乙1公報には,剤形に関し,「油剤,乳剤,粉剤,燻煙剤,エア - 59 -ゾール,液化炭酸ガス製剤,毒餌剤,樹脂剤などに製 する何らの技術的事項も窺うことができない。 また,乙1公報には,剤形に関し,「油剤,乳剤,粉剤,燻煙剤,エア - 59 -ゾール,液化炭酸ガス製剤,毒餌剤,樹脂剤などに製剤」(段落【0009】)とされる旨の一般的な記載がされ,実施例に,油性エアゾール及び油性トータルリリースエアゾール(段落【0013】),錠剤とした毒餌剤及びペット用防虫首輪(段落【0014】)とした例が示されるにとどまり,スポットオン用組成物とすることやスポットオン調合用アジュバントを含むことについては開示も示唆もされていない。 したがって,本件特許発明3(本件訂正発明1)は,乙1公報に記載された発明と同一若しくは実質的に同一であるとはいえない。 (4) この点に関して被告は,乙1公報には本件各特許発明の相乗量(構成要件1B(3))に関する記載があると主張する。 しかし,乙1公報には,フィプロニルと幼虫ホルモン類似物を組み合わせることは記載されているものの,両成分の相乗量(構成要件1B(3))に関する記載がないことは,前記(3)で認定したとおりである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 以上のとおり,被告の乙1公報に基づく新規性欠如の主張は理由がない。 3 争点(2)イ(乙1公報に基づく進歩性欠如)について(1) 乙1公報に記載された乙1発明と,本件特許発明3(本件訂正発明1)との一致点及び相違点については,前記2(2)のとおりである。 前記相違点,すなわち「本件特許発明3(本件訂正発明1)においては,害虫防除剤組成物が,動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,成分(A)と成分(B)との相乗量と,少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保 防除剤組成物が,動物の皮膚に局在塗布可能な液体賦形剤に溶解した,成分(A)と成分(B)との相乗量と,少なくとも一種のスポットオン調合用アジュバントとから成る,ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物と特定されているのに対し,乙1発明には,そのように特定されていない点」について,以下 - 60 -のとおり認められる。 (2)ア相違点に係る構成の容易想到性について(ア) 乙23公報,乙24公報,乙39文献,乙40文献,乙42公報の記載は以下のとおりである。 ・乙23公報(発明の名称「置換ピリジルピラゾール」,出願日平成7年4月20日,出願人バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト)には,活性化合物を含む有害生物防除剤の投与方法について,「・・・経皮投与は,例えば浸漬,噴霧又はポアリングオン(poring-on)及びスポッティングオン(spotting-on),ならびに粉剤散布(dusting)の形態で行われる。・・・」(段落【0053】。下線は判決で付記)と記載されている。 ・乙24公報(発明の名称「殺虫剤及び殺ダニ剤としてのN―フエニルフラゾール」,出願日平成4年9月8日,出願人ゼネカ・リミテツド)には,殺虫剤の投与方法として「・・・本発明の化合物は成虫段階及び生長の未成熟段階にある害虫の感受性種と耐性種との両方を殺減するのに有効であり,しかも局所,経口又は非経口投与により,害虫のたかった宿主動物に施用することができる。」(7頁右上欄18ないし25行。下線は判決で付記)と記載されている。 ・乙39文献には,「90年代の初期まで,イミダクロプリドは主に作物保護のために使用されており,その時点において,・・・によりイミダクロプリドのノミに対する 線は判決で付記)と記載されている。 ・乙39文献には,「90年代の初期まで,イミダクロプリドは主に作物保護のために使用されており,その時点において,・・・によりイミダクロプリドのノミに対する活性がノミに寄生された犬に対してあることが認識されていた。世界中で開発された結 - 61 -果,局所溶液のアドバンテージ®(イミダクロプリド10%スポットオン)が1996年3月に米国で最初に登録された。」と記載されている。(99頁1ないし5行。下線は判決で付記)・乙40文献には,イミダクロプリドを有効成分とするスポットオン液剤である,ノミ駆除剤「アドバンテージスポット」が記載されている。 ・乙42公報には,ペット等の動物において見出すことができる寄生虫の抑制に適した活性化合物の投与について,「経皮的投与は,たとえば入浴,浸漬,噴霧,ポアリングオンもしくはスポッティングオン,洗浄,シャンプー,ポアリングオーバーならびに粉剤散布の形態で行われる。」(乙52〔被告提出の訳文〕の9頁13ないし16行による。)と記載されている。 (イ) 前記(ア)によれば,乙23公報,乙24公報,乙42公報の記載における「スポッティングオン」や「局所投与」は,害虫防除剤における経皮的投与を含む投与方法の一例として挙げられているにすぎないものである。また,乙39文献及び乙40文献には,イミダクロプリドを有効成分とするスポットオン液剤である,ノミ駆除剤「アドバンテージ」ないし「アドバンテージスポット」が記載されているが,イミダクロプリドは,本件特許の有効成分であるフィプロニル等とは異なる物質である。 (ウ) 一方,本件各特許発明は,発明の詳細な説明に「フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し,皮脂腺 本件特許の有効成分であるフィプロニル等とは異なる物質である。 (ウ) 一方,本件各特許発明は,発明の詳細な説明に「フィプロニルのような化合物(A)は皮脂中に溶解して動物の体全体を被覆し,皮脂腺中に濃縮される。この皮脂腺から非常に長い期間にわたって化合物が徐々に放出されるという発見はこれら組成物の効力の長い持続性を - 62 -よく説明するものであり,おそらく併用する化合物(B)の作用の長い持続性も説明できるであろう。」(摘記事項ナ)とあるように,フィプロニルがスポットオン用組成物とすることに適することを見出したことにより完成された,「ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物」である。 そして,前記(ア)の各文献(乙23公報,乙24公報,乙39文献,乙40文献及び乙42公報)によれば,本件特許の出願時において,殺虫剤の経皮的投与の例として,局所塗布やスポットオンは知られているものであったといえるものの,いずれの文献にも,フィプロニルがスポットオン用組成物とすることに適したものであることについては記載も示唆もされていないことからすると,乙1発明の害虫防除剤を基にして,「ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果を有するスポットオン用組成物」(構成要件1D及び1E)を製造することは,当業者が容易に想到できたものとは認められないというべきである。加えて,そもそも乙1公報の発明の詳細な説明には,前記2(3)のとおり,剤形に関する記載として油性エアゾール及び油性トータルリリースエアゾール(段落【0013】),錠剤とした毒餌剤及びペット用防虫首輪(段落【0014】)とした例が示されるにとどまること,害虫防除剤の投与に関する記載としても動物用防虫首輪及び 性トータルリリースエアゾール(段落【0013】),錠剤とした毒餌剤及びペット用防虫首輪(段落【0014】)とした例が示されるにとどまること,害虫防除剤の投与に関する記載としても動物用防虫首輪及び毒餌剤(段落【0011】),燻煙剤(段落【0012】)が示されているにすぎないこと,実施例においても環境散布におけるゴキブリに対する防除効果及び毒餌剤によるハエに対する防除効果を確認するのみ(段落【0015】,【0017】)であって,害虫から保護する対象である哺乳類の皮膚に直接投与することを示唆 - 63 -する記載はないことなどからすると,乙1発明の害虫防除剤を,哺乳類の皮膚に直接投与するための組成物とすること,ないしスポットオン用組成物とすることについての動機付けはないものというべきである。 イ相乗効果の認定についてなお,本件特許の出願後に提示された,甲3文献,甲25文献に記載される効果を,進歩性の判断にあたり,参酌できるかどうかについて,以下検討する。 特許法29条2項の要件充足性を判断するに当たり,明細書に,「発明の効果」について何らの記載がないにもかかわらず,出願人において,出願後に実験結果等を提出して主張又は立証することは,先願主義を採用し,発明の開示の代償として特許権(独占権)を付与するという特許制度の趣旨に反することになるので,特段の事情のない限りは,許されないというべきである。また,出願に係る発明の効果は,現行特許法上,明細書の記載要件とはされていないものの,出願に係る発明が従来技術と比較して,進歩性を有するか否かを判断する上で,重要な考慮要素とされるのが通例である。出願に係る発明が進歩性を有するか否かは,解決課題及び解決手段が提示されているかという観点から,出願に係る発明が,公知技術を 進歩性を有するか否かを判断する上で,重要な考慮要素とされるのが通例である。出願に係る発明が進歩性を有するか否かは,解決課題及び解決手段が提示されているかという観点から,出願に係る発明が,公知技術を基礎として,容易に到達することができない技術内容を含んだ発明であるか否かによって判断されるところ,上記の解決課題及び解決手段が提示されているか否かは,「発明の効果」がどのようなものであるかと不即不離の関係があるといえる。そのような点を考慮すると,明細書において明らかにしていなかった「発明の効果」について,進歩性の判断において,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは,出願人と第三者との公平を - 64 -害する結果を招来するので,特段の事情のない限り許されないというべきである。他方,進歩性の判断において,「発明の効果」を出願の後に補充した実験結果等を考慮することが許されないのは,上記の特許制度の趣旨,出願人と第三者との公平等の要請に基づくものであるから,明細書に,「発明の効果」に関し,何らの記載がない場合はさておき,当業者において「発明の効果」を認識できる程度の記載がある場合やこれを推論できる記載がある場合には,記載の範囲を超えない限り,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは許されるというべきであり,許されるか否かは,前記公平の観点に立って判断すべきである。 この観点からすると,甲3文献及び甲25文献の各実験結果は,いずれもフィプロニルとメトプレンの併用は,それぞれを単独で使用した場合と比して,薬剤投与をした2か月後に至っても,新たにノミが感染しそのノミが生む卵の孵化及び成虫化の抑制に対し,相乗効果を有することを示している(甲3文献の6項,同8項,表8ないし10。甲25文献の「3. 結果」,表1,2,図 か月後に至っても,新たにノミが感染しそのノミが生む卵の孵化及び成虫化の抑制に対し,相乗効果を有することを示している(甲3文献の6項,同8項,表8ないし10。甲25文献の「3. 結果」,表1,2,図1,2)。そして,本件明細書には,化合物(A)としてフィプロニル,化合物(B)としてメトプレンを(実施例4),及び,化合物(A)としてフィプロニル,化合物(B)としてピリプロキシフェンを(実施例1ないし3),それぞれ含む組成物を製造したことが実施例をもって具体的に開示されており,フィプロニルとピリプロキシフェンを動物の皮膚に局所塗布した場合については,2か月にわたりノミが検出されず,また,収集した卵に生存能力がなかったことが示されている(摘記事項ヌ)。ピリプロキシフェンとメトプレンはいずれも幼虫ホルモン類似化合物であり(摘記事項カ),本件明細書に好ましい化合物(B)の例として挙げられているものであって(摘記事項キ),同様の作用が期 - 65 -待できるから,フィプロニルとメトプレンを併用した場合についても,フィプロニルとピリプロキシフェンの併用と同様の効果が奏されることが窺える。そうすると,甲3文献及び甲25文献に示される,フィプロニルとメトプレンの併用による相乗効果については,本件明細書の記載から推論できるものであると認められるから,これらを参酌することは許容されると解すべきである。 一方,乙1公報についてみると,試験例をもって具体的に開示されているのは,フィプロニルと,1-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレアとの組み合わせについて,薬剤を環境に配置した場合のゴキブリ及びハエについての防除効果を試験したところ,同薬量でほぼ2倍の防除効果が奏されたとの フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレアとの組み合わせについて,薬剤を環境に配置した場合のゴキブリ及びハエについての防除効果を試験したところ,同薬量でほぼ2倍の防除効果が奏されたとの結果であり(段落【0015】,【0017】),これは相加効果にすぎないものであって,本件各特許発明における,ノミ類及びダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果については何ら示されていないし,その示唆があるともいえない。そうすると,本件各特許発明は,公知文献の記載からは予測し得ない格別顕著な効果である相乗効果を奏するものと認められる。 (3) この点に関して被告は,甲25文献の表3と表4について,大きな誤差を含むか,あるいは信頼性がない旨主張する。 しかし,甲25文献の表1,2,図1,2を含む部分は,フィプロニルとメトプレンとの併用は,卵の孵化及び成虫化の抑制に対し相乗効果を有することを示しているものと認められるところ,甲25文献の表3,4は,ノミの成虫に対する効果を検討するための試験であって,この部分の試験結果が仮に相乗効果を示すものとして十分でないとしても,これのみをもって甲2 - 66 -5文献全体の記載内容に信頼性がないということにはならない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (4) また,被告は,本件各特許発明について,ノミの生活環の一時点にしか効果がなく,メトプレンも光分解をして成分量が減少し相乗量を維持することができないなどとして,本件各特許発明の相乗効果は認められない旨主張する。 しかし,ノミの生態やメトプレンの光分解性がどのようなものであったとしても,本件明細書には,フィプロニルとピリプロキシフェンを含む組成物について,2か月にわたり効果が持続することが記載されており しかし,ノミの生態やメトプレンの光分解性がどのようなものであったとしても,本件明細書には,フィプロニルとピリプロキシフェンを含む組成物について,2か月にわたり効果が持続することが記載されており,さらに,甲3文献及び甲25文献には,フィプロニルとメトプレンの併用について,同様に2か月以上持続する効果が示されているのであるから,本件各特許発明の相乗効果を否定できるものではない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) さらに,被告は,乙56文献には,本件特許の出願(優先日)以前に,ネコノミに対し,幼若ホルモン活性化合物として,ピリプロキシフェン,メトプレンのそれぞれについて,異なる殺卵効果を含む殺虫効果があったことが示されており,その効果は周知であって,本件各特許発明の相乗効果は否定される旨主張する。 乙56文献には,ピリプロキシフェン及びメトプレンが,それぞれネコノミに対する繭形成効果,羽化阻止効果及び殺卵効果を有すること,一部の実験についてピリプロキシフェンがメトプレンと比して高い効果を有することが記載されているものの,これらはいずれもピリプロキシフェンないしメトプレン単独の殺卵効果に関するものであり,フィプロニルとメトプレンとの組み合わせによる相乗効果等に関する記載はない。 - 67 -したがって,被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(2)ウ(実施可能要件違反)について(1) 特許法36条4項1号は,発明の詳細な説明の記載は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと規定しているところ,物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同法 知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと規定しているところ,物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同法2条3項1号),物の発明については,明細書にその物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,実施可能要件を充足するものということができる。 構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」とは,前記のとおり,スポットオン用組成物の調合に使うための補助剤と解せられるところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,「スポットオン用組成物」に相当する「点状塗布用組成物」は,結晶化抑制剤,有機溶剤,有機補助溶剤の補助剤を含むことができることが記載され(摘記事項シ),それらの候補物質(摘記事項ソないしチ)及び比率(摘記事項シ)について,一応の記載がされている。また,点状塗布組成物は,適切な量の有効成分を含み,動物の両肩の間に塗布するのに適した性状であればよいのであるから(摘記事項テ),当業者は,本件明細書の記載を参考にして,結晶化抑制剤,有機溶剤,有機補助溶剤の種類と量を適宜選択して,本件各特許発明のスポットオン用組成物を過度な実験を要することなく調製することができるものと解される。 (2) この点について被告は,本件明細書には作用機序が記載されておらず, - 68 -実施可能でないと主張する。 しかし,前記(1)のとおり,物の発明については,明細書にその物を製造する方法について,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,実施可能要 しかし,前記(1)のとおり,物の発明については,明細書にその物を製造する方法について,明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,実施可能要件を充足するものというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 5 争点(2)エ(サポート要件違反)について(1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 アスポットオン調合用アジュバントについて「スポットオン調合用アジュバント」は,前記1(3)のとおり「スポットオン用組成物の調合に使うための補助剤」と解せられるところ,前記4(1)で検討したとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,「スポットオン用組成物」に相当する「点状塗布用組成物」は,結晶化抑制剤,有機溶剤,有機補助溶剤の補助剤を含むことができることが記載され,それらの - 69 -候補物質 ,「スポットオン用組成物」に相当する「点状塗布用組成物」は,結晶化抑制剤,有機溶剤,有機補助溶剤の補助剤を含むことができることが記載され,それらの - 69 -候補物質についても記載されているものであるから,本件各特許発明の「スポットオン調合用アジュバント」について,発明の詳細な説明に記載されているということができる。 イダニに対する効果について本件明細書には,「本発明はさらにその他の寄生虫,特にダニに対しても効果を発揮し,・・・外部寄生虫,あるいは,内部寄生虫の防除にまで拡大することができる」(摘記事項ニ)と記載されており,本件各特許発明の解決しようとする課題の一つに,ダニに対する防除効果を発揮する組成物を提供することがあるものと認められる。 そして,フィプロニルは,ダニに対して殺虫作用を有するものであることは本件特許の出願時の技術常識である(なお,この点については,本件明細書7頁4ないし9行には,従来技術として,「欧州特許出願第295,217号および欧州特許出願第352,944号には1-N-アリルピラゾールを基材とする新らしい殺虫剤が記載されている。これら特許に記載の活性度が高い化合物の一つである1-[2,6-Cl2-4-CF3フェニル]-3-CN4-[SO-CF3]-5-NH2ピラゾール(一般名はフィプロニル,fipronil)は穀物の寄生虫だけではなく,哺乳動物の外部寄生虫,特にノミ,ダニ,ハエおよびハエウジ(これらに限定されるものではない)にも有効であることが証明されている。」と記載され,フィプロニルはダニに有効であるとしている。)ことを考慮すると,本件各特許発明は,ダニに対しても防除効果を有することは,当業者が推認することができるものと認められる。 (2) この点に関して被告は,「スポ ニルはダニに有効であるとしている。)ことを考慮すると,本件各特許発明は,ダニに対しても防除効果を有することは,当業者が推認することができるものと認められる。 (2) この点に関して被告は,「スポットオン調合用アジュバント」の例示として結晶化抑制剤や有機補助溶剤を本件明細書に記載すべきであり,そうでなければサポート要件違反があると主張する。 しかし,本件明細書の発明の詳細な説明において,スポットオン用組成物に相当する点状塗布用組成物は,結晶化抑制剤,有機溶剤,有機補助溶 - 70 -剤の補助剤を含むことができることが記載されていると解されることについては前記のとおりである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 6 争点(2)オ(明確性要件違反)について(1) 「相乗効果」に関する明確性要件違反の主張につきア一般に,相乗効果とは相加効果を超える効果を意味するところ,本件特許の構成要件1Dには,「ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護するための相乗効果」と記載されているのであるから,「相乗効果」とは,「ノミ類およびダニ類から哺乳類を長期間保護する」ことに関する相乗効果であると理解できる。 本件明細書の実施例には,フィプロニルとピリプロキシフェンの組み合わせを動物の皮膚に局所塗布した場合について,2か月にわたりノミが検出されず,また,収集した卵に生存能力がなかったことが示されており(摘記事項ヌ),長期間持続する効果が記載されている。 そして,甲3文献及び甲25文献に記載の実験結果は,フィプロニルとメトプレンの併用は,単独使用よりも,薬剤投与した2か月後においても,新たにノミが感染してもそのノミが生む卵の孵化及び成虫化の抑制に対して相乗効果を有することを示しており,これは本件明細書の ニルとメトプレンの併用は,単独使用よりも,薬剤投与した2か月後においても,新たにノミが感染してもそのノミが生む卵の孵化及び成虫化の抑制に対して相乗効果を有することを示しており,これは本件明細書の記載に沿うものであって,本件各特許発明の相乗効果ないし構成要件1Dの記載が明確でないとはいえないというべきである。 イこの点につき被告は,卵,幼虫,成虫のいずれに対する相乗効果であるのかが本件明細書に説明されておらず明確性要件に違反すると主張する。しかし,本件明細書には対象たるノミ類及びダニ類から哺乳類を長期間保護するについての相乗効果が記載されている以上,その対象がさらに卵なのかあるいはその他であるのか等についての記載がないとしても,それにより,本件各特許発明の相乗効果が不明であるということに - 71 -はならないというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 「スポットオン調合用アジュバント」に関する明確性要件違反の主張につき前記1(3)で検討したとおり,「アジュバント」ないし「adjuvant」は「補助剤」を意味することや「用」の語についての意義等からすれば,構成要件1Cの「スポットオン調合用アジュバント」は「スポットオン用組成物の調合に使うための補助剤」と理解することができる。 そうすると,本件各特許発明が不明確であるとは認められない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 7 結論以上のとおりであり,原告の請求は,理由があるからいずれも認容することとし,仮執行宣言については,主文第1項については付すのが相当であるのでこれを付し,主文第2項についてはこれを付さないのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所 ることとし,仮執行宣言については,主文第1項については付すのが相当であるのでこれを付し,主文第2項についてはこれを付さないのが相当である。よって,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 瀬孝 (別紙) 物件目録 1 被告製品1 製品名「マイフリーガードα犬用」 2 被告製品2 製品名「マイフリーガードα猫用」 (別紙) 被告各製品説明書 1 概要 被告各製品は,犬(被告製品1)又は猫(被告製品2)用のノミ・マダニ駆除剤である。被告各製品は,液剤であり,犬(被告製品1)又は猫(被告製品2)の身体の一部へ局所塗布することによって,犬(被告製品1)又は猫(被告製品2)の全身へ拡散する。 2 種類(甲4,5) (1) 被告製品1は,容量に応じて,以下の5種類があり,使用する犬の大きさによって使い分けられる。 ア マイフリーガードα犬用 0.5mL イ マイフリーガードα犬用 0.67mL ウ マイフリーガードα犬用 1.34mL エ マイフリーガードα犬用 2.68mL オ マイフリーガードα犬用 4.02mL (2) 被告製品2は,以下の1種類である。 マイフリーガードα猫用 マイフリーガードα犬用 1.34mLエマイフリーガードα犬用 2.68mLオマイフリーガードα犬用 4.02mL(2) 被告製品2は,以下の1種類である。 マイフリーガードα猫用 0.5mL 3 構成(甲4,5,乙27)(1) 被告各製品は,いずれも以下の成分を含有する。 ア主剤:1-[2,6-Cl2-4-CF3-フェニル]-3-CN-4-[SO-CF3]-5-NH2-ピラゾール(フィプロニル)イ主剤:(S)-メトプレン - 75 -ウ溶解補助剤:VC-713(ビニルカプロラクタム・ビニルピロリドン・N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体エタノール液)エ溶解補助剤:ポリオキシエチレンフィトステロールオ溶解補助剤:クロタミトンカ安定剤:ブチルヒドロキシアニソールキ安定剤:ジブチルヒドロキシトルエンク着香剤:香料ケ溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(2) 被告各製品1mLに含まれるフィプロニル及び(S)-メトプレンの重量は,それぞれ以下のとおりである。 ア被告製品1フィプロニル:100mg (S)-メトプレン:90mgイ被告製品2フィプロニル:100mg (S)-メトプレン:120mg 4 用法(甲4,5)被告各製品は,犬(被告製品1)又は猫(被告製品2)の肩甲骨間背部の被毛を分け,皮膚上の一部位に直接滴下する方法により,使用する。 5 効果(甲4,5)被告各製品の効果は,それぞれ以下のとおりである。 ア被告製品1は,一回投与すると,通常,ノミに対し1~3ヶ月,マダニに対し約1ヶ月間,新規の寄生を防御することができる。 イ被告製品2は,一回投与すると,通常,ノミに対し1~1.5ヶ月, る。 ア被告製品1は,一回投与すると,通常,ノミに対し1~3ヶ月,マダニに対し約1ヶ月間,新規の寄生を防御することができる。 イ被告製品2は,一回投与すると,通常,ノミに対し1~1.5ヶ月,マダニに対し約3週間,新規の寄生を防御することができる。 特許公報省略
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