- 1 -令和7年4月17日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和5年(ネ)第2059号保証金返還請求控訴事件(原審大阪地方裁判所令和3年(ワ)第11898号)口頭弁論終結日令和7年3月11日判決 控訴人(一審被告) 株式会社アーバンリグ同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士樽谷進同樽谷徹被控訴人(一審原告) 有限会社古谷商店 同代表者代表取締役同訴訟代理人弁護士岡筋泰之同田頭拓也主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人(以下「一審原告」という。)の請求を棄却する。 第2 事案の概要以下で使用する略称は、特に断らない限り、原判決の例による。 1 事案の要旨一審原告は、控訴人(以下「一審被告」という。)との間で、一審被告が一審原告に廃棄物処理プラント(廃プラスチックの熱分解油化・炭化再生資源回 収装置。被告製品)を販売し一審原告がこれを顧客に更に販売すること等を内 - 2 -容とする販売代理店契約(本件代理店契約)を締結し、その契約締結に際して、契約保証金300万円を一審被告に差し入れたが、本件代理店契約は終了した。 本件は、一審原告が、一審被告に対し、本件代理店契約終了に基づき、上記の契約保証金300万円の返還及びこれに対する令和4年1月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合 。 本件は、一審原告が、一審被告に対し、本件代理店契約終了に基づき、上記の契約保証金300万円の返還及びこれに対する令和4年1月12日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の 支払を求め、これに対し、一審被告が一審原告に対し、本件代理店契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権及び一審原告の不正競争を理由とする損害賠償請求権を自働債権とする相殺を主張して争った事案である。 原審が一審原告の請求を全部認容したところ、一審被告が控訴を提起した。 2 前提事実 次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の1(2頁7行目から4頁26行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決2頁11行目の「被告」の後に「(商号変更前の商号は「株式会社ワンワールドジャパン」)」を加え、同行目の「製造」を「販売」に改める。 (2) 原判決2頁13行目を次のとおり改める。 「ウ株式会社ワンワールド(以下「ワンワールド社」という。)は、被告製品の製造等を行う株式会社であり、一審被告は被告製品を独占的に販売する会社である。ワンワールド社の全株式は、平成22年から令和2年まで同社の代表取締役を務め、本件訴訟係属中の令和5年10 月から令和6年10月まで一審被告の代表取締役を務めていたP1が保有している。他方、一審被告の全株式はP1の妻が保有している。 (乙20、21、弁論の全趣旨)」(3) 原判決4頁3行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「エ本件代理店契約書18条(販売協力及び支援)1項には、「乙(一審 原告)は、甲(一審被告)の販売方針を尊重して販売活動を行い、一 - 3 -般消費者が甲の販売方針に疑義を生ぜしめる、もしくは甲並 約書18条(販売協力及び支援)1項には、「乙(一審 原告)は、甲(一審被告)の販売方針を尊重して販売活動を行い、一 - 3 -般消費者が甲の販売方針に疑義を生ぜしめる、もしくは甲並びに甲の販売協力者達の信用を損なうような商行為をなしてはならない。」との定めがある(甲3)。」(4) 原判決4頁4行目の「エ」を「オ」に改める。 (5) 原判決4頁10行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「(4) 一審原告による第三者への電子メールの送信一審原告は、令和3年3月1日、被告製品の見学を希望した会社に対し、次のとおり記載した電子メール(以下「本件原告メール」という。)を送信した(乙4)。 「現在施設見学の調整が難しい状況です。原因はメーカーによる不誠実 な対応のためです。以前より懇意にしていた静岡県富士市の設置現場の装置が、昨年12月より故障し、現在全く動かせない状態となっております。加えてメーカーによる保証が行われず、未だ修理も行われておりません。(中略)十分な保証やメンテナンスの行われない装置を、お客様へご案内することはできず、ワンワールド社製「アーバン リグ」のご提案は今後弊社より行わないと勝手ながら判断いたしました。その他訴訟など多く抱える企業だとも判明いたしました。(中略)弊社としてはワンワールド社を完全に切り離した状態で、同様の運用が可能な熱分解装置を信頼のできるパートナーと共に自社開発・製造を行うことといたしました。」 」 (6) 原判決4頁11行目の「(4)」を「(5)」に改める。 (7) 原判決4頁12行目から同頁13行目にかけての「令和3年5月25日、本件代理店契約を解除する旨の通知をした」を「令和3年5月25日差出しの内容証明郵便で、本件代理店契約1 )」に改める。 (7) 原判決4頁12行目から同頁13行目にかけての「令和3年5月25日、本件代理店契約を解除する旨の通知をした」を「令和3年5月25日差出しの内容証明郵便で、本件代理店契約1条、18条1項、17条1項5号違反を理由に本件代理店契約を解除する旨の意思表示をした」に改める。 (8) 原判決4頁14行目の「遅くとも令和3年9月30日までに終了した」 - 4 -を「遅くとも令和3年9月30日に契約期間が更新されることなく終了した」に改める。 (9) 原判決4頁14行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「(6) 一審原告による廃プラスチックの熱分解油化・炭化再生資源回収装置の開発・発売 一審原告は、遅くとも令和3年10月25日の時点では、パイロリナジーという名称の廃プラスチックの熱分解油化・炭化再生資源回収装置(以下「原告製品」という。)の開発を進めてその装置の概要を自社ホームページ上で公開しており、令和4年3月1日にそれを発売した(乙3、9)。」 (10) 原判決4頁15行目の「(5)」を「(7)」に改める。 (11) 原判決4頁18行目の「(6) 被告は、令和5年2月20日第1回弁論準備手続期日」を「(8) 一審被告は、令和5年2月20日、原審第1回弁論準備手続期日」に改める。 (12) 原判決4頁25行目の「7号」を「7号、8号」に改める。 3 争点次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2(5頁2行目から同頁4行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決5頁3行目の「原告による被告の営業秘密の使用の有無」を「一審原告による一審被告の営業秘密の使用による不正競争(不正競争防止法 2条1項7号、8号) あるからこれを引用する。 (1) 原判決5頁3行目の「原告による被告の営業秘密の使用の有無」を「一審原告による一審被告の営業秘密の使用による不正競争(不正競争防止法 2条1項7号、8号)の成否」に改める。 (2) 原判決5頁3行目末尾に改行して、次のとおり加える。 「(3) 一審原告による本件原告メール等の送信は本件代理店契約18条1項の違反となるか(争点3)(4) 一審原告は本件代理店契約が終了する前に原告製品を製造しその販 売を試みたか(争点4)」 - 5 -(3) 原判決5頁4行目の「(3)」を「(5)」に、同行目の「争点3」を「争点5」にそれぞれ改める。 4 争点に関する当事者の主張次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第3(5頁6行目から9頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決5頁23行目の「「パイロリナジー」(以下「原告製品」という。)」を「原告製品」に改める。 (2) 原判決6頁14行目の「原告による被告の営業秘密の使用の有無」を「一審原告による一審被告の営業秘密の使用による不正競争(不正競争防止法2条1項7号、8号)の成否」に改める。 (3) 原判決7頁12行目冒頭から同頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「(2) 一審原告は、一審被告が一審原告の提案に従い被告製品の装置の製作費用の見積りを依頼した西岳電管工業株式会社(以下「西岳電管」という。)から、一審被告が西岳電管に見積りのため提供した本件情 報①を取得し、また、一審被告の販売代理店としての業務の中で本件情報②及び本件情報③を取得し、これらの本件各情報を用いて模倣品である原告製品を製造し、これを販売している。したがって、一審原告は、営業秘 を取得し、また、一審被告の販売代理店としての業務の中で本件情報②及び本件情報③を取得し、これらの本件各情報を用いて模倣品である原告製品を製造し、これを販売している。したがって、一審原告は、営業秘密不正開示行為であることを知って一審被告の営業秘密である本件情報①を、また、不正の利益を得る目的で、又は、一審被 告に損害を加える目的で、一審被告の営業秘密である本件情報②及び本件情報③を、それぞれ使用し、不正競争(不正競争防止法2条1項7号、8号)を行った。」(4) 原判決7頁24行目の「P1(以下「P1」という。)」を「P1」に改める。 (5) 原判決8頁21行目末尾に改行して、次のとおり加える。 - 6 -「3 一審原告による本件原告メール等の送信は本件代理店契約18条1項の違反となるか(争点3)(一審被告の主張)一審原告は、一審被告の販売代理店の立場にありながら、被告製品の購入を検討する複数の顧客に対し、本件原告メール及びそれと同様の 記載をした電子メールを送信した。本件原告メールの記載内容は、一審被告の信用を損なうものであるから、一審原告によるそれらの電子メールの送信は本件代理店契約18条1項の違反となり、一審原告は債務不履行責任を負う。 (一審原告の主張) 本件原告メールの記載内容は真実である。一審原告が、被告製品の購入について接触してきた者に対して真実を誠実に説明することは、正当業務行為であるから、一審原告は本件原告メール等の送信により本件代理店契約18条1項違反を理由に債務不履行責任を負わない。 4 一審原告は本件代理店契約が終了する前に原告製品を製造しその販売 を試みたか(争点4)(一審被告の主張)一審原告は、本件代理店契約 1項違反を理由に債務不履行責任を負わない。 4 一審原告は本件代理店契約が終了する前に原告製品を製造しその販売 を試みたか(争点4)(一審被告の主張)一審原告は、本件代理店契約が終了する前に、原告製品を製造し、その販売を試みた。このような一審原告の行為は、本件代理店契約18条1項の違反であるから、一審原告は債務不履行責任を負う。 (一審原告の主張)一審被告の主張事実は否認する。」(6) 原判決8頁22行目冒頭の「3」を「5」に、同行目の「争点3」を「争点5」にそれぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 本件各契約に基づく一審原告の秘密保持義務違反等の有無(争点1)につ - 7 -いて原判決10頁1行目冒頭から同頁9行目末尾までを次のとおり改めるほかは、原判決「事実及び理由」第4の1(9頁5行目から10頁26行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 「 一審被告は、本件各情報が本件代理店契約24条の秘密保持義務の対象と なる旨主張する。 しかし、本件代理店契約24条によれば、一審原告が漏洩ないし第三者への提供をしてはならないとされているのは、一審被告から本件代理店契約に基づく取引において取得した情報であると解されるところ(前提事実(3)オ)、本件情報①は、一審原告が一審被告から直接取得したものではないこ とは当事者間に争いがなく、そうであれば本件情報①は、本件代理店契約に基づく取引において取得した情報とはいえない。また、本件情報②についても、これを一審原告が本件代理店契約に基づいて取得したことを認めるに足りる証拠はない。また、一審原告は、本件情報③を一審被告から取得したことは争わないが、一審原告が、これを第三者に漏洩した事実を認めるに足り 原告が本件代理店契約に基づいて取得したことを認めるに足りる証拠はない。また、一審原告は、本件情報③を一審被告から取得したことは争わないが、一審原告が、これを第三者に漏洩した事実を認めるに足り る証拠はない。 なお、一審被告は、一審原告が原告製品を製造販売していることから、一審原告が本件情報②、③を漏洩して利用していると推測し主張しているものと考えられるが、本件情報②については、そもそも本件代理店契約に基づく取引において取得した事実が認められないことは上記説示のとおりである。 そして、証拠(甲15の1・2、乙14、19)によれば、本件情報③は、被告製品に一定の廃棄物を投入した結果得られた油の成分の分析結果を示すものにすぎないと認められ、この分析結果自体からは、それらの油がどのような廃棄物を被告製品に投入した結果得られたものであるかは明らかでなく、その有用性も限られるため、原告製品を製造販売している事実から、一審原 告が本件情報③を漏洩した事実を推認することはできず、そのほか本件情報 - 8 -③を漏洩した事実を認めるに足りる証拠もない。」 2 一審原告による一審被告の営業秘密の使用による不正競争(不正競争防止法2条1項7号、8号)の成否(争点2)について(1) 時機に後れた攻撃防御方法であるとの申立てについて一審原告は、一審原告による本件情報①の使用等が不正競争防止法2条 1項8号に該当する旨の一審被告の主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして、その却下を申し立てている。 確かに、一審被告が原審の第1回弁論準備手続期日において陳述した令和4年6月17日付けの一審被告準備書面3には、一審原告による本件各情報の使用等が同項7号の不正競争に該当する旨の記載があるが、当 審の第1回弁論準備 第1回弁論準備手続期日において陳述した令和4年6月17日付けの一審被告準備書面3には、一審原告による本件各情報の使用等が同項7号の不正競争に該当する旨の記載があるが、当 審の第1回弁論準備手続期日において、一審被告は、本件各情報のうち本件情報①の使用等についていう不正競争は、同項8号の不正競争である旨陳述している。 しかしながら、一審原告の不正競争が同項7号に該当する旨を記載した一審被告準備書面3には、同号の要件である一審原告が一審被告から本 件情報①を示されたとの事実について記載した部分はなく、その一方、一審被告準備書面3を陳述したと同じ弁論準備手続期日において陳述した一審被告準備書面5には、本件各情報のうち本件情報①を一審原告が入手した事実について、一審原告は一審被告から本件情報①の提供を受けた第三者(西岳電管)から入手したという、不正競争の類型としては、 同項7号ではなく同項8号に沿った事実を具体的に特定して記載している。そうすると、一審被告準備書面5に、上記事実が不正競争防止法2条1項8号に該当するという法適用を記載した部分がないとしても、上記各準備書面の陳述によってなされた一審被告の本件情報①についていう不正競争の主張は、結局、同項8号の不正競争についていうものと解 されるべきことになる。そして、原審においては、一審原告によって一 - 9 -審被告準備書面5で主張された上記事実関係の認否がされ、その上で上記主張事実を前提とする審理がされていたのであるから、当審の第1回弁論準備手続期日において、受命裁判官が法適用についての一審被告の見解を明らかにすべく釈明し、一審被告が、その主張に係る不正競争が同項8号の不正競争である旨を改めて陳述したとしても、そこで新たな 攻撃防御方法の提出が 、受命裁判官が法適用についての一審被告の見解を明らかにすべく釈明し、一審被告が、その主張に係る不正競争が同項8号の不正競争である旨を改めて陳述したとしても、そこで新たな 攻撃防御方法の提出がされたことになるわけではない。これを時機に後れた攻撃防御方法の提出であるする一審原告の申立ては失当であり却下されるべきである。 (2) 本件情報①に係る不正競争防止法2条1項8号に該当する不正競争の成否について 一審被告は、被告製品の装置の製作費用の見積依頼のため、西岳電管に対し、本件情報①を交付したというのであるが、その際、西岳電管との間で、本件情報①の漏洩・第三者への提供を禁じる旨の合意をした事実を認めるに足りる的確な証拠はない(P1の証言中、そのような合意をした旨をいう部分は、秘密保持契約書等の客観的な証拠による裏付けを欠き、採 用することができない。)。また、そもそも一審被告において、本件情報①を営業秘密として管理していた事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 そうすると、一審原告が、本件情報①を西岳電管から開示されたか否かについて検討するまでもなく、本件情報①について、一審原告が不正競争防止法2条1項8号に該当する不正競争を行ったと認めることはできない。 (3) 本件情報②に係る不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争の成否について本件情報②は、一審被告の主張によっても、被告製品の販売先に提供されていたというのであるが、その際、本件情報②の漏洩・第三者への提供を禁じる旨の合意がされていたとは認められない(P1の証言中、そのよ うな合意をした旨をいう部分は、秘密保持契約書等の客観的な証拠による - 10 -裏付けを欠き、採用することができない。)。また、そもそも一審被告に められない(P1の証言中、そのよ うな合意をした旨をいう部分は、秘密保持契約書等の客観的な証拠による - 10 -裏付けを欠き、採用することができない。)。また、そもそも一審被告において、本件情報②を営業秘密として管理していた事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 そうすると、本件情報②も、一審被告において秘密として管理していた情報であるとは認め難いから、一審原告がそれを取得するなどしたか否か について検討するまでもなく、本件情報②について、一審原告が不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったと認めることはできない。 (4) 本件情報③に係る不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争の成否について一審原告が本件情報③を取得した事実は当事者間に争いがないが、これ を一審原告が使用ないし開示した事実を認めるに足りる証拠はない。一審被告は、原告製品の製造販売の事実から一審原告が本件情報③を使用した事実を推認することができるように主張しているが、前記1において原判決を補正の上引用して説示したとおりの本件情報③の性質に照らせば、一審原告による原告製品の製造・販売の事実から、本件情報③を使用したり、 開示したりした事実を推認することも困難である。 したがって、本件情報③について、一審原告が不正競争防止法2条1項7号に該当する不正競争を行ったと認めることはできない。 (5) 小括以上によれば、一審原告が一審被告の営業秘密に係る不正競争防止法2 条1項7号又は同項8号に該当する不正競争を行ったとは認められない。 3 一審原告による本件原告メール等の送信は本件代理店契約18条1項の違反となるか(争点3)について(1) 本件原告メールは、被告製品の製造元であるワンワールド社は故障 たとは認められない。 3 一審原告による本件原告メール等の送信は本件代理店契約18条1項の違反となるか(争点3)について(1) 本件原告メールは、被告製品の製造元であるワンワールド社は故障した被告製品につき十分な保証もメンテナンスもせず対応が不誠実であり訴訟案 件等を多く抱えているなど問題のある企業であると述べ、その上で、一審原 - 11 -告が今後顧客への被告製品の案内を行わず被告製品と同種の熱分解処理装置をワンワールド社とは別のパートナーと開発製造する旨をいうものであって、ワンワールド社が信用できない会社であることをいうものであるが、一審被告がワンワールド社製造に係る被告製品を独占的に販売している会社であり、またワンワールド社と一審被告との関係性からすると、本件原告メールの内 容は、一審被告の信用をも損なうものといえるから、一審原告の本件原告メール送信は、本件代理店契約18条1項に違反する行為であるといえる。 しかし、被告製品ないしワンワールド社に本件原告メールに指摘されているとおりの問題が認められるのであれば、そのことによって、被告製品を取り扱ってきた一審原告も信用が損なわれるということになるから、一審原告 が自らの営業上の信用を守るため、事実関係を明らかにした上で一審被告から切り離した事業を行う旨の自社の方針の変更を取引先に伝えることは許されるべきであり、信用が損なわれる原因をなしたワンワールド社と同視されるべき一審被告が、一審原告の上記行為をもって本件代理店契約18条1項の違反行為であるとして債務不履行を理由とする損害賠償請求をすることは 信義則上許されないというべきである。 (2) そこで、以上を前提に検討すると、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件原告メールに関連する事実 不履行を理由とする損害賠償請求をすることは 信義則上許されないというべきである。 (2) そこで、以上を前提に検討すると、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件原告メールに関連する事実関係として、次の事実が認められる。 ア株式会社拓進リサイクル関係(ア) ワンワールド社は、令和元年9月、株式会社拓進リサイクル(以下 「拓進社」という。)に対し、被告製品(以下「拓進被告製品」という。)を販売し、同社はこれを静岡県富士市に設置したが、令和2年11月14日、拓進被告製品の過熱水蒸気発生装置にゆがみが生じた。 そこで、拓進社は、ワンワールド社のP5に対し、拓進被告製品を見に来てほしいと依頼したが、P5は何ら応答しなかった。(甲21、 23、24、弁論の全趣旨) - 12 -(イ) 次に同年12月9日、拓進被告製品の過熱水蒸気発生装置から水蒸気が漏れるようになったことから、拓進社は、P5に対し、パッキンの交換を依頼し、併せて、拓進被告製品を見に来てほしいと依頼したが、やはり、P5ないしワンワールド社は拓進被告製品の確認に行かなかった。(甲24ないし27、34) (ウ) さらに拓進被告製品は、同年12月17日、警告音が鳴って動かなくなったことから、拓進社はその旨をP5に伝えたところ、ワンワールド社は、令和3年1月18日、拓進社に対し、調査費用の見積書を送付し、同月28日、拓進被告製品の不具合を確認したが、無償で補修することを拒んだ。その後、拓進社は、補修費用の負担についてワ ンワールド社と協議をしたが合意に至らず、本件原告メールが送信された同年3月1日の時点においても、拓進被告製品は補修されないままであった。(甲28ないし30、34、弁論の全趣旨)イ他社関係における訴訟係 議をしたが合意に至らず、本件原告メールが送信された同年3月1日の時点においても、拓進被告製品は補修されないままであった。(甲28ないし30、34、弁論の全趣旨)イ他社関係における訴訟係属ワンワールド社は、令和2年に有限会社原電機設備から請負代金請求訴 訟を提起され、同訴訟は本件原告メール送信時にも係属していた。また、ワンワールド社は、日本グリーン電力開発株式会社との間で共同開発費の分担を巡り契約上のトラブルとなって訴訟提起され、同訴訟は、日本グリーン電力開発株式会社の勝訴で終わった。 (甲40、弁論の全趣旨)ウ一審原告から一審被告に対する改善要求 一審原告は、令和2年10月17日、一審被告ないしワンワールド社に対し、「信頼の再構築:現在のような不誠実な対応を継続して行うと、様々なケースから不満が溢れる結果を招き、結果として大きなトラブルへと発展することが確定的です」などを明記した上、被告製品に係る情報の裏付けを明示し、また、販売代理店である一審原告を協業パートナ ーとして認識するなどの企業体質の改善を求める目的で要望書を提出す - 13 -るほか、その前後に同目的での面談を繰り返した。(甲37、弁論の全趣旨)(3) 上記(2)アの認定事実によれば、ワンワールド社は、拓進社に販売した拓進被告製品の不具合について、同社からの依頼等に対し、令和2年11月から令和3年1月までの間、的確に対応していなかったと認められ るから、その対応が不誠実であるとの評価は免れない。また、拓進被告製品が令和2年12月に故障し、動かない状態となったことや(上記(2)ア(ウ))、本件原告メールが送信された時点においては、ワンワールド社が拓進被告製品を無償で補修していなかったこと(上記(2)ア(ウ) が令和2年12月に故障し、動かない状態となったことや(上記(2)ア(ウ))、本件原告メールが送信された時点においては、ワンワールド社が拓進被告製品を無償で補修していなかったこと(上記(2)ア(ウ))が認められることからすると、本件原告メール中にある被告製品が故障して 全く動かせない状態であるが修理されていないとの記載内容は客観的事実に沿ったものであるといえる。さらに、上記(2)イのとおり、本件原告メール送信当時、ワンワールド社は、有限会社原電機設備との間の訴訟係属中であり、また、それ以外にも日本グリーン電力開発株式会社との間の訴訟係属もあったというのであるから、ワンワールド社は、その会 社規模から考えて、訴訟等の紛争を多数抱えているとの評価も免れない。 そうすると、ワンワールド社には本件原告メールに指摘されているとおりの問題が認められるというほかないところ、上記(2)ウのとおり、一審原告は、拓進被告製品に不具合が生じる前から一審被告ないしワンワールド社の企業体質の改善を求めていたというのであるが、一審被告ない しワンワールド社がこれに的確に対応した事実も認められないのであるから、被告製品を販売することで自らの信用が損なわれかねない一審原告が自らの営業上の信用を守るため、本件原告メールを送信して、上記事実関係を明らかにした上で一審被告から切り離した事業を行う旨の自社の方針の変更を取引先に伝えることは許されるべきである。そして、 一審原告の営業上の信用が損なわれる原因はワンワールド社にあるから、 - 14 -本件原告メールの送信が客観的には本件代理店契約18条1項違反を構成するとしても、ワンワールド社と同視されるべき一審被告が、一審原告による本件原告メールの送信が同項違反の債務不履行に該当するとして 本件原告メールの送信が客観的には本件代理店契約18条1項違反を構成するとしても、ワンワールド社と同視されるべき一審被告が、一審原告による本件原告メールの送信が同項違反の債務不履行に該当するとして、そのことを理由に損害賠償請求をすることは信義則上許されないというべきである。 4 一審原告は本件代理店契約が終了する前に原告製品を製造しその販売を試みたか(争点4)について確かに、①証拠(乙17、18)及び弁論の全趣旨によれば、一審原告は、令和3年3月10日、株式会社アシスト(以下「アシスト社」という。)から株式会社サンライフコーポレーション(以下「サンライフ社」という。) 宛ての電子メール(以下「アシスト社メール」という。)を「cc」(写し配信先)として受信したところ、アシスト社メールには、「アーバンリグ1t機改善工事参考図」と題する被告製品の製品図面のデータが添付されていたこと、アシスト社メールの宛先(「cc」を含む。)には一審被告やワンワールド社が加えられていなかったことが認められ、また、一審原告が、 ②同月1日に、「弊社としてはワンワールド社を完全に切り離した状態で、同様の運用が可能な熱分解装置を信頼のできるパートナーと共に自社開発・製造を行うことといたしました。」と記載された本件原告メールを送信したこと、その後、③同年10月の時点においては、被告製品と同じく廃プラスチックの熱分解油化・炭化再生資源回収装置である原告製品の開発を進めて おり、令和4年3月にそれを発売したことは、前提事実(4)及び(6)のとおりである。 しかし、証拠(乙17)によれば、アシスト社メールの本文の記載内容は、アシスト社が、サンライフ社に対し、被告製品の改善について助言をする趣旨のものであると認められる。そして、証拠(甲3 である。 しかし、証拠(乙17)によれば、アシスト社メールの本文の記載内容は、アシスト社が、サンライフ社に対し、被告製品の改善について助言をする趣旨のものであると認められる。そして、証拠(甲36、証人P2)によれば、 サンライフ社は、一審原告の紹介により一審被告から被告製品を購入した者 - 15 -であると認められるから、アシスト社メールは、サンライフ社が正規に購入した被告製品の改善について、アシスト社が助言をする趣旨のものにとどまると見ざるを得ず、一審原告が原告製品の開発に着手していたことを推認させるには足りないものといわなければならない。 また、本件原告メールは、アシスト社メールの9日前に送信されたもので あるが、本件原告メールには、被告製品と同様の機能を有する装置を開発・製造するとの意向が記載されているにとどまる。 以上の事情に照らすと、アシスト社メールや本件原告メールの存在から、一審原告が、それらの電子メールが送信された令和3年3月の時点や、その後、同年9月30日(本件代理店契約が終了した日。前提事実(5)イ)までに、 原告製品を製造し、販売を試みていたと推認するには足りず、他にその事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、一審原告が本件代理店契約の終了前に原告製品を製造しその販売を試みたことを理由とする本件代理店契約18条1項違反の債務不履行をいう一審被告の主張は採用できない。 5 判断のまとめ一審原告は、一審被告に対し、本件代理店契約終了に基づき、契約保証金300万円の返還を請求することができるところ(前提事実(3)イ、ウ、(5))、一審原告の一審被告に対する、①本件各契約に基づく一審原告の秘密保持義務違反等の債務不履行、②不正競争行為及び③本件代理店契約18条1項に違反 することができるところ(前提事実(3)イ、ウ、(5))、一審原告の一審被告に対する、①本件各契約に基づく一審原告の秘密保持義務違反等の債務不履行、②不正競争行為及び③本件代理店契約18条1項に違反 する行為はいずれも認められないから、争点5について判断するまでもなく、それらに基づく損害賠償請求権を自働債権とする一審被告の相殺の抗弁は採用することができない。 第4 結論以上のとおり、一審原告の請求は全部理由があるから認容すべきところ、こ れと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却すべきであ - 16 -る。 よって、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官 森崎英二 裁判官奥野寿則及び同山口敦士は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官 森崎英二
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