令和6年3月22日判決言渡令和3年(行ウ)第275号科学研究費補助金等返還請求事件 主文 1 被告は、原告に対し、471万0637円並びにうち250万7609円に対する平成28年10月1日から支払済みまで年10.95%の割合(年36 5日の日割計算)による金員及びうち250万7609円に対する同月6日から支払済みまで年10.95%の割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求主文第1項と同旨 2 予備的請求 被告が原告に対し、471万0637円並びにうち250万7609円に対する平成28年10月1日から支払済みまで年10.95%の割合(年365日の日割計算)による金員及びうち250万7609円に対する同月6日から支払済みまで年10.95%の割合(年365日の日割計算)による金員の支払債務を負担していることを確認する。 第2 事案の概要本件は、独立行政法人日本学術振興会法(以下「振興会法」という。)及び独立行政法人通則法に基づき設立された独立行政法人で、科学研究費補助金(以下「科研費」という。)の交付等の事業を行う原告が、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(平成27年4月に国立研究開発法人に移行した。以下、同移行の前後を問わ ず「JAXA」という。)の職員であった被告に対し、平成21年度から平成24 年度まで科研費を交付したところ(以下、各交付年度に応じて「平成○年度分科研費」といい、それらを併せて「本件科研費」という。)、被告がその一部を補助条件に違反して使用していたことが明らかとなったため、被告に対する平成21年 ころ(以下、各交付年度に応じて「平成○年度分科研費」といい、それらを併せて「本件科研費」という。)、被告がその一部を補助条件に違反して使用していたことが明らかとなったため、被告に対する平成21年度分科研費、平成23年度分科研費及び平成24年度分科研費の各交付決定(以下「本件各交付決定」という。)の一部(平成21年度分科研費につき83万46 00円、平成23年度分科研費につき184万8598円、平成24年度分科研費につき123万7600円)を取り消すとともに(以下「本件各取消決定」という。)、その返還を命じたが(以下「本件各返還命令」といい、本件各取消決定と併せて「本件各取消決定等」という。)、被告がこれに応じないとして、振興会法17条1項が準用する補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下 「適化法」という。)18条1項、19条1項及び2項に基づき、主位的に、被告に対し、本件各取消決定により取り消された科研費の残元本250万7609円(平成21年度分科研費につき48万8248円、平成23年度分科研費につき119万0740円、平成24年度分科研費につき82万8621円の合計額)及び本件各取消決定による取消金額に対する各年度分の科研費の受領日からJA XAによる一部返金がされた日である平成28年9月30日までの適化法19条1項所定の年10.95%(年365日の日割計算)の割合による確定加算金220万3028円(平成21年度分科研費につき66万6261円、平成23年度分科研費につき100万2124円、平成24年度分科研費につき53万4643円の合計額)の合計471万0637円並びに上記残元本に対する平成28 年10月1日から支払済みまで同項所定の年10.95%(年365日の日割計算)の割合による加算金及び上記 き53万4643円の合計額)の合計471万0637円並びに上記残元本に対する平成28 年10月1日から支払済みまで同項所定の年10.95%(年365日の日割計算)の割合による加算金及び上記残元本に対する本件各返還命令による納付期限の翌日である同月6日から支払済みまで同条2項所定の年10.95%(年365日の日割計算)の割合による延滞金の支払を求め、予備的に、被告が原告に対し、上記各金員の支払債務を負担していることの確認を求めた事案である。 1 関係法令の定め 別紙「関係法令の定め」のとおりである。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠〔枝番号が付された証拠でその記載がないものは全ての枝番号を含む趣旨である。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者 ア原告は、振興会法及び独立行政法人通則法に基づき設立された独立行政法人で、学術研究の助成、研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進、学術の応用に関する研究等を行うことにより、学術の振興を図ることを目的とし、科学研究費助成事業等を行うものである。 イ被告は、JAXAの職員であった者であり、平成20年頃から平成24 年頃までの間は、JAXAα宇宙センター(以下「αセンター」という。)の主任研究員として勤務していた。(乙3)⑵ 科研費に係る取扱要領等の定め別紙「科研費に係る取扱要領等の定め」のとおりである。 ⑶ 本件科研費の交付に至る経緯 ア被告は、研究代表者として、JAXAを通じて原告に対し、平成20年10月30日付け「平成21年度(2009年度)基盤研究(S)研究計画調書」(以下、同研究計画調書に係る研究を「本件研究」という。)を提出し、もって原告の科学研究費助成事業に応募した。 、平成20年10月30日付け「平成21年度(2009年度)基盤研究(S)研究計画調書」(以下、同研究計画調書に係る研究を「本件研究」という。)を提出し、もって原告の科学研究費助成事業に応募した。なお、本件研究は、5か年計画とされていた。(甲1) イ原告は、科学研究費助成事業として本件研究を採択し、被告に対し、科研費を交付することを内定した。 ウ被告は、平成21年5月頃、JAXAを通じて原告に対し、同月15日付け「平成21年度科学研究費補助金交付申請書」を提出した。 これを受けて、原告は、同年6月9日、被告に対し、本件研究に係る平 成21年度分科研費として4264万円(直接経費〔補助事業の遂行に必 要な経費及び研究成果の取りまとめに必要な経費をいう。以下同じ。〕3280万円及び間接経費〔補助事業の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費をいい、直接経費の30%に相当する金額が交付される。以下同じ。〕984万円の合計額)を交付する旨決定し、同月19日、JAXAを通じて被告に対し、同額を交付した。(甲2、17、18) エ被告は、JAXAを通じて原告に対し、平成22年4月14日付け「平成22年度科学研究費補助金交付申請書」を提出した。 これを受けて、原告は、同年6月9日、被告に対し、本件研究に係る平成22年度分科研費として3640万円(直接経費2800万円及び間接経費840万円の合計額)を交付する旨決定し、同月18日、JAXAを 通じて被告に対し、同額を交付した。(甲3)オ被告は、JAXAを通じて原告に対し、平成23年4月15日付け「平成23年度科学研究費補助金交付申請書」を提出した。 これを受けて、原告は、同年6月30日、被告に対し、本件研究に係る平成23年度分科研費として3042万円(直接経 し、平成23年4月15日付け「平成23年度科学研究費補助金交付申請書」を提出した。 これを受けて、原告は、同年6月30日、被告に対し、本件研究に係る平成23年度分科研費として3042万円(直接経費2340万円及び間 接経費702万円の合計額)を交付する旨決定し、同年10月21日までに、JAXAを通じて被告に対し、2回に分けて同額を交付した。(甲4)カ被告は、JAXAを通じて原告に対し、平成24年4月16日付け「平成24年度科学研究費補助金交付申請書」を提出した。 これを受けて、原告は、同年6月29日、被告に対し、本件研究に係る 平成24年度分科研費として3497万円(直接経費2690万円及び間接経費807万円の合計額)を交付する旨決定し、同年10月22日までに、JAXAを通じて被告に対し、2回に分けて同額を交付した。(甲5)⑷ 本件各取消決定等に至る経緯ア JAXAは、平成28年7月20日、原告に対し、平成21年度分科研 費、平成23年度分科研費及び平成24年度分科研費の一部につき、被告 がこれを不正使用していた旨の「研究費不正使用に関する調査報告書」(以下「本件調査報告書」という。)を提出した。(甲6、32)イ原告理事長は、平成21年度分科研費、平成23年度分科研費及び平成24年度分科研費の一部につき、被告が本件取扱要領13条の補助条件に反してこれを使用していたとして、平成28年9月16日、被告に対し、 振興会法17条1項及び適化法17条1項に基づき、本件各交付決定のうち、以下のからまでに係る部分を取り消す(本件各取消決定)とともに、振興会法17条1項及び適化法18条1項に基づき、同年10月5日を納付期限として、本件各取消決定に係る科研費の返還及びこれらに対する各受領日から支払済みま 部分を取り消す(本件各取消決定)とともに、振興会法17条1項及び適化法18条1項に基づき、同年10月5日を納付期限として、本件各取消決定に係る科研費の返還及びこれらに対する各受領日から支払済みまで振興会法17条1項及び適化法19条1項に 基づく年10.95%の割合による加算金の支払を命じ(本件各返還命令)、さらに、上記納付期限までに支払がないときは、同条2項に基づき、年10.95%の割合による延滞金が発生する旨通知した。(甲8)平成21年度分科研費についてa 直接経費:64万2000円(特性線解析プログラムの改修に係る 40万9500円〔以下「本件経費①」という。〕及びインレット可変制御部の設計、製作及び同変更契約に係る23万2500円〔以下「本件経費②」という。〕の合計額)b 間接経費:19万2600円 c 合計:83万4600円平成23年度分科研費についてa 直接経費:142万1999円(風洞試験用模型制御プログラムの概念設計検討に係る46万9999円〔以下「本件経費③」という。〕及びインレット最適設計に係る95万20 00円〔以下「本件経費④」という。〕の合計額) b 間接経費:42万6599円c 合計:184万8598円平成24年度分科研費についてa 直接経費:95万2000円(燃焼器最適設計システム構築に係る95万2000円〔以下「本件経費⑤」といい、本件経 費①から本件経費⑤までを併せて「本件各経費」という。〕)b 間接経費:28万5600円c 合計:123万7600円ウ JAXAは、平成28年9月30日、原告に対し、平成21年度分科研 費について34万6352円、平成23年度分科研費について65万7858円、平成24年 c 合計:123万7600円ウ JAXAは、平成28年9月30日、原告に対し、平成21年度分科研 費について34万6352円、平成23年度分科研費について65万7858円、平成24年度分科研費について40万8979円をそれぞれ返還し、原告は、同日、これらを本件各取消決定により取り消された科研費の各元金に充当した。 ⑸ 本件訴えの提起 ア原告は、令和3年7月14日、前記第1の1(主位的請求)記載の判決を求め、本件訴えを提起した。 イ原告は、令和3年9月6日、前記第1の2(予備的請求)記載の請求を予備的に追加した。 3 本件の争点及びこれに関する当事者の主張の要旨 本件の争点は、本件各経費につき、科研費の「不正使用」が認められるか否かであり、これに関する当事者の主張の要旨は、以下のとおりである。 (原告の主張)原告は、平成25年5月頃、JAXAから被告による科研費の不正使用の疑いがある旨の連絡を受けたことから、JAXAに対し、本件規程に基づき、調 査及び調査報告書の提出を求めたところ、JAXAから本件調査報告書の提出 を受けた。本件調査報告書によれば、以下の⑴から⑸までのとおり、平成21年度分科研費について本件経費①及び本件経費②(直接経費合計64万2000円)が、平成23年度分科研費について本件経費③及び本件経費④(直接経費合計142万1999円)が、平成24年度分科研費について本件経費⑤(直接経費95万2000円)が、それぞれ不正使用されたものと認められるとこ ろ、その内容に一見して明らかに不合理といえるような点はなかったことから、原告は、本件調査報告書の内容に基づき、本件各取消決定等をしたものである(なお、原告においては、科研費の交付に当たり、直接経費の30%に相当する金額 らかに不合理といえるような点はなかったことから、原告は、本件調査報告書の内容に基づき、本件各取消決定等をしたものである(なお、原告においては、科研費の交付に当たり、直接経費の30%に相当する金額を間接経費として交付していることから、直接経費の不正使用を理由とする交付決定を取り消すときは、間接経費についても直接経費の不正使用額の 30%に相当する金額に係る交付決定も取り消すこととしており、本件各取消決定においても、平成21年度分科研費について間接経費19万2600円、平成23年度分科研費について間接経費42万6599円、平成24年度分科研費について間接経費28万5600円に係る交付決定も取り消した。)。 ⑴ 本件経費①について 被告は、JAXAに対し、M(以下「M社」という。)との間で特性線解析プログラム改修作業(以下「本件プログラム改修作業」という。)に係る契約(以下「本件プログラム改修作業契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、M社との間で同契約を締結し、その代金としてM社に40万9500円を支払ったが、M社又はその下請業者が本件プログラ ム改修作業を行ったとの事実を確認することができず、被告自らが同作業を行ったものと認められた上、本件プログラム改修作業契約の発注時には既に本件プログラム改修作業が完了していた。 被告は、かかる行為により、JAXAが管理する科研費を詐取したものであり、これは、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑵ 本件経費②について 被告は、JAXAに対し、M社との間でインレット可変制御部の設計及び製作(以下「本件インレット設計等」という。)に係る契約(以下「本件インレット設計等契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、M社との間で同 間でインレット可変制御部の設計及び製作(以下「本件インレット設計等」という。)に係る契約(以下「本件インレット設計等契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、M社との間で同契約を締結し、その代金としてM社に143万2500円を支払ったが、そのうち23万2500円についてはM社又はその下請 業者による本件インレット設計等の履行の事実及びM社から下請業者に対する支払の事実が認められなかった。 これは、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑶ 本件経費③について被告は、JAXAに対し、M社に風洞試験用模型制御プログラムの概念設 計検討(以下「本件概念設計検討」という。)に係る契約(以下「本件概念設計検討契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、M社との間で、同契約を締結し、その代金としてM社に46万9999円を支払ったが、M社又はその下請業者が本件概念設計検討を行ったとの事実を確認することができず、被告自らが同検討を行ったものと認められる。 これは、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑷ 本件経費④について被告は、JAXAに対し、株式会社B(旧社名は株式会社C。以下「B社」という。)との間で、「modeFRONTIERStandard」(以下「本件最適化ソフト」という。)の1年間のライセンス契約(年間ライセンス 料156万8000円。以下「本件平成23年度ライセンス契約」という。)及びインレット最適設計契約(契約金額95万2000円。以下「本件インレット最適設計契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、B社との間で上記各契約を締結し、その代金として上記各金額を支払ったが、B社からインレット最適設計に係る支援を受けた形跡はなく、本 件インレッ を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、B社との間で上記各契約を締結し、その代金として上記各金額を支払ったが、B社からインレット最適設計に係る支援を受けた形跡はなく、本 件インレット最適設計契約は実体のない契約であったと認められる。 このように、本件インレット最適設計契約に係る科研費の使用は、実体のない契約に基づく支出であり、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑸ 本件経費⑤について被告は、JAXAに対し、B社との間で本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約(年間ライセンス料156万8000円。以下「本件平成24年 度ライセンス契約」という。)及び燃焼器最適設計システム構築契約(契約金額126万7000円。以下「本件燃焼器最適設計契約」という。)を締結する旨の発議をし、これを受けたJAXAは、B社との間で上記各契約を締結し、その代金として上記各金額を支払ったが、B社からは、同社の社員が燃焼器最適設計システム構築のため2日分の作業(作業費31万5000円相 当)をした以外に同システム構築のため役務の提供を受けた形跡はないから、本件燃焼器最適設計契約のうち上記作業費を除いた95万2000円分は実体のない契約であったと認められ、同部分に係る科研費の使用は、実体のない契約に基づく支出であり、「不正使用」に当たる。 (被告の主張) ⑴ 本件調査報告書は、その内容のほとんどがαセンターによる調査(以下「本件調査」という。)及び被告に対する詐欺被告事件に係る判決(仙台地裁平成25年(わ)第268号、第318号同28年6月14日判決。以下「本件刑事判決」という。乙5)に依拠するものであるところ、本件調査は、被告に対して強い悪意を持つDαセンター長(当時。以下「Dセンター長」という。) が主導し、自らの 年6月14日判決。以下「本件刑事判決」という。乙5)に依拠するものであるところ、本件調査は、被告に対して強い悪意を持つDαセンター長(当時。以下「Dセンター長」という。) が主導し、自らの言いなりになる長年の部下であるE、F及びGを調査担当者に指名し、恣意的かつ不当、ずさんな調査を行ったものであるから、本件調査には信用性がない。 また、本件刑事判決は、それ自体誤審であるが、本件刑事判決の事案は、JAXAによる運営費交付金に係る案件に関するものであるのに対し、本件 は、原告による科研費に係る案件に関するものであり、事案を異にするから、 本件刑事判決は、本件各経費が科研費の「不正使用」であったことの根拠とはならない。 以上のとおり、本件調査報告書には信用性がないから、本件調査報告書により本件各経費が科研費の「不正使用」であったと認めることはできない。 ⑵ 原告は、本件各経費につき科研費の「不正使用」の事実が認められる旨主 張するが、以下のアからオまでのとおり、被告が本件科研費を不正使用した事実はない。 ア本件各経費について本件各経費は、本件研究の遂行に必要なものを調達するため、αセンター長の決裁を受けた発議申請書類(仕様書等)に基づき支出され、その結 果、上記仕様書等のとおりに納品されており、また、その価値も契約金額に見合ったものであって、原告及び所属研究機関のいずれにも損害は生じていないから、科研費の「不正使用」に当たらない。 イ本件経費①について被告は、Dセンター長及びその上司であったH元αセンター長から執 拗な研究妨害を受けており、αセンターに頼ることなく、独自に、本件研究に係る事務、データ処理、解析作業、プログラム作成等の作業に係る研究支援人材を確保する必要に迫られていたため ター長から執 拗な研究妨害を受けており、αセンターに頼ることなく、独自に、本件研究に係る事務、データ処理、解析作業、プログラム作成等の作業に係る研究支援人材を確保する必要に迫られていたため、知人のⅠ(以下「Ⅰ」という。)にM社を設立させ、M社に研究支援作業を発注することとした。もっとも、Ⅰには、実際に研究支援作業を行う能力がなかった ため、実際の作業は、匿名を条件として協力を得ていたA氏や被告の実妹であるJ(以下「J」という。)らをM社にあてがい、同人らに行わせることとした。このような方法については、JAXA契約部第2課副課長であり、αセンターの契約部門の最高責任者であったK(以下「K副課長」という。)にあらかじめ相談し、その了承を得ていた上、個別の契 約発注及びその支払についても、αセンター長やJAXA契約部及び同 財務部による審査や決裁の過程で特に問題視されることもなかったから、本件プログラム改修作業をM社に発注したことは「不正使用」の理由とはならない。 被告がJAXAに対して本件プログラム改修作業契約の締結に係る発議をしたのは、M社の作業者としてA氏が本件プログラム改修作業を 完了した後であったが、これは、同作業を早期に実施する必要があったためであり、正当な研究活動の一環であって、科研費の「不正使用」に当たらない。 ウ本件経費②について本件インレット設計等契約をM社に発注したことが科研費の「不正使 用」の理由とならないことは、前記イのとおりである。 不正使用とされている23万2500円は、①Ⅰが行う予定であった制御装置の操作用タッチパネル画面のデザインに係る作業費として計上していた約20万円及び②M社の外注先である株式会社L(以下「L」という。)が行う電子制御部の設計製作 0円は、①Ⅰが行う予定であった制御装置の操作用タッチパネル画面のデザインに係る作業費として計上していた約20万円及び②M社の外注先である株式会社L(以下「L」という。)が行う電子制御部の設計製作に問題が生じた場合にA氏の支援 を受けるための初動費用として計上していた約3万円の合計額であるところ、上記①は、結局、上記操作用タッチパネル画面のデザインもLが行うこととなったから、本来であれば、M社からLに支払われるべき費用であり、上記②は、いわば保険的費用としてM社における管理費ともいえるものであるから、いずれも正当なものである。 エ本件経費③について本件概念設計検討契約をM社に発注したことが科研費の「不正使用」の理由とならないことは、前記イのとおりである。 本件概念設計検討は、M社の作業者としてA氏が行ったものであるから、科研費の「不正使用」に当たらない。この点、同検討には、機械電 子作業用の小型コンピュータの専門知識と能力を必要とするところ、被 告は、これらの専門知識と能力を有していないにもかかわらず、M社からは本件概念設計検討契約の仕様書を満たす成果物が納品されており、このことは、A氏が実在することの証左である。 オ本件経費④及び本件経費⑤について本件最適化ソフトは、単体で使用されるものではなく、別個の各種解析 プログラム群と連成、融合させ、「最適化解析システム」を構築して使用されるものであるところ、被告及びその研究支援者には本件最適化ソフトに精通した者がいなかったため、B社から必要な技術的支援を得るべく、B社に対し、本件最適化ソフトの正規の年間ライセンス料252万円と同額で、本件最適化ソフトのライセンス契約に加え、初期システムの構築や動 作確認のための初歩的な最適化のために 支援を得るべく、B社に対し、本件最適化ソフトの正規の年間ライセンス料252万円と同額で、本件最適化ソフトのライセンス契約に加え、初期システムの構築や動 作確認のための初歩的な最適化のために必要な技術的支援の提供を受ける契約(本件経費④に関しては本件インレット最適設計契約が、本件経費⑤に関しては本件燃焼器最適設計契約がこれに当たる。)の締結を提案し、交渉したところ、B社がこれに応じたものである。このように、被告は、本件最適化ソフトを導入するに当たり、B社と交渉した結果、本件最適化 ソフトの年間ライセンス料と同額(ただし、本件経費⑤については、あらかじめ2日分の作業が想定されていたことから、その作業費31万5000円を加えた額)で、本件最適化ソフトの年間ライセンスに加え、上記技術的支援の提供を受ける契約を締結することができたものであり、不正使用などと非難されるべきものではない。 第3 当裁判所の判断 1 主位的請求の適法性について⑴ 本件各取消決定等は、振興会法17条1項が準用する適化法17条1項及び18条1項に基づくものであるところ、振興会法17条1項が準用する適化法21条1項は、返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延 滞金は、国税滞納処分の例により、徴収することができる旨規定している。 そして、法が特別の手続を設けていても、特にその手続によってのみ排他的に権利の実現を図る趣旨であると認められない場合には、通常の手続を利用して権利の実現を図ることは妨げられないことからすると(最高裁昭和38年(オ)第797号同41年2月23日大法廷判決・民集20巻2号320頁、最高裁昭和53年(オ)第436号同年12月21日第一小法廷判決・ 民集32巻9号1749頁、最高裁平成13年(行ヒ) 8年(オ)第797号同41年2月23日大法廷判決・民集20巻2号320頁、最高裁昭和53年(オ)第436号同年12月21日第一小法廷判決・ 民集32巻9号1749頁、最高裁平成13年(行ヒ)第25号同17年4月14日第一小法廷判決・民集59巻3号491頁、最高裁平成31年(受)第606号令和2年4月7日第三小法廷判決・民集74巻3号646頁等参照)、仮に、振興会法17条1 項が適化法21条1項を準用している趣旨が、上記各金員の徴収については専ら国税滞納処分の例によることとし、民事訴 訟手続によることを排除することにあるとすれば、上記各金員について給付訴訟を提起してその支払を求めることは許されないこととなる。 ⑵アそこで検討するに、適化法21条1項の趣旨は、国の補助金等に係る返還命令の相手方がその返還債務を履行しない場合並びにこれに付加された加算金債務及び補助金等返還債務の履行遅滞による延滞金債務を履行しな い場合において、一般の私法上の債権と同様、当該債務不履行に対して司法機関による履行の強制を求めなければならないとするのでは、補助目的を達しない補助金等を迅速かつ的確に回収し、その資金の効率性を確保するという行政目的を実現し難いことから、これらの金銭債権の円滑な執行を確保するため、これらの債務が履行されない場合には、最終的に債権者 たる国において自らこれを執行し得ることとしたものと解される。 そして、振興会が研究者に対して交付する科研費等の補助金は、国から交付される補助金を財源とするものであるため(振興会法17条1項参照)、補助目的を達しない補助金等を迅速かつ的確に回収し、その資金の効率性を確保する必要がある点において国の補助金等と共通するものがあ ることから、振興会法17条1項により適化法21条1 項参照)、補助目的を達しない補助金等を迅速かつ的確に回収し、その資金の効率性を確保する必要がある点において国の補助金等と共通するものがあ ることから、振興会法17条1項により適化法21条1項を準用すること としたものと解される。 そうすると、振興会法17条1 項が適化法21条1項を準用し、上記各金員について国税滞納処分の例により徴収することができるとしたことには、一定の公益性が認められる。 イ他方で、振興会法17条は、適化法5条から9条までの規定を準用して おらず、科研費の交付については、原告が作成した本件取扱要領において、交付申請者による交付申請と原告による交付決定によって具体的な給付請求権が発生するという仕組みが採られているのであって(本件取扱要領7条、8条、10条、11条参照)、交付の申請(申込み)と交付決定(承諾)によって成立する贈与契約を原因として、科研費に係る具体的な給付請求 権が発生するものと解される。 そして、科研費の交付の取消し及び返還は、振興会法17条1項が準用する適化法17条1項、18条1項に基づくものであるが、振興会法17条1項が準用する適化法24条の2により、行政手続法第3章の不利益処分に関する規定は適用されず、また、振興会法17条1項は適化法23条 及び25条の規定を準用していないから、法律上、原告が科研費に係る予算の執行の適正を期するために必要な立入検査等を実施したり、科研費の交付の取消し及び返還を命じられた者がこれらに対する不服の申出をしたりする手続は設けられていない。しかも、上記のとおり科研費の交付は原告と交付申請者との間の贈与契約に基づくものであるところ、補助金の交 付を受けた者は、補助金を科学研究等に必要な経費にのみ使用しなければならないとされてい しかも、上記のとおり科研費の交付は原告と交付申請者との間の贈与契約に基づくものであるところ、補助金の交 付を受けた者は、補助金を科学研究等に必要な経費にのみ使用しなければならないとされていることからすると(本件取扱要領13条)、科研費に係る上記の贈与契約は、交付を受けた者が補助事業等を目的どおりに遂行するとの負担を負うことに伴う負担付贈与契約であると解されるのであり、科研費の交付の取消し及び返還は、このような契約によって生じた効果を 遡及的に消滅させるものといえる。 原告による補助金等の交付決定の取消し及び返還命令は、調査の結果、不正使用等があったと認定された場合において、事案に応じて、交付決定を取り消し、既に配分された補助金等の一部又は全部の返還を命じるものであるが、上記のような負担付贈与契約によって生じた効果を遡及的に消滅させるものにすぎない上、本件規程13条1号、16条1項1号をみて も、その取消し及び返還の範囲が法令等に基づいて定型的、画一的に決まるものではなく、振興会法及び振興会法が準用する適化法の規定をみても、いわゆる費用額確定処分のように、これを確定させるための手続は存在しないし、原告がこれを一方的に確定することもできないのであって、科研費の交付の取消し及び返還は、いわゆる行政処分(行政事件訴訟法3条2 項)には当たらないと解される。 このように、振興会法及び振興会法が準用する適化法の規定をみても、科研費の交付の取消し及び返還の範囲を確定するための手続は存在しないところ、科研費の交付の取消しは、その性質上、不正使用等の事実の存否やその範囲に争いがある場合が少なくなく、民事訴訟手続において既判 力をもってこれを確定し、一回的に解決する必要性は、相当程度あるということができる。 しは、その性質上、不正使用等の事実の存否やその範囲に争いがある場合が少なくなく、民事訴訟手続において既判 力をもってこれを確定し、一回的に解決する必要性は、相当程度あるということができる。 このようなことからすると、科研費の交付の取消し及び返還については、これを民事訴訟手続において請求し得ると解したとしても、手続の確定性を害したり、訴訟経済に反したりすることにはならず、むしろ、不正使用 等の事実の存否やその範囲に争いがある場合等において、民事訴訟手続によることは、紛争解決のための有効な手段といい得るのみならず、この場合に国税滞納処分の例により徴収することは、必ずしも補助金等の迅速かつ的確な回収に資するとは限らないということができる。 ウこれらの事情を総合考慮すると、振興会法17条が適化法21条1項を 準用し、上記各金員について国税滞納処分の例により徴収することができ るとしたことにつき、一定の公益性が認められるものの、民事訴訟手続によることを排除すべきほどの公益性があるとまでは認められない。 ⑶ 以上によれば、振興会法17条1項につき、返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金の徴収については専ら国税滞納処分の例によることとし、民事訴訟手続によることを排除する趣旨で適化法21条1項を 準用したものとは認められず、民事訴訟手続によってこれを請求することも許されるものと解される。 したがって、主位的請求は、適法な請求である。 2 争点(本件各経費につき、科研費の「不正使用」が認められるか否か)について ⑴ 科研費の「不正使用」の意義についてア科研費の不正使用とは、故意若しくは重大な過失による科研費の他の用途への使用又は科研費の交付の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反し いて ⑴ 科研費の「不正使用」の意義についてア科研費の不正使用とは、故意若しくは重大な過失による科研費の他の用途への使用又は科研費の交付の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反した使用をいうところ(本件取扱要領3条7項、本件規程2条3号)、科研費の財源が国からの補助金であることから(振興会法17条1項参照)、 原告においては、科研費の使用に関し、本件取扱要領及び本件規程のほか、科研費の使用に関して研究代表者等が従うべき補助条件を定めた「学振研究者使用ルール(補助条件)」(甲17)、研究代表者等が所属する研究機関が行うべき事務等を定めた「科学研究費補助金の使用について各研究機関が行うべき事務等」(甲18)等の各種規程を定め、さらに、主に研究者を 対象として科研費に係る基本的な内容を解説した「科研費ハンドブック」(甲24)を作成するなどし、研究者及び研究機関に対し、科研費の適正な使用及び会計処理を厳しく求めている。 このように、科研費については、その財源が国からの補助金(すなわち、国民の税金)であり、適正な使用及び会計処理が強く求められることに鑑 みれば、第三者との間で契約を締結し、科研費をもって当該契約の相手方 に対する支払に充てる場合には、原告が定めた本件取扱要領、本件規程及び上記各規程等に従うことはもとより、当該契約の相手方が当該契約内容に沿った履行を行った上で、当該契約内容に沿った支出がされることが必要であり、当該契約内容と異なる支出がされた場合や事実と異なる会計処理が行われた場合には、当該科研費の使用は「不正使用」に当たるという べきである。そして、このことは、当該契約とは無関係の第三者の履行により結果的に当該契約の目的を達成することができたとか、科研費から支出された金額が当該契 費の使用は「不正使用」に当たるという べきである。そして、このことは、当該契約とは無関係の第三者の履行により結果的に当該契約の目的を達成することができたとか、科研費から支出された金額が当該契約の成果物の対価として不相当ではなく、実質的に損害が生じたとはいえないなどの事情があったとしても、左右されるものではないと解するのが相当である。 イこれに対し、被告は、本件各経費は、本件研究の遂行に必要なものを調達するため、所定の決裁を受けた仕様書等に基づき支出され、その結果、同仕様書等のとおりに納品されており、また、その価値も契約金額に見合ったものであり、原告及び所属研究機関のいずれにも損害は生じていないから、科研費の「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかしながら、上記アで述べたとおり、第三者との間で契約を締結し、科研費をもって当該契約の相手方に対する支払に充てる場合においては、当該契約の相手方が当該契約内容に沿った履行を行った上で、当該契約内容に沿った支出がされることが必要であり、当該契約内容と異なる支出がされたり、事実と異なる会計処理が行われたりしたときは、当該科研費の 使用は「不正使用」に当たるというべきであって、仮に、結果的に仕様書等のとおりに納品されているとか、その価値が契約金額に見合ったものであり、損害が生じていないなどの事情があったとしても、「不正使用」に当たるとの結論が左右されるものではないと解するのが相当である。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウそこで、以下では、前記アで述べた観点から、本件各経費につき、科研 費の「不正使用」が認められるか否かを検討する。 ⑵ 本件経費①についてア証拠(甲6、26、32、乙19、34)及び弁論の全趣旨に 下では、前記アで述べた観点から、本件各経費につき、科研 費の「不正使用」が認められるか否かを検討する。 ⑵ 本件経費①についてア証拠(甲6、26、32、乙19、34)及び弁論の全趣旨によれば、①本件プログラム改修作業は、遅くとも平成22年2月25日までに完了していたこと、②被告は、同日、JAXAに対し、既に本件プログラム改 修作業が完了していることを秘した上で、M社との間で本件プログラム改修作業契約を締結する旨の発議をし、JAXAをして、同年3月1日付けでM社との間で同契約を締結させたこと、③M社は、同月25日付けで、JAXAに対し、本件プログラム改修作業を完了した旨の納品書及び請求書を提出し、JAXAは、M社に対し、本件プログラム改修作業契約に基 づく代金として、本件科研費から40万9500円を支払ったが、上記①のとおり、本件プログラム改修作業は遅くとも同年2月25日までに完了していたため、M社又はその下請業者が上記契約に基づいて同作業を行うことはなかったこと、④被告は、JAXAからM社に支払われた上記金員の大部分をM社から受領したことなどの事実が認められる。 このように、被告は、既に本件プログラム改修作業が完了していたにもかかわらず、その事実を秘し、JAXAをして、M社との間で実体を伴わない本件プログラム改修作業契約を締結させた上、M社又はその下請業者が本件プログラム改修作業を行うことはなかったにもかかわらず、JAXAをして、本件プログラム改修作業契約の代金として、本件科研費から4 0万9500円を支払わせたものであって、このように実体の伴わない契約を締結させ、その契約内容に沿った履行がないにもかかわらず、その代金を科研費から支出させたことが科研費の「不正使用」に当たることは明らかである。 支払わせたものであって、このように実体の伴わない契約を締結させ、その契約内容に沿った履行がないにもかかわらず、その代金を科研費から支出させたことが科研費の「不正使用」に当たることは明らかである。 イこれに対し、被告は、①M社には研究支援作業を行う能力がなく、実際 の研究支援作業は、被告が手配したA氏らが行うことにつき、あらかじめ K副課長の了承を得ていた上、個別の契約発注及びその支払についてもJAXAの審査や決裁の過程で特に問題視されることもなかったから、本件プログラム改修作業契約をM社に発注したことは「不正使用」の理由とはならない、②本件プログラム改修作業を協力者であるA氏が実施したことを前提に、JAXAに対する本件プログラム改修作業契約の締結に係る発 議が本件プログラム改修作業の完了後となったのは同作業を早期に実施する必要があったためであり、正当な研究活動の一環であるなどとして、「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかしながら、上記①の点は、被告自身の供述及びそれに依拠する証拠以外に、K副課長やJAXAの契約締結等の審査や決裁に当たる職員ら が、M社と雇用関係や請負関係のない第三者が研究支援作業を行うことを前提とした上で、同社に研究支援作業を発注することを了承していたとか、M社との契約締結等の審査や決裁を了していたことをうかがわせる証拠は存在せず、かえって、K副課長(乙55、56)やDセンター長(乙64、65)等の関係者は、本件刑事判決に係る刑事裁判手続において、 宣誓の上、これを明確に否定する趣旨の供述をしていることも併せ考えると、上記各事実を認めることはできない。 また、上記②の点は、被告は、本件調査においてのみならず、本件刑事判決により有罪となり、さらに、本件訴訟に至ってもなお、A氏の 供述をしていることも併せ考えると、上記各事実を認めることはできない。 また、上記②の点は、被告は、本件調査においてのみならず、本件刑事判決により有罪となり、さらに、本件訴訟に至ってもなお、A氏の氏名その他その特定につながる情報を一切明らかにせず、被告自身の供述及びそ れに依拠する証拠以外にA氏が実在することをうかがわせる証拠が存在しないこと、被告自身の供述等は、その内容が自然かつ合理的なものとはいえず、直ちに信用し難いことからすると、そもそもA氏が実在する人物であるか疑わしいといわざるを得ない。この点を措くとしても、仮に、本件プログラム改修作業を早期に実施する必要があったとしても、本件プロ グラム改修作業契約締結の発議から実際に同契約を締結するまで1週間 も掛かっていないのであって(前記ア)、同契約を締結するための正規の手続を経る前に本件プログラム改修作業に着手しなければならない客観的な必要性があったとは認め難い上、仮にそのような必要性があったとしても、前記⑴アで述べた観点からすれば、被告の前記アのような行為が「不正使用」に当たるとの判断は左右されない。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、本件経費①につき、科研費の「不正使用」が認められる。 ⑶ 本件経費②についてア証拠(甲6、27、32、乙19、34)及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、平成22年3月29日、JAXAに対し、M社との間で本件イ ンレット設計等契約を締結する旨の発議をし、JAXAをして、同月30日付けでM社との間で同契約を締結させたこと、②M社は、自らは本件インレット設計等を全く行わず、その作業の全てをLに外注したこと、③M社は、同年10月、JAXAに対し、本件インレット設計等を完 日付けでM社との間で同契約を締結させたこと、②M社は、自らは本件インレット設計等を全く行わず、その作業の全てをLに外注したこと、③M社は、同年10月、JAXAに対し、本件インレット設計等を完了した旨の納品書及び請求書を提出し、JAXAは、M社に対し、本件インレット 設計等契約に基づく代金として、本件科研費から143万2500円を支払ったこと、④M社は、Lに対し、JAXAから受領した代金のうち120万円を外注費用として支払ったことなどの事実が認められる。 このように、M社自身は、本件インレット設計等を全く行わず、その作業の全てをLに外注したにもかかわらず、JAXAから本件インレット設 計等契約の代金として受領した143万2500円のうち120万円しかLに支払っていないところ、本件全証拠によっても、その余の23万2500円について、M社又はその下請業者がこれに見合うだけの本件インレット設計等契約の内容に沿った履行をしたとは認められないから、本件インレット設計等契約の代金のうち23万2500円については、科研費 の「不正使用」に当たるというべきである。 イこれに対し、被告は、①本件経費①と同様の理由により、M社に本件インレット設計等契約を発注したことは「不正使用」の理由とはならない、②不正使用とされている23万5000円は、Ⅰが行う予定であった作業費として計上していた約20万円とM社の外注先であるLが行う作業に問題が生じた場合にA氏の支援を受けるための初動費用として計上していた 約3万円の合計金額であり、いずれも正当なものであるなどとして、「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかし、上記①の点は、前記⑵イで述べたとおりである。 また、上記②の点は、本件インレット設計等契約に係る見積書や請求書( ずれも正当なものであるなどとして、「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかし、上記①の点は、前記⑵イで述べたとおりである。 また、上記②の点は、本件インレット設計等契約に係る見積書や請求書(甲27)をみても、被告が主張する上記各費用に相当する項目は掲げら れておらず、不正使用とされている23万5000円が被告主張の上記各費用に充てられる予定のものであったか否か明らかではない。この点を措き、被告の主張を前提としても、Ⅰは、実際には予定されていた操作用タッチパネルの画面のデザインを行わず、A氏の支援を受けることもなかったというのであるから(乙19、34)、M社が上記各費用に充てられる予 定であった23万5000円を保持すべき正当な理由はない。 よって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、本件経費②につき、科研費の「不正使用」が認められる。 ⑷ 本件経費③についてア証拠(甲6、28、32、乙19、34)及び弁論の全趣旨によれば、 ①被告は、JAXAに対し、M社との間で本件概念設計検討契約を締結する旨の発議をし、JAXAをして、平成23年8月1日付けでM社との間で同契約を締結させたこと、②M社は、自らは本件概念設計検討を全く行っていないこと、③M社は、JAXAに対し、同月12日付けで、同検討を完了した旨の納品書及び請求書を提出し、JAXAは、M社に対し、本 件概念設計検討契約に基づく代金として、本件科研費から46万9999 円を支払ったこと、④被告は、M社に対し、JAXAからM社に支払われた上記金員の大部分をJ名義の口座に送金するよう指示し、その後、これを取得したことなどの事実が認められる。 このように、M社自身は、本件概念設計検討を全く行っておらず、M社又はその M社に支払われた上記金員の大部分をJ名義の口座に送金するよう指示し、その後、これを取得したことなどの事実が認められる。 このように、M社自身は、本件概念設計検討を全く行っておらず、M社又はその下請業者が本件概念設計検討契約の内容に沿った履行をしたと は認められないにもかかわらず、JAXAに対し、本件概念設計検討作業を完了した旨の納品書及び請求書を提出し、本件概念設計検討契約に基づく代金として、本件科研費から46万9999円を支払わせたものであり、契約内容に沿った履行がないにもかかわらず、その代金を科研費から支出させたことは、科研費の「不正使用」に当たるというべきである。 イこれに対し、被告は、①本件経費①と同様の理由により、M社に本件概念設計検討契約を発注したことは不正の理由とはならない、②本件概念設計検討作業は、M社の作業者としてA氏が行ったものであるなどとして、「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかし、上記①の点は、前記⑵イで述べたとおりである。 また、上記②の点は、そもそもA氏が実在する人物であるか疑わしいことは前記⑵イで述べたとおりであるが、この点を措くとしても、A氏が本件概念設計検討を実施したこと、M社とA氏との間に雇用関係や請負関係が存在したこと、M社又は被告からA氏に対して本件概念設計検討の対価が支払われたことなどにつき、被告自身の供述及びこれに依拠する証拠以 外に上記各事実をうかがわせる証拠がない上、被告自身の供述等は、その内容が自然かつ合理的なものとはいえず、直ちに信用し難いことからすると、これらの事実を認めることはできない。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、本件経費③は、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑸ 本件経費④ と、これらの事実を認めることはできない。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、本件経費③は、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑸ 本件経費④について ア証拠(甲6、29、30、32、乙19)及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、本件最適化ソフト(定価による年間ライセンス料252万円)を導入するに当たり、B社に対し、JAXAにおける予算処理の都合上、これを分割する必要があるなどと虚偽の説明をし、年間ライセンス料を156万8000円とする本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約(本 件平成23年度ライセンス契約)と契約金額を95万2000円とするインレット最適設計契約(本件インレット最適設計契約)とに分割することを強く求め、これを了承させたこと、②被告は、平成24年2月頃、JAXAに対し、B社との間で本件平成23年度ライセンス契約及び本件インレット最適設計契約を締結する旨の発議をし、JAXAをして、同月27 日付けで本件平成23年度ライセンス契約を、同月10日付けで本件インレット最適設計契約を、それぞれ締結させたこと、③他方で、被告は、同月28日付けで、B社に対し、年間ライセンス料を252万円とする本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約に係る注文書兼契約内容確認書を提出したこと、④B社が実際に同社の社員を派遣するなどしてインレット 最適設計に係る支援作業を行うことはなかったこと、⑤JAXAは、B社に対し、本件平成23年度ライセンス契約に基づく代金として、本件科研費から156万8000円を、本件インレット最適設計契約に基づく代金として、本件科研費から95万2000円を、それぞれ支払ったことなどの事実が認められる。 このように、被告は、B社との間で 費から156万8000円を、本件インレット最適設計契約に基づく代金として、本件科研費から95万2000円を、それぞれ支払ったことなどの事実が認められる。 このように、被告は、B社との間では、年間ライセンス料を252万円とする本件最適化ソフトのライセンス契約を締結する旨の書面を取り交わしながら、JAXAをして、それとは異なる内容の本件平成23年度ライセンス契約及び本件インレット最適設計契約を締結させた上、実際はB社が同社の社員を派遣するなどしてインレット最適設計に係る支援作業 を行うことはなかったにもかかわらず、JAXAをして、本件インレット 最適設計契約に基づく代金として、本件科研費から95万2000円を支出させたものであって、B社が本件インレット最適設計契約の内容に沿った履行をしたとは認められないから、その代金を科研費から支出することは、科研費の「不正使用」に当たるというべきである。 イこれに対し、被告は、本件最適化ソフトを導入するに当たり、B社と交 渉した結果、本件最適化ソフトの年間ライセンス料252万円と同額で、本件最適化ソフトの年間ライセンスに加え、技術的支援の提供を受ける契約を締結することができたものであるなどとして、「不正使用」に当たらない旨主張する。 しかしながら、前記⑴で述べたとおり、第三者との間で契約を締結し、 科研費をもって当該契約の相手方に対する支払に充てる場合には、当該契約の相手方が当該契約内容に沿った履行を行った上で、当該契約内容に沿った支出がされることが必要であり、当該契約内容と異なる支出がされたり、事実と異なる会計処理が行われたりしたときは、当該科研費の使用は「不正使用」に当たるというべきであって、仮に、結果的に仕様書等のと おりに納品されているとか、その価値 と異なる支出がされたり、事実と異なる会計処理が行われたりしたときは、当該科研費の使用は「不正使用」に当たるというべきであって、仮に、結果的に仕様書等のと おりに納品されているとか、その価値が契約金額に見合ったものであって損害が生じていないなどの事情があったとしても、「不正使用」に当たるとの結論が左右されるものではない。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 ウ以上によれば、本件経費④は、科研費の「不正使用」に当たる。 ⑹ 本件経費⑤についてア証拠(甲6、29、31、32、乙19)及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、本件最適化ソフト(定価による年間ライセンス料252万円)を導入するに当たり、B社に対し、JAXAにおける予算処理の都合上、これを分割する必要があるなどと虚偽の説明をし、年間ライセンス料を1 56万8000円とする本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約(本 件平成24年度ライセンス契約)と契約金額を126万7000円とする燃焼器最適設計システム構築契約(本件燃焼器最適設計契約)とに分割することを強く求め、これを了承させたこと、②被告は、平成24年12月ないし平成25年1月頃、JAXAに対し、B社との間で本件平成24年度ライセンス契約及び本件燃焼器最適設計契約を締結する旨の発議をし、 JAXAをして、平成25年1月15日付けで本件平成24年度ライセンス契約を、平成24年12月26日付けで本件燃焼器最適設計契約を、それぞれ締結させたこと、③他方で、被告は、平成25年2月8日付けで、B社に対し、年間ライセンス料を252万円とする本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約に係る注文書兼契約内容確認書を提出したこと、④ B社は、燃焼器最適設計システム構築のため、 8日付けで、B社に対し、年間ライセンス料を252万円とする本件最適化ソフトの1年間のライセンス契約に係る注文書兼契約内容確認書を提出したこと、④ B社は、燃焼器最適設計システム構築のため、同社の社員を派遣して2日分の作業(作業費31万5000円相当)を行わせたが、それ以外に同システム構築のための作業を行うことはなかったこと、⑤JAXAは、B社に対し、本件平成24年度ライセンス契約に基づく代金として、本件科研費から156万8000円を、本件燃焼器最適設計契約に基づく代金とし て、本件科研費から126万7000円をそれぞれ支払ったことなどの事実が認められる。 このように、被告は、B社との間では、年間ライセンス料を252万円とする本件最適化ソフトのライセンス契約を締結する旨の書面を取り交わしながら、JAXAをして、それとは異なる内容の本件平成24年度ラ イセンス契約及び本件燃焼器最適設計契約を締結させた上、実際には、B社は、燃焼器最適設計システム構築のため、同社の社員を派遣して2日分の作業(作業費31万5000円相当)を行わせたものの、それ以外に同システム構築のための作業を行うことはなかったにもかかわらず、JAXAをして、本件燃焼器最適設計契約に基づく代金として、本件科研費から 126万7000円を支出させたものと認められる。そして、その差額で ある95万2000円分については、本件全証拠によっても、B社が本件燃焼器最適設計契約の内容に沿った履行をしたとは認められないから、その代金を科研費から支出することは、科研費の「不正使用」に当たるというべきである。 イこれに対し、被告は、本件経費④と同様の理由により、「不正使用」に当 たらない旨主張するが、この点に関する被告の主張を採用することができないこ 費の「不正使用」に当たるというべきである。 イこれに対し、被告は、本件経費④と同様の理由により、「不正使用」に当 たらない旨主張するが、この点に関する被告の主張を採用することができないことは、前記⑸イで述べたとおりである。 ウ以上によれば、本件経費⑤につき、科研費の「不正使用」が認められる。 ⑺ その他の被告の主張、反論についてア被告は、本件調査報告書につき、被告に対して強い悪意を持つDセンタ ー長が主導した恣意的かつ不当な本件調査及び本件とは事案を異にする本件刑事判決に依拠するものであり、信用性がない旨主張する。 しかしながら、本件調査報告書は、JAXAの総務担当理事を委員長として、JAXAの幹部職員のほか、弁護士及び公認会計士各1名の外部委員から構成された研究費不正防止対策委員会が、平成25年5月16日か ら平成28年6月22日までの間、前後6回にわたり委員会を開催し、被告本人のほか、JAXAの職員、Ⅰ、J及びB社の社員等からの事情聴取、契約書類やメール、納入品の確認等の調査を行い、それらの調査結果に加え、本件刑事判決も踏まえ、取りまとめたものであり(甲6、32)、当該委員会の構成、その調査手法、取りまとめの過程等に、恣意的であるとか、 不当、ずさんであるなど、その信用性を否定すべき具体的な事情を見いだすことはできない。 また、本件刑事判決は、被告が事実関係を争い、Dセンター長やⅠら複数の関係者に対する証人尋問のほか、被告に対する被告人質問等を経た上で宣告され、その後、被告による控訴及び上告を経て確定したものであり (乙4~10、55~65、74)、再審開始決定がされたなどの事情もう かがわれないから、本件刑事判決自体が誤審であるなどということはできない。確かに、本件刑事判決にお したものであり (乙4~10、55~65、74)、再審開始決定がされたなどの事情もう かがわれないから、本件刑事判決自体が誤審であるなどということはできない。確かに、本件刑事判決における公訴事実は、JAXAによる運営費交付金に係る事案であるのに対し、本件は、原告による科研費に係る事案であり、その点において事案を異にするものではあるが、例えば、被告とM社又はⅠとの関係性やM社に研究支援作業を発注することに係るJA XA職員の認識など、本件と共通する事柄も多いのであって、本件調査報告書が本件刑事判決も踏まえて取りまとめられたものであることをもって、その内容を信用することができないとはいえない。 したがって、この点に関する被告の主張を採用することはできない。 イその他、被告は、本件各経費につき、科研費の「不正使用」に当たらな い理由をるる主張するが、いずれも前記⑵から⑹までの認定及び判断を左右するに足りるものではない。 ⑻ 小括以上のとおり、本件各経費につき、科研費の「不正使用」が認められる。 3 返還すべき科研費等の金額について ⑴ 科研費についてア前記2の認定及び判断を前提とすると、本件各経費に係る直接経費及び間接経費(直接経費の30%に相当する額)は、以下のとおり、平成21年分科研費については83万4600円(本件経費①及び本件経費②の合計額)、平成23年分科研費については184万8598円(本件経費③及 び本件経費④の合計額)、平成24年分科研費については123万7600円(本件経費⑤)となり、これらは、本件各取消決定及び本件各返還命令における金額と同額である。 本件経費①:53万2350円(直接経費:40万9500円、間接経費:12万2850円) 本件経費②: となり、これらは、本件各取消決定及び本件各返還命令における金額と同額である。 本件経費①:53万2350円(直接経費:40万9500円、間接経費:12万2850円) 本件経費②:30万2250円 (直接経費:23万2500円、間接経費:6万9750円)本件経費③:61万0998円(直接経費:46万9999円、間接経費:14万0999円)本件経費④:123万7600円(直接経費:95万2000円、間接経費:28万5600円) 本件経費⑤:123万7600円(直接経費:95万2000円、間接経費:28万5600円)イそして、JAXAは、平成28年9月30日、原告に対し、平成21年度分科研費について34万6352円、平成23年度分科研費について65万7858円、平成24年度分科研費について40万8979円を返還 し、原告は、同日、これらを本件各取消決定により取り消された科研費の各元金に充当したから(前提事実⑷ウ)、平成21年度分科研費に係る残元金は48万8248円、平成23年度分科研費に係る残元金は119万0740円、平成24年度分科研費に係る残元金は82万8621円となり、これらの合計額は、250万7609円となる。 ⑵ 加算金及び延滞金についてア補助金等の返還を命ぜられた者は、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額につき年10.95%の割合(年365日の日割計算)で計算した加算金を納付しなければならないところ(振興会法17条1項、適化法19条1項)、被告が本件科研費 を受領した日は、平成21年度分科研費につき平成21年6月19日(前提事実⑶ウ)、平成23年度分科研費につき平成23年10月21日(同オ)、平成24年 、適化法19条1項)、被告が本件科研費 を受領した日は、平成21年度分科研費につき平成21年6月19日(前提事実⑶ウ)、平成23年度分科研費につき平成23年10月21日(同オ)、平成24年度分科研費につき平成24年10月22日(同カ)であるから、前記⑴アの本件各返還命令による返還すべき額に対する上記各受領日からJAXAによる一部返還がされた日である平成28年9月30日ま での確定加算金は、以下のとおりとなり、その合計額は220万3028 円である。さらに、その翌日である同年10月1日から支払済みまで、JAXAによる一部返還後の残元金である250万7609円(前記⑴イ)に対する年10.95%の割合(年365日の日割計算)による加算金を納付すべきこととなる。 平成21年度分科研費の返還額に係る加算金 83万4600円×10.95%÷365日×2661日=66万6261円平成23年度分科研費の返還額に係る加算金184万8598円×10.95%÷365日×1807日=100万2124円 平成24年度分科研費の返還額に係る加算金123万7600円×10.95%÷365日×1440日=53万4643円イまた、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかった者は、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき 年10.95%の割合(年365日の日割計算)で計算した延滞金を納付しなければならないところ(振興会法17条1項、適化法19条2項)、本件各返還命令において定められた納付期限は平成28年10月5日であったから(前提事実⑷イ)、被告は、その翌日である同月6日から支払済みまで、JAXAによる一部返還後の残元金である250万7609円(前記 ⑴イ) 定められた納付期限は平成28年10月5日であったから(前提事実⑷イ)、被告は、その翌日である同月6日から支払済みまで、JAXAによる一部返還後の残元金である250万7609円(前記 ⑴イ)に対する年10.95%の割合(年365日の日割計算)による延滞金を納付すべきこととなる。 第4 結論以上によれば、原告の主位的請求は、理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官篠田賢治 裁判官渡邉哲 裁判官鈴木真耶 別紙関係法令の定め 1 振興会法⑴ 振興会法3条は、振興会(原告を指す。以下同じ。)は、学術研究の助成、 研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進、学術の応用に関する研究等を行うことにより、学術の振興を図ることを目的とする旨規定している。 ⑵ 振興会法15条は、振興会は、同法3条の目的を達成するため、①学術の研究に関し、必要な助成を行うこと(同法15条1号)、②優秀な学術の研究 者を養成するため、研究者に研究を奨励するための資金を支給すること(同条2号)等の業務を行う旨規定している。 ⑶ 振興会法17条1項は、適化法10条1項、2項及び4項、17条1項、3項及び4項、18条1項及び2項、19条から21条の2まで並びに24条の2の規定は、振興会法15条1号の業務として、振興会が、予算で定め る国の補助金の交付を受け、これを財源として交付する補助金について準用し、この場合において、上記各条項中「各省各庁の長」とあるのは「振興会の理事長」と、「国」とあ して、振興会が、予算で定め る国の補助金の交付を受け、これを財源として交付する補助金について準用し、この場合において、上記各条項中「各省各庁の長」とあるのは「振興会の理事長」と、「国」とあるのは「振興会」と読み替えるものとする旨規定している。 2 適化法 ⑴ 適化法17条1項は、各省各庁の長は、補助事業者等(補助金等の交付の対象となる事務又は事業を行う者をいう。同法2条2項、3項)が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基づく各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すこ とができる旨規定している。 ⑵ 適化法18条1項は、各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消しに係る部分に関し、既に補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない旨規定している。 ⑶ 適化法19条1項は、補助事業者等は、同法17条1項の規定又はこれに 準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年10.95%の割合(なお、利率等の表示の年利建て移行に関する法律9条、25条によ り年365日の日割計算となる。)で計算した加算金を国に納付しなければならない旨規定している。 また、適化法19条2項は、補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかったときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から に納付しなければならない旨規定している。 また、適化法19条2項は、補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかったときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年10.9 5%の割合(なお、利率等の表示の年利建て移行に関する法律9条、25条により年365日の日割計算となる。)で計算した延滞金を国に納付しなければならない旨規定している。 ⑷ 適化法21条1項は、各省各庁の長が返還を命じた補助金等又はこれに係る加算金若しくは延滞金は、国税滞納処分の例により、徴収することができ る旨規定している。 以上 別紙科研費に係る取扱要領等の定め 1 独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金(基礎研究等)取扱要領(平成22年以降は、独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業(科学研究 費補助金)取扱要領に名称変更。以下「本件取扱要領」という。)(甲7、15、16)⑴ 本件取扱要領3条7項は、本件取扱要領において「不正使用」とは、故意若しくは重大な過失による科学研究費補助金の他の用途への使用又は科学研究費補助金の交付の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反した使用を いう旨規定している。 ⑵ 本件取扱要領4条は、補助金(本件取扱要領3条1項)の交付の対象となる事業は、本件取扱要領4条各号に掲げる事業(以下「補助事業」という。)とする旨規定している。 ⑶ 本件取扱要領7条1項は、補助金の交付の申請をしようとする者は、あら かじめ科学研究等に関する計画調書を原告に提出するものとする旨規定している。 ⑷ 本件取扱要領8条は、原告は、本件取扱要領7条1項の計画調書に基づき、補助金を交付しようとする者及び交付予定 かじめ科学研究等に関する計画調書を原告に提出するものとする旨規定している。 ⑷ 本件取扱要領8条は、原告は、本件取扱要領7条1項の計画調書に基づき、補助金を交付しようとする者及び交付予定額を定め、その者に対し、あらかじめ交付予定額を通知するものとする旨規定している。 ⑸ 本件取扱要領10条は、本件取扱要領8条の通知を受けた者が補助金の交付の申請をしようとするときは、原告の指示する時期までに、交付申請書を原告に提出しなければならない旨規定している。 ⑹ 本件取扱要領11条1項は、原告は、本件取扱要領10条により補助金の交付の申請があったときは、当該申請に係る書類の審査及び必要に応じて行 う現地調査等により、補助事業の内容が適正であるかどうか、金額の算定に 誤りがないかどうか等を調査するものとする旨規定している。 本件取扱要領11条2項は、原告は、同条1項の調査の結果、補助金を交付すべきものと認めたときは、速やかに補助金の交付の決定を行うものとする旨規定している。 本件取扱要領11条3項は、原告は、補助金の交付の条件として、①補助 金の交付を受けた者が、科学研究等の内容及び経費の配分の変更をしようとするときは、あらかじめ原告の承認を得なければならないこと(同項1号)、②補助金の交付を受けた者が、補助事業を遂行するため契約を締結し、支払を行う場合は、国の契約及び支払に関する規定の趣旨に従い、公正かつ最小の費用で最大の効果を上げるように経費の効率的使用に努めなければならな いこと(同項4号)等その他必要な事項について定めるものとする旨規定している。 ⑺ 本件取扱要領13条は、補助金の交付を受けた者は、補助金を科学研究等に必要な経費にのみ使用しなければならない旨規定している。 2 研究活動の不正行 項について定めるものとする旨規定している。 ⑺ 本件取扱要領13条は、補助金の交付を受けた者は、補助金を科学研究等に必要な経費にのみ使用しなければならない旨規定している。 2 研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への対応に関する規程(以下 「本件規程」という。)(甲13)⑴ 本件規程2条3号は、本件規程における「不正使用」とは、故意若しくは重大な過失による研究資金の他の用途への使用又は研究資金の交付の決定の内容若しくはこれに付した条件に違反した使用をいう旨規定している。 ⑵ 本件規程11条1項は、不正使用等に関する告発又は相談等(以下「告発 等」という。)に係る事案については、原則として現に被告発者が所属する研究機関若しくは告発等をされた事案に係る研究活動を行っていた際に所属していた研究機関又は被告発者が当該告発等をされた事案に係る研究活動を行っていた研究機関(以下「調査機関」という。)が調査を実施する旨規定している。 本件規程11条2項は、原告は、調査機関から調査の実施の決定その他の 報告を受けた場合は、当該調査機関における調査が適切に実施されるよう、必要に応じて指示を行うとともに、速やかにその事案の全容を解明し、調査を完了させるよう要請する旨規定している。 ⑶ 本件規程13条は、原告理事長は、調査の結果、不正使用等があったと認定された場合(同条1号)、直ちに必要な措置を執る旨規定している。 ⑷ 本件規程16条1項は、原告理事長が本件規程13条1号で執る措置の内容は、事案に応じて、当該研究資金の交付決定を取り消すとともに、既に配分された研究資金の一部又は全部を返還させること(本件規程16条1項1号)などとする旨規定している。 以上 の交付決定を取り消すとともに、既に配分された研究資金の一部又は全部を返還させること(本件規程16条1項1号)などとする旨規定している。 以上
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