平成29年(行ク)第348号執行停止の申立て事件(本案事件平成29年(行ウ)第451号行政処分取消請求事件) 主文 1 本件申立てを却下する。 2 申立費用は申立人の負担とする。 理由 第1 申立て相手方が平成28年10月7日付けで行った日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約に基づく申立人の日本国への引渡請求処分の効力は,本案事件の判決確定に至るまでこれを停止する。 第2 事案の概要本件は,相手方(本案事件被告。所轄庁は,警察庁)が,日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約(以下「本件条約」という。)に基づき,平成28年10月7日付けで,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)を被請求国として,米国に居住する申立人(本案事件原告)につき,建造物損壊被疑事件に係る逮捕状が発付されていることを理由に,日本国への引渡しを請求したこと(以下「本件引渡請求」という。)に対し,申立人が,本件引渡請求は違法な行政処分であると主張してその取消しの訴えを提起するとともに,これを本案として,本件引渡請求により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると主張し,本案事件の判決確定までの間,本件引渡請求の効力を停止するよう申し立てた事案である。 1 本件条約の定めは別紙2のとおりである。 2 前提事実(1) 〇簡易裁判所の裁判官により,平成27年4月28日,申立人を被疑者とし下記アを被疑事実とする逮捕状が発付され,また,同年12月8日,申 立人を被疑者とし下記イを被疑事実とする逮捕状が発付された(疎甲4の2)。これらの逮捕状については,それぞれ有効期間の満了に伴い,同一の被疑事実による新たな逮捕状の発付が繰り返され,平成28年7月15日には,上記裁判所の裁判官により下 逮捕状が発付された(疎甲4の2)。これらの逮捕状については,それぞれ有効期間の満了に伴い,同一の被疑事実による新たな逮捕状の発付が繰り返され,平成28年7月15日には,上記裁判所の裁判官により下記イを被疑事実とする有効期間1年(平成29年7月15日まで)の逮捕状が発付され,平成28年9月2日には,上記裁判所の裁判官により下記アを被疑事実とする有効期間1年(平成29年9月2日まで)の逮捕状が発付された(疎甲1,4の1及び2。以下,これらの逮捕状のうち最後に発付された2通の逮捕状を「本件各逮捕状」といい,下記ア及びイの被疑事実を「本件各被疑事実」という。なお,本件各逮捕状のうち後者については,その逮捕状請求書〔疎甲4の2〕に2枚の別紙が添付されているが,被疑事実として引用しているのはそのうちの別紙2〔下記アに相当〕のみであり,本件各逮捕状はそれぞれ一つの被疑事実について発付されているものである。)。 記ア被疑者は,平成27年3月25日午後5時02分ころ,千葉県〇市α×番地所在のA神宮境内において,同神宮宮司B管理に係る,拝殿正面西側黒色角柱及び東側黒色角柱に成分不明なるも油様の液体を塗布し,更に,拝殿正面黒色階段及び黒色さい銭箱に同様の液体を散布して汚損(損害額242万3248円相当)させ,もって,他人の建造物を損壊したものである。 イ被疑者は,平成27年3月25日午後4時06分ころ,千葉県〇市β×番地C敷地内において,同寺寺務長D管理に係る,同寺総門東側総門柱3本に対し,それぞれ成分不明なるも油様の液体を塗布して汚損(損害額12万0500円相当)させ,もって,他人の建造物を損壊したものである。 (2) 申立人は,従前から米国ニューヨーク州に居住しているところ,本件各被疑事実における犯行日後の平成27年4月1日に本邦 2万0500円相当)させ,もって,他人の建造物を損壊したものである。 (2) 申立人は,従前から米国ニューヨーク州に居住しているところ,本件各被疑事実における犯行日後の平成27年4月1日に本邦を出国した後も,米 国に戻って肩書地に居住しており,日本国外務省による旅券返納命令にも応じなかった(疎甲2,4の2)。千葉県警察から依頼を受けた警察庁は,同庁刑事局組織犯罪対策部長作成の平成28年10月7日付け「建造物損壊被疑者Eの引渡請求について」と題する書面(疎甲1)を,外交上の経路により米国の権限ある司法当局に対して送付した(本件引渡請求)。なお,上記書面には,本件各逮捕状の各謄本が添付されている。 (3) 申立人は,平成29年6月2日,米国の司法当局に身柄を拘束され,その後保釈されており,現在,ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所において,申立人に係る引渡請求事案が審理されている。 なお,本件各逮捕状の有効期間の満了に伴い,平成29年7月14日には,〇簡易裁判所の裁判官により前記(1)の記イを被疑事実とする有効期間1年(平成30年7月14日まで)の逮捕状が発付され,平成29年9月1日には,上記裁判所の裁判官により前記(1)の記アを被疑事実とする有効期間1年(平成30年9月1日まで)の逮捕状が発付された(疎乙3)。 3 争点及び当事者の主張の要旨本件における争点は,(ア)本件引渡請求が抗告訴訟の対象となるか,(イ)本件引渡請求により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに当たるか(行政事件訴訟法25条2項),(ウ)本案について理由がないとみえるときに当たるか(同条4項)である。 申立人は,要旨,(ア)本件条約に基づく引渡請求は引渡しを求められている者(以下「引渡請求対象者」という。)の人身の自由等の基本的人権 について理由がないとみえるときに当たるか(同条4項)である。 申立人は,要旨,(ア)本件条約に基づく引渡請求は引渡しを求められている者(以下「引渡請求対象者」という。)の人身の自由等の基本的人権を侵害するものであるから,本件引渡請求は行政処分に当たり,抗告訴訟の対象となる,(イ)申立人は高度の技能を有する産婦人科医として,他の産婦人科医が治療することのできない患者を世界中から受け入れているところ,申立人が日本国に送還されれば申立人の基本的人権が侵害される上,多くの患者の生命を危険にさらすこととなるから,重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに当た る,(ウ)本件引渡請求は,①本件各被疑事実がいずれも建造物損壊罪の構成要件に該当しないこと,②本件各逮捕状は1年という長期の有効期間を定めており刑事訴訟規則142条1項6号に違反すること,③本件各逮捕状の有効期間は既に満了していること,④同一の被疑事実につき,2通の逮捕状が発付されており,一罪一逮捕の原則に反すること,⑤申立人の米国における産婦人科医としての活動状況に照らすと,本件引渡請求を相当とした処分行政庁の判断は裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることから,違法な行政処分というべきであり,本案について理由がないとみえるときには当たらない旨主張している。 これに対し,相手方は,要旨,(ア)日本国が請求国としてする本件条約に基づく引渡請求は,被請求国である米国の権限のある当局を名宛人として,その職務権限の行使を依頼するものにすぎない上,引渡請求に応じるか否かは米国当局の判断に委ねられているため,引渡請求対象者に義務を課されることが必然であるとはいえないから,引渡請求対象者の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為であるとはいえず,行政処分に当たらないため,抗告訴訟の対 ねられているため,引渡請求対象者に義務を課されることが必然であるとはいえないから,引渡請求対象者の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為であるとはいえず,行政処分に当たらないため,抗告訴訟の対象とならない,(イ)申立人が他の産婦人科医において治療することのできない患者を多く受け入れている事実は疎明されておらず,重大な損害を避けるため緊急の必要があるときに当たらない,(ウ)本件各被疑事実の構成要件該当性や本件各逮捕状の発付の適法性について行政事件訴訟において争うことはできない上,第三者である患者の利益をもって裁量権の範囲の逸脱又はその濫用をいう申立人の主張も失当であるから,本案について理由がないとみえるときに当たる旨主張している。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件引渡請求の適否については日本国において行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする執行停止の申立てをすることもできないと解すべきであるから,本件申立ては不適法として却下すべきものと 判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。 (1) 本件条約の定めによれば,本件条約の締約国である日本国及び米国は,2条1項に規定する犯罪について訴追し,審判し,又は刑罰を執行するために他方の締約国(請求国)からその引渡しを求められた者であってその領域において発見されたものを,本件条約の規定に従い請求国に引き渡す義務を負う(1条前段)。そして,本件条約に基づく引渡しは,未だ有罪判決を受けていない引渡請求対象者については,被請求国の法令上引渡請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを証明する十分な証拠がある場合に行われる(3条。ただし,4条から6条までに定める引渡義務を負わない場合を除く。)。引渡請求には,引渡請求対象者を特定する事項を記 と疑うに足りる相当な理由があることを証明する十分な証拠がある場合に行われる(3条。ただし,4条から6条までに定める引渡義務を負わない場合を除く。)。引渡請求には,引渡請求対象者を特定する事項を記載した文書,犯罪事実を記載した書面,引渡請求に係る犯罪の構成要件,罪名及び刑罰を定める法令の条文,訴追又は刑罰の執行に関する時効を定める法令の条文を添付するほか(8条2項),引渡請求が有罪の判決を受けていない者について行われる場合には,請求国の裁判官その他の司法官憲が発した逮捕すべき旨の令状の写し,引渡請求対象者が同令状にいう者であることを証明する証拠資料,引渡請求対象者が被請求国の法令上引渡請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを示す証拠資料を添付することとされ(同条3項),被請求国の行政当局は,これらの資料が本件条約の要求するところを満たすのに十分でないと認める場合には,同国の裁判所に当該引渡請求を付託するかどうかを決定する前に請求国が追加資料を提出することができるようにするため,請求国に対しその旨を通知することとされている(同条7項前段)。 そして,被請求国の行政当局において適式なものと認められた引渡請求は同国の裁判所に付託され,その付託を受けた裁判所において,引渡請求対象者が被請求国の法令上引渡請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを証明する十分な証拠があるか否か,被請求国が引渡義務を負 わない場合に当たるか否か等を審査すべきものと解される。このような審査を経て,被請求国において請求国の引渡請求に応じるか否かが決定され,その決定は外交上の経路により請求国に通知される(12条1項参照)。 以上のような本件条約の定めや被請求国における引渡請求に係る審査手続の基本的構造に照らすと,日本国が請求 応じるか否かが決定され,その決定は外交上の経路により請求国に通知される(12条1項参照)。 以上のような本件条約の定めや被請求国における引渡請求に係る審査手続の基本的構造に照らすと,日本国が請求国としてする引渡請求について被請求国である米国の行政当局から付託を受ける米国の裁判所は,上記のような証拠の十分性等に関する審査のほか,これらの審査を行う前提をなすものとして,当該引渡請求が本件条約に定める方式に沿ったものであるか否かについて疑義がある場合に,これも審査することができるものと解され,結局,当該引渡請求の条約適合性については,その手続面及び実体面の双方につき米国の司法審査の対象となるものと解される。そして,仮に,このような米国の裁判所における審査と並行して,日本国の裁判所に訴訟を提起して当該引渡請求の条約適合性を争うことができることとすると,当該引渡請求の条約適合性に関する両国の司法判断が互いに矛盾抵触する事態が生じ得るところ,本件条約にはこのような事態を回避又は調整するための規定が置かれていないことに鑑みると,日本国が請求国としてする引渡請求の条約適合性について,日本国の裁判所に訴訟を提起して争うことは許されないと解するのが相当である。 (2) ところで,本件条約8条3項は,引渡請求に請求国において発付された「逮捕すべき旨の令状」を添付すべきものとする一方,その発付が適法にされたか否かを確認するための資料の添付は求めていない。これは,同項にいう「逮捕すべき旨の令状」が,請求国の裁判官その他の司法官憲により発付されるものに限定されており,その発付に当たり請求国における司法判断を経ていることを踏まえ,逮捕状の発付の適法性は専ら請求国において判断されるべきであるとしたものと解される。そして,日本国の刑事訴訟手続においては,逮捕 おり,その発付に当たり請求国における司法判断を経ていることを踏まえ,逮捕状の発付の適法性は専ら請求国において判断されるべきであるとしたものと解される。そして,日本国の刑事訴訟手続においては,逮捕に対する不服申立ては許されず(最高裁昭和57年(し)第1 01号同年8月27日第一小法廷決定・刑集36巻6号726頁等参照),勾留請求の段階で逮捕の適否に係る司法審査を受けることが予定されているところ,本件条約に基づく日本国を請求国とする引渡請求は,同請求に係る被疑事件について,米国に所在する被疑者(引渡請求対象者)の日本国への引渡しを受けることにより,日本国で発付された逮捕状の執行を可能ならしめるものであって,いわば,日本国における逮捕手続の補完としての性質及び機能を有するものといえる。そうすると,仮に,本件条約に基づく引渡請求を対象として行政事件訴訟を提起し,逮捕状の発付の適否を争うことができるものとすれば,本来,日本国の刑事訴訟手続に関する定めに従った司法審査がされるべき逮捕の適否につき,行政事件訴訟においてもこれを審査してその逮捕の効力を否定することができるのと実質的に異ならないこととなり,これは現行法制度の予定するところではないといわなければならない(なお,本件条約に基づく引渡請求に係る被請求国の審査手続において,同国の法令上引渡請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを証明する十分な証拠があるか否かが審査されるが,この審査は当該引渡請求が本件条約の定める実体的要件を充足するか否かに係るものである上,あくまでも被請求国の法令に照らして判断されるものであるから,被請求国において上記の審査がされることをもって,以上の理が左右されるものではない。)。 (3) また,上記(2)のような本件条約に基づく引渡請求の 求国の法令に照らして判断されるものであるから,被請求国において上記の審査がされることをもって,以上の理が左右されるものではない。)。 (3) また,上記(2)のような本件条約に基づく引渡請求の性質及び機能に鑑みると,日本国の捜査当局において同請求の実施を相当とした判断の適否についても,逮捕の適否と同様に,日本国の刑事訴訟手続に関する定めに従った司法審査の対象となるべきものといえるから,これを争うために行政事件訴訟の提起をすることもまた許されないものというべきである。 (4) 以上によれば,日本国が請求国として米国に対し,有罪の判決を受けていない引渡請求対象者について本件条約に基づく引渡請求をする場合,当該 引渡請求の条約適合性については米国の行政当局及び裁判所における審査の対象とされるべきものであり,また,当該引渡請求の前提となるべき同請求に添付される逮捕状の発付の適法性及び同請求の実施の相当性については,日本国の刑事訴訟手続に関する定めに従った司法審査の対象とされるべきものであるから,当該引渡請求の条約適合性並びに同請求に添付される逮捕状の発付の適法性及び同請求の実施の相当性のいずれについても,これを争うために日本国において行政事件訴訟を提起することはできず,結局のところ,当該引渡請求の適否については日本国の行政事件訴訟による審査の対象外であるというほかないから,当該引渡請求は抗告訴訟の対象とすることができないものというべきである。したがって,当該引渡請求を対象として提起された抗告訴訟を本案とする執行停止の申立てをすることもできない。 2 よって,本件引渡請求を対象として提起された抗告訴訟を本案として同請求の効力停止を求める本件申立ては,不適法として却下を免れないから,その余の点について判断するまでもなく,本件申立 できない。 主文 よって,本件引渡請求を対象として提起された抗告訴訟を本案として同請求の効力停止を求める本件申立ては,不適法として却下を免れないから,その余の点について判断するまでもなく,本件申立てを却下することとして,主文のとおり決定する。 平成29年10月10日東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清水知恵子 裁判官村松悠史 裁判官和田山弘剛 (別紙2) ○ 日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約 日本国及びアメリカ合衆国は、犯罪の抑圧のための両国の協力を一層実効あるものとすることを希望して、次のとおり協定した。 第一条 各締約国は、第二条に規定する犯罪について訴追し、審判し、又は刑罰を執行するために他方の締約国からその引渡しを求められた者であつてその領域において発見されたものを、この条約の規定に従い当該他方の締約国に引き渡すことを約束する。 当該犯罪が請求国の領域の外において行われたものである場合には、特に、第六条に定める条件が適用される。 第二条 引渡しは、この条 て行われたものである場合には、特に、第六条 に定める条件が適用される。 第二条 引渡しは、この条約の規定に従い、この条約の不可分の一部をなす付表に掲げる犯罪であつて両締約国の法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているものについて並びに付表に掲げる犯罪以外の犯罪であつて日本国の法令及び合衆国の連邦法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているものについて行われる。 前記犯罪の一が実質的な要素をなしている犯罪については、合衆国政府に連邦管轄権を認めるために州際間の輸送又は郵便その他州際間の設備の使用が特定の犯罪の要件とされている場合であつても、引渡しを行う。 引渡しを求められている者が の規定の適用を受ける犯罪について請求国の裁判所により刑の言渡しを受けている場合には、その者が死刑の言渡しを受けているとき又は服すべき残 求国の裁判所により刑の言渡しを受けている場合には、その者が死刑の言渡しを受けているとき又は服すべき残りの刑が少なくとも四箇月あるときに限り、引渡しを行う。 第三条 引渡しは、引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行つたと疑うに足りる相当な理由があること又はその者が請求国の裁判所により有罪の判決を受けた者であることを証明する十分な証拠がある場合に限り、行われる。 第四条 この条約の規定に基づく引渡しは、次のいずれかに該当する場合には、行われない。 ( ) 引渡しの請求に係る犯罪が政治犯罪である場合又は引渡しの請求が引渡しを求められている者を政治犯罪について訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行する目的で行われたものと認められる場合。 この規定の適用につき疑義が生じたときは、被請求国の決定による。 ( ) 引渡しを求められている者が被請求国において引渡し 疑義が生じたときは、被請求国の決定による。引渡しを求められている者が被請求国において引渡しの請求に係る犯罪について訴追されている場合又は確定判決を受けた場合、日本国からの引渡しの請求にあつては、合衆国の法令によるならば時効の完成によつて引渡しの請求に係る犯罪について訴追することができないとき。合衆国からの引渡しの請求にあつては、次のいずれかに該当する場合であつて、日本国の法令によるならば時効の完成その他の事由によつて引渡しの請求に係る犯罪について刑罰を科し又はこれを執行することができないとき。(a)日本国が当該犯罪に対する管轄権を有するとした場合(b)日本国がその管轄権を現に有しており、かつ、その審判が日本国の裁判所において行われたとした場合。被請求国は、引渡しを求められている者が引渡しの請求に係る犯罪について第三国において無罪の判決を受け又は刑罰の は、引渡しを求められている者が引渡しの請求に係る犯罪について第三国において無罪の判決を受け又は刑罰の執行を終えている場合には、引渡しを拒むことができる。 被請求国は、引渡しを求められている者が被請求国の領域において引渡しの請求に係る犯罪以外の犯罪について訴追されているか又は刑罰の執行を終えていない場合には、審判が確定するまで又は科されるべき刑罰若しくは科された刑罰の執行が終わるまで、その引渡しを遅らせることができる。 第五条 被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。 ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。 第六条 引渡しの請求に係る犯罪が請求国の領域の外において行われたものである場合には、被請求国は、自国の法令が自国の領域の外において行われたそのような犯罪を罰することとしているとき又は当該犯罪が請求国の国民によつて行われたものであるときに限り のような犯罪を罰することとしているとき又は当該犯罪が請求国の国民によつて行われたものであるときに限り、引渡しを行う。 この条約の適用上、締約国の領域とは、当該締約国の主権又は権力の下にあるすべての陸地、水域及び空間をいい、当該締約国において登録された船舶及び当該締約国において登録された航空機であつて飛行中のものを含む。 この規定の適用上、航空機は、そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされた時からそれらの乗降口のうちいずれか一が降機のために開かれる時まで、飛行中のものとみなす。 第七条 請求国は、次のいずれかに該当する場合を除くほか、この条約の規定に従つて引き渡された者を、引渡しの理由となつた犯罪以外の犯罪について拘禁し、訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行しないものとし、又はその者を第三国に引き渡さない。 ただし、この規定は、引渡しの後に行われた犯罪については、適用しない。 ( の者を第三国に引き渡さない。ただし、この規定は、引渡しの後に行われた犯罪については、適用しない。 引き渡された者が引渡しの後に請求国の領域から離れて当該請求国の領域に自発的に戻ってきたとき。 引き渡された者が請求国の領域から自由に離れることができるようになった日から四十五日以内に請求国の領域から離れなかったとき。 被請求国が、引き渡された者をその引渡しの理由となった犯罪以外の犯罪について拘禁し、訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行すること又はその者を第三国に引き渡すことに同意したとき。 請求国は、引渡しの理由となった犯罪を構成する基本的事実に基づいて行われる限り、第二条の規定に従い引渡しの理由となるべきいかなる犯罪についても、この条約の規定に従って引き渡された者を拘禁し、訴追し、審判し、又はその者に対し刑罰を執行することができる。 第八条 引渡し 渡された者を拘禁し、訴追し、審判し、又はその者に対し刑罰を執行することができる。 第八条 引渡しの請求は、外交上の経路により行う。 引渡しの請求には、次に掲げるものを添える。 (a)引渡しを求められている者を特定する事項を記載した文書 (b)犯罪事実を記載した書面 (c)引渡しの請求に係る犯罪の構成要件及び罪名を定める法令の条文 (d)当該犯罪の刑罰を定める法令の条文 (e)当該犯罪の訴追又は刑罰の執行に関する時効を定める法令の条文 引渡しの請求が有罪の判決を受けていない者について行われる場合には、次に掲げるものを添える。 (a)請求国の裁判官その他の司法官憲が発した逮捕すべき旨の令状の写し (b)引渡しを求められている者が逮捕すべき旨の令状にいう者であることを証明する証拠資料 (c)引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行ったと疑う 証拠資料 引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があることを示す証拠資料 引渡しの請求が有罪の判決を受けた者について行われる場合には、次に掲げるものを添える。 請求国の裁判所が言い渡した判決の写し 引渡しを求められている者が当該判決にいう者であることを証明する証拠資料 有罪の判決を受けた者が刑の言渡しを受けていないときは、逮捕すべき旨の令状の写し 有罪の判決を受けた者が刑の言渡しを受けているときは、刑の言渡し書の写し及び当該刑の執行されていない部分を示す書面 引渡しの請求には、被請求国の法令により必要とされるその他の資料を添える。 この条約の規定に従い請求国が提出するすべての文書は、被請求国の法令の要求するところに従い正当に認証されるものとし、これらの文書には被 するすべての文書は、被請求国の法令の要求するところに従い正当に認証されるものとし、これらの文書には被請求国の国語による正当に認証された翻訳文を添付する。 被請求国の行政当局は、引渡しを求められている者の引渡請求の裏付けとして提出された資料がこの条約の要求するところを満たすのに十分でないと認める場合には、自国の裁判所に当該引渡請求を付託するかどうかを決定する前に請求国が追加の資料を提出することができるようにするため、請求国に対しその旨を通知する。 被請求国の行政当局は、その資料の提出につき期限を定めることができる。 第九条 緊急の場合において、請求国が外交上の経路により、被請求国に対し、引渡しを求める者につき第二条 の規定に従い引渡しの理由となる犯罪について逮捕すべき旨の令状が発せられ又は刑の言渡しがされていることの通知を行い、かつ、引渡しの請求を行うべき旨を保証して仮拘禁の要請を行つ は刑の言渡しがされていることの通知を行い、かつ、引渡しの請求を行うべき旨を保証して仮拘禁の要請を行つたときは、被請求国は、その者を仮に拘禁することができる。 仮拘禁の要請においては、引渡しを求める者を特定する事項及び犯罪事実を明らかにするものとし、被請求国の法令により必要とされるその他の情報を含める。 仮拘禁が行われた日から四十五日以内に請求国が引渡しの請求を行わない場合には、仮に拘禁された者は、釈放される。 ただし、この規定は、被請求国がその後において引渡しの請求を受けた場合に、引渡しを求められる者を引き渡すための手続を開始することを妨げるものではない。 第十条 被請求国は、引渡しを求められている者が、被請求国の裁判所その他の権限のある当局に対し、その引渡しのために必要とされる国内手続における権利を放棄する旨を申し出た場合には、被請求国の法令の許す範囲内において、引渡しを促進するために おける権利を放棄する旨を申し出た場合には、被請求国の法令の許す範囲内において、引渡しを促進するために必要なすべての措置をとる。 第十一条 被請求国は、同一の又は異なる犯罪につき同一の者について他方の締約国及び第三国から引渡しの請求を受けた場合には、いずれの請求国にその者を引き渡すかを決定する。 第十二条 被請求国は、請求国に対し、外交上の経路により引渡しの請求についての決定を速やかに通知する。 被請求国は、その権限のある当局が引渡状を発したにもかかわらず、その法令により定められた期限内に請求国が引渡しを求めている者の引渡しを受けない場合には、その者を釈放し、その後において同一の犯罪についてその者の引渡しを拒むことができる。 請求国は、引渡しを受けた者を被請求国の領域から速やかに出国させる。 第十三条 引渡しが行われる場合において、犯罪行為の結果得られたすべての物又は証拠として必 させる。 第十三条 引渡しが行われる場合において、犯罪行為の結果得られたすべての物又は証拠として必要とされるすべての物は、被請求国の法令の許す範囲内において、かつ、第三者の権利を害さないことを条件として、これを引き渡す。 第十四条 被請求国は、引渡しの請求に起因する国内手続(引渡しを求められている者の拘禁を含む。 )について必要なすべての措置をとるものとし、そのための費用を負担する。 ただし、引渡しを命ぜられた者の護送に要した費用は、請求国が支払う。 被請求国は、請求国に対し、引渡しを求められた者がこの条約の規定に従い拘禁され、審問され、又は引き渡されたことによりその者が受けた損害につきその者に支払つた賠償金を理由とする金銭上の請求を行わない。 第十五条 各締約国は、外交上の経路により請求が行われた場合には、次のいずれかに該当する場合を除くほか、第三国から他方の締約国に対 の経路により請求が行われた場合には、次のいずれかに該当する場合を除くほか、第三国から他方の締約国に対し引き渡された者をその領域を経由の上護送する権利を他方の締約国に認める。 引渡しの原因となった犯罪行為が通過を求められている締約国の法令によるならば犯罪を構成しないとき。 引渡しの原因となった犯罪行為が政治犯罪であるとき又は引渡しの請求が引き渡された者を政治犯罪について訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行する目的で行われたものと認められるとき。この規定の適用につき疑義が生じたときは、通過を求められている締約国の決定による。 通過により公共の秩序が乱されると認められるとき。 の場合において、引渡しを受けた締約国は、その領域を経由の上護送が行われた締約国に対し、護送に関連してその要した費用を償還する。 第十六条 この条約は、批准されなければならず、批准 し、護送に関連してその要した費用を償還する。 第十六条 この条約は、批准されなければならず、批准書は、できる限り速やかにワシントンで交換されるものとする。 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。 この条約は、第二条 に規定する犯罪であつてこの条約の効力発生前に行われたものについても適用する。 日本国とアメリカ合衆国との間で千八百八十六年四月二十九日に東京で署名された犯罪人引渡条約及び千九百六年五月十七日に東京で署名された追加犯罪人引渡条約は、この条約の効力発生の時に終了する。 ただし、この条約の効力発生の際に被請求国において係属している引渡しに係る事件は、前記の犯罪人引渡条約及び追加犯罪人引渡条約に定める手続に従う。 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによつていつでもこの条約を終了させることができる。 し六箇月前に文書による予告を与えることによつていつでもこの条約を終了させることができる。
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