【判事事項の要旨】平成17年法律第53号による改正前の農業振興地域の整備に関する法律15条の15第1項(現15条の2第1項)に基づく開発許可申請に対する審査は,行政手続法5条の審査基準を定めるべき場合に当たるが,その定めがなかったとしても不許可処分の取消事由には該当せず,また,当該不許可処分をするに当たって,理由提示に欠けることはなかったとした事例。 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用を含め,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 主文1,2項同旨。 2 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人が,宮城県知事である控訴人に対し,農業振興地域の整備に関する法律(平成17年法律第53号による改正前のもの。以下「農振法」という。)15条の15第1項の規定に基づく被控訴人の開発許可申請を控訴人が平成13年10月19日付けで不許可とした処分(以下「本件不許可処分」という。)を取り消すことを求めた事案である。 原審が被控訴人の本件請求を認容したので,控訴人が控訴し,さらに,当審において,農業振興地域整備計画を定めている白石市が控訴人のために補助参加した。そのほかの事案の概要は,下記2ないし4のとおり,控訴人の追加主張,控訴人補助参加人の主張及びこれに対する被控訴人の反論があるほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の追加主張(1) 農業振興地域制度に関するガイドライン(平成12年4 の反論があるほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の追加主張(1) 農業振興地域制度に関するガイドライン(平成12年4月1日12構改C第261号農林水産省構造改善局長通知。以下「本件ガイドライン」という。)は,農振法15条の15第4項各号を解説し,審査に際しての留意事項を記載しているにすぎないものであって,具体的な審査基準を規定したものではない。農用地等として利用することが困難になるか否かは様々な用途ごとに判断せざるを得ないものであるし,市町村の農業振興地域整備計画は各市町村の個別の計画ごとにその実施期間がまちまちであるのであるから,一律に期間等の客観的指標をもって審査基準を定めることなどもとより不可能である。 (2) 仮に審査基準を定めないことが行政手続法5条に違反するとしても,同条の趣旨は行政庁の許認可処分の透明性と公正さを確保するというところにあり,それらは個々の行政処分に対応してその手続中に内在しているものではないから,審査基準の作成・公開の手続が履践されないとしても,個々の行政処分がそれゆえに直ちに違法となることはない。 (3) 本件不許可処分においては,本件開発行為が本件土地を相当長期にわたり農用地等以外の用途に利用する計画であるという具体的事実に基づき,白石市が定める農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあるという判断基準により処分した,と具体的にその理由を明示しているのであり,本件不許可処分に行政手続法8条違反はない。 3 控訴人補助参加人の主張本件施設を設置すれば,産業廃棄物に含まれる重金属等の汚染物質 処分した,と具体的にその理由を明示しているのであり,本件不許可処分に行政手続法8条違反はない。 3 控訴人補助参加人の主張本件施設を設置すれば,産業廃棄物に含まれる重金属等の汚染物質が10年以上にわたり本件土地に蓄積され,汚染された土壌が永久に残存し続けることになる。それらの上に盛土をしても,地層内の亀裂や地層の凹凸,間隙水圧等を介しての地下水汚染や汚染された物質からの毛細管現象により,汚染物質は地上に向かい拡散していくことになる。そうすると,本件開発行為により本件土地がもはや農地として復元される可能性がなくなることは明らかである。 4 控訴人補助参加人の主張に対する被控訴人の反論補助参加人の主張は,農振法の目的とは関係のない廃棄物処理法の目的にかかわるものであるから,本件不許可処分の適法事由の主張としては失当である。また,被控訴人は,産業廃棄物最終処分場の跡地に盛土して農地として復元すると決めたわけではない。もともとは跡地にゴルフ場を建設する予定であったのであり,それ以外の用途であっても市民と相談して選択するつもりである。 第3 当裁判所の判断 1 本件不許可処分に至る経緯等について前記争いのない事実等に後掲の各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,本件不許可処分に至る経緯等について,以下の事実を認めることができる。 (1) 本件申請までの経緯ア被控訴人は,昭和54年12月,本店所在地を東京都新宿区,商号を甲株式会社として設立された会社であるが,平成元年4月に商号を株式会社乙に変更するとともに本店所在地を宮城県白石市に移転し,そのころ,本件開発行為の予定地付近を中心にゴルフ場を建設する計画を立てた。しかし,ゴ が,平成元年4月に商号を株式会社乙に変更するとともに本店所在地を宮城県白石市に移転し,そのころ,本件開発行為の予定地付近を中心にゴルフ場を建設する計画を立てた。しかし,ゴルフ場建設予定地の地形の関係上ゴルフ場造成のための土工量が宮城県の定める大規模開発行為に関する指導要綱の土工量規制に抵触したため,ゴルフ場建設計画はいったん中止された。なお,被控訴人のゴルフ場建設計画は,過疎化が進んでいた地元からは歓迎された。(甲8,10,12)イその後,被控訴人は,産業廃棄物でゴルフ場予定地を埋め立てた上その跡地利用としてゴルフ場を造成すれば宮城県の土工量規制に抵触せずにゴルフ場新設工事が可能になると考え,産業廃棄物処分場の設置について計画を立てることにし,地元の地権者等とも話し合った。 地元の地権者も他の産業廃棄物処分場を見学するなどした上で被控訴人の考えに賛同したため,被控訴人は,平成4年1月,商号を現在のものに変更するとともに事業の目的に新たに産業廃棄物,ごみ,汚物等の収集,再加工,廃棄処理等を加え,同年2月,地権者等との間で本件開発行為に関する開発基本協定を締結した。 (甲8,10,12,13)ウ被控訴人は,平成4年5月ころから,被控訴人の考えに基づく計画を宮城県や補助参加人である白石市に説明した。また,被控訴人の計画に賛同する地元の地権者らも同年6月24日,白石市長に面会して協力方を求めたが,その際,白石市長は被控訴人の計画に反対である旨表明した。 白石市長は,以後,一貫して反対の立場を表明し続けているが,その反対の理由は,本件開発行為におけ 協力方を求めたが,その際,白石市長は被控訴人の計画に反対である旨表明した。 白石市長は,以後,一貫して反対の立場を表明し続けているが,その反対の理由は,本件開発行為における廃棄物処分場の建設予定地が仙南仙塩広域水道水供給事業やa地区の簡易水道の取水口の上流に位置するため水質が汚染された場合の被害が甚大であること,被控訴人の計画している管理型処分場では長期的管理ができるのか不安があること,宮城県の土工量規制は産業廃棄物で埋め立てる場合にも適用があること,白石市はゴルフ場の開発協議に参加しないからゴルフ場の建設自体の実現可能性も乏しいことなどであった。 白石市長は,同年11月26日,被控訴人にも反対の意向を表明した。また,平成5年1月ころからは,白石市議会,白石市b地区自治会を始めとし,宮城県議会,宮城県下の諸市町村議会,白石商工会議所等の各種団体も宮城県や白石市に対し被控訴人の計画に反対である旨の意思を表明した。 (甲8,12,13)エこのような中にあって,被控訴人は,宮城県や白石市に対し事前協議に入るよう要請し続けていたが,宮城県や白石市はこれに応じなかった。そのため,被控訴人は,平成6年3月22日,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づく申請書を宮城県に提出したが,宮城県が定める指導要綱上の手続を経ていないことなどを理由に受理されなかった。被控訴人は,平成7年10月16日,廃棄物処理法に基づく産業廃棄物処理業の許可申請及び産業廃棄物処理施設の設置許可申請に係る各申請書を提出しようとしたがやはり指導要綱上の手続 控訴人は,平成7年10月16日,廃棄物処理法に基づく産業廃棄物処理業の許可申請及び産業廃棄物処理施設の設置許可申請に係る各申請書を提出しようとしたがやはり指導要綱上の手続未了を理由に受理されず,これを郵送したところ,申請書は返戻された。 そこで,被控訴人は,控訴人を相手に産業廃棄物処理業の許可申請及び産業廃棄物処理施設の設置許可申請の受理を拒否した処分の取消しを主位的請求とし,各申請に対して何らの処分をしないことの違法確認を予備的請求とする行政訴訟を仙台地方裁判所に提起し(同裁判所平成7年(行ウ)第15号),同裁判所において主位的請求に係る訴えは却下されたものの予備的請求は認容された。これに対して控訴人が控訴し,被控訴人が附帯控訴をしたが,仙台高等裁判所は,平成11年3月24日,控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する旨の判決を言い渡し,この判決に対しては双方から不服の申立てがなかったため,上記仙台地方裁判所の判決が確定した。 (甲8,12,13,当裁判所に顕著な事実)オ上記判決後,被控訴人は,平成11年4月27日,産業廃棄物処理業の許可申請及び産業廃棄物処理施設の設置許可申請に係る各申請書を再度宮城県に提出し,これは受理されたため,宮城県や白石市の担当部署と協議をするようになったが,その過程で産業廃棄物処分場の建設予定地が森林法に基づく地域森林計画の対象地域になっていること,したがって,森林法の規定に基づく林地開発許可が必要なことを知り,平成13年4月25日付けで控訴人に対して林地開発許可の申請をした。 その後,被控訴人は,宮城県から建設予定地 たがって,森林法の規定に基づく林地開発許可が必要なことを知り,平成13年4月25日付けで控訴人に対して林地開発許可の申請をした。 その後,被控訴人は,宮城県から建設予定地の一部が農用地区域に指定されている旨の通知を受けたため,同年5月29日,本件申請をした。 (甲2,14)(2) 本件開発行為の内容ア本件申請に係る本件開発行為は,本件土地を含む宮城県白石市b字cd山林55151㎡外16筆の土地上に管理型産業廃棄物最終処分場(本件施設)を設置しようとするものであり,開発区域面積は25万8000㎡,埋立地面積は7万1400㎡,埋立容量は105万2620立方メートルに及び,造成後の土地に埋立地(産業廃棄物搬入地),管理棟,水処理施設,搬入道路・管理用道路,排水施設等が築造されることになっている。 産業廃棄物の種類は,燃え殻,汚泥,廃プラスチック類,紙くず,木くず,繊維くず,動植物性残さ,ゴムくず,金属くず,ガラス及び陶磁器くず,鉱さい,建設廃材,ばいじんである。 (甲2)イまた,本件申請書(甲2)によれば,本件施設の設置工事期間は2年,営業期間は10年,水質管理期間は15年(営業期間10年と営業終了後5年の合計)とされており,少なくとも,設置工事開始から水質管理等が終了するまで17年間を要するものであるが,跡地について,ごみ搬入終了後に1.0mないし1.5mの最終覆土をして樹木などを植栽して元の森林に復旧するものとされているものの,他方では,「浸出水の水質,発生ガスの質と量,埋立地層内の温度等を考慮して判断し,跡地利用の経済的推移を 土をして樹木などを植栽して元の森林に復旧するものとされているものの,他方では,「浸出水の水質,発生ガスの質と量,埋立地層内の温度等を考慮して判断し,跡地利用の経済的推移を観測し,浸出水処理の停止時期並びに跡地の本格的使用時期を決定するものとする。但し,ごみ搬入終了最終覆土完了後においても,上記検測結果を勘案し浸出水処理の停止時期に至るまで水処理は続けるものとする。」とされており,本件土地の利用期間は17年を超える可能性がある。また,施設管理終了後の建築物及び工作物等の撤去計画は示されてはいない。(甲2)(3) 補助参加人白石市の地域整備計画ア宮城県知事(控訴人)は,白石市について昭和47年3月28日付けで農振法6条に基づく農業振興地域の指定をし,この指定を受けて,白石市は,昭和49年3月,宮城県知事の同意を得て農振法8条に基づく農業振興地域整備計画(以下「地域整備計画」という。)を策定した。昭和49年3月22日付けで,宮城県知事は,白石市が策定した農業振興地域の地域整備計画を認可した。(争いのない事実,甲18の4頁,乙12の4頁)イその後,白石市は,昭和59年6月,平成5年5月及び平成9年6月に,それぞれ宮城県知事の同意を得て地域整備計画を変更したが,本件土地は,白石市が昭和59年に策定した地域整備計画において,「林班番号e番い,f番い~ほ」と表示される農用地区域(農用地等として利用すべき土地の区域。農振法8条2項1号参照)に指定されていた。その後の平成5年に策定された地域整備計画や平成9年に策定された地域整備計画でも,「林班番号e番い,f番 農用地等として利用すべき土地の区域。農振法8条2項1号参照)に指定されていた。その後の平成5年に策定された地域整備計画や平成9年に策定された地域整備計画でも,「林班番号e番い,f番い~ほ」と表示される区域は農用地区域(用途区分・農地)として指定されている。そして,本件申請に当たって被控訴人が提出した白石市森林計画図によると,本件開発行為に係る開発区域の北側部分が「林班番号e番い,f番い~ほ」に係る区域と重なっている。 (甲2の字寄図・白石市森林計画図,18の4頁,35,乙6の9頁,12の8頁,32,33,34の1・2)なお,昭和59年,平成5年及び平成9年の各地域整備計画においては,いずれも「林班番号e番い,f番い~ほ」で表示された土地が農用地区域となっているが,地域整備計画書添付附図については,昭和59年地域整備計画書のものと平成5年及び平成9年地域整備計画書のものとではその形状,面積及び位置が異なっており,前者よりも後者の方が北西方向に大きく拡大した形となっている(乙31の附図1号,32の附図1号,33の附図1号を参照)。 すなわち,昭和59年地域整備計画書添付附図では農用地区域が「林班番号e番1い」付近を中心とした卵形の形状の範囲の土地として表示されていたのに対し,平成5年及び平成9年の各地域整備計画書添付附図では,農用地区域が3倍以上に拡大したように表示されている。(乙31ないし33)ウ平成9年策定の地域整備計画中,本件土地が含まれるb地区に関する内容は次のとおりである(乙6,33)。すなわち,農用地等利用の方針については,「市の南西に位置し いし33)ウ平成9年策定の地域整備計画中,本件土地が含まれるb地区に関する内容は次のとおりである(乙6,33)。すなわち,農用地等利用の方針については,「市の南西に位置し,国道113号線を挟んで平坦部から丘陵地に介在する水田地帯と,山沿いの果樹地帯に大別される。未整理地が多いため,荒し作りや耕作放棄地がみられ生産力が低下してきている本地域は,中山間地域に指定されており,未整理地については,中山間総合整備事業等を導入し,条件整備を図っていく。」と,用途区分の構想については,「白石川を挟んで介在する農用地約198haの内29%57haが水田として,60%118haが樹園地として利用されており,他地域と比較し,樹園地の比率が極めて高いのが特徴である。地域としては,g地区,h地区,i地区に集中しており,特にg地区については,当市果樹の主産地となっており,一層の整備を行っていく。水田については,3団地29haについて圃場整備済であるが,まだまだ未整理地が多い状況である。本地域は,中山間地域指定を受けており,これら未整理地については,中山間地域総合整備事業等を導入し,整備を行っていく。また,地場産品である,葛(くず)の団地化にも積極的に取り組んでいくとともに,畜産振興(肉用牛)の一環として草地としての整備等も行っていく。」と,土地基盤の整備及び開発の方向については,「地区内の農用地の内約29haについては,小規模排水対策事業(j・g・k地区)により整備済となっているが,まだ多くの小規模未整理農地が点在的に残っている状況であり,近代化農業に対応するため,圃場整備 aについては,小規模排水対策事業(j・g・k地区)により整備済となっているが,まだ多くの小規模未整理農地が点在的に残っている状況であり,近代化農業に対応するため,圃場整備が望まれる。本地域は,中山間地域指定を受けており,今後は,中山間総合整備事業を活用し,整備を図っていく。また,当市果樹の主産地であるg地区については,樹園地の整備を図るとともに,地場産品である葛の団地化を図っていく。農業用排水路については,団体営灌漑排水事業により,l地区並びにm地区の水路について整備を行っていく予定である。」と,認定農家の農業経営の目標については,「現状で1戸,目標年次において3戸程度の認定農家を認定していく。主な営農類型は,米を基幹に果樹(りんご・もも),肉用牛等を組み合せた複合経営であるが,経営規模・所得が零細であり大幅な向上が必要である。米については,1戸当たりに水田面積が少ない上,地形的に点在しているため,規模拡大は望めないが果樹の栽培面積・肉用牛の頭数については増やせる余地がありそれにより所得の向上を図っていく。また,本地域は,中山間地域指定を受けており,活性化の起爆剤として,地場産品である葛の生産に力を入れていく。」と,農業近代化施設の整備の方向については,「水稲については,一層の省力化と生産性の向上を目指す。果樹については,スピードスプレーヤー等機械施設は概ね整備されており有効活用を図っていく。畜産については,畜舎の改良整備を図り増頭・技術面の向上を目指す。また,地場産品である『葛』の生産を省力化するために,バックホー,粉砕機等を導入していく。」とさ 図っていく。畜産については,畜舎の改良整備を図り増頭・技術面の向上を目指す。また,地場産品である『葛』の生産を省力化するために,バックホー,粉砕機等を導入していく。」とされている。もっとも,葛に関する明示的な記載は,昭和59年の地域整備計画書(乙31)及び平成5年の地域整備計画書(乙32)には見当たらない。(乙6,31ないし33)なお,中山間地域とは,平野の周辺部から山間地に至る地域のことであり,傾斜地が多く平野部に比べ生産性が劣る反面,土砂崩れの防止や水の供給など公益的な役割を果たしており,宮城県では耕地全体の4割強を占めているものであるが,耕作放棄地が増加していることなどから,食料・農業・農村基本法35条は,中山間地域等を対象にして,新規作物の導入,地域特産物の生産及び販売等を通じた農業その他の産業の振興による就業機会の増大,生活環境の整備による定住の促進その他必要な施策を講ずることを国に義務付けており,国は補助金の交付等を通じて地方自治体に中山間地域等の改善促進事業等を推進させている。(乙11ないし22,弁論の全趣旨)エ葛はマメ科クズ属に分類される多年草であり,北海道から九州(奄美・徳之島まで)まで広く分布し,白石市にも全域にわたり自生しており,林縁,荒れ地,空地,土手などに生え,地面を這い,あるいは樹木に覆いかぶさるなど旺盛に生育する。葛根には約20%のでんぷんが含まれ,根を叩いてすりつぶし冷水にさらすことによってでんぷん質を取り出し,葛粉を製造することができる。葛粉は,薬用,食用になる。しかし,自生する葛が減少し,また,塊根は のでんぷんが含まれ,根を叩いてすりつぶし冷水にさらすことによってでんぷん質を取り出し,葛粉を製造することができる。葛粉は,薬用,食用になる。しかし,自生する葛が減少し,また,塊根はほとんどがごく小さく,葛粉にするための太さになるまでには数年から10年を要するといわれ,原料となる葛根の採取は困難になってきている。葛根の人工栽培方法は未だ研究段階である。(甲39,乙7,37,38)オ白石市b地区は,江戸時代中期から山の斜面に自生する葛を採取して葛粉を生産してきた歴史があったが,昭和30年代には高齢化による生産農家の離脱などにより生産が途絶えた。しかし,平成7年ころから,bの葛粉の復活を目指して白石市b地区の農家によって「b寒葛生産組合」が設立され,白石市は,平成7年度から平成11年度にかけて,国や宮城県の補助事業である中山間地域活性化推進事業において,葛生産調査研究,葛生産販売の機械整備,生産(採取)拡大促進,遊休農地による葛の試験栽培約25haの実施,「bの寒くず」のブランド名での葛粉の一般消費者向けへの販売,ブランド名の知名度を向上させるためのパンフレット(乙9)作成などの支援をした。また,平成13年度から平成17年度にかけては国及び宮城県の補助事業である特定農山村地域市町村活動支援事業を,平成12年度から平成16年度にかけては同中山間地域等直接支払事業をb地区で行っている(乙7)。ただし,本件土地が含まれるn集落については,同集落が本件開発行為に賛成していることもあって,白石市からの呼びかけにもかかわらず,上記事業に参画していない。 (甲 。ただし,本件土地が含まれるn集落については,同集落が本件開発行為に賛成していることもあって,白石市からの呼びかけにもかかわらず,上記事業に参画していない。 (甲10,乙7,9,12,37,38,証人丙)(4) 本件不許可処分の経緯及び理由ア被控訴人は,控訴人に対し,平成13年5月29日付けで,白石市長を経由して農振法15条の15第1項に基づく本件開発行為の許可申請(本件申請)を行った。(争いがない。)イ白石市長は,農振法15条の15第3項に基づき,控訴人に対し,平成13年7月6日付け白農第1256号をもって,本件申請の目的は産業廃棄物最終処分場の設置にあり,開発行為後の土地は農業上の利用に供することが適さない土地になること,開発行為後の土地は地域整備計画で用途指定した畑(草地)に供することが困難になると認められ,地域整備計画の達成に支障を及ぼすことを理由に農振法15条の15第4項1号に該当する旨の意見書(甲3)を提出した。(争いがない。)ウ控訴人は,被控訴人に対し,平成13年10月19日付け宮城県(大産)指令第519号をもって本件申請に対し不許可処分(本件不許可処分)をした。上記書面(甲4)に記載された理由は,「当該申請において計画されている開発行為は,申請地を相当長期間にわたって農用地等以外の用途に利用する計画であり,白石市が定める農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼす恐れがあるため,農業振興地域の整備に関する法律第15条の15第4項第1号に該当する。」というものである。なお,控訴人は,農振法15条の15第1項の規定に基 成に支障を及ぼす恐れがあるため,農業振興地域の整備に関する法律第15条の15第4項第1号に該当する。」というものである。なお,控訴人は,農振法15条の15第1項の規定に基づく開発許可の審査基準については,同条第4項各号の規定に基づき判断可能であるとして,行政手続法5条に基づく審査基準を定めてはいない。(争いがない。) 2 関係法令等について(1) 農振法の規定ア農振法は,農林水産大臣が農用地等の確保等に関する基本指針を定め(同法3条の2第1項),この基本指針に基づき都道府県知事が当該都道府県における農業振興地域の指定及び農業振興地域整備計画の策定に関し農業振興地域整備基本方針を定め(同法4条1項),この基本方針に基づき都道府県知事が農業振興地域を指定することとしている(同法6条1項)。そして,都道府県知事が指定した農業振興地域に当たる市町村は,その区域内にある農業振興地域について地域整備計画を定めなければならないとし(同法8条1項),この地域整備計画においては,農用地区域及びその区域内にある土地の農業上の用途区分の定め(農用地利用計画)が含まれる(同条2項)。 イ市町村の作成した,農用地区域の指定を含む農用地利用計画の案は,公告の日から30日間縦覧に供され(同法11条1項),農用地利用計画に係る農用地区域内に在る土地の所有者等が当該農用地利用計画案に対して異議があるときは縦覧期間満了の翌日の日から起算して15日以内に市町村に対して異議を申し出ることができ(同条2項),異議の申出に対する市町村の決定(同条3項)については不服申立てをすることがで 期間満了の翌日の日から起算して15日以内に市町村に対して異議を申し出ることができ(同条2項),異議の申出に対する市町村の決定(同条3項)については不服申立てをすることができる(同条4項,5項)。市町村は,所有者等からの異議の申出がないとき,異議の申出があった場合においてはそのすべてについて市町村の決定があり,かつ,その決定に対して審査の申立てがなかったとき,又は審査の申立てがあった場合においてそのすべてについて都道府県知事による裁決があったときでなければ,地域整備計画について知事の同意を得るための協議(同法8条4項)の申出をすることはできない(同法11条7項)。 ウ農用地区域内にある土地の所有者が農用地利用計画において指定した用途に供していない場合であって地域整備計画の達成のため必要があるときは,市町村長は,当該土地の所有者等に対して当該土地を農用地利用計画で指定した用途に供すべき旨を勧告し(同法14条1項),更にはこの勧告を受けた者が勧告に従わないとき,又は従う見込みがないと認めるときはその所有者等に対し,当該土地を農用地利用計画で指定された用途に供するためその土地の所有権等を取得しようとする者で市町村長の指定を受けたものとその土地の所有権の移転等について協議すべき旨を勧告することができるとされている(同条2項)。そして,土地の所有権の移転等について市町村長の勧告に係る協議が調わず,又は協議をすることができないときは,市町村長から指定を受けた者は,都道府県知事に対して所有権の移転等につき調停をなすべき旨を申請することができる(同法15条1 議が調わず,又は協議をすることができないときは,市町村長から指定を受けた者は,都道府県知事に対して所有権の移転等につき調停をなすべき旨を申請することができる(同法15条1項)。 エ農用地区域の開発行為(宅地の造成,土石の採取その他の土地の形質の変更又は建築物その他の耕作物の新築,改築若しくは増築)をするについては,都道府県知事の許可を受けることが必要であり(同法15条の15第1項),この許可申請を審査する手続においては,開発行為に係る土地の所在する市町村長の意見を聴く手続が設けられており(同条2項,3項),市町村が定めた地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあるとき(同条4項1号)は,都道府県知事は,開発行為を許可してはならないとされている(同条4項)。 オなお,農振法は,農林水産大臣は農用地等の確保等に関する基本指針を定め,これを公表しなければならないとしているが(同法3条の2第1項,第4項),この規定に基づいて,農林水産大臣は,農用地等の確保等に関する基本指針を定め,平成12年3月17日,これを公表した。(甲15)(2) 農振法施行規則の規定農振法施行規則は,市町村が農振法8条1項の規定により同項の地域整備計画を定めようとする場合において農用地区域及びその区域内にある土地の農業上の用途区分を定めようとするときには,大字,字,小字及び地番,一定の地物,施設,工作物又はこれらからの距離及び方向,平面図等により,当該農用地区域に含められる土地と当該農用地区域に含められない土地との区別が明らかになるように定めなければならない旨規定している(同規則4条 らからの距離及び方向,平面図等により,当該農用地区域に含められる土地と当該農用地区域に含められない土地との区別が明らかになるように定めなければならない旨規定している(同規則4条)。 (3) 本件ガイドラインの規定ア地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の施行に伴い,農振法の農業振興地域制度に係る市町村又は都道府県の事務は,原則として自治事務となり,そのため農振法関係の通達も廃止されたが,農振法一部改正(平成11年法律第120号。改正法の施行は平成12年3月20日)もあったため,農林水産省構造改善局は,平成12年4月1日,改正内容や従来の通達を踏まえ,農業振興地域制度全般についての技術的助言として,「農業振興地域制度に関するガイドライン」と題する本件ガイドラインを定め,今後の農業振興地域制度を円滑かつ適正に運用するに当たっての参考とするよう関係機関に通知した。(甲15)イ本件ガイドラインは,農用地利用計画を表示するに当たっての留意事項について次のとおり規定している。(甲5)「ア一定の地物,施設,耕作物規則第4条の『一定の地物,施設,工作物』とは,例えば道路,鉄道,河川,水路,建築物等をいうが,固定的でなく容易に移設又は移動できるものは不適当であること。 イ平面図表示の手段として平面図を用いる場合の平面図の縮尺は,おおむね500分の1ないし2500分の1程度であること。 ウ表示の時点表示に当たっては,表示の時点を附記すること。 エ附図 合の平面図の縮尺は,おおむね500分の1ないし2500分の1程度であること。 ウ表示の時点表示に当たっては,表示の時点を附記すること。 エ附図附図としては,農用地区域及び用途区分された土地の区域のおおよその範囲を明らかにした図面(1万分の1ないし5万分の1)を添付すること。」ウ本件ガイドラインは,農振法15条の15第4項の審査に当たっては次の事項について留意することが適当と考えられるとして,同項1号について次のように規定している。(甲5)「① 第1号関係ア当該開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難となる場合『当該開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難となる』場合とは,開発後の土地の用途が農用地等以外の用途となり,かつ,その土地に建築される建築物その他の工作物の種類,構造,規模等からみて,その土地の用途が固定化されることが確実と認められる場合その他開発行為後の土地の状態が開発行為前の土地の状態に比べて農用地等への転換可能性が低下する場合をいうものと解されること。 イ市町村整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがある場合市町村整備計画のうち農用地利用計画には,土地の農業上の用途が指定されているので,開発行為により開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難になる場合には,その土地を当該指定用途に供することが困難となるため,『農業振興地域整備計画の達成に支障を及 為に係る土地を農用地等として利用することが困難になる場合には,その土地を当該指定用途に供することが困難となるため,『農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがある』場合に該当すると解されること。 ただし,農用地区域内にある土地を現在の状態のまま利用し,又は保全することを目的として行う開発行為であって,当該開発行為により設けられている工作物(建築物を除く。)の種類,構造,規模等からみて,容易に移転し,又は除却することができる場合その他開発行為に係る土地及びその周辺の土地の農用地等への転換の実施上妨げる度合いが軽いと認められる場合は,『農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがある』場合に該当しないと解されること。 ウ留意事項次の事項を踏まえて,判断されるものであること。 a 申請書の『開発行為後の土地又は建築物等の用途』が農用地等に該当するか否か。 b 開発行為後の土地の用途が農用地等に該当している場合には,申請書に記載された工事計画に従って工事が施工されることが確実かどうか。 c 開発行為後の土地の用途が農用地等に該当しない場合には,農用地等としての利用を困難にしないための措置が十分で,かつ,そのための工事が確実に行われるか否か並びにその開発行為に係る土地及びその周辺の土地の農用地等への転換の実施上妨げとならないか。」 3 農用地区域の指定の効力について(1) 被控訴人 われるか否か並びにその開発行為に係る土地及びその周辺の土地の農用地等への転換の実施上妨げとならないか。」 3 農用地区域の指定の効力について(1) 被控訴人は,農用地区域の指定は土地所有者の権利義務に大きな影響を及ぼす行為であるから明確に表示しなければならず,したがって,登記簿上の地番,平面図及び附図の三者併用方式によって表示されるのが原則というべきところ,本件において白石市が行った農用地区域の指定は林班番号と附図のみで指定しており無効である旨主張する。 しかるところ,本件土地に係る白石市の行った農用地区域の指定が林班番号によって行われていることは前記1で認定したとおりである。 そこで検討するに,農用地区域に含められる土地と農用地区域に含められない土地との区別が明確にされなければならないことは被控訴人の主張のとおりである。そして,農用地区域の指定に当たっての農用地区域の表示の仕方についての農振法施行規則の規定や本件ガイドラインの留意事項は,上記2でみたとおりであるが,これらも,農用地区域に含められる土地と農用地区域に含められない土地との区別が明確にされることを前提にして,その方法について言及するものであるところ,農振法施行規則は,大字,字,小字及び地番,一定の地物,施設,工作物又はこれらからの距離及び方向,平面図等によるべきことを規定しているのであって,必ずしも被控訴人の主張するように登記簿上の地番,平面図及び附図の三者併用方式によることまでは要求していない。要は,ある土地が農用地区域に含まれるか否かを明確に表示し得る方法を採用すべきというものであり,不動産登記簿等の表 番,平面図及び附図の三者併用方式によることまでは要求していない。要は,ある土地が農用地区域に含まれるか否かを明確に表示し得る方法を採用すべきというものであり,不動産登記簿等の表示,不動点からの距離・方向等の数値,あるいは図面などの方法のいずれを用いてもよく,またこれらを組み合わせてもよいものと解せられる。もっとも,地番で表示される土地の一部を指定する場合などには地番の表示では特定が足りず,平面図等の図面を用いる必要があるが,これはそのような場合の表示手段の一つにすぎず,農用地区域の指定に当たって常に独自の平面図を作成しなければならないとの趣旨を読み取ることはできない。したがって,他の法律に基づき指定されている地域・地区等を用いたり,公的な帳簿,図面等によりその位置が明示されているものを用いたりすることも許されるものというべきである。 ところで,森林法は,全国森林計画に即した地域森林計画をたてることを都道府県知事に義務付けているところ(同法5条1項),地域森林計画をたてる際の便に供するため,地域森林計画の対象森林を分けて林班を定め,林班を更に分けて小班を定めることとされている(平成12年5月8日付け12林野計第154号農林水産事務次官依命通知)。林班は,おおむね50haで字界,天然地形又は地物をもって分け,小班は,森林所有者別に分けることが原則とされている。そして,小班ごとに林種,林齢,樹冠粗密度,樹種の混合歩合,樹種別の材積等の林況を調査するなどして森林簿が作成され,これを基礎として計画事項が定められることになる。計画事項のうち「その対象とする森林の区域」については,具体的には,縮尺5000分 材積等の林況を調査するなどして森林簿が作成され,これを基礎として計画事項が定められることになる。計画事項のうち「その対象とする森林の区域」については,具体的には,縮尺5000分の1の森林計画図により明らかにされるが,この森林計画図は,森林の所有者等の森林が地域森林計画の対象に含まれるかどうかが容易に判断し得るように作成されなければならないとされており,また,地域森林計画は,その計画書及び森林計画図が公衆の縦覧に供されることとなっている(森林法6条1項,上記依命通知)。林班番号は,上記のように定められた林班の符号であり,その前提となる森林計画図と相俟って,地域森林計画の対象となっている山林原野の土地を特定するについて十分に機能を果たすものというべきである。したがって,農用地区域を指定するに当たって林班番号を用いることも,どの土地が農用地区域に含まれるかを明確にし得るものというべきであるから,農用地区域の指定に当たって林班番号を用いることは許されるものと解される。 現に乙第29号証によれば,従前の農用地区域の指定の実務にあっては「公的な帳簿等によりその位置が明示されている地区・施設」の一つとして林班番号が用いられてきたことが認められる。 そして,甲第2号証中の白石市森林計画図によれば,本件土地付近一帯は地域森林計画の対象となっていることが認められるから,白石市において本件土地付近につき林班番号をもって農用地区域を指定し,登記簿上の地番,平面図を用いなかったからといって,農用地区域の指定が無効となるとはいえない。 (2) 次に,被控訴人は,昭和59年地域整備計画書附図による農用地区域の表示と ,登記簿上の地番,平面図を用いなかったからといって,農用地区域の指定が無効となるとはいえない。 (2) 次に,被控訴人は,昭和59年地域整備計画書附図による農用地区域の表示と平成5年及び平成9年地域整備計画書附図による農用地区域の表示とには,本件土地周辺において,形状,位置,面積とも大きな差異が認められるから,本件土地の農用地区域の指定は無効である旨を主張する。 確かに,本件土地周辺において,昭和59年地域整備計画書附図による農用地区域の表示と平成5年及び平成9年地域整備計画書附図による農用地区域の表示とには,その形状,面積及び位置とも差異が認められることは前記1で認定したとおりである。そして,このことの結果として農用地区域の指定範囲が不明確であったとすれば,農用地区域の指定が特定性に欠けて無効となることもないではない。 しかしながら,前記2,(3)のとおり,本件ガイドラインにおいては,附図は地域整備計画書に添付して「農用地区域及び用途区分された土地の区域のおおよその範囲を明らかに」するものとして位置付けられており,その縮尺も,平面図がおおむね500分の1ないし2500分の1程度の縮尺とすべきとされているのに対し,附図は1万分の1ないし5万分の1とされているのである。そうしてみると,附図自体からはある土地が農用地区域に含まれているか否かを判別することはもともと困難といわざるを得ないのであり,附図自体は農用地区域か否かを明示する機能は有しておらず,あくまで「おおよその範囲」を示すものにすぎないというべきであり,農用地区域に含まれているか否かを判別するためには地域整備計画書内に 農用地区域か否かを明示する機能は有しておらず,あくまで「おおよその範囲」を示すものにすぎないというべきであり,農用地区域に含まれているか否かを判別するためには地域整備計画書内に定める区域指定内容と照らし合わせるほかないというべきである。そうすると,附図の表示が全く別な地域になされているような場合は格別,そうでない限り,附図の表示が多少不正確であるからといって農用地区域の指定範囲を知るに当たって支障を来すものではなく,附図の不正確をもって農用地区域の指定の無効を招来するものとはいえない。そして,昭和59年地域整備計画書附図は,その形状,面積及び位置が後のものと相違するとはいっても,本件土地付近が農用地区域に指定されていること自体は表示しているのである。 したがって,農用地区域の指定が特定性に欠けて無効であるとはいえない。なお,昭和59年地域整備計画書附図による農用地区域の指定範囲と平成5年及び平成9年地域整備計画書附図による農用地区域の指定範囲との表示が異なるのは,昭和59年地域整備計画書附図の記載が正確さを欠いたことによるものであって,農用地区域の変更があったわけではないから,農業振興地域整備基本方針の変更若しくは農業振興地域の区域の変更(農振法13条1項参照)が必要でないことはいうまでもない。また,証拠(乙7,10,12)によれば,本件土地に対する農用地区域の指定は公告縦覧等の法定手続を経て適法に行われたことが認められる。被控訴人が手続上の瑕疵として主張するところは独自の見解であって採用することができない。 また,被控訴人は,昭和59年の地域整備計画では本件土地は農用地区域に含まれて 認められる。被控訴人が手続上の瑕疵として主張するところは独自の見解であって採用することができない。 また,被控訴人は,昭和59年の地域整備計画では本件土地は農用地区域に含まれていなかったかのような主張もするが,前記1の認定に照らし,採用することはできない。 (3) したがって,本件について農用地区域の指定が無効である旨の被控訴人の主張はいずれも採用することができないというべきものである。 4 農振法15条の15第4項1号該当性について(1) 前記1で認定したところによれば,本件開発行為は,本件土地を含む25万8000㎡の土地に管理型産業廃棄物最終処分場を設置するためのものであり,埋立地面積は7万1400㎡,埋立容量は105万2620立方メートルというものであって,造成後の土地に埋立地(産業廃棄物搬入地),管理棟,水処理施設,搬入道路・管理用道路,排水施設等が築造される予定であり,本件施設の設置期間は2年,営業期間は10年,水質管理期間は15年(営業期間10年と営業終了後の期間5年の合計)を予定していること,跡地についてはごみ搬入終了後に1.0mないし1.5mの厚さで覆土をし,樹木などを植栽して元の森林に復旧すること,ごみ搬入終了後最終覆土を完了した後の浸出水等の状況次第では水処理を続けることになるため,水質管理期間,すなわち本件土地の利用期間が更に延びる可能性があること,白石市の平成9年策定の地域整備計画においては,本件土地が含まれるb地区については中山間地域に指定されていることから中山間地域総合整備事業を導入し,整備を行っていくこと,地場産品である葛の団地化にも積極的に取り組み,畜産振興(肉用牛)の一環 るb地区については中山間地域に指定されていることから中山間地域総合整備事業を導入し,整備を行っていくこと,地場産品である葛の団地化にも積極的に取り組み,畜産振興(肉用牛)の一環として草地としての整備も行っていくことなどが定められていることが認められる。 以上によれば,本件土地は,本件開発行為の許可があってから少なくとも17年間にわたって農用地等以外の用途である産業廃棄物最終処分場として使用されることになるものといえ,また,本件開発行為が進められた場合,この間は白石市の中山間地域総合整備事業の導入や地場産品である葛の団地化,畜産振興のための草地の整備などが行えなくなることは明らかといえる。 したがって,本件開発行為が本件土地を農用地区域として指定した白石市の上記のような地域整備計画に支障を及ぼすことは明らかであり,本件申請には農振法15条の15第4項1号の不許可事由が存するものと認められる。 (2) 被控訴人は,事業期間が8年であることを前提にして,控訴人及び控訴人補助参加人が許認可の引延ばしをしなければ,平成16年末に事業を完了する予定であったから,平成16年には本件土地を農用地として利用することができた旨を主張するが,事業期間が8年であることは本件申請に係る申請書(甲2)には記載されていない上,農振法に基づく開発許可を得なければ本件施設は設置し得ないところ,前記1で認定したとおり,被控訴人が本件申請をしたのは平成13年5月なのであって,その主張は前提を欠くものである。 (3) したがって,本件申請について不許可事由があるとした控訴人の判断に誤りがあるとはいえない。 5 行政権の濫用 は平成13年5月なのであって,その主張は前提を欠くものである。 (3) したがって,本件申請について不許可事由があるとした控訴人の判断に誤りがあるとはいえない。 5 行政権の濫用の有無について(1) 被控訴人は,本件不許可処分は本件施設の設置を阻止するためにされたものであり,行政権限の濫用である旨を主張する。 そして,前記1で認定した事実によれば,白石市が本件開発行為に反対していただけでなく宮城県議会も反対の意思を表明していたことや,控訴人も被控訴人が指導要綱に従わないことを理由に被控訴人の廃棄物処理法に基づく産業廃棄物処理業の許可申請及び産業廃棄物処理施設の設置許可申請に係る各申請書の受理を拒んでいたことが認められる。 しかしながら,本件申請に不許可事由があることは前記4の判断のとおりである。そして,不許可事由が実際に存する以上,控訴人は,農振法15条の15第4項の規定上,許可することはできないものというべきであるから,本件不許可処分が行政権の濫用とはいい難いところである。 また,被控訴人が本件開発行為について控訴人に許認可の引延ばしがあると主張するところは,廃棄物処理法に基づく事業許可や施設設置許可に係るものであり,本件不許可処分についてのものではない。 被控訴人は,本件開発行為の対象地の調査が不十分であったため,本件土地が農用地区域に含まれていることを知らず,平成13年5月まで本件申請をしなかったものにすぎない。したがって,上記被控訴人が主張するところをもって本件不許可処分が行政権の濫用であることを裏付ける事情にはならない。農用地区域の指定に瑕疵がないことは前記3で判断したとお ぎない。したがって,上記被控訴人が主張するところをもって本件不許可処分が行政権の濫用であることを裏付ける事情にはならない。農用地区域の指定に瑕疵がないことは前記3で判断したとおりである。 さらに,前記1で認定したように,b地区においては,平成7年ころからbの葛粉の復活を目指して白石市b地区の農家によって「b寒葛生産組合」が設立され,白石市は平成7年度から平成11年度にかけて,国や宮城県の補助事業である中山間地域活性化推進事業において,葛生産調査研究,葛生産販売の機械整備,生産(採取)拡大促進,遊休農地による葛の試験栽培約25haの実施,「bの寒くず」のブランド名での葛粉の一般消費者向けへの販売,ブランド名の知名度を向上させるためのパンフレット(乙9)作成などの支援をし,平成13年度から平成17年度にかけては国及び宮城県の補助事業である特定農山村地域市町村活動支援事業を,平成12年度から平成16年度にかけては同中山間地域等直接支払事業をb地区で行っていることからすると,白石市の農業振興地域整備計画中b地区に係る部分が虚構のもとになされたものとは認め難いところであり,平成9年策定の地域整備計画が不合理であることが明らかであるとまではいえない。そもそも,本件土地は,被控訴人が本件施設設置の計画をした平成4年ころより前の昭和59年には既に農用地区域として指定されていたのである。 (2) また,被控訴人は,特定の私有山林を一方的に葛栽培用地とし,他の用途に使用することを禁ずる農用地区域に指定することは憲法29条に違反する旨を主張するが,補助参加人白石市が本件土地で葛のみの栽培を強制しているわけではな 的に葛栽培用地とし,他の用途に使用することを禁ずる農用地区域に指定することは憲法29条に違反する旨を主張するが,補助参加人白石市が本件土地で葛のみの栽培を強制しているわけではない上,市町村の作成する土地利用計画案に異議のある者は異議を述べ,異議に対する決定にも不服申立てができるにもかかわらず,本件土地の所有者等が白石市の作成した土地利用計画案に異議を述べた形跡はないのであって,適法に地域整備計画が策定されているものといわざるを得ない。そうである以上,農振法の規定に基づいて土地の利用が制限されることはやむを得ないものというべきであり,そのことゆえに憲法29条に違反するとはいえない。被控訴人の上記主張は採用し難い。 (3) 以上の次第であるから本件不許可処分は行政権の濫用であるとする被控訴人の主張は採用することができない。 6 行政手続法5条違反の有無について(1) 控訴人が農振法15条の15第4項1号に該当するか否かについての審査基準を定めていなかったことは当事者間に争いがない。控訴人は,上記条項自体が許可不許可の基準を明らかにしているから審査基準は設ける必要はないし,農用地として利用することが困難になるか否かは様々な用途ごとに個別に判断せざるを得ず,期間等の客観的指標をもって基準を定めることも不可能である旨主張する。 そこで検討するに,行政手続法5条の趣旨は,行政庁の解釈・裁量の余地のある許認可等について,その性質に応じてできる限り具体的な審査基準を作成し,公表することにより,行政庁の判断過程を透明化し,もって申請に対する適切・公正な処理を確保するとともに,申請者に対して許認可等を受けられるか否か きる限り具体的な審査基準を作成し,公表することにより,行政庁の判断過程を透明化し,もって申請に対する適切・公正な処理を確保するとともに,申請者に対して許認可等を受けられるか否かについての予測可能性を与え,また,申請者ごとの不公正な取扱いを防止しようとするところにあるものと解される。そして,このような趣旨にかんがみれば,行政手続法5条にいう「審査基準」とは,審査に当たってよるべき数量的指標その他の客観的指標のみならず,行政庁内で共有されるべき法令の規定に対する解釈や審査に際しての指針,留意事項,考慮事項等をも含むものと解するのが相当である。 したがって,法令自体に許認可等の基準が具体的に明らかにされており,法令の定めのみによって審査をし得る場合は格別,そうでない場合は,行政庁は審査基準を設けなければならないことになる。ある事項についての許認可等につき一律に数値的及び期間的な客観的指標をもって審査基準を定めることが困難であるとしても,法令の解釈,審査の指針,留意事項,注意事項等,行政庁内で共有されるべき審査の基準を定めることは可能というべきであるから,客観的指標をもって審査基準を定めことができないからといって直ちに審査基準を要しないとはいえないのである。 ところで,農振法15条の15第4項1号は,「当該開発行為により当該開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難となるため,農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあること」と定めており,いまだこの要件には解釈,裁量の余地があって判断基準が法令の定めに尽くされているとも,法令の定め以上に具体的な基準を定めることができないとも 及ぼすおそれがあること」と定めており,いまだこの要件には解釈,裁量の余地があって判断基準が法令の定めに尽くされているとも,法令の定め以上に具体的な基準を定めることができないともいい難い。現に農林水産省構造改善局が技術的助言として定めた本件ガイドラインにおいても,農振法15条の15第4項1号の審査をするに当たって留意すべき事項として,前記2,(3)のとおり定めているのである。なお,本件ガイドラインの趣旨に照らせば,本件ガイドラインの内容自体は,本件ガイドラインが定められる以前においても,通達等の形で行政内部の運用基準として存在していたものと推認されるのである。 (2) しかしながら,審査基準の定めがない場合又は審査基準の定めがあっても不十分なものでしかなかった場合にされた許認可等であっても,そのことのみを理由に直ちに当該許認可等が違法になるものと解すべきではない。なぜならば,行政手続法5条1項は,審査権者である行政庁において申請により求められた許認可等をするかどうかを法令の定めに従って判断するために必要とされる基準を定めるものとすると規定し,同条2項も「できる限り具体的なものとしなければならない」としているのであって,審査基準の在り方は個々の法令ごとにまた個々の行政庁ごとに種々様々あり得ることを前提としているのであって,審査基準の有無あるいは審査基準の具体性が一様になることは必ずしも予定されてはおらず,したがって,このような審査基準の在り方自体が,許認可等の当不当とは別に,許認可等の瑕疵を一律にもたらすとは考え難いからである。 もっと も予定されてはおらず,したがって,このような審査基準の在り方自体が,許認可等の当不当とは別に,許認可等の瑕疵を一律にもたらすとは考え難いからである。 もっとも,行政手続法5条の趣旨は,上記のとおり,行政庁の許認可等の透明性と公正さを確保するというところにあるのであり,法令の定め自体が抽象的であるため,法令の定め自体からはどのような事情を考慮して許認可等が行われるかを理解することが不可能であったり,著しく困難であったりする場合には,審査をする行政庁としても審査の基準がなければ場当たり的に許認可等を行うおそれがあり,また,申請者ごとに不公正な取扱いをしたのではないかとの疑いを招くことになる。したがって,そのような場合には審査基準の定めのないままにされた許認可等は瑕疵を帯びることになるというべきである。 これに対して,法令の定めがある程度具体的であり,審査基準の定めがなくとも,行政庁の許認可等の透明性と公正さを確保することができ,適切・公正な処理についてさほど支障を来さないような場合には,審査基準の定めの有無は,当該許認可等について違法を招来するものではないというべきである。 (3) かかる見地に立って本件をみるに,農振法15条の15第4項1号は,①開発行為によって開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難となること,②その結果として市町村の策定した地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあることの2点を不許可の要件としており,この2点が認められれば許可をしてはならないとしているのである。そして,開発行為に係る土地が農用地等として利用することが困難となるという要件もある程度幅 を不許可の要件としており,この2点が認められれば許可をしてはならないとしているのである。そして,開発行為に係る土地が農用地等として利用することが困難となるという要件もある程度幅のあるものとはいえても,「農用地等」の定義は農振法3条に規定するところであり,開発行為に係る当該土地が農用地等として利用し得るかどうかは比較的容易に知り得るものといえる。また,地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあるか否かという要件もある程度幅のあるものといえるが,地域整備計画自体は遠い将来の計画ではなく,近い将来に実施すべきものとして策定されるものであることからすると,ごく短期間に農用地等に復元することが可能となる開発行為以外のものは通常地域整備計画の達成に支障を及ぼすものといえる。 したがって,農振法15条の15第4項1号の規定は,不許可の要件をある程度具体的に定めているといえ,不許可要件に該当するか否かは,開発行為自体の客観的性質と当該市町村の地域整備計画とを照らし合わせることによって比較的容易に判断されるものであり,都道府県知事の恣意が入る余地は少なく,審査基準の定めがなくとも,行政庁の許認可等の処分の透明性と公正さを確保することができ,適切・公正な処理についてさほど支障を来さないものというべきである。 なお,農振法15条の15第4項1号について審査基準を設けるにしても,市町村の地域整備計画は各市町村の個別の計画ごとにその実施期間がまちまちな上,各計画についても地元関係者との調整がまとまったものから順次予算化され,実施されるという性質を有しており,客観的指標をもって基準を定めることはできず,抽象的な指針や留意 間がまちまちな上,各計画についても地元関係者との調整がまとまったものから順次予算化され,実施されるという性質を有しており,客観的指標をもって基準を定めることはできず,抽象的な指針や留意事項,考慮事項等を定めるほかはないものと思われる。 (4) したがって,控訴人が農振法15条の15第4項1号について審査基準を設けていなかったことは,本件不許可処分を違法ならしめるものではなく,取消事由にはならないというべきである。行政手続法5条違反をいう被控訴人の主張は採用することができない。 7 行政手続法8条違反の有無について(1) 本件不許可処分の理由につき提示されたところが,「当該申請において計画されている開発行為(本件開発行為)は,申請地を相当長期間にわたって農用地等以外の用途に利用する計画であり,白石市が定める農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼす恐れがあるため,農業振興地域の整備に関する法律第15条の15第4項第1号に該当する。」というものであったことは前記1で認定したとおりである。 ところで,行政手続法8条の趣旨は,申請により求められた許認可等を拒否する処分に同時に当該処分の理由を提示することを義務付けることによって,行政庁に当該処分の判断過程を申請者に提示させ,もって行政庁の判断の慎重・合理性を担保しその恣意を抑制し,また,申請者に不服申立て又は訴え提起の便宜を与えるなどしてその事後的救済を円滑化させることにあると解されるのであり,提示された理由は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを申請者がその記載自体から了知しうる程度のものであることを要するものと解される。 (2) しかるところ, ,提示された理由は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを申請者がその記載自体から了知しうる程度のものであることを要するものと解される。 (2) しかるところ,本件開発行為は,産業廃棄物最終処分場を農用地区域内に設置しようとするものであり,その事業期間は少なくとも17年間であり,その期間はいうまでもなく,事業終了後も産業廃棄物が当該地域に残存し続ける以上,社会通念上,事業期間終了後も相当長期にわたり本件土地の農用地としての使用を困難にすることは明らかである。 そして,上記のような本件施設の位置関係,開発行為の期間の内容は本件申請書の中に具体的に記載されており,また,農用地区域の指定範囲,地域整備計画の内容は公にされている白石市地域整備計画の中に具体的に記載されているのである。 本件不許可処分は,このような事実関係の下において,農振法15条の15第4項1号の不許可事由があるとしてされたものであり,理由の提示において,本件開発行為が本件土地を相当長期にわたって農用地等以外の用途に利用する計画であること,そのような利用計画が白石市の定める地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあると述べているのであるから,これは農振法15条の15第4項1号に該当する理由の提示として十分であるというべきである。 なるほど,控訴人は審査基準を定めておらず,したがって,本件不許可処分の理由にも審査基準の記載はない。審査基準の定めがあれば,どの項目に該当するとして理由の提示をより容易にし得るとはいえる。しかしながら,農用地区域内の土地を農用地等以外の用途に長期間使用すれば,当該土地を農用地等として利 定めがあれば,どの項目に該当するとして理由の提示をより容易にし得るとはいえる。しかしながら,農用地区域内の土地を農用地等以外の用途に長期間使用すれば,当該土地を農用地等として利用することは困難となり,ひいては白石市の定めた地域整備計画に支障を及ぼすおそれがあるのは明らかであって,申請地を相当長期にわたって農用地等以外の用途に利用する計画であるため白石市の地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあることと法規として農振法の規定を示したことで理由の提示に不足することはないというべきであり,審査基準の有無は,本件不許可処分の理由提示の当不当についての判断を左右しないものというべきである。 (3) したがって,本件不許可処分に行政手続法8条の違反がある旨の被控訴人の主張も採用することができない。 8 結論以上の次第であるから,本件不許可処分にはこれを取り消すべき違法はなく,被控訴人の本件請求は理由がないからこれを棄却すべきである。 よって,当裁判所の上記判断と異なる原判決を取り消し,被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 仙台高等裁判所第2民事部裁判長裁判官大橋弘裁判官鈴木桂子裁判官中村恭
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