平成15(ワ)849 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年6月16日 松山地方裁判所
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判決文本文15,907 文字)

判決 主文 1 被告は,原告に対し,2723万2538円及びこれに対する平成13年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,81万1958円を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。 5 主文第1,2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告は,原告に対し,4184万7767円及びこれに対する平成13年10月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告に対し,81万1958円を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 仮執行宣言第2 当事者の主張 1 請求原因(1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生ア発生日時平成13年10月6日午後7時30分ころイ発生場所松山市a町b番地先路上ウ加害車両被告運転の普通貨物自動車(以下「被告車両」という。)エ事故態様直線道路である本件事故現場において,道路を横断しようとしていた原告に被告が運転する被告車両が衝突し,よって,原告に後記傷害を負わせた。 (2) 責任原因被告は,車両を運転して道路を走行するときには前方を注視し,横断しあるいは横断しようとする歩行者が存するときには 両が衝突し,よって,原告に後記傷害を負わせた。 (2) 責任原因被告は,車両を運転して道路を走行するときには前方を注視し,横断しあるいは横断しようとする歩行者が存するときには,その横断を妨げないよう徐行ないし停止すべき義務があるのにこれを怠り,上記道路を横断しようとしていた原告に後記傷害を負わせた過失がある。 よって,被告は,民法709条に基づき,本件事故により原告に発生した後記損害の賠償責任を負う。 (3) 原告の傷病の内容及び治療経過ア傷病名頭部外傷,脳挫傷,急性硬膜下血腫,外傷性くも膜下出血,左顔面神経麻痺,左聴の障害,症候性てんかんイ治療状況(ア) A病院入院平成13年10月6日から同年10月22日まで通院平成13年10月23日から平成14年7月24日まで(イ) B病院耳鼻咽喉科入院平成13年10月26日から同年10月29日まで通院平成13年10月24日から平成14年8月2日まで(ウ) C病院入院平成14年10月1日から平成14年10月3日まで通院平成14年9月12日から平成14年10月1日まで(エ) B病院精神科・神経科通院平成15年1月14日から平成15年2月20日(症状固定日)まで事故日から症状固定日まで 503日間(入院日数24日)ウ後遺障害の内容・等級(ア) 9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制 から症状固定日まで 503日間(入院日数24日)ウ後遺障害の内容・等級(ア) 9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)(イ) 9級9号(一耳の聴力を全く失ったもの)(ウ) (ア),(イ)により,併合8級(4) 原告の損害ア治療関係費 87万9320円(ア) 治療費 38万6550円(イ) 入院雑費 3万6000円1日1500円,24日間(ウ) 通院交通費  19万2370円病院へのタクシー代(エ) 付添看護料 26万4000円入院期間中の24日間は毎日付添看護を要した。近親者付添費の日額は8000円が相当である。したがって,入院中の付添看護料は,19万2000円となる。 さらに,通院の際も付添が必要であった。近親者通院付添費の日額は,4000円が相当であり,通院実日数は18日であるから,通院付添費は7万2000円となる。 (オ) 文書料 400円イ逸失利益 3452万6225円(ア) 基礎収入 565万9100円原告は,本件事故時満10歳であったが,今後成長して就労すれば,賃金センサスの平成13年男子労働者学歴計全年齢平均賃金である565万9100円程度の収入を得られる蓋然性があった。 (イ) 労働能力喪失率 45パーセント原告の後遺障害等級は第8級であり,自賠責保険も認定するとお 00円程度の収入を得られる蓋然性があった。 (イ) 労働能力喪失率 45パーセント原告の後遺障害等級は第8級であり,自賠責保険も認定するとおり,精神障害によって今後就労可能な労務が制限され,かつ左耳の用廃によってもさらに労働能力が制限される。 これを割合で評価すれば,原告は45パーセントの労働能力を喪失したものといえる。 (ウ) 労働能力喪失期間 49年間原告は,高校を卒業する満18歳から満67歳に至るまでの49年間就労が可能であった。 (エ) 中間利息控除ライプニッツ係数13.5578原告は,症状固定時満12歳であったから,労働開始可能な満18歳までは6年間の非就労期間が存する。したがって,用いるべきライプニッツ係数は,12歳から67歳までの55年間のライプニッツ係数から,18歳までのライプニッツ係数を引いたものになる。 18.6334-5.0756=13.5578(オ) 計算式5,659,100×0.45×13.5578=34,526,225.7ウ慰謝料 1191万円(ア) 傷害慰謝料 191万円上記のとおり,症状固定日までの入院期間は約1か月間であり、その余の通院期間は約15か月に及ぶ。 したがって,傷害慰謝料としては上記金額が相当である。 (イ) 後遺障害慰謝料 1000万円原告の後遺障害は,精神障害と左聴力障害によって併合8級であり,それ以外にも等級認定はさ ては上記金額が相当である。 (イ) 後遺障害慰謝料 1000万円原告の後遺障害は,精神障害と左聴力障害によって併合8級であり,それ以外にも等級認定はされていないものの,本件事故を原因として顔面麻痺なども発症している。これらの慰謝料増額事由を考慮すれば,後遺障害慰謝料としては,1000万円が相当である。 エ損害の填補(ア) 自賠責保険 859万4540円(被害者請求)(イ) 任意保険 67万7580円自賠責から任意保険会社が回収した金額(ウ) 上記損害額の合計は4731万5545円であり,上記損害填補の結果,損害額は3804万3425円となる。 オ弁護士費用 380万4342円カ損害合計 4184万7767円(5) 確定遅延損害金等ア自賠責保険からの給付分について原告は,自賠責保険金859万4540円を受領しているが,これは後遺障害分819万円と傷害分40万4540円の2回に分けて振り込まれた。 上記保険金の給付は,本件事故による損害の填補に当たり,上記金員に対する本件事故発生日から上記支払日までの民法所定年5分の割合による確定遅延損害金についても,原告は請求権を有している。 本件では,後遺障害分819万円は平成15年8月26日に,障害分40万4500円は平成15年9月9日に支払われている。よって,確定損害金は,81万1958円となる。 〔計算式〕後遺障害分  8,190,000×0.05×689÷365=773,001. 9月9日に支払われている。よって,確定損害金は,81万1958円となる。 〔計算式〕後遺障害分  8,190,000×0.05×689÷365=773,001.36傷害分 404,540×0.05×703÷365=38,957.75計 811,958イ残損害賠償金について事故発生日から支払済みまでの遅延損害金について,原告は請求権を有している。 (6) よって,原告は,被告に対し,次の支払を求める。 ア民法709条に基づく損害賠償請求権として,4184万7767円及びこれに対する本件事故日である平成13年10月6日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金イ上記損害賠償請求権の一部(自賠責保険による填補分)である859万4540円に対する確定遅延損害金81万1958円 2 請求原因に対する認否(1) 請求原因(1)〔本件事故の発生〕は認める。 (2) 同(2)〔責任原因〕は認める。 (3)ア同(3)ア〔原告の傷病名〕は認める。 イ同(3)イ〔治療状況〕は認める。 ウ同(3)ウ〔後遺障害の内容・等級〕について,原告主張のとおりの自賠等級が認定されていること,原告が左耳の聴力を完全に失っていることは認めるが,神経系統の機能又は精神の障害が自賠等級9級10号に該当することは争う。原告の症状は,9級10号より軽いものである。 (4)ア(ア) 同(4)ア(ア)〔治療費〕は認める。 (イ) 同(4)ア(イ)〔入院雑費〕は認める 0号に該当することは争う。原告の症状は,9級10号より軽いものである。 (4)ア(ア) 同(4)ア(ア)〔治療費〕は認める。 (イ) 同(4)ア(イ)〔入院雑費〕は認める。 (ウ) 同(4)ア(ウ)〔通院交通費〕は認める。 (エ) 同(4)ア(エ)〔付添看護料〕は否認ないし争う。付添看護料は,入院1日当たり4000円,通院1日当たり2000円が相当である。 (オ) 同(4)ア(オ)〔文書料〕は認める。 イ(ア) 同(4)イ(ア)〔基礎収入〕は争う。 (イ) 同(4)イ(イ)〔労働能力喪失率〕は争う。原告の労働能力喪失率は,35パーセントが相当である。 (ウ) 同(4)イ(ウ)〔労働能力喪失期間〕は認める。 (エ) 同(4)イ(エ)〔中間利息控除〕は争う。本件では,逸失利益の現価算定の基準時として,事故時と考えるのが妥当であり,中間利息控除に当たっては,事故時から逸失利益発生期間の終期までのライプニッツ係数から,事故時から逸失利益発生期間の始期までのライプニッツ係数を引いたものを係数として用いるべきである。これによれば,ライプニッツ係数としては12.298が相当である。 (オ) 同(4)イ(オ)〔計算式〕は争う。 ウ(ア) 同(4)ウ(ア)〔傷害慰謝料〕は争う。 (イ) 同(4)ウ(イ)〔後遺障害慰謝料〕は争う。 エ(ア) 同(4)エ(ア)〔自賠責保険〕は認める。 (イ) 同(4)エ(イ)〔任意保険〕は認める (イ) 同(4)ウ(イ)〔後遺障害慰謝料〕は争う。 エ(ア) 同(4)エ(ア)〔自賠責保険〕は認める。 (イ) 同(4)エ(イ)〔任意保険〕は認める。 (ウ) 同(4)エ(ウ)〔損害額合計〕は争う。 オ同(4)オ〔弁護士費用〕は争う。 カ同(4)カ〔損害合計〕は争う。 (5) 同(5)〔確定遅延損害金等〕について,原告主張のような計算方法があることは認めるが,その余は争う。 3 被告の主張(過失相殺)原告には,夜間,南方約37メートルに近接する信号機のある横断歩道を渡らず,また北側40メートル先の横断歩道も渡らず,被告車両が走行していることを知りながら,その前に道路を横断できると判断し,突然被告車両の前方を斜めに走って横断した過失がある。 原告の過失割合は50パーセントとするのが相当である。 4 被告の主張に対する認否及び反論被告の主張は争う。本件事故現場には横断歩道はないから,本件事故はいわゆる横断歩道のない交差点又はその直近における横断時の事故であり(原告の基本的過失割合20パーセント),これに原告が児童であること(5パーセントの減算),被告車両の著しい過失(10パーセントの減算)の修正要素を加味すれば,原告の過失割合は5パーセントを上回ることはない。なお,当時は夜間であったとはいえ,本件事故現場は明るかったから,夜間であることを理由に過失割合を修正すべきではない。また,原告には斜め横断,直前横断の過失もなかった。 第3 当裁判所の判断 1 本件事故の発生,責任原因,原告の傷病の内容及び治療経過請求原因(1)ないし(3)の事実は,当事者間に争いがない(ただし,神 断,直前横断の過失もなかった。 第3 当裁判所の判断 1 本件事故の発生,責任原因,原告の傷病の内容及び治療経過請求原因(1)ないし(3)の事実は,当事者間に争いがない(ただし,神経系統の機能又は精神の障害が9級10号に該当するか否かについては、争いがある。)。 2 原告の損害(1) 治療費38万6550円,入院雑費3万6000円,通院交通費19万2370円,文書料400円請求原因(4)ア(ア)ないし(ウ),(オ)は,当事者間に争いがない。 (2) 付添看護料 19万8000円ア証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,原告の入院期間(24日間)中,その母親・Dが毎日付添看護をしていたことが認められるところ,原告は,本件事故により請求原因(3)アのとおりの傷害を負い(争いがない。),入院後意識不明の状態が2日間続いたこと(証拠略),本件事故当時原告が満10歳の児童であったこと(証拠略)などに照らすと,母親による上記入院期間中の付添看護は必要であり,かつ,1日当たりの付添看護料は6000円とするのが相当である。そうすると,入院中の付添看護料は,14万4000円となる。 6,000×24=144,000イ証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,原告の通院(18日)の際には,Dが付き添っていたことが認められ,前記認定にかかる原告の傷害内容,年齢等に照らすと,通院付添は必要であり,かつ,1日当たりの通院付添費は3000円とするのが相当である。そうすると,通院付添費は,5万4000円となる。 3,000×18=54,000ウ以上により,付添看護料の合計は,19万8000円となる。 ( そうすると,通院付添費は,5万4000円となる。 3,000×18=54,000ウ以上により,付添看護料の合計は,19万8000円となる。 (3) 逸失利益 3452万6225円ア基礎収入 565万9100円原告は,本件事故当時満10歳の児童であったが,今後成長して就労すれば,賃金センサス平成13年男性労働者学歴計全年齢平均賃金である565万9100円程度の収入を得る蓋然性があったと認められる。 イ労働能力喪失率  45パーセント(ア) 原告が,後遺障害等級につき,自賠責保険上,①左聴力障害については,「一耳の聴力を全く失ったもの」として,9級9号と,②頭部外傷後の精神・神経系統の障害については,「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として,9級10号と認定され,これらにより,併合8級と認定されたことは,当事者間に争いがない。 (イ) 左聴力障害について,原告が本件事故により左耳の聴力を全く失ったことは争いがない。 被告は,一耳の聴力を喪失したことによって通常のコミュニケーションにおいて不便さは存するものの,将来において選択できる職業の幅が減り,大幅に労働能力が喪失して減収を免れないとは考えにくいと主張する。 しかしながら,一耳の聴力を完全に喪失した場合には,将来における職業選択の範囲がかなり狭められるものと考えられ,就職した場合にも,仕事をする上でのハンディとなることは少なくないと解される。原告につきかかる事情を否定するに足りる証拠はないこと,自賠責保険上(ア)のとおりの認定を受けていることなどを 考えられ,就職した場合にも,仕事をする上でのハンディとなることは少なくないと解される。原告につきかかる事情を否定するに足りる証拠はないこと,自賠責保険上(ア)のとおりの認定を受けていることなどを勘案すると,原告の左聴力障害による労働能力喪失率は,35パーセントとするのが相当である。 (ウ) 頭部外傷後の精神・神経系統の障害について,原告は,高次脳機能障害が存在しており,その程度は「神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」であるとして,後遺障害等級9級10号に該当し,労働能力喪失率は35パーセントであると主張する。 ① 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおり認められる。 ⅰ 高次脳機能障害とは,知識に基づいて行動を計画し実行する精神活動が阻害された状態をいい,その典型的な症状は,認知障害と人格変化(行動障害)である。認知障害とは,記憶・記銘力障害,注意障害,知能低下等の症状であり,人格変化とは,感情易変,易怒性,自発性の低下,抑うつ等の症状である。 高次脳機能障害の有無・程度を診断するには,頭部外傷の有無・程度を正確に把握することが重要である。頭部外傷の有無・程度を把握するためには,受傷直後の意識障害の程度・持続時間の把握が必要となる。 また,受傷直後の頭部CTやMRIなどにより,頭部外傷の有無・程度について判断することが可能である。 高次脳機能障害の程度を判断する際には,診療医による具体的な所見,本人あるいは同居者による日常生活状況の報告が重要となる。 ⅱ 原告は,受傷後意識が消失し,来院時は自発開眼はないが,よくしゃべると 判断する際には,診療医による具体的な所見,本人あるいは同居者による日常生活状況の報告が重要となる。 ⅱ 原告は,受傷後意識が消失し,来院時は自発開眼はないが,よくしゃべるという状態であった。意識レベルはJCS10程度である。その後,CT施行中から意識レベルが低下してJCS20に,午後9時には,JCS30まで低下した。翌日にも意識レベルはJCS10であり,2日目以降は意識レベルはほぼ清明となった。なお,JCSは意識障害の分類に用いる数字で,10は普通の呼びかけで容易に開眼する場合,20は大きな声又は体を揺さぶることにより開眼する場合,30は痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する場合をいう。 原告の脳には,画像所見上,脳挫傷の後が残存しており,カルテ上も,MRIの所見において「右前頭葉に外傷後の変化が認められます」とされている。 A病院E医師作成の「脳外傷による精神症状等についての具体的な所見」(証拠略)によると,原告の物忘れ症状や新しいことの学習障害は中等度とされている。また,同病院の看護記録(証拠略)には,「お昼ごはん?どれくらい食べたか忘れた。・・・物忘れが激しい」という記載もある。集中力の低下についても,C病院の診療情報提供書添付の心理検査所見票(証拠略)に,平成14年9月27日のWISC-Ⅲ知能検査時,「後半はもうやめたいと意思表示する。検査後は1人で部屋を出て近くを探索する」と記載されている。 原告の小学校の担任は,平成15年1月ころ,原告について,ADHD(注意欠陥,多動障害)の疑いを持ち,原告の母親に対し,危険行為をする,物忘れがひどい,よく眠るなどと指摘した(証拠略)。 平成15年1月ころ,原告について,ADHD(注意欠陥,多動障害)の疑いを持ち,原告の母親に対し,危険行為をする,物忘れがひどい,よく眠るなどと指摘した(証拠略)。 原告の母親は,日常生活状況報告表(証拠略)において,原告が同じことを何度も聞き返す,数分前の出来事や聞いたことをよく忘れると報告している。 ② 以上認定のとおりであって,原告については,本件事故により頭部外傷,脳挫傷等の傷害が生じたこと,受傷後意識障害が一定期間継続したこと,記憶障害,集中力低下等の障害が生じていることが認められ,これらは,高次脳機能障害の存在を推認させる事情ということができる。 そうすると,原告は,高次脳機能障害により神経系統の機能又は精神に障害を残していると判断せざるを得ず,その障害の程度は,(ア)のとおりの認定を受けていることや上記①ⅱの状況に鑑みると,障害等級9級10号に該当し,35パーセントの労働能力を喪失したと認めるのが相当である。 ③ 被告は,原告の意識障害の程度は非常に軽微なものであり,一般的に高次脳機能障害が残るような意識障害ではないし,高次脳機能障害と判断するにつき重要とされている局限性若しくはびまん性脳室拡大・脳萎縮の画像所見も存しないなどとして,高次脳機能障害の存在に疑問を呈している。しかし,①で認定した原告の意識障害の程度は軽微とはいえないし,高次脳機能障害については,びまん性の脳損傷だけでなく,局在性脳損傷(脳挫傷,頭蓋内血腫等)とのかかわりも否定できないから(証拠略),高次脳機能障害の存在を否定することはできないと考えられる。 被告は,前掲E医師作成の回答(証拠略)について,ほとんど通院治療に携わって わりも否定できないから(証拠略),高次脳機能障害の存在を否定することはできないと考えられる。 被告は,前掲E医師作成の回答(証拠略)について,ほとんど通院治療に携わっていないE医師が原告の母親の心配事をそのまま記載した可能性が高く,妥当性に疑問があると主張する。確かに,証拠(証拠略)によれば,E医師は,原告の入院中同人を担当していたものの,退院後はほとんど治療に携わっていなかったことが認められるが,①ⅱで認定した入院中のカルテ,看護記録の記載,学校担任の指摘等に照らすと,上記回答が妥当性を欠くとまではいえないから,被告の主張は理由がない。 なお,平成14年9月27日に実施されたWISC-Ⅲ知能検査によれば,原告の言語性能力は普通域,動作性能力は準普通域であり,総合的には普通域の知的能力を有しているとされ,後遺障害を強く示唆するような能力の著しいゆがみや偏りは認められないと判断されている。しかし,上記検査で測定しているのは記憶の基本的能力であって,作業記憶のような複雑な記憶過程の障害については評価できないとされており(証拠略),高次脳機能障害の有無・程度を十分に測定できないと解されるから,上記検査結果によって,原告の高次脳機能障害の存在を否定することは妥当でない。 (エ) 以上によれば,原告の後遺障害としては,後遺障害等級9級9号の左耳聴力全喪失,同9級10号の高次脳機能障害が認められるところ,その障害の程度は,(ア)のとおりの認定を受けていることや上記(イ),(ウ)①ⅱの状況に鑑みると,障害等級併合8級に該当し,45パーセントの労働能力を喪失したと認めるのが相当である。 ウ労働能力喪失期間原告が,高校を卒業する満18歳から満67 の状況に鑑みると,障害等級併合8級に該当し,45パーセントの労働能力を喪失したと認めるのが相当である。 ウ労働能力喪失期間原告が,高校を卒業する満18歳から満67歳に至るまでの49年間就労が可能であったことは,当事者間に争いがない。 エ中間利息控除(ア) 原告は,症状固定時満12歳であったから,労働開始可能な満18歳までは6年間の非就労期間が存する。したがって,用いるべきライプニッツ係数は,12歳から67歳までの55年間のライプニッツ係数18.6334から,18歳までのライプニッツ係数5.0756を引いた13.5578となる。 (イ) 被告は,事故時から逸失利益発生期間の終期までのライプニッツ係数から,事故時から逸失利益発生期間の始期までのライプニッツ係数を引いたものを係数として用いるべきであると主張する。しかし,具体的な損害は,症状固定時に確定すると考えられること,遅延損害金の起算時と中間利息控除の基準時を同一に解する必然性はないこと,事故時から単利の遅延損害金しか付されないのに,事故時を基準としてライプニッツ方式(複利計算)で中間利息を控除することはかえって公平に反することなどに照らすと,被告の主張を採用することはできない。 オ計算式以上によれば,原告の逸失利益は,3452万6225円(1円未満切り捨て)となる。 5,659,100×0.45×13.5578=34,526,225.69(4) 慰謝料 1000万円ア傷害慰謝料前記認定にかかる原告の傷害の程度,入・通院期間,通院実日数等を総合すれば,傷害慰謝料は,150万円をもって (4) 慰謝料 1000万円ア傷害慰謝料前記認定にかかる原告の傷害の程度,入・通院期間,通院実日数等を総合すれば,傷害慰謝料は,150万円をもって相当と認める。 イ後遺障害慰謝料前記認定にかかる原告の後遺障害の程度,年齢等の諸事情を考慮すると,後遺障害慰謝料としては850万円をもって相当と認める。 (5) 過失相殺ア本件事故の態様証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(上記認定事実中には,当事者間に争いない事実も一部含まれる。)。 (ア) 被告は,平成13年10月6日午後7時30分ころ,被告車両を運転し,前照灯を下向きに点灯して,時速約45キロメートルで,松山市a町b番地先路上(以下「本件道路」という。)を,c町方面からd町方面へ向けて(北から南へ)走行していた。被告車両の後部座席には知人が同乗していた。 (イ) 本件道路は,幅員7.8メートルの片側一車線道路であり,最高速度は時速40キロメートルとされ,路面は平坦なアスファルト道路で,本件事故当時は乾燥していた。普段の交通量は多いが,事故当時の交通量は比較的少なかった。 (ウ) 本件道路は,本件事故現場の北側直近において,幅員約4.1メートルのe町方面(東方向)に至る道路と交差している。本件道路の東側歩道は,同交差道路部分で途切れており,同交差道路出口南側脇の電柱にはカーブミラーが設置されている。 また,本件事故現場から南方約37メートルには,信号機のある交差点の横断歩道があり,同様に,北方約40メートルの場所にも横断歩道があるが,本件事故現場には横断歩道はない。 また,本件事故現場から南方約37メートルには,信号機のある交差点の横断歩道があり,同様に,北方約40メートルの場所にも横断歩道があるが,本件事故現場には横断歩道はない。 (エ) 事故当時,被告車両とその前方車両との車間距離は約38メートルであり,また,事故現場付近は,近くにあるガソリンスタンドの灯りなどのために,やや明るい状態であった。他に悪天候・障害物等,歩行者・走行車両の視界を妨げる格別の要因はなく,事故現場付近の見通しはよかった。 (オ) 被告は,本件事故現場付近の本件道路東側(被告車両の進行方向左側)歩道上に,原告を含む小学校5,6年生の子供が3人くらい,お菓子の袋を持って立っているのを,事故現場から約36.5メートル手前で発見した。 このとき,被告車両の前方交差点の信号機は青信号であり,同交差点の横断歩道上には歩行者がいなかったことから,被告は,歩道上の原告らに注意を向けることなく,時速約45キロメートルを維持して走行を続けた。 (カ) 被告は,被告車両の左前方に,本件道路を走って横断しようとする児童(原告)の姿を認めた。このとき,原告と被告車両の距離は約15メートルであった。被告は,危険を感じてハンドルを右に切るとともに,急制動の措置をとったが間に合わず,さらに前方に約16. 4メートル進行した地点で,被告車両前部が原告に衝突した。 イ過失割合についての検討(ア) 上記認定のとおり,本件道路は,本件事故現場の北側直近において,幅員約4.1メートルの道路(以下「本件交差道路」という。)と交差しているところ,本件事故現場が「横断歩道のない交差点又はその直近」に当たるか否かについて,当事者間に争いがある。 ,幅員約4.1メートルの道路(以下「本件交差道路」という。)と交差しているところ,本件事故現場が「横断歩道のない交差点又はその直近」に当たるか否かについて,当事者間に争いがある。 被告は,本件交差道路が非常に狭く,夜間には交差道路の存在すら認識困難であるとして,本件事故現場が交差点であることを否定し,本件事故現場の南方約37メートル及び北方約40メートルには横断歩道があることから,本件事故現場は「横断歩道の付近」にあたり,歩行者・運転者ともに,横断歩道での横断を当然に予定としていると主張する。 しかし,本件交差道路は,車両通行に支障のない幅員があること,本件道路脇の歩道が交差部分で途切れていて,カーブミラーも設置されているため,本件交差道路の存在は運転者に認識可能であること(上記認定のように,夜間においても,ガソリンスタンドの灯りなどによって,認識できると解される。)などの状況からすれば,本件事故現場は,T字路交差点に当たるというべきである。 また,本件道路は幅員7.8メートルの片側一車線道路に過ぎないことからすれば,南北に約37メートルないし約40メートルも離れた場所に横断歩道があるからといって,本件事故現場が「横断歩道の付近」であるということは困難である。 以上によれば,本件は「横断歩道のない交差点又はその直近における横断」事故であると認められ,その基本的な過失割合は,原告20パーセント,被告80パーセントとするのが相当である。他に,この基本的過失割合を不当とすべき事情は認められない。 (イ) 基本的過失割合の修正項目について検討する。 ① 児童修正本件事故当時,原告が満10 過失割合を不当とすべき事情は認められない。 (イ) 基本的過失割合の修正項目について検討する。 ① 児童修正本件事故当時,原告が満10歳の児童であったことに照らすと,上記基本的過失割合のうち,5パーセントを原告の過失割合から減算するのが相当である。 ② 被告の著しい過失原告は,ⅰ本件事故日は,児童が精神的に高揚する秋祭りの日であり,被告にもお祭りの認識があったこと,ⅱ本件事故現場付近の歩道上では,児童の集団が車道方向を見ながら立っていたこと,ⅲ本件事故時の交通量が少なく,歩行者が本件道路を横断することが予見されたこと,ⅳ被告は,減速も徐行もせずに,原告ほかの児童の動静に格別の注意を払うことなく走行したこと,ⅴ同乗者の叫び声ではじめて横断中の原告に気づいたか,少なくとも同乗者よりも後に原告に気づいてブレーキをかけたこと,ⅵ被告が原告を発見したとき,原告は既に被告車両のフロントガラスの正面に近いところまで来ていたことをあげ,被告は高度の注意義務を怠ったから,著しい過失があるとして,被告の過失割合に10パーセントを加算すべきであると主張する。 しかし,ⅰないしⅲの事実に基づき,原告が本件道路を横断することを予見し得る状況が認められたとしても,かかる予見をすべき義務は,もともと被告の負う前方注視義務に包含され,基本的過失割合の中で既に評価されているのであるから,前記事情が認められるからといって,被告に対し,さらに高度の注意義務が課せられたものということはできない。 また,ⅳないしⅵについてみても,これらは被告の前方注視が不十分であったことを示す事実ではあるが,それ以上に,脇見 に高度の注意義務が課せられたものということはできない。 また,ⅳないしⅵについてみても,これらは被告の前方注視が不十分であったことを示す事実ではあるが,それ以上に,脇見運転,著しいハンドル・ブレーキ操作不適切などの悪質な態様の義務違反行為を示すものとはいい難い。 以上によれば,被告に原告主張の著しい過失があったとまでは認められない。 ③ 幹線道路修正被告は,本件道路が幹線道路であることを理由に,基本的過失割合を修正すべきであると主張する。前記認定にかかる本件道路の幅員,本件事故当時の交通量,制限速度等に照らすと,そもそも本件道路が幹線道路であるか否か疑問があるが,仮に幹線道路であるとしても,それは,基本的過失割合を認定する上で当然考慮された事情というべきであるから,重ねて幹線道路修正をすることは相当でない。 ④ 夜間修正被告は,本件事故が夜間に発生したことを理由に基本的過失割合の修正を主張する。 本件事故は,10月6日午後7時30分ころ発生したものであって,夜間の事故であるということができる。しかし,一般に夜間修正が認められているのは,夜間においては,歩行者からは前照灯を点灯した車両が進行してくるのを容易に発見できるのに対し,車両からは歩行者の発見が必ずしも容易でないことを理由にするものであるから,夜間であっても,街路灯等の照明によって歩行者を発見することが容易である場合には,夜間修正はすべきでない。 これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,本件事故現場は,近くにあるガソリンスタンドの灯りなどのために,やや明るい状態で である場合には,夜間修正はすべきでない。 これを本件についてみるに,前記認定事実によれば,本件事故現場は,近くにあるガソリンスタンドの灯りなどのために,やや明るい状態であり,走行車両の視界を妨げる格別の要因はなく,事故現場付近の見通しはよかったものである。現に,被告は,事故現場の約36.5メートル手前を走行中,事故現場付近の歩道上に,原告を含む児童らがお菓子の袋を持って立っているのを発見したのであるから,本件事故現場は歩行者の発見が容易であったということができる。そうとすれば,夜間修正を行うのは相当でない。 ⑤ 原告の直前横断等被告は,原告が斜め横断,車両直前横断したとして,基本的過失割合の修正を主張する。 斜め横断について検討するに,証拠(略)によれば,原告は,被告車両を認識しつつやや斜め左方向に横断を開始したことが認められるが,本件道路は幅員7.8メートルの片側一車線道路であって,しかも原告が横断を開始した直後に衝突していることから,直角に横断した場合と比較しても,横断距離には極めて僅少な差があるに過ぎない。また,原告が走って横断しようとした直後に衝突されていることから,横断時間の面でもほとんど違いはなかったといえる。そうすると,斜め横断による過失割合の修正は相当でないというべきである。 直前横断について検討するに,原告は,被告車両が時速約45キロメートルで走行中,被告車両の停止距離約20.77メートル(証拠略)よりかなり短い約15メートル手前で飛び出して横断を試みたものであって,客観的に危険発生のおそれが高いといえるから,道路交通法13条1項本文で禁じられている「車両等の直前」で横断したものとい 拠略)よりかなり短い約15メートル手前で飛び出して横断を試みたものであって,客観的に危険発生のおそれが高いといえるから,道路交通法13条1項本文で禁じられている「車両等の直前」で横断したものということができる。 原告は,被告が制限速度を遵守した上,前方を注視していれば,衝突前に被告車両を停止させることが十分可能であったとして,原告の直前横断を否定するが,制限速度違反や前方注視義務の不遵守は,被告側の過失として考慮されるべき事項であり,原告の過失として考慮すべき直前横断の問題とは区別して考えなければならないものであるから,原告の主張は理由がない。 よって,原告が直前横断をしたことによる基本的過失割合の修正を認めるべきであり,10パーセントを原告の過失割合に加算すべきである。 ウ過失割合についての結論以上によれば,原告の基本的過失割合は20パーセントであるところ,児童修正により5パーセントを減算し,直前横断により10パーセントを加算すると,原告の過失割合は25パーセントとなる。 (6) 損害額の算定(損害填補前)ア前記認定・説示したところによれば,原告の損害額は,治療費38万6550円,入院雑費3万6000円,通院交通費19万2370円,文書料400円,付添看護料19万8000円,逸失利益は3452万6225円,傷害慰謝料150万円,後遺障害慰謝料850万円となり,その合計は,4533万9545円となる。 イ上記4533万9545円について25パーセントの過失相殺をすると,損害額は,3400万4658円(1円未満切り捨て)となる。 (7) 損害填補原告が自賠責保険及び任意保 9545円について25パーセントの過失相殺をすると,損害額は,3400万4658円(1円未満切り捨て)となる。 (7) 損害填補原告が自賠責保険及び任意保険から合計927万2120円の填補を受けたことは,当事者間に争いがない。 上記3400万4658円から927万2120円を控除すると,損害額は,2473万2538円となる。 (8) 弁護士費用弁論の全趣旨によれば,原告は,原告訴訟代理人に本件訴訟の提起・追行を委任したことが認められるところ,本件訴訟の難易,認容額その他一切の事情に鑑みると,本件事故と相当因果関係を有するものとして被告に請求し得べき弁護士費用の額は,250万円をもって相当と認める。 (9) 確定遅延損害金弁論の全趣旨によれば,原告は,自賠責保険から,平成15年8月26日,後遺障害分として819万円の支払を受け,同年9月9日,傷害分として40万4540円の支払を受けたことが認められる。 上記保険給付は,本件事故による損害について一部填補がなされたものとして扱われるものである。そうすると,原告に生じた全損害は,事故時に発生したものとして算定され,発生と同時に遅滞に陥るべきところ,かかる保険給付による填補額分についても,本来であれば,事故日から具体的な支払日までの間に,相応する遅延損害金が発生していてしかるべきであったといえる。 そこで,既に確定的に発生済みの遅延損害金について算定するに,原告受領の保険給付額は,後遺障害分819万円(事故発生日である平成13年10月6日から平成15年8月26日まで690日間),傷害分40万4540円(平成13年10月6日から平成15年9月9日まで704日間 保険給付額は,後遺障害分819万円(事故発生日である平成13年10月6日から平成15年8月26日まで690日間),傷害分40万4540円(平成13年10月6日から平成15年9月9日まで704日間)であるから,それぞれの受領額に対し,年365日の日割計算をもって民法所定年5分の割合による確定遅延損害金を算出すると,後遺障害分につき77万4123円(うち原告請求額は77万3001円),傷害分につき3万9013円(うち原告請求額は3万8957円)となる。 後遺障害分 8,190,000×0.05×690÷365=774,123.28傷害分 404,540×0.05×704÷365=39,013.17 3 結論以上の次第で,原告の本件請求は,被告に対し,①2723万2538円及びこれに対する本件事故日である平成13年10月6日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金,②確定遅延損害金のうち原告請求にかかる81万1958円,の各支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 松山地方裁判所民事第2部裁判官坂倉充信

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