平成18(行ウ)521 行政情報非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年11月16日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文5,862 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求文京区長が原告に対し平成18年3月20日付け18文都建第674号をもってした行政情報非公開決定を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,文京区情報公開条例(平成12年文京区条例第4号。以下「本件条例」という)に基づいて,文京区長に対し,ある一定の期間内に建。 築確認がされた建築計画概要書の2面及び3面全てを対象文書(行政情報)として,その公開請求をしたところ,これを非公開とする決定を受けたため,その決定の取消しを求める事案である。 関係法令の定め(1)本件条例の定め(甲5)ア本件条例2条2項は,本件条例において「行政情報」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フィルム及び電磁的記録であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が現に保有しているものというと定めている。 イ本件条例5条は,何人も,本件条例の定めるところにより,実施機関に対し,行政情報の公開を請求することができると定めている。 ウ本件条例7条は,実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に同条各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という)が記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該行政情報。 を公開しなければならないと定め,同条1号は「法令及び条例の定める,ところにより,公にすることができないと認められる情報」を掲げている。 - 2 -(2)建築基準法,建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)及び文京区建築基準法施行細則(昭和58年文京区規則第27号。乙1。以下「本件施行細則」という)の定め。 ア建築基準法93条の2は,特定行政庁は,確認その他 施行規則(昭和25年建設省令第40号)及び文京区建築基準法施行細則(昭和58年文京区規則第27号。乙1。以下「本件施行細則」という)の定め。 ア建築基準法93条の2は,特定行政庁は,確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに同法12条1項及び3項の規定による報告に関する書類のうち,当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては,国土交通省令で定めるところにより,閲覧の請求があった場合には,これを閲覧させなければならないと定めている。 イ建築基準法施行規則11条の4第1項は,建築基準法93条の2の国土交通省令で定める書類として,同施行規則別記第3号様式による建築計画概要書等を定め,同施行規則11条の4第3項は,特定行政庁は,同条1項の書類を閲覧に供するため,閲覧の場所及び閲覧に関する規程を定めてこれを告示しなければならないと定めている。 ウ本件施行細則36条ないし39条は,特定行政庁である文京区長が,建築基準法施行規則11条の4第3項の閲覧の場所及び閲覧に関する規程として定めたものであり,その39条は,区長は,同条各号のいずれかに該当する者に対し,概要書等(建築計画概要書を含む)の閲覧を停止し,。 又は禁止することができると定め,同条4号は,その閲覧禁止・停止対象者として「建築物又は工作物を特定しない者」を掲げている。 前提となる事実(当事者間に争いがない)。 (1)原告は,平成18年3月8日,文京区長に対し,本件条例に基づき,平成17年4月1日から平成18年2月28日までに建築確認がされた建築計画概要書の2面及び3面全てを対象文書(行政情報)として,その公開を請求した(以下「本件公開請求」 長に対し,本件条例に基づき,平成17年4月1日から平成18年2月28日までに建築確認がされた建築計画概要書の2面及び3面全てを対象文書(行政情報)として,その公開を請求した(以下「本件公開請求」という。 。)- 3 -これに対し,文京区長は,平成18年3月20日,本件公開請求に係る行政情報の全部を非公開とする決定(18文都建第×××号。以下「本件非公開決定」という)をした。 。 (2)原告は,平成18年4月12日,本件非公開決定を不服として,文京区長に対し,異議申立てをしたところ,同年8月23日,これを棄却する旨の決定を受けたため,同年10月2日,本件訴訟を提起した。 争点及び当事者の主張被告は,本件公開請求に係る行政情報の全部を非公開とした理由として,当該行政情報が本件条例7条1号に定める非公開情報である「法令及び条例の定めるところにより,公にすることができないと認められる情報」に該当すると主張するので,本件の争点は,本件公開請求に係る行政情報が同号の非公開情報に該当するか否かである。 (1)被告の主張本件条例7条1号の規定は,ある情報につき法令又は他の条例に非公開の定めがある場合はその定めを優先させるという趣旨であるところ,本件施行細則39条は,建築基準法及び同法施行規則の委任を受けて制定された規程であるから上記の「法令」に該当し,かつ,同条4号は「建築物又は工作,物を特定しない者」に対しては建築計画概要書の閲覧を停止又は禁止することができる旨を定めているから上記の非公開の定めに該当する。したがって,本件公開請求に係る行政情報は,建築物又は工作物を特定しない場合として,本件条例7条1号の非公開情報に該当する。 なお,建築計画概要書等の閲覧制度は,周辺住民の協力のもとに違反建築物を未然に防止するとともに違反建築物の 政情報は,建築物又は工作物を特定しない場合として,本件条例7条1号の非公開情報に該当する。 なお,建築計画概要書等の閲覧制度は,周辺住民の協力のもとに違反建築物を未然に防止するとともに違反建築物の売買を防止することを目的とするものであり,建築計画概要書の写しを大量に一括で請求するなど上記閲覧制度の目的を逸脱する者には閲覧をさせないことができると解されるから,建築物等を特定しない閲覧を制限する本件施行細則に違法はない。 - 4 -(2)原告の主張本件施行細則39条4号は,概要書等の閲覧を拒絶することができる一場合を示したにすぎず,概要書等に記載された情報を公にしてはならない趣旨を定めたものではない。そもそも,建築基準法93条の2は,建築確認等に関する書類を「閲覧させなければならない」としているのであるから,特定行政庁がこれを制限することはできないはずである。また,原告が本件公開請求で求めたのは「写しの交付」であって「閲覧」には含まれない。した,がって,本件施行細則39条4号は,本件条例7条1号にいう非公開を定めた法令には該当せず,本件公開請求に係る行政情報は,同号の非公開情報に該当しない。 第3当裁判所の判断 本件条例7条1号の趣旨について本件条例7条1号が「法令及び条例の定めるところにより,公にすることができないと認められる情報」を非公開情報とした趣旨は,法令又は他の条例が,わざわざある情報を非公開とする趣旨の定めを設けている場合は,その定めを優先させ,当該情報については本件条例の適用においても非公開とすることにあると解される。 このように,本件条例7条1号は,法令又は他の条例がある情報を非公開としている趣旨を本件条例より優先させようというものであるから,法令又は他の条例が,当該情報を全て非公開としている場合はもとより, このように,本件条例7条1号は,法令又は他の条例がある情報を非公開としている趣旨を本件条例より優先させようというものであるから,法令又は他の条例が,当該情報を全て非公開としている場合はもとより,ある特定の条件を満たした場合にのみ公開するというように公開に関する条件設定をしている場合も含まれると解するのが相当である。 本件施行細則39条4号の定めと非公開情報該当性について(1)ところで「法令」とは,一般に「法律」及び行政機関の定める法形式,,である「命令」すなわち政省令や規則等を指し,本件条例7条1号にいう「法令」もこのような意味内容を有するものと解されるところ,本件施行細- 5 -則39条の定めは,建築基準法を実施するための同法施行規則11条の4第3項の委任に基づいて,特定行政庁である文京区長が定めた規程(規則)であるから,本件条例7条1号にいう「法令」に該当すると解される。そして,本件施行細則39条は,1号ないし4号に該当する場合には,特定行政庁である文京区長に対し,建築計画概要書等の閲覧を停止し,又は禁止する権限を付与しており,文京区長が当該権限を行使して閲覧を停止又は禁止した場合には,その結果として,建築計画概要書等に記載された情報が当該閲覧請求者に対して開示されないこととなる。 (2)そうすると,特定行政庁である文京区長が,本件条例上の実施機関として保有する建築計画概要書について,本件条例に基づき公開請求を受けた場合であっても,文京区長が,本件施行細則39条1号ないし4号に該当するとして,当該公開請求をした者への閲覧を禁止することが相当であると判断した場合には,その判断が裁量権の逸脱,濫用に当たるものでない限り,当該建築計画概要書に係る情報は,法令の定めるところにより,公にすることができないと認められる情報と 禁止することが相当であると判断した場合には,その判断が裁量権の逸脱,濫用に当たるものでない限り,当該建築計画概要書に係る情報は,法令の定めるところにより,公にすることができないと認められる情報として,本件条例7条1号の非公開情報に該当すると解するのが相当である。 (3)この点につき,原告は,建築基準法93条の2は,国土交通省令で定める書類について,閲覧の請求があった場合には,これを閲覧させなければならないと定めているから,特定行政庁がこれを制限することはできないと主張する。 しかしながら,建築基準法は,建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図るという目的の下に制定された法律であり(1条,また,同法93条の2において閲覧)の対象とされている書類は,建築物の建築基準法令への適合性を担保するための処分等に関するもので,当該処分等に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するお- 6 -それがないものとして国土交通省令で定めるものに限定されていることからすると,同条による閲覧の制度は,建築物の所有者等の権利利益に配慮しつつ,当該建築物の周辺住民及びこれを取得しようとする者の生命,健康及び財産の保護を図るため,これらの者に対し,当該建築物が違反建築物であるか否か,その建築物によって自らの敷地や建築物等がどのような影響を受けるかなどを知らせるために設けられた制度であると解される。したがって,たとえば自らの営業活動等による利益のために閲覧請求をする場合など,明らかにこの制度の趣旨と異なる目的で閲覧請求をする場合にまで閲覧を認めることは,そもそも同条が予定していない事態であって,法は,このようないわば濫用的な閲覧請求の場合まで保護する趣 する場合など,明らかにこの制度の趣旨と異なる目的で閲覧請求をする場合にまで閲覧を認めることは,そもそも同条が予定していない事態であって,法は,このようないわば濫用的な閲覧請求の場合まで保護する趣旨ではないと解すべきである。 そうすると,本件施行細則39条4号に定める「建築物又は工作物を特定しない者」からの閲覧請求の場合には,上記のような閲覧制度の趣旨にそぐわない濫用的な閲覧請求である蓋然性が極めて高いから,そのような者に対して区長が閲覧を停止又は禁止することができるとした同号の定めが,建築基準法93条の2に違反して無効であるということはできない。 また,原告は「閲覧」と「写しの交付」は異なるから「写しの交付」,,を求める情報公開請求の場合には,本件施行細則39条4号によって「閲覧」が禁止されるものであっても「写しの交付」はされるべきであるという趣旨の主張もするが「閲覧」と「写しの交付」は異なるからといって,,「閲覧」を禁止したものの「写しの交付」を認めていたのでは,閲覧の停止又は禁止を認めた同号の規定が全く無意味になるから,同号の規定は,閲覧が停止又は禁止される場合には当然に写しの交付等の方法による情報開示も許さない趣旨を含むものと解すべきである。 本件へのあてはめ以上に検討したところを本件にあてはめると,原告の本件公開請求は,平成17年4月1日から平成18年2月28日までに建築確認がされた建築計画概- 7 -要書の2面及び3面全ての公開を求めるというものであり,建築物又は工作物を特定しない請求であることが明らかである。そして,原告は,本件公開請求の目的につき,不動産に関連する情報が積極的に開示され流通することは,不動産の流動化・証券化にとって不可欠の要素であり,本件公開請求はこのような社会の要請に応えるものである旨を主 告は,本件公開請求の目的につき,不動産に関連する情報が積極的に開示され流通することは,不動産の流動化・証券化にとって不可欠の要素であり,本件公開請求はこのような社会の要請に応えるものである旨を主張するが,そのような目的は,前記のような建築基準法93条の2の閲覧制度の趣旨に沿わないいわば濫用的な閲覧請求であり,このような請求に対して,文京区長が本件施行細則39条4号に該当するとして建築計画概要書の閲覧を禁止するとした判断には,何ら裁量権の逸脱,濫用があるとは認められないから,本件公開請求に係る行政情報は,本件条例7条1号に定める非公開情報に該当すると認められる。 したがって,本件公開請求に係る行政情報の全部を非公開とした本件非公開決定は適法である。 第4結論以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部定塚誠裁判長裁判官古田孝夫裁判官- 8 -工藤哲郎裁判官

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