- 1 -令和6年12月16日宣告令和5年(わ)第325号、第608号、第867号住居侵入、強盗致死、強盗予備、窃盗未遂、強盗傷人被告事件判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中450日をその刑に算入する。 東京地方裁判所立川支部で保管中のモンキーレンチ1本(令和6年押第3号符号1)及びバール1本(同押号符号2)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1(訴因変更後の令和5年2月24日付け起訴状記載の公訴事実)時計等販売買取専門店の店舗兼居宅に押し入って金品を強奪しようと考え、a、b、c、d、e、f、g及び氏名不詳者らと共謀の上、令和4年12月21日午後 7時28分頃、広島市(住所省略)「時計販売買取専門店T」店舗兼Uほか2名方居宅に、宅配業者を装ってXに同居宅玄関ドアを開けさせた上、同人(当時75歳)に対し、その右足を踏みながら、その身体をあお向けに押し倒す暴行を加えて、同玄関から侵入し、その頃から同日午後7時54分頃までの間、同玄関内において、同人に対し、その口及び鼻を手で押さえ付けるなどの暴行を加え、同居宅内におい て、Y(当時49歳)に対し、その頭部をモンキーレンチ(令和6年押第3号符号1)で殴り、その顔面を拳で殴り、更にその両手首等をガムテープ及び結束バンドで縛るなどの暴行を加え、さらに、同居宅内において、U(当時81歳)に対し、その顔面を殴打するなどの暴行を加えるとともに、「金庫はどこにある。番号を教えろ。」などと言って同人を脅迫し、X、Y及びUの反抗をそれぞれ抑圧した上、 同店舗及び同居宅内において、同人ら管理の現金合計約250万円及び腕時計等約 - 2 - こにある。番号を教えろ。」などと言って同人を脅迫し、X、Y及びUの反抗をそれぞれ抑圧した上、 同店舗及び同居宅内において、同人ら管理の現金合計約250万円及び腕時計等約 - 2 -137点(時価合計約2439万1785円)を強取し、その際、前記一連の暴行により、Xに加療約2週間を要する顔面打撲及び右足打撲・捻挫の傷害を、Yに高次脳機能障害等の後遺症が見込まれる加療日数不明の意識障害を伴う脳挫傷、外傷性脳内血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血及び頭部挫創等の傷害を、Uに加療約2週間を要する顔面打撲、頸椎捻挫等の傷害を、それぞれ負わせ、〔以下 「広島事件」という。〕第2(訴因変更後の令和5年3月22日付け起訴状記載の公訴事実)金品を強奪しようと考え、c、h、i及び氏名不詳者らと共謀の上、令和5年1月19日午前11時31分頃、東京都狛江市(住所省略)A方に、宅配業者を装って玄関ドアから侵入し、その頃から同日午後1時12分頃までの間、同所において、 A(当時90歳)に対し、その両手を結束バンドで緊縛し、その背部等を足で蹴り、その腹部及び背部等を持っていたバール(令和6年押第3号符号2)で多数回殴るなどの暴行を加え、その反抗を抑圧した上、同人管理の腕時計3個等4点(時価合計約59万円)を奪い、その際、前記一連の暴行により、同人に多発肋骨骨折等の傷害を負わせ、その頃、同所において、同人を前記傷害に基づく外傷性ショックに より死亡させ、〔以下「狛江事件」という。〕第3(令和5年5月31日付け起訴状記載の公訴事実第1)i、c、j及び氏名不詳者らと共謀の上、宅配業者を装ってB方に押し入り金品を強奪する目的で、令和5年1月20日午前10時54分頃、埼玉県草加市(住所省略)Z店駐車場において、前記バール、宅配 )i、c、j及び氏名不詳者らと共謀の上、宅配業者を装ってB方に押し入り金品を強奪する目的で、令和5年1月20日午前10時54分頃、埼玉県草加市(住所省略)Z店駐車場において、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バンド等を積載 した普通乗用自動車に乗車して同所から東京都足立区(住所省略)B方付近に向けて出発し、同日午前11時18分頃から同日午前11時35分頃までの間、同人方付近において、前記バール、宅配用段ボール箱、結束バンド等を携えて同車を降車し、同人方の人の出入りの状況を確認するとともに、同人方のインターホンを押すなどして犯行の機会をうかがうなどし、もって強盗の予備をし、 第4(令和5年5月31日付け起訴状記載の公訴事実第2) - 3 -i、c、j及び氏名不詳者らと共謀の上、金品窃取の目的で、同日午後1時15分頃から同日午後1時48分頃までの間に、前記バールを用いて前記B方1階食堂南側掃き出し窓の施錠を外して侵入し、その頃、同所において、押し入れを開けるなどして物色したが、金品を発見することができなかったため、その目的を遂げなかった〔以下、第3と併せて「足立事件」という。〕。 (事実認定の補足説明)足立事件について、弁護人は、被告人がインターホンを押していない旨主張し、被告人も公判廷でその旨供述する。しかし、iが被告人の近くで、cがイヤホンを通じて、それぞれインターホンの音を聞いたと明確に証言しており、勘違いとは考え難いことに加え、cが指示役に対し、被告人がインターホンを押したことを前提 とするメッセージを送信していた状況がうかがわれること(甲130)も踏まえると、i及びcの上記証言は信用できる。他方、足立事件を中止させたいと思い、B宅が不在であれば案件がなくなると考えてインターホンを押さ ッセージを送信していた状況がうかがわれること(甲130)も踏まえると、i及びcの上記証言は信用できる。他方、足立事件を中止させたいと思い、B宅が不在であれば案件がなくなると考えてインターホンを押さなかったという被告人供述は、被告人が、B宅に到着する約35分前に、cに対し、被害品の一部を指示役等に知らせずに取得するいわゆる中抜きに関する連絡をするなど(甲129)、犯行 の直前まで積極的な態度を示していたと認められ、その後に被告人の気が変わるような事情は何らうかがわれないことからすると、不自然で信用できない。 (量刑の理由) 1 本件は、指示役らがSNSを利用して強盗の担い手を募集し、匿名性の高い統制された犯罪集団を形成した上で、約1か月の間に連続し、広域にわたって行わ れた住居侵入、強盗傷人、強盗致死、強盗予備及び窃盗未遂の事案である。 本件各犯行において、指示役らは、通信アプリのアカウント名を用いて事件ごとに犯行に参加する者を募集するなどし、犯行の発覚・解明を困難にさせる巧妙な方法で実行役等を集めた上、事前に収集した被害者らの家族構成やその資産状況、室内の間取り、現金の有無等の情報を実行役等と共有し、犯行の実行日時を 慎重に計画するなどしていた。犯行に参加する者には、犯行道具の調達等をする - 4 -サポート役、被害者に玄関を開けさせ、通報阻止等をする宅配業者役、被害者宅侵入後に家人の制圧等をする突入役等の役割分担を徹底させ、各共犯者が的確にその役割を担うことで確実に犯行を遂行させており、犯行中も、複数の指示役と実行役が通信アプリ等を用いてリアルタイムで連絡を取りながら共有された現場の情報を基に、指示役が臨機応変に詳細な指示を出すことなどもして、指示役と 実行役等が一体となって犯行に及んでいた。また、予め 役が通信アプリ等を用いてリアルタイムで連絡を取りながら共有された現場の情報を基に、指示役が臨機応変に詳細な指示を出すことなどもして、指示役と 実行役等が一体となって犯行に及んでいた。また、予め凶器を準備し、被害者に声を出させないために躊躇なく危害を加えて、反抗を抑圧するとともに現金等の在処を聞き出す方法を実行役に周知し、あえて家人がいる居宅を狙ってモンキーレンチやバールを持って押し入るなどして、狛江事件では1名が死亡し、広島事件では1名が瀕死の重傷を負うという深刻な結果が生じている。以上からすれば、 本件各犯行は、高度かつ綿密な計画と周到な準備の下、徹底した役割分担により行われ、人の生命に係わる重大な結果を連続して生じさせた非常に危険で凶悪な犯行といえる。 2 被害結果が最も重い狛江事件についてみると、被告人を含む実行役4名で居宅に押し入り、時価合計約59万円の腕時計等を強取した他、一人で在宅していた 高齢のAを結束バンドを用いて緊縛した上、地下室へ連行し、現金の在処を聞き出すために脅迫しながら、無抵抗のAの体をバールで多数回殴るなど、極めて強度の暴行を加えている。Aは、そのような暴行によって少なくとも20か所以上の肋骨骨折等の傷害を負い、外傷性ショックにより死亡したのであり、その態様は拷問ともいうべき残虐なもので、Aが感じたであろう肉体的苦痛、恐怖や絶望 感は計り知れず、遺族が被告人について極刑を望むという心情も理解できる。 次に、広島事件についてみると、実行役らは、事前に指示役から「殴る蹴るしないと報酬はありません」、「容赦なくやっちゃってください」などの指示を受けた上で、6人がかりで被害者3名に暴行を加えて傷害を負わせている。特に、被害者Yは、cからモンキーレンチで後頭部を強打されて瀕死の重傷を負い、一 」、「容赦なくやっちゃってください」などの指示を受けた上で、6人がかりで被害者3名に暴行を加えて傷害を負わせている。特に、被害者Yは、cからモンキーレンチで後頭部を強打されて瀕死の重傷を負い、一 時は意識不明の重体に陥るなどしており、現在においても高次脳機能障害を含む - 5 -多くの後遺症が残存し、介護がないと通常の生活ができない状態であるなど、生命を失いかねない重大な結果が生じており、人生の半ばにして突然にその生活を一変させられた同人の無念は想像に難くない。財産的被害も総額2600万円を超えており、息子に重傷を負わされた上、平穏な生活を奪われた両親である被害者らが厳罰を望むのは当然といえる。 最後に足立事件についてみると、これまでの強盗事件と同様の手口で、居宅において強盗をするためにバール等を準備してB宅に臨場しており、その危険性は現実的で高度なものであったといえる。危険を感じたBが予め避難して不在であったことから、強盗被害は生じていないが、バールで窓ガラスを割ってB宅に侵入し、物色行為により室内を荒らすなどしたことにより、住居の平穏が害された 結果は軽視できない。 3 本件各犯行における被告人固有の事情については、まず、狛江事件についてみると、被告人は、広島事件において重篤な結果が生じたことを知っていたのであるから、狛江事件でも同様の結果が生じ得ることを十分認識しながら参加したものといえるが、cとともに、事前にバールを準備した上、突入役を担当し、犯行 中は、iとともにAの体を持ち上げて地下室に連れて行くなどの行為もしている。 バールを持っていて凶暴な行為も厭わないcらがいる地下室へ、高齢で緊縛されたAを連れて行けば、現金等の在処を聞き出すためにAの生命・身体が危険にさらされることは容易に想像できる どの行為もしている。 バールを持っていて凶暴な行為も厭わないcらがいる地下室へ、高齢で緊縛されたAを連れて行けば、現金等の在処を聞き出すためにAの生命・身体が危険にさらされることは容易に想像できるものであるから、被告人のした行為の危険性もまた高度であったといえる。さらに、被告人は、犯行前には、当初被告人が担当 することになっていた気の進まない宅配業者役をiに変更するよう求め、これを了承させたり、指示役に対して被害者宅に現金が確実にあるのかを確認したり、指示役や他の実行役を出し抜いてより多くの利益を得るためにcと中抜きの合意をしたりした上、犯行中に奪った時計3個の利益をcと分けようとしていたことなどからすれば、被告人は、強い金銭的欲望に基づき、主体的、積極的に役割を 担いながら、他の共犯者の行為を利用して、自己の利益を増やそうとしていたと - 6 -いえる。以上からすれば、Aが死亡したことに対する被告人の責任は重大なものといえる。 この点、弁護人は、狛江事件については、被告人が指示役に脅されて参加せざるを得なかったなどと主張するが、被告人が、指示役を恐れていた可能性は否定できないものの、前記のとおり、被告人が利益獲得のために主体的、積極的に行 動していたとみられることなどからすれば、脅されてやむなく参加していたというのは実態に即していない。 また、広島事件においては、事前に指示役から、cが「モンキーレンチでジャンジャンやってくれます」などと言われており、他の共犯者が被害者に重大な傷害を負わせる可能性があることを十分認識した上で、宅配業者役を担当し、被害 者宅に侵入後は、玄関で被害者Xの鼻と口を手で押さえ付け、通報を阻止する重要な役割を担うなどして、その報酬として合計60万円を受け取っている。最も重大な傷害 た上で、宅配業者役を担当し、被害 者宅に侵入後は、玄関で被害者Xの鼻と口を手で押さえ付け、通報を阻止する重要な役割を担うなどして、その報酬として合計60万円を受け取っている。最も重大な傷害結果が生じた被害者に対する暴行に被告人は直接加担していないとはいえ、それは、徹底した役割分担の下で被告人自身の役割を全うし、他の共犯者の行為を利用して利益を得ようとした結果であり、被告人の上記行為は、犯罪を 遂行し成功させるために重要かつ不可欠であったことや、被告人がcほか1名以外の実行役と同額の報酬を得ていることなども踏まえると、実際に暴行を加えたcとの間で責任の重さに差があるとしても、それは被告人自身の責任が軽いものであることを意味せず、行為の内容から十分に責任が重いといえる被告人について、cより軽い刑罰が相当という結論が直ちに導かれるものでもないと考えられ る。 最後に、足立事件についてみると、被告人は、前日に狛江事件を起こしたにもかかわらず、性懲りもなく犯行前にcに報酬の中抜きに関する連絡をした上で、宅配業者役として参加するなど、利益を得るために積極的な態度を示していた。 4 以上のように、本件各犯行は、通信アプリを通じて形成され、統制された犯罪 集団による徹底した役割分担の下、被害者2名に対し生命に係わる重大な結果を - 7 -生じさせた、過去に類を見ない特徴的な手口、態様による極めて危険で凶悪な連続強盗等の事案であることからすれば、強盗致死を処断刑とする事案の従前の量刑傾向がそのまま当てはまるものではなく、法の定める無期懲役刑を科すことを端的に検討すべき事案といえる。そして、被告人は、生命・身体に重大な結果が生じ得るような暴行を加えることを前提とした強盗であると十分認識しながら、 主導的な共犯者と行 める無期懲役刑を科すことを端的に検討すべき事案といえる。そして、被告人は、生命・身体に重大な結果が生じ得るような暴行を加えることを前提とした強盗であると十分認識しながら、 主導的な共犯者と行動を共にし、自身の強い金銭的欲望に基づき、深刻な被害結果をもたらした一連の犯行に主体的、積極的に参加し、徹底した役割分担の下で、自己の利益が大きくなるように共犯者を利用、補充した側面もあることも踏まえると、犯情は非常に悪く、その責任は、実行役のリーダーであるcとの間に差があっても、これに次ぐもので、それ自体が重大というべきであり、被告人が、狛 江事件、広島事件において、直接的には生命・身体に対する重大な被害結果を生じさせていないからといって、この点を殊更重視することはできない。 その上で一般情状等についてみると、広島事件の被害品の一部が被害者に返還されていること、被告人に体刑前科はなく、公判廷において反省の言葉を述べていること、広島事件の被害者らに極めて少額ではあるが5万円を支払ったことな ど、被告人に有利な事情を最大限考慮しても、酌量減軽すべきほどの事由を見いだすことはできないから、主文のとおり、無期懲役刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑無期懲役、主文同旨の没収)令和6年12月16日 東京地方裁判所立川支部刑事第2部 裁判長裁判官岡田健彦 裁判官田中優奈 - 8 - 裁判官山 﨑 次矩 田中優奈 裁判官山﨑次矩
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