令和4(ワ)1625 株主権行使に関する財産上の利益供与に係る返還請求事件、同共同訴訟参加事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月23日 京都地方裁判所
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判決文本文11,332 文字)

- 1 - 主文 1 被告は、原告HDに対し、3億1410万円及び別紙1-1の「請求額」欄記載の各金額に対する同別紙「損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで同別紙「損害金の割合」欄に記載の各割合による金員を支払え。 2 被告は、原告HDに対し、9215万4850円及び別紙1-2の「請求 額」欄記載の各金額に対する同別紙「損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで同別紙「損害金の割合」欄に記載の各割合による金員を支払え。 3 被告は、原告KIPに対し、6451万円及び別紙2の「請求額」欄記載の各金額に対する同別紙「損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで同別紙「損害金の割合」欄に記載の各割合による金員を支払え。 4 被告は、原告プロパティーズに対し、1480万円及び別紙3-1の「請求額」欄記載の各金額に対する同別紙「損害金起算日」欄記載の各日から支払済みまで同別紙「損害金の割合」欄に記載の各割合による金員を支払え。 5 被告は、原告プロパティーズに対し、2540万円及び別紙3-2の「請求額」欄記載の各金額に対する同別紙「損害金起算日」欄記載の各日から支払済 みまで同別紙「損害金の割合」欄に記載の各割合による金員を支払え。 6 訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は被告の負担とする。 7 この判決は、第1項ないし第5項に限り、仮に執行することができる。ただし、被告が原告HDに対し3億2000万円の担保を供するときは第1項及び第2項の仮執行を、被告が原告KIPに対し5000万円の担保を供するとき は第3項の仮執行を、被告が原告プロパティーズに対し3000万円の担保を供するときは第4項及び第5項の仮執行を、それぞれ免れることができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第 は第3項の仮執行を、被告が原告プロパティーズに対し3000万円の担保を供するときは第4項及び第5項の仮執行を、それぞれ免れることができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨 第2 事案の概要- 2 -原告らは、各原告らの相談役で原告HDの株主でもある被告に対して相談役報酬の支払をしていた。また、原告HDは、被告の私邸と同一敷地内にある原告HDの施設に配置された管理人の業務費用(以下「管理人費用」という。)の支払をしていた。 本件は、原告らが、上記相談役報酬及び管理人費用の支払がいずれも被告の 株主の権利の行使に関する財産上の利益の供与(以下、単に「利益供与」という。)に当たると主張して、会社法120条3項前段の返還請求権(ただし消滅時効にかからない平成24年5月25日以降に発生したもの)に基づき、被告に対し、①原告HDにおいては平成24年5月分から最後の支払月である令和3年2月分まで(以下「本件請求期間」という。)の相談役報酬相当額3億 1410万円及び平成24年6月から令和元年11月までの管理人費用相当額9215万4850円、②原告HDの子会社である原告KIPにおいては本件請求期間の相談役報酬相当額6451万円、③原告HDの子会社である原告プロパティーズにおいては、本件請求期間の相談役報酬相当額4020万円(合併した会社からの報酬支払分を含む。)の各支払を求める事案である。また、 原告らは、各支払日の翌日からの法定利率(令和2年3月以前のものについては平成29年法律第44号による改正前の民法所定の利率。)による遅延損害金の支払を併せて求めている。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実、後掲の証拠(枝番号を含む)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等 所定の利率。)による遅延損害金の支払を併せて求めている。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実、後掲の証拠(枝番号を含む)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 当事者等ア原告HDは、京都新聞グループ各社の管理を行う会社であり、原告KIP及び原告プロパティーズは、原告HDの100%子会社である(甲4・15~18頁)。 株式会社京都新聞社は、日刊紙京都新聞の編集及び京都新聞グループ 各社の管理を行っていたが、平成26年4月、編集部門を新設会社に移- 3 -転させ、商号を現在の株式会社京都新聞ホールディングスに変更した(以下では、商号変更前後を問わず「原告HD」ということがあり、商号変更前の原告HDを「京都新聞社(原告HD)」ということがある。)。(甲4・15頁)原告プロパティーズは、令和2年4月、原告HDの子会社であった株 式会社京都トラスト(以下「トラスト」という。)を吸収合併した(この際に商号が現在のものに変更されたが、商号変更の前後を問わず「原告プロパティーズ」という。)。(甲4・18頁)イ被告は、京都新聞社(原告HD)の代表取締役を長く務めたBの子であるCの妻である。昭和58年のCの死後、被告は、京都新聞社(原告H D)の発行株式総数の25%以上の株式について、株主の権利を行使することができた。(甲4・20、22頁)ウ原告参加人は、原告HDの株主であり、原告HDの請求について共同訴訟参加をし、その余の原告らの請求について補助参加をした。 ⑵ 被告に対する相談役報酬の支払 原告ら及びトラストは、被告に対して、本件請求期間の相談役報酬として、別紙の「支払日」欄記載の日に「請求額」欄記載の金額の支払をした。 その概要は次のとおりである。(甲6) 相談役報酬の支払 原告ら及びトラストは、被告に対して、本件請求期間の相談役報酬として、別紙の「支払日」欄記載の日に「請求額」欄記載の金額の支払をした。 その概要は次のとおりである。(甲6)ア原告HD(別紙1-1)月額報酬合計2億8620万円(毎月270万円)、賞与合計279 0万円(年1回310万円)、総合計3億1410万円イ原告KIP(別紙2)月額報酬合計6118万円(毎月55万円~61万円)、賞与合計333万円(年1回33万円~41万円)、総合計6451万円ウ原告プロパティーズ(別紙3-1) 月額報酬合計1300万円(毎月10万円、令和2年4月から月額3- 4 -0万円)、賞与合計180万円(不定期に40万円又は100万円)、総合計1480万円エトラスト(別紙3-2)月額報酬合計1900万円(毎月20万円)、賞与合計640万円(年1回80万円)、総合計2540万円 ⑶ a 山荘の管理人費用の支払ア Bは、京都市左京区a 所在の広大な土地に私邸を所有していたところ、昭和44年、その敷地の一角に京都新聞社(原告HD)の迎賓館としてa 山荘が建設された。被告は、昭和59年に上記敷地内に私邸を建て、令和元年11月まで居住していた。(甲4・51、58頁)。 イ a 山荘においては、平成2年4月から管理人による24時間管理体制がとられるようになった。原告HDは、平成24年6月から令和元年11月まで、管理人費用として、別紙1-2の「支払日」欄記載の日に「請求額」欄記載の金額(ただし、平成24年6月から8月までは毎月101万8500円。)の支払をした。(甲4・53~57頁,5、33) 2 争点に関する当事者の主張 支払日」欄記載の日に「請求額」欄記載の金額(ただし、平成24年6月から8月までは毎月101万8500円。)の支払をした。(甲4・53~57頁,5、33) 2 争点に関する当事者の主張⑴ 相談役報酬の支払が利益供与に当たるか(争点1)(原告らの主張)ア被告は、昭和59年から、京都新聞社(原告HD)の大株主として、役員らに対して辞任を迫っていたところ、昭和60年6月、被告と京都新聞 社(原告HD)の当時の代表取締役Dとの間で、被告が経営に口を出さない代わりに、京都新聞社(原告HD)及びその子会社の相談役報酬名目で被告に対して金銭を支払う旨の合意(以下「本件合意」という。)がされた。 したがって、本件合意に基づく原告らの被告に対する相談役報酬の支 払は利益供与に当たる。 - 5 -イ被告の相談役としての業務内容は、自宅等で京都新聞グループの業績等の報告を受けることのみであった。他方、被告に支払われた相談役報酬は、原告HDの代表取締役報酬よりも高額で、被告の相談役としての業務から原告らが得た利益は、相談役報酬の額に比して著しく少ないものであった。 したがって、原告らが被告に対して相談役報酬を支払ったことは利益供与に当たることが推定される。 (被告の主張)ア原告らは、A家を尊重する趣旨で被告に相談役を委嘱したのであり、被告の株主権の行使をおそれたためではない。相談役の報酬は、役員ではな い名誉職である社主や社友に対する報酬などと同じ慣行により支給されてきたものであり、被告に対する相談役報酬の支払は利益供与に当たらない。 本件合意は、京都新聞社(原告HD)を標的にしていた反社会的勢力から被告を守るという合意であり、利益供与の合意ではない。 イ被告の受けた厚 談役報酬の支払は利益供与に当たらない。 本件合意は、京都新聞社(原告HD)を標的にしていた反社会的勢力から被告を守るという合意であり、利益供与の合意ではない。 イ被告の受けた厚遇は、A家の尊重という趣旨からされたものであり、無償の利益供与ではない。 ⑵ a 山荘の管理人費用の支払が利益供与に当たるか(争点2)(原告HDの主張)原告HDには、a 山荘を利用しなくなった平成10年以降、夜間に管理人 を配置する必要がなく、a 山荘の夜間の管理人費用(半日分)は被告の私邸の管理のための費用であった。また、京都新聞社(原告HD)の常務会において迎賓館の解体が議論された平成24年8月以降は、管理人を配置する必要がなく、a 山荘の管理人費用全額が被告の私邸の管理のための費用であった。 したがって、別紙1-2の「請求額」欄記載の管理人費用の支払は、相談- 6 -役報酬と同様に、被告に対する利益供与に当たる。 (被告の主張)a 山荘の管理業務の委託契約は、原告HDが所有するa 山荘の管理を主たる目的とするものであり、被告のためにされた契約ではない。 被告は、管理人に日常生活上の些細な事柄を依頼することがあったが、本 来の管理の延長として頼みごとに過ぎない。 ⑶ 被告は悪意の受益者に当たるか(争点3)(原告らの主張)被告は、相談役報酬が本件合意に基づいて支払われていたこと、自らの業務が相談役報酬に見合うものではないことを認識していた。また、被告は、 a 山荘の管理費用が私邸の管理のための費用であることを認識していた。したがって、被告は利益供与について悪意であった。 (被告の主張)被告は、相談役報酬が正当に支払われていたと認識していたし、a 山荘の管理費用はa 山荘の管理 費用であることを認識していた。したがって、被告は利益供与について悪意であった。 (被告の主張)被告は、相談役報酬が正当に支払われていたと認識していたし、a 山荘の管理費用はa 山荘の管理のために支出されていたと認識していた。したが って、相談役報酬の支払及び上記管理費用の支出が利益供与に当たるとしても、被告は利益供与について善意であった。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲証拠(枝番号を含む)、当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨に よれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告に対する相談役の委嘱に至る経緯、相談役報酬の支払ア Bは、昭和21年に京都新聞社(原告HD)の代表取締役社長に就任し、京都新聞を有力地方紙の一つに育て、地方紙経営者で初の日本新聞協会会長を務めるなど新聞業界での名を高め、昭和56年に退任した。この ような経緯から、Bは京都新聞社(原告HD)の象徴的な存在であり、約- 7 -30%の株式を有するA家は「オーナー家」と称されていた。なお、Bは、代表取締役退任後まもなく入院し、退院することのないまま平成3年に死亡した。(甲4・7、20頁、弁論の全趣旨)イ京都新聞社(原告HD)においては、株式の譲渡に取締役会の承認が必要とされており、株主は、A家のほか、取引先やOB株主等の安定株主 で、株主総会において議案に反対意見が出されることはほとんどなかった(甲1、4・68頁)。 ウ Bの跡を継いで京都新聞社(原告HD)の代表取締役社長に就任したCは昭和58年1月に急逝した。Cの死後、被告は、被告個人名義の株式、株式会社文化院(A家の株式を保有する目的で設立された会社)名義の株 式及びE(被告の子で当時未成年)名義の株式を併せて京都新聞社(原告HD)の発行株式総 の死後、被告は、被告個人名義の株式、株式会社文化院(A家の株式を保有する目的で設立された会社)名義の株 式及びE(被告の子で当時未成年)名義の株式を併せて京都新聞社(原告HD)の発行株式総数の25%以上の株式について、株主の権利を行使することができようになった。(甲4・20、22頁、乙37)エ昭和58年2月、京都新聞社(原告HD)の代表取締役社長に代表取締役専務であったDが就任した。被告は、Cが死亡するまで専業主婦であ り、同社の業務やその他の企業経営に関与したことはなかったが、同年3月、同社の取締役に就任した。被告は、取締役(一時期は代表取締役)として、Dから相談や報告を受けていたが、具体的な業務に携わることはなかった。(甲4・27、30頁、9~11、被告19頁)オ被告は、昭和59年2月、京都新聞社(原告HD)の取締役会におい て、オーナー家が責任を持つ体制を作るためとして、役員全員の辞任を求め、役員全員から提出された辞表を預かった(甲12、13、15)。 カ被告とDは、昭和60年6月3日、F弁護士及びG弁護士立会いの下、下記のとおりの内容の確約書と題する書面(以下「本件確約書」という。)を作成した(甲42)。 記- 8 -株式会社京都新聞社代表取締役会長被告(以下「甲」という)と同社代表取締役社長D(以下「乙」という)は、新聞社およびその関連企業グループの全役員の結束を図り、各社の経営の充実と発展を期すため、互いの信頼のもとに次のとおり確約する。 一甲は、新聞社の約二七パーセントの株式を保有するA家を、社主Bと ともに代表する立場から、新聞事業の公益性を深く認識して、節度あるオーナーとして新聞社における「資本と経営の分離」の理念を実現するよう努力し、乙が第 パーセントの株式を保有するA家を、社主Bと ともに代表する立場から、新聞事業の公益性を深く認識して、節度あるオーナーとして新聞社における「資本と経営の分離」の理念を実現するよう努力し、乙が第二項の確約にそって誠実にその職責を全うすることを前提にして、社会通念上妥当と認められる期間、乙の新聞社代表取締役社長たるの地位を保証し、かつ、同役職退任後において も、乙の体面を保つにたりる処遇をするように配慮する。 二乙は、新聞社および関連企業グループの経営、人事の全般にわたり、甲の意思を体して、その職責を果たし、新聞社の経営の充実と発展に寄与するとともに、乙自身はもとより新聞社及び関連企業グループの役員を指導して、新聞社定款に定める甲の地位、権限を支持、尊重し て行動せしめ、A家のオーナーたる地位及び甲の地位、権限に対抗する新聞社内外の勢力ないし動きがあるときはこれらを抑制・排除するため全力を尽くさせるよう努力する。 キ昭和62年6月、被告は京都新聞社(原告HD)の取締役を退任し、相談役に委嘱された。京都新聞社(原告HD)の定款には「取締役会の決議 により」「相談役を委嘱することができる」旨の規定があるが、報酬についての定めはなく、報酬額の決定はDに一任された。また、被告は、原告KIP、原告プロパティーズ、トラストほか京都新聞社(原告HD)の子会社の相談役に委嘱され、各社から報酬が支払われるようになった。(甲4・31、35~41頁、乙4) Dは、平成15年6月まで代表取締役社長を務めたが、その後も、被- 9 -告に対する相談役報酬は同様の水準で支払われていた(甲4・14頁)。 ク被告は、京都新聞社(原告HD)及びその子会社から併せて、昭和63年度から平成5年度までは、1年当たり約50 - 9 -告に対する相談役報酬は同様の水準で支払われていた(甲4・14頁)。 ク被告は、京都新聞社(原告HD)及びその子会社から併せて、昭和63年度から平成5年度までは、1年当たり約5000万円ないし約6200万円の報酬を、平成6年度から約4100万円ないし約4800万円の報 酬を受け取っていた。上記の額は、平成12年度を除き、被告の取締役報酬であった1年当たり約2100万円ないし約4200万円より多額であった。また、被告の報酬は代表取締役社長であるDの報酬より多額のこともあった。(甲4・32頁、6、25~28、乙9~11、34、36)ケ京都新聞社(原告HD)は、平成26年に大阪国税局からの指摘を受け て、被告の相談役報酬のうち、大阪国税局の妥当とする報酬年額1560万円を超える部分が過大であったとして修正申告をしたが、その後も被告の相談役報酬を減額することはなく、被告の相談役報酬のうち1560万円を超える部分は損金に算入せずに申告していた(甲4・47、48頁)。 コ令和2年になって原告HDの役員会で被告に対する相談役報酬の適否が問題とされるようになり、令和3年3月、被告は、原告HD及びその子会社から相談役の委嘱を解かれた(甲4・48、49頁)。 ⑵ 被告の相談役としての業務内容ア被告は、相談役に委嘱された後、原告HDの代表取締役社長から、主に 四半期ごとに、京都新聞グループの業績等の報告を受けており、出社して業務に従事したことはなかった。なお、被告は、平成23年頃から、取締役会議事録を確認した旨に署名又は押印するようになったが、被告への相談役報酬の支払に疑問を呈する税務当局への対処のためであった。(甲4・34、44、45頁、7)。 イ各社の経営陣の方針等に対して、被告が異 た旨に署名又は押印するようになったが、被告への相談役報酬の支払に疑問を呈する税務当局への対処のためであった。(甲4・34、44、45頁、7)。 イ各社の経営陣の方針等に対して、被告が異を唱えることはなく、被告の- 10 -相談役としての助言が、各社の経営会議、常務会、取締役会で諮られることはなかった(乙33)。 ⑶ a 山荘における管理人の稼働状況及びa 山荘の利用状況ア京都新聞社(原告HD)は、昭和61年4月に管理会社に対して、a 山荘の管理業務を委託するようになり、平成2年4月から管理人による24 時間管理体制がとられるようになった。なお、a 山荘の維持管理の費用は別途支払われていた。(甲4・54~57頁)イ a 山荘と被告の私邸との間には塀や柵等、敷地を区分するものはなく、その敷地の出入口は迎賓館近くに1か所あるだけで、出入口には横幅数mの金属製の門扉が設けられており、その開閉に相応の力が必要であった。 そのため、被告やその家族が出入りする際には管理人がその都度門扉を開閉しており、開閉が夜間に及ぶことがしばしばあった。また、被告の私邸は敷地の奥まった部分にあり、門扉までの距離があったため、管理人は、被告やその家族への郵便物や宅配便の受領・管理、来訪者への対応をしていた。上記の業務のほか、管理人は、旧B宅の除湿、敷地内の害虫の駆 除、被告の私邸及び旧B宅周辺の見回り、雪かき、振込みなどの被告のための業務を行っていた。(甲4・59頁、29、34、乙25)ウ京都新聞社(原告HD)は、a 山荘において行事や懇談会等を開催していたが、平成元年以降の利用頻度は年1回か2回程度となり、平成10年頃からa 山荘を利用することはなくなった(甲4・9頁)。 エ平成24年8月、京都新聞社(原告 て行事や懇談会等を開催していたが、平成元年以降の利用頻度は年1回か2回程度となり、平成10年頃からa 山荘を利用することはなくなった(甲4・9頁)。 エ平成24年8月、京都新聞社(原告HD)の常務会において、a 山荘の迎賓館について、老朽化が進んでおり、利用状況に鑑みて、迎賓館を解体することなどについて議論がされた(甲31)。 オ原告HDは、平成26年と平成29年に、大阪国税局からa 山荘における管理人配置の必要性を疑問視されたため、管理人業務の対象を原告H Dの建物及び敷地の範囲内に限定する契約内容の変更を管理会社との間で- 11 -行ったが、実際の管理人業務に変更はなかった(甲4・75頁)。 カ a 山荘においては、令和2年6月には管理人の夜間配置が廃止され、令和4年1月からは管理人の配置が廃止され、警備会社による警備がされるようになったが、a 山荘の管理に特段の支障は生じていない(甲4・56頁)。 2 争点に対する判断⑴ 相談役報酬の支払が利益供与に当たるか(争点1)下記アのとおり、本件合意の成立が認められ、下記イのとおり、相談役報酬の支払が利益供与に当たることが推定され、その推定を覆す事情は見当たらないので、いずれの点からも、相談役報酬の支払が利益供与に当たること が認められる。 ア本件合意の成否(ア) 被告は、大株主であったものの、その一存で役員を解任することができるだけの株式を有していたわけではないが、京都新聞社(原告HD)において格別の存在感を持つオーナー家を代表する被告が、それ まで混乱なく運営されてきた株主総会において、取締役会提出の議案に反対票を投じたり、代表取締役の経営方針に異議を述べたりすれば、Dら役員が京都新聞グループの円滑な経営を 代表する被告が、それ まで混乱なく運営されてきた株主総会において、取締役会提出の議案に反対票を投じたり、代表取締役の経営方針に異議を述べたりすれば、Dら役員が京都新聞グループの円滑な経営を行うことが相当に困難な状況が生じることが予想された状況にあったといえる。昭和59年に役員らが被告に言われるがままに辞表を提出したのは、上記のよ うな事態を恐れたからであったと推認することができる。また、被告が代表取締役社長の地位を保証するだけの力を持っていることを、被告もDも認識していたからこそ、被告が本件確約書においてDの代表取締役社長の地位を保証したと認められる。 そして、被告は、京都新聞グループの経営に関する経験も知見も持っ ていなかったのであるから、京都新聞社(原告HD)及びその子会社- 12 -には、巨額の報酬を支払って被告に対して相談役を委嘱する必要はなく、被告に対する巨額の報酬の支払は被告の求めによるものとしか考えられない。 (イ) 本件確約書の第一項は、被告が、Dが第二項の確約を守ることを前提にして、経営に口を出さないこととDの代表取締役社長としての地 位を保証することが内容とされている。 第二項の文言は、抽象的ではあるが、前記(ア)のとおり、本件確約書の作成前、被告がDら役員に対して大株主としての力を誇示したこと、Dら役員は被告に逆らうことができない状況にあったこと、認定事実(1)ク及び前記(ア)のとおり、本件確約書の作成後に、被告の求め に応じて巨額の報酬の支払が開始されたことからすると、第二項の「乙自身はもとより新聞社及び関連企業グループの役員を指導して、新聞社定款に定める甲の地位、権限を支持、尊重して行動せしめ」との文言は、被告に対して巨額の相談役報酬を されたことからすると、第二項の「乙自身はもとより新聞社及び関連企業グループの役員を指導して、新聞社定款に定める甲の地位、権限を支持、尊重して行動せしめ」との文言は、被告に対して巨額の相談役報酬を支払うことを意味していたと認められる。 (ウ) したがって、原告らの被告に対する相談役報酬の支払は、被告の株主権の不行使の見返りとしてされたものであり、利益供与に当たる。 イ会社法120条2項後段による推定被告はほとんど職務を行っていなかったにもかかわらず、高額な報酬を受領しており、被告が受けた利益は大きい一方、原告らが受けた利益はわずか であった。したがって、原告らが受けた利益は被告に供与した財産上の利益に比して著しく少ないといえるため、会社法120条2項後段により、原告らの被告に対する相談役報酬の支払は利益供与と推定される。 被告は、A家を尊重する趣旨からの厚遇であり、無償の又はそれと同視できるような利益供与ではないと主張するが、被告の相談役報酬はA家に対す る敬意だけでは説明がつかないほど多額であり(現に税務当局に説明するこ- 13 -とができなかった。)、被告の主張は採用することができない。 そして、その他に推定を覆す事情は見当たらないので、原告らの被告に対する相談役報酬の支払は利益供与に当たる。 ⑵ a 山荘の管理人費用の支払が利益供与に当たるか(争点2)ア a 山荘が京都新聞社(原告HD)の行事等に使用されなくなった平成1 0年以降は、社用で訪れる者がいなくなったのであるから、a 山荘の管理のために、迎賓館やその庭園の維持管理のための費用に加えて、多額の費用を支出してまで管理人を24時間体制で配置する必要性は乏しかったといえる。少なくとも、夜間に管理人を配置する必要はなかった。そ 理のために、迎賓館やその庭園の維持管理のための費用に加えて、多額の費用を支出してまで管理人を24時間体制で配置する必要性は乏しかったといえる。少なくとも、夜間に管理人を配置する必要はなかった。そして、京都新聞社(原告HD)の常務会で迎賓館の解体が議論された平成24年 8月以降は、a 山荘が社用で利用される見込みはなくなったのであるから、管理人配置の必要は全くなくなったというべきである。他方、被告にとって、私邸において快適で安全な日常生活を送る上で、敷地内に管理人が24時間体制で配置される必要性は非常に高かった(認定事実(3)イ)。 そうすると、a 山荘に24時間体制で配置されていた管理人は、実質的には被告の日常生活の世話をするために配置されていたと認められ、管理人費用は、被告のために支出されていたと認められる。 イ京都新聞社(原告HD)によるa 山荘の管理会社への管理委託が本件合意後に開始されていること、原告HDは、大阪国税局からの指摘を受け ても管理人費用の支払をやめておらず、相談役報酬の支払と同様の対応をとっていることからすると、管理人費用の支払は、本件合意に基づきされたと認められる。 ウしたがって、平成24年9月以降の管理人費用全額と同年8月までの管理人費用の半額(夜間の配置分)の支払は、被告に対する利益供与に当た る。 - 14 -⑶ 被告は悪意の受益者に当たるか(争点3)相談役報酬の支払も管理人費用の支払も本件合意に基づいてされたのであるから、被告は悪意の受益者に当たる。 3 結論よって、原告らの請求は、いずれも理由があるからこれらを認容し、主 文のとおり判決する。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官 主文 よって、原告らの請求は、いずれも理由があるからこれらを認容し、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官 松山昇平 裁判官 田中いゑ奈 裁判官 山根青葉

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