令和4(行ク)9 執行停止申立事件

裁判年月日・裁判所
令和4年11月24日 津地方裁判所
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判決文本文4,848 文字)

主文 1 処分行政庁が令和4年11月1日付けで申立人に対してした生活保護停止決定は、本案事件の第1審判決の言渡し後60日が経過するまでその効力を停止する。 2 申立費用は相手方の負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 生活保護法による保護を受けていた申立人は、申立人が保有する自動車(以下 「本件自動車」という。)の処分に係る見積書につき、鈴鹿市社会福祉事務所への提出を求めるという同法27条に基づく指導又は指示(以下「本件指導」という。)に従う義務に違反したことを理由として、令和4年11月1日付けで処分行政庁から上記保護を停止する決定(以下「本件停止処分」という。)を受けたため、同処分が違法であるとして、その取消し等を求める訴え(本案事件)を提起すると ともに、同処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして、行政事件訴訟法25条2項に基づき、本案事件の第1審判決の言渡し後60日が経過するまで、同処分の効力の停止を求める事案である。 2 前提事実⑴ 申立人は、現在、鈴鹿市に単身で居住する女性(昭和▲年▲月▲日生)であ るが、頚椎症性脊髄症を発症し、四肢体幹機能障害を患い、平成22年8月12日付けで、身体障害者手帳1級が交付された。(疎甲A1)⑵ 申立人は、同居していた長男が申立人を経済的に支援できなくなったことから、令和元年7月8日、生活保護を申請し、処分行政庁は、同月23日付けで、申立人に対する保護の開始を決定した。このときの生活保護の支給額は、生活 扶助として、5万9220円であった。(疎甲A25、疎乙1) ⑶ 申立人は、上記⑵の生活保護開始決定時において、自動車1台(初度登 を決定した。このときの生活保護の支給額は、生活 扶助として、5万9220円であった。(疎甲A25、疎乙1) ⑶ 申立人は、上記⑵の生活保護開始決定時において、自動車1台(初度登録年月平成15年8月)(本件自動車)を保有しており、令和元年7月25日、処分行政庁に対して、本件自動車の使用を認めてほしい旨の保護申請書を提出した。 (疎甲A11、25、疎乙3の1)⑷ 処分行政庁は、申立人に対し、令和元年7月25日、本件自動車の保有の可 否の検討に当たって必要であるとして、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づき、福祉有償運送を利用するための障害支援区分認定の申請手続をするよう求めた。しかし、申立人は同手続をしなかったことから、処分行政庁は、同年10月30日付けで、同手続をするように生活保護法27条1項に基づき指導をした。(疎甲A2、25) ⑸ 申立人は、令和元年11月13日、上記⑷の指導に従い障害者支援区分認定の申請手続を行い、処分行政庁は、同年12月19日、同区分につき、区分1と認定した。(疎甲A3)⑹ 処分行政庁は、本件自動車の保有及び使用を認めず、申立人に対し、福祉有償運送利用のための手続を行うよう指導することとし、令和2年1月20日付 けで、上記⑶の申立人の申請を却下した。これに対し、申立人は、同年4月1日付けで三重県知事に審査請求をしたが、令和3年3月25日付け裁決により、審査請求の対象である処分に当たらないとの理由で却下された。(疎甲A21、22、25、疎乙3の2)⑺ 処分行政庁は、申立人に対し、福祉有償運送利用の利用手続をするよう促し たが、申立人は同手続をしなかったことから、令和2年3月31日付けで、同手続をするように生活保護法27条 の2)⑺ 処分行政庁は、申立人に対し、福祉有償運送利用の利用手続をするよう促し たが、申立人は同手続をしなかったことから、令和2年3月31日付けで、同手続をするように生活保護法27条1項に基づき指導をした。(疎甲A22、25)⑻ 処分行政庁と申立人との間で、その後も本件自動車の保有の可否について検討等が行われたが、処分行政庁は、令和4年8月4日、鈴鹿市社会福祉事務所 におけるケース検討会議の結果、本件自動車の保有を認めないこととし、同月 18日頃、申立人にその旨を伝え、申立人が、以前に提出した平成30年12月12日付けの本件自動車の処分に係る見積書(処分費用として1万5226円の支払を要するというもの)とは別に、2社以上分の見積書を提出するように口頭で指導した。(疎甲A4、10、25)⑼ 申立人が、上記⑻の指導に従わなかったことから、処分行政庁は、令和4年 9月9日付けで、申立人に対し、「令和4年9月26日までに、以前に提出してもらっているものとは異なる自動車の処分に係る見積書を2社以上分福祉事務所に提出すること」との生活保護法27条1項に基づく指導(本件指導)をした。(疎甲A4、25)⑽ 申立人は、本件自動車の処分に係る見積書につき、処分行政庁に対し、代理 人弁護士に任せているため、自分では準備しておらず、する予定もないと伝え、本件指導に従わなかったことから、処分行政庁は、令和4年10月4日付けで、申立人に対し、行う予定の処分を生活保護の停止とし、その弁明の機会の付与として、同月27日に聴聞会を行うと通知した。(疎甲A5、25)⑾ 申立人代理人は、令和4年10月24日到達の通知書により、処分行政庁に 対し、上記⑽の生活保護停止の予定に対して抗議するとともに、聴聞 7日に聴聞会を行うと通知した。(疎甲A5、25)⑾ 申立人代理人は、令和4年10月24日到達の通知書により、処分行政庁に 対し、上記⑽の生活保護停止の予定に対して抗議するとともに、聴聞会の日程の再調整を求めた。(疎甲A6の1・2)⑿ 処分行政庁は、令和4年10月25日付けで、冬季加算を理由として申立人の保護の変更を行った。変更後の生活保護の支給額は、8万2534円(生活扶助4万9134円、住宅扶助3万3400円)であった。(疎甲A7) ⒀ 申立人が上記⑽の聴聞会を欠席したため、処分行政庁は、申立人が本件指導に従わなかったことを理由として、令和4年11月1日付けで、申立人の生活保護(生活扶助、住宅扶助、介護扶助、医療扶助)を停止する処分(本件停止処分)をした。(疎甲A8の1、疎乙12)⒁ 申立人の普通預金口座の残高は、令和4年10月31日時点で2万1687 円、同年11月4日時点で3万4687円である。(疎甲A27) 3 当事者の主張申立人の主張は、別紙「執行停止申立書」(写し)記載のとおりであり、相手方の主張は、別紙「答弁書」及び「答弁書の訂正書」(いずれも写し)記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 重大な損害を避けるため緊急の必要があるか(行政事件訴訟法25条2項本文)⑴ 前提事実⑴、⑵、⒀及び⒁及び疎明資料(疎甲A25、疎乙6)によれば、以下のとおり認められる。申立人には、特段の収入や資産はなく、かつ生活保護に至った経緯からすれば、継続的な援助を期待し得る扶養義務者等も見当たらない。また、申立人が患っている障害の性質及び程度によれば、通院が必要 であることは明らかで、少なくとも月に1、2回程度の通院が必要であり、加えて、生活保護とし 待し得る扶養義務者等も見当たらない。また、申立人が患っている障害の性質及び程度によれば、通院が必要 であることは明らかで、少なくとも月に1、2回程度の通院が必要であり、加えて、生活保護としての支給額が本件停止処分の時点で8万2534円であり、普通預金口座の残高が3万4687円であることからすれば、申立人にとって、生活保護による生活扶助、住宅扶助及び医療扶助等は健康で文化的な最低限度の生活を維持する上で必要不可欠なものということができる。 ⑵ したがって、申立人は、本件停止処分により、健康で文化的な最低限度の生活を直ちに維持できなくなることは明らかであるから、本件停止処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるということができる。 2 執行停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか(同法25条4項前段) 本件において、本件停止処分の効力を停止することによって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとの事情は、一件記録を精査しても見当たらない。 3 本案事件について理由がないとみえるか(同法25条4項後段)⑴ 生活保護法によると、保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができ(同法27 条1項)、被保護者はこれに従わなければならない(同法62条1項)。また、 保護の実施機関は、被保護者が上記指導又は指示に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止(以下「保護停止処分等」という。)をすることができる(同条3項)。 もっとも、保護の実施機関による指導又は指示は、被保護者の意に反して強制し得るものではなく、被保護者の自由を尊重し、必要最小限度に止めなけれ ばならない(同法27条2、3項)か 項)。 もっとも、保護の実施機関による指導又は指示は、被保護者の意に反して強制し得るものではなく、被保護者の自由を尊重し、必要最小限度に止めなけれ ばならない(同法27条2、3項)から、これを逸脱してされた場合には、上記指導又は指示が違法無効となる余地があり、その場合には、被保護者がこれに違反した場合であっても、保護停止処分等をすることは許されないと解すべきである。また、仮に、被保護者が、上記指導又は指示に違反したとしても、同法の趣旨等に照らし、保護停止処分等を被保護者に課すことが合理性等を欠 く場合には、裁量権を逸脱又は濫用するものとして違法となるというべきである。 ⑵ 相手方は、申立人の本件自動車の保有を認めなかった理由は、厚生事務次官通知(昭和36年厚生省発社第123号「生活保護法による保護の実施要領について」)第3「資産の活用」(疎乙4)及び厚生省社会援護局保護課長通知(昭 和38年4月1日)第3「資産の活用」問第3の12答1(疎乙5)に該当すると認めるに足りる証拠がなかったことを理由とするものであって、本案について理由があるとみえるとはいえないと主張する。 しかし、相手方が上記各通知に従って判断したとしても、通達等の合理性及び解釈の問題があるから、相手方の主張を踏まえても、直ちに本案事件につい て理由がないとはいえない。また、仮に申立人が本件自動車の保有を認められないとしても、処分行政庁が、申立人に対して、本件自動車の処分に係る見積書の追加提出を求めるとの本件指導への違反を理由に本件停止処分をしたことに合理性が認められるかについては、審理が尽くされていない現時点において明らかであるとはいえない。 したがって、本件では、本案事件について理由がないとはいえない。 たことに合理性が認められるかについては、審理が尽くされていない現時点において明らかであるとはいえない。 したがって、本件では、本案事件について理由がないとはいえない。 4 結論以上によれば、本件申立ては理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり決定する。なお、本案事件の判決が第1審で確定しなかった場合には、第1審の判決を踏まえ、改めて本件停止処分の効力を停止すべき要件があるかどうかを判断するのが相当であるから、本案事件の第1審判決の言渡し後60日を 経過するまでの間に限り、本件停止処分の効力を停止すべきである。 令和4年11月24日津地方裁判所民事部 裁判長裁判官竹内浩史 裁判官芹澤美知太郎 裁判官山 﨑 次矩 ※別紙「執行停止申立書(写し)、答弁書(写し)及び答弁書の訂正書(写し)」の掲載省略

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