平成18年10月27日判決言渡平成16年第8421号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は、原告に対し、2億1019万1188円及びこれに対する平成6年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 原告は、平成5年12月24日、意図しないで口元がゆがむようになり、顔面に麻痺が出る症状を自覚したことから、Y大学附属A病院を受診し、顔面神経麻痺と診断され、ステロイドの点滴治療がされることとなった。ところが、原告に構語障害、歩行障害及び右下肢の運動障害が現れたことから、脳梗塞などが疑われ、同病院に入院することとなり、放射線治療や検査が行われたが、最終的には平成6年2月下旬になって、多発性硬化症であると診断された。原告の多発性硬化症はその後寛解し、同年4月に退院したが、再発し、左手足と目の視界半分を除いて生活機能が全て失われた状態となっている。 このことについて、原告は、原告が上記の状態に至ったのは、同病院の担当医師が原告に対して多発性硬化症との診断を下す時期が遅延した過失や、ステロイド剤の投与量を誤った過失、原告に多発性硬化症が再発した際の治療が不適切であった過失によるものであるとして、上記病院を設置経営する被告に対 し、診療契約上の債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償及びこれに対する障害固定日である平成6年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( )ア原告は、昭和50年3月16日生まれの女性であり、 払を求めた。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( )ア原告は、昭和50年3月16日生まれの女性であり、千葉家庭裁判所松戸支部が平成17年11月21日付けでした後見開始及び成年後見人選任の審判により、原告の実父であるB(以下「B」という)が同女の成年。 後見人となった(争いのない事実、記録上明らかな事実。 )イ被告は、Y大学附属A病院(以下「被告病院」という)を設置経営す。 る学校法人である(弁論の全趣旨。 ) 被告病院における診療経過の概略(争いのない事実、乙A1~3)( )ア原告は、平成5年12月24日、その二、三日前から意図しないで口元がゆがむようになり、顔面に麻痺が出る症状を自覚したことから、被告病院耳鼻咽喉科を受診した。原告の診察を担当した医師は、原告は顔面神経麻痺であると診断し、原告に対し、同日から同月28日まで5日間のステロイド漸減療法(ステロイドの点滴治療)が必要なので通院をするよう指示し、その指示どおり点滴治療が開始された(争いのない事実、乙A1。 の1〔7)〕イ原告は、翌25日夜から構語障害、歩行障害及び右下肢の運動障害が現れたことから、そのことを翌26日に被告病院耳鼻科休日当番医に対して訴えた。同医師は、その訴えを聞き、原告を診察した後、専門医の診察を受けさせる必要を感じ、同病院脳神経外科当直医に診察を依頼した。同病院脳神経外科では、原告について頭部検査等が行われた結果、脳血管CT障害(脳梗塞)を疑い、かつ、脳腫瘍であることも考慮し、原告を脳神経 外科に転科させた上、被告病院に入院させた(争いのない事実、乙A1。 の1〔9、10、A1の2、A2〔1)〕〕ウ平成6年1月13日、原告の脳組織が摘 脳腫瘍であることも考慮し、原告を脳神経 外科に転科させた上、被告病院に入院させた(争いのない事実、乙A1。 の1〔9、10、A1の2、A2〔1)〕〕ウ平成6年1月13日、原告の脳組織が摘出され、被告病院で病理組織検査が行われた。その結果、上記組織が「脳腫瘍「神経膠腫」であると判」断された(争いのない事実、乙A2〔48、49)。 〕その後、同年2月4日まで約23日間にわたって放射線治療などによる治療がされたが、原告について多発性硬化症が疑われたため、原告は被告病院脳神経内科へ転科(兼科)となった(争いのない事実)。 エ同科のF医師は、原告を視診をはじめとする検査を行い、同月23日には原告が多発性硬化症であると臨床的に診断した。F医師は、原告に、ステロイドを大量に投与したところ、原告の身体状態は改善し、右片麻痺が残存するものの、独歩可能となった(争いのない事実、乙A1の3。 〔3、A2〔30~33)〕〕オその後、原告は、同年4月2日にある程度回復して通院加療が可能となったと判断され、一度被告病院を退院し、治療及びリハビリのために通院することとなった(争いのない事実)。 ところが、同年6月中旬になって、原告に多発性硬化症が再発し、再度入院することとなった。その後、約2か月間にわたり、原告に対してステロイドの大量投与がされたが、原告は再発を繰り返し、一時は危篤状態になった。他方、原告の麻痺は急激に進行し、爾後、左手足と目の視界半分を除いて生活機能が全て失われた状態となっており、右手足不全であるために独力でものを食べることができず、言葉を発することも、ものを十分に見ることもできないまま、現在に至っている(争いのない事実)。 争点 多発性硬化症の診断が遅延した過失の有無( ) ステロイド剤の減量により多発 できず、言葉を発することも、ものを十分に見ることもできないまま、現在に至っている(争いのない事実)。 争点 多発性硬化症の診断が遅延した過失の有無( ) ステロイド剤の減量により多発性硬化症の再発を招いた過失の有無( ) 多発性硬化症再発の際に適切な治療を行わなかった過失の有無( ) 過失行為と権利侵害結果発生との間の因果関係の有無(判断する必要がな( )かった争点) 損害額(判断する必要がなかった争点)( )争点についての当事者の主張 争点1 (多発性硬化症の診断が遅延した過失の有無)について( )( )(原告の主張)ア多発性硬化症のうち、日本人に多い視神経脊髄型といわれる病型で、視力低下と脊髄障害による運動や感覚の異常がほぼ同時期に出現した場合は、初回の病状出現の際に多発性硬化症であるとほぼ診断可能であり、日本人では、視力障害、四肢の運動麻痺、感覚障害などが初発症状として多いところ、原告には平成5年12月24日ころ(初診時)から同月26日(入院時)において顔面に麻痺が生じ、その直後に手足の麻痺が生じており、構語障害があるほか、眼振もあり、顔面に麻痺がある以上は視力にも問題が生じていた。 MRIイしたがって、担当医師は、原告について多発性硬化症をも疑い、検査や検査を施行し、そこで多発性硬化症がさらに疑われれば脳脊髄CT液検査を行って、γグロブリン増加率などの特徴的所見を求めるべきであった。 ウしかしながら、担当医師は、原告について画像検査を行ったものの、平成6年2月に至るまで脳脊髄液検査を行わなかった。なお、被告病院においては脳組織の生検を行っているが、脳組織の生検では得られる情報が少ないから、有効な検査を行ったものとはいえない。 (被告の主張)ア原告には、平成5年12 液検査を行わなかった。なお、被告病院においては脳組織の生検を行っているが、脳組織の生検では得られる情報が少ないから、有効な検査を行ったものとはいえない。 (被告の主張)ア原告には、平成5年12月24日ないし平成6年1月14日までに手足の麻痺、言語障害などの症状が発生しているが、原告の主張する期間には 眼振も視力低下も認められていなかった。仮に眼振が認められたとしても、眼振の有無は、病変部位の診断上意義を有するが、多発性硬化症の診断とは無関係である。 原告に認められた症状からしても、初回の発作であることと画像所見からすれば、これを以て多発性硬化症と診断することには無理があり、担当医師が進行性脳梗塞又は神経膠腫と判断することは妥当であった。すなわち、脳血管障害や脳腫瘍との鑑別が困難な多発性硬化症の症例は数多く報告されているところ、原告の場合も、多発性硬化症が一般的には病変が多発性で白質にあるのに、検査結果及び検査結果の画像からは、病CTMRI変が多発性ではなく単発で、しかも白質にはなく、大脳基底核に限局していたため、脳腫瘍や血管障害との鑑別が困難であった。 また、原告には、中枢神経の複数箇所の病変の症状が時間的に2回以上にわたって繰返し発現した病歴もないので、原告について多発性硬化症であると疑うことはできなかった。 イさらに、脳脊髄液検査は、原告が主張する期間内には、有効性に疑問があったため、施行していない。脳腫瘍などの疾患で頭蓋内圧が高い時には、腰椎穿刺による髄液採取は禁忌とされている。髄液検査を目的として安易な腰椎穿刺は脳ヘルニアなどの原因となり、致死的な合併症の発症につながり得る。被告担当医師は、それらの点も考えて鑑別診断を進めていたのであり、原告の主張には理由がない。また、被告病院では、多発性硬化症が原告について ニアなどの原因となり、致死的な合併症の発症につながり得る。被告担当医師は、それらの点も考えて鑑別診断を進めていたのであり、原告の主張には理由がない。また、被告病院では、多発性硬化症が原告について疑われた時点で髄液検査を行っているが、その結果、多発性硬化症を強く示唆する所見は認められなかった。 争点2 (ステロイド剤の減量により多発性硬化症の再発を招いた過失の有( )( )無)について(原告の主張)ア多発性硬化症は、いったん症状が改善しても再発を繰り返し、脱髄した 部位が複数箇所に出現するという特徴を有するから、いったん寛解しても再発可能性がないわけではない。しかし、多発性硬化症が寛解すると一般的には症状が消えるが、三、四回と再発を繰り返すと後遺症が残るようになるし、その場合には再発時の治療の適否によって後遺症の程度が異なるものである。 イしたがって、担当医師としては、多発性硬化症を疑った場合には、速やかに治療を開始し、自らが専門外の場合には脳神経内科の専門医に転医させるべきである。 ウしかしながら、担当医師は、平成6年2月4日以降は、原告について多発性硬化症ではないかとの疑いを強く持ったにもかかわらず、原告について治療を開始することも、脳神経内科の医師に転医させることもなく、漫然と自らが治療を継続し、しかも原告の症状を過小評価して早期にステロイド剤を減量し、同年6月16日に原告の多発性硬化症の再発を招いた。 (被告の主張)ステロイドの投与については、平成6年2月4日の治療に関しては、神経内科医と連絡を取り合った上で行われており、しかも、ステロイド薬が再発予防に有効というデータはないから、これを減量したから同年6月の多発性硬化症の再発を招いたとはいえない。 争点3 (多発性硬化症再発の際に適切な治療を行わなかった おり、しかも、ステロイド薬が再発予防に有効というデータはないから、これを減量したから同年6月の多発性硬化症の再発を招いたとはいえない。 争点3 (多発性硬化症再発の際に適切な治療を行わなかった過失の有無)( )( )について(原告の主張)ア上記2 アで主張したとおり、多発性硬化症は、三、四回と再発を繰り返( )すと後遺症が残るようになるし、その場合には再発時の治療の適否によって後遺症の程度が異なるから、担当医師としては、再発の兆候が患者に見られた際には早期に発見して治療を開始する必要があった。 イそして、原告については、平成6年6月14日には手足の麻痺と言語障 害が増悪し、多発性硬化症の再発を疑われる徴候が認められていたのであるから、担当医師は、原告について速やかに入院の手続をとる必要があった。 ウしかしながら、担当医師は、原告について、同月18日に至るまで多発性硬化症が再発するのを防止する措置をとらなかった。 (被告の主張)原告は、同年5月27日時点では構音障害が認められたが全身状態は良好であったし、同年6月14日には構音障害がやや悪化し、手足の筋力が低下したために頭部検査が予定されたが、同日において緊急入院をすべきMRI病態にはなかった。 したがって、原告について速やかに入院の手続をとる義務はない。 争点4 (過失行為と権利侵害結果との間の因果関係の有無)について( )( )(原告の主張)ア多発性硬化症は、重症の場合や再発を繰り返す場合には後遺症が残存する可能性があるから、急性期の症状を極力抑制する治療を行うべきでありながら、そのような治療を行わなかったのであるから、上記治療が行われていれば、原告に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性がある。 イステロイド薬の処方量を誤ったことに関しては、 行うべきでありながら、そのような治療を行わなかったのであるから、上記治療が行われていれば、原告に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性がある。 イステロイド薬の処方量を誤ったことに関しては、その減量が原因で再発を招来したものであって、因果関係は肯定される。 (被告の主張)ア多発性硬化症の再発の機序は不明であり、しかも再発を防止できる方法が発見されていない。しかも、再発率が65ないし85%などといわれているように多発性硬化症は再発率が高い病気であるから、原告の主張する診断ないし治療の過失があったとしても、それにより後遺症が残存したとはいえない。 イまた、ステロイド薬については、それが再発予防に有効というデータは ないから、この点でも後遺症の残存との間に因果関係はない。 争点5 (損害額)について( )( )(原告の主張)ア積極損害治療費等84万4000円( )ア原告の症状が平成6年6月30日に固定した後、被告から請求のあった治療費の合計である。 将来の治療費3301万0020円( )イ被告病院から原告が転院した場合、1か月15万円の治療費が必要になるものと見込まれるところ、平成16年からの平均余命51.15年の間は入院治療を要することからすれば、51年のライプニッツ係数が18.3389であって、これに基づく中間利息控除を考慮に入れると、15万円×12×18.3389との計算式により、上記額となる(1円未満切捨て。 )付添看護費4350万9040円( )ウ近親者によるものであって、1日6500円かかるものとして算出すると、6500×365×18.3389との計算式により、上記額となる。 入院雑費3207万3825円( )エ原告の症状固定日までは、平成5年12月26日から187日間入院 るものとして算出すると、6500×365×18.3389との計算式により、上記額となる。 入院雑費3207万3825円( )エ原告の症状固定日までは、平成5年12月26日から187日間入院しているから、入院雑費を1日1500円とすると、28万0500円となる。 これに加え、平成6年7月1日から平均余命終了までについても入院雑費がかかるから、平成6年当時18歳の者の平均余命は58.07年であることに鑑みると、3179万3325円となる。これらを合わせると、3207万3825円となる。 イ消極損害後遺症逸失利益5342万6014円( )ア原告は、本件過失行為がなければ、年額202万5700円(賃金センサス平成4年第一巻第一表産業計女子労働者新高卒18ないし19歳の年収額である)の収入が得られたはずであり、平成6年から原告が。 64歳になるまで45年間稼働できたと考えられる。 これを前提として、原告の症状固定日(平成6年6月30日)から平成16年6月までは既に経過しているので、中間利息を控除せずに逸失利益を算定すると、2025万7000円となる。 また、平成16年4月から原告が64歳となる平成51年までの計35年間については、これに対応するライプニッツ係数(16.3741)により中間利息を控除することを考慮に入れて逸失利益を算出すると、202万5700円×16.3741との計算式により、3316万9014円となる(1円未満切捨て。 )これらを合わせると上記額となる。 慰謝料2822万0000円( )イ原告の入院期間は平成5年12月24日から平成6年6月30日に及んだことから、これに対応する入院慰謝料は222万円である。 また、原告には後遺障害等級1級2号及び3号に相当する障害が残存したものであり、これを前提とす 成5年12月24日から平成6年6月30日に及んだことから、これに対応する入院慰謝料は222万円である。 また、原告には後遺障害等級1級2号及び3号に相当する障害が残存したものであり、これを前提とすれば、後遺症が残存したことによる慰謝料は2600万円である。 これらを合わせると上記額となる。 ウ弁護士費用1910万8289円上記損害額合計の約1割は、弁護士費用として認められるべきである。 エ合計2億1019万1188円(被告の主張) 否認する。 第3当裁判所の判断事実認定 前記第2の2の前提となる事実に加え、証拠及び弁論の全趣旨等によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。) 被告病院への初診と診断等( )ア原告は、昭和50年3月16日生まれの女性であり、特に病歴や手術歴はなかったが、平成5年12月24日(原告は満18歳、その二、三日)前から意図しないで口元がゆがむようになり、顔面に麻痺が出る症状を自覚したことから、被告病院耳鼻咽喉科を受診した(争いのない事実、乙。 A1の1〔8)〕イ原告の診察を担当した医師は、原告は顔面神経麻痺であると診断し、原告に対し、同日から同月28日まで5日間、ソル・コーテフの点滴による治療が必要なので通院をするよう指示し、その指示どおり同月24日には点滴治療が開始された(争いのない事実、乙A1の1〔5、7、A72。 〕〔2)〕 被告病院への入院及び入院中の経過( )ア原告は、翌25日夜から構語障害、歩行障害及び右下肢の運動障害が現れたことから、そのことを被告病院耳鼻科休日当番医に対して訴えた。同医師は、その訴えを聞き、原告を診察したところ、原告に右不全麻痺が発現している疑い 夜から構語障害、歩行障害及び右下肢の運動障害が現れたことから、そのことを被告病院耳鼻科休日当番医に対して訴えた。同医師は、その訴えを聞き、原告を診察したところ、原告に右不全麻痺が発現している疑いがあったため、専門医の診察を受けさせる必要があると考え、同病院脳神経外科当直医であったC医師に診察を依頼した。C医師が原告を診察したところ、意識は清明で、眼振が見られず、瞳孔にも異常がないことから眼所見には異常がなく、三叉神経にも異常がなかった。他方、顔面神経には中枢型の麻痺が見られ、右半身に麻痺が見られた。同医師は、 原告の頭部検査の結果、単発性の大脳基底核病変が見られたため、脳CT血管障害(脳梗塞)を疑うとともに、年齢を考慮すると生活習慣病を基礎疾患とする通常の脳血管障害としては典型的ではないため、脳血管撮影や脳血流検査を予定した上、原告を入院させた。その際、原告の症状が進行性で、脳浮腫も強かったことから、ステロイド投与を継続した(乙A1。 の1〔9、A1の2〔2、3、A2〔1、9、A70〔2、A72〕〕〕〕〔2、弁論の全趣旨)〕同月27日には脳循環検査、翌28日には頭部検査が行われ、そMRIの結果、神経放射線学的には脳梗塞であると判断された。他方、心臓エコー検査及び心電図検査の結果によればいずれも異常がなかったことから、MR原告の疾病が神経膠腫であることは否定できず、年明けに改めて頭部検査を行って、フォローアップを行うことになった(乙A2〔9、1I。 0)〕イところが、入院から10日間が経過した平成6年1月11日になっても原告の全身の麻痺が進行するだけで、意識レベルや言語障害も改善せず、何ら治療効果が見られなかった。被告病院脳神経外科の医師らは、カンファレンスを行い、その結果、脳血管障害の経過では原告 日になっても原告の全身の麻痺が進行するだけで、意識レベルや言語障害も改善せず、何ら治療効果が見られなかった。被告病院脳神経外科の医師らは、カンファレンスを行い、その結果、脳血管障害の経過では原告の症状について説明がつきにくく、悪性度の低い神経膠腫やリンパ腫などの腫瘍性病変、多発性硬化症などを考慮に入れる必要があるが、鑑別診断をして治療方針を決定するには生検が必要であると判断された。 上記期間中、同月3日、5日及び7日の各日において、C医師やD医師(以下「D医師」という)らは、原告の両親に対し、原告の病態は脳腫。 瘍である可能性が高いので、生検術によって組織を摘出し、病理診断することが必要であるが、腫瘍を摘出すると症状が悪化する可能性が高いので、生検後には放射線照射治療や化学療法を中心に治療を行うことになる旨を説明していたが、同月10日にも、D医師は、原告の両親に対し、脳腫瘍 の治療を行う前提として鑑別診断をする必要があり、そのためにはガCTイド脳定位術による生検術を行う必要があると改めて説明し、上記生検術を原告に対して行うことについてBからの同意を得た(乙A2〔11~。 16、43、138、141、142、146、A70〔2、原告後見〕〕人本人〔2、3)〕ウ平成6年1月13日、ガイド脳定位術により、原告の脳組織が摘出CTされた。その際、被告病院で行われた迅速病理組織検査によれば、悪性度の低い神経膠腫、グリオーシス(脳の悪性腫瘍)及び脳梗塞のいずれかを〕〕)。 疑う所見であった(乙A2〔16、45、46、48、証人E〔10その後、同月19日に上記脳組織に関する病理組織検査結果が判明したところ、それによれば、上記脳組織が悪性度の低い視床神経膠腫が最も疑われると診断された(乙A2〔49、証人E〔10。もっとも、 その後、同月19日に上記脳組織に関する病理組織検査結果が判明したところ、それによれば、上記脳組織が悪性度の低い視床神経膠腫が最も疑われると診断された(乙A2〔49、証人E〔10。もっとも、D医師〕〕)は、核分裂がみられ、細胞密度も高いことから、グレード(悪性度のIII高い神経膠腫)ではないかと考えていた(乙A2〔18。これを受けて、〕)脳神経外科においては、原告に対して、脳腫瘍に対する治療として、放射線照射を施行することに決定し、そのことを原告の両親に対して説明した。 (争いのない事実、乙A2〔16、18、19、48、49、161、〕A70〔2、3)〕エその後、同年2月4日まで約23日間にわたって放射線治療がされた。 他方、同年2月3日、原告について検査が施行された結果、多発性MRIの病変をうかがわせる所見(強調画像)が大脳白質や脳橋ないし中脳T2ADE領域に認められたことから、脳神経外科の医師は、多発性硬化症や(急性散在性脳脊髄炎)等の変性疾患である可能性を疑い、神経病理医Mに上記脳組織の再検討を依頼するとともに、神経内科のF医師(以下「F医師」という)に原告の診察を依頼した(乙A2〔21~23、39、。 。 62、A22~27、A70〔3、証人D〔4、5)〕〕〕 F医師は、同月5日に原告を診察し、多発性硬化症は否定できないが、髄液検査結果を見てから考える必要があるとし(同検査は同月5日に施行されたが(乙A2〔55、57-1~3、58、182、多発性硬化症〕)か否か判定できなかった(同〔185、とりあえずステロイドを併用〕)。)しても悪くなければステロイド薬プレドニン40の投与を開始してほmgしい旨を回答した(乙A1の3〔2、4。これを受けて、脳神経外科の〕)医師は、 、とりあえずステロイドを併用〕)。)しても悪くなければステロイド薬プレドニン40の投与を開始してほmgしい旨を回答した(乙A1の3〔2、4。これを受けて、脳神経外科の〕)医師は、同日から原告に対してプレドニンの点滴投与を開始し、それにより、まず構語障害が改善し、同月12日以降には右下肢の麻痺の程度等の改善がみられた(乙A2〔24、25、A70〔3、証人D〔5)。 〕〕〕被告病院の病理担当医は、標本が小さいために確定診断することはできないが、視床神経膠腫であり、多発性硬化症も鑑別上問題となるが、多発性硬化症は主として白質に生じ、視床の病変として発生することは考えにくいと診断し、その旨を同月9日にC医師に対して報告した(乙A2〔4 。 〕)オC医師は、同月18日になって改めて原告の病態を評価したところ、原告の右片麻痺及び上肢完全麻痺のうち右下肢について改善が見られ、つかまり歩行が可能となったことから、放射線照射の効果というよりプレドニ、ン治療の効果が現れているのではないかと考え、再度検査を行ってMRI放射線治療を継続するか否かを決めることとし、同月21日には放射線治療を中止した(乙A2〔26、27)。 〕カ同月17日には、プレドニンの投与方法が点滴投与から経口投与に改められ、同月24日から処方された。同月25日には、原告の病態には著変がないが、徐々に状態が向上しており、しかも、同月23日に行われた頭部検査の結果、脳幹病変が縮小し、大脳基底核病変も縮小したことMRIを承けて、脳神経外科の医師は、再度、F医師に原告の診察を依頼した。 (乙A2〔25、28、35、証人D〔5)〕〕 F医師は、原告の検査結果によれば変化が白質に限局しているこMRIと、脳幹の変化がステロイド治療より消失してい 医師に原告の診察を依頼した。 (乙A2〔25、28、35、証人D〔5)〕〕 F医師は、原告の検査結果によれば変化が白質に限局しているこMRIと、脳幹の変化がステロイド治療より消失していることなどから、原告は広汎に出現した多発性硬化症であると診断した方が説明しやすい点が多いように思われると診断し、場合によっては内科への転科も含めて考えてもよいかと思われると回答した(乙A1の3〔2、A2〔28、証人D〕〕〔5。 〕)同年3月1日、C医師は、原告の父親(B)及び原告の兄に対して、原告の病状から多発性硬化症が疑われること、神経の病気であるのでステロイド治療を行うことなどを説明した(乙A2〔199。 〕)キその後、原告は、同年3月に入ってから外泊を3回、外出を1回それぞれすることが可能となり、さらに、同月31日の診察結果によれば、原告の意識は清明となり、右顔面神経麻痺が軽度にあるほか、右片麻痺(右手右脚不全)が残存した状態であり、前日に行われた検査上も、左大MRI脳基底核付近の浮腫が明らかに改善し、瘢痕様の変化を残すのみとなり、脳橋左側の病変もほとんど消えているなど、改善がみられた。プレドニンの投与量についても、同月3日から1回30に、同月31日には1回mg に順次変更された。そこで、同年4月2日、通院加療が可能となmgったと判断されたため、原告は、一度被告病院を退院し、治療及びリハビリのために通院することとなった(乙A2〔30~33、35、202。 ~211、222-1~4、A36~41)〕 原告の症状の再発とその後の経過( )ア原告は、被告病院を退院後、同病院神経内科を平成6年4月22日、5月6日にそれぞれ外来受診し、F医師の診察を受けたが、4月22日の診察時においてはゆっくりと動作は改善 再発とその後の経過( )ア原告は、被告病院を退院後、同病院神経内科を平成6年4月22日、5月6日にそれぞれ外来受診し、F医師の診察を受けたが、4月22日の診察時においてはゆっくりと動作は改善しており、5月6日の診察時においては状態が安定していると判断された。また、同月27日の外来受診時においては、一般状態は良好であるが、構語障害が見られ、食欲が不振であ ると判断され、さらに同年6月14日の外来受診時においては、構語障害の程度が前回の受診時に比して悪化していると判断された。そこで、F医師は、原告について頭部検査を予約した(乙A1の3〔7~9)MRI。 〕イ原告は、同月17日にも被告病院神経内科を外来受診したが、その際、手足の痺れが増強していたことから、F医師は、翌18日15時50分に検査を実施することを確認し、かつ、同日の原告の入院を予約したMRI(乙A1の3〔10。 〕)ウ同月18日、原告は頭部検査を受けた。その結果、延髄に新たなMRI病変が認められ、脳橋には病変の再発がないものの、白質に新たな病変が認められ、原告の病変が拡大していることが認められたため、原告に多発性硬化症が再発したものと診断され、神経内科に入院することとなった。 その際、原告に対するステロイド投与量が増量された(乙A1の3〔1。 0、A3〔1、A50~53、A71〔4)〕〕〕F医師は、原告の母親に対し、多発性硬化症が再燃したために原告の状態が悪くなっており、同月19日の脳の結果によれば、それまでのMRI病巣以外の部分にも多発性病巣ができていることを説明し、原告に対してはステロイド投与量を増量し、入院中、経過観察をするとの方針を説明した(乙A3〔1)。 〕エその後、約2か月間にわたり、原告に対してステロイドの大量投与がさ きていることを説明し、原告に対してはステロイド投与量を増量し、入院中、経過観察をするとの方針を説明した(乙A3〔1)。 〕エその後、約2か月間にわたり、原告に対してステロイドの大量投与がされたが、原告は再発を繰り返し、同年6月24日には気管内挿管がされて人工呼吸器が設置され、同月29日には気管切開が行われるなど一時は危篤状態になったが、その後、危篤状態は脱した。他方、原告の麻痺は急激に進行し、爾後、左手足と目の視界半分を除いて生活機能が全て失われた状態となっており、気管切開がされたままで、開口不能で胃瘻から栄養を摂取し、右手足不全麻痺(右片麻痺)が残存した状態にある。他方、意識は清明であり、意思表示が可能であるとともに、字を書くことも可能な状 態にある(乙A3、A71〔4、5、8)。 〕医学的知見関係 証拠等によれば、次の医学的知見が認められる。 多発性硬化症の定義等( )多発性硬化症()は、中枢神経系の白質と視神経をmultiplesclerosis: MS)、侵す慢性脱髄性の疾患で、神経系内に複数の病巣が見られ(空間的多発性寛解と再発を繰り返す(時間的多発性)病態であって、その病因としては環境因子、遺伝因子、自己免疫因子の関与が想定されているが、その詳細は不明であり、主として若年成人が罹患する(甲B5〔558、乙B1〔18〕54、B4〔2044。 〕〕)多発性硬化症は、突発性の発症が17.6%、急性の発症が40.5%、亜急性の発症が26.7%であり、緩徐な発症を示すものは15.1%と少なく(2分の1ないし3分の2の症例において急性又は突発性であると指摘する文献もある(乙B4〔2046、初発症状としては視力障害が35. 〕)。)1%、運動麻痺が22.3%、感覚障害が20.3%であり、歩行障害 ないし3分の2の症例において急性又は突発性であると指摘する文献もある(乙B4〔2046、初発症状としては視力障害が35. 〕)。)1%、運動麻痺が22.3%、感覚障害が20.3%であり、歩行障害、複視、排尿障害などによる場合もある(乙B1〔1855、B4〔204〕 。 〕) 多発性硬化症の診断と経過、治療( )ア診断基準次の3点が診断の際の主要項目である(厚生省特定疾患「免疫性神経疾患」調査研究班による多発性硬化症診断基準。ただし、この基準は平成15年度に改定され、再発寛解型については大きな変更はないものの、世界的に有名なの診断基準に準拠して一時性進行型を定義するなどMcDonaldの変更が行われている(乙B5〔1818。これら3点をすべて充た〕)。)すものを「臨床的に診断確定」とし、3点を完全には充たさないが多発性硬化症が強く考えられるものを「多発性硬化症の疑い」とする(甲B5。 〔559、乙B1〔1856、B4〔2047)〕〕〕中枢神経系に2つ以上の病巣がある(症状、身体所見及び検査所見を●合わせて判断する)。 症状の寛解及び再発がある(時間的多発性)●他の疾患による神経症状を鑑別し得る●イ鑑別すべき疾患多発性硬化症と鑑別すべき疾患としては、[1]脳血管障害(脳・脊髄梗塞、硬膜動静脈奇形など、[2]脳・脊髄腫瘍、[3]感染性疾患(脳膿瘍、)ウイルス性脳炎、神経梅毒など、[4]非感染性炎症性疾患(急性散在性脳)脊髄炎、視神経炎など、[5]代謝性疾患(ウェルニッケ脳症など、[6]内))科疾患に伴う神経障害(全身性エリテマトーデスなど、[7]変性疾患(脊)髄小脳変性症など、[8]脊椎疾患(変形性頸椎症など、[9]中毒性疾患))(5-など、[10]その他(脊髄空洞症)が挙 科疾患に伴う神経障害(全身性エリテマトーデスなど、[7]変性疾患(脊)髄小脳変性症など、[8]脊椎疾患(変形性頸椎症など、[9]中毒性疾患))(5-など、[10]その他(脊髄空洞症)が挙げられる。そのうち、患FU)者に視力・視野障害がない場合には、脳血管障害、腫瘍性疾患、感染性疾患、膠原病、中毒性疾患及び神経ベーチェット病・神経サルコイドーシスとの鑑別が問題となり、うち、腫瘍性疾患については、基本的には単一病変が中心である腫瘍性疾患との鑑別は容易であるとされているものの、多発性硬化症でも脳腫瘍と類似した巨大な病変が認められ、しばしば脳生検にて診断されると呼ばれる病巣を呈することが知らtumefactiveMSlesionれているとの指摘がある(乙B5〔1856~1858)。 〕ウ経過及び予後初期に数回の再発を示すが、ほぼ完全に寛解して良性の経過とたどるものが約15ないし20%、寛解再発を繰り返すか、または寛解が不十分で次第に進行性の経過をたどるものが約60%(全体の65ないし85%であるとの指摘もある、慢性進行性の経過を示すものが約15%である。 。)発症15ないし25年で約半数の症例が介助歩行を要するようになり、平 均生存期間は25ないし35年とされ、死因の多くは併発感染症である。 (甲B5〔559、乙B1〔1856、B4〔2047、2048)〕〕〕エ治療急性増悪期には副腎皮質ステロイド又は製剤の投与により症状ACTHの早期改善がみられるが、再発の予防はできない。再発の予防については、免疫抑制薬の投与、血漿交換療法、免疫グロブリン静注療法などが試みられているが、確立された治療法はない。他方、欧米において、インターフェロンβ、グラチラマーアセテート及びミトキサントロンなどが多発性硬化症 薬の投与、血漿交換療法、免疫グロブリン静注療法などが試みられているが、確立された治療法はない。他方、欧米において、インターフェロンβ、グラチラマーアセテート及びミトキサントロンなどが多発性硬化症の再発回数を抑制する効果が明らかにされてきているとの指摘もある。 (甲B3、乙B1〔1856、1857、B4〔2048)〕〕また、従来、副腎皮質ステロイド剤、特にパルス療法は急性期を短縮する効果が認められていたが、長期的には再発率や障害度の進行に影響を与えないとされ、通常は短期的な投与で中止されるとの指摘がある(ただし、平成16年12月の文献による指摘である。乙B5〔1819。 〕)争点1 (多発性硬化症の診断が遅延した過失の有無)について ( ) 1 ア原告の平成5年12月26日当時の症状は、前記11 及び2 アのとおり( )( )( )運動障害、感覚障害に加え歩行障害であるところ、前記2において認定したとおり、多発性硬化症(以下「」という)の初発症状としてこれらMS。 の症状が挙げられているから、原告の上記症状は、の初発症状であるMSと評価しても矛盾しないものということができる。 イしかしながら、前記2において認定したとおり、平成5ないし6年当時のの診断基準は、中枢神経系に2か所以上の病巣があり、症状の寛解MS及び再発を繰り返すことのほか、他の疾患による神経症状を鑑別し得るとの3点を基準として、上記3点を充たすと臨床的に診断が確定であるとされ、上記3点を完全には充たさないがが強く疑われるものを「のMSMS疑い」とするとされていたのであり、医師としても、この基準に従って患 者がか否かを診断すべきものであるところ、中枢神経系に2か所以上MSの病巣があることを確認するには一般的には画像所見を得る必要が とするとされていたのであり、医師としても、この基準に従って患 者がか否かを診断すべきものであるところ、中枢神経系に2か所以上MSの病巣があることを確認するには一般的には画像所見を得る必要があり、他の複数の神経症状との鑑別診断をするには、一般に複数の検査を行う必要があると考えられるし、症状の寛解及び再発を繰り返すとの基準を充たすには、一定期間、患者の症状を経過観察する必要があるというべきであって、これらの基準は、それ自体として、初発症状のみならずその後の検査結果及び患者の症状の推移を見なければ充たし得ないものとなっている。 ウそうすると、平成5年12月26日及びその直後の時期においては、原告には上記症状が認められたのみで、それ以前には上記のような症状が認められていなかったのであって、これに反する証拠はないし、原告については未だ検査等の検査が何ら行われていなかったのであるから、当MRI時の原告の症状は上記基準をどれ1つとして充たし得なかったものであって、この時点において、原告がであると医師は積極的には疑えなかっMSたといわざるを得ない。そればかりか、前記12 ア及びエのとおり、原告( )の病変は当初単発性であってかつ大脳基底核に存在し、その後平成6年2月3日になって、検査所見上、病巣が多発性であり、しかも白質にMRIあることが確認され、この時点において神経内科のF医師に対して相談をし、同医師からの指示に基づいてステロイド剤であるプレドニンを投与しているのである。そうすると、原告については、平成6年2月3日ないしその直後の時期になって初めて上記の診断基準に当てはまる症状の存MS在が確認され、直ちに平成6年当時の治療法として有効と考えられてMSいたステロイド剤の投与が開始されたというべきで、他方でそれ以前の時 時期になって初めて上記の診断基準に当てはまる症状の存MS在が確認され、直ちに平成6年当時の治療法として有効と考えられてMSいたステロイド剤の投与が開始されたというべきで、他方でそれ以前の時点において医師をしての疑いを生じさせるべき事情はなく、これに反MSする証拠はない。したがって、原告がであるとの被告病院の担当医師MSらによる診断が遅延したということはできない。 2 ア原告は、同人に生じた初発症状からも疑うべきで、・検査( )MSMRICT を施行し、そこでの疑いが強まれば脳脊髄液検査をすべきと主張するMSが、検査は平成5年12月26日、検査は同月28日にそれぞれCTMRI行われているから、原告の主張する検査義務が仮にあったとしても、その義務は履行されたというほかないし、上記において認定説示したとおり、それらにおいてを疑うべき所見がなかった以上、さらに脳脊髄液検査MSをすべき必要性は認められないから、原告の主張は採用できない。 イまた、原告(後見人)は、F医師が初診である平成6年2月5日の時点で原告がであると指摘した以上、早期に正しい診断が可能であった旨MS陳述する(甲A5〔5、6。しかしながら、F医師の同月5日における〕)診断は、同月3日に実施された検査の結果を前提とするものであるMRIところ、それ以前においては原告の病態について判明していた情報量に差があり、しかも、同月3日の検査結果によって初めて原告の病巣がMRI多発性であると確認できたことに照らせば、前記2の医学的知見を前提とする限り、上記検査結果はと積極的に疑うか否かを判断するのMRIMSに決定的なものである。したがって、原告(後見人)の上記陳述は、この点を看過し、前提となる事実の評価を誤ったもので を前提とする限り、上記検査結果はと積極的に疑うか否かを判断するのMRIMSに決定的なものである。したがって、原告(後見人)の上記陳述は、この点を看過し、前提となる事実の評価を誤ったものであって、到底採用できないといわざるを得ない。 争点2 (ステロイド剤の減量により多発性硬化症の再発を招いた過失の有 ( )無)について 原告は、原告に対するステロイド剤の投与量が早期に減少したことを捉え( )て医師に過失があると主張しているところ、前記12 カ及びキにおいて認定( )したとおり、原告対するステロイド剤の投与量は、平成6年2月24日から同年3月31日にかけて段階的に減少されていたことが認められる。 しかしながら、前記22 エにおいて認定した医学的知見によれば、ステロ( )イド剤によっては再発の予防はできないとされ、一般的には短期的投与にとどまるものとされていることや、の再発を予防するために確立した治療MS 法がないとされていることに照らすと、ステロイド剤の投与量如何によりの再発の機序に何らかの変化がもたらされるとは認め難い。 MSそうすると、の再発を予防するために、ステロイド剤の投与量を調節MSすべき義務は認められないから、原告の上記過失の主張には理由がない。 この点に関しては、我が国のの事例においてはステロイド剤の減量に( )MS伴いが再発する例がしばしば見られており、その予防等のためにステロMSイド剤の少量投与を長期にわたって行わざるを得ない場合も少なくない旨の指摘があるが(乙B5〔1819、それらの再発がステロイド剤の減量に〕)起因するものか否かについては、上記の医学的知見に照らすと不明といわざるを得ないし、F医師は、原告が平成6年4月2日に退院した後、各外来受診日においてステロイ れらの再発がステロイド剤の減量に〕)起因するものか否かについては、上記の医学的知見に照らすと不明といわざるを得ないし、F医師は、原告が平成6年4月2日に退院した後、各外来受診日においてステロイド剤プレドニンを投与しており、同医師は上記指摘のとおりステロイド剤の少量投与を継続しているものと評価すべきである。 争点3 (多発性硬化症再発の際に適切な治療を行わなかった過失の有無)に ( )ついて 前記13 において認定したところによれば、原告が平成6年4月2日に退( )( )院した後、同年5月6日の外来診察日までは症状が回復傾向にあったが、同月27日の外来診察日においては構語障害が、同年6月14日の外来診察日には構語障害の増悪が、同月17日の外来診察日には手足の痺れがそれぞれ認められているから、同年5月27日以降、原告の身体状態は悪化傾向にあったものと評価できる。そうすると、原告が同年4月2日までにより入MS院していたこと、が高い割合で再発するものであることを併せ考えれば、MS同月14日ないし17日の時期においては、原告にが再発したのではなMSいかとも考え得るところである。 しかしながら、神経症状は時期によって程度が変動するとされており(証人E〔18、これに反する証拠は見当たらない。このことに鑑みると、平〕)成6年6月14日までに判明した原告の症状の変化が時期による程度の変動 であれば入院加療の必要はないと考えられるから、原告の症状がその変動にとどまるのか、の再発であるかを鑑別して、入院の必要性の有無を判断MSする必要があることになる。そうすると、同月14日までに判明していた症状だけでは入院の要否を鑑別できないものというべきであるから、上記時期において原告を緊急入院させなければならない状況にあったとは認 する必要があることになる。そうすると、同月14日までに判明していた症状だけでは入院の要否を鑑別できないものというべきであるから、上記時期において原告を緊急入院させなければならない状況にあったとは認められないものといわざるを得ない。そして、D医師は、同日において原告の構語障害の悪化を認めたことを承けて検査を予約しているのであるから、同MRI医師としては、上記の入院の必要性について鑑別するために必要な検査を行っているものと評価すべきであって、この点においても、何ら、同医師に注意義務に違反すると評価すべき点はない。 なお、仮に上記の点において医師に早期に入院をさせなかった注意義務違( )反があったとして、この義務違反がなければ原告の入院は数日程度早まったものと認められる。しかしながら、の65ないし80%は再発を繰り返MSして症状が残っていくとの経過をたどるものであって、それが治療内容ないし治療開始時期の適否と関係すると認めるに足りる知見がないこと、はMS治療しなくても症状が消えてしまうこともあり、再発の機序等も不明とされていることに照らすと、数日程度入院の時期が早まったことによって原告の予後が有意に変化したものとは認められないし、そうであった相当程度の可能性も認めるに足りないものというべきであるから、この点においても、原告の主張には理由がない。 結論 以上によれば、原告の主張する過失はいずれも認められないから(争点1 な( )いし3 、その余の争点について判断するまでもなく、被告には原告に対する( ))診療契約上の債務不履行責任及び不法行為上の責任は発生しない。したがって、原告の請求には理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁 行責任及び不法行為上の責任は発生しない。したがって、原告の請求には理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基
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