主文 1 被告は,原告に対し,341万2694円及びこれに対する平成29年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告の反訴請求を棄却する。 3 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,補助参加によって生じた部分は補助参加人の負 担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 本訴 主文第1項と同旨 2 反訴原告は,被告に対し,85万8800円及びこれに対する平成29年7月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件本訴は,保険会社である原告が,被告との間で自動車保険契約を締結した上,被告から3件の保険事故の申告を受け,うち2件につき保険金を支払ったところ,実際にはこれらの保険事故は発生しておらず,被告の上記申告は不正であったなどと主張して,被告に対し,民法709条に基づき,損害賠償金(既払保険金相当額,調査費用及び弁護士費用の合計)341万2694円及びこれに対する不法行為の 後の日である平成29年2月1日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 本件反訴は,上記3件の保険事故のうち保険金未払の1件につき,被告が,原告に対し,自動車保険契約に基づき,保険金85万8800円及びこれに対する弁済期の後の日である平成29年7月19日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みま で商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,損害保険業等を目的とする株式会社 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,損害保険業等を目的とする株式会社である。 イ被告は,飲食店を経営する者である。(乙6)Aは,被告の経営する飲食店の従業員である。(乙6) ウ補助参加人は,自動車の修理等を目的とする株式会社である。 Bは補助参加人の代表者であり,Cはその元従業員である。(弁論の全趣旨)(2) 被告及びAの自動車被告は,平成24,5年頃,本件車両1及び本件車両2を所有していた。 また,Aは,平成25年頃,A車両を使用していた。 (3) 自動車保険契約の締結ア被告は,平成22年8月5日,原告との間で,対象車両を本件車両1とし,保険期間を同年9月20日から平成25年9月20日までとする自動車保険契約(以下「本件保険契約1」という。)を締結した。 本件保険契約1には,対人・対物賠償責任保険及び車両保険が含まれていた。(甲1の1)イ被告は,平成24年8月10日,原告との間で,対象車両を本件車両2とし,保険期間を同年8月10日から平成27年8月10日までとする自動車保険契約(以下「本件保険契約2」という。)を締結した。 本件保険契約2は,当初,対人・対物賠償責任保険のみであり,車両保険は含まれていなかった。しかるに被告は,平成24年11月22日,原告との間で,本件保険契約2に車両保険(代車特約を含む。)を付保する旨の変更をした。(甲1の2,甲20の1)(4) 被告による保険事故の申告及び保険金請求 ア平成24年8月の申告 被告は,平成24年8月24日,原告に対し,「同月17日,本 をした。(甲1の2,甲20の1)(4) 被告による保険事故の申告及び保険金請求 ア平成24年8月の申告 被告は,平成24年8月24日,原告に対し,「同月17日,本件車両1を自宅の車庫に入れようとしたところ,車庫に本件車両1を衝突させた」旨申告し(以下,この申告内容に係る保険事故を「第1事故」という。),本件保険契約1に基づく保険金を請求した。 原告は,同年10月12日頃,上記申告及び請求に基づき,本件車両1の 修理先とされた補助参加人に対して車両保険金64万9446円を支払うとともに,車庫の修理先とされた修理業者に対して対物賠償責任保険金12万8100円を支払った。(甲2の1の1,2の1の2)イ平成24年11月の申告被告は,平成24年11月27日,原告に対し,「同日,本件車両1が車上 荒らしに遭い,カーナビゲーションシステム(以下単に「カーナビ」という。)や冬タイヤを盗まれた」旨申告し(以下,この申告内容に係る保険事故を「第2事故」という。),本件保険契約1に基づく保険金を請求した。 原告は,平成25年3月25日頃,本件車両1の修理先とされた補助参加人に対して車両保険金39万0284円を支払った。(甲2の2) ウ平成25年4月の申告被告は,平成25年4月頃,原告に対し,「同月3日,本件車両2を後退させた際,アクセル操作を誤り,後続のA車両と衝突した」旨申告し(以下,この申告内容に係る保険事故を「第3事故」という。),本件保険契約2に基づく保険金を請求した。 これに対し,原告は,保険金の支払を拒絶した。 2 争点(1) 本訴ア第1事故に係る保険金の不正請求の有無イ第2事故に係る保険金の不正請求の有無 ウ第3事故に係る保 対し,原告は,保険金の支払を拒絶した。 2 争点(1) 本訴ア第1事故に係る保険金の不正請求の有無イ第2事故に係る保険金の不正請求の有無 ウ第3事故に係る保険金の不正請求の有無 エ損害発生の有無及びその額(2) 反訴第3事故に係る保険金請求権の有無 3 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1)ア(第1事故に係る保険金の不正請求の有無)について (原告の主張)第1事故は実際には発生しておらず,これに係る被告の保険金請求は不正請求である。 被告が主張する事故態様は,①本件車両1を自宅の車庫に入れようとして,ハンドルを左に切りながら後退したところ,本件車両1の左側面を壁に衝突さ せてしまった,②そこで車庫入れをし直そうとしたところ,今度は本件車両1の右側面を車庫の支柱に衝突させてしまったというものである。 しかし,本件車両1の損傷状況を見ると,ハンドルを左に切りながら後退する場合に最も損傷が激しくなるはずの左後輪部付近の損傷が軽微であること,左フロントホイールに損傷が生じているにもかかわらず,それより突出したフ ロントフェンダーに損傷が生じていないこと,右リヤアウトサイドパネルには,上部に損傷が生じているものの下部には損傷がないことなどが認められ,これらの事実は被告の主張する事故態様と整合しない。 そもそも,被告の主張する事故態様は,上記のとおり2回にわたって車庫に衝突したというものであって,これ自体,不自然・不合理である。また,被告 の本人尋問における供述は,事実関係につき全く覚えていない部分や曖昧な部分が多く,真に事故を体験した者の供述として不自然である。 (被告の主張)第1事故は実際に発生した。すなわち,被告は,①本 の本人尋問における供述は,事実関係につき全く覚えていない部分や曖昧な部分が多く,真に事故を体験した者の供述として不自然である。 (被告の主張)第1事故は実際に発生した。すなわち,被告は,①本件車両1を自宅の車庫に入れようとして,ハンドルを左に切りながら後退したところ,本件車両1の 左側面を壁に衝突させてしまった,②そこで車庫入れをし直そうとしたところ, 今度は本件車両1の右側面を車庫の支柱に衝突させてしまったものである。 原告は,被告の主張する事故態様が客観的な損傷状況と整合しないと主張するが,ハンドルを左に切りつつも,一時的に右に切った可能性もあるのであり,そうであれば客観的な損傷状況と整合しないとまではいえない。また,本件車両1に生じた損傷のうち一部は,第1事故とは別の機会に生じた可能性もある。 そもそも原告は被告の主張及び供述が不自然であるなどと主張するが,第1事故が発生したのは平成24年であり,本人尋問の実施時には既に5年が経過していたのであって,被告の記憶が相当減退していたとしても不自然ではない。 (2) 争点(1)イ(第2事故に係る保険金の不正請求の有無)について(原告の主張) 第2事故は,実際には発生しておらず,これに係る被告の保険金請求は不正請求である。このことは,以下の事実から明らかである。 ア本件車両1には,第2事故より後の平成26年8月15日の時点でも,盗まれたとするカーナビと同機種のカーナビがなお搭載されていた。そして,第2事故の当時,同機種のカーナビの生産は終了していたのであって,カー ナビは実際には盗まれていなかったものと推認される。 イ補助参加人作成の見積書にはキーシリンダーやインストルメントパネルの取替修理代が計上されていたが,実際にこれらが取替修理された ,カー ナビは実際には盗まれていなかったものと推認される。 イ補助参加人作成の見積書にはキーシリンダーやインストルメントパネルの取替修理代が計上されていたが,実際にこれらが取替修理された形跡はない。 また,被告は「運転席側の鍵穴に鍵を差し込もうとしたところ,差し込め なかった」と主張するが,第2事故直後の平成24年12月4日の時点で,鍵穴に鍵を差し込むことができていた。 ウ被告は第2事故について警察に被害届を提出したと主張していたが,実際には届出をしていなかった。 エ一般的なカーナビ窃盗の場合,①犯行時間短縮のため,ガラス割損の方法 を取るのが最も一般的であり,仮に鍵破損の方法を取る場合でも鍵周りの鋼 板を破壊する方法が一般的,②同じく犯行時間短縮のため,配線を切断するのが一般的,③カーナビを取り付けているボルトを外すため,インストルメントパネルを外す必要があり,その際,カーナビ付近のパネルに損傷が生じる。しかるに,本件の場合には,いずれの方法も取られていなかった。 (被告の主張) 第2事故は実際に発生した。すなわち,①本件車両1に乗車するため運転席側の鍵穴に鍵を差し込もうとしたところ,差し込むことができず,ドアを引いたらドアが開いてしまった,②本件車両1に搭載していたカーナビが取り外されて盗まれており,また後部トランクに積んでいた冬タイヤ4本も盗まれていた,③補助参加人に修理を依頼した結果,鍵穴が修理され,鍵を差し込める状 態となったものである。 この点に関する原告の主張は,以下のとおりいずれも理由がない。 ア本件車両1に搭載していたカーナビは,実際に盗まれている。第2事故の後も本件車両1にはこれと同機種のカーナビが搭載されているが,これは,盗難後,補助参加人において,イン りいずれも理由がない。 ア本件車両1に搭載していたカーナビは,実際に盗まれている。第2事故の後も本件車両1にはこれと同機種のカーナビが搭載されているが,これは,盗難後,補助参加人において,インターネットオークションを通じて同機種 の中古品を購入し,取り付けてもらったものである。 イ確かにキーシリンダーの取替修理は行われていないが,実際にはキーシリンダーのうち鍵穴部分の修理が行われたのであり,具体的には,キーシリンダーの内部プレートの変形を手作業で元に戻す作業が行われたものである。 また,確かにインストルメントパネルの取替作業は行われていないが,実 際には,傷を目立たなくするような修理が行われている。 ウ被告は警察に被害届を提出していたし,仮に被害届を提出していなかったとしても,警察に被害の届出をしない動機は様々であるから,届出をしないからといって第2事故が偽装されたものであるということにはならない。 エ原告は第2事故の発生状況が「一般的カーナビ窃盗」の方法とは異なり不 自然である旨主張するが,原告の主張する「一般的なカーナビ窃盗」という ものには何の裏付けもなく,第2事故の発生状況は不自然ではない。 (補助参加人の主張)補助参加人は高級車を日常的に扱う業者であって,20万円程度のカーナビの取替費用を詐取するほど困窮してはいない。 (3) 争点(1)ウ(第3事故に係る保険金の不正請求の有無)について (原告の主張)第3事故は,実際には発生しておらず,これに係る被告の保険金請求は不正請求である。このことは,以下の事実から明らかである。 ア自動車が勢いよく衝突する場合には,車体のうち進行方向の側が浮き上がり,これと反対の側が沈み込む現象(スクォウト)が発生する。 求である。このことは,以下の事実から明らかである。 ア自動車が勢いよく衝突する場合には,車体のうち進行方向の側が浮き上がり,これと反対の側が沈み込む現象(スクォウト)が発生する。 本件において,仮に被告の主張どおり,後退の際に「アクセル操作を誤り・・・勢いよく衝突させてしまった」のであれば,上記現象により本件車両2の後部が浮き上がり,その結果,本件車両2の損傷はA車両の前部の損傷よりも低い位置に印象されるはずである。しかるに,実際には,これとは逆に,本件車両2の損傷はA車両の前部の損傷の約7cm 上方に印象されてい る。 イ被告は,本件車両1を既に所有していたにもかかわらず,本件車両2を購入している。しかも,本件車両2は平成23年3月10日付けで一時抹消登録されており,前所有者からの名義変更もされていない。さらに,本件車両2は,補助参加人の工場に保管されたまま「ほったらかし状態」になってい たというのである。 また,A車両についてみても,同車は第3事故の当日に車検切れを迎えようとしていたところであった。 ウ被告は,本件車両2について本件保険契約2を締結した後,わずか3か月後に車両保険を付保し,その結果,保険料が年額22万7010円にまで上 がることとなった。他方,被告は,本件車両2をわずか80万円で購入した 旨説明しているのであって,このような額で購入した本件車両2について高額の保険料を支払うというのは不自然である。 エ第3事故の事故前後の状況につき,被告とAの説明には相違がみられる上,被告やAの説明自体にも,他の車両も通行する道路上において約20mも後退したなど不自然な点がある。 また,被告は第3事故の発生後に本件車両2及びA車両の両方をレッカー車で運んだ旨説明してい 被告やAの説明自体にも,他の車両も通行する道路上において約20mも後退したなど不自然な点がある。 また,被告は第3事故の発生後に本件車両2及びA車両の両方をレッカー車で運んだ旨説明しているが,Aは被告から「レッカー車で運んだことにしてくれ」との指示を受けた旨説明している。 オ被告は事故を平成24年11月頃にも起こした旨説明しており,第1事故ないし第3事故を加えると,わずか8カ月の間に4回もの事故を起こしたこ とになるが,これは極めて不自然である。加えて,第1事故ないし第3事故にはいずれも修理業者として補助参加人が関与しているのであって,これらの事故が真に発生したものとは考え難い。 (被告の主張)第3事故は実際に発生した。すなわち,①被告は本件車両2を運転し,従業 員であるAはA車両を運転して,札幌市a区所在の補助参加人の工場に向かった,②しかるに,当該工場を通過してしまったため,被告は本件車両2を緩やかに後退させたが,アクセル操作を誤り,本件車両2の後部を後続のA車両の前部に勢いよく衝突させてしまったものである。 この点に関する原告の主張は,以下のとおりいずれも理由がない。 ア原告は本件車両2の後部の損傷の方がA車両の前部の損傷よりも約7cmも高い位置に印象されていることを指摘するが,この点については,道路上の凹凸などによりその程度の高低差が生じることも十分考えられる。また,衝突直前に減速することができていたのであれば,多少のノーズダイブ(進行方向の側が沈み込む現象)が生じるから,上記のような損傷となるはずで ある。 イ被告は任意保険に加入する際には常に車両保険を付保しており,本件車両2についても,当初は保険料負担を考慮して車両保険を付保しないこととしたものの,冬期の となるはずで ある。 イ被告は任意保険に加入する際には常に車両保険を付保しており,本件車両2についても,当初は保険料負担を考慮して車両保険を付保しないこととしたものの,冬期の車両事故の危険を考慮して追加的に付保したものであって,こうした経緯に何ら不自然な点はない。 ウ被告とAの説明に整合しない部分があるとしても,これのみで第3事故発 生の事実自体を疑うことはできないし,道路上を約20m程度後退することが特段不自然ともいえない。 また,Aの説明内容が記載された書面については,そもそもその内容を記載したのはA自身ではないし,Aは原告側の調査員から署名押印を強く求められたものと考えられる。現に,Aは証人として出廷することを拒絶してお り,これはレッカー車に関する嘘が露見することを恐れたためである。 エ多数の事故が発生しているからといって,それらが全て虚偽であるとするのは論理の飛躍がある。 (4) 争点(1)エ(損害発生の有無及びその額)について(原告の主張) 原告は,被告の不正な保険金請求により,第1事故及び第2事故に係る保険金合計116万7830円の支払及び本件各事故に係る調査費用合計193万4864円の支払を余儀なくされた。また,本件訴訟を提起するに際し弁護士に訴訟追行を委任せざるを得なくなったところ,被告の行為と因果関係のある費用としては,31万円が相当である。 したがって,被告の不正請求により原告の被った損害額は,上記合計341万2694円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 (補助参加人の主張) 原告の主張する調査費用は損害として認められるべきではなく,また,不相 当に高額である。 (5) 争点(2)(第3事故に係る 否認ないし争う。 (補助参加人の主張) 原告の主張する調査費用は損害として認められるべきではなく,また,不相 当に高額である。 (5) 争点(2)(第3事故に係る保険金請求権の有無)について(被告の主張)上記(3)で主張したとおり,第3事故は実際に発生したのであるから,被告は,原告に対し,本件保険契約2に基づき,①対物賠償責任保険金としてA車 両の修理費用5万8800円,②車両保険金として本件車両2の修理費用のうち80万円(合計85万8800円)の支払を求めることができる。 (原告の主張)否認ないし争う。上記(3)で主張したとおり,第3事故は実際には発生していない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)ア(第1事故に係る保険金の不正請求の有無)について(1) 被告は,第1事故は実際に発生した事故である旨主張し,具体的には,①本件車両1を自宅の車庫に入れようとして,ハンドルを左に切りながら後退したところ,本件車両1の左側面を壁に衝突させてしまった,②そこで車庫入れを し直そうとしたところ,今度は本件車両1の右側面を車庫の支柱に衝突させてしまったなどと主張する。 この点,確かに,本件車両1の写真(甲23)によると,第1事故が起きたとされる平成24年8月17日の後,本件車両1の左側面部には①フロントバンパフェイスの左前面,②左フロントホイール,③左ドアミラー,④左リヤド アパネル,左リヤアウトサイドパネル,左サイドシルガーニッシュ(以下「左リヤドアパネル等」という。),⑤左リヤホイールの各部に擦過傷が存在し,また,右側面部には⑥右ドアミラー,⑦右フロントドアパネル,右リヤドアパネル,⑧右リヤアウトサイドパネルの各部に擦過傷が存在していたことが認められる(別紙 ,⑤左リヤホイールの各部に擦過傷が存在し,また,右側面部には⑥右ドアミラー,⑦右フロントドアパネル,右リヤドアパネル,⑧右リヤアウトサイドパネルの各部に擦過傷が存在していたことが認められる(別紙図面1参照)。 そして,前記前提事実のとおり,被告は原告に対して第1事故が発生した旨 申告し,本件保険契約1に基づく保険金を請求したものであって,その修理先とされた補助参加人に対しては,原告から車両保険金64万9446円が支払われているところである(前記第2,1(4)ア)。 (2) しかしながら,以下のとおり,被告の主張・供述する事故態様は,およそ本件車両1に生じた損傷の客観的状況と整合するものではない。 アまず,被告は,「本件車両1を車庫に入れようとして,ハンドルを左に切りながら後退したところ,本件車両1の左側面を車庫の壁に衝突させてしまった」と主張し(上記1(1)),本人尋問においてもおおむねこれに沿う供述をするとともに(被告本人〔第1回・1,7ないし10頁〕),本件車両1の動きを別紙図面2のとおり図示している。 しかし,ハンドルを「左」に切りながら後退した場合,最も内側を通過するのはその左後輪部となるはずである(甲22〔5ないし8頁〕)。しかるに,本件車両1の左後輪部(左リヤホイール)には軽微で古い擦過痕しか見当たらず,逆に,左後輪部よりも壁から離れた部分を通過するはずの左リヤドアパネル等には大きな損傷が生じている(甲22〔8頁〕,23)。そもそも, ハンドルを「左」に切りながら自動車を後退する場合,後輪部よりも前の部位は壁から離れていくことになるのであるから,後輪部よりも前に位置する左リヤドアパネル等が壁に衝突すること自体,にわかに考え難いところである(甲22〔9 がら自動車を後退する場合,後輪部よりも前の部位は壁から離れていくことになるのであるから,後輪部よりも前に位置する左リヤドアパネル等が壁に衝突すること自体,にわかに考え難いところである(甲22〔9頁〕参照)。 また,被告は,本件車両1を後退させる際,左右両方のドアミラーを「畳 んでいた」と供述しているにもかかわらず(被告本人〔第1回・11頁〕),本件車両1の左ドアミラーにはその端部にのみ擦過傷が存在しており(甲22〔9頁〕,23),ドアミラーを「畳んでいた」場合に壁と衝突するはずの前部(畳んだ場合に最も外側になる部分)には擦過傷が全く見当たらない。 さらに,本件車両1の左側面には,フロントバンパフェイスの左前面及び 左フロントホイールにも擦過傷が存在している(前記(1))。しかるに,被告 は,単に本件車両1の左側面の「ドア」ないし「ドア付近」が衝突したとしか供述しておらず,(被告本人〔第1回・1,2頁〕)「ドア」ないし「ドア付近」以外の場所が衝突したとは供述していない。また,この点を措くとしても,左フロントホイールの外側に位置する左フロントフェンダーは損傷が見られないのであって(甲22の「添付解析資料1」),車庫の壁が地面に垂直 であること(甲11)も考慮すると,被告の主張する衝突態様によって,左フロントフェンダーが損傷せずに左フロントホイールのみが損傷するというのは,にわかに考え難い(甲24の1参照)。 イ次に,被告は,「そこで車庫入れをし直そうとしたところ,今度は本件車両1の右側面を車庫の支柱に衝突させてしまった」と主張し,本人尋問におい てもおおむねこれに沿う供述をする(被告本人〔第1回・2,12ないし16頁〕)。 しかし,本件車両1の右側面のうち右リヤア 車庫の支柱に衝突させてしまった」と主張し,本人尋問におい てもおおむねこれに沿う供述をする(被告本人〔第1回・2,12ないし16頁〕)。 しかし,本件車両1の右側面のうち右リヤアウトサイドパネルには,その上部には擦過傷が存在するが,下部には擦過傷が存在しない(甲24の2〔1頁〕)。しかるに,右リヤアウトサイドパネルの形状は上部よりも下部が外側 にせり出しているものであり(甲24の2〔2頁〕),他方で,衝突したとする「車庫の支柱」は地面に垂直であるから(甲11),本件車両1の右側面(右リヤアウトサイドパネル)が「車庫の支柱」に衝突したにもかかわらず,右リヤアウトサイドパネルの上部にしか擦過傷が生じないというのは,にわかに考え難い。 また,上記アのとおり,被告は左右両方のドアミラーを「畳んでいた」と供述しているところ(被告本人〔第1回・11頁〕),本件車両1の右ドアミラーについても,その端部にのみ擦過傷が存在しており(甲23),ドアミラーを「畳んでいた」場合に車庫の支柱と衝突するはずの前部(畳んだ場合に最も外側になる部分)には擦過傷が全く見当たらない。 (3) そもそも,第1事故に関する被告の供述内容は,上記のとおり,①まず本件 車両1の左側面が壁に衝突し(1回目の衝突),②そこで車庫入れをし直そうとしたところ,今度は右側面を車庫の支柱に衝突させてしまった(2回目の衝突)というものである。 しかるに,仮にこのような事故があったとすれば,1回目の衝突で止まるなりするのが通常であり,仮に車庫入れを継続するとしても相当慎重に運転する ものと思われるところであって,立て続けに2回もの衝突を惹起したということ自体,通常は想定し難いものといわざるを得ない。 (4) 加えて,第1 仮に車庫入れを継続するとしても相当慎重に運転する ものと思われるところであって,立て続けに2回もの衝突を惹起したということ自体,通常は想定し難いものといわざるを得ない。 (4) 加えて,第1事故の具体的態様に関する被告の主張・供述態度自体についても,以下のとおり,不自然といわざるを得ない点が多々存在する。 アそもそも被告は,第1事故の態様につき概括的に上記(1)のような主張を したのみで(平成29年4月4日付け第1準備書面),その後,事故の具体的態様につき図面等で明らかにするよう度々求められながらも,直ちにこれを明らかにすることはなかった。その結果,被告は本訴提起から本人尋問(第1回)に至るまでの10か月もの間,一切の図面等を提出せず,原告側の用意した図面上での本件車両1の動きを説明することすら拒み続けていたも のである。 イそして,被告はようやく本人尋問(第1回)において第1事故の態様等につき具体的な供述をし始め,本件車両1の動きを別紙図面2のとおり図示するに至ったものであるが,その供述内容はおよそ明確なものとはいえない。 すなわち,被告はそもそも車庫に「前進」で入れたのか「後退」で入れた のかという最も基本的な点についてすら,おおむね「後退」で入れたと供述しつつも(被告本人〔1回目・1,7,8頁〕),時には「(後退だったという明確な記憶は)余りありません」と供述したり,前進だったかもしれないのかと問われて「はい」と供述したりしている(同〔1回目・6,7頁〕)。 また,被告は,1回目の衝突の後,一旦止まったのか,降車して衝突箇所 を見たのかと質問されながらも「覚えていません」と供述し(同〔1回目・ 14頁〕),1回でも車から降りた記憶はないのかと聞かれても「覚えていません」と供述し のか,降車して衝突箇所 を見たのかと質問されながらも「覚えていません」と供述し(同〔1回目・ 14頁〕),1回でも車から降りた記憶はないのかと聞かれても「覚えていません」と供述しているほか(同〔1回目・28頁〕),損傷状況をいつ確認したのかについても「覚えていません」と述べ(同〔1回目・20頁〕),そもそも損傷状況を確認したのかどうかすら「覚えておりません」などと供述し(同〔1回目・20頁〕),本件車両1を衝突させた車庫の支柱の損傷程度に ついても「分かりません」「覚えていません」などと供述しているものである(同〔1回目・19頁〕)。 さらに,被告は,衝突したのが何時ぐらいだったかも「覚えていません」と供述し(同〔1回目・4頁〕),朝だったか午後だったか夜だったか全く覚えていないのかと問われて「はい」と答え(同〔1回目・4頁〕),この事故 を原告にいつ報告したのかも「覚えていません」と供述し(同〔1回目・4頁〕),そもそもどこへ行った帰りの事故だったのかも「覚えていません」と供述しているところである(同〔1回目・6頁〕)。 このように,被告の本人尋問における供述は,要は第1事故についての記憶がほとんど残っていないというものであるところ,供述時(平成29年1 1月)から約5年前の事故とはいえ,自宅アパートの駐車場で2回にわたって衝突事故を起こし,自ら保険金請求をしたという特異な出来事についてここまで記憶が残っていないというのは,それ自体不自然というほかない。 ウなお,被告は,反対尋問において,本件車両1をいつ購入したのか,第1事故の前に傷が付いたということはあったのかと問われても,いずれも「覚 えていません」と述べているのであって(同〔1回目・21頁〕),第1事故自体について記憶がないだけで つ購入したのか,第1事故の前に傷が付いたということはあったのかと問われても,いずれも「覚 えていません」と述べているのであって(同〔1回目・21頁〕),第1事故自体について記憶がないだけではなく,その前に本件車両1で他の事故を起こしていたか,他に傷が付いていたかといった,車両の使用者として通常把握しているはずの事実についてすら記憶がないというのは,やはり不自然というほかない。 エ以上のように,被告の本訴における主張態度及び本人尋問における供述態 度は極めて不自然なものであって,もはやこれを記憶の減退だけで説明することは困難といわざるを得ず,かえって,本件事故が実際には発生していないことが強く推認されるものというべきである。 (5) 以上の諸点を総合考慮すると,被告のいう第1事故が実際に生じたものとはおよそ考え難いのであって,被告は,実際には保険事故が発生していなかった にもかかわらず,あえてこれを申告し,原告に対して保険金の請求をしたものと推認せざるを得ないのであり,なおかつこの推認を覆すに足りる証拠は見当たらない。 したがって,被告による第1事故に係る保険金請求は不正請求であって,この点につき被告は不法行為責任を負うものというべきである。 (6) この点につき被告は,①(上記(2)アに関し)後退中にハンドルを一時的に「右」に切り替えていた可能性もある,②本件車両1に生じた損傷のうち一部は第1事故とは別の機会に生じた可能性もある,などと主張する。 しかし,上記①については,車庫入れの際にそのようなハンドル操作をするものかどうか疑問がある(後退中に「左」に切ったハンドルを少し戻すことは あり得るが,ハンドルを正面まで戻した上でさらに「右」に切り替えるというのは想定し難い。)。上 ようなハンドル操作をするものかどうか疑問がある(後退中に「左」に切ったハンドルを少し戻すことは あり得るが,ハンドルを正面まで戻した上でさらに「右」に切り替えるというのは想定し難い。)。上記②については,本件車両1の8箇所もの損傷(上記(1)参照)のうちどの損傷が第1事故により生じたもので,どの損傷が別の機会に生じたものであるのか,被告は全く明らかにしていないし,そもそも被告が本件車両1の損傷につき何らの留保もなく保険金請求をし,その結果,車両保険 金として64万9446円もの額が支払われていること(上記(1)参照)とも整合しない。 したがって,被告の上記各主張は,いずれも採用することができない。 (7) 以上によれば,争点(1)アにおける原告の主張は,理由がある。 2 争点(1)イ(第2事故に係る保険金の不正請求の有無)について (1) 被告は,第2事故は実際に発生した事故である旨主張し,具体的には,①本 件車両1に乗車するため運転席側の鍵穴に鍵を差し込もうとしたところ,差し込むことができず,ドアを引いたらドアが開いてしまった,②本件車両1に搭載していたカーナビが取り外されて盗まれており,また後部トランクに積んでいた冬タイヤ4本も盗まれていた,③補助参加人に修理を依頼した結果,鍵穴が修理され,鍵を差し込める状態になった,などと主張する。 この点,確かに,前記前提事実のとおり,被告は第2事故が起きたとされる平成24年11月27日,原告に対して第2事故が発生した旨申告していたのであって(前記第2,1(4)イ),本件車両1の修理先とされた補助参加人には,原告から「ナビゲーション(カーナビ)」「キーシリンダー」「インストルメントパネル」及び「センターパネル」の取替作業代などとして合計39万02 1(4)イ),本件車両1の修理先とされた補助参加人には,原告から「ナビゲーション(カーナビ)」「キーシリンダー」「インストルメントパネル」及び「センターパネル」の取替作業代などとして合計39万0284 円の車両保険金が支払われているところである(甲2の2,甲5)。 (2) しかしながら,被告のいう第2事故が発生し,これにより上記各損傷が生じたことを裏付ける客観的証拠は,本件証拠上,やはり何ら存在しない。 のみならず,被告の主張する第2事故の具体的態様(上記(1))は,以下のとおり,証拠上認められる客観的な状況と整合せず,また被告の主張自体不自然 といわざるを得ないのであって,第2事故が実際に発生したものとはおよそ認めることができない。 アまず,証拠(甲5〔3頁〕,甲28の2)によれば,第2事故が発生したとされる平成24年11月27日当時に本件車両1に搭載されていたカーナビは,F株式会社製の「▲▲▲▲ 製品番号●●●●」であったものと認め られる。 しかるに,証拠(甲5〔7頁〕)によれば,第2事故の発生から1年以上が経過した平成26年8月15日の時点でも,本件車両1にはなお「▲▲▲▲ 製品番号●●●●」が搭載されていたことが認められる。そして,第2事故の当時,上記「▲▲▲▲ 製品番号●●●●」は既に製造終了になって いたものであり(甲8〔3頁〕),そのように製造終了となった製品をあえて 再購入する合理的理由も見当たらないのであって,本件においては,特段の事情のない限り,本件車両1に搭載されていたカーナビは実際には盗難されておらず,第2事故が発生されたとする日の前後を通じて本件車両1に搭載され続けていたものと推認せざるを得ない。 したがって,カーナビが盗まれたとする被告の主張自体,に いたカーナビは実際には盗難されておらず,第2事故が発生されたとする日の前後を通じて本件車両1に搭載され続けていたものと推認せざるを得ない。 したがって,カーナビが盗まれたとする被告の主張自体,にわかに採用す ることができない。 イ次に,第2事故に関して作成されたとされる補助参加人作成の見積書(甲15)には,「キーシリンダーセット」の「取替」が計上されており,現に,原告から補助参加人に支払われた車両保険金には,キーシリンダーの取替作業代が含まれていたところである(上記(1))。 しかし,本件車両1を撮影した写真(甲5〔6頁〕)によれば,第2事故から約1年9か月も経過した後の時点においてもキーシリンダーは取り替えられておらず,実際には「取替」修理などされていなかったことが認められる。 そもそも,被告は「運転席側の鍵穴に鍵を差し込もうとしたところ,差し 込むことができなかった」と主張しているところ(上記(1)),証拠(甲5〔5頁〕)によれば,第2事故が発生したとされる直後の平成24年12月4日の時点において,鍵は奥まで差し込める状態であったことが認められるのであって,第2事故に係る被告の主張はこの点からも疑いを差し挟まざるを得ない。 ウまた,補助参加人作成の上記見積書には,「インストルメントパネル」の「取替」が計上されており,現に,原告から補助参加人に支払われた車両保険金には,インストルメントパネルの取替作業代が含まれていたところである(上記(1))。 しかし,これも,本件車両1を撮影した写真(甲5〔4,8頁〕)によれば, 第2事故から約1年9か月も経過した後の時点においてもインストルメン トパネルは交換されておらず,実際にはその「取替」修理などされていなかった た写真(甲5〔4,8頁〕)によれば, 第2事故から約1年9か月も経過した後の時点においてもインストルメン トパネルは交換されておらず,実際にはその「取替」修理などされていなかったことが認められる。 エさらに,本訴において被告は,第2事件につき警察に被害届を提出したと主張しており(被告第1準備書面),本人尋問においてもその旨供述するとともに(被告本人〔第2回・2頁〕),盗難に気づいてから「5分以内」に1 10番通報をしたとまで供述している(被告本人〔第2回・20頁〕)。また,補助参加人の代表者であるBも,被告が警察に届け出をしたことは間違いない旨証言している(証人B〔19,20頁〕)。 しかし,第2事故の申告直後に行われた聞取り調査においては,被告は,警察への届出はしていないと述べ,その理由として,「届出などで時間を掛 けたくなかったし,警察に届出しても,何にも変わらないだろうと思ったからです」と述べていたところである(甲31〔7,8頁〕)。 そして,平成30年9月12日付けの厚別警察署長作成の回答書(甲37)によれば,被告から盗難事件の被害届は提出されていなかったことが認められる。 したがって,警察に被害届を提出したとする被告の主張・供述及びBの証言は事実に反するものである上,自己の使用する自動車が車上荒らしに遭ってカーナビ等を盗まれたというにもかかわらず,警察への被害届を提出していないこと自体,不自然といわざるを得ない。 オなお,原告によれば,一般的なカーナビ窃盗の場合,①犯行時間短縮のた め,ガラス割損の方法を取るのが最も一般的であり(甲9〔事例1ないし6〕),仮に鍵破損の方法を取る場合でも鍵周りの鋼板を破壊する方法が一般的である(同〔事例7〕),②同じく犯 行時間短縮のた め,ガラス割損の方法を取るのが最も一般的であり(甲9〔事例1ないし6〕),仮に鍵破損の方法を取る場合でも鍵周りの鋼板を破壊する方法が一般的である(同〔事例7〕),②同じく犯行時間短縮のため,配線を切断するのが一般的である(同〔事例1ないし7〕),③カーナビを取り付けているボルトを外すため,インストルメントパネルを外す必要があり,その際,カーナビ付 近のパネルに損傷が生じる(同〔事例2,4,6〕)というのである。 しかるに,本件車両1においては,①ガラス割損の方法は取られておらず,鍵周りの鋼板の破壊もされていないこと(甲5〔2,3頁〕),②配線の切断もされていないこと(同〔4,7頁〕),③カーナビ付近のパネルに損傷など生じていないこと(同〔4頁〕)がそれぞれ認められるところである。 したがって,このような観点からも,第2事故が実際に発生したとの被告 の主張には疑いを差し挟まざるを得ない。 (3) 以上の諸点を総合考慮すると,被告のいう第2事故が実際に生じたものとはおよそ考え難いのであって,被告は,実際には保険事故が発生していなかったにもかかわらず,あえてこれを申告し,原告に対して保険金の請求をしたものと推認せざるを得ないのであり,なおかつこの推認を覆すに足りる証拠は見当 たらない。 したがって,被告による第2事故に係る保険金請求は不正請求であって,この点につき被告は不法行為責任を負うものというべきである。 (4) この点に関して被告は種々の主張をするが,以下のとおり,いずれも採用することができない。 アまず,被告は,カーナビは実際に盗まれているのであって,第2事故の後に搭載されているカーナビは,事故後に補助参加人においてインターネットオークショ いずれも採用することができない。 アまず,被告は,カーナビは実際に盗まれているのであって,第2事故の後に搭載されているカーナビは,事故後に補助参加人においてインターネットオークションを通じて同機種の中古品を購入し,取り付けてもらったものである旨主張する。 しかし,なにゆえ生産中止となった同機種の中古品をあえて購入したのか については,被告ないし補助参加人から合理的な説明は何らされていない。 そもそも被告は,原告から中古品をどのインターネットオークションサイトで購入したのかなどを明らかにするよう求められながらも,本訴が提起されてから約1年9か月も経過した第7回口頭弁論期日に至るまでの間,これを全く明らかにしなかったものであるし,補助参加人の代表者であるBも,第 6回口頭弁論期日における証人尋問の際,「(どのサイトで買ったというのは) ちょっと記憶がないです。」と証言していたところである(証人B〔32頁〕)。 そして,補助参加人は,上記の第7回口頭弁論期日において初めて,同機種の中古品を有限会社Dから購入したとして,有限会社D及び補助参加人作成の「販売証明書」(丙1)を提出し,以後,これに沿う書証として,補助参加人の元従業員であるC作成の陳述書(丙2)及びB作成の「準備書面(6)の 返答」と題する書面(丙3)を提出するに至っている。しかし,結局のところ,上記各書証はいずれも客観的な裏付けを欠くものにすぎないし,このうちCについては,当審において証人尋問を実施するも,実質的な尋問が全く行われないまま終了している(証人C〔1頁〕)。さらに,有限会社Dのウェブサイト(甲39)には,同社における過去の販売製品が詳細に掲載されて いるが,この中に本件のカーナビと同機種の製品は掲載されていな まま終了している(証人C〔1頁〕)。さらに,有限会社Dのウェブサイト(甲39)には,同社における過去の販売製品が詳細に掲載されて いるが,この中に本件のカーナビと同機種の製品は掲載されていない。 なお,当審においては,有限会社Dの代表者であるEの証人尋問も実施し,同人はおおむね補助参加人の主張に沿った証言をしたところであるが,やはり客観的な裏付けを欠くことに代わりはない。のみならず,Eは,カーナビの販売実績等について聞かれると,「分からないです」(証人E〔1頁〕),「覚 えていないんです」「ちょっと分からないですね」「分かりません」(同〔4頁〕)などと述べ,補助参加人に販売したとする中古品の仕入れ先や仕入れ時期も「覚えてません」「分かりません」などと述べ(同〔6,7頁〕),補助参加人に販売した時期,補助参加人の担当者の名前,中古品の売却額などといった事項についても「覚えてません」と述べているところである(同〔1 1,12頁〕)。 したがって,この点に関する被告の主張は採用することができない。 イ次に,被告は,キーシリンダーの取替修理など行われていないことを認めた上で,キーシリンダーのうち鍵穴部分の修理のみが行われたのであり,具体的には「キーシリンダーの内部プレートの変形を手作業で元に戻す作業」 が行われたと主張する。 しかし,そもそも上記(2)イのとおり,本件車両1の鍵穴については鍵を奥まで差し込める状態であったのであるから,はたして鍵穴の修理が真に必要な状態であったのかどうか,疑問があるものといわざるを得ない。また,「キーシリンダーの内部プレートの変形を手作業で元に戻す作業」が具体的にどのような作業を指すものか,被告の主張に照らしても判然としないし, この点につき原 問があるものといわざるを得ない。また,「キーシリンダーの内部プレートの変形を手作業で元に戻す作業」が具体的にどのような作業を指すものか,被告の主張に照らしても判然としないし, この点につき原告から指摘を受けても被告は明らかにしようとしない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウまた,被告は,インストルメントパネルの取替修理など行われていないことを認めた上で,「傷を目立たなくするような修理」が行われたと主張する。 しかし,このような修理がされたことを裏付ける証拠は見当たらないし, かえって,証拠(甲5〔4,8頁〕,甲16)によれば,第2事故から約1年9か月も経過した後の時点においても,本件車両1のインストルメントパネルになお損傷が残存していることが認められる。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エさらに,被告は,仮に第2事故について警察に申告をしていなかったとし ても,被害の申告をしない動機は様々であるから,第2事故が偽装されたとするのは論理の飛躍があるなどと主張する。 しかし,そもそも被告は警察に被害届を提出していたと主張・供述していたところ,これが事実に反するのは上記(2)エにおいて認定したとおりであるし,被告のいう「被害の申告をしない動機」というのも果たして何を指す ものか全く明らかではない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 以上によれば,争点(1)イにおける原告の主張は,理由がある。 3 争点(1)ウ(第3事故に係る保険金の不正請求の有無)について(1) 被告は,第3事故は実際に発生した事故である旨主張し,具体的には,①被 告は本件車両2を運転し,従業員であるAはA車両を運転して,札幌 (第3事故に係る保険金の不正請求の有無)について(1) 被告は,第3事故は実際に発生した事故である旨主張し,具体的には,①被 告は本件車両2を運転し,従業員であるAはA車両を運転して,札幌市a 区所 在の補助参加人の工場に向かった,②しかるに,当該工場を通過してしまったため,被告は本件車両2を緩やかに後退させたが,アクセル操作を誤り,本件車両2の後部を後続のA車両の前部に勢いよく衝突させてしまった,などと主張する。 この点,確かに,証拠(甲6〔2ないし10頁〕)によれば,本件車両2の後 部とA車両の前部にはそれぞれ損傷が存在しているし,このうちA車両については,被告から見積書(乙2)及び補助参加人作成の納品請求書(乙3)が提出されている。そして,現に,被告は原告に対し,第3事故が発生した旨申告していたところである(前記第2,1(4)ウ)。 (2) しかしながら,被告のいう第3事故が発生し,これにより本件車両2及びA 車両にそれぞれ損傷が生じたことを裏付ける客観的証拠は,本件証拠上,やはり何ら存在しない。 のみならず,被告の主張する第3事故の具体的態様(上記(1))は,以下のとおり,証拠上認められる客観的な状況と整合せず,また被告の主張自体不自然といわざるを得ないのであって,第3事故が実際に発生したものとはおよそ認 めることができない。 アまず,「自動車復元修理ハンドブック」(甲7)によれば,自動車が勢いよく衝突する場合には,車体のうち進行方向の側が浮き上がり,これと反対の側が沈み込む現象(スクォウト)が発生することが認められる。 本件において被告は,本件車両2を後退させたところ「アクセル操作を誤 り・・・勢いよく衝突させてしまった」(上記(1))というのであるから,衝突 クォウト)が発生することが認められる。 本件において被告は,本件車両2を後退させたところ「アクセル操作を誤 り・・・勢いよく衝突させてしまった」(上記(1))というのであるから,衝突時には本件車両2の進行方向である後部の側が浮き上がることになり,その結果,本件車両2の後部の損傷は,A車両の前部の損傷よりも低い位置に印象されることになるはずである。 しかるに,証拠(甲6〔14ないし16頁〕)によれば,これとは逆に,本 件車両2の後部の損傷の方が,A車両の前部の損傷よりも約7cm も高い位置 に印象されていたことが認められる。 したがって,本件車両2及びA車両の損傷状況は,被告の主張する事故態様と整合しないものといわざるを得ない。 イそもそも,本件車両2は初度登録が平成4年4月の自動車であり(甲29),第3事故当時には登録から既に20年以上を経過していたものである。しか も,被告は本件車両2を平成24年8,9月頃に知人から購入した旨述べているが(甲10〔12頁〕),当時被告は既に本件車両1を所有していたのであるし,しかも本件車両2は平成23年3月10日付けで一時抹消登録されており,前所有者からの名義変更もされておらず(甲29),補助参加人の工場に保管されたまま「ほったらかし状態」になっていたというのである(証 人B〔59頁〕。被告本人〔第2回・38頁〕も参照)。 このような本件車両2につき,第3事故が発生し,これにより同車に80万円以上もの修理費用を要する損傷が発生したとの被告の主張(反訴状〔3頁〕)自体,疑いを差し挟まざるを得ない。 ウまた,A車両についてみても,同車は初度登録が平成12年3月の自動車 であり(乙3),第3事故当時には登録から13年を経過していた (反訴状〔3頁〕)自体,疑いを差し挟まざるを得ない。 ウまた,A車両についてみても,同車は初度登録が平成12年3月の自動車 であり(乙3),第3事故当時には登録から13年を経過していたものである上,まさに第3事故が発生したとする平成25年4月3日に車検切れを迎えようとしていたところである(乙3)。 このようなA車両につき,第3事故が発生し,これにより同車に20万円以上もの修理費用を要する損傷が発生したとの被告の主張(反訴状〔3頁〕) についても,上記イと同様,疑いを差し挟まざるを得ない。 エさらに,本件車両2に係る本件保険契約2についてみても,証拠(甲1の2,20の1,弁論の全趣旨)によると,①平成24年8月の締結当初は,車両保険は付保されておらず,保険料も年額6万7800円であった,②そのわずか3か月後に,被告は当該契約に車両保険を付保し,その結果,保険 料は年額22万7010円,分割払で月額2万5500円にまで跳ね上がっ たことが認められる。 他方,被告によれば,本件車両2の購入代金額は80万円でしかなく,しかもこれを月額3万円の分割払で支払っているというのである(甲10〔12頁〕)。 そして,被告がこのように本件保険契約2の締結からわずか3か月後に車 両保険を付保した合理的な理由は見当たらず,また,月額わずか3万円の分割払で購入した自動車に対し,これとほぼ同額(月額2万5500円)の保険料を支払ってまで車両保険を付保する合理的理由も見当たらないのであって,このような保険契約の締結・変更自体,不自然であるものといわざるを得ない。 オそして,衝突直前の行為につき,被告は「被告車両2から降りた上,A車両の運転席まで行き,後退するよう指示した」旨の説明をして 約の締結・変更自体,不自然であるものといわざるを得ない。 オそして,衝突直前の行為につき,被告は「被告車両2から降りた上,A車両の運転席まで行き,後退するよう指示した」旨の説明をしている一方(甲10〔3,4頁〕),Aは,これとは異なり,「被告は被告車両2から降りてはおらず,被告車両2の窓越しに指示してきた」旨の説明をしているのであって(甲18〔3頁〕),両者の説明は明らかに相違している。 また,上記(1)のとおり,被告は本件車両2を後退させたと主張しており,その距離は被告及びAともに「約20m」であったと説明しているところ(甲10〔3頁〕,甲18〔3頁〕),他の車両も通行する道路上において(しかも交差点の付近という。甲19参照),Uターンや迂回をするのではなく直接後退して戻るというのは,一見して危険な行為であって,このような行為に 及んだとの主張自体,不自然であるといわざるを得ない。 さらに,Aは,被告が被告車両2を後退させている間,「左前方」に時計塔が見えていた旨説明しているが(甲18〔3頁〕),Aが見ていたとする時計塔は衝突地点よりも後方にあるのであって,Aからは「左後方」に見えていたはずである(甲19)。 しかも,被告は,第3事故の発生後,本件車両2及びA車両の両方をレッ カー車で運んだ旨説明しているが(甲10〔9頁〕),これを裏付ける証拠はない。むしろ,この点については,被告と同様に第3事故が実際に発生した旨の説明をしているAにおいてすら,「被告から『レッカー車で運んだことにしてくれ』との指示を受けた」旨説明しており,もってレッカー車で運んだ事実を否定しているところである(甲17の2)。 カさらに,被告は,「警察官が臨場する前に本件車両2及びA車両の ことにしてくれ』との指示を受けた」旨説明しており,もってレッカー車で運んだ事実を否定しているところである(甲17の2)。 カさらに,被告は,「警察官が臨場する前に本件車両2及びA車両の両方を搬送しており,臨場の際には既に搬送済みであった」旨説明している(甲10〔7ないし9頁〕)。 しかし,警察に連絡をしておきながら,警察官が臨場するのを待たずに,衝突した被告車両2及びA車両を搬送してしまうというのは,真に事故を発 生させた当事者の行動としては疑問があるものといわざるを得ない。 キそして,被告は,第3事故によりA車両のフロントバンパーが損傷し,これに対して補助参加人が暫定的な修理をすることとなり,被告は補助参加人に対してその修理費用5万8800円を支払ったと主張するとともに,これに沿う補助参加人作成の納品請求書(乙3)を提出している。 しかし,Aは,第3事故の直後に確認したところ,A車両のフロントバンパーに傷はなかった旨説明していたのであって(甲17の1〔1頁〕,甲17の2〔3頁〕),この点についても被告の主張とAの説明との間に明らかな相違がある。 (3) 以上の諸点を総合考慮すると,被告のいう第3事故が実際に生じたものとは およそ考え難いのであって,被告は,実際には保険事故が発生していなかったにもかかわらず,あえてこれを申告し,原告に対して保険金の請求をしたものと推認せざるを得ないのであり,なおかつこの推認を覆すに足りる証拠は見当たらない。 したがって,被告による第3事故に係る保険金請求は不正請求であって,こ の点につき被告は不法行為責任を負うものというべきである。 (4) この点に関して被告は種々の主張をするが,以下のとおり,いずれも採用することが 保険金請求は不正請求であって,こ の点につき被告は不法行為責任を負うものというべきである。 (4) この点に関して被告は種々の主張をするが,以下のとおり,いずれも採用することができない。 アまず,被告は,本件車両2の後部の損傷の方がA車両の前部の損傷よりも約7cm も高い位置に印象されていた点につき,①道路上の凹凸などによりその程度の高低差が生じることも十分考えられる,②衝突直前に減速すること ができていたのであれば,多少のノーズダイブ(進行方向の側が沈み込む現象。甲7)が生じるから,上記のような損傷となる,などと主張する。 しかし,上記①については,現場の道路は平たんであって,本件のような高低差が生ずるような段差,凹凸等は見当たらない(甲6〔15頁〕)。上記②については,被告は「(衝突前には)ブレーキを踏んではいません」「ぶつ かってからブレーキを踏んでいると思います」と説明しており(甲10〔5頁〕),「ブレーキを踏んだ程度」という質問事項に対しても「ふんでいない」と回答している(同〔5頁〕)。 したがって,被告の上記各主張は,いずれも採用することができない。 イ次に,被告は,平成24年11月に本件保険契約2に車両保険を付保した のは,冬季が近付いてきて事故の可能性が増大することなどを踏まえたものであって,不自然ではないなどと主張する。 しかし,被告からは結局,車両の購入代金に比して比較的高額ともいえる保険料を負担してまで車両保険を付保したことの合理的な説明はされていない。被告の上記主張は,採用することができない。 ウさらに,被告は,Aが「被告から『レッカー車で運んだことにしてくれ』との指示を受けた」との説明を書面(甲17の2)でしている点につき,①当該 告の上記主張は,採用することができない。 ウさらに,被告は,Aが「被告から『レッカー車で運んだことにしてくれ』との指示を受けた」との説明を書面(甲17の2)でしている点につき,①当該書面の内容そのものを記載したのはA自身ではなく,Aは原告側の調査員から当該書面への署名押印を強く求められてこれを行ったにすぎないものと考えられる,②現に,Aは証人として出廷することを拒絶しており(甲 27),これはレッカー車に関する嘘が露見することを恐れたためである, などと主張する。 しかし,被告も自認するとおり,上記書面にはAの署名押印があるのであって,かかる署名押印がその意思に反してまで強引にされたことをうかがわせるような事情も見当たらない(むしろ,Aの説明内容は,基本的には第3事故が実際に発生したとするものであり,原告の主張に反する内容であって, そのような書面に原告側の調査員が強引に署名押印を求めたものとはにわかに考え難い。)。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (5) 以上によれば,争点(1)ウにおける原告の主張は,理由がある。 4 争点(1)エ(損害発生の有無及びその額)について (1) 既払保険金額前記のとおり,原告は,第1事故に係る保険金として補助参加人に対し64万9446円を,車庫の修理先とされた修理業者に対し12万8100円を,第2事故に係る保険金として補助参加人に対し39万0284円を支払ったところ(前記第2,1(4)ア,イ),上記1ないし3において認定説示したとお り,そもそも第1事故及び第2事故は実際には発生しておらず,被告によるこれらの保険金請求は不正請求であったのであるから,上記各保険金の支払は,被告の不法行為(保険金の不正請求)と相当因 とお り,そもそも第1事故及び第2事故は実際には発生しておらず,被告によるこれらの保険金請求は不正請求であったのであるから,上記各保険金の支払は,被告の不法行為(保険金の不正請求)と相当因果関係のある損害であるものと認められる。 (2) 調査費用 証拠(甲3,4〔いずれも枝番号を含む。〕)によれば,原告は,第1事故ないし第3事故の実態の調査のために調査会社に対して調査を依頼し,その結果,第1事故につき20万1147円,第2事故につき10万4790円,第3事故につき162万8927円の調査費用を支払ったものと認められる。 そして,本件のように保険契約者が保険事故を偽装して保険金の不正請求を する場合,その実態を解明するための調査費用も当該不正請求と相当因果関係 のある損害に当たるというべきであり,本件証拠上,前記調査内容の相当性を否定すべき事情もうかがわれないから,上記の合計額である193万4864円につき,被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。 (3) 弁護士費用本件事案の難易,請求額,認容額その他諸般の事情を考慮すると,被告の不 法行為と因果関係のある弁護士費用相当の損害は,31万円と認められる。 (4) 小計以上を合計すると,被告の不法行為によって原告に生じた損害額は,341万2694円となる。 5 争点(2)(第3事故に係る保険金請求権の有無)について 上記3において認定説示したとおり,そもそも第3事故は実際には発生していなかったのであるから,被告による第3事故に係る保険金請求権はその前提を欠くことになる。 したがって,争点(2)における被告の主張は,理由がない。 6 結論 よって,原告の被告に対する本訴請求には理由がある 第3 事故に係る保険金請求権はその前提を欠くことになる。したがって,争点(2)における被告の主張は,理由がない。 6 結論 よって,原告の被告に対する本訴請求には理由があるからこれを認容し,被告の原告に対する反訴請求には理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官 孝 裁判官河野文彦 裁判官佐藤克郎 (別紙)図面1
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