令和7(行ケ)10042 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月13日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文31,168 文字)

令和7年11月13日判決言渡令和7年(行ケ)第10042号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和7年10月9日判決 原告 X同訴訟代理人弁護士和田宣喜同訴訟代理人弁理士柴田富士子 被告 Y 同訴訟代理人弁護士笠原基広同野村信之同訴訟代理人弁理士木村満同吉松こず恵同山野有希子 同鈴木いづみ同木村一弘 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 この判決で用いる主な略語は、他に本文中で定義するもののほか、次のとおりである。 本件商標:別紙「商標目録」記載の立体商標(商標登録第6118205号。平成28年12月16日商標登録出願、平成30年11月13日登録審 決、平成31年2月1 日設定登録、甲1、2、乙1) 引用商標:別紙「引用商標目録」記載の商標(原告が販売する商品、甲8の10等)本件審判請求:原告が本件商標についてした商標登録無効審判請求(無効2023-890045号事件)本件審決:特許庁が本件審判請求(無効2023-890045号事件)につい て令和7年3月25 本件審判請求:原告が本件商標についてした商標登録無効審判請求(無効2023-890045号事件)本件審決:特許庁が本件審判請求(無効2023-890045号事件)につい て令和7年3月25日にした「本件審判の請求は、成り立たない」とした審決原告商標:別紙「原告商標目録」記載の商標(商標登録第5788440号。 甲51)埋金法:文献に記載された埋金法は、概ね、木製の箱に、金属の玉、願い事を記 載した紙、金属粉を入れ、蓋をして紐で結わき、吉日、吉時、吉方位の土中に埋めるという、九星気学・遁甲術の方位学に基づく開運法の一種をいう(甲6の5~7)。 埋金セット:埋金法に用いられる開運祈願用道具のセットであり、概ね、収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした道具セットをいう。 埋金法に係る商品又は役務:埋金セット若しくはこれと同種類の商品、又はこれらの商品を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供専章堂:埼玉県川口市に所在していた印象関連・開運用品の総合卸売店。昭和43年頃から埋金セットを製造販売していたが、平成23年(2011 年)頃閉店した。 A氏:鑑定士であるA第1 請求特許庁が無効2023-890045号事件について令和7年3月25日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、登録商標の商標登録無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、当該登録商標の商標法3条1項2号、同項3号、同項6号、4条1項7号、同項10号、同項15号、同項16号及び同項19号の各該当性である。 2 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告は、本件商標(商標登録第6118205号。平成30年11月13日登 7号、同項10号、同項15号、同項16号及び同項19号の各該当性である。 2 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告は、本件商標(商標登録第6118205号。平成30年11月13日登録審決、平成31年2月1日設定登録)の商標権者である。 ⑵ 原告は、本件商標について、本件審判請求(商標登録無効審判請求)をし、特許庁は、これを無効2023-890045号事件として審理した。 ⑶ 特許庁は、令和7年3月25日「本件審判の請求は、成り立たない。」とする本件審決をし、その謄本は同年4月1日に原告に送達された。 ⑷ 原告は、令和7年4月28日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 3 本件商標 ⑴ 本件商標は、別紙「商標目録」記載1の構成からなり、同別紙記載2の第21類の商品(気学・遁甲術の方位学を用いて導かれた所定の場所に埋めることを目的とした開運祈願用道具〔収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした道具セットであって、お守り札に願い事等を書き込み、収納箱の中に球体を入れたら、書き込んだお守り札も入れ、その上に金粉を降り かけた後、収納箱の蓋を閉じ、布で収納箱を包み、麻紐で縛ったものが完成品であり、これ自体が所定の場所に埋められるものである。〕)及び第45類の役務(…気学・遁甲術の方位学を用いて埋める…開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供、金属の球体からなる開運祈願用お守り・祈願文書・収納箱・お守り札・ 麻紐・布・金粉・球体を一組とした開運祈願用道具を用いた開運方法に関す る占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供)を指定商品及び指定役務とする立体商標である。 ⑵ 本件商標の構成(以下 ・球体を一組とした開運祈願用道具を用いた開運方法に関す る占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供)を指定商品及び指定役務とする立体商標である。 ⑵ 本件商標の構成(以下「本件構成」という。)は、略立方体形状の本体と蓋(落し蓋)からなり、以下のアからウまでのとおり、その上面、左側面及び右側面には、次の文字又は図形が表示されているが、その正面、背面及び 底面には、いずれの文字又は図形も表示されていない。 ア上面には、朱色の八角形の「方位盤」が表示され、当該八角形の正面側の一辺と重なるように黒色の「東」の文字が表示されている。 (上面、正面) イ左側面には、朱色の「変り羽団扇」の図形が表示され、その上に重ねて、黒色の「祝詞師」及び「敬白」の各文字が2行で表示されている。 (左側面) ウ右側面には、黒色の「土金兼備祭」及び「祭主」の各文字が2行で表示されている。 (右側面) 4 引用商標 ⑴ 引用商標は、別紙「引用商標目録」記載の構成からなり、開運祈願用道具(収納箱、お守り札、麻紐、布、金粉、球体を一組とした道具セット)として原告が販売する商品である。 ⑵ 引用商標の収納箱の構成は、立方体形状の本体と蓋(落し蓋)からなり、その上面に上記3⑵アと同様の、左側面に上記3⑵イと同様の、文字及び図 形が表示されている(正面及び背面には、いずれの文字も記載されていないことが窺われる(甲6の1)。右側面には文字が記載されているが、不鮮明である(甲8の5)。)。 5 本件審決の理由の概要⑴ 商標法3条1項2号該当性 埋金法に係 字も記載されていないことが窺われる(甲6の1)。右側面には文字が記載されているが、不鮮明である(甲8の5)。)。 5 本件審決の理由の概要⑴ 商標法3条1項2号該当性 埋金法に係る商品又は役務について、埋金セット(本件商標と同一か明らかでない。)を製造販売していた専章堂が閉店した平成23年(2011年)の前後を通じて、本件商標が同業者により使用されていたことや、同業者によるウェブサイト等が広く一般に周知されたことを認めることはできず、本 件商標と同種商品の販売個数・売上金額の多寡等も確認することができない。 そうすると、本件商標は、その登録審決時以前から、埋金法に係る商品又は役務において同業者間において広く一般に広告、販売、提供されていたとはいえないから、同種類の商品又は役務について、同業者間において普通に使用されるに至った結果、自己と他人の商品又は役務を識別することができ なくなったものとはいえない。よって、本件商標は、慣用されている商標とはいえず、商標法3条1項2号に該当しない。 ⑵ 商標法3条1項3号該当性本件商標を構成する文字及び図形は、埋金法で必ず用いられるものではなく、指定商品及び指定役務に係る取引において商品の品質、用途、その他の 特徴又は役務の質、役務の提供の用に供する物、その他の特徴等を表示記述するものとして一般に用いられている実情もない。また、本件商標の形状の上面、左側面、右側面の文字及び図形は、識別力を有しており、立体商標全体としても自他商品及び役務識別力を発揮している。 そうすると、本件商標は、指定商品及び指定役務について商品の品質、用 途、その他の特徴又は役務の質、役務の提供の要に供する物、その他の特徴等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと うすると、本件商標は、指定商品及び指定役務について商品の品質、用 途、その他の特徴又は役務の質、役務の提供の要に供する物、その他の特徴等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとはいえず、商標法3条1項3号に該当しない。 ⑶ 商標法3条1項6号該当性本件商標は、商標法3条1項2号、3号に該当せず、同項1号、4号、5 号に該当すべき事情もない。そして、本件商標が、登録審決の時点で、埋金法に係る商品又は役務の取引において、特定人の独占使用を認めるのを公益上適当としないとか、一般的に使用される標章で自他商品及び役務識別力を欠くために商標の機能を果たし得ないとはいえない。 よって、本件商標は、商標法3条1項6号に該当しない。 ⑷ 商標法4条1項16号該当性 本件商標は、指定商品及び指定役務について商品の品質、用途、その他の特徴又は役務の質、役務の提供の用に供する物、その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとはいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が、その構成から直接的、具体的な商品の品質又は役務の質を看守するともいい難いから、これを指定商品及び指定役務に使用し ても商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれはない。 よって、本件商標は、商標法4条1項16号に該当しない。 ⑸ 商標法4条1項10号該当性原告は、埋金法に係る商品又は役務に引用商標を継続して使用していたことがうかがわれるが、その市場シェア、広告宣伝の規模等の証拠はなく、引 用商標が、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者の間で広く認識されていたとは認められない。原告以外の者の業務に係 、引 用商標が、本件商標の登録出願時及び登録審決時において、原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者の間で広く認識されていたとは認められない。原告以外の者の業務に係る引用商標についても同様である。「埋金」に係る市場規模を限定すべき理由もない。 そうすると、引用商標の周知性は認められず、本件商標が、引用商標と同 一または類似する商標であり、同一又は類似する商品・役務に使用するものであったとしても、商標法4条1項10号に該当しない。 ⑹ 商標法4条1項15号該当性引用商標は、周知性が認められず、その形状や構成要素の独創性の程度が高いとはいい難い。また、埋金法に係る商品又は役務の需要者には、占いに よって開運を願う一般の需要者が含まれる。 そうすると、本件商標と引用商標が、その構成や取引者・需要者に共通性があるとしても、取引者及び需要者の普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者が指定商品及び指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想想起し、他人 又は当該他人と経済的若しくは組織的に何等かの関係を有する者の業務に係 る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。 よって、本件商標は商標法4条1項15号に該当しない。 ⑺ 商標法4条1項19号該当性本件商標は引用商標と構成要素が共通するとしても、引用商標は、本件商 標の登録出願時及び登録審決時において、周知性は認められず、被告による本件商標の出願が引用商標の知名度に便乗した不正な意図を有するものとはいえない。商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目 び登録審決時において、周知性は認められず、被告による本件商標の出願が引用商標の知名度に便乗した不正な意図を有するものとはいえない。商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用するものとは認められない。 よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当しない。 ⑻ 商標法4条1項7号該当性本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑猥、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではない。本件商標を指定商品及び指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえず、他の法律により使用が禁止されてもいない。また、 本件商標は、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般的に国際信義に反する場合に当たるともいえない。さらに、本件商標は、商標法4条1項10号、15号、19号に該当せず、同項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈すべき特段の事情も認められない。 加えて、被告は、ホームページ上で「「埋金」は弊社の登録商標です。」と 記載しているが、直ちに本件商標の登録出願の経緯が著しく社会的相当性を欠くものともいえない。その他、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないとはいえない。 よって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当しない。 ⑼ 本件審判請求に係る手続が、商標法の手続規定に違反したともいえない。 第3 審決取消事由に関する当事者の主張 1 取消事由1(手続違背)⑴ 原告の主張本件審判請求の手続には、提出期限の約3か月後の令和6年1月5日に提出され たともいえない。 第3 審決取消事由に関する当事者の主張 1 取消事由1(手続違背)⑴ 原告の主張本件審判請求の手続には、提出期限の約3か月後の令和6年1月5日に提出された答弁書が審理対象とされた点(商標法56条1項、特許法133条 の2第1項違反)、答弁書の原告への送達が約10か月後となり審理が遅延した点(商標法56条1項、特許法134条3項違反)で、手続違背がある。 ⑵ 被告の主張審判で期間を指定することは、審理の促進と便宜を図るためであり、審理終結通知(商標法56条1項、特許法156条1項)までは、書面提出がで きるから、指定した期間が経過した後に提出された書面であっても、審理終結通知までは審理対象とするのが当然である。 本件審判請求の手続において答弁書副本の送達が遅延したのは、審判請求書の多岐にわたる無効理由及び答弁書における反論に加え、原告提出の複数の上申書による主張を踏まえた結果、審理に時間を要したのであり、不作為 の審理引延しではない。 2 取消事由2(商標法3条1項2号該当性)⑴ 原告の主張埋金法として利用される開運祈願用道具は古くから存在し、玉や紙の札、金粉が散逸しないという商品等の機能のために収納箱に入れる形式となった が、収納箱に付される図形や文字には、美感に資する以上の目的はない。また、被告の販売する製品(本件商標)の形状・図形・文字は、原告が平成28年頃から販売していた埋金セットと同一である。 よって、埋金法の開運祈願用道具は、九星気学に基づいた開運法の一つとして吉方位へ埋金するものとしては広く一般的なものであり、同業者間にお いては普通に使用されているから、商標法3条1項2号に該当する。 ⑵ 被告 星気学に基づいた開運法の一つとして吉方位へ埋金するものとしては広く一般的なものであり、同業者間にお いては普通に使用されているから、商標法3条1項2号に該当する。 ⑵ 被告の主張ア本件商標の識別力本件商標の収納箱は、立方体形状であり、落し蓋となっている。通常の埋金の収納箱は、直方体形状であり、蓋は、印籠蓋、四方桟蓋とすることが一般的であるから、あえて立方体形状にして、利用しにくい落し蓋を採 用することは、予測困難な形状の変化である。本件商標を使用した埋金は、専章堂において、遅くとも昭和43年頃から販売されており、このような識別力を有する埋金は他になかった。 また、本件商標の要部は、立体部分のうち「上面、左側面、右側面」であり、「方位盤」図形と「東」の文字(上面)、「団扇紋」図形と「祝詞 師」「敬白」の文字(左側面)、「土金兼備祭」「祭主」の文字(右側面)の全てが一体となって立体商標としての美感、独創性を表出し、自他商品識別機能を発揮する(右側面の文字は、風水や九星気学の分野で一般的に使用されるものではない。)。よって、本件商標は、指定商品及び指定役務である埋金及び風水や九星気学の分野において一般的に使用されるもの ではなく、商標としての識別力を有する。 そして、本件商標の文字及び模様の組み合わせは、専章堂で創作され、その閉店に伴い、埋金に関する事業の一切を受け継いだ被告に、本件商標の図形及び文字の組み合わせの識別力が移転した。 イ辞典・辞書には、本件商標を含む埋金法の道具セット、埋金という言葉 の記載はなく、日本占術協会、九星気学、埋金等の関連用語を検索しても、本件商標を含む埋金法の道具セットの使用例はない(乙5、6)。原告の提出する使用例も、証拠(甲8の5)以外は、 という言葉 の記載はなく、日本占術協会、九星気学、埋金等の関連用語を検索しても、本件商標を含む埋金法の道具セットの使用例はない(乙5、6)。原告の提出する使用例も、証拠(甲8の5)以外は、本件商標を構成する立体部分の「上面、左側面」のみ同一又は類似するにすぎない。 よって、本件商標が、埋金法の道具セットを表示するものとして広く知 れ渡っているとも、同業者で慣用化されたともいえず、需要者間で慣用商 標化しているともいえないから、商標法3条1項2号に該当しない。 3 取消事由3(商標法3条1項3号該当性)⑴ 原告の主張ア本件商標である立体的形状は、商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものであり、立体的形状に施された変更・装飾や付されて いる文字・図形等も、予測し得る範囲内のものであり、識別力を有しない。 すなわち、埋金法は、古くから行われてきた開運法の1つにすぎず、箱に球体を入れることも、特定の形状の箱であることも必須ではない。箱には、収納箱以上の機能はなく、紙の札や金粉等を併せて箱に入れた方が散逸しないという程度の機能上の理由であり、あえて落し蓋である必然性も ない。また、収納箱に付される方位盤、羽団扇の図形、祝詞師、敬白、土金兼備祭、祭主の文字や、これらの組合せは、土金思想を敷衍した垂加神道や陰陽五行などで広く一般的に使用される文字・図形にすぎず、気学・遁甲術の方位学等の域を出るものではないのであって、商品等の美感や機能等を向上させるための装飾又は単なる模様的な装飾にすぎない。 イよって、本件商標の形状は、埋金の機能又は美感に資するためのものにすぎず、本件立体的商標全体としても識別力を有するものではないから、商標法3条1項3号に該当する。 ⑵ ぎない。 イよって、本件商標の形状は、埋金の機能又は美感に資するためのものにすぎず、本件立体的商標全体としても識別力を有するものではないから、商標法3条1項3号に該当する。 ⑵ 被告の主張ア本件商標の形状は、仮に、これが埋金の機能又は美感に資する目的のた めに採用されたもの、あるいは、需要者において機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予測し得る範囲にあるものであるとしても、特異な形状又は装飾的な形状の場合に限定して保護するのは相当ではない。 意匠的形状は、自他商品識別機能を発揮するとして保護すべきである。 イ本件商標の要部は、立体部分のうち「上面、左側面、右側面」であり、 全てが一体として立体商標としての美感、独創性を表出し自他商品識別機 能を発揮するから、本件商標は識別力を有する。 よって、本件商標を指定商品又は指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が本件商標を「埋金法」という使用方法、その役務の提供の用に供する物(埋金法に使用する道具セット)、「埋金」という用途その他の特徴を普通に用いられる態様で表示したものと認識するものではな く、本件商標は識別力を有し、商標法3条1項3号に該当しない。 4 取消事由4(商標法3条1項6号該当性)⑴ 原告の主張埋金セットについて、被告が販売する道具の形状、図形、文字は、原告が平成18年頃から販売する道具と同一である。収納箱に球体、紙の札、金粉 を入れて埋金する方法自体は、商品等の機能上一般的な方法であり、本件商標と同一又は類似した道具は、本件商標の出願以前から複数の販売元によって埋金の術具として販売され、被告が扱う術具もその一つである。被告は、平成24年(2012年)以降の販売実績を明らかにしておらず、需 と同一又は類似した道具は、本件商標の出願以前から複数の販売元によって埋金の術具として販売され、被告が扱う術具もその一つである。被告は、平成24年(2012年)以降の販売実績を明らかにしておらず、需要者には、本件商標が被告の商品であることを認識することができない。 そうすると、需要者は、本件商標から被告の業務に係る商品又は役務であることを認識することはなく、逆に、原告の埋金の標章としての識別力を有する。よって、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないから、商標法3条1項6号に該当する。 ⑵ 被告の主張 本件商標の要部は、立体部分のうち「上面、左側面、右側面」であり、全てが一体となって立体商標としての美感、独創性を表出することで自他商品識別機能を発揮する。 また、埋金法で使用される術具とされる引用商標(甲8の5~甲8の8)は、細部が不鮮明で容易に判別することができず、特定の角度から撮影され ているものがほとんどであり、引用商標が本件商標を構成する立体形状部分 の「上面、左側面、右側面」において、全て同一又は類似であると判断することはできない。本件商標が、登録審決時において、埋金法に係る商品又は役務の取引において、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品及び役務の識別力を欠くために商標としての機能を果たし得ないものというこ とはできない。 よって、本件商標は商標法3条1項6号に該当しない。 5 取消事由5(商標法4条1項16号該当性)⑴ 原告の主張本件商標の指定役務には、埋金という役務以外の役務が含まれており、埋 金のみに使用する本件商標を、埋 該当しない。 5 取消事由5(商標法4条1項16号該当性)⑴ 原告の主張本件商標の指定役務には、埋金という役務以外の役務が含まれており、埋 金のみに使用する本件商標を、埋金以外の役務に使用することは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法4条1項16号に該当する。 ⑵ 被告の主張本件商標は、これを指定商品又は指定役務に使用しても、これに接する取 引者、需要者は、本件商標を「埋金法」という使用方法、その役務の提供の用に供する物(埋金法に使用する道具セット)、「埋金」という用途その他の特徴を普通に用いられる態様で表示したものと認識するとはいえないから、本件商標をその指定商品又は指定役務中のいずれの商品又は役務に使用しても、商品の品質又は役務の質について誤認を生ずるおそれはない。よって、 本件商標は、商標法4条1項16号に該当しない。 6 取消事由6(商標法4条1項10号該当性)⑴ 原告の主張ア埋金法は、古くから行われてきた開運法の1つであり、A氏及びその門弟が実施する埋金開運法の実施に際して使用される術具の標章として、原 告商標を付した引用商標は、遅くとも平成23年には既に周知であった。 したがって、需要者においては、日本で流通するもののほとんどが引用商標の埋金セットであり、遅くとも平成23年には広く認識されていた。 イ埋金セットの需要者は、方位専門の鑑定師に相談することが前提となり、同師の勧める埋金セットを購入するのであり、店頭や販売サイトでやみくもに広告宣伝するものではなく、具体的な形状や装飾を選択の目印として 購入するものでもない。需要者は、九星気学・方位学等の開運祈願を欲している需要者のうち実際に開運祈願用道具(埋金セ トでやみくもに広告宣伝するものではなく、具体的な形状や装飾を選択の目印として 購入するものでもない。需要者は、九星気学・方位学等の開運祈願を欲している需要者のうち実際に開運祈願用道具(埋金セットを含む。)を取得しようとする者に限られ、年間の吉日や吉報数は限定されるため、埋金セットの年間販売個数も相対的に限られたものとなる。 ウ原告は、平成18年以降、引用商標の埋金セットを小売販売し、平成2 3年頃からウェブサイトに掲載して販売している。また、平成25年頃から卸売販売も開始し、15の取引先が存在する。平成25年頃には小売卸売販売を含めて年間500個程度販売している。 エよって、本件商標は、商標法4条1項10号に該当する。 ⑵ 被告の主張 ア本件商標の要部は、立体部分のうち「上面、左側面、右側面」であり、全てが一体となって立体商標としての美感、独創性を表出することで、本件商標は自他商品識別機能を発揮する。他方、引用商標は、右側面が確認できず、本件商標の右側面の文字が表示されていなければ、両商標は外観において類似しない。引用商標の右側面に何らかの文字又は模様が表示さ れていても、両商標の類否を判断できないから、両商標は類似しない。 イ本件商標の指定商品・指定役務と引用商標の使用に係る商品・役務は、提供の目的、手段、需要者等を共通にするから、これらは類似する。 ウ引用商標の周知性について、引用商標の原告ウェブサイトでの使用開始から本件商標の出願日までの期間は5年8か月程度であり、長くない。引 用商標を使用した埋金セットの販売数は、年間250~300個(甲48) であるが、埋金関連の市場規模を示す具体的な資料データはなく、販売数の多寡を比較すべき客観的な資料はない。占 用商標を使用した埋金セットの販売数は、年間250~300個(甲48) であるが、埋金関連の市場規模を示す具体的な資料データはなく、販売数の多寡を比較すべき客観的な資料はない。占い・スピリチュアル産業が数千億円ないし1兆円の市場であるならば、原告の埋金セットは、販売数が本件商標の出願前の期間で数百個、売上が数百万円から数千万円程度であり、市場占有率は1%にも満たない。雑誌での引用商標の記事(甲8の2) も、原告の商品は、多数ある商品中の1つとして紹介されたにすぎない。 当該雑誌の販売・配布部数、地域等も示されてない。その他、本件商標の出願時、査定時における引用商標を使用した原告の商品の我が国及び外国における売上げ、業界における市場占有率、広告宣伝の回数や広告宣伝費の額等、引用商標の周知性を客観的に示す資料はない。 よって、引用商標の周知性は認められず、本件商標は商標法4条1項10号に該当しない。 7 取消事由7(商標法4条1項15号該当性)⑴ 原告の主張原告の埋金セットは、日本で流通する埋金セットのほとんどであるが、そ れ以外の埋金セットが存在しても、土金思想を敷衍した垂加神道、陰陽五行等で広く一般に使用される文字及び図形が付されたものばかりであり、こうした形状、文字、図形等が商品識別標識として認識されることはない。 よって、本件商標は、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるものに他ならず、商標法4条1項15号に該当する。 ⑵ 被告の主張本件商標と引用商標は、本件商標の指定商品等と引用商標の商品等とが類似し需要者(占いで開運を願う一般需要者を含む。)が共通するとしても、引用商標は、わが国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、独創性の程 商標は、本件商標の指定商品等と引用商標の商品等とが類似し需要者(占いで開運を願う一般需要者を含む。)が共通するとしても、引用商標は、わが国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、独創性の程度も極めて高いものではないから、本件商標をその指定商品等のいず れの商品又は役務に使用しても、これに接する需要者が、引用商標を連想想 起して、当該商品等を原告又は原告と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように認識することはない。 よって、本件商標は、商品又は役務の出所につき混同を生じるおそれはなく、商標法4条1項15号に該当しない。 8 取消事由8(商標法4条1項19号該当性) ⑴ 原告の主張原告商標が施される埋金セットは、日本で流通する埋金セットのほとんどであり、それ以外の埋金セットが存在しても、上記のとおり、その形状、文字、図形等が商品識別標識として認識されることはない。にもかかわらず、被告は、ホームページに、原告商標(文字商標)が「弊社の登録商標です」 などと虚偽の表示を継続しており、本件商標が事後に出願されていることからも、本件商標は、原告商標や周知性のある埋金の知名度に便乗した不正な意図を有するものである。 よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当する。 ⑵ 被告の主張 本件商標の出願時において、引用商標が我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。また、被告において、本件商標の買い取りを迫るとか、原告に損害を与え、被告において不正の利益を得る意図があったとはいえない。 よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当しない。 9 取消事由9(商標法4条1項7号該当性)⑴ 原告の主張本件 、被告において不正の利益を得る意図があったとはいえない。 よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当しない。 9 取消事由9(商標法4条1項7号該当性)⑴ 原告の主張本件商標は、原告商標(文字商標)の知名度に便乗しようと企図してあえて立体的形状に関する出願をするものである。また、それまで使用を望む者が制限なく使用できた文字、図形、立体的形状の組合せを、名目的な販売し かしていない一個人の被告が、本件商標の登録を受けたことを奇貨として独 占的に使用できるとすることになり、権利者による排他的権利の濫用に該当する。被告は、原告商標を被告の登録商標であるとしてホームページに虚偽の表示を掲載し続けており、被告が権利を有するかのような虚偽誇大な表示をして、原告商標の知名度に便乗しようとしている。 よって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当する。 ⑵ 被告の主張悪意の出願については、前記のとおり、引用商標は、本件商標の出願時において我が国及び外国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、商標権者による本件商標の使用は、引用商標の著名性に便乗するものとはいえず、商標法4条1項7号適用の前提を欠く。ま た、被告が本件商標を出願し登録した行為が、引用商標の顧客吸引力にただ乗りすることを意図し、引用商標を剽窃して出願されたものともいえない。 そのほか、本件商標は、その構成文字からして、矯激、卑猥、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、他の法律によってその使用が制限又は禁止されているものでもない。原告は、引用商標の使用開始に当た って、自ら登録出願する機会は十分にあったのであって、自ら出願しなかった攻めを被告に求めるべき事情はない。そうすると 用が制限又は禁止されているものでもない。原告は、引用商標の使用開始に当た って、自ら登録出願する機会は十分にあったのであって、自ら出願しなかった攻めを被告に求めるべき事情はない。そうすると、本件商標について、先願登録主義を上回るような登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとはいえない。 よって、本件商標は商標法4条1項7号に該当しない。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も、本件審判請求手続に手続違反はなく、また、本件商標は、商標法3条1項2号、同項3号、同項6号、同法4条1項7号、同項10号、同項15号、同項16号及び同項19号のいずれにも該当しないものと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 2 取消事由1(手続違背)について ⑴ 原告は、本件審判請求の手続には、提出期限を約3か月過ぎて提出された答弁書が審理の対象とされた点、答弁書の原告への送達が約10か月後となり審理が遅延した点で、手続違背(商標法56条1項において準用する特許法133条の2第1項及び同法134条3項。以下、本項において引用する特許法の条文は、いずれも商標法56条1項において準用されているもので ある。)があるなどと主張する。 しかしながら、被告の答弁書が提出期限を過ぎて提出された事実があるとしても、審判長が答弁書提出のための相当な期間を指定すべきことを定めた特許法134項1項の趣旨は、審理の促進と便宜をはかるためであって、指定期間経過後の答弁書の提出を禁止する趣旨ではないと解される。指定期間 経過後に提出された答弁書を却下すべきことを定めた明文の規定はなく、特許法133条の2の規定も、審判長は、不適法な手続であって、その補正をすることができないものを却下することができると定 間 経過後に提出された答弁書を却下すべきことを定めた明文の規定はなく、特許法133条の2の規定も、審判長は、不適法な手続であって、その補正をすることができないものを却下することができると定めているにすぎず、却下することを義務付けているものではない。特許法156条1項による審理終結通知がされるまでは、審判長において、答弁書その他の書面の提出を認 めることは妨げられない(東京高等裁判所昭和40年(行ケ)第5号同49年9月3日判決参照)。よって、本件審判請求手続において、被告が提出期限を過ぎて提出した前記答弁書が審理の対象とされたことに違法な点は認められないというべきである。 前記答弁書が、提出から約10か月後に原告に送達された事実があるとし ても、本件審判請求の手続では、審判請求書における原告の多数の無効理由、答弁書における被告の反論のほか、原告の提出した複数の上申書における主張も踏まえて審理がされていたことがうかがわれるから(本件審決62頁参照)、不作為により本件審判請求の手続に時間を要したものと認めることは困難というべきである。 ⑵ よって、本件審判請求手続に手続違背はないから、原告の主張する取消事 由1は理由がない。 3 取消事由2(商標法3条1項2号該当性)について⑴ 商標法3条1項2号所定の「その商品又は役務について慣用されている商標」とは、同種類の商品又は役務について同業者間において一般的に使用されるに至った結果、自己の商品又は役務と他人の商品又は役務とを識別する ことができなくなった商標をいうものと解される。 ⑵ 前記第2の各事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア本件商標は、前記第2の3⑴のとおり、指定商品 とができなくなった商標をいうものと解される。 ⑵ 前記第2の各事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア本件商標は、前記第2の3⑴のとおり、指定商品及び指定役務を、概ね、埋金法に用いられる開運祈願用道具(埋金セット。収納箱に球体と願い事 を記載した札を入れ金粉を降りかけた後、蓋を閉じ、布で包み、麻紐で縛ったものを所定の場所に埋める。)及び当該開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談・これらに関する情報の提供などとする立体商標である。 本件構成は、前記第2の3⑵のとおり、略立方体形状の本体と蓋(落し 蓋)からなり、その上面、左側面、右側面には、それぞれ図形又は文字(上面に方位盤の図形と「東」の文字、左側目に変り羽団扇の図形と「祝詞師」「敬白」の文字、右側面に「土金兼備祭」「祭主」の文字)が表示されているものである。 イ埋金法とは、概ね、木製の箱に、金属の玉、願い事を記載した紙、金属 粉を入れ、蓋をして紐で結わき、吉日、吉時に、吉方位の土中に埋めるという、九星気学・遁甲術の方位学に基づく開運法の一種をいうが、59mm四方の桐材(又はひのき)の箱に入れた直径36㎜、重さ450gの鉄玉を埋める方法(富久純光「修訂気学傾斜秘法(全)」東洋書院・平成12年〔2000年〕修訂版378頁以下〔甲6の5〕、林巨征「現代方位 術大全」説話社・2011年初版179頁以下、2022年増補改訂版2 13頁以下〔甲6の6〕)、木製の箱(大きさの特定はない。)に入れた直径3㎝程度(重さの特定はない。)の金属製の玉を埋める方法(林巨征「秘占『金函玉鏡』方位術」2003年発行106頁以下〔甲6の7〕)、「お水取り」の際の「玉埋め」の方法として 定はない。)に入れた直径3㎝程度(重さの特定はない。)の金属製の玉を埋める方法(林巨征「秘占『金函玉鏡』方位術」2003年発行106頁以下〔甲6の7〕)、「お水取り」の際の「玉埋め」の方法として、さざれ水晶・粉水晶・玉水晶を用い、箱を使用せずに布又は半紙に包んで埋める方法(碓氷栄三「開 運ブログ」平成29年9月14日〔甲24の1・2〕、山田明佳「うらないのオレンジ」令和3年4月22日〔甲24の3〕)等が紹介されている。 これらの文献等には、箱を用いる場合において、箱に記載すべき図案や文言についての記載はない。 ウ埋金法は、平成12年(甲6の5)以前から行われ、埋金セットの製造 販売を行っていた専章堂が平成23年に閉店した前後を通じ、原告や原告が師事したA氏及びその門弟を含む同業者により、埋金セットの小売りや埋金法を用いた開運法の紹介・指導・助言・相談、埋金法に関するチラシの配布、ウェブサイトへの掲載等が行われてきた。原告は、当初、専章堂から埋金セットを仕入れていたが、専章堂の閉店後は、自ら業者に製造委 託するようになった(以上、甲6の1~6の4、甲8の1~8の13、甲9の1~3、甲10の1、甲12の4、甲13の1、甲48)。 一方、被告は、専章堂の閉店前は専章堂から埋金セットを購入していたが、専章堂の閉店に伴い、埋金製造に必要な印章や顧客リストを引き継ぎ、顧客には被告が専章堂の埋金セットの直接受注先となった旨の挨拶状(乙 11)を送付するとともに、平成24年2月に「まいきん堂」のホームページを開設し、本件商標の埋金セットを製造販売している(甲27~29、31の1・2、33の1・2、乙9~11、13、17の1・2)。 エそして、原告を含む同業者による金属球を用いた埋金法では、引用商標(甲8の1 の埋金セットを製造販売している(甲27~29、31の1・2、33の1・2、乙9~11、13、17の1・2)。 エそして、原告を含む同業者による金属球を用いた埋金法では、引用商標(甲8の10等)の埋金セット等が使用されていたところ、引用商標(甲 8の5~甲8の8)の構成は、前記第2の4⑵のとおりであり、立方体形 状の収納箱本体と蓋(落し蓋)からなり、その上面、左側面には、それぞれ図形又は文字(上面に方位盤の図形と「東」の文字、左側面に変り羽団扇の図形と「祝詞師」「敬白」の文字)が表示されている。引用商標の右側面について、甲8の5の2枚目最上段の写真は不鮮明であり、文字が記載されていることはうかがえるが、文字の内容は明らかでない。しかし、 原告が、専章堂の閉店後に業者(ゼスト株式会社)に製造委託した埋金セットに関し、当該業者が見積書に添付した版下によれば、右側面においても本件商標と同様に「土金兼備祭」「祭主」の文字が表示されていたことが推認される(甲9の2)。そうすると、特段の事情がない限り、専章堂の閉店前に専章堂が原告に販売していた埋金セットの右側面も同様の文字 が表示されていたことが推認されるというべきであり、これを覆す特段の事情が存在することを認めるに足りる証拠はない。したがって、引用商標と本件商標とは、ともに同じ本件構成を有するものと認められる。 他方、他の同業者(サンレイ商会)による金属球を用いた埋金法(甲52の1)の埋金セットの収納箱の構成は、略立方体形状の本体と蓋(落し 蓋)からなり、その上面、左側面、右側面には、それぞれ図形又は文字(上面に方位盤の図形と「北」の文字、左側面に「願望適遂」「必顕造作」の文字、右側面に「陽春来福」「開運大吉」の文字)が表示又は貼付されてい なり、その上面、左側面、右側面には、それぞれ図形又は文字(上面に方位盤の図形と「北」の文字、左側面に「願望適遂」「必顕造作」の文字、右側面に「陽春来福」「開運大吉」の文字)が表示又は貼付されている。さらに、原告がフィッシングサイトであるとするサイト(甲52の4及び5、甲53の1及び2)や、オークションサイト(甲52の7) に表示されていた埋金法の道具も、本件構成を有しておらず、引用商標や本件商標とは異なるものである。そして、原告自身も、A氏以外の他の流派においては、その流派の指導方法があったことを聞いたことがある旨認めている(甲48)。 オ原告による引用商標(甲8の10等)の埋金セット等の販売状況につい て、原告は、平成25年(2013年)頃には、小売り販売を含め年間5 00個程度販売していた旨陳述している(甲48)。しかし、同陳述を的確に裏付ける証拠はない。むしろ、甲15によれば、平成25年1月から9月までの原告の埋金セットの販売数は約50個(甲15の1~30)で、年換算(50÷9×12)すると67個程度である。この数を甲55の1(卸販売先リスト)の平成25年(2013年)の卸売個数の合計102 個に加えても、168個(=102+66)であり、500個に満たない。 また、甲17(平成28年~令和5年の原告による埋金卸売上リスト)の卸売個数が正しいと仮定した場合、平成28年から令和4年までの卸売個数の年平均は約170個、売上額約94万円である。この年平均卸売個数170個と、前記平成25年の年間推定販売個数(67個)を併せ考慮す ると、原告による埋金セットの販売個数は、年平均で240~250個程度であると認めるのが相当であり、これを左右するに足りる証拠はない。 なお、証拠上、被告を含む他の同業 67個)を併せ考慮す ると、原告による埋金セットの販売個数は、年平均で240~250個程度であると認めるのが相当であり、これを左右するに足りる証拠はない。 なお、証拠上、被告を含む他の同業者による埋金セットの販売状況は明らかではない。 ⑶ 以上によれば、埋金法は、遅くとも平成12年頃には行われており、専章 堂が平成23年に閉店した前後を通じて原告を含む同業者により埋金セットの小売りや埋金法を用いた開運法の指導・相談等が行われてきたことが認められる。しかし、そもそも埋金法を説明した前記各文献においても、木の収納箱に金属の玉と願い事を記載した紙を入れて地中に埋めることが説明されているだけで、収納箱の各面にどのような図柄や文字を記載するのかについ ては、特に指定はされていない。使用される収納箱の一般的な仕様を特定した占術学の文献等が存在することを認めるに足りる証拠もない。そもそも、埋金法には、複数の流派があることが窺われ、収納箱を使用せず、水晶を布等で包んで地中に埋める埋金法もあることが認められるほか、埋金セットを販売する業者は、専章堂以外にも存在し、これらの業者は、本件構成とは異 なる構成の埋金セットを販売していたことが認められる。しかも、原告の埋 金セットの販売状況に照らすと、本件構成を有する埋金セットが、多数の需要者により広く購入されている状況にあったとまではにわかに認めがたい。 そうすると、本件商標における本件構成は、埋金法を行う場合に通常用いられていた一般的な構成であるとは認められず、本件商標に係る登録審決時(平成30年11月13日)において、本件商標が、埋金法に係る商品又は 役務について、同業者間で一般的・慣用的に使用され、自他識別力を失う状況に至っていたと認めることもできない。し る登録審決時(平成30年11月13日)において、本件商標が、埋金法に係る商品又は 役務について、同業者間で一般的・慣用的に使用され、自他識別力を失う状況に至っていたと認めることもできない。したがって、本件商標を商標法3条1項2号の慣用商標と認めることはできない。 ⑷ 原告は、埋金法の開運祈願用道具は、九星気学に基づいた開運法の一つとして吉方位へ埋金するものとして広く一般的なものであり、同業者間におい て普通に使用されていると主張する。しかしながら、証拠上、埋金セットの市場における引用商標に係る埋金セットのシェアは不明であり、かつ、本件構成とは異なる構成を有する埋金セットも販売されていたことが窺われる以上、本件商標が同業者間において広く一般的に使用されるものと認めることはできないから、原告の主張を採用することはできない。 ⑸ よって、本件商標は、商標法3条1項2号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 4 取消事由3(商標法3条1項3号該当性)について⑴ 商標法3条1項3号は、商品の形状、品質、用途その他の特徴、役務の質、提供の用に供する物その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章の みからなる商標は、商標登録を受けることができない旨を規定する。これは、このような商標は、商品又は役務の上記特徴を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品役務識別力を 欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解され る(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小 る標章であって、多くの場合自他商品役務識別力を 欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解され る(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照)。 この場合において、一般に商品の立体的形状のみからなる商標は、当該商品の通常想定される形状をそのまま表示するにすぎないから、特段の事情がない限り、商標法3条1項3号にいう形状を「普通に用いられる方法で表示」 したものに該当すると考えられる。しかし、当該立体的形状と文字や図案等が組み合わされた商標の場合において、当該文字や図案等が独自の自他識別力のある標章としての意義を有すると認められるときは、その商標は、物品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章「のみ」からなる商標ということはできないというべきである。以上を踏まえて、本件商標について検討 する。 ⑵ 前記第2及び第4の3⑵の各事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア本件商標は、商品の立体的形状を商標として登録したものであり、本件構成は、前記第2の3、第4の3⑵のとおり、略立方体形状の本体と蓋 (落し蓋)からなり、その上面、左側面、右側面には、それぞれ図形又は文字が表示されている。 イ本件商標の収納箱は、本体と蓋(落し蓋)からなるが、蓋の形状には、他に「印籠蓋」「かぶせ蓋」「四方桟蓋」等がある(甲18、52の2)。 ウ本件商標の上面、左側面、右側面に表示された図形又は文字は次のとお りである。 (ア) 上面の「方位盤」の図形は、占いの際に使用されるものであり、本件商標では、八角形の図形が直線で仕切られて、四方位、十二支等が記載されている。方位盤には、図形の形 のとお りである。 (ア) 上面の「方位盤」の図形は、占いの際に使用されるものであり、本件商標では、八角形の図形が直線で仕切られて、四方位、十二支等が記載されている。方位盤には、図形の形状や記載される文字(四方位、十二支、九星等)、色彩等において他の構成もある(甲3)。 上面の「東」の文字は、四方位の一つである。 (イ) 左側面の「変り羽団扇」の図形は、軍配や団扇をモチーフとした家紋のうちの団扇紋の一種である「変り羽団扇」に類している(甲4)。 左側面の「祝詞師」の文字は、広辞苑によれば「伊勢神宮の昔の神官。 正員外で祈祷などをつかさどる。」を意味する用語である(甲5の1、甲20の1)。 左側面の「敬白」の文字は、広辞苑によれば「うやまって申し上げること。主として、願文、書簡などの末尾に用いる語」を意味する用語である(甲5の2、甲20の4)。 (ウ) 右側面の「土金兼備祭」の文字は、文献(「神道極秘伝書『埋金法の古式作法』」甲5の3の1及び2、「土金兼備麒麟之巻」甲21の1) において「土金兼備祭」の文字の記載があり、他の文献(甲21の2~4、甲21の6~8)においても「土金之秘決」「土金行事」「土金兼備行事」「土金伝」「土有れば必ず金あり、金は土に兼てあるなり、土金は相離れぬ物也」などの記載があるが、各記載の「土金兼備祭」の用語との関係性や「土金兼備祭」の用語の意味の詳細は記載されておらず、 明らかではない。また、「土金兼備祭」の用語をインターネット検索しても、その意味内容や、風水・九星気学の分野で一般的に用いられる用語であるかは必ずしも明らかではない(乙3)。 右側面の「祭主」の文字は、広辞苑によれば「①伊勢神宮の神官の長。 もとは大中 検索しても、その意味内容や、風水・九星気学の分野で一般的に用いられる用語であるかは必ずしも明らかではない(乙3)。 右側面の「祭主」の文字は、広辞苑によれば「①伊勢神宮の神官の長。 もとは大中臣氏の世襲であったが、近代は皇族を親任した。②祭事を主 宰する人」を意味する用語である(甲5の4、甲20の3)。ただし、「祭主」の用語をインターネット検索しても、風水・九星気学の分野で一般的に用いられる用語であるかは必ずしも明らかではない(乙4)。 エなお、引用商標(甲8の5~甲8の8)が本件商標と同じ本件構成を有するものであること、他の業者が販売する埋金セットで本件構成とは異な る構成を有するものがあることは、前記第4の3⑵エのとおりである。 ⑶ 以上を踏まえて検討する。 ア本件商標のうち立体的形状部分については、略立方体形状であること、本体と蓋からなることは、一般的な収納箱の形状ということができる。また、本件商標の立体的形状部分のうち、蓋が落し蓋形式であることは、本体上面縁部の中に蓋が落とし込まれることにより確実に収納箱の中身が収 納されるようにするという当該商品の機能に資することを目的とするとともに、本体上面縁部の内側に蓋が配置されるなど、その配置は当該商品の美感を高めるものと認められる。このような形状自体は、指定商品であり、又は指定役務に用いられる、開運祈願用具の収納箱としての形状的特徴を普通に用いられる方法で表示しているにすぎないというべきである(蓋の 配置などは需要者からみて、商品の形状そのものの範囲を出るものではない。)。 イ他方、本件商標は、立体的形状のみからなる商標ではなく、平面部分の図形及び文字との組合せからなる本件構成を有する商標である。本件構成においては、箱の上面、 のの範囲を出るものではない。)。 イ他方、本件商標は、立体的形状のみからなる商標ではなく、平面部分の図形及び文字との組合せからなる本件構成を有する商標である。本件構成においては、箱の上面、左側面、右側面には図形又は文字が表示されてお り、上面(方位盤の図形と、「東」の文字)、左側面(変り羽団扇の図形と「祝詞師」「敬白」の文字)、右側面(「土金兼備祭」「祭主」の文字)の各図形及び文字は、いずれも埋金法による開運方法に関する占いのために使用されることや(商品の品質、用途、役務の質)、埋金法による開運方法に関する占いを実施するための開運祈願道具セット(役務の提供の用 に供する物)であるとの意図の下に表示されているものと解される。これらの図形及び文字の組合せが、埋金法に係る商品及び役務との関連において、広く一般的に使用される文字及び図形の組み合わせにすぎないということはできず、他の業者により構成が異なる埋金セットが販売されていることを踏まえると、本件構成が、埋金法を行う場合に通常用いられている 一般的な構成であると認めることはできないことは前記したとおりである。 また、本件構成における図形及び文字部分が埋金法に限らず占いや祈祷を行う場合に一般的に広く用いられている構成であると認めるに足りる証拠もない。すなわち、本件構成の図形及び文字部分は、埋金法を含む占いや祈祷に係る商品や役務において一般的に使用されているものではないから、通常想定される商品の外観の範囲を超えた独自の自他識別力を有する標章 としての意義を有するというべきである。 ウそうすると、本件商標は、収納箱の立体的形状と自他識別力を有する図形及び文字との組合せからなる商標であり、指定商品又は指定役務の特徴(埋金法に係る商品の品質、用途、提供す るというべきである。 ウそうすると、本件商標は、収納箱の立体的形状と自他識別力を有する図形及び文字との組合せからなる商標であり、指定商品又は指定役務の特徴(埋金法に係る商品の品質、用途、提供する役務の質、役務の用に供する物)を普通に用いられる方法で表示する標章「のみ」からなる商標に該当 しないというべきである。 ⑷ よって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 5 取消事由4(商標法3条1項6号該当性)について⑴ 原告は、本件商標は、商標法3条1項6号に該当するとし、取引の実情に よれば、本件商標に係る被告の道具と同一又は類似した道具は、本件商標の出願以前から原告を含む複数の販売元によって販売されているから、需要者は、本件商標が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないなどと主張する。 ⑵ 商標法の目的は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業 務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」であるところ(同法1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法3条1項6号が、「需要者が何人か の業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商 標登録の要件を欠くと規定するのは、同項1号ないし5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものである(知財高裁平成24年(行ケ)第10323号同25年1 月10日)。 ⑶ これを本件についてみると、前記第4の3のとおり、埋金セットとして販売される商品には、種々のものがあり、指定商品又は指定役務の分野において、本件構成が広く一般的に使用されていたとは認められないから、本件構成には自他識別力が認められるというべきである。本件構成を有する商品が、 平成12年頃には専章堂から販売され、平成23年に専章堂が閉店した後も、原告や被告により、その販売が続けられていたとしても、その数及び正確な規模は証拠上不明であり、登録審決時において、本件構成の自他識別力が失われていたと認めることはできない。 そうすると、本件商標は、登録審決時において、「需要者が何人かの業務 に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」には該当しない。 ⑷ よって、本件商標は、商標法3条1項6号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 6 取消事由5(商標法4条1項16号該当性)について ⑴ 原告は、本件商標について、埋金法に係る役務以外の役務が指定役務に含まれているから、役務の質の誤認を生ずるおそれがあり、商標法4条1項16号に該当することを主張する。 しかしながら、本件商標は、埋金法において使用される道具の形態をとっているが、埋金法に係る商品及び役務の特徴(商品の品質、用途、役務の質、 役務の用に供する物)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる は、埋金法において使用される道具の形態をとっているが、埋金法に係る商品及び役務の特徴(商品の品質、用途、役務の質、 役務の用に供する物)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる 商標であるとは認められない。本件商標の立方体形状部分は、それ自体では、何ら役務の品質を表示するものではないし、本件構成に係る図形や文字部分のうち、上面の「方位盤」の図形は、占いの際に使用されるものであるが、埋金法においてのみ使用されているものとは認められない。上面の「東」の文字は、四方位の一つであり、左側面の「変り羽団扇」の図形は軍配や団扇 をモチーフとした家紋のうちの団扇紋の一種であり、いずれも埋金法固有のものではなく、「祝詞師」「敬白」の文字も、埋金法においてのみ使用される用語であるとは認められない。右側面の「土金兼備祭」の文字は神道に由来するものと認められる(甲5の3の1及び2、甲21)が、その正確な意味は明らかではなく、「祭主」の文字は、埋金法においてのみ使用される用 語であるとは認められない。すなわち、本件商標は、埋金法に係る商品や役務のみを表示する標章であるということはできず、本件商標に接する取引者、需要者が、本件構成から直接、そのような商品の品質又は役務の質を直接認識することもできないというべきである。そうすると、本件商標を指定商品又は指定役務に使用しても、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれ があるものということはできない。原告の前記主張は採用することができない。 ⑵ よって、本件商標は、商標法4条1項16号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 7 取消事由6(商標法4条1項10号該当性)について ⑴ 原告は、引用商標は、平成23年には既にA氏及びその門弟 項16号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 7 取消事由6(商標法4条1項10号該当性)について ⑴ 原告は、引用商標は、平成23年には既にA氏及びその門弟が実施する埋金法に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識され周知であったから、これと同一又は類似し、埋金法に係る商品又は役務に使用される本件商標は、商標法4条1項10号に該当するなどと主張する。 ⑵ 引用商標の周知性 本件において、引用商標(埋金セット)は、開運祈願用道具として、その 取引の地理的範囲に特に限定のない商品であるものと解されるところ、このように全国に販売される可能性のある商品について、引用商標が商標法第4条1項10号の規定する「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには、本件商標の出願時において、少なくとも同種商品の需要者の相当程度の割合に達する程度の層に認識されているに至っていたことを要するも のと解すべきである(東京高裁昭和57年(行ケ)第110号同58年6月16日判決参照)。 ⑶ 前記第2、第4の3⑵、第4の4⑵の各事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア専章堂は、平成12年以前から埋金セットの製造販売を行っていたとこ ろ、原告やA氏及びその門弟は、専章堂が閉店した平成23年頃まで、その埋金セットを購入して埋金セットの小売りや埋金法を用いた開運法の紹介・指導・助言・相談、埋金法に関するチラシの配布、ウェブサイトへの掲載等を行っていた。 イ原告は、専章堂の閉店後は、自ら業者に委託して引用商標の埋金セット を製造させ、これを小売販売するようになり、平成25年頃からは卸売り販売を行うようになった。平成25年 等を行っていた。 イ原告は、専章堂の閉店後は、自ら業者に委託して引用商標の埋金セット を製造させ、これを小売販売するようになり、平成25年頃からは卸売り販売を行うようになった。平成25年以降の原告による埋金セットの販売個数は、年平均で240~250個程度であると考えられる(前記第4の3⑵オ)。 原告は、需要者に対し、開運法の一手段として埋金法について説明した 上で引用商標の埋金セットを販売しているが、説明が不要な需要者には、店頭又はオンラインで説明を省略し販売することもある(乙18、19)。 また、原告は、平成18年に占い鑑定、パワーストーン等の販売を行う店舗を開店し、また、平成23年4月、5月、8月、平成24年10月、平成26年4月、8月、12月には、自身のブログで埋金法を紹介したり 埋金法に言及したりする記事を投稿している。さらに、平成27年には、 埋金法の説明書を作成したり、平成25年には埋金法のチラシを作成したりしている(甲6の1、甲8の7~13、甲10の1・2)。 ウ一方、被告においても、専章堂の閉店前は専章堂から埋金セットを購入していたが、専章堂の閉店に伴い、埋金製造に必要な印章や顧客リストを引き継ぎ、被告が専章堂の埋金セットの直接受注先となったことを顧客に 案内(乙11)するとともに、平成24年2月に「まいきん堂」のホームページを開設し、本件商標の埋金セットを製造販売していることは、前記3⑵ウのとおりである。なお、被告による本件商標の埋金セットの販売状況は、必ずしも明らかではない。 エ埋金セットの需要者には、鑑定や相談を受けずに購入している者もいる (乙20~22)。また、引用商標の埋金セットは、雑誌に紹介されたことがあるが(甲8の2)、その発行部数や販売地域等は エ埋金セットの需要者には、鑑定や相談を受けずに購入している者もいる (乙20~22)。また、引用商標の埋金セットは、雑誌に紹介されたことがあるが(甲8の2)、その発行部数や販売地域等は示されていない。 その他、他の同業者による埋金セットの販売状況は、必ずしも明らかではない。 オ本件商標の指定商品及び指定役務は、占い、開運に係る商品又は役務に 属するものであるところ、平成25年頃のスピリチュアル市場の規模は、約1兆円であるとの記事がある(乙7)。 ⑷ 以上の認定事実によれば、原告は、平成23年の専章堂の閉店後、引用商標の埋金セットを委託して製造するようになり、これを小売・卸売により販売してきたが、その販売状況は、小売と卸売を合わせても年間240~25 0個程度である。 そして、埋金セットは、本件商標の指定商品及び指定役務と同様、占い、開運に係る商品又は役務に属するものと解されるところ、このようなスピリチュアル市場の規模は、平成25年頃においても年間1兆円であるとされており、このうち本件商標の指定商品又は指定役務と同種の商品又は役務の需 要者の占める割合は明らかではない。しかし、前記原告による販売状況に照 らすと、本件商標の出願時において、少なくとも、引用商標が原告の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、同種商品の需要者の相当程度の割合に達する程度の層に認識されているに至っていたと認定するに足りる立証はないといわざるを得ない。 そうすると、原告の引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録審決時、 本件商標の指定商品及び指定役務の分野において、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 ⑸ 原告は、引用商標 審決時、 本件商標の指定商品及び指定役務の分野において、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 ⑸ 原告は、引用商標の商品(埋金セット)は、方位学等の鑑定師の勧めにより相談者が購入するなど販売方法が特殊であることから需要者が限定される 旨を主張するが、商品(埋金セット)は、開運祈願道具として卸売小売販売の対象となり、オンライン販売もされている商品であるから、需要者が鑑定を前提とする者に限定されるものということは困難であり、原告の主張を採用することはできない。 ⑹ よって、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は、商標法4 条1項10号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 8 取消事由7(商標法4条1項15号該当性)について⑴ 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他 人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高 裁平成10年(行ヒ)85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54 巻6号1848頁)。 ⑵ 本件において、前記第4の3⑵、第4の4⑵のとおり本件商標と引用商標は、いずれも専章堂の商品に由来する本件構成を有する同一の商標であることが認められ、使用される商品又は役務も同一である。しかし、 ⑵ 本件において、前記第4の3⑵、第4の4⑵のとおり本件商標と引用商標は、いずれも専章堂の商品に由来する本件構成を有する同一の商標であることが認められ、使用される商品又は役務も同一である。しかし、前記6のとおり、本件出願時及び登録審決時において、引用商標は、原告の業務に係る 商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であったとは認められない。証拠上認定することができる原告の埋金セットの販売状況に照らすと、原告の業務に係る商品又は役務の需要者の範囲は限られたものである。したがって、引用商標と同じ本件構成を有する本件商標を被告が使用した場合に混同が生じ得る需要者の範囲は限られているから、商 標法4条1項11号の規定の適用が認められない場合に、なお同項15号の規定を適用して本件商標の登録を否定しなければならないほど、需要者の間で原告の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。 ⑶ よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当しないから、この点に 関する本件審決の判断に誤りはない。 9 取消事由8(商標法4条1項19号該当性)について⑴ 原告は、本件商標は、商標法4条1項19号に該当すると主張する。 しかしながら、本件商標と引用商標は、いずれも専章堂の商品に由来する本件構成を有する同一の商標であるとしても、前記6のとおり、引用商標は、 原告の商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標とまでは認められない。他方、被告において、専章堂の閉店前は専章堂から埋金セットを購入していたが、専章堂の閉店に伴い、埋金製造に必要な印章や顧客リストを専章堂から引き継ぎ、平成24年2月に「まいきん堂」のホームページを開設し、本件商標の埋金 章堂の閉店前は専章堂から埋金セットを購入していたが、専章堂の閉店に伴い、埋金製造に必要な印章や顧客リストを専章堂から引き継ぎ、平成24年2月に「まいきん堂」のホームページを開設し、本件商標の埋金セットの製造販売を始めたという 経緯(前記3⑵ウ)に照らすと、被告について、不正の目的をもって本件商 標を使用するものとも認め難い。 原告は、原告商標(文字商標)について、被告のホームページに「弊社の登録商標です。」と記載されていることをもって不正の目的があると主張するが、前記経緯に照らすと、被告が原告に無断で原告商標(文字商標)と同一又は類似の商標をホームページで使用したことをもって、本件商標を不正 の目的で使用していることまで推認することはできないから、原告の主張は採用することができない。 ⑵ よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 取消事由9(商標法4条1項7号該当性)について ⑴ 原告は、本件商標は、商標法4条1項7号に該当すると主張し、本件商標は、引用商標の知名度に便乗しようと企図してあえて立体的形状に関する出願をするものであるとか、名目的な販売しかしていない一個人の被告が、本件商標の登録を受けたことを奇貨として独占的に使用するのは権利の濫用に該当するとか、被告が、原告商標(文字商標)を被告の登録商標であるとし てホームページに虚偽の表示を掲載し続けるなど原告商標の知名度に便乗しようとしているなどと主張する。 ⑵ しかしながら、前記7のとおり、引用商標は、本件商標の出願時において周知のものとは認められないから、その知名度に便乗しようと企図して本件出願をしたものとは認められない。同一の商品又は役務について使用をする 、前記7のとおり、引用商標は、本件商標の出願時において周知のものとは認められないから、その知名度に便乗しようと企図して本件出願をしたものとは認められない。同一の商品又は役務について使用をする 同一の商標についての商標登録の出願は、先願の出願人のみが商標登録を受けることができるのであり(商標法8条1項本文)、被告が専章堂から引き継いだ埋金セットについて本件商標を使用することが不正な目的による使用であると認められないことは前記のとおりであるから、被告において、本件商標の登録出願をしたことが不正な目的による出願ということはできない。 その他、被告による本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものが あり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認できないとする事情があることを認めるに足りる主張立証はない。 ⑶ よって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当しないから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 11 小括 以上によれば、本件商標は、商標法3条1項2号、同項3号、同項6号、4条1項7号、同項10号、同項15号、同項16号、同項19号のいずれにも該当しないから、本件審判請求を成り立たないものとした本件審決の判断に誤りはない。 そして、その他、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、上記認定判 断を左右するような事由は認められない。 第5 結論よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判官菊池絵理 裁判官 判所第2部 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一 裁判長裁判官清水響は、退官のため署名押印することができない。 裁判官 菊池絵理 (別紙)商標目録 【本件商標(商標登録第6118205号)】 1 【登録商標】 2 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】第21類気学・遁甲術の方位学を用いて導かれた所定の場所に埋めることを目的とした開運祈願用道具(収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした道具セットであって、お守り札に願い事等を書き込み、収納箱の中に球体を入れたら、書き込んだお守り札も入れ、その上に金粉を降りかけた後、収納箱の蓋を閉じ、布で収納箱を包み、麻紐で縛ったものが完成品であり、これ自体が所定の場所に埋められるものである。)第45類祈祷の実施,占い,方位占い,身の上相談,人生相談,易占及びこれに関する情報の提供,身の上相談・人生相談の斡旋・媒介又は取次ぎ並びにこれらに関する情報の提供,開運指導,開運相談,運勢判断,気学判断,運命判断,暦学診断,姓名判断,運勢鑑定,風水鑑定,運命鑑定,印相鑑定,気学・遁甲術の方位学を用いて埋めるまたは水中に投げる開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供, 姓名判断,運勢鑑定,風水鑑定,運命鑑定,印相鑑定,気学・遁甲術の方位学を用いて埋めるまたは水中に投げる開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供,金属の球体からなる開運祈願用お守り・祈願文書・収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした開運祈願用道具を用いた開運方法に関する占いの指導・助言・相談並びにこれらに関する情報の提供 以上 (別紙)引用商標目録 甲8の10等 以上 (別紙)原告商標目録 (190)【発行国・地域】日本国特許庁(JP)(450)【発行日】平成27年10月6日(2015.10.6)【公報種別】商標公報(111)【登録番号】商標登録第5788440号(T5788440)(151)【登録日】平成27年8月28日(2015.8.28)(541)【登録商標(標準文字)】埋金(500)【商品及び役務の区分の数】1(511)【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】第35類金属製の開運祈願用お守り・お守り玉・お札・お守りの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,屋外で用いる金属の球体からなる開運祈願用お守りの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,気学・遁甲術の方位学を用いて埋めに行く開運祈願用道具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした開運祈願用道具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供【国際分類第10版】(210)【出願番号】商願2015-16841 ,収納箱・お守り札・麻紐・布・金粉・球体を一組とした開運祈願用道具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供【国際分類第10版】(210)【出願番号】商願2015-16841(T2015-16841)(220)【出願日】平成27年2月25日(2015.2.25)(732)【商標権者】【識別番号】515051489【氏名又は名称】X【住所又は居所】(740)【代理人】【識別番号】100130410【弁理士】【氏名又は名称】茅原裕二【法区分】平成23年改正【審査官】大房真弓(561)【称呼(参考情報)】マイキン、ウメガネ以上

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