【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和三三年八月二九日控訴人に対し てなした清算所得金額二一、九八二
主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和三三年八月二九日控訴人に対してなした清算所得金額二一、九八二、七三七円、右に対する法人税額九、八〇六、一九〇円とする処分のうち、清算所得金額の決定を二〇、七二四、九三〇円の限度において取消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」旨の判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否は、次に付加、訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、それを引用する。 (控訴人の主張)(一) およそ売買契約なるものは、契約の当事者と売買の目的物に対する意思表示の主観的合致を欠くべからざる要素として成立するものである。もし、原審認定のように、Fタクシーの代表取締役であつた訴外Aが契約当時買主の名を知らず控訴会社の関係者がFタクシー営業所に派遣されてきてはじめて控訴会社が買主であることを知つたがすでに代金受額後であつたのでこれを了承した、というような事実関係であつたとすれば、意思表示の主観的合致を欠き、株式の売買は有効に成立し得ない。 (二) 原審の認定事実によれば、本件株式の売買代金は金九五〇万円であるのにBがAに手交した小切手は合計金九七〇万円であり、その間に金二〇万円の差があるのに、原審はこの点につき「不明朗な所為」という謎の如き一語を用いているのみで、首肯するに足る理由を付していない。売買に関連して現実に金九七〇万円の金員が授受された以上、その金員は一応売買代金と認められるべきであり、そうとすれば、原審の認定は覆らざるを得ないであろう。本件の売買が被控訴人主張の如き株式の売買でないことは売買代金額の点よりしても明らかである。 (三) 控訴人がFタク 買代金と認められるべきであり、そうとすれば、原審の認定は覆らざるを得ないであろう。本件の売買が被控訴人主張の如き株式の売買でないことは売買代金額の点よりしても明らかである。 (三) 控訴人がFタクシーより買受けた自動車のうち三台については月賦金が金一、三二〇、七六〇円残つており、G自動車株式会社に対する分は昭和三二年四月一日以降、H自動車株式会社に対する分は同年三月二五日以降、いずれも九か月間の長期月賦払の約であつたが、もし控訴人がFタクシーに売買代金一、一〇〇万円を支払つた後同社が右二会社に月賦金を支払わないようなことがあるとすると、控訴人が損害を蒙る(主だつた資産を売渡した後のFタクシーはもぬけの殻同様である)ので、売買代金のうちの金一三〇万円の支払に代え、月賦金債務中同額を脱退的に引受け、控訴人の立場の安全を期したものである。もし、これと反対に、控訴人がFタクシーの株主二二名から株式を買受け、その代金の支払に代え債務引受をしたのであるならば、前記二自動車会社が株主らに対して金一三〇万円の債権を有していなければならない筈であるがそのような債権は全く認め難いところである。 そうだとすると、控訴人が右株主らのために脱退的債務引受をなすことは絶対に不可能である。本件売買が株式の売買ではなく、控訴人主張のような自動車その他の売買であることは右の点よりしても明瞭であるといわなければならない。 (四) 法人税法施行規則第二三条の九および一〇(昭和三七年政令第九五号「法人税法施行規則の一部を改正する政令」による改正前のもの)は憲法に違反する政令であり、右政令に基づく本件課税処分は違法である。 法人税法施行規則第二三条の一〇は昭和二八年政令第一六三号で追加されたものであるが、株式代金を合併交付金とみなしこれに課税することを規定したものであり、同条の 令に基づく本件課税処分は違法である。 法人税法施行規則第二三条の一〇は昭和二八年政令第一六三号で追加されたものであるが、株式代金を合併交付金とみなしこれに課税することを規定したものであり、同条の九は、合併法人が納付する被合併法人の清算所得に対する法人税又はその法人税にかかる地方税額に相当する金額を合併交付金とみなし被合併法人の清算所得金額を計算することを規定したものであつて、いずれも法律によらずして国民の納税義務を新たに設定した法規命令であるから、憲法第八四条第三〇条の規定に違背し当然無効の法令である。憲法第七三条の六号にも明記してあるとおり、内閣は憲法および法律の規定を実施するためにのみ政令を制定することができるのであるところ、前記政令は、法人税法に規定がなく、本来交付金でないところのものを「交付金とみなす」として、新たに租税対象を創設し、国民に納税義務を課さんとするものであるから、実質上の立法であり、明らかに租税法律主義に違反する。 なお、被控訴人は、法人税法第九条第七項を根拠として前記政令が憲法違反でない旨主張するが、同項は「所得の計算に関し必要な事項」に限り命令で定めることができる旨規定しているにすぎず、前記政令の定めている事項は「所得の計算に関し必要な事項」の範囲外であるから、被控訴人の主張は失当である。 さらにまた、右政令は、税法の精神ならびに社会の通念に照らし著るしく不当過重な内容を有するものである。被合併会社たるFタクシーの清算所得は株式の売買代金九五〇万円から右会社の資本金一九〇万円を控除した七六〇万円と算定される。Fタクシーとして、債権債務を差引けばそのほかに何も残らないことは被控訴人も認めているところであつて、右の七六〇万円以外に税金の対象となるべき所得のあるべき筈はない。もしこの七六〇万円に対し法人税法上の税 シーとして、債権債務を差引けばそのほかに何も残らないことは被控訴人も認めているところであつて、右の七六〇万円以外に税金の対象となるべき所得のあるべき筈はない。もしこの七六〇万円に対し法人税法上の税率をかけて課税されるならば、条理上少しもおかしくはないのであるけれども、前記政令と通達のカラクリによれば、課税対象となる清算所得金額は実に実質所得の約三倍の金二〇、七二四、九三〇円となり、納付すべき法人税は金九、二六七、〇一〇円と算出されてくるのである。 国家が実質上の利益の、全額を税金として巻きあげてしまうことの不合理はいうまでもないが、本件課税処分はその全額を巻きあげてもなお足りず、それよりも更に金一、六六七、〇一〇円も多い税金を課そうとするものである。しかもなお、前記の無申告加算税を加えるならば、驚くなかれその税金額は金一、一五八万三、七六〇円也の多額に上るに至る。かくのごとき課税は如何なる暴政の国に在つてもありうべからざることであつて、かかる結果を招来する政令の憲法違反であることは明白である。 (五) 控訴人が本件清算所得についての確定申告書を法定の期限内に提出しなかつたことについては正当の理由があるから、本件無申告加算税の賦課は違法である。控訴会社としては、本件取引は甲第一号証(自動車営業権譲渡譲受契約書)記載の目的物の売買であるという意思であつたから、これにつき納税の申告をしなければならないなどとは考えなかつたし、控訴会社の当時の代表取締役CもFタクシーの株式を買受けた認識はなかつた。かりに株式を買受けた認識があつたとしても、株を買えば納税の義務が発生するなどと考える者は皆無である。控訴人は実体上資産も何もないFタクシーを吸収合併したのであつて、このような合併から納税義務が発生するとは通常何人も考え及ばないところである。全国七千 納税の義務が発生するなどと考える者は皆無である。控訴人は実体上資産も何もないFタクシーを吸収合併したのであつて、このような合併から納税義務が発生するとは通常何人も考え及ばないところである。全国七千の弁護士があるが、本件のような事案に遭遇した弁護士でない以上、到底この納税義務を知り得ないであろう。法人税法施行規則第二三条の九や一〇のごとき条文はいかなる六法全書にもなく、法人税担当の税務官以外には知る由もない規則である。よつて本件無申告加算税の賦課は違法である。 (被控訴人の主張)(1) 控訴人は、訴外Aは契約当時相手方が誰であるかを知らなかつたのであるから、売買契約は成立し得る筈がない旨主張する。しかしながら、巷間の取引では買主の氏名を表面に出さないで代理人が話をすすめていくことはよく行なわれているところであつて、本件の場合、Bは控訴人の代理人としてAとの交渉に当つたものであるが、控訴人の要望により、控訴人の名を先方に表明しなかつただけであつて、とくに本人の氏名を表示しなくとも契約は有効に成立すると解すべきである。 (2) 本件株式の売買代金が金九五〇万円であること、右売買に関連しAが金九七〇万円を受領していることを被控訴人は争うものではない。 しかし、売買に関連して代金額以上の金員が授受されたからといつて直ちに売買契約そのものの存在を否定することは早計である。大きな取引が成立した場合に、代理人や仲介人に対し、売主或は買主の方から謝礼金を出すことは通常よく行なわれるところである。本件において、Aは、株式売買の話をとりまとめFタクシーの各株主の代理人となつて契約を締結したほか、各株主の株式引受証やFタクシーの役員の辞任届をまとめてこれを買主に引渡し、株式譲渡代金受領後はこれを各株主に配分するなど重要な行為を実行して来たものである。このよう 理人となつて契約を締結したほか、各株主の株式引受証やFタクシーの役員の辞任届をまとめてこれを買主に引渡し、株式譲渡代金受領後はこれを各株主に配分するなど重要な行為を実行して来たものである。このような場合、株式の譲渡を望んでいた控訴人側から謝礼を受けても何ら異とするに足りない。 本件において、契約では手附金は金八〇万円と定められていたところ、控訴人の手附の交付に当り八〇万円と二〇万円の小切手二通を交付しているのであつて、このこと自体で金二〇万円は謝礼の趣旨で交付されたものであることがほぼ推認できるのであるが、更に本件売買に関連してBに交付された小切手三通、合計金九七〇万円のうち、八〇万円と八七〇万円の二通の支払人は百十四銀行松山支店であるのに、二〇万円の支払人は伊予銀行であつたことおよび現に控訴人が本件売買に尽力したBに対し金一五万円、Dに対し金二万円の謝礼金を支払つている事実を考え合せれば、本件金二〇万円がAに対する謝礼であることは極めて明らかである。 (3) 控訴人がFタクシーの手形債務金一三〇万円を免責的に引受けたような事実はない。 Fタクシーの株式の売買は同会社の積極消極財産とは関係がなく、その財産に何らの影響をも生ずるものではない。本件の場合は、株式の譲渡とは別箇に後日Fタクシーと控訴会社が合併した結果、被合併会社であるFタクシーの手形債務が合併会社である控訴人に承継されたのにすぎないのである(商法第四一六条第一項、第一〇三条)。ただ控訴人の商業帳簿には、合併登記前にFタクシーの資産、負債を引き継いだ旨の記帳はあるが、これは株式譲渡によりFタクシーの実権を掌握した控訴人が将来の合併を予定しそのように記帳したものであつて、何ら異とするに足りないものである。 (4) 本件課税処分は何ら憲法に違反するものではない。 法人が合併した よりFタクシーの実権を掌握した控訴人が将来の合併を予定しそのように記帳したものであつて、何ら異とするに足りないものである。 (4) 本件課税処分は何ら憲法に違反するものではない。 法人が合併した場合において課税される清算所得の計算は旧法人税法第一二条の二第一項第二号に定めるところであるが、当時施行の法人税法施行規則第二三条の九および第二三条の一〇にいわゆるみなし交付金は政令の規定をまつまでもなく清算所得の本質から当然課税所得の範囲に計算されるべき性質のものであつて、政令は単にこれを確認する意味において規定しているのにすぎない。かりに右の各政令が租税対象を創設した規定であるとしても、清算所得の範囲の決定は多分に計算技術的な面が多いので、法律はこれを政令に委任することとしているものである。すなわち、旧法人税法第一二条の二第五項によると、「第九条第七項の規定は、第一項の清算所得の計算について、これを準用する」とあり、その第九条第七項には「……所得の計算に関し必要な事項は命令でこれを定める」とある。この法律の委任により前記政令が定められているのであるから、なんら租税法律主義に反するものではない。 これを更に詳細に説明すると、次のとおりである。 法第一二条の二にいう「合併法人が被合併法人の株主、社員又は出資者に対して交付する株式又は出資の価額の総額及び金銭の総額」には、現実に被合併法人の株主等に交付されたものと、さらに実質的にこれに交付されたと同一視し得るものを含むと解すべきである。それは、清算所得課税の本旨が被合併法人の株主等が合併に際し取得する所得を対象とする以上当然のことである。清算所得に対する法人税等は、本来は被合併法人が負担すべき性質のものなのであるが、租税立法の技術上、合併法人に納付義務を負わせたのにすぎない。従つて、合併法人が 所得を対象とする以上当然のことである。清算所得に対する法人税等は、本来は被合併法人が負担すべき性質のものなのであるが、租税立法の技術上、合併法人に納付義務を負わせたのにすぎない。従つて、合併法人がこれを納付した場合には、経済的には被合併法人の株主等に交付した金銭等と同様であるといわなければならない。このことを更に具体的に表現すれば、被合併法人の株主等は、合併法人から税引後の交付金を受けたともいえるし、また、現実に受けた交付金に税金をプラスした実質交付金から税金だけを合併法人に渡し、代理納付してもらつたともいえるであろう。およそ法人税、所得税を問わず、課税標準とされる金額はすべて税込所得であり。清算所得についても異例ではあり得ないのである。 なお、別の観点から考えてみると、解散による清算の場合においては、清算法人自らが税を負担するのに対し、合併の場合においては、合併法人が被合併法人の税を負担するという相違点があるが、かりに解散による清算法人の残余財産(税引前)と合併により被合併法人の株主等に交付された株式等の価額とが同一と仮定した場合には、株主等に還元される金額は後者の方が税相当額だけ多いことは自明の理である。このような場合に課税標準を同一として課税することは明らかに不合理であり、清算の形態が異なるからといつて不均衡な取扱いを許すことは法の所期するものではない。 故に、「みなし交付金」は性質上清算所得の一部を構成し、税法上は法第一二条の二第一項第二号に定める合併交付金に含まれると解さなければならないし、かく解することが法の定めに最も合致するのである。 次に、合併を意図して合併前に被合併法人の株式等を取得した場合、これが旧法人税法第一二条の二第一項第二号の交付株式、金銭等に当たらないかどうかの問題であるが、これは当たらないと仮定した場 である。 次に、合併を意図して合併前に被合併法人の株式等を取得した場合、これが旧法人税法第一二条の二第一項第二号の交付株式、金銭等に当たらないかどうかの問題であるが、これは当たらないと仮定した場合の不合理をあげることによつて自づと解決されるであろう。いま、当たらないとした場合の不合理点の第一は、合併による交付株式、金銭等と同様の経済的効果が発生していることである。第二は、単に時期が合併前であるという相違があるだけであるにもかかわらず、清算所得の発生がなくなることである。すなわち、被合併法人の株式等をあらかじめ取得しておいて合併すればみずから保有する株式等については新株の引当の必要がないため、受入資産は計算上保有株式と振り替わるだけとなり、清算所得は発生しない。第三は、株式を譲渡した被合併法人の株主等はその譲渡について所得税を課せられない。所得税法上個人の有価証券にかかる譲渡所得は非課税とされているためである。この結果、法人、個人を通じて合併により生ずべき課税を回避できることとなる。このようなことが許されることは、あり得べからざることで、課税の公平という原則に照らし、排除されなければならない。 次に法律の委任についてであるが、税法そのものは技術的な性格があり、具体的な課税に必要とする所得の計算方法について細大もらさず法律を設けることは困難な場合がある。したがつて、税法では大綱を定め細目的な規定は税法の定める範囲内で政令に委任することは、許容されるべく、法第一二条の二第五項において清算所得の計算方法について政令に委任することは適法である。そしてここにいう計算方法とは、法に定める大綱を具体化することを指すものというべきである。 よつて、前記各政令は憲法に違反せず、本件課税処分は適法である。 (5) 控訴人が本件清算所得についての確定申告書 ここにいう計算方法とは、法に定める大綱を具体化することを指すものというべきである。 よつて、前記各政令は憲法に違反せず、本件課税処分は適法である。 (5) 控訴人が本件清算所得についての確定申告書を法定の期限内に提出しなかつたことについては正当の理由はない。 法人税法第二五条の二(昭和二八年法律第一七四号追加によるもの)第一項によれば、合併法人は合併の日から二か月以内に被合併法人の清算所得金額及び当該清算所得に対する税額を記載した申告書を提出しなければならず、また同条第三項により、被合併法人に清算所得について納付すべき法人税がない場合も同様であるとされている。したがつて、かりに控訴人の主張するように合併による清算所得がなく、納付すべき法人税がない場合においても、被合併法人の合併の時における貸借対照表その他合併に関する書類、合併により承継した資産の明細書を添付した申告書を提出しなければならない。それにもかかわらず、控訴人はこれを提出しなかつたものであり、また提出できなかつたことについて、交通、通信のと絶等、正当な事由もなかつたのであるから、控訴人に対し無申告加算税を決定したことは適法である。 なお、控訴人は、清算所得がないから申告をしなかつたとか、あるいは株式を譲り受けて合併した場合清算所得の課税の適用があることを知らなかつたとか主張するが、それらの事由は申告をしなかつたことについての正当の事由ということはできないのである。 (証拠関係)(省略) 理由当裁判所も控訴人の本訴請求は認容できないと判断するものであつて、その理由は、次に訂正、付加するほかは、原判決の理由と同様であるから、それを引用する。 一原判決一五枚目表六行目に「志奈乃のおいて」とあるのを「志奈乃において」と訂正し、一八枚目表五行目に「二五日」と 由は、次に訂正、付加するほかは、原判決の理由と同様であるから、それを引用する。 一原判決一五枚目表六行目に「志奈乃のおいて」とあるのを「志奈乃において」と訂正し、一八枚目表五行目に「二五日」とあるのを「二一日」と訂正する。 二控訴人が当審において提出した書証のうち、甲第二五号証の一ないし七、第二七号証の一ないし一四、第三一号証は、当審証人Cの証言によりその成立を認めることができ、右各書証には、株式の売買なる被控訴人の主張に十分適合しないかの如き記載もないではない。しかし、本件の取引は経済的には単なる株式の売買でなくしてFタクシーなる会社そのものの買収であり、当事者間では合併を前提として事務が処理されていたことを考慮すれば、右の各書証は未だ本件取引を株式の売買とみることの妨げとなるものではない。当審証人Cの証言中、控訴人の主張に副う部分は、原判決が挙示した各証拠および認定した諸事情に照して採用できず、ほかに原判決の認定を左右するに足るべき証拠はない。 三控訴人の当審主張(一)について。 しかし、買主の代理人において本人の氏名を明示せず、売主において買主本人の氏名を知ることができなかつた場合においても、売主が目的物をその代理人の依頼者たるべき者(本人)に売渡すことに異議のない場合は、売買契約は有効に成立するものと解せられ、売主において買主の氏名を知らなかつた場合は常に売買契約が不成立となるとの法理は発見することができない。原審認定のような事情であつたからといつて、直ちに本件売買契約が無効に帰するいわれはないから、控訴人の主張は理由がない。 四同じく(二)について。 しかし、一般に買主が代理人に対し、代金の最高限を示して目的物を買入れることを委任し、代理人がその努力により最高限以下で売買を成立させた場合にはその差額を代理人に取得さ 四同じく(二)について。 しかし、一般に買主が代理人に対し、代金の最高限を示して目的物を買入れることを委任し、代理人がその努力により最高限以下で売買を成立させた場合にはその差額を代理人に取得させるという事例がないではなく(代理人がその差額を広義の運動費として使用する場合もあろう)、また、買主が代理人や仲介人に対し、買受代金と謝礼金とを一括して交付することも全くあり得ないことではなく、控訴人主張のように、買主がその代理人に手渡した金員がすべて売買代金額と認められなければならないものではない。原判決の挙示した証拠によると、売主の代理人であるAは買主の代理人であるBより金九七〇万円を受領しながら売主ら(自己を含む)に対しては金九五〇万円を交付し、差額金二〇万円はBの承諾のもとに自らにおいて取得したものと認められる(この認定に反する原審および当審証人A((又はE))Aの証言は信用できない)。しかし、原判決挙示の証拠によると、右の一株金二五〇円総額にして金九五〇万円なる代金額は、何ら売主本人たるFタクシーの株主らおよび買主本人たる控訴人の意思に反するものではないことが認められ、かりにAにおいて右金二〇万円の取得につきFタクシーの株主らの了解を得ていなかつたとしても、それだからといつて売買契約が有効に成立しなかつたことになるものではない。結局、本件株式の売買は代金額金九五〇万円で成立し、金二〇万円は買主側よりAに交付された謝礼金であると認められるから、控訴人の主張は理由がない。 五同じく(三)について。 しかし、G自動車株式会社外一社がFタクシーの株主らに対して金一三〇万円の債権を有していなければ控訴人が絶対に金一三〇万円の債務の引受をなし得ないものではない。右自動車会社二社と控訴人およびFタクシーの意思の合致さえあれば、債務は有効に移転 株主らに対して金一三〇万円の債権を有していなければ控訴人が絶対に金一三〇万円の債務の引受をなし得ないものではない。右自動車会社二社と控訴人およびFタクシーの意思の合致さえあれば、債務は有効に移転するのであり、それ以外の格別の条件を必要としない。ただ、全く無償で他人の債務を引受けることはまずあり得ないところから、控訴人がFタクシーの株主から株式を買受けたとした場合に、控訴人が別の人格者たるFタクシーの債務を負担する動機、原因が問題となるに止まる。しかし、この点については、原判決もとくに説明を付しているところであつて、本件取引の背景を考慮すれば、控訴人がFタクシーの債務を引受けたところで何ら不合理ではあり得ない。 しかも、本件の場合、控訴人が真正な意味での債務引受契約(債務の特定と自動車会社の承諾を要する)をしたと認めるに足る証拠はなく、実質は、控訴人とFタクシーの間で、将来の合併を予測の上(合併が実現すればFタクシーの債務は当然に控訴人において承継し、あえて債務引受を要しない)、自動車会社二社に対する債務金一、三二〇、七六八円中一、三〇〇、〇〇〇円はFタクシーの出捐において処理することを要しない旨協定し、その協定との関連において本件株式の売買代価が決定されたのにすぎない(なお合併の実現により控訴人は右金一、三〇〇、〇〇〇円の債務を当然承継し、右債務を支払つた)と認められ、控訴人の右主張は理由がない。 六同じく(四)について。 昭和三七年政令第九五号による改正前の法人税法施行規則第二三条の九は、合併法人が被合併法人の税金を納付した場合の清算所得の計算についての定めとして、「法人が合併した場合において、合併法人が納付する被合併法人の清算所得に対する法人税(被合併法人が解散した後に合併した場合には、当該解散に因る清算所得に対する法人税を除 の計算についての定めとして、「法人が合併した場合において、合併法人が納付する被合併法人の清算所得に対する法人税(被合併法人が解散した後に合併した場合には、当該解散に因る清算所得に対する法人税を除く。)又はその法人税額に係る地方税法の規定による道府県民税額若しくは市町村民税額若しくは清算所得に対する事業税額に相当する金額は、これを合併法人が被合併法人の株主、社員又は出資者に対し、合併に因り交付する金銭とみなして被合併法人の清算所得金額を計算する。」と規定しており、また同条の一〇は、合併法人が合併前に被合併法人の株式を取得した場合の清算所得の計算についての定めとして、「法人が合併した場合において、合併前に合併法人が取得した被合併法人の株式があり、その取得に因り被合併法人の清算所得金額が不当に減少する結果となると認められるときは、当該株式の取得に要した金額は、合併法人が被合併法人の株主、社員又は出資者に対し合併に因り交付する金銭とみなし、当該株式については、合併法人の株式の割当又は引当があつたものとみなして被合併法人の清算所得金額を計算する。」旨規定している。 しかしながら、旧法人税法第一二条の二(清算所得の計算についての条文)の第五項は、「第九条第七項の規定は、第一項の清算所得の計算について、これを準用する」旨規定し、その第九条第七項は、「……第一項の所得の計算に関し必要な事項は、命令でこれを定める」(註、「第一項の所得」とは内国法人の各事業年度の所得)旨定めていて、前記法人税法施行規則第二三条の九および一〇は、この法律の規定(法律の委任)に基づく命令であると解することができるのである。 この点に関し控訴人は、旧法人税法第九条第七項は「所得の計算に関し必要な事項」に限り命令で定めることを許しているにすぎず、前記各政令は、右の範囲を超え づく命令であると解することができるのである。 この点に関し控訴人は、旧法人税法第九条第七項は「所得の計算に関し必要な事項」に限り命令で定めることを許しているにすぎず、前記各政令は、右の範囲を超え、新たに租税対象を設定し国民に納税義務を課そうとするものであるから、違憲の法規である旨主張する。しかし、前記規則第二三条の九は、被合併法人の清算所得の計算に際し、合併法人において代つて納付することとなる法人税又はその法人税にかかる地方税相当金額を合併交付金とみなし、被合併法人の清算所得を計算するというだけの規定であつて、一般に税法上の所得が税込所得であり、清算所得課税の本旨が被合併法人の株主等が合併に際し取得する所得を対象とするものであることから考えれば、右税金相当額は理論上清算所得の一部を構成すべきものであつて、右の規定は公平上当然の取扱を定めたものであるといえよう(なお、法人が解散した場合には、その法人自らが右の税金を納付することになるのであり、その場合との均衡からいつても、右の取扱は当然であるといわなければならない)。また右規則第二三条の一〇は、合併法人において合併を予期してあらかじめ被合併法人の株式を取得しておけば新株割当の必要がないため清算所得が発生せず(合併法人の保有株式が他の受入資産に変化するのみとなる)、株式を譲渡した株主にも現行法上所得税課税がなく、容易に租税が回避されて不公平となるところから、その株式取得に要した金額を合併法人が被合併法人の株主等に交付する金銭とみなし、当該株式については、合併法人の株式の割当又は引当があつたものとみなして、被合併法人の清算所得金額を計算する、という趣旨の規定と考えられ、合併法人が合併を予期して株式取得のため支払つた金銭は、その経済的実質において、合併に際し被合併法人の株主等に交付される金銭 なして、被合併法人の清算所得金額を計算する、という趣旨の規定と考えられ、合併法人が合併を予期して株式取得のため支払つた金銭は、その経済的実質において、合併に際し被合併法人の株主等に交付される金銭と差異はないから、両者を法律上同一視することは、何ら法人税法の趣旨に反せず、むしろ清算所得の本質に適合する所以であると称し得る。そうだとすると、右政令の各規定は、決して新たに課税対象を設定したり国民に納税義務を課したりするものではなく、法律の清算所得についての定めを補足、敷衍しているに止まるものであつて、旧法人税法第一二条の二第五項第九条第七項にいう「(清算)所得の計算に関し必要な事項」についての定めであると解することができるから、控訴人の主張は理由がない。 次に控訴人は、前記各政令規定は著るしく不当過重な課税を招来するものであるから、憲法違反である旨主張する。しかしさきに述べたところから自ら明らかなように、合併法人において被合併法人に代り納付することとなる税金や、合併を予期しあらかじめ株式取得のため支払われる金銭を合併交付金とみなすこと自体は、別に不当過重な課税結果をもたらすものではない。また現行法人税法は本来の意味の法人税課税のほか、被合併法人の株主等の受ける個人的利益に対する課税をも同時に行なうものと解されるが、これは立法政策の問題である。ただ、本件の場合、控訴人にとり、課税処分そのものが甚だ意外であつたばかりか税額も著るしく多額と映じたであろうことは、弁論の全趣旨上窺うに難くないけれども、それは実は、控訴人が現行租税法制をよく知らず、控訴人の負担することとなる税金を考慮に入れれば適切でない代金で本件株式を買入れたからにほかならないのであつて、控訴人の違憲の主張は理由がない。 七同じく(五)について。 原判決の認定した事実に従えば、 負担することとなる税金を考慮に入れれば適切でない代金で本件株式を買入れたからにほかならないのであつて、控訴人の違憲の主張は理由がない。 七同じく(五)について。 原判決の認定した事実に従えば、控訴会社代表者は本件取引を株式の売買であると認識していたものと認められ、当審証人Cの証言中、右認定に反する部分は信用できない。また、控訴会社代表者が株式を買受ければ納税の義務が発生することを知らなかつたとしても、それは法令の不知にほかならず、清算所得についての確定申告書を法定の期間内に提出しなかつたことについての正当の事由となるものではない。この点の控訴人の主張も失当である。 以上の次第であるから、控訴人の本件請求(請求の趣旨は原審と当審とで表現に差があるが、要するに昭和三三年八月二九日付課税処分((国税局長の審査決定により取消されていない部分))の全部の取消を求める趣旨であることは明瞭である)は理由がなく、これを棄却した原判決は正当である。よつて本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用の上、主文のとおり判決する。 (裁判官橘盛行今中道信藤原弘道)
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